プリント配線基板
【課題】プリント配線基板に対する無線ICデバイスの接合強度を向上させること。
【解決手段】送受信信号を処理する無線IC5、及び、該無線IC5に接続された給電回路を備えた無線ICデバイス1と、前記給電回路に電磁界結合された放射板21a,21bと、を備えたプリント配線基板20。無線ICデバイス1には、前記給電回路とは電気的に接続されていない実装用電極18a,18bが設けられており、無線ICデバイス1は、実装用電極18a,18bによってプリント配線基板20に固定されている。
【解決手段】送受信信号を処理する無線IC5、及び、該無線IC5に接続された給電回路を備えた無線ICデバイス1と、前記給電回路に電磁界結合された放射板21a,21bと、を備えたプリント配線基板20。無線ICデバイス1には、前記給電回路とは電気的に接続されていない実装用電極18a,18bが設けられており、無線ICデバイス1は、実装用電極18a,18bによってプリント配線基板20に固定されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリント配線基板、特に、RFID(Radio Frequency Identification)システムに用いられる無線ICを有する無線ICデバイスを備えたプリント配線基板に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、物品の管理システムとして、誘導電磁界を発生するリーダライタと物品や容器などに付された所定の情報を記憶したICチップ(ICタグ、無線ICチップとも称する)とを非接触方式で通信し、情報を伝達するRFIDシステムが開発されている。
【0003】
ICチップを搭載した無線ICデバイスとしては、従来、特許文献1に記載されているように、誘電体基板にダイポールアンテナ(一対の主アンテナ素子と整合部とからなる)を設け、ダイポールアンテナの端部にタグICを電気的に接続した無線ICタグが知られている。整合部はタグICと主アンテナ素子との間に配置され、両者をインピーダンス整合させる機能を有している。
【0004】
しかしながら、この無線ICタグでは以下の問題点を有している。(1)整合部と主アンテナ素子とを単一の基板上に隣接して形成しているため、無線ICタグのサイズが大きくなる。(2)主アンテナ素子及び整合部を配置した大きな基板上に形成した電極に微小な無線ICチップを実装する必要があり、高精度な実装機が必要であること、及び、実装時の位置合わせ時間を要することから製造時間が長くなり、無線ICタグのコストが上昇する。(3)主アンテナ素子と無線ICチップとが電気的に導通状態で接続されているため、主アンテナ素子から静電気が侵入した場合、無線ICチップが破壊される可能性がある。
【0005】
また、特許文献2には、表面にアンテナコイルを形成したICチップを用いた無線ICカードが記載されている。この無線ICカードにおいては、ICチップに形成された第1のアンテナコイルとモジュール基板上に形成された第2のアンテナコイルとを磁界により結合している。
【0006】
しかしながら、特許文献2に記載の無線ICカードでは、第1及び第2のアンテナコイルの間隔を所望の結合が得られる寸法に精度よく管理する必要がある。具体的には特許文献2の段落0107に記載されているように、20μm以下と微小な間隔に設定する必要がある。このような微小な間隔で結合させる場合、二つのアンテナコイルの間隔やアンテナコイルの間に配置する絶縁性接着剤の量や誘電率が少しでもばらつくと結合状態が変化し、無線ICカードとしての放射特性が低下するという問題点を有している。また、モジュール基板上にICチップを微小な間隔で高精度に実装するためには、高価な実装機が必要であり、無線ICカードのコストが高くなってしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−244778号公報
【特許文献2】特開2000−311226号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、本発明の目的は、無線ICデバイスとの接合強度が向上したプリント配線基板を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するため、本発明の一形態であるプリント配線基板は、
送受信信号を処理する無線IC、及び、該無線ICに接続された給電回路を備えた無線ICデバイスと、
前記給電回路に電磁界結合された放射板と、
を備えたプリント配線基板であって、
前記無線ICデバイスには、前記給電回路とは電気的に接続されていない実装用電極が設けられており、
前記無線ICデバイスは、前記実装用電極によって前記プリント配線基板に固定されていること、
を特徴とする。
【0010】
前記無線ICデバイスにおいては、放射板と給電回路とが電磁界結合されており、かつ、無線ICデバイスは給電回路とは電気的に接続されていない実装用電極が設けられ、この実装用電極によって無線ICデバイスがプリント配線基板に固定されているため、無線ICデバイスのプリント配線基板に対する接合強度が向上し、たとえ、落下などの衝撃が加わったり、熱応力が加わっても、電気的な特性に大きな影響を及ぼすことがない。また、放射板から侵入する静電気による無線ICの破壊が防止される。
【0011】
なお、無線ICは、チップとして構成されていてもよく、さらに、本無線ICデバイスが取り付けられる物品に関する各種情報がメモリされている以外に、情報が書き換え可能であってもよく、RFIDシステム以外の情報処理機能を有していてもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、プリント配線基板に対する無線ICデバイスの接合強度が向上し、無線ICデバイスが落下などにより衝撃を受けた場合や、熱応力が作用した場合であっても、給電回路と放射板との電磁界結合に悪影響を及ぼすことがない。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】無線ICデバイスの第1実施例を示す断面図である。
【図2】無線ICデバイスの第2実施例を示す断面図である。
【図3】無線ICデバイスの第3実施例を示す断面図である。
【図4】無線ICデバイスの第4実施例を示す断面図である。
【図5】無線ICデバイスの第5実施例を示す断面図である。
【図6】無線ICデバイスの第6実施例を示す断面図である。
【図7】無線ICデバイスの第7実施例を示す断面図である。
【図8】無線ICデバイスの第8実施例を示す断面図である。
【図9】無線ICデバイスの第9実施例を示す断面図である。
【図10】無線ICデバイスの第10実施例を示す断面図である。
【図11】無線ICデバイスの第11実施例を示す断面図である。
【図12】無線ICデバイスの第12実施例を示す断面図である。
【図13】無線ICデバイスの第13実施例を示す断面図である。
【図14】無線ICデバイスの第14実施例を示す断面図である。
【図15】無線ICデバイスの第15実施例を示す断面図である。
【図16】無線ICデバイスの第16実施例を示す断面図である。
【図17】無線ICデバイスの第17実施例を示す断面図である。
【図18】無線ICデバイスの第18実施例を示す平面図である。
【図19】無線ICチップを示す斜視図である。
【図20】共振回路の第1例を内蔵した給電回路基板を示す分解斜視図である。
【図21】共振回路の第1例を示す等価回路図である。
【図22】共振回路の第2例を内蔵した給電回路基板を示す分解斜視図である。
【図23】共振回路の第2例を示す等価回路図である。
【図24】電子機器の一実施例である携帯電話を示す斜視図である。
【図25】前記携帯電話に内蔵されているプリント配線基板を示す説明図である。
【図26】前記プリント配線基板に実装されている無線ICデバイスを示す断面図である。
【図27】前記プリント配線基板に実装されている無線ICデバイスを示す平面図である。
【図28】無線ICデバイスの第19実施例を示し、(A)は断面図、(B)は放射板を示す平面図である。
【図29】無線ICデバイスの第20実施例における放射板を示す平面図である。
【図30】無線ICデバイスの第21実施例における放射板を示す平面図である。
【図31】無線ICデバイスの第22実施例における放射板を示す平面図である。
【図32】無線ICデバイスの第23実施例を示し、(A)は無線ICチップと給電回路基板を示す断面図、(B)は放射板を示す平面図である。
【図33】無線ICデバイスの第24実施例を示す断面図である。
【図34】無線ICデバイスの第25実施例を示す断面図である。
【図35】無線ICデバイスの第26実施例における放射板を示す平面図である。
【図36】無線ICデバイスの第27実施例における放射板を示す平面図である。
【図37】無線ICデバイスの第28実施例を示し、(A)は断面図、(B)は放射板を示す平面図である。
【図38】無線ICデバイスの第29実施例を示し、(A)は断面図、(B)は放射板を示す平面図である。
【図39】無線ICデバイスの第30実施例を示し、(A)は断面図、(B)は放射板を示す平面図である。
【図40】無線ICデバイスの第31実施例を示す斜視図である。
【図41】前記第31実施例である無線ICデバイスの要部に関する断面図である。
【図42】無線ICデバイスの第32実施例を示す斜視図である。
【図43】前記第32実施例である無線ICデバイスの要部に関する断面図である。
【図44】給電回路基板の変形例を示す斜視図である。
【図45】給電回路基板の第1例を構成する給電回路を示す等価回路図である。
【図46】給電回路基板の第1例の積層構造を示す平面図である。
【図47】給電回路基板の第2例を構成する給電回路を示す等価回路図である。
【図48】給電回路基板の第2例の積層構造を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係るプリント配線基板の実施例について添付図面を参照して説明する。なお、各図において、共通する部品、部分は同じ符号を付し、重複する説明は省略する。
【0015】
(無線ICデバイスの第1実施例、図1参照)
図1に無線ICデバイスの第1実施例を示す。この無線ICデバイス1は、所定周波数の送受信信号を処理する無線ICチップ5と、該無線ICチップ5を搭載した給電回路基板10と、放射基板(プリント配線基板)20に設けた放射板21a,21bとからなる。
【0016】
無線ICチップ5は、クロック回路、ロジック回路、メモリ回路などを含み、必要な情報がメモリされており、図19に示すように、裏面に入出力端子電極6,6及び実装用端子電極7,7が設けられている。入出力端子電極6,6が給電回路基板10の表面に設けた電極12a,12b(図20参照)に金属バンプ8を介して電気的に接続されている。また、実装用端子電極7,7が電極12c,12dに金属バンプ8を介して電気的に接続されている。なお、金属バンプ8の材料としては、Au、Ag、はんだなどを用いることができる。
【0017】
また、給電回路基板10の表面には、無線ICチップ5と給電回路基板10との接合強度を向上させるために、無線ICチップ5との接続部を覆うように保護膜9が設けられている。
【0018】
放射板21a,21bは多層構造とした放射基板20内にAl、Cu、Agなどの金属めっきや導電性ペーストなどによる電極膜を所定の形状に設けたもので、表面には電極26a,26bが設けられている。なお、放射基板20はガラスエポキシ樹脂製のプリント配線基板のみならず他の樹脂を用いた樹脂製基板やセラミック基板であってもよい。
【0019】
給電回路基板10は、インダクタンス素子を有する共振回路(図1では省略)を内蔵したもので、裏面には給電用電極19a,19bが設けられ、表面には接続用電極12a〜12d(図20参照)が形成されている。給電用電極19a,19bは基板10に内蔵された共振回路と結合している。また、給電用電極19a,19bは導電性接着剤22を介して放射基板20上に設けた電極26a,26bと電気的に導通状態で接続されている。即ち、給電用電極19a,19bは放射板21a,21bと電極26a,26b及び導電性接着剤22を介して電気的に導通しない状態で容量により結合されている。なお、導電性接着剤22に代えて絶縁性接着剤やはんだなどを用いてもよい。また、電極26a,26bは必ずしも必要なものではない。
【0020】
給電回路基板10には所定の共振周波数を有する共振回路が内蔵されており、無線ICチップ5から発信された所定の周波数を有する送信信号を給電用電極19a,19bなどを介して放射板21a,21bに伝達し、かつ、放射板21a,21bで受けた信号から所定の周波数を有する受信信号を選択し、無線ICチップ5に供給する。それゆえ、この無線ICデバイス1は、放射板21a,21bで受信された信号によって無線ICチップ5が動作され、該無線ICチップ5からの応答信号が放射板21a,21bから外部に放射される。
【0021】
前記無線ICデバイス1にあっては、給電回路基板10の表面に設けた給電用電極19a,19bが、基板10に内蔵された共振回路と結合するとともに、アンテナとして機能する放射板21a,21bと電気的に非導通状態で結合している。給電回路基板10は比較的サイズの大きい放射板21a,21bを搭載する必要はなく、極めて小型に構成できる。無線ICチップ5はこのような小型の給電回路基板10に搭載すればよく、従来から広く使用されているIC実装機などを用いることができ、実装コストが低減する。また、使用周波数帯を変更するに際しては、共振回路の設計を変更するだけでよく、放射板21a,21bなどはそのまま用いてもよい。また、放射板21a,21bと給電用電極19a,19bとは電気的に非導通であるので、放射板21a,21bから侵入する静電気が無線ICチップ5に印加されることはなく、静電気による無線ICチップ5の破壊が防止される。
【0022】
(無線ICデバイスの第2実施例、図2参照)
図2に無線ICデバイスの第2実施例を示す。この無線ICデバイス1は、基本的には前記第1実施例と同様の構成からなり、給電用電極19a,19bを給電回路基板10の裏面から両側面にわたって設けたものである。給電用電極19a,19bと放射板21a,21bとの結合が大きくなる。その他の作用効果は第1実施例と同様である。
【0023】
(無線ICデバイスの第3実施例、図3参照)
図3に無線ICデバイスの第3実施例を示す。この無線ICデバイス1は、基本的には前記第1実施例と同様の構成からなり、給電回路基板10の表面に無線ICチップ5を覆うエポキシ系、ポリイミド系などの樹脂製の保護膜23を設けたものである。保護膜23を設けることで、耐環境特性が向上する。その他の作用効果は第1実施例と同様である。
【0024】
(無線ICデバイスの第4実施例、図4参照)
図4に無線ICデバイスの第4実施例を示す。この無線ICデバイス1は、基本的には前記第1実施例と同様の構成からなり、電極26a,26bを両側に延在して放射板としても機能するようにしたものである。その他の作用効果は第1実施例と同様である。
【0025】
(無線ICデバイスの第5実施例、図5参照)
図5に無線ICデバイスの第5実施例を示す。この無線ICデバイス1は、基本的には前記第1実施例と同様の構成からなり、多層構造とした放射基板20に放射板21a,21b、電極26c,26dをそれぞれ2層に内蔵し、表面に電極26a,26bを設け、電極26a,26b及び電極26c,26dをそれぞれビアホール導体27にて電気的に接続したものである。
【0026】
本第5実施例においては、放射板21a,21bが電極26c,26dと主に容量による電界結合し、電極26a,26bがビアホール導体27を介して電極26c,26dと接続されるとともに、導電性接着剤22を介して給電用電極19a,19bと電気的に接続されている。従って、第5実施例の作用効果は第1実施例と同様である。
【0027】
(無線ICデバイスの第6実施例、図6参照)
図6に無線ICデバイスの第6実施例を示す。この無線ICデバイス1は、基本的には前記第1実施例と同様の構成からなり、多層構造とした放射基板20に放射板21a,21bを3段に積層したものである。それぞれの放射板21a,21bが給電回路基板10に設けた給電用電極19a,19bと電極26a,26bなどを介して主として容量により電界結合しているため、放射特性が向上する。また、長さの異なる放射板を持つため無線ICデバイスの使用周波数帯域を広げることができる。その他の作用効果は第1実施例と同様である。
【0028】
(無線ICデバイスの第7実施例、図7参照)
図7に無線ICデバイスの第7実施例を示す。この無線ICデバイス1は、基本的には前記第1実施例と同様の構成からなり、放射板21a,21bを多層構造とした放射基板20にビアホール導体28を介してコイル形状に設けたものである。コイル形状をなす放射板21a,21bのそれぞれの一端部と給電回路基板20に設けた給電用電極19a,19bとが電極26a,26bなどを介して主として容量による電界結合している。放射板21a,21bをコイル形状とすることにより、放射特性が向上する。その他の作用効果は第1実施例と同様である。
【0029】
(無線ICデバイスの第8実施例、図8参照)
図8に無線ICデバイスの第8実施例を示す。この無線ICデバイス1は、基本的には前記第1実施例と同様の構成からなり、共振回路を給電回路基板10に内蔵した素子と給電回路基板10上に実装した素子71とで構成したものである。素子71はチップインダクタ、チップコンデンサなどである。チップタイプの素子はインダクタンス値やキャパシタンス値の大きなものを使用でき、給電回路基板10に内蔵する素子は値の小さなものでよいので、給電回路基板10をより小型にできる。その他の作用効果は第1実施例と同様である。
【0030】
(無線ICデバイスの第9実施例、図9参照)
図9に無線ICデバイスの第9実施例を示す。この無線ICデバイス1は、基本的には前記第1実施例と同様の構成からなり、共振回路を給電回路基板10に内蔵した素子と放射基板20上に実装した素子71とで構成したものである。素子71は前記第8実施例で説明したようにチップインダクタ、チップコンデンサなどであり、その作用効果は第8実施例と同様である。
【0031】
(無線ICデバイスの第10実施例、図10参照)
図10に無線ICデバイスの第10実施例を示す。この無線ICデバイス1は、放射基板であるプリント配線基板20に無線ICデバイス1以外の種々の電子回路部品を搭載したものである。換言すれば、携帯電話などの無線通信機器に内蔵されているプリント配線基板20に無線ICデバイス1を搭載したものであり、無線ICデバイス1としては前記第1実施例と同様の構成からなる。また、放射板21a,21bはグランド電極やシールド電極の機能を兼ねていてもよい。
【0032】
本第10実施例において、搭載されている電子回路部品は、例えば、チップ抵抗72、IC部品を実装した無線通信回路73である。なお、第1〜第10実施例において、放射板21a,21bは放射基板20の裏面に形成しても構わない。
【0033】
(無線ICデバイスの第11実施例、図11参照)
図11に無線ICデバイスの第11実施例を示す。この無線ICデバイス1は、前記第10実施例と同様に、無線通信機器に内蔵されているプリント配線基板20上に搭載したもので、チップ抵抗72、無線通信回路73に加えて、給電回路基板10を実装した主面に対向する面に無線通信回路74、チップコンデンサ75及び回路基板76を搭載している。このとき、放射板21a,21bはグランド電極やシールド電極の機能を兼ねていてもよい。
【0034】
(無線ICデバイスの第12実施例、図12参照)
図12に無線ICデバイスの第12実施例を示す。この無線ICデバイス1は、前記第11実施例と同様に、無線通信機器に内蔵されているプリント配線基板20上に搭載したもので、プリント配線基板20には表面の部品と裏面の部品との磁気シールドを図るためのシールド電極77が内蔵されている。
【0035】
(無線ICデバイスの第13実施例、図13図参照)
図13に無線ICデバイスの第13実施例を示す。この無線ICデバイス1は、前記第10実施例と同様に、無線通信機器に内蔵されているプリント配線基板20上に搭載したもので、表面に設けた給電回路基板10及び無線ICチップ5と裏面に設けた無線通信回路74、チップ抵抗75及び回路基板76との磁気シールドを図るためのシールド電極77が基板20に内蔵されている。
【0036】
(無線ICデバイスの第14実施例、図14参照)
図14に無線ICデバイスの第14実施例を示す。この無線ICデバイス1は、前記第10〜第13実施例と同様に、無線通信機器に内蔵されているプリント配線基板20上に搭載したものである。放射板21a,21bはシールド電極77,77の間に積層されており、給電回路基板10に設けた給電用電極19a,19bとは電極26a,26bなどを介して主として容量による電界結合している。
【0037】
(無線ICデバイスの第15実施例、図15参照)
図15に無線ICデバイスの第15実施例を示す。この無線ICデバイス1は、無線通信機器に内蔵されているプリント配線基板20に搭載したものである。無線ICチップ5を備えた給電回路基板10はプリント配線基板20の側面に実装され、給電用電極19は基板20内に設けた放射板21と電気的に導通しない状態で電磁界結合している。また、プリント配線基板20の表裏面にはチップ抵抗などの電子部品78が実装され、内部には複数のシールド電極77が設けられている。
【0038】
(無線ICデバイスの第16実施例、図16参照)
図16に無線ICデバイスの第16実施例を示す。この無線ICデバイス1は、無線通信機器に内蔵されているプリント配線基板20に搭載したものである。無線ICチップ5を備えた給電回路基板10はプリント配線基板20の側面に実装されている。この給電回路基板10は側面に給電用電極19を設けたもので、給電用電極19は基板20内に設けた放射板21と電気的に導通しない状態で電磁界結合している。また、プリント配線基板20の表裏面にはチップ抵抗などの電子部品78が実装され、内部には複数のシールド電極77が設けられている。
【0039】
(無線ICデバイスの第17実施例、図17参照)
図17に無線ICデバイスの第17実施例を示す。この無線ICデバイス1は、無線通信機器に内蔵されているプリント配線基板20内に収容したもので、給電用電極19が基板20内に設けた放射板21と電気的に導通しない状態で電磁界結合している。また、プリント配線基板20の表裏面にはチップ抵抗などの電子部品78が実装され、内部には複数のシールド電極77が設けられている。
【0040】
(無線ICデバイスの第18実施例、図18参照)
図18に無線ICデバイスの第18実施例を示す。図18は平面図であって、この無線ICデバイス1はプリント配線基板20の側面に形成した凹部20aに収容され、給電回路基板10の裏面に設けた給電用電極19は基板20内に設けた放射板21と電気的に導通しない状態で電磁界結合している。
【0041】
(共振回路の第1例、図20及び図21参照)
給電回路基板10に内蔵された共振回路の第1例を、図20に給電回路基板10の分解斜視図として、図21に等価回路として示す。
【0042】
給電回路基板10は、図20に示すように、誘電体からなるセラミックシート11A〜11Hを積層、圧着、焼成したもので、シート11Aには接続用電極12a,12bと電極12c,12dとビアホール導体13a,13bが形成され、シート11Bにはキャパシタ電極18aと導体パターン15a,15bとビアホール導体13c〜13eが形成され、シート11Cにはキャパシタ電極18bとビアホール導体13d〜13fが形成されている。さらに、シート11Dには導体パターン16a,16bとビアホール導体13e,13f,14a,14b,14dが形成され、シート11Eには導体パターン16a,16bとビアホール導体13e,13f,14a,14c,14eが形成され、シート11Fにはキャパシタ電極17と導体パターン16a,16bとビアホール導体13e,13f,14f,14gが形成され、シート11Gには導体パターン16a,16bとビアホール導体13e,13f,14f,14gが形成され、シート11Hには導体パターン16a,16bとビアホール導体13fが形成されている。
【0043】
以上のシート11A〜11Hを積層することにより、ビアホール導体14c,14d,14gにて螺旋状に接続された導体パターン16aにてインダクタンス素子L1が構成され、ビアホール導体14b,14e,14fにて螺旋状に接続された導体パターン16bにてインダクタンス素子L2が構成され、キャパシタ電極18a,18bにてキャパシタンス素子C1が構成され、キャパシタ電極18b,17にてキャパシタンス素子C2が構成される。
【0044】
インダクタンス素子L1の一端はビアホール導体14c,13d、導体パターン15a、ビアホール導体13cを介してキャパシタ電極18bに接続され、インダクタンス素子L2の一端はビアホール導体14aを介してキャパシタ電極17に接続される。また、インダクタンス素子L1,L2の他端は、シート11H上で一つにまとめられ、ビアホール導体13e、導体パターン15b、ビアホール導体13aを介して接続用電極12aに接続されている。さらに、キャパシタ電極18aはビアホール導体13bを介して接続用電極12bに電気的に接続されている。
【0045】
そして、接続用電極12a,12bが金属バンプ8(図1など参照)を介して無線ICチップ5の端子電極6,6(図19参照)と電気的に接続される。電極12c,12dは無線ICチップ5の端子電極7,7に接続される。
【0046】
また、給電回路基板10の裏面には給電用電極19a,19bが導体ペーストの塗布などで設けられ、給電用電極19aはインダクタンス素子L(L1,L2)と電磁界により結合し、給電用電極19bはキャパシタ電極18bとビアホール導体13fを介して電気的に接続される。給電用電極19a,19bは放射板21a,21bと電気的に導通しない状態で結合されることは前述のとおりである。以上の共振回路の等価回路を図21に示す。
【0047】
なお、この共振回路において、インダクタンス素子L1,L2は2本の導体パターン16a,16bを並列に配置した構造としている。2本の導体パターン16a,16bはそれぞれ線路長が異なっており、異なる共振周波数とすることができ、無線ICデバイス1を広帯域化できる。
【0048】
なお、各セラミックシート11A〜11Hは磁性体のセラミック材料からなるシートであってもよく、給電回路基板10は従来から用いられているシート積層法、厚膜印刷法などの多層基板の製作工程により容易に得ることができる。
【0049】
また、前記シート11A〜11Hを、例えば、ポリイミドや液晶ポリマなどの誘電体からなるフレキシブルなシートとして形成し、該シート上に厚膜形成法などで電極や導体を形成し、それらのシートを積層して熱圧着などで積層体とし、インダクタンス素子L1,L2やキャパシタンス素子C1,C2を内蔵させてもよい。
【0050】
前記給電回路基板10において、インダクタンス素子L1,L2とキャパシタンス素子C1,C2とは平面透視で異なる位置に設けられ、インダクタンス素子L1,L2により給電用電極19a(放射板21a)と電磁界的に結合し、キャパシタンス素子C1により放射板21bと電界的に結合している。
【0051】
従って、給電回路基板10上に前記無線ICチップ5を搭載した無線ICデバイス1は、図示しないリーダライタから放射される高周波信号(例えば、UHF周波数帯)を放射板21a,21bで受信し、給電用電極19a,19bと磁界結合及び電界結合している共振回路を共振させ、所定の周波数帯の受信信号のみを無線ICチップ5に供給する。一方、この受信信号から所定のエネルギーを取り出し、このエネルギーを駆動源として無線ICチップ5にメモリされている情報を、共振回路にて所定の周波数に整合させた後、給電用電極19a,19bを介して放射板21a,21bに伝え、該放射板21a,21bからリーダライタに送信、転送する。
【0052】
給電回路基板10においては、インダクタンス素子L1,L2とキャパシタンス素子C1,C2で構成された共振回路にて共振周波数特性が決定される。放射板21a,21bから放射される信号の共振周波数は、共振回路の自己共振周波数によって実質的に決まる。なお、無線ICチップ5の入出力インピーダンスの虚数部と給電回路基板10上の接続用電極12a,12bから給電用電極19a,19b側を見たときのインピーダンスの虚数部が共役となるように給電回路基板10内の回路設計を行うことで効率的な信号の送受信が行える。
【0053】
ところで、共振回路は無線ICチップ5のインピーダンスと放射板21a,21bのインピーダンスを整合させるためのマッチング回路を兼ねている。給電回路基板10は、インダクタンス素子やキャパシタンス素子で構成された共振回路とは別に設けられたマッチング回路を備えていてもよい(この意味で、共振回路を整合回路とも称する)。共振回路にマッチング回路の機能をも付加しようとすると、共振回路の設計が複雑になる傾向がある。共振回路とは別にマッチング回路を設ければ、共振回路、マッチング回路をそれぞれ独立して設計できる。
【0054】
また、マッチング回路のみを備えた構成でも構わない。さらに、インダクタンス素子のみで給電回路基板10内の回路を構成しても構わない。その場合、インダクタンス素子は放射板21a,21bと無線ICチップ5とのインピーダンス整合をとる機能を有している。
【0055】
また、前記第8及び第9実施例に示したように、共振回路を構成する素子の一部を基板10又は基板20に実装してもよい。
【0056】
(共振回路の第2例、図22及び図23参照)
給電回路基板30に内蔵された共振回路の第2例を、図22に給電回路基板30の分解斜視図として、図23に等価回路として示す。
【0057】
給電回路基板30は、図22に示すように、誘電体からなるセラミックシート31A〜31Eを積層、圧着、焼成したもので、シート31Aには接続用電極12a,12bと電極12c,12dとビアホール導体33a,33bが形成されている。シート31B,31C,31Dには導体パターン36とビアホール導体33c,33dが形成されている。シート33Eには導体パターン36とビアホール導体33eが形成されている。
【0058】
以上のシート31A〜31Eを積層することにより、ビアホール導体33cにて螺旋状に接続された導体パターン36にてインダクタンス素子Lが構成される。また、導体パターン36の線間容量にてキャパシタンス素子Cが構成される。インダクタンス素子Lの一端はビアホール導体33aを介して接続用電極12aに接続されている。
【0059】
また、給電回路基板30の裏面には給電用電極19が導体ペーストの塗布などで設けられ、給電用電極19はビアホール導体33eを介してインダクタンス素子Lの他端に接続されるとともに、ビアホール導体33d,33bを介して接続用電極12bに接続されている。給電用電極19は放射板21と電気的に導通しない状態で結合される。以上の共振回路の等価回路は図23に示すとおりである。
【0060】
この共振回路は無線ICチップ5と給電用電極19とが直流により接続されるように構成されており、放射板21で受信した高周波信号を無線ICチップ5に供給する。一方、無線ICチップ5にメモリされている情報を、この共振回路を介して給電用電極19及び放射板21に伝え、放射板21からリーダライタに送信、転送する。
【0061】
(電子機器の実施例、図24〜図27参照)
次に、電子機器の一実施例として携帯電話を説明する。図24に示す携帯電話50は、複数の周波数に対応しており、地上波デジタル信号、GPS信号、WiFi信号、CDMAやGSM(登録商標)などの通信用信号が入力される。
【0062】
筐体51内には、図25に示すように、プリント配線基板55が設置されている。このプリント配線基板55には、無線通信用回路60と無線ICデバイス1とが配置されている。無線通信用回路60は、IC61と基板55に内蔵されたバラン62とBPF63とコンデンサ64とで構成されている。無線ICチップ5を搭載した給電回路基板10は、プリント配線基板55に設けた放射板21a,21bに給電用電極19a,19bが電気的に導通しない結合状態で搭載され、無線ICデバイス1を構成している。
【0063】
プリント配線基板55に搭載される無線ICデバイス1としては、図26及び図27に示すものであってもよい。この無線ICデバイス1は、無線ICチップ5を搭載した給電回路基板10の両側部に給電用電極19a,19bを設け、該給電用電極19a,19bを基板55に設けた放射板21a,21bに電気的に導通しない状態で結合させたものである。給電回路基板10内の共振回路は、例えば、図20に示したものである。
【0064】
プリント配線基板55の表面には、図27に斜線を付して示すグランドパターン56が形成され、グランドパターン56の非形成領域56aに無線ICデバイス1が実装されている。また、放射板21a,21bはミアンダ形状に配置されている。なお、グランドパターン56は、放射板21a,21bの放射特性に影響を与えない程度に放射板21a,21bから離しておく必要がある。
【0065】
(無線ICデバイスの第19実施例、図28参照)
図28に無線ICデバイスの第19実施例を示す。本第19実施例から以下に示す第30実施例は、前記第1実施例から第18実施例に示した給電用電極19,19a,19bに加えて、給電回路基板10に実装用電極18a〜18dを設けたものである。
【0066】
詳しくは、本第19実施例において、給電用電極19a,19bは給電回路基板10に内蔵され、ミアンダ形状とされている放射板21a,21bの一端部である結合部21a',21b'とは電気的に導通することはなく電磁界結合している。給電回路基板10の裏面には実装用電極18a,18bが形成されており、放射基板20上には実装電極24a,24bが形成されている。実装用電極18a,18bと実装電極24a,24bとはそれぞれはんだ41などの導電材(絶縁材である接着剤であってもよい)にて接続されている。
【0067】
他の構成は前記第1実施例と同様であり、無線ICデバイスとしての基本的な作用効果も第1実施例と同様である。加えて、本第19実施例では、給電回路基板10の裏面に実装用電極18a,18bを設けて放射基板20上に設けた実装電極24a,24bと接続したため、給電回路基板10と放射基板20との接合強度が向上し、無線ICデバイスが落下などにより衝撃を受けた場合や、放射基板20や給電回路基板10が熱収縮して熱応力が作用した場合であっても、給電用電極19a,19bと放射板21a,12bとの電磁界結合に悪影響を及ぼすことがない。
【0068】
(無線ICデバイスの第20実施例、図29参照)
図29に無線ICデバイスの第20実施例を示す。本第20実施例は、基本的には前記第1及び第19実施例と同様の構成からなり、異なるのは、放射基板20上に一つの実装電極24を放射板21a,21bの一端部である結合部21a',21b'に挟まれた状態で設けた点にある。給電回路基板10の裏面に設けた実装用電極は、図示しないが、実装電極24と対向する位置に単一のものが形成されており、実装電極24とはんだや接着剤にて接続されている。
【0069】
他の構成は前記第1実施例と同様であり、無線ICデバイスとしての基本的な作用効果も第1実施例と同様であり、実装用電極を設けた作用効果は前記第19実施例と同様である。加えて、実装用電極を中央部分に形成するため、放射板21a,21bの引き回しを給電回路基板10の長手方向からでも行うことができる。また、給電回路基板10の撓みなどに対し、突起部への応力が小さくなる。
【0070】
(無線ICデバイスの第21実施例、図30参照)
図30に無線ICデバイスの第21実施例を示す。本第21実施例は、基本的には前記第1及び第20実施例と同様の構成からなり、異なるのは、放射基板20上に二つの実装電極24a,24bを放射板21a,21bの一端部である結合部21a',21b'に挟まれた状態で設けた点にある。実装電極24a,24bは長辺方向に並置されているが、短辺方向に並置してもよく、あるいは、対角線方向に並置してもよい。給電回路基板10の裏面に設けた実装用電極は、図示しないが、実装電極24a,24bと対向する位置に形成されており、実装電極24a,24bとはんだや接着剤にて接続されている。
【0071】
他の構成は前記第1実施例と同様であり、無線ICデバイスとしての基本的な作用効果も第1実施例と同様であり、実装用電極を設けた作用効果は前記第19実施例で説明したとおりである。
【0072】
(無線ICデバイスの第22実施例、図31参照)
図31に無線ICデバイスの第22実施例を示す。本第22実施例は、基本的には前記第1及び第19実施例と同様の構成からなり、異なるのは、放射基板20上に四つの実装電極24a〜24dを給電回路基板10の外縁部分に設けた点にある。放射板21a,21bの一端部である結合部21a',21b'は実装電極24a,24bの間及び実装電極24c,24dの間を通って中心部分に配置されている。給電回路基板10の裏面に設けた実装用電極は、図示しないが、実装電極24a〜24dと対向する位置に形成されており、実装電極24a〜24dとはんだや接着剤にて接続されている。
【0073】
他の構成は前記第1実施例と同様であり、無線ICデバイスとしての基本的な作用効果も第1実施例と同様であり、実装用電極を設けた作用効果は前記第19実施例で説明したとおりである。特に、第22実施例においては、実装用電極及び実装電極24a〜24dを給電回路基板10の外縁部分に設けたため、リフローはんだを用いて放射基板20上に給電回路基板10を搭載する際の位置精度が向上する。即ち、リフローはんだ時において、外縁部分に位置する四つの電極24a〜24dのそれぞれではんだの表面張力によるセルフアライメント作用が生じるからである。
【0074】
(無線ICデバイスの第23実施例、図32参照)
図32に無線ICデバイスの第23実施例を示す。本第23実施例は、基本的には前記第1及び第19実施例と同様の構成からなり、異なるのは、給電回路基板10の両側面(図32の紙面において手前側と奥側)に実装用電極18a〜18dを形成したものである。実装電極24a〜24dは、放射基板20上に実装用電極18a〜18dに対応した位置に、給電回路基板10の外形よりも外方に突出した状態で形成され、実装用電極18a〜18dとはんだや接着剤にて接続されている。
【0075】
他の構成は前記第1実施例と同様であり、無線ICデバイスとしての基本的な作用効果も第1実施例と同様であり、実装用電極18a〜18dを設けた作用効果は前記第19実施例で説明したとおりである。特に、第23実施例においては、実装用電極18a〜18dを給電回路基板10の側面に設けたため、該基板10の裏面にスペース的な余裕が生じ、裏面のほぼ全体に放射板21a,21bの一端部である結合部21a',21b'を形成することで、給電用電極19a,19bと放射板21a,21bとの結合度の向上を図ることができる。
【0076】
(無線ICデバイスの第24実施例、図33参照)
図33に無線ICデバイスの第24実施例を示す。本第24実施例は、基本的には前記第1及び第19実施例と同様の構成からなり、異なるのは、放射基板20と給電回路基板10との間に封止樹脂25を塗布した点にある。封止樹脂25は例えばエポキシ系接着剤であり、固定強度や耐環境特性が向上するとともに、接着剤は空気よりも誘電率が高いため、給電用電極19a,19bと放射板21a,21bとの容量が大きくなり、結合度が上昇する。なお、封止樹脂25の塗布は、実装電極24a,24bと実装用電極18a,18bとをはんだ41(リフローはんだ)にて接続した後に行う。
【0077】
他の構成は前記第1実施例と同様であり、無線ICデバイスとしての基本的な作用効果も第1実施例と同様であり、実装用電極18a,18bを設けた作用効果は前記第19実施例で説明したとおりである。
【0078】
(無線ICデバイスの第25実施例、図34参照)
図34に無線ICデバイスの第25実施例を示す。本第25実施例は、基本的には前記第1及び第19実施例と同様の構成からなり、異なるのは、放射基板20上に放射板21a,21bを覆うレジスト膜29を設けた点にある。レジスト膜29は例えばエポキシ系やポリイミド系の樹脂材であり、放射板21a,21bの耐環境特性が向上するとともに、樹脂材は空気よりも誘電率が高いため、給電用電極19a,19bと放射板21a,21bとの容量が大きくなり、結合度が上昇する。また、レジスト膜29の厚みで放射板21a,21bと給電回路基板10の裏面との間隔を決めることができ、結合度のばらつきを抑えることができ、特性が安定化する。
【0079】
他の構成は前記第1実施例と同様であり、無線ICデバイスとしての基本的な作用効果も第1実施例と同様であり、実装用電極18a,18bを設けた作用効果は前記第19実施例で説明したとおりである。
【0080】
(無線ICデバイスの第26実施例及び第27実施例、図35及び図36参照)
図35に無線ICデバイスの第26実施例を示し、図36に無線ICデバイスの第27実施例を示す。第26実施例は前記第19実施例において実装電極24a,24bの面積を大きく設定したものである。第27実施例は第22実施例において実装電極24a〜24dの面積を大きく設定したものである。
【0081】
給電回路基板10の裏面に形成される実装用電極18a〜18dの面積は第19及び第22実施例と同じであり、接合用のはんだの量は実装用電極18a〜18dの面積に合わせて供給される。余分なはんだが実装電極24a〜24dに広がるため、はんだの厚みを薄くし、はんだ厚みのばらつきを抑えることができる。これにて、放射板21a,21bと給電用電極19a,19bとの間隔のばらつきが小さくなり、結合度が安定化する。そして、実装電極24a〜24dにはAuめっきなどを施してはんだが濡れ広がる加工を施しておくことが好ましい。
【0082】
また、前記第25実施例に示したように、レジスト膜29を放射板21a,21b上に形成しておけば、レジスト膜29の厚みで放射板21a,21bと給電回路基板10の裏面との間隔を決めることができる。これと同様の効果は、給電回路基板10の裏面に凸部を導電層や樹脂層などで形成することで実現できる。
【0083】
(無線ICデバイスの第28実施例、図37参照)
図37に無線ICデバイスの第28実施例を示す。本第28実施例は、基本的には前記第1及び第19実施例と同様の構成からなり、異なるのは、放射板21a,21bの一端部である結合部21a',21b'と実装電極24a,24bとを一体的に形成した点にある。さらに、放射板21a,21b上にはレジスト膜29が、実装電極24a,24b以外に形成されている。実装電極24a,24bは給電回路基板10の実装用電極18a,18bとはんだ41などにより接着されている。
【0084】
他の構成は前記第1実施例と同様であり、無線ICデバイスとしての基本的な作用効果も第1実施例と同様であり、実装用電極18a,18bを設けた作用効果は前記第19実施例で説明したとおりである。特に、第28実施例では、放射板21a,21bを実装電極24a,24bを含めて形成するため、電極形成が容易であり、実装電極24a,24bの強度が強くなる。
【0085】
(無線ICデバイスの第29実施例、図38参照)
図38に無線ICデバイスの第29実施例を示す。本第29実施例は、前記第19実施例において、給電用電極19a,19bと実装用電極18a,18bとを一体的に形成した点にある。この場合、給電用電極19a,19bは第19実施例とは異なって給電回路基板10の裏面に露出している。これにて、給電用電極19a,19bと放射板21a,21b(結合部21a',21b')との距離を小さくし、容量を大きくすることができる。また、実装用電極18a,18bが実質的に大きくなり、実装用電極18a,18bの強度を増すことができる。
【0086】
(無線ICデバイスの第30実施例、図39参照)
図39に無線ICデバイスの第30実施例を示す。本第30実施例は、放射板21a,21bを一端部である結合部21a',21b'で一体化し、該結合部21a',21b'を給電回路基板10に内蔵されたインダクタンス素子L1,L2と磁界結合させたものである。給電用電極19a,19bはインダクタンス素子L1,L2の一部として構成されている。また、実装電極24は放射基板20の中央部に形成され、給電回路基板10の裏面に形成された実装用電極18とはんだ41などで接続されている。
【0087】
他の構成は前記第1実施例と同様であり、無線ICデバイスとしての基本的な作用効果も第1実施例と同様であり、実装用電極18を設けた作用効果は前記第19実施例で説明したとおりである。特に、第30実施例では、放射板21a,21bが給電回路基板10と磁界結合しているため、給電回路基板10の実装位置が多少ずれたり、180°回転がずれても特性が変わらない。また、誘電率の高い樹脂材が給電回路基板10と放射板21a,21bの間に介在しても特性の変化が小さい。
【0088】
(第31実施例、図40及び図41参照)
第31実施例である無線ICデバイスは、図40及び図41に示すように、所定周波数の送受信信号を処理する無線ICチップ5と、この無線ICチップ5を電気的に接続した状態で搭載した給電回路基板120と、プリント基板130の表面に電極膜にて形成した放射板131とで構成されている。一体化された無線ICチップ5と給電回路基板120とを以下電磁結合モジュール100と称する。
【0089】
給電回路基板120は、図45や図47を参照して以下に説明する共振回路・整合回路を有する給電回路121を備えている。
【0090】
無線ICチップ5は、クロック回路、ロジック回路、メモリ回路などを含み、必要な情報がメモリされており、図19に示したように、裏面に一対の入出力端子電極6及び一対の実装用端子電極7が設けられている。図46に示す給電回路基板120において、無線ICチップ5の入出力端子電極6は給電端子電極142a,142bに、実装用端子電極は実装電極143a,143bに金属バンプなどを介して電気的に接続されている。また、図48に示す給電回路基板120において、入出力端子電極6は給電端子電極222a,222bに、実装用端子電極7は実装電極223a,223bに金属バンプなどを介して電気的に接続されている。
【0091】
放射板131は、プリント基板130の表面に非磁性金属材料からなる電極膜として形成されており、一方の端部131aと他方の端部131bが給電回路基板120の下面にそれぞれ対向して配置され、給電回路121と電磁界結合している。この放射板131の全体的な形状は任意であり、例えば、ループ状アンテナ形状であっても、ダイポール型のアンテナ形状であってもよい。また、放射板131はプリント基板130の内部に形成されたものであってもよい。なお、プリント基板130は、携帯電話などの物品に内蔵されたものである。
【0092】
給電回路基板120の対向する二つの側面には、以下に詳述する給電回路121とは電気的に接続されていない実装用電極122が形成されている。この実装用電極122は、図41に示すように、絶縁体層と電極層とを積層して形成した積層体(給電回路基板120)の側面に電極層を露出するように形成され、プリント基板130上に放射板131とは別に設けた実装ランド132にはんだ付けされている。ランド132は放射板131とは別に設けられ、両者の厚みはほぼ同じである。
【0093】
このはんだ付けは、まず、はんだペースト133を図41の点線で示すようにランド132に塗布し(塗布厚は100μm程度)、プリント基板130上の所定位置に電磁結合モジュール100を実装機で載置する。プリント基板130の表面には、放射板131が形成されているが、はんだペースト133は放射板131には塗布しない。その後、リフロー炉を通過させることにより、実装用電極122とランド132とがはんだ付けされる。
【0094】
リフロー炉ではんだペースト133が溶融状態にあるとき、はんだペースト133は実装用電極122に接触し、電磁結合モジュール100はプリント基板130に貼着された状態になる。リフロー炉から出された後、はんだペースト133は温度降下で収縮し、ランド132と実装用電極122との間でブリッジ状に硬化して矢印A方向の内部応力を生じる。これにて、給電回路基板120がプリント基板130側に引っ張られ、給電回路基板120の下面が放射板131の端部131a,131bに密着する。
【0095】
はんだ付け時におけるこのような現象は、詳しく検討すると、実装用電極122が給電回路基板120の側面に下面から離間して形成されていること(換言すれば、側面にのみ形成されて下面には形成されていないこと)、ランド132と給電回路基板120との間にギャップgが存在することに起因する。このギャップg部分のはんだペースト133が硬化時に収縮することにより、矢印A方向の応力が発生する。
【0096】
はんだペースト133の収縮による応力で給電回路基板120と放射板131とが直接密着することにより、給電回路基板120と放射板131とが間隔のばらつきなく良好に結合し、結合度のばらつきがほとんどなくなる。また、実装用電極122がはんだなどにより腐食しても、実装用電極122は給電回路121とは電気的に接続されておらず独立しているので、電磁結合モジュール100の電気的な特性や信頼性に悪影響を与えることはない。
【0097】
また、実装用電極122は給電回路基板120の対向する二つの側面に形成されているので、給電回路基板120をより精度が向上した状態でバランスよくプリント基板130上に実装することが可能になる。特に、本実施例では、実装用電極122を給電回路基板120の対向する二つの側面に線対称な位置に形成しているため、さらに実装精度やバランスが向上する。
【0098】
しかも、リフロー炉によるはんだ付けという簡易な製作工程を用いればよく、高価な実装機は不要である。また、このはんだ付けの後に、樹脂材で電磁結合モジュール100を被覆し、電磁結合モジュール100のプリント基板130への接合強度をさらに向上させてもよい。
【0099】
(第32実施例、図42及び図43参照)
第32実施例である無線ICデバイスは、図42及び図43に示すように、基本的には前記第31実施例と同様の構成を備え、共通する部品、部分には第31実施例と同じ符号を付し、重複する説明は省略する。
【0100】
第32実施例において、第31実施例と異なるのは、実装用電極122を積層体(給電回路基板120)の側面に露出させたビアホール電極にて形成した点にある。ビアホール電極を積層体の側面に露出させるには、給電回路基板120を製作する際に、マザー基板のカット線上にビアホール電極を形成しておけばよい。このようなビアホール電極(導体)の形成方法は、特開2002−26513号公報に詳しく記載されている。
【0101】
本第32実施例において、実装用電極122とプリント基板130上のランド132とがはんだペースト133で接合されることは第31実施例と同様であり、その作用効果も同様である。
【0102】
(変形例、図44参照)
図44に前記第32実施例における給電回路基板120の変形例を示す。この給電回路基板120は側面に凹部123を形成し、実装用電極122を該凹部123に配置したものである。凹部123にはんだペースト133を配置することで、はんだフィレットの拡がりを抑えることができる。
【0103】
(給電回路基板の第1例、図45及び図46参照)
ここで、給電回路基板120の第1例について説明する。この給電回路基板120は、図45に等価回路として示すように、互いに異なるインダクタンス値を有し、かつ、互いに逆相で磁気結合(相互インダクタンスMで示す)されているインダクタンス素子L11,L12を含む共振回路・整合回路を有する給電回路121を備えている。
【0104】
給電回路121に含まれるインダクタンス素子L11,L12は逆相で磁気結合して無線ICチップ5が処理する周波数に共振し、かつ、放射板131の端部131a,131bと電磁界結合している。また、給電回路121は、無線ICチップ5の入出力端子電極6と電気的に接続され、無線ICチップ5のインピーダンス(通常50Ω)と放射板131のインピーダンス(空間のインピーダンス377Ω)とのマッチングを図っている。
【0105】
従って、給電回路121は、無線ICチップ5から発信された所定の周波数を有する送信信号を放射板131に伝達し、かつ、放射板131で受信した信号から所定の周波数を有する受信信号を選択し、無線ICチップ5に供給する。それゆえ、この無線ICデバイスは、放射板131で受信した信号によって無線ICチップ5が動作され、該無線ICチップ5からの応答信号が放射板131から外部に放射される。
【0106】
以上のごとく、本無線ICデバイスにあっては、給電回路基板120に設けた給電回路121で信号の共振周波数を設定するため、本無線ICデバイスを種々の物品に取り付けてもそのままで動作し、放射特性の変動が抑制され、個別の物品ごとに放射板131などの設計変更をする必要がなくなる。そして、放射板131から放射する送信信号の周波数及び無線ICチップ5に供給する受信信号の周波数は、給電回路基板120における給電回路121の共振周波数に実質的に相当し、信号の最大利得は、給電回路121のサイズ、形状、給電回路121と放射板131との距離及び媒質の少なくとも一つで実質的に決定される。給電回路基板120において送受信信号の周波数が決まるため、放射板131の形状やサイズ、配置関係などによらず、例えば、無線ICデバイスを丸めたり、誘電体で挟んだりしても、周波数特性が変化することがなく、安定した周波数特性が得られる。
【0107】
次に、給電回路基板120の構成について図46を参照して説明する。給電回路基板120は、絶縁体(誘電体あるいは磁性体)からなるセラミックシート141a〜141iを積層、圧着、焼成したものである。最上層のシート141a上には、給電端子電極142a,142b、実装電極143a,143b、ビアホール導体144a,144b,145a,145bが形成されている。2層目〜8層目のシート141b〜141h上には、それぞれ、インダクタンス素子L11,L12を構成する配線電極146a,146bが形成され、必要に応じてビアホール導体147a,147b,148a,148bなどが形成されている。最下層のシート141i上には、給電回路基板120を平面透視したときに、インダクタンス素子L11,L12の外形と等しい又は小さい平面電極149a,149bが形成されている。
【0108】
以上のシート141a〜141iを積層することにより、配線電極146aがビアホール導体147aにて螺旋状に接続されたインダクタンス素子L11が形成され、配線電極146bがビアホール導体147bにて螺旋状に接続されたインダクタンス素子L12が形成される。また、配線電極146a,146bの線間にキャパシタンスが形成される。
【0109】
シート141b上の配線電極146aの端部146a−1はビアホール導体145aを介して給電端子電極142aに接続され、シート141h上の配線電極146aの端部146a−2はビアホール導体148a,145bを介して給電端子電極142bに接続される。シート141b上の配線電極146bの端部146b−1はビアホール導体144bを介して給電端子電極142bに接続され、シート141h上の配線電極146bの端部146b−2はビアホール導体148b,144aを介して給電端子電極142aに接続される。さらに、配線電極146a,146bの端部146a−2,146b−2はビアホール導体を介して平面電極149a,149bと接続される。
【0110】
以上の給電回路121において、インダクタンス素子L11,L12はそれぞれ逆方向に巻かれているため、インダクタンス素子L11,L12で発生する磁界が相殺される。磁界が相殺されるため、所望のインダクタンス値を得るためには配線電極146a,146bをある程度長くする必要がある。これにてQ値が低くなるので共振特性の急峻性がなくなり、共振周波数付近で広帯域化することになる。
【0111】
インダクタンス素子L11,L12は、給電回路基板120を平面透視したときに、左右の異なる位置に形成されている。また、インダクタンス素子L11,L12で発生する磁界はそれぞれ逆向きになる。これにて、給電回路121をループ状の放射板131の端部131a,131bに結合させたとき、端部131a,131bには逆向きの電流が励起され、ループ状の放射板131で信号を送受信することができる。なお、インダクタンス素子L11,L12をそれぞれ二つの異なる放射板に結合させてもよい。
【0112】
給電回路基板120を磁性体材料から形成し、磁性体内にインダクタンス素子L11,L12を形成することにより、大きなインダクタンス値を得ることができ、13.56MHz帯の周波数にも対応することができる。しかも、磁性体シートの加工ばらつきや透磁率のばらつきが生じても、無線ICチップ5とのインピーダンスのばらつきを吸収できる。磁性体の透磁率μは70程度が好ましい。
【0113】
また、二つのインダクタンス素子L11,L12のインダクタンス値が互いに異なっていることにより、給電回路121に複数の共振周波数を持たせて無線ICデバイスを広帯域化できる。但し、インダクタンス素子L11,L12のインダクタンス値を実質的に同じ値に設定してもよく、この場合、各インダクタンス素子L11,L12で発生する磁界の大きさを等しくすることができる。これにより、二つのインダクタンス素子L11,L12での磁界の相殺量を同じにすることができ、共振周波数付近での広帯域化が可能になる。
【0114】
なお、給電回路基板120は、セラミック又は樹脂からなる多層基板であってもよく、あるいは、ポリイミドや液晶ポリマなどの誘電体からなるフレキシブルなシートを積層した基板であってもよい。特に、インダクタンス素子L11,L12が給電回路基板120に内蔵されることで、給電回路121が基板外部の影響を受けにくくなり、放射特性の変動を抑制できる。
【0115】
また、インダクタンス素子L11,L12と放射板131との間に平面電極149a,149bを設けることで、給電回路121と放射板131との結合のばらつきを抑えることができる。なお、平面電極149a,149bは、配線電極146a,146bと電気的に接続されていなくてもよく、必ずしも必要なものではない。
【0116】
(給電回路基板の第2例、図47及び図48参照)
給電回路基板120の第2例は、図47に示す等価回路、図48に示す積層構造を備えている。この給電回路基板120は、絶縁体(誘電体あるいは磁性体)からなるセラミックシート221a〜221hを積層、圧着、焼成したものである。最上層のシート221a上には、給電端子電極222a,222b、実装電極223a,223bが形成されている。2層目のシート221b上には、配線電極225が形成されている。3層目〜7層目のシート221c〜221g上には、インダクタンス素子L11,L12を構成する配線電極225a,225bが形成されている。最下層のシート221h上には、平面電極228a,228bが形成されている。なお、各シート221a〜221fに形成されているビアホール導体は、簡略化のために説明を省略する。
【0117】
以上のシート221a〜221hを積層することにより、配線電極225aがビアホール導体にて螺旋状に接続されたインダクタンス素子L11が形成され、配線電極225bがビアホール導体にて螺旋状に接続されたインダクタンス素子L12が形成される。また、配線電極225a,225bの線間にキャパシタンスが形成される。
【0118】
配線電極225a,225bはシート221b上で配線電極225にて一体化され、シート221g上の配線電極225aの端部225a'はビアホール導体を介して給電端子電極222aに接続され、配線電極225bの端部225b'はビアホール導体を介して給電端子電極222bに接続されている。
【0119】
以上の構成からなるインダクタンス素子L11,L12を含む給電回路121は図47に示す等価回路であり、無線ICチップ5に対して直列に接続されたインダクタンス素子L11,L12は逆相で磁気結合して無線ICチップ5が処理する周波数において共振し、かつ、放射板131と電磁界結合している。また、給電回路121は無線ICチップ5のインピーダンス(通常50Ω)と放射板131のインピーダンス(空間のインピーダンス377Ω)とのマッチングを図っている。
【0120】
従って、本第2例の作用効果は前記第1例と同様である。特に、給電回路基板120の裏面に平面電極228a,228bを設けることによって給電回路121と放射板131との結合のばらつきを抑えることができる。なお、平面電極228a,228bは必ずしも必要なものではない。
【0121】
(実施例のまとめ)
前記無線ICデバイスにおいて、給電回路基板の表面に実装用電極を備えていることが好ましい。この実装用電極を給電用電極とは別に設けて放射板の基板に接合すること(例えば、はんだなどの導電材による電気的な接続、絶縁材による接続)により接合強度が向上し、無線ICデバイスが落下などにより衝撃を受けた場合や、放射基板や給電回路基板に熱応力が作用した場合であっても、給電用電極と放射板との電磁界結合に悪影響を及ぼすことがない。特に、実装用電極を給電回路基板の外縁部分に形成することが好ましく、給電回路基板の実装位置精度を向上させることができる。また、実装用電極は給電回路基板の側面に形成してもよい。実装用電極を側面に形成すれば、給電回路基板の裏面にスペース的な余裕が生じ、裏面のほぼ全体を放射板との結合に利用することができ、給電用電極と放射板との結合度が高まる。
【0122】
特に、給電回路基板の側面に形成された実装用電極が放射板を設けた基板上の実装ランドにはんだ付けすることにより、給電回路基板の下面と放射板とがはんだの硬化収縮によって密着し、給電回路基板と放射板とが間隔のばらつきなく良好に結合し、結合度のばらつきがほとんどなくなる。
【0123】
実装用電極は給電回路基板の対向する二つの側面に形成されていることが好ましい。給電回路基板をより精度が向上した状態でバランスよく基板上に実装することが可能になる。実装用電極を給電回路基板の対向する二つの側面に線対称な位置に形成することで、さらに実装精度やバランスが向上する。
【0124】
実装用電極は給電回路基板の下面から離間して形成されていてもよい。はんだが給電回路基板の下面にまわり込むことが防止され、給電回路基板と放射板との密着性を確実に確保できる。
【0125】
給電回路基板は絶縁体層と電極層とを積層して形成した積層体からなり、実装用電極は該積層体の少なくとも一つの側面に電極層を露出するように形成してもよい。積層体の側面から一部を露出させた電極層にて実装用電極を形成することにより、給電回路基板の実装強度が向上する。
【0126】
また、給電回路基板は絶縁体層と電極層とを積層して形成した積層体からなり、実装用電極は該積層体の少なくとも一つの側面に形成した凹部に配置されていてもよい。凹部にはんだを配置することで、はんだフィレットの拡がりを抑えることができる。
【0127】
また、給電回路基板内には、共振回路及び/又は整合回路を備えていてもよい。また、放射板は放射基板の表面及び/又は内部に形成されていてもよい。また、給電回路基板が放射板と対向する面から対向しない少なくとも一つの面にわたって給電用電極が設けられていてもよい。給電用電極の接合強度が向上する。給電用電極や実装用電極は複数のものが設けられていてもよい。
【0128】
給電回路基板にインダクタンス素子とキャパシタンス素子とが平面透視で異なる位置に設けられて異なる給電用電極と電磁界結合し、給電用電極にはそれぞれ異なる放射板が電磁界結合されていてもよい。容量による電界結合は磁界結合よりも信号エネルギーの受渡し効率が高いため、放射特性を向上させることができる。しかも、インダクタンス素子及びキャパシタンス素子において別々に給電用電極との結合状態を設定でき、放射特性の設計自由度が向上する。
【0129】
また、共振回路又は整合回路は無線ICと給電用電極とが直流により接続されるように構成されていてもよい。また、共振回路又は整合回路は給電回路基板に内蔵した素子と給電回路基板上に実装した素子、又は、放射板を設けた基板上に実装した素子とで構成されていてもよい。給電回路基板や放射基板の上にインダクタンス値の大きなチップインダクタやキャパシタンス値の大きなチップコンデンサを実装すれば、給電回路基板に内蔵した素子は値の小さなものでよく、給電回路基板のサイズをより小型化できる。
【0130】
給電回路はインダクタンス値の異なる少なくとも二つのインダクタンス素子を含むことが好ましい。異なるインダクタンス値により給電回路に複数の共振周波数を持たせて無線ICデバイスを広帯域化でき、設計変更することなく世界各国で使用することが可能になる。
【0131】
給電回路は放射板と電磁界結合し、該放射板から放射される信号の共振周波数は該給電回路の自己共振周波数に実質的に相当することが好ましい。信号の周波数は給電回路で決定されるため、放射板の長さや形状は任意であり、放射板の設計自由度が向上する。また、放射板の形状やサイズ、配置関係などによらず、例えば、無線ICデバイスを丸めたり、誘電体で挟んだりしても、周波数特性が変化することがなく、安定した周波数特性が得られる。しかも、本無線ICデバイスを種々の物品に取り付けてもそのままで動作し、放射特性の変動が抑制され、個別の物品ごとに放射板などの設計変更をする必要がなくなる。
【0132】
給電回路基板の下面には電極が形成されていないことが好ましい。はんだが給電回路基板の下面にまわり込むことが防止され、給電回路基板と放射板との密着性を確実に確保できる。
【0133】
給電回路基板はセラミックや液晶ポリマなど樹脂からなる多層基板で構成されていてもよい。多層基板で構成すれば、インダクタンス素子やキャパシタンス素子を高精度に内蔵可能であり、配線電極の形成の自由度が向上する。
【0134】
また、放射基板と給電回路基板との間に封止樹脂が設けられていること、あるいは、無線ICチップ、給電回路基板及び放射板の少なくとも一つを覆う保護膜が設けられていることが好ましい。耐環境特性が向上する。
【0135】
また、無線ICの入出力インピーダンスの虚数部と、給電回路基板の無線ICと接続する部分から給電用電極側を見たときのインピーダンスの虚数部とが使用周波数範囲又はその近傍で共役になっていることが好ましい。
【0136】
(他の実施例)
なお、本発明に係るプリント配線基板は前記実施例に限定するものではなく、その要旨の範囲内で種々に変更することができる。
【0137】
例えば、共振回路は様々な構成のものを採用できることは勿論である。また、前記実施例に示した各種電極や給電回路基板の材料はあくまで例示であり、必要な特性を有する材料であれば、任意のものを使用することができる。また、無線ICチップを給電回路基板に実装するのに、金属バンプ以外の処理を用いてもよい。無線ICをチップタイプではなく、給電回路基板に形成したものであってもよい。さらに、給電回路基板の実装用電極を実装ランドに固定するのに、はんだ以外に、硬化収縮する接着材を用いてもよい。
【0138】
また、無線ICデバイスが搭載される電子機器は、携帯電話に限らず、種々の無線通信機器、テレビや冷蔵庫などの家電製品などであってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0139】
以上のように、本発明は、プリント配線基板に有用であり、特に、プリント配線基板に対する無線ICデバイスの接合強度が向上する点で優れている。
【符号の説明】
【0140】
1…無線ICデバイス
5…無線ICチップ
10,30…給電回路基板
18,18a〜18d…実装用電極
19,19a,19b…給電用電極
20…放射基板(プリント配線基板)
21,21a,21b…放射板
21a',21b'…結合部
24,24a〜24d…実装電極
41…はんだ
50…携帯電話
55…プリント配線基板
100…電磁結合モジュール
120…給電回路基板
121…給電回路
122…実装用電極
130…プリント基板
131…放射板
132…実装ランド
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリント配線基板、特に、RFID(Radio Frequency Identification)システムに用いられる無線ICを有する無線ICデバイスを備えたプリント配線基板に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、物品の管理システムとして、誘導電磁界を発生するリーダライタと物品や容器などに付された所定の情報を記憶したICチップ(ICタグ、無線ICチップとも称する)とを非接触方式で通信し、情報を伝達するRFIDシステムが開発されている。
【0003】
ICチップを搭載した無線ICデバイスとしては、従来、特許文献1に記載されているように、誘電体基板にダイポールアンテナ(一対の主アンテナ素子と整合部とからなる)を設け、ダイポールアンテナの端部にタグICを電気的に接続した無線ICタグが知られている。整合部はタグICと主アンテナ素子との間に配置され、両者をインピーダンス整合させる機能を有している。
【0004】
しかしながら、この無線ICタグでは以下の問題点を有している。(1)整合部と主アンテナ素子とを単一の基板上に隣接して形成しているため、無線ICタグのサイズが大きくなる。(2)主アンテナ素子及び整合部を配置した大きな基板上に形成した電極に微小な無線ICチップを実装する必要があり、高精度な実装機が必要であること、及び、実装時の位置合わせ時間を要することから製造時間が長くなり、無線ICタグのコストが上昇する。(3)主アンテナ素子と無線ICチップとが電気的に導通状態で接続されているため、主アンテナ素子から静電気が侵入した場合、無線ICチップが破壊される可能性がある。
【0005】
また、特許文献2には、表面にアンテナコイルを形成したICチップを用いた無線ICカードが記載されている。この無線ICカードにおいては、ICチップに形成された第1のアンテナコイルとモジュール基板上に形成された第2のアンテナコイルとを磁界により結合している。
【0006】
しかしながら、特許文献2に記載の無線ICカードでは、第1及び第2のアンテナコイルの間隔を所望の結合が得られる寸法に精度よく管理する必要がある。具体的には特許文献2の段落0107に記載されているように、20μm以下と微小な間隔に設定する必要がある。このような微小な間隔で結合させる場合、二つのアンテナコイルの間隔やアンテナコイルの間に配置する絶縁性接着剤の量や誘電率が少しでもばらつくと結合状態が変化し、無線ICカードとしての放射特性が低下するという問題点を有している。また、モジュール基板上にICチップを微小な間隔で高精度に実装するためには、高価な実装機が必要であり、無線ICカードのコストが高くなってしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−244778号公報
【特許文献2】特開2000−311226号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、本発明の目的は、無線ICデバイスとの接合強度が向上したプリント配線基板を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するため、本発明の一形態であるプリント配線基板は、
送受信信号を処理する無線IC、及び、該無線ICに接続された給電回路を備えた無線ICデバイスと、
前記給電回路に電磁界結合された放射板と、
を備えたプリント配線基板であって、
前記無線ICデバイスには、前記給電回路とは電気的に接続されていない実装用電極が設けられており、
前記無線ICデバイスは、前記実装用電極によって前記プリント配線基板に固定されていること、
を特徴とする。
【0010】
前記無線ICデバイスにおいては、放射板と給電回路とが電磁界結合されており、かつ、無線ICデバイスは給電回路とは電気的に接続されていない実装用電極が設けられ、この実装用電極によって無線ICデバイスがプリント配線基板に固定されているため、無線ICデバイスのプリント配線基板に対する接合強度が向上し、たとえ、落下などの衝撃が加わったり、熱応力が加わっても、電気的な特性に大きな影響を及ぼすことがない。また、放射板から侵入する静電気による無線ICの破壊が防止される。
【0011】
なお、無線ICは、チップとして構成されていてもよく、さらに、本無線ICデバイスが取り付けられる物品に関する各種情報がメモリされている以外に、情報が書き換え可能であってもよく、RFIDシステム以外の情報処理機能を有していてもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、プリント配線基板に対する無線ICデバイスの接合強度が向上し、無線ICデバイスが落下などにより衝撃を受けた場合や、熱応力が作用した場合であっても、給電回路と放射板との電磁界結合に悪影響を及ぼすことがない。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】無線ICデバイスの第1実施例を示す断面図である。
【図2】無線ICデバイスの第2実施例を示す断面図である。
【図3】無線ICデバイスの第3実施例を示す断面図である。
【図4】無線ICデバイスの第4実施例を示す断面図である。
【図5】無線ICデバイスの第5実施例を示す断面図である。
【図6】無線ICデバイスの第6実施例を示す断面図である。
【図7】無線ICデバイスの第7実施例を示す断面図である。
【図8】無線ICデバイスの第8実施例を示す断面図である。
【図9】無線ICデバイスの第9実施例を示す断面図である。
【図10】無線ICデバイスの第10実施例を示す断面図である。
【図11】無線ICデバイスの第11実施例を示す断面図である。
【図12】無線ICデバイスの第12実施例を示す断面図である。
【図13】無線ICデバイスの第13実施例を示す断面図である。
【図14】無線ICデバイスの第14実施例を示す断面図である。
【図15】無線ICデバイスの第15実施例を示す断面図である。
【図16】無線ICデバイスの第16実施例を示す断面図である。
【図17】無線ICデバイスの第17実施例を示す断面図である。
【図18】無線ICデバイスの第18実施例を示す平面図である。
【図19】無線ICチップを示す斜視図である。
【図20】共振回路の第1例を内蔵した給電回路基板を示す分解斜視図である。
【図21】共振回路の第1例を示す等価回路図である。
【図22】共振回路の第2例を内蔵した給電回路基板を示す分解斜視図である。
【図23】共振回路の第2例を示す等価回路図である。
【図24】電子機器の一実施例である携帯電話を示す斜視図である。
【図25】前記携帯電話に内蔵されているプリント配線基板を示す説明図である。
【図26】前記プリント配線基板に実装されている無線ICデバイスを示す断面図である。
【図27】前記プリント配線基板に実装されている無線ICデバイスを示す平面図である。
【図28】無線ICデバイスの第19実施例を示し、(A)は断面図、(B)は放射板を示す平面図である。
【図29】無線ICデバイスの第20実施例における放射板を示す平面図である。
【図30】無線ICデバイスの第21実施例における放射板を示す平面図である。
【図31】無線ICデバイスの第22実施例における放射板を示す平面図である。
【図32】無線ICデバイスの第23実施例を示し、(A)は無線ICチップと給電回路基板を示す断面図、(B)は放射板を示す平面図である。
【図33】無線ICデバイスの第24実施例を示す断面図である。
【図34】無線ICデバイスの第25実施例を示す断面図である。
【図35】無線ICデバイスの第26実施例における放射板を示す平面図である。
【図36】無線ICデバイスの第27実施例における放射板を示す平面図である。
【図37】無線ICデバイスの第28実施例を示し、(A)は断面図、(B)は放射板を示す平面図である。
【図38】無線ICデバイスの第29実施例を示し、(A)は断面図、(B)は放射板を示す平面図である。
【図39】無線ICデバイスの第30実施例を示し、(A)は断面図、(B)は放射板を示す平面図である。
【図40】無線ICデバイスの第31実施例を示す斜視図である。
【図41】前記第31実施例である無線ICデバイスの要部に関する断面図である。
【図42】無線ICデバイスの第32実施例を示す斜視図である。
【図43】前記第32実施例である無線ICデバイスの要部に関する断面図である。
【図44】給電回路基板の変形例を示す斜視図である。
【図45】給電回路基板の第1例を構成する給電回路を示す等価回路図である。
【図46】給電回路基板の第1例の積層構造を示す平面図である。
【図47】給電回路基板の第2例を構成する給電回路を示す等価回路図である。
【図48】給電回路基板の第2例の積層構造を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係るプリント配線基板の実施例について添付図面を参照して説明する。なお、各図において、共通する部品、部分は同じ符号を付し、重複する説明は省略する。
【0015】
(無線ICデバイスの第1実施例、図1参照)
図1に無線ICデバイスの第1実施例を示す。この無線ICデバイス1は、所定周波数の送受信信号を処理する無線ICチップ5と、該無線ICチップ5を搭載した給電回路基板10と、放射基板(プリント配線基板)20に設けた放射板21a,21bとからなる。
【0016】
無線ICチップ5は、クロック回路、ロジック回路、メモリ回路などを含み、必要な情報がメモリされており、図19に示すように、裏面に入出力端子電極6,6及び実装用端子電極7,7が設けられている。入出力端子電極6,6が給電回路基板10の表面に設けた電極12a,12b(図20参照)に金属バンプ8を介して電気的に接続されている。また、実装用端子電極7,7が電極12c,12dに金属バンプ8を介して電気的に接続されている。なお、金属バンプ8の材料としては、Au、Ag、はんだなどを用いることができる。
【0017】
また、給電回路基板10の表面には、無線ICチップ5と給電回路基板10との接合強度を向上させるために、無線ICチップ5との接続部を覆うように保護膜9が設けられている。
【0018】
放射板21a,21bは多層構造とした放射基板20内にAl、Cu、Agなどの金属めっきや導電性ペーストなどによる電極膜を所定の形状に設けたもので、表面には電極26a,26bが設けられている。なお、放射基板20はガラスエポキシ樹脂製のプリント配線基板のみならず他の樹脂を用いた樹脂製基板やセラミック基板であってもよい。
【0019】
給電回路基板10は、インダクタンス素子を有する共振回路(図1では省略)を内蔵したもので、裏面には給電用電極19a,19bが設けられ、表面には接続用電極12a〜12d(図20参照)が形成されている。給電用電極19a,19bは基板10に内蔵された共振回路と結合している。また、給電用電極19a,19bは導電性接着剤22を介して放射基板20上に設けた電極26a,26bと電気的に導通状態で接続されている。即ち、給電用電極19a,19bは放射板21a,21bと電極26a,26b及び導電性接着剤22を介して電気的に導通しない状態で容量により結合されている。なお、導電性接着剤22に代えて絶縁性接着剤やはんだなどを用いてもよい。また、電極26a,26bは必ずしも必要なものではない。
【0020】
給電回路基板10には所定の共振周波数を有する共振回路が内蔵されており、無線ICチップ5から発信された所定の周波数を有する送信信号を給電用電極19a,19bなどを介して放射板21a,21bに伝達し、かつ、放射板21a,21bで受けた信号から所定の周波数を有する受信信号を選択し、無線ICチップ5に供給する。それゆえ、この無線ICデバイス1は、放射板21a,21bで受信された信号によって無線ICチップ5が動作され、該無線ICチップ5からの応答信号が放射板21a,21bから外部に放射される。
【0021】
前記無線ICデバイス1にあっては、給電回路基板10の表面に設けた給電用電極19a,19bが、基板10に内蔵された共振回路と結合するとともに、アンテナとして機能する放射板21a,21bと電気的に非導通状態で結合している。給電回路基板10は比較的サイズの大きい放射板21a,21bを搭載する必要はなく、極めて小型に構成できる。無線ICチップ5はこのような小型の給電回路基板10に搭載すればよく、従来から広く使用されているIC実装機などを用いることができ、実装コストが低減する。また、使用周波数帯を変更するに際しては、共振回路の設計を変更するだけでよく、放射板21a,21bなどはそのまま用いてもよい。また、放射板21a,21bと給電用電極19a,19bとは電気的に非導通であるので、放射板21a,21bから侵入する静電気が無線ICチップ5に印加されることはなく、静電気による無線ICチップ5の破壊が防止される。
【0022】
(無線ICデバイスの第2実施例、図2参照)
図2に無線ICデバイスの第2実施例を示す。この無線ICデバイス1は、基本的には前記第1実施例と同様の構成からなり、給電用電極19a,19bを給電回路基板10の裏面から両側面にわたって設けたものである。給電用電極19a,19bと放射板21a,21bとの結合が大きくなる。その他の作用効果は第1実施例と同様である。
【0023】
(無線ICデバイスの第3実施例、図3参照)
図3に無線ICデバイスの第3実施例を示す。この無線ICデバイス1は、基本的には前記第1実施例と同様の構成からなり、給電回路基板10の表面に無線ICチップ5を覆うエポキシ系、ポリイミド系などの樹脂製の保護膜23を設けたものである。保護膜23を設けることで、耐環境特性が向上する。その他の作用効果は第1実施例と同様である。
【0024】
(無線ICデバイスの第4実施例、図4参照)
図4に無線ICデバイスの第4実施例を示す。この無線ICデバイス1は、基本的には前記第1実施例と同様の構成からなり、電極26a,26bを両側に延在して放射板としても機能するようにしたものである。その他の作用効果は第1実施例と同様である。
【0025】
(無線ICデバイスの第5実施例、図5参照)
図5に無線ICデバイスの第5実施例を示す。この無線ICデバイス1は、基本的には前記第1実施例と同様の構成からなり、多層構造とした放射基板20に放射板21a,21b、電極26c,26dをそれぞれ2層に内蔵し、表面に電極26a,26bを設け、電極26a,26b及び電極26c,26dをそれぞれビアホール導体27にて電気的に接続したものである。
【0026】
本第5実施例においては、放射板21a,21bが電極26c,26dと主に容量による電界結合し、電極26a,26bがビアホール導体27を介して電極26c,26dと接続されるとともに、導電性接着剤22を介して給電用電極19a,19bと電気的に接続されている。従って、第5実施例の作用効果は第1実施例と同様である。
【0027】
(無線ICデバイスの第6実施例、図6参照)
図6に無線ICデバイスの第6実施例を示す。この無線ICデバイス1は、基本的には前記第1実施例と同様の構成からなり、多層構造とした放射基板20に放射板21a,21bを3段に積層したものである。それぞれの放射板21a,21bが給電回路基板10に設けた給電用電極19a,19bと電極26a,26bなどを介して主として容量により電界結合しているため、放射特性が向上する。また、長さの異なる放射板を持つため無線ICデバイスの使用周波数帯域を広げることができる。その他の作用効果は第1実施例と同様である。
【0028】
(無線ICデバイスの第7実施例、図7参照)
図7に無線ICデバイスの第7実施例を示す。この無線ICデバイス1は、基本的には前記第1実施例と同様の構成からなり、放射板21a,21bを多層構造とした放射基板20にビアホール導体28を介してコイル形状に設けたものである。コイル形状をなす放射板21a,21bのそれぞれの一端部と給電回路基板20に設けた給電用電極19a,19bとが電極26a,26bなどを介して主として容量による電界結合している。放射板21a,21bをコイル形状とすることにより、放射特性が向上する。その他の作用効果は第1実施例と同様である。
【0029】
(無線ICデバイスの第8実施例、図8参照)
図8に無線ICデバイスの第8実施例を示す。この無線ICデバイス1は、基本的には前記第1実施例と同様の構成からなり、共振回路を給電回路基板10に内蔵した素子と給電回路基板10上に実装した素子71とで構成したものである。素子71はチップインダクタ、チップコンデンサなどである。チップタイプの素子はインダクタンス値やキャパシタンス値の大きなものを使用でき、給電回路基板10に内蔵する素子は値の小さなものでよいので、給電回路基板10をより小型にできる。その他の作用効果は第1実施例と同様である。
【0030】
(無線ICデバイスの第9実施例、図9参照)
図9に無線ICデバイスの第9実施例を示す。この無線ICデバイス1は、基本的には前記第1実施例と同様の構成からなり、共振回路を給電回路基板10に内蔵した素子と放射基板20上に実装した素子71とで構成したものである。素子71は前記第8実施例で説明したようにチップインダクタ、チップコンデンサなどであり、その作用効果は第8実施例と同様である。
【0031】
(無線ICデバイスの第10実施例、図10参照)
図10に無線ICデバイスの第10実施例を示す。この無線ICデバイス1は、放射基板であるプリント配線基板20に無線ICデバイス1以外の種々の電子回路部品を搭載したものである。換言すれば、携帯電話などの無線通信機器に内蔵されているプリント配線基板20に無線ICデバイス1を搭載したものであり、無線ICデバイス1としては前記第1実施例と同様の構成からなる。また、放射板21a,21bはグランド電極やシールド電極の機能を兼ねていてもよい。
【0032】
本第10実施例において、搭載されている電子回路部品は、例えば、チップ抵抗72、IC部品を実装した無線通信回路73である。なお、第1〜第10実施例において、放射板21a,21bは放射基板20の裏面に形成しても構わない。
【0033】
(無線ICデバイスの第11実施例、図11参照)
図11に無線ICデバイスの第11実施例を示す。この無線ICデバイス1は、前記第10実施例と同様に、無線通信機器に内蔵されているプリント配線基板20上に搭載したもので、チップ抵抗72、無線通信回路73に加えて、給電回路基板10を実装した主面に対向する面に無線通信回路74、チップコンデンサ75及び回路基板76を搭載している。このとき、放射板21a,21bはグランド電極やシールド電極の機能を兼ねていてもよい。
【0034】
(無線ICデバイスの第12実施例、図12参照)
図12に無線ICデバイスの第12実施例を示す。この無線ICデバイス1は、前記第11実施例と同様に、無線通信機器に内蔵されているプリント配線基板20上に搭載したもので、プリント配線基板20には表面の部品と裏面の部品との磁気シールドを図るためのシールド電極77が内蔵されている。
【0035】
(無線ICデバイスの第13実施例、図13図参照)
図13に無線ICデバイスの第13実施例を示す。この無線ICデバイス1は、前記第10実施例と同様に、無線通信機器に内蔵されているプリント配線基板20上に搭載したもので、表面に設けた給電回路基板10及び無線ICチップ5と裏面に設けた無線通信回路74、チップ抵抗75及び回路基板76との磁気シールドを図るためのシールド電極77が基板20に内蔵されている。
【0036】
(無線ICデバイスの第14実施例、図14参照)
図14に無線ICデバイスの第14実施例を示す。この無線ICデバイス1は、前記第10〜第13実施例と同様に、無線通信機器に内蔵されているプリント配線基板20上に搭載したものである。放射板21a,21bはシールド電極77,77の間に積層されており、給電回路基板10に設けた給電用電極19a,19bとは電極26a,26bなどを介して主として容量による電界結合している。
【0037】
(無線ICデバイスの第15実施例、図15参照)
図15に無線ICデバイスの第15実施例を示す。この無線ICデバイス1は、無線通信機器に内蔵されているプリント配線基板20に搭載したものである。無線ICチップ5を備えた給電回路基板10はプリント配線基板20の側面に実装され、給電用電極19は基板20内に設けた放射板21と電気的に導通しない状態で電磁界結合している。また、プリント配線基板20の表裏面にはチップ抵抗などの電子部品78が実装され、内部には複数のシールド電極77が設けられている。
【0038】
(無線ICデバイスの第16実施例、図16参照)
図16に無線ICデバイスの第16実施例を示す。この無線ICデバイス1は、無線通信機器に内蔵されているプリント配線基板20に搭載したものである。無線ICチップ5を備えた給電回路基板10はプリント配線基板20の側面に実装されている。この給電回路基板10は側面に給電用電極19を設けたもので、給電用電極19は基板20内に設けた放射板21と電気的に導通しない状態で電磁界結合している。また、プリント配線基板20の表裏面にはチップ抵抗などの電子部品78が実装され、内部には複数のシールド電極77が設けられている。
【0039】
(無線ICデバイスの第17実施例、図17参照)
図17に無線ICデバイスの第17実施例を示す。この無線ICデバイス1は、無線通信機器に内蔵されているプリント配線基板20内に収容したもので、給電用電極19が基板20内に設けた放射板21と電気的に導通しない状態で電磁界結合している。また、プリント配線基板20の表裏面にはチップ抵抗などの電子部品78が実装され、内部には複数のシールド電極77が設けられている。
【0040】
(無線ICデバイスの第18実施例、図18参照)
図18に無線ICデバイスの第18実施例を示す。図18は平面図であって、この無線ICデバイス1はプリント配線基板20の側面に形成した凹部20aに収容され、給電回路基板10の裏面に設けた給電用電極19は基板20内に設けた放射板21と電気的に導通しない状態で電磁界結合している。
【0041】
(共振回路の第1例、図20及び図21参照)
給電回路基板10に内蔵された共振回路の第1例を、図20に給電回路基板10の分解斜視図として、図21に等価回路として示す。
【0042】
給電回路基板10は、図20に示すように、誘電体からなるセラミックシート11A〜11Hを積層、圧着、焼成したもので、シート11Aには接続用電極12a,12bと電極12c,12dとビアホール導体13a,13bが形成され、シート11Bにはキャパシタ電極18aと導体パターン15a,15bとビアホール導体13c〜13eが形成され、シート11Cにはキャパシタ電極18bとビアホール導体13d〜13fが形成されている。さらに、シート11Dには導体パターン16a,16bとビアホール導体13e,13f,14a,14b,14dが形成され、シート11Eには導体パターン16a,16bとビアホール導体13e,13f,14a,14c,14eが形成され、シート11Fにはキャパシタ電極17と導体パターン16a,16bとビアホール導体13e,13f,14f,14gが形成され、シート11Gには導体パターン16a,16bとビアホール導体13e,13f,14f,14gが形成され、シート11Hには導体パターン16a,16bとビアホール導体13fが形成されている。
【0043】
以上のシート11A〜11Hを積層することにより、ビアホール導体14c,14d,14gにて螺旋状に接続された導体パターン16aにてインダクタンス素子L1が構成され、ビアホール導体14b,14e,14fにて螺旋状に接続された導体パターン16bにてインダクタンス素子L2が構成され、キャパシタ電極18a,18bにてキャパシタンス素子C1が構成され、キャパシタ電極18b,17にてキャパシタンス素子C2が構成される。
【0044】
インダクタンス素子L1の一端はビアホール導体14c,13d、導体パターン15a、ビアホール導体13cを介してキャパシタ電極18bに接続され、インダクタンス素子L2の一端はビアホール導体14aを介してキャパシタ電極17に接続される。また、インダクタンス素子L1,L2の他端は、シート11H上で一つにまとめられ、ビアホール導体13e、導体パターン15b、ビアホール導体13aを介して接続用電極12aに接続されている。さらに、キャパシタ電極18aはビアホール導体13bを介して接続用電極12bに電気的に接続されている。
【0045】
そして、接続用電極12a,12bが金属バンプ8(図1など参照)を介して無線ICチップ5の端子電極6,6(図19参照)と電気的に接続される。電極12c,12dは無線ICチップ5の端子電極7,7に接続される。
【0046】
また、給電回路基板10の裏面には給電用電極19a,19bが導体ペーストの塗布などで設けられ、給電用電極19aはインダクタンス素子L(L1,L2)と電磁界により結合し、給電用電極19bはキャパシタ電極18bとビアホール導体13fを介して電気的に接続される。給電用電極19a,19bは放射板21a,21bと電気的に導通しない状態で結合されることは前述のとおりである。以上の共振回路の等価回路を図21に示す。
【0047】
なお、この共振回路において、インダクタンス素子L1,L2は2本の導体パターン16a,16bを並列に配置した構造としている。2本の導体パターン16a,16bはそれぞれ線路長が異なっており、異なる共振周波数とすることができ、無線ICデバイス1を広帯域化できる。
【0048】
なお、各セラミックシート11A〜11Hは磁性体のセラミック材料からなるシートであってもよく、給電回路基板10は従来から用いられているシート積層法、厚膜印刷法などの多層基板の製作工程により容易に得ることができる。
【0049】
また、前記シート11A〜11Hを、例えば、ポリイミドや液晶ポリマなどの誘電体からなるフレキシブルなシートとして形成し、該シート上に厚膜形成法などで電極や導体を形成し、それらのシートを積層して熱圧着などで積層体とし、インダクタンス素子L1,L2やキャパシタンス素子C1,C2を内蔵させてもよい。
【0050】
前記給電回路基板10において、インダクタンス素子L1,L2とキャパシタンス素子C1,C2とは平面透視で異なる位置に設けられ、インダクタンス素子L1,L2により給電用電極19a(放射板21a)と電磁界的に結合し、キャパシタンス素子C1により放射板21bと電界的に結合している。
【0051】
従って、給電回路基板10上に前記無線ICチップ5を搭載した無線ICデバイス1は、図示しないリーダライタから放射される高周波信号(例えば、UHF周波数帯)を放射板21a,21bで受信し、給電用電極19a,19bと磁界結合及び電界結合している共振回路を共振させ、所定の周波数帯の受信信号のみを無線ICチップ5に供給する。一方、この受信信号から所定のエネルギーを取り出し、このエネルギーを駆動源として無線ICチップ5にメモリされている情報を、共振回路にて所定の周波数に整合させた後、給電用電極19a,19bを介して放射板21a,21bに伝え、該放射板21a,21bからリーダライタに送信、転送する。
【0052】
給電回路基板10においては、インダクタンス素子L1,L2とキャパシタンス素子C1,C2で構成された共振回路にて共振周波数特性が決定される。放射板21a,21bから放射される信号の共振周波数は、共振回路の自己共振周波数によって実質的に決まる。なお、無線ICチップ5の入出力インピーダンスの虚数部と給電回路基板10上の接続用電極12a,12bから給電用電極19a,19b側を見たときのインピーダンスの虚数部が共役となるように給電回路基板10内の回路設計を行うことで効率的な信号の送受信が行える。
【0053】
ところで、共振回路は無線ICチップ5のインピーダンスと放射板21a,21bのインピーダンスを整合させるためのマッチング回路を兼ねている。給電回路基板10は、インダクタンス素子やキャパシタンス素子で構成された共振回路とは別に設けられたマッチング回路を備えていてもよい(この意味で、共振回路を整合回路とも称する)。共振回路にマッチング回路の機能をも付加しようとすると、共振回路の設計が複雑になる傾向がある。共振回路とは別にマッチング回路を設ければ、共振回路、マッチング回路をそれぞれ独立して設計できる。
【0054】
また、マッチング回路のみを備えた構成でも構わない。さらに、インダクタンス素子のみで給電回路基板10内の回路を構成しても構わない。その場合、インダクタンス素子は放射板21a,21bと無線ICチップ5とのインピーダンス整合をとる機能を有している。
【0055】
また、前記第8及び第9実施例に示したように、共振回路を構成する素子の一部を基板10又は基板20に実装してもよい。
【0056】
(共振回路の第2例、図22及び図23参照)
給電回路基板30に内蔵された共振回路の第2例を、図22に給電回路基板30の分解斜視図として、図23に等価回路として示す。
【0057】
給電回路基板30は、図22に示すように、誘電体からなるセラミックシート31A〜31Eを積層、圧着、焼成したもので、シート31Aには接続用電極12a,12bと電極12c,12dとビアホール導体33a,33bが形成されている。シート31B,31C,31Dには導体パターン36とビアホール導体33c,33dが形成されている。シート33Eには導体パターン36とビアホール導体33eが形成されている。
【0058】
以上のシート31A〜31Eを積層することにより、ビアホール導体33cにて螺旋状に接続された導体パターン36にてインダクタンス素子Lが構成される。また、導体パターン36の線間容量にてキャパシタンス素子Cが構成される。インダクタンス素子Lの一端はビアホール導体33aを介して接続用電極12aに接続されている。
【0059】
また、給電回路基板30の裏面には給電用電極19が導体ペーストの塗布などで設けられ、給電用電極19はビアホール導体33eを介してインダクタンス素子Lの他端に接続されるとともに、ビアホール導体33d,33bを介して接続用電極12bに接続されている。給電用電極19は放射板21と電気的に導通しない状態で結合される。以上の共振回路の等価回路は図23に示すとおりである。
【0060】
この共振回路は無線ICチップ5と給電用電極19とが直流により接続されるように構成されており、放射板21で受信した高周波信号を無線ICチップ5に供給する。一方、無線ICチップ5にメモリされている情報を、この共振回路を介して給電用電極19及び放射板21に伝え、放射板21からリーダライタに送信、転送する。
【0061】
(電子機器の実施例、図24〜図27参照)
次に、電子機器の一実施例として携帯電話を説明する。図24に示す携帯電話50は、複数の周波数に対応しており、地上波デジタル信号、GPS信号、WiFi信号、CDMAやGSM(登録商標)などの通信用信号が入力される。
【0062】
筐体51内には、図25に示すように、プリント配線基板55が設置されている。このプリント配線基板55には、無線通信用回路60と無線ICデバイス1とが配置されている。無線通信用回路60は、IC61と基板55に内蔵されたバラン62とBPF63とコンデンサ64とで構成されている。無線ICチップ5を搭載した給電回路基板10は、プリント配線基板55に設けた放射板21a,21bに給電用電極19a,19bが電気的に導通しない結合状態で搭載され、無線ICデバイス1を構成している。
【0063】
プリント配線基板55に搭載される無線ICデバイス1としては、図26及び図27に示すものであってもよい。この無線ICデバイス1は、無線ICチップ5を搭載した給電回路基板10の両側部に給電用電極19a,19bを設け、該給電用電極19a,19bを基板55に設けた放射板21a,21bに電気的に導通しない状態で結合させたものである。給電回路基板10内の共振回路は、例えば、図20に示したものである。
【0064】
プリント配線基板55の表面には、図27に斜線を付して示すグランドパターン56が形成され、グランドパターン56の非形成領域56aに無線ICデバイス1が実装されている。また、放射板21a,21bはミアンダ形状に配置されている。なお、グランドパターン56は、放射板21a,21bの放射特性に影響を与えない程度に放射板21a,21bから離しておく必要がある。
【0065】
(無線ICデバイスの第19実施例、図28参照)
図28に無線ICデバイスの第19実施例を示す。本第19実施例から以下に示す第30実施例は、前記第1実施例から第18実施例に示した給電用電極19,19a,19bに加えて、給電回路基板10に実装用電極18a〜18dを設けたものである。
【0066】
詳しくは、本第19実施例において、給電用電極19a,19bは給電回路基板10に内蔵され、ミアンダ形状とされている放射板21a,21bの一端部である結合部21a',21b'とは電気的に導通することはなく電磁界結合している。給電回路基板10の裏面には実装用電極18a,18bが形成されており、放射基板20上には実装電極24a,24bが形成されている。実装用電極18a,18bと実装電極24a,24bとはそれぞれはんだ41などの導電材(絶縁材である接着剤であってもよい)にて接続されている。
【0067】
他の構成は前記第1実施例と同様であり、無線ICデバイスとしての基本的な作用効果も第1実施例と同様である。加えて、本第19実施例では、給電回路基板10の裏面に実装用電極18a,18bを設けて放射基板20上に設けた実装電極24a,24bと接続したため、給電回路基板10と放射基板20との接合強度が向上し、無線ICデバイスが落下などにより衝撃を受けた場合や、放射基板20や給電回路基板10が熱収縮して熱応力が作用した場合であっても、給電用電極19a,19bと放射板21a,12bとの電磁界結合に悪影響を及ぼすことがない。
【0068】
(無線ICデバイスの第20実施例、図29参照)
図29に無線ICデバイスの第20実施例を示す。本第20実施例は、基本的には前記第1及び第19実施例と同様の構成からなり、異なるのは、放射基板20上に一つの実装電極24を放射板21a,21bの一端部である結合部21a',21b'に挟まれた状態で設けた点にある。給電回路基板10の裏面に設けた実装用電極は、図示しないが、実装電極24と対向する位置に単一のものが形成されており、実装電極24とはんだや接着剤にて接続されている。
【0069】
他の構成は前記第1実施例と同様であり、無線ICデバイスとしての基本的な作用効果も第1実施例と同様であり、実装用電極を設けた作用効果は前記第19実施例と同様である。加えて、実装用電極を中央部分に形成するため、放射板21a,21bの引き回しを給電回路基板10の長手方向からでも行うことができる。また、給電回路基板10の撓みなどに対し、突起部への応力が小さくなる。
【0070】
(無線ICデバイスの第21実施例、図30参照)
図30に無線ICデバイスの第21実施例を示す。本第21実施例は、基本的には前記第1及び第20実施例と同様の構成からなり、異なるのは、放射基板20上に二つの実装電極24a,24bを放射板21a,21bの一端部である結合部21a',21b'に挟まれた状態で設けた点にある。実装電極24a,24bは長辺方向に並置されているが、短辺方向に並置してもよく、あるいは、対角線方向に並置してもよい。給電回路基板10の裏面に設けた実装用電極は、図示しないが、実装電極24a,24bと対向する位置に形成されており、実装電極24a,24bとはんだや接着剤にて接続されている。
【0071】
他の構成は前記第1実施例と同様であり、無線ICデバイスとしての基本的な作用効果も第1実施例と同様であり、実装用電極を設けた作用効果は前記第19実施例で説明したとおりである。
【0072】
(無線ICデバイスの第22実施例、図31参照)
図31に無線ICデバイスの第22実施例を示す。本第22実施例は、基本的には前記第1及び第19実施例と同様の構成からなり、異なるのは、放射基板20上に四つの実装電極24a〜24dを給電回路基板10の外縁部分に設けた点にある。放射板21a,21bの一端部である結合部21a',21b'は実装電極24a,24bの間及び実装電極24c,24dの間を通って中心部分に配置されている。給電回路基板10の裏面に設けた実装用電極は、図示しないが、実装電極24a〜24dと対向する位置に形成されており、実装電極24a〜24dとはんだや接着剤にて接続されている。
【0073】
他の構成は前記第1実施例と同様であり、無線ICデバイスとしての基本的な作用効果も第1実施例と同様であり、実装用電極を設けた作用効果は前記第19実施例で説明したとおりである。特に、第22実施例においては、実装用電極及び実装電極24a〜24dを給電回路基板10の外縁部分に設けたため、リフローはんだを用いて放射基板20上に給電回路基板10を搭載する際の位置精度が向上する。即ち、リフローはんだ時において、外縁部分に位置する四つの電極24a〜24dのそれぞれではんだの表面張力によるセルフアライメント作用が生じるからである。
【0074】
(無線ICデバイスの第23実施例、図32参照)
図32に無線ICデバイスの第23実施例を示す。本第23実施例は、基本的には前記第1及び第19実施例と同様の構成からなり、異なるのは、給電回路基板10の両側面(図32の紙面において手前側と奥側)に実装用電極18a〜18dを形成したものである。実装電極24a〜24dは、放射基板20上に実装用電極18a〜18dに対応した位置に、給電回路基板10の外形よりも外方に突出した状態で形成され、実装用電極18a〜18dとはんだや接着剤にて接続されている。
【0075】
他の構成は前記第1実施例と同様であり、無線ICデバイスとしての基本的な作用効果も第1実施例と同様であり、実装用電極18a〜18dを設けた作用効果は前記第19実施例で説明したとおりである。特に、第23実施例においては、実装用電極18a〜18dを給電回路基板10の側面に設けたため、該基板10の裏面にスペース的な余裕が生じ、裏面のほぼ全体に放射板21a,21bの一端部である結合部21a',21b'を形成することで、給電用電極19a,19bと放射板21a,21bとの結合度の向上を図ることができる。
【0076】
(無線ICデバイスの第24実施例、図33参照)
図33に無線ICデバイスの第24実施例を示す。本第24実施例は、基本的には前記第1及び第19実施例と同様の構成からなり、異なるのは、放射基板20と給電回路基板10との間に封止樹脂25を塗布した点にある。封止樹脂25は例えばエポキシ系接着剤であり、固定強度や耐環境特性が向上するとともに、接着剤は空気よりも誘電率が高いため、給電用電極19a,19bと放射板21a,21bとの容量が大きくなり、結合度が上昇する。なお、封止樹脂25の塗布は、実装電極24a,24bと実装用電極18a,18bとをはんだ41(リフローはんだ)にて接続した後に行う。
【0077】
他の構成は前記第1実施例と同様であり、無線ICデバイスとしての基本的な作用効果も第1実施例と同様であり、実装用電極18a,18bを設けた作用効果は前記第19実施例で説明したとおりである。
【0078】
(無線ICデバイスの第25実施例、図34参照)
図34に無線ICデバイスの第25実施例を示す。本第25実施例は、基本的には前記第1及び第19実施例と同様の構成からなり、異なるのは、放射基板20上に放射板21a,21bを覆うレジスト膜29を設けた点にある。レジスト膜29は例えばエポキシ系やポリイミド系の樹脂材であり、放射板21a,21bの耐環境特性が向上するとともに、樹脂材は空気よりも誘電率が高いため、給電用電極19a,19bと放射板21a,21bとの容量が大きくなり、結合度が上昇する。また、レジスト膜29の厚みで放射板21a,21bと給電回路基板10の裏面との間隔を決めることができ、結合度のばらつきを抑えることができ、特性が安定化する。
【0079】
他の構成は前記第1実施例と同様であり、無線ICデバイスとしての基本的な作用効果も第1実施例と同様であり、実装用電極18a,18bを設けた作用効果は前記第19実施例で説明したとおりである。
【0080】
(無線ICデバイスの第26実施例及び第27実施例、図35及び図36参照)
図35に無線ICデバイスの第26実施例を示し、図36に無線ICデバイスの第27実施例を示す。第26実施例は前記第19実施例において実装電極24a,24bの面積を大きく設定したものである。第27実施例は第22実施例において実装電極24a〜24dの面積を大きく設定したものである。
【0081】
給電回路基板10の裏面に形成される実装用電極18a〜18dの面積は第19及び第22実施例と同じであり、接合用のはんだの量は実装用電極18a〜18dの面積に合わせて供給される。余分なはんだが実装電極24a〜24dに広がるため、はんだの厚みを薄くし、はんだ厚みのばらつきを抑えることができる。これにて、放射板21a,21bと給電用電極19a,19bとの間隔のばらつきが小さくなり、結合度が安定化する。そして、実装電極24a〜24dにはAuめっきなどを施してはんだが濡れ広がる加工を施しておくことが好ましい。
【0082】
また、前記第25実施例に示したように、レジスト膜29を放射板21a,21b上に形成しておけば、レジスト膜29の厚みで放射板21a,21bと給電回路基板10の裏面との間隔を決めることができる。これと同様の効果は、給電回路基板10の裏面に凸部を導電層や樹脂層などで形成することで実現できる。
【0083】
(無線ICデバイスの第28実施例、図37参照)
図37に無線ICデバイスの第28実施例を示す。本第28実施例は、基本的には前記第1及び第19実施例と同様の構成からなり、異なるのは、放射板21a,21bの一端部である結合部21a',21b'と実装電極24a,24bとを一体的に形成した点にある。さらに、放射板21a,21b上にはレジスト膜29が、実装電極24a,24b以外に形成されている。実装電極24a,24bは給電回路基板10の実装用電極18a,18bとはんだ41などにより接着されている。
【0084】
他の構成は前記第1実施例と同様であり、無線ICデバイスとしての基本的な作用効果も第1実施例と同様であり、実装用電極18a,18bを設けた作用効果は前記第19実施例で説明したとおりである。特に、第28実施例では、放射板21a,21bを実装電極24a,24bを含めて形成するため、電極形成が容易であり、実装電極24a,24bの強度が強くなる。
【0085】
(無線ICデバイスの第29実施例、図38参照)
図38に無線ICデバイスの第29実施例を示す。本第29実施例は、前記第19実施例において、給電用電極19a,19bと実装用電極18a,18bとを一体的に形成した点にある。この場合、給電用電極19a,19bは第19実施例とは異なって給電回路基板10の裏面に露出している。これにて、給電用電極19a,19bと放射板21a,21b(結合部21a',21b')との距離を小さくし、容量を大きくすることができる。また、実装用電極18a,18bが実質的に大きくなり、実装用電極18a,18bの強度を増すことができる。
【0086】
(無線ICデバイスの第30実施例、図39参照)
図39に無線ICデバイスの第30実施例を示す。本第30実施例は、放射板21a,21bを一端部である結合部21a',21b'で一体化し、該結合部21a',21b'を給電回路基板10に内蔵されたインダクタンス素子L1,L2と磁界結合させたものである。給電用電極19a,19bはインダクタンス素子L1,L2の一部として構成されている。また、実装電極24は放射基板20の中央部に形成され、給電回路基板10の裏面に形成された実装用電極18とはんだ41などで接続されている。
【0087】
他の構成は前記第1実施例と同様であり、無線ICデバイスとしての基本的な作用効果も第1実施例と同様であり、実装用電極18を設けた作用効果は前記第19実施例で説明したとおりである。特に、第30実施例では、放射板21a,21bが給電回路基板10と磁界結合しているため、給電回路基板10の実装位置が多少ずれたり、180°回転がずれても特性が変わらない。また、誘電率の高い樹脂材が給電回路基板10と放射板21a,21bの間に介在しても特性の変化が小さい。
【0088】
(第31実施例、図40及び図41参照)
第31実施例である無線ICデバイスは、図40及び図41に示すように、所定周波数の送受信信号を処理する無線ICチップ5と、この無線ICチップ5を電気的に接続した状態で搭載した給電回路基板120と、プリント基板130の表面に電極膜にて形成した放射板131とで構成されている。一体化された無線ICチップ5と給電回路基板120とを以下電磁結合モジュール100と称する。
【0089】
給電回路基板120は、図45や図47を参照して以下に説明する共振回路・整合回路を有する給電回路121を備えている。
【0090】
無線ICチップ5は、クロック回路、ロジック回路、メモリ回路などを含み、必要な情報がメモリされており、図19に示したように、裏面に一対の入出力端子電極6及び一対の実装用端子電極7が設けられている。図46に示す給電回路基板120において、無線ICチップ5の入出力端子電極6は給電端子電極142a,142bに、実装用端子電極は実装電極143a,143bに金属バンプなどを介して電気的に接続されている。また、図48に示す給電回路基板120において、入出力端子電極6は給電端子電極222a,222bに、実装用端子電極7は実装電極223a,223bに金属バンプなどを介して電気的に接続されている。
【0091】
放射板131は、プリント基板130の表面に非磁性金属材料からなる電極膜として形成されており、一方の端部131aと他方の端部131bが給電回路基板120の下面にそれぞれ対向して配置され、給電回路121と電磁界結合している。この放射板131の全体的な形状は任意であり、例えば、ループ状アンテナ形状であっても、ダイポール型のアンテナ形状であってもよい。また、放射板131はプリント基板130の内部に形成されたものであってもよい。なお、プリント基板130は、携帯電話などの物品に内蔵されたものである。
【0092】
給電回路基板120の対向する二つの側面には、以下に詳述する給電回路121とは電気的に接続されていない実装用電極122が形成されている。この実装用電極122は、図41に示すように、絶縁体層と電極層とを積層して形成した積層体(給電回路基板120)の側面に電極層を露出するように形成され、プリント基板130上に放射板131とは別に設けた実装ランド132にはんだ付けされている。ランド132は放射板131とは別に設けられ、両者の厚みはほぼ同じである。
【0093】
このはんだ付けは、まず、はんだペースト133を図41の点線で示すようにランド132に塗布し(塗布厚は100μm程度)、プリント基板130上の所定位置に電磁結合モジュール100を実装機で載置する。プリント基板130の表面には、放射板131が形成されているが、はんだペースト133は放射板131には塗布しない。その後、リフロー炉を通過させることにより、実装用電極122とランド132とがはんだ付けされる。
【0094】
リフロー炉ではんだペースト133が溶融状態にあるとき、はんだペースト133は実装用電極122に接触し、電磁結合モジュール100はプリント基板130に貼着された状態になる。リフロー炉から出された後、はんだペースト133は温度降下で収縮し、ランド132と実装用電極122との間でブリッジ状に硬化して矢印A方向の内部応力を生じる。これにて、給電回路基板120がプリント基板130側に引っ張られ、給電回路基板120の下面が放射板131の端部131a,131bに密着する。
【0095】
はんだ付け時におけるこのような現象は、詳しく検討すると、実装用電極122が給電回路基板120の側面に下面から離間して形成されていること(換言すれば、側面にのみ形成されて下面には形成されていないこと)、ランド132と給電回路基板120との間にギャップgが存在することに起因する。このギャップg部分のはんだペースト133が硬化時に収縮することにより、矢印A方向の応力が発生する。
【0096】
はんだペースト133の収縮による応力で給電回路基板120と放射板131とが直接密着することにより、給電回路基板120と放射板131とが間隔のばらつきなく良好に結合し、結合度のばらつきがほとんどなくなる。また、実装用電極122がはんだなどにより腐食しても、実装用電極122は給電回路121とは電気的に接続されておらず独立しているので、電磁結合モジュール100の電気的な特性や信頼性に悪影響を与えることはない。
【0097】
また、実装用電極122は給電回路基板120の対向する二つの側面に形成されているので、給電回路基板120をより精度が向上した状態でバランスよくプリント基板130上に実装することが可能になる。特に、本実施例では、実装用電極122を給電回路基板120の対向する二つの側面に線対称な位置に形成しているため、さらに実装精度やバランスが向上する。
【0098】
しかも、リフロー炉によるはんだ付けという簡易な製作工程を用いればよく、高価な実装機は不要である。また、このはんだ付けの後に、樹脂材で電磁結合モジュール100を被覆し、電磁結合モジュール100のプリント基板130への接合強度をさらに向上させてもよい。
【0099】
(第32実施例、図42及び図43参照)
第32実施例である無線ICデバイスは、図42及び図43に示すように、基本的には前記第31実施例と同様の構成を備え、共通する部品、部分には第31実施例と同じ符号を付し、重複する説明は省略する。
【0100】
第32実施例において、第31実施例と異なるのは、実装用電極122を積層体(給電回路基板120)の側面に露出させたビアホール電極にて形成した点にある。ビアホール電極を積層体の側面に露出させるには、給電回路基板120を製作する際に、マザー基板のカット線上にビアホール電極を形成しておけばよい。このようなビアホール電極(導体)の形成方法は、特開2002−26513号公報に詳しく記載されている。
【0101】
本第32実施例において、実装用電極122とプリント基板130上のランド132とがはんだペースト133で接合されることは第31実施例と同様であり、その作用効果も同様である。
【0102】
(変形例、図44参照)
図44に前記第32実施例における給電回路基板120の変形例を示す。この給電回路基板120は側面に凹部123を形成し、実装用電極122を該凹部123に配置したものである。凹部123にはんだペースト133を配置することで、はんだフィレットの拡がりを抑えることができる。
【0103】
(給電回路基板の第1例、図45及び図46参照)
ここで、給電回路基板120の第1例について説明する。この給電回路基板120は、図45に等価回路として示すように、互いに異なるインダクタンス値を有し、かつ、互いに逆相で磁気結合(相互インダクタンスMで示す)されているインダクタンス素子L11,L12を含む共振回路・整合回路を有する給電回路121を備えている。
【0104】
給電回路121に含まれるインダクタンス素子L11,L12は逆相で磁気結合して無線ICチップ5が処理する周波数に共振し、かつ、放射板131の端部131a,131bと電磁界結合している。また、給電回路121は、無線ICチップ5の入出力端子電極6と電気的に接続され、無線ICチップ5のインピーダンス(通常50Ω)と放射板131のインピーダンス(空間のインピーダンス377Ω)とのマッチングを図っている。
【0105】
従って、給電回路121は、無線ICチップ5から発信された所定の周波数を有する送信信号を放射板131に伝達し、かつ、放射板131で受信した信号から所定の周波数を有する受信信号を選択し、無線ICチップ5に供給する。それゆえ、この無線ICデバイスは、放射板131で受信した信号によって無線ICチップ5が動作され、該無線ICチップ5からの応答信号が放射板131から外部に放射される。
【0106】
以上のごとく、本無線ICデバイスにあっては、給電回路基板120に設けた給電回路121で信号の共振周波数を設定するため、本無線ICデバイスを種々の物品に取り付けてもそのままで動作し、放射特性の変動が抑制され、個別の物品ごとに放射板131などの設計変更をする必要がなくなる。そして、放射板131から放射する送信信号の周波数及び無線ICチップ5に供給する受信信号の周波数は、給電回路基板120における給電回路121の共振周波数に実質的に相当し、信号の最大利得は、給電回路121のサイズ、形状、給電回路121と放射板131との距離及び媒質の少なくとも一つで実質的に決定される。給電回路基板120において送受信信号の周波数が決まるため、放射板131の形状やサイズ、配置関係などによらず、例えば、無線ICデバイスを丸めたり、誘電体で挟んだりしても、周波数特性が変化することがなく、安定した周波数特性が得られる。
【0107】
次に、給電回路基板120の構成について図46を参照して説明する。給電回路基板120は、絶縁体(誘電体あるいは磁性体)からなるセラミックシート141a〜141iを積層、圧着、焼成したものである。最上層のシート141a上には、給電端子電極142a,142b、実装電極143a,143b、ビアホール導体144a,144b,145a,145bが形成されている。2層目〜8層目のシート141b〜141h上には、それぞれ、インダクタンス素子L11,L12を構成する配線電極146a,146bが形成され、必要に応じてビアホール導体147a,147b,148a,148bなどが形成されている。最下層のシート141i上には、給電回路基板120を平面透視したときに、インダクタンス素子L11,L12の外形と等しい又は小さい平面電極149a,149bが形成されている。
【0108】
以上のシート141a〜141iを積層することにより、配線電極146aがビアホール導体147aにて螺旋状に接続されたインダクタンス素子L11が形成され、配線電極146bがビアホール導体147bにて螺旋状に接続されたインダクタンス素子L12が形成される。また、配線電極146a,146bの線間にキャパシタンスが形成される。
【0109】
シート141b上の配線電極146aの端部146a−1はビアホール導体145aを介して給電端子電極142aに接続され、シート141h上の配線電極146aの端部146a−2はビアホール導体148a,145bを介して給電端子電極142bに接続される。シート141b上の配線電極146bの端部146b−1はビアホール導体144bを介して給電端子電極142bに接続され、シート141h上の配線電極146bの端部146b−2はビアホール導体148b,144aを介して給電端子電極142aに接続される。さらに、配線電極146a,146bの端部146a−2,146b−2はビアホール導体を介して平面電極149a,149bと接続される。
【0110】
以上の給電回路121において、インダクタンス素子L11,L12はそれぞれ逆方向に巻かれているため、インダクタンス素子L11,L12で発生する磁界が相殺される。磁界が相殺されるため、所望のインダクタンス値を得るためには配線電極146a,146bをある程度長くする必要がある。これにてQ値が低くなるので共振特性の急峻性がなくなり、共振周波数付近で広帯域化することになる。
【0111】
インダクタンス素子L11,L12は、給電回路基板120を平面透視したときに、左右の異なる位置に形成されている。また、インダクタンス素子L11,L12で発生する磁界はそれぞれ逆向きになる。これにて、給電回路121をループ状の放射板131の端部131a,131bに結合させたとき、端部131a,131bには逆向きの電流が励起され、ループ状の放射板131で信号を送受信することができる。なお、インダクタンス素子L11,L12をそれぞれ二つの異なる放射板に結合させてもよい。
【0112】
給電回路基板120を磁性体材料から形成し、磁性体内にインダクタンス素子L11,L12を形成することにより、大きなインダクタンス値を得ることができ、13.56MHz帯の周波数にも対応することができる。しかも、磁性体シートの加工ばらつきや透磁率のばらつきが生じても、無線ICチップ5とのインピーダンスのばらつきを吸収できる。磁性体の透磁率μは70程度が好ましい。
【0113】
また、二つのインダクタンス素子L11,L12のインダクタンス値が互いに異なっていることにより、給電回路121に複数の共振周波数を持たせて無線ICデバイスを広帯域化できる。但し、インダクタンス素子L11,L12のインダクタンス値を実質的に同じ値に設定してもよく、この場合、各インダクタンス素子L11,L12で発生する磁界の大きさを等しくすることができる。これにより、二つのインダクタンス素子L11,L12での磁界の相殺量を同じにすることができ、共振周波数付近での広帯域化が可能になる。
【0114】
なお、給電回路基板120は、セラミック又は樹脂からなる多層基板であってもよく、あるいは、ポリイミドや液晶ポリマなどの誘電体からなるフレキシブルなシートを積層した基板であってもよい。特に、インダクタンス素子L11,L12が給電回路基板120に内蔵されることで、給電回路121が基板外部の影響を受けにくくなり、放射特性の変動を抑制できる。
【0115】
また、インダクタンス素子L11,L12と放射板131との間に平面電極149a,149bを設けることで、給電回路121と放射板131との結合のばらつきを抑えることができる。なお、平面電極149a,149bは、配線電極146a,146bと電気的に接続されていなくてもよく、必ずしも必要なものではない。
【0116】
(給電回路基板の第2例、図47及び図48参照)
給電回路基板120の第2例は、図47に示す等価回路、図48に示す積層構造を備えている。この給電回路基板120は、絶縁体(誘電体あるいは磁性体)からなるセラミックシート221a〜221hを積層、圧着、焼成したものである。最上層のシート221a上には、給電端子電極222a,222b、実装電極223a,223bが形成されている。2層目のシート221b上には、配線電極225が形成されている。3層目〜7層目のシート221c〜221g上には、インダクタンス素子L11,L12を構成する配線電極225a,225bが形成されている。最下層のシート221h上には、平面電極228a,228bが形成されている。なお、各シート221a〜221fに形成されているビアホール導体は、簡略化のために説明を省略する。
【0117】
以上のシート221a〜221hを積層することにより、配線電極225aがビアホール導体にて螺旋状に接続されたインダクタンス素子L11が形成され、配線電極225bがビアホール導体にて螺旋状に接続されたインダクタンス素子L12が形成される。また、配線電極225a,225bの線間にキャパシタンスが形成される。
【0118】
配線電極225a,225bはシート221b上で配線電極225にて一体化され、シート221g上の配線電極225aの端部225a'はビアホール導体を介して給電端子電極222aに接続され、配線電極225bの端部225b'はビアホール導体を介して給電端子電極222bに接続されている。
【0119】
以上の構成からなるインダクタンス素子L11,L12を含む給電回路121は図47に示す等価回路であり、無線ICチップ5に対して直列に接続されたインダクタンス素子L11,L12は逆相で磁気結合して無線ICチップ5が処理する周波数において共振し、かつ、放射板131と電磁界結合している。また、給電回路121は無線ICチップ5のインピーダンス(通常50Ω)と放射板131のインピーダンス(空間のインピーダンス377Ω)とのマッチングを図っている。
【0120】
従って、本第2例の作用効果は前記第1例と同様である。特に、給電回路基板120の裏面に平面電極228a,228bを設けることによって給電回路121と放射板131との結合のばらつきを抑えることができる。なお、平面電極228a,228bは必ずしも必要なものではない。
【0121】
(実施例のまとめ)
前記無線ICデバイスにおいて、給電回路基板の表面に実装用電極を備えていることが好ましい。この実装用電極を給電用電極とは別に設けて放射板の基板に接合すること(例えば、はんだなどの導電材による電気的な接続、絶縁材による接続)により接合強度が向上し、無線ICデバイスが落下などにより衝撃を受けた場合や、放射基板や給電回路基板に熱応力が作用した場合であっても、給電用電極と放射板との電磁界結合に悪影響を及ぼすことがない。特に、実装用電極を給電回路基板の外縁部分に形成することが好ましく、給電回路基板の実装位置精度を向上させることができる。また、実装用電極は給電回路基板の側面に形成してもよい。実装用電極を側面に形成すれば、給電回路基板の裏面にスペース的な余裕が生じ、裏面のほぼ全体を放射板との結合に利用することができ、給電用電極と放射板との結合度が高まる。
【0122】
特に、給電回路基板の側面に形成された実装用電極が放射板を設けた基板上の実装ランドにはんだ付けすることにより、給電回路基板の下面と放射板とがはんだの硬化収縮によって密着し、給電回路基板と放射板とが間隔のばらつきなく良好に結合し、結合度のばらつきがほとんどなくなる。
【0123】
実装用電極は給電回路基板の対向する二つの側面に形成されていることが好ましい。給電回路基板をより精度が向上した状態でバランスよく基板上に実装することが可能になる。実装用電極を給電回路基板の対向する二つの側面に線対称な位置に形成することで、さらに実装精度やバランスが向上する。
【0124】
実装用電極は給電回路基板の下面から離間して形成されていてもよい。はんだが給電回路基板の下面にまわり込むことが防止され、給電回路基板と放射板との密着性を確実に確保できる。
【0125】
給電回路基板は絶縁体層と電極層とを積層して形成した積層体からなり、実装用電極は該積層体の少なくとも一つの側面に電極層を露出するように形成してもよい。積層体の側面から一部を露出させた電極層にて実装用電極を形成することにより、給電回路基板の実装強度が向上する。
【0126】
また、給電回路基板は絶縁体層と電極層とを積層して形成した積層体からなり、実装用電極は該積層体の少なくとも一つの側面に形成した凹部に配置されていてもよい。凹部にはんだを配置することで、はんだフィレットの拡がりを抑えることができる。
【0127】
また、給電回路基板内には、共振回路及び/又は整合回路を備えていてもよい。また、放射板は放射基板の表面及び/又は内部に形成されていてもよい。また、給電回路基板が放射板と対向する面から対向しない少なくとも一つの面にわたって給電用電極が設けられていてもよい。給電用電極の接合強度が向上する。給電用電極や実装用電極は複数のものが設けられていてもよい。
【0128】
給電回路基板にインダクタンス素子とキャパシタンス素子とが平面透視で異なる位置に設けられて異なる給電用電極と電磁界結合し、給電用電極にはそれぞれ異なる放射板が電磁界結合されていてもよい。容量による電界結合は磁界結合よりも信号エネルギーの受渡し効率が高いため、放射特性を向上させることができる。しかも、インダクタンス素子及びキャパシタンス素子において別々に給電用電極との結合状態を設定でき、放射特性の設計自由度が向上する。
【0129】
また、共振回路又は整合回路は無線ICと給電用電極とが直流により接続されるように構成されていてもよい。また、共振回路又は整合回路は給電回路基板に内蔵した素子と給電回路基板上に実装した素子、又は、放射板を設けた基板上に実装した素子とで構成されていてもよい。給電回路基板や放射基板の上にインダクタンス値の大きなチップインダクタやキャパシタンス値の大きなチップコンデンサを実装すれば、給電回路基板に内蔵した素子は値の小さなものでよく、給電回路基板のサイズをより小型化できる。
【0130】
給電回路はインダクタンス値の異なる少なくとも二つのインダクタンス素子を含むことが好ましい。異なるインダクタンス値により給電回路に複数の共振周波数を持たせて無線ICデバイスを広帯域化でき、設計変更することなく世界各国で使用することが可能になる。
【0131】
給電回路は放射板と電磁界結合し、該放射板から放射される信号の共振周波数は該給電回路の自己共振周波数に実質的に相当することが好ましい。信号の周波数は給電回路で決定されるため、放射板の長さや形状は任意であり、放射板の設計自由度が向上する。また、放射板の形状やサイズ、配置関係などによらず、例えば、無線ICデバイスを丸めたり、誘電体で挟んだりしても、周波数特性が変化することがなく、安定した周波数特性が得られる。しかも、本無線ICデバイスを種々の物品に取り付けてもそのままで動作し、放射特性の変動が抑制され、個別の物品ごとに放射板などの設計変更をする必要がなくなる。
【0132】
給電回路基板の下面には電極が形成されていないことが好ましい。はんだが給電回路基板の下面にまわり込むことが防止され、給電回路基板と放射板との密着性を確実に確保できる。
【0133】
給電回路基板はセラミックや液晶ポリマなど樹脂からなる多層基板で構成されていてもよい。多層基板で構成すれば、インダクタンス素子やキャパシタンス素子を高精度に内蔵可能であり、配線電極の形成の自由度が向上する。
【0134】
また、放射基板と給電回路基板との間に封止樹脂が設けられていること、あるいは、無線ICチップ、給電回路基板及び放射板の少なくとも一つを覆う保護膜が設けられていることが好ましい。耐環境特性が向上する。
【0135】
また、無線ICの入出力インピーダンスの虚数部と、給電回路基板の無線ICと接続する部分から給電用電極側を見たときのインピーダンスの虚数部とが使用周波数範囲又はその近傍で共役になっていることが好ましい。
【0136】
(他の実施例)
なお、本発明に係るプリント配線基板は前記実施例に限定するものではなく、その要旨の範囲内で種々に変更することができる。
【0137】
例えば、共振回路は様々な構成のものを採用できることは勿論である。また、前記実施例に示した各種電極や給電回路基板の材料はあくまで例示であり、必要な特性を有する材料であれば、任意のものを使用することができる。また、無線ICチップを給電回路基板に実装するのに、金属バンプ以外の処理を用いてもよい。無線ICをチップタイプではなく、給電回路基板に形成したものであってもよい。さらに、給電回路基板の実装用電極を実装ランドに固定するのに、はんだ以外に、硬化収縮する接着材を用いてもよい。
【0138】
また、無線ICデバイスが搭載される電子機器は、携帯電話に限らず、種々の無線通信機器、テレビや冷蔵庫などの家電製品などであってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0139】
以上のように、本発明は、プリント配線基板に有用であり、特に、プリント配線基板に対する無線ICデバイスの接合強度が向上する点で優れている。
【符号の説明】
【0140】
1…無線ICデバイス
5…無線ICチップ
10,30…給電回路基板
18,18a〜18d…実装用電極
19,19a,19b…給電用電極
20…放射基板(プリント配線基板)
21,21a,21b…放射板
21a',21b'…結合部
24,24a〜24d…実装電極
41…はんだ
50…携帯電話
55…プリント配線基板
100…電磁結合モジュール
120…給電回路基板
121…給電回路
122…実装用電極
130…プリント基板
131…放射板
132…実装ランド
【特許請求の範囲】
【請求項1】
送受信信号を処理する無線IC、及び、該無線ICに接続された給電回路を備えた無線ICデバイスと、
前記給電回路に電磁界結合された放射板と、
を備えたプリント配線基板であって、
前記無線ICデバイスには、前記給電回路とは電気的に接続されていない実装用電極が設けられており、
前記無線ICデバイスは、前記実装用電極によって前記プリント配線基板に固定されていること、
を特徴とするプリント配線基板。
【請求項2】
前記放射板としては、前記プリント配線基板に設けられているグランド電極又はシールド電極が使用されていること、を特徴とする請求項1に記載のプリント配線基板。
【請求項3】
前記プリント配線基板には、前記無線ICデバイスを構成する電子部品以外の部品が搭載されていること、を特徴とする請求項1又は請求項2に記載のプリント配線基板。
【請求項4】
前記無線ICデバイスは前記プリント配線基板に内蔵されていること、を特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれかに記載のプリント配線基板。
【請求項5】
前記給電回路はセラミック又は樹脂からなる多層基板に設けられていること、を特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれかに記載のプリント配線基板。
【請求項1】
送受信信号を処理する無線IC、及び、該無線ICに接続された給電回路を備えた無線ICデバイスと、
前記給電回路に電磁界結合された放射板と、
を備えたプリント配線基板であって、
前記無線ICデバイスには、前記給電回路とは電気的に接続されていない実装用電極が設けられており、
前記無線ICデバイスは、前記実装用電極によって前記プリント配線基板に固定されていること、
を特徴とするプリント配線基板。
【請求項2】
前記放射板としては、前記プリント配線基板に設けられているグランド電極又はシールド電極が使用されていること、を特徴とする請求項1に記載のプリント配線基板。
【請求項3】
前記プリント配線基板には、前記無線ICデバイスを構成する電子部品以外の部品が搭載されていること、を特徴とする請求項1又は請求項2に記載のプリント配線基板。
【請求項4】
前記無線ICデバイスは前記プリント配線基板に内蔵されていること、を特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれかに記載のプリント配線基板。
【請求項5】
前記給電回路はセラミック又は樹脂からなる多層基板に設けられていること、を特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれかに記載のプリント配線基板。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図38】
【図39】
【図40】
【図41】
【図42】
【図43】
【図44】
【図45】
【図46】
【図47】
【図48】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図38】
【図39】
【図40】
【図41】
【図42】
【図43】
【図44】
【図45】
【図46】
【図47】
【図48】
【公開番号】特開2012−75165(P2012−75165A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−255757(P2011−255757)
【出願日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【分割の表示】特願2009−523674(P2009−523674)の分割
【原出願日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【出願人】(000006231)株式会社村田製作所 (3,635)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【分割の表示】特願2009−523674(P2009−523674)の分割
【原出願日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【出願人】(000006231)株式会社村田製作所 (3,635)
【Fターム(参考)】
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