プラント内電動機システムの影響評価装置および方法
【課題】インバータなど特定の機器が実プラントに据え付けられた状態で発生するノイズの影響を事前に簡便に評価することのできる評価装置及び評価方法を提供する。
【解決手段】原子力発電プラント内に設置された電動機システムの動力ケーブル22に、高周波数のコモンモード電流を注入する電流注入手段13と、電流注入手段に予め定めたパターンに従って高周波数の電流を供給する信号波発生装置14と、動力ケーブル22に流れる第1のコモンモード電流を計測する第1の電流測定手段15と、第1のコモンモード電流により、原子力発電プラント内の計装システムの信号ケーブル4に誘起された第2のコモンモード電流を計測する第2の電流測定手段16と、これらの測定電流値に基づいてコモンモード電流の伝達率を算出する伝達率算出装置17とを備える。
【解決手段】原子力発電プラント内に設置された電動機システムの動力ケーブル22に、高周波数のコモンモード電流を注入する電流注入手段13と、電流注入手段に予め定めたパターンに従って高周波数の電流を供給する信号波発生装置14と、動力ケーブル22に流れる第1のコモンモード電流を計測する第1の電流測定手段15と、第1のコモンモード電流により、原子力発電プラント内の計装システムの信号ケーブル4に誘起された第2のコモンモード電流を計測する第2の電流測定手段16と、これらの測定電流値に基づいてコモンモード電流の伝達率を算出する伝達率算出装置17とを備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原子力発電プラントに用いる電動機システム及び計測制御システムに係り、特に、ノイズの影響を評価する評価装置に関する。本発明はまた、ノイズの影響を評価する評価方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の原子力発電プラントでは、運転効率向上のために動力機器の電源としてインバータを用いる割合が高まりつつある。また、信頼性向上のため無停電電源装置も多数導入されるようになってきている。このような電源装置は、スイッチングと平滑化により所望の振幅、周波数の電圧を生成して、負荷に供給している。特に、最近のスイッチング素子は、効率向上のために、非常に高速にスイッチングすることができ、その結果生じる電磁ノイズは振幅が大きく、周波数が高くなる傾向がある。例えば、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)素子では、スイッチング時間が数百ナノ秒程度まで短くなっており、MHzオーダーの高周波ノイズが発生する。また、従来から電動弁などの電動機器のオンオフ制御に利用されているコンタクタも、周波数が高く、振幅の大きなノイズ電流を発生することが知られている。このような背景により、原子力発電プラント内の電磁ノイズのバックグランドレベルが高くなってきている。
【0003】
一方、原子力発電プラント内には、種々の微弱信号を計測する手段が設けられている。例えば、中性子計装システムは、原子炉に燃料が装荷されている全期間において、原子炉内の中性子束及び出力を計測できるようにするために、中性子源領域モニタ、中間領域モニタ、出力領域モニタ用の3種類の中性子検出器を設置して、これら中性子検出器からの非常に微弱な信号を扱っている。特に、原子炉内の出力を監視する核計装システムのうち定期検査中などの停止時及び起動時に使用する中性子源領域モニタは、1μA以下の微弱信号を扱っているため、高周波ノイズの影響を受けやすい。なお、最近では、中性子源領域モニタ、及び中間領域モニタを一体化した起動領域中性子モニタが用いられている。このような核計装システムは、原子炉安全保護系に指示値を出力するため、万一、その中性子検出器からの信号にノイズが重畳されると、誤警報や誤スクラムを引き起こす可能性がある。
【0004】
そこで、ノイズの発生源や侵入箇所を特定し、原子炉出力制御系に与える影響を回避できるようにするため、中性子検出器の信号ケーブルを格納する金属製電線管に複数個の電流プローブを設け、この電流プローブによって電線管に流れる電流を検出して、格納された同軸ケーブルに侵入する電気的ノイズの大きさと位置を検出する起動領域モニタシステム用ノイズ監視システムが開示されている。(例えば、特許文献1参照。)。
【0005】
【特許文献1】特開2006−258729号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年、既設の電源設備を高効率のインバータに更新する等の工事がさまざまなプラントで実施されている。その際、インバータなどの新しい設備を稼動する前に、この設備が与えるノイズ影響を確認しておくことは、例えば、核計装システムのような微弱信号システムを有する原子力発電プラントなどではとりわけ重要である。
【0007】
このため、最も簡単な方法として、実際にインバータ等の設備を運転し、そのノイズ影響を例えば、特許文献1に示されたノイズ監視システムを使って測定する方法が考えられる。
【0008】
しかし、このノイズ監視システムは、起動領域モニタシステムの中性子検出器の信号ケーブルを格納する金属製電線管に流れる電流を検出して、電磁ノイズによる誘導を受けた位置とその大きさを特定するものである。よって、実際のプラント内において、例えばインバータ等の特定の機器から発生する電磁ノイズが、起動領域モニタシステムの計測信号や制御信号に及ぼす影響を、このノイズ監視システムによって評価することは困難である。
【0009】
その理由は、特定機器から発生するノイズが、対象とする計測系や制御系に及ぼす影響を評価するためには、対象とする計測系や制御系ケーブルに誘導されたノイズの観測波形から、特定機器の影響を分離する必要があるが、以下の理由によりその影響を分離することができないからである。
(1)プラント内には、種々の高周波数ノイズ源が存在し、これらが対象とする計測系や制御系にバックグランドノイズを誘導しているため、特定機器からのノイズと区別することが難しい。他のノイズ源と区別できるように、本来の運転条件よりも大きなノイズを発生するような運転をすることができれば、この特定機器の影響を分離しやすくなるが、通常はそのような運転は不可能である。
(2)対象とする計測系や制御系に現れるノイズ波形が、もともと特定機器が発生する電磁ノイズ波形と大きく異なっている。図13に、インバータ電源の動力ケーブルに生じたノイズ電流波形Aと、近傍に敷設された中性子計装系ケーブルに誘導されたノイズ電流波形Bの比較の一例を示す。このように、計測系や制御系に誘導されるノイズ電流は、通常、浮遊容量や相互インダクタンスを介して伝搬するため、ノイズ源で発生したもののうち高周波成分が伝わり易くなっている。
【0010】
つまり、対象とする計測系や制御系に生じたノイズの波形を観測し、あるいは周波数特性を利用しても、特定機器からの電磁ノイズの寄与分を抽出することが出来ない。
【0011】
本発明は上述の事項に基づいてなされたもので、その目的は、インバータなど特定の機器が、実プラントに据え付けられた状態で発生するノイズの影響を、事前に簡便に評価することのできる評価装置および評価方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
(1)上記目的を達成するために、本発明は、原子力発電プラント内に設置された電動機システムによる計装システムへのノイズの影響を評価する電動機システムの影響評価装置において、前記電動機システムの動力ケーブルに、外部から高周波数のコモンモード電流を注入する電流注入手段と、前記電流注入手段に予め定めたパターンに従って高周波数の電流を供給する信号波発生装置と、前記動力ケーブルに流れる第1のコモンモード電流を計測する第1の電流測定手段と、前記第1のコモンモード電流により、前記原子力発電プラント内の計装システムの信号ケーブルまたは制御ケーブルまたは接地線の少なくとも1箇所に誘起された第2のコモンモード電流を計測する第2の電流測定手段と、前記第1の電流測定手段と前記第2の電流測定手段とで測定された各電流値が入力され、これらの測定電流値に基づいてコモンモード電流の伝達率を算出する伝達率算出装置とを備えたものとする。
【0013】
(2)上記(1)において、好ましくは、前記信号波発生装置は、周期的に変化する電流を発生する信号発生手段と、前記周期的に変化する電流の電流注入手段への出力又は停止を行う開閉手段と、前記周期的に変化する電流の出力パターンを記憶する記憶手段と、前記記憶手段に記憶した出力パターンを取込む第1の手順と、前記第1の手順で取込んだ出力パターンに基づいて、前記開閉手段の開閉を制御する第2の手順とを実行する制御手段とを備え、前記周期的に変化する電流を予め定めたパターンに従って、前記電流注入手段へ出力または停止するものとする。
【0014】
(3)上記(1)において、好ましくは、前記信号波発生装置は、周期的に変化する電流を発生する信号発生手段と、前記周期的に変化する電流の電流注入手段への出力又は停止を行う開閉手段と、前記周期的に変化する電流の振幅を複数のレベルで変化させた出力パターンを記憶する記憶手段と、前記記憶手段に記憶した出力パターンを取込む第1の手順と、前記第1の手順で取込んだ出力パターンに基づいて、前記信号発生手段の周期的に変化する電流の振幅、及び前記開閉手段の開閉を制御する第2の手順とを実行する制御手段とを備え、前記電流注入手段へ供給する電流の出力時の振幅は、予め定めたパターンに従って複数のレベルで変化するものとする。
【0015】
(4)上記(2)又は(3)において、好ましくは、前記周期的に変化する電流として、正弦波電流を用いるものとする。
【0016】
(5)上記(1)乃至(4)のいずれかにおいて、好ましくは、前記伝達率算出装置は、前記第1の電流測定手段と前記第2の電流測定手段とで測定された第1及び第2のコモンモード電流値が入力されるバンドパスフィルタと、前記信号波発生装置から入力された前記電流注入手段に供給する電流の周波数を取込む第1の手順と、前記第1の手順で取り込んだ周波数と同じ値に、前記各バンドパスフィルタの通過帯域を設定する第2の手順とを実行する制御装置と、前記バンドパスフィルタを通過後の電流値に基づいてコモンモード電流の伝達率を算出する演算装置とを備えるものとする。
【0017】
(6)上記(1)乃至(5)のいずれかにおいて、好ましくは、前記伝達率算出装置は、前記入力された第1及び第2のコモンモード電流値、又は前記バンドパスフィルタ通過後の電流値が格納される記憶装置と、前記第1及び第2のコモンモード電流値の入力と同時に、前記開閉手段の開閉信号と、前記電流注入手段に供給する電流の振幅及び周波数の信号とを取込む第1の手順と、同時に入力された前記第1及び第2のコモンモード電流値と前記第1の手順で取込んだ状態信号とを関連付けてデータ化する第2の手順と、前記第2の手順で関連付けたデータを前記記憶装置に出力して格納させる第3の手順とを実行する制御装置と、前記記憶装置に格納された情報から、前記コモンモード電流が停止している期間、前記コモンモード電流が出力されている期間、及び前記コモンモード電流が出力されている期間において振幅が複数のレベルで変化する場合には各振幅に対応した期間を決定する出力期間決定手段と、前記コモンモード電流が停止している期間の前記第1及び第2のコモンモード電流値、および前記コモンモード電流が出力されている期間において振幅が複数のレベルで変化する場合の各振幅に対応した期間の前記第1及び第2のコモンモード電流値に基づいて、コモンモード電流の伝達率を算出する演算装置とを備えるものとする。
【0018】
(7)上記(6)において、好ましくは、前記伝達率算出装置は、前記入力された第1及び第2のコモンモード電流値、又は前記バンドパスフィルタ通過後の電流値を実効値データに変換する実効値演算装置と、前記変換された第1及び第2のコモンモード電流の実効値データがさらに格納される記憶装置と、前記記憶装置に格納された情報から、前記出力期間決定手段により決定された前記コモンモード電流が停止している期間および前記コモンモード電流が出力されている期間において振幅が複数のレベルで変化する場合の各振幅に対応した期間ごとに、前記第1のコモンモード電流の実効値と前記第2のコモンモード電流の実効値とを対応する期間の実効値データを時間平均して算出する実効値算出手段と、前記コモンモード電流が出力されている期間において振幅が複数のレベルで変化する場合の各振幅に対応した期間の前記第2のコモンモード電流の実効値と、前記出力が停止している期間の前記第2のコモンモード電流の実効値との差の値を、前記コモンモード電流が出力されている期間において振幅が複数のレベルで変化する場合の各振幅に対応した期間の前記第1のコモンモード電流の実効値と、前記出力が停止している期間の前記第1のコモンモード電流の実効値との差の値で除算することで、前記コモンモード電流の伝達率を算出する演算装置とを備えるものとする。
【0019】
(8)上記(6)又は(7)において、好ましくは、前記伝達率算出装置は、前記第1の電流測定手段と前記第2の電流測定手段とで測定された第1及び第2のコモンモード電流値が入力されるバンドパスフィルタと、前記バンドパスフィルタを通過した第1及び第2のコモンモード電流値を実効値データに変換する実効値演算装置と、前記変換された第1及び第2のコモンモード電流の実効値データがさらに格納される記憶装置と、前記コモンモード電流が停止している期間の前記第2のコモンモード電流の周波数特性を演算する第1の手順と、前記第1の手順の演算結果から、電流振幅の小さい周波数を決定する第2の手順と、前記第2の手順で決定された周波数の値を前記信号波発生装置に送信する第3の手順を実行するバックグランド解析部とを備え、前記信号波発生装置は、前記伝達率算出装置から送信された周波数の値を記憶する記憶手段と、前記記憶手段に記憶した周波数の値を取込む第1の手順と、前記第1の手順で取込んだ周波数の値に基づいて、前記信号発生手段の周期的に変化する電流の周波数を制御する第2の手順とを実行する制御手段とを備え、前記伝達率算出装置から送信された周波数の値の電流を前記電流注入器に供給するものとする。
【0020】
(9)上記目的を達成するために、本発明は、原子力発電プラント内に設置された電動機システムによる計装システムへのノイズの影響を評価する電動機システムの影響評価方法において、前記電動機システムの動力ケーブルに、電流注入手段によって外部から予め定めたパターンに従って高周波数のコモンモード電流を注入するステップと、前記動力ケーブルに設けた第1の電流測定手段によって、前記動力ケーブルに流れる第1のコモンモード電流を計測するステップと、前記原子力発電プラント内の計装システムの信号ケーブルまたは制御ケーブルまたは接地線の少なくとも1箇所に設けた第2の電流測定手段によって、前記第1のコモンモード電流により誘起された第2のコモンモード電流を計測するステップと、伝達率算出装置によって、前記第1のコモンモード電流値と前記第2のコモンモード電流値とに基づきコモンモード電流の伝達率を算出するステップとを備えるものとする。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、既知のパターンに従って、動力ケーブルにノイズが印加されている期間と印加されていない期間のデータをそれぞれ分離して得ることができ、両者の差から印加されているノイズの影響のみを抽出することができる。このことにより、特定の機器からの電磁ノイズの寄与分を抽出することが出来る。この結果、インバータなどの設備が、例えば、核計装システムのような微弱信号システムに与える影響を事前に簡易な設備で容易に評価することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下に、本発明のプラント内電動機システムの影響評価装置の実施の形態を図面を用いて説明する。
【0023】
図1は、本発明のプラント内電動機システムの影響評価装置の一実施の形態を備えたシステム構成を示す概念図である。この図1において、原子力発電プラント内には、原子炉圧力容器1と、原子炉圧力容器1内に挿入された核計装管2と、核計装管2に収納され、原子炉圧力容器1内の熱中性子によって微弱電流を発生させる中性子検出器3と、この中性子検出器3からの微弱電流信号を前置増幅器5に伝送する核計装ケーブル4と、前置増幅器5の出力信号が核計装ケーブル4により伝送される中性子監視装置6とからなる核計装システムが備えられている。このように、核計装システムは微弱信号を用いて原子炉圧力容器1内の中性子を計測している。そこで、他の動力機器等からのノイズの影響を受けにくくすることを目的として、中性子監視装置6が接地線7により接地幹線8へ一点で接地されている。
【0024】
また、原子力発電プラント内には、電動機9と、出力フィルタ10と、インバータ電源11とからなる電動機システムが備えられている。この電動機システムにおいては、電動機9及びインバータ電源11が、それぞれ接地線7,7により接地幹線8に接続されており、この電動機9とインバータ電源11を接続する動力ケーブル22と、接地幹線8と、接地線7,7とによって、大きなループが形成される。このループに例えば上述したインバータ電源で発生した高周波ノイズ電流がコモンモード電流(第1のコモンモード電流)として流れる。本発明における、第1のコモンモード電流とは、電動機9とインバータ電源11を接続する動力ケーブル22と、接地幹線8と、接地線7,7とによって形成されたループに流れるノイズ電流を意味する。
【0025】
この第1のコモンモード電流は、ケーブル間の電磁誘導または共通の接地幹線を経由して、僅かではあるが、核計装システムに伝搬され、核計装システムにコモンモード電流(第2のコモンモード電流)を生じさせる。本発明における、第2のコモンモード電流とは、第1のコモンモード電流により生じ、計装システムの信号ケーブルまたは制御ケーブルと、接地線7と、接地幹線8との間で構成されるループに流れるノイズ電流を意味する。
【0026】
本発明の影響評価装置12は、電動機の動力ケーブル22に模擬ノイズ電流である第1のコモンモード電流を注入する電流注入手段としての電流注入器13と、電流注入器13に高周波数のノイズ電流を印加する信号波発生装置14と、電流注入器13によって動力ケーブル22に注入された第1のコモンモード電流を測定する第1の電流測定手段としての第1の電流測定器15と、第1のコモンモード電流により、核計装ケーブル4、又は接地線7に誘導された第2のコモンモード電流を測定する第2の電流測定手段としての第2の電流測定器16と、第1および第2のコモンモード電流の測定値に基づき、ノイズの伝達率を算出する伝達率算出装置17とにより構成される。
【0027】
電流注入器13は、動力ケーブル22に信号波発生装置14から印加された高周波数のノイズ電流を注入するものであり、大略リング状に形成されている。具体的には、フェライト製であって、結合するとリング状になるプローブ本体と、プローブ本体に巻かれたコイル(図示せず)と、コイルと信号波発生装置14とを接続するリードケーブルとで構成され、プローブ本体に動力ケーブル22が挿通するように動力ケーブルに配置されている。ここで、電流注入器13は、電磁誘導により、印加された高周波数の信号に応じた高周波数のノイズ電流を動力ケーブル22に注入する。
【0028】
第1及び第2の電流測定器15、16は、上述した動力ケーブル22、核計装ケーブル4、又は接地線7の電流を測定するものであり、大略リング状に形成されている。具体的には、フェライト製であって、結合するとリング状になるプローブ本体と、プローブ本体に巻かれたコイル(図示せず)と、コイルと伝達率算出装置17とを接続するリードケーブルとで構成され、プローブ本体に上述した各ケーブル4、22がそれぞれ挿通するように各ケーブル4、22に配置されている。
【0029】
図2は、本発明のプラント内電動機システムの影響評価装置の一実施の形態を構成する信号波発生装置14の機能ブロック図である。図2において、図1に示す記号と同符号のものは同一部分である。信号波発生装置14は、任意の周波数の正弦波などの周期的に変化する信号波を生成する信号発生手段としての信号発生器18と、信号発生器18で生成された信号波の外部への出力又は停止をその開閉で行う開閉手段としてのSSR(ソリッドステートリレー)23と、信号波を停止または出力するパターン及び信号波の周波数と振幅を予め入力する入出力インターフェース20と、前記入力結果を格納する記憶手段としての第1の記憶装置21と、記憶装置21に格納されたデータを取込むとともに、このデータに基づいてSSR23の開閉、及び信号発生器18で生成する信号波の振幅と周波数を制御する制御手段としての制御装置19とにより構成されている。
【0030】
信号波発生装置14で生成した信号波を電流注入器13に印加するために、SSR23の出力端と電流注入器13とは、リードケーブルにより接続される(図1参照)。また、SSR23の開閉、及び電流注入器13に印加しているノイズ電流の周波数と振幅の信号は、制御装置19から、例えばシリアル通信などの伝送路を介して伝達率算出装置17に送信される。
【0031】
図3は、本発明のプラント内電動機システムの影響評価装置の一実施の形態を構成する伝達率算出装置17の機能ブロック図である。図3において、図1に示す記号と同符号のものは同一部分である。伝達率算出装置17は、測定された第1及び第2のコモンモード電流が入力され、設定された周波数帯域の信号を通過させるバンドパスフィルタ24,24と、バンドパスフィルタを通過した電流値をディジタル値に変換するA/D変換回路26,26と、このディジタル値を実効値データに変換する実効値演算装置27,27と、バンドパスフィルタ24,24の通過帯域を入力されたノイズ電流の周波数に設定するとともに、このとき、バンドパスフィルタ24,24を通過していく電流値データが、SSR23開(電流停止)/閉(電流出力)のどちらのデータであるのか、およびノイズ電流の周波数と振幅の値を第2の記憶装置28に送信する制御装置25と、実効値データとともに、SSRの開閉データとノイズ電流の周波数/振幅データが格納される第2の記憶装置28と、第2の記憶装置28に格納された情報に基づいて第1と第2のコモンモード電流の伝達率を算出する演算装置としての演算回路29と、算出した伝達率と各コモンモード電流の周波数/振幅値とを格納する第3の記憶装置30と、第3の記憶装置30に格納された周波数/振幅値および伝達率を1組にして表示する表示装置31とにより構成されている。
【0032】
演算回路29は、第2の記憶装置28に格納された情報に基づいて、第1のコモンモード電流の測定値から電流が停止している期間、電流が出力されている期間、及び電流が出力されている期間において振幅が複数のレベルで変化する場合には各振幅に対応した期間を決定する出力期間決定手段と、この出力期間決定手段によって決定された期間ごとに、第1と第2のコモンモード電流の実効値を対応する期間の実効値データを時間平均して算出する実効値算出手段とを備えている。
【0033】
第1および第2のコモンモード電流の測定値を伝達率算出装置17に取り込むために、第1及び第2の電流測定器15、16の出力端と伝達率算出装置17とは、リードケーブルによりそれぞれ接続されている(図1参照)。また、SSR23の開閉、及び電流注入器13に印加しているノイズ電流の周波数と振幅の信号は、信号波発生装置14から、制御装置25に入力される。
【0034】
次に、上述した本発明のプラント内電動機システムの影響評価装置の一実施の形態の動作を図1乃至図3を用いて説明する。
【0035】
まず、利用者が図2に示す信号波発生装置14の入出力インターフェース20を介して動力ケーブル22に注入するノイズ電流の出力停止パターン、及び周波数と振幅パターンを入力する。この入力結果は、信号波発生装置14の第1の記憶装置21に格納される。
【0036】
次に、信号波発生装置14の制御装置19からの読み取り指令により、前記動力ケーブル22に注入するノイズ電流の出力停止パターン、及び周波数と振幅パターンが制御装置19に取込まれる。制御装置19は、信号発生器18の生成すべきノイズ電流の周波数と振幅を取込んだ値に設定するとともに、取込んだノイズ電流の出力停止パターンになるようにSSR23の開閉を制御する。信号波発生装置14から出力されたノイズ電流は、電流注入器13に印加される。このことにより、予め定めたパターンに従ったコモンモード電流を動力ケーブル22に注入することができる。また、信号波発生装置14の制御装置19は、SSRへの開閉信号と周波数及び振幅信号とを伝達率算出装置17へ出力する。
【0037】
信号波発生装置14により電流注入器13に電流が印加されると、図1に示す電動機9の動力ケーブル22と核計装ケーブル4に第1および第2のコモンモード電流がそれぞれ発生する。2つのコモンモード電流は、第1及び第2の電流測定器15、16により測定され、これらの電流測定値が伝達率算出装置出装置17に入力される。
【0038】
伝達率算出装置17では、図3に示すように、これらの電流測定値をバンドパスフィルタ24,24にそれぞれ入力させる。同時に、信号波発生装置14からのSSRへの開閉信号と周波数及び振幅信号のデータを制御装置25に入力させる。制御装置25は、バンドパスフィルタ24,24の通過帯域を信号波発生装置14から送信されてきた周波数に設定するとともに、このとき、バンドパスフィルタ24,24を通過していく電流値データが、SSR23の開(電流停止)/閉(電流出力)のどちらのデータであるのか、および電流注入器13に印加している電流の周波数と振幅の値を第2の記憶装置28に格納する。
【0039】
バンドパスフィルタ24,24を通過した各電流値は、A/D変換回路26,26によりディジタル値に変換され、実効値演算装置27,27にて実効値データに変換される。この実効値データは、SSR23の開閉データおよび周波数/振幅データとともに第2の記憶装置28に格納される。
【0040】
演算回路29は、第2の記憶装置28に格納された情報に基づいて、前記実効値算出手段等を用いて第1と第2のコモンモード電流の伝達率を算出する。具体的には、第2の記憶装置28に格納された第2のコモンモード電流のうち、周波数と振幅が同じで、かつSSR23が開の場合と閉の場合の2つのデータを対にして抽出し、SSR23閉のときの実効値データとSSR23開のときの実効値データの差をとることにより、第1のコモンモード電流による第2のコモンモード電流への実質的な影響(これを補正後の第2のコモンモード電流実効値と呼ぶ)を算出する。同様に、第1のコモンモード電流のうち、周波数と振幅が同じで、かつSSR23が開の場合と閉の場合の2つの実効値データの差を算出し、実質的な第1のコモンモード電流の大きさ(これを補正後の第1のコモンモード電流実効値と呼ぶ)を評価する。
【0041】
そして、補正後の第2のコモンモード電流実効値を補正後の第1のコモンモード電流実効値で割ることにより伝達率を算出する。算出した伝達率は、周波数および振幅値とともに第3の記憶装置30に格納される。
【0042】
表示装置31は、第3の記憶装置30に格納された周波数、振幅値および伝達率を1組にして表示する。
【0043】
なお、ここではSSR23が閉の場合のコモンモード電流実効値からSSR開の場合のコモンモード電流実効値を減ずることでバックグランドの影響を除外しているが、バックグランドノイズが本来の影響とは独立であることを仮定して実効値の2乗差の平方根をとる方法など、評価精度を向上するために別なバックグランドの除去手法を用いてもよい。
【0044】
本発明のプラント内電動機システムの影響評価装置の一実施の形態によれば、既知のパターンに従って、動力ケーブルにノイズが印加されている期間と印加されていない期間のデータをそれぞれ分離して得ることができ、両者の差から印加されているノイズの影響のみを抽出することができる。
【0045】
このことにより、特定の機器からの電磁ノイズの寄与分を抽出することが出来る。この結果、インバータなどの設備が、例えば、核計装システムのような微弱信号システムに与える影響を事前に把握しておくことができる。
【0046】
また、実際に特定の機器を運転してノイズを印加するのではなく、機器が対象とする計測系や制御系に影響を与えるコモンモードノイズの伝搬経路と同じ経路に、信号波発生装置からの模擬的なコモンモードノイズを印加することで、実際に機器を運転する場合に比べてはるかに小さな電力で同等のノイズを発生させることができる。
【0047】
さらに、実機よりも大きなノイズを発生することも可能となり、他のノイズ源と区別できるようになることから、この特定機器のノイズの影響の抽出が容易となる。以上より、電動機システムが計測系や制御系などに及ぼすノイズの影響を簡易な設備で容易に評価することができる。
【0048】
次に、本発明のプラント内電動機システムの影響評価装置の一実施の形態に用いる電流注入器13へ印加する電流波形の種類とその効果について、図4乃至図9に基づいて説明する。
【0049】
図4は、本発明のプラント内電動機システムの影響評価装置の一実施の形態に用いる電流注入器13へ印加する電流波形の第1例の説明図である。図4において、信号発生器18から出力される信号は周波数100kHzの正弦波(図4の上段の波形)であり、この一定振幅の正弦波がSSR23の開閉操作により100マイクロ秒間出力された後、100マイクロ秒間停止するパターンを繰り返す。制御装置19は、正弦波の周波数100kHzと、振幅1.0(相対値)と、当該時刻での開閉信号値(1.0または0.0)(図4の下段の信号)を伝達率算出装置17へ送信する。このように、正弦波信号を送信することにより、単一の周波数に限定したコモンモード電流の伝達率を算出することができる。
【0050】
図5は、本発明のプラント内電動機システムの影響評価装置の一実施の形態に用いる電流注入器13へ印加する電流波形の第2例の説明図である。図5は、信号波発生装置14から印加する電流波形の別な例を示したものである。信号発生器18から出力される信号は、周波数は第1例と同じ100kHz(図5の上段の波形)であるが、振幅は、図5の振幅信号(図5の下段の信号)に示すように、開閉信号(図5の中段の信号)が1.0となる100マイクロ秒間のうち、最初の50マイクロ秒間は振幅信号が0.5(相対値)で、その後の50マイクロ秒間は1.0(相対値)に変化する。このように、印加する電流振幅を複数変化させることにより、より小さい振幅やより大きい振幅によるノイズ影響の推定精度を向上することができる。
【0051】
図6は、本発明のプラント内電動機システムの影響評価装置の一実施の形態に用いる電流注入器13へ印加する電流波形の第3例の説明図である。図6は、信号波発生装置14から印加する電流波形として矩形波(図6の上段の波形)を用いた例である。第1例と同様の周期、振幅およびSSR23開閉タイミング(図6の下段の信号)を使用しているが、信号発生器18から発生する波形として矩形波を用いることにより、広い周波数成分がふくまれ、比較的影響の大きな周波数成分とその影響度を比較的容易に把握することができる。
【0052】
図7は、本発明のプラント内電動機システムの影響評価装置の一実施の形態に用いる電流注入器13へ印加する電流波形の第4例の説明図である。図7は、信号波発生装置14から印加する電流波形(図7の上段の波形)として、実際に電動機が発生するノイズ波形をサンプリングして使用する例である。信号波発生装置14において、信号発生器18に換えて、例えば特定の波形データの格納及び出力が可能な関数発生器を用いることにより可能となる。振幅を変化させることで、出力を増大した場合の影響を直接的に評価することが出来るという利点がある。
【0053】
図8は、本発明のプラント内電動機システムの影響評価装置の一実施の形態に用いる電流注入器13へ印加する電流波形の第5例の説明図である。図8は、図5に示した第2例の電流波形に対して、電流の振幅レベルが変化する時刻(または出力/停止が切り替わる時刻)に0.5マイクロ秒程度の間隔の狭いパルス波(図8の上段の波形)を追加した例である。信号波発生装置14から電動機の動力ケーブル22、核計装ケーブル4、第2の電流測定器16を介して伝達率算出装置17で印加電流が受信されるまでには時間的な遅れが生じるため、このようなパルス波の受信時刻により精密に各振幅レベルに対応した期間を決定することは、伝達率の算出精度の向上に有効である。
【0054】
図9は、本発明のプラント内電動機システムの影響評価装置の一実施の形態に用いる電流注入器13へ印加する電流波形の周波数を掃引するための指定表図である。図9で示されたデータを図2で示す信号波発生装置14の第1の記憶装置21に格納する。制御装置19は、No.1の10kHzから順番に読み込んでいき、信号発生器18の周波数を順次指定の値に変えていく。No.500の5MHzの正弦波電流の印加が完了した後、制御装置19は信号発生器18への振幅信号を0.0として測定を完了する。これにより、図3で示す伝達率算出装置17の表示装置31に指定した周波数とその時のコモンモード電流の伝達率が周波数毎に表示される。つまり、コモンモード電流伝達率に対する周波数特性が測定できる。この結果、当該ノイズの周波数に対応した効果的な対策が容易に行える。
【0055】
次に、本発明のプラント内電動機システムの影響評価装置の第2の実施の形態を図10を用いて説明する。図10は、本発明のプラント内電動機システムの影響評価装置の第2の実施の形態を構成する伝達率算出装置17の機能ブロック図である。なお、以下の説明において、上述した本発明の一実施の形態と同じ構成要素には同一の符合を付し、その部分の説明を省略する。
【0056】
図10において、伝達率算出装置17は、バックグランドモードを指定するバックグランドモードスイッチ32と、バンドパスフィルタ24,24の通過帯域を予め定められた周波数に順次変更するとともに、バックグランドモード信号を演算回路29に送信するバックグランド解析部33と、各周波数に対する第2のコモンモード電流の実効値を第3の記憶装置30に格納する演算回路29と、周波数毎の第2のコモンモード電流、及び第2のコモンモード電流値が最少となる周波数を合わせて表示する表示装置31と、印加したいノイズ電流の周波数値を指定する入出力インターフェース35と、指定された周波数値を信号波発生装置14に送信する周波数指定装置34とを有している。
【0057】
次に、上述した本発明のプラント内電動機システムの影響評価装置の第2の実施の形態の動作を図1、図2及び図10を用いて説明する。
【0058】
まず、利用者がバックグランドモードスイッチ32を介してバックグランドモードを指定する。バックグランドモードが指定されると、制御装置25に内蔵されたバックグランド解析部33が、予め定められた下限、上限、間隔に従って、バンドパスフィルタ24,24の通過帯域を順次変更するとともに、このとき、バンドパスフィルタ24,24を通過していく電流値データの通過周波数の値を第2の記憶装置28に格納する。同時に、バックグランド解析部33は、演算回路29に対してバックグランドモード信号を送信する。
【0059】
次に、バックグランドモード信号を受信した演算回路29は、第2の記憶装置28に格納された情報を取り出し、各周波数に対する第2のコモンモード電流の実効値を第3の記憶装置30に格納する。
【0060】
表示装置31は、第3の記憶装置30に格納されたデータから、周波数毎の第2のコモンモード電流の他に、第2のコモンモード電流値が最小となる周波数を合わせて表示する。
【0061】
利用者は、表示された結果から試験したい周波数を選択し、入出力インターフェース35を介して印加したいノイズ電流の周波数値を入力する。この入力結果は、周波数指定装置34に入力され、周波数指定装置34は指定された周波数値を信号波発生装置14に送信する。
【0062】
信号波発生装置14は、図2中の入出力インターフェース20で周波数を受信し、この周波数を第1の記憶装置21に格納する。制御装置19が、第1の記憶装置21からこの周波数値を取り込み制御することにより、指定した周波数の電流を電流注入器13に印加する。
【0063】
上述した、本発明のプラント内電動機システムの影響評価装置の第2の実施の形態によれば、バックグランド解析を行うことにより、バックグランドノイズレベルが小さい周波数帯域を把握することができる。その結果、これらの周波数帯域から選択した周波数のコモンモード電流を動力ケーブルに注入することができる。つまり、他のノイズ源からのノイズ(バックグランドノイズ)と区別が容易につくノイズで、影響評価が実施できることになる。バックグランドノイズの影響が低減された周波数帯域で、コモンモード電流の伝達率を算出することができるため、伝達率算出装置17の評価精度を向上させることができる。
【0064】
次に、本発明のプラント内電動機システムの影響評価装置の第3の実施の形態を図11を用いて説明する。図11は、本発明のプラント内電動機システムの影響評価装置の第3の実施の形態を構成する伝達率算出装置17の機能ブロック図である。なお、以下の説明において、上述した本発明の実施の形態と同じ構成要素には同一の符合を付し、その部分の説明を省略する。
【0065】
図11において、伝達率算出装置17は、予め別途評価された第1と第2のコモンモード電流の各上限値が格納された第4の記憶装置36と、算出した振幅設定値を第3の記憶装置31に格納し、振幅信号発生部37に送信する演算回路29と、受信した振幅信号を信号波発生装置14に送信する振幅信号発生部37とを有している。
【0066】
次に、上述した本発明のプラント内電動機システムの影響評価装置の第3の実施の形態の動作を図1、図2及び図11を用いて説明する。
【0067】
まず、核計装系に影響を与えないために、予め別途評価しておいた第2のコモンモード電流の上限値を第4の記憶装置36に格納しておく。ここでいう核計装系に影響を与えない第2のコモンモード電流の上限値とは、例えば、核計装系の指示値に誤警報や誤スクラムの発生等の実質的な影響を与えない第2のコモンモード電流の最大値を意味する。
【0068】
次に、演算回路29は、第1のコモンモード電流と第2のコモンモード電流の実効値の比を求めるとともに、第4の記憶装置36から第2のコモンモード電流の上限値を取込み、この第2のコモンモード電流の上限値に前記の実効値の比を乗じることで振幅設定値Lを算出する。振幅設定値Lは次式で求められる。
L=(IC1/IC2)×IC2max・・・・(1)
ここで、IC1は第1のコモンモード電流値、IC2は第2のコモンモード電流値、IC2maxは第2のコモンモード電流上限値である。
【0069】
また、演算回路29は、算出した振幅設定値Lを第3の記憶装置30に格納して表示装置31で表示させるとともに、振幅信号発生部37に送信する。
【0070】
振幅信号を受信した振幅信号発生部37は、振幅信号を信号波発生装置14に送信する。信号波発生装置14は、図2中の入出力インターフェース20で振幅信号を受信し、この振幅を第1の記憶装置21に格納する。制御装置19が、第1の記憶装置21からこの振幅値を取り込み制御することにより、指定した振幅の電流を電流注入器13に印加する。
【0071】
さらに、伝達率算出装置17においては、電動機に応じて予め別途評価しておいた最大発生電流、すなわち、第1のコモンモード電流に対する上限値を第4の記憶装置36に格納しておく。
【0072】
次に、演算回路29は、第1のコモンモード電流の実効値と、第2のコモンモード電流の実効値と、第4の記憶装置36から取り込んだ第2のコモンモード電流の上限値と第1のコモンモード電流の上限値とを使用して、第1のコモンモード電流が上限値となった場合の第2のコモンモード電流、すなわち、最大ノイズ影響を算出する。また、第2のコモンモード電流上限値に対する第2のコモンモード電流の割合、すなわち、ノイズマージンを算出する。最大ノイズ影響NEとノイズマージンNMは次式で求められる。
NE=(IC2/IC1)×IC1max・・・・(2)
NM=NE/IC2max ・・・・(3)
ここで、IC1は第1のコモンモード電流値、IC2は第2のコモンモード電流値、IC1maxは第1のコモンモード電流上限値、IC2maxは第2のコモンモード電流上限値である。
【0073】
また、演算回路29は、算出した最大ノイズ影響NEとノイズマージンNMを第3の記憶装置30に格納して表示装置31で表示させる。
【0074】
本発明のプラント内電動機システムの影響評価装置の第3の実施の形態によれば、核計装系の指示値に誤警報や誤スクラムの発生などの実質的な影響を与えない範囲で、信号波発生装置14の出力電流値を極力大きく設定することができる。このことにより、ノイズの影響を精度よく評価することができる。
【0075】
また、表示装置31の表示から以下の値を精度よく把握することができる。すなわち表示装置31に表示された振幅設定値Lによって、核計装系の指示値に実質的な影響を与えない範囲で印加できる信号波発生装置14の最大電流値が把握できる。
また、表示装置31に表示された最大ノイズ影響NEによって、実際の機器の動作により想定される最大ノイズ電流が流れた場合、核計装系に発生する第2のコモンモード電流の値が把握できる。
さらに、表示装置31に表示されたノイズマージンNMによって、実際の機器の動作により想定される最大ノイズ電流が流れた場合、核計装系に発生する第2のコモンモード電流が、核計装系の指示値に誤警報や誤スクラムの発生などの実質的な影響を与えるまでの余裕度が把握できる。
【0076】
さらに、算出された振幅設定値L、最大ノイズ影響NE、及びノイズマージンNMが、表示装置31に表示されることから、実際に測定した後の評価をその場で見ることができる。このことから、再度、評価のための測定等が必要となっても、容易、安全、かつ迅速に実施することができる。また、このことから、例えばノイズ対策などに要する期間も短くすることができる。
【0077】
次に、本発明のプラント内電動機システムの影響評価装置の第4の実施の形態を図12を用いて説明する。図12は、本発明のプラント内電動機システムの影響評価装置の第4の実施の形態を備えたシステム構成を示す概念図である。なお、以下の説明において上述した本発明の実施の形態と同じ構成要素には同一の符合を付し、その部分の説明を省略する。
【0078】
本実施の形態においては、第1及び第2の電流測定器15、16にそれぞれ無線送信端末38、38が接続されている。また、伝達率算出装置17には、無線受信端末39が接続されている。
【0079】
このように構成されたノイズ影響評価装置12では、例えば、第1のコモンモード電流を測定する位置と、第2のコモンモード電流を測定する位置が極端に離れている場合であって、プラント内でのケーブルの敷設が不可能な場合や困難な場合であっても、信号の授受が可能となることから、ノイズ影響評価装置12を稼働させることができる。
【0080】
なお、本発明においては、インバータ電源を備えた電動機システムにおいて説明したが、これに限らない。動力ケーブルと、接地線と接地幹線によりループが構成される電動機システムであればよい。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】本発明のプラント内電動機システムの影響評価装置の一実施の形態を備えたシステム構成を示す概念図である。
【図2】本発明のプラント内電動機システムの影響評価装置の一実施の形態を構成する信号波発生装置14の機能ブロック図である。
【図3】本発明のプラント内電動機システムの影響評価装置の一実施の形態を構成する伝達率算出装置17の機能ブロック図である。
【図4】本発明のプラント内電動機システムの影響評価装置の一実施の形態に用いる電流注入器13へ印加する電流波形の第1例の説明図である。
【図5】本発明のプラント内電動機システムの影響評価装置の一実施の形態に用いる電流注入器13へ印加する電流波形の第2例の説明図である。
【図6】本発明のプラント内電動機システムの影響評価装置の一実施の形態に用いる電流注入器13へ印加する電流波形の第3例の説明図である。
【図7】本発明のプラント内電動機システムの影響評価装置の一実施の形態に用いる電流注入器13へ印加する電流波形の第4例の説明図である。
【図8】本発明のプラント内電動機システムの影響評価装置の一実施の形態に用いる電流注入器13へ印加する電流波形の第5例の説明図である。
【図9】本発明のプラント内電動機システムの影響評価装置の一実施の形態に用いる電流注入器13へ印加する電流波形の周波数を掃引するための指定表図である。
【図10】本発明のプラント内電動機システムの影響評価装置の第2の実施の形態を構成する伝達率算出装置17の機能ブロック図である。
【図11】本発明のプラント内電動機システムの影響評価装置の第3の実施の形態を構成する伝達率算出装置17の機能ブロック図である。
【図12】本発明のプラント内電動機システムの影響評価装置の第4の実施の形態を備えたシステム構成を示す概念図である。
【図13】インバータ電源の動力ケーブルに生じたノイズ電流波形と、中性子計装系ケーブルに誘導されたノイズ電流波形との比較の一例を示す説明図である。
【符号の説明】
【0082】
1 原子炉圧力容器
2 核計装管
3 中性子検出器
4 核計装ケーブル
5 前置増幅器
6 中性子監視装置
7 接地線
8 接地幹線
9 電動機
10 出力フィルタ
11 インバータ電源
12 影響評価装置
13 電流注入器
14 信号波発生装置
15 第1の電流測定器
16 第2の電流測定器
17 伝達率算出装置
22 動力ケーブル
23 SSR(ソリッドステートリレー)
24 バンドパスフィルタ
27 実効値演算装置
33 バックグランド解析部
【技術分野】
【0001】
本発明は、原子力発電プラントに用いる電動機システム及び計測制御システムに係り、特に、ノイズの影響を評価する評価装置に関する。本発明はまた、ノイズの影響を評価する評価方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の原子力発電プラントでは、運転効率向上のために動力機器の電源としてインバータを用いる割合が高まりつつある。また、信頼性向上のため無停電電源装置も多数導入されるようになってきている。このような電源装置は、スイッチングと平滑化により所望の振幅、周波数の電圧を生成して、負荷に供給している。特に、最近のスイッチング素子は、効率向上のために、非常に高速にスイッチングすることができ、その結果生じる電磁ノイズは振幅が大きく、周波数が高くなる傾向がある。例えば、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)素子では、スイッチング時間が数百ナノ秒程度まで短くなっており、MHzオーダーの高周波ノイズが発生する。また、従来から電動弁などの電動機器のオンオフ制御に利用されているコンタクタも、周波数が高く、振幅の大きなノイズ電流を発生することが知られている。このような背景により、原子力発電プラント内の電磁ノイズのバックグランドレベルが高くなってきている。
【0003】
一方、原子力発電プラント内には、種々の微弱信号を計測する手段が設けられている。例えば、中性子計装システムは、原子炉に燃料が装荷されている全期間において、原子炉内の中性子束及び出力を計測できるようにするために、中性子源領域モニタ、中間領域モニタ、出力領域モニタ用の3種類の中性子検出器を設置して、これら中性子検出器からの非常に微弱な信号を扱っている。特に、原子炉内の出力を監視する核計装システムのうち定期検査中などの停止時及び起動時に使用する中性子源領域モニタは、1μA以下の微弱信号を扱っているため、高周波ノイズの影響を受けやすい。なお、最近では、中性子源領域モニタ、及び中間領域モニタを一体化した起動領域中性子モニタが用いられている。このような核計装システムは、原子炉安全保護系に指示値を出力するため、万一、その中性子検出器からの信号にノイズが重畳されると、誤警報や誤スクラムを引き起こす可能性がある。
【0004】
そこで、ノイズの発生源や侵入箇所を特定し、原子炉出力制御系に与える影響を回避できるようにするため、中性子検出器の信号ケーブルを格納する金属製電線管に複数個の電流プローブを設け、この電流プローブによって電線管に流れる電流を検出して、格納された同軸ケーブルに侵入する電気的ノイズの大きさと位置を検出する起動領域モニタシステム用ノイズ監視システムが開示されている。(例えば、特許文献1参照。)。
【0005】
【特許文献1】特開2006−258729号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年、既設の電源設備を高効率のインバータに更新する等の工事がさまざまなプラントで実施されている。その際、インバータなどの新しい設備を稼動する前に、この設備が与えるノイズ影響を確認しておくことは、例えば、核計装システムのような微弱信号システムを有する原子力発電プラントなどではとりわけ重要である。
【0007】
このため、最も簡単な方法として、実際にインバータ等の設備を運転し、そのノイズ影響を例えば、特許文献1に示されたノイズ監視システムを使って測定する方法が考えられる。
【0008】
しかし、このノイズ監視システムは、起動領域モニタシステムの中性子検出器の信号ケーブルを格納する金属製電線管に流れる電流を検出して、電磁ノイズによる誘導を受けた位置とその大きさを特定するものである。よって、実際のプラント内において、例えばインバータ等の特定の機器から発生する電磁ノイズが、起動領域モニタシステムの計測信号や制御信号に及ぼす影響を、このノイズ監視システムによって評価することは困難である。
【0009】
その理由は、特定機器から発生するノイズが、対象とする計測系や制御系に及ぼす影響を評価するためには、対象とする計測系や制御系ケーブルに誘導されたノイズの観測波形から、特定機器の影響を分離する必要があるが、以下の理由によりその影響を分離することができないからである。
(1)プラント内には、種々の高周波数ノイズ源が存在し、これらが対象とする計測系や制御系にバックグランドノイズを誘導しているため、特定機器からのノイズと区別することが難しい。他のノイズ源と区別できるように、本来の運転条件よりも大きなノイズを発生するような運転をすることができれば、この特定機器の影響を分離しやすくなるが、通常はそのような運転は不可能である。
(2)対象とする計測系や制御系に現れるノイズ波形が、もともと特定機器が発生する電磁ノイズ波形と大きく異なっている。図13に、インバータ電源の動力ケーブルに生じたノイズ電流波形Aと、近傍に敷設された中性子計装系ケーブルに誘導されたノイズ電流波形Bの比較の一例を示す。このように、計測系や制御系に誘導されるノイズ電流は、通常、浮遊容量や相互インダクタンスを介して伝搬するため、ノイズ源で発生したもののうち高周波成分が伝わり易くなっている。
【0010】
つまり、対象とする計測系や制御系に生じたノイズの波形を観測し、あるいは周波数特性を利用しても、特定機器からの電磁ノイズの寄与分を抽出することが出来ない。
【0011】
本発明は上述の事項に基づいてなされたもので、その目的は、インバータなど特定の機器が、実プラントに据え付けられた状態で発生するノイズの影響を、事前に簡便に評価することのできる評価装置および評価方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
(1)上記目的を達成するために、本発明は、原子力発電プラント内に設置された電動機システムによる計装システムへのノイズの影響を評価する電動機システムの影響評価装置において、前記電動機システムの動力ケーブルに、外部から高周波数のコモンモード電流を注入する電流注入手段と、前記電流注入手段に予め定めたパターンに従って高周波数の電流を供給する信号波発生装置と、前記動力ケーブルに流れる第1のコモンモード電流を計測する第1の電流測定手段と、前記第1のコモンモード電流により、前記原子力発電プラント内の計装システムの信号ケーブルまたは制御ケーブルまたは接地線の少なくとも1箇所に誘起された第2のコモンモード電流を計測する第2の電流測定手段と、前記第1の電流測定手段と前記第2の電流測定手段とで測定された各電流値が入力され、これらの測定電流値に基づいてコモンモード電流の伝達率を算出する伝達率算出装置とを備えたものとする。
【0013】
(2)上記(1)において、好ましくは、前記信号波発生装置は、周期的に変化する電流を発生する信号発生手段と、前記周期的に変化する電流の電流注入手段への出力又は停止を行う開閉手段と、前記周期的に変化する電流の出力パターンを記憶する記憶手段と、前記記憶手段に記憶した出力パターンを取込む第1の手順と、前記第1の手順で取込んだ出力パターンに基づいて、前記開閉手段の開閉を制御する第2の手順とを実行する制御手段とを備え、前記周期的に変化する電流を予め定めたパターンに従って、前記電流注入手段へ出力または停止するものとする。
【0014】
(3)上記(1)において、好ましくは、前記信号波発生装置は、周期的に変化する電流を発生する信号発生手段と、前記周期的に変化する電流の電流注入手段への出力又は停止を行う開閉手段と、前記周期的に変化する電流の振幅を複数のレベルで変化させた出力パターンを記憶する記憶手段と、前記記憶手段に記憶した出力パターンを取込む第1の手順と、前記第1の手順で取込んだ出力パターンに基づいて、前記信号発生手段の周期的に変化する電流の振幅、及び前記開閉手段の開閉を制御する第2の手順とを実行する制御手段とを備え、前記電流注入手段へ供給する電流の出力時の振幅は、予め定めたパターンに従って複数のレベルで変化するものとする。
【0015】
(4)上記(2)又は(3)において、好ましくは、前記周期的に変化する電流として、正弦波電流を用いるものとする。
【0016】
(5)上記(1)乃至(4)のいずれかにおいて、好ましくは、前記伝達率算出装置は、前記第1の電流測定手段と前記第2の電流測定手段とで測定された第1及び第2のコモンモード電流値が入力されるバンドパスフィルタと、前記信号波発生装置から入力された前記電流注入手段に供給する電流の周波数を取込む第1の手順と、前記第1の手順で取り込んだ周波数と同じ値に、前記各バンドパスフィルタの通過帯域を設定する第2の手順とを実行する制御装置と、前記バンドパスフィルタを通過後の電流値に基づいてコモンモード電流の伝達率を算出する演算装置とを備えるものとする。
【0017】
(6)上記(1)乃至(5)のいずれかにおいて、好ましくは、前記伝達率算出装置は、前記入力された第1及び第2のコモンモード電流値、又は前記バンドパスフィルタ通過後の電流値が格納される記憶装置と、前記第1及び第2のコモンモード電流値の入力と同時に、前記開閉手段の開閉信号と、前記電流注入手段に供給する電流の振幅及び周波数の信号とを取込む第1の手順と、同時に入力された前記第1及び第2のコモンモード電流値と前記第1の手順で取込んだ状態信号とを関連付けてデータ化する第2の手順と、前記第2の手順で関連付けたデータを前記記憶装置に出力して格納させる第3の手順とを実行する制御装置と、前記記憶装置に格納された情報から、前記コモンモード電流が停止している期間、前記コモンモード電流が出力されている期間、及び前記コモンモード電流が出力されている期間において振幅が複数のレベルで変化する場合には各振幅に対応した期間を決定する出力期間決定手段と、前記コモンモード電流が停止している期間の前記第1及び第2のコモンモード電流値、および前記コモンモード電流が出力されている期間において振幅が複数のレベルで変化する場合の各振幅に対応した期間の前記第1及び第2のコモンモード電流値に基づいて、コモンモード電流の伝達率を算出する演算装置とを備えるものとする。
【0018】
(7)上記(6)において、好ましくは、前記伝達率算出装置は、前記入力された第1及び第2のコモンモード電流値、又は前記バンドパスフィルタ通過後の電流値を実効値データに変換する実効値演算装置と、前記変換された第1及び第2のコモンモード電流の実効値データがさらに格納される記憶装置と、前記記憶装置に格納された情報から、前記出力期間決定手段により決定された前記コモンモード電流が停止している期間および前記コモンモード電流が出力されている期間において振幅が複数のレベルで変化する場合の各振幅に対応した期間ごとに、前記第1のコモンモード電流の実効値と前記第2のコモンモード電流の実効値とを対応する期間の実効値データを時間平均して算出する実効値算出手段と、前記コモンモード電流が出力されている期間において振幅が複数のレベルで変化する場合の各振幅に対応した期間の前記第2のコモンモード電流の実効値と、前記出力が停止している期間の前記第2のコモンモード電流の実効値との差の値を、前記コモンモード電流が出力されている期間において振幅が複数のレベルで変化する場合の各振幅に対応した期間の前記第1のコモンモード電流の実効値と、前記出力が停止している期間の前記第1のコモンモード電流の実効値との差の値で除算することで、前記コモンモード電流の伝達率を算出する演算装置とを備えるものとする。
【0019】
(8)上記(6)又は(7)において、好ましくは、前記伝達率算出装置は、前記第1の電流測定手段と前記第2の電流測定手段とで測定された第1及び第2のコモンモード電流値が入力されるバンドパスフィルタと、前記バンドパスフィルタを通過した第1及び第2のコモンモード電流値を実効値データに変換する実効値演算装置と、前記変換された第1及び第2のコモンモード電流の実効値データがさらに格納される記憶装置と、前記コモンモード電流が停止している期間の前記第2のコモンモード電流の周波数特性を演算する第1の手順と、前記第1の手順の演算結果から、電流振幅の小さい周波数を決定する第2の手順と、前記第2の手順で決定された周波数の値を前記信号波発生装置に送信する第3の手順を実行するバックグランド解析部とを備え、前記信号波発生装置は、前記伝達率算出装置から送信された周波数の値を記憶する記憶手段と、前記記憶手段に記憶した周波数の値を取込む第1の手順と、前記第1の手順で取込んだ周波数の値に基づいて、前記信号発生手段の周期的に変化する電流の周波数を制御する第2の手順とを実行する制御手段とを備え、前記伝達率算出装置から送信された周波数の値の電流を前記電流注入器に供給するものとする。
【0020】
(9)上記目的を達成するために、本発明は、原子力発電プラント内に設置された電動機システムによる計装システムへのノイズの影響を評価する電動機システムの影響評価方法において、前記電動機システムの動力ケーブルに、電流注入手段によって外部から予め定めたパターンに従って高周波数のコモンモード電流を注入するステップと、前記動力ケーブルに設けた第1の電流測定手段によって、前記動力ケーブルに流れる第1のコモンモード電流を計測するステップと、前記原子力発電プラント内の計装システムの信号ケーブルまたは制御ケーブルまたは接地線の少なくとも1箇所に設けた第2の電流測定手段によって、前記第1のコモンモード電流により誘起された第2のコモンモード電流を計測するステップと、伝達率算出装置によって、前記第1のコモンモード電流値と前記第2のコモンモード電流値とに基づきコモンモード電流の伝達率を算出するステップとを備えるものとする。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、既知のパターンに従って、動力ケーブルにノイズが印加されている期間と印加されていない期間のデータをそれぞれ分離して得ることができ、両者の差から印加されているノイズの影響のみを抽出することができる。このことにより、特定の機器からの電磁ノイズの寄与分を抽出することが出来る。この結果、インバータなどの設備が、例えば、核計装システムのような微弱信号システムに与える影響を事前に簡易な設備で容易に評価することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下に、本発明のプラント内電動機システムの影響評価装置の実施の形態を図面を用いて説明する。
【0023】
図1は、本発明のプラント内電動機システムの影響評価装置の一実施の形態を備えたシステム構成を示す概念図である。この図1において、原子力発電プラント内には、原子炉圧力容器1と、原子炉圧力容器1内に挿入された核計装管2と、核計装管2に収納され、原子炉圧力容器1内の熱中性子によって微弱電流を発生させる中性子検出器3と、この中性子検出器3からの微弱電流信号を前置増幅器5に伝送する核計装ケーブル4と、前置増幅器5の出力信号が核計装ケーブル4により伝送される中性子監視装置6とからなる核計装システムが備えられている。このように、核計装システムは微弱信号を用いて原子炉圧力容器1内の中性子を計測している。そこで、他の動力機器等からのノイズの影響を受けにくくすることを目的として、中性子監視装置6が接地線7により接地幹線8へ一点で接地されている。
【0024】
また、原子力発電プラント内には、電動機9と、出力フィルタ10と、インバータ電源11とからなる電動機システムが備えられている。この電動機システムにおいては、電動機9及びインバータ電源11が、それぞれ接地線7,7により接地幹線8に接続されており、この電動機9とインバータ電源11を接続する動力ケーブル22と、接地幹線8と、接地線7,7とによって、大きなループが形成される。このループに例えば上述したインバータ電源で発生した高周波ノイズ電流がコモンモード電流(第1のコモンモード電流)として流れる。本発明における、第1のコモンモード電流とは、電動機9とインバータ電源11を接続する動力ケーブル22と、接地幹線8と、接地線7,7とによって形成されたループに流れるノイズ電流を意味する。
【0025】
この第1のコモンモード電流は、ケーブル間の電磁誘導または共通の接地幹線を経由して、僅かではあるが、核計装システムに伝搬され、核計装システムにコモンモード電流(第2のコモンモード電流)を生じさせる。本発明における、第2のコモンモード電流とは、第1のコモンモード電流により生じ、計装システムの信号ケーブルまたは制御ケーブルと、接地線7と、接地幹線8との間で構成されるループに流れるノイズ電流を意味する。
【0026】
本発明の影響評価装置12は、電動機の動力ケーブル22に模擬ノイズ電流である第1のコモンモード電流を注入する電流注入手段としての電流注入器13と、電流注入器13に高周波数のノイズ電流を印加する信号波発生装置14と、電流注入器13によって動力ケーブル22に注入された第1のコモンモード電流を測定する第1の電流測定手段としての第1の電流測定器15と、第1のコモンモード電流により、核計装ケーブル4、又は接地線7に誘導された第2のコモンモード電流を測定する第2の電流測定手段としての第2の電流測定器16と、第1および第2のコモンモード電流の測定値に基づき、ノイズの伝達率を算出する伝達率算出装置17とにより構成される。
【0027】
電流注入器13は、動力ケーブル22に信号波発生装置14から印加された高周波数のノイズ電流を注入するものであり、大略リング状に形成されている。具体的には、フェライト製であって、結合するとリング状になるプローブ本体と、プローブ本体に巻かれたコイル(図示せず)と、コイルと信号波発生装置14とを接続するリードケーブルとで構成され、プローブ本体に動力ケーブル22が挿通するように動力ケーブルに配置されている。ここで、電流注入器13は、電磁誘導により、印加された高周波数の信号に応じた高周波数のノイズ電流を動力ケーブル22に注入する。
【0028】
第1及び第2の電流測定器15、16は、上述した動力ケーブル22、核計装ケーブル4、又は接地線7の電流を測定するものであり、大略リング状に形成されている。具体的には、フェライト製であって、結合するとリング状になるプローブ本体と、プローブ本体に巻かれたコイル(図示せず)と、コイルと伝達率算出装置17とを接続するリードケーブルとで構成され、プローブ本体に上述した各ケーブル4、22がそれぞれ挿通するように各ケーブル4、22に配置されている。
【0029】
図2は、本発明のプラント内電動機システムの影響評価装置の一実施の形態を構成する信号波発生装置14の機能ブロック図である。図2において、図1に示す記号と同符号のものは同一部分である。信号波発生装置14は、任意の周波数の正弦波などの周期的に変化する信号波を生成する信号発生手段としての信号発生器18と、信号発生器18で生成された信号波の外部への出力又は停止をその開閉で行う開閉手段としてのSSR(ソリッドステートリレー)23と、信号波を停止または出力するパターン及び信号波の周波数と振幅を予め入力する入出力インターフェース20と、前記入力結果を格納する記憶手段としての第1の記憶装置21と、記憶装置21に格納されたデータを取込むとともに、このデータに基づいてSSR23の開閉、及び信号発生器18で生成する信号波の振幅と周波数を制御する制御手段としての制御装置19とにより構成されている。
【0030】
信号波発生装置14で生成した信号波を電流注入器13に印加するために、SSR23の出力端と電流注入器13とは、リードケーブルにより接続される(図1参照)。また、SSR23の開閉、及び電流注入器13に印加しているノイズ電流の周波数と振幅の信号は、制御装置19から、例えばシリアル通信などの伝送路を介して伝達率算出装置17に送信される。
【0031】
図3は、本発明のプラント内電動機システムの影響評価装置の一実施の形態を構成する伝達率算出装置17の機能ブロック図である。図3において、図1に示す記号と同符号のものは同一部分である。伝達率算出装置17は、測定された第1及び第2のコモンモード電流が入力され、設定された周波数帯域の信号を通過させるバンドパスフィルタ24,24と、バンドパスフィルタを通過した電流値をディジタル値に変換するA/D変換回路26,26と、このディジタル値を実効値データに変換する実効値演算装置27,27と、バンドパスフィルタ24,24の通過帯域を入力されたノイズ電流の周波数に設定するとともに、このとき、バンドパスフィルタ24,24を通過していく電流値データが、SSR23開(電流停止)/閉(電流出力)のどちらのデータであるのか、およびノイズ電流の周波数と振幅の値を第2の記憶装置28に送信する制御装置25と、実効値データとともに、SSRの開閉データとノイズ電流の周波数/振幅データが格納される第2の記憶装置28と、第2の記憶装置28に格納された情報に基づいて第1と第2のコモンモード電流の伝達率を算出する演算装置としての演算回路29と、算出した伝達率と各コモンモード電流の周波数/振幅値とを格納する第3の記憶装置30と、第3の記憶装置30に格納された周波数/振幅値および伝達率を1組にして表示する表示装置31とにより構成されている。
【0032】
演算回路29は、第2の記憶装置28に格納された情報に基づいて、第1のコモンモード電流の測定値から電流が停止している期間、電流が出力されている期間、及び電流が出力されている期間において振幅が複数のレベルで変化する場合には各振幅に対応した期間を決定する出力期間決定手段と、この出力期間決定手段によって決定された期間ごとに、第1と第2のコモンモード電流の実効値を対応する期間の実効値データを時間平均して算出する実効値算出手段とを備えている。
【0033】
第1および第2のコモンモード電流の測定値を伝達率算出装置17に取り込むために、第1及び第2の電流測定器15、16の出力端と伝達率算出装置17とは、リードケーブルによりそれぞれ接続されている(図1参照)。また、SSR23の開閉、及び電流注入器13に印加しているノイズ電流の周波数と振幅の信号は、信号波発生装置14から、制御装置25に入力される。
【0034】
次に、上述した本発明のプラント内電動機システムの影響評価装置の一実施の形態の動作を図1乃至図3を用いて説明する。
【0035】
まず、利用者が図2に示す信号波発生装置14の入出力インターフェース20を介して動力ケーブル22に注入するノイズ電流の出力停止パターン、及び周波数と振幅パターンを入力する。この入力結果は、信号波発生装置14の第1の記憶装置21に格納される。
【0036】
次に、信号波発生装置14の制御装置19からの読み取り指令により、前記動力ケーブル22に注入するノイズ電流の出力停止パターン、及び周波数と振幅パターンが制御装置19に取込まれる。制御装置19は、信号発生器18の生成すべきノイズ電流の周波数と振幅を取込んだ値に設定するとともに、取込んだノイズ電流の出力停止パターンになるようにSSR23の開閉を制御する。信号波発生装置14から出力されたノイズ電流は、電流注入器13に印加される。このことにより、予め定めたパターンに従ったコモンモード電流を動力ケーブル22に注入することができる。また、信号波発生装置14の制御装置19は、SSRへの開閉信号と周波数及び振幅信号とを伝達率算出装置17へ出力する。
【0037】
信号波発生装置14により電流注入器13に電流が印加されると、図1に示す電動機9の動力ケーブル22と核計装ケーブル4に第1および第2のコモンモード電流がそれぞれ発生する。2つのコモンモード電流は、第1及び第2の電流測定器15、16により測定され、これらの電流測定値が伝達率算出装置出装置17に入力される。
【0038】
伝達率算出装置17では、図3に示すように、これらの電流測定値をバンドパスフィルタ24,24にそれぞれ入力させる。同時に、信号波発生装置14からのSSRへの開閉信号と周波数及び振幅信号のデータを制御装置25に入力させる。制御装置25は、バンドパスフィルタ24,24の通過帯域を信号波発生装置14から送信されてきた周波数に設定するとともに、このとき、バンドパスフィルタ24,24を通過していく電流値データが、SSR23の開(電流停止)/閉(電流出力)のどちらのデータであるのか、および電流注入器13に印加している電流の周波数と振幅の値を第2の記憶装置28に格納する。
【0039】
バンドパスフィルタ24,24を通過した各電流値は、A/D変換回路26,26によりディジタル値に変換され、実効値演算装置27,27にて実効値データに変換される。この実効値データは、SSR23の開閉データおよび周波数/振幅データとともに第2の記憶装置28に格納される。
【0040】
演算回路29は、第2の記憶装置28に格納された情報に基づいて、前記実効値算出手段等を用いて第1と第2のコモンモード電流の伝達率を算出する。具体的には、第2の記憶装置28に格納された第2のコモンモード電流のうち、周波数と振幅が同じで、かつSSR23が開の場合と閉の場合の2つのデータを対にして抽出し、SSR23閉のときの実効値データとSSR23開のときの実効値データの差をとることにより、第1のコモンモード電流による第2のコモンモード電流への実質的な影響(これを補正後の第2のコモンモード電流実効値と呼ぶ)を算出する。同様に、第1のコモンモード電流のうち、周波数と振幅が同じで、かつSSR23が開の場合と閉の場合の2つの実効値データの差を算出し、実質的な第1のコモンモード電流の大きさ(これを補正後の第1のコモンモード電流実効値と呼ぶ)を評価する。
【0041】
そして、補正後の第2のコモンモード電流実効値を補正後の第1のコモンモード電流実効値で割ることにより伝達率を算出する。算出した伝達率は、周波数および振幅値とともに第3の記憶装置30に格納される。
【0042】
表示装置31は、第3の記憶装置30に格納された周波数、振幅値および伝達率を1組にして表示する。
【0043】
なお、ここではSSR23が閉の場合のコモンモード電流実効値からSSR開の場合のコモンモード電流実効値を減ずることでバックグランドの影響を除外しているが、バックグランドノイズが本来の影響とは独立であることを仮定して実効値の2乗差の平方根をとる方法など、評価精度を向上するために別なバックグランドの除去手法を用いてもよい。
【0044】
本発明のプラント内電動機システムの影響評価装置の一実施の形態によれば、既知のパターンに従って、動力ケーブルにノイズが印加されている期間と印加されていない期間のデータをそれぞれ分離して得ることができ、両者の差から印加されているノイズの影響のみを抽出することができる。
【0045】
このことにより、特定の機器からの電磁ノイズの寄与分を抽出することが出来る。この結果、インバータなどの設備が、例えば、核計装システムのような微弱信号システムに与える影響を事前に把握しておくことができる。
【0046】
また、実際に特定の機器を運転してノイズを印加するのではなく、機器が対象とする計測系や制御系に影響を与えるコモンモードノイズの伝搬経路と同じ経路に、信号波発生装置からの模擬的なコモンモードノイズを印加することで、実際に機器を運転する場合に比べてはるかに小さな電力で同等のノイズを発生させることができる。
【0047】
さらに、実機よりも大きなノイズを発生することも可能となり、他のノイズ源と区別できるようになることから、この特定機器のノイズの影響の抽出が容易となる。以上より、電動機システムが計測系や制御系などに及ぼすノイズの影響を簡易な設備で容易に評価することができる。
【0048】
次に、本発明のプラント内電動機システムの影響評価装置の一実施の形態に用いる電流注入器13へ印加する電流波形の種類とその効果について、図4乃至図9に基づいて説明する。
【0049】
図4は、本発明のプラント内電動機システムの影響評価装置の一実施の形態に用いる電流注入器13へ印加する電流波形の第1例の説明図である。図4において、信号発生器18から出力される信号は周波数100kHzの正弦波(図4の上段の波形)であり、この一定振幅の正弦波がSSR23の開閉操作により100マイクロ秒間出力された後、100マイクロ秒間停止するパターンを繰り返す。制御装置19は、正弦波の周波数100kHzと、振幅1.0(相対値)と、当該時刻での開閉信号値(1.0または0.0)(図4の下段の信号)を伝達率算出装置17へ送信する。このように、正弦波信号を送信することにより、単一の周波数に限定したコモンモード電流の伝達率を算出することができる。
【0050】
図5は、本発明のプラント内電動機システムの影響評価装置の一実施の形態に用いる電流注入器13へ印加する電流波形の第2例の説明図である。図5は、信号波発生装置14から印加する電流波形の別な例を示したものである。信号発生器18から出力される信号は、周波数は第1例と同じ100kHz(図5の上段の波形)であるが、振幅は、図5の振幅信号(図5の下段の信号)に示すように、開閉信号(図5の中段の信号)が1.0となる100マイクロ秒間のうち、最初の50マイクロ秒間は振幅信号が0.5(相対値)で、その後の50マイクロ秒間は1.0(相対値)に変化する。このように、印加する電流振幅を複数変化させることにより、より小さい振幅やより大きい振幅によるノイズ影響の推定精度を向上することができる。
【0051】
図6は、本発明のプラント内電動機システムの影響評価装置の一実施の形態に用いる電流注入器13へ印加する電流波形の第3例の説明図である。図6は、信号波発生装置14から印加する電流波形として矩形波(図6の上段の波形)を用いた例である。第1例と同様の周期、振幅およびSSR23開閉タイミング(図6の下段の信号)を使用しているが、信号発生器18から発生する波形として矩形波を用いることにより、広い周波数成分がふくまれ、比較的影響の大きな周波数成分とその影響度を比較的容易に把握することができる。
【0052】
図7は、本発明のプラント内電動機システムの影響評価装置の一実施の形態に用いる電流注入器13へ印加する電流波形の第4例の説明図である。図7は、信号波発生装置14から印加する電流波形(図7の上段の波形)として、実際に電動機が発生するノイズ波形をサンプリングして使用する例である。信号波発生装置14において、信号発生器18に換えて、例えば特定の波形データの格納及び出力が可能な関数発生器を用いることにより可能となる。振幅を変化させることで、出力を増大した場合の影響を直接的に評価することが出来るという利点がある。
【0053】
図8は、本発明のプラント内電動機システムの影響評価装置の一実施の形態に用いる電流注入器13へ印加する電流波形の第5例の説明図である。図8は、図5に示した第2例の電流波形に対して、電流の振幅レベルが変化する時刻(または出力/停止が切り替わる時刻)に0.5マイクロ秒程度の間隔の狭いパルス波(図8の上段の波形)を追加した例である。信号波発生装置14から電動機の動力ケーブル22、核計装ケーブル4、第2の電流測定器16を介して伝達率算出装置17で印加電流が受信されるまでには時間的な遅れが生じるため、このようなパルス波の受信時刻により精密に各振幅レベルに対応した期間を決定することは、伝達率の算出精度の向上に有効である。
【0054】
図9は、本発明のプラント内電動機システムの影響評価装置の一実施の形態に用いる電流注入器13へ印加する電流波形の周波数を掃引するための指定表図である。図9で示されたデータを図2で示す信号波発生装置14の第1の記憶装置21に格納する。制御装置19は、No.1の10kHzから順番に読み込んでいき、信号発生器18の周波数を順次指定の値に変えていく。No.500の5MHzの正弦波電流の印加が完了した後、制御装置19は信号発生器18への振幅信号を0.0として測定を完了する。これにより、図3で示す伝達率算出装置17の表示装置31に指定した周波数とその時のコモンモード電流の伝達率が周波数毎に表示される。つまり、コモンモード電流伝達率に対する周波数特性が測定できる。この結果、当該ノイズの周波数に対応した効果的な対策が容易に行える。
【0055】
次に、本発明のプラント内電動機システムの影響評価装置の第2の実施の形態を図10を用いて説明する。図10は、本発明のプラント内電動機システムの影響評価装置の第2の実施の形態を構成する伝達率算出装置17の機能ブロック図である。なお、以下の説明において、上述した本発明の一実施の形態と同じ構成要素には同一の符合を付し、その部分の説明を省略する。
【0056】
図10において、伝達率算出装置17は、バックグランドモードを指定するバックグランドモードスイッチ32と、バンドパスフィルタ24,24の通過帯域を予め定められた周波数に順次変更するとともに、バックグランドモード信号を演算回路29に送信するバックグランド解析部33と、各周波数に対する第2のコモンモード電流の実効値を第3の記憶装置30に格納する演算回路29と、周波数毎の第2のコモンモード電流、及び第2のコモンモード電流値が最少となる周波数を合わせて表示する表示装置31と、印加したいノイズ電流の周波数値を指定する入出力インターフェース35と、指定された周波数値を信号波発生装置14に送信する周波数指定装置34とを有している。
【0057】
次に、上述した本発明のプラント内電動機システムの影響評価装置の第2の実施の形態の動作を図1、図2及び図10を用いて説明する。
【0058】
まず、利用者がバックグランドモードスイッチ32を介してバックグランドモードを指定する。バックグランドモードが指定されると、制御装置25に内蔵されたバックグランド解析部33が、予め定められた下限、上限、間隔に従って、バンドパスフィルタ24,24の通過帯域を順次変更するとともに、このとき、バンドパスフィルタ24,24を通過していく電流値データの通過周波数の値を第2の記憶装置28に格納する。同時に、バックグランド解析部33は、演算回路29に対してバックグランドモード信号を送信する。
【0059】
次に、バックグランドモード信号を受信した演算回路29は、第2の記憶装置28に格納された情報を取り出し、各周波数に対する第2のコモンモード電流の実効値を第3の記憶装置30に格納する。
【0060】
表示装置31は、第3の記憶装置30に格納されたデータから、周波数毎の第2のコモンモード電流の他に、第2のコモンモード電流値が最小となる周波数を合わせて表示する。
【0061】
利用者は、表示された結果から試験したい周波数を選択し、入出力インターフェース35を介して印加したいノイズ電流の周波数値を入力する。この入力結果は、周波数指定装置34に入力され、周波数指定装置34は指定された周波数値を信号波発生装置14に送信する。
【0062】
信号波発生装置14は、図2中の入出力インターフェース20で周波数を受信し、この周波数を第1の記憶装置21に格納する。制御装置19が、第1の記憶装置21からこの周波数値を取り込み制御することにより、指定した周波数の電流を電流注入器13に印加する。
【0063】
上述した、本発明のプラント内電動機システムの影響評価装置の第2の実施の形態によれば、バックグランド解析を行うことにより、バックグランドノイズレベルが小さい周波数帯域を把握することができる。その結果、これらの周波数帯域から選択した周波数のコモンモード電流を動力ケーブルに注入することができる。つまり、他のノイズ源からのノイズ(バックグランドノイズ)と区別が容易につくノイズで、影響評価が実施できることになる。バックグランドノイズの影響が低減された周波数帯域で、コモンモード電流の伝達率を算出することができるため、伝達率算出装置17の評価精度を向上させることができる。
【0064】
次に、本発明のプラント内電動機システムの影響評価装置の第3の実施の形態を図11を用いて説明する。図11は、本発明のプラント内電動機システムの影響評価装置の第3の実施の形態を構成する伝達率算出装置17の機能ブロック図である。なお、以下の説明において、上述した本発明の実施の形態と同じ構成要素には同一の符合を付し、その部分の説明を省略する。
【0065】
図11において、伝達率算出装置17は、予め別途評価された第1と第2のコモンモード電流の各上限値が格納された第4の記憶装置36と、算出した振幅設定値を第3の記憶装置31に格納し、振幅信号発生部37に送信する演算回路29と、受信した振幅信号を信号波発生装置14に送信する振幅信号発生部37とを有している。
【0066】
次に、上述した本発明のプラント内電動機システムの影響評価装置の第3の実施の形態の動作を図1、図2及び図11を用いて説明する。
【0067】
まず、核計装系に影響を与えないために、予め別途評価しておいた第2のコモンモード電流の上限値を第4の記憶装置36に格納しておく。ここでいう核計装系に影響を与えない第2のコモンモード電流の上限値とは、例えば、核計装系の指示値に誤警報や誤スクラムの発生等の実質的な影響を与えない第2のコモンモード電流の最大値を意味する。
【0068】
次に、演算回路29は、第1のコモンモード電流と第2のコモンモード電流の実効値の比を求めるとともに、第4の記憶装置36から第2のコモンモード電流の上限値を取込み、この第2のコモンモード電流の上限値に前記の実効値の比を乗じることで振幅設定値Lを算出する。振幅設定値Lは次式で求められる。
L=(IC1/IC2)×IC2max・・・・(1)
ここで、IC1は第1のコモンモード電流値、IC2は第2のコモンモード電流値、IC2maxは第2のコモンモード電流上限値である。
【0069】
また、演算回路29は、算出した振幅設定値Lを第3の記憶装置30に格納して表示装置31で表示させるとともに、振幅信号発生部37に送信する。
【0070】
振幅信号を受信した振幅信号発生部37は、振幅信号を信号波発生装置14に送信する。信号波発生装置14は、図2中の入出力インターフェース20で振幅信号を受信し、この振幅を第1の記憶装置21に格納する。制御装置19が、第1の記憶装置21からこの振幅値を取り込み制御することにより、指定した振幅の電流を電流注入器13に印加する。
【0071】
さらに、伝達率算出装置17においては、電動機に応じて予め別途評価しておいた最大発生電流、すなわち、第1のコモンモード電流に対する上限値を第4の記憶装置36に格納しておく。
【0072】
次に、演算回路29は、第1のコモンモード電流の実効値と、第2のコモンモード電流の実効値と、第4の記憶装置36から取り込んだ第2のコモンモード電流の上限値と第1のコモンモード電流の上限値とを使用して、第1のコモンモード電流が上限値となった場合の第2のコモンモード電流、すなわち、最大ノイズ影響を算出する。また、第2のコモンモード電流上限値に対する第2のコモンモード電流の割合、すなわち、ノイズマージンを算出する。最大ノイズ影響NEとノイズマージンNMは次式で求められる。
NE=(IC2/IC1)×IC1max・・・・(2)
NM=NE/IC2max ・・・・(3)
ここで、IC1は第1のコモンモード電流値、IC2は第2のコモンモード電流値、IC1maxは第1のコモンモード電流上限値、IC2maxは第2のコモンモード電流上限値である。
【0073】
また、演算回路29は、算出した最大ノイズ影響NEとノイズマージンNMを第3の記憶装置30に格納して表示装置31で表示させる。
【0074】
本発明のプラント内電動機システムの影響評価装置の第3の実施の形態によれば、核計装系の指示値に誤警報や誤スクラムの発生などの実質的な影響を与えない範囲で、信号波発生装置14の出力電流値を極力大きく設定することができる。このことにより、ノイズの影響を精度よく評価することができる。
【0075】
また、表示装置31の表示から以下の値を精度よく把握することができる。すなわち表示装置31に表示された振幅設定値Lによって、核計装系の指示値に実質的な影響を与えない範囲で印加できる信号波発生装置14の最大電流値が把握できる。
また、表示装置31に表示された最大ノイズ影響NEによって、実際の機器の動作により想定される最大ノイズ電流が流れた場合、核計装系に発生する第2のコモンモード電流の値が把握できる。
さらに、表示装置31に表示されたノイズマージンNMによって、実際の機器の動作により想定される最大ノイズ電流が流れた場合、核計装系に発生する第2のコモンモード電流が、核計装系の指示値に誤警報や誤スクラムの発生などの実質的な影響を与えるまでの余裕度が把握できる。
【0076】
さらに、算出された振幅設定値L、最大ノイズ影響NE、及びノイズマージンNMが、表示装置31に表示されることから、実際に測定した後の評価をその場で見ることができる。このことから、再度、評価のための測定等が必要となっても、容易、安全、かつ迅速に実施することができる。また、このことから、例えばノイズ対策などに要する期間も短くすることができる。
【0077】
次に、本発明のプラント内電動機システムの影響評価装置の第4の実施の形態を図12を用いて説明する。図12は、本発明のプラント内電動機システムの影響評価装置の第4の実施の形態を備えたシステム構成を示す概念図である。なお、以下の説明において上述した本発明の実施の形態と同じ構成要素には同一の符合を付し、その部分の説明を省略する。
【0078】
本実施の形態においては、第1及び第2の電流測定器15、16にそれぞれ無線送信端末38、38が接続されている。また、伝達率算出装置17には、無線受信端末39が接続されている。
【0079】
このように構成されたノイズ影響評価装置12では、例えば、第1のコモンモード電流を測定する位置と、第2のコモンモード電流を測定する位置が極端に離れている場合であって、プラント内でのケーブルの敷設が不可能な場合や困難な場合であっても、信号の授受が可能となることから、ノイズ影響評価装置12を稼働させることができる。
【0080】
なお、本発明においては、インバータ電源を備えた電動機システムにおいて説明したが、これに限らない。動力ケーブルと、接地線と接地幹線によりループが構成される電動機システムであればよい。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】本発明のプラント内電動機システムの影響評価装置の一実施の形態を備えたシステム構成を示す概念図である。
【図2】本発明のプラント内電動機システムの影響評価装置の一実施の形態を構成する信号波発生装置14の機能ブロック図である。
【図3】本発明のプラント内電動機システムの影響評価装置の一実施の形態を構成する伝達率算出装置17の機能ブロック図である。
【図4】本発明のプラント内電動機システムの影響評価装置の一実施の形態に用いる電流注入器13へ印加する電流波形の第1例の説明図である。
【図5】本発明のプラント内電動機システムの影響評価装置の一実施の形態に用いる電流注入器13へ印加する電流波形の第2例の説明図である。
【図6】本発明のプラント内電動機システムの影響評価装置の一実施の形態に用いる電流注入器13へ印加する電流波形の第3例の説明図である。
【図7】本発明のプラント内電動機システムの影響評価装置の一実施の形態に用いる電流注入器13へ印加する電流波形の第4例の説明図である。
【図8】本発明のプラント内電動機システムの影響評価装置の一実施の形態に用いる電流注入器13へ印加する電流波形の第5例の説明図である。
【図9】本発明のプラント内電動機システムの影響評価装置の一実施の形態に用いる電流注入器13へ印加する電流波形の周波数を掃引するための指定表図である。
【図10】本発明のプラント内電動機システムの影響評価装置の第2の実施の形態を構成する伝達率算出装置17の機能ブロック図である。
【図11】本発明のプラント内電動機システムの影響評価装置の第3の実施の形態を構成する伝達率算出装置17の機能ブロック図である。
【図12】本発明のプラント内電動機システムの影響評価装置の第4の実施の形態を備えたシステム構成を示す概念図である。
【図13】インバータ電源の動力ケーブルに生じたノイズ電流波形と、中性子計装系ケーブルに誘導されたノイズ電流波形との比較の一例を示す説明図である。
【符号の説明】
【0082】
1 原子炉圧力容器
2 核計装管
3 中性子検出器
4 核計装ケーブル
5 前置増幅器
6 中性子監視装置
7 接地線
8 接地幹線
9 電動機
10 出力フィルタ
11 インバータ電源
12 影響評価装置
13 電流注入器
14 信号波発生装置
15 第1の電流測定器
16 第2の電流測定器
17 伝達率算出装置
22 動力ケーブル
23 SSR(ソリッドステートリレー)
24 バンドパスフィルタ
27 実効値演算装置
33 バックグランド解析部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
原子力発電プラント内に設置された電動機システムによる計装システムへのノイズの影響を評価する電動機システムの影響評価装置において、
前記電動機システムの動力ケーブルに、外部から高周波数のコモンモード電流を注入する電流注入手段と、
前記電流注入手段に予め定めたパターンに従って高周波数の電流を供給する信号波発生装置と、
前記動力ケーブルに流れる第1のコモンモード電流を計測する第1の電流測定手段と、
前記第1のコモンモード電流により、前記原子力発電プラント内の計装システムの信号ケーブルまたは制御ケーブルまたは接地線の少なくとも1箇所に誘起された第2のコモンモード電流を計測する第2の電流測定手段と、
前記第1の電流測定手段と前記第2の電流測定手段とで測定された各電流値が入力され、これらの測定電流値に基づいてコモンモード電流の伝達率を算出する伝達率算出装置とを備えることを特徴とする電動機システムの影響評価装置。
【請求項2】
請求項1に記載の電動機システムの影響評価装置において、
前記信号波発生装置は、
周期的に変化する電流を発生する信号発生手段と、
前記周期的に変化する電流の電流注入手段への出力又は停止を行う開閉手段と、
前記周期的に変化する電流の出力パターンを記憶する記憶手段と、
前記記憶手段に記憶した出力パターンを取込む第1の手順と、
前記第1の手順で取込んだ出力パターンに基づいて、前記開閉手段の開閉を制御する第2の手順とを実行する制御手段とを備え、
前記周期的に変化する電流を予め定めたパターンに従って、前記電流注入手段へ出力または停止することを特徴とする電動機システムの影響評価装置。
【請求項3】
請求項1に記載の電動機システムの影響評価装置において、
前記信号波発生装置は、
周期的に変化する電流を発生する信号発生手段と、
前記周期的に変化する電流の電流注入手段への出力又は停止を行う開閉手段と、
前記周期的に変化する電流の振幅を複数のレベルで変化させた出力パターンを記憶する記憶手段と、
前記記憶手段に記憶した出力パターンを取込む第1の手順と、
前記第1の手順で取込んだ出力パターンに基づいて、前記信号発生手段の周期的に変化する電流の振幅、及び前記開閉手段の開閉を制御する第2の手順とを実行する制御手段とを備え、
前記電流注入手段へ供給する電流の出力時の振幅は、予め定めたパターンに従って複数のレベルで変化することを特徴とする電動機システムの影響評価装置。
【請求項4】
請求項2または3に記載の電動機システムの影響評価装置において、
前記周期的に変化する電流として、正弦波電流を用いることを特徴とする電動機システムの影響評価装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の電動機システムの影響評価装置において、
前記伝達率算出装置は、
前記第1の電流測定手段と前記第2の電流測定手段とで測定された第1及び第2のコモンモード電流値が入力されるバンドパスフィルタと、
前記信号波発生装置から入力された前記電流注入手段に供給する電流の周波数を取込む第1の手順と、前記第1の手順で取り込んだ周波数と同じ値に、前記各バンドパスフィルタの通過帯域を設定する第2の手順とを実行する制御装置と、
前記バンドパスフィルタを通過後の電流値に基づいてコモンモード電流の伝達率を算出する演算装置とを備えることを特徴とする電動機システムの影響評価装置。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか1項に記載の電動機システムの影響評価装置において、
前記伝達率算出装置は、
前記入力された第1及び第2のコモンモード電流値、又は前記バンドパスフィルタ通過後の電流値が格納される記憶装置と、
前記第1及び第2のコモンモード電流値の入力と同時に、前記開閉手段の開閉信号と、前記電流注入手段に供給する電流の振幅及び周波数の信号とを取込む第1の手順と、同時に入力された前記第1及び第2のコモンモード電流値と前記第1の手順で取込んだ状態信号とを関連付けてデータ化する第2の手順と、前記第2の手順で関連付けたデータを前記記憶装置に出力して格納させる第3の手順とを実行する制御装置と、
前記記憶装置に格納された情報から、前記コモンモード電流が停止している期間、前記コモンモード電流が出力されている期間、及び前記コモンモード電流が出力されている期間において振幅が複数のレベルで変化する場合には各振幅に対応した期間を決定する出力期間決定手段と、
前記コモンモード電流が停止している期間の前記第1及び第2のコモンモード電流値、および前記コモンモード電流が出力されている期間において振幅が複数のレベルで変化する場合の各振幅に対応した期間の前記第1及び第2のコモンモード電流値に基づいて、コモンモード電流の伝達率を算出する演算装置とを備えることを特徴とする電動機システムの影響評価装置。
【請求項7】
請求項6に記載の電動機システムの影響評価装置において、
前記伝達率算出装置は、
前記入力された第1及び第2のコモンモード電流値、又は前記バンドパスフィルタ通過後の電流値を実効値データに変換する実効値演算装置と、
前記変換された第1及び第2のコモンモード電流の実効値データがさらに格納される記憶装置と、
前記記憶装置に格納された情報から、前記出力期間決定手段により決定された前記コモンモード電流が停止している期間および前記コモンモード電流が出力されている期間において振幅が複数のレベルで変化する場合の各振幅に対応した期間ごとに、前記第1のコモンモード電流の実効値と前記第2のコモンモード電流の実効値とを対応する期間の実効値データを時間平均して算出する実効値算出手段と、
前記コモンモード電流が出力されている期間において振幅が複数のレベルで変化する場合の各振幅に対応した期間の前記第2のコモンモード電流の実効値と、前記出力が停止している期間の前記第2のコモンモード電流の実効値との差の値を、前記コモンモード電流が出力されている期間において振幅が複数のレベルで変化する場合の各振幅に対応した期間の前記第1のコモンモード電流の実効値と、前記出力が停止している期間の前記第1のコモンモード電流の実効値との差の値で除算することで、前記コモンモード電流の伝達率を算出する演算装置とを備えることを特徴とする電動機システムの影響評価装置。
【請求項8】
請求項6又は7に記載の電動機システムの影響評価装置において、
前記伝達率算出装置は、
前記第1の電流測定手段と前記第2の電流測定手段とで測定された第1及び第2のコモンモード電流値が入力されるバンドパスフィルタと、
前記バンドパスフィルタを通過した第1及び第2のコモンモード電流値を実効値データに変換する実効値演算装置と、
前記変換された第1及び第2のコモンモード電流の実効値データがさらに格納される記憶装置と、
前記コモンモード電流が停止している期間の前記第2のコモンモード電流の周波数特性を演算する第1の手順と、前記第1の手順の演算結果から、電流振幅の小さい周波数を決定する第2の手順と、前記第2の手順で決定された周波数の値を前記信号波発生装置に送信する第3の手順を実行するバックグランド解析部とを備え、
前記信号波発生装置は、
前記伝達率算出装置から送信された周波数の値を記憶する記憶手段と、
前記記憶手段に記憶した周波数の値を取込む第1の手順と、
前記第1の手順で取込んだ周波数の値に基づいて、前記信号発生手段の周期的に変化する電流の周波数を制御する第2の手順とを実行する制御手段とを備え、
前記伝達率算出装置から送信された周波数の値の電流を前記電流注入器に供給することを特徴とした電動機システムの影響評価装置。
【請求項9】
原子力発電プラント内に設置された電動機システムによる計装システムへのノイズの影響を評価する電動機システムの影響評価方法において、
前記電動機システムの動力ケーブルに、電流注入手段によって外部から予め定めたパターンに従って高周波数のコモンモード電流を注入するステップと、
前記動力ケーブルに設けた第1の電流測定手段によって、前記動力ケーブルに流れる第1のコモンモード電流を計測するステップと、
前記原子力発電プラント内の計装システムの信号ケーブルまたは制御ケーブルまたは接地線の少なくとも1箇所に設けた第2の電流測定手段によって、前記第1のコモンモード電流により誘起された第2のコモンモード電流を計測するステップと、
伝達率算出装置によって、前記第1のコモンモード電流値と前記第2のコモンモード電流値とに基づきコモンモード電流の伝達率を算出するステップとを備えることを特徴とする電動機システムの影響評価方法。
【請求項1】
原子力発電プラント内に設置された電動機システムによる計装システムへのノイズの影響を評価する電動機システムの影響評価装置において、
前記電動機システムの動力ケーブルに、外部から高周波数のコモンモード電流を注入する電流注入手段と、
前記電流注入手段に予め定めたパターンに従って高周波数の電流を供給する信号波発生装置と、
前記動力ケーブルに流れる第1のコモンモード電流を計測する第1の電流測定手段と、
前記第1のコモンモード電流により、前記原子力発電プラント内の計装システムの信号ケーブルまたは制御ケーブルまたは接地線の少なくとも1箇所に誘起された第2のコモンモード電流を計測する第2の電流測定手段と、
前記第1の電流測定手段と前記第2の電流測定手段とで測定された各電流値が入力され、これらの測定電流値に基づいてコモンモード電流の伝達率を算出する伝達率算出装置とを備えることを特徴とする電動機システムの影響評価装置。
【請求項2】
請求項1に記載の電動機システムの影響評価装置において、
前記信号波発生装置は、
周期的に変化する電流を発生する信号発生手段と、
前記周期的に変化する電流の電流注入手段への出力又は停止を行う開閉手段と、
前記周期的に変化する電流の出力パターンを記憶する記憶手段と、
前記記憶手段に記憶した出力パターンを取込む第1の手順と、
前記第1の手順で取込んだ出力パターンに基づいて、前記開閉手段の開閉を制御する第2の手順とを実行する制御手段とを備え、
前記周期的に変化する電流を予め定めたパターンに従って、前記電流注入手段へ出力または停止することを特徴とする電動機システムの影響評価装置。
【請求項3】
請求項1に記載の電動機システムの影響評価装置において、
前記信号波発生装置は、
周期的に変化する電流を発生する信号発生手段と、
前記周期的に変化する電流の電流注入手段への出力又は停止を行う開閉手段と、
前記周期的に変化する電流の振幅を複数のレベルで変化させた出力パターンを記憶する記憶手段と、
前記記憶手段に記憶した出力パターンを取込む第1の手順と、
前記第1の手順で取込んだ出力パターンに基づいて、前記信号発生手段の周期的に変化する電流の振幅、及び前記開閉手段の開閉を制御する第2の手順とを実行する制御手段とを備え、
前記電流注入手段へ供給する電流の出力時の振幅は、予め定めたパターンに従って複数のレベルで変化することを特徴とする電動機システムの影響評価装置。
【請求項4】
請求項2または3に記載の電動機システムの影響評価装置において、
前記周期的に変化する電流として、正弦波電流を用いることを特徴とする電動機システムの影響評価装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の電動機システムの影響評価装置において、
前記伝達率算出装置は、
前記第1の電流測定手段と前記第2の電流測定手段とで測定された第1及び第2のコモンモード電流値が入力されるバンドパスフィルタと、
前記信号波発生装置から入力された前記電流注入手段に供給する電流の周波数を取込む第1の手順と、前記第1の手順で取り込んだ周波数と同じ値に、前記各バンドパスフィルタの通過帯域を設定する第2の手順とを実行する制御装置と、
前記バンドパスフィルタを通過後の電流値に基づいてコモンモード電流の伝達率を算出する演算装置とを備えることを特徴とする電動機システムの影響評価装置。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか1項に記載の電動機システムの影響評価装置において、
前記伝達率算出装置は、
前記入力された第1及び第2のコモンモード電流値、又は前記バンドパスフィルタ通過後の電流値が格納される記憶装置と、
前記第1及び第2のコモンモード電流値の入力と同時に、前記開閉手段の開閉信号と、前記電流注入手段に供給する電流の振幅及び周波数の信号とを取込む第1の手順と、同時に入力された前記第1及び第2のコモンモード電流値と前記第1の手順で取込んだ状態信号とを関連付けてデータ化する第2の手順と、前記第2の手順で関連付けたデータを前記記憶装置に出力して格納させる第3の手順とを実行する制御装置と、
前記記憶装置に格納された情報から、前記コモンモード電流が停止している期間、前記コモンモード電流が出力されている期間、及び前記コモンモード電流が出力されている期間において振幅が複数のレベルで変化する場合には各振幅に対応した期間を決定する出力期間決定手段と、
前記コモンモード電流が停止している期間の前記第1及び第2のコモンモード電流値、および前記コモンモード電流が出力されている期間において振幅が複数のレベルで変化する場合の各振幅に対応した期間の前記第1及び第2のコモンモード電流値に基づいて、コモンモード電流の伝達率を算出する演算装置とを備えることを特徴とする電動機システムの影響評価装置。
【請求項7】
請求項6に記載の電動機システムの影響評価装置において、
前記伝達率算出装置は、
前記入力された第1及び第2のコモンモード電流値、又は前記バンドパスフィルタ通過後の電流値を実効値データに変換する実効値演算装置と、
前記変換された第1及び第2のコモンモード電流の実効値データがさらに格納される記憶装置と、
前記記憶装置に格納された情報から、前記出力期間決定手段により決定された前記コモンモード電流が停止している期間および前記コモンモード電流が出力されている期間において振幅が複数のレベルで変化する場合の各振幅に対応した期間ごとに、前記第1のコモンモード電流の実効値と前記第2のコモンモード電流の実効値とを対応する期間の実効値データを時間平均して算出する実効値算出手段と、
前記コモンモード電流が出力されている期間において振幅が複数のレベルで変化する場合の各振幅に対応した期間の前記第2のコモンモード電流の実効値と、前記出力が停止している期間の前記第2のコモンモード電流の実効値との差の値を、前記コモンモード電流が出力されている期間において振幅が複数のレベルで変化する場合の各振幅に対応した期間の前記第1のコモンモード電流の実効値と、前記出力が停止している期間の前記第1のコモンモード電流の実効値との差の値で除算することで、前記コモンモード電流の伝達率を算出する演算装置とを備えることを特徴とする電動機システムの影響評価装置。
【請求項8】
請求項6又は7に記載の電動機システムの影響評価装置において、
前記伝達率算出装置は、
前記第1の電流測定手段と前記第2の電流測定手段とで測定された第1及び第2のコモンモード電流値が入力されるバンドパスフィルタと、
前記バンドパスフィルタを通過した第1及び第2のコモンモード電流値を実効値データに変換する実効値演算装置と、
前記変換された第1及び第2のコモンモード電流の実効値データがさらに格納される記憶装置と、
前記コモンモード電流が停止している期間の前記第2のコモンモード電流の周波数特性を演算する第1の手順と、前記第1の手順の演算結果から、電流振幅の小さい周波数を決定する第2の手順と、前記第2の手順で決定された周波数の値を前記信号波発生装置に送信する第3の手順を実行するバックグランド解析部とを備え、
前記信号波発生装置は、
前記伝達率算出装置から送信された周波数の値を記憶する記憶手段と、
前記記憶手段に記憶した周波数の値を取込む第1の手順と、
前記第1の手順で取込んだ周波数の値に基づいて、前記信号発生手段の周期的に変化する電流の周波数を制御する第2の手順とを実行する制御手段とを備え、
前記伝達率算出装置から送信された周波数の値の電流を前記電流注入器に供給することを特徴とした電動機システムの影響評価装置。
【請求項9】
原子力発電プラント内に設置された電動機システムによる計装システムへのノイズの影響を評価する電動機システムの影響評価方法において、
前記電動機システムの動力ケーブルに、電流注入手段によって外部から予め定めたパターンに従って高周波数のコモンモード電流を注入するステップと、
前記動力ケーブルに設けた第1の電流測定手段によって、前記動力ケーブルに流れる第1のコモンモード電流を計測するステップと、
前記原子力発電プラント内の計装システムの信号ケーブルまたは制御ケーブルまたは接地線の少なくとも1箇所に設けた第2の電流測定手段によって、前記第1のコモンモード電流により誘起された第2のコモンモード電流を計測するステップと、
伝達率算出装置によって、前記第1のコモンモード電流値と前記第2のコモンモード電流値とに基づきコモンモード電流の伝達率を算出するステップとを備えることを特徴とする電動機システムの影響評価方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2009−293931(P2009−293931A)
【公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−144586(P2008−144586)
【出願日】平成20年6月2日(2008.6.2)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【出願人】(507250427)日立GEニュークリア・エナジー株式会社 (858)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年6月2日(2008.6.2)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【出願人】(507250427)日立GEニュークリア・エナジー株式会社 (858)
【Fターム(参考)】
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