プリンタ
【課題】供給された用紙が搬送中に斜行してしまうことを防止する。
【解決手段】給紙口105の中央領域と左右領域とに位置付けられた駆動ローラDR1と案内経路を介して対向する従動ローラSR1を当接部331,341で弾性的に付勢して駆動ローラDR1に当接させ、左右の従動ローラSR1を付勢する当接部331,341の当接力を可変部351で調節可能にする。給紙口105に対する用紙の給紙位置の左右への片寄りに応じて可変部351を変位させ、左右の当接部331,341の当接力を可変する。
【解決手段】給紙口105の中央領域と左右領域とに位置付けられた駆動ローラDR1と案内経路を介して対向する従動ローラSR1を当接部331,341で弾性的に付勢して駆動ローラDR1に当接させ、左右の従動ローラSR1を付勢する当接部331,341の当接力を可変部351で調節可能にする。給紙口105に対する用紙の給紙位置の左右への片寄りに応じて可変部351を変位させ、左右の当接部331,341の当接力を可変する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、給紙口の幅方向の任意位置に供給可能なプリンタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、給紙口に差し込み供給された用紙を斜行補正する技術(特許文献1,2参照)がプリンタに適用されて普及している。斜め状態のまま用紙搬送がなされると、印字ズレや用紙詰まり等の不具合が生じるからである。このような斜行補正技術の一例としては、用紙搬送を開始する搬送ローラ対に用紙を突き当てることにより斜めの用紙を整列させるものが知られている。
【0003】
そして、斜行補正された用紙は、突き当たった搬送ローラ対の回転によって搬送が開始される。図12は、用紙が搬送ローラ対によって搬送される状態を示す正面図である。搬送ローラ対14は、モータ駆動により回転する下側の駆動ローラ14aと、この駆動ローラ14aに対して接離自在に設けられた従動ローラ14bとによって構成されている。このとき、従動ローラ14bは、トーションスプリング13の一端によって駆動ローラ14aに向けて弾性的に押圧されている。なお、搬送ローラ対14の搬送方向奥側にも同様の構成を有する搬送ローラ対が設けられ、この従動ローラもトーションスプリング13の他端によって押圧されている。そして、トーションスプリング13は、左右のフレーム11に保持されたトーションスプリング軸12に巻き付け支持されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、厚みの有る用紙15(例えば、複数枚の紙が重なって側部でのり付けされた伝票)が、左寄せで供給されて斜行補正されて、搬送ローラ対14により搬送される場合、図12に示すように、従動ローラ14bは、用紙15の搬送中に左上がり右下がり状態になってしまう。この状態では、用紙15の右側部分により強く搬送ローラ対14の圧力がかかることになる。すると、用紙15は、右側部分の搬送力が左側より強くなるので、図13に示すように、搬送ローラ対14による搬送中に左曲がりに斜行してしまう。つまり、用紙15は、補正ローラによって斜行補正されても、搬送の開始により再び斜行してしまうのである。
【0005】
本発明の目的は、給紙口に供給された用紙が、搬送ローラ対によって搬送される際に斜行してしまうことを防止することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のプリンタは、用紙が供給される給紙口と、この給紙口から供給された用紙に対し印字動作を実行する印字部と、所定の隙間を開けて対向配置された一対の上ペーパーガイドと下ペーパーガイドとによって構成され、用紙を案内する案内経路と、前記給紙口から前記印字部までの領域に位置し、前記案内経路の一面側に配置されて前記給紙口の中央領域と左右領域とに位置付けられた駆動ローラと、前記給紙口の中央領域と左右領域とに位置付けられて前記案内経路を介して前記駆動ローラに対向する従動ローラと、前記従動ローラに弾性的に付勢力を与えて前記駆動ローラに当接させる当接部と、前記当接部に当接してその前記従動ローラに対する付勢力を可変する可変部と、前記給紙口に対する用紙の給紙位置を検出して出力するセンサと、前記センサの検出出力により前記給紙口に対する用紙の給紙位置の左右への片寄りを判定した場合に、前記可変部の当接による前記当接部の前記従動ローラに対する付勢力が用紙の片寄り側でその反対側よりも強くなるように前記可変部を変位させる制御部と、を備える。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、給紙口に供給された用紙の位置に応じて従動ローラの当接力が可変するので、給紙口に供給された用紙が搬送ローラ対によって搬送される際に斜行してしまうことを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】事務機を示す斜視図である。
【図2】ハウジングの一部を切り欠いて事務機を示す側面図である。
【図3】給紙部を示す側面図である。
【図4】給紙部を示す平面図である。
【図5】給紙部を給紙口側から見た正面図である。
【図6】給紙部の一部を示す斜視図である。
【図7】カムの回転状態を示す模式図である。
【図8】事務機の電気的接続を示すブロック図である。
【図9】用紙が給紙口に供給される際の処理の流れを示すフローチャートである。
【図10】左寄せで用紙が供給された状態を示す正面図である。
【図11】右寄せで用紙が供給された状態を示す正面図である。
【図12】用紙が搬送ローラ対によって搬送される状態を示す正面図である。
【図13】用紙が搬送ローラ対によって搬送される状態を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の実施の形態について図1ないし図11に基づいて説明する。本実施の形態のプリンタは、事務機101への適用例である。
【0010】
図1は、事務機101を示す斜視図である。事務機101は、各部を収納するハウジング102を備えている。ハウジング102の前面には表示デバイス103(例えば液晶ディスプレイ)が取り付けられている。表示デバイス103の下方には、入力デバイスであるキーボード104が配置されている。ハウジング102におけるキーボード104と表示デバイス103との間の領域には、用紙S1(図2参照)が供給される給紙口105が形成されている。
【0011】
図2は、ハウジング102の一部を切り欠いて事務機101を示す側面図である。ハウジング102には、その上面に給紙口105に連絡する排紙口106が設けられている。排紙口106の背面には、ウェブ状の連続用紙S2を給紙するための背面給紙口107が設けられている。そして、ハウジング102の上面には、排紙口106よりも奥側に位置させて、排紙口から排紙される用紙S1を積層保持するための排紙トレイ108が回動自在に取り付けられている。
【0012】
ハウジング102の内部には、給紙口105と排紙口106とを連絡させる案内経路109が設けられている。案内経路109は、所定の隙間を開けて対向配置された一対の上ペーパーガイド110と下ペーパーガイド111とによって構成されている。このような構成の案内経路109は、給紙口105と排紙口106との間を湾曲形状に連結している。
【0013】
案内経路109の排紙口106側の領域には、ハウジング102に内蔵させて、印字動作を実行する印字部114が配置されている。印字部114は、プラテン115とドットヘッド116とが案内経路109を介して対向配置された構造のものである。
【0014】
案内経路109には、案内経路109を介して配置されている搬送ローラ対FRが複数設けられている。これらの搬送ローラ対FRは、駆動ローラDRと従動ローラSRとによって構成されている。搬送ローラ対FRについては、給紙口105に近い位置から、第1搬送ローラ対FR1(第1駆動ローラDR1及び第1従動ローラSR1)、第2搬送ローラ対FR2(第2駆動ローラDR2及び第2従動ローラSR2)、第3搬送ローラ対FR3(第3駆動ローラDR3及び第3従動ローラSR3)、第4搬送ローラ対FR4(第4駆動ローラDR4及び第4従動ローラSR4)と呼ぶ。第1搬送ローラ対FR1、第2搬送ローラ対FR2、及び、第3搬送ローラ対FR3は、給紙口105から印字部114までの領域に順に位置付けられている。第1搬送ローラ対FR1は、用紙S1の搬送を開始するローラ対として機能する。また、第4搬送ローラ対FR4は、印字部114と排紙口106との間に位置付けられており、排紙ローラ対として機能する。
【0015】
各々の搬送ローラ対FRが有する駆動ローラDRは、事務機101の制御部151(図8参照)による駆動制御を受けて回転する。これにより、給紙口105から差し込まれた用紙S1は案内経路109を搬送される。
【0016】
ハウジング102の背面には、トラクタ112が配置されている。トラクタ112は、駆動軸113aと従動軸113bとに転動自在に掛け渡されたピンベルト(図示せず)を備え、駆動軸113aと一体にこのピンベルトが回転することで、連続用紙S2を案内経路109に給紙する。また、トラクタ112と案内経路109との連結部位には、搬送ローラ対FRによる搬送とトラクタ112による搬送と切り換えるためチェンジャ117が変位自在に設けられている。
【0017】
ここで、給紙口105から第2搬送ローラ対FR2までの各部が構成する部位を、給紙部201(図3参照)と呼ぶ。次に、給紙部201の詳細について説明する。
【0018】
図3は、給紙部201を示す側面図である。図4は、給紙部201を示す平面図である。図5は、給紙部201を給紙口105側から見た正面図である。図6は、給紙部201の一部を示す斜視図である。なお、図4ないし図6においては、図3において示す各部の一部を省略して示している。
【0019】
図3に示すように、案内経路109の給紙口105と第1搬送ローラ対FR1との間の領域であって、上ペーパーガイド110側の位置には、補正ローラ251が配置されている。補正ローラ251は、外周部分にウレタン製のハネ252aが複数枚設けられたハネ車252が補正ローラシャフト253に設けられて構成されたものである。
【0020】
図3に示すように、補正ローラ251と対峙する位置には、スキューセンサ271が下ペーパーガイド111に埋め込まれて配置されている。スキューセンサ271は、その上面に用紙S1が位置したことを検出して出力するセンサである。スキューセンサ271の検出出力は事務機101の制御部151(図8参照)に入力されている。スキューセンサ271が用紙S1を検出すると、制御部151に入力される検出出力は、「高」から「低」に変化する。そして、給紙口105に供給される用紙S1は、まず、スキューセンサ271と補正ローラ251との間に挟まれる。このとき、用紙S1の上面には、ハネ車252のハネ252aが接する。
【0021】
図3に示すように、補正ローラ251については、複数のハネ車252が補正ローラシャフト253に一定間隔で固定されている。したがって、補正ローラシャフト253の回転に伴ってハネ車252も回転する。ここで、補正ローラシャフト253は、事務機101が有するフレームFLによって回転自在に保持されている。
【0022】
図4に示すように、補正ローラシャフト253の給紙口105側から見て右側(図4中右側)には、シャフトギヤ225が嵌め込み固定されている。シャフトギヤ225は、モータ211のカム軸に嵌め込み固定されたモータギヤ221と噛み合っている。そのため、補正ローラ251は、モータ211の回転力がモータギヤ221とシャフトギヤ225とを介して伝達されて、回転する。また、補正ローラシャフト253には、シャフトギヤ225に隣接させて、後述する第1のベルトプーリBP1が嵌め込み固定されている。なお、モータ211は、事務機101に内蔵されており、一例として、パルスモータである。
【0023】
図4に示すように、スキューセンサ271は、補正ローラシャフト253に沿って、ハネ車252と対峙しない位置(例えば、ハネ車252同士の間の位置)に5つ設けられている。以下、5つのスキューセンサ271については、図4中左側から、スキューセンサ271a、スキューセンサ271b、スキューセンサ271c、スキューセンサ271d、及び、スキューセンサ271eと呼ぶ。
【0024】
図4に示すように、給紙口105の全幅に満たない紙幅を有する用紙S1が、左寄せで給紙口105に供給された場合には、スキューセンサ271a、271b、271cのみが、用紙S1がその上面に位置したことを検出して出力する。一方で、同じ用紙S1が、右寄せで給紙口105に供給された場合には、スキューセンサ271c、271d、271eのみが、用紙S1がその上面に位置したことを検出して出力する。
【0025】
図3に示すように、補正ローラ251及びスキューセンサ271よりも案内経路109の下流側(図3中右側)には、第1搬送ローラ対FR1(第1駆動ローラDR1、第1従動ローラSR1)と第2搬送ローラ対FR2(第2駆動ローラDR2、第2従動ローラSR2)とが配置されている。
【0026】
図5に示すように、第1搬送ローラ対FR1が有する第1駆動ローラDR1は、一本の第1駆動ローラ軸DR1Sに複数の第1駆動ローラ体DR1Bが設けられて構成されている。同様に、第1従動ローラSR1も、一本の第1従動ローラ軸SR1Sに複数の第1従動ローラ体SR1Bが、第1駆動ローラ体DR1Bと同じ間隔で設けられて構成されている。そして、第1駆動ローラDR1と第1従動ローラSR1とは、第1駆動ローラ体DR1Bと第1従動ローラ体SR1Bとが対峙する位置に配置されている。
【0027】
詳細は図示しないが、第2搬送ローラ対FR2も、第1搬送ローラ対FR1と同様の構成を有している。つまり、第2駆動ローラDR2は、一本の第2駆動ローラ軸DR2Sに複数の第2駆動ローラ体DR2Bが設けられて構成され、第2従動ローラSR2も、一本の第2従動ローラ軸SR2Sに複数の第2従動ローラ体SR2Bが、第2駆動ローラ体DR2Bと同じ間隔で設けられて構成され、第2駆動ローラ体DR2Bと第2従動ローラ体SR2Bと対峙して配置されている。
【0028】
本実施の形態では、第1駆動ローラDR1は、4つの第1駆動ローラ体DR1B、つまり、給紙口105の左領域に位置する1つの第1駆動ローラ体DR1Bと、給紙口105の中央領域に位置する2つの第1駆動ローラ体DR1Bと、給紙口105の右領域に位置する1つの第1駆動ローラ体DR1Bとを有している。こうして、第1駆動ローラDR1は、給紙口105の中央領域と左右領域とに位置付けられている。
【0029】
第1駆動ローラDR1に対向する第1従動ローラSR1も同様の構成を有している。つまり、第1従動ローラSR1は、4つの第1従動ローラ体SR1B、つまり、給紙口105の左領域に位置する1つの第1従動ローラ体SR1Bと、給紙口105の中央領域に位置する2つの第1従動ローラ体SR1Bと、給紙口105の右領域に位置する1つの第1従動ローラ体SR1Bとを有している。こうして、第1従動ローラSR1は、給紙口105の中央領域と左右領域とに位置付けられている。
【0030】
また、第2搬送ローラ対FR2が有する第2駆動ローラDR2と第2従動ローラSR2とについても、それぞれ第1駆動ローラDR1と第1従動ローラSR1と同様の構成を有している。
【0031】
第1駆動ローラ軸DR1Sと第2駆動ローラ軸DR2Sとは、フレームFLによって回動自在に保持されており、その一端側には、プーリ(図示せず)がそれぞれ設けられ、このプーリ(図示せず)にはプーリベルト(図示せず)が掛け渡されている。そのため、第1駆動ローラDR1と第2駆動ローラDR2とは連動して一体に回転する。そして、第1駆動ローラ軸DR1Sは、事務機101に内蔵された搬送モータ(図示せず)の回転力が伝達されて回転する。つまり、搬送モータ(図示せず)の回転駆動によって、第1駆動ローラDR1と第2駆動ローラDR2とが連動して一体に回転する。なお、搬送モータ(図示せず)の回転力が第2駆動ローラ軸DR2Sに伝達されるようにしてもよい。
【0032】
図6に示すように、第1従動ローラ軸SR1Sは、フレームFLに形成された上下方向に長い長孔FL1にその両端側が差し込まれている。こうして、第1従動ローラ軸SR1Sは、上下方向に遊びをもって回転自在に保持されている。同様に、第2従動ローラ軸SR2S(図3等参照)も、フレームFLに形成された上下方向に長い長孔(図示せず)にその両端側が差し込まれ、上下方向に遊びをもって回動自在に保持されている。そのため、第1従動ローラ体SR1Bは、その自重によって、対峙する第1駆動ローラ体DR1Bに接触し、第2従動ローラ体SR2Bも同様に、その自重によって、対峙する第2駆動ローラ体DR2Bに接触している。
【0033】
図3に示すように、第1従動ローラ軸SR1S及び第2従動ローラ軸SR2Sの上方位置には、トーションスプリング331が配置されている。トーションスプリング331は、上ペーパーガイド110の上面側の位置にあるトーションスプリング軸341に巻き付けられて支持されている。また、図4に示すように、トーションスプリング331は、第1従動ローラ体SR1B(又は第2従動ローラ体SR2B)同士の間の位置であって、その両端が第1従動ローラ軸SR1Sと第2従動ローラ軸SR2Sとに接する位置に複数(本実施の形態では5つ)配置されている。このとき、図6に示すように、トーションスプリング軸341は、フレームFLに形成された上下方向に長い長孔FL2にその両端側が差し込まれている。こうして、トーションスプリング軸341は、上下方向に遊びをもって保持されている。そのため、このようなトーションスプリング軸341に巻き付け支持されたトーションスプリング331は、自重(トーションスプリング軸341の重量を含む)によって、その両端が、第1従動ローラ軸SR1Sと第2従動ローラ軸SR2Sとに接触している。
【0034】
図5に示すように、トーションスプリング軸341におけるフレームFLからはみ出した両端側の上方位置には、一対のカム351(カム351a、カム351b)が、トーションスプリング軸341と接触状態で配置されている。このようなカム351は、トーションスプリング軸341の上方位置でフレームFLによって回動自在に保持された一本のカム軸352の両端部分に固定されている。そして、カム軸352の回転に伴って、その両端に固定されたカム351も一体に回転する。
【0035】
図6に示すように、トーションスプリング軸341や第1従動ローラ軸SR1Sは上下方向へ遊びもって保持されている一方で、カム軸352は上下方向への遊びをもたず、回転以外の移動規制がされてフレームFLに保持されている。そのため、トーションスプリング軸341は、接触するカム351によって下方に向けて押圧されている。そして、トーションスプリング軸341が押圧されているので、このトーションスプリング軸341が有するトーションスプリング331の両端は、第1従動ローラ軸SR1Sと第2従動ローラ軸SR2Sとを下方に向けて押圧している(図3等参照)。さらに、第1従動ローラ体SR1Bは、対応する第1駆動ローラ体DR1Bに対して弾性的に押圧された状態で接触し、第2従動ローラ体SR2Bも対応する第2駆動ローラ体DR2Bに対して弾性的に押圧された状態で接触している。
【0036】
そして、図4に示すように、カム軸352の一端には、第2のベルトプーリBP2が設けられている。第2のベルトプーリBP2は、補正ローラシャフト253の一端に設けられた第1のベルトプーリBP1と直列になる位置に位置付けられている。そして、第1のベルトプーリBP1と第2のベルトプーリBP2とには、プーリベルトPBLが掛け渡されている。これにより、第1のベルトプーリBP1と第2のベルトプーリBP2とは、連動して一体に回転する。このとき、第1のベルトプーリBP1は、モータ211の駆動により動力が伝達されて回転するので、第2のベルトプーリBP2も、モータ211の駆動により動力が伝達されて、第1のベルトプーリBP1と一体に回転する。つまり、補正ローラ251とカム351とは、その駆動源を同一のモータ211にして、このモータ211の駆動により、連動して回転する。
【0037】
また、図4に示すように、第2のベルトプーリBP2は、電磁クラッチEMCを介してカム軸352に設けられている。電磁クラッチEMCは、第2のベルトプーリBP2のカム軸352に対する接続と切断とを自在に行う。電磁クラッチEMCが接続状態では、第2のベルトプーリBP2の回転動力がカム軸352に伝達されてカム軸352は第2のベルトプーリBP2と一体に回転する。一方で、電磁クラッチEMCが切断状態では、第2のベルトプーリBP2の回転動力のカム軸352への伝達は解除される。このような電磁クラッチEMCの接続及び切断は、制御部151(図8参照)の制御によって実行される。なお、電磁クラッチEMCが切断状態で、カム軸352の回転動作は規制され、通常時、電磁クラッチEMCは切断状態となっている。
【0038】
ところで、図3に示すように、カム351を側方から見ると、その外周形状は完全な円形形状ではなく、軸中心から外周までの距離が変動している。本実施の形態のカム351の外周面は、カム軸352から距離が最短である最短部位353Sと、カム軸352からの距離が最長である最長部位とを含んだカム面353(カム面353a、カム面353b)となっている。
【0039】
図7は、カム351の回転状態を示す模式図である。一方のカム351aと他方のカム351bとは、同一形状の部材である。そして、互いに同一形状であるカム351aとカム351bとが、一本のカム軸352の両端部分に固定的に取り付けられている。このとき、一方のカム351aの最短部位353Saと他方のカム351bの最短部位353Sbとがカム軸352に対して正反対となる位置に取り付けられている。したがって、一対のカム351(カム351a、カム351b)は、そのカム面353(カム面353a、カム面353b)によって、トーションスプリング軸341の第1従動ローラ軸SR1Sと第2従動ローラ軸SR2Sとに対する押圧力の位相を反転させている。なお、カム351とカム軸352とは一体成形されていても良い。
【0040】
また、図7に示すように、一方のカム351bに隣接させて、透過型センサである回転位置センサHPSが配置されている(図4及び図6も参照)。回転位置センサHPSは、カム351bが入り込んでこれにより光が遮断される位置に配置されており、フレームFL等に位置固定されている。回転位置センサHPSは、常にカム351bによって光遮断されているのではなく、カム351bの回転位置によっては、光遮断が解除される。
【0041】
つまり、図7(a)に示すように、カム351bが、カム面353aにおける最短部位353Saが回転位置センサHPSと正対する回転位置に位置付けられた状態では、カム351bの回転位置センサHPSの溝への入り込みが解除されて、回転位置センサHPSは光透過状態となっている。事務機101が有する制御部151(図8参照)には、回転位置センサHPSの検出出力が入力されている。そして、回転位置センサHPSが光遮断状態から光透過状態となるに従い、制御部151に入力される回転位置センサHPSの検出出力は、「低」から「高」となる。
【0042】
図7(a)に示す回転位置にカム351が位置付けられた状態では、カム351の軸中心からトーションスプリング軸341(図7中では図示せず)と接するカム面353までの距離については、カム351a及びカム351bは共に等しい。したがって、カム351によるトーションスプリング軸341への押圧状態の左右バランスは、等しくなっている。そして、トーションスプリング331による第1従動ローラSR1及び第2従動ローラSR2の押圧の左右バランスも等しいものとなっている。以下、図7(a)に示すカム351の回転位置を「基準位置」と呼ぶ。
【0043】
次に、図7(b)に示すように、カム351bが、その最短部位353Sbがトーションスプリング軸341と接触する回転位置に位置付けられた状態について説明する。このとき、カム351bは回転位置センサHPSの溝に入り込み光遮断状態となっており、制御部151に入力される回転位置センサHPSの検出出力は「低」となっている。
【0044】
図7(b)に示す回転位置にカム351が位置付けられた状態では、カム351の軸中心からトーションスプリング軸341(図7中では図示せず)と接するカム面353までの距離については、カム351bにおける距離の方がカム351aにおける距離よりも短い。そのため、カム351によるトーションスプリング軸341への押圧状態の左右バランスは、左側(カム351a側、図7中上側)の方が右側(カム351b側、図7中下側)よりも強くなっている。そして、このとき、トーションスプリング331による第1従動ローラSR1及び第2従動ローラSR2の押圧も、左側の方が右側よりも強くなっている。以下、図7(b)に示すカム351の回転位置を「左寄せ位置」と呼ぶ。
【0045】
次に、図7(c)に示すように、カム351aが、その最短部位353Saがトーションスプリング軸341と接触する回転位置に位置付けられた状態について説明する。このときも、カム351bは回転位置センサHPSの溝に入り込み光遮断状態となっており、制御部151に入力される回転位置センサHPSの検出出力は「低」となっている。
【0046】
図7(c)に示す回転位置にカム351が位置付けられた状態では、カム351の軸中心からトーションスプリング軸341(図7中では図示せず)と接するカム面353までの距離については、カム351aにおける距離の方がカム351bにおける距離よりも短い。そのため、カム351によるトーションスプリング軸341への押圧状態の左右バランスは、右側(カム351b側、図7中下側)の方が左側(カム351a側、図7中上側)よりも強くなっている。そして、このとき、トーションスプリング331による第1従動ローラSR1及び第2従動ローラSR2の押圧も、右側の方が左側よりも強くなっている。以下、図7(c)に示すカム351の回転位置を「右寄せ位置」と呼ぶ。「右寄せ位置」は、「左寄せ位置」からカム軸352を180°回転させた位置である。
【0047】
図8は、事務機101の電気的接続を示すブロック図である。事務機101は、各部を駆動制御するマイクロコンピュータ構成の制御部151を有する。制御部151は、CPU、ROM、RAM等(いずれも図示せず)によって構成されている。そして、制御部151には、事務機101が備える表示デバイス103及びキーボード104が接続されている。さらに、制御部151には、モータ211及び搬送モータ(図示せず)を含むモータ類152と、スキューセンサ271及び回転位置センサHPSを含むセンサ類153と、電磁クラッチEMCとが接続されている。モータ類152は、制御部151による駆動の制御を受ける。また、制御部151には、センサ類153の検出出力が入力されている。
【0048】
このような構成において、複数枚の紙が重ねられて厚みのある用紙S1が給紙口105に供給される際に制御部151が実行する処理について以下に説明する。
【0049】
図9は、用紙S1が給紙口105に供給される際の処理の流れを示すフローチャートである。まず、事務機101の制御部151は、給紙口105への用紙S1の供給判定に待機している(ステップS101)。このとき、用紙S1が給紙口105に供給されて、補正ローラ251とスキューセンサ271との間に差し込まれると、いずれかのスキューセンサ271の制御部151へと入力される検出出力が「高」から「低」に変化する。これにより、制御部151は、給紙口105に用紙S1が供給されたことを判定する(ステップS101のY)。
【0050】
次に、制御部151は、モータ211を制御して回転駆動させ、補正ローラ251を回転させる(ステップS102)。これにより、補正ローラ251とスキューセンサ271との間に差し込まれた用紙S1は、回転するハネ252aによって搬送力が与えられて案内経路109に送り込まれ、この用紙S1の先端は第1搬送ローラ対FR1に突き当る。用紙S1が第1搬送ローラ対FR1に突き当たると、補正ローラ251の回転するハネ252aは、この用紙S1との間に滑りを生ずる。こうして、用紙S1は整列され、斜行補正が実行される。
【0051】
また、制御部151は、モータ211を回転駆動させながら、電磁クラッチEMCを制御して、カム351を「基準位置」に変位させる(ステップS103)。制御部151は、カム351が「基準位置」に位置付けられたことを、回転位置センサHPSが光透過状態となり、その検出出力が「高」になったことにより判定する。このとき、制御部151は、回転位置センサHPSの検出出力が「高」になるまで電磁クラッチEMCを接続状態にして、この検出出力が「高」になることにより電磁クラッチEMCの接続状態を解除する。こうして、カム351は「基準位置」に変位する。制御部151は、このカム351を「基準位置」へと変位させる制御を、モータ211の回転駆動の開始と共に開始して、補正ローラ251が一回転するまでに終える。
【0052】
次に、制御部151は、給紙口105に供給された用紙S1の幅方向の位置を判定する。本実施の形態では、制御部151は、用紙S1が、給紙口105の中央に供給されたか(ステップS104)、左寄せで給紙口105に供給されたか(ステップS105)、右寄せで給紙口105に供給されたか(ステップS106)を判定する。
【0053】
用紙S1が給紙口105の中央に供給されたことは、5つのスキューセンサ271のうち、中央3つのスキューセンサ271(スキューセンサ271b、271c、271d)の検出出力が「高」から「低」になることにより判定する。
【0054】
用紙S1が左寄せで給紙口105に供給されたことは、5つのスキューセンサ271のうち、左側3つのスキューセンサ271(スキューセンサ271a、271b、271c)の検出出力が「高」から「低」になることにより判定する。
【0055】
用紙S1が右寄せで給紙口105に供給されたことは、5つのスキューセンサ271のうち、右側3つのスキューセンサ271(スキューセンサ271c、271d、271e)の検出出力が「高」から「低」になることにより判定する。
【0056】
制御部151は、用紙S1が給紙口105の中央に供給されたと判定した場合には(ステップS104のY)、電磁クラッチEMCを制御してカム351をさらに変位させることなく、カム351を「基準位置」に位置付けられたままにする。そのため、トーションスプリング331による第1従動ローラSR1及び第2従動ローラSR2への押圧の左右バランスは等しいものとなっている。そして、制御部151は、搬送モータを制御して回転駆動させて、第1搬送ローラ対FR1及び第2搬送ローラ対FR2の回転を開始させる(ステップS107)。これにより、第1搬送ローラ対FR1に付き当たっている用紙S1は、回転する第1搬送ローラ対FR1に引き込まれて搬送される。
【0057】
また、用紙S1が左寄せで給紙口105に供給されたと判定した場合には(ステップS105のY)、制御部151は、再び電磁クラッチEMCを制御して接続状態にして、カム351を「左寄せ位置」に変位させる(ステップS108)。このとき、制御部151は、「基準位置」にあるカム351がカム軸352の回転により「左寄せ位置」に位置付けられる所定時間だけ、電磁クラッチEMCを接続状態にする制御を実行する。こうして、カム351は「左寄せ位置」に変位する。
【0058】
図10は、左寄せで用紙S1が供給された状態を示す正面図である。厚みの有る用紙S1が左寄せで給紙口105に供給されて第1搬送ローラ対FR1の間に入り込むと、第1駆動ローラDR1に対して接離自在(上下方向に移動自在)に設けられた第1従動ローラSR1は、給紙口105側から見て、左上がり右下がり状態になり得る。第2従動ローラSR2についても同様である。しかしながら、本実施の形態によれば、このとき、カム351が「「左寄せ位置」に位置付けられて、トーションスプリング331による第1従動ローラSR1及び第2従動ローラSR2への押圧は、左側の方が右側よりも強くなっているため、図10に示すように、第1従動ローラSR1及び第2従動ローラSR2の左上がり右下がり状態が解消されて、その左右バランスは等しくなる。こうして、第1搬送ローラ対FR1及び第2搬送ローラ対FR2による用紙S1の搬送においては、用紙S1に対して均等に圧がかかる。よって、左寄せで供給された用紙S1が第1搬送ローラ対FR1及び第2搬送ローラ対FR2による搬送中に左曲がりに斜行してしまうことが防止され、搬送される用紙S1は直進する。
【0059】
図9の説明に戻る。用紙S1が右寄せで給紙口105に供給されたと判定した場合には(ステップS106のY)、制御部151は、電磁クラッチEMCを制御して接続状態にして、カム351を「右寄せ位置」に変位させる(ステップS109)。このとき、制御部151は、「基準位置」にあるカム351がカム軸352の回転により「右寄せ位置」に位置付けられる所定時間だけ、電磁クラッチEMCを接続状態にする制御を実行する。こうして、カム351は「右寄せ位置」に変位する。
【0060】
図11は、右寄せで用紙S1が供給された状態を示す正面図である。厚みの有る用紙S1が右寄せで給紙口105に供給されて第1搬送ローラ対FR1の間に入り込むと、第1従動ローラSR1は、給紙口105側から見て、左下がり右上がり状態になり得る。しかしながら、本実施の形態によれば、このとき、カム351が「「右寄せ位置」に位置付けられて、トーションスプリング331による第1従動ローラSR1及び第2従動ローラSR2への押圧は、右側の方が左側よりも強くなっているため、図11に示すように、第1従動ローラSR1及び第2従動ローラSR2の右上がり左下がり状態が解消されて、その左右バランスは等しくなる。こうして、第1搬送ローラ対FR1及び第2搬送ローラ対FR2による用紙S1の搬送においては、用紙S1に対して均等に圧がかかる。よって、右寄せで供給された用紙S1が第1搬送ローラ対FR1及び第2搬送ローラ対FR2による搬送中に右曲がりに斜行してしまうことが防止され、搬送される用紙S1は直進する。
【0061】
なお、本実施の形態では、第1従動ローラSR1だけでなく、第2従動ローラSR2についてもその対峙する駆動ローラDR(第2駆動ローラDR2)に対して接離自在な例を示したが、駆動ローラDRに対して接離自在なのは、用紙S1が突き当たる第1搬送ローラ対FR1が有する第1従動ローラSR1だけであってもよい。この場合、第2従動ローラSR2については、その第2従動ローラ軸SR2Sを上下方向への遊びをもたせずにフレームFLによって回動自在に保持させる。また、トーションスプリング331については、例えば、第2従動ローラSR2側の一端をトーションスプリング軸341へ巻き付けて固定する等し、また、トーションスプリング331を回転しないように保持すればよい。
【0062】
また、本実施の形態では、一対のカム351(カム351a、カム351b)は、そのカム面353(カム面353a、カム面353b)によって、トーションスプリング軸341の第1従動ローラ軸SR1Sと第2従動ローラ軸SR2Sとに対する押圧力の位相を180度変えていたが、180度で無くとも良い。また、本実施の形態では、補正ローラ251の駆動源とカム351の駆動源とを同一のモータ211としたが、駆動源は別々であってもよい。
【0063】
以上説明したように本実施の形態によれば、給紙口105に供給されて斜行補正された用紙S1が、搬送ローラ対FRによって搬送される際に再び斜行してしまうことを防止することができる。
【符号の説明】
【0064】
101…事務機(プリンタ),105…給紙口,106…排紙口,109…案内経路,114…印字部,151…制御部,211…モータ,251…補正ローラ,271…スキューセンサ(センサ,第2のセンサ),331…トーションスプリング(当接部),351,351a,351b…カム(可変部),DR1…第1駆動ローラ(駆動ローラ),DR2…第2駆動ローラ(駆動ローラ),EMC…電磁クラッチ,FR1…第1搬送ローラ対(搬送ローラ対),FR2…第2搬送ローラ対(搬送ローラ対),S1…用紙,SR1…第1従動ローラ(従動ローラ),SR2…第2従動ローラ(従動ローラ)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0065】
【特許文献1】特開平11−147622号公報
【特許文献2】特開2002−347991号公報
【技術分野】
【0001】
本発明は、給紙口の幅方向の任意位置に供給可能なプリンタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、給紙口に差し込み供給された用紙を斜行補正する技術(特許文献1,2参照)がプリンタに適用されて普及している。斜め状態のまま用紙搬送がなされると、印字ズレや用紙詰まり等の不具合が生じるからである。このような斜行補正技術の一例としては、用紙搬送を開始する搬送ローラ対に用紙を突き当てることにより斜めの用紙を整列させるものが知られている。
【0003】
そして、斜行補正された用紙は、突き当たった搬送ローラ対の回転によって搬送が開始される。図12は、用紙が搬送ローラ対によって搬送される状態を示す正面図である。搬送ローラ対14は、モータ駆動により回転する下側の駆動ローラ14aと、この駆動ローラ14aに対して接離自在に設けられた従動ローラ14bとによって構成されている。このとき、従動ローラ14bは、トーションスプリング13の一端によって駆動ローラ14aに向けて弾性的に押圧されている。なお、搬送ローラ対14の搬送方向奥側にも同様の構成を有する搬送ローラ対が設けられ、この従動ローラもトーションスプリング13の他端によって押圧されている。そして、トーションスプリング13は、左右のフレーム11に保持されたトーションスプリング軸12に巻き付け支持されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、厚みの有る用紙15(例えば、複数枚の紙が重なって側部でのり付けされた伝票)が、左寄せで供給されて斜行補正されて、搬送ローラ対14により搬送される場合、図12に示すように、従動ローラ14bは、用紙15の搬送中に左上がり右下がり状態になってしまう。この状態では、用紙15の右側部分により強く搬送ローラ対14の圧力がかかることになる。すると、用紙15は、右側部分の搬送力が左側より強くなるので、図13に示すように、搬送ローラ対14による搬送中に左曲がりに斜行してしまう。つまり、用紙15は、補正ローラによって斜行補正されても、搬送の開始により再び斜行してしまうのである。
【0005】
本発明の目的は、給紙口に供給された用紙が、搬送ローラ対によって搬送される際に斜行してしまうことを防止することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のプリンタは、用紙が供給される給紙口と、この給紙口から供給された用紙に対し印字動作を実行する印字部と、所定の隙間を開けて対向配置された一対の上ペーパーガイドと下ペーパーガイドとによって構成され、用紙を案内する案内経路と、前記給紙口から前記印字部までの領域に位置し、前記案内経路の一面側に配置されて前記給紙口の中央領域と左右領域とに位置付けられた駆動ローラと、前記給紙口の中央領域と左右領域とに位置付けられて前記案内経路を介して前記駆動ローラに対向する従動ローラと、前記従動ローラに弾性的に付勢力を与えて前記駆動ローラに当接させる当接部と、前記当接部に当接してその前記従動ローラに対する付勢力を可変する可変部と、前記給紙口に対する用紙の給紙位置を検出して出力するセンサと、前記センサの検出出力により前記給紙口に対する用紙の給紙位置の左右への片寄りを判定した場合に、前記可変部の当接による前記当接部の前記従動ローラに対する付勢力が用紙の片寄り側でその反対側よりも強くなるように前記可変部を変位させる制御部と、を備える。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、給紙口に供給された用紙の位置に応じて従動ローラの当接力が可変するので、給紙口に供給された用紙が搬送ローラ対によって搬送される際に斜行してしまうことを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】事務機を示す斜視図である。
【図2】ハウジングの一部を切り欠いて事務機を示す側面図である。
【図3】給紙部を示す側面図である。
【図4】給紙部を示す平面図である。
【図5】給紙部を給紙口側から見た正面図である。
【図6】給紙部の一部を示す斜視図である。
【図7】カムの回転状態を示す模式図である。
【図8】事務機の電気的接続を示すブロック図である。
【図9】用紙が給紙口に供給される際の処理の流れを示すフローチャートである。
【図10】左寄せで用紙が供給された状態を示す正面図である。
【図11】右寄せで用紙が供給された状態を示す正面図である。
【図12】用紙が搬送ローラ対によって搬送される状態を示す正面図である。
【図13】用紙が搬送ローラ対によって搬送される状態を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の実施の形態について図1ないし図11に基づいて説明する。本実施の形態のプリンタは、事務機101への適用例である。
【0010】
図1は、事務機101を示す斜視図である。事務機101は、各部を収納するハウジング102を備えている。ハウジング102の前面には表示デバイス103(例えば液晶ディスプレイ)が取り付けられている。表示デバイス103の下方には、入力デバイスであるキーボード104が配置されている。ハウジング102におけるキーボード104と表示デバイス103との間の領域には、用紙S1(図2参照)が供給される給紙口105が形成されている。
【0011】
図2は、ハウジング102の一部を切り欠いて事務機101を示す側面図である。ハウジング102には、その上面に給紙口105に連絡する排紙口106が設けられている。排紙口106の背面には、ウェブ状の連続用紙S2を給紙するための背面給紙口107が設けられている。そして、ハウジング102の上面には、排紙口106よりも奥側に位置させて、排紙口から排紙される用紙S1を積層保持するための排紙トレイ108が回動自在に取り付けられている。
【0012】
ハウジング102の内部には、給紙口105と排紙口106とを連絡させる案内経路109が設けられている。案内経路109は、所定の隙間を開けて対向配置された一対の上ペーパーガイド110と下ペーパーガイド111とによって構成されている。このような構成の案内経路109は、給紙口105と排紙口106との間を湾曲形状に連結している。
【0013】
案内経路109の排紙口106側の領域には、ハウジング102に内蔵させて、印字動作を実行する印字部114が配置されている。印字部114は、プラテン115とドットヘッド116とが案内経路109を介して対向配置された構造のものである。
【0014】
案内経路109には、案内経路109を介して配置されている搬送ローラ対FRが複数設けられている。これらの搬送ローラ対FRは、駆動ローラDRと従動ローラSRとによって構成されている。搬送ローラ対FRについては、給紙口105に近い位置から、第1搬送ローラ対FR1(第1駆動ローラDR1及び第1従動ローラSR1)、第2搬送ローラ対FR2(第2駆動ローラDR2及び第2従動ローラSR2)、第3搬送ローラ対FR3(第3駆動ローラDR3及び第3従動ローラSR3)、第4搬送ローラ対FR4(第4駆動ローラDR4及び第4従動ローラSR4)と呼ぶ。第1搬送ローラ対FR1、第2搬送ローラ対FR2、及び、第3搬送ローラ対FR3は、給紙口105から印字部114までの領域に順に位置付けられている。第1搬送ローラ対FR1は、用紙S1の搬送を開始するローラ対として機能する。また、第4搬送ローラ対FR4は、印字部114と排紙口106との間に位置付けられており、排紙ローラ対として機能する。
【0015】
各々の搬送ローラ対FRが有する駆動ローラDRは、事務機101の制御部151(図8参照)による駆動制御を受けて回転する。これにより、給紙口105から差し込まれた用紙S1は案内経路109を搬送される。
【0016】
ハウジング102の背面には、トラクタ112が配置されている。トラクタ112は、駆動軸113aと従動軸113bとに転動自在に掛け渡されたピンベルト(図示せず)を備え、駆動軸113aと一体にこのピンベルトが回転することで、連続用紙S2を案内経路109に給紙する。また、トラクタ112と案内経路109との連結部位には、搬送ローラ対FRによる搬送とトラクタ112による搬送と切り換えるためチェンジャ117が変位自在に設けられている。
【0017】
ここで、給紙口105から第2搬送ローラ対FR2までの各部が構成する部位を、給紙部201(図3参照)と呼ぶ。次に、給紙部201の詳細について説明する。
【0018】
図3は、給紙部201を示す側面図である。図4は、給紙部201を示す平面図である。図5は、給紙部201を給紙口105側から見た正面図である。図6は、給紙部201の一部を示す斜視図である。なお、図4ないし図6においては、図3において示す各部の一部を省略して示している。
【0019】
図3に示すように、案内経路109の給紙口105と第1搬送ローラ対FR1との間の領域であって、上ペーパーガイド110側の位置には、補正ローラ251が配置されている。補正ローラ251は、外周部分にウレタン製のハネ252aが複数枚設けられたハネ車252が補正ローラシャフト253に設けられて構成されたものである。
【0020】
図3に示すように、補正ローラ251と対峙する位置には、スキューセンサ271が下ペーパーガイド111に埋め込まれて配置されている。スキューセンサ271は、その上面に用紙S1が位置したことを検出して出力するセンサである。スキューセンサ271の検出出力は事務機101の制御部151(図8参照)に入力されている。スキューセンサ271が用紙S1を検出すると、制御部151に入力される検出出力は、「高」から「低」に変化する。そして、給紙口105に供給される用紙S1は、まず、スキューセンサ271と補正ローラ251との間に挟まれる。このとき、用紙S1の上面には、ハネ車252のハネ252aが接する。
【0021】
図3に示すように、補正ローラ251については、複数のハネ車252が補正ローラシャフト253に一定間隔で固定されている。したがって、補正ローラシャフト253の回転に伴ってハネ車252も回転する。ここで、補正ローラシャフト253は、事務機101が有するフレームFLによって回転自在に保持されている。
【0022】
図4に示すように、補正ローラシャフト253の給紙口105側から見て右側(図4中右側)には、シャフトギヤ225が嵌め込み固定されている。シャフトギヤ225は、モータ211のカム軸に嵌め込み固定されたモータギヤ221と噛み合っている。そのため、補正ローラ251は、モータ211の回転力がモータギヤ221とシャフトギヤ225とを介して伝達されて、回転する。また、補正ローラシャフト253には、シャフトギヤ225に隣接させて、後述する第1のベルトプーリBP1が嵌め込み固定されている。なお、モータ211は、事務機101に内蔵されており、一例として、パルスモータである。
【0023】
図4に示すように、スキューセンサ271は、補正ローラシャフト253に沿って、ハネ車252と対峙しない位置(例えば、ハネ車252同士の間の位置)に5つ設けられている。以下、5つのスキューセンサ271については、図4中左側から、スキューセンサ271a、スキューセンサ271b、スキューセンサ271c、スキューセンサ271d、及び、スキューセンサ271eと呼ぶ。
【0024】
図4に示すように、給紙口105の全幅に満たない紙幅を有する用紙S1が、左寄せで給紙口105に供給された場合には、スキューセンサ271a、271b、271cのみが、用紙S1がその上面に位置したことを検出して出力する。一方で、同じ用紙S1が、右寄せで給紙口105に供給された場合には、スキューセンサ271c、271d、271eのみが、用紙S1がその上面に位置したことを検出して出力する。
【0025】
図3に示すように、補正ローラ251及びスキューセンサ271よりも案内経路109の下流側(図3中右側)には、第1搬送ローラ対FR1(第1駆動ローラDR1、第1従動ローラSR1)と第2搬送ローラ対FR2(第2駆動ローラDR2、第2従動ローラSR2)とが配置されている。
【0026】
図5に示すように、第1搬送ローラ対FR1が有する第1駆動ローラDR1は、一本の第1駆動ローラ軸DR1Sに複数の第1駆動ローラ体DR1Bが設けられて構成されている。同様に、第1従動ローラSR1も、一本の第1従動ローラ軸SR1Sに複数の第1従動ローラ体SR1Bが、第1駆動ローラ体DR1Bと同じ間隔で設けられて構成されている。そして、第1駆動ローラDR1と第1従動ローラSR1とは、第1駆動ローラ体DR1Bと第1従動ローラ体SR1Bとが対峙する位置に配置されている。
【0027】
詳細は図示しないが、第2搬送ローラ対FR2も、第1搬送ローラ対FR1と同様の構成を有している。つまり、第2駆動ローラDR2は、一本の第2駆動ローラ軸DR2Sに複数の第2駆動ローラ体DR2Bが設けられて構成され、第2従動ローラSR2も、一本の第2従動ローラ軸SR2Sに複数の第2従動ローラ体SR2Bが、第2駆動ローラ体DR2Bと同じ間隔で設けられて構成され、第2駆動ローラ体DR2Bと第2従動ローラ体SR2Bと対峙して配置されている。
【0028】
本実施の形態では、第1駆動ローラDR1は、4つの第1駆動ローラ体DR1B、つまり、給紙口105の左領域に位置する1つの第1駆動ローラ体DR1Bと、給紙口105の中央領域に位置する2つの第1駆動ローラ体DR1Bと、給紙口105の右領域に位置する1つの第1駆動ローラ体DR1Bとを有している。こうして、第1駆動ローラDR1は、給紙口105の中央領域と左右領域とに位置付けられている。
【0029】
第1駆動ローラDR1に対向する第1従動ローラSR1も同様の構成を有している。つまり、第1従動ローラSR1は、4つの第1従動ローラ体SR1B、つまり、給紙口105の左領域に位置する1つの第1従動ローラ体SR1Bと、給紙口105の中央領域に位置する2つの第1従動ローラ体SR1Bと、給紙口105の右領域に位置する1つの第1従動ローラ体SR1Bとを有している。こうして、第1従動ローラSR1は、給紙口105の中央領域と左右領域とに位置付けられている。
【0030】
また、第2搬送ローラ対FR2が有する第2駆動ローラDR2と第2従動ローラSR2とについても、それぞれ第1駆動ローラDR1と第1従動ローラSR1と同様の構成を有している。
【0031】
第1駆動ローラ軸DR1Sと第2駆動ローラ軸DR2Sとは、フレームFLによって回動自在に保持されており、その一端側には、プーリ(図示せず)がそれぞれ設けられ、このプーリ(図示せず)にはプーリベルト(図示せず)が掛け渡されている。そのため、第1駆動ローラDR1と第2駆動ローラDR2とは連動して一体に回転する。そして、第1駆動ローラ軸DR1Sは、事務機101に内蔵された搬送モータ(図示せず)の回転力が伝達されて回転する。つまり、搬送モータ(図示せず)の回転駆動によって、第1駆動ローラDR1と第2駆動ローラDR2とが連動して一体に回転する。なお、搬送モータ(図示せず)の回転力が第2駆動ローラ軸DR2Sに伝達されるようにしてもよい。
【0032】
図6に示すように、第1従動ローラ軸SR1Sは、フレームFLに形成された上下方向に長い長孔FL1にその両端側が差し込まれている。こうして、第1従動ローラ軸SR1Sは、上下方向に遊びをもって回転自在に保持されている。同様に、第2従動ローラ軸SR2S(図3等参照)も、フレームFLに形成された上下方向に長い長孔(図示せず)にその両端側が差し込まれ、上下方向に遊びをもって回動自在に保持されている。そのため、第1従動ローラ体SR1Bは、その自重によって、対峙する第1駆動ローラ体DR1Bに接触し、第2従動ローラ体SR2Bも同様に、その自重によって、対峙する第2駆動ローラ体DR2Bに接触している。
【0033】
図3に示すように、第1従動ローラ軸SR1S及び第2従動ローラ軸SR2Sの上方位置には、トーションスプリング331が配置されている。トーションスプリング331は、上ペーパーガイド110の上面側の位置にあるトーションスプリング軸341に巻き付けられて支持されている。また、図4に示すように、トーションスプリング331は、第1従動ローラ体SR1B(又は第2従動ローラ体SR2B)同士の間の位置であって、その両端が第1従動ローラ軸SR1Sと第2従動ローラ軸SR2Sとに接する位置に複数(本実施の形態では5つ)配置されている。このとき、図6に示すように、トーションスプリング軸341は、フレームFLに形成された上下方向に長い長孔FL2にその両端側が差し込まれている。こうして、トーションスプリング軸341は、上下方向に遊びをもって保持されている。そのため、このようなトーションスプリング軸341に巻き付け支持されたトーションスプリング331は、自重(トーションスプリング軸341の重量を含む)によって、その両端が、第1従動ローラ軸SR1Sと第2従動ローラ軸SR2Sとに接触している。
【0034】
図5に示すように、トーションスプリング軸341におけるフレームFLからはみ出した両端側の上方位置には、一対のカム351(カム351a、カム351b)が、トーションスプリング軸341と接触状態で配置されている。このようなカム351は、トーションスプリング軸341の上方位置でフレームFLによって回動自在に保持された一本のカム軸352の両端部分に固定されている。そして、カム軸352の回転に伴って、その両端に固定されたカム351も一体に回転する。
【0035】
図6に示すように、トーションスプリング軸341や第1従動ローラ軸SR1Sは上下方向へ遊びもって保持されている一方で、カム軸352は上下方向への遊びをもたず、回転以外の移動規制がされてフレームFLに保持されている。そのため、トーションスプリング軸341は、接触するカム351によって下方に向けて押圧されている。そして、トーションスプリング軸341が押圧されているので、このトーションスプリング軸341が有するトーションスプリング331の両端は、第1従動ローラ軸SR1Sと第2従動ローラ軸SR2Sとを下方に向けて押圧している(図3等参照)。さらに、第1従動ローラ体SR1Bは、対応する第1駆動ローラ体DR1Bに対して弾性的に押圧された状態で接触し、第2従動ローラ体SR2Bも対応する第2駆動ローラ体DR2Bに対して弾性的に押圧された状態で接触している。
【0036】
そして、図4に示すように、カム軸352の一端には、第2のベルトプーリBP2が設けられている。第2のベルトプーリBP2は、補正ローラシャフト253の一端に設けられた第1のベルトプーリBP1と直列になる位置に位置付けられている。そして、第1のベルトプーリBP1と第2のベルトプーリBP2とには、プーリベルトPBLが掛け渡されている。これにより、第1のベルトプーリBP1と第2のベルトプーリBP2とは、連動して一体に回転する。このとき、第1のベルトプーリBP1は、モータ211の駆動により動力が伝達されて回転するので、第2のベルトプーリBP2も、モータ211の駆動により動力が伝達されて、第1のベルトプーリBP1と一体に回転する。つまり、補正ローラ251とカム351とは、その駆動源を同一のモータ211にして、このモータ211の駆動により、連動して回転する。
【0037】
また、図4に示すように、第2のベルトプーリBP2は、電磁クラッチEMCを介してカム軸352に設けられている。電磁クラッチEMCは、第2のベルトプーリBP2のカム軸352に対する接続と切断とを自在に行う。電磁クラッチEMCが接続状態では、第2のベルトプーリBP2の回転動力がカム軸352に伝達されてカム軸352は第2のベルトプーリBP2と一体に回転する。一方で、電磁クラッチEMCが切断状態では、第2のベルトプーリBP2の回転動力のカム軸352への伝達は解除される。このような電磁クラッチEMCの接続及び切断は、制御部151(図8参照)の制御によって実行される。なお、電磁クラッチEMCが切断状態で、カム軸352の回転動作は規制され、通常時、電磁クラッチEMCは切断状態となっている。
【0038】
ところで、図3に示すように、カム351を側方から見ると、その外周形状は完全な円形形状ではなく、軸中心から外周までの距離が変動している。本実施の形態のカム351の外周面は、カム軸352から距離が最短である最短部位353Sと、カム軸352からの距離が最長である最長部位とを含んだカム面353(カム面353a、カム面353b)となっている。
【0039】
図7は、カム351の回転状態を示す模式図である。一方のカム351aと他方のカム351bとは、同一形状の部材である。そして、互いに同一形状であるカム351aとカム351bとが、一本のカム軸352の両端部分に固定的に取り付けられている。このとき、一方のカム351aの最短部位353Saと他方のカム351bの最短部位353Sbとがカム軸352に対して正反対となる位置に取り付けられている。したがって、一対のカム351(カム351a、カム351b)は、そのカム面353(カム面353a、カム面353b)によって、トーションスプリング軸341の第1従動ローラ軸SR1Sと第2従動ローラ軸SR2Sとに対する押圧力の位相を反転させている。なお、カム351とカム軸352とは一体成形されていても良い。
【0040】
また、図7に示すように、一方のカム351bに隣接させて、透過型センサである回転位置センサHPSが配置されている(図4及び図6も参照)。回転位置センサHPSは、カム351bが入り込んでこれにより光が遮断される位置に配置されており、フレームFL等に位置固定されている。回転位置センサHPSは、常にカム351bによって光遮断されているのではなく、カム351bの回転位置によっては、光遮断が解除される。
【0041】
つまり、図7(a)に示すように、カム351bが、カム面353aにおける最短部位353Saが回転位置センサHPSと正対する回転位置に位置付けられた状態では、カム351bの回転位置センサHPSの溝への入り込みが解除されて、回転位置センサHPSは光透過状態となっている。事務機101が有する制御部151(図8参照)には、回転位置センサHPSの検出出力が入力されている。そして、回転位置センサHPSが光遮断状態から光透過状態となるに従い、制御部151に入力される回転位置センサHPSの検出出力は、「低」から「高」となる。
【0042】
図7(a)に示す回転位置にカム351が位置付けられた状態では、カム351の軸中心からトーションスプリング軸341(図7中では図示せず)と接するカム面353までの距離については、カム351a及びカム351bは共に等しい。したがって、カム351によるトーションスプリング軸341への押圧状態の左右バランスは、等しくなっている。そして、トーションスプリング331による第1従動ローラSR1及び第2従動ローラSR2の押圧の左右バランスも等しいものとなっている。以下、図7(a)に示すカム351の回転位置を「基準位置」と呼ぶ。
【0043】
次に、図7(b)に示すように、カム351bが、その最短部位353Sbがトーションスプリング軸341と接触する回転位置に位置付けられた状態について説明する。このとき、カム351bは回転位置センサHPSの溝に入り込み光遮断状態となっており、制御部151に入力される回転位置センサHPSの検出出力は「低」となっている。
【0044】
図7(b)に示す回転位置にカム351が位置付けられた状態では、カム351の軸中心からトーションスプリング軸341(図7中では図示せず)と接するカム面353までの距離については、カム351bにおける距離の方がカム351aにおける距離よりも短い。そのため、カム351によるトーションスプリング軸341への押圧状態の左右バランスは、左側(カム351a側、図7中上側)の方が右側(カム351b側、図7中下側)よりも強くなっている。そして、このとき、トーションスプリング331による第1従動ローラSR1及び第2従動ローラSR2の押圧も、左側の方が右側よりも強くなっている。以下、図7(b)に示すカム351の回転位置を「左寄せ位置」と呼ぶ。
【0045】
次に、図7(c)に示すように、カム351aが、その最短部位353Saがトーションスプリング軸341と接触する回転位置に位置付けられた状態について説明する。このときも、カム351bは回転位置センサHPSの溝に入り込み光遮断状態となっており、制御部151に入力される回転位置センサHPSの検出出力は「低」となっている。
【0046】
図7(c)に示す回転位置にカム351が位置付けられた状態では、カム351の軸中心からトーションスプリング軸341(図7中では図示せず)と接するカム面353までの距離については、カム351aにおける距離の方がカム351bにおける距離よりも短い。そのため、カム351によるトーションスプリング軸341への押圧状態の左右バランスは、右側(カム351b側、図7中下側)の方が左側(カム351a側、図7中上側)よりも強くなっている。そして、このとき、トーションスプリング331による第1従動ローラSR1及び第2従動ローラSR2の押圧も、右側の方が左側よりも強くなっている。以下、図7(c)に示すカム351の回転位置を「右寄せ位置」と呼ぶ。「右寄せ位置」は、「左寄せ位置」からカム軸352を180°回転させた位置である。
【0047】
図8は、事務機101の電気的接続を示すブロック図である。事務機101は、各部を駆動制御するマイクロコンピュータ構成の制御部151を有する。制御部151は、CPU、ROM、RAM等(いずれも図示せず)によって構成されている。そして、制御部151には、事務機101が備える表示デバイス103及びキーボード104が接続されている。さらに、制御部151には、モータ211及び搬送モータ(図示せず)を含むモータ類152と、スキューセンサ271及び回転位置センサHPSを含むセンサ類153と、電磁クラッチEMCとが接続されている。モータ類152は、制御部151による駆動の制御を受ける。また、制御部151には、センサ類153の検出出力が入力されている。
【0048】
このような構成において、複数枚の紙が重ねられて厚みのある用紙S1が給紙口105に供給される際に制御部151が実行する処理について以下に説明する。
【0049】
図9は、用紙S1が給紙口105に供給される際の処理の流れを示すフローチャートである。まず、事務機101の制御部151は、給紙口105への用紙S1の供給判定に待機している(ステップS101)。このとき、用紙S1が給紙口105に供給されて、補正ローラ251とスキューセンサ271との間に差し込まれると、いずれかのスキューセンサ271の制御部151へと入力される検出出力が「高」から「低」に変化する。これにより、制御部151は、給紙口105に用紙S1が供給されたことを判定する(ステップS101のY)。
【0050】
次に、制御部151は、モータ211を制御して回転駆動させ、補正ローラ251を回転させる(ステップS102)。これにより、補正ローラ251とスキューセンサ271との間に差し込まれた用紙S1は、回転するハネ252aによって搬送力が与えられて案内経路109に送り込まれ、この用紙S1の先端は第1搬送ローラ対FR1に突き当る。用紙S1が第1搬送ローラ対FR1に突き当たると、補正ローラ251の回転するハネ252aは、この用紙S1との間に滑りを生ずる。こうして、用紙S1は整列され、斜行補正が実行される。
【0051】
また、制御部151は、モータ211を回転駆動させながら、電磁クラッチEMCを制御して、カム351を「基準位置」に変位させる(ステップS103)。制御部151は、カム351が「基準位置」に位置付けられたことを、回転位置センサHPSが光透過状態となり、その検出出力が「高」になったことにより判定する。このとき、制御部151は、回転位置センサHPSの検出出力が「高」になるまで電磁クラッチEMCを接続状態にして、この検出出力が「高」になることにより電磁クラッチEMCの接続状態を解除する。こうして、カム351は「基準位置」に変位する。制御部151は、このカム351を「基準位置」へと変位させる制御を、モータ211の回転駆動の開始と共に開始して、補正ローラ251が一回転するまでに終える。
【0052】
次に、制御部151は、給紙口105に供給された用紙S1の幅方向の位置を判定する。本実施の形態では、制御部151は、用紙S1が、給紙口105の中央に供給されたか(ステップS104)、左寄せで給紙口105に供給されたか(ステップS105)、右寄せで給紙口105に供給されたか(ステップS106)を判定する。
【0053】
用紙S1が給紙口105の中央に供給されたことは、5つのスキューセンサ271のうち、中央3つのスキューセンサ271(スキューセンサ271b、271c、271d)の検出出力が「高」から「低」になることにより判定する。
【0054】
用紙S1が左寄せで給紙口105に供給されたことは、5つのスキューセンサ271のうち、左側3つのスキューセンサ271(スキューセンサ271a、271b、271c)の検出出力が「高」から「低」になることにより判定する。
【0055】
用紙S1が右寄せで給紙口105に供給されたことは、5つのスキューセンサ271のうち、右側3つのスキューセンサ271(スキューセンサ271c、271d、271e)の検出出力が「高」から「低」になることにより判定する。
【0056】
制御部151は、用紙S1が給紙口105の中央に供給されたと判定した場合には(ステップS104のY)、電磁クラッチEMCを制御してカム351をさらに変位させることなく、カム351を「基準位置」に位置付けられたままにする。そのため、トーションスプリング331による第1従動ローラSR1及び第2従動ローラSR2への押圧の左右バランスは等しいものとなっている。そして、制御部151は、搬送モータを制御して回転駆動させて、第1搬送ローラ対FR1及び第2搬送ローラ対FR2の回転を開始させる(ステップS107)。これにより、第1搬送ローラ対FR1に付き当たっている用紙S1は、回転する第1搬送ローラ対FR1に引き込まれて搬送される。
【0057】
また、用紙S1が左寄せで給紙口105に供給されたと判定した場合には(ステップS105のY)、制御部151は、再び電磁クラッチEMCを制御して接続状態にして、カム351を「左寄せ位置」に変位させる(ステップS108)。このとき、制御部151は、「基準位置」にあるカム351がカム軸352の回転により「左寄せ位置」に位置付けられる所定時間だけ、電磁クラッチEMCを接続状態にする制御を実行する。こうして、カム351は「左寄せ位置」に変位する。
【0058】
図10は、左寄せで用紙S1が供給された状態を示す正面図である。厚みの有る用紙S1が左寄せで給紙口105に供給されて第1搬送ローラ対FR1の間に入り込むと、第1駆動ローラDR1に対して接離自在(上下方向に移動自在)に設けられた第1従動ローラSR1は、給紙口105側から見て、左上がり右下がり状態になり得る。第2従動ローラSR2についても同様である。しかしながら、本実施の形態によれば、このとき、カム351が「「左寄せ位置」に位置付けられて、トーションスプリング331による第1従動ローラSR1及び第2従動ローラSR2への押圧は、左側の方が右側よりも強くなっているため、図10に示すように、第1従動ローラSR1及び第2従動ローラSR2の左上がり右下がり状態が解消されて、その左右バランスは等しくなる。こうして、第1搬送ローラ対FR1及び第2搬送ローラ対FR2による用紙S1の搬送においては、用紙S1に対して均等に圧がかかる。よって、左寄せで供給された用紙S1が第1搬送ローラ対FR1及び第2搬送ローラ対FR2による搬送中に左曲がりに斜行してしまうことが防止され、搬送される用紙S1は直進する。
【0059】
図9の説明に戻る。用紙S1が右寄せで給紙口105に供給されたと判定した場合には(ステップS106のY)、制御部151は、電磁クラッチEMCを制御して接続状態にして、カム351を「右寄せ位置」に変位させる(ステップS109)。このとき、制御部151は、「基準位置」にあるカム351がカム軸352の回転により「右寄せ位置」に位置付けられる所定時間だけ、電磁クラッチEMCを接続状態にする制御を実行する。こうして、カム351は「右寄せ位置」に変位する。
【0060】
図11は、右寄せで用紙S1が供給された状態を示す正面図である。厚みの有る用紙S1が右寄せで給紙口105に供給されて第1搬送ローラ対FR1の間に入り込むと、第1従動ローラSR1は、給紙口105側から見て、左下がり右上がり状態になり得る。しかしながら、本実施の形態によれば、このとき、カム351が「「右寄せ位置」に位置付けられて、トーションスプリング331による第1従動ローラSR1及び第2従動ローラSR2への押圧は、右側の方が左側よりも強くなっているため、図11に示すように、第1従動ローラSR1及び第2従動ローラSR2の右上がり左下がり状態が解消されて、その左右バランスは等しくなる。こうして、第1搬送ローラ対FR1及び第2搬送ローラ対FR2による用紙S1の搬送においては、用紙S1に対して均等に圧がかかる。よって、右寄せで供給された用紙S1が第1搬送ローラ対FR1及び第2搬送ローラ対FR2による搬送中に右曲がりに斜行してしまうことが防止され、搬送される用紙S1は直進する。
【0061】
なお、本実施の形態では、第1従動ローラSR1だけでなく、第2従動ローラSR2についてもその対峙する駆動ローラDR(第2駆動ローラDR2)に対して接離自在な例を示したが、駆動ローラDRに対して接離自在なのは、用紙S1が突き当たる第1搬送ローラ対FR1が有する第1従動ローラSR1だけであってもよい。この場合、第2従動ローラSR2については、その第2従動ローラ軸SR2Sを上下方向への遊びをもたせずにフレームFLによって回動自在に保持させる。また、トーションスプリング331については、例えば、第2従動ローラSR2側の一端をトーションスプリング軸341へ巻き付けて固定する等し、また、トーションスプリング331を回転しないように保持すればよい。
【0062】
また、本実施の形態では、一対のカム351(カム351a、カム351b)は、そのカム面353(カム面353a、カム面353b)によって、トーションスプリング軸341の第1従動ローラ軸SR1Sと第2従動ローラ軸SR2Sとに対する押圧力の位相を180度変えていたが、180度で無くとも良い。また、本実施の形態では、補正ローラ251の駆動源とカム351の駆動源とを同一のモータ211としたが、駆動源は別々であってもよい。
【0063】
以上説明したように本実施の形態によれば、給紙口105に供給されて斜行補正された用紙S1が、搬送ローラ対FRによって搬送される際に再び斜行してしまうことを防止することができる。
【符号の説明】
【0064】
101…事務機(プリンタ),105…給紙口,106…排紙口,109…案内経路,114…印字部,151…制御部,211…モータ,251…補正ローラ,271…スキューセンサ(センサ,第2のセンサ),331…トーションスプリング(当接部),351,351a,351b…カム(可変部),DR1…第1駆動ローラ(駆動ローラ),DR2…第2駆動ローラ(駆動ローラ),EMC…電磁クラッチ,FR1…第1搬送ローラ対(搬送ローラ対),FR2…第2搬送ローラ対(搬送ローラ対),S1…用紙,SR1…第1従動ローラ(従動ローラ),SR2…第2従動ローラ(従動ローラ)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0065】
【特許文献1】特開平11−147622号公報
【特許文献2】特開2002−347991号公報
【特許請求の範囲】
【請求項1】
用紙が供給される給紙口と、
この給紙口から供給された用紙に対し印字動作を実行する印字部と、
所定の隙間を開けて対向配置された一対の上ペーパーガイドと下ペーパーガイドとによって構成され、用紙を案内する案内経路と、
前記給紙口から前記印字部までの領域に位置し、前記案内経路の一面側に配置されて前記給紙口の中央領域と左右領域とに位置付けられた駆動ローラと、
前記給紙口の中央領域と左右領域とに位置付けられて前記案内経路を介して前記駆動ローラに対向する従動ローラと、
前記従動ローラに弾性的に付勢力を与えて前記駆動ローラに当接させる当接部と、
前記当接部に当接してその前記従動ローラに対する付勢力を可変する可変部と、
前記給紙口に対する用紙の給紙位置を検出して出力するセンサと、
前記センサの検出出力により前記給紙口に対する用紙の給紙位置の左右への片寄りを判定した場合に、前記可変部の当接による前記当接部の前記従動ローラに対する付勢力が用紙の片寄り側でその反対側よりも強くなるように前記可変部を変位させる制御部と、
を備えるプリンタ。
【請求項2】
前記可変部は、
左右領域に位置付けられた前記従動ローラに付勢力を与える前記当接部に当接してその左右の前記従動ローラに対する付勢力の位相を異ならせるカムを有し、
前記制御部は、
前記センサの検出出力により前記給紙口に対する用紙の給紙位置の左右への片寄りを判定した場合に、前記カムの当接による前記当接部の前記従動ローラに対する付勢力が用紙の片寄り側でその反対側よりも強くなるように前記カムを回動させる、
請求項1記載のプリンタ。
【請求項3】
前記駆動ローラと前記従動ローラとを有する搬送ローラ対と、
前記給紙口に供給される用紙の一面と接する位置に配置され、前記給紙口に供給された用紙に回転によって搬送力を与えて前記案内経路に送り込み、当該送り込まれた用紙の先端が前記搬送ローラ対に突き当たると当該用紙との間に滑りを生ずる補正ローラと、
前記給紙口に対する用紙供給を検出して出力する第2のセンサと、
を備え、
前記制御部は、前記給紙口に用紙が供給されたことを前記第2のセンサの検出出力により判定した場合に前記補正ローラを回転させる、
請求項2記載のプリンタ。
【請求項4】
前記カムと前記補正ローラとは、同一のモータを回転の駆動源とし、
前記制御部の制御によって前記モータからの動力の伝達及び解除を自在にする電磁クラッチを備える、
請求項3記載のプリンタ。
【請求項5】
前記搬送ローラ対は、
前記補正ローラの回転によって搬送力が与えられた用紙が突き当たる第1搬送ローラ対と、当該第1搬送ローラ対よりも前記案内経路の下流側に配置された第2搬送ローラ対と、を備え、
前記当接部は、
その両端が前記第1搬送ローラ対の従動ローラと前記第2搬送ローラ対の従動ローラとに当接するトーションスプリングを備える、
請求項4記載のプリンタ。
【請求項1】
用紙が供給される給紙口と、
この給紙口から供給された用紙に対し印字動作を実行する印字部と、
所定の隙間を開けて対向配置された一対の上ペーパーガイドと下ペーパーガイドとによって構成され、用紙を案内する案内経路と、
前記給紙口から前記印字部までの領域に位置し、前記案内経路の一面側に配置されて前記給紙口の中央領域と左右領域とに位置付けられた駆動ローラと、
前記給紙口の中央領域と左右領域とに位置付けられて前記案内経路を介して前記駆動ローラに対向する従動ローラと、
前記従動ローラに弾性的に付勢力を与えて前記駆動ローラに当接させる当接部と、
前記当接部に当接してその前記従動ローラに対する付勢力を可変する可変部と、
前記給紙口に対する用紙の給紙位置を検出して出力するセンサと、
前記センサの検出出力により前記給紙口に対する用紙の給紙位置の左右への片寄りを判定した場合に、前記可変部の当接による前記当接部の前記従動ローラに対する付勢力が用紙の片寄り側でその反対側よりも強くなるように前記可変部を変位させる制御部と、
を備えるプリンタ。
【請求項2】
前記可変部は、
左右領域に位置付けられた前記従動ローラに付勢力を与える前記当接部に当接してその左右の前記従動ローラに対する付勢力の位相を異ならせるカムを有し、
前記制御部は、
前記センサの検出出力により前記給紙口に対する用紙の給紙位置の左右への片寄りを判定した場合に、前記カムの当接による前記当接部の前記従動ローラに対する付勢力が用紙の片寄り側でその反対側よりも強くなるように前記カムを回動させる、
請求項1記載のプリンタ。
【請求項3】
前記駆動ローラと前記従動ローラとを有する搬送ローラ対と、
前記給紙口に供給される用紙の一面と接する位置に配置され、前記給紙口に供給された用紙に回転によって搬送力を与えて前記案内経路に送り込み、当該送り込まれた用紙の先端が前記搬送ローラ対に突き当たると当該用紙との間に滑りを生ずる補正ローラと、
前記給紙口に対する用紙供給を検出して出力する第2のセンサと、
を備え、
前記制御部は、前記給紙口に用紙が供給されたことを前記第2のセンサの検出出力により判定した場合に前記補正ローラを回転させる、
請求項2記載のプリンタ。
【請求項4】
前記カムと前記補正ローラとは、同一のモータを回転の駆動源とし、
前記制御部の制御によって前記モータからの動力の伝達及び解除を自在にする電磁クラッチを備える、
請求項3記載のプリンタ。
【請求項5】
前記搬送ローラ対は、
前記補正ローラの回転によって搬送力が与えられた用紙が突き当たる第1搬送ローラ対と、当該第1搬送ローラ対よりも前記案内経路の下流側に配置された第2搬送ローラ対と、を備え、
前記当接部は、
その両端が前記第1搬送ローラ対の従動ローラと前記第2搬送ローラ対の従動ローラとに当接するトーションスプリングを備える、
請求項4記載のプリンタ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2011−140402(P2011−140402A)
【公開日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−71587(P2011−71587)
【出願日】平成23年3月29日(2011.3.29)
【分割の表示】特願2008−100097(P2008−100097)の分割
【原出願日】平成20年4月8日(2008.4.8)
【出願人】(000003562)東芝テック株式会社 (5,631)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年3月29日(2011.3.29)
【分割の表示】特願2008−100097(P2008−100097)の分割
【原出願日】平成20年4月8日(2008.4.8)
【出願人】(000003562)東芝テック株式会社 (5,631)
【Fターム(参考)】
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