説明

プレート型熱交換器、淡水化装置及び浄水化装置

【課題】熱交換効率に優れたプレート式熱交換器を、処理対象の液体が流れなくなるといった事態が生じないようにする。
【解決手段】処理対象の液体の流路に回動可能部材である1以上のファン152を、相互に連結されている複数の熱交換プレート121〜124の各々に設ける。ファン152は、手動或いは駆動源によって回動されるが、液体の進行によって回動されるようにしてもよい。ファン152が回転すると、流路の内壁に対して、液体に含まれている成分の凝固物が付着することが防止できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プレート型熱交換器に関し、特に、淡水化装置又は浄水化装置に搭載されるプレート型熱交換器に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、原水タンクの原水の温度上昇を抑え、蒸留性能の向上を図ることができる淡水化装置が開示されている。この淡水化装置は、太陽エネルギーにより熱媒を加熱する太陽熱集熱器と、熱交換器を具備し太陽熱集熱器で加熱された熱媒を加熱源として該熱交換器で内部に収容している原水との間で熱交換を行い該原水から水蒸気を発生させる減圧式の蒸発缶と、原水を収容した原水タンク内に配置され蒸発缶で発生した水蒸気を受入れ該原水との間で熱交換を行い蒸留水を得る凝縮器と、原水タンク内の原水を冷却する放熱器とを具備している。
【0003】
【特許文献1】特開2000−279944号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に開示されている淡水化装置は、熱交換器についての考察が十分になされていない。すなわち、通常、海水を熱交換器が通過する際に、その内壁に海水内の塩分やミネラル分が凝固して付着し、その結果、熱交換器内を処理対象の液体であるところの海水がうまく流れなくなる場合があるところ、その対策についての考察が十分になされていない。
【0005】
ここで、本出願人が実験等を重ねた結果、海水の流路がパイプ式の熱交換器であれば、当該パイプ内に鉄球等を通すといったメンテナンス作業を定期的に行うことで、パイプ内壁に凝固した塩などを除去することが可能であった。
【0006】
しかし、パイプ式熱交換器は、プレート式熱交換器に比して、冷却効果が平均で1/3程度しか得られない。換言すると、プレート式熱交換器を用いた淡水化装置のほうが、パイプ式熱交換器を用いた淡水化装置よりも3倍程度の熱交換効率が優れているといえる。
【0007】
ただ、プレート式熱交換器は、パイプ式熱交換器とは異なり、その内壁のメンテナンス作業が困難である。具体的には、そもそもパイプ式熱交換器のように鉄球等を通すことができない。そのため、結果的には、プレート式熱交換器を備える淡水化装置の普及には至っていない。
【0008】
そこで、本発明は、熱交換効率に優れたプレート式熱交換器を、処理対象の液体が流れなくなるといった事態が生じないようにすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明のプレート式熱交換器は、処理対象の液体の流路に回動可能部材を設け、当該流路の内壁に対して液体に含まれている成分の凝固物が付着することを防止する。
【0010】
上記回動可能部材は、液体の進行によって回動されるものとしてもよいし、手動或いはモータなどの駆動源によって回動されるものとしてもよい。
【0011】
また、上記回動可能部材は、相互に連結されている複数の熱交換プレートの各々に設けて、各熱交換プレートにおける塩などの凝固の付着を防止するするとよい。
【0012】
なお、各熱交換プレートに設ける回動可能部材の数は限定されるものではない。各熱交換プレートの強度、凝固物の付着防止効率などを考慮して適宜決定するとよい。
【0013】
また、本発明の淡水化装置又は浄水化装置は、処理対象の液体の流路に回動可能部材を設け、当該流路の内壁に対して液体に含まれている成分の凝固物が付着することを防止するプレート式熱交換器を備える。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施形態1のプレート式熱交換器100の模式的な外観を示す斜視図である。
【図2】図1の側面図である。
【図3】図2に示す熱交換部120の一部の斜視図である。
【図4】図3の断面図である。
【図5】発明の実施形態2に係るプレート式熱交換器100の模式的な外観を示す斜視図である。
【図6】本発明の実施形態3に係る熱交換プレート121の模式的な外観を示す平面図である。
【符号の説明】
【0015】
110 搬送管
120 熱交換部
121〜124 熱交換プレート
130 筐体
150 回転軸
152 ファン
【発明の実施の形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0017】
(実施形態1)
図1は、本発明の実施形態1のプレート式熱交換器100の模式的な外観を示す斜視図である。図2は、図1の側面図である。図1,図2には、淡水化装置に収容されるプレート式熱交換器100を示している。なお、本実施形態では、淡水化装置に対するプレート式熱交換器の使用態様について説明するが、このプレート式熱交換器は、浄水化装置にも使用することができる。
【0018】
プレート式熱交換器100は、処理対象であるところの海水等が搬送される搬送管110を備える。搬送管110の下流には、海水等を冷却するための熱交換部120が位置する。熱交換部120には、鉄、ステンレス、アルミニウムなどの熱伝導性に優れた素材を用いている。
【0019】
また、熱交換部120は、筐体130によって覆われている。筐体130自体も、鉄、ステンレス、アルミニウムなどの熱伝導性に優れた素材を用いている。筐体130全体の大きさは、例えば、530mm(図2左右方向)×300mm(図1左右方向)×200mm(図2上下方向)とすることができる。筐体130のうち、熱交換部120の周辺部分の厚みは、例えば、5〜20mmとすることができる。換言すると、熱交換部120の周辺には、約5〜20mmの厚さの枠(筐体130の一部)に覆われていることになる。
【0020】
さらに、プレート式熱交換器100には、後述するファンが連結された回転軸150が設けられている。回転軸150は、筐体130及び熱交換部120を貫く態様で、搬送管110の長手方向に沿って、プレート式熱交換器100に設けられている。回転軸150は、手動で回転させてもよいし、図示しないモータなどを用いて回転させてもよい。本実施形態では、回転軸150は、その長手方向に3〜4mm程度動くようにしてある。
【0021】
図3は、図2に示す熱交換部120の一部の斜視図である。図4は、図3の断面図である。図3,図4には、熱交換部120を構成する熱交換プレート121〜124を示している。熱交換プレート121〜124の概形は相互に同一であり、相互に連結されている。熱交換プレート121〜124には、複数のディンプル20が形成されている。ここでは、一面に例えば9つのディンプル20が形成されていて、他面にも同数のディンプル20が対象的に形成されている。
【0022】
したがって、図4に示すように、例えば、熱交換プレート121と熱交換プレート122との対向面を見てみると、それらに各々形成されている各ディンプル20は、対向する態様で配置されることになる。
【0023】
ここで、本実施形態のプレート式熱交換器100は、熱交換部120に対して、図示しない送風機などによって熱交換のための送風をする。また、熱交換部120内を通る海水等は高圧状態にある。このため、熱交換プレート121等自体が膨らんだり、偏ったりする。この結果、熱交換プレート121〜124は、相互に近づいたり離れたりする場合がある。
【0024】
係る場合に、ディンプル20が形成されていないとすると、例えば、熱交換プレート121と熱交換プレート122とが相互に近づきすぎるという結果を招くことがある。これでは、熱交換プレート121と熱交換プレート122との間を、送風機からの風が通り抜けにくくなり、最悪の場合には、ほとんどここを風が通り抜けることがなくなる。
【0025】
これに対して、上記態様でディンプル20が形成されている場合には、例えば、熱交換プレート121と熱交換プレート122とのディンプル20が相互に接触しても、ディンプル20間で、風が抜けるスペースを確保することができる。
【0026】
熱交換プレート121には、搬送管110に連結されている入口22が形成されている。入口22は、熱交換プレート121の図面左下に形成されている。したがって、搬送管110を流れてきた海水等は、入口22を通じて熱交換プレート121に注入される。
【0027】
一方、熱交換プレート121の図面右上には、出口23が形成されている。したがって、入口22を通じて熱交換プレート121に注入された海水等は、出口23から外部に注出される。
【0028】
熱交換プレート122には、熱交換プレート121の出口23に対応して、図面右上に入口22が形成されている。熱交換プレート122の入口22と熱交換プレート121の出口23とは、連結管24によって連結されている。したがって、熱交換プレート121から注出された海水等は、熱交換プレート122に対して、その入口22を通じて注入される。
【0029】
また、熱交換プレート122の図面左下には、出口23が形成されている。したがって、熱交換プレート122の入口22を通じて熱交換プレート122に注入された海水等は、その出口23から外部に注出される。
【0030】
同様に、例えば、奇数番目に位置する熱交換プレートは、熱交換プレート121と同じ位置に入口22及び出口23が形成されている。また、偶数番目に位置する熱交換プレートは、熱交換プレート122と同じ位置に入口22及び出口23が形成されている。
【0031】
したがって、熱交換部120全体でみれば、熱交換プレート121,122,123・・・と海水等が流れていく際に、各熱交換プレート等の中を上下に進行するので、海水等の流路の表面積を稼ぐことが可能となり、高い冷却効果を維持することができる。
【0032】
また、各熱交換プレート121等内には、回転軸150に連結されたファン152が位置する。したがって、回転軸150を回転させることで、ファン152が各熱交換プレート121等内で回転することになる。この結果、各熱交換プレート121等内の海水等が攪拌される。
【0033】
ところで、ディンプル20を形成した結果、熱交換プレート121等内で、海水等の流れが停滞しやすい箇所が生じる。そのため、特に、当該個所において海水等に含まれている塩分、ミネラル分が、熱交換プレート121等の内壁に凝固して付着しやすい。
【0034】
しかし、回転軸150を回転させると、熱交換プレート121等の内壁に塩分等が凝固して付着しにくくなる。実際には、相対的に短いスパン(例えば1週間以内)で回転軸150を回転させると、塩分等が凝固しにくくなるので、その結果、熱交換プレート121等の内壁に塩分等が付着することを予防できる。
【0035】
また、相対的に長いスパン(例えば2週間以内)で回転軸150を回転させると、塩分等が凝固しかけている場合、更には、熱交換プレート121等の内壁に塩分等が付着しかけている場合に、その凝固を剥離等することが可能となる。
【0036】
(実施形態2)
図5(a)〜図5(c)は、本発明の実施形態2に係るプレート式熱交換器100の模式的な外観を示す斜視図である。図5(a)には、プレート式熱交換器100に対して例えば3本の回転軸150が取り付けられている例を示している。もっとも、回転軸150の数は、熱交換プレート121の縦横比に応じて適宜決定すればよいが、熱交換プレート121の強度維持のため、可能な限り少なくするとよい。
【0037】
図5(b)には、図5(a)の変形例を示している。上述のように、回転軸150の数は少ないほうが好ましいので、ここでは、2本の回転軸150を取り付けられている。係る場合には、2本の回転軸150を同時に回転させると、各々のファン152が衝突してしまうので、その点に留意が必要である。
【0038】
図5(c)には、図5(b)の変形例を示している。ここでは、2本の回転軸150の位置を工夫して、あたかも車のワイパーのような態様で回転軸150を回転可能な構成としている。こうすると、回転軸150の数を少なくし、かつ、各回転軸150を同時に回転させられるようになる。
【0039】
(実施形態3)
図6は、本発明の実施形態3に係る熱交換プレート121の模式的な外観を示す平面図である。本実施形態では、筐体130及び熱交換部120を貫く態様で回転軸150を設けることに代えて、一方を固定端として、かつ、他方を自由端としたスティック154を熱交換プレート121に取り付けている状態を示している。
【0040】
こうすると、海水等が熱交換プレート121内を進行する際に、スティック154が固定端を中心に回転可能となるので、熱交換プレート121内のうち、少なくとも主要な海水等の流路に塩などの凝固物が付着することを防止できる。
【0041】
同様の趣旨で、図6に示すスティックに代えて、幾つかの水車又はスクリューなどを設けてもよい。この場合にも、当該水車等が、水流で可動するので、熱交換プレート121内に塩などの凝固物が付着することを防止できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理対象の液体の流路に回動可能部材を設け、当該流路の内壁に対して液体に含まれている成分の凝固物が付着することを防止する、プレート式熱交換器。
【請求項2】
前記回動可能部材は、相互に連結されている複数の熱交換プレートの各々に設けられている、請求項1記載のプレート式熱交換器。
【請求項3】
前記各熱交換プレートには、1以上の回動可能部材が設けられている、請求項2記載のプレート式熱交換器。
【請求項4】
前記回動可能部材は、前記液体の進行によって回動される、又は、手動或いは駆動源によって回動される、請求項1記載のプレート式熱交換器。
【請求項5】
請求項1記載のプレート式熱交換器を備える淡水化装置。
【請求項6】
請求項1記載のプレート式熱交換器を備える浄水化装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−117675(P2011−117675A)
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−276096(P2009−276096)
【出願日】平成21年12月4日(2009.12.4)
【出願人】(509199409)株式会社エレクトラホールディングス (6)
【Fターム(参考)】