説明

プリント配線板設計支援システム、プリント配線板設計支援方法、プログラム及び記録媒体

【課題】 プリント配線板の設計時間を短縮すると共に、設計の質を向上させることができるプリント配線板設計支援システム、プリント配線板設計支援方法、プログラム及び記録媒体を提供する。
【解決手段】 フロー半田用部品データ処理部22は半田引き部品抽出部21により抽出された電子部品に対する半田引きランドに関するデータの入力を設計者に要求し、この入力があるとそのデータを付加したものをフロー半田用部品データとして部品データベース4又はCAD用部品データファイル8に格納する。部品配置情報取得部31がプリント配線板CAD部5を用いて配置設計されたプリント配線板上の電子部品の配置方向に関する情報等の部品配置情報を取得し、半田引きランドデータ選択部33は部品角度算出部32が求めた部品角度で決まる一方向の半田引きランドに関するデータをフロー半田用部品データから選択し、このデータ等をプリント配線板CAD部5に受け渡す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品が半田付けされるランドを備えたプリント配線板の設計支援システム及び設計支援方法並びにこのシステムに好適なプログラム及び記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
プリント配線板上に数々の電子部品を搭載したプリント回路基板は、電子機器を小型化するのに有用であり、産業上多くの製品に用いられている。そして、プリント配線板の配線パターンを設計するに当たっては、搭載される電子部品の形状及び端子位置並びに配線制約等が考慮されている。
【0003】
また、プリント配線板上に電子部品を搭載する際には、主に半田付けが行われている。この半田付けに関しては、プリント配線板を、その半田面がフロー半田槽内で加熱溶融した半田の噴流の表面に触れるように進行させ、プリント配線板に形成されているランドに半田を付着させる方法が知られている。このような方法は、フロー半田付け法とよばれる。例えば、多数の端子ピンを有する挿入型電子部品及び表面実装型ICの半田付けには、この方法が多く用いられている。
【0004】
一方、電子部品に対する軽薄短小化及び回路パターンの高密度化が計られている。そして、電子部品のリード端子の数は集積度が増すほど増加し、リード端子の狭ピッチ化も進められている。これに伴って、リード端子が半田付けされるランドの狭ピッチ化も進められている。このため、上述のような実装方法では、余剰な半田により半田ブリッジが形成されて電気的ショートが引き起こされることがある。
【0005】
そこで、特許文献1には、4方向リードフラットパッケージIC(QFP)のフロー半田付け法に関して、フロー半田槽への進行方向に対して後方の位置に、他のランドよりも大きい半田引き込みランドを設ける技術が開示されている。
【0006】
また、特許文献2には、長方形のSOP(Small Outline Package)とよばれるパッケージICの半田付け法に関し、フロー半田槽への進行方向に対して後方の位置に、他のランドと大きさが相違する半田引きランドを設ける技術が開示されている。
【0007】
これらの従来の技術は、QFP及びSOP等の表面実装型電子部品用のランドの設計だけでなく、プリント配線板に設けた貫通穴(スルーホール)にリード端子を挿入して実装する挿入型電子部品用のスルーホールランドの設計にも応用することができる。挿入型電子部品としては、挿入型多ピンコネクタ及びDIP(Dual In-line Package)等が挙げられる。
【0008】
そして、特許文献3には、このような挿入型電子部品用のランドの設計に関し、プリント配線板のフロー半田付け時の搬送方向を考慮してランド形状を決定する技術が開示されている。
【0009】
このように、標準ランドよりも大きな半田引きランドを設けて余剰の半田を吸収することにより、半田ブリッジの生成を防ぐことが知られている。
【0010】
そして、プリント配線板の設計は、設計者がこのようなランドの形状、大きさ、配置位置等を考慮しながら、経験に基づいて主にプリント配線板用CADシステムを用いて行われている。
【0011】
【特許文献1】特開2001−352159号公報
【特許文献2】特開2002−76593号公報
【特許文献3】特開平11−68298号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、経験に基づく手作業による設計では、プリント配線板上への電子部品の配置設計において、配置の試行や変更のたびに、個々の電子部品について「半田引きランド」が必要であるか否かを設計者が確認する必要がある。そして、必要と判断した場合に、電子部品の配置方向やフロー半田付けの進行方向等を確認して対象となるランドを「半田引きランド」へ形状変更するのである。これらの作業の正確性は、設計者の熟練度に依存しており、設計者は、配置設計しようとする個々の電子部品の種類及びランド形状等について習熟している必要がある。また、実作業では、個々の電子部品を実装するプリント配線板の配置面及び配置角度等にも配慮する必要がある。このため、多大な時間及び労力が必要とされる。この結果、多品種への対応が困難であり、また、配置方向の誤認による設計不良や「半田引きランド」への設計漏れが生じる等の問題がある。
【0013】
本発明は上述した問題点を鑑みてなされたものであり、フロー半田付け法における半田ブリッジを防止するための半田引きランドの設計にかかる作業を自動的且つ正確に行うことができ、プリント配線板の設計時間を短縮すると共に、設計の質を向上させることができるプリント配線板設計支援システム、プリント配線板設計支援方法、プログラム及び記録媒体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本願発明者は、前記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、以下に示す発明の諸態様に想到した。
【0015】
本発明に係るプリント配線板設計支援システムは、フロー半田槽を用いて電子部品が半田付けされるプリント配線板の設計を支援するプリント配線板設計支援システムであって、前記プリント配線板に半田付けされる電子部品の部品データのうちから、半田引きランドを必要とする電子部品に固有の情報を含む部品データを抽出する抽出手段と、前記抽出手段により抽出された部品データから、当該電子部品のフロー半田槽への複数の進行方向に対して後方に位置する半田引きランドの形状に関する複数のランド形状データを含むフロー半田用部品データを有する部品データファイルを作成するファイル作成手段と、前記プリント配線板上における電子部品の配置設計に関する情報を取得する情報取得手段と、前記部品データファイルから、前記プリント配線板のフロー半田槽への進行方向及び前記電子部品の配置設計に関する情報に基づいて、前記フロー半田用部品データが作成された電子部品について、前記複数のランド形状データのうちから一のランド形状データを選択して、各電子部品に対応するランドの形状を決定するランドデータ選択手段と、を有することを特徴とする。
【0016】
本発明に係るプリント配線板設計支援方法は、フロー半田槽を用いて電子部品が半田付けされるプリント配線板の設計を支援するプリント配線板設計支援方法であって、前記プリント配線板に半田付けされる電子部品の部品データのうちから、半田引きランドを必要とする電子部品に固有の情報を含む部品データを抽出する抽出ステップと、前記抽出ステップにおいて抽出した部品データから、当該電子部品のフロー半田槽への複数の進行方向に対して後方に位置する半田引きランドの形状に関する複数のランド形状データを含むフロー半田用部品データを有する部品データファイルを作成するファイル作成ステップと、前記プリント配線板上における電子部品の配置設計に関する情報を取得する情報取得ステップと、前記部品データファイルから、前記プリント配線板のフロー半田槽への進行方向及び前記電子部品の配置設計に関する情報に基づいて、前記フロー半田用部品データが作成された電子部品について、前記複数のランド形状データのうちから一のランド形状データを選択して、各電子部品に対応するランドの形状を決定するランドデータ選択ステップと、を有することを特徴とする。
【0017】
本発明に係るプログラムは、フロー半田槽を用いて電子部品が半田付けされるプリント配線板の設計をコンピュータに支援させるプログラムであって、コンピュータに、前記プリント配線板に半田付けされる電子部品の部品データのうちから、半田引きランドを必要とする電子部品に固有の情報を含む部品データを抽出する抽出手順と、前記抽出手順において抽出した部品データから、当該電子部品のフロー半田槽への複数の進行方向に対して後方に位置する半田引きランドの形状に関する複数のランド形状データを含むフロー半田用部品データを有する部品データファイルを作成するファイル作成手順と、前記プリント配線板上における電子部品の配置設計に関する情報を取得する情報取得手順と、前記部品データファイルから、前記プリント配線板のフロー半田槽への進行方向及び前記電子部品の配置設計に関する情報に基づいて、前記フロー半田用部品データが作成された電子部品について、前記複数のランド形状データのうちから一のランド形状データを選択して、各電子部品に対応するランドの形状を決定するランドデータ選択手順と、を実行させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、プリント配線板の設計者が、配置設計する電子部品の種類、ランド形状等について特段の知識を有していなくても、容易且つ正確に設計をすることができる。また、配置設計の変更があった場合にも、同様に、容易且つ迅速に対応することができる。この結果、精度の良い高品質のプリント配線板の設計が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
先ず、フロー半田付け法の概要について説明する。図1は、フロー半田付け法の概要を示す図である。
【0020】
プリント配線板50の一方の表面に対してのみ半田付けを行う場合、当該表面を半田面94とし、これの裏側の表面を部品面93とする。プリント配線板50に、挿入式リード端子列を有するコネクタ(以下、コネクタという。)を搭載する場合には、コネクタの端子が貫通するスルーホールを形成し、その内部にめっき層を形成する。このとき、例えば、めっき層の部品面93側の端部及び半田面94側の端部のいずれもが各面上で広がるようにし、この広がった部分を、夫々部品面側ランド96、半田面側ランド97とする。なお、上記のコネクタは、プリント配線板に対向する面にリード端子列が設けられた穴挿入型の部品である。また、半田面94には、SOP型IC用のランド99も設けておく。SOP型ICは、例えばその平面形状が長方形であり、2個の長手側面にリード端子列が設けられた表面実装型の部品である。
【0021】
そして、コネクタ95の各リード端子を部品面93側からスルーホールに挿入し、半田面94側まで貫通させる。また、半田面94側のランド99にSOP型IC98を配置する。このような状態で、プリント配線板50を矢印92が示す方向に進行させ、フロー半田槽90からの溶融半田の噴流の表面91が半田面94に接するようにする。
【0022】
この結果、ランド99及び半田面側ランド97において半田付けが行われる。また、この半田付けの際には、スルーホールを介して半田面側ランド97近傍から部品面側ランド96まで半田が流動してくるため、部品面側ランド96における半田付けも同時に行われる。また、図1に示すように、部品面93上にSOP型IC71を搭載してもよく、この固定もリフローにより行われる。
【0023】
次に、上述のようにして行われるフロー半田付け法による半田付けが行われるプリント配線板の設計に好適なプリント配線板設計支援システム、プリント配線板設計支援方法及びプログラムについて、添付の図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下の説明において、「進行方向」とは、フロー半田付け法においてプリント配線板をフロー半田槽に搬送する際のプリント配線板及び電子部品のフロー半田槽への進行方向をいう。
【0024】
図2は、本発明の実施形態に係るプリント配線板設計支援システムの機能的な構成を示す機能構成図である。本実施形態に係るプリント配線板設計支援システム100には、入力部1、情報処理部2、部品データベース4、プリント配線板CAD部5、出力部6、記憶媒体7及びCAD用部品データファイル8が設けられている。情報処理部2には、CAD用部品データ作成部20及び半田引きランド選択部30が設けられている。CAD用部品データ作成部20には、半田引き部品抽出部21及びフロー半田用部品データ処理部22が設けられている。また、半田引きランド選択部30には、部品配置情報取得部31、部品角度算出部32及び半田引きランドデータ選択部33が設けられている。
【0025】
入力部1は、例えばキーボードにより構成されている。出力部6は、例えばディスプレイやプリンタにより構成されている。
【0026】
部品データベース4は、例えばハードディスク等の記録媒体により構成されている。部品データベース4には、主に2種類の部品データ(1次部品データ及び2次部品データ)が格納される。1次部品データは、プリント配線板上に配置設計する電子部品に固有のデータであり、1次部品データには、電子部品の外形寸法並びにリード端子、リード端子に対応するランド及び半田レジスト等の形状及び寸法が含まれる。一方、2次部品データは、当該電子部品のフロー半田付け法における進行方向と端子が並ぶ方向(以下、電子部品の基準方向ともいう)との関係に基づいて、半田ブリッジの発生を防止するために、1次部品データから必要に応じて設計者により作成される、所謂半田引き形状のランドに関するデータを有するデータである。そして、これらの部品データが、電子部品毎に登録番号を付されてデータベース化されて部品データベース4に格納されているのである。なお、「半田引き形状のランドに関するデータ」とは、半田引きランド及びこれに対応する半田レジスト等の形状及び寸法に関するデータである。
【0027】
図3は、本発明の実施形態における1次部品データと2次部品データとの関係を示す図である。ここでは、実装する電子部品としてコネクタ及びSOP型ICを例に挙げて説明する。
【0028】
1次部品データには、図3に示すように、コネクタ及びSOP型ICの夫々の端子に対応する標準のランド14の形状、大きさ及び位置を示す情報が含まれている。また、コネクタに関しては、スルーホール15の位置等を示す情報も含まれている。更に、コネクタ及びSOP型ICのいずれについても、予め基準方向が定められており、これを示す情報も含まれている。なお、本実施形態では、コネクタ及びSOP型ICの基準方向を夫々の端子が並ぶ方向としているが、必ずしもこれらが一致している必要はなく、基準方向は任意に設定することができる。例えば、QFP(Quad Flat Package)のように、端子が電子部品の4辺に沿って配置されている場合には、端子が並ぶ方向は1方向でないため、端子が並ぶ方向を一意に限定することができない。このような場合、端子が並ぶ方向のいずれか、又は電子部品の一の対角線と平行な方向等を基準方向とすればよい。
【0029】
そして、これらの1次部品データから、プリント配線板の進行方向と電子部品の基準方向との関係に基づいて2次部品データを作成する。2次部品データの作成は、例えば設計者により行われるが、予め基準となる条件を設定しておいてCAD用部品データ作成部20等に行わせてもよい。ここでは、プリント配線板の平面形状を実質的な四角形とし、その長手方向を進行方向とするものと仮定する。また、コネクタについては、その進行方向を基準とした反時計回り方向への基準方向のなす4種類の角度(0°、90°、180°、270°)ごとに、2次部品データを作成し、SOP型ICについては、その進行方向を基準とした反時計回り方向への基準方向のなす2種類の角度(0°、180°)ごとに、2次部品データを作成するものとする。なお、2次部品データはこれらの角度のものに限定されることはなく、電子部品の搭載角度を45°ピッチとして、他になす角度が45°、135°等の場合のものを作成してもよい。また、SOP型ICについて、なす角度が90°、270°となる場合の2次部品データを作成しないのは、このような配置を採用すると半田付けを行いにくいからである。
【0030】
上述のように、コネクタについては、図3に示すように、1次部品データに基づいて4種類の2次部品データを作成する。プリント配線板の進行方向とコネクタの基準方向とのなす角度が0°の場合には、進行方向に対して最後方に位置するランド14を後方に拡大したものとし、これを半田引きランド13とする。なす角度が90°の場合には、各ランド14を進行方向に対して後方に拡大したものとし、これらを半田引きランド13とする。なす角度が180°の場合には、進行方向に対して最後方に位置するランド14を後方に拡大したものとし、これを半田引きランド13とする。なす角度が270°の場合には、各ランド14を進行方向に対して後方に拡大したものとし、これらを半田引きランド13とする。
【0031】
また、上述のように、SOP型ICについては、図3に示すように、1次部品データに基づいて2種類の2次部品データを作成する。プリント配線板の進行方向とSOP型ICの基準方向とのなす角度が0°の場合には、進行方向に対して最後方に位置するランド14を後方に拡大したものとし、これを半田引きランド13とする。同様に、なす角度が180°の場合にも、進行方向に対して最後方に位置するランド14を後方に拡大したものとし、これを半田引きランド13とする。但し、上述のように、なす角度が90°又は270°の場合の2次部品データは作成しない。
【0032】
なお、これらのランドに関するデータだけでなく、半田レジストパターンについても、同様に半田引きランド13に対応するパターンを2次部品データ(図示せず)として作成する。
【0033】
プリント配線板CAD部5は、CPU及びこれが実行するプログラムにより構成されており、プリント配線板の設計者が部品データベース4又はCAD用部品データファイル8を用いて電子部品をプリント配線板上に配置設計を行う設計動作を支援する。プリント配線板CAD部5は、例えば、プリント配線板の基準方向を基準とする電子部品の配置角度や電子部品のリード端子に対応するランドの配置面等の部品配置情報等を出力部6を介して出力する。ここで、プリント配線板の基準方向は任意に設定可能なものであり、例えば、出力部6を構成するディスプレイの水平方向を基準方向とする。
【0034】
情報処理部2及びこれを構成する各部は、例えばコンピュータ(CPU)及びこれが実行するプログラムにより構成されている。CAD用部品データ作成部20では、半田引き部品抽出部21が、回路設計段階で設計者により作成された部品構成表に基づいて設計に必要な部品データを部品データベース4から読み出した後に、この読み出した部品データのうちから半田引きランドを必要とする電子部品のものを抽出し、フロー半田用部品データ処理部22が、抽出された電子部品に対する半田引きランドに関するデータ(少なくとも2以上の方向分の半田引きランドに関するデータ)の入力を設計者に要求し、この入力があるとそのデータを付加したものをフロー半田用部品データ(2次部品データ)として部品データベース4又はCAD用部品データファイル8に格納する。一方、半田引きランド選択部30では、部品配置情報取得部31が、プリント配線板CAD部5を用いて配置設計されたプリント配線板上の電子部品の配置方向に関する情報、及び該電子部品に対応するランドの配置面の情報等に関する部品配置情報を取得し、部品角度算出部32が、この部品配置情報を用いて該電子部品のフロー半田槽への進行方向に対する部品角度を算出する。そして、半田引きランドデータ選択部33が、この部品角度で決まる一方向の半田引きランドに関するデータをフロー半田用部品データ(2次部品データ)から選択し、このデータ等をプリント配線板CAD部5に受け渡す。
【0035】
CAD用部品データファイル8は、例えばハードディスク等の記録媒体に記憶されるデータファイルであり、設計の度に作成される。CAD用部品データファイル8は、プリント配線板に配置設計する電子部品の1次部品データ又は2次部品データを格納するデータファイルであり、プリント配線板CAD部5で電子部品の配置設計を行う際に利用される。
【0036】
なお、情報処理部2及びプリント配線板CAD部5を構成するプログラムは、例えばハードディスク又はROM等の記憶媒体7に記憶されている。
【0037】
次に、上述のように構成されたプリント配線板設計支援システムの動作(プリント配線板設計支援方法)について説明する。ここでは、CAD用部品データファイル8の準備段階と、その後の設計段階とに分けて説明する。CAD用部品データファイル8の準備段階の手順は、主にCAD用部品データ作成部20により実行され、設計段階の手順は、主にプリント配線板CAD部5及び半田引きランド選択部30により実行される。
【0038】
図4は、CAD用部品データファイル8の準備段階におけるプリント配線板設計支援システムの動作を示すフローチャートである。なお、図4中の破線で囲んだブロック(21及び22)は、夫々半田引き部品抽出部21、フロー半田用部品データ処理部22の動作であることを表している。
【0039】
CAD用部品データファイル8の準備段階では、先ず、ステップS201において、半田引き部品抽出部21が回路設計段階で設計者により作成された部品構成表を読み込む。次に、ステップS202において、半田引き部品抽出部21がこの部品構成表に含まれる1個の電子部品に対応する部品データを部品データベース4より取得する。次いで、ステップS203において、半田引き部品抽出部21が該電子部品に対応するランドが半田引きランドを必要とするものであるか否かをこの部品データから判断する。この判断のための基準としては、例えば、ランドが2つ以上規則的並んだ配列をなしており、且つその隣接するランド間隔が所定値以下であるものを半田引きランドが必要な電子部品とするというものが挙げられる。ランド間隔の所定値は製造工程に依存して決定される制約値であるため特に限定されないが、例えば0.3mmとする。
【0040】
半田引きランドが必要な電子部品に対しては、ステップS204において、フロー半田用部品データ処理部22が設計者に対して、少なくとも2つ以上の方向分の半田引きランドに関する2次部品データを作成するよう要求する。そして、図3に示すような2次部品データの入力があると、フロー半田用部品データ処理部22は、半田引きランドに関するデータを該部品データに付加したフロー半田用部品データ(2次部品データ)を作成して、当該部品データの登録番号を付して部品データベース4に格納する。この結果、当該電子部品の既存の部品データ(1次部品データ)は、新たに作成されたフロー半田用部品データにより部品データベース4内で置換され、1個の電子部品に対して、ステップS204で作成されたフロー半田用部品データか、又は既存の部品データ(1次部品データ)のいずれか一方のみが部品データベース4に存在することとなる。
【0041】
ここで、コネクタ及びSOP型ICの部品データ(1次部品データ)及びフロー半田用部品データ(2次部品データ)の構成例について説明する。図5Aは、コネクタの部品データ(1次部品データ)のレイヤー構成を示す図であり、図5Bは、コネクタのフロー半田用部品データ(2次部品データ)のレイヤー構成を示す図である。また、図6Aは、SOP型ICの部品データ(1次部品データ)のレイヤー構成を示す図であり、図6Bは、SOP型ICのフロー半田用部品データ(2次部品データ)のレイヤー構成を示す図である。図5A及び図6Aに示すように、部品データには、穴、シンボルマークとともに標準ランド及び標準レジスト等の形状に関するデータがデフォルトデータとして、いわゆるレイヤー構造の各レイヤーNo.に予め割り付けられている。そして、ステップS204で2次部品データが作成され上書きされると、図5B及び図6Bに示すように、デフォルトデータが割り付けられていないレイヤーNo.に、新たなデータが付加される。なお、他のレイヤー構成を採用してもよい。
【0042】
ステップS205において、フロー半田用部品データ処理部22が、ステップS204で設計者により作成されたフロー半田用部品データ(2次部品データ)又はステップS203で半田引きランドが不要と判断された電子部品の部品データ(1次部品データ)そのものをCAD用部品データファイル8に格納する。
【0043】
そして、ステップS206において、部品構成表に含まれる電子部品のすべてについてステップS202からステップS205までの手順が終了したかを判断し、未終了の場合には、終了するまでステップS202からステップS205までの手順を繰り返す。この結果、部品構成表に含まれるすべての電子部品についての1次部品データ又は2次部品データを含むCAD用部品データファイル8が完成する。
【0044】
このようにして、主にCAD用部品データ作成部20によるCAD用部品データファイル8の準備段階の手順が終了する。なお、ステップS203で半田引きランドが必要な電子部品であると判断された場合であっても、既にフロー半田用部品データ(2次部品データ)が作成されている場合には、ステップS204で新たなフロー半田用部品データを作成する必要はない。従って、プリント配線板の設計を繰り返し行うことにより、順次部品データベース4の内容が更新されていくと、次第に設計者に要求される作業が低減されていくこととなる。
【0045】
なお、フロー半田用部品データと部品データとの間には、少なくとも半田引きランドのデータの有無という相違点があるため、これらの識別は容易である。同時に、プリント配線板の設計者は電子部品の配置設計の作業において両者のデータ構成差異を意識せず利用ができるものである。
【0046】
次に、設計段階における動作について説明する。設計段階では、既にCAD用部品データファイル8の準備が完了しており、プリント配線板CAD部5がCAD用部品データファイル8を利用できる状態となっている。図7は、設計段階におけるプリント配線板設計支援システムの動作を示すフローチャートである。なお、図7中の破線で囲んだブロック(31、32及び33)は、夫々部品配置情報取得部31、部品角度算出部32、半田引きランドデータ選択部33の動作であることを表している。
【0047】
ここでは、図8に示すような電子部品の配置設計を行うこととする。この例では、プリント配線板の進行方向60に対して、コネクタ61〜64をその基準方向を90°ずつずらしながら配置設計し、SOP型IC65〜66をその基準方向を180°ずつずらしながら配置設計する。そして、プリント配線板50上での配置位置及び向きが決定された後の各電子部品(コネクタ及びSOP型IC)の基準方向を、夫々の配置方向71〜76とする。また、コネクタ61〜64は、全て部品面に配置することとし、SOP型IC65〜66は、全て半田面側に配置することとする。
【0048】
設計段階において、プリント配線板CAD部5から動作開始命令が発せられると、半田引きランド選択部30が動作を開始する。そして、ステップS501において、プリント配線板CAD部5が、設計者に対して1個の電子部品のプリント配線板への配置設計を要求し、この配置設計の入力を確認する。配置設計の入力があると、プリント配線板CAD部5は、配置設計された電子部品に対応する部品データ又はフロー半田用部品データをCAD用部品データファイル8から読み出し、この配置設計された電子部品に関する部品配置情報を半田引きランド選択部30に受け渡す。ここで、部品配置情報には、部品データ又はフロー半田用部品データだけでなく、該電子部品に対応するランドの配置面の情報及び該電子部品の配置方向の情報等が含まれている。
【0049】
一方、半田引きランド選択部30は、設計者に対してプリント配線板のフロー半田槽への進行方向の入力を要求し、この進行方向の入力を確認する。この進行方向の入力では、方向そのものを入力するのではなく、プリント配線板の基準方向と進行方向のなす角度を入力してもよい。例えば図8に示す例においてプリント配線板の基準方向が右方向と設定されている場合に、プリント配線板のフロー半田槽への進行方向60を右方向とするのであれば、角度0°を入力すればよい。また、図示しないが、プリント配線板のフロー半田槽への進行方向を上方向とするのであれば、角度90°を入力すればよい。
【0050】
次に、ステップS302において、部品配置情報取得部31がプリント配線板CAD部5から受け渡された1個の電子部品の部品配置情報を取得する。次いで、ステップS303において、部品配置情報取得部31が、部品配置情報に基づいて、該電子部品に対応するランドが半田面に配置され、且つ該電子部品に対応するランドが半田引きランドを必要とするものであるかを判断する。半田引きランドの必要性の判断は、フロー半田用部品データが部品配置情報に含まれているか否かの確認で容易に行うことができる。ステップS303の条件を満たす電子部品は、フロー半田付けをする半田面にランドが配置され、且つ半田引きランドを必要とする電子部品である。
【0051】
ステップS303で、ランドが半田面へ配置され、且つ半田引きランドが必要と判断された場合には、ステップS304において、部品角度算出部32が、部品配置情報に含まれる電子部品の基準方向(配置方向)とフロー半田槽への進行方向とのなす角度(部品角度)を算出する。部品角度の算出に当たっては、例えば、プリント配線板の基準方向と該電子部品の配置方向とのなす角度を求め、この角度からステップS301で入力された角度(プリント配線板の基準方向と進行方向とのなす角度)を減算すればよい。
【0052】
その後、ステップS305において、半田引きランドデータ選択部33が、この部品角度に対応する半田引きランドに関する形状データをフロー半田用部品データ(2次部品データ)から選択する。
【0053】
一方、ステップS303において、ランドが半田面に配置されないか、又は半田引きランドが不要と判断された電子部品については、ステップS307において、半田引きランドデータ選択部33が、この電子部品に対応する標準ランドの形状データを選択する。
【0054】
ステップS305又はS307の後には、ステップS306において、半田引きランド選択部30が、ステップS305又はS307において選択された形状データをプリント配線板CAD部5に受け渡す。
【0055】
続いて、ステップS502において、プリント配線板CAD部5が、半田引きランド選択部30から受け取った形状データに基づいて、半田面に配置設計された電子部品のランドに関する形状データを確定し(ステップS502)、当該電子部品についての部品配置設計(半田引きランド設計を含む)が終了する。そして、部品構成表に含まれるすべての電子部品についての半田引きランドの設計が終了するまで、プリント配線板CAD部5及び半田引きランド選択部30が連動して、ステップS501〜S502及びステップS301〜S307の処理を繰り返す。
【0056】
ここで、図3、図8及び図9を参照しながら、ステップS304及びS305の詳細について視覚的に説明する。
【0057】
図8に示す配置設計では、プリント配線板50のフロー半田槽への進行方向60を基準とするコネクタ61〜64の反時計回り方向の部品角度は、順に0°、90°、180°、270°であり、プリント配線板50のフロー半田槽への進行方向60を基準とするSOP型IC65〜66の時計回り方向の部品角度は、順に0°、180°である。ステップS304では、これらの部品角度を電子部品毎に求める。
【0058】
そして、これらの電子部品毎に、ステップS305で、これらの部品角度に対応する形状データを半田引きランドに関する形状データとして選択する。
【0059】
具体的には、コネクタ61に対しては、進行方向60を基準とした反時計回り方向への配置方向71のなす角度が0°であるため、図3中の2次部品データのうち1番上に位置するものを選択する。
【0060】
コネクタ62に対しては、進行方向60を基準とした反時計回り方向への配置方向72のなす角度が90°であるため、図3中の2次部品データのうち上から2番目に位置するものを選択する。
【0061】
コネクタ63に対しては、進行方向60を基準とした反時計回り方向への配置方向73のなす角度が180°であるため、図3中の2次部品データのうち上から3番目に位置するものを選択する。
【0062】
コネクタ64に対しては、進行方向60を基準とした反時計回り方向への配置方向74のなす角度が270°であるため、図3中の2次部品データのうち1番下に位置するものを選択する。
【0063】
また、SOP型IC65に対しては、進行方向60を基準とした反時計回り方向への配置方向75のなす角度が0°であるため、図3中の2次部品データのうち1番上に位置するものを選択する。
【0064】
SOP型IC66に対しては、進行方向60を基準とした反時計回り方向への配置方向76のなす角度が180°であるため、図3中の2次部品データのうち上から3番目に位置するものを選択する。
【0065】
また、これらの選択に伴い、図5A、図5B、図6A又は図6Bに示す部品データからのデータの選択を行う。
【0066】
例えば、コネクタ64をプリント配線板CAD部5で配置設計する場合には(ステップS501)、上述のように部品角度270°を算出した後(ステップS304)、図5Bに示す表「コネクタのフロー半田用部品データのレイヤー構成」の中で部品角度270°に対応するレイヤーNo.35の「部品角度270°の半田引きランドの形状データ」、及びレイヤーNo.45の「部品角度270°の半田引きランドに対応するレジスト形状データ」等を半田引きランドに関する形状データとして選択する(ステップS305)。他のコネクタ61〜63についても同様である。
【0067】
同様に、SOP型IC66をプリント配線板CAD部5で配置設計する場合には(ステップS501)、上述のように部品角度180°を算出した後(ステップS304)、図6Bに示す表「SOP型ICのフロー半田用部品データのレイヤー構成」の中で部品角度180°に対応するレイヤーNo.34の「部品角度180°の半田引きランドの形状データ」、及びレイヤーNo.44の「部品角度180°の半田引きランドに対応するレジスト形状データ」等を半田引きランドに関する形状データとして選択する(ステップS305)。他のSOP型IC65についても同様である。
【0068】
このようにして、半田引きランドに関する形状データを選択した後、ステップS502において、その形状データを確定する。図9に、このような配置設計の結果、確定したコネクタ61〜64及びSOP65〜66のランドを視覚的に示す。
【0069】
このような第1の実施形態によれば、必要に応じてフロー半田用部品データ(2次部品データ)を作成すれば、コネクタ及びSOP型IC等の電子部品の半田引きランドの設計に当たり、半田ブリッジが生じにくい半田引きランド等のランドの配置及び形状を自動的に決定することができる。このため、煩雑な作業が省かれると共に、設計の誤りが生じにくくなり、設計内容の信頼性が向上する。
【0070】
また、プリント配線板の設計者には、電子部品の種類、ランド形状等について特段の習熟が必要とされない。更に、配置設計する電子部品の配置面、配置角度等にも特段の配慮は必要とされない。更にまた、配置設計の変更に対しても迅速に対応することが可能であり、精度の良い高品質のプリント配線板の設計と設計の短時間化が可能となる。
【0071】
なお、図8に示す配置例には、その配置方向(基準方向)が進行方向60と直交するSOP型ICを含ませていないが、これは、このようなSOP型ICを配置すると、進行方向60との関係から、適切な半田付けを行うことが困難だからである。
【0072】
また、図8に示すようなコネクタの配置がなされるプリント配線板50に対し、その長手方向に直交する方向を進行方向とすると共に、SOP型IC65〜66の配置を省略する場合には、図10に示すように、各コネクタの半田引きランドの位置及び形状等を他の態様とすることとなる。ここで、SOP型IC65〜66の配置を省略するのは、SOP型IC65〜66を配置すると、進行方向との関係から、適切な半田付けを行うことが困難だからである。回路構成上必要とされるのであれば、90°回転させて配置すればよい。
【0073】
この場合、進行方向80が図8中の進行方向60から反時計回りの方向に90°ずれた方向となっているため、これに付随して、コネクタ61〜64の配置方向71〜74と進行方向80とがなす角度も変化している。このため、各コネクタ61〜64に対応するランド形状等も変化させる必要がある。
【0074】
即ち、コネクタ61に対しては、進行方向80を基準とした反時計回り方向への配置方向71のなす角度が270°であるため、図3中の2次部品データのうち1番下に位置するものを選択する。
【0075】
コネクタ62に対しては、進行方向80を基準とした反時計回り方向への配置方向72のなす角度が0°であるため、図3中の2次部品データのうち1番上に位置するものを選択する。
【0076】
コネクタ63に対しては、進行方向80を基準とした反時計回り方向への配置方向73のなす角度が90°であるため、図3中の2次部品データのうち上から2番目に位置するものを選択する。
【0077】
コネクタ64に対しては、進行方向80を基準とした反時計回り方向への配置方向74のなす角度が180°であるため、図3中の2次部品データのうち上から3番目に位置するものを選択する。
【0078】
このようなランドの設計を行うことにより、プリント配線板50の長手方向に直交する方向を進行方向とする場合にも、半田ブリッジが生じにくいランドの配置を自動的に決定することができる。
【0079】
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。第2の実施形態では、フロー半田用部品データ処理部22における処理手順、及び半田引きランドデータ選択部33における処理手順が、第1の実施形態のものと相違している。以下、この相違点を中心にして第2の実施形態について説明する。
【0080】
ここでも、CAD用部品データファイル8の準備段階と、その後の設計段階とに分けて説明する。また、説明を簡便にするために電子部品としては、配置方向が180°ずつ2方向にずれたSOP型ICのみを配置設計するものとする。図11は、CAD用部品データファイル8の準備段階におけるプリント配線板設計支援システムの動作を示すフローチャートである。
【0081】
CAD用部品データファイル8の準備段階では、第1の実施形態と同様に、ステップS201〜S204までの処理を実行する。そして、ステップS204の後には、ステップS207において、フロー半田用部品データ処理部22が、ステップS204で作成したフロー半田用部品データに基づいて、少なくとも2方向分、例えば4方向分の半田引きランドに関する形状データから、1方向分の部品角度に対応する半田引きランドに関する形状データを含んだ4種類のCAD用部品データを新たに作成する。
【0082】
例えば、ステップS204で図12に示すようなフロー半田用部品データ(2次部品データ)を作成した場合には、図13A〜図13Dに示すようなCAD用部品データを新たに作成する。このとき、部品データベース4において、部品データを電子部品毎に4桁の登録番号を付して管理しているのであれば、SOP型ICの登録番号を、例えば「5678」とし、これから作成した4種類のCAD用部品データの登録番号を、例えば「56781」〜「56784」として、SOP型ICのフロー半田用部品データ(登録番号5678)と連結管理することが好ましい。
【0083】
また、各部品角度のCAD用部品データの構成内容に関しては、図12のフロー半田用部品データのレイヤー構成において、半田面のランド形状、レジスト形状等のデータが格納してあるレイヤーNo31、No41の夫々を、各部品角度の「半田引きランドの形状データ」、「半田引きランドに対応するレジスト形状データ」とする。また、該電子部品は半田面へ配置されるため、不要となる部品面のデータであるレイヤーNo.30及びNo.40のデータを削除する。同様に、図示しないが、レイヤーNo.32〜No.35及びレイヤーNo.42〜No.45のデータも不要となるため削除して、各部品角度のCAD用部品データを作成する。
【0084】
このようにしてステップS207で4種類のCAD用部品データを作成した後には、ステップS208において、フロー半田用部品データ処理部22が、ステップS207で作成した4種類のCAD用部品データ及びステップS204で設計者により作成されたフロー半田用部品データ(2次部品データ)の組み合わせか、又はステップS203で半田引きランドが不要と判断された電子部品の部品データ(1次部品データ)そのものをCAD用部品データファイル8に格納する。
【0085】
そして、第1の実施形態と同様に、ステップS206において、部品構成表に含まれる電子部品のすべてについてステップS202からステップS208までの手順が終了したかを判断し、未終了の場合には、終了するまでステップS202からステップS208までの手順を繰り返す。この結果、部品構成表に含まれるすべての電子部品についてのCAD用部品データファイル8が完成する。
【0086】
次に、設計段階における動作について説明する。図14は、設計段階におけるプリント配線板設計支援システムの動作を示すフローチャートである。また、設計段階における動作(半田引きランドデータ選択部33の処理手順)は、フロー半田用部品データ処理部22により作成された4種類のCAD用部品データを処理するために、第1の実施形態のものと相違している。
【0087】
そこで、第2の実施形態では、ステップS501において、プリント配線板CAD部5は、第1の実施形態と同様の情報だけでなく、フロー半田用部品データを含むものについては、ステップS207で作成された4種類のCAD用部品データをも含む部品配置情報を半田引きランド選択部30に受け渡す。
【0088】
半田引きランド選択部30は、第1の実施形態と同様に、ステップS301〜S304までの処理を実行する。そして、ステップS304の後には、ステップS308において、半田引きランドデータ選択部33が、4種類のCAD用部品データの中からステップS304で算出した部品角度に対応するCAD用部品データの登録番号(5桁)を選択する。
【0089】
一方、ステップS303において、ランドが半田面に配置されないか、又は半田引きランドが不要と判断された電子部品については、ステップS310において、半田引きランドデータ選択部33が、この電子部品に対応する部品データ又はフロー半田用部品データの登録番号(4桁)を選択する。
【0090】
ステップS308又はS310の後には、ステップS309において、半田引きランド選択部30が、ステップS308又はS310において選択された登録番号をプリント配線板CAD部5に受け渡す。
【0091】
続いて、ステップS503において、プリント配線板CAD部5が、半田引きランド選択部30から受け取った登録番号に対応する部品データ(デフォルトの部品データ、フロー半田用部品データ又はCAD用部品データのいずれか)をCAD用部品データファイル8から検索し、この部品データのレイヤーNo.31、No.41の形状データ等に基づいて半田引きランドに関する形状データを確定し(ステップS503)、当該電子部品についての部品配置設計(半田引きランド設計を含む)が終了する。そして、第1の実施形態と同様に、部品構成表に含まれるすべての電子部品についての半田引きランドの設計が終了するまで、プリント配線板CAD部5及び半田引きランド選択部30が連動して、ステップS501〜S503及びステップS301〜S310の処理を繰り返す。
【0092】
ここで、図8、図12及び図13A〜図13Dを参照しながら、ステップS308及びS309の詳細について視覚的に説明する。
【0093】
例えば、SOP型IC65又は66をプリント配線板CAD部5で配置設計する場合には(ステップS501)、上述のように部品角度0°又は180°を算出した後(ステップS304)、これらの部品角度に対応するCAD用部品データの登録番号「56781」又は「56783」を図13A〜図13Dに示す4種類のCAD用部品データの中から選択する。そして、選択した登録番号をプリント配線板CAD部5に受け渡す(ステップS309)。
【0094】
なお、部品角度が90°又は270°となる配置設計を行った場合には、図13A〜図13Dの中から登録番号「56782」又は「56784」を選択する。しかし、図13B及び図13Dに示すように、これらの登録番号に対応するCAD用部品データには、半田面のランドの形状データが存在しない。このため、このような場合には、ステップS503でエラーが発生し、プリント配線板CAD部5がプリント配線板の設計者にこの部品角度では配置設計できないことを報知し、他の部品角度での配置設計を促す。
【0095】
このように、第2の実施形態では、配置方向分のCAD用部品データの登録番号を介して、半田引きランドに関する形状データを選択する。従って、プリント配線板CAD部5においては、情報処理装置2の半田引きランド選択部30からは登録番号だけを受け取るため、第1の実施形態と比較すると、処理が簡潔なものとなる。
【0096】
なお、半田引きランドとしては、端子が接続されるランドを使用してもよく、端子が接続されないランドを擬似ランド(ダミーランド)として設けるようにしてもよい。
【0097】
なお、本発明の実施形態は、例えばコンピュータがプログラムを実行することによって実現することができる。また、プログラムをコンピュータに供給するための手段、例えばかかるプログラムを記録したCD−ROM等のコンピュータ読み取り可能な記録媒体又はかかるプログラムを伝送するインターネット等の伝送媒体も本発明の実施形態として適用することができる。また、上記のプログラムも本発明の実施形態として適用することができる。上記のプログラム、記録媒体、伝送媒体及びプログラムプロダクトは、本発明の範疇に含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0098】
【図1】フロー半田付け法の概要を示す図である。
【図2】本発明の実施形態に係るプリント配線板設計支援システムの機能的な構成を示す機能構成図である。
【図3】本発明の実施形態における1次部品データと2次部品データとの関係を示す図である。
【図4】CAD用部品データファイル8の準備段階におけるプリント配線板設計支援システムの動作(第1の実施形態)を示すフローチャートである。
【図5A】コネクタの部品データのレイヤー構成を示す図である。
【図5B】コネクタのフロー半田用部品データのレイヤー構成を示す図である。
【図6A】SOP型ICの部品データのレイヤー構成を示す図である。
【図6B】SOP型ICのフロー半田用部品データのレイヤー構成を示す図である。
【図7】設計段階におけるプリント配線板設計支援システムの動作(第1の実施形態)を示すフローチャートである。
【図8】コネクタ61〜64及びSOP型IC65〜66の配置の例を示す図である。
【図9】コネクタ61〜64及びSOP型IC65〜66の半田引きランドの位置及び形状の例を示す図である。
【図10】コネクタ61〜64の半田引きランドの位置及び形状の他の例を示す図である。
【図11】CAD用部品データファイル8の準備段階におけるプリント配線板設計支援システムの動作(第2の実施形態)を示すフローチャートである。
【図12】フロー半田用部品データのレイヤー構成を示す図である。
【図13A】部品角度0°のCAD用部品データのレイヤー構成を示す図である。
【図13B】部品角度90°のCAD用部品データのレイヤー構成を示す図である。
【図13C】部品角度180°のCAD用部品データのレイヤー構成を示す図である。
【図13D】部品角度270°のCAD用部品データのレイヤー構成を示す図である。
【図14】設計段階におけるプリント配線板設計支援システムの動作(第2の実施形態)を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0099】
1:入力部
2:情報処理部
4:部品データベース
5:プリント配線板CAD部
6:出力部
7:記憶媒体
8:CAD用部品データファイル
20:CAD用部品データ作成部
21:半田引き部品抽出部
22:フロー半田用部品データ処理部
30:半田引きランド選択部
31:部品配置情報取得部
32:部品角度算出部
33:半田引きランドデータ選択部
13:半田引きランド
14:ランド
15:スルーホール
50:プリント配線板
61〜64:コネクタ
65、66:SOP型IC
60、80:進行方向
71〜76:配置方向
100:プリント配線板設計支援システム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フロー半田槽を用いて電子部品が半田付けされるプリント配線板の設計を支援するプリント配線板設計支援システムであって、
前記プリント配線板に半田付けされる電子部品の部品データのうちから、半田引きランドを必要とする電子部品に固有の情報を含む部品データを抽出する抽出手段と、
前記抽出手段により抽出された部品データから、当該電子部品のフロー半田槽への複数の進行方向に対して後方に位置する半田引きランドの形状に関する複数のランド形状データを含むフロー半田用部品データを有する部品データファイルを作成するファイル作成手段と、
前記プリント配線板上における電子部品の配置設計に関する情報を取得する情報取得手段と、
前記部品データファイルから、前記プリント配線板のフロー半田槽への進行方向及び前記電子部品の配置設計に関する情報に基づいて、前記フロー半田用部品データが作成された電子部品について、前記複数のランド形状データのうちから一のランド形状データを選択して、各電子部品に対応するランドの形状を決定するランドデータ選択手段と、
を有することを特徴とするプリント配線板設計支援システム。
【請求項2】
前記プリント配線板上における電子部品の配置設計を支援するプリント配線板用支援手段を有することを特徴とする請求項1に記載のプリント配線板設計支援システム。
【請求項3】
前記ランドデータ選択手段は、前記配置設計に関する情報を用いて、前記プリント配線板のフロー半田槽へのフロー半田槽への進行方向と当該電子部品の配置方向とがなす角度を算出し、この角度に基づいて一のランド形状データを選択することを特徴とする請求項1又は2に記載のプリント配線板設計支援システム。
【請求項4】
前記抽出手段は、互いに隣接するランドの間隔が所定値以下となる電子部品を、半田引きランドを必要とする電子部品であるとみなして、部品データの抽出を行うことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のプリント配線板設計支援システム。
【請求項5】
前記複数のランド形状データは、当該電子部品のフロー半田槽への複数の進行方向毎に、当該電子部品のフロー半田槽への進行方向と当該電子部品の配置方向との関係に基づいて作成されたものであることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載のプリント配線板設計支援システム。
【請求項6】
前記配置設計に関する情報は、
当該電子部品に対応するランドのプリント配線板上における配置面に関する情報と、
前記プリント配線板の任意に定められた基準方向に対する当該電子部品の配置角度に関する情報と、
を有することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載のプリント配線板設計支援システム。
【請求項7】
フロー半田槽を用いて電子部品が半田付けされるプリント配線板の設計を支援するプリント配線板設計支援方法であって、
前記プリント配線板に半田付けされる電子部品の部品データのうちから、半田引きランドを必要とする電子部品に固有の情報を含む部品データを抽出する抽出ステップと、
前記抽出ステップにおいて抽出した部品データから、当該電子部品のフロー半田槽への複数の進行方向に対して後方に位置する半田引きランドの形状に関する複数のランド形状データを含むフロー半田用部品データを有する部品データファイルを作成するファイル作成ステップと、
前記プリント配線板上における電子部品の配置設計に関する情報を取得する情報取得ステップと、
前記部品データファイルから、前記プリント配線板のフロー半田槽への進行方向及び前記電子部品の配置設計に関する情報に基づいて、前記フロー半田用部品データが作成された電子部品について、前記複数のランド形状データのうちから一のランド形状データを選択して、各電子部品に対応するランドの形状を決定するランドデータ選択ステップと、
を有することを特徴とするプリント配線板設計支援方法。
【請求項8】
フロー半田槽を用いて電子部品が半田付けされるプリント配線板の設計をコンピュータに支援させるプログラムであって、
コンピュータに、
前記プリント配線板に半田付けされる電子部品の部品データのうちから、半田引きランドを必要とする電子部品に固有の情報を含む部品データを抽出する抽出手順と、
前記抽出手順において抽出した部品データから、当該電子部品のフロー半田槽への複数の進行方向に対して後方に位置する半田引きランドの形状に関する複数のランド形状データを含むフロー半田用部品データを有する部品データファイルを作成するファイル作成手順と、
前記プリント配線板上における電子部品の配置設計に関する情報を取得する情報取得手順と、
前記部品データファイルから、前記プリント配線板のフロー半田槽への進行方向及び前記電子部品の配置設計に関する情報に基づいて、前記フロー半田用部品データが作成された電子部品について、前記複数のランド形状データのうちから一のランド形状データを選択して、各電子部品に対応するランドの形状を決定するランドデータ選択手順と、
を実行させることを特徴とするプログラム。
【請求項9】
前記ランドデータ選択手順において、前記コンピュータに、前記配置設計に関する情報を用いて、前記プリント配線板のフロー半田槽へのフロー半田槽への進行方向と当該電子部品の配置方向とがなす角度を算出し、この角度に基づいて一のランド形状データを選択させることを特徴とする請求項8に記載のプログラム。
【請求項10】
前記抽出手順において、前記コンピュータに、互いに隣接するランドの間隔が所定値以下となる電子部品を、半田引きランドを必要とする電子部品であるとみなして、部品データの抽出を行わせることを特徴とする請求項8又は9に記載のプログラム。
【請求項11】
前記複数のランド形状データは、当該電子部品のフロー半田槽への複数の進行方向毎に、当該電子部品のフロー半田槽への進行方向と当該電子部品の配置方向との関係に基づいて作成されたものであることを特徴とする請求項8乃至10のいずれか1項に記載のプログラム。
【請求項12】
前記配置設計に関する情報は、
当該電子部品に対応するランドのプリント配線板上における配置面に関する情報と、
前記プリント配線板の任意に定められた基準方向に対する当該電子部品の配置角度に関する情報と、
を有することを特徴とする請求項8乃至11のいずれか1項に記載のプログラム。
【請求項13】
請求項8乃至12のいずれか1項に記載のプログラムを記録したことを特徴とするコンピュータ読み取り可能な記録媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13A】
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【図13B】
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【図13C】
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【図13D】
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【図14】
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【公開番号】特開2006−245327(P2006−245327A)
【公開日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−59422(P2005−59422)
【出願日】平成17年3月3日(2005.3.3)
【出願人】(000104629)キヤノン・コンポーネンツ株式会社 (49)
【Fターム(参考)】