プリント基板
【課題】 クラックの発生を抑制するとともに、クラックが発生した場合でも、基材のグラファイト化の進行を抑止する。
【解決手段】 プリント基板10は、電気部品20が実装される基材11を有している。基材11の表面には導体パターン131が形成されており、基材11の厚み方向に貫通したスルーホール15に配置されたランド136と接合されている。ランド136には電気部品20のリード21が挿入されており、リード21とランド136とが半田16を介して接合されている。また、基材11には、スルーホール15と同様に基材11の厚み方向に貫通した貫通孔31が形成されている。
【解決手段】 プリント基板10は、電気部品20が実装される基材11を有している。基材11の表面には導体パターン131が形成されており、基材11の厚み方向に貫通したスルーホール15に配置されたランド136と接合されている。ランド136には電気部品20のリード21が挿入されており、リード21とランド136とが半田16を介して接合されている。また、基材11には、スルーホール15と同様に基材11の厚み方向に貫通した貫通孔31が形成されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気回路に使用するプリント基板に関する。
【背景技術】
【0002】
電気回路を実現する方法として、ガラスエポキシ等で構成されている板状の基材の上に、銅箔で配線(導電パターン)を施したプリント基板(Printed Circuit Boad:PCB)を製作し、そのプリント基板上の所定位置に電気部品を実装する方法が知られている。プリント基板は、導電パターンを印刷工程で実現することにより、電気部品に対する配線を確実且つ精密に行うことができるため広く利用されている。
【0003】
プリント基板の基材には、電気部品のリードが挿入されるスルーホールが複数形成されており、それらスルーホールの内周壁及び開口部近傍には導電性部材からなるランドが形成されている。そして、ランドに電気部品のリードが挿入されてリードとランドとの間に熱溶解された半田が流し込まれ、ランドとリードとが電気的に接合されることで、プリント基板に電気部品が実装される。なお、電気部品のプリント基板への実装方法としては、上述したスルーホールを用いる方法のほか、基材表面に配置されたランドと、平面部分を有するリードとを半田により面接合させる表面実装と呼ばれる方法がある。
【0004】
ここで、特に高電圧で電力を供給することにより高温になる電気部品がプリント基板に実装されている場合には、プリント基板を通電させる度に電気部品が発熱を繰り返すことになり、電気部品近傍におけるプリント基板に熱膨張が生じて、電気部品のリードとランドとを接合している半田にクラックが生じることがある。こうして、半田にクラックが発生した状態で、導電パターンからランドを介して半田に高電圧が印加されると、クラック間でアーク放電が生じる。アーク放電が生じることにより、クラック近傍はさらに高温になり、半田に含まれるフラックス、基材に含まれるフラックスやガラスエポキシ等が導電パターンとともに炭化してグラファイト化する。
【0005】
このように、基材がグラファイト化することで、抵抗値を有する新たな電路が形成される。そして、導電パターンには高電圧が印加されているため、グラファイト化による電路と導電パターンとの間でさらにアーク放電が発生し、基材のグラファイト化が進行して隣接するランド−ランド間及びランド−導電パターン間が短絡することがある。特に多層のプリント基板においては、導電パターンが複雑に配置され、他層の導体パターンとの短絡の可能性が高くなる。
【0006】
例えば、基材のグラファイト化によって形成された電路と接地された導電パターンである接地パターンとが短絡しても、その電路自身が抵抗値を持っているため、電気回路に過電流が流れない。そのため、過電流保護装置であるヒューズやブレーカでは、基材のグラファイト化の発見が困難となる。一方、特許文献1には、基板に漏電検知装置を配置する方法が提案されている。これによると、漏電検知装置を用いて電気回路の漏電を検知することができれば、該電路と接地パターンとの短絡により、基材のグラファイト化を発見することができる。
【特許文献1】特開2002−199575号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載の技術において、グラファイト化によって形成される新たな電路と接地パターンとが短絡するまでは、回路内の漏電を検知することができないので、導電パターンの配置状態によっては基材のグラファイト化が進行する問題がある。
【0008】
そこで、本発明は、クラックの発生を抑制するとともに、クラックが発生した場合でも、基材のグラファイト化の進行を抑止するプリント基板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段及び発明の効果】
【0009】
本発明のプリント基板は、電気回路に使用される単層または多層のプリント基板であって、複数の電気部品が実装される基材と、前記電気部品のリードに接合され、前記電気部品に電力を供給する複数のランドと、前記ランドに接合されるように形成された複数の導体パターンと、前記基材の厚み方向に貫通された貫通孔とを含んでなる。
【0010】
これによると、高電圧で電力を供給することで高温になる電気部品がプリント基板に実装されている場合でも、基材には貫通孔が形成されているので、電気部品の発熱によるプリント基板の熱膨張を吸収することができる。従って、電気部品のリード及びランドとを接合している部分にクラックが発生しにくくなる。また、電気部品のリード及びランドとを接合している部分にクラックが発生してそのクラック間にアーク放電が生じた場合でも、基材のランド近傍からグラファイト化が進むのを貫通孔で抑止することができる。
【0011】
本発明において、前記貫通孔が、隣接する前記ランド間に形成されていることが好ましい。これにより、基材のグラファイト化が進行した場合において、ランド同士がグラファイト化による電路で連結するのを貫通孔で防ぐので、ランド同士の短絡を防ぐことができる。
【0012】
また、本発明において、前記貫通孔が、前記ランドと、前記ランド近傍に形成された導体パターンとの間に配置されていることが好ましい。これにより、基材のグラファイト化が進行した場合において、ランドと導体パターンとがグラファイト化による電路で連結するのを貫通孔で防ぐので、ランドと導体パターンとの短絡を防ぐことができる。
【0013】
また、本発明において、前記貫通孔の長さが、前記ランドの直径より大きいことが好ましい。これにより、プリント基板の熱膨張によるクラック発生を抑制することができるとともに、クラックが発生した場合でもグラファイト化の進行を防ぐことができる。
【0014】
また、このとき、前記貫通孔が、隣接する前記ランド間を結ぶ方向と直交する方向に長く形成されていてもよい。これにより、隣接するランド同士が基材のグラファイト化による電路で連結するのを貫通孔でより効果的に防ぐことができる。
【0015】
また、このとき、前記貫通孔の隣接する前記ランド間を結ぶ方向の幅が、前記ランド近傍にまで存在していてもよい。これにより、プリント基板の熱膨張をより効果的に吸収することができるので、クラック発生を抑制することができる。
【0016】
また、このとき、前記貫通孔が、前記ランドと前記ランド近傍に形成された導体パターンとを結ぶ方向と直交する方向に長く形成されていてもよい。これにより、ランドと導体パターンとがグラファイト化による電路で連結するのを貫通孔でより効果的に防ぐことができる。
【0017】
また、このとき、前記貫通孔の前記ランドと前記ランド近傍に形成された導体パターンとを結ぶ方向の幅が、前記ランド及び前記導体パターン近傍にまで存在していてもよい。これにより、プリント基板の熱膨張をより効果的に吸収することができるので、クラック発生を抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、図面に基づいて本発明の好適な実施の形態を説明する。
【0019】
図1は、本発明によるプリント基板を含んでいる電力供給装置が適用された装置の構成を示すブロック図である。なお、ここで装置90は、例えば写真処理装置であるが、写真処理に関する具体的な説明については省略する。
【0020】
図1に示すように装置90には、電力供給装置1と、電源2と漏電ブレーカ3と、制御装置4と複数の負荷装置5によって構成されている。電力供給装置1は、入力された高電圧の電力を分配し、分配された電力を各負荷装置5に供給している。電源2は電力供給装置1に供給される高電圧の電力の発生源である。漏電ブレーカ3は、漏電検知装置であり、電源2から電力供給装置1に供給される高電圧の電力を中継するとともに、電力供給装置1の漏電を監視する。そして、電力供給装置1の漏電を検知した場合には、即座に電力供給装置1への電力供給を遮断する。制御装置4は、電力供給装置1に接続され、電力供給装置1による各負荷装置5への電力供給の制御を行うものである。負荷装置5は、電力供給装置1から電力の供給を受ける各種装置であり、例えば、ヒータ、モータ及び他の制御装置などである。
【0021】
次に、電力供給装置1について、図2を参照しつつ説明する。図2は、プリント基板10の表面に施されるシルク印刷の内容を示している。
【0022】
図2に示すように電力供給装置1の電気回路基板は、複数のターミナルT1〜T5によって構成されたターミナルTA3、コンデンサC1,C2、サージアブソーバZNR1〜ZNR4、コネクタP641,P644,P646,P648,P660,P662、マグネットリレーX1,X3,X4、ソリッドステートリレーSSR1〜SSR8等の複数の電気部品を備えている。
【0023】
ターミナルTA3は、電源2から漏電ブレーカ3を介して高電圧の電力を入力されるものである。コンデンサC1,C2は、ターミナルTA3に入力された高電圧の電力の高周波ノイズを除去するものである。サージアブソーバZNR1〜ZNR4は、ターミナルTA3に入力された高電圧の電力に発生するサージを除去するものである。コネクタP648は、制御装置4と接続するためのものである。コネクタP641,P644,P646、P660、P662は、負荷装置5と接続するためのものである。マグネットリレーX1,X3,X4と、ソリッドステートリレーSSR1〜SSR8とは、制御装置4からの制御により負荷装置5への電力供給の開始または停止を行うものである。なお、ソリッドステートリレーSSR1〜SSR8の入力部は、マグネットリレーX1,X3,X4の出力側接点から電力供給されている。
【0024】
電力供給装置1の電気回路基板は、プリント基板10に上述した各電気部品などを実装することにより実現されている。図3は、図2におけるプリント基板10のA−A断面図である。図3に示すようにプリント基板10は、基材11と、ランド136と、導電パターン131,132と、スルーホール15と、貫通孔31とを含んでなる。基材11は、ガラスエポキシ等からなる4枚の板状部材11a〜11dが順に積層した構成となっており、上から順に第1層が板状部材11a、第2層が板状部材11b、第3層が板状部材11c、第4層が板状部材11dとなっている。
【0025】
図3に示すようにスルーホール15は、基材11の厚み方向に貫通された孔であり、スルーホール15の内周面及び上下の開口部を覆うようにほぼ円筒状のランド136が配置されている。
【0026】
ランド136の上端部及び下端部には、基材11の上面及び下面の面方向に突出した鍔状の突出部12a,12bが形成されており、上側突出部12aと下側突出部12bとの間に基材11が存在している。なお、図4に示すようにスルーホール15と同様なスルーホールが、プリント基板10に上述した各電気部品が配置される部分等に適宜の数だけ形成されており、それらスルーホールのそれぞれにランド136と同様なランドが配置されている。
【0027】
図3において、導体パターン131は、基材11の上面(第1層11aの上面)に沿って形成されており、ランド136の上側突出部12aと接合されている。なお、基材11の第1〜第4層11a〜11dにも後述するように複数の導体パターンが形成されており、それらの導体パターンも必要に応じて適宜のランドと接合されている。
【0028】
電気部品20は、図2に示すターミナルTA3を構成するターミナルT2に該当するものである。電気部品20には、その下面から垂直方向に延出したリード21が形成されている。図3に示すように電気部品20のリード21は、スルーホール15のほぼ中心部分に挿入されて配置されている。そして、リード21とランド136との間に熱溶解された亜鉛とスズとを含んでなる半田16が流し込まれることで、電気部品20とランド136とが半田16を介して電気的に接合されている。従って、電気部品20と、導体パターン131とが半田16及びランド136を介して接合することになる。なお、導体パターンは、プリント基板10に実装される各電気部品に対して配線するための銅箔部材であり、適宜のランドに接合されている。なお、リード21は金属製からなり、電気部品20に対して通電できるようになっている。また、他の電気部品にもリード21と同様なリードが形成されている。
【0029】
図4〜図7には、基材11を積層して構成する板状部材11a〜11d(第1〜第4層11a〜11d)に形成された導体パターン及び複数のランドが示されている。図4〜図7R>7に示すように導体パターンは、第1〜第4層に分けて複数形成されており、前述した各電気部品が、いずれかの層における導体パターンとプリント基板10に複数形成されたスルーホール部分に存在するランドを介して接続されて所望の電気回路を構成している。
【0030】
例えば、図4に示す基材11の第1層11aには、接地された導電パターンである接地パターン121aが、ソリッドステートリレーSSR1〜SSR8の交流入出力部のリードに接合されるランド71a,71b,72a,72b,73a,73b,74a,74b,75a,75b,76a,76b,77a,77b,78a,78b及びソリッドステートリレーSSR1〜SSR8の制御入力部のリードに接合されるランド81,82,83,84,85,86,87,88近傍部分に形成されている。また、図7に示す基材11の第4層11dには、ソリッドステートリレーSSR1〜SSR8近傍部分以外の接地パターン121a部分と積層方向に重なる部分に、接地パターン121bが形成されている。
【0031】
また、第2層11bと第4層11dに形成された導電パターン115,116は、ターミナルTA3のリードに接合されるランド35,36に接合されるとともに、マグネットリレーX1,X3,X4の入力側接点のリードに接合されるランド38〜40にも接合されている。こうして、マグネットリレーX1,X3,X4に電力を供給している。
【0032】
また、第1〜第3層11a〜11cに形成された導電パターン122a,122bと第1層に形成された導電パターン122cは、マグネットリレーX1,X3,X4の出力側接点のリードに接合されるランド41a〜41cに接合されるとともに、フューズF4〜F10(図2参照)の入力側接点のリードに接合されるランド42a〜42gにも接合されている。そして、第3層11c及び第4層11dに形成された導電パターン123a〜123gがフューズF4〜F10の出力側接点のリードに接合されるランド43a〜43gに接合されるとともに、ソリッドステートリレーSSR1〜SSR8の入力側接点のリードに接合されるランド71a〜78aにも接合されている。こうして、ターミナルTA3からソリッドステートリレーSSR1〜SSR8までの電力供給系の回路が構成されている。
【0033】
また、マグネットリレーX1,X3,X4を制御するため、マグネットリレーX1,X3,X4の制御入力部のリードに接合されるランド92〜94に接合されている第2層11bの導電パターン125bが形成されており、第4層11dの導電パターン群125aが直接または導電パターン125bを介してランド92〜94に接合されるように形成されている。また、ソリッドステートリレーSSR1〜SSR8を制御するため、ソリッドステートリレーSSR1〜SSR8の制御入力部のリードに接合されるランド81〜88に接合されている第4層11dの導電パターン群126が形成されている。このように、導体パターン及びランドが各層11a〜11dに複数形成されているので、各電気部品がランド及び導体パターンを介して接続されている。
【0034】
図8〜図11は、図4における2点鎖線で囲む領域の基材11の各層ごとの拡大図を示している。図8〜図11に示すようにプリント基板10の基材11には、複数の貫通孔31〜34が形成されている。図8に示すように第1層11aには、ターミナルT1,T2のリードに接合されるランド36、136と接合される導体パターン131と、コンデンサC1,C2のリードに接合されるランド137〜140近傍に配置されるとともに、サージアブソーバZNR1〜ZNR4の入力側接点のリードに接合されるランド141〜144と接合される導体パターン132と、サージアブソーバZNR1の出力側接点のリードに接合されるランド151と接合する導体パターン133とが形成されている。
【0035】
図8において、貫通孔31は導体パターン131と導体パターン132との間に配置されている。貫通孔31は細長く形成されるとともに、その長手方向が隣接するランド36同士を結ぶ方向と直交する方向に平行にされている。貫通孔31の長手方向の長さは、導体パターン131の上側の辺に相当する長さを有している。また、貫通孔32は、導体パターン131間に配置されている。貫通孔32は隣接するランド36同士を結ぶ方向に長く形成されている。貫通孔32の長手方向の長さは、導体パターン131の左右側の辺に相当する長さを有している。
【0036】
図8において、貫通孔33は隣接するランド141,151との間に配置されている。貫通孔33は、ランド141,151間を結ぶ方向と直交する方向に長く形成されているとともに、ランド141,151間を結ぶ方向の幅がランド141,151近傍にまで存在している。また、貫通孔34は、サージアブソーバZNR2の出力側接点のリードと接合されているランド152とランド142との間に配置されている。貫通孔34は、ランド142,152との間を結ぶ方向と直交する方向に長く形成されているとともに、ランド142,152間を結ぶ方向の幅がランド142,152近傍にまで存在している。
【0037】
なお、図9〜図11に示すように前述した貫通孔31〜34は、基材11の厚み方向に貫通しているので、第1層11aと重なる第2〜第4層11b〜11dの位置にも形成されている。
【0038】
また、図9に示すように第2層11bには、ターミナルT2のリードに接合されるランド136とコンデンサC1,C2のリードに接合されるランド138,139とに接合する導体パターン161と、ターミナルT1のリードに接合されるランド36とコンデンサC1のリードに接合されるランド137とに接合する導体パターン162と、が形成されている。これら導体パターン161,162の間は離隔されている。
【0039】
また、図10に示すように第3層11cには、ターミナルT2のリードに接合されるランド136とコンデンサC1,C2のリードに接合されるランド138,139と接合し、ランド137,141,151近傍付近に配置された導体パターン163が形成されている。
【0040】
また、図11に示すように第4層11dには、前述した第1層11aの導体パターン131と同様の導体パターン164と、サージアブソーバZNR2〜ZNR4の入力側接点のリードに接合されるランド142〜145と接合された導体パターン165と、サージアブソーバZNR2の出力側接点のリードと接合されるランド152と接合する導体パターン166と、前述した導体パターン116とが形成されている。
【0041】
このような第1〜第4層11a〜11dを貫通した各貫通孔31〜34の長手方向の長さは、いずれのランドの直径よりも大きいので、ターミナルTA3、コンデンサC1,C2及びサージアブソーバZNR1〜ZNR4などの電気部品に通電した場合において、各電気部品の発熱により電気部品近傍のプリント基板10に熱膨張が生じてランドと電気部品のリード間を接合する半田にクラックが生じるのを抑制することができる。また、貫通孔33,34のように短手方向の幅がランド141,142,151,152及び導体パターン132,133に近接しているので、貫通孔33,34の幅が大きくなり、プリント基板10の熱膨張をより効果的に吸収することができる。そのため、前述と同様に半田のクラック発生を抑制することができる。つまり、電気部品の発熱でプリント基板10に生じた熱膨張によって、スルーホールと電気部品のリードとの間が狭くなって半田に圧縮応力がかかるのを、貫通孔31〜34でその圧縮応力を逃がす(吸収する)ことが可能となるので、半田にクラックが生じにくくなる。
【0042】
続いて、通電された電気部品20が発熱し、その電気部品20近傍のプリント基板10に熱膨張が生じて電気部品20のリード21とランド136とを接合する半田16にクラック18が生じた場合について以下に説明する。図12は、図8におけるB−B断面を示しており、(a)は半田にクラックが生じた状況を示すプリント基板の要部断面図であり、(b)は半田に生じたクラックにアーク放電が生じて新たな電路が形成された状況を示すプリント基板の要部断面図である。
【0043】
図12(a)に示すようにプリント基板10には、貫通孔31が形成されているので、電気部品20が通電されて発熱することで、プリント基板10に熱膨張が生じてもそのプリント基板10の熱膨張が貫通孔31で吸収されるので半田16にクラックが発生しにくくなっているが、特に高電圧の電力を供給することで高温になるような電気部品20による過度の発熱や繰り返されるプリント基板10の熱膨張により、稀に半田16にクラック18が生じることがある。クラック18が半田16に形成された状態のまま、導電パターン131からランド136を介して半田16に高電圧が印加されると、図12(b)に示すようにクラック18間にアーク放電が生じる。アーク放電が生じることによりクラック18近傍が高温になり、半田16に含まれるフラックス、基材11に含まれるフラックスやガラスエポキシ等が導電パターンとともに炭化してグラファイト化する。基材11がグラファイト化することで、抵抗値を有する新たな電路19が形成される。電路19は、アーク放電によってさらに図中右方向に成長していく。
【0044】
しかしながら、クラック18間のアーク放電によって図12(b)中右方向に成長する電路19は、貫通孔31によってその成長が抑止されることになる。つまり、クラック18間のアーク放電により高温になって炭化する部分が貫通孔31で途切れるので、電路19が成長できなくなる。また、貫通孔31は基材11の厚み方向に貫通されているので、貫通孔31内を通過する空気によって高温部分が冷却されることになるので、電路19のグラファイト化の進行を抑制することにもなる。従って、基材11がグラファイト化して電路19が導体パターン132と第1層11a上で連結しないようにすることができる。
【0045】
以上のように、本実施の形態によるプリント基板10は、高電圧で電力を供給することで高温になる電気部品がプリント基板10に実装されている場合でも、基材11には複数の貫通孔31〜34が形成されているので、電気部品の発熱によるプリント基板10の熱膨張を吸収することができる。従って、電気部品のリード及びランドとを接合している半田にクラックが発生しにくくなる。また、電気部品のリード及びランドとを接合している半田にクラックが発生してそのクラック間にアーク放電が生じた場合でも、基材11のランド近傍からグラファイト化が進むのを貫通孔31〜34で抑止することができる。
【0046】
また、プリント基板10の貫通孔31は、導電パターン131,132間に形成されているので、ランド36及びランド136近傍の半田にクラックが生じて、基材11のグラファイト化によって形成された電路が導電パターン132側に成長しても貫通孔31でその電路の成長を抑止する。そのため、導電パターン131と導電パターン132とが基材11のグラファイト化による電路で連結されるのをより効果的に防ぐことができる。従って、ランド136−ランド141〜144間及びランド136−導電パターン132間が電路で連結されて短絡するのを防ぐことができる。
【0047】
また、プリント基板10の貫通孔32は、導電パターン131間に形成されているので、ランド36及びランド136近傍の半田にクラックが生じて、基材11のグラファイト化によって形成された電路が導電パターン131同士を連結するように成長しても貫通孔32でその電路の成長を抑止することができる。そのため、導電パターン131間が電路で連結するのをより効果的に防ぐことができる。従って、ランド36−ランド136間が電路で連結されて短絡するのを防ぐことができる。
【0048】
また、プリント基板10の貫通孔33は、ランド141,151間であって、導体パターン132,133間に形成されているので、ランド141,151近傍の半田にクラックが生じて、基材11のグラファイト化によって形成された電路が、ランド141,151同士を結ぶように成長しても貫通孔33でその成長を抑止することができる。そのため、導電パターン132,133間が電路で連結するのをより効果的に防ぐことができる。従って、ランド141−ランド151間、ランド141−導電パターン133間及びランド151−導電パターン132間が電路で連結されて短絡するのを防ぐことができる。
【0049】
また、プリント基板10の貫通孔34は、ランド142,152間であって、ランド152と導電パターン142間に形成されているので、ランド142,152近傍の半田にクラックが生じて、基材11のグラファイト化によって形成された電路が、ランド142,152同士を結ぶように成長しても貫通孔34でその成長を抑止することができる。そのため、ランド152と導電パターン132間が電路で連結するのをより効果的に防ぐことができる。従って、ランド142−ランド152間及び導電パターン165−導電パターン166が電路で連結されて短絡するのを防ぐことができる。
【0050】
なお、貫通孔31〜34は長く形成されているので、グラファイト化による電路の進行を広い範囲で抑止することができる。
【0051】
以上、本発明の好適な実施の形態について説明したが、本発明は上述の実施の形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいてさまざまな設計変更が可能なものである。例えば、本実施の形態におけるプリント基板10に少なくとも1つ以上の貫通孔を設けておればよく、その貫通孔で前述したように電気部品の発熱によるプリント基板の熱膨張を吸収したり、半田にクラックが生じて基材がグラファイト化してもその貫通孔で抑止すればよい。また、本実施の形態の貫通孔31〜34は細長い形状(楕円形状)であるが、どのような形状であってもよく、効果的にプリント基板10の熱膨張を吸収したり、基材のグラファイト化の進行を抑止できればよい。また、プリント基板は単層構造でもよい。
【0052】
本発明によるプリント基板は、本実施の形態の電力供給装置以外のプリント基板が適用される装置にも適用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明によるプリント基板を含んでいる電力供給装置が適用された装置の構成を示すブロック図である。
【図2】図1に示す電力供給装置に使用されるプリント基板のシルク印刷の内容を示す説明図である。
【図3】図2におけるプリント基板のA−A断面図である。
【図4】図1に示す電力供給装置に使用されるプリント基板の第1層の平面図である。
【図5】図1に示す電力供給装置に使用されるプリント基板の第2層の平面図である。
【図6】図1に示す電力供給装置に使用されるプリント基板の第3層の平面図である。
【図7】図1に示す電力供給装置に使用されるプリント基板の第4層の平面図である。
【図8】図4における2点鎖線で囲まれた領域を示すプリント基板の第1層の拡大平面図である。
【図9】図4における2点鎖線で囲まれた領域を示すプリント基板の第2層の拡大平面図である。
【図10】図4における2点鎖線で囲まれた領域を示すプリント基板の第3層の拡大平面図である。
【図11】図4における2点鎖線で囲まれた領域を示すプリント基板の第4層の拡大平面図である。
【図12】図8におけるB−B断面を示しており、(a)は半田にクラックが生じた状況を示すプリント基板の要部断面図であり、(b)は半田に生じたクラックにアーク放電が生じて新たな電路が形成された状況を示すプリント基板の要部断面図である。
【符号の説明】
【0054】
1 電力供給装置
2 電源
3 漏電ブレーカ
4 制御装置
5 負荷装置
10 プリント基板
11 基材
15 スルーホール
16 半田
20 電気部品
21 リード
31,32,33,34 貫通孔
131 導体パターン
136 ランド
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気回路に使用するプリント基板に関する。
【背景技術】
【0002】
電気回路を実現する方法として、ガラスエポキシ等で構成されている板状の基材の上に、銅箔で配線(導電パターン)を施したプリント基板(Printed Circuit Boad:PCB)を製作し、そのプリント基板上の所定位置に電気部品を実装する方法が知られている。プリント基板は、導電パターンを印刷工程で実現することにより、電気部品に対する配線を確実且つ精密に行うことができるため広く利用されている。
【0003】
プリント基板の基材には、電気部品のリードが挿入されるスルーホールが複数形成されており、それらスルーホールの内周壁及び開口部近傍には導電性部材からなるランドが形成されている。そして、ランドに電気部品のリードが挿入されてリードとランドとの間に熱溶解された半田が流し込まれ、ランドとリードとが電気的に接合されることで、プリント基板に電気部品が実装される。なお、電気部品のプリント基板への実装方法としては、上述したスルーホールを用いる方法のほか、基材表面に配置されたランドと、平面部分を有するリードとを半田により面接合させる表面実装と呼ばれる方法がある。
【0004】
ここで、特に高電圧で電力を供給することにより高温になる電気部品がプリント基板に実装されている場合には、プリント基板を通電させる度に電気部品が発熱を繰り返すことになり、電気部品近傍におけるプリント基板に熱膨張が生じて、電気部品のリードとランドとを接合している半田にクラックが生じることがある。こうして、半田にクラックが発生した状態で、導電パターンからランドを介して半田に高電圧が印加されると、クラック間でアーク放電が生じる。アーク放電が生じることにより、クラック近傍はさらに高温になり、半田に含まれるフラックス、基材に含まれるフラックスやガラスエポキシ等が導電パターンとともに炭化してグラファイト化する。
【0005】
このように、基材がグラファイト化することで、抵抗値を有する新たな電路が形成される。そして、導電パターンには高電圧が印加されているため、グラファイト化による電路と導電パターンとの間でさらにアーク放電が発生し、基材のグラファイト化が進行して隣接するランド−ランド間及びランド−導電パターン間が短絡することがある。特に多層のプリント基板においては、導電パターンが複雑に配置され、他層の導体パターンとの短絡の可能性が高くなる。
【0006】
例えば、基材のグラファイト化によって形成された電路と接地された導電パターンである接地パターンとが短絡しても、その電路自身が抵抗値を持っているため、電気回路に過電流が流れない。そのため、過電流保護装置であるヒューズやブレーカでは、基材のグラファイト化の発見が困難となる。一方、特許文献1には、基板に漏電検知装置を配置する方法が提案されている。これによると、漏電検知装置を用いて電気回路の漏電を検知することができれば、該電路と接地パターンとの短絡により、基材のグラファイト化を発見することができる。
【特許文献1】特開2002−199575号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載の技術において、グラファイト化によって形成される新たな電路と接地パターンとが短絡するまでは、回路内の漏電を検知することができないので、導電パターンの配置状態によっては基材のグラファイト化が進行する問題がある。
【0008】
そこで、本発明は、クラックの発生を抑制するとともに、クラックが発生した場合でも、基材のグラファイト化の進行を抑止するプリント基板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段及び発明の効果】
【0009】
本発明のプリント基板は、電気回路に使用される単層または多層のプリント基板であって、複数の電気部品が実装される基材と、前記電気部品のリードに接合され、前記電気部品に電力を供給する複数のランドと、前記ランドに接合されるように形成された複数の導体パターンと、前記基材の厚み方向に貫通された貫通孔とを含んでなる。
【0010】
これによると、高電圧で電力を供給することで高温になる電気部品がプリント基板に実装されている場合でも、基材には貫通孔が形成されているので、電気部品の発熱によるプリント基板の熱膨張を吸収することができる。従って、電気部品のリード及びランドとを接合している部分にクラックが発生しにくくなる。また、電気部品のリード及びランドとを接合している部分にクラックが発生してそのクラック間にアーク放電が生じた場合でも、基材のランド近傍からグラファイト化が進むのを貫通孔で抑止することができる。
【0011】
本発明において、前記貫通孔が、隣接する前記ランド間に形成されていることが好ましい。これにより、基材のグラファイト化が進行した場合において、ランド同士がグラファイト化による電路で連結するのを貫通孔で防ぐので、ランド同士の短絡を防ぐことができる。
【0012】
また、本発明において、前記貫通孔が、前記ランドと、前記ランド近傍に形成された導体パターンとの間に配置されていることが好ましい。これにより、基材のグラファイト化が進行した場合において、ランドと導体パターンとがグラファイト化による電路で連結するのを貫通孔で防ぐので、ランドと導体パターンとの短絡を防ぐことができる。
【0013】
また、本発明において、前記貫通孔の長さが、前記ランドの直径より大きいことが好ましい。これにより、プリント基板の熱膨張によるクラック発生を抑制することができるとともに、クラックが発生した場合でもグラファイト化の進行を防ぐことができる。
【0014】
また、このとき、前記貫通孔が、隣接する前記ランド間を結ぶ方向と直交する方向に長く形成されていてもよい。これにより、隣接するランド同士が基材のグラファイト化による電路で連結するのを貫通孔でより効果的に防ぐことができる。
【0015】
また、このとき、前記貫通孔の隣接する前記ランド間を結ぶ方向の幅が、前記ランド近傍にまで存在していてもよい。これにより、プリント基板の熱膨張をより効果的に吸収することができるので、クラック発生を抑制することができる。
【0016】
また、このとき、前記貫通孔が、前記ランドと前記ランド近傍に形成された導体パターンとを結ぶ方向と直交する方向に長く形成されていてもよい。これにより、ランドと導体パターンとがグラファイト化による電路で連結するのを貫通孔でより効果的に防ぐことができる。
【0017】
また、このとき、前記貫通孔の前記ランドと前記ランド近傍に形成された導体パターンとを結ぶ方向の幅が、前記ランド及び前記導体パターン近傍にまで存在していてもよい。これにより、プリント基板の熱膨張をより効果的に吸収することができるので、クラック発生を抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、図面に基づいて本発明の好適な実施の形態を説明する。
【0019】
図1は、本発明によるプリント基板を含んでいる電力供給装置が適用された装置の構成を示すブロック図である。なお、ここで装置90は、例えば写真処理装置であるが、写真処理に関する具体的な説明については省略する。
【0020】
図1に示すように装置90には、電力供給装置1と、電源2と漏電ブレーカ3と、制御装置4と複数の負荷装置5によって構成されている。電力供給装置1は、入力された高電圧の電力を分配し、分配された電力を各負荷装置5に供給している。電源2は電力供給装置1に供給される高電圧の電力の発生源である。漏電ブレーカ3は、漏電検知装置であり、電源2から電力供給装置1に供給される高電圧の電力を中継するとともに、電力供給装置1の漏電を監視する。そして、電力供給装置1の漏電を検知した場合には、即座に電力供給装置1への電力供給を遮断する。制御装置4は、電力供給装置1に接続され、電力供給装置1による各負荷装置5への電力供給の制御を行うものである。負荷装置5は、電力供給装置1から電力の供給を受ける各種装置であり、例えば、ヒータ、モータ及び他の制御装置などである。
【0021】
次に、電力供給装置1について、図2を参照しつつ説明する。図2は、プリント基板10の表面に施されるシルク印刷の内容を示している。
【0022】
図2に示すように電力供給装置1の電気回路基板は、複数のターミナルT1〜T5によって構成されたターミナルTA3、コンデンサC1,C2、サージアブソーバZNR1〜ZNR4、コネクタP641,P644,P646,P648,P660,P662、マグネットリレーX1,X3,X4、ソリッドステートリレーSSR1〜SSR8等の複数の電気部品を備えている。
【0023】
ターミナルTA3は、電源2から漏電ブレーカ3を介して高電圧の電力を入力されるものである。コンデンサC1,C2は、ターミナルTA3に入力された高電圧の電力の高周波ノイズを除去するものである。サージアブソーバZNR1〜ZNR4は、ターミナルTA3に入力された高電圧の電力に発生するサージを除去するものである。コネクタP648は、制御装置4と接続するためのものである。コネクタP641,P644,P646、P660、P662は、負荷装置5と接続するためのものである。マグネットリレーX1,X3,X4と、ソリッドステートリレーSSR1〜SSR8とは、制御装置4からの制御により負荷装置5への電力供給の開始または停止を行うものである。なお、ソリッドステートリレーSSR1〜SSR8の入力部は、マグネットリレーX1,X3,X4の出力側接点から電力供給されている。
【0024】
電力供給装置1の電気回路基板は、プリント基板10に上述した各電気部品などを実装することにより実現されている。図3は、図2におけるプリント基板10のA−A断面図である。図3に示すようにプリント基板10は、基材11と、ランド136と、導電パターン131,132と、スルーホール15と、貫通孔31とを含んでなる。基材11は、ガラスエポキシ等からなる4枚の板状部材11a〜11dが順に積層した構成となっており、上から順に第1層が板状部材11a、第2層が板状部材11b、第3層が板状部材11c、第4層が板状部材11dとなっている。
【0025】
図3に示すようにスルーホール15は、基材11の厚み方向に貫通された孔であり、スルーホール15の内周面及び上下の開口部を覆うようにほぼ円筒状のランド136が配置されている。
【0026】
ランド136の上端部及び下端部には、基材11の上面及び下面の面方向に突出した鍔状の突出部12a,12bが形成されており、上側突出部12aと下側突出部12bとの間に基材11が存在している。なお、図4に示すようにスルーホール15と同様なスルーホールが、プリント基板10に上述した各電気部品が配置される部分等に適宜の数だけ形成されており、それらスルーホールのそれぞれにランド136と同様なランドが配置されている。
【0027】
図3において、導体パターン131は、基材11の上面(第1層11aの上面)に沿って形成されており、ランド136の上側突出部12aと接合されている。なお、基材11の第1〜第4層11a〜11dにも後述するように複数の導体パターンが形成されており、それらの導体パターンも必要に応じて適宜のランドと接合されている。
【0028】
電気部品20は、図2に示すターミナルTA3を構成するターミナルT2に該当するものである。電気部品20には、その下面から垂直方向に延出したリード21が形成されている。図3に示すように電気部品20のリード21は、スルーホール15のほぼ中心部分に挿入されて配置されている。そして、リード21とランド136との間に熱溶解された亜鉛とスズとを含んでなる半田16が流し込まれることで、電気部品20とランド136とが半田16を介して電気的に接合されている。従って、電気部品20と、導体パターン131とが半田16及びランド136を介して接合することになる。なお、導体パターンは、プリント基板10に実装される各電気部品に対して配線するための銅箔部材であり、適宜のランドに接合されている。なお、リード21は金属製からなり、電気部品20に対して通電できるようになっている。また、他の電気部品にもリード21と同様なリードが形成されている。
【0029】
図4〜図7には、基材11を積層して構成する板状部材11a〜11d(第1〜第4層11a〜11d)に形成された導体パターン及び複数のランドが示されている。図4〜図7R>7に示すように導体パターンは、第1〜第4層に分けて複数形成されており、前述した各電気部品が、いずれかの層における導体パターンとプリント基板10に複数形成されたスルーホール部分に存在するランドを介して接続されて所望の電気回路を構成している。
【0030】
例えば、図4に示す基材11の第1層11aには、接地された導電パターンである接地パターン121aが、ソリッドステートリレーSSR1〜SSR8の交流入出力部のリードに接合されるランド71a,71b,72a,72b,73a,73b,74a,74b,75a,75b,76a,76b,77a,77b,78a,78b及びソリッドステートリレーSSR1〜SSR8の制御入力部のリードに接合されるランド81,82,83,84,85,86,87,88近傍部分に形成されている。また、図7に示す基材11の第4層11dには、ソリッドステートリレーSSR1〜SSR8近傍部分以外の接地パターン121a部分と積層方向に重なる部分に、接地パターン121bが形成されている。
【0031】
また、第2層11bと第4層11dに形成された導電パターン115,116は、ターミナルTA3のリードに接合されるランド35,36に接合されるとともに、マグネットリレーX1,X3,X4の入力側接点のリードに接合されるランド38〜40にも接合されている。こうして、マグネットリレーX1,X3,X4に電力を供給している。
【0032】
また、第1〜第3層11a〜11cに形成された導電パターン122a,122bと第1層に形成された導電パターン122cは、マグネットリレーX1,X3,X4の出力側接点のリードに接合されるランド41a〜41cに接合されるとともに、フューズF4〜F10(図2参照)の入力側接点のリードに接合されるランド42a〜42gにも接合されている。そして、第3層11c及び第4層11dに形成された導電パターン123a〜123gがフューズF4〜F10の出力側接点のリードに接合されるランド43a〜43gに接合されるとともに、ソリッドステートリレーSSR1〜SSR8の入力側接点のリードに接合されるランド71a〜78aにも接合されている。こうして、ターミナルTA3からソリッドステートリレーSSR1〜SSR8までの電力供給系の回路が構成されている。
【0033】
また、マグネットリレーX1,X3,X4を制御するため、マグネットリレーX1,X3,X4の制御入力部のリードに接合されるランド92〜94に接合されている第2層11bの導電パターン125bが形成されており、第4層11dの導電パターン群125aが直接または導電パターン125bを介してランド92〜94に接合されるように形成されている。また、ソリッドステートリレーSSR1〜SSR8を制御するため、ソリッドステートリレーSSR1〜SSR8の制御入力部のリードに接合されるランド81〜88に接合されている第4層11dの導電パターン群126が形成されている。このように、導体パターン及びランドが各層11a〜11dに複数形成されているので、各電気部品がランド及び導体パターンを介して接続されている。
【0034】
図8〜図11は、図4における2点鎖線で囲む領域の基材11の各層ごとの拡大図を示している。図8〜図11に示すようにプリント基板10の基材11には、複数の貫通孔31〜34が形成されている。図8に示すように第1層11aには、ターミナルT1,T2のリードに接合されるランド36、136と接合される導体パターン131と、コンデンサC1,C2のリードに接合されるランド137〜140近傍に配置されるとともに、サージアブソーバZNR1〜ZNR4の入力側接点のリードに接合されるランド141〜144と接合される導体パターン132と、サージアブソーバZNR1の出力側接点のリードに接合されるランド151と接合する導体パターン133とが形成されている。
【0035】
図8において、貫通孔31は導体パターン131と導体パターン132との間に配置されている。貫通孔31は細長く形成されるとともに、その長手方向が隣接するランド36同士を結ぶ方向と直交する方向に平行にされている。貫通孔31の長手方向の長さは、導体パターン131の上側の辺に相当する長さを有している。また、貫通孔32は、導体パターン131間に配置されている。貫通孔32は隣接するランド36同士を結ぶ方向に長く形成されている。貫通孔32の長手方向の長さは、導体パターン131の左右側の辺に相当する長さを有している。
【0036】
図8において、貫通孔33は隣接するランド141,151との間に配置されている。貫通孔33は、ランド141,151間を結ぶ方向と直交する方向に長く形成されているとともに、ランド141,151間を結ぶ方向の幅がランド141,151近傍にまで存在している。また、貫通孔34は、サージアブソーバZNR2の出力側接点のリードと接合されているランド152とランド142との間に配置されている。貫通孔34は、ランド142,152との間を結ぶ方向と直交する方向に長く形成されているとともに、ランド142,152間を結ぶ方向の幅がランド142,152近傍にまで存在している。
【0037】
なお、図9〜図11に示すように前述した貫通孔31〜34は、基材11の厚み方向に貫通しているので、第1層11aと重なる第2〜第4層11b〜11dの位置にも形成されている。
【0038】
また、図9に示すように第2層11bには、ターミナルT2のリードに接合されるランド136とコンデンサC1,C2のリードに接合されるランド138,139とに接合する導体パターン161と、ターミナルT1のリードに接合されるランド36とコンデンサC1のリードに接合されるランド137とに接合する導体パターン162と、が形成されている。これら導体パターン161,162の間は離隔されている。
【0039】
また、図10に示すように第3層11cには、ターミナルT2のリードに接合されるランド136とコンデンサC1,C2のリードに接合されるランド138,139と接合し、ランド137,141,151近傍付近に配置された導体パターン163が形成されている。
【0040】
また、図11に示すように第4層11dには、前述した第1層11aの導体パターン131と同様の導体パターン164と、サージアブソーバZNR2〜ZNR4の入力側接点のリードに接合されるランド142〜145と接合された導体パターン165と、サージアブソーバZNR2の出力側接点のリードと接合されるランド152と接合する導体パターン166と、前述した導体パターン116とが形成されている。
【0041】
このような第1〜第4層11a〜11dを貫通した各貫通孔31〜34の長手方向の長さは、いずれのランドの直径よりも大きいので、ターミナルTA3、コンデンサC1,C2及びサージアブソーバZNR1〜ZNR4などの電気部品に通電した場合において、各電気部品の発熱により電気部品近傍のプリント基板10に熱膨張が生じてランドと電気部品のリード間を接合する半田にクラックが生じるのを抑制することができる。また、貫通孔33,34のように短手方向の幅がランド141,142,151,152及び導体パターン132,133に近接しているので、貫通孔33,34の幅が大きくなり、プリント基板10の熱膨張をより効果的に吸収することができる。そのため、前述と同様に半田のクラック発生を抑制することができる。つまり、電気部品の発熱でプリント基板10に生じた熱膨張によって、スルーホールと電気部品のリードとの間が狭くなって半田に圧縮応力がかかるのを、貫通孔31〜34でその圧縮応力を逃がす(吸収する)ことが可能となるので、半田にクラックが生じにくくなる。
【0042】
続いて、通電された電気部品20が発熱し、その電気部品20近傍のプリント基板10に熱膨張が生じて電気部品20のリード21とランド136とを接合する半田16にクラック18が生じた場合について以下に説明する。図12は、図8におけるB−B断面を示しており、(a)は半田にクラックが生じた状況を示すプリント基板の要部断面図であり、(b)は半田に生じたクラックにアーク放電が生じて新たな電路が形成された状況を示すプリント基板の要部断面図である。
【0043】
図12(a)に示すようにプリント基板10には、貫通孔31が形成されているので、電気部品20が通電されて発熱することで、プリント基板10に熱膨張が生じてもそのプリント基板10の熱膨張が貫通孔31で吸収されるので半田16にクラックが発生しにくくなっているが、特に高電圧の電力を供給することで高温になるような電気部品20による過度の発熱や繰り返されるプリント基板10の熱膨張により、稀に半田16にクラック18が生じることがある。クラック18が半田16に形成された状態のまま、導電パターン131からランド136を介して半田16に高電圧が印加されると、図12(b)に示すようにクラック18間にアーク放電が生じる。アーク放電が生じることによりクラック18近傍が高温になり、半田16に含まれるフラックス、基材11に含まれるフラックスやガラスエポキシ等が導電パターンとともに炭化してグラファイト化する。基材11がグラファイト化することで、抵抗値を有する新たな電路19が形成される。電路19は、アーク放電によってさらに図中右方向に成長していく。
【0044】
しかしながら、クラック18間のアーク放電によって図12(b)中右方向に成長する電路19は、貫通孔31によってその成長が抑止されることになる。つまり、クラック18間のアーク放電により高温になって炭化する部分が貫通孔31で途切れるので、電路19が成長できなくなる。また、貫通孔31は基材11の厚み方向に貫通されているので、貫通孔31内を通過する空気によって高温部分が冷却されることになるので、電路19のグラファイト化の進行を抑制することにもなる。従って、基材11がグラファイト化して電路19が導体パターン132と第1層11a上で連結しないようにすることができる。
【0045】
以上のように、本実施の形態によるプリント基板10は、高電圧で電力を供給することで高温になる電気部品がプリント基板10に実装されている場合でも、基材11には複数の貫通孔31〜34が形成されているので、電気部品の発熱によるプリント基板10の熱膨張を吸収することができる。従って、電気部品のリード及びランドとを接合している半田にクラックが発生しにくくなる。また、電気部品のリード及びランドとを接合している半田にクラックが発生してそのクラック間にアーク放電が生じた場合でも、基材11のランド近傍からグラファイト化が進むのを貫通孔31〜34で抑止することができる。
【0046】
また、プリント基板10の貫通孔31は、導電パターン131,132間に形成されているので、ランド36及びランド136近傍の半田にクラックが生じて、基材11のグラファイト化によって形成された電路が導電パターン132側に成長しても貫通孔31でその電路の成長を抑止する。そのため、導電パターン131と導電パターン132とが基材11のグラファイト化による電路で連結されるのをより効果的に防ぐことができる。従って、ランド136−ランド141〜144間及びランド136−導電パターン132間が電路で連結されて短絡するのを防ぐことができる。
【0047】
また、プリント基板10の貫通孔32は、導電パターン131間に形成されているので、ランド36及びランド136近傍の半田にクラックが生じて、基材11のグラファイト化によって形成された電路が導電パターン131同士を連結するように成長しても貫通孔32でその電路の成長を抑止することができる。そのため、導電パターン131間が電路で連結するのをより効果的に防ぐことができる。従って、ランド36−ランド136間が電路で連結されて短絡するのを防ぐことができる。
【0048】
また、プリント基板10の貫通孔33は、ランド141,151間であって、導体パターン132,133間に形成されているので、ランド141,151近傍の半田にクラックが生じて、基材11のグラファイト化によって形成された電路が、ランド141,151同士を結ぶように成長しても貫通孔33でその成長を抑止することができる。そのため、導電パターン132,133間が電路で連結するのをより効果的に防ぐことができる。従って、ランド141−ランド151間、ランド141−導電パターン133間及びランド151−導電パターン132間が電路で連結されて短絡するのを防ぐことができる。
【0049】
また、プリント基板10の貫通孔34は、ランド142,152間であって、ランド152と導電パターン142間に形成されているので、ランド142,152近傍の半田にクラックが生じて、基材11のグラファイト化によって形成された電路が、ランド142,152同士を結ぶように成長しても貫通孔34でその成長を抑止することができる。そのため、ランド152と導電パターン132間が電路で連結するのをより効果的に防ぐことができる。従って、ランド142−ランド152間及び導電パターン165−導電パターン166が電路で連結されて短絡するのを防ぐことができる。
【0050】
なお、貫通孔31〜34は長く形成されているので、グラファイト化による電路の進行を広い範囲で抑止することができる。
【0051】
以上、本発明の好適な実施の形態について説明したが、本発明は上述の実施の形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいてさまざまな設計変更が可能なものである。例えば、本実施の形態におけるプリント基板10に少なくとも1つ以上の貫通孔を設けておればよく、その貫通孔で前述したように電気部品の発熱によるプリント基板の熱膨張を吸収したり、半田にクラックが生じて基材がグラファイト化してもその貫通孔で抑止すればよい。また、本実施の形態の貫通孔31〜34は細長い形状(楕円形状)であるが、どのような形状であってもよく、効果的にプリント基板10の熱膨張を吸収したり、基材のグラファイト化の進行を抑止できればよい。また、プリント基板は単層構造でもよい。
【0052】
本発明によるプリント基板は、本実施の形態の電力供給装置以外のプリント基板が適用される装置にも適用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明によるプリント基板を含んでいる電力供給装置が適用された装置の構成を示すブロック図である。
【図2】図1に示す電力供給装置に使用されるプリント基板のシルク印刷の内容を示す説明図である。
【図3】図2におけるプリント基板のA−A断面図である。
【図4】図1に示す電力供給装置に使用されるプリント基板の第1層の平面図である。
【図5】図1に示す電力供給装置に使用されるプリント基板の第2層の平面図である。
【図6】図1に示す電力供給装置に使用されるプリント基板の第3層の平面図である。
【図7】図1に示す電力供給装置に使用されるプリント基板の第4層の平面図である。
【図8】図4における2点鎖線で囲まれた領域を示すプリント基板の第1層の拡大平面図である。
【図9】図4における2点鎖線で囲まれた領域を示すプリント基板の第2層の拡大平面図である。
【図10】図4における2点鎖線で囲まれた領域を示すプリント基板の第3層の拡大平面図である。
【図11】図4における2点鎖線で囲まれた領域を示すプリント基板の第4層の拡大平面図である。
【図12】図8におけるB−B断面を示しており、(a)は半田にクラックが生じた状況を示すプリント基板の要部断面図であり、(b)は半田に生じたクラックにアーク放電が生じて新たな電路が形成された状況を示すプリント基板の要部断面図である。
【符号の説明】
【0054】
1 電力供給装置
2 電源
3 漏電ブレーカ
4 制御装置
5 負荷装置
10 プリント基板
11 基材
15 スルーホール
16 半田
20 電気部品
21 リード
31,32,33,34 貫通孔
131 導体パターン
136 ランド
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気回路に使用される単層または多層のプリント基板であって、
複数の電気部品が実装される基材と、
前記電気部品のリードに接合され、前記電気部品に電力を供給する複数のランドと、
前記ランドに接合されるように形成された複数の導体パターンと、
前記基材の厚み方向に貫通された貫通孔とを含んでなることを特徴とするプリント基板。
【請求項2】
前記貫通孔が、隣接する前記ランド間に形成されていることを特徴とする請求項1に記載のプリント基板。
【請求項3】
前記貫通孔が、前記ランドと、前記ランド近傍に形成された導体パターンとの間に配置されていることを特徴とする請求項1又は2のいずれかに記載のプリント基板。
【請求項4】
前記貫通孔の長さが、前記ランドの直径より大きいことを特徴とする請求項1〜3に記載のプリント基板。
【請求項5】
前記貫通孔が、隣接する前記ランド間を結ぶ方向と直交する方向に長く形成されていることを特徴とする請求項4に記載のプリント基板。
【請求項6】
前記貫通孔の隣接する前記ランド間を結ぶ方向の幅が、前記ランド近傍にまで存在していることを特徴とする請求項5に記載のプリント基板。
【請求項7】
前記貫通孔が、前記ランドと前記ランド近傍に形成された導体パターンとを結ぶ方向と直交する方向に長く形成されていることを特徴とする請求項4に記載のプリント基板。
【請求項8】
前記貫通孔の前記ランドと前記ランド近傍に形成された導体パターンとを結ぶ方向の幅が、前記ランド及び前記導体パターン近傍にまで存在していることを特徴とする請求項7に記載のプリント基板。
【請求項1】
電気回路に使用される単層または多層のプリント基板であって、
複数の電気部品が実装される基材と、
前記電気部品のリードに接合され、前記電気部品に電力を供給する複数のランドと、
前記ランドに接合されるように形成された複数の導体パターンと、
前記基材の厚み方向に貫通された貫通孔とを含んでなることを特徴とするプリント基板。
【請求項2】
前記貫通孔が、隣接する前記ランド間に形成されていることを特徴とする請求項1に記載のプリント基板。
【請求項3】
前記貫通孔が、前記ランドと、前記ランド近傍に形成された導体パターンとの間に配置されていることを特徴とする請求項1又は2のいずれかに記載のプリント基板。
【請求項4】
前記貫通孔の長さが、前記ランドの直径より大きいことを特徴とする請求項1〜3に記載のプリント基板。
【請求項5】
前記貫通孔が、隣接する前記ランド間を結ぶ方向と直交する方向に長く形成されていることを特徴とする請求項4に記載のプリント基板。
【請求項6】
前記貫通孔の隣接する前記ランド間を結ぶ方向の幅が、前記ランド近傍にまで存在していることを特徴とする請求項5に記載のプリント基板。
【請求項7】
前記貫通孔が、前記ランドと前記ランド近傍に形成された導体パターンとを結ぶ方向と直交する方向に長く形成されていることを特徴とする請求項4に記載のプリント基板。
【請求項8】
前記貫通孔の前記ランドと前記ランド近傍に形成された導体パターンとを結ぶ方向の幅が、前記ランド及び前記導体パターン近傍にまで存在していることを特徴とする請求項7に記載のプリント基板。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2005−45060(P2005−45060A)
【公開日】平成17年2月17日(2005.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2003−278356(P2003−278356)
【出願日】平成15年7月23日(2003.7.23)
【出願人】(000135313)ノーリツ鋼機株式会社 (1,824)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成17年2月17日(2005.2.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成15年7月23日(2003.7.23)
【出願人】(000135313)ノーリツ鋼機株式会社 (1,824)
【Fターム(参考)】
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