プリント装置、およびプリント装置におけるジャム回復方法
【課題】 プリントの最中にジャムが発生したとしても、シートやインクの無駄ならびにジャム回復処理の手間と時間を可能な限り少なくしてプリント再開する。
【解決手段】 シート搬送中にジャムの発生が検知されたら、カッタ部でシートを切断して、ジャムの発生箇所に応じた手動のジャム回復処理をユーザに促す。ジャムがカッタ部よりも上流側で発生したと判断されたら、カッタ部よりも下流側に残されたシートを完成品として排出する。
【解決手段】 シート搬送中にジャムの発生が検知されたら、カッタ部でシートを切断して、ジャムの発生箇所に応じた手動のジャム回復処理をユーザに促す。ジャムがカッタ部よりも上流側で発生したと判断されたら、カッタ部よりも下流側に残されたシートを完成品として排出する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は連続したシートを用いたプリント装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ロール状に巻かれた長尺の連続シートを用いて、インクジェット方式でシート表裏に両面プリントを行なうプリント装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−126530号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の装置では、シート搬送中にジャムが発生してシート搬送が困難になった際の回復処理についてはなんら考慮がなされていない。そのため、ジャムが発生したらユーザは装置内のシートをすべて取り除いて廃棄し、改めて最初からプリントを再開せざるを得ない。つまり、ジャムが発生すると、シートやインクの無駄が大きく、且つジャム回復作業の手間と時間も大きなものとなる。
【0005】
本発明は上記課題の認識に基づいてなされたものである。本発明の目的のひとつは、プリントの最中にジャムが発生したとしても、シートやインクの無駄を可能な限り少なくしてプリント再開することができるプリント装置の提供である。本発明の別の目的は、プリントの最中にジャムが発生したとしても、ユーザのジャム回復作業の手間と時間を可能な限り少なくしてプリント再開することができるプリント装置の提供である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、連続したシートを保持して供給するためのシート供給部と、前記シート供給部から供給されるシートにプリントを行なうプリント部と、前記プリント部でプリントされたシートを切断するカッタ部と、前記シートが搬送される際のジャムの発生を検知する検知手段と、前記検知手段でジャムの発生が検知されたら、前記カッタ部でシートを切断して、前記発生箇所に応じた手動のジャム回復処理をユーザに促すように制御する制御部とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、プリントの最中にジャムが発生したとしても、シートやインクの無駄を可能な限り少なくすることができる。また、ジャム回復処理の手間と時間を可能な限り少なくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】プリント装置の内部構成を示す概略図
【図2】制御部のブロック図
【図3】片面プリントモードでの動作を説明するための図
【図4】両面プリントモードでの動作を説明するための図
【図5】片面プリントモードにおける復帰動作のシーケンスを示すフローチャート
【図6】両面プリントモードにおける復帰動作のシーケンスを示すフローチャート
【図7】ユーザによる手動のジャム回復処理の手順を示すフローチャート
【図8】ジャム発生で生じる画像の不完全画像を説明するための図
【図9】片面プリントモードにおいてジャムが発生した場合の復帰手順を説明するための図
【図10】両面プリントモードにおいて表面プリント中にジャムが発生した場合の復帰手順を説明するための図
【図11】両面プリントモードにおいて表面プリント中にジャムが発生した場合の復帰手順を説明するための図
【図12】ジャムの発生箇所の表示例
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、インクジェット方式を用いたプリント装置の実施形態を説明する。本例のプリント装置は、長尺で連続したシート(搬送方向において繰り返しのプリント単位(1ページあるいは単位画像という)の長さよりも長い連続したシート)を使用し、片面プリントおよび両面プリントの両方に対応した高速ラインプリンタである。例えば、プリントラボ等における大量の枚数のプリントの分野に適している。なお、本明細書では、1つのプリント単位(1ページ)の領域内に複数の小さな画像や文字や空白が混在していたとしても、当該領域内に含まれるものをまとめて1つの単位画像という。つまり、単位画像とは、連続したシートに複数のページを順次プリントする場合の1つのプリント単位(1ページ)を意味する。プリントする画像サイズに応じて単位画像の長さは異なる。例えばL版サイズの写真ではシート搬送方向の長さは135mm、A4サイズではシート搬送方向の長さは297mmとなる。
【0010】
本発明はプリンタ、プリンタ複合機、複写機、ファクシミリ装置、各種デバイスの製造装置などのプリント装置に広く適用可能である。プリント処理はインクジェット方式、電子写真方式、熱転写方式、ドットインパクト方式、液体現像方式など方式は問わない。また、本発明はプリント処理に限らずロールシートに種々の処理(記録、加工、塗布、照射、読取、検査など)を行なうシート処理装置にも適用可能である。
【0011】
図1はプリント装置の内部構成を示す断面の概略図である。本実施形態のプリント装置は、ロール状に巻かれたシートを用いて、シートの第1面と第1面の背面側の第2面に両面プリントすることが可能となっている。プリント装置内部には、大きくは、シート供給部1、デカール部2、斜行矯正部3、プリント部4、検査部5、カッタ部6、情報記録部7、乾燥部8、反転部9、排出搬送部10、ソータ部11、排出部12、制御部13の各ユニットを備える。シートは、図中の実線で示したシート搬送経路に沿ってローラ対やベルトからなる搬送機構で搬送され、各ユニットで処理がなされる。なお、シート搬送経路の任意の位置において、シート供給部1に近い側を「上流」、その逆側を「下流」という。
【0012】
シート供給部1は、ロール状に巻かれた連続シートを保持して供給するためのユニットである。シート供給部1は、2つのロールR1、R2を収納することが可能であり、択一的にシートを引き出して供給する構成となっている。なお、収納可能なロールは2つであることに限定はされず、1つ、あるいは3つ以上を収納するものであってもよい。また、連続したシートであれば、ロール状に巻かれたものに限らない。例えば、単位長さごとのミシン目が付与された連続したシートがミシン目ごとに折り返されて積層され、シート供給部1に収納されるものでもよい。
【0013】
デカール部2は、シート供給部1から供給されたシートのカール(反り)を軽減させるユニットである。デカール部2では、1つの駆動ローラに対して2つのピンチローラを用いて、カールの逆向きの反りを与えるようにシートを湾曲させて通過させることでデカール力を作用させカールを軽減させる。後述するように、デカール部2はデカール力を調整することが可能となっている。
【0014】
斜行矯正部3は、デカール部2を通過したシートの斜行(本来の進行方向に対する傾き)を矯正するユニットである。基準となる側のシート端部をガイド部材に押し付けることにより、シートの斜行が矯正される。
【0015】
プリント部4は、搬送されるシートに対して上方からプリントヘッド14によりシート上にプリント処理を行なって画像を形成するユニットである。つまり、プリント部4はシートに所定の処理を行なう処理部である。プリント部4は、シートを搬送する複数の搬送ローラも備えている。プリントヘッド14は、使用が想定されるシートの最大幅をカバーする範囲でインクジェット方式のノズル列が形成されたライン型プリントヘッドを有する。プリントヘッド14は、複数のプリントヘッドが搬送方向に沿って平行に並べられている。本例ではC(シアン)、M(マゼンタ)、Y(イエロー)、LC(ライトシアン)、LM(ライトマゼンタ)、G(グレー)、K(ブラック)の7色に対応した7つのプリントヘッドを有する。なお、色数およびプリントヘッドの数は7つには限定はされない。インクジェット方式は、発熱素子を用いた方式、ピエゾ素子を用いた方式、静電素子を用いた方式、MEMS素子を用いた方式等を採用することができる。各色のインクは、インクタンクからそれぞれインクチューブを介してプリントヘッド14に供給される。後述するように、プリント部4において、プリントヘッド14はシートから退避する方向に移動可能となっている。これにより、シートに対するプリントヘッド14の間隔が調整される。
【0016】
検査部5は、プリント部4でシートにプリントされた検査パターンや画像をスキャナによって光学的に読み取って、プリントヘッドのノズルの状態、シート搬送状態、画像位置等を検査して画像が正しくプリントされたかを判定するためのユニットである。スキャナはCCDイメージセンサやCMOSイメージセンサを有する。
【0017】
カッタ部6は、プリント後のシートをモータの駆動力によって所定長さに切断する機械的なカッタ(オートカッタ)を備えたユニットである。カッタ部6は、シートを次工程に送り出すための複数の搬送ローラも備えている。カッタ部6の近傍にはゴミ箱17が設けられている。ゴミ箱17は、カッタ部6で切り落とされゴミとして排出される小さなシート片を収容するものである。カッタ部6には、切断したシートをゴミ箱17に排出するか、本来の搬送経路に移行させるかの振り分け機構が設けられている。
【0018】
また、オートカッタとは別に、ユーザがシートを手動で切断するための手動カッタ18が、反転部9とプリント部4の間に少なくとも設けられている。、手動カッタ18は、ジャムが発生してシート詰まる等シートの切断が必要なエラーが発生した場合に、装置筐体内からシートを切断して取り除くためにユーザが操作する。本実施形態では、カッタ部6の上流側においては、プリントヘッドの手間でデカール部2とシート矯正部3の間の1箇所に手動カッタ18が設けられている。カッタ部6の下流側においては、乾燥部8の前後2箇所に手動カッタ18が設けられている。
【0019】
情報記録部7は、切断されたシートの非プリント領域にプリントのシリアル番号や日付などのプリント情報(固有の情報)を記録するユニットである。記録はインクジェット方式、熱転写方式などで文字やコードをプリントすることで行なわれる。情報記録部7の上流側且つカッタ部6の下流側には、切断されたシートの先端エッジを検知するセンサ23が設けられている。つまり、センサ23はカッタ部6と情報記録部7による記録位置との間でシートの端部を検知する、センサ23の検知タイミングに基づいて情報記録部7で情報記録するタイミングが制御される。
【0020】
乾燥部8は、プリント部4でプリントされたシートを加熱して、付与されたインクを短時間に乾燥させるためのユニットである。乾燥部8の内部では通過するシートに対して少なくとも下面側から熱風を付与してインク付与面を乾燥させる。なお、乾燥方式は熱風を付与する方式に限らず、電磁波(紫外線や赤外線など)をシート表面に照射する方式であってもよい。
【0021】
以上のシート供給部1から乾燥部8までのシート搬送経路を第1経路と称する。第1経路はプリント部4から乾燥部8までの間にUターンする形状を有し、カッタ部6はUターンの形状の途中に位置している。
【0022】
反転部9は両面プリントを行う際に表面プリントが終了した連続シートを一時的に巻き取って表裏反転させるためのユニットである。反転部9は、乾燥部8を通過したシートを再びプリント部4に供給するための、乾燥部8からデカール部2を経てプリント部4に到る経路(ループパス)(第2経路と称する)の途中に設けられている。反転部9はシートを巻き取って収容するための回転する巻取回転体(ドラム)を備えている。表面のプリントが済んで切断されていない連続シートは巻取回転体に一時的に巻き取り収容される。巻き取りが終わったら、巻取回転体が逆回転して巻き取り済みシートはデカール部2に供給され、プリント部4に送られる。このシートは表裏反転しているのでプリント部4で裏面にプリントを行うことができる。両面プリントのより具体的な動作については後述する。
【0023】
排出搬送部10は、カッタ部6で切断され乾燥部8で乾燥させられたシートを搬送して、ソータ部11までシートを受け渡すためのユニットである。排出搬送部10は、反転部9が設けられた第2経路とは異なる経路(第3経路と称する)に設けられている。第1経路を搬送されてきたシートを第2経路と第3経路のいずれか一方に選択的に導くために、経路の分岐位置には可動フラッパを有する経路切替機構が設けられている。
【0024】
ソータ部11と排出部12は、シート供給部1の側部で且つ第3経路の末端に設けられている。ソータ部11は必要に応じてプリント済みシートをグループ毎に仕分けるためのユニットである。仕分けられたシートは、複数のトレイからなる排出部12に排出される。このように、第3経路はシート供給部1の下方を通過して、シート供給部1を挟んでプリント部4や乾燥部8とは逆側にシートを排出するレイアウトとなっている。
【0025】
以上のように、シート供給部1から乾燥部8までが第1経路に順に設けられている。乾燥部8の先は第2経路と第3経路に分岐され、第2経路は途中に反転部9が設けられ反転部9の先は第1経路に合流する。第3経路の末端には排出部12が設けられている。
【0026】
制御部13は、プリント装置全体の各部の制御を司るユニットである。制御部13は、CPU、記憶装置、各種制御部を備えたコントローラ、外部インターフェース、およびユーザが入出力を行なう操作部15を有する。プリント装置の動作は、コントローラまたはコントローラに外部インターフェースを介して接続されるホストコンピュータ等のホスト装置16からの指令に基づいて制御される。
【0027】
図2は制御部13の概念を示すブロック図である。制御部13に含まれるコントローラ(破線で囲む範囲)は、CPU201、ROM202、RAM203、HDD204、画像処理部207、エンジン制御部208、個別ユニット制御部209から構成される。CPU201(中央演算処理部)はプリント装置の各ユニットの動作を統合的に制御する。ROM202はCPU201が実行するためのプログラムやプリント装置の各種動作に必要な固定データを格納する。RAM203はCPU201のワークエリアとして用いられたり、種々の受信データの一時格納領域として用いられたり、各種設定データを記憶させたりする。HDD204(ハードディスク)はCPU201が実行するためのプログラム、プリントデータ、プリント装置の各種動作に必要な設定情報を記憶読出することが可能である。操作部15はユーザとの入出力インターフェースであり、ハードキーやタッチパネルの入力部、および情報を提示する表示器や音声発生器などの出力部を含む。
【0028】
高速なデータ処理が要求されるユニットについては専用の処理部が設けられている。画像処理部207は、プリント装置で扱うプリントデータの画像処理を行う。入力された画像データの色空間(たとえばYCbCr)を、標準的なRGB色空間(たとえばsRGB)に変換する。また、画像データに対し解像度変換、画像解析、画像補正等、様々な画像処理が必要に応じて施される。これらの画像処理によって得られたプリントデータは、RAM203またはHDD204に格納される。エンジン制御部208は、CPU201等から受信した制御コマンドに基づいてプリントデータに応じてプリント部4のプリントヘッド14の駆動制御を行なう。エンジン制御部208は更にプリント装置内の各部の搬送機構の制御も行なう。個別ユニット制御部209は、シート供給部1、デカール部2、斜行矯正部3、検査部5、カッタ部6、情報記録部7、乾燥部8、反転部9、排出搬送部10、ソータ部11、排出部12の各ユニットを個別に制御するためのサブコントローラである。CPU201による指令に基づいて個別ユニット制御部209によりそれぞれのユニットの動作が制御される。外部インターフェース205は、コントローラをホスト装置16に接続するためのインターフェース(I/F)であり、ローカルI/FまたはネットワークI/Fである。以上の構成要素はシステムバス210によって接続されている。
【0029】
ホスト装置16は、プリント装置にプリントを行わせるための画像データの供給源となる装置である。ホスト装置16は、汎用または専用のコンピュータであってもよいし、画像リーダ部を有する画像キャプチャ、デジタルカメラ、フォトストレージ等の専用の画像機器であってもよい。ホスト装置16がコンピュータの場合は、コンピュータに含まれる記憶装置にOS、画像データを生成するアプリケーションソフトウェア、プリント装置用のプリント装置ドライバがインストールされる。なお、以上の処理の全てをソフトウェアで実現することは必須ではなく、一部または全部をハードウェアによって実現するようにしてもよい。
【0030】
次に、プリント時の基本動作について説明する。プリントは、片面プリントモードと両面プリントモードとでは動作が異なるので、それぞれについて説明する。
【0031】
<片面プリントモード>
図3は片面プリントモードでの動作を説明するための図である。シート供給部1から供給されたシートがプリントされて排出部12に排出されるまでの搬送経路を太線で示している。シート供給部1から供給され、デカール部2、斜行矯正部3でそれぞれ処理されたシートは、プリント部4において表面(第1面)のプリントがなされる。長尺の連続シートに対して、搬送方向における所定の単位長さの画像(単位画像)を順次プリントして複数の画像を並べて形成していく。プリントされたシートは検査部5を経て、カッタ部6において単位画像ごとに切断される。切断されたカットシートは、必要に応じて情報記録部7でシートの裏面にプリント情報が記録される。そして、カットシートは1枚ずつ乾燥部8に搬送され乾燥が行なわれる。その後、排出搬送部10を経由して、ソータ部11の排出部12に順次排出され積載されていく。一方、最後の単位画像の切断でプリント部4の側に残されたシートはシート供給部1に送り戻されて、シートがロールR1またはR2に巻き取られる。後述するように、この送り戻しの際には、デカール部2でのデカール力が小さくなるよう調整され、且つプリントヘッド14がシートから退避するようになっている。
【0032】
このように、片面プリントにおいては、シートは第1経路と第3経路を通過して処理され、第2経路は通過しない。以上をまとめると、片面プリントモードにおいては制御部13のコントローラの制御により、以下(1)〜(6)のシーケンスが実行される。
(1)シート供給部1からシートを送り出してプリント部4に供給する;
(2)供給されたシートの第1面にプリント部4で単位画像のプリントを繰り返す;
(3)第1面にプリントした単位画像ごとにカッタ部6でシートの切断を繰り返す;
(4)単位画像ごとに切断されたシートを1枚ずつ乾燥部8を通過させる;
(5)1枚ずつ乾燥部8を通過したシートを、第3経路を通して排出部12に排出する;
(6)最後の単位画像を切断してプリント部4の側に残されたシートをシート供給部1に送り戻す。
【0033】
<両面プリントモード>
図4は両面プリントモードでの動作を説明するための図である。両面プリントでは、表面(第1面)プリントシーケンスに次いで裏面(第2面)プリントシーケンスを実行する。最初の表面プリントシーケンスでは、シート供給部1から検査部5までの各ユニットでの動作は上述の片面プリントの動作と同じである。カッタ部6では切断動作は行わずに、連続シートのまま乾燥部8に搬送される。乾燥部8での表面のインク乾燥の後、排出搬送部10の側の経路(第3経路)ではなく、反転部9の側の経路(第2経路)にシートが導びかれる。第2経路においてシートは、順方向(図面では反時計回り方向)に回転する反転部9の巻取回転体に巻き取られていく。プリント部4において、予定された表面のプリントが全て終了すると、カッタ部6にて連続シートのプリント領域の後端が切断される。切断位置を基準に、搬送方向下流側(プリントされた側)の連続シートは乾燥部8を経て反転部9でシート後端(切断位置)まで全て巻き取られる。一方、反転部9での巻取りと同時に、切断位置よりも搬送方向上流側(プリント部4の側)に残された連続シートは、シート先端(切断位置)がデカール部2に残らないように、シート供給部1に送り戻されて、シートがロールR1またはR2に巻き取られる。この送り戻し(バックフィード)によって、以下の裏面プリントシーケンスで再び供給されるシートとの衝突が避けられる。後述するように、この送り戻しの際には、デカール部2でのデカール力が小さくなるよう調整され、且つプリントヘッド14がシートから退避するようになっている。
【0034】
上述の表面プリントシーケンスの後に、裏面プリントシーケンスに切り替わる。反転部9の巻取回転体が巻き取り時とは逆方向(図面では時計回り方向)に回転する。巻き取られたシートの端部(巻き取り時のシート後端は、送り出し時にはシート先端になる)は、図の破線の経路に沿ってデカール部2に送り込まれる。デカール部2では巻取回転体で付与されたカールの矯正がなされる。つまり、デカール部2は第1経路においてシート供給部1とプリント部4の間、ならびに第2経路において反転部9とプリント部4の間に設けられて、いずれの経路においてもデカールの働きをする共通のユニットとなっている。シートの表裏が反転したシートは、斜行矯正部3を経て、プリント部4に送られて、シートの裏面にプリントが行なわれる。プリントされたシートは検査部5を経て、カッタ部6において予め設定されている所定の単位長さ毎に切断される。カットシートは両面にプリントされているので、情報記録部7での記録はなされない。カットシートは1枚ずつ乾燥部8に搬送され、排出搬送部10を経由して、ソータ部11の排出部12に順次排出され積載されていく。
【0035】
このように、両面プリントにおいてはシートは第1経路、第2経路、第1経路、第3経路の順に通過して処理される。以上をまとめると、両面プリントモードにおいては制御部13のコントローラの制御により、以下(1)〜(11)のシーケンスが実行される。
(1)シート供給部1からシートを送り出してプリント部4に供給する;
(2)供給されたシートの第1面にプリント部4で単位画像のプリントを繰り返す;
(3)第1面にプリントされたシートを乾燥部8を通過させる;
(4)乾燥部8を通過したシートを第2経路に導びいて、反転部9が有する巻取回転体に巻き取っていく;
(5)第1面への繰返しのプリントが済んだら最後にプリントした単位画像の後ろでカッタ部6でシートを切断する;
(6)切断したシートの端部が乾燥部8を通過して巻取回転体に達するまで巻取回転体に巻き取るとともに、切断してプリント部4の側に残されたシートはシート供給部1に送り戻す;
(7)巻取りが済んだら巻取回転体を逆回転させて、第2経路から再びプリント部4にシートを供給する;
(8)第2経路から供給されるシートの第2面にプリント部4で単位画像のプリントを繰り返す;
(9)第2面にプリントした単位画像ごとにカッタ部6でシートの切断を繰り返す;
(10)単位画像ごとに切断されたシートを1枚ずつ乾燥部8を通過させる;
(11)1枚ずつ乾燥部8を通過したシートを、第3経路を通して排出部12に排出する。
【0036】
次に、上述の構成のプリント装置におけるジャム発生後の復帰動作について説明する。片面プリントモードと両面プリントモードとでは手順が異なるので、それぞれについて個別に説明する。
【0037】
<片面プリントモードにおけるジャム復帰動作>
図5は片面プリントモードにおける復帰動作のシーケンスを示すフローチャートである。これらのシーケンスは制御部13のコントローラの制御に基づいて実行される。
【0038】
ステップS11ではジャム検知手段によってジャムの発生およびジャムの発生箇所を検知する。ジャムを検知する方法には、シートの先端で搬送異常を検知する方法、シートの途中で搬送異常を検知する方法がある。前者では、ローラの制御情報により演算される理論上のシート先端の位置情報と、隣接するローラ間に設置されたシート検知センサの検知結果とを照らし合わせる。シート先端が通過すると推定される期間内にシート検知センサの検知されなかったり、理論値に対して検出が極端に遅れた場合にジャム発生と判断する。本実施形態のプリント装置は、シート検知センサがシート搬送経路の複数位置に設けられ、各位置でのジャム発生を検知することができる。一方、後者では、連続シートがシート搬送経路を移動する際に、ある箇所でシートの搬送不良が生じるとその部分の速度が低下し、最悪速度がゼロになる。すると速度が低下した箇所の後続のシートがどんどん送り込まれてループ状に溜まっていく。これを検知する手法として、搬送ローラのモータ回転数の低下やモータ負荷の異常が起きたらジャム発生と判断することができる。別の手法として、シート面の移動状態(速度や移動量)をダイレクトに計測するダイレクトセンサをシート搬送経路の複数位置に設けて、シートの搬送速度の異常が検知されたらジャム発生と判断することができる。別の手法として、シート搬送経路で意図的にシートのループが形成される箇所でループの大きさをセンサで検知して本来の大きさと異なっていたらジャム発生と判断することができる。
【0039】
ステップS12では、ジャム発生の検知に基づいて、シート搬送経路のシート搬送にかかわるすべての搬送ローラの駆動モータを停止させる。これはジャムの影響をジャムが発生した箇所に留めて、影響が他に連鎖することを抑止するためである。ある画像をプリントヘッド14でプリントしている最中に搬送が停止すると、図8(a)に示すように、未完成で不完全な部分画像(不完全画像A)が生じる。
【0040】
ステップS13では、搬送停止したシートをカッタ部6で切断する。ある画像がカッタ部6の切断位置に位置しているときにシートを切断すると、図8(b)に示すように、プリント済みの1つの画像が2つ(B1,B2)に分断されて不完全な部分画像(不完全画像B)が生じる。
【0041】
ステップS14では、不完全画像Aと不完全画像Bがどの画像で起きたかを特定する。これはジャム発生で搬送停止したときのシートの位置情報と画像のレイアウト情報(個々の画像サイズや並び順)を元に演算によって特定する。
【0042】
ステップS15では、ジャムの発生箇所がカッタ部6よりも上流側のみであるか、下流側のみであるか、あるいは上流・下流の両方であるかを判断する。この判断はジャム検知手段の検知結果に基づいてなされる。上流側のみの場合はステップS20に、下流側のみ場合はステップS30に、上流&下流の場合はステップS40にそれぞれ移行する。
【0043】
なお、ステップS13は必須ではなく省略してもよい。なぜなら、片面プリントにおいては、単位画像ごとにシート切断を繰り返しているので、ジャム発生が検知されてから改めてシートを切断しなくても、カッタ部6の近傍ではすでにシートが切断されているためである。
【0044】
(1−1)カッタ部より上流でジャム
図9(a)は片面プリント中のシートの搬送状態を示す。このとき、図9(b)に示すように、カッタ部6よりも上流側の経路でジャムが発生するケースを想定する。図中のグレーで示された部分がトラブル発生の領域であり、ユーザはこの領域内のシートを取り除いて破棄する必要がある。
【0045】
ステップS20では、カッタ部6より下流側に残されたシート(カットシート)を1枚ずつ情報記録部7、乾燥部8でそれぞれ処理した上で排出部12に排出させる。排出される個々シートは正常にプリントがなされた完成品である。
【0046】
ステップS21では、ユーザが手作業で上流側のシートを取り除く手動のジャム回復処理行なう。図7はこのサブルーチンの具体的な手順を示すフローチャートである。ステップS201では、操作部15またはホスト装置16の表示器にジャム発生箇所と作業指示を表示させて、ユーザに手動のジャム回復処理を促す。つまり、ジャムの発生箇所に応じた手動のジャム回復処理をユーザに促す。図12は表示器への表示例である。作業箇所と作業手順がグラフィカルに表示される。
【0047】
図7において、ステップS202では、ユーザが手作業でシートを取り除くシート除去作業を行なう。ユーザはプリント装置のフロントパネルを開けて、ジャムによるトラブル発生領域内のシートを取り除いて破棄する。経路にはシート取り除き作業を容易にするために、手動カッタ18が複数箇所(本例では3箇所)に設けられており、ユーザはジャム発生箇所の近傍の手動カッタ18でシートを切断して取り除く。シート除去作業においては、ユーザは図12に示すように、プリント装置のジャム発生箇所の近傍のユニットに対応した装置前蓋を開けて、そのユニットを装置内部から手前(矢印方向)に引き出す。その際に、連続シートがユニットに引きずられると、ユニットの引出しが妨げられたり、シートが無理に引きずられてシートやユニットにダメージを与える畏れがある。これを避けるために予め手動カッタ18でシートを切断してからユニットを引き出す。そして不要なシートを経路から取り出して除去する。なお、手動カッタ18を設ける位置はこれら3箇所に限らず、搬送経路のどこかに少なくとも1箇所に設けられていればよい。好ましくは、カッタ部6の上流側および下流側のいずれにも1箇所以上設けるものとする。
【0048】
シート回収作業が終了したらユーザはフロントパネルを閉める。ステップS203では、フロントパネルが閉められたらジャム検知手段が再検知する。ジャム検知手段が依然としてジャムを検知した場合は、ステップS201に戻ってユーザに対して再度、手動ジャム回復処理を促す警告を発する。ジャム検知手段がジャムを検知しなくなったら、搬送経路から正しくシートが取り除かれたものとして、サブルーチンをサブルーチンを終了して元に戻る。
【0049】
手動のジャム回復処理の前にトラブルの無い領域のシートが排出部12に排出されて搬送経路にはシートがないので、ユーザはより確実に手動のジャム回復処理を行なうことができる。なお、若干の作業性の低下が許容できるなら、ステップS20とステップS21の順番を逆にしてもよい。
【0050】
ステップS22では、シート供給部1からシートをプリント部4に供給する。ステップS23では破棄した画像から順にプリントを再開する。供給されるシートの先端には、カッタ部6での切断で生じた不完全画像B(分断された画像B1)があるので、その領域は避けてプリントする。
【0051】
ステップS24では、カッタ部6で最初にシート先端の不完全画像Bを切り落とす。その後は、プリントの済んだシートを個々の画像に応じた所定の単位長さ毎に切断する。ステップS25では、切り落とした不完全画像Bのシート片をゴミとしてゴミ箱17に排出する。ステップS26では、正常に両面プリントされカットされたカットシートを1枚ずつ排出部12に排出する。こうして、プリントシーケンスが終了する。
【0052】
以上のように、カッタ部6よりも上流側でジャムが発生したら、ジャムの影響がない下流側のシートを破棄せずに完成品として排出部12に排出する。これにより、シートやインクの無駄を少なくすることができる。また、手動のジャム回復処理前にシートを排出することで、手動のジャム回復処理の作業性を向上させることができる。
【0053】
(1−2)カッタ部より下流でジャム
図9(c)に示すように、カッタ部6よりも下流側の経路でジャムが発生するケースを想定する。図中のグレーで示された部分がトラブル発生の領域であり、ユーザはこの領域内のシートを取り除いて破棄する必要がある。
【0054】
ステップS30では、カッタ部6より上流側に残されたシート(連続シート)を送り戻してシート供給部1に巻き戻す。巻き戻したシートの先端(プリント部4からカッタ部6までの長さに相当する範囲)には、シート先端側から順に、カッタ部6での切断で生じた不完全画像B(分断された画像B2)、正常にプリントされた画像(1または複数)、不完全画像Aが並んでいる。
【0055】
ステップS31では、ユーザが手作業で下流側のシートを取り除く手動のジャム回復処理を行なう。詳細は図7に説明したとおりである。
【0056】
ステップS32では、シート供給部1からシートをプリント部4に供給する。ステップS30でシートをいったんシート供給部1に送り戻して、ステップS32で再び送り出すのは、ユーザがジャム回復処理の作業に要する期間は未知であり、シート搬送経路にシートが長期間放置されてシートが部分的に変質することを回避するためである。変質とは、意図しないカールが付与されたり部分的な加湿や乾燥状態になるなどを意味する。また、プリント再開する際にはシートが無い状態で各ユニットの初期動作を行なったほうがよいためである。更には、ステップS31の手動のジャム回復処理のユーザの作業性を高めるためである。これらが許容できるなら、ステップS30とステップS32は省略してもよい。
【0057】
ステップS33では破棄した画像(不完全画像Bの画像)から順にプリントを再開する。供給されるシートの先端には、カッタ部6での切断で生じた不完全画像B(分断された画像B2)、正常にプリントされた画像、不完全画像Aが順に並んでいる。これらの領域は空送りしてシートの未プリント部分からプリントを再開する。不完全画像Bと不完全画像Aの間の正常画像は生かす(再プリントしない)ようにしてもいいし、これを含めて不完全画像Aまでをまとめて切り捨てて、再度プリントするようにしてもよい。本例では生かすものとして説明する。
【0058】
ステップS24では、カッタ部6で最初にシート先端の不完全画像Bを切り落とす。その後は、プリントの済んだシートを個々の画像に応じた所定の単位長さ毎に切断する。不完全画像Aが現われたら切り落とす。その後は、単位長さ毎に切断を繰り返す。ステップS25では、切り落とされた不完全画像Bおよび不完全画像Aのシート片をゴミとしてゴミ箱17に排出する。ステップS26では、正常に両面プリントされカットされたカットシートを1枚ずつ排出部12に排出する。こうして、プリントシーケンスが終了する。
【0059】
以上のように、カッタ部6よりも下流側でジャムが発生したら、ジャムの影響がない上流側のシートをなるべく生かしてプリントを続行するので、シートやインクの無駄を少なくすることができる。また、手動のジャム回復処理前にシートをシート供給部1に送り戻すことで、ジャム回復処理の作業性を向上させることができる。
【0060】
(1−3)カッタ部の上流および下流の両方でジャム
稀ではあるが上流および下流の両方で同時にジャムが発生する場合もある。その場合は、搬送経路にあるシートを再使用することが困難なので、装置内のシートはすべて廃棄する。
【0061】
ステップS40では、ユーザが手作業で手動のジャム回復処理を行なう。ユーザは上流側および下流側に残されたシートをすべてを手作業で取り除く。詳細は図7に説明したとおりである。
【0062】
ステップ41では、シート供給部1からプリント部4へシートを供給しなおす。ステップS42では、ジャム回復処理によって廃棄した画像から順にプリントする。ジャムが発生する以前に排出部12に排出されたシートは、正常にプリントがなされた完成品である。従って、ジャム復帰後の再プリントにおいては、正常にプリントされた画像の次の画像以降から順にプリントすれば、本来の順番でのプリント結果が得られる。ステップS43では、正常にプリントされカットされたカットシートを1枚ずつ排出部12に排出する。こうして、プリントシーケンスが終了する。
【0063】
<両面プリントモードにおけるジャム復帰動作>
次に、両面プリントにおけるジャム発生後の復帰動作について説明する。図6は両面プリントモードにおける復帰動作のシーケンスを示すフローチャートである。これらのシーケンスは制御部13のコントローラに基づいて実行される。
【0064】
ステップS101ではジャムの発生を検知する。ジャム発生が検知されたらステップS102において、シート搬送経路のシート搬送にかかわるすべての搬送ローラの駆動モータを停止させる。ステップS103では、搬送停止したシートをカッタ部6で切断する。
【0065】
なお、両面プリントにおける裏面プリントの場合は、ステップS103は必須ではなく省略してもよい。なぜなら、裏面プリントでは、単位画像ごとにシート切断を繰り返しているので、ジャム発生が検知されてから改めてシートを切断しなくても、カッタ部6の近傍ではすでにシートが切断されているためである。
【0066】
ステップS104では、不完全画像Aと不完全画像Bがどの画像で起きたかを特定する。ここまでは、先の図5におけるステップS11〜S14と同様である。
【0067】
ステップS105では、ジャム発生のタイミングが表面プリント中なのか裏面プリント中なのかを判断する。表面プリント中の場合はステップS106に移行し、裏面プリント中の場合はステップS107に移行する。ステップS106およびステップS107ではそれぞれ、ジャム発生箇所がカッタ部の上流側であるか下流側であるか、あるいは上流・下流の両方であるかを判断する。この判断はジャム検知手段の検知結果に基づいてなされる。
【0068】
具体的なジャム回復処理は、ジャムの発生タイミングや発生箇所に応じて異なる。以下のように場合に分けて説明する。ステップS105〜S107は以下のどの場合であるかを判定するものである。
表面プリント中
(2−1−1)カッタ部より上流でジャム
(2−1−2)カッタ部より下流でジャム
(2−1−3)カッタ部の上流および下流の両方でジャム
裏面プリント中
(2−2−1)カッタ部より上流でジャム
(2−2−2)カッタ部より下流でジャム
(2−2−3)カッタ部の上流および下流の両方でジャム
【0069】
(2−1−1)表面プリント中にカッタ部より上流でジャム
図10(a)は表面プリント中のシートの搬送状態を示す。このとき、図10(b)に示すように、カッタ部6よりも上流側の経路でジャムが発生するケースを想定する。図中のグレーで示された部分がトラブル発生の領域であり、ユーザはこの領域内のシートを取り除いて破棄する必要がある。
【0070】
ステップS110では、カッタ部6よりも下流側に残されたシート(連続シート)を、図10(b)の矢印に示す方向に送り戻して反転部9に巻き取って収容する。この領域では表面プリントが正常に行なわているので、反転部9に巻き取ったシートは再使用することができる。
【0071】
ステップS111では、ユーザが手作業で上流側のシートを取り除く手動のジャム回復処理を行なう。詳細は図7に説明したとおりである。手動のジャム回復処理の前にトラブルの無い領域のシートが反転部9が巻き取られて搬送経路にはシートがないので、ユーザはより確実に手動のジャム回復処理を行なうことができる。なお、若干の作業性の低下が許容できるなら、ステップS110とステップS111の順番を逆にしてもよい。
【0072】
ステップS112では、反転部9に巻き取られているシートをプリント部4に供給する。シートは表裏反転して供給されるので、シートの第2面側がプリントヘッド14に対向する。
【0073】
ステップS113では、プリント済みの表面画像に対応した位置に対応した画像を順に裏面プリントしていく。供給されるシートの第1面の先端には、カッタ部6での切断で生じた不完全画像B(分断された画像B1)があるので、その領域に対応した部分は避けて裏面プリントする。
【0074】
ステップS114では、カッタ部6で最初にシート先端の不完全画像Bを切り落とす。その後は、プリントの済んだシートを個々の画像に応じた所定の単位長さ毎に切断する。ステップS115では、切り落とされた不完全画像Bのシート片をゴミとしてゴミ箱17に排出する。ステップS116では、正常に両面プリントされカットされたカットシートを1枚ずつ排出部12に排出する。こうして、プリントシーケンスが終了する。
【0075】
以上のように、表面プリント中にカッタ部6よりも上流側でジャムが発生したら、ジャムの影響がない下流側のシートを破棄せずに反転部9に巻き取って、巻き取ったシートのプリントを完成させる。これにより、シートやインクの無駄を少なくすることができる。また、また、手動のジャム回復処理前にシートを反転部9に巻き取ることで、ジャム回復処理の作業性を向上させることができる。
【0076】
(2−2−1)表面プリント中にカッタ部より下流でジャム
図10(c)に示すように、カッタ部6よりも下流側の経路でジャムが発生するケースを想定する。図中のグレーで示された部分がトラブル発生の領域であり、ユーザはこの領域内のシートを取り除いて破棄する必要がある。
【0077】
ステップS120では、カッタ部6より上流側に残されたシート(連続シート)を送り戻してシート供給部1に巻き戻す。巻き戻したシートの先端(プリント部4からカッタ部6までの長さに相当する範囲)には、シート先端側から順に、カッタ部6での切断で生じた不完全画像B(分断された画像B2)、正常にプリントされた画像(1または複数)、不完全画像Aが並んでいる。
【0078】
ステップS121では、ユーザが手作業で下流側のシートを取り除く手動のジャム回復処理を行なう。詳細は図7に説明したとおりである。
【0079】
ステップS122では、シート供給部1からシートをプリント部4に供給する。ステップS120でシートをいったんシート供給部1に送り戻して、ステップS122で再び送り出す理由は、上述のとおりである。ステップS120とステップS122は省略してもよい。
【0080】
ステップS123では破棄した画像(不完全画像Bの画像)から順に表面プリントを再開する。供給されるシートの先端には、カッタ部6での切断で生じた不完全画像B(分断された画像B2)、正常にプリントされた画像、不完全画像Aが順に並んでいる。これらの領域は空送りしてシートの未プリント部分から表面プリントを再開する。不完全画像Bと不完全画像Aの間の正常画像は生かす(再プリントしない)ようにしてもいいし、これを含めて不完全画像Aまでをまとめて切り捨てて、再度プリントするようにしてもよい。本例では生かすものとして説明する。
【0081】
ステップS124では、表面プリントが済んで反転部9で反転されたシートに対して裏面プリントする。裏面プリントにおいては、プリント済みの表面画像の裏面位置に表面画像に対応した画像を順にプリントしていく。表面には不完全画像A、Bがあるので、その領域は避けて裏面プリントを行なう。
【0082】
ステップS125では、プリントの済んだシートを個々の画像に応じた所定の単位長さ毎に切断する。不完全画像A,Bはその部分だけを切り落とす。ステップS126では、切り落とされた不完全画像A,Bをシート片をゴミとしてゴミ箱17に排出する。ステップS116では、正常にプリントされカットされたカットシートを1枚ずつ排出部12に排出する。こうして、プリントシーケンスが終了する。
【0083】
以上のように、表面プリント中にカッタ部6よりも下流側でジャムが発生したら、ジャムの影響がない上流側のシートをなるべく生かしてプリントを続行するので、シートやインクの無駄を少なくすることができる。
【0084】
(2−1−1)表面プリント中にカッタ部の上流および下流の両方でジャム
稀ではあるが、表面プリント中に上流および下流の両方で同時にジャムが発生する場合もある。その場合は、搬送経路にあるシートを再使用することが困難なので、装置内のシートはすべて廃棄する。
【0085】
ステップS130では、ユーザは手動のジャム回復処理を行ない、上流側および下流側に残されたシートすべてを手作業で取り除く。詳細は図7で説明したとおりである。
【0086】
ステップ131では、シート供給部1からプリント部4へシートを供給しなおす。ステップS132では、ジャム回復処理によって廃棄した画像から順に表面プリントする。ステップS133では、表面プリントが済んで反転部9で反転されたシートに対して裏面プリントする。裏面プリントにおいては、プリント済みの表面画像に対応した位置に対応した画像を順に裏面にプリントしていく。ステップS134では、プリントの済んだシートを個々の画像に応じた所定の単位長さ毎に切断する。ステップS166で、カットシートを1枚ずつ排出部12に排出する。こうして、プリントシーケンスが終了する。
【0087】
(2−2−1)裏面プリント中にカッタ部より上流でジャム
図11(a)は裏面プリント中のシートの搬送状態を示す。このとき、図11(b)に示すように、カッタ部6よりも上流側の経路でジャムが発生するケースを想定する。図中のグレーで示された部分がトラブル発生の領域であり、ユーザはこの領域内のシートを取り除いて破棄する必要がある。
【0088】
ステップS140では、カッタ部6より下流側に残されたシート(カットシート)を1枚ずつ情報記録部7、乾燥部8でそれぞれ処理した上で排出部12に排出させる。排出される個々シートは正常にプリントがなされた完成品である。ステップS141に移行する。
【0089】
ステップS141では、ユーザが手作業で上流側のシートを取り除く手動のジャム回復処理を行なう。詳細は図7で説明したとおりである。手動のジャム回復処理の前にトラブルの無い領域のシートが排出部12に排出されて搬送経路にはシートがないので、ユーザはより確実に手動のジャム回復処理を行なうことができる。なお、若干の作業性の低下が許容できるなら、ステップS140とステップS141の順番を逆にしてもよい。
【0090】
手動のジャム回復処理で搬送経路のシートは取り除かれるが、反転部9には残りのシートが巻き取られたままである。ユーザの作業によってシートの先端がどの画像であるかが分からないので、反転部9のシートはすべて廃棄する。ステップS142では、反転部9に巻き取られているシートを再び送り出してプリント部4を通過させ、カッタ部6まで搬送する。ステップS143では、反転部9から送られるシートすべてをカッタ部6で細かく裁断する。ステップS144では、裁断されたシート片をゴミとしてゴミ箱17に排出する。
【0091】
この後、再び表面から両面プリントを再開する。ステップS145では、シート供給部1からプリント部4にシートを供給する。ステップS146では、破棄した画像から順に表面プリントを繰り返す。ステップS147では、表面プリントが済んで反転部9で反転されたシートに対して裏面プリントする。裏面プリントにおいては、プリント済みの表面画像の裏面位置に表面画像に対応した画像を順にプリントしていく。ステップS148では、プリントの済んだシートを個々の画像に応じた所定の単位長さ毎に切断する。ステップS116では、正常にプリントされカットされたカットシートを1枚ずつ排出部12に排出する。こうして、プリントシーケンスが終了する。
【0092】
以上のように、裏面プリント中にカッタ部6よりも上流側でジャムが発生したら、ジャムの影響がない下流側のシートを破棄せずに完成品として排出部12に排出する。これにより、シートやインクの無駄を少なくすることができる。また、手動のジャム回復処理前にシートを排出することで、手動のジャム回復処理の作業性を向上させることができる。
【0093】
(2−2−2)裏面プリント中にカッタ部より下流でジャム
図11(c)に示すように、カッタ部6よりも下流側の経路でジャムが発生するケースを想定する。図中のグレーで示された部分がトラブル発生の領域であり、ユーザはこの領域内のシートを取り除いて破棄する必要がある。
【0094】
ステップS150では、カッタ部6よりも下流側に残されたシート(連続シート)を、図11(c)の矢印に示す方向に送り戻して反転部9に巻き取って収容する。この領域では表面プリントが正常に行なわているので、反転部9に巻き取ったシートは再使用することができる。
【0095】
ステップS151では、ユーザが手作業で上流側のシートを取り除く手動のジャム回復処理を行なう。詳細は図7に説明したとおりである。
【0096】
ステップS152では、反転部9に巻き取られているシートをプリント部4に供給する。シートは表裏反転して供給されるので、シートの第2面側がプリントヘッド14に対向する。ステップS150でシートをいったん反転部9に送り戻して、ステップS152で再び送り出す理由は、上述のとおりである。ステップS150とステップS152は省略してもよい。
【0097】
ステップS153では、表面プリントが済んだシートに対して裏面プリントする。裏面プリントにおいては、プリント済みの表面画像の裏面位置に表面画像に対応した画像を順にプリントしていく。シートの先端には不完全画像Bと、所定の距離をおいて不完全画像Aがあるので、その領域は避けて裏面プリントを行なう。
【0098】
ステップS154では、プリントの済んだシートを個々の画像に応じた所定の単位長さ毎に切断する。不完全画像A,Bはその部分だけを切り落とす。ステップS155では、切り落とされた不完全画像A,Bのシート片をゴミとしてゴミ箱17に排出する。ステップS116では、正常にプリントされカットされたカットシートを1枚ずつ排出部12に排出する。こうして、プリントシーケンスが終了する。なお、本シーケンスでは、完成した一連のカットシートから不完全画像A,Bの画像のシートが抜け落ちるので、次回の両面プリントのジョブに追加する。
【0099】
以上のように、裏面プリント中にカッタ部6よりも下流側でジャムが発生したら、ジャムの影響がない上流側のシートをなるべく生かしてプリントを続行するので、シートやインクの無駄を少なくすることができる。また、手動のジャム回復処理前にシートを反転部9に送り戻すことで、ジャム回復処理の作業性を向上させることができる。
【0100】
(2−2−3)裏面プリント中にカッタ部の上流および下流の両方でジャム
稀ではあるが、裏面プリント中に上流および下流の両方で同時にジャムが発生する場合もある。その場合は、搬送経路にあるシートを再使用することが困難なので、装置内のシートはすべて廃棄する。ステップS160〜ステップS164までの処理は、上述したステップ130〜ステップS134までの処理と同じであるので、重複の説明は省略する。
【0101】
表1に、ジャム発生した後の初期動作を整理して示す。
【0102】
【表1】
【0103】
以上のように、ジャムの発生が検知されたら、カッタ部でシートを切断して、ジャムの発生箇所に応じた手動のジャム回復処理をユーザに促すものである。カッタ部でシートを分断することで、ジャムの発生箇所を含むトラブルが発生した領域と、それ以外のトラブルの発生していない領域に分けられる。ユーザはトラブルが発生した領域に作業を集中することができ、少ない手間と時間で効率的にジャム回復処理を行なうことできる。また、トラブルの発生してない領域のシートは廃棄せずに使用することができ、シートやインクの無駄を少なくすることができる。
【符号の説明】
【0104】
1 シート供給部
2 デカール部
3 斜行矯正部
4 プリント部
5 検査部
6 カッタ部
7 情報記録部
8 乾燥部
9 反転部
10 排出搬送部
11 ソータ部
12 排出トレイ
13 制御部
14 プリントヘッド
15 操作部
16 ホスト機器
17 ゴミ箱
18 手動カッタ
【技術分野】
【0001】
本発明は連続したシートを用いたプリント装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ロール状に巻かれた長尺の連続シートを用いて、インクジェット方式でシート表裏に両面プリントを行なうプリント装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−126530号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の装置では、シート搬送中にジャムが発生してシート搬送が困難になった際の回復処理についてはなんら考慮がなされていない。そのため、ジャムが発生したらユーザは装置内のシートをすべて取り除いて廃棄し、改めて最初からプリントを再開せざるを得ない。つまり、ジャムが発生すると、シートやインクの無駄が大きく、且つジャム回復作業の手間と時間も大きなものとなる。
【0005】
本発明は上記課題の認識に基づいてなされたものである。本発明の目的のひとつは、プリントの最中にジャムが発生したとしても、シートやインクの無駄を可能な限り少なくしてプリント再開することができるプリント装置の提供である。本発明の別の目的は、プリントの最中にジャムが発生したとしても、ユーザのジャム回復作業の手間と時間を可能な限り少なくしてプリント再開することができるプリント装置の提供である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、連続したシートを保持して供給するためのシート供給部と、前記シート供給部から供給されるシートにプリントを行なうプリント部と、前記プリント部でプリントされたシートを切断するカッタ部と、前記シートが搬送される際のジャムの発生を検知する検知手段と、前記検知手段でジャムの発生が検知されたら、前記カッタ部でシートを切断して、前記発生箇所に応じた手動のジャム回復処理をユーザに促すように制御する制御部とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、プリントの最中にジャムが発生したとしても、シートやインクの無駄を可能な限り少なくすることができる。また、ジャム回復処理の手間と時間を可能な限り少なくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】プリント装置の内部構成を示す概略図
【図2】制御部のブロック図
【図3】片面プリントモードでの動作を説明するための図
【図4】両面プリントモードでの動作を説明するための図
【図5】片面プリントモードにおける復帰動作のシーケンスを示すフローチャート
【図6】両面プリントモードにおける復帰動作のシーケンスを示すフローチャート
【図7】ユーザによる手動のジャム回復処理の手順を示すフローチャート
【図8】ジャム発生で生じる画像の不完全画像を説明するための図
【図9】片面プリントモードにおいてジャムが発生した場合の復帰手順を説明するための図
【図10】両面プリントモードにおいて表面プリント中にジャムが発生した場合の復帰手順を説明するための図
【図11】両面プリントモードにおいて表面プリント中にジャムが発生した場合の復帰手順を説明するための図
【図12】ジャムの発生箇所の表示例
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、インクジェット方式を用いたプリント装置の実施形態を説明する。本例のプリント装置は、長尺で連続したシート(搬送方向において繰り返しのプリント単位(1ページあるいは単位画像という)の長さよりも長い連続したシート)を使用し、片面プリントおよび両面プリントの両方に対応した高速ラインプリンタである。例えば、プリントラボ等における大量の枚数のプリントの分野に適している。なお、本明細書では、1つのプリント単位(1ページ)の領域内に複数の小さな画像や文字や空白が混在していたとしても、当該領域内に含まれるものをまとめて1つの単位画像という。つまり、単位画像とは、連続したシートに複数のページを順次プリントする場合の1つのプリント単位(1ページ)を意味する。プリントする画像サイズに応じて単位画像の長さは異なる。例えばL版サイズの写真ではシート搬送方向の長さは135mm、A4サイズではシート搬送方向の長さは297mmとなる。
【0010】
本発明はプリンタ、プリンタ複合機、複写機、ファクシミリ装置、各種デバイスの製造装置などのプリント装置に広く適用可能である。プリント処理はインクジェット方式、電子写真方式、熱転写方式、ドットインパクト方式、液体現像方式など方式は問わない。また、本発明はプリント処理に限らずロールシートに種々の処理(記録、加工、塗布、照射、読取、検査など)を行なうシート処理装置にも適用可能である。
【0011】
図1はプリント装置の内部構成を示す断面の概略図である。本実施形態のプリント装置は、ロール状に巻かれたシートを用いて、シートの第1面と第1面の背面側の第2面に両面プリントすることが可能となっている。プリント装置内部には、大きくは、シート供給部1、デカール部2、斜行矯正部3、プリント部4、検査部5、カッタ部6、情報記録部7、乾燥部8、反転部9、排出搬送部10、ソータ部11、排出部12、制御部13の各ユニットを備える。シートは、図中の実線で示したシート搬送経路に沿ってローラ対やベルトからなる搬送機構で搬送され、各ユニットで処理がなされる。なお、シート搬送経路の任意の位置において、シート供給部1に近い側を「上流」、その逆側を「下流」という。
【0012】
シート供給部1は、ロール状に巻かれた連続シートを保持して供給するためのユニットである。シート供給部1は、2つのロールR1、R2を収納することが可能であり、択一的にシートを引き出して供給する構成となっている。なお、収納可能なロールは2つであることに限定はされず、1つ、あるいは3つ以上を収納するものであってもよい。また、連続したシートであれば、ロール状に巻かれたものに限らない。例えば、単位長さごとのミシン目が付与された連続したシートがミシン目ごとに折り返されて積層され、シート供給部1に収納されるものでもよい。
【0013】
デカール部2は、シート供給部1から供給されたシートのカール(反り)を軽減させるユニットである。デカール部2では、1つの駆動ローラに対して2つのピンチローラを用いて、カールの逆向きの反りを与えるようにシートを湾曲させて通過させることでデカール力を作用させカールを軽減させる。後述するように、デカール部2はデカール力を調整することが可能となっている。
【0014】
斜行矯正部3は、デカール部2を通過したシートの斜行(本来の進行方向に対する傾き)を矯正するユニットである。基準となる側のシート端部をガイド部材に押し付けることにより、シートの斜行が矯正される。
【0015】
プリント部4は、搬送されるシートに対して上方からプリントヘッド14によりシート上にプリント処理を行なって画像を形成するユニットである。つまり、プリント部4はシートに所定の処理を行なう処理部である。プリント部4は、シートを搬送する複数の搬送ローラも備えている。プリントヘッド14は、使用が想定されるシートの最大幅をカバーする範囲でインクジェット方式のノズル列が形成されたライン型プリントヘッドを有する。プリントヘッド14は、複数のプリントヘッドが搬送方向に沿って平行に並べられている。本例ではC(シアン)、M(マゼンタ)、Y(イエロー)、LC(ライトシアン)、LM(ライトマゼンタ)、G(グレー)、K(ブラック)の7色に対応した7つのプリントヘッドを有する。なお、色数およびプリントヘッドの数は7つには限定はされない。インクジェット方式は、発熱素子を用いた方式、ピエゾ素子を用いた方式、静電素子を用いた方式、MEMS素子を用いた方式等を採用することができる。各色のインクは、インクタンクからそれぞれインクチューブを介してプリントヘッド14に供給される。後述するように、プリント部4において、プリントヘッド14はシートから退避する方向に移動可能となっている。これにより、シートに対するプリントヘッド14の間隔が調整される。
【0016】
検査部5は、プリント部4でシートにプリントされた検査パターンや画像をスキャナによって光学的に読み取って、プリントヘッドのノズルの状態、シート搬送状態、画像位置等を検査して画像が正しくプリントされたかを判定するためのユニットである。スキャナはCCDイメージセンサやCMOSイメージセンサを有する。
【0017】
カッタ部6は、プリント後のシートをモータの駆動力によって所定長さに切断する機械的なカッタ(オートカッタ)を備えたユニットである。カッタ部6は、シートを次工程に送り出すための複数の搬送ローラも備えている。カッタ部6の近傍にはゴミ箱17が設けられている。ゴミ箱17は、カッタ部6で切り落とされゴミとして排出される小さなシート片を収容するものである。カッタ部6には、切断したシートをゴミ箱17に排出するか、本来の搬送経路に移行させるかの振り分け機構が設けられている。
【0018】
また、オートカッタとは別に、ユーザがシートを手動で切断するための手動カッタ18が、反転部9とプリント部4の間に少なくとも設けられている。、手動カッタ18は、ジャムが発生してシート詰まる等シートの切断が必要なエラーが発生した場合に、装置筐体内からシートを切断して取り除くためにユーザが操作する。本実施形態では、カッタ部6の上流側においては、プリントヘッドの手間でデカール部2とシート矯正部3の間の1箇所に手動カッタ18が設けられている。カッタ部6の下流側においては、乾燥部8の前後2箇所に手動カッタ18が設けられている。
【0019】
情報記録部7は、切断されたシートの非プリント領域にプリントのシリアル番号や日付などのプリント情報(固有の情報)を記録するユニットである。記録はインクジェット方式、熱転写方式などで文字やコードをプリントすることで行なわれる。情報記録部7の上流側且つカッタ部6の下流側には、切断されたシートの先端エッジを検知するセンサ23が設けられている。つまり、センサ23はカッタ部6と情報記録部7による記録位置との間でシートの端部を検知する、センサ23の検知タイミングに基づいて情報記録部7で情報記録するタイミングが制御される。
【0020】
乾燥部8は、プリント部4でプリントされたシートを加熱して、付与されたインクを短時間に乾燥させるためのユニットである。乾燥部8の内部では通過するシートに対して少なくとも下面側から熱風を付与してインク付与面を乾燥させる。なお、乾燥方式は熱風を付与する方式に限らず、電磁波(紫外線や赤外線など)をシート表面に照射する方式であってもよい。
【0021】
以上のシート供給部1から乾燥部8までのシート搬送経路を第1経路と称する。第1経路はプリント部4から乾燥部8までの間にUターンする形状を有し、カッタ部6はUターンの形状の途中に位置している。
【0022】
反転部9は両面プリントを行う際に表面プリントが終了した連続シートを一時的に巻き取って表裏反転させるためのユニットである。反転部9は、乾燥部8を通過したシートを再びプリント部4に供給するための、乾燥部8からデカール部2を経てプリント部4に到る経路(ループパス)(第2経路と称する)の途中に設けられている。反転部9はシートを巻き取って収容するための回転する巻取回転体(ドラム)を備えている。表面のプリントが済んで切断されていない連続シートは巻取回転体に一時的に巻き取り収容される。巻き取りが終わったら、巻取回転体が逆回転して巻き取り済みシートはデカール部2に供給され、プリント部4に送られる。このシートは表裏反転しているのでプリント部4で裏面にプリントを行うことができる。両面プリントのより具体的な動作については後述する。
【0023】
排出搬送部10は、カッタ部6で切断され乾燥部8で乾燥させられたシートを搬送して、ソータ部11までシートを受け渡すためのユニットである。排出搬送部10は、反転部9が設けられた第2経路とは異なる経路(第3経路と称する)に設けられている。第1経路を搬送されてきたシートを第2経路と第3経路のいずれか一方に選択的に導くために、経路の分岐位置には可動フラッパを有する経路切替機構が設けられている。
【0024】
ソータ部11と排出部12は、シート供給部1の側部で且つ第3経路の末端に設けられている。ソータ部11は必要に応じてプリント済みシートをグループ毎に仕分けるためのユニットである。仕分けられたシートは、複数のトレイからなる排出部12に排出される。このように、第3経路はシート供給部1の下方を通過して、シート供給部1を挟んでプリント部4や乾燥部8とは逆側にシートを排出するレイアウトとなっている。
【0025】
以上のように、シート供給部1から乾燥部8までが第1経路に順に設けられている。乾燥部8の先は第2経路と第3経路に分岐され、第2経路は途中に反転部9が設けられ反転部9の先は第1経路に合流する。第3経路の末端には排出部12が設けられている。
【0026】
制御部13は、プリント装置全体の各部の制御を司るユニットである。制御部13は、CPU、記憶装置、各種制御部を備えたコントローラ、外部インターフェース、およびユーザが入出力を行なう操作部15を有する。プリント装置の動作は、コントローラまたはコントローラに外部インターフェースを介して接続されるホストコンピュータ等のホスト装置16からの指令に基づいて制御される。
【0027】
図2は制御部13の概念を示すブロック図である。制御部13に含まれるコントローラ(破線で囲む範囲)は、CPU201、ROM202、RAM203、HDD204、画像処理部207、エンジン制御部208、個別ユニット制御部209から構成される。CPU201(中央演算処理部)はプリント装置の各ユニットの動作を統合的に制御する。ROM202はCPU201が実行するためのプログラムやプリント装置の各種動作に必要な固定データを格納する。RAM203はCPU201のワークエリアとして用いられたり、種々の受信データの一時格納領域として用いられたり、各種設定データを記憶させたりする。HDD204(ハードディスク)はCPU201が実行するためのプログラム、プリントデータ、プリント装置の各種動作に必要な設定情報を記憶読出することが可能である。操作部15はユーザとの入出力インターフェースであり、ハードキーやタッチパネルの入力部、および情報を提示する表示器や音声発生器などの出力部を含む。
【0028】
高速なデータ処理が要求されるユニットについては専用の処理部が設けられている。画像処理部207は、プリント装置で扱うプリントデータの画像処理を行う。入力された画像データの色空間(たとえばYCbCr)を、標準的なRGB色空間(たとえばsRGB)に変換する。また、画像データに対し解像度変換、画像解析、画像補正等、様々な画像処理が必要に応じて施される。これらの画像処理によって得られたプリントデータは、RAM203またはHDD204に格納される。エンジン制御部208は、CPU201等から受信した制御コマンドに基づいてプリントデータに応じてプリント部4のプリントヘッド14の駆動制御を行なう。エンジン制御部208は更にプリント装置内の各部の搬送機構の制御も行なう。個別ユニット制御部209は、シート供給部1、デカール部2、斜行矯正部3、検査部5、カッタ部6、情報記録部7、乾燥部8、反転部9、排出搬送部10、ソータ部11、排出部12の各ユニットを個別に制御するためのサブコントローラである。CPU201による指令に基づいて個別ユニット制御部209によりそれぞれのユニットの動作が制御される。外部インターフェース205は、コントローラをホスト装置16に接続するためのインターフェース(I/F)であり、ローカルI/FまたはネットワークI/Fである。以上の構成要素はシステムバス210によって接続されている。
【0029】
ホスト装置16は、プリント装置にプリントを行わせるための画像データの供給源となる装置である。ホスト装置16は、汎用または専用のコンピュータであってもよいし、画像リーダ部を有する画像キャプチャ、デジタルカメラ、フォトストレージ等の専用の画像機器であってもよい。ホスト装置16がコンピュータの場合は、コンピュータに含まれる記憶装置にOS、画像データを生成するアプリケーションソフトウェア、プリント装置用のプリント装置ドライバがインストールされる。なお、以上の処理の全てをソフトウェアで実現することは必須ではなく、一部または全部をハードウェアによって実現するようにしてもよい。
【0030】
次に、プリント時の基本動作について説明する。プリントは、片面プリントモードと両面プリントモードとでは動作が異なるので、それぞれについて説明する。
【0031】
<片面プリントモード>
図3は片面プリントモードでの動作を説明するための図である。シート供給部1から供給されたシートがプリントされて排出部12に排出されるまでの搬送経路を太線で示している。シート供給部1から供給され、デカール部2、斜行矯正部3でそれぞれ処理されたシートは、プリント部4において表面(第1面)のプリントがなされる。長尺の連続シートに対して、搬送方向における所定の単位長さの画像(単位画像)を順次プリントして複数の画像を並べて形成していく。プリントされたシートは検査部5を経て、カッタ部6において単位画像ごとに切断される。切断されたカットシートは、必要に応じて情報記録部7でシートの裏面にプリント情報が記録される。そして、カットシートは1枚ずつ乾燥部8に搬送され乾燥が行なわれる。その後、排出搬送部10を経由して、ソータ部11の排出部12に順次排出され積載されていく。一方、最後の単位画像の切断でプリント部4の側に残されたシートはシート供給部1に送り戻されて、シートがロールR1またはR2に巻き取られる。後述するように、この送り戻しの際には、デカール部2でのデカール力が小さくなるよう調整され、且つプリントヘッド14がシートから退避するようになっている。
【0032】
このように、片面プリントにおいては、シートは第1経路と第3経路を通過して処理され、第2経路は通過しない。以上をまとめると、片面プリントモードにおいては制御部13のコントローラの制御により、以下(1)〜(6)のシーケンスが実行される。
(1)シート供給部1からシートを送り出してプリント部4に供給する;
(2)供給されたシートの第1面にプリント部4で単位画像のプリントを繰り返す;
(3)第1面にプリントした単位画像ごとにカッタ部6でシートの切断を繰り返す;
(4)単位画像ごとに切断されたシートを1枚ずつ乾燥部8を通過させる;
(5)1枚ずつ乾燥部8を通過したシートを、第3経路を通して排出部12に排出する;
(6)最後の単位画像を切断してプリント部4の側に残されたシートをシート供給部1に送り戻す。
【0033】
<両面プリントモード>
図4は両面プリントモードでの動作を説明するための図である。両面プリントでは、表面(第1面)プリントシーケンスに次いで裏面(第2面)プリントシーケンスを実行する。最初の表面プリントシーケンスでは、シート供給部1から検査部5までの各ユニットでの動作は上述の片面プリントの動作と同じである。カッタ部6では切断動作は行わずに、連続シートのまま乾燥部8に搬送される。乾燥部8での表面のインク乾燥の後、排出搬送部10の側の経路(第3経路)ではなく、反転部9の側の経路(第2経路)にシートが導びかれる。第2経路においてシートは、順方向(図面では反時計回り方向)に回転する反転部9の巻取回転体に巻き取られていく。プリント部4において、予定された表面のプリントが全て終了すると、カッタ部6にて連続シートのプリント領域の後端が切断される。切断位置を基準に、搬送方向下流側(プリントされた側)の連続シートは乾燥部8を経て反転部9でシート後端(切断位置)まで全て巻き取られる。一方、反転部9での巻取りと同時に、切断位置よりも搬送方向上流側(プリント部4の側)に残された連続シートは、シート先端(切断位置)がデカール部2に残らないように、シート供給部1に送り戻されて、シートがロールR1またはR2に巻き取られる。この送り戻し(バックフィード)によって、以下の裏面プリントシーケンスで再び供給されるシートとの衝突が避けられる。後述するように、この送り戻しの際には、デカール部2でのデカール力が小さくなるよう調整され、且つプリントヘッド14がシートから退避するようになっている。
【0034】
上述の表面プリントシーケンスの後に、裏面プリントシーケンスに切り替わる。反転部9の巻取回転体が巻き取り時とは逆方向(図面では時計回り方向)に回転する。巻き取られたシートの端部(巻き取り時のシート後端は、送り出し時にはシート先端になる)は、図の破線の経路に沿ってデカール部2に送り込まれる。デカール部2では巻取回転体で付与されたカールの矯正がなされる。つまり、デカール部2は第1経路においてシート供給部1とプリント部4の間、ならびに第2経路において反転部9とプリント部4の間に設けられて、いずれの経路においてもデカールの働きをする共通のユニットとなっている。シートの表裏が反転したシートは、斜行矯正部3を経て、プリント部4に送られて、シートの裏面にプリントが行なわれる。プリントされたシートは検査部5を経て、カッタ部6において予め設定されている所定の単位長さ毎に切断される。カットシートは両面にプリントされているので、情報記録部7での記録はなされない。カットシートは1枚ずつ乾燥部8に搬送され、排出搬送部10を経由して、ソータ部11の排出部12に順次排出され積載されていく。
【0035】
このように、両面プリントにおいてはシートは第1経路、第2経路、第1経路、第3経路の順に通過して処理される。以上をまとめると、両面プリントモードにおいては制御部13のコントローラの制御により、以下(1)〜(11)のシーケンスが実行される。
(1)シート供給部1からシートを送り出してプリント部4に供給する;
(2)供給されたシートの第1面にプリント部4で単位画像のプリントを繰り返す;
(3)第1面にプリントされたシートを乾燥部8を通過させる;
(4)乾燥部8を通過したシートを第2経路に導びいて、反転部9が有する巻取回転体に巻き取っていく;
(5)第1面への繰返しのプリントが済んだら最後にプリントした単位画像の後ろでカッタ部6でシートを切断する;
(6)切断したシートの端部が乾燥部8を通過して巻取回転体に達するまで巻取回転体に巻き取るとともに、切断してプリント部4の側に残されたシートはシート供給部1に送り戻す;
(7)巻取りが済んだら巻取回転体を逆回転させて、第2経路から再びプリント部4にシートを供給する;
(8)第2経路から供給されるシートの第2面にプリント部4で単位画像のプリントを繰り返す;
(9)第2面にプリントした単位画像ごとにカッタ部6でシートの切断を繰り返す;
(10)単位画像ごとに切断されたシートを1枚ずつ乾燥部8を通過させる;
(11)1枚ずつ乾燥部8を通過したシートを、第3経路を通して排出部12に排出する。
【0036】
次に、上述の構成のプリント装置におけるジャム発生後の復帰動作について説明する。片面プリントモードと両面プリントモードとでは手順が異なるので、それぞれについて個別に説明する。
【0037】
<片面プリントモードにおけるジャム復帰動作>
図5は片面プリントモードにおける復帰動作のシーケンスを示すフローチャートである。これらのシーケンスは制御部13のコントローラの制御に基づいて実行される。
【0038】
ステップS11ではジャム検知手段によってジャムの発生およびジャムの発生箇所を検知する。ジャムを検知する方法には、シートの先端で搬送異常を検知する方法、シートの途中で搬送異常を検知する方法がある。前者では、ローラの制御情報により演算される理論上のシート先端の位置情報と、隣接するローラ間に設置されたシート検知センサの検知結果とを照らし合わせる。シート先端が通過すると推定される期間内にシート検知センサの検知されなかったり、理論値に対して検出が極端に遅れた場合にジャム発生と判断する。本実施形態のプリント装置は、シート検知センサがシート搬送経路の複数位置に設けられ、各位置でのジャム発生を検知することができる。一方、後者では、連続シートがシート搬送経路を移動する際に、ある箇所でシートの搬送不良が生じるとその部分の速度が低下し、最悪速度がゼロになる。すると速度が低下した箇所の後続のシートがどんどん送り込まれてループ状に溜まっていく。これを検知する手法として、搬送ローラのモータ回転数の低下やモータ負荷の異常が起きたらジャム発生と判断することができる。別の手法として、シート面の移動状態(速度や移動量)をダイレクトに計測するダイレクトセンサをシート搬送経路の複数位置に設けて、シートの搬送速度の異常が検知されたらジャム発生と判断することができる。別の手法として、シート搬送経路で意図的にシートのループが形成される箇所でループの大きさをセンサで検知して本来の大きさと異なっていたらジャム発生と判断することができる。
【0039】
ステップS12では、ジャム発生の検知に基づいて、シート搬送経路のシート搬送にかかわるすべての搬送ローラの駆動モータを停止させる。これはジャムの影響をジャムが発生した箇所に留めて、影響が他に連鎖することを抑止するためである。ある画像をプリントヘッド14でプリントしている最中に搬送が停止すると、図8(a)に示すように、未完成で不完全な部分画像(不完全画像A)が生じる。
【0040】
ステップS13では、搬送停止したシートをカッタ部6で切断する。ある画像がカッタ部6の切断位置に位置しているときにシートを切断すると、図8(b)に示すように、プリント済みの1つの画像が2つ(B1,B2)に分断されて不完全な部分画像(不完全画像B)が生じる。
【0041】
ステップS14では、不完全画像Aと不完全画像Bがどの画像で起きたかを特定する。これはジャム発生で搬送停止したときのシートの位置情報と画像のレイアウト情報(個々の画像サイズや並び順)を元に演算によって特定する。
【0042】
ステップS15では、ジャムの発生箇所がカッタ部6よりも上流側のみであるか、下流側のみであるか、あるいは上流・下流の両方であるかを判断する。この判断はジャム検知手段の検知結果に基づいてなされる。上流側のみの場合はステップS20に、下流側のみ場合はステップS30に、上流&下流の場合はステップS40にそれぞれ移行する。
【0043】
なお、ステップS13は必須ではなく省略してもよい。なぜなら、片面プリントにおいては、単位画像ごとにシート切断を繰り返しているので、ジャム発生が検知されてから改めてシートを切断しなくても、カッタ部6の近傍ではすでにシートが切断されているためである。
【0044】
(1−1)カッタ部より上流でジャム
図9(a)は片面プリント中のシートの搬送状態を示す。このとき、図9(b)に示すように、カッタ部6よりも上流側の経路でジャムが発生するケースを想定する。図中のグレーで示された部分がトラブル発生の領域であり、ユーザはこの領域内のシートを取り除いて破棄する必要がある。
【0045】
ステップS20では、カッタ部6より下流側に残されたシート(カットシート)を1枚ずつ情報記録部7、乾燥部8でそれぞれ処理した上で排出部12に排出させる。排出される個々シートは正常にプリントがなされた完成品である。
【0046】
ステップS21では、ユーザが手作業で上流側のシートを取り除く手動のジャム回復処理行なう。図7はこのサブルーチンの具体的な手順を示すフローチャートである。ステップS201では、操作部15またはホスト装置16の表示器にジャム発生箇所と作業指示を表示させて、ユーザに手動のジャム回復処理を促す。つまり、ジャムの発生箇所に応じた手動のジャム回復処理をユーザに促す。図12は表示器への表示例である。作業箇所と作業手順がグラフィカルに表示される。
【0047】
図7において、ステップS202では、ユーザが手作業でシートを取り除くシート除去作業を行なう。ユーザはプリント装置のフロントパネルを開けて、ジャムによるトラブル発生領域内のシートを取り除いて破棄する。経路にはシート取り除き作業を容易にするために、手動カッタ18が複数箇所(本例では3箇所)に設けられており、ユーザはジャム発生箇所の近傍の手動カッタ18でシートを切断して取り除く。シート除去作業においては、ユーザは図12に示すように、プリント装置のジャム発生箇所の近傍のユニットに対応した装置前蓋を開けて、そのユニットを装置内部から手前(矢印方向)に引き出す。その際に、連続シートがユニットに引きずられると、ユニットの引出しが妨げられたり、シートが無理に引きずられてシートやユニットにダメージを与える畏れがある。これを避けるために予め手動カッタ18でシートを切断してからユニットを引き出す。そして不要なシートを経路から取り出して除去する。なお、手動カッタ18を設ける位置はこれら3箇所に限らず、搬送経路のどこかに少なくとも1箇所に設けられていればよい。好ましくは、カッタ部6の上流側および下流側のいずれにも1箇所以上設けるものとする。
【0048】
シート回収作業が終了したらユーザはフロントパネルを閉める。ステップS203では、フロントパネルが閉められたらジャム検知手段が再検知する。ジャム検知手段が依然としてジャムを検知した場合は、ステップS201に戻ってユーザに対して再度、手動ジャム回復処理を促す警告を発する。ジャム検知手段がジャムを検知しなくなったら、搬送経路から正しくシートが取り除かれたものとして、サブルーチンをサブルーチンを終了して元に戻る。
【0049】
手動のジャム回復処理の前にトラブルの無い領域のシートが排出部12に排出されて搬送経路にはシートがないので、ユーザはより確実に手動のジャム回復処理を行なうことができる。なお、若干の作業性の低下が許容できるなら、ステップS20とステップS21の順番を逆にしてもよい。
【0050】
ステップS22では、シート供給部1からシートをプリント部4に供給する。ステップS23では破棄した画像から順にプリントを再開する。供給されるシートの先端には、カッタ部6での切断で生じた不完全画像B(分断された画像B1)があるので、その領域は避けてプリントする。
【0051】
ステップS24では、カッタ部6で最初にシート先端の不完全画像Bを切り落とす。その後は、プリントの済んだシートを個々の画像に応じた所定の単位長さ毎に切断する。ステップS25では、切り落とした不完全画像Bのシート片をゴミとしてゴミ箱17に排出する。ステップS26では、正常に両面プリントされカットされたカットシートを1枚ずつ排出部12に排出する。こうして、プリントシーケンスが終了する。
【0052】
以上のように、カッタ部6よりも上流側でジャムが発生したら、ジャムの影響がない下流側のシートを破棄せずに完成品として排出部12に排出する。これにより、シートやインクの無駄を少なくすることができる。また、手動のジャム回復処理前にシートを排出することで、手動のジャム回復処理の作業性を向上させることができる。
【0053】
(1−2)カッタ部より下流でジャム
図9(c)に示すように、カッタ部6よりも下流側の経路でジャムが発生するケースを想定する。図中のグレーで示された部分がトラブル発生の領域であり、ユーザはこの領域内のシートを取り除いて破棄する必要がある。
【0054】
ステップS30では、カッタ部6より上流側に残されたシート(連続シート)を送り戻してシート供給部1に巻き戻す。巻き戻したシートの先端(プリント部4からカッタ部6までの長さに相当する範囲)には、シート先端側から順に、カッタ部6での切断で生じた不完全画像B(分断された画像B2)、正常にプリントされた画像(1または複数)、不完全画像Aが並んでいる。
【0055】
ステップS31では、ユーザが手作業で下流側のシートを取り除く手動のジャム回復処理を行なう。詳細は図7に説明したとおりである。
【0056】
ステップS32では、シート供給部1からシートをプリント部4に供給する。ステップS30でシートをいったんシート供給部1に送り戻して、ステップS32で再び送り出すのは、ユーザがジャム回復処理の作業に要する期間は未知であり、シート搬送経路にシートが長期間放置されてシートが部分的に変質することを回避するためである。変質とは、意図しないカールが付与されたり部分的な加湿や乾燥状態になるなどを意味する。また、プリント再開する際にはシートが無い状態で各ユニットの初期動作を行なったほうがよいためである。更には、ステップS31の手動のジャム回復処理のユーザの作業性を高めるためである。これらが許容できるなら、ステップS30とステップS32は省略してもよい。
【0057】
ステップS33では破棄した画像(不完全画像Bの画像)から順にプリントを再開する。供給されるシートの先端には、カッタ部6での切断で生じた不完全画像B(分断された画像B2)、正常にプリントされた画像、不完全画像Aが順に並んでいる。これらの領域は空送りしてシートの未プリント部分からプリントを再開する。不完全画像Bと不完全画像Aの間の正常画像は生かす(再プリントしない)ようにしてもいいし、これを含めて不完全画像Aまでをまとめて切り捨てて、再度プリントするようにしてもよい。本例では生かすものとして説明する。
【0058】
ステップS24では、カッタ部6で最初にシート先端の不完全画像Bを切り落とす。その後は、プリントの済んだシートを個々の画像に応じた所定の単位長さ毎に切断する。不完全画像Aが現われたら切り落とす。その後は、単位長さ毎に切断を繰り返す。ステップS25では、切り落とされた不完全画像Bおよび不完全画像Aのシート片をゴミとしてゴミ箱17に排出する。ステップS26では、正常に両面プリントされカットされたカットシートを1枚ずつ排出部12に排出する。こうして、プリントシーケンスが終了する。
【0059】
以上のように、カッタ部6よりも下流側でジャムが発生したら、ジャムの影響がない上流側のシートをなるべく生かしてプリントを続行するので、シートやインクの無駄を少なくすることができる。また、手動のジャム回復処理前にシートをシート供給部1に送り戻すことで、ジャム回復処理の作業性を向上させることができる。
【0060】
(1−3)カッタ部の上流および下流の両方でジャム
稀ではあるが上流および下流の両方で同時にジャムが発生する場合もある。その場合は、搬送経路にあるシートを再使用することが困難なので、装置内のシートはすべて廃棄する。
【0061】
ステップS40では、ユーザが手作業で手動のジャム回復処理を行なう。ユーザは上流側および下流側に残されたシートをすべてを手作業で取り除く。詳細は図7に説明したとおりである。
【0062】
ステップ41では、シート供給部1からプリント部4へシートを供給しなおす。ステップS42では、ジャム回復処理によって廃棄した画像から順にプリントする。ジャムが発生する以前に排出部12に排出されたシートは、正常にプリントがなされた完成品である。従って、ジャム復帰後の再プリントにおいては、正常にプリントされた画像の次の画像以降から順にプリントすれば、本来の順番でのプリント結果が得られる。ステップS43では、正常にプリントされカットされたカットシートを1枚ずつ排出部12に排出する。こうして、プリントシーケンスが終了する。
【0063】
<両面プリントモードにおけるジャム復帰動作>
次に、両面プリントにおけるジャム発生後の復帰動作について説明する。図6は両面プリントモードにおける復帰動作のシーケンスを示すフローチャートである。これらのシーケンスは制御部13のコントローラに基づいて実行される。
【0064】
ステップS101ではジャムの発生を検知する。ジャム発生が検知されたらステップS102において、シート搬送経路のシート搬送にかかわるすべての搬送ローラの駆動モータを停止させる。ステップS103では、搬送停止したシートをカッタ部6で切断する。
【0065】
なお、両面プリントにおける裏面プリントの場合は、ステップS103は必須ではなく省略してもよい。なぜなら、裏面プリントでは、単位画像ごとにシート切断を繰り返しているので、ジャム発生が検知されてから改めてシートを切断しなくても、カッタ部6の近傍ではすでにシートが切断されているためである。
【0066】
ステップS104では、不完全画像Aと不完全画像Bがどの画像で起きたかを特定する。ここまでは、先の図5におけるステップS11〜S14と同様である。
【0067】
ステップS105では、ジャム発生のタイミングが表面プリント中なのか裏面プリント中なのかを判断する。表面プリント中の場合はステップS106に移行し、裏面プリント中の場合はステップS107に移行する。ステップS106およびステップS107ではそれぞれ、ジャム発生箇所がカッタ部の上流側であるか下流側であるか、あるいは上流・下流の両方であるかを判断する。この判断はジャム検知手段の検知結果に基づいてなされる。
【0068】
具体的なジャム回復処理は、ジャムの発生タイミングや発生箇所に応じて異なる。以下のように場合に分けて説明する。ステップS105〜S107は以下のどの場合であるかを判定するものである。
表面プリント中
(2−1−1)カッタ部より上流でジャム
(2−1−2)カッタ部より下流でジャム
(2−1−3)カッタ部の上流および下流の両方でジャム
裏面プリント中
(2−2−1)カッタ部より上流でジャム
(2−2−2)カッタ部より下流でジャム
(2−2−3)カッタ部の上流および下流の両方でジャム
【0069】
(2−1−1)表面プリント中にカッタ部より上流でジャム
図10(a)は表面プリント中のシートの搬送状態を示す。このとき、図10(b)に示すように、カッタ部6よりも上流側の経路でジャムが発生するケースを想定する。図中のグレーで示された部分がトラブル発生の領域であり、ユーザはこの領域内のシートを取り除いて破棄する必要がある。
【0070】
ステップS110では、カッタ部6よりも下流側に残されたシート(連続シート)を、図10(b)の矢印に示す方向に送り戻して反転部9に巻き取って収容する。この領域では表面プリントが正常に行なわているので、反転部9に巻き取ったシートは再使用することができる。
【0071】
ステップS111では、ユーザが手作業で上流側のシートを取り除く手動のジャム回復処理を行なう。詳細は図7に説明したとおりである。手動のジャム回復処理の前にトラブルの無い領域のシートが反転部9が巻き取られて搬送経路にはシートがないので、ユーザはより確実に手動のジャム回復処理を行なうことができる。なお、若干の作業性の低下が許容できるなら、ステップS110とステップS111の順番を逆にしてもよい。
【0072】
ステップS112では、反転部9に巻き取られているシートをプリント部4に供給する。シートは表裏反転して供給されるので、シートの第2面側がプリントヘッド14に対向する。
【0073】
ステップS113では、プリント済みの表面画像に対応した位置に対応した画像を順に裏面プリントしていく。供給されるシートの第1面の先端には、カッタ部6での切断で生じた不完全画像B(分断された画像B1)があるので、その領域に対応した部分は避けて裏面プリントする。
【0074】
ステップS114では、カッタ部6で最初にシート先端の不完全画像Bを切り落とす。その後は、プリントの済んだシートを個々の画像に応じた所定の単位長さ毎に切断する。ステップS115では、切り落とされた不完全画像Bのシート片をゴミとしてゴミ箱17に排出する。ステップS116では、正常に両面プリントされカットされたカットシートを1枚ずつ排出部12に排出する。こうして、プリントシーケンスが終了する。
【0075】
以上のように、表面プリント中にカッタ部6よりも上流側でジャムが発生したら、ジャムの影響がない下流側のシートを破棄せずに反転部9に巻き取って、巻き取ったシートのプリントを完成させる。これにより、シートやインクの無駄を少なくすることができる。また、また、手動のジャム回復処理前にシートを反転部9に巻き取ることで、ジャム回復処理の作業性を向上させることができる。
【0076】
(2−2−1)表面プリント中にカッタ部より下流でジャム
図10(c)に示すように、カッタ部6よりも下流側の経路でジャムが発生するケースを想定する。図中のグレーで示された部分がトラブル発生の領域であり、ユーザはこの領域内のシートを取り除いて破棄する必要がある。
【0077】
ステップS120では、カッタ部6より上流側に残されたシート(連続シート)を送り戻してシート供給部1に巻き戻す。巻き戻したシートの先端(プリント部4からカッタ部6までの長さに相当する範囲)には、シート先端側から順に、カッタ部6での切断で生じた不完全画像B(分断された画像B2)、正常にプリントされた画像(1または複数)、不完全画像Aが並んでいる。
【0078】
ステップS121では、ユーザが手作業で下流側のシートを取り除く手動のジャム回復処理を行なう。詳細は図7に説明したとおりである。
【0079】
ステップS122では、シート供給部1からシートをプリント部4に供給する。ステップS120でシートをいったんシート供給部1に送り戻して、ステップS122で再び送り出す理由は、上述のとおりである。ステップS120とステップS122は省略してもよい。
【0080】
ステップS123では破棄した画像(不完全画像Bの画像)から順に表面プリントを再開する。供給されるシートの先端には、カッタ部6での切断で生じた不完全画像B(分断された画像B2)、正常にプリントされた画像、不完全画像Aが順に並んでいる。これらの領域は空送りしてシートの未プリント部分から表面プリントを再開する。不完全画像Bと不完全画像Aの間の正常画像は生かす(再プリントしない)ようにしてもいいし、これを含めて不完全画像Aまでをまとめて切り捨てて、再度プリントするようにしてもよい。本例では生かすものとして説明する。
【0081】
ステップS124では、表面プリントが済んで反転部9で反転されたシートに対して裏面プリントする。裏面プリントにおいては、プリント済みの表面画像の裏面位置に表面画像に対応した画像を順にプリントしていく。表面には不完全画像A、Bがあるので、その領域は避けて裏面プリントを行なう。
【0082】
ステップS125では、プリントの済んだシートを個々の画像に応じた所定の単位長さ毎に切断する。不完全画像A,Bはその部分だけを切り落とす。ステップS126では、切り落とされた不完全画像A,Bをシート片をゴミとしてゴミ箱17に排出する。ステップS116では、正常にプリントされカットされたカットシートを1枚ずつ排出部12に排出する。こうして、プリントシーケンスが終了する。
【0083】
以上のように、表面プリント中にカッタ部6よりも下流側でジャムが発生したら、ジャムの影響がない上流側のシートをなるべく生かしてプリントを続行するので、シートやインクの無駄を少なくすることができる。
【0084】
(2−1−1)表面プリント中にカッタ部の上流および下流の両方でジャム
稀ではあるが、表面プリント中に上流および下流の両方で同時にジャムが発生する場合もある。その場合は、搬送経路にあるシートを再使用することが困難なので、装置内のシートはすべて廃棄する。
【0085】
ステップS130では、ユーザは手動のジャム回復処理を行ない、上流側および下流側に残されたシートすべてを手作業で取り除く。詳細は図7で説明したとおりである。
【0086】
ステップ131では、シート供給部1からプリント部4へシートを供給しなおす。ステップS132では、ジャム回復処理によって廃棄した画像から順に表面プリントする。ステップS133では、表面プリントが済んで反転部9で反転されたシートに対して裏面プリントする。裏面プリントにおいては、プリント済みの表面画像に対応した位置に対応した画像を順に裏面にプリントしていく。ステップS134では、プリントの済んだシートを個々の画像に応じた所定の単位長さ毎に切断する。ステップS166で、カットシートを1枚ずつ排出部12に排出する。こうして、プリントシーケンスが終了する。
【0087】
(2−2−1)裏面プリント中にカッタ部より上流でジャム
図11(a)は裏面プリント中のシートの搬送状態を示す。このとき、図11(b)に示すように、カッタ部6よりも上流側の経路でジャムが発生するケースを想定する。図中のグレーで示された部分がトラブル発生の領域であり、ユーザはこの領域内のシートを取り除いて破棄する必要がある。
【0088】
ステップS140では、カッタ部6より下流側に残されたシート(カットシート)を1枚ずつ情報記録部7、乾燥部8でそれぞれ処理した上で排出部12に排出させる。排出される個々シートは正常にプリントがなされた完成品である。ステップS141に移行する。
【0089】
ステップS141では、ユーザが手作業で上流側のシートを取り除く手動のジャム回復処理を行なう。詳細は図7で説明したとおりである。手動のジャム回復処理の前にトラブルの無い領域のシートが排出部12に排出されて搬送経路にはシートがないので、ユーザはより確実に手動のジャム回復処理を行なうことができる。なお、若干の作業性の低下が許容できるなら、ステップS140とステップS141の順番を逆にしてもよい。
【0090】
手動のジャム回復処理で搬送経路のシートは取り除かれるが、反転部9には残りのシートが巻き取られたままである。ユーザの作業によってシートの先端がどの画像であるかが分からないので、反転部9のシートはすべて廃棄する。ステップS142では、反転部9に巻き取られているシートを再び送り出してプリント部4を通過させ、カッタ部6まで搬送する。ステップS143では、反転部9から送られるシートすべてをカッタ部6で細かく裁断する。ステップS144では、裁断されたシート片をゴミとしてゴミ箱17に排出する。
【0091】
この後、再び表面から両面プリントを再開する。ステップS145では、シート供給部1からプリント部4にシートを供給する。ステップS146では、破棄した画像から順に表面プリントを繰り返す。ステップS147では、表面プリントが済んで反転部9で反転されたシートに対して裏面プリントする。裏面プリントにおいては、プリント済みの表面画像の裏面位置に表面画像に対応した画像を順にプリントしていく。ステップS148では、プリントの済んだシートを個々の画像に応じた所定の単位長さ毎に切断する。ステップS116では、正常にプリントされカットされたカットシートを1枚ずつ排出部12に排出する。こうして、プリントシーケンスが終了する。
【0092】
以上のように、裏面プリント中にカッタ部6よりも上流側でジャムが発生したら、ジャムの影響がない下流側のシートを破棄せずに完成品として排出部12に排出する。これにより、シートやインクの無駄を少なくすることができる。また、手動のジャム回復処理前にシートを排出することで、手動のジャム回復処理の作業性を向上させることができる。
【0093】
(2−2−2)裏面プリント中にカッタ部より下流でジャム
図11(c)に示すように、カッタ部6よりも下流側の経路でジャムが発生するケースを想定する。図中のグレーで示された部分がトラブル発生の領域であり、ユーザはこの領域内のシートを取り除いて破棄する必要がある。
【0094】
ステップS150では、カッタ部6よりも下流側に残されたシート(連続シート)を、図11(c)の矢印に示す方向に送り戻して反転部9に巻き取って収容する。この領域では表面プリントが正常に行なわているので、反転部9に巻き取ったシートは再使用することができる。
【0095】
ステップS151では、ユーザが手作業で上流側のシートを取り除く手動のジャム回復処理を行なう。詳細は図7に説明したとおりである。
【0096】
ステップS152では、反転部9に巻き取られているシートをプリント部4に供給する。シートは表裏反転して供給されるので、シートの第2面側がプリントヘッド14に対向する。ステップS150でシートをいったん反転部9に送り戻して、ステップS152で再び送り出す理由は、上述のとおりである。ステップS150とステップS152は省略してもよい。
【0097】
ステップS153では、表面プリントが済んだシートに対して裏面プリントする。裏面プリントにおいては、プリント済みの表面画像の裏面位置に表面画像に対応した画像を順にプリントしていく。シートの先端には不完全画像Bと、所定の距離をおいて不完全画像Aがあるので、その領域は避けて裏面プリントを行なう。
【0098】
ステップS154では、プリントの済んだシートを個々の画像に応じた所定の単位長さ毎に切断する。不完全画像A,Bはその部分だけを切り落とす。ステップS155では、切り落とされた不完全画像A,Bのシート片をゴミとしてゴミ箱17に排出する。ステップS116では、正常にプリントされカットされたカットシートを1枚ずつ排出部12に排出する。こうして、プリントシーケンスが終了する。なお、本シーケンスでは、完成した一連のカットシートから不完全画像A,Bの画像のシートが抜け落ちるので、次回の両面プリントのジョブに追加する。
【0099】
以上のように、裏面プリント中にカッタ部6よりも下流側でジャムが発生したら、ジャムの影響がない上流側のシートをなるべく生かしてプリントを続行するので、シートやインクの無駄を少なくすることができる。また、手動のジャム回復処理前にシートを反転部9に送り戻すことで、ジャム回復処理の作業性を向上させることができる。
【0100】
(2−2−3)裏面プリント中にカッタ部の上流および下流の両方でジャム
稀ではあるが、裏面プリント中に上流および下流の両方で同時にジャムが発生する場合もある。その場合は、搬送経路にあるシートを再使用することが困難なので、装置内のシートはすべて廃棄する。ステップS160〜ステップS164までの処理は、上述したステップ130〜ステップS134までの処理と同じであるので、重複の説明は省略する。
【0101】
表1に、ジャム発生した後の初期動作を整理して示す。
【0102】
【表1】
【0103】
以上のように、ジャムの発生が検知されたら、カッタ部でシートを切断して、ジャムの発生箇所に応じた手動のジャム回復処理をユーザに促すものである。カッタ部でシートを分断することで、ジャムの発生箇所を含むトラブルが発生した領域と、それ以外のトラブルの発生していない領域に分けられる。ユーザはトラブルが発生した領域に作業を集中することができ、少ない手間と時間で効率的にジャム回復処理を行なうことできる。また、トラブルの発生してない領域のシートは廃棄せずに使用することができ、シートやインクの無駄を少なくすることができる。
【符号の説明】
【0104】
1 シート供給部
2 デカール部
3 斜行矯正部
4 プリント部
5 検査部
6 カッタ部
7 情報記録部
8 乾燥部
9 反転部
10 排出搬送部
11 ソータ部
12 排出トレイ
13 制御部
14 プリントヘッド
15 操作部
16 ホスト機器
17 ゴミ箱
18 手動カッタ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
連続したシートを保持して供給するためのシート供給部と、
前記シート供給部から供給されるシートにプリントを行なうプリント部と、
前記プリント部でプリントされたシートを切断するカッタ部と、
前記シートが搬送される際のジャムの発生を検知する検知手段と、
前記検知手段でジャムの発生が検知されたら、前記カッタ部でシートを切断して、ジャムの発生箇所に応じた手動のジャム回復処理をユーザに促すように制御する制御部と、
を有することを特徴とするプリント装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記ジャムの発生が検知されたら、前記ジャムの発生箇所を表示器に表示させて、前記発生箇所のジャム回復処理をユーザに促すように制御することを特徴とする、請求項1記載のプリント装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記ジャムが前記カッタ部よりも上流側で発生し且つ下流側では発生していないと検知されたら、前記カッタ部で切断されて下流側に残されたシートを排出するように制御することを特徴とする、請求項1または2に記載のプリント装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記ジャムが前記カッタ部よりも下流側で発生し且つ上流側では発生していないと検知されたら、前記カッタ部で切断されて上流側に残されたシートを前記シート供給部に送り戻すように制御することを特徴とする、請求項3に記載のプリント装置。
【請求項5】
両面プリントを行なうことが可能なプリント装置であって、
連続したシートを保持して供給するためのシート供給部と、
前記シート供給部から供給されるシートにプリントを行なうプリント部と、
前記プリント部でプリントされたシートを切断するカッタ部と、
前記シートが搬送される際のジャムの発生を検知する検知手段と、
前記プリント部でプリントされたシートを巻き取ってシートの表裏を反転させる反転部と、
前記両面プリントにおいては、前記シート供給部から供給されたシートは前記プリント部で第1面にプリントが行なわれて前記反転部に巻き取られ、次いで、前記反転部から送り出されたシートは再び前記プリント部で前記第1面の背面側の第2面にプリントが行なわれるように制御する制御部と
を有し、
前記制御部は、少なくとも前記第1面にプリント中に前記検知手段でジャムの発生が検知されたら、前記カッタ部でシートを切断して、ジャムの発生箇所に応じた手動のジャム回復処理をユーザに促すように制御することを特徴とするプリント装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記ジャムの発生が検知されたら、前記ジャムの発生箇所を表示器に表示させて、前記発生箇所のジャム回復処理をユーザに促すように制御することを特徴とする、請求項5記載のプリント装置。
【請求項7】
前記制御部は、前記両面プリントにおいて、
前記第1面にプリント中に前記ジャムが前記カッタ部よりも上流側で発生し且つ下流側では発生していないと判断されたら、前記下流側に残されたシートを前記反転部に送って収容し、
前記第2面にプリント中に前記ジャムが前記カッタ部よりも上流側で発生し且つ下流側では発生していないと判断されたら、前記下流側に残されたシートを排出するように制御することを特徴とする、請求項5または6に記載のプリント装置。
【請求項8】
前記制御部は、前記両面プリントにおいて、
前記第1面にプリント中に前記ジャムが前記カッタ部よりも下流側で発生し且つ上流側では発生していないと判断されたら、前記上流側に残されたシートを前記シート供給部に送り戻し、
前記第2面にプリント中に前記ジャムが前記カッタ部よりも下流側で発生し且つ上流側では発生していないと判断されたら、前記上流側に残されたシートを前記反転部に送り戻す、ように制御することを特徴とする、請求項7記載のプリント装置。
【請求項9】
前記カッタ部とは別に、ユーザが手動でシートをカットするための手動カッタが少なくとも1箇所に設けられていることを特徴とする、請求項1から8のいずれかに記載のプリント装置。
【請求項10】
前記手動カッタは、前記カッタ部の上流側および下流側にそれぞれ設けられていることを特徴とする、請求項9記載のプリント装置。
【請求項11】
前記制御部は、シートに複数の画像を順次プリントし、前記手動のジャム回復処理がなされた後に、ジャム回復処理で破棄した画像からプリントを再開するように制御することを特徴とする、請求項1から10のいずれかに記載のプリント装置。
【請求項12】
前記制御部は、前記ジャムの発生に伴なって前記カッタ部でプリント済みの画像を切断することで生じる不完全画像を、前記カッタによって切り落してゴミとして排出するよう制御することを特徴とする、請求項1から11のいずれかに記載のプリント装置。
【請求項13】
プリント装置におけるジャム回復方法であって、
連続したシートを保持するシート供給部からシートを供給する;
前記シート供給部から供給されるシートにプリントを行なう;
プリントされたシートをカッタ部で切断する;
カットされたシートを排出部に排出する;
前記シートが搬送される際のジャムの発生を検知する;
前記ジャムが前記カッタ部よりも上流側で発生したと判断されたら、前記カッタ部で切断されて前記カッタ部よりも下流側に残されたシートを前記排出部に送って排出する、
ことを特徴とするプリント装置におけるジャム回復方法。
【請求項14】
前記ジャムが前記カッタ部よりも下流側で発生したと判断されたら、前記カッタ部で切断されて前記上流側に残されたシートを前記シート供給部に送り戻すことを特徴とする、請求項13記載のジャム回復方法。
【請求項15】
前記ジャムが前記上流側および前記下流側の両方で発生したと判断されたら、前記カッタ部で切断されたシートの搬送は行なわずに、前記ジャムが発生した箇所を表示器に表示させて手動のジャム回復処理をユーザに促すことを特徴とする、請求項13または14に記載のジャム回復方法。
【請求項1】
連続したシートを保持して供給するためのシート供給部と、
前記シート供給部から供給されるシートにプリントを行なうプリント部と、
前記プリント部でプリントされたシートを切断するカッタ部と、
前記シートが搬送される際のジャムの発生を検知する検知手段と、
前記検知手段でジャムの発生が検知されたら、前記カッタ部でシートを切断して、ジャムの発生箇所に応じた手動のジャム回復処理をユーザに促すように制御する制御部と、
を有することを特徴とするプリント装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記ジャムの発生が検知されたら、前記ジャムの発生箇所を表示器に表示させて、前記発生箇所のジャム回復処理をユーザに促すように制御することを特徴とする、請求項1記載のプリント装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記ジャムが前記カッタ部よりも上流側で発生し且つ下流側では発生していないと検知されたら、前記カッタ部で切断されて下流側に残されたシートを排出するように制御することを特徴とする、請求項1または2に記載のプリント装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記ジャムが前記カッタ部よりも下流側で発生し且つ上流側では発生していないと検知されたら、前記カッタ部で切断されて上流側に残されたシートを前記シート供給部に送り戻すように制御することを特徴とする、請求項3に記載のプリント装置。
【請求項5】
両面プリントを行なうことが可能なプリント装置であって、
連続したシートを保持して供給するためのシート供給部と、
前記シート供給部から供給されるシートにプリントを行なうプリント部と、
前記プリント部でプリントされたシートを切断するカッタ部と、
前記シートが搬送される際のジャムの発生を検知する検知手段と、
前記プリント部でプリントされたシートを巻き取ってシートの表裏を反転させる反転部と、
前記両面プリントにおいては、前記シート供給部から供給されたシートは前記プリント部で第1面にプリントが行なわれて前記反転部に巻き取られ、次いで、前記反転部から送り出されたシートは再び前記プリント部で前記第1面の背面側の第2面にプリントが行なわれるように制御する制御部と
を有し、
前記制御部は、少なくとも前記第1面にプリント中に前記検知手段でジャムの発生が検知されたら、前記カッタ部でシートを切断して、ジャムの発生箇所に応じた手動のジャム回復処理をユーザに促すように制御することを特徴とするプリント装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記ジャムの発生が検知されたら、前記ジャムの発生箇所を表示器に表示させて、前記発生箇所のジャム回復処理をユーザに促すように制御することを特徴とする、請求項5記載のプリント装置。
【請求項7】
前記制御部は、前記両面プリントにおいて、
前記第1面にプリント中に前記ジャムが前記カッタ部よりも上流側で発生し且つ下流側では発生していないと判断されたら、前記下流側に残されたシートを前記反転部に送って収容し、
前記第2面にプリント中に前記ジャムが前記カッタ部よりも上流側で発生し且つ下流側では発生していないと判断されたら、前記下流側に残されたシートを排出するように制御することを特徴とする、請求項5または6に記載のプリント装置。
【請求項8】
前記制御部は、前記両面プリントにおいて、
前記第1面にプリント中に前記ジャムが前記カッタ部よりも下流側で発生し且つ上流側では発生していないと判断されたら、前記上流側に残されたシートを前記シート供給部に送り戻し、
前記第2面にプリント中に前記ジャムが前記カッタ部よりも下流側で発生し且つ上流側では発生していないと判断されたら、前記上流側に残されたシートを前記反転部に送り戻す、ように制御することを特徴とする、請求項7記載のプリント装置。
【請求項9】
前記カッタ部とは別に、ユーザが手動でシートをカットするための手動カッタが少なくとも1箇所に設けられていることを特徴とする、請求項1から8のいずれかに記載のプリント装置。
【請求項10】
前記手動カッタは、前記カッタ部の上流側および下流側にそれぞれ設けられていることを特徴とする、請求項9記載のプリント装置。
【請求項11】
前記制御部は、シートに複数の画像を順次プリントし、前記手動のジャム回復処理がなされた後に、ジャム回復処理で破棄した画像からプリントを再開するように制御することを特徴とする、請求項1から10のいずれかに記載のプリント装置。
【請求項12】
前記制御部は、前記ジャムの発生に伴なって前記カッタ部でプリント済みの画像を切断することで生じる不完全画像を、前記カッタによって切り落してゴミとして排出するよう制御することを特徴とする、請求項1から11のいずれかに記載のプリント装置。
【請求項13】
プリント装置におけるジャム回復方法であって、
連続したシートを保持するシート供給部からシートを供給する;
前記シート供給部から供給されるシートにプリントを行なう;
プリントされたシートをカッタ部で切断する;
カットされたシートを排出部に排出する;
前記シートが搬送される際のジャムの発生を検知する;
前記ジャムが前記カッタ部よりも上流側で発生したと判断されたら、前記カッタ部で切断されて前記カッタ部よりも下流側に残されたシートを前記排出部に送って排出する、
ことを特徴とするプリント装置におけるジャム回復方法。
【請求項14】
前記ジャムが前記カッタ部よりも下流側で発生したと判断されたら、前記カッタ部で切断されて前記上流側に残されたシートを前記シート供給部に送り戻すことを特徴とする、請求項13記載のジャム回復方法。
【請求項15】
前記ジャムが前記上流側および前記下流側の両方で発生したと判断されたら、前記カッタ部で切断されたシートの搬送は行なわずに、前記ジャムが発生した箇所を表示器に表示させて手動のジャム回復処理をユーザに促すことを特徴とする、請求項13または14に記載のジャム回復方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2011−177948(P2011−177948A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−42344(P2010−42344)
【出願日】平成22年2月26日(2010.2.26)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年2月26日(2010.2.26)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
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