説明

プリフォームの加熱方法

【課題】 ボトルの白化防止、プリフォームの加熱時間の短縮、耐熱性に優れたプリフォームの加熱方法を創出することを課題とする。
【解決手段】 加熱炉(2)内の冷却、プリフォーム(P)の外面への冷却エアー(e1)と熱源(4)からの加熱とを同時に行ってプリフォーム(P)の外面温度(Ta)と内面温度(Tb)とを調整しながら熱結晶化温度よりもわずかに低い温度となるまで急速加熱する第1工程(S1)と、加熱炉(2)内の冷却と熱源(4)による加熱を停止した状態で、冷却エアー(e1)をプリフォーム(P)の外面に吹き付けて外面温度(Ta)を冷却する第2工程(S2)と、加熱炉(2)内の冷却を停止した状態で、プリフォーム(P)の外面への冷却エアー(e1)の吹き付けと熱源(4)からの加熱とを同時に行ってプリフォーム(P)を急速加熱する第3工程(S3)と、を有する構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、PET樹脂製のプリフォームを2軸延伸ブロー成形する際に用いるプリフォームの加熱方法に関する。
【背景技術】
【0002】
PET製射出成形品であるプリフォームを2軸延伸ブロー成形して所定形状のボトルとするには、このプリフォームを延伸変形が可能な温度まで加熱する必要がある。ボトルの2軸延伸ブロー成形に際するプリフォームの加熱は、例えば特許文献1に開示されているように、赤外線を発生する赤外線ランプ(赤外線ヒーター)を熱源とするのが一般であり、またこの赤外線ヒーターの複数を、搬送されているプリフォームの軸心方向に沿って平行に並列配置し、各赤外線ヒーターの出力を調整することにより、プリフォームを軸心に沿って所望する温度分布で加熱するようにしている。
【0003】
しかしながら、上記従来の方法ではプリフォームをその外側から加熱するものであるから、プリフォームの外面がプリフォームの内面よりも高い温度となる傾向があるが、外面温度が熱結晶化温度(120℃)を超えるとプリフォームの外面に白化が生じてしまう。そして、このような白化したプリフォームをブロー成形しても外観が白濁した不良なボトルが製造されてしまい、透明なボトルを得ることができないという問題がある。
【0004】
またどうしてもプリフォームの外面側の方が内面側に比べて昇温速度が速く、加熱されるプリフォームの外側と内側と間に温度差が発生することになる。この温度差が大きいと適正な2軸延伸ブロー成形操作が不能となるので、このプリフォームの内面側と外面側との加熱温度差を一定の範囲内に抑制するために熱源の出力を制限する必要があり、このためプリフォームの加熱時間を充分に短縮することができないという問題もある。
【0005】
またプリフォームの外側と内側との温度差が大きいと、外面と内面に大きな応力歪が生じる結果、成形後のボトル寸法精度に大きなばらつき生じやすい。
さらにはプリフォームの外面温度の上限値(熱結晶化温度)に伴い、プリフォームの内面温度も高くすることができないので、成形時の延伸倍率を高めた場合、あるいは厚肉のプリフォームとした場合に、成形時のプリフォーム内にボイドが発生し、不良のボトルが生産されてしまうという問題もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11−42702号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明は、上記した従来技術における問題点を解消すべく創案されたものであり、延伸ブロー成形されるボトルの白化防止、ブロー成形工程におけるプリフォームの加熱時間の短縮、耐熱性及び成形後のボトルの寸法精度の向上、さらにはボイドが形成されることを抑制できるプリフォームの加熱方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するための手段のうち、本発明の主たる構成は、
加熱炉内を移動するプリフォームに二軸延伸ブロー成形を施してボトルを成形するプリフォームの加熱方法であって、
加熱炉内を冷却すると共に、回転するプリフォームの外面への冷却エアーの吹き付けと熱源からの加熱とを同時に行ってプリフォームの外面温度と内面温度とを調整しながらプリフォームの熱結晶化温度よりもわずかに低い温度となるまで急速加熱する第1工程と、
加熱炉内の冷却と熱源による加熱を停止した状態で、冷却エアーをプリフォームの外面に吹き付け、回転するプリフォームの外面温度を冷却する第2工程と、
加熱炉内の冷却を停止した状態で、回転するプリフォームの外面への冷却エアーの吹き付けと熱源からの加熱とを同時に行ってプリフォームを急速加熱する第3工程と、を有することを特徴とする、と云うものである。
【0009】
本願発明者は、プリフォームの内外温度が熱結晶化温度(120℃)を超えても、一定の時間内であればプリフォームに白化現象が起きないことに着目し、この時間内にプリフォームを急速加熱することにより、白濁のないブローボトルの成形を達成しようとするものである。
【0010】
上記主たる構成からなるプリフォームの加熱方法の第1工程では、加熱炉内で、下部側から上方に向かってプリフォームの外面に沿って略平行に吹き付ける炉内冷却エアーによる炉内冷却を行った状態で、冷却エアーによる吹き付けと熱源からの大出力による加熱とを、回転するプリフォームの外面に垂直方向(または半径方向ともいう)から同時に行うことにより、プリフォームは外面の加熱がやや抑制された状態で急速加熱されることになる。
【0011】
次の第2工程では、炉内冷却エアーによる冷却と熱源による加熱とを停止した状態で、冷却エアーのみをプリフォームの外面に吹き付けることにより、熱結晶化温度(120℃)近くまで上昇した内面温度の低下を抑えながら外面温度を内面温度よりも低い温度(約80℃)まで一度下げる。
【0012】
続く第3工程では、炉内冷却エアーによる冷却を停止した状態で、プリフォームの外面に対し、熱源による加熱と冷却エアーによる吹き付けを同時に行ってプリフォームの外面温度及び内面温度が共に熱結晶化温度(120℃)以上になるように急速加熱する。
【0013】
また本発明の他の構成は、請求項1記載の発明において、第1工程の冷却はプリフォームの外面温度と内面温度とをほぼ同じ温度に維持しながら行い、第2工程の冷却はプリフォームの外面温度をその内面温度よりも十分に低い温度に達するまで行う、と云うものである。
【0014】
上記構成では、プリフォーム加熱工程中におけるプリフォームの白化防止を達成する。
【0015】
また本発明の他の構成は、請求項1又は2記載の発明において、第3工程中に、プリフォームの外面温度と内面温度とが共に熱結晶化温度に達しときからプリフォームの2軸延伸ブロー成形できるようになるまでを所定時間に設定した、というものである。
【0016】
上記構成により、ブロー成形時の白化を防止し、透明性の高いボトルの製造を達成する。
【0017】
また本発明の他の構成は、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の発明において、第1工程では、プリフォームの内側に、表面に鏡面仕上げ又は金メッキ処理が施された加熱筒体が配置し、プリフォーム加熱時に熱源から出力される熱エネルギーによる温度上昇と、熱源から出力される光エネルギーの加熱筒体表面からの反射とを利用してプリフォームを内外から同時に加熱するものである、と云うものである。
【0018】
上記構成では、内外面同時加熱により、プリフォームの外面温度と内面温度の温度差を小さくした状態で、すなわち、外面温度と内面温度とをほぼ同じに温度に維持しながらプリフォームの熱結晶化温度よりもわずかに低い温度に至る急速加熱を達成する。
【0019】
また本発明の他の構成は、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の発明において、加熱炉内の冷却が、加熱炉の下部側から上部側に向かって送風される炉内冷却エアーにより行われる、と云うものである。
【0020】
上記構成では、加熱炉内が過剰に加熱されて高温状態(例えば200℃〜240℃)となることの防止と、加熱炉内の壁面から遠赤外線が照射されることによるプリフォームの外面温度の更なる上昇の防止し、加熱炉内の温度を適正な状態に維持する。
【0021】
また本発明の他の構成は、請求項3乃至5のいずれか一項に記載の発明において、所定時間を8秒とした、と云うものである。
【0022】
上記構成では、プリフォームの白化防止と加熱時間の短縮を達成する。
【発明の効果】
【0023】
本発明は、上記した構成となっているので、以下に示す効果を奏する。
本発明の主たる構成においては、延伸ブロー成形時の白化することがなく透明で、且つ耐熱性及び成形後の寸法精度に優れたボトルを短時間で製造することができ、さらにはボイドの形成を抑制することのできるプリフォームの加熱方法を提供できる。
【0024】
また第1工程の冷却はプリフォームの外面温度と内面温度とをほぼ同じに温度に維持しながら行い、第2工程の冷却はプリフォームの外面温度をその内面温度よりも十分に低い温度に達するまで行うとした構成にあっては、特に第1工程では、熱源によるプリフォームの加熱が、加熱炉内の温度上昇を抑制した状態で達成されるので、急速加熱してもプリフォームの外面温度が過剰に加熱されて熱結晶化温度よりも高くなることがなく、プリフォームの白化を防止することができる。
【0025】
続く第2工程においては、熱結晶化温度近傍まで上昇した外面温度を一度下げることにより、プリフォームの内部温度を熱結晶化温度近傍まで上昇させることができる。
【0026】
また第3工程中に、プリフォームの外面温度と内面温度とが共に熱結晶化温度に達しときからプリフォームの2軸延伸ブロー成形できるようになるまでを所定時間に設定した、との構成にあっては、白濁のないボトルの透明なボトルを製造することができるようになる。
【0027】
また第1工程では、プリフォームの内側に、表面に鏡面仕上げ又は金メッキ処理が施された加熱筒体が配置し、プリフォーム加熱時に熱源から出力される熱エネルギーによる温度上昇と、熱源から出力される光エネルギーの加熱筒体表面からの反射とを利用してプリフォームを内外から同時に加熱するものとした構成にあっては、外部温度と内部温度との温度差を小さく抑えた状態で、プリフォーム全体の温度を急速加熱することができる。
【0028】
また加熱炉内の冷却が、加熱炉の下部側から上部側に向かって送風される炉内冷却エアーにより行われるとの構成においては、加熱炉内の温度上昇を抑制することができるため、特に第1工程において、急速加熱したプリフォームの外面温度が熱結晶化温度よりも高くなることを防止することができる。
【0029】
さらに所定時間を8秒としたとの構成にあっては、白濁のない透明なボトルを製造することができると共に、プリフォームの加熱時間によるボトルの製造時間全体の短縮が可能となり、品質の高く量産性に優れたボトルの製造が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明のプリフォームの加熱方法が用いられる製造装置の一部を示す概略平面図である。
【図2】第1ゾーンAを示す図1のII−II線に相当する断面図である。
【図3】第2ゾーンBを示す図1のIII−III線に相当する断面図である。
【図4】第3ゾーンCを示す図1のIV−IV線に相当する断面図である。
【図5】本発明のプリフォームの加熱方法におけるプリフォームの外面温度Ta、内面温度Tb及び反射熱源を構成する加熱筒体の表面温度Tgと経過時間tとの関係を示す工程図である。
【図6】金型温度とボトル容量変化との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しつつ説明する。
図1は、本発明のプリフォームの加熱方法が用いられる製造装置の一部を示す概略平面図、図2は第1ゾーンAを示す図1のII−II線に相当する断面図、図3は第2ゾーンBを示す図1のIII−III線に相当する断面図、図4は第3ゾーンCを示す図1のIV−IV線に相当する断面図である。
【0032】
図1に示すように、製造装置1はターンテーブルやチェーン等を有して構成され、保持部材10(図2参照)に倒立姿勢で保持されたプリフォームPを、保持部材10ごと自転させながら搬送する搬送路Rを囲んで、この搬送路Rに沿って長い四角筒状の耐熱製の加熱炉2を配置されている。この加熱炉2内に設けられた耐熱材料製の隔壁3により、搬送路Rの上流側から第1ゾーンA、第2ゾーンB、第3ゾーンCの順に区画されている。
【0033】
図1及び図2に示すように、第1ゾーンAは、搬送路Rの一方側には、この搬送路Rに沿って延びると共に高さ方向に一定の間隔を有して重ねられた複数の熱源4である近赤外線ヒーター4aを、複数のプリフォームPが並ぶ方向に沿って平行に配置されている。また搬送路Rの他方側には、熱源4に対向して、搬送路Rに沿って等間隔に縦長な複数の吹き出し口5を開設し、冷却エアーe1を導くダクトの先端に組付けられた、吹き出し口用パネル6を起立配置して構成されている。この第1ゾーンAではプリフォームPに対して後述する第1工程S1を行う。
【0034】
また第1ゾーンA内で且つ搬送路R上のプリフォームPの両側の位置には、加熱炉2の下部側から上部側に向かって炉内冷却エアーe2を導くダクトの先端に組付けられた隙間7,7が搬送路Rに沿って形成されている。炉内冷却エアーe2は加熱炉2を全体的に冷却する炉内冷却手段として機能する。
【0035】
なお、吹き出し口用パネル6は、その表面(熱源4に対向する面)を、近赤外線を反射する反射面で形成されており、また各吹き出し口5の一方の側縁(搬送路Rの下流側となる側縁)に、この吹き出し口5から吹き出される冷却エアーe1を、搬送路Rの斜め上流側に導くフィンが半抜き加工状に、斜めに起立した姿勢で付設されている(図示せず)。この冷却エアーe1はプリフォームPの外面を直接冷却するプリフォーム冷却手段として機能する。
【0036】
プリフォームPを保持する保持部材10の内部には、コア部材21とロングガイド部材22とが一体に組み付けされて構成されるガイドコア部材20が保持固定されている。コア部材21及びロングガイド部材22は、共にプリフォームPの内部に延びる細長状の加熱筒体21a及び筒身部22aが設けられており、外側の加熱筒体21aの外表面は鏡面仕上げ又は金メッキ処理等の表面処理が施されている。
【0037】
プリフォームPは内部に加熱筒体21aを配置した状態で保持部材10に保持されている。熱源4である近赤外線ヒーター4aが発した熱及び光のエネルギーの一部は、プリフォームPの外面を加熱するが、同時に熱及び光のエネルギーの他の一部は、プリフォームPの内部に侵入して加熱筒体21aの外表面で反射させられてプリフォームPを内面から加熱する。すなわち、加熱筒体21aは反射熱源としての機能を有している。
【0038】
したがって、第1工程S1では、加熱炉2の全体的を炉内冷却手段による炉内冷却エアーe2で冷却しつつ、プリフォームPに対しては、プリフォーム冷却手段の冷却エアーe1による冷却と、熱源4によるプリフォーム外面に対する加熱と、反射熱源である加熱筒体21aによるプリフォーム内面に対する加熱とが同時に行われる。
【0039】
図1及び図3に示すように、第2ゾーンBは、プリフォーム冷却手段のみを有し、熱源及び炉内冷却手段を有しない空室構造をしている。第2ゾーンBは、両隣の第1ゾーンA及び第3ゾーンCに対して、雰囲気、特に熱雰囲気に関して、できるだけ遮断された状態となるように区画されていて、後述する第2工程S2を行う。
【0040】
図1及び図4に示すように、第3ゾーンCは、第1ゾーンAの構成から炉内冷却手段を省いた構成であり、基本的には各熱源4を構成する複数の近赤外線ヒーター4aのうち最下段に位置する近赤外線ヒーター4aの下面側に放射域を規制する仕切り板8を加えた構成となっており、プリフォームPに対して後述する第3工程S3を行う。
【0041】
なお、図2乃至図4に示すように、第1ゾーンA、第2ゾーンB及び第3ゾーンCを形成する加熱炉2の天面には、加熱炉2内のエアーを炉外に逃がして加熱炉2内の温度を調整するための金網2aが設けられている。
【0042】
図5は、本発明のプリフォームの加熱方法におけるプリフォームの外面温度Ta、内面温度Tb及び反射熱源を構成する加熱筒体の表面温度Tgと経過時間tとの関係を示す工程図である。
【0043】
第1ゾーンAでの第1工程S1は、熱源4を100%出力で稼動させた急速加熱処理であって、この第1工程S1は、外面温度Taが、PETの熱結晶化温度よりもわずかに低い、100〜110℃の範囲内の外面第1温度Ta1に達したところで終了する。本実施例に示す、プリフォームPの外面温度Taが外面初期温度Ta0である30℃から外面第1温度Ta1である102℃までに達する第1工程S1の第1時間(加熱時間)t1は12秒(温度勾配=+6℃/sec)であり、この第1工程S1終了時の内面第1温度Tb1もプリフォームPの外面温度とほぼ等しい温度であった。
【0044】
なお、第1工程S1では、ガイドコア部材20を構成する加熱筒体21aの表面温度は158℃(コア初期温度Tg0)から278℃(コア第1温度Tg1)まで温度勾配+12℃/secで変化しており、プリフォームPを内側から加熱する反射熱源として十分に機能している。
【0045】
第2工程S2では、第1工程S1により所望温度まで急速加熱されたプリフォームPを、外部からの直接的な加熱処理を与えることなく、プリフォーム冷却手段による冷却エアーe1のみによる冷却を行う。これにより、プリフォームPの外面温度Taが急速に下降するが、内面温度Tbは下降するものの加熱筒体21aが有する熱エネルギー(余熱)によって加熱され続けるため、その下降幅は外面温度Taに比較して十分に小さい。
【0046】
本実施例では、プリフォームPの外面温度Taは外面第1温度Ta1である102℃から外面第2温度Ta2である82.4℃近傍まで下降したのに対し、内面温度Tbは内面第1温度Tb1である102℃から内面第2温度Tb2である99.8℃近傍まで小さな下降幅であった。また第2工程S2の第2時間(冷却時間)t2は10秒であり、外面温度Taの温度勾配は約−1.96℃/secであるのに対し、内面温度Tbの温度勾配は約−0.22℃/secであった。
なお、第2工程S2では、第2時間(冷却時間)t2(10秒)間におけるコアガイド部材の加熱筒体21aの表面温度の変化はコア第1温度Tg1の278℃からコア第2温度Tg2の222℃(温度勾配−5.6℃/sec)であった。
【0047】
第3ゾーンCでの第3工程S3は、炉内冷却手段を停止し、熱源4による加熱とプリフォーム冷却手段の冷却エアーe1による冷却とを同時に行うものであるが、熱源4の出力の程度を最大出力の95%程度に抑えた状態に設定し、プリフォームPを、その軸心に沿って、所望する温度分布となるように急速加熱する。
【0048】
本実施例では、外面温度Taの外面第3温度Ta3が、PETの熱結晶化温度(120℃)を超えて161℃に達したところで終了しているが、このとき内面温度Tbの内面第3温度Tb3は141℃であった。また第3工程S3の第3時間(加熱時間)t3は5.6秒であり、外面温度Taの温度勾配は約+14.0℃/secであり、内面温度Tbの温度勾配は約+7.35℃/secと最も高くなる。
【0049】
この第3工程S3では、第3時間(加熱時間)t3(5.6秒)間におけるガイドコア部材20の加熱筒体21aの表面温度の変化はコア第2温度Tg2の222℃からコア第3温度Tg3の270℃(温度勾配約+8.6℃/sec)であり、プリフォームP内面を加熱する反射熱源として、内面温度Tbの急速加熱の達成に大きく寄与している。
【0050】
第3工程S3(第3時間(加熱時間)t3(5.6秒))の終了後、プリフォームPは第3ゾーンCを通過して搬送ゾーンDに至る(図1参照)。この搬送ゾーンDには、加熱状態にあるプリフォームPを保持部材10ごとブロー成形装置(図示せず)に移送する領域であり、移送されたプリフォームPは割り金型が組み付けられて2軸延伸ブロー成形が行われる。このように、搬送ゾーンDではプリフォームPが図示しないブロー成形装置に送られるが、これを図5に示すと、第4工程S4における第4時間(移送時間)t4(5sec)に相当する。
【0051】
第4工程S4では、外面温度Taが下降するが、内面温度TbはプリフォームPの外面からの伝熱があるため、外面温度Taよりも小さな温度勾配で下降する。
【0052】
そして、第3工程S3において、外面温度Ta及び内面温度Tbが共にPETの熱結晶化温度(120℃)を超えたときから所定時間tx(約8se)経過した後であって、且つ第4工程S4が開始されて第4時間(移送時間)t4(5sec)経過後に、2軸延伸ブロー成形を開始することにより、白濁のない透明なボトルの成形が達成される。
【0053】
なお、このときのプリフォームPの各温度は、外面温度Taが外面第4温度Ta4である150.7℃、内面温度Tbが内面第4温度Tb4である138℃であった。
【0054】
この本発明の実測結果によると、常温のプリフォームPをボトルに2軸延伸ブロー成形できる温度まで加熱するに要する時間、すなわち第1工程S1の第1時間(加熱時間)t1、第2工程S2の第2時間(冷却時間)t2、第3工程S3の第3時間(加熱時間)t3及び第4工程S4の第4時間(移送時間)t4の合計時間は、(12+10+5.6+5=32.6)秒であった。
【0055】
図6は金型温度とボトル容量変化との関係を示すグラフである。実線が本発明の加熱方法を使用して形成したボトルの例であり、破線が比較例として従来の加熱方法を使用して形成されたボトルの例を示している。
【0056】
図6の結果から、従来の加熱方法の場合には金型温度が87℃を超えるとボトルの収縮が始まるが、本発明の加熱方法ではボトルの収縮が始まる温度を114と、従来に比較して27℃程度に高めることが可能である。
【0057】
このような効果は、従来の加熱方法ではブロー成形時のプリフォームPの外面温度Taが120℃、内面温度が111℃であったのに対し、本発明の加熱方法ではプリフォームPの外面温度Taが150.7℃(外面第4温度)、内面温度が138℃(内面第4温度Tb4)としたことによるものである。
【0058】
これら結果から、ブロー成形用の金型の温度を87℃から114℃に高めた状態で、プリフォームをブロー成形してボトルを形成しても、ブローボトルの容量変化を低く抑えることができる。
またブロー成形時の金型の温度を、従来に比較して高温とすることができるため、成形後のブローボトルの耐熱性を向上させることができる。
【0059】
また金型の温度を現状の温度(87℃)とした場合には、ブロー成形時間を短縮することができるため、ブロー成形スピードを高めることができ、その結果量産性を向上させることができる。
また成形品の寸法精度を高めることができ、ボトル間の寸法のばらつきを少なくすることができる。
【0060】
さらにはブロー成形時のプリフォームの内面温度を、従来111℃であったのを、本発明では138℃(内面第4温度Tb4)と高くすることができるため、肉厚の大きなプリフォームや、延伸倍率の高いプリフォームであってもボイドの発生を抑えることができる。
【0061】
以上、実施例に沿って本発明の構成とその作用効果について説明したが、本発明の実施の形態は上記実施例に限定されるものではない。
【0062】
例えば、上記実施例では、第1工程S1におけるプリフォームPの外面温度Taが、外面初期温度Ta0=30℃の場合(コア初期温度Tg0は158℃)となる加熱工程の第1サイクルについて説明したが、第2サイクル以降は、コア部材21が加熱されて加熱筒体21aの表面温度Tgはコア初期温度Tg0は158℃よりも高いTg0’(例えばTg0’=200℃)となるため、この場合の第1工程S1’の時間がt1’が短縮される。よって、常温のプリフォームPをボトルに2軸延伸ブロー成形できる温度まで加熱するに要する合計時間をさらに短縮することが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明のプリフォームの加熱方法は、PET製射出成形品であるプリフォームを2軸延伸ブロー成形して所定形状のボトルを製造する分野における用途展開をさらに広い領域で図ることができる。
【符号の説明】
【0064】
1 ; 製造装置
2 ; 加熱炉
3 ; 隔壁
4 ; 熱源
4a ; 近赤外線ヒーター
5 ; 吹き出し口
6 ; 吹き出し口用パネル
7 ; 隙間
8 ; 仕切り板
10 ; 保持部材
20 ; ガイドコア部材
21 ; コア部材
21a ; 加熱筒体
22 ; ロングガイド部材
22a ; 筒身部
A ; 第1ゾーン
B ; 第2ゾーン
C ; 第3ゾーン
D ; 搬送ゾーン
e1 ; 冷却エアー
e2 ; 炉内冷却エアー
P ; プリフォーム
Ta ; 外面温度
Tb ; 内面温度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱炉(2)内を移動するプリフォーム(P)に二軸延伸ブロー成形を施してボトルを成形するプリフォームの加熱方法であって、
加熱炉(2)内を冷却すると共に、回転するプリフォーム(P)の外面への冷却エアー(e1)の吹き付けと熱源(4)からの加熱とを同時に行って前記プリフォーム(P)の外面温度(Ta)と内面温度(Tb)とを調整しながら前記プリフォーム(P)の熱結晶化温度よりもわずかに低い温度となるまで急速加熱する第1工程(S1)と、
前記加熱炉(2)内の冷却と熱源(4)による加熱を停止した状態で、前記冷却エアー(e1)を前記プリフォーム(P)の外面に吹き付け、回転するプリフォーム(P)の外面温度(Ta)を冷却する第2工程(S2)と、
前記加熱炉(2)内の冷却を停止した状態で、回転する前記プリフォーム(P)の外面への前記冷却エアー(e1)の吹き付けと前記熱源(4)からの加熱とを同時に行って前記プリフォーム(P)を急速加熱する第3工程(S3)と、を有することを特徴とするプリフォームの加熱方法。
【請求項2】
第1工程(S1)の冷却はプリフォーム(P)の外面温度(Ta)と内面温度(Tb)とをほぼ同じ温度に維持しながら行い、第2工程(S2)の冷却はプリフォーム(P)の外面温度(Ta)をその内面温度(Tb)よりも十分に低い温度に達するまで行う請求項1記載のプリフォームの加熱方法。
【請求項3】
第3工程(S3)中に、プリフォーム(P)の外面温度(Ta)と内面温度(Tb)とが共に熱結晶化温度に達しときから前記プリフォーム(P)の2軸延伸ブロー成形できるようになるまでを所定時間(tx)に設定した請求項1又は2記載のプリフォームの加熱方法。
【請求項4】
第1工程(S1)では、プリフォーム(P)の内部に、表面に鏡面仕上げ又は金メッキ処理が施された加熱筒体(21a)を配置し、プリフォーム加熱時に熱源(4)から出力される熱エネルギーによる温度上昇と、前記熱源(4)から出力される光エネルギーの前記加熱筒体(21a)表面からの反射とを利用してプリフォーム(P)を内外から同時に加熱するものである請求項1乃至3のいずれか一項に記載のプリフォームの加熱方法。
【請求項5】
加熱炉(2)内の冷却が、前記加熱炉(2)の下部側から上部側に向かって送風される炉内冷却エアー(e2)により行われる請求項1乃至4のいずれか一項に記載のプリフォームの加熱方法。
【請求項6】
所定時間(tx)を8秒とした請求項3乃至5のいずれか一項に記載のプリフォームの加熱方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−245753(P2012−245753A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−121267(P2011−121267)
【出願日】平成23年5月31日(2011.5.31)
【出願人】(000006909)株式会社吉野工業所 (2,913)
【Fターム(参考)】