説明

プリント配線板収納用ケース

【課題】マイグレーションの要因となるプリント配線板表面の露出した導体に水蒸気を含んだ気体が吹き付けられることによって生じる結露を、効果的に防止できるようなプリント配線板収納用ケースを提供すること。
【解決手段】
内部にプリント配線板15を収納するとともに、プリント配線板15に接続されるコネクタ13が挿入されるコネクタ挿入穴10aを備えたプリント配線板収納用ケース10において、プリント配線板表面15の露出した導体に生じる結露を防止するための結露防止板14を、コネクタ13のリード13aの周囲と、プリント配線板15に配置されたファインピッチQFP形状のIC及びチップコンデンサ(16a,17a)の少なくともいずれか1つとの間に位置するように設けるものとした

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内部にプリント配線板を収納するとともに、該プリント配線板に接続されるコネクタが挿入されるコネクタ挿入穴を備えたプリント配線板収納用ケースに関するものであり、特に、プリント配線板に生じる結露を防止するケースの構造に係わる。
【背景技術】
【0002】
従来より、自動車等における電子ユニットの高機能、小型化にともなって、プリント配線板に実装された電子部品の高密化が進んでいる。その結果、マイグレーションという不具合が問題となっている。
【0003】
このマイグレーションとは、例えば図4に示すように、プリント配線板55のランド55aに半田53にて接続されている露出した導体51、52が、残留物等による電解質を含んだ水分が介在した状態で、パッテリ54により電圧が印加されると電気分解反応が起こり、陽極側の導体51から溶出した金属が陰極側の導体52でデントライト状に析出(59)するものである。このような反応が進行すると、導体51と導体52との間の絶縁性が低下するという恐れがある。
【0004】
そこで、マイグレーションの要因となるプリント配線板の表面に生じる結露を防止するために、特許文献1に記載されているような、プリント配線板を収納した電子ユニットのケース内に、結露防止板を設けたものが知られている。この結露防止板は、プリント配線板表面の露出した導体の中で、特に高電圧が印加されて電気分解によるマイグレーションが発生しやすいものの周囲に設けられている。これにより、ケース内に侵入した外気は結露防止板に当たり、外気に含まれた水蒸気によって結露防止板に結露を生じさせるので、露出した導体には、湿度が低くなった外気が吹き付けられる。従って、露出した導体には結露が生じにくくなり、マイグレーションの発生を防止している。
【特許文献1】特開平9−102679号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、マイグレーションが発生しやすい導体と発生しにくい導体との間に結露防止板を設けるという上記した従来の技術においては、マイグレーションが発生しやすい導体が数多く必要とする場合、それらを結露防止板により囲めるように集めてプリント配線板の表面に配置する必要があるため、プリント配線板及びケースが大型になるという恐れがあった。すなわち、マイグレーションが発生しやすい導体とは、具体的には、ファインピッチQFP形状のICや、近年の更なる小型化要求による電極間距離が狭いチップコンデンサ等であり、このマイグレーションが発生しやすい導体が30〜40個必要とする場合、それら全てを結露防止板により囲むことは設計的にも困難であった。
【0006】
また、図5に記載されているような防水性の高いフラックスを半田付けの際に使用して、マイグレーションを防止する方法も知られている。一般的に使用されているフラックスが、図5(a)に示すように金属上で球状になることがあるのに対し、この防水性の高いフラックスは、図5(b)に示すように金属への密着力が高く、リード56aや半田53上で安定した保護膜を形成するものである。
【0007】
しかしながら、このような防水性の高いフラックスを使用して半田付けをするには、窒素雰囲気中で行う等の煩雑な作業工程が必要となり、作業の効率化要求に反するものであった。
【0008】
それゆえ、本発明は、以上の事情を背景になされたものであり、マイグレーションの要因となるプリント配線板表面の露出した導体に水蒸気を含んだ気体が吹き付けられることによって生じる結露を、効果的に防止できるようなプリント配線板収納用ケースを提供することを、その技術的課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記した技術的課題を解決するための、本発明は、請求項1に記載のように、内部にプリント配線板を収納するとともに、該プリント配線板に接続されるコネクタが挿入されるコネクタ挿入穴を備えたプリント配線板収納用ケースにおいて、前記プリント配線板表面の露出した導体に生じる結露を防止するための結露防止板を、前記コネクタのリードの周囲と、前記配線板に配置されたファインピッチQFP形状のIC及びチップコンデンサの少なくともいずれか1つとの間に位置するように設けたことを特徴とするプリント配線板収納用ケースとした。
【0010】
本発明にかかるプリント配線板収納用ケースによれば、結露防止板をコネクタのリードの周囲と、前記配線板に配置されたファインピッチQFP形状のIC及びチップコンデンサの少なくともいずれか1つとの間に位置するように設けたので、コネクタとコネクタ挿入穴との間の隙間からケース内に外気が侵入しても、外気は結露防止板に当たり、外気に含まれた水蒸気によって結露防止板に結露を生じさせるので、コネクタの近傍以外に位置する露出した導体には、湿度が低くなった外気が吹き付けられる。従って、ケース内のほとんどの露出した導体には結露が生じにくくなる。また、コネクタとプリント配線板との接続部は結露が生じやすくなるが、コネクタのリードピッチは比較的に大きいので、マイグレーションは発生しにくい。よって、マイグレーションの発生を効果的に防止することが可能となる。
【0011】
好ましくは、請求項2のように、前記結露防止板に切欠部を設けたことが望ましい。この切欠部により、外気の湿度が低くなるとケース内部の水蒸気も蒸発しやすくなるため、微量な水蒸気の蓄積による結露の発生を防止することが可能となる。
【0012】
より好ましくは、請求項に記載のように、前記コネクタ挿入穴に対向する位置に配置された第1の結露防止板と、前記コネクタ挿入穴に対して垂直に配置されかつ前記コネクタの周囲を覆う第2の結露防止板とを備えていることが好ましい。
【0013】
また、より好ましくは、請求項4に記載のように、前記結露防止板は、ケース内部面から前記プリント配線板に向かって延在しており、前記結露防止板のプリント配線板側端部と前記プリント配線板との間には、隙間が形成されることが好ましい。
また、より好ましくは、請求項5に記載のように、コネクタのリードピッチは、1mm以上であることが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
以上説明したように、本発明によれば、マイグレーションの要因となるプリント配線板表面の露出した導体に水蒸気を含んだ気体が吹き付けられることによって生じる結露を、効果的に防止できるようなプリント配線板収納用ケースを提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明にかかるプリント配線板収納用ケースの実施の形態を、図面を用いて説明する。
【0016】
図1は、本発明の第1実施形態を示したもので、図1(a)はプリント配線板収納用ケース10を側面から見た断面図であり、図1(b)は上面から見た部分断面図である。図1に示すように、ケース10は、樹脂材からなる上ケース11及び下ケース12とから構成され、プリント配線板15を収納している。下ケース12に上ケース11が、隙間のないように嵌め込まれている。下ケース12の内壁には受け部12aが設けており、この受け部12aにてプリント配線板15が固定されている。また、ケース10には、上ケース11と下ケース12との間に位置するところにコネクタ挿入穴10aが配設されている。
【0017】
プリント配線板15には、ファインピッチQFP形状のIC16や、電極間距離が狭いチップコンデンサ17等の電子部品が、30個以上実装されている。これら電子部品(16、17)のリード16a、17aやプリント配線板15に形成されたランド15a等による導体が露出している。
【0018】
コネクタ挿入孔10aに配設されているコネクタ13は、そのリード13aにてプリント配線板15に接続されている。通常、車載用の電子ユニットに使用されるコネクタのリードピッチは1mm以上であり、本実施形態では2.5mmのものを使用している。コネクタ13とコネクタ挿入孔10aとの間には、0.5mm程度の隙間が設けられている。
【0019】
コネクタ13の周囲には、結露防止板14が設けられている。この結露防止板14は、上ケース11内部の天井面からプリント配線板15の上面に向かって延在しており、プリント配線板15に対して垂直となっている。結露防止板14の下端とプリント配線板15との間には、1.5〜1mm程度の隙間が形成されている。また、図1(b)に示すように、結露防止板14は、コネクタ挿入穴10aに対向する板14aと、コネクタ挿入穴10aに対して垂直に位置する板14b、14cによって構成され、コネクタ13の周囲の3方を覆っている。ケースの大きさや要求される性能に応じて、結露防備板14は、板14aのみによって構成されてもよい。
【0020】
以上のように、本発明にかかるプリント配線板収納用ケースにおいては、例えば、低温環境下から高温多湿環境下へ移した場合、コネクタ挿入穴10aとコネクタとの間の隙間を通って、外気wがケース10内部に侵入してくる。この侵入した外気wは、プリント配線板15表面の電子部品(16、17)に吹き付けられる前に、結露防止板14に吹き付けられる。つまり、高温の外気wは結露防止板14に当たり冷却され、外気wに含まれた水蒸気によって結露防止板14に結露kを生じさせるので、コネクタ13の近傍以外に位置する露出した導体(電子部品16、17のリード16a、17a等)には、湿度が低くなった外気wが吹き付けられる。従って、ケース10内のほとんどの露出した導体(電子部品16、17のリード16a、17a等)には結露が生じにくくなる。また、コネクタ13とプリント配線板15との接続部は結露が生じやすくなるが、コネクタのリードピッチは比較的に大きい(1mm以上となっている)ので、微小な結露が生じたとしてもマイグレーションは発生しにくい。よって、マイグレーションの発生を効果的に防止することができる。
【0021】
コネクタ13のリード13aとプリント配線板15との接続部に、公知の(例えば特開2001−150184号公報や特開平9−24488号公報に記載されているような)防水性の高いフラックスを半田付けの際に使用することにより、コネクタ13周辺のプリント配線板15表面の導体における防水性を高めることができる。また、コネクタとプリント配線板との接続部は、半田中に含まれていた防水性フラックスにより覆われていることが望ましい。また、ほとんどの露出した導体(電子部品16、17のリード16a、17a等)とプリント配線板15との接続は一般的な作業性のよいフラックスを使用することによって、作業効率も十分満足させて、より効果的にマイグレーションの発生を防止することができる。
【0022】
次に、本発明の第2実施形態について、図2を用いて説明する。図2は、図1(b)に対応するもので、プリント配線板収納用ケース20を上面から見た部分断面図である。第1実施形態からの相違点は、図2に示すように、結露防止板24に切欠部24a1が設けられていることである。この切欠部24a1は、コネクタ挿入穴20aに対向する結露防止板24の板24aの中央部に、プリント配線板15に対して垂直に形成されたスリット状となっている。
【0023】
この切欠部24a1により、ケース20が湿度の低い環境下に移るとケース20内部の水蒸気や結露kも蒸発しやすくなるため、微量な水蒸気の蓄積による結露の発生を防止することができる。
【0024】
次に、上記した第2実施形態の変形例について、図3を用いて説明する。図3は、図2に対応するもので、プリント配線板収納用ケース30を上面から見た部分断面図である。図3に示すように、ケース30は、袋形ケース部31とカバー部32から構成され、結露防止板34は、カバー部32に設けられている。結露防止板34は、コネクタ挿入穴30aに対して垂直に位置する板34b、34cによって構成され、コネクタ挿入穴10aに対向する位置ではコネクタ13は覆われていないようになっている。つまり、図3は、図2に示した切欠部24a1が、大きく設定された状態を示している。このように、上記した簡易的な結露防止板34であっても、使用環境や要求される性能によっては、上記した実施形態と同様な効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明にかかるプリント配線板収納ケースの第1実施形態を示したもので、図1(a)はプリント配線板収納用ケース10を側面から見た断面図であり、図1(b)は上面から見た部分断面図である。
【図2】本発明にかかるプリント配線板収納ケースの第2実施形態を示した部分断面図である。
【図3】図2に示した本発明の第2実施形態サンルーフ装置の変形例を示した部分断面図である。
【図4】マイグレーションによる不具合を示した説明図である。
【図5】使用するフラックスの違いによる半田付け後の状態を示す断面図である。
【符号の説明】
【0026】
10、20、30 ケース
10a、20a、30a コネクタ挿入穴
13 コネクタ
13a リード
14、24、34 結露防止板
24a1 切欠部
15 プリント配線板
15a ランド
16、17 電子部品
16a、17a リード(露出した導体)
k 結露
w 外気

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部にプリント配線板を収納するとともに、該プリント配線板に設けられるコネクタが挿入されるコネクタ挿入穴を備えたプリント配線板収納用ケースにおいて、前記プリント配線板表面の露出した導体に生じる結露を防止するための結露防止板を、前記コネクタのリードの周囲と、前記配線板に配置されたファインピッチQFP形状のIC及びチップコンデンサの少なくともいずれか1つとの間に位置するように設けたことを特徴とするプリント配線板収納用ケース。
【請求項2】
前記結露防止板に切欠部を設けたことを特徴とする請求項1に記載のプリント配線板収納用ケース。
【請求項3】
前記コネクタ挿入穴に対向する位置に配置された第1の結露防止板と、前記コネクタ挿入穴に対して垂直に配置されかつ前記コネクタの周囲を覆う第2の結露防止板とを備えていることを特徴とする請求項1または2に記載のプリント配線板収納用ケース。
【請求項4】
前記結露防止板は、ケース内部面から前記プリント配線板に向かって延在しており、前記結露防止板のプリント配線板側端部と前記プリント配線板との間には、隙間が形成されることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか一項に記載のプリント配線板収納用ケース。
【請求項5】
コネクタのリードピッチは、1mm以上であることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか一項に記載のプリント配線板収納用ケース。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−288211(P2007−288211A)
【公開日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−164541(P2007−164541)
【出願日】平成19年6月22日(2007.6.22)
【分割の表示】特願2001−388399(P2001−388399)の分割
【原出願日】平成13年12月20日(2001.12.20)
【出願人】(000000011)アイシン精機株式会社 (5,421)
【Fターム(参考)】