説明

プリプレグ、及び前記プリプレグから製造される成形体

本発明は、粉末状の反応性ポリウレタン組成物の使用により得られるプリプレグ、及びこのプリプレグから製造される複合部材(成形体)に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粉末状の反応性ポリウレタン組成物の使用により得られるプリプレグ、及びこのプリプレグから製造される複合材部材(成形体)に関する。
【0002】
様々な成型プロセス、例えば反応射出成形法(Reaction-Transfer-Moulding、RTM)は、強化繊維の型への導入、型の閉鎖、架橋可能な樹脂調製物の型への導入、及び引き続いた樹脂の架橋(典型的には熱供給による架橋)を含む。
【0003】
このようなプロセスの制限の1つは、型に強化繊維を入れるのが比較的困難なことである。織物又は単一方向布の各層は切断して、様々な型の形状に適合させる必要がある。このことは時間がかかり、また煩雑であり、とりわけ成形体が発泡体、又は他の芯材を含むのが望ましい場合にはそうである。取り扱いが容易で、なお変形可能性を有する予備成形可能な繊維強化体が、ここでは望ましい。
【0004】
プリプレグの形の繊維強化材料は、代替的な湿式レイアップ(wet-lay-up)技術と比べて取り扱い性がよく、加工の際の効率が高いことから、すでに多くの工業的な適用で使用されている。
【0005】
このようなシステムの工業的な使用者は、迅速なサイクル時間やより高い貯蔵安定性の他に、室温でプリプレグを切断できることを求めており、この際に各プリプレグ層の自動切断及びレイアップにおいても、しばしば粘着性のマトリックス材料によって切断工具が汚れないことが望まれている。
【0006】
ポリエステル、ビニルエステル、及びエポキシ系に加えて、架橋性マトリックス系の範囲には一連の特別な樹脂がある。これにもその靭性、損傷耐性及び強度によってポリウレタン樹脂が当てはまり、とりわけ引き抜き成形法による複合材製異形材を製造するために使用される。今日、欠点としてはしばしば、使用されるイソシアネートの毒性が挙げられる。
【0007】
ポリウレタン複合材はまた、ビニルエステル、不飽和ポリエステル(UPE)、又はUPE−ウレタン−ハイブリッド樹脂と比べて、優れた靭性を有する。
【0008】
プリプレグ、及びプリプレグから製造されるエポキシ系ベースの複合材は例えば、WO 98/50211、US 4,992,228、US 5,080,857、US 5,427,725、GB 2007676、GB 2182074、EP 309 221、EP 297 674、WO 89/04335、US 5,532,296、及びUS 4,377,657、US 4,757,120に記載されている。
【0009】
WO 2006/043019には、エポキシ樹脂−ポリウレタン粉末ベースのプリプレグ製造法が記載されている。
【0010】
さらに、マトリックスとして粉末状熱可塑性プラスチックをベースとするプリプレグは、公知である。
【0011】
US 2004/0231598には、特別な加速チャンバによって静電気荷電により粒子を導入する方法が記載されている。この装置は、熱可塑性樹脂製のプリプレグを製造するためのガラス基材、アラミド基材、又は炭素基材の被覆に用いられる。樹脂としては、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリフェニルスルホン(PPS)、ポリイミド(PI)、ポリアミド(PA)、ポリカーボネート(PC)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリウレタン(PU)、ポリエステル、及びフルオロポリマーが挙げられる。これらから製造される熱可塑性プリプレグテキスタイルは、固有の靭性、良好な粘弾減衰特性、非限定的な貯蔵性、良好な耐薬品性、及び再利用性を示す。
【0012】
WO 98/31535には、粉末含浸法が記載されており、ここで含浸されるガラス又は炭素の繊維ストランドは、粒子/液体の混合物若しくは粒子/ガスの混合物と、既定の速度特性で衝突される。ここでこの粉末は、セラミック材料若しくは熱可塑性材料からの粉末、とりわけ熱可塑性ポリウレタンから成る。
【0013】
WO 99/64216には、プリプレグ、及び複合材、並びにこれらの製造方法が記載されており、ここでは個々の繊維を被覆できるように、小さなポリマー粒子のエマルジョンが用いられる。粒子のポリマーは粘度が少なくとも5000センチポアズであり、熱可塑性樹脂であるか、又は架橋性ポリウレタンポリマーである。
【0014】
EP 0590702には、プリプレグ製造のための粉末含浸が記載されており、ここでこの粉末は、熱可塑性プラスチックと反応性モノマー若しくはプレポリマーとからの混合物から成る。
【0015】
WO 2005/091715は同様に、プリプレグ製造のための熱可塑性樹脂の使用を記載している。
【0016】
Michaeli et al.は、Coatings & Composite Materials , No.19 , p37-39, 1997で、熱可塑性ポリウレタン(TPUと呼ぶ)を用いた引き抜き成形法のための粉末技術の発展を記載している。
【0017】
さらにProcessing and properties of thermoplastic Polyurethane prepreg. (Ma, C. C. M.; Chiang, C. L. Annual Technical Conference - Society of Plastics Engineers (1991 ), 49th 2065-9.)の論文には、溶剤と水を含むTPU系をベースとする熱可塑性ポリウレタン(TPU)のプリプレグが開示されている。
【0018】
2成分ポリウレタン(2K−PUR)がベースのマトリックスを有するプリプレグは公知である。
【0019】
2成分ポリウレタンのカテゴリーには基本的に、古典的な反応性ポリウレタン樹脂系が含まれる。これは基本的には、2つの別個の成分からの系である。1つの成分の基準成分は常にポリイソシアネートであるが、これは第二のポリオールの場合、若しくはより新しい発展では、アミノ−ポリオール混合物、又はアミン−ポリオール混合物である。両方の部分はまず、加工の直前に相互に混合する。その後、重付加により化学的な硬化を行い、ポリウレタン若しくはポリ尿素からの網目構造を形成する。
【0020】
2成分系は両成分の混合後、加工時間(作業時間、ポットライフ)が限られている。と言うのも、始まっている反応は次第に粘度を向上させ、最終的に系のゲル化に繋がるからである。ここで多くの影響の度合いにより、効果的な加工可能時間が決まる:反応対象の反応性、触媒、濃度、溶解性、湿分、NCO/OH比、及び周辺温度が、特に重要である(Lackharze, Stoye/Freitag, Hauser-Verlag 1996, 210/212p)。
【0021】
このような2成分ポリウレタン系ベースのプリプレグの欠点は、複合材へのプリプレグ加工のための時間が短いことである。よってこのようなプリプレグは、数時間以上は貯蔵できず、もちろん一日は貯蔵できない。
【0022】
以下、2成分ポリウレタン系をベースとする、ポリウレタンプリプレグ若しくはポリウレタン複合材について述べる。
【0023】
K. Reckerの論文では、SMC部材用の加工特性を特に考慮した、樹脂マット法(Harzmattenverfahren)用の2成分ポリウレタン系の開発を報告している(Baypreg ein neuer POLYU RETHAN-Werkstoff fuer das Harzmattenverfahren , Recker, Klaus, Kunststoffe-Plastics 8,1981)。
【0024】
WO 2005/049301は、触媒活性の2成分ポリウレタン系を開示しており、ここではポリイソシアネート成分とポリオールとを混合し、引き抜き成形法によって複合材に加工する。
【0025】
WO 2005/106155には、建築産業用の繊維強化複合材が開示されており、これは長繊維注入(LFI:Long-Fiber-Injection)技術によって、2成分ポリウレタン系を用いて製造される。
【0026】
JP 2004/196851には、ポリマー性メチレンジフェニルジイソシアネート(MDI)、及び特別なOH基含有化合物をベースとする2成分ポリウレタンからのマトリックスを用いた、炭素繊維と有機繊維、例えば麻から成る複合材が記載されている。
【0027】
EP 1 319 503は、コア層(例えば紙のハニカム構造(Papierwabe))を包む、2成分ポリウレタン樹脂で含浸した繊維−ラミネート用の特別なポリウレタン被覆層を用いる、ポリウレタン複合材を記載している。この2成分ポリウレタン樹脂は例えば、ポリプロピレントリオールと、エチレンオキシド−プロピレンオキシドコポリマーのジオールとの混合物、及びMDIから成る。WO 2003/101719には、ポリウレタンベースの複合材、及びその製造方法が記載されている。これは、規定の粘度と特定のゲル化時間を有する、2成分ポリウレタンである。
【0028】
2成分ポリウレタン系は同様に、以下で論じられている:"Fiber reinforced polyurethane composites: shock tolerant components with particular emphasis on armor plating" (Ratcliffe, Colin P.; Crane, Roger M.; Santiago, Armando L., AMD (1995), 211 (Innovative Processing and Characterization of Composite Materials), 29-37)、及びFiber-reinforced polyurethane composites. I. Process feasibility and morphology. (Ma, Chen Chi M.; Chen, Chin Hsing. International SAMPE Symposium and Exhibition (1992), 37 (Mater. Work. You 21 st Century), 1062-74)。
【0029】
様々な結合剤ベースは別にして、適切な湿分硬化性塗料はその組成において、またその特性においても、2成分系とほぼ同じである。ここで原則的には同じ溶剤、顔料、充填材、及び助剤が使用できる。2成分塗料とは異なりこれらの系は、安定化という理由から、適用前の湿分は全く許容されない。
【0030】
非反応性PURエラストマーをベースとする、物理的に乾燥した系もまた公知である。これは高分子状、線状、ジオールとジイソシアネートからの熱可塑性ウレタン、好適にはMDI、TDI、HDI、及びIPDIである。このような熱可塑性系は通常、粘度が非常に高く、よってまた加工温度が非常に高い。このことにより、プリプレグのための使用はかなり困難になる。
【0031】
繊維結合を有するプリプレグを製造する際、反応性の系での粉末の使用は、むしろ稀なことであり、これまで僅かな使用領域に限定されていた。粉末を繊維表面に施与するためにかなり慣用の方法は、流動床法である(fluidized bed impregnation)。上方に方向付けられた流れにより粉末粒子は、液体に似た特性を有する状態になる。この方法は、EP 590 702で適用されている。ここで各繊維束のストランドは相互に寄り合わされ、流動床で粉末により被覆される。ここで前記粉末は、反応性粉末と熱可塑性粉末とからの混合物から成り、これによりマトリックスの特性が最適化される。各ロービング(繊維束)は最終的にまとめられ、複数の層を16barの圧力で約20分間プレスする。この温度は、250〜350℃の間で変わる。ただししばしば流動床法では不規則な層が生じ、とりわけストランドが相互に絡み合わない(nicht auseinander gezogen)場合にはそうである。
【0032】
これについてはUS 20040231598で、流動床法に似た作用をもたらす方法が紹介されている。ここで空気流は粒子を基材に運び、特別な構造により、粉末の均一な堆積が起こる。
【0033】
US 20050215148は、さらなる方法を記載している。ここでは上述の装置によって、繊維上での均一な粉末分布が達成される。ここでその粒径は、1〜2000μmに達する。複数の試験で、1つ又は2つの面が被覆される。粉末の均一な施与により、引き続きプリプレグをプレス後、空気を入れずにラミネートが生成される。
【0034】
別の出願WO 2006/043019は、粉末形態のエポキシ末端及びアミノ末端樹脂の適用を記載している。ここでこの粉末は混合され、繊維上に加えられる。引き続き粒子が焼結される。粒径は1〜3000μm、しかしながら好適には1〜150μmである。
【0035】
このように粒径をより小さな直径に限定することは、ミシガン州立大学の研究でも推奨されている。これは、直径が小さな粒子は、直径が大きい粒子よりも各フィラメント間の中空に侵入しやすいという理論である(S. Padaki, LT. Drzal: a Simulation study on the effects of particle size on the consolidation of polymer powder impregnated tapes, Department of Chemical Engineering, Michigan State University, Composites: Part A (1999), pp. 325-337)。
【0036】
プリプレグ技術の他にまた、他の古典的な方法でも反応性の粉末系が使用され、例えば巻取り技術(Wickeltechnik)(M. N. Ghasemi Nejhad, K.M. Ikeda: Design, manufacture and characterization of composites using on-line recycled thermoplastic powder impregnation of fibres and in-situ filament winding, Department of Mechanical Engineering, University of Hawaii at Manoa, Journal of Thermoplastic Composite Materials, VoI 11 , pp. 533-572, November 1998)、又は引き抜き成形法でも使用される。引き抜き成形法のためには例えば、繊維側(トウプレグ)を粉末で被覆し、まずいわゆるトウプレグとして巻取って、貯蔵する。これを製造するための手法の1つは、SAMPE Journalに記載された論文にある(R.E. Allred, S. P. Wesson, D. A. Babow: powder impregnation studies for high temperature towpregs, Adherent Technologies, SAMPE Journal, Vol. 40, No. 6, pp. 40-48, November/ December 2004)。さらなる試験では、このようなタウプレグを引き抜き成形法によって一緒にプレスし、硬化させて材料部材にする(N. C. Parasnis, K. Ramani, H. M. Borgaonkar : Ribbonizing of electrostatic powder spray impregnated thermoplastic tows by pultrusion, School of Mechanical Engineering, Purdue University, composites, Part A, Applied science and manufacturing, Vol. 27, pp. 567-574, 1996)。タウプレグの製造と、引き続いたプレスが引き抜き成形法で既に熱硬化系によって行われていたとしても、この方法ではこれまでほとんど、熱可塑系のみが使用されてきた。
【0037】
本発明の課題は、問題なく取り扱える、つまり毒性のないポリウレタンベースのプリプレグ系を発見することであり、この系は熱可塑性ポリウレタン系の高粘度を有さず、このため繊維若しくは織布の含浸が困難ではなく、さらに2成分ポリウレタン系の加工時間も短くないものである。よって本発明のさらなる課題は、ポリウレタンマトリックス材料を有する、単純な方法で製造可能なプリプレグを見出すことであり、その主な特徴は、プリプレグのハンドリングと貯蔵安定性に基づくものである。
【0038】
本発明によるプリプレグは、未架橋のマトリックス材料の粘度が充分に低ければ有利であり、これにより複合材部材製造の際に繊維状担体の濡れ性が保証され、ここでチキソトロピーも有利であり得、これにより垂直方向の構成部材への樹脂の流出を防止できる。マトリックス材料製造のために適切な出発物質を選択することにより、反応しきっていないマトリックス材料と、反応の完全終了までの間に、充分に長い加工時間が保証できる(複合材製造時のその都度の適用に依存する)。
【0039】
驚くべきことに、反応性の粉末状ポリウレタン組成物によって貯蔵安定性の、また反応性の、このため複合材部材製造時に架橋可能なポリウレタンベースのプリプレグが製造でき、このプリプレグは建築技術、自動車技術、航空及び宇宙航空技術、エネルギー技術(風力発電所)、及びボートや船舶の建造といった様々な適用において高性能複合材の製造に使用できる。本発明により含まれる反応性の粉末状ポリウレタン組成物は、環境に優しく、コスト的に有利であり、良好な機械的特性を有し、容易に加工でき、硬化後には良好な耐候性により、また硬度と可撓性との秤量比によって特徴付けられる。
【0040】
本発明の対象は、基本的に
A)少なくとも1つの繊維状担体と、
B)マトリックス材料としての、少なくとも1つの反応性の、粉末状ポリウレタン組成物と
から構成される、プリプレグである。
【0041】
本発明によるプリプレグは、マトリックス材料が少なくとも40℃のTgを有する限り、室温で非常に貯蔵安定性が高い。このことは含まれる反応性の粉末状ポリウレタンによって少なくとも数日、室温で貯蔵安定性であり、またこのプリプレグは通常数週間、40℃以下で貯蔵安定性である。
【0042】
しかしながらこれらのプリプレグは適用と固定化に応じて、好ましくは反応性の粉末状ポリウレタン組成物の熱処理によって、好ましくは反応性の粉末状ポリウレタン組成物の焼結によって架橋することなく、粘着性ではなく、このため非常に良好に取り扱うことができ、さらに加工できる。従って、本発明により使用される反応性の粉末状ポリウレタン組成物は、非常に良好な接着性と繊維状担体への分散性を有する。
【0043】
プリプレグを複合部材(複合材料)へとさらに加工する間、例えば高められた温度でプレスする間、繊維状担体の非常に良好な含浸が行われ、これにより、この際に液状で低粘度の反応性ポリウレタン組成物は架橋反応前に担体繊維を非常に良好に濡らすことができ、それから比較的高い温度での反応性ポリウレタン組成物の架橋反応によりゲル化が起こる、若しくはすべてのポリウレタンマトリックスが完全に硬化する。
【0044】
使用される反応性粉末状ポリウレタン組成物の組成と、場合により添加される触媒によって、複合部材製造の際に架橋反応の速度も、マトリックスの特性も、広い範囲で変えることができる。
【0045】
本発明の範囲でマトリックス材料とは、プリプレグ製造のために使用される、反応性の粉末状ポリウレタン組成物と規定され、本明細書でプリプレグとは、繊維上に固定された若しくは接着されている、なお反応性のポリウレタン組成物である。このマトリックスは、反応性の粉末状ポリウレタン組成物からの、複合材料内で架橋されたマトリックス材料として定義される。
【0046】
担体
本発明において繊維状担体は、繊維状材料から成る(しばしば、強化繊維とも呼ばれる)。一般的には、繊維から成るあらゆる材料が適しているが、好ましくはガラス、炭素、プラスチック、例えばポリアミド(アラミド)若しくはポリエステル、天然繊維若しくは鉱物繊維材料、例えば玄武岩繊維、又はセラミック繊維からの繊維状材料(酸化アルミニウムベース及び/又は酸化珪素ベースの酸化物繊維)を使用する。複数の繊維の混合物、例えばアラミド繊維とガラス繊維との織布の組み合わせ、又は炭素繊維とガラス繊維との組み合わせも、用いることができる。同様にハイブリッド複合材部材が、様々な繊維状担体からのプリプレグによって製造できる。
【0047】
ガラス繊維は主に、相対的に値段が低いことから、もっともよく使用される種類の繊維である。ここで原則的には、ガラスベースのあらゆる種類の強化材が適している(E−ガラス繊維、S−ガラス繊維、R−ガラス繊維、M−ガラス繊維、C−ガラス繊維、ECR−ガラス繊維、D−ガラス繊維、AR−ガラス繊維、又は中空ガラス繊維)。
【0048】
炭素繊維は一般的に、高性能複合材料で使用され、ここではまたガラス繊維よりも低い密度と同時に高い強度が重要な要素である。炭素繊維(カーボンファイバーとも)は、炭素含有出発材料から工業的に製造される繊維であり、黒鉛状に配置された炭素での熱分解により変換されるものである。
【0049】
等方性と異方性の区別は次のように行う。等方性繊維は強度が非常に弱く、技術的意義がより低い。異方性繊維は強度が高く、同時により僅かな破断点伸びで高い剛性を示す。
【0050】
ここで天然繊維とは、植物性材料及び動物性材料から得られる、あらゆるテキスタイル繊維と繊維材料である(例えば木材繊維、セルロース繊維、木綿繊維、麻繊維、ジュート繊維、亜麻繊維、サイザル麻繊維、竹繊維)。
【0051】
アラミド繊維は炭素繊維に似て否定的な熱膨張係数を有する。つまり、加熱時に短くなる。その比強度と弾性モジュールは、炭素繊維のものよりも明らかに低い。マトリックス樹脂の肯定的な膨張係数と結びついて、寸法精度(masshaltig)が高い部材が製造できる。炭素繊維で強化されたプラスチックと比べて、アラミド繊維複合材料の圧縮強度は、明らかにより低下する。アラミド繊維について公知の商標は、DuPont社のNomex(登録商標)とKevlar(登録商標)、又は帝人のTeijinconex(登録商標)、Twaron(登録商標)、及びTechnora(登録商標)である。特に適しており、かつ好ましいのは、ガラス繊維、炭素繊維、アラミド繊維、又はセラミック繊維からの担体である。
【0052】
繊維状材料とは、テキスタイル平面構造物(Flaechengebilde)である。適しているのは、フリース(Vliese)、同様にいわゆる編物(Maschenware)、例えば編み生地(Gewirke)、及びニット(Gestricke)、また非編物状の結合体(nicht maschige Gebinde)、例えば平織り布(Gewebe)、単一方向布(Gelege)、又は斜め織り布(Geflechte)からのテキスタイル平面構造物である。さらに、長繊維材料と短繊維材料とが、担体として区別される。同様に本発明によれば、ロービングとヤーンが適している。上述のあらゆる材料が、本発明の範囲において繊維状担体として適している。
【0053】
強化繊維についての概観は、"Composites Technologien, Paolo Ermanni (Version 4), Script zur Vorlesung ETH Zuerich, 2007年8月,第7章にある。
【0054】
マトリックス材料
原則的には、あらゆる粉末状の反応性ポリウレタン組成物がマトリックス材料として適している。適切なポリウレタン組成物は本発明によれば、NCO官能基に対して反応性の1つの官能基を有するポリマーb)(結合剤、樹脂ともいう)と、一時的に不活性化された、つまり内的に(intern)ブロックされた、及び/又はブロック化剤でブロックされたジイソシアネート又はポリイソシアネート(硬化剤a、成分aともいう)との混合物から成る。
【0055】
ポリマーb)(結合剤)の官能基としては、ヒドロキシ基、アミノ基、及びチオール基が適しており、これらは遊離イソシアネート基と付加反応し、これによりポリウレタン組成物が架橋し、硬化される。結合剤成分は、固体樹脂特性を有さなければならない(室温よりも高いガラス転移点)。結合剤として考慮されるのは、OH数が20〜500mgKOH/gであり、平均モル質量が250〜6000g/molのポリエステル、ポリエーテル、ポリアクリレート、ポリカーボネート、及びポリウレタンである。特に好ましいのは、OH数が20〜150mgKOH/g、平均分子量が500〜6000g/モルのヒドロキシル基含有ポリエステル又はポリアクリレートである。当然のことながら、かかるポリマーの混合物を使用することもできる。官能基を有するポリマーb)の量は、成分b)のあらゆる官能基に対して、成分a)のウレトジオン基が0.3〜0.7当量であるように選択する。
【0056】
硬化剤成分a)として考慮されるのは、ブロック化剤でブロックされた、又は内的にブロックされた(ウレトジオン)ジイソシアネート及びポリイソシアネートである。
【0057】
本発明により使用されるジイソシアネート及びポリイソシアネートは、任意の芳香族、脂肪族、脂環式、及び/又は(環式)脂肪族のジイソシアネート及び/又はポリイソシアネートから成る。
【0058】
芳香族のジイソシアネート又はポリイソシアネートとして適しているのは、原則的にあらゆる公知の芳香族化合物である。特に適しているのは、1,3−及び1,4−フェニレンジイソシアネート、1,5−ナフチレン−ジイソシアネート、2,6−トルエンジイソシアネート、2,4−トルエンジイソシアネート(2,4−TDI)、2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(2,4’−TDI)、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、モノマー性ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)とオリゴマー性ジフェニルメタンジイソシアネート(ポリマー性MDI)とからの混合物、キシレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、及びトリイソシアナトトルエンである。
【0059】
適切な脂肪族のジイソシアネート又はポリイソシアネートは、有利には3〜16個の炭素原子、好適には4〜12個の炭素原子を、直鎖状又は分枝鎖状のアルキレン基中に有し、適切な脂環式又は(環式)脂肪族のジイソシアネートは有利には4〜18個の炭素原子、好適には6〜15個の炭素原子を、シクロアルキル基中に有する。(環式)脂肪族のジイソシアネートとは、環及び脂肪族で同時に結合されたNCO基であると、当業者には充分理解される(例えばイソホロンジイソシアネートがこれに該当する)。これに対して脂環式のジイソシアネートとは、脂環式環にのみ直接結合されたNCO基を有するもの、例えばH12MDIである。その例は、シクロヘキサンジイソシアネート、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、エチルシクロヘキサンジイソシアネート、プロピルシクロヘキサンジイソシアネート、メチレンジエチルシクロヘキサンジイソシアネート、プロパンジイソシアネート、ブタンジイソシアネート、ペンタンジイソシアネート、ヘキサンジイソシアネート、ヘプタンジイソシアネート、オクタンジイソシアネート、ノナンジイソシアネート、ノナントリイソシアネート、例えば4−イソシアナトメチル−1,8−オクタンジイソシアネート(TIN)、デカンジイソシアネート、デカントリイソシアネート、ウンデカンジイソシアネート、ウンデカントリイソシアネート、ドデカンジイソシアネート、及びドデカントリイソシアネートである。
【0060】
好まくは、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、ジイソシアナトジシクロヘキシルメタン(H12MDI)、2−メチルペンタンジイソシアネート(MPDI)、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート/2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート(TMDI)、ノルボルナンジイソシアネート(NBDI)を使用する。極めて特に好ましくは、IPDI、HDI、TMDI、及びH12NMDIを使用し、ここでイソシアヌレートも使用できる。
【0061】
同様に、4−メチルシクロヘキサン−1,3−ジイソシアネート、2−ブチル−2−エチルペンタメチレンジイソシアネート、3(4)−イソシアナトメチル−1−メチルシクロヘキシルイソシアネート、2−イソシアナトプロピルシクロヘキシルイソシアネート、2,4’−メチレンビス(シクロヘキシル)ジイソシアネート、1,4−ジイソシアナト−4−メチルペンタンである。
【0062】
もちろん、ジイソシアネートとポリイソシアネートとの混合物も使用できる。
【0063】
さらに好適には、オリゴイソシアネート又はポリイソシアネートを使用し、これらは上述のジイソシアネート若しくはポリイソシアネート、又はこれらの混合物から、ウレタン構造、アロファネート構造、尿素構造、ビウレット構造、ウレトジオン構造、アミド構造、イソシアヌレート構造、カルボジイミド構造、ウレトンイミン構造、オキサジアジントリオン構造、又はイミノオキサジアジンジオン構造による結合によって製造できる。特に適しているのは、イソシアヌレート、とりわけIPDI及びHDIからのイソシアヌレートである。
【0064】
本発明により使用されるポリイソシアネートは、ブロックされている。このために考慮されるのは、外的な(extern)ブロック化剤、例えばアセト酢酸エチルエステル、ジイソプロピルアミン、メチルエチルケトオキシム、マロン酸ジエチルエステル、ε−カプロラクタム、1,2,4−トリアゾール、フェノール若しくは置換フェノール、及び3,5−ジメチルピラゾールである。好ましく使用される硬化剤成分は、イソシアヌレート原子団と、ε−カプロラクタムでブロックされたイソシアネート構造とを有する、IPDI付加生成物である。
【0065】
内的なブロックも可能であり、これを用いるのが好ましい。内的なブロックは、ウレトジオン構造を介した二量体形成によって行う。ウレトジオン構造が高められた温度で再び、元々存在していたイソシアネート構造に開裂し、これにより結合剤との架橋が始まるのである。
【0066】
反応性の粉末状ポリウレタン組成物は任意で、さらなる触媒を含むことができる。その触媒とは、0.001〜1質量%の量の有機金属触媒、例えばジラウリン酸ジブチルスズ、亜鉛オクトエート、ビスマスネオデカノエート、又は第3級アミン、例えば1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタンである。
【0067】
反応性の粉末状ポリウレタン組成物を製造するためには、粉末塗料技術において通常の添加剤、例えば均展剤、例えばポリシリコーン又はアクリレート、光安定剤、例えば立体障害アミン、又は例えばEP0669353に記載されたその他の助剤を併せて0.05〜5質量%の量で添加することができる。充填剤及び顔料、例えば二酸化チタンを全組成物の最大30質量%の量で添加することができる。
【0068】
本発明の範囲において反応性とは、本発明により使用されるポリウレタン組成物が160℃の温度から、担体の種類に応じて硬化することを意味する。
【0069】
本発明により使用される反応性の粉末状ポリウレタン組成物は、通常の条件、例えばDBTL触媒で160℃から、通常は約180℃からで硬化する。本発明により使用されるポリウレタン組成物の硬化時間は、通常5〜60分以内である。
【0070】
本発明の好ましい対象は、反応性の粉末状ウレトジオン基含有ポリウレタン組成物からのマトリックス材料を有するプリプレグであって、このプルプレグは基本的に以下の成分a)〜d):
a)脂肪族、(環式)脂肪族、又は脂環式のウレトジオン基含有ポリイソシアネート、及びヒドロキシ基含有化合物からの重付加化合物をベースとする少なくとも1つのウレトジオン基含有硬化剤、
ここで前記硬化剤は40℃未満で固体状で、125℃超では液状で存在し、その遊離NCO含分は5質量%未満であり、そのウレトジオン基含分は3〜25質量%であり、
b)40℃未満では固体で、125℃超では液状で存在し、OH数が20〜200mgKOH/gの、少なくとも1つのヒドロキシ基含有ポリマー、
c)場合により少なくとも1つの触媒、
d)場合により、ポリウレタン化学で公知の助剤及び添加剤
を含むものであり、
前記2つの成分a)及びb)について、成分a)のウレトジオン基が、成分b)のあらゆるヒドロキシ基に対して0.3〜0.7、好ましくは0.45〜0.55の当量で存在する、プリプレグである。後者は、0.9〜1.1対1のNCO/OH比に相当する。
【0071】
ウレトジオン基を含有するポリイソシアネートは十分に公知であり、例えばUS4476054、US4912210、US4929724、並びにEP417603に記載されている。産業的に関連のある、イソシアネートのウレトジオンへの二量体化方法に関する包括的な概説は、J. Prakt. Chem. 336(1994) 185-200から得られる。一般的に、イソシアネートのウレトジオンへの反応は溶解性の二量体化触媒、例えばジアルキルアミノピリジン、トリアルキルホスフィン、亜リン酸トリアミド又はイミジダゾール(Imididazol)の存在下で行われる。場合により溶剤中で、しかし好ましくは溶剤の不存在下で実施するこの反応は、所望の変換率を達成した際に、触媒毒の添加により停止させる。次いで過剰のモノマーイソシアネートを短路蒸発により分離する。この触媒が十分に揮発性である場合、この反応混合物から、モノマー分離の進行において触媒を取り除くことができる。この場合、触媒毒の添加を省いてよい。原則的に、ウレトジオン基を含有するポリイソシアネート製造のためには、広範なイソシアネートが好適である。上記のジイソシアネート及びポリイソシアネートが使用できる。しかしながらジイソシアネート及びポリイソシアネートは好ましくは、任意の脂肪族、脂環式、及び/又は(環式)脂肪族のジイソシアネート及び/又はポリイソシアネートから成る。本発明によればとりわけ、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、ジイソシアナトジシクロヘキシルメタン(H12MDI)、2−メチルペンタンジイソシアネート(MPDI)、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート/2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート(TMDI)、ノルボルナジイソシアネート(NBDI)を使用する。極めて特に好ましくは、IPDI、HDI、TMDI、及びH12NMDIを使用し、ここでイソシアヌレートも使用できる。
【0072】
極めて特に好ましくは、マトリック材料としてIPDI及びHDIを使用する。
【0073】
これらのウレトジオン基含有ポリイソシアネートをウレトジオン基含有硬化剤a)にする反応は、遊離NCO基と、ヒドロキシ基含有モノマー又はポリマー、例えばポリエステル、ポリチオエーテル、ポリエーテル、ポリカプロラクタム、ポリエポキシド、ポリエステルアミド、ポリウレタン、又は低分子のジアルコール、トリアルコール、及び/又はテトラアルコールを連鎖延長剤として、及び場合によりモノアミン及び/又はモノアルコールを連鎖停止剤として含むが、このことはしばしば記載されている(EP 669 353, EP 669 354, DE 30 30 572, EP 639 598又はEP 803 524)。好ましいウレトジオン基含有硬化剤a)は、遊離NCO含分が5質量%未満、ウレトジオン基含分が3〜25質量%、好ましくは6〜18質量%である(C222として計算、分子量84)。好ましいのは、ポリエステル、及びモノマーのジアルコールである。ウレトジオン基の他に硬化剤はまた、イソシアヌレート構造、ビウレット構造、アロファネート構造、ウレタン構造、及び/又は尿素構造を有することができる。
【0074】
ヒドロキシ基含有ポリマーb)では好ましくは、OH数が20〜200(mgKOH/g)のポリエステル、ポリエーテル、ポリアクリレート、ポリウレタン、及び/又はポリカーボネートを使用する。特に好ましくは、OH数が30〜150、平均分子量が500〜6000g/molのポリエステル(40℃未満で固体状、125℃超で液状で存在するもの)を使用する。このような結合剤は、例えばEP 669 354及びEP 254 152に記載されている。当然のことながら、かかるポリマーの混合物を使用することもできる。ヒドロキシ基を有するポリマーb)の量は、成分b)のあらゆるヒドロキシ基に対して、成分a)のウレトジオン基が0.3〜0.7、好ましくは0.45〜0.55当量であるように選択する。
【0075】
反応性の粉末状ポリウレタン組成物中には任意で、さらなる触媒c)が含まれていてよい。その触媒とは、0.001〜1質量%の量の有機金属触媒、例えばジブチルスズジラウレート、亜鉛オクトエート、ビスマスネオデカノエート、又は第3級アミン、例えば1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタンである。
【0076】
反応性の粉末状ポリウレタン組成物を製造するためには、粉末技術において通常の添加剤d)、例えば均展剤、例えばポリシリコーン又はアクリレート、光安定剤、例えば立体障害アミン、又は例えばEP669353に記載されたその他の助剤を併せて0.05〜5質量%の量で添加してよい。充填剤及び顔料、例えば二酸化チタンを全組成物の最大30質量%の量で添加してよい。
【0077】
本発明により使用される反応性の粉末状ポリウレタン組成物は、通常の条件、例えばDBTL触媒で160℃以上、通常は約180℃以上で硬化する。
【0078】
本発明により使用される反応性ポリウレタン組成物は、非常に良好な均展性をもたらし、これにより良好な含浸性、及び硬化状態で優れた耐薬品性が得られる。脂肪族の架橋剤(例えばIPDI又はH12MDI)を使用する場合、さらに良好な耐候性が達成される。
【0079】
本発明によりマトリックス材料として使用される反応性の粉末ポリウレタン組成物は、室温で固体の粉末であり、粘着性ではない。前記組成物は基本的に、反応性樹脂と、硬化剤との混合物から成る。この混合物はTgが少なくとも40℃であり、通常は160℃超で初めて反応して、架橋されたポリウレタンになり、これにより複合材のマトリックスを形成する。これはつまり、本発明によるプリプレグが、担体と、適用された反応性の粉末状ポリウレタン組成物とから製造された後、未架橋であるが反応性で存在するマトリックス材料として構成されていることを意味する。つまりプリプレグは、通常は数日、さらには数週間の間、貯蔵安定性であり、このためいつでもさらに加工して複合材にすることができる。このことは、反応性であって貯蔵安定性ではない前述の2成分系とは本質的な相違点である。と言うのも、この2成分系は施与後にすぐに反応、架橋してポリウレタンになるからである。
【0080】
プリプレグ製造のためのポリウレタン組成物を製造するためのすべての成分の均質化は、適切な装置、例えば加熱可能な撹拌槽、混練機、又は押出機で行うことができ、その際に温度の上限は120〜130℃を上回ってはならない。各成分の混合は、好ましくは押出機中で、各成分の溶融範囲は超えるが、架橋反応が始まる温度未満の温度で行う。こうして生じる硬化した固まりを粉砕し、例えばふるい分けによって様々な画分に分別することができる(例えば粒径が<63μm、63〜100μm、>100μm)。
【0081】
本発明の対象はまた、本発明による反応性の粉末状ポリウレタン組成物B)を、プリプレグ製造に用いる使用であり、とりわけガラス繊維、炭素繊維、又はアラミド繊維からの繊維状担体(強化繊維体)を有するプリプレグ製造に用いる使用、及び前記プリプレグから製造される複合材である。
【0082】
プリプレグの製造は基本的に、任意の方法によって、好ましくは粉末含浸法によって行うことができる。ここで適切には、反応性の粉末状ポリウレタン組成物は散布法(Streuverfahren)によって担体に施与する。また、流動床法、引き抜き成形法、又はスプレー法によっても可能である。
【0083】
粉末含浸の場合には、マトリックス材料(通常は熱可塑性ポリマー)が、粉末で存在する。繊維を濡れさせる、及び被覆するための熱可塑性マトリックス系の高粘度溶融物の流路をできるだけ短くするために、従来技術では通常、流動床法で熱可塑性樹脂粉末を乱流の空気に分散させ、フィラメント(Filamentgam)を空気流に広げる。これにより個々の粉末粒子は、各繊維にまで到達させることができる。粉末の静電気荷電性は、粉末の接着によりさらに改善可能である。流動床の通過後、フィラメントは容易に接着する粉末とともに加熱区域に導入され、ここでマトリックスポリマー粉末が溶融する。引き続き複合材部材製造の際の圧密工程で、フィラメントの濡れ性を完全にする必要がある。
【0084】
本発明による反応性の粉末状ポリウレタンの本発明による使用では、このような流路短縮法は必ずしも必要ではない。と言うのも、プレポリマーの溶融物(未架橋の粉末塗料溶融物)は、繊維を濡らすために適切な低粘度を有するからであり、このことは従来技術に比して、本発明によるプリプレグの大きな利点である。
【0085】
粉末(全体又は画分)は、好ましくは散布法によって繊維状担体(例えば短冊状のガラス、炭素、又はアラミドの繊維織布/の単一方向布)に施与し、引き続き固定する。粉末損失を回避するために好ましくは、散布工程の直後に加熱区域(例えばIR照射)で粉末をぶつけた繊維状担体を加熱し、これにより粒子の焼結を行い、ここで温度は、反応性マトリックス材料の反応を防止するために80〜100℃を越えることはない。このプリプレグは、必要に応じて様々な形状に組み合わせ、切断することができる。
【0086】
本発明の対象は、成分B)を成分A)に施与、好ましくは散布法により施与する工程、場合によりB)を固定、好ましくは熱作用により固定する工程、特に好ましくは焼結により固定する工程を有する、プリプレグの製造方法である。
【0087】
プリプレグ層を圧密化して一つの複合材(部材)にするため、本発明によるマトリックス材料を架橋してマトリックスにするため、プリプレグを切断、場合により縫合又は他の方法で固定し、適切な形態で圧力下、場合により真空の適用下でプレスする。本発明の範囲において、本発明によるプリプレグからの複合材製造のこの工程は、硬化時間に応じて約160℃超の温度で行う。
【0088】
本発明の対象はまた、基本的に
A)少なくとも1つの繊維状担体、及び
B)複合材製造のためのマトリックス材料としての、少なくとも1つの反応性の粉末状ポリウレタン組成物
から構成されるプリプレグを、
ボート構造及び船舶構造、航空技術及び宇宙航空技術、自動車構造、二輪車、好ましくは自動二輪車及び自転車、自動車分野、建築、医療技術、スポーツ、電気産業及び電子産業、エネルギー生成プラント、例えば風力発電所での回転翼に用いる使用である。
【0089】
A)少なくとも1つの繊維状担体、及び
B)マトリックスとしての、少なくとも1つの架橋されたポリウレタン組成物、好ましくはウレトジオン基含有ポリウレタン組成物
から構成されている、本発明によるプリプレグから製造される複合材部材もまた、本発明の対象である。
【0090】
本発明の対象はまた、
A)少なくとも1つの繊維状担体、及び
B)マトリックス材料としての、少なくとも1つの反応性粉末状ポリウレタン組成物、好ましくはウレトジオン基含有ポリウレタン組成物、
から構成されているプリプレグを、160℃超の温度、好ましくは180℃超、場合により圧力及び/又は真空を適用して製造する、複合材部材の製造方法である。
【0091】
以下、本発明を実施例により説明する。
【図面の簡単な説明】
【0092】
【図1】使用する実験室用散布装置を示す。
【図2】プリプレグの貯蔵安定性を示す。
【図3】プリプレグの貯蔵安定性を示す。
【図4】本発明によるHT積層体の硬化を示す。
【0093】
実施例
使用される実験室用散布装置(Villars Minicoater 200)の図1
使用されるガラス繊維の単一方向布/織布:
以下、ガラス繊維の単一方向布/織布を実施例で用いるが、これ以降はタイプI、タイプIIと呼ぶ。
【0094】
タイプIは、「Schloesser & Cramer」社の亜麻布Eガラス織布281 L型、No.3103である。この織布は、単位面積当たりの質量が280g/m2である。タイプIIは、「Schloesser & Cramer」社のGBX 600型、No.1023であり、縫いつけられた二軸性Eガラスの単一方向布である(−45/+45)。この下には繊維束の2つの層があると理解されるべきであり、これらは重ねて置かれ、相互に90°の角度で配置されている。この構造はさらなる繊維によって統合されているが、ただしこれら他の繊維はガラスから成るものではない。ガラス繊維の表面は、標準的な糊を備えており、この糊はアミノシラン変性されている。この織布は、単位面積当たりの質量が600g/m2である。
【0095】
DSC測定
DSC試験(ガラス転移点測定と、反応エンタルピー測定)を、DIN 53765準拠のMettler Toledo DSC 821 eによって行った。
【0096】
反応性の粉末状ポリウレタン組成物
反応性の粉末状ポリウレタン組成物を以下の調合で、プリプレグ及び複合材製造のために使用した(記載は質量%)
【表1】

【0097】
表に記載の使用物質を粉砕し、予備混合機で入念に混合し、引き続き押出機で最大130℃で均質化した。冷却後に押出物を壊し、ピンミルで粉砕した。使用した篩い画分は、平均粒径が63〜100μmであった。
【0098】
【表2】

【0099】
様々な予備試験の間に適切な焼結条件を選択することにより、ミニコーター(Minicoater)によるプリプレグ製造の際には以下の調整が良好に適していることが実証された。
【0100】
約150gの粉末を、正方形のガラス繊維の単一方向布にライン速度(Bahngeschwindigkeit )約1.2m/分で塗布した。これは、約45μmの標準偏差を有する約500μmの層厚に相当する。
【0101】
560WというIR照射出力では、75〜82℃の温度でプリプレグを製造し、ここで反応性の粉末状ポリウレタン組成物を焼結したのだが、粉末状のポリウレタン組成物の反応性が維持されたままである限り、ここでなお検知可能な粉末構造を有する粉末のみが焼結されたかどうか、又は完全な溶融物がガラス繊維の単一方向布上に生じたかは重要ではない。
【0102】
プリプレグの貯蔵安定性
プリプレグの貯蔵安定性は架橋反応の反応エンタルピーによって、DSC調査により測定される。その結果は、図2、及び図3に示されている。
【0103】
PUプリプレグの架橋能力は、室温での貯蔵を通じて少なくとも7週間にわたって損なわれることはない。
【0104】
複合材部材の製造
複合材部材は、当業者に公知のプレス技術によって複合材プレス機で製造した。散布装置で製造された、均質なプリプレグを卓上プレス機でプレスして複合材材料にした。この卓上プレス機はSchwabenthan社のPolystat 200 Tであり、これを用いてプリプレグを120〜200℃の温度で相応する複合材プレートにプレスした。圧力は、常圧〜450barの間で変えた。動的なプレス、つまり付与圧力の変更は、部材の大きさや厚さ、及びポリウレタン組成物、ひいては加工温度での粘度調整に応じて、繊維を濡らすために有利であると実証できる。1つの例では、溶融相の間のプレス温度(90℃)を110℃に上げ、圧力は3分間の溶融フェーズ後、440barに上げ、引き続き150〜440barの間で動的に変え(それぞれ一分間を7回)、この際に温度は連続的に140℃に上げた。引き続き温度を170℃に上げ、同時に圧力を350barで、30分後にプレス型から複合材部材を取り外すまで、このレベルを維持した。
【0105】
こうして得られる、繊維体積割合が>50%の硬い、剛性の、耐薬品性の、耐衝撃性の複合材部材(プレート品)を、硬化度について試験した(DSCによる測定)。硬化されたマトリックスのガラス転移点を測定すると、様々な硬化温度での架橋という進歩が見られる。使用されるポリウレタン組成物の場合、架橋は約25分後に完了し、それ以降、架橋反応のための反応エンタルピーは、もはや検出不能だった。その結果は、図4に示されている。
【0106】
2つの複合材料を全く同じ条件で製造し、引き続きそれらの特性を測定、比較した。この良好な再生産特性は、層間剪断強度(ILSF)の測定時にも確認できた。ここで測定されたILSFは、約40N/mm2に達した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基本的に
A)少なくとも1つの繊維状担体と、
B)マトリックス材料としての、少なくとも1つの反応性の粉末状ポリウレタン組成物と
から構成されているプリプレグ。
【請求項2】
前記マトリックス材料のTgが少なくとも40℃である、請求項1に記載のプリプレグ。
【請求項3】
ガラス、炭素、プラスチック、例えばポリアミド(アラミド)若しくはポリエステル、天然繊維、又は鉱物繊維材料、例えば玄武岩繊維若しくはセラミック繊維からの繊維状材料が含まれていることを特徴とする、請求項1又は2に記載のプリプレグ。
【請求項4】
繊維状担体として、フリース、編物、編み生地及びニット、非編物状の結合体、例えば平織り布、単一方向布、又は斜め織り布からのテキスタイル平面構造物が、長繊維材料及び短繊維材料として含まれていることを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項に記載のプリプレグ。
【請求項5】
粉末状の反応性ポリウレタン組成物が、基本的に
結合剤としてのイソシアネート反応性官能基を有するポリマーb)と、
硬化剤a)としての、内的にブロックされた、かつ/又はブロック化剤でブロックされたジイソシアネート又はポリイソシアネートと
からの混合物を含むことを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項に記載のプリプレグ。
【請求項6】
OH数が20〜500mgKOH/g、平均モル質量が250〜6000g/molの、ヒドロキシ基、アミノ基、及びチオール基を有するポリマー、とりわけポリエステル、ポリエーテル、ポリアクリレート、ポリカーボネート、及びポリウレタンを使用することを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項に記載のプリプレグ。
【請求項7】
イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、ジイソシアナトジシクロヘキシルメタン(H12MDI)、2−メチルペンタンジイソシアネート(MPDI)、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート/2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート(TMDI)、及び/又はノルボルナンジイソシアネート(NBDI)、特に好ましくはIPDI、HDI、TMDI、及びH12MDIから選択されるジイソシアネート又はポリイソシアネート(ここでイソシアヌレートも使用可能である)を使用することを特徴とする、請求項1から6までのいずれか1項に記載のプリプレグ。
【請求項8】
アセト酢酸エチルエステル、ジイソプロピルアミン、メチルエチルケトオキシム、マロン酸ジエチルエステル、ε−カプロラクタム、1,2,4−トリアゾール、フェノール若しくは置換フェノール、及び/又は3,5−ジメチルピラゾールから選択される外的なブロック化剤を使用することを特徴とする、請求項1から7までのいずれか1項に記載のプリプレグ。
【請求項9】
イソシアヌレート原子団と、ε−カプロラクタムでブロックされたイソシアネート構造とを有するIPDI付加生成物を使用することを特徴とする、請求項1から8までのいずれか1項に記載のプリプレグ。
【請求項10】
反応性の粉末状ポリウレタン組成物B)が、さらなる触媒、好ましくはジラウリン酸ジブチルスズ、亜鉛オクトエート、ビスマスネオデカノエート、及び/又は第三級アミン、好ましくは1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタンを0.001〜1質量%の量で含むことを特徴とする、請求項1から9までのいずれか1項に記載のプリプレグ。
【請求項11】
反応性の粉末状ウレトジオン基含有ポリウレタン組成物B)からのマトリックス材料を有する請求項1から10までのいずれか1項に記載のプリプレグであって、前記組成物B)が、基本的に以下の成分a)〜d):
a)脂肪族、(環式)脂肪族、又は脂環式ウレトジオン基を有するポリイソシアネートと、ヒドロキシ基含有化合物とからの重付加化合物をベースとする、少なくとも1つのウレトジオン基含有硬化剤、ここでこの硬化剤は40℃未満では固体状で、125℃超では液状で存在し、その遊離NCO含分は5質量%未満であり、そのウレトジオン基含分は3〜25質量%であり、
b)40℃未満では固体状で、125℃超では液状で存在し、OH数が20〜200mgKOH/gである少なくとも1つのヒドロキシ基含有ポリマー、
c)場合により少なくとも1つの触媒、
d)場合によりポリウレタン化学から公知の助剤及び添加剤
を含み、
ここで前記2つの成分a)及びb)について、成分a)のウレトジオン基が、成分b)のあらゆるヒドロキシ基に対して0.3〜0.7、好ましくは0.45〜0.55の当量で存在することを特徴とする、前記プリプレグ。
【請求項12】
プリプレグを製造するため、とりわけガラス繊維、炭素繊維、又はアラミド繊維からの繊維状担体を有するプリプレグを製造するための、請求項5から11までのいずれか1項に記載の反応性の粉末状ポリウレタン組成物B)の使用。
【請求項13】
成分A)に成分B)を施与、好ましくは散布法で施与することにより、場合によってB)を固定、好ましくは熱作用により、特に好ましくは焼結により固定することにより、請求項1から11までのいずれか1項に記載のプリプレグを製造する方法。
【請求項14】
基本的に
A)少なくとも1つの繊維状担体と
B)マトリックス材料としての少なくとも1つの反応性の粉末状ポリウレタン組成物と
から構成されている請求項1から11までのいずれか1項に記載のプリプレグを、
ボート構造及び船舶構造、航空技術及び宇宙航空技術、自動車構造、二輪車、好ましくは自動二輪車及び自転車、自動車分野、建築、医療技術、スポーツ、電気産業及び電子産業、エネルギー生成プラント、例えば風力発電所での回転翼における複合材を製造するために用いる使用。
【請求項15】
A)少なくとも1つの繊維状担体と、
B)マトリックスとしての少なくとも1つの架橋されたポリウレタン組成物、好ましくはウレトジオン基含有ポリウレタン組成物と
から構成されている、複合材部材。
【請求項16】
A)少なくとも1つの繊維状担体と
B)マトリックス材料としての少なくとも1つの反応性の粉末状ポリウレタン組成物、好ましくはウレトジオン基含ポリウレタン組成物と
から構成されているプリプレグを、
160℃超の温度、好ましくは180℃超の温度で、場合により圧力及び/又は真空を適用して製造する、複合材部材の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2012−521450(P2012−521450A)
【公表日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−501198(P2012−501198)
【出願日】平成22年1月13日(2010.1.13)
【国際出願番号】PCT/EP2010/050319
【国際公開番号】WO2010/108701
【国際公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【出願人】(501073862)エボニック デグサ ゲーエムベーハー (837)
【氏名又は名称原語表記】Evonik Degussa GmbH
【住所又は居所原語表記】Rellinghauser Strasse 1−11, D−45128 Essen, Germany
【Fターム(参考)】