説明

プリント配線板の製造方法

【課題】工程中における合わせ面への薬液の滲み込みがなく,高温処理後においても剥離が生じない,プリント配線板の製造方法を提供する。
【解決手段】所定枚数のプリプレグの積層体の片面に金属箔を重ねた構成体2組を,プリプレグの積層体を内側にして,離型材を介して重ね,加熱加圧して2枚合わせ片面金属箔張積層板を作製する工程と、前記2枚合わせ片面金属箔張積層板の金属箔面に対し,回路形成,内層処理,層間接続により多層化処理を行う工程と,離型材を剥離する工程と、多層化した最外層面及び離型材を剥離した面に、回路形成を行う工程とを有するプリント配線板の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,プリント配線板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年PKG基板の小型化,薄物化が進む中で,コアレス基板などに代表とする最先端のプリント配線板製造方法では,キャリア付銅箔や基板を支持体として,片面にプリプレグ及びビルドアップ樹脂絶縁シートを積み重ね多層化し,プリント配線板を形成する方法が考えられている。しかし,この製造方法では,薄い積層板を使用することが多いため,工程を流すと巻きつきやわれなどの問題で歩留まりが著しく低下する可能性がある。また,片面に繰り返し積み上げていくことから,構造が非対称となり1方向にそりやすく工程を流せなくなる可能性が高い。
【0003】
前記のプリント配線板製造方法での課題は,ハンドリングや作業性の悪化である。これらを解決するため,例えば特開2000−91732号公報のように,プリプレグをサイズの小さい離型フィルムで挟み,その外側に金属張積層板を配置し積層することで,両側に多層化後,基板の周囲の接着部分を切断することで,剥離可能となり2枚の積層板を同時に作製できる。しかし,この方法では,積層時において,離型フィルムの位置がズレた場合に剥がすことが困難になることや,積層工程の回数が増えるなどの問題がある。
【0004】
また,例えば特開2007−90581号公報のように補強基板の両面に,前者特許のように周囲に接着部分を作りながら多層化する製造方法がある。しかし,この方法では,同様に積層時において,離型フィルム(この場合,キャリア付き極薄銅箔を使用)の位置がズレた場合に剥がすことが困難になること,及び基板を使用するため,フィルムと比較し,コストが高くなることが考えられる。そこで,例えば特開平7−302977号公報のように補強基板の代わりに離型材として比較的安価なアルミニウムを用いることが考えられる。しかし,アルミニウムを用いて,2枚合わせのままで各工程に投入すると,工程中で使用する薬液が2枚合わせ片面板と離型材の合わせ面(以下合わせ面という)に滲み込むことがあった。各工程中に付着している薬液成分を洗浄する工程があるが,合わせ面に滲みこんでいる薬液は通常の洗浄では除去されにくいため残存し,他の工程の薬液を汚染する問題がある。また,回路加工においては,離型材のアルミニウムが溶解してしまう問題もある。
【0005】
また,例えば,特開2007−90581号公報のように離型材に離型フィルムを用いると,上記のような薬液の滲み込み,離型材の溶解といった問題は解決できる。しかし,多層化プレスや乾燥などの高温になる工程において,離型フィルムの収縮により合わせ面が剥離もしくは接着強度が低下してしまう問題がある。
【0006】
【特許文献1】特開2000−91732号公報
【特許文献2】特開2007−90581号公報
【特許文献3】特開平7−302977号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は,前記の方法の不具合点を解消し,工程中における合わせ面への薬液の滲み込みがなく,高温処理後においても剥離が生じない,プリント配線板製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は以下の通りである。
1. 所定枚数のプリプレグの積層体の片面に金属箔を重ねた構成体2組を,プリプレグの積層体を内側にして,離型材を介して重ね,加熱加圧して2枚合わせ片面金属箔張積層板を作製する工程と、前記2枚合わせ片面金属箔張積層板の金属箔面に対し,回路形成,内層処理,層間接続により多層化処理を行う工程と,離型材を剥離する工程と、多層化した最外層面及び離型材を剥離した面に、回路形成を行う工程とを有するプリント配線板の製造方法。
2. 所定枚数のビルドアップ樹脂絶縁シート2組を,離型材を介して重ね,加熱加圧して2枚合わせビルドアップ樹脂絶縁シートを作製する工程と、前記2枚合わせビルドアップ樹脂絶縁シートの片面に対し,回路形成,内層処理,層間接続により多層化処理を行う工程と,離型材を剥離する工程と、多層化した最外層面及び離型材を剥離した面に、回路形成を行う工程とを有するプリント配線板の製造方法。
3. 離型材として、100〜250℃の範囲での熱収縮率が1.5%以下である離型材を使用することを特徴とする,前記のプリント配線板の製造方法。
4. 離型材として、加熱加圧後における伸びの低下率が,50%以下である離型材を使用することを特徴とする,前記のプリント配線板の製造方法。
5. 加熱加圧の温度が、100〜250℃での範囲である,前記のプリント配線板の製造方法。
6. 離型材の厚みが,10μm以上,200μm以下であることを特徴とする,前記のプリント配線板の製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によると,各工程において,合わせ面への薬液の滲み込みがなく,高温においても分離が生じない、2枚合わせ片面金属箔張積層板あるいは、2枚合わせビルドアップ樹脂絶縁シートを基にしたプリント配線板製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明で用いられる金属箔としては,通常のプリント配線板用に用いられる金属箔,例えば銅箔が用いることができるが,特に制限はない。銅箔としては,電解銅箔,圧延銅箔のいずれでもよく,厚みは特に限定されるものではない。一般にプリント配線板に用いられている,厚み105μm以下の銅箔で構わないし,ピーラブルタイプの銅箔を用いることもできる。尚,ピーラブルタイプの代わりに,アルミキャリアやニッケルキャリアを有するようなエッチャブルタイプの銅箔を用いることもできる。さらに,一般にプリント配線板に用いられる銅箔には,粗化処理が施されているが,本発明でも,そのような銅箔を用いることが出来るし,また,粗化処理が施されていなくても特にかまわない。
【0011】
本発明で用いられるプリプレグとしては,フェノール樹脂,ポリエステル樹脂,エポキシ樹脂,シアナト樹脂,熱硬化性ポリイミド樹脂,その他の熱硬化性樹脂,及びそれらの2種以上の組成物などのマトリックス用樹脂組成物を,ガラス(Eガラス,Dガラス,Sガラス,Tガラス,石英ガラス(=クオーツガラス),その他),セラミックス類(アルミナ,窒化硼素,その他),全芳香族ポリアミド,ポリフェニレンサルファイド,ポリエーテルイミド,ポリイミド,セルカーボン,その他の耐熱性エンジニアリングプラスチック等を一種或いは二種以上適宜併用してなる繊維,チョップなどを用いた織布或いは不織布,連続気泡多孔質のフッ素樹脂フィルム或いはシートなどのベース材(補強基材)に含浸,塗布或いは付着させてなるものを使用して構成されるものが例示される。
【0012】
上記プリプレグのマトリックス用樹脂組成物は,信頼性向上のため無機フィラーを含有していても良い。この無機フィラーは,特に限定されないが,シリカ,溶融シリカ,タルク,アルミナ,水酸化アルミニウム,硫酸バリウム,水酸化カルシウム,アエロジル及び炭酸カルシウムが挙げられる。無機フィラーには,分散性を高める等の目的で,これらをシランカップリング剤等の各種カップリング剤で処理したものを含むことが好ましい。これらは,単独でも,2種以上を組み合せて用いてもよい。なお,誘電特性や低熱膨張の点からシリカが好ましい。
【0013】
また,上記プリプレグのマトリックス用樹脂組成物は、可とう性向上のため,熱可塑性樹脂を含有していても良い。熱可塑性樹脂としては,フッ素樹脂,ポリフェニレンエーテル,変性ポリフェニレンエーテル,ポリフェニレンスルフィド,ポリカーボネート,ポリエーテルイミド,ポリエーテルエーテルケトン,ポリアリレート,ポリアミド,ポリアミドイミド,ポリブタジエンなどが例示されるが,これらに限定されるわけではない。熱可塑性樹脂は,1種類のものを単独で用いても良いし,2種類以上を混合して用いても良い。上記プリプレグのマトリックス用樹脂組成物中には,必要に応じて,カップリング剤,顔料,レベリング剤,消泡剤,イオントラップ剤等の添加剤を配合してもよい。
【0014】
本発明で用いられるビルドアップ樹脂絶縁シートは,フェノール樹脂,ポリエステル樹脂,エポキシ樹脂,シアナト樹脂,熱硬化性ポリイミド樹脂,その他の熱硬化性樹脂,及びそれらの2種以上の組成物などのマトリックス用樹脂組成物を,支持体の少なくとも片面に塗工し,半硬化させることにより,支持体付き絶縁フィルムを形成することができる。支持体としては,銅やアルミニウム等の金属箔,ポリエステルやポリイミド等の樹脂のキャリアフィルムが挙げられる。
【0015】
上記ビルドアップ樹脂絶縁シートのマトリックス用樹脂組成物は,信頼性向上のため無機フィラーを含有していても良い。この無機フィラーは,特に限定されないが,シリカ,溶融シリカ,タルク,アルミナ,水酸化アルミニウム,硫酸バリウム,水酸化カルシウム,アエロジル及び炭酸カルシウムが挙げられる。無機フィラーには,分散性を高める等の目的で,これらをシランカップリング剤等の各種カップリング剤で処理したものを含む。これらは,単独でも,2種以上を組み合せて用いてもよい。なお,誘電特性や低熱膨張の点からシリカが好ましい。
【0016】
また,上記マトリックス用樹脂組成物は、可とう性向上のため,熱可塑性樹脂を含有していても良い。熱可塑性樹脂としては,フッ素樹脂,ポリフェニレンエーテル,変性ポリフェニレンエーテル,ポリフェニレンスルフィド,ポリカーボネート,ポリエーテルイミド,ポリエーテルエーテルケトン,ポリアリレート,ポリアミド,ポリアミドイミド,ポリブタジエン,カルボン酸変性アクリロニトリルブタジエンゴム粒子,ポリビニルアセタール樹脂,カルボン酸変性ポリビニルアセタール樹脂などが例示されるが,これらに限定されるわけではない。熱可塑性樹脂は,1種類のものを単独で用いても良いし,2種類以上を混合して用いても良い。
【0017】
上記ビルドアップ樹脂絶縁シートのマトリックス用樹脂組成物中には,必要に応じて,カップリング剤,顔料,レベリング剤,消泡剤,イオントラップ剤等の添加剤を配合してもよい。
【0018】
離型材とは、一般的に、フィルムまたはシート状であり,その両面にプリプレグ,銅箔を重ね,積層成形して樹脂を硬化させた後にも,容易に硬化したプリプレグと剥離できるプラスチックや金属などのフィルムまたはシートが好ましい。具体的には,ポリフェニレンスルフィド,ポリフェニレンオキシド,ポリスルホン,ポリエーテルスルホン,ポリフェニレンスルホン,ポリエーテルイミド,ポリイミド,ポリアミドイミド,ポリアミド,ポリカーボネート,ポリアリレート,ポリエーテルケトン,ポリエーテルエーテルケトン,ポリアセタール,酢酸セルロース,ポリプロピレン,ポリ−4−メチルペンテン−1,ポリエチレンテレフタレート,ポリフッ化ビニリデン,ポリエチレンナフタレート,ポリテトラフロロエチレン,及びこれら樹脂の誘導体,その他のプラスチックフィルムやステンレス,アルミニウム,真鍮などの金属フィルム或いはシート又はこれらに離型剤を塗布したもの,さらに,これらのプラスチックフィルム,金属フィルム或いはシートに離型性のプラスチック層を形成したものが挙げられる。
【0019】
また,接着性を調整するため離型材に表面粗面化処理(マット処理)してもよい。離型材の厚みは,通常、10μm以上、200μm以下から適宜選択する。10μm未満であると,離型材の強度が不足し,2枚合わせ片面金属箔張積層板の分離の際に離型材が破れる恐れがある。また,2枚合わせ片面金属箔張積層板材料を構成する際のハンドリングも悪い。また,200μmを超えると,入手のし易さ,価格の面から好ましくない。
【0020】
離型材としては、プリント配線板の製造方法のプレス工程あるいはラミネート工程の加熱温度の範囲において、熱収縮率が1.5%以下である離型材を使用することが好ましい。従って、離型材としては、100〜250℃の範囲での熱収縮率が1.5%以下である離型材を使用することが好ましく、さらに、熱収縮率が0.01〜1.2%であることがより好ましい。なお、150〜200℃の範囲での熱収縮率が1.5%以下である離型材でもよい。
【0021】
また、離型材としては、プレス工程あるいはラミネート工程等の加熱加圧工程後における伸びの低下率が,50%以下である離型材を使用することが好ましく、さらに、伸びの低下率が1〜20%であることがより好ましい。なお、一般的に、プリント配線板の製造方法のプレス工程あるいはラミネート工程の加熱温度範囲は、100〜250℃であり、圧力範囲は、0.0001〜10MPaである。
【0022】
上記離型材に用いるフィルムには,熱収縮率を抑制するために,その表面に極薄の金属層を設けてもよい。例えば,極薄の金属箔をプレスする方法や金属を表面に蒸着するといった方法がある。
また,上記離型材に用いるフィルムは,作製した2枚合わせ多層プリント配線板の分離を容易にするため,複数枚重ねて使用しても良い。
【0023】
以上の成形材料を使用して本発明のプリント配線板の製造方法の基になる2枚合わせ片面金属箔張積層板や2枚合わせビルドアップ樹脂絶縁シートを作製する。製造法は,所定枚数のプリプレグの積層体の片面に金属箔を重ねた構成体2組を,プリプレグを内側にして,離型材を介して重ね,2枚の鏡板の間に挿み,加熱加圧して2枚合わせ片面金属はく張積層板を製造する。加熱加圧の条件は,プリプレグの樹脂によって異なり,例えば,ガラス布基材エポキシ樹脂プリプレグを用いるときは温度150〜250℃,圧力0.5〜8.0MPaとされている。もしくは所定枚数のビルドアップ樹脂絶縁シート2組を、ビルドアップ樹脂絶縁シートを内側にして,離型材を介して重ね,加熱加圧して2枚合わせビルドアップ樹脂絶縁シートを製造する。加熱加圧の条件は,ビルドアップ樹脂絶縁シートの樹脂によって異なるが,例えば110℃,60秒で真空ラミネート成形した後,170℃,60分の加熱硬化を行う条件もある。
【0024】
その後,公知の方法で、前記2枚合わせ片面金属箔張積層板の金属箔面に対し,回路形成,内層処理,層間接続により多層化処理を行い,さらに、離型材を剥離し、さらに多層化した最外層面及び離型材を剥離した面に、回路形成を行い多層プリント配線板とする。
また、前記2枚合わせビルドアップ樹脂絶縁シートの片面に対し,回路形成,内層処理,層間接続により多層化処理を行い、さらに離型材を剥離し、さらに多層化した最外層面及び離型材を剥離した面に、回路形成を行い多層プリント配線板とする。
なお、前記回路形成において、セミアディティブ工法よる回路形成、あるいは、接着層付銅箔を使用して回路形成を行ってもよい。
【実施例】
【0025】
(実施例1)
厚さ18μmの銅箔(日本電解製のYGP−18(商品名)を使用した)1枚に厚さ0.1mmのガラス布基材エポキシ樹脂プリプレグ(日立化成工業株式会社製,GEA−679FG(商品名)を使用した)2枚を重ねた構成体2組を,離型材として厚さ50μmの離型フィルム(宇部興産株式会社製で,ポリイミド系のフィルムであるユーピレックス−S(商品名)を使用した。180℃での熱収縮率0.05%,プレス後における伸びの低下率が5%)1枚を介して重ね積層し,180℃,3MPaの条件で1時間プレス成形し,2枚合わせ片面銅張積層板を作製した。なお,銅箔,ガラス布基材エポキシ樹脂プリプレグ,離型フィルムは,いずれも510×510mmの寸法のものを用いた。
【0026】
(実施例2)
厚み40μmのビルドアップ樹脂絶縁シート(日立化成工業株式会社製,AS−Z2(商品名)を使用した)を実施例1で使用した離型フィルムに110℃,60秒でラミネート成形した後,170℃,60分の加熱硬化を行い,2枚合わせビルドアップ樹脂絶縁シートを作製した。なお,ビルドアップ樹脂絶縁シート,離型フィルムは,いずれも510×510mmの寸法のものを用いた。
【0027】
(実施例3)
離型フィルム(離型材)を,厚さ25μmのトレリナフィルム(東レ株式会社製,180℃での熱収縮率0.8%,プレス後における伸びの低下率が8%,ポリフェニレンスルフィドフィルム)としたこと以外は実施例1と同様にして2枚合わせ片面金属箔張積層板を作製した。
【0028】
(実施例4)
離型フィルム(離型材)を,厚さ25μmのトレリナフィルム(東レ株式会社製,180℃での熱収縮率0.8%,プレス後における伸びの低下率が8%,ポリフェニレンスルフィドフィルム)としたこと以外は実施例2と同様にして2枚合わせビルドアップ樹脂絶縁シートを作製した。
【0029】
(実施例5)
離型フィルム(離型材)を,厚さ75μmのトレリナフィルム(東レ株式会社製,180℃での熱収縮率0.5%,プレス後における伸びの低下率が18%,ポリフェニレンスルフィドフィルム)としたこと以外は実施例1と同様にして2枚合わせ片面金属箔張積層板を作製した。
【0030】
(実施例6)
離型フィルムの厚みを12.5μmとしたこと以外は実施例1と同様にして2枚合わせ片面金属箔張積層板を作製した。
【0031】
(実施例7)
離型フィルムの厚みを125μmとしたこと以外は実施例1と同様にして2枚合わせ片面金属箔張積層板を作製した。
【0032】
(比較例1)
離型フィルム(離型材)を,厚さ12μmのアフレックスフィルム(旭硝子株式会社製,180℃での熱収縮率2.0%,プレス後における伸びの低下率が10%,フッ素樹脂)としたこと以外は実施例1と同様にして2枚合わせ片面金属箔張積層板を作製した。
【0033】
(比較例2)
厚み40μmのビルドアップ樹脂絶縁シート(日立化成工業株式会社製,AS−Z2(商品名)を使用した)を比較例1で使用した離型フィルムに110℃,60秒でラミネート成形した後,170℃,60分の加熱硬化を行い,2枚合わせビルドアップ樹脂絶縁シートを作製した。
【0034】
(比較例3)
離型フィルム(離型材)を,厚さ4.5μmのルミラーフィルム(東レ株式会社製,180℃での熱収縮率0.5%,プレス後における伸びの低下率が60%,ポリエステルフィルム)としたこと以外は実施例1と同様にして2枚合わせ片面金属箔張積層板を作製した。
【0035】
(比較例4)
離型フィルム(離型材)を,厚さ25μmのトレリナフィルム(東レ株式会社製,180℃での熱収縮率0.7%,プレス後における伸びの低下率が60%,ポリフェニレンスルフィドフィルム)としたこと以外は比較例2と同様にして2枚合わせビルドアップ樹脂絶縁シートを作製した。
【0036】
(比較例5)
離型フィルムを,厚さ7.5μmとしたこと以外は実施例1と同様にして2枚合わせ片面金属箔張積層板を作製した。
【0037】
(比較例6)
離型フィルム(離型材)を,厚さ40μmのセパニウム(サン・アルミニウム工業社製,180℃での熱収縮率0.0%,プレス後における伸びの低下率が0%,アルミニウム製)としたこと以外は実施例1と同様にして2枚合わせ片面金属箔張積層板を作製した。
【0038】
(比較例7)
厚さ18μmの銅箔(日本電解製のYGP−18(商品名)を使用した)1枚に厚さ0.1mmのガラス布基材エポキシ樹脂プリプレグ(日立化成工業株式会社製,GEA−679FG(商品名)を使用した)2枚を重ねた構成体1組を,離型材として厚さ50μmの離型フィルム(宇部興産株式会社製で,ポリイミド系のフィルムであるユーピレックス−S(商品名)を使用した。180℃での熱収縮率0.05%,プレス後における伸びの低下率が5%)1枚の片面に重ね積層し,180℃,3MPaの条件で1時間プレス成形し,離型材付片面銅張積層板を作製した。なお,銅箔,ガラス布基材エポキシ樹脂プリプレグ,離型フィルムは,いずれも510×510mmの寸法のものを用いた。
【0039】
(2枚合わせ片面金属箔張積層板のプリント配線板製造工程)
得られた2枚合わせ片面銅張積層板の両面にドライフィルム(日立化成工業株式会社製,H−K425(商品名)を使用した)をラミネートし,露光,現像,水洗,エッチング,水洗の工程をこの順に行い回路形成を行った。
【0040】
次に,この基板をNaOHが40g/L,液温50℃の水溶液に3分間浸漬してアルカリ脱脂し,水洗し,次にペルオキソ二硫酸アンモニウムが100g/L,液温40℃の水溶液に浸漬して表面をソフトエッチングし水洗し,亜塩素酸ナトリウムが30g/L,リン酸三ナトリウム12水塩が30g/L,NaOHが20g/L,液温が85℃の酸化銅処理液に2分間浸漬して銅表面に酸化処理を行い、酸化銅皮膜を形成した。次に,還元剤としてジメチルアミンボラン4g/L(pH:12.5)に,液温40℃で150秒浸漬,還元し,銅表面に酸化還元処理を行った。
【0041】
次に,この基板上に厚み60μmのプリプレグであるGEA−679FG(日立化成工業株式会社製,商品名)厚さ18μmの銅箔(日本電解製のYGP−18(商品名)を使用した)積層し,185℃,3.0MPaの条件で1時間プレス成形し,上記に示す方法で回路形成を行い,離型材両面に多層プリント配線板を作製した。
【0042】
次に,離型材両面に作製した多層プリント配線板を2枚に剥離し,各々の基板における剥離面に厚さ18μmの接着層付銅箔(日立化成工業株式会社製,PF−E−18(商品名)を使用),回路形成面に厚み60μmのプリプレグであるGEA−679FG(日立化成工業株式会社製,商品名)と厚さ18μmの接着層付銅箔(日立化成工業株式会社製,PF−E−18(商品名)を使用)を積層し,185℃,3.0MPaの条件で1時間プレス成形し,上記に示す方法で回路形成を行い,2枚の多層プリント配線板を作製した。
【0043】
(離型材付片面金属箔張積層板のプリント配線板製造工程)
上記の2枚合わせ片面金属箔張積層板のプリント配線板製造工程同様の工程で,片面に多層化を行い,離型材片面に多層プリント配線板を作製した。次に,この基板から離型材を剥離し,基板における剥離面に厚さ18μmの接着層付銅箔(日立化成工業株式会社製,PF−E−18(商品名)を使用),回路形成面に厚み60μmのプリプレグであるGEA−679FG(日立化成工業株式会社製,商品名)と厚さ18μmの接着層付銅箔(日立化成工業株式会社製,PF−E−18(商品名)を使用)を積層し,185℃,3.0MPaの条件で1時間プレス成形し,上記に示す方法で回路形成を行い,多層プリント配線板を作製した。
【0044】
(2枚合わせビルドアップ樹脂絶縁シートのプリント配線板製造工程)
得られた2枚合わせビルドアップ樹脂絶縁シート基板上の樹脂表面を粗化するために,粗化処理として,70℃に加温した溶剤膨潤液(シップレイ株式会社製,MLBコンディショナー211:商品名)に5分間,80℃に加温した過マンガン酸粗化液(シップレイ株式会社製,MLBプロモータ213:商品名)に10分間,硫酸ヒドロキシルアミン系中和液(シップレイ株式会社製,MLBニュートラライザー216−2:商品名)に5分間浸漬する。
【0045】
次に,粗化処理を施した基板に,次に,コンディショナー(日立化成工業株式会社製,CLC−601(商品名)を使用)に60℃で5分間浸漬,60℃の湯による湯洗,水洗(常温の水による,以下同じ),無電解めっき用触媒液(日立化成工業株式会社製,HS−202B(商品名)を使用)に常温で10分間浸漬,常温(25℃)の水による水洗,パラジウムの活性化処理液(日立化成工業株式会社製,ADP−401(商品名)を使用)に常温で5分間浸漬,水洗をこの順に行った。
【0046】
次に,無電解銅めっき液(日立化成工業株式会社製,CUST201(商品名)を使用)に常温で15分間浸漬し,水洗,80℃,10分間乾燥後を行い,無電解めっき薄付けを行った。
【0047】
次に,ドライフィルムフォトレジストであるRY−3325(日立化成工業株式会社製,商品名)を,無電解めっき層の表面にラミネートし,電解銅めっきを行う箇所をマスクしたフォトマスクを介して紫外線を露光し,現像してめっきレジストを形成した。
【0048】
次に,硫酸銅浴を用いて,液温25℃,電流密度1.0A/dmの条件で,電解銅めっきを20μmほど行い,回路形成を行った。
【0049】
次に,この基板に内層処理(CZ処理)を施した後,厚み40μmのビルドアップ樹脂絶縁シート(日立化成工業株式会社製,AS−Z2(商品名)を使用した)を110℃,60秒でラミネート成形した後,170℃,60分の加熱硬化を行い,上記に示す粗化処理,無電解めっき,電気めっき,回路形成を行い,離型材両面に多層プリント配線板を作製した。
【0050】
次に,この基板に内層処理(CZ処理)を施した後,上記の方法で厚み40μmのビルドアップ樹脂絶縁シート(日立化成工業株式会社製,AS−Z2(商品名)を使用した)をラミネート,加熱硬化を行い積層した。
【0051】
次に,離型材両面に作製した多層プリント配線板を2枚に剥離し,各々の基板を上記に示す粗化処理,無電解めっき,電気めっき,回路形成を行い,2枚の多層プリント配線板を作製した。
【0052】
実施例1〜7,比較例1〜7で作製した2枚合わせ片面金属箔張積層板及び,2枚合わせビルドアップ樹脂絶縁シートを,上記の工程を通し以下の評価を行った。
【0053】
(剥離性評価)
工程を通し,離型材両面に多層プリント配線板を形成後,2枚に剥離する際の剥離性を確認した(○;破れ等なく、剥離性良好)。
【0054】
(薬液染込み評価)
工程を通し,離型材両面に多層プリント配線板を形成後,2枚に剥離する際に剥離面に薬液の染込みがないか目視で確認した。
【0055】
(はがれ評価)
各工程を通した際,基板を抜き取り離型材部分における剥離の有無を確認した(○;剥離無し、×;剥離有り)。
【0056】
(そり評価)
各工程を通した際,基板を抜き取り基板のそり量を確認し,5mm以下のものを○,5mm以上のものを×として評価を行った。
以上の評価結果を表1に示した。
【0057】
【表1】

【0058】
実施例1〜7で作製したサンプルは剥離性,薬液染込み性,耐熱性とも良好で,工程を問題なく通すことができ,その後の2枚に分離する際も問題なかった。一方,比較例1,2で離型材の熱収縮率が大きいため,高温になると合わせ面で剥離が起こった。比較例3,4はプレス後の伸びが大きく低下するため,2枚合わせ片面金属箔張積層板及び2枚合わせビルドアップ樹脂絶縁シートを分離する際に,離型材が破れてしまい上手く剥離できなかった。比較例5も比較例3と同様に,離型材が非常に薄く強度がないため,分離の際に離型材が破れてしまった。比較例6は,離型材が金属であるため,薬液が染込みかつ離型材が少し溶解していた。比較例7は,離型材が片面だけに配線板を形成するため非対称の構造になりそりが大きくなった。
【0059】
本発明のプリント配線板の製造方法では,各工程において,合わせ面への薬液の滲み込みがなく,分離が生じることがなく,工程を通した後に分離し,2枚の多層化プリント配線板を得ることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定枚数のプリプレグの積層体の片面に金属箔を重ねた構成体2組を,プリプレグの積層体を内側にして,離型材を介して重ね,加熱加圧して2枚合わせ片面金属箔張積層板を作製する工程と、前記2枚合わせ片面金属箔張積層板の金属箔面に対し,回路形成,内層処理,層間接続により多層化処理を行う工程と,離型材を剥離する工程と、多層化した最外層面及び離型材を剥離した面に、回路形成を行う工程とを有するプリント配線板の製造方法。
【請求項2】
所定枚数のビルドアップ樹脂絶縁シート2組を,離型材を介して重ね,加熱加圧して2枚合わせビルドアップ樹脂絶縁シートを作製する工程と、前記2枚合わせビルドアップ樹脂絶縁シートの片面に対し,回路形成,内層処理,層間接続により多層化処理を行う工程と,離型材を剥離する工程と、多層化した最外層面及び離型材を剥離した面に、回路形成を行う工程とを有するプリント配線板の製造方法。
【請求項3】
離型材として、100〜250℃の範囲での熱収縮率が1.5%以下である離型材を使用することを特徴とする,請求項1または2に記載のプリント配線板の製造方法。
【請求項4】
離型材として、加熱加圧後における伸びの低下率が,50%以下である離型材を使用することを特徴とする,請求項1〜3いずれかに記載のプリント配線板の製造方法。
【請求項5】
加熱加圧の温度が、100〜250℃での範囲である,請求項1〜4いずれかに記載のプリント配線板の製造方法。
【請求項6】
離型材の厚みが,10μm以上,200μm以下であることを特徴とする,請求項1〜5いずれかに記載のプリント配線板の製造方法。

【公開番号】特開2010−108984(P2010−108984A)
【公開日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−276715(P2008−276715)
【出願日】平成20年10月28日(2008.10.28)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】