説明

プリント配線基板装置の製造方法

【課題】スルーホールの開口縁部に塗布したクリームハンダでスルーホールが塞がれないようにする。
【解決手段】硬化工程において、スルーホール12の開口縁部12A上で周方向に離れて位置する複数の検査用接触部22が形成する。これにより、スルーホール12の開口縁部12A上で周方向に沿ってその全周に検査用接触部22を形成する場合に比べ、スルーホール12の開口縁部12Aに対するクリームハンダ14の塗布量が相対的に少ないので、クリームハンダ14が、スルーホール12内に入りこみにくく、スルーホール12の開口縁部12Aに塗布したクリームハンダ14でスルーホール12が塞がれにくい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリント配線基板装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載の生産システムでは、ハンダ付けロボットによりプリント基板上に電子部品をハンダ付けし、サーキットチェック装置によりプリント基板の電気特性を検査した後、ROMライタによりプリント基板上のフラッシュROMに所定のデータを書き込み、ファンクションテスト装置により最終的な機能検査を行う。
【0003】
そして、これらの処理工程を行うための各設備は、同じ作業員Aが作業可能な程度に近接して配置されている。作業員は、ファンクションテスト装置が処理している間に、ハンダ付けロボットによるハンダ付け処理、サーキットチェック及びデータ書込処理を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−282045号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、スルーホールの開口縁部に塗布したクリームハンダでスルーホールが塞がれないようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1の発明は、両面を貫通して導通させるスルーホールを有するプリント配線基板の少なくとも一方の面に位置した前記スルーホールの開口縁部に対して前記スルーホールの周方向に離してクリームハンダを複数塗布すると共に、前記プリント配線基板の少なくとも一方の面に配置されたパッドに前記クリームハンダを塗布するクリームハンダ塗布工程と、前記パッドに塗布された前記クリームハンダ上に表面実装電子部品を載せる表面実装電子部品実装工程と、前記パッドに塗布された前記クリームハンダを硬化させて、前記表面実装電子部品を前記プリント配線基板に取り付けると共に、前記スルーホールの前記開口縁部に塗布された前記クリームハンダを硬化させて、前記スルーホールの前記開口縁部上で周方向に離れて位置する複数の検査用接触部を形成する硬化工程と、電気回路検査用の検査ピンを前記検査用接触部に当て、前記プリント配線基板の検査をする検査工程と、前記検査工程の後に、前記スルーホールに挿入するリード線が設けられたリード線付電子部品の前記リード線を前記スルーホールに挿入するリード線付電子部品実装工程と、少なくとも前記スルーホールに挿入された前記リード線付電子部品の前記リード線および前記検査用接触部にフラックスを塗布するフラックス塗布工程と、前記リード線付電子部品の前記リード線と前記スルーホールとをハンダ付けするハンダ付け工程と、を含むプリント配線基板装置の製造方法である。
【0007】
請求項2の発明は、前記クリームハンダ塗布工程は、複数の前記クリームハンダの全てについて、前記クリームハンダの一部が前記開口縁部から前記スルーホールの円中心側にはみ出すように塗布する請求項1に記載のプリント配線基板装置の製造方法である。
【0008】
請求項3の発明は、前記検査工程における前記検査ピンは、前記スルーホールの周方向へ等間隔に配置された複数の接触部を有し、前記硬化工程における前記検査用接触部は、前記スルーホールの周方向へ等間隔に円弧状に複数形成され、前記スルーホールの円中心における前記検査用接触部の中心角をα、前記検査ピンの接触部の数をN、前記検査用接触部の数をLとしたとき、α>|2π{(N−L)/NL}|但し、N≠Lを満たす請求項1又は2に記載のプリント配線基板装置の製造方法である。
【発明の効果】
【0009】
本発明の請求項1の製造方法によれば、スルーホールの開口縁部上で周方向に沿ってその全周に検査用接触部を形成する場合に比べ、スルーホールの開口縁部に塗布したクリームハンダでスルーホールが塞がれないようにすることができる。
【0010】
本発明の請求項2の製造方法によれば、硬化工程において、スルーホールの開口縁部と内周壁との境界部分に検査用接触部を形成できる。
【0011】
本発明の請求項3の製造方法によれば、検査ピンの複数の接触部のうち少なくとも1つを検査用接触部に接触させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】第1実施形態に係る各工程を示した工程図である。
【図2】第1実施形態に係るクリームハンダ塗布工程を示した斜視図である。
【図3】(A)は、第1実施形態に係るクリームハンダ塗布工程を示した平面図である。(B)は、(A)のB−B線断面図である。
【図4】第1実施形態に係る表面実装電子部品実装工程を示した斜視図である。
【図5】第1実施形態に係る硬化工程を示した側面図である。
【図6】第1実施形態に係る検査用接触部の構成を示した平面図及び断面図である。
【図7】第1実施形態に係る電子回路の検査工程を示した斜視図である。
【図8】第1実施形態に係る電子回路の検査工程を示した断面図である。
【図9】第1実施形態に係るリード線付電子部品実装工程を示した斜視図である。
【図10】第1実施形態に係るハンダ付け工程を示した側面図である。
【図11】第1実施形態に係る製造方法により製造されたプリント配線基板装置を示した斜視図である。
【図12】第2実施形態に係る電子回路の検査工程に用いられるプローブの形状を示した斜視図である。
【図13】第2実施形態に係る検査用接触部の構成を示した平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の実施形態に係るプリント配線基板装置の製造方法の一例について図面に基づき説明する。
【0014】
<第1実施形態>
〔第1実施形態に係る製造方法によって製造されるプリント配線基板装置の全体構成〕
図11に示されるように、第1実施形態に係る製造方法によって製造されるプリント配線基板装置50は、プリント配線基板10と、このプリント配線基板10の表面10Aに実装される表面実装電子部品20と、このプリント配線基板10の裏面10Bに実装されるリード線付電子部品34と、を備えて構成されている。
【0015】
リード線付電子部品34が実装(挿入されハンダ付け)されるプリント配線基板10のスルーホール12は、図3(B)に示されるように、プリント配線基板10をその厚み方向へ貫通する円筒部12Bと、円筒部12Bの軸方向端部から円筒部12Bの径方向外側へ張り出してプリント配線基板10の表面10A及び裏面10Bに露出する鍔部12Cと、を備えている。本実施形態では、この鍔部12C及び円筒部12Bの軸方向端部によって、スルーホール12の開口縁部12Aが構成されている。
【0016】
なお、各図において、パッド16、スルーホール12及びクリームハンダ14等は、理解を容易にするため、誇張して図示されている。
【0017】
〔第1実施形態に係るプリント配線基板装置の製造方法〕
(クリームハンダ塗布工程)
先ず、図1及び図2(A)(B)に示されるように、工程100は、クリームハンダ塗布工程とされている。そして、この工程100では、両面を貫通して導通させるスルーホール12を備えたプリント配線基板10の表面10Aに位置したスルーホール12の開口縁部12Aに対して、スルーホール12の周方向に離してクリームハンダ14を複数塗布する。別言すると、複数のクリームハンダ14は、互いに接触することが無いようにスルーホール12の開口縁部12Aに塗布される。
【0018】
具体的には、図3(A)に示されるように、複数のクリームハンダ14の全てについて、クリームハンダ14の一部を、開口縁部12Aからスルーホール12の孔部分側(円筒部12Bの中心軸側)へはみ出すように塗布する。なお、図3(B)に示されるように、クリームハンダ14の当該一部は、その表面張力によって、下方へ垂れることなく、水平方向に沿ってスルーホール12の孔部分側へ張り出し(はみ出し)ている。本実施形態では、図3(A)に示されるように、各クリームハンダ14は、例えば、平面視にて円形状とされ、スルーホール12の周方向に等間隔で5つが塗布されている。本実施形態では、前記円形状の半径をRとした場合に、はみ出し量をR/4以上R/2以下としている。なお、クリームハンダ14の形状、個数、間隔については、上記の構成に限られず、他の構成であってもよい。
【0019】
さらに、プリント配線基板10の表面10Aに配置された矩形状のハンダ付け用のパッド16にクリームハンダ14を塗布する。スルーホール12の開口縁部12A及びパッド16へのクリームハンダ14の塗布は、詳細には、孔が開けられたマスク(図示省略)を用いてスクリーン印刷よって行われる。
【0020】
(ハンダ印刷自動検査工程)
次に、図1に示されるように、工程100の後工程である工程200は、ハンダ印刷自動検査工程とされており、図示せぬカメラを用いてクリームハンダ14が規定どおりに塗布されているかを検査する。なお、ハンダ印刷自動検査工程は、省略してもよい。
【0021】
(表面実装電子部品実装工程)
次に、図1及び図4(A)(B)に示されるように、工程200の後工程である工程300は、表面実装電子部品実装工程とされており、工程100でパッド16に塗布されたクリームハンダ14上に表面実装電子部品20を置く(プリント配線基板10上に表面実装電子部品20を置く)。
【0022】
詳細には、トランジスタ、ダイオード、抵抗、コンデンサ等の表面実装電子部品20のリード端子20Aまたは電極をパッド16に塗布されたクリームハンダ14上に載せる。
【0023】
(電子部品自動検査工程)
次に、図1に示されるように、工程300の後工程である工程400は電子部品自動検査工程とされており、図示せぬカメラを用いて表面実装電子部品20が規定どおりに載せられているかを検査する。なお、電子部品自動検査工程は、省略してもよい。
【0024】
(硬化工程)
次に、図1及び図5(A)(B)に示されるように、工程400の後工程である工程500は、クリームハンダ14を加熱冷却して硬化させる硬化工程とされており、工程100でパッド16に塗布されたクリームハンダ14を加熱冷却し硬化させて、工程300でパッド16のクリームハンダ14上に載せた表面実装電子部品20をプリント配線基板10に取り付ける。
【0025】
また、スルーホール12の開口縁部12Aに塗布されたクリームハンダ14を加熱冷却して硬化させ、図6(A)に示されるように、スルーホール12の開口縁部12A上で周方向に離れて位置する複数の検査用接触部22を形成する。
【0026】
硬化工程500では、図5(A)(B)に示されるように、表面実装電子部品20が載せられたプリント配線基板10の両端を支持したコンベア(図示省略)で一対のヒータの間を搬送して、熱風をプリント配線基板10に吹きかけてクリームハンダ14を溶融させる。さらに、ヒータ26間を通過したプリント配線基板10に冷風を吹きかけてクリームハンダ14を硬化させる。つまり、リフローハンダ付けによって、表面実装電子部品20をプリント配線基板10に取り付ける。
【0027】
本実施形態では、具体的には、図6(A)に示されるように、検査用接触部22は、スルーホール12の周方向へ等間隔に5つ形成されている。なお、クリームハンダ14は、加熱により、開口縁部12A上で円弧状(おうぎ状)濡れ広がるが、それぞれが、スルーホール12の周方向に離れた状態を維持するように、クリームハンダ塗布工程におけるクリームハンダ14の塗布量及び塗布位置が設定されている。
【0028】
また、スルーホール12の孔部分側へ張り出すように塗布された複数のクリームハンダ14の張り出し部分(円筒部12Bに突出した部分)は、図6(B)に示されるように、加熱により、スルーホール12の円筒部12Bの内周壁の一端部に濡れ広がるようになっている。これにより、スルーホール12の開口縁部12Aと円筒部12Bの内周壁との境界部分(エッジ部)に対して、検査用接触部22が形成される。なお、本実施形態では、当該複数のクリームハンダ14の張り出し部分は、加熱された後、図7(A)及び図6(A)に示されるように、それぞれが、スルーホール12の円筒部12Bの内周壁の一端部のに薄く濡れ広がり、スルーホール12の周方向につながっている。クリームハンダ14の張り出し部分の量は開口縁部上のクリームハンダ14の量と比較して非常に少なく、かつ、円筒部12Bの内周壁の一端部においてクリームハンダ14が周方向につながるため、内周壁の一端部で硬化したクリームハンダ14の厚さは非常に薄い。このため、スルーホール12の円筒部12Bへのリード線付電子部品のリードの挿入(後述)への影響はほとんどない。
【0029】
なお、クリームハンダ14の張り出し部分は、加熱された後、周方向に離れた状態を維持したまま、スルーホール12の円筒部12Bの内周壁の一端部に濡れ広がるようになっていてもよい。また、スルーホール12の円筒部12Bの内周壁におけるクリームハンダ14の張り出し部分の濡れ広がりは、クリームハンダ14の張り出す量や、ヒータの間を搬送されるプリント配線基板10の向き(姿勢)等により調整される。
【0030】
(ハンダ付け外観検査工程)
次に、図1に示されるように、工程500の後工程である工程600は、ハンダ付け外観検査工程とされており、工程500で硬化されたクリームハンダ14の外観(ハンダの状態等)を目視、カメラ等で検査する。なお、ハンダ付け外観検査工程は、省略してもよい。
【0031】
(電気回路の検査工程:FCT)
次に、図1、図7(A)(B)に示されるように、工程600の後工程である工程700は、電気回路の検査工程(FCT:ファンクション検査工程)である。そして、工程500でプリント配線基板10に取り付けられた表面実装電子部品20がプリント配線基板10上で正常に機能しているか否かを検査ピンの一例としてのプローブピン28を用いて検査する。
【0032】
詳細には、図8に示されるように、プローブピン28は、先端が円錐状とされており、このプローブピン28の先端を、未だリード線等が挿入されていないスルーホール12に挿入する。そして、プローブピン28の先端側に形成された円錐面28Aをスルーホール12の開口縁部12Aに形成された検査用接触部22(特に前記エッジ部)に当てる。さらに、プリント配線基板10に電源を入れて、各表面実装電子部品20が機能しているかをプローブピン28によって検出された電圧等によって検査する。
【0033】
なお、クリームハンダ14にも、金属表面の酸化物を遊離させる絶縁体であるフラックスが、ハンダ付け性を向上させる目的で混入されているが、クリームハンダ14に混入されたフラックスは微量であるため、プローブピン28と検査用接触部22との電気的接触が阻害されることはない。
【0034】
また、本実施形態では、プローブピン28が円錐状とされており、検査用接触部22がスルーホール12の開口縁部12A上で周方向に離れて位置していても、プローブピン28は、スルーホール12の開口縁部12Aの全周において検査用接触部22に対して接触可能とされている。また、プローブピン28としては、円錐状のものに限られず、スルーホール12の周方向の全周において検査用接触部22に対して接触可能なものであればよい。
【0035】
(リード線付電子部品実装工程)
次に、図1、図9(A)(B)に示されるように、工程700の後工程である工程800は、リード線付電子部品実装工程とされている。そして、この工程800では、コネクタ等のリード線付電子部品34に設けられたリード線34Aをプリント配線基板10の裏面10Bからスルーホール12に挿入する。
【0036】
なお、プリント配線基板10の表裏を反転させ、プリント配線基板10の裏面10Bを上方に向けてからリード線付電子部品34をプリント配線基板10に挿入すると、リード線付電子部品34の落下が防止される。
【0037】
(フラックス塗布工程)
次に、図1に示されるように、工程800の後工程である工程900は、プリント配線基板に金属表面の酸化物を遊離させる絶縁体であるフラックスを塗布する。
【0038】
詳細には、フラクサー装置(フラックス塗布装置)を用いてプリント配線基板10の表面10Aからスルーホール12に挿入されたリード線付電子部品34のリード線34A及び検査用接触部22に霧状、泡状等のフラックス(図示省略)を塗布する。
【0039】
(ハンダ付け工程)
次に、図1、図10(A)(B)に示されるように、工程900の後工程である工程1000では、工程800でプリント配線基板10に挿入されたリード線付電子部品34のリード線34Aとスルーホール12とをハンダ付けする。
【0040】
詳細には、プリント配線基板10の表裏を反転させてプリント配線基板10の裏面10Bを上方に向ける。さらに、プリント配線基板10を支持したハンダ付けパレット36を図示せぬコンベアを用いて溶融ハンダが噴流するフローハンダ槽38の上方を横切るように搬送する。フローハンダ槽38には、フローハンダ槽38内の溶融ハンダを鉛直方向上方に向けて噴射(噴流)するノズル40が搬送されるハンダ付けパレット36の幅方向(図10に示す紙面奥行方向(紙面厚さ方向))に亘って設けられている。
【0041】
そして、ハンダ付けパレット36がノズル40の鉛直方向上方を横切る際に、ハンダ付けパレット36の開口部36Aを通してノズル40から噴射された溶融ハンダがプリント配線基板10の表面10Aに付着する。これにより、図10(B)に示されるように、リード線付電子部品34のリード線34Aと、プリント配線基板10のスルーホール12とをハンダ付けする。
【0042】
(ハンダ付け外観検査工程)
次に、図1に示されるように、工程1000の後工程である工程1100は、ハンダ付け外観検査工程とされており、工程1000でハンダ付けされた部位の外観(ハンダの付着具合等)を目視、カメラ等で検査する。なお、ハンダ付け外観検査工程は、省略してもよい。
【0043】
(後付部品組立工程)
次に、図1に示されるように、工程1100の後工程である工程1200は、後付部品組立工程とされており、ヒートシンク等の後付部品(図示省略)をプリント配線基板10にハンダ付け、ネジ締め等で取り付ける。なお、後付部品組立工程は、省略してもよい。
【0044】
(電気回路の検査工程:ICT)
次に、図1に示されるように、工程1200の後工程である工程1300は、電気回路の検査工程(ICT:インサーキット検査工程)とされている。そして、工程500でプリント配線基板10に取り付けられた表面実装電子部品20及び工程1000でプリント配線基板10にハンダ付けされたリード線付電子部品34が、予め定められた位置に配置されているかをプリント配線基板10に電源を入れることなく抵抗等を用いて検査する。なお、インサーキット検査工程は、省略してもよい。
【0045】
(最終外観検査)
次に、図1、図11に示されるように、工程1300の後工程である工程1400は、最終外観検査とされており、プリント配線基板10に表面実装電子部品20、リード線付電子部品34及び後付部品が取り付けられたプリント配線基板装置50の外観損傷を目視、カメラ等で検査する。なお、最終外観検査は、省略してもよい。
【0046】
〔第1実施形態の作用〕
以上説明したように、第1実施形態に係るプリント配線基板装置の製造方法によれば、硬化工程500において、スルーホール12の開口縁部12A上で周方向に離れて位置する複数の検査用接触部22が形成されるので、スルーホール12の開口縁部12A上で周方向に沿ってその全周に検査用接触部22を形成する場合に比べ、スルーホール12の開口縁部12Aに対するクリームハンダ14の塗布量が相対的に少ない。
【0047】
これにより、クリームハンダ14中のフラックスが、硬化工程500における加熱により、クリームハンダ14から分離しても、スルーホール12内に入りこみにくく、当該フラックスでスルーホール12が塞がれにくい。また、クリームハンダ14自体が、硬化工程500における加熱により濡れ広がっても、スルーホール12内に入りこみにくく、スルーホール12の開口縁部12Aに塗布したクリームハンダ14自体でスルーホール12が塞がれにくい。
【0048】
このように、クリームハンダ14自体やクリームハンダ14中のフラックスでスルーホール12が塞がれにくいので、プローブピン28の導通不良や、リード線付電子部品34のリード線34Aをスルーホール12へ挿入できなくなる事態が生じにくい。
【0049】
また、本製造方法によれば、クリームハンダ塗布工程100において、クリームハンダ14の一部が開口縁部12Aからスルーホール12の孔部分側へはみ出すように塗布されるので、硬化工程500において、スルーホール12の開口縁部12Aと円筒部12Bの内周壁との境界部分(エッジ部)に対して、検査用接触部22が形成される。これにより、クリームハンダ14の一部が開口縁部12Aからスルーホール12の孔部分側へはみ出さない場合に比べ、プローブピン28と検査用接触部22との接触が良好となる。
【0050】
<第2実施形態>
次に、第2実施形態について説明する。
【0051】
なお、本第2実施形態では、第1実施形態との相違点のみを説明し、第1実施形態と同一の工程及び同一の部分について、同一の符号を付す等して説明を省略する。
【0052】
第1実施形態に係る製造方法では、電気回路の検査工程700において、先端が円錐状とされたプローブピン28を用いたが、第2実施形態に係る製造方法では、図12(A)(B)に示されるように、電気回路の検査工程700におけるプローブピン28は、スルーホール12の周方向へ等間隔に配置された複数の接触部29を有している。このプローブピン28としては、図12(A)に示されるように、例えば、先端が角錐状とされたプローブピン28が用いられる。
【0053】
図12(A)に示されるプローブピン28は、具体的には、正四角錐状とされており、検査用接触部22に接触させるための接触部29をスルーホール12の周方向へ等間隔に4つ有している。
【0054】
なお、プローブピン28としては、正三角形又は、正五角形以上の角を有する多角形の角錐状で構成されたものであってもよい。また、先端側から見て星型であって、側面視にて先細りのテーパ状をしたプローブピン28であってもよい。さらに、図12(B)に示されるように、先端がクラウン状とされたプローブピン28であってもよい。すなわち、プローブピン28としては、スルーホール12の周方向へ等間隔に配置された複数の接触部29を有しているものであればよい。なお、角錐状及び星型のプローブピン28では、先端にいくにつれて外側から軸中心へ傾斜する稜線部分(接触部29)が、スルーホール12の開口縁部12Aと円筒部12Bの内周壁との境界部分(エッジ部)又は、その境界部分に形成された検査用接触部22に対して接触するようになっている。
また、クラウン状のプローブピン28では、先端へ突出する凸部(接触部29)が、スルーホール12の開口縁部12A上、又は、その開口縁部12A上に形成された検査用接触部22に対して接触するようになっている。
【0055】
このように、プローブピン28が、スルーホール12の周方向へ等間隔に配置された複数の接触部29を有する場合では、スルーホール12の周方向の全周において検査用接触部22に対して接触可能な円錐状のプローブピン28と異なり、プローブピン28と検査用接触部22とが接触しない条件が存在する。
【0056】
なお、一般的なプリント配線基板10のスルーホール12の開口縁部12Aには、ハンダ付け性を向上させる目的で微量のフラックスが予め塗布されているため、プローブピン28の接触部29の全部が、検査用接触部22に接触せず、スルーホール12の開口縁部12Aにのみ接触する場合では、導通不良となる場合がある。また、プローブピン28の接触部29の全部が、検査用接触部22と接触せず、スルーホール12の開口縁部12Aにのみ接触する場合では、一般的なプローブピン28はバネ等の弾性体により弾性力を付与されているため、スルーホール12の開口縁部12Aへの負荷が大きくなり、スルーホール12が損傷する恐れがある。このため、プローブピン28の複数の接触部29のうちの少なくとも1つが、検査用接触部22に接触する必要がある。プローブピン28の複数の接触部29のうちの少なくとも1つが検査用接触部22に接触すれば、前記微量のフラックスにより阻害されることなく、スルーホール12との電気的導通が図られる。また、前記弾性力の多くを検査用接触部22が受けて検査用接触部22が変形するので、スルーホール12が損傷する恐れはない。
【0057】
そこで、第2実施形態では、プローブピン28の複数の接触部29のうちの少なくとも1つが、検査用接触部22に接触する接触条件の一般解を以下のように求め、検査用接触部22の形成範囲(形成角度)を規定する。
【0058】
スルーホール12の円中心における検査用接触部22の中心角(rad)をα、隣接する検査用接触部22の間の中心角(rad)をβ、プローブピン28の接触部29の数をN、検査用接触部22の数をLとしたとき、検査用接触部22に対し、プローブピン28の接触部29の少なくとも1つが必ず検査用接触部22に接触できるようにするための条件N,Lは、下記の通りである。
【0059】
なお、ここでは、硬化工程500における検査用接触部22は、スルーホール12の周方向へ等間隔に円弧状にL個形成されるものとする。また、接触部29をN個有するプローブピン28として、正N角形の角錐状のプローブピン28を採用するものとする。
【0060】
プローブピン28の接触部29の少なくとも1つが検査用接触部22と接触するには、図13に示されるように、プローブピン28のある接触部29A(二点鎖線29A)と、その接触部29Aに隣接する接触部29B(二点鎖線29B)との両方が、隣接する検査用接触部22の間の範囲(βの範囲)に入らないことが必要である。
【0061】
つまり、隣接する検査用接触部22の間の中心角β(スルーホール12の開口縁部12Aが見える角度)と、プローブピン28が成す正N角形の内角と、が等しくなることが境界条件である。すなわち、境界条件は、(2π−Lα)/L=2π/Nとなる。
【0062】
従って、α=|2π{(n−L)/NL}|(N,Lは整数)となる。但し、α≠0、N≠0、L≠0、であることから、N≠Lとなる。
【0063】
以上から、検査用接触部22の中心角αが以下の条件を満たすように、検査用接触部22を形成すれば、プローブピン28の複数の接触部29のうちの少なくとも1つが、検査用接触部22に接触するようになる。
【0064】
α>|2π{(N−L)/NL}|
但し、N≠L
【0065】
なお、このとき、β=|(2π−Lα)/L|となる。
【0066】
例えば、検査用接触部22を4つ(L=4)形成した場合において、プローブピン28として三角錐(N=3)を選択した場合は、α>π/6(rad)=30°(なお、β<60°)となる。
【0067】
検査用接触部22を4つ(L=4)形成した場合において、プローブピン28として六角錐(N=6)を選択した場合も、α>π/6(rad)=30°(なお、β<60°)となる。
【0068】
なお、検査用接触部22を4つ(L=4)形成した場合において、プローブピン28として四角錐(N=4)は、N≠Lを満たさないので(接触できない箇所が出てくるので)、選択できない。
【0069】
また、検査用接触部22を5つ(L=5)形成した場合において、プローブピン28として三角錐(N=3)を選択した場合は、α>48°(なお、β<24°)となる。
【0070】
また、検査用接触部22を5つ(L=5)形成した場合において、プローブピン28として四角錐(N=4)を選択した場合は、α>18°(なお、β<54°)となる。
【0071】
また、検査用接触部22を5つ(L=5)形成した場合において、プローブピン28として六角錐(N=6)を選択した場合は、α>12°(なお、β<60°)となる。
【0072】
〔第2実施形態の作用〕
以上説明したように、第2実施形態に係るプリント配線基板装置の製造方法によれば、プローブピン28が、スルーホール12の周方向へ等間隔に配置された複数の接触部29を有する場合でも、プローブピン28の複数の接触部29のうち、少なくとも1つが検査用接触部22に接触する。これにより、電気回路の検査工程700において検査不良が生じない。
【0073】
なお、本発明の特定の実施形態について説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内にて他の種々の実施形態が可能であることは当業者にとって明らかである。
【0074】
例えば、前記実施形態(第1実施形態および第2実施形態)では、プリント配線基板10の表面10Aに表面実装電子部品20を実装(クリームハンダ上に載せてクリームハンダを硬化)し、裏面10Bにリード線付電子部品34を実装(リード線をスルーホールに入れてハンダ付け)したが、工程を繰り返すことで、プリント配線基板10の両面に表面実装電子部品20及びリード線付電子部品34を実装してもよい。
【0075】
また、前記実施形態では、表面実装電子部品20及びリード線付電子部品34が予め定められた位置に配置されているか否かを抵抗等を用いて検査する工程1300(インサーキット検査)を、後付部品組立工程(工程1200)の後で実行するようにしたが、工程300で載せられた表面実装電子部品20のみを予め定められた位置に配置されているかを検査する場合には、表面実装電子部品20がプリント配線基板10上で正常に機能しているかを検査する検査工程(工程700)の前に実行してもよい。
【0076】
また、前記実施形態のプリント配線基板装置の製造方法の工程順は、一例であって、発明の趣旨を逸脱しない範囲で、工程の順番を入れ替えてもよい。例えば、前記実施形態においては、電気回路の検査工程をFCTとICTに分け、請求項で規定する「検査工程」をFCTとして説明したが、FCTの直後または直前にICTがあっても良く、FCTとICTが入れ替わっていてもよい。別言すると、請求項で規定する「検査工程」は、FCT及びICTの少なくとも一方であればよい。
【符号の説明】
【0077】
10 プリント配線基板
12 スルーホール
12A 開口縁部
14 クリームハンダ
16 パッド
20 表面実装電子部品
22 検査用接触部
28 プローブピン(検査ピンの一例)
34 リード線付電子部品
34A リード線
50 プリント配線基板装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
両面を貫通して導通させるスルーホールを有するプリント配線基板の少なくとも一方の面に位置した前記スルーホールの開口縁部に対して前記スルーホールの周方向に離してクリームハンダを複数塗布すると共に、前記プリント配線基板の少なくとも一方の面に配置されたパッドに前記クリームハンダを塗布するクリームハンダ塗布工程と、
前記パッドに塗布された前記クリームハンダ上に表面実装電子部品を載せる表面実装電子部品実装工程と、
前記パッドに塗布された前記クリームハンダを硬化させて、前記表面実装電子部品を前記プリント配線基板に取り付けると共に、前記スルーホールの前記開口縁部に塗布された前記クリームハンダを硬化させて、前記スルーホールの前記開口縁部上で周方向に離れて位置する複数の検査用接触部を形成する硬化工程と、
電気回路検査用の検査ピンを前記検査用接触部に当て、前記プリント配線基板の検査をする検査工程と、
前記検査工程の後に、前記スルーホールに挿入するリード線が設けられたリード線付電子部品の前記リード線を前記スルーホールに挿入するリード線付電子部品実装工程と、
少なくとも前記スルーホールに挿入された前記リード線付電子部品の前記リード線および前記検査用接触部にフラックスを塗布するフラックス塗布工程と、
前記リード線付電子部品の前記リード線と前記スルーホールとをハンダ付けするハンダ付け工程と、
を含むプリント配線基板装置の製造方法。
【請求項2】
前記クリームハンダ塗布工程は、複数の前記クリームハンダの全てについて、前記クリームハンダの一部が前記開口縁部から前記スルーホールの円中心側にはみ出すように塗布する請求項1に記載のプリント配線基板装置の製造方法。
【請求項3】
前記検査工程における前記検査ピンは、前記スルーホールの周方向へ等間隔に配置された複数の接触部を有し、
前記硬化工程における前記検査用接触部は、前記スルーホールの周方向へ等間隔に円弧状に複数形成され、
前記スルーホールの円中心における前記検査用接触部の中心角をα、前記検査ピンの接触部の数をN、前記検査用接触部の数をLとしたとき、
α>|2π{(N−L)/NL}|
但し、N≠L
を満たす請求項1又は2に記載のプリント配線基板装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2013−69774(P2013−69774A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−206157(P2011−206157)
【出願日】平成23年9月21日(2011.9.21)
【特許番号】特許第5003839号(P5003839)
【特許公報発行日】平成24年8月15日(2012.8.15)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】