説明

プリント配線板

【課題】基板への部品実装において、リフロー時にフラックスが特定方向に逃げる構造を提供することにより、フラックスの付着が許容されない箇所へのフラックスの浸入を防止すること。
【解決手段】実装端子11を持った部品実装面を有し、部品20を載置してリフローはんだ処理することにより前記部品の接続を行うようにしたプリント配線板10において、前記部品実装面における前記部品を実装する部位に、前記部品実装面22と前記部品の底部との間に狭い空隙を形成するように凸部13が設けられ、前記凸部は、毛細管現象により前記空隙内から外部に向けて溶融状態のフラックス31を誘導するように、前記部品20との間にフラックス誘導路を形成することを特徴とするプリント配線板。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリント配線板への部品実装に係わり、とくに部品をプリント配線板にリフロー実装する際のフラックスの逃げ構造に関する。
【背景技術】
【0002】
プリント配線板へのリフローによる部品実装は、クリームはんだを基板上のはんだ付け接合部にスクリーン印刷やディスペンサーからの吐出により供給し、その上に実装部品を載せてリフロー炉でクリームはんだを溶融して接合する。クリームはんだとは、はんだ粉末と液状フラックスとを混合したものである(特許文献1参照)。
【0003】
リフロー前の状態では、フラックスはペースト状はんだに捕捉された状態となっている。次いで、リフロー中に実装部品は自重でFPC側に沈み込んで部品とFPCとの隙間が狭くなっていき、フラックスが毛細管現象によって部品とFPCとの隙間に入り込む現象が起きる。さらに、フラックスは、部品周囲にはみ出ることもある。
【0004】
フラックスは洗浄除去できれば問題ないが、洗浄液を使用できない部品が一緒に実装されている場合がある。このときは、フラックス洗浄をせずに出荷している。
【0005】
一方、部品周囲にフラックスが存在してはならない部品(例えば、LED発光素子)もある。LEDの場合、発光する側の側面にフラックスがあってはならない。フラックスの溶剤成分が気散した後に残る残留成分が、LED発光面に付着していると輝度を低下させるためである。その他の側面では、フラックスの残留成分が外観的な不具合を生じなければ許容される。
【0006】
近年、特に電子機器の小型化が進み、LEDも薄型化している。それに伴い、部品とFPCとの隙間がさらに狭くなるため、部品下部に滞留させ得るフラックス量が少なくなって部品周囲にはみ出るフラックス量が増加する。
【0007】
また、LED以外でも、基板と水平方向に開口のあるコネクタを実装する場合は、コネクタ開口面側にフラックスが付着することは許容されない。開口部からフラックスが浸入すると、接続子にフラックスの残留成分が固着し、導通不具合が生じる恐れがあるためである。
【0008】
図5は、従来の基板10に実装部品(LED)20を実装する状態を示しており、図示上側にLED発光面23があり、図示左右両側に実装端子11がある。
【0009】
図6(a)ないし(d)は、基板10に実装部品20を載せ、クリームはんだ30をリフロー処理することによって実装端子11に部品端子22を接続する過程を示している。この処理が進む過程で、クリームはんだ30から流出したフラックス31がLED発光面にまでせり上がってくる。そして、図7は、フラックス31a,31bが滲み出して実装部品20の図示上下両側に達した状態を示している。
【0010】
この対策として、例えば特許文献2に、LED発光素子を実装するランド構造が示されているが、十分なものではなく前述の不具合が発生する恐れがある。
【0011】
この対策として、フラックスを逃がすための溜まり部用凹部を形成すること(特許文献3参照)に、同じくフラックスを逃がすための開口部を形成すること(特許文献4参照)が提供されている。
【特許文献1】特開平10-328882号公報
【特許文献2】特開2007-250765号公報
【特許文献3】特開平5-13938号公報
【特許文献4】特開2005-259739号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、フラックス溜め用凹部を形成することや開口部を設けることは、部品とFPCとの隙間での毛細管現象によるフラックスの部品周囲への滲み出しには効果がない。特に開口部を形成することは、2層以上の配線層がある場合に回路設計の制約を与えることにもなり、好ましくない。
【0013】
このため、不具合対策としては、目視検査で周囲にフラックスが存在してはならない部品の側面にフラックス成分の付着がないことを確認して出荷しているのが実状である。
【0014】
しかしながら、作業性の点からは、検査を不要とするように、特定箇所へのフラックスの付着を防止する必要がある。
【0015】
本発明は上述の点を考慮してなされたもので、基板への部品実装において、リフロー時にフラックスが特定方向に逃げる構造を提供することにより、フラックスの付着が許容されない箇所へのフラックスの浸入を防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記目的達成のため、本発明では、
実装端子を持った部品実装面を有し、部品を載置してリフローはんだ処理することにより前記部品の接続を行うようにしたプリント配線板において、
前記部品実装面における前記部品を実装する部位に、前記部品実装面と前記部品の底部との間に狭い空隙を形成するように凸部が設けられ、
前記凸部は、毛細管現象により前記空隙内から外部に向けて溶融状態のフラックスを誘導するように、前記部品との間にフラックス誘導路を形成する
ことを特徴とするプリント配線板、
を提供する。
【発明の効果】
【0017】
本発明は上述のように、基板の部品実装部に設けた凸部がその周囲に形成する隙間の毛細管現象による作用によってフラックスを誘導するため、フラックスによる不具合の発生を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、添付図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
【実施例1】
【0019】
図1は、本発明に係る部品実装基板の平面図である。基板10は、この場合、矩形の平面形状をしており、図における左右の2箇所に実装端子11があり、この実装端子11を含む破線で示した領域が部品搭載部12である。
【0020】
この基板10における実装端子11相互間の中央部に、平面形状が台形となるように凸部13が形成されている。台形は、互いに平行な2辺に関して短辺から長辺に向かう方向にフラックスを誘導するような隙間を形成する、という意味がある。そして、凸部13の周囲、つまり両側縁および上面によって形成される隙間に沿って毛細管現象によりフラックスが外部に流れ出し、台形の短辺から長辺に向かわせることにより短辺よりもさらに先の反長辺方向にフラックスが向かわないようにしている。
【0021】
凸部13は、基板10の面から紙面に直角に突出する方向に凸状をなし頂面が平坦なもので、回路金属層またはカバーレイにより構成される。凸部13は厚みが均一であって、耐熱およびフラックスに対する耐性があれば特に限定されない。ただし、回路金属層およびカバーレイの少なくとも一方によって凸部13を形成すれば、工数の増加がなく好ましい。
【0022】
図2(a)ないし(c)は、図1に示した実装基板10の実装端子11にクリームはんだを供給して実装部品20を載置し、リフロー処理をした場合のフラックスの流動現象を示したものである。
【0023】
まず図2(a)では、実装部品20と実装端子11との間にクリームはんだ30が溶融前の状態で存在する。次いでリフロー処理がされると、図2(b)に示すように、クリームはんだ30からフラックス31が滲み出してきて、実装端子11と凸部13との間の隙間、および凸部13と実装部品21の底部との間の隙間に浸入してくる。
【0024】
フラックスは毛細管現象により浸入していき、図2(c)に示すように実装部品21の底部と凸部13の頂面との間の隙間全体にフラックス31が充填された状態になる。とくに、実装部品21の底部と凸部13の頂面との間の隙間は、凸部13の頂面形状が台形であるから、毛細管現象によるフラックス31の誘導作用は、台形を形成する平行2辺の短辺側から長辺側に向かって行われる。
【0025】
この結果、図2で言えば、紙面に直角に紙面から突出する方向にフラックス31が誘導され、紙面に直角方向の裏側には向かわない。紙面の裏側は、フラックス31が浸入すると不具合を起こす部分であり、紙面から突出する方向に誘導する必要がある。
【0026】
図3は、フラックス31が流動した後に実装部品10を再び平面方向から見た状態を示している。ここでは、実装部品20として発光素子(LED)を考えており、LEDの発光面は図3における紙面と平行方向で図示上側に光が放出されることを想定している。即ち、発光面は破断線で示すように、実装部品20の図示上側にあり、この破断線部分にフラックス31が付着すると光の照射機能が阻害される。
【0027】
そこで、フラックス31は図示するように、凸部13から図示下側に滲み出すように誘導され、発光素子の発光面には達しないようにされている。
【0028】
図4(a)ないし(d)は、凸部13の構成例を示している。図4(a)は最も基本的な平面形状である台形であり、図4(b)はいわば富士山形、図4(c)は山形、図4(d)は矩形にV溝の切込みを設けた形である。
【0029】
これらは、何れも図示上側に比べて図示下側の長さが長くなる点で共通している。これは、図2によって説明した実装部品20の下部に形成された隙間における毛細管現象が良好に行われるものである。
【0030】
そして、凸部13の図示上側の幅寸法をL1(図4(d)はL1=L11+L12)とし、下側の幅寸法をL2とすると、L1<L2となるように構成されている。
【0031】
凸部13の平面形状は、部品20のフラックスがあってはならない面に接することなく反対側に突出した形状であり、リフロー時に部品20が傾かない形状とする必要がある。このため、典型的には、部品20の重心を通る線に対し対称形状とし、フラックスがあってはならない面方向に広がる形状とすることが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の一実施例の構成を示す説明図。
【図2】図2(a)ないし(c)は、基板に部品を実装する際のフラックスの流動現象を示す横断面図。
【図3】図1に示した実施例におけるフラックスの流動後の状態を示す平面図。
【図4】本発明に用いる凸部の各種平面形状を示す説明図。
【図5】従来の基板および部品実装状態の説明図。
【図6】図5の実装状態におけるフラックスの流動現象を示す断面図。
【図7】図5の実装状態におけるフラックスの流動現象を示す平面図。
【符号の説明】
【0033】
10 実装基板、11 実装端子、12 部品搭載部、13 凸部、20 部品、
21 実装部品、22 部品端子、23 LED発光面、30 クリームはんだ、
31 フラックス、40 カバーレイ。
L1 短辺長、L2 長辺長。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
実装端子を持った部品実装面を有し、部品を載置してリフローはんだ処理することにより前記部品の接続を行うようにしたプリント配線板において、
前記部品実装面における前記部品を実装する部位に、前記部品実装面と前記部品の底部との間に狭い空隙を形成するように凸部が設けられ、
前記凸部は、毛細管現象により前記空隙内から外部に向けて溶融状態のフラックスを誘導するように、前記部品との間にフラックス誘導路を形成する
ことを特徴とするプリント配線板。
【請求項2】
請求項1記載のプリント配線板において、
前記凸部は、前記フラックス誘導路の出口に向かって幅寸法が漸増する平面形状を有することを特徴とするプリント配線板。
【請求項3】
請求項2記載のプリント配線板において、
前記凸部は、前記フラックス誘導路の出口に向かって前記空隙が狭まるような平面形状を有することを特徴とするプリント配線板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−266949(P2009−266949A)
【公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−112691(P2008−112691)
【出願日】平成20年4月23日(2008.4.23)
【出願人】(000230249)日本メクトロン株式会社 (216)
【Fターム(参考)】