説明

プリンタ

【課題】プリンタにおいて、印刷ヘッドのノズルの目詰まりを防止するためのメンテナンス動作を行うタイミングを改善し、スループットを向上する。
【解決手段】第1のタイマからタイミング信号が出力されると、その後に印刷される5走査分のスワス画像I(k)(k=1〜5)のうち、スワス画像I(k)の印刷終了位置Xf(k)とモノクロ用のスピット位置Xmとの距離が最短となる第1の最短スワス画像を印刷し終えたタイミングで、モノクロ用の印刷ヘッド5mに対するメンテナンス動作を実行する。図の例では、スワス画像I(3)を印刷し終えたタイミングで、モノクロ用の印刷ヘッド5mに対するメンテナンス動作を実行し、スワス画像I(3)を印刷し終えると、キャリア6をスワス画像I(3)の印刷終了位置Xf(3)からモノクロ用のスピット位置Xmに移動させて、モノクロ用の印刷ヘッド5mからインクを噴射させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷用紙にインクを噴射して画像を印刷するプリンタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、プリンタにおいて、印刷用紙にインクを噴射して画像を印刷する、いわゆるインクジェットプリンタがある。この種のプリンタでは、一般的に、印刷ヘッドを保持するキャリアを往路移動又は復路移動させつつ印刷ヘッドからインクを噴射させることにより、印刷用紙に1走査分のスワス画像を印刷するようになっており、印刷用紙の全体に画像を印刷する印刷動作は、1走査分の画像を印刷するスワス動作と印刷用紙を所定量搬送する改行動作とを繰り返すことにより行うようになっている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
従来のインクジェットプリンタでは、印刷用紙の全体に画像を印刷する印刷動作において、あるスワス動作によるスワス画像の印刷が終わると、キャリアをそのスワス画像の印刷終了位置から次のスワス動作によるスワス画像の印刷開始位置に移動させて、次のスワス動作によるスワス画像の印刷を開始するようになっている。
【0004】
また、この種のプリンタにおいて、印刷ヘッドのノズルの目詰まりを防止するためのメンテナンス動作を行うものがある。メンテナンス動作は、キャリアを印刷用紙の搬送経路上から外れた場所に設定されたスピット位置に移動させて、そのスピット位置で印刷ヘッドからインクを噴射させることにより行われるようになっている。
【0005】
従来のインクジェットプリンタでは、このようなメンテナンス動作は、印刷用紙の全体に画像を印刷する印刷動作中において所定時間(例えば30秒)経過毎に行われ、所定時間経過したときのスワス動作によるスワス画像の印刷が終わると、キャリアをそのスワス画像の印刷終了位置からスピット位置に移動させて、そのスピット位置で印刷ヘッドからインクを噴射させるようになっている。また、メンテナンス動作を行った後は、キャリアをスピット位置から次のスワス動作によるスワス画像の印刷開始位置に移動させて、以降のスワス動作によるスワス画像の印刷を再開するようになっている。
【0006】
一方、キャリアがホームポジションから離れるとき、キャリアを低速で移動させることにより、キャリアを移動させるためのキャリアモータの脱調や、キャリアの位置を見失うキャリアストールの発生等を未然に防止するようにしたプリンタが知られている(例えば特許文献2参照)。
【特許文献1】特開平11−34445号公報
【特許文献2】特開2002−36678号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところが、上述した従来のプリンタにおいては、印刷動作中の所定時間経過毎に、そのときのスワス動作によるスワス画像の印刷終了位置からスピット位置にキャリアを移動させて、メンテナンス動作を行っている。つまり、スワス画像の印刷終了位置とスピット位置との距離の長短に関わらず、所定時間経過毎にキャリアをスピット位置に移動させて、メンテナンス動作を行っている。このため、メンテナンス動作において、無駄なキャリアの移動が多く発生し、スループットが悪かった。
【0008】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、印刷ヘッドのノズルの目詰まりを防止するためのメンテナンス動作を行うタイミングを改善し、スループットを向上することができるプリンタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために請求項1の発明は、印刷用紙を搬送する用紙搬送手段と、印刷用紙に画像を印刷するためにノズルからインクを噴射するモノクロ用の印刷ヘッド及びカラー用の印刷ヘッドと、モノクロ用の印刷ヘッド及びカラー用の印刷ヘッドを保持するキャリアと、キャリアを用紙搬送手段により搬送される印刷用紙に沿って往復移動させるキャリア移動手段と、所定のタイミングでタイミング信号を出力する第1のタイマ及び第2のタイマと、本装置の動作を制御する制御手段とを備え、制御手段は、キャリアをキャリア移動手段により往路移動又は復路移動させつつモノクロ用の印刷ヘッド及びカラー用の印刷ヘッドからインクを噴射させて印刷用紙に1走査分のスワス画像を印刷するスワス動作と、印刷用紙を用紙搬送手段により搬送する改行動作とを繰り返すことにより、複数のスワス画像によって印刷用紙の全体に画像を印刷する印刷動作を実行すると共に、印刷動作中に、第1のタイマからのタイミング信号の出力を受けて、キャリアを印刷用紙の搬送経路上よりも左側の場所に設定されたモノクロ用のスピット位置に移動させて、そのモノクロ用のスピット位置でモノクロ用の印刷ヘッドからインクを噴射させることにより、モノクロ用の印刷ヘッドのノズルの目詰まりを防止するためのメンテナンス動作を実行し、このメンテナンス動作の実行後に印刷動作を継続して実行し、また、印刷動作中に、第2のタイマからのタイミング信号の出力を受けて、キャリアを印刷用紙の搬送経路上よりも右側の場所に設定されたカラー用のスピット位置に移動させて、そのカラー用のスピット位置でカラー用の印刷ヘッドからインクを噴射させることにより、カラー用の印刷ヘッドのノズルの目詰まりを防止するためのメンテナンス動作を実行し、このメンテナンス動作の実行後に印刷動作を継続して実行し、本装置による印刷動作を外部機器からの操作により行うためのデバイスドライバが外部機器にインストールされ、該デバイスドライバは、スワス動作により印刷されるスワス画像単位で、各スワス画像の印刷データ、印刷開始位置、印刷データ長、及び印刷方向を含むスワスデータを本装置に送信し、該デバイスドライバから受信したスワスデータに基いて印刷動作を行うプリンタにおいて、制御手段は、印刷動作中に、第1のタイマからタイミング信号が出力されると、デバイスドライバから受信したスワスデータ内の、そのときに印刷しているスワス画像以降に印刷する複数画像先までの各スワス画像の印刷開始位置、印刷データ長、及び印刷方向の情報を基に、スワス画像の印刷終了位置とモノクロ用のスピット位置との距離が最短となるときのスワス画像である第1の最短スワス画像を特定し、キャリアが第1の最短スワス画像の印刷終了位置に到達したタイミングで、キャリアを第1の最短スワス画像の印刷終了位置からモノクロ用のスピット位置に移動させて、モノクロ用の印刷ヘッドからインクを噴射させることにより、モノクロ用の印刷ヘッドに対するメンテナンス動作を実行し、その後、次のスワス画像の印刷開始位置にキャリアを移動させて、以降のスワス画像の印刷を継続させ、また、印刷動作中に、第2のタイマからタイミング信号が出力されると、デバイスドライバから受信したスワスデータ内の、そのときに印刷しているスワス画像以降に印刷する複数画像先までの各スワス画像の印刷開始位置、印刷データ長、及び印刷方向の情報を基に、スワス画像の印刷終了位置とカラー用のスピット位置との距離が最短となるときのスワス画像である第2の最短スワス画像を特定し、キャリアが第2の最短スワス画像の印刷終了位置に到達したタイミングで、キャリアを第2の最短スワス画像の印刷終了位置からカラー用のスピット位置に移動させて、カラー用の印刷ヘッドからインクを噴射させることにより、カラー用の印刷ヘッドに対するメンテナンス動作を実行し、その後、次のスワス画像の印刷開始位置にキャリアを移動させて、以降のスワス画像の印刷を継続させるものである。
【0010】
請求項2の発明は、印刷用紙を搬送する用紙搬送手段と、印刷用紙に画像を印刷するためにノズルからインクを噴射する印刷ヘッドと、印刷ヘッドを保持するキャリアと、キャリアを用紙搬送手段により搬送される印刷用紙に沿って往復移動させるキャリア移動手段と、所定のタイミングでタイミング信号を出力するタイマと、本装置の動作を制御する制御手段とを備え、制御手段は、印刷ヘッドをキャリア移動手段により往路移動又は復路移動させつつ印刷ヘッドからインクを噴射させて印刷用紙に1走査分のスワス画像を印刷するスワス動作と、印刷用紙を用紙搬送手段により搬送する改行動作とを繰り返すことにより、複数のスワス画像によって印刷用紙の全体に画像を印刷する印刷動作を実行すると共に、印刷動作中に、タイマからのタイミング信号の出力を受けて、印刷ヘッドを印刷用紙の搬送経路上から外れた場所に設定されたスピット位置に移動させて、そのスピット位置で印刷ヘッドからインクを噴射させることにより、印刷ヘッドのノズルの目詰まりを防止するためのメンテナンス動作を実行し、このメンテナンス動作の実行後に印刷動作を継続して実行するプリンタにおいて、制御手段は、印刷動作中に、タイマからタイミング信号が出力されると、そのときに印刷しているスワス画像以降に印刷する複数画像先までの各スワス画像の印刷開始位置、印刷データ長、及び印刷方向の情報を基に、キャリアをスワス画像の印刷終了位置からスピット位置を経由して次のスワス画像の印刷開始位置へ効率よく移動させることができるメンテナンスタイミングを求め、メンテナンスタイミングで、キャリアをスピット位置に移動させて、印刷ヘッドからインクを噴射させることにより、メンテナンス動作を実行し、その後、次のスワス画像の印刷開始位置にキャリアを移動させて、以降のスワス画像の印刷を継続させるものである。
【0011】
請求項3の発明は、請求項2に記載のプリンタにおいて、制御手段は、印刷動作中に、タイマからタイミング信号が出力されると、そのときに印刷しているスワス画像以降に印刷する複数画像先までの各スワス画像の印刷開始位置、印刷データ長、及び印刷方向の情報を基に、スワス画像の印刷終了位置とスピット位置との距離が最短となるときのスワス画像である最短スワス画像を特定して、この最短スワス画像の印刷終了位置にキャリアが到達した時をメンテナンスタイミングとし、キャリアが最短スワス画像の印刷終了位置に到達したタイミングで、キャリアを最短スワス画像の印刷終了位置からスピット位置に移動させて、印刷ヘッドからインクを噴射させることにより、メンテナンス動作を実行し、その後、次のスワス画像の印刷開始位置にキャリアを移動させて、以降のスワス画像の印刷を継続させるものである。
【発明の効果】
【0012】
請求項1の発明によれば、モノクロ用の印刷ヘッドに対するメンテナンス動作は、第1のタイマからタイミング信号が出力された後、その後に印刷される複数走査分のスワス画像のうち、スワス画像の印刷終了位置とモノクロ用のスピット位置との距離が最短となる第1の最短スワス画像の印刷を終了したタイミングで行われる。このようなタイミングでモノクロ用の印刷ヘッドに対するメンテナンス動作が行われることにより、キャリアはスワス画像の印刷終了位置からモノクロ用のスピット位置を経由して次のスワス画像の印刷開始位置へ効率よく移動し、従って、モノクロ用の印刷ヘッドに対するメンテナンス動作において無駄なキャリアの移動が少なくなり、スループットが向上する。また、カラー用の印刷ヘッドに対するメンテナンス動作は、第2のタイマからタイミング信号が出力された後、その後に印刷される複数走査分のスワス画像のうち、スワス画像の印刷終了位置とカラー用のスピット位置との距離が最短となる第2の最短スワス画像の印刷を終了したタイミングで行われる。このようなタイミングでカラー用の印刷ヘッドに対するメンテナンス動作が行われることにより、キャリアはスワス画像の印刷終了位置からカラー用のスピット位置を経由して次のスワス画像の印刷開始位置へ効率よく移動し、従って、カラー用の印刷ヘッドに対するメンテナンス動作において無駄なキャリアの移動が少なくなり、スループットが向上する。
【0013】
請求項2の発明によれば、印刷ヘッドのノズルの目詰まりを防止するためのメンテナンス動作は、タイマからタイミング信号が出力された後、その後に印刷される複数走査分のスワス画像の印刷開始位置、印刷データ長、及び印刷方向を基に、キャリアをスワス画像の印刷終了位置からスピット位置を経由して次のスワス画像の印刷開始位置へ効率よく移動させることができるメンテナンスタイミングで行われる。従って、メンテナンス動作において無駄なキャリアの移動が少なくなり、スループットが向上する。
【0014】
請求項3の発明によれば、メンテナンス動作は、スワス画像の印刷終了位置とスピット位置との距離が最短となる最短スワス画像の印刷を終了したタイミングで行われる。このようなタイミングでメンテナンス動作が行われることにより、キャリアはスワス画像の印刷終了位置からスピット位置を経由して次のスワス画像の印刷開始位置へ効率よく移動し、従って、メンテナンス動作において無駄なキャリアの移動が少なくなり、スループットが向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明を具体化した実施形態に係るプリンタについて図面を参照して説明する。図1は、プリンタの構成を示す。プリンタ1は、印刷用紙2に画像を印刷する装置である。このプリンタ1は、印刷用紙2にインクを噴射して画像を印刷する、いわゆるインクジェットプリンタである。
【0016】
プリンタ1は、印刷用紙2が載置されるペーパレスト3と、印刷用紙2を搬送するための給紙ローラ4a、フィードローラ4b、及びエグジットローラ4cと、印刷用紙2に画像を印刷するための印刷ヘッド5m、5cと、印刷ヘッド5m、5cを保持し、印刷ヘッド5m、5cを移動させるためのキャリア6と、給紙ローラ4a、フィードローラ4b、及びエグジットローラ4cを駆動するためのフィードモータ7と、キャリア7を移動させるためのキャリアモータ8と、キャリア6の位置を検出するためのエンコーダ9等を備える。
【0017】
印刷用紙2は、1枚又は複数枚のものが重ねられて、その下端側が筐体10の給紙口11に挿入されて、ペーパレスト3に載置される。給紙ローラ4aは、ペーパレスト3に載置されている印刷用紙2を取り込んでフィードローラ4bへと搬送する。フィードローラ4bは、給紙ローラ4aから搬送された印刷用紙2を、印刷ヘッド5m、5cの下方を通して、エグジットローラ4cへと搬送し、エグジットローラ4cは、フィードローラ4bにより搬送された印刷用紙2をさらに搬送して、筐体10の排紙口12から排出する。筐体10内では、印刷用紙2は、ペーパレスト3から排紙口12に向かう方向(図示Y方向)に搬送される。
【0018】
給紙ローラ4a、フィードローラ4b、及びエグジットローラ4cは、フィードモータ7の駆動力により、不図示のギア等から成るローラ駆動機構を介して回転制御される。フィードモータ7には、DCモータが用いられている。給紙ローラ4a、フィードローラ4b、エグジットローラ4c、フィードモータ7、及びローラ駆動機構等により、印刷用紙2を搬送する用紙搬送手段が構成されている。
【0019】
印刷ヘッド5m、5cは、印刷用紙2に画像を印刷するためにインクを噴射するインクジェット式の印刷ヘッドであり、キャリア6に着脱自在に保持されている。印刷ヘッド5mは、モノクロ用の印刷ヘッドであり、モノクロ(ブラック)インクを貯蔵しており、貯蔵しているインクをノズル51mから噴射する。印刷ヘッド5cは、カラー用の印刷ヘッドであり、カラー(シアン、マゼンダ、イエロー)インクを貯蔵しており、貯蔵しているインクをノズル51cから噴射する。
【0020】
キャリア6は、ガイド軸21、22に摺動自在に支持されており、ガイド軸21、22に案内されて、ガイド軸21、22の伸びている方向に往復移動するようになっている。ガイド軸21、22は、フィードローラ4b及びエグジットローラ4cにより搬送される印刷用紙2の上方において、印刷用紙2の印刷面と平行であって印刷用紙2の搬送方向と直交する方向(図示X方向)に伸びている。つまり、キャリア6は、フィードローラ4b及びエグジットローラ4cにより搬送される印刷用紙2の上方を、印刷用紙2の印刷面に沿って、印刷用紙2の搬送方向と直交する左右方向に往復移動するようになっている。
【0021】
キャリア6は、モノクロ用の印刷ヘッド5mとカラー用の印刷ヘッド5cの両方を一緒に保持するようになっており、モノクロ用の印刷ヘッド5mは、印刷用紙2の搬送方向を前方とした場合にキャリア6上の左側(図示X方向と反対方向側)に配置され、カラー用の印刷ヘッド5cは、キャリア6上の右側(図示X方向側)に配置される。印刷ヘッド5m、5cは、下方に向けてインクを噴射するようにキャリア6に保持され、キャリア6に保持された印刷ヘッド5m、5cは、キャリア6が移動することにより、キャリア6と共に、印刷用紙2の搬送方向と直交する左右方向に往復移動する。
【0022】
キャリア6は、キャリアモータ8の駆動力により、不図示のキャリア用ベルト等から成るキャリア駆動機構を介して移動制御される。キャリアモータ8には、DCモータが用いられている。キャリアモータ8、ガイド軸21、22、及びキャリア駆動機構等により、印刷用紙2に沿ってキャリア6を往復移動させるキャリア移動手段が構成されている。
【0023】
エンコーダ9は、所定ピッチの明暗パターンが形成されたエンコーダストリップ91と、エンコーダストリップ91からの反射光を検出する光センサ92等により構成されている。エンコーダストリップ91は、ガイド軸21に設けられており、キャリア6の移動経路に沿って所定ピッチの明暗パターンが形成されている。光センサ92は、キャリア6の背部に設けられており、キャリア6と共に移動するようになっている。このような構成のエンコーダ9は、光センサ92によりエンコーダストリップ91の明暗パターンからの反射光を検出し、その反射光強度の変化に基いて、キャリア6の移動量に比例したパルス数の検出信号を出力するようになっている。
【0024】
このような構成のプリンタ1は、キャリア6を往路移動(印刷用紙2の搬送方向を前方とした場合に右方向に移動)又は復路移動(印刷用紙2の搬送方向を前方とした場合に左方向に移動)させつつモノクロ用の印刷ヘッド5m及びカラー用の印刷ヘッド5cからインクを噴射させることにより、印刷用紙2に1走査分のスワス画像(印刷ヘッド5m、5cの1回の往路移動又は復路移動によって印刷される画像)を印刷するようになっている。そして、プリンタ1は、このようなスワス画像を印刷するスワス動作と、印刷用紙2を所定量搬送する改行動作とを繰り返すことにより、複数のスワス画像の印刷によって印刷用紙2の全体に画像を印刷する印刷動作を行うようになっている。
【0025】
また、このプリンタ1は、モノクロ用の印刷ヘッド5mのノズル51の目詰まり、及びカラー用の印刷ヘッド5cのノズルの目詰まりを防止するためのメンテナンス動作を行うようになっている。
【0026】
モノクロ用の印刷ヘッド5mに対するメンテナンス動作は、キャリア6を印刷用紙2の搬送経路上よりも左側(図示X方向と反対方向側)の場所に設定されたモノクロ用のスピット位置Xmに移動させて、そのモノクロ用のスピット位置Xmでモノクロ用の印刷ヘッド5mからインクを噴射させることにより行われ、カラー用の印刷ヘッド5cに対するメンテナンス動作は、キャリア6を印刷用紙2の搬送経路上よりも右側(図示X方向側)の場所に設定されたカラー用のスピット位置Xcに移動させて、そのカラー用のスピット位置Xcでカラー用の印刷ヘッド5cからインクを噴射させることにより行われる。
【0027】
図2は、プリンタ1の電気的ブロック構成を示す。プリンタ1は、上述の構成に加え、プリンタ1の動作を制御するためのCPU、ROM、及びRAM等からなる制御部41と、フィードモータ駆動回路42と、キャリアモータ駆動回路43と、ヘッド駆動回路44と、第1のタイマ45と、第2のタイマ46と、外部機器接続部47と、メモリ48とを備えている。制御部41のROM内には、プリンタ1の動作を制御するためのファームウェアやモノクロ用のスピット位置Xm及びカラー用のスピット位置Xcを示すデータ等が記憶されている。プリンタ1は、外部機器であるPC(パーソナルコンピュータ)60に接続して使用されるようになっており、PC60には、プリンタ1による印刷動作をPC60からの操作により行うためのデバイスドライバ70がインストールされている。
【0028】
フィードモータ駆動回路42は、制御部41による制御のもと、フィードモータ7を駆動する。フィードモータ7が駆動されることにより、給紙ローラ4a、フィードローラ4b、及びエグジットローラ4cが回転して、印刷用紙2が搬送される。キャリアモータ駆動回路43は、制御部41による制御のもと、キャリアモータ8を駆動する。キャリアモータ8が駆動されることにより、キャリア6が移動して、印刷ヘッド5m、5cが移動する。ヘッド駆動回路44は、制御部41による制御のもと、印刷ヘッド5m、5cを駆動して、印刷ヘッド5m、5cからのインクの噴射を制御する。
【0029】
エンコーダ9は、上述のように、キャリア6が移動することにより、キャリア6の移動量に比例したパルス数の検出信号を出力する。エンコーダ9から出力された検出信号は、制御部41に入力され、制御部41は、エンコーダ9から入力された検出信号を基に、キャリア6(印刷ヘッド5m、5c)の位置及び移動方向等を検出する。
【0030】
第1のタイマ45は、モノクロ用の印刷ヘッド5mに対するメンテナンス動作を行うためのタイミング信号を出力するものであり、第2のタイマ46は、カラー用の印刷ヘッド5cに対するメンテナンス動作を行うためのタイミング信号を出力するものである。第1のタイマ45及び第2のタイマ46は、各々、制御部41による制御のもと、計時動作を開始して、所定のタイミング(各々例えば30秒)でタイミング信号を出力する。第1のタイマ45及び第2のタイマ46から出力されたタイミング信号は、制御部41に入力される。第1のタイマ45が出力するタイミング信号の信号波形と第2のタイマ46が出力するタイミング信号の信号波形は異なっており、制御部41は、入力されたタイミング信号の信号波形によって、第1のタイマ45と第2のタイマ46のいずれからのタイミング信号であるか(すなわち、モノクロ用の印刷ヘッド5mに対するメンテナンス動作を行うためのタイミング信号であるのか、カラー用の印刷ヘッド5cに対するメンテナンス動作を行うためのタイミング信号であるのか)を判別する。
【0031】
外部機器接続部47は、PC60と通信を行うものであり、USBケーブルを介してPC60が接続されるようになっている。外部機器接続部47は、制御部41による制御のもと、USBケーブルを介してPC60との間で各種データの送受信を行う。メモリ48は、制御部41による制御のもと、PC60から受信した各種データを保存する。
【0032】
制御部41は、フィードモータ駆動回路42によりフィードモータ7の駆動を制御し、これにより、給紙ローラ4a、フィードローラ4b、エグジットローラ4cによる印刷用紙2の搬送動作を制御する。また、制御部41は、キャリアモータ駆動回路43によりキャリアモータ8の駆動を制御し、これにより、キャリア6による印刷ヘッド5m、5cの移動動作を制御する。さらに、制御部41は、ヘッド駆動回路44により印刷ヘッド5m、5cからのインクの噴射動作を制御する。なお、制御部41は、エンコーダ9から出力される検出信号を基にキャリア6(印刷ヘッド5m、5c)の位置及び移動方向等を検出して、印刷ヘッド5m、5cの移動動作、及び印刷ヘッド5m、5cからのインクの噴射動作を制御する。
【0033】
そして、制御部41は、これら印刷用紙2の搬送動作、印刷ヘッド5m、5cの移動動作、印刷ヘッド5m、5cからのインクの噴射動作を制御することにより、印刷用紙2に画像を印刷する印刷動作、印刷ヘッド5m、5cのノズル51m、51cの目詰まりを防止するためのメンテナンス動作等のプリンタ1の各種動作を制御する。
【0034】
デバイスドライバ70は、PC60における操作を受けて、プリンタ1に対して印刷要求を行うようになっており、プリンタ1に対して印刷要求を行うときに、画像を印刷するための一連の各種データをプリンタ1に送信する。このとき、デバイスドライバ70は、画像を印刷するための一連の各種データを、プリンタ1のスワス動作により印刷されるスワス画像単位で送信する。つまり、デバイスドライバ70は、複数のスワス画像を印刷するためのスワスデータを順次送信する。各スワスデータには、各スワス画像の印刷データ、印刷開始位置、印刷方向、及び印刷データ長を示す情報等が含まれている。プリンタ1は、デバイスドライバ70から受信したスワスデータに基いて、印刷用紙2に画像を印刷する印刷動作を行う。
【0035】
プリンタ1の制御部41は、デバイスドライバ70からスワスデータを受信すると、受信したスワスデータをメモリ48に記憶する。デバイスドライバ70からは、スワスデータが順次送信され、制御部41は、デバイスドライバ70から受信したスワスデータを順次メモリ48に記憶してゆく。
【0036】
そして、制御部41は、メモリ48に記憶したスワスデータに基いて、スワス画像を印刷するスワス動作と印刷用紙2を所定量搬送する改行動作とを順次実行して、印刷用紙2全体に画像を印刷する印刷動作を実行する。
【0037】
つまり、制御部41は、1つのスワスデータについて、そのスワスデータに示される印刷開始位置からそのスワスデータに示される印刷方向に向けてそのスワスデータに示される印刷データ長に達するまでキャリア6を移動させつつ、そのスワスデータに示される印刷データに従って印刷ヘッド5m、5cからインクを噴射させることにより、スワス動作を実行する。これにより、そのスワスデータによるスワス画像が印刷される。そして、キャリア6の移動量がそのスワスデータに示される印刷データ長に達すると、制御部41は、キャリア6をその位置から次に処理すべきスワスデータに示される印刷開始位置に移動させると共に、印刷用紙2を所定量搬送する改行動作を実行し、次に処理すべきスワスデータについて同様にスワス動作を実行する。制御部41は、このような動作を、メモリ48に記憶しているスワスデータ(すなわちデバイスドライバ70から受信したスワスデータ)について順次実行する。これにより、複数のスワス画像によって印刷用紙2の全体に画像が印刷される。
【0038】
制御部41は、このようにして、印刷用紙2の全体に画像を印刷する印刷動作を実行する。印刷動作中にも、デバイスドライバ70からスワスデータが順次送信され、制御部41は、デバイスドライバ70から受信したスワスデータをメモリ48に順次記憶してゆき、それらメモリ48に記憶したスワスデータに基いて、印刷動作を実行してゆく。
【0039】
印刷動作中において、制御部41は、メモリ48に記憶しているスワスデータ(デバイスドライバ70から受信したスワスデータ)を基に、そのときに印刷しているスワス画像以降に印刷する5スワス先までの各スワス画像の(つまり、そのときに実行しているスワス動作以降に実行する予定の5スワス分の各スワスデータにより示される)印刷開始位置、印刷方向、及び印刷データ長を、メンテナンス動作管理用データとしてメモリ48の別の記憶領域に記憶する。つまり、制御部41は、印刷動作の進行により次のスワス動作を実行する都度、最新の5スワス先までの各スワス画像の印刷開始位置、印刷方向、及び印刷データ長を、メンテナンス動作管理用データとしてメモリ48に更新記憶する。
【0040】
そして、制御部41は、印刷動作中において、第1のタイマ45からのタイミング信号の出力を受けて、印刷ヘッド5mに対するメンテナンス動作を実行する。つまり、制御部41は、第1のタイマ45からのタイミング信号の出力を受けて、キャリア6を印刷用紙2の搬送経路上よりも左側の場所に設定されたモノクロ用のスピット位置Xmに移動させて、そのモノクロ用のスピット位置Xmでモノクロ用の印刷ヘッド5mからインクを噴射させることにより、モノクロ用の印刷ヘッド5mに対するメンテナンス動作を実行し、その後、印刷動作を継続して実行する。このとき、制御部41は、メモリ48に記憶しているメンテナンス動作管理用データを基に、印刷ヘッド5mに対するメンテナンス動作を効率良く行うことができるメンテナンスタイミングを求め、そのメンテナンスタイミングで印刷ヘッド5mに対するメンテナンス動作を実行する。
【0041】
また、制御部41は、印刷動作中において、第2のタイマ46からのタイミング信号の出力を受けて、印刷ヘッド5cに対するメンテナンス動作を実行する。つまり、制御部41は、第2のタイマ46からのタイミング信号の出力を受けて、キャリア6を印刷用紙2の搬送経路上よりも右側の場所に設定されたカラー用のスピット位置Xcに移動させて、そのカラー用のスピット位置Xcでカラー用の印刷ヘッド5cからインクを噴射させることにより、カラー用の印刷ヘッド5cに対するメンテナンス動作を実行し、その後、印刷動作を継続して実行する。このとき、制御部41は、メモリ48に記憶しているメンテナンス動作管理用データを基に、印刷ヘッド5cに対するメンテナンス動作を効率良く行うことができるメンテナンスタイミングを求め、そのメンテナンスタイミングで印刷ヘッド5cに対するメンテナンス動作を実行する。
【0042】
なお、制御部41は、デバイスドライバ70からの印刷要求を受けたとき、印刷動作を開始する前に、モノクロ用の印刷ヘッド5mに対するメンテナンス動作を実行して、第1のタイマ45を起動すると共に、カラー用の印刷ヘッド5cに対するメンテナンス動作を実行して、第2のタイマ46を起動し、その後に、印刷動作を開始する。
【0043】
図3は、上記プリンタ1の印刷動作中においてメンテナンス動作を行うメンテナンスタイミングの決定処理のフローチャートを示す。上述のように、第1のタイマ45及び第2のタイマ46は、印刷動作を開始する前に起動され、第1のタイマ45及び第2のタイマ46が起動された後に印刷動作が実行される。また、上述のように、メモリ48には、メンテナンス動作管理用データとして、そのときに印刷しているスワス画像以降に印刷する5スワス先までの各スワス画像の印刷開始位置、印刷方向、及び印刷データ長が記憶される。つまり、印刷動作中において、メモリ48には、メンテナンス管理用データとして、そのときに印刷しているスワス画像よりk(k=1、2、3、4、5)個後に印刷する予定のスワス画像の印刷開始位置Xi(k)、印刷方向D(k)、及び印刷データ長L(k)が記憶されている。
【0044】
まず、制御部41は、印刷動作中においてメンテナンス動作を行うためのタイミング信号(第1のタイマ45又は第2のタイマ46から出力されるタイミング信号)を受信すると(#1でYES)、そのタイミング信号は、モノクロ用の印刷ヘッド5mに対するメンテナンス動作を行うためのタイミング信号であるのか、カラー用の印刷ヘッド5cに対するメンテナンス動作を行うためのタイミング信号であるのかを判断する(#2)。上述のように、第1のタイマ45が出力するタイミング信号の信号波形と第2のタイマ46が出力するタイミング信号の信号波形は異なっており、制御部41は、タイミング信号の信号波形によって、第1のタイマ45と第2のタイマ46のいずれからのタイミング信号であるかを判別する。つまり、制御部41は、受信したタイミング信号の信号波形を基に、第1のタイマ45からのタイミング信号であれば、モノクロ用の印刷ヘッド5mに対するメンテナンス動作を行うためのタイミング信号であると判断し、第2のタイマ46からのタイミング信号であれば、カラー用の印刷ヘッド5cに対するメンテナンス動作を行うためのタイミング信号であると判断する。
【0045】
ここで、受信したタイミング信号がモノクロ用の印刷ヘッド5mに対するタイミング信号であれば(#2でモノクロ用)、制御部41は、定数Posの値をモノクロ用のスピット位置Xmを示す値に設定すると共に、定数Dirの値を印刷方向が左方向であることを示す値に設定する(#3)。一方、受信したタイミング信号がカラー用の印刷ヘッド5cに対するタイミング信号であれば(#2でカラー用)、制御部41は、定数Posの値をカラー用のスピット位置Xcを示す値に設定すると共に、定数Dirの値を印刷方向が右方向であることを示す値に設定する(#4)。また、制御部41は、変数kの値を「1」に設定する(#5)。
【0046】
続いて、制御部41は、メモリ48に記憶されているメンテナンス動作管理用データを検索し、メンテナンス管理用データにより示される印刷方向D(k)(すなわち、そのときに印刷しているスワス画像よりk個後に印刷する予定のスワス画像の印刷方向)と上記#3又は#4で設定した定数Dirの値により示される印刷方向とが同じであるか否かを判断する(#6)。
【0047】
ここで、メンテナンス管理用データにより示される印刷方向D(k)と定数Dirの値により示される印刷方向とが同じであれば(#6でYES)、制御部41は、そのときに印刷しているスワス画像よりk個後に印刷する予定のスワス画像の印刷終了位置Xf(k)の値を算出する(#7)。印刷終了位置Xf(k)の値は、メンテナンス動作管理用データにより示される印刷開始位置Xi(k)と印刷データ長L(k)(すなわち、そのときに印刷しているスワス画像よりk個後に印刷する予定のスワス画像の印刷開始位置と印刷データ長)に基いて算出される。
【0048】
また、制御部41は、#7で算出した印刷終了位置Xf(k)と上記#3又は#4で設定した定数Posの値により示される位置との差R(k)(すなわち、印刷終了位置Xf(k)とモノクロ用のスピットXm又はカラー用のスピット位置Xcとの距離)を算出する(#8)。なお、メンテナンス管理用データにより示される印刷方向D(k)と定数Dirの値により示される印刷方向とが同じでなければ(#6でNO)、#7及び#8の処理は行わない。
【0049】
ここで、変数kの値が「5」未満(すなわち、全てのメンテナンス管理用データについて検索が終了していない)であれば(#9でYES)、制御部41は、変数kの値を「1」増加させて(#10)、上記#6以降の処理を繰り返す。
【0050】
そして、変数kの値が「5」に達する(すなわち、全てのメンテナンス管理用データについて検索が終了する)と(#9でNO)、制御部41は、印刷終了位置Xf(k)と定数Posの値により示される位置との差R(k)(k=1〜5)の中から最小値を求め、R(k)が最小値(すなわちスワス画像の印刷終了位置Xf(k)とモノクロ用のスピットXm又はカラー用のスピット位置Xcとの距離が最短)となるスワス画像を最短スワス画像として特定する(#11)。そして、制御部41は、この最短スワス画像を印刷し終えるタイミングを、メンテナンス動作を行うメンテナンスタイミングとして決定する(#12)。
【0051】
つまり、このようなメンテナンスタイミングの決定処理によれば、第1のタイマ45からタイミング信号が出力されると上記#3を経由し、この場合には、上記#8において、そのときに印刷しているスワス画像よりk(k=1、2、3、4、5)個後に印刷する予定のスワス画像の印刷終了位置Xf(k)とモノクロ用のスピット位置Xmとの距離R(k)が算出される。そして、上記#11において、印刷終了位置Xf(k)とモノクロ用のスピット位置Xmとの距離R(k)が最短となるときのスワス画像が、第1の最短スワス画像として特定され、上記#12において、この第1の最短スワス画像を印刷し終えるタイミングが、モノクロ用の印刷ヘッド5mに対するメンテナンス動作を行うメンテナンスタイミングとして決定される。
【0052】
また、第2のタイマ46からタイミング信号が出力されると上記#4を経由し、この場合には、上記#8において、そのときに印刷しているスワス画像よりk(k=1、2、3、4、5)個後に印刷する予定のスワス画像の印刷終了位置Xf(k)とカラー用のスピット位置Xcとの距離R(k)が算出される。そして、上記#11において、印刷終了位置Xf(k)とカラー用のスピット位置Xcとの距離R(k)が最短となるときのスワス画像が、第2の最短スワス画像として特定され、上記#12において、この第2の最短スワス画像を印刷し終えるタイミングが、カラー用の印刷ヘッド5cに対するメンテナンス動作を行うメンテナンスタイミングとして決定される。
【0053】
制御部41は、このようにして決定されたメンテナンスタイミングで印刷ヘッド5m、5cに対するメンテナンス動作を実行する。すなわち、制御部41は、第1の最短スワス画像を印刷し終えたタイミングでモノクロ用の印刷ヘッド5mに対するメンテナンス動作を実行し、従って、第1の最短スワス画像を印刷し終えたタイミングで、キャリア6を第1の最短スワス画像の印刷終了位置からモノクロ用のスピット位置Xmに移動させて、モノクロ用の印刷ヘッド5mからインクを噴射させる。また、制御部41は、第2の最短スワス画像を印刷し終えたタイミングでカラー用の印刷ヘッド5cに対するメンテナンス動作を実行し、従って、第2の最短スワス画像を印刷し終えたタイミングで、キャリア6を第2の最短スワス画像の印刷終了位置からカラー用のスピット位置Xcに移動させて、カラー用の印刷ヘッド5cからインクを噴射させる。
【0054】
図4は、上記プリンタ1のモノクロ用の印刷ヘッド5mに対するメンテナンス動作におけるキャリア6の移動動作例を示す。図4では、スワス画像I(0)を右方向に印刷中であり、その後、スワス画像I(0)、I(1)、I(2)、I(3)、I(4)、I(5)を順に印刷する予定であることを示している。図4に示す例では、スワス画像I(0)は、印刷開始位置Xi(0)から印刷終了位置Xf(0)まで右方向に印刷される。また、スワス画像I(1)は、印刷開始位置Xi(1)から印刷終了位置Xf(1)まで左方向に印刷され、スワス画像I(2)は、印刷開始位置Xi(2)から印刷終了位置Xf(2)まで右方向に印刷され、スワス画像I(3)は、印刷開始位置Xi(3)から印刷終了位置Xf(3)まで左方向に印刷され、スワス画像I(4)は、印刷開始位置Xi(4)から印刷終了位置Xf(4)まで右方向に印刷され、スワス画像I(5)は、印刷開始位置Xi(5)から印刷終了位置Xf(5)まで左方向に印刷される。
【0055】
ここで、図4に示す例において、スワス画像I(0)を印刷しているときに第1のタイマ45からタイミング信号が出力された場合を考える。この場合、制御部41は、第1のタイマ45からのタイミング信号の出力を受けて、スワス画像I(0)を印刷しているときに上記メンテナンスタイミングの決定処理を実行する。つまり、制御部41は、上記メンテナンスタイミングの決定処理における#3の処理を経由して、その後に印刷する予定の5走査分のスワス画像I(k)(k=1〜5)の中から、印刷終了位置Xf(k)とモノクロ用のスピット位置Xmとの距離が最短となるときのスワス画像I(k)を第1の最短スワス画像として特定し、その第1の最短スワス画像を印刷し終えるタイミングをモノクロ用の印刷ヘッド5mに対するメンテナンスタイミングとして決定する。
【0056】
図4に示す例では、スワス画像I(3)の印刷終了位置Xf(3)とモノクロ用のスピット位置Xmとの距離が最短であるため、制御部41は、スワス画像I(3)を第1の最短スワス画像として特定し、スワス画像I(3)を印刷し終えるタイミングをモノクロ用の印刷ヘッド5mに対するメンテナンスタイミングとする。
【0057】
従って、図4に示す例では、制御部41は、スワス画像I(0)、I(1)、I(2)、I(3)の順に印刷を実行してゆき(キャリア6をXf(0)→Xi(1)→Xf(1)→Xi(2)→Xf(2)→Xi(3)→Xf(3)の順に移動させ)、スワス画像I(3)を印刷し終えたタイミングで、モノクロ用の印刷ヘッド5mに対するメンテナンス動作を実行する。
【0058】
つまり、制御部41は、スワス画像I(3)を印刷し終えたタイミングで、キャリア6をスワス画像I(3)の印刷終了位置Xf(3)からモノクロ用のスピット位置Xmに移動させて、モノクロ用のスピット位置Xmでモノクロ用の印刷ヘッド5mからインクを噴射させる。その後、制御部41は、次のスワス画像I(4)の印刷開始位置Xi(4)にキャリア6を移動させて、スワス画像I(4)、I(5)、及びそれ以降の(デバイスドライバ70から新しく受信するスワスデータによる)スワス画像の印刷を継続して実行してゆく。
【0059】
なお、制御部41は、今回のメンテナンス動作を終えた(モノクロ用のスピット位置Xmでモノクロ用の印刷ヘッド5mからインクを噴射させた)時点で、第1のタイマ45を再起動して、次のメンテナンス動作に備える。従って、制御部41は、印刷動作中に、第1のタイマ45からタイミング信号が出力される都度、モノクロ用の印刷ヘッド5mに対するメンテナンス動作を実行する。
【0060】
図5は、上記プリンタ1のカラー用の印刷ヘッド5cに対するメンテナンス動作におけるキャリア6の移動動作例を示す。図5では、図4と同様に、スワス画像I(0)を左方向に印刷中であり、その後、スワス画像I(0)、I(1)、I(2)、I(3)、I(4)、I(5)を順に印刷する予定であることを示している。図5に示す例では、各スワス画像I(0)、I(1)、I(2)、I(3)、I(4)、I(5)は、図4に示した例と同様に印刷される。
【0061】
ここで、図5に示す例において、スワス画像I(0)を印刷しているときに第2のタイマ46からタイミング信号が出力された場合を考える。この場合、制御部41は、第2のタイマ46からのタイミング信号の出力を受けて、スワス画像I(0)を印刷しているときに上記メンテナンスタイミングの決定処理を実行する。つまり、制御部41は、上記メンテナンスタイミングの決定処理における#4の処理を経由して、その後に印刷する予定の5走査分のスワス画像I(k)(k=1〜5)の中から、印刷終了位置Xf(k)とカラー用のスピット位置Xcとの距離が最短となるときのスワス画像I(k)を第2の最短スワス画像として特定し、その第2の最短スワス画像を印刷し終えるタイミングをカラー用の印刷ヘッド5cに対するメンテナンスタイミングとして決定する。
【0062】
図5に示す例では、スワス画像I(4)の印刷終了位置Xf(4)とカラー用のスピット位置Xcとの距離が最短であるため、制御部41は、スワス画像I(4)を第2の最短スワス画像として特定し、スワス画像I(4)を印刷し終えるタイミングをカラー用の印刷ヘッド5cに対するメンテナンスタイミングとする。
【0063】
従って、図5に示す例では、制御部41は、スワス画像I(0)、I(1)、I(2)、I(3)、I(4)の順に印刷を実行してゆき(キャリア6をXf(0)→Xi(1)→Xf(1)→Xi(2)→Xf(2)→Xi(3)→Xf(3)→Xi(4)→Xf(4)の順に移動させ)、スワス画像I(4)を印刷し終えたタイミングで、カラー用の印刷ヘッド5cに対するメンテナンス動作を実行する。
【0064】
つまり、制御部41は、スワス画像I(4)を印刷し終えたタイミングで、キャリア6をスワス画像I(4)の印刷終了位置Xf(4)からカラー用のスピット位置Xcに移動させて、カラー用のスピット位置Xcでカラー用の印刷ヘッド5cからインクを噴射させる。その後、制御部41は、次のスワス画像I(5)の印刷開始位置Xi(5)にキャリア6を移動させて、スワス画像I(5)、及びそれ以降の(デバイスドライバ70から新しく受信するスワスデータによる)スワス画像の印刷を継続して実行してゆく。
【0065】
なお、制御部41は、今回のメンテナンス動作を終えた(カラー用のスピット位置Xcでカラー用の印刷ヘッド5cからインクを噴射させた)時点で、第2のタイマ46を再起動して、次のメンテナンス動作に備える。従って、制御部41は、印刷動作中に、第2のタイマ46からタイミング信号が出力される都度、カラー用の印刷ヘッド5cに対するメンテナンス動作を実行する。
【0066】
このように、上記構成のプリンタ1によれば、モノクロ用の印刷ヘッド5mに対するメンテナンス動作は、第1のタイマ45からタイミング信号が出力された後、その後に印刷される5走査分のスワス画像のうち、スワス画像の印刷終了位置とモノクロ用のスピット位置Xmとの距離が最短となる第1の最短スワス画像の印刷を終了したタイミングで行われる。このようなタイミングでモノクロ用の印刷ヘッド5mに対するメンテナンス動作が行われることにより、キャリア6はスワス画像の印刷終了位置からモノクロ用のスピット位置Xmを経由して次のスワス画像の印刷開始位置へ効率よく移動し、従って、モノクロ用の印刷ヘッド5mに対するメンテナンス動作において無駄なキャリア6の移動が少なくなり、スループットが向上する。
【0067】
また、カラー用の印刷ヘッド5cに対するメンテナンス動作は、第2のタイマ46からタイミング信号が出力された後、その後に印刷される5走査分のスワス画像のうち、スワス画像の印刷終了位置とカラー用のスピット位置Xcとの距離が最短となる第2の最短スワス画像の印刷を終了したタイミングで行われる。このようなタイミングでカラー用の印刷ヘッド5cに対するメンテナンス動作が行われることにより、キャリア6はスワス画像の印刷終了位置からカラー用のスピット位置Xcを経由して次のスワス画像の印刷開始位置へ効率よく移動し、従って、カラー用の印刷ヘッド5cに対するメンテナンス動作において無駄なキャリアの移動が少なくなり、スループットが向上する。
【0068】
なお、本発明は、上記実施形態の構成に限られず、種々の変形が可能である。例えば、モノクロ用のスピット位置Xmとカラー用のスピット位置Xcを印刷用紙2の搬送経路上よりも左側又は右側の同じ側に設定してもよい。また、第1のタイマ45と第2のタイマ46のいずれか1つのみを備え、そのタイマからのタイミング信号を受けて、モノクロ用の印刷ヘッド5mに対するメンテナンス動作とカラー用の印刷ヘッド5cに対するメンテナンス動作を実行するようにしてもよい。プリンタ1は、外部機器にインストールされたデバイスドライバ70から受信したデータに基いて画像を印刷するものに限られず、例えば、画像読取手段を備え、画像読取手段により画像を読取って得たデータを基に画像を印刷するものであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】本発明の一実施形態に係るプリンタの概略構成を示す斜視図。
【図2】同プリンタの電気的ブロック構成図。
【図3】同プリンタのメンテナンス動作を行うメンテナンスタイミングの決定処理を示すフローチャート。
【図4】同プリンタのモノクロ用の印刷ヘッドに対するメンテナンス動作におけるキャリアの移動動作例を示す図。
【図5】同プリンタのカラー用の印刷ヘッドに対するメンテナンス動作におけるキャリアの移動動作例を示す図。
【符号の説明】
【0070】
1 プリンタ
2 印刷用紙
3 ペーパレスト
4a 給紙ローラ
4b フィードローラ
4c エグジットローラ
5m モノクロ用の印刷ヘッド
5c カラー用の印刷ヘッド
6 キャリア
7 フィードモータ
8 キャリアモータ
9 エンコーダ
10 筐体
11 給紙口
12 排紙口
21、22 ガイド軸
41 制御部
42 フィードモータ駆動回路
43 キャリアモータ駆動回路
44 ヘッド駆動回路
45 第1のタイマ
46 第2のタイマ
47 外部機器接続部
48 メモリ
51m モノクロ用の印刷ヘッドのノズル
51c カラー用の印刷ヘッドのノズル
60 PC(パーソナルコンピュータ)(外部機器)
70 デバイスドライバ
91 エンコーダストリップ
92 光センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷用紙を搬送する用紙搬送手段と、印刷用紙に画像を印刷するためにノズルからインクを噴射するモノクロ用の印刷ヘッド及びカラー用の印刷ヘッドと、前記モノクロ用の印刷ヘッド及びカラー用の印刷ヘッドを保持するキャリアと、前記キャリアを前記用紙搬送手段により搬送される印刷用紙に沿って往復移動させるキャリア移動手段と、所定のタイミングでタイミング信号を出力する第1のタイマ及び第2のタイマと、本装置の動作を制御する制御手段とを備え、
前記制御手段は、
前記キャリアを前記キャリア移動手段により往路移動又は復路移動させつつ前記モノクロ用の印刷ヘッド及びカラー用の印刷ヘッドからインクを噴射させて印刷用紙に1走査分のスワス画像を印刷するスワス動作と、印刷用紙を前記用紙搬送手段により搬送する改行動作とを繰り返すことにより、複数のスワス画像によって印刷用紙の全体に画像を印刷する印刷動作を実行すると共に、
前記印刷動作中に、前記第1のタイマからのタイミング信号の出力を受けて、前記キャリアを印刷用紙の搬送経路上よりも左側の場所に設定されたモノクロ用のスピット位置に移動させて、そのモノクロ用のスピット位置で前記モノクロ用の印刷ヘッドからインクを噴射させることにより、前記モノクロ用の印刷ヘッドのノズルの目詰まりを防止するためのメンテナンス動作を実行し、このメンテナンス動作の実行後に前記印刷動作を継続して実行し、
また、前記印刷動作中に、前記第2のタイマからのタイミング信号の出力を受けて、前記キャリアを印刷用紙の搬送経路上よりも右側の場所に設定されたカラー用のスピット位置に移動させて、そのカラー用のスピット位置で前記カラー用の印刷ヘッドからインクを噴射させることにより、前記カラー用の印刷ヘッドのノズルの目詰まりを防止するためのメンテナンス動作を実行し、このメンテナンス動作の実行後に前記印刷動作を継続して実行し、
本装置による印刷動作を外部機器からの操作により行うためのデバイスドライバが外部機器にインストールされ、該デバイスドライバは、前記スワス動作により印刷されるスワス画像単位で、各スワス画像の印刷データ、印刷開始位置、印刷データ長、及び印刷方向を含むスワスデータを本装置に送信し、該デバイスドライバから受信したスワスデータに基いて前記印刷動作を行うプリンタにおいて、
前記制御手段は、
前記印刷動作中に、前記第1のタイマからタイミング信号が出力されると、
前記デバイスドライバから受信したスワスデータ内の、そのときに印刷しているスワス画像以降に印刷する複数画像先までの各スワス画像の印刷開始位置、印刷データ長、及び印刷方向の情報を基に、スワス画像の印刷終了位置と前記モノクロ用のスピット位置との距離が最短となるときのスワス画像である第1の最短スワス画像を特定し、
前記キャリアが前記第1の最短スワス画像の印刷終了位置に到達したタイミングで、前記キャリアを前記第1の最短スワス画像の印刷終了位置から前記モノクロ用のスピット位置に移動させて、前記モノクロ用の印刷ヘッドからインクを噴射させることにより、前記モノクロ用の印刷ヘッドに対するメンテナンス動作を実行し、
その後、次のスワス画像の印刷開始位置に前記キャリアを移動させて、以降のスワス画像の印刷を継続させ、
また、前記印刷動作中に、前記第2のタイマからタイミング信号が出力されると、
前記デバイスドライバから受信したスワスデータ内の、そのときに印刷しているスワス画像以降に印刷する複数画像先までの各スワス画像の印刷開始位置、印刷データ長、及び印刷方向の情報を基に、スワス画像の印刷終了位置と前記カラー用のスピット位置との距離が最短となるときのスワス画像である第2の最短スワス画像を特定し、
前記キャリアが前記第2の最短スワス画像の印刷終了位置に到達したタイミングで、前記キャリアを前記第2の最短スワス画像の印刷終了位置から前記カラー用のスピット位置に移動させて、前記カラー用の印刷ヘッドからインクを噴射させることにより、前記カラー用の印刷ヘッドに対するメンテナンス動作を実行し、
その後、次のスワス画像の印刷開始位置に前記キャリアを移動させて、以降のスワス画像の印刷を継続させる、
ことを特徴とするプリンタ。
【請求項2】
印刷用紙を搬送する用紙搬送手段と、印刷用紙に画像を印刷するためにノズルからインクを噴射する印刷ヘッドと、前記印刷ヘッドを保持するキャリアと、前記キャリアを前記用紙搬送手段により搬送される印刷用紙に沿って往復移動させるキャリア移動手段と、所定のタイミングでタイミング信号を出力するタイマと、本装置の動作を制御する制御手段とを備え、
前記制御手段は、
前記印刷ヘッドを前記キャリア移動手段により往路移動又は復路移動させつつ前記印刷ヘッドからインクを噴射させて印刷用紙に1走査分のスワス画像を印刷するスワス動作と、印刷用紙を前記用紙搬送手段により搬送する改行動作とを繰り返すことにより、複数のスワス画像によって印刷用紙の全体に画像を印刷する印刷動作を実行すると共に、
前記印刷動作中に、前記タイマからのタイミング信号の出力を受けて、前記印刷ヘッドを印刷用紙の搬送経路上から外れた場所に設定されたスピット位置に移動させて、そのスピット位置で前記印刷ヘッドからインクを噴射させることにより、前記印刷ヘッドのノズルの目詰まりを防止するためのメンテナンス動作を実行し、このメンテナンス動作の実行後に前記印刷動作を継続して実行するプリンタにおいて、
前記制御手段は、
前記印刷動作中に、前記タイマからタイミング信号が出力されると、
そのときに印刷しているスワス画像以降に印刷する複数画像先までの各スワス画像の印刷開始位置、印刷データ長、及び印刷方向の情報を基に、前記キャリアをスワス画像の印刷終了位置から前記スピット位置を経由して次のスワス画像の印刷開始位置へ効率よく移動させることができるメンテナンスタイミングを求め、
前記メンテナンスタイミングで、前記キャリアを前記スピット位置に移動させて、前記印刷ヘッドからインクを噴射させることにより、前記メンテナンス動作を実行し、
その後、次のスワス画像の印刷開始位置に前記キャリアを移動させて、以降のスワス画像の印刷を継続させる、
ことを特徴とするプリンタ。
【請求項3】
前記制御手段は、
前記印刷動作中に、前記タイマからタイミング信号が出力されると、
そのときに印刷しているスワス画像以降に印刷する複数画像先までの各スワス画像の印刷開始位置、印刷データ長、及び印刷方向の情報を基に、スワス画像の印刷終了位置と前記スピット位置との距離が最短となるときのスワス画像である最短スワス画像を特定して、この最短スワス画像の印刷終了位置に前記キャリアが到達した時を前記メンテナンスタイミングとし、
前記キャリアが前記最短スワス画像の印刷終了位置に到達したタイミングで、前記キャリアを前記最短スワス画像の印刷終了位置から前記スピット位置に移動させて、前記印刷ヘッドからインクを噴射させることにより、前記メンテナンス動作を実行し、
その後、次のスワス画像の印刷開始位置に前記キャリアを移動させて、以降のスワス画像の印刷を継続させる、
ことを特徴とする請求項2に記載のプリンタ。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−74024(P2008−74024A)
【公開日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−257904(P2006−257904)
【出願日】平成18年9月22日(2006.9.22)
【出願人】(000201113)船井電機株式会社 (7,855)
【Fターム(参考)】