説明

プリント配線板およびその製造方法

【課題】配線回路導体の表面全体を確実に覆うバリア層を形成したプリント配線板、およびその製造方法を提供する。
【解決手段】絶縁材料層の上に配された配線回路導体における長手方向の全部または一部に、絶縁材料層と配線回路導体との界面も含めた配線回路導体の表面全面を覆うように導電性バリア層4a,4bが設けられたプリント配線板。および、1)絶縁ベース材の少なくとも片面に銅箔を有する銅張積層板を用意する工程、2)前記銅張積層板に対して、配線回路を形成する工程、3)配線回路の表面に第1の導電性バリア層を形成する工程、4)第1の導電性バリア層が形成された配線回路上に、絶縁層を形成する工程、5)絶縁ベース材料の全部または一部を選択的にエッチング除去する工程、6)エッチング除去により露出した前記配線回路の表面に、第1の導電性バリア層と接続された第2の導電性バリア層を形成する工程、を含むプリント配線板の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリント配線板およびその製造方法に係わり、とくに微細配線における絶縁性を確保するプリント配線板およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器の小型化、多機能化に伴い、機器内部に使用されるプリント配線板の小型化、高密度化が求められている。このため、プリント配線板に形成される配線回路の微細化が進行しており、現在、量産可能で最も微細な片面プリント配線板としては、配線ピッチ40μm(参考:JEITA発行、2007年度版「日本実装技術ロードマップ」)、またはそれ以下の領域に差し掛ろうとしている。
【0003】
また、COFテープ等の片面配線板においては、配線ピッチ30μmに達するものも現れ始めている。このような超微細配線を持つプリント配線板は、その配線間ギャップが20μmまたはそれ以下と非常に狭く、配線間の絶縁信頼性を確保することが極めて難しい。特に、高温高湿環境下における銅イオンマイグレーションによる絶縁劣化が多数報告されており、微細配線間の耐マイグレーション性の確保が急務となっている。
【0004】
このような微細配線間の耐マイグレーション性は、配線回路上に形成するカバー材料によっても大きな影響を受けることが知られている。現在、COFテープ等の片面超微細配線板向けに、耐マイグレーション性の非常に高い印刷用ソルダレジストが発売されている。ただし、微細プリント配線板に使用するカバー材料には、高い解像性能(φ100μm以下の微小開口形成能力)が求められ、印刷用のソルダレジストを使用することはできない。
【0005】
このため、耐マイグレーション性を多少犠牲にしてでも、解像性能の高いフォトソルダレジストを使用せざるを得ない。以上のことから、カバー材料に依存せず、高い絶縁信頼性を確保できる技術が求められている。
【0006】
このような現状に対して、絶縁信頼性の高い配線回路を形成する方法として、セミアディティブ工法にて作成した配線回路に対し、回路間隙に再度めっきマスクを形成し、回路表面にバリア層を形成する方法が提供されている(特許文献1および同2参照)。
【0007】
この方法は、バリア層の一様な形成によって絶縁信頼性を確保することができるが、再度形成するめっきマスクと配線回路との位置合わせを精度良く行う必要がある。このため、工程間での寸法伸縮ばらつきを持つフレキシブルプリント配線板や、薄く伸縮性を持つ片面プリント配線板に応用することは難しい。
【0008】
また、特許文献3に、配線回路の表面にバリア層(実施例では金)を形成する方法が提供されている。このように、配線回路の表面にバリア層を形成するプリント配線板は、以下のような工程により作製されるものである。
【0009】
すなわち、図3(1)に示すように、ポリイミド等からなる絶縁ベース材41の片面に銅箔42を有する片面銅張積層板43を用意する。次に、図3(2)に示すように、通常のフォトファブリケーション手法によるエッチング手法を用いて、配線回路42aを形成する。
【0010】
次いで、図3(3)に示すように、電解めっきまたは無電解めっき等の手法を用いて、配線回路42aの表面に、耐マイグレーション性確保のためのバリア層44を形成する。バリア槽44は、金製が望ましい。
【0011】
続いて、図3(4)に示すように、ポリイミド等からなる絶縁材45の片面に接着剤層46を有するカバーレイ47を、外形加工を行った後に、片面銅張板43bの配線回路42a側に向けて位置合わせを行って熱圧着し、配線回路42aおよびバリア層44をカバーする。
【0012】
このような方法で作製されたプリント配線板は、配線回路42aの全面にバリア層が形成されることはなく、絶縁ベース材41とバリア層44との境界Bが必ずできてしまう。この境界Bの部分では、絶縁ベース材41表面の凹凸や、配線回路42aの凹凸等が必ず存在し、バリア層44を隙間無く一様に形成することが難しい。
【0013】
このため、高温高湿環境下にて配線回路42a間に電圧を印加した場合には、陽極側の境界B部分から配線回路42aを形成する銅がイオン化して流出し、最終的にはイオンマイグレーションによる絶縁劣化を引き起こす。以上のことから、配線回路の表面のみにバリア層を形成する方法では、課題の解決には至らない。
【0014】
また、特許文献4には、回路表面および底部に同様のバリア層を形成する方法が開示されている。このように、配線回路の表面にバリア層を形成するプリント配線板は、以下のような工程により作製されるものである。
【0015】
すなわち、図4(1)に示すように、70μm程度の厚みの銅箔61を用意し、その片面に感光性ドライフィルムによるめっきレジスト62のパターンを形成する。次に、図4(2)に示すように、電解金めっき処理などにより第1のバリア層63を形成し、続けて電解銅めっき処理により配線回路64を形成する。
【0016】
次いで図4(3)に示すように、めっきレジスト62を剥離し、スパッタ法を用いて第2のバリア層となるチタン層を一面に形成し、窒素環境下にて焼成を行うことで、チタン層を窒化チタン層65に変化させる。続いて図4(4)に示すように、カバーレイ66を張り合わせ、銅箔61をエッチング除去する。
【0017】
この後、図4(5)に示すように、窒化チタン層65をエッチング除去する。このとき、金製の第1のバリア層63と窒化チタン層である第2のバリア層65との境界C部分の、窒化チタンも少なからずエッチング除去されることから、境界C部分には図示されるように小さな隙間が形成される。
【0018】
次に図4(6)に示すように、必要な箇所にソルダレジスト層67を形成する。このような方法で作製されたプリント配線板は、配線回路64の全面にバリア層が形成されることはなく、第1のバリア層63と第2のバリア層との境界Cに小さな隙間が必ずできてしまう。
【0019】
このため、高温高湿環境下にて配線回路64間に電圧を印加した場合には、陽極側の境界C部分から配線回路64を形成する銅がイオン化して流出し、最終的にはイオンマイグレーションによる絶縁劣化を引き起こす。以上のことから、特許文献4に記載の方法では、課題の解決には至らない。
【特許文献1】特開1997-064493号公報
【特許文献2】特開2001-345540号公報
【特許文献3】特開2004-119589号公報
【特許文献4】特開2004-235554号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
上述のように、微細な配線回路を持つプリント配線板は、その配線間ギャップが非常に狭く、配線間の絶縁信頼性を確保することが極めて難しい。特に、高温高湿環境下における銅イオンマイグレーションによる絶縁劣化が多数報告されており、微細配線間の耐マイグレーション性の確保が急務となっている。
【0021】
耐マイグレーション性の高い印刷用ソルダレジストも発売されているが、印刷用ソルダレジストでは解像性能が低く、高い解像性能を求められる微細プリント配線板には使用できない。このことから、カバー材料に依存せずに高い絶縁信頼性を確保できる技術が求められている。
【0022】
本発明は上述の点を考慮してなされたもので、配線回路導体の表面全体を確実に覆うバリア層を形成したプリント配線板、およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0023】
上記目的達成のため、本願では、次の各発明を提供する。
【0024】
第1の発明によれば、
絶縁材料層の上に配された配線回路導体における長手方向の全部または一部に、前記絶縁材料層と前記配線回路導体との界面も含めた前記配線回路導体の表面全面を覆うように導電性バリア層が設けられたことを特徴とする、プリント配線板、
が提供される。
【0025】
第2の発明によれば、
プリント配線板の製造方法であって、
1) 絶縁ベース材の少なくとも片面に銅箔を有する銅張積層板を用意する工程
2) 前記銅張積層板に対して、配線回路を形成する工程
3) 前記配線回路の表面に第1の導電性バリア層を形成する工程
4) 前記第1の導電性バリア層が形成された配線回路上に、絶縁層を形成する工程
5) 前記絶縁ベース材料の全部または一部を選択的にエッチング除去する工程
6) 前記エッチング除去により露出した前記配線回路の表面に、前記第1の導電性バリア層と接続された第2の導電性バリア層を形成する工程
を含むことを特徴とするプリント配線板の製造方法、
が提供される。
【発明の効果】
【0026】
これらの特徴により、本発明は次のような効果を奏する。
【0027】
本発明によれば、微細な配線回路の全面を覆うバリア層を形成することにより、カバー材料に依存することなく、配線間の良好な絶縁信頼性が確保されたプリント配線板を、安価かつ安定的に製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、本発明を実施するための最良の形態について図面を参照して説明する。
【実施例1】
【0029】
図1A,図1Bは、本発明の第1の実施例におけるプリント配線板の製造工程を示す概念的断面図である。このプリント配線板は、以下の工程により作製されるものである。
【0030】
すなわち、まず図1A(1)に示すように、ポリイミド、PET等からなる厚さ25μm程度の絶縁ベース材1の片面に、厚さ6μm程度の銅箔2を有する片面銅張積層板3を用意する。なお、絶縁ベース材1の材質は、ポリイミドやPETに限定されるわけではなく、銅箔に対して選択エッチング可能な絶縁部材であれば、本発明を実施することができる。
【0031】
次に、図1A(2)に示すように、通常のフォトファブリケーション手法によるエッチング手法等を用いて、配線回路2aを形成する。この実施例1では、感光性ドライフィルムや露光、エッチング等の工程を最適化することにより、配線ピッチ30μm(配線間ギャップ17μm程度)の配線回路2aを形成した。このように微細な配線間ギャップを持つ製品は、その絶縁信頼性を確保することが極めて難しい。
【0032】
なお、配線回路2aの形成は、エッチング手法に限定される訳ではなく、めっきによって配線を形成するセミアディティブ工法等、他の手法を用いて形成してもよい。以上の工程により、配線回路が形成された片面銅張板3aを得る。
【0033】
次いで、図1A(3)に示すように、電解めっきまたは無電解めっき等の手法を用いて、配線回路2aの表面に、耐マイグレーション性確保のための第1のバリア層4aを形成する。このとき形成するバリア層は、イオン化傾向の低い白金、パラジウム、金等の金属や、絶縁物等を用いることができる。
【0034】
ただし、一般的にプリント配線板の作製工程にて用いられている処理であること、耐マイグレーション性が極めて高いこと等、総合的に考慮すると、金めっき処理を用いるのが好適と考えられる。なお、バリア層4aは、ピンホール等が発生することなく一様に形成する必要がある。このため、この実施例1では、電解金めっき処理を用いて1.5μm厚程度のバリア層4aを形成した。
【0035】
なお、金めっきの前処理にて配線回路2aをソフトエッチング等する場合には、微細な配線であることから、処理を弱めに設定してエッチング量は1μm程度またはそれ以下にすることが望ましい。
【0036】
また、バリア層は、複数層形成することも可能であり、一般的なニッケルと金等とのように、2層以上の構造にしてもよいし、金めっき処理の表面に電着工法等を用いて絶縁性の樹脂を重ねた構造にしてもよい。以上の工程により、配線回路にバリア層が形成された片面銅張板3bを得る。
【0037】
続いて、図1A(4)に示すように、ポリイミド等からなる厚さ12μm程度の絶縁材5の片面に、アクリル、エポキシ等の樹脂を用いた接着剤層6を有するカバーレイ7を、片面銅張板3bの配線回路2a側に向けて熱圧着し、配線回路2aおよびバリア層4aをカバーし、続けて後に行う樹脂エッチング工程から絶縁材5を保護するためのレジスト8を張り合わせる。
【0038】
このとき、レジスト8とカバーレイ7とを予め一体化したものを用意し、それを片面銅張板3bに張り合わせることもできる。このとき使用するカバーレイ7は、後に樹脂エッチングを行う工程にて、配線回路を支える絶縁ベース材として機能する必要があるため、折り曲げや引張りに対して、ある程度耐性のある材料(例えば、ポリイミド等)を使用することが望ましく、接着剤層6はバリア層4aとの密着力を考慮して選定するのが望ましい。
【0039】
バリア層4aとの密着力が不足する場合には、バリア層4aの表面を粗化したり(例えば、無光沢タイプの電解金めっきを薄く形成する等)、シランカップリング剤などをバリア層4aの表面に塗布するか、あるいは接着剤層6内に予め添加するなどして、化学的に密着力を向上させることもできる。なお、後に行う樹脂エッチング工程に耐性のある絶縁材5を使用する場合には、レジスト8を形成する必要はない。
【0040】
次に、図1B(5)に示すように、絶縁ベース材1をエッチング(例えば、アルカリ金属とアミン化合物からなる、樹脂エッチング液によるウェット処理等)により全面除去し、続けてレジスト8の剥離を行う。
【0041】
このような全面除去による液の消耗が著しい場合には、製品外のフレーム部にレジストを形成することで液の消耗を抑えることもできる。また、液の消耗を極端に嫌うとか、または絶縁ベース材1をキャリアとしても利用したい場合であれば、製品内の微細配線部のみを開口したレジストを形成することで、絶縁信頼性を向上すべき部分のみに、選択的に本発明を適用することもできる。
【0042】
続いて、配線回路2aを1〜2μm程度ソフトエッチングすることにより、バリア層4aとの境界Aの部分の配線回路2aを除去し、バリア層4aを露出させる。こうすることで、後に第2のバリア層を形成したときに、隙間をなくすことができる。
【0043】
この後、図1B(6)に示すように、電解めっきまたは無電解めっき等の手法を用いて、配線回路2aの裏面(前記樹脂エッチングにより露出した面)に、耐マイグレーション性確保のための第2のバリア層4bを形成する。この第2のバリア層4bは、第1のバリア層4aとともに配線回路2aの全体を隙間なく包む。
【0044】
この実施例1では、電解金めっき処理を用いて、1.5μm厚程度のバリア層4bを形成した。前述のように、配線回路2aをソフトエッチングしていることから、バリア層4a,4bの境界Aには隙間がなく、配線回路2aの全面を確実に保護することができる。
【0045】
以上により、配線回路2aは、全面がバリア層4a,4bにより被覆され、イオンマイグレーションによる銅の溶出が防止され、配線間の良好な絶縁信頼性を確保することができる。
【0046】
続いて、図1B(7)に示すように、ソルダレジスト9を必要な箇所に形成し、必要に応じて部品実装用ランドやコネクタ等の端子表面に、半田めっき、錫めっき、ニッケルめっき、金めっき等の表面処理を単独または組み合わせで施したり、半田ペーストの印刷等を行ったりする。
【0047】
このとき使用するソルダレジスト9は、耐マイグレーション性を特に気にすることなく、解像性能の高いフォトソルダレジストを、用途に応じて自由に選択することができる。また、エッチング手法により形成された配線回路2aは台形形状であるから、裏面からの部品実装では回路上底が広く確保されるため、非常に有利である。
【0048】
以上の工程により、微細な配線回路の全面にバリア層を形成することにより、カバー材料に依存することなく、配線間の良好な絶縁信頼性が確保され、後の実装工程においても有利であるプリント配線板を、安価かつ安定的に製造することができる。
【実施例2】
【0049】
図2Aは、本発明の第2の実施例におけるプリント配線板の製造工程を示す概念的断面図である。この第2の実施例は、本発明を2層以上の多層プリント配線板に適用した実施例である。このプリント配線板は、以下の工程により作製されるものである。
【0050】
すなわち、まず、図2A(1)に示すように、ポリイミド等からなる厚さ25μm程度の絶縁ベース材21の両面に、厚さ6μm程度の銅箔22,23を有する両面銅張積層板24を用意する。
【0051】
なお、絶縁ベース材21の材質は、ポリイミドに限定される訳ではなく、銅箔に対して選択エッチング可能な絶縁部材であれば、本発明を実施することができる。ただし、この絶縁ベース材は、後に全面除去するとは限らないことから、折り曲げ耐性、耐熱性等、製品に求められる要求特性を満足できる絶縁材料でなければならない。
【0052】
次に、図2A(2)に示すように、両面銅張積層板24の片面 (この実施例2では、銅箔22側) に対して、通常のフォトファブリケーション手法によるエッチング手法等を用いて、配線回路22aを形成する。その際、銅箔23側は、図示しない適切なエッチングレジスト等を用いて保護しておく。
【0053】
この実施例2では、感光性ドライフィルムや露光、エッチング等の工程を最適化することにより、配線ピッチ30μm(配線間ギャップ17μm程度)の配線回路22aを形成した。このように、微細な配線間ギャップを持つ製品は、その絶縁信頼性を確保することが極めて難しい。
【0054】
なお、配線回路22aの形成は、エッチング手法に限定される訳ではなく、めっきによって配線を形成するセミアディティブ工法等、他の手法を用いて形成してもよい。以上の工程により、片面に配線回路が形成された両面銅張板24aを得る。
【0055】
なお、この実施例2では、後に層間の電気的接続を行う手法を採っているが、両面銅張板24に予めスルーホールやビアホール等の層間接続構造を形成し、後にカバー形成やビルドアップ工法による多層化を行うこともできる。
【0056】
ただし、後に層間接着剤を介して3層以上の多層プリント配線板を形成する場合には、導通用孔の形成、デスミア、導電化、電解銅めっき処理などの一連の工程を2回施すことになるため、コスト的には不利である。
【0057】
次いで、図2A(3)に示すように、電解めっきまたは無電解めっき等の手法を用いて、配線回路22aの表面に、耐マイグレーション性確保のためのバリア層25aを形成する。このとき形成するバリア層は、イオン化傾向の低い白金、パラジウム、金等の金属や、絶縁物等を用いることができる。
【0058】
ただし、一般的にプリント配線板の作製工程にて用いられている処理であること、耐マイグレーション性が極めて高いこと等を総合的に考慮すると、金めっき処理を用いるのが好適と考えられる。なお、バリア層25aは、ピンホール等が発生しないように一様に形成する必要がある。このため、この実施例2では、電解金めっき処理を用いて1.5μm程度のバリア層25aを形成した。
【0059】
また、バリア層は複数層形成することも可能であり、一般的なニッケルと金等とのように2層以上の構造にしてもよいし、金めっき処理の表面に電着工法等を用いて絶縁性の樹脂を重ねて形成することもできる。なお、バリア層45aを形成する場合は、銅箔23側は図示しない適切なレジスト等を用いて保護する。以上の工程により、配線回路にバリア層が形成された両面銅張板24bを得る。
【0060】
続いて、図2A(4)に示すように、ポリイミド等からなる厚さ25μm程度の絶縁ベース材26の片面に、厚さ6μm程度の銅箔27を有する片面銅張積層板28を、層間接着剤29を介して、両面銅張板24bに張り合わせる。このとき、銅箔27には配線回路は形成されておらず、基材同士の位置合わせは不要である。
【0061】
なお、本発明を両面プリント配線板に適用する場合には、片面銅張積層板28および層間接着剤29の代わりに、一般的なポリイミドカバーレイやソルダレジスト等を用いればよく、逆に層数を増やしたい場合には、両面銅張積層板や多層プリント配線板を張り合わせることもできる。両面銅張積層板や多層プリント配線板を張り合わせる場合には、張り合わせる面に予め配線回路を形成しておく必要がある。
【0062】
この後、図2B(5)に示すように、炭酸ガスレーザを用いたコンフォーマルレーザ加工法などを用いて基材表面に導通用孔を設け、次いでデスミア、導電化処理を行い、続けて電解銅めっき処理等を行うことで、銅箔23,27と、内層の銅箔22aとの電気的接続を行う。コンフォーマルレーザ加工法とは、フォトファブリケーション手法によるエッチング手法にて銅箔を選択除去し、その銅箔をレーザマスクとして利用して導通用孔を設ける手法をいう。
【0063】
上記導通用孔の形成は、炭酸ガスレーザのコンフォーマル加工法に限定される訳ではなく、要求される加工幅や加工長さ、スループット、加工精度、品質等を考慮して、ダイレクトレーザ加工法を用いたり、UV-YAGレーザ加工やドリル加工等を単独または組み合わせたりして使用することができる。
【0064】
また、導通用孔は、非貫通形に限定される訳ではなく、貫通孔に対して一般的なスルーホール構造を形成することもできる。以上の工程により、層間の電気的接続が施された多層配線基材30を得る。
【0065】
続いて、図2B(6)に示すように、多層配線基材30の両表面の銅箔23,27に対して、通常のフォトファブリケーション手法によるエッチング手法等を用いて配線回路23a,47aを形成する。なお、後に絶縁ベース材21をエッチング除去して配線回路22aにバリア層を形成する必要がある箇所の銅箔23は、上記エッチング工程にて除去しておく。以上の工程により、配線回路が形成された多層プリント配線板20aを得る。
【0066】
次に、図2B(7)に示すように、多層プリント配線板30aの両面の必要な箇所にレジスト31を形成し、続けて樹脂エッチング処理(例えば、アルカリ金属とアミン化合物からなる、樹脂エッチング液によるウェット処理等)を行うことで、絶縁ベース材21を選択的にエッチング除去し、配線回路22aの裏面を露出させる。
【0067】
次いで、図2B(8)に示すように、配線回路22aをソフトエッチングした後、電解めっきまたは無電解めっき等の手法を用いて、配線回路22aの裏面(前記樹脂エッチングにより露出した面)に、耐マイグレーション性確保のためのバリア層25bを形成する。
【0068】
この実施例2では、電解金めっき処理を用いて、1.5μm厚程度のバリア層24bを形成した。配線回路22aを予めソフトエッチングしていることにより、バリア層25a,25bは隙間なく形成され、配線回路22aの全面が確実に保護される。
【0069】
これにより、イオンマイグレーションによる銅の溶出は防止され、配線間の良好な絶縁信頼性を確保することができる。続けて、レジス31を剥離することで、微細配線部の全面に、耐マイグレーション性確保のためのバリア層が形成された多層プリント配線板30bを得る。
【0070】
この後、図2B(9)に示すように、ソルダレジスト52を必要な箇所に形成し、必要に応じて部品実装用ランドやコネクタ等の端子表面に半田めっき、錫めっき、ニッケルめっき、金めっき等の表面処理を施す。このとき、使用するソルダレジスト52は、耐マイグレーション性を特に気にすることなく、解像性能の高いフォトソルダレジストを、用途に応じて自由に選択することができる。
【0071】
また、エッチング手法により形成された配線回路52aは台形形状であるから、裏面からの部品実装では回路上底が広く確保されるため、非常に有利である。
【0072】
以上の工程により、微細な配線回路の全面にバリア層を形成することにより、カバー材料に依存することなく、配線間の良好な絶縁信頼性が確保され、後の実装工程においても有利である多層プリント配線板を、安価かつ安定的に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1A】本発明の第1の実施例によるプリント配線板の概念的断面図。
【図1B】本発明の第1の実施例によるプリント配線板の概念的断面図。
【図2A】本発明の第2の実施例によるプリント配線板の概念的断面図。
【図2B】本発明の第2の実施例によるプリント配線板の概念的断面図。
【図3】従来のプリント配線板の製造方法の工程図。
【図4A】従来の他のプリント配線板の製造方法の工程図。
【図4B】従来の他のプリント配線板の製造方法の工程図。
【符号の説明】
【0074】
1 絶縁ベース材
2 銅箔
2a 配線回路
3 片面銅張積層板
3a 配線回路の形成された片面銅張積層板
3b 配線回路にバリア層の形成された片面銅張積層板
4a 第1のバリア層
4b 第2のバリア層
5 絶縁材
6 接着剤層
7 カバーレイ
8 レジスト
9 ソルダレジスト
21 絶縁ベース材
22 銅箔
23 銅箔
24 両面銅張積層板
24a 片面に配線回路の形成された両面銅張積層板
24b 配線回路にバリア層が形成された両面銅張積層板
25a 第1のバリア層
25b 第2のバリア層
26 絶縁ベース材
27 銅箔
28 片面銅張積層板
29 層間接着剤
30 多層配線基材
30a 配線回路が形成された多層プリント配線板
30b 配線回路にバリア層が形成された多層プリント配線板
31 レジスト
32 ソルダレジスト
41 絶縁ベース材
42 銅箔
42a 配線回路
43 片面銅張積層板
43a 配線回路が形成された片面銅張積層板
43b 配線回路にバリア層が形成された片面プリント配線板
44 バリア層
45 絶縁材
46 層間接着剤
47 カバーレイ
61 銅箔
62 レジスト
63 金
64 配線回路
65 窒化チタン
66 カバーレイ
67 ソルダレジスト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁材料層の上に配された配線回路導体における長手方向の全部または一部に、前記絶縁材料層と前記配線回路導体との界面も含めた前記配線回路導体の表面全面を覆うように導電性バリア層が設けられたことを特徴とする、プリント配線板。
【請求項2】
請求項1に記載のプリント配線板において、
前記導電性バリア層の少なくとも一部に、金を用いることを特徴とするプリント配線板。
【請求項3】
プリント配線板の製造方法であって、
1) 絶縁ベース材の少なくとも片面に銅箔を有する銅張積層板を用意する工程
2) 前記銅張積層板に対して、配線回路を形成する工程
3) 前記配線回路の表面に第1の導電性バリア層を形成する工程
4) 前記第1の導電性バリア層が形成された配線回路上に、絶縁層を形成する工程
5) 前記絶縁ベース材料の全部または一部を選択的にエッチング除去する工程
6) 前記エッチング除去により露出した前記配線回路の表面に、前記第1の導電性バリア層と接続された第2の導電性バリア層を形成する工程
を含むことを特徴とするプリント配線板の製造方法。
【請求項4】
請求項3記載のプリント配線板の製造方法において、
前記絶縁層は、絶縁性のカバーを設けることにより形成することを特徴とするプリント配線板の製造方法。
【請求項5】
請求項3記載のプリント配線板の製造方法において、
前記絶縁層は、層間接着剤を介してプリント配線板を張り合わせることにより形成することを特徴とするプリント配線板の製造方法。
【請求項6】
請求項3に記載のプリント配線板の製造方法であって、
前記第2の導電性バリア層の形成前に、配線回路のソフトエッチングを行うことを特徴とするプリント配線板の製造方法。
【請求項7】
請求項3に記載のプリント配線板の製造方法であって、
前記第1及び第2の導電性バリア層の少なくとも一部を、電解金めっき処理または無電解金めっき処理により形成することを特徴とするプリント配線板の製造方法。

【図1A】
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【図1B】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【公開番号】特開2010−16061(P2010−16061A)
【公開日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−172689(P2008−172689)
【出願日】平成20年7月1日(2008.7.1)
【出願人】(000230249)日本メクトロン株式会社 (216)
【Fターム(参考)】