説明

プログラム、情報記憶媒体及びゲーム装置

【課題】キャラクタの移動制御に有用な簡単な手法の実現。
【解決手段】スノーボードゲームにおけるハーフパイプ10には、内壁11の頂点(端部)であるリップ12上に、内壁11を上方向に伸延する非表示面である壁ヒット判定モデル20が配置されている。壁ヒット判定モデル20は、リップ12より低い位置に定められた判定面30を、キャラクタが通過時の速度Vに応じて有効/無効が設定される。壁ヒット判定モデル20が有効に設定された場合には、壁ヒット判定モデル20が存在するとしてキャラクタ制御され、無効に設定された場合には、壁ヒット判定モデル20が存在しないとしてキャラクタ制御される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンピュータに、地形オブジェクトが配置されたゲーム空間中での移動体の移動制御を行って所定のゲームを実行させるためのプログラム等に関する。
【背景技術】
【0002】
いわゆる3Dゲームにおいて、ゲーム空間中のキャラクタの移動制御は、キャラクタの移動方向及び移動速度(両者を合わせて「速度ベクトル」とも呼ばれる)に基づいて行うのが一般的である(例えば、特許文献1参照)。プレーヤキャラクタであれば、更にプレーヤの操作入力に応じて速度ベクトルの向き(移動方向)や大きさ(移動速度)を変更することになる。
【特許文献1】特開2006−212080号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
より具体的には、ゲーム空間におけるキャラクタの現在位置から速度ベクトルに基づいて次の制御サイクルにおける位置を求める処理を所定の制御サイクル単位(例えば、1/60秒単位)で次々に演算していくことで、キャラクタの移動が制御されることとなる。勿論、速度ベクトルは、キャラクタと他のオブジェクトとの衝突や、ゲーム空間に設定された引力(例えば、重力)乃至斥力(例えば、爆弾アイテムの爆発)等によって随時更新される。従って、キャラクタを所望の方向へ移動させようとする場合には、速度ベクトルに対して、所望の方向に誘引するような何らかの補正力(ベクトル)を定義し、速度ベクトルの更新時にその補正力(ベクトル)を加算するといった手法が一般的であった。
【0004】
しかしながら、速度ベクトルに補正力を加算していく手法は、演算量の増加及び処理ロジックの複雑化につながる傾向があり、多数のキャラクタが登場するゲームにあっては演算量の急増を招く一因ともなっていた。また、複数種類の補正力を発生させる場合には、ゲーム制作者の意図しない移動方向へキャラクタが移動してしまう現象が生じるといった問題も招きかねなかった。本発明は上述の課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、キャラクタの移動制御に有用な簡単な手法を提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するための第1の発明は、
コンピュータに、ゲーム空間中に配置された移動面上での移動体(例えば、図2のプレーヤキャラクタPC)の移動制御を行って所定のゲームを実行させるためのプログラム(例えば、図6のゲームプログラム610)であって、
面方向が異なる第1の移動面及び第2の移動面を隣接して配置する移動面配置手段、
前記第1の移動面と前記第2の移動面との隣接位置から前記第1の移動面の面方向を延長する非表示面(例えば、図3,図4の壁ヒット判定モデル20)を配置する非表示面配置設定手段(例えば、図6のゲーム演算部210;図8のステップA1)、
前記移動体の移動制御における前記非表示面の有効無効を設定する設定手段(例えば、図6の地形設定部212;図8のステップA27,A29)、
前記移動面上を移動するように前記移動体を移動制御するとともに、前記設定手段により無効と設定された場合には前記非表示面が存在しないこととして前記移動体を移動制御し、有効と設定された場合には前記非表示面が存在することとして当該移動体を移動制御する移動制御手段(例えば、図6のキャラ制御部214;図8のステップA13,A15,A19,A21)、
前記非表示面を非表示として前記ゲーム空間の画像を生成する画像生成手段(例えば、図6の画像生成部230)、
として前記コンピュータを機能させるためのプログラムである。
【0006】
また、他の発明として、
ゲーム空間中に配置された移動面上での移動体の移動制御を行って所定のゲームを実行するゲーム装置であって、
面方向が異なる第1の移動面及び第2の移動面を隣接して配置する移動面配置手段と、
前記第1の移動面と前記第2の移動面との隣接位置から前記第1の移動面の面方向を延長する非表示面を配置設定する非表示面配置設定手段と、
前記移動体の移動制御における前記非表示面の有効無効を設定する設定手段と、
前記移動面上を移動するように前記移動体を移動制御するとともに、前記設定手段により無効と設定された場合には前記非表示面が存在しないこととして前記移動体を移動制御し、有効と設定された場合には前記非表示面が存在することとして当該移動体を移動制御する移動制御手段と、
前記非表示面を非表示として前記ゲーム空間の画像を生成する画像生成手段と、
を備えたゲーム装置を構成しても良い。
【0007】
この第1の発明等によれば、移動面上を移動するように移動体が移動制御される。この移動面上の移動制御は従来公知の制御と同様で構わない。しかし、第1の発明等では、面方向が異なる第1の移動面と第2の移動面との隣接位置から第1の移動面の面方向を所定方向に延長するように非表示面が配置される。そして、この非表示面の有効無効が設定され、無効の場合には非表示面が存在しないこととして移動体が移動制御される。すなわち、非表示面の存在しない、ゲーム空間の画像通りの移動制御がなされる。一方、有効の場合には非表示面が存在することとして移動体が移動制御される。非表示面はゲーム空間の画像には表示されない。また、非表示面は第1の移動面の面方向を延長するように配置されている。このため、例えば、移動体が第1の移動面上を移動した後、あたかも第1の移動面の面方向に沿って飛んだかのような制御がなされることとなる。しかも、その移動制御は、非表示面を配置しておき、非表示面の有効無効を切り替えるという簡単な制御で済む。
【0008】
また、第2の発明として、第1の発明のプログラムであって、
前記設定手段が、前記移動体の移動速度に基づいて前記非表示面の有効無効を設定する(例えば、図8のステップA25)ように前記コンピュータを機能させるためのプログラムを構成しても良い。
【0009】
この第2の発明によれば、非表示面の有効無効の設定が、移動体の移動速度に基づいて行われる。このため、例えば移動速度が一定速度以上の高速の場合にのみ非表示面を有効とし、高速移動によって移動体があたかも第1の移動面の面方向に沿って飛んだかのように制御することを簡単に実現することができる。
【0010】
より具体的には、例えば、第3の発明として、第2の発明のプログラムであって、
前記非表示面の位置に到達する際の速度を代替的に求めるための速度判定位置(例えば、図4の判定面30)を設定する速度判定位置設定手段として前記コンピュータを機能させ、
前記設定手段が、前記移動体の前記速度判定位置を通過する速度に基づいて前記非表示面の有効無効を設定するように前記コンピュータを機能させるためのプログラムを構成しても良い。
【0011】
また、第4の発明として、第1の発明のプログラムであって、
前記設定手段が、前記非表示面に対する前記移動体の進行方向に基づいて前記非表示面の有効無効を設定するように前記コンピュータを機能させるためのプログラムを構成しても良い。
【0012】
この第4の発明によれば、非表示面の有効無効の設定が、この非表示面に対する移動体の進行方向に基づいて行われる。このため、例えば非表示面の一方の面(表と裏とするならば、そのどちらか決められた面)に向かって移動体が移動している場合にのみ非表示面を有効とすることで、移動体が非表示面の一方の面に近づくとこの非表示面に遮られてそれ以上先には進めないが、他方の面から近づくと非表示面に遮られることなく進めるといったことを簡単に実現することができる。
【0013】
また、第5の発明として、第1〜第4の何れかの発明のプログラムであって、
前記移動面配置手段が、接続部分が凸状に形成されるように前記第1の移動面及び前記第2の移動面を隣接配置するように前記コンピュータを機能させるとともに、
プレーヤによる所定のジャンプアクション指示入力(例えば、トリック指示)を検知するジャンプ指示入力検知手段、
前記ジャンプ指示入力検知手段による検知がなされた場合に、1)前記移動体の移動速度、及び/又は、2)前記ジャンプアクション指示入力がなされた時の前記移動体の位置に基づいてジャンプアクションの適否を判定するジャンプ適否判定手段、
前記ジャンプ適否判定手段により適合と判定された場合、前記移動体が前記第1の移動面及び前記第2の移動面の接続部分を通過する際に、前記ジャンプアクションとして定められた動作制御を前記移動体に行わせるジャンプアクション動作制御手段(例えば、図6のキャラ制御部214)、
として前記コンピュータを機能させ、更に、
前記設定手段が、当該ジャンプ適否判定手段により適合と判定された場合に前記非表示面を有効とし、不適合と判定された場合に無効と設定するように前記コンピュータを機能させるためのプログラムである。
【0014】
この第5の発明によれば、接続部分が凸状に形成されるように第1の移動面及び第2の移動面が隣接配置され、プレーヤによるジャンプアクション指示入力がなされた場合に、移動体の移動速度及び/又はジャンプアクション指示入力がなされた時の移動体の位置に基づいてジャンプアクションの適否が判定される。そして、ジャンプアクションが適合と判定された場合、非表示面が有効と設定され、第1の移動面及び第2の移動面の接続部分を通過する際に、移動体にジャンプアクションの動作制御がなされる。すなわち、移動体が第1の移動面及び第2の移動面の接続部分からジャンプするかのように移動制御され、ジャンプアクションの動作制御がなされることとなる。この際、ジャンプするかのような移動制御は、非表示面を移動面とみなした移動制御である。従って、ジャンプの移動制御の演算を簡単化することができる。
【0015】
また、第6の発明として、第1〜第4の何れかの発明のプログラムであって、
前記非表示面配置設定手段が、前記第1の移動面の面方向を延長する角度が異なる複数の前記非表示面(例えば、図9の壁ヒット判定モデル20A〜20C)を配置し、
前記設定手段が、前記複数の非表示面の中から非表示面を選択する選択手段を有し、前記選択された非表示面を有効と設定し、残余の非表示面を無効と設定する、
ように前記コンピュータを機能させるためのプログラムを構成しても良い。
【0016】
この第6の発明によれば、第1の移動面の面方向を延長する角度が異なる複数の非表示面が配置され、その複数の非表示面の中から有効とする非表示面が選択されることとなる。よって、移動面に沿って飛んだかのような移動制御をする際に、移動方向の多様化を図ることができる。
【0017】
なお、第7の発明として、第6の発明のプログラムであって、
前記選択手段が、前記移動体の移動速度に基づいて前記非表示面を選択するように前記コンピュータを機能させるためのプログラムを構成しても良い。
【0018】
また、第8の発明として、第1〜第5の何れかの発明のプログラムであって、
前記非表示面配置設定手段が、前記非表示面による前記第1の移動面の面方向を延長する角度を可変するように前記非表示面の配置角度を可変する(例えば、図9の壁ヒットの位置20A〜20C)可変手段を有するように前記コンピュータを機能させるためのプログラムを構成しても良い。
【0019】
この第8の発明によれば、非表示面による第1の移動面の面方向を延長する角度を変化させるように非表示面の配置角度が可変される。よって、移動面に沿って飛んだかのような移動制御をする際に、移動方向の多様化を図ることができる。
【0020】
なお、第9の発明として、第8の発明のプログラムであって、
前記可変手段が、前記移動体の移動速度に基づいて配置角度を可変するように前記コンピュータを機能させるためのプログラムを構成しても良い。
【0021】
また、第10の発明として、第1〜第9の何れかの発明のプログラムであって、
前記移動制御手段が、複数の前記移動体を移動制御し、
前記設定手段が、前記移動体毎に前記非表示面の有効無効を設定し(例えば、図6の地形設定部212;図8のステップA27,A29)、
前記移動制御手段が、前記移動体毎に、当該移動体に設定された前記非表示面の有効無効に従って当該移動体を移動制御する(例えば、図8のステップA13,A15,A19,A21)、
ように前記コンピュータを機能させるためのプログラムを構成しても良い。
【0022】
この第10の発明によれば、多数の移動体の移動制御をする場合であっても、移動体毎に非表示面の有効無効設定をするだけで済み、演算量の増大化を抑えることができる。
【0023】
第11の発明は、
コンピュータに、ゲーム空間中に配置された移動面上での移動体(例えば、図2のプレーヤキャラクタPC)の移動制御を行って所定のゲームを実行させるためのプログラムであって、
面方向が異なる第1の移動面及び第2の移動面を隣接して配置する移動面配置手段、
非表示面(例えば、図3,図4の壁ヒット判定モデル20)を配置するか否かを設定する設定手段、
前記設定手段により配置すると設定された場合に前記第1の移動面と前記第2の移動面との隣接位置から前記第1の移動面の面方向を所定方向に延長するように前記非表示面を配置設定する非表示面配置設定手段、
前記非表示面配置設定手段により配置設定された非表示面、前記第1の移動面及び前記第2の移動面に基づいて前記移動体を移動制御する移動制御手段(例えば、図6のキャラ制御部214)、
前記非表示面を非表示として前記ゲーム空間の画像を生成する画像生成手段(例えば、図6の画像生成部230)、
として前記コンピュータを機能させるためのプログラムである。
【0024】
また、他の発明として、
ゲーム空間中に配置された移動面上での移動体の移動制御を行って所定のゲームを実行するゲーム装置であって、
面方向が異なる第1の移動面及び第2の移動面を隣接して配置する移動面配置手段と、
非表示面を配置するか否かを設定する設定手段と、
前記設定手段により配置すると設定された場合に前記第1の移動面と前記第2の移動面との隣接位置から前記第1の移動面の面方向を延長するように前記非表示面を配置設定する非表示面配置設定手段と、
前記非表示面配置設定手段により配置設定された非表示面、前記第1の移動面及び前記第2の移動面に基づいて前記移動体を移動制御する移動制御手段と、
前記非表示面を非表示として前記ゲーム空間の画像を生成する画像生成手段と、
を備えたゲーム装置を構成しても良い。
【0025】
この第11の発明等によれば、第1の発明と略同様の作用効果を奏する別の構成が実現できる。すなわち、第1の発明のように非表示面の有効無効を設定する構成ではなく、非表示面を配置するか否かを設定し、配置すると設定された場合に配置する構成である。
【0026】
第12の発明として、第1〜第11の何れかの発明のプログラムを記憶したコンピュータ読み取り可能な情報記憶媒体(例えば、図6の記憶部600)を構成しても良い。ここでいう「情報記憶媒体」とは、例えば磁気ディスクや光学ディスク、ICメモリなどを含む。第12の発明によれば、第1〜第11の発明の何れかのプログラムをコンピュータに読み取らせて実行させることによって、コンピュータに第1〜第11の発明と同様の効果を発揮させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、図面を参照して、本発明の好適な実施形態を説明する。なお、以下では、家庭用ゲーム装置においてスノーボードのハーフパイプゲームを実行する場合を説明するが、本発明の適用可能な実施形態がこれに限定されるものではない。
【0028】
[ゲームシステムの概観]
図1は、本実施形態のゲーム装置1000の概観図である。同図によれば、ゲーム装置1000は、本体装置1100と、プレーヤがゲーム操作を入力するためのゲームコントローラ1200と、ディスプレイ1302及びスピーカ1304を有するビデオモニタ1300とを備えて構成される。
【0029】
本体装置1100がゲーム処理を行うために必要なプログラムやデータを含むゲーム情報は、例えば本体装置1100に着脱自在な情報記憶媒体である光学ディスク1102やメモリカード1104に格納されている。すなわち、プレーヤは、この光学ディスク1102等を交換することで異なるゲームを楽しむことができる。なお、このゲーム情報は、本体装置1100が備える通信装置1120を介して通信回線Nに接続し、外部装置からダウンロードして取得することにしても良い。ここで、通信回線Nはデータ授受が可能な通信路を意味する。すなわち、通信回線Nとは、直接接続のための専用線(専用ケーブル)やイーサネット(登録商標)等によるLAN(Local Area Network)の他、電話通信網やケーブル網、インターネット等の通信網を含む意味であり、また、通信方法については有線/無線を問わない。
【0030】
また、本体装置1100は、例えばCPUや画像処理用LSI、ICメモリ等が実装された制御ユニット1110と、光学ディスク1102やメモリカード1104といった情報記憶媒体の読取装置1106,1108を備える。そして、制御ユニット1110に実装されたCPUは、光学ディスク1102やメモリカード1104から読み出したゲーム情報や、ゲームコントローラ1200からの操作信号等に基づいて各種のゲーム演算を実行し、ゲーム画面の画像信号及びゲーム音の音信号を生成して所与のビデオゲームを実行する。生成されたゲーム画像やゲーム音は、画像信号及び音信号を伝送可能な信号ケーブルを介してビデオモニタ1300に出力される。プレーヤは、ビデオモニタ1300のディスプレイ1302に表示されるゲーム画像を見つつ、スピーカ1304から出力されるBGMや効果音といったゲーム音を聞きながら、ゲームコントローラ1200を操作してゲームを楽しむ。
【0031】
[ゲーム概要]
本実施形態のゲーム装置1000では、スノーボードのハーフパイプ競技のゲームが実行される。図2は、ゲーム画面の一例を示す図である。本実施形態では、三次元仮想空間に、雪面やハーフパイプ10等の地形オブジェクトが配置されてハーフパイプゲレンデとして形成されたゲーム空間に、移動体であるプレーヤキャラクタPCやノンプレーヤブルキャラクタ(NPC)のキャラクタオブジェクトが配置される。そして、プレーヤキャラクタPCの後方に、追従するように設定された仮想視点(仮想カメラ)から見たゲーム空間の画像が、ゲーム画面として表示される。プレーヤは、ゲームコントローラ1200を操作して、プレーヤキャラクタPCをハーフパイプ10の内壁に沿って左右に往復しながら滑走させるとともに、ハーフパイプ10のリップ(端部)12から上方に飛び出し(ジャンプし)、空中で様々な技(トリック)を行わせ、ジャンプの高さやトリックの難易度を競い合う。
【0032】
[原理]
図3は、ハーフパイプ10にかかるモデルの構成と配置の例を示す概略斜視図である。同図に示すように、高さ方向をY軸とするXYZ直交座標系で定義されるゲーム空間には、雪面を表現する雪面モデル(不図示)がXZ平面に対して傾斜して配置され、この雪面モデル中に、ハーフパイプ10の表示用モデルであるハーフパイプモデル40が配置されている。
【0033】
ハーフパイプモデル40は、上方に向けて開口した半円筒形状(U字形状)に形成された雪面モデルの一部であり、半円筒形状の内壁11がキャラクタの移動面(第1の移動面)となる。また、内壁11の頂点であるリップ12から水平方向外側に向けて広がる平面がプラットフォーム13(第2の移動面)として形成されており、キャラクタはこのプラットフォーム13上に乗ることも可能である。なお、同図では、左右両方のリップ12にプラットフォーム13が形成されているが、左右のリップ12の一方のみにプラットフォーム13が形成されることにしても良い。
【0034】
キャラクタがハーフパイプ10を滑走する際の位置を決定するための不可視(非表示)のヒット判定モデルとして、内壁11の上面(第1の移動面)には内壁ヒット判定モデル41が設定され、また、プラットフォーム13の上面(第2の移動面)にはプラットフォームヒット判定モデル42が設定されている。キャラクタは、内壁ヒット判定モデル41やプラットフォームヒット判定モデル42に当たることで、それ以上は下方には移動されず、見かけ上はハーフパイプ10に潜り込まないようになっている。なお、図中では、見易くするために、ハーフパイプモデル40と各ヒット判定モデルとの間に間隙を設けているが、実際には同じ高さに設けられている。
【0035】
また、ハーフパイプモデル40の左右のリップ12の上部に、リップ12からの高さが無限遠の非表示面となる壁ヒット判定モデル20が設定されている。壁ヒット判定モデル20は、リップ12との接触部分(接続部分)で、内壁11と壁ヒット判定モデル20の表面とが滑らかに繋がるように配置されている。つまり、ハーフパイプモデル40と壁ヒット判定モデル20とが一体となって、内壁11の上面を面方向である上方に向けて延長させて深いU字形状を形成している。なお、図中では、壁ヒット判定モデル20はリップ12からやや上方に離れた位置となっているが、実際には、キャラクタがその間を通れないように密着して設定されている。なお、壁ヒット判定モデル20は厚みを持たない二次元の“面”であるとするが、厚みのある板状の三次元の非表示オブジェクトとしても良い。この場合、非表示オブジェクトそのものを非表示面とみなす。
【0036】
つまり、キャラクタと壁ヒット判定モデル20とのヒット判定として、該キャラクタのX座標値及びZ座標値と、壁ヒット判定モデル20が設定されているX座標値及びZ座標値とが比較され、該キャラクタが壁ヒット判定モデル20にヒットしていると判定された場合には、該キャラクタは、その高さ(Y座標値)に関わらず壁ヒット判定モデル20を超えてその先に進めないことになる。すなわち、ハーフパイプモデル40の内側にいるキャラクタは、ハーフパイプモデル40の外側であるプラットフォーム13の上に移動できないことになり、逆に、プラットフォーム13の上にいるキャラクタは、ハーフパイプモデル40の内側に入れないことになる。
【0037】
そこで、本実施形態では、ゲーム空間に配置されたキャラクタ毎に、該キャラクタに対する壁ヒット判定モデル20の有効/無効を切り替える制御を行う。そして、壁ヒット判定モデル20が「有効」に設定されているキャラクタについては、壁ヒット判定モデル20が「存在する」ものとしてヒット判定が行われ、「無効」に設定されているキャラクタについては、壁ヒット判定モデル20は「存在しない」ものとしてヒット判定が行われない。
【0038】
各キャラクタについての壁ヒット判定モデル20の有効/無効は、該キャラクタがゲーム空間内の速度判定位置である判定面30を通過した際の移動速度Vに応じて設定される。すなわち、キャラクタが判定面30を通過したときの移動速度Vが所定の速度閾値VTH以上ならば、該キャラクタに対する壁ヒット判定モデル20は「有効」と設定され、移動速度Vが速度閾値VTH未満ならば、該キャラクタに対する壁ヒット判定モデル20は「無効」と設定される。また、各キャラクタについての壁ヒット判定モデル20の有効/無効は、該キャラクタが判定面30を通過する毎に更新される。
【0039】
図4は、判定面30を説明するための図である。同図(a)は、ハーフパイプ10の斜視図を示し、同図(b)は、ハーフパイプ10の軸方向に沿った鉛直断面図を示している。判定面30は、キャラクタがハーフパイプ10のリップ12を通過するときの速度Vを代替的に求めるための速度判定位置であり、該キャラクタがリップ12に到達する直前に通過するであろう位置に定められる。本実施形態では、同図に示すように、判定面30は、ハーフパイプ10の左右それぞれのリップ12の位置から、高さ方向に所定距離ΔHだけ低い位置を通る平面である。なお、この判定面30は仮想的に定められる平面であり、非表示であるとともに、キャラクタの移動に影響を与えない。つまり、判定面30はハーフパイプ10の内部を覆うように定められており、ハーフパイプ10の内壁11に沿って滑走するキャラクタがリップ12から飛び出す際には、必ずその直前に判定面30を通過することになる。
【0040】
図5は、壁ヒット判定モデル20の有効/無効の設定を説明する図であり、ハーフパイプ10の一部断面図である。同図(a)に示すように、キャラクタCRが、ハーフパイプ10の内壁11に沿って上方に向けて滑走し、判定面30を速度Vで通過する。この移動速度Vが速度閾値VTH以上ならば、同図(b)に示すように、該キャラクタCRに対する壁ヒット判定モデル20は有効となる。この場合、リップ12から飛び出したキャラクタCRは、壁ヒット判定モデル20に沿ってそのまま上方向にジャンプし、再度、ハーフパイプ10の内側に落下することになる。つまり、壁ヒット判定モデル20の外側に飛び出すことがない。つまり、壁ヒット判定モデル20は、キャラクタCRの上方向へのジャンプをガイドする役割を果たしている。
【0041】
一方、キャラクタCRが判定面30を通過するときの移動速度Vが速度閾値VTH未満ならば、同図(c)に示すように、該キャラクタCRに対する壁ヒット判定モデル20は無効となる。従って、この場合、キャラクタCRは、リップ12から飛び出したときの速度や方向にもよるが、壁ヒット判定モデル20に遮られることなくプラットフォーム13の上に乗り上げる。
【0042】
つまり、プレーヤにとってみれば、ある程度速い速度でリップ12から上方に飛び出すことで、壁ヒット判定モデル20が有効となり、この壁ヒット判定モデル20に沿って空中にジャンプし、再度、ハーフパイプ10の内側に戻ってくることができる。逆に、比較的遅い速度Vでリップ12から飛び出すことで、壁ヒット判定モデル20が無効となり、プラットフォーム13の上に乗ることができる。
【0043】
[機能構成]
図6は、ゲーム装置1000の機能構成図である。同図によれば、ゲーム装置1000は、機能的には、操作入力部100と、処理部200と、画像表示部300と、音出力部400と、通信部500と、記憶部600とを備えて構成されるコンピュータシステムである。
【0044】
操作入力部100は、プレーヤによる操作入力を受け付け、操作に応じた操作信号を処理部200に出力する。この機能は、例えばプッシュボタンやレバー、タッチパッド、ダイヤル、キーボード、マウス等の入力装置によって実現される。図1では、ゲームコントローラ1200がこれに該当する。
【0045】
処理部200は、記憶部600から読み出したプログラムやデータ、操作入力部100から入力された操作信号等に基づいて、ゲーム装置1000の全体制御やゲーム進行、画像生成等の各種演算処理を行う。この機能は、例えばCPUやGPU等のマイクロプロセッサ、ASIC(特定用途向け集積回路)、ICメモリ等によって実現される。図1では、制御ユニット1110がこれに該当する。また、処理部200は、ゲーム演算部210と、画像生成部230と、音生成部240とを有する。
【0046】
ゲーム演算部210は、ゲームの進行にかかる処理を実行する。例えば、三次元仮想空間にゲレンデやハーフパイプ10等の地形オブジェクトを配置してゲーム空間を形成する処理や、このゲーム空間中にプレーヤキャラクタPC等のキャラクタを配置する処理、キャラクタの移動及び動作制御処理、オブジェクト間のヒット判定処理、物理演算処理、ゲーム結果の算出処理といった各種の演算処理が含まれる。また、本実施形態では、ゲーム演算部210は、地形設定部212と、キャラ制御部214とを有する。
【0047】
地形設定部212は、ゲーム空間内のキャラクタ(プレーヤキャラクタ及びノン・プレーヤブルキャラクタ)それぞれについて、壁ヒット判定モデル20の有効無効を設定する。具体的には、キャラクタがゲーム空間に設定された判定面30を通過すると、通過時の該キャラクタの移動速度V(速度ベクトルVの大きさ)を所定の速度閾値VTHと比較し、速度閾値VTH以上ならば、該キャラクタの地形フラグを「1」に設定し、速度閾値VTH未満ならば、該キャラクタの地形フラグを「0」に設定する。この地形フラグは、壁ヒット判定モデル20の有効/無効を表すものであり、「1」ならば有効、「0」ならば無効である。ここで、速度閾値VTHは、速度閾値データ640に格納されている。
【0048】
キャラ制御部214は、ゲーム空間に配置された各キャラクタ(プレーヤキャラクタ及びノン・プレーヤブルキャラクタ)を制御する。ここで、ゲーム空間に配置されているキャラクタについてのデータは、キャラクタデータ630に格納されている。
【0049】
図7に、キャラクタデータ630のデータ構成の一例を示す。同図によれば、キャラクタデータ630は、プレーヤキャラクタについてのPCデータ631と、ノン・プレーヤブルキャラクタについてのNPCデータ632とを含んでいる。PCデータ631は、ゲーム空間に配置されているプレーヤキャラクタそれぞれについて、モデルデータや現在位置P、速度ベクトルV、地形フラグのデータを格納している。NPCデータ632は、ゲーム空間に配置されているノン・プレーヤブルキャラクタそれぞれについて、モデルデータや制御ルーチン、現在位置P、速度ベクトルV、地形フラグのデータを格納している。
【0050】
キャラ制御部214は、プレーヤキャラクタについては、操作入力部100から入力されるプレーヤ操作に従って制御する。具体的には、加速や減速、ターンといった移動指示操作をもとに速度ベクトルVを補正し、補正後の速度ベクトルVに従って該キャラクタを移動させる。また、トリックといった動作指示に従って、プレーヤキャラクタに該当する動作(アクション)を行わせる。
【0051】
このとき、該キャラクタの地形フラグの設定値に従って、壁ヒット判定モデル20を有効/無効として、該キャラクタを制御する。すなわち、該キャラクタの地形フラグが「1」に設定されているならば、壁ヒット判定モデル20が存在するとして該キャラクタの制御を行い、地形フラグが「0」に設定されているならば、壁ヒット判定モデル20は存在しないとして該キャラクタの制御を行う。
【0052】
一方、ノン・プレーヤキャラクタについては、該キャラクタに定められた制御ルーチンに従って制御する。このとき、プレーヤキャラクタと同様に、該キャラクタの地形フラグの設定値に応じて、壁ヒット判定モデル20を有効/無効として、該キャラクタの制御を行う。
【0053】
図6に戻り、画像生成部230は、例えばGPU(Graphics Processing Unit)やデジタルシグナルプロセッサ(DSP)などのプロセッサ、ビデオ信号IC、ビデオコーデックなどのプログラム、フレームバッファ等の描画フレーム用ICメモリ等によって実現される。画像生成部230は、ゲーム演算部210による処理結果に基づいて所定の制御サイクル(例えば、1/60秒)間隔で1枚のゲーム画像を生成し、生成したゲーム画像の画像信号を画像表示部300に出力する。
【0054】
画像表示部300は、画像生成部230からの画像信号に基づいて、例えば1/60秒毎に1フレームの画像を再描画しながらゲーム画面を表示する。この機能は、例えばCRTやLCD、ELD、PDP等の表示装置によって実現される。図1では、ディスプレイ1302がこれに該当する。
【0055】
音生成部240は、例えばデジタルシグナルプロセッサ(DSP)や音声合成ICなどのプロセッサ、音声ファイル再生可能なオーディオコーデックによって実現され、ゲーム演算部210による処理結果に基づいてゲームに係る効果音やBGM、各種操作音の音信号を生成し、音出力部400に出力する。
【0056】
音出力部400は、音生成部240から入力される音信号に基づいてBGMや効果音等のゲーム音声を出力する。この機能は、例えばスピーカ等の音声出力装置によって実現される。図1では、スピーカ1304がこれに該当する。
【0057】
通信部500は、通信回線Nと接続して通信を実現する。この機能は、例えば無線通信機、モデム、TA(ターミナルアダプタ)、有線用の通信ケーブルのジャックや制御回路等によって実現される。図1では、通信装置1120がこれに該当する。
【0058】
記憶部600は、処理部200にゲーム装置1000を統合的に制御させるための諸機能を実現させるためのシステムプログラムや、ゲームを実行させるために必要なゲームプログラム、各種データ等を記憶する。また、処理部200の作業領域として用いられ、処理部200が各種プログラムに従って実行した演算結果や操作入力部100から入力される入力データ等を一時的に記憶する。この機能は、例えばRAMやROMなどのICメモリ、ハードディスク等の磁気ディスク、CD−ROMやDVDなどの光学ディスクなどによって実現される。図1では制御ユニット1110が搭載するICメモリ等がこれに該当する。本実施形態では、記憶部600には、プログラムとしてゲームプログラム610が記憶されるとともに、データとして、ゲーム空間設定データ620と、キャラクタデータ630と、速度閾値データ640とが記憶される。
【0059】
ゲーム空間設定データ620は、三次元仮想空間にゲーム空間であるハーフパイプコースを形成するためのモデルデータ等であり、ハーフパイプモデル40についてのハーフパイプモデルデータ621と、内壁ヒット判定モデル41やプラットフォームヒット判定モデル42、壁ヒット判定モデル20等の各種のヒット判定モデルについてのヒット判定モデルデータ622と、判定面30についての判定面データ623とを含んでいる。なお、ヒット判定モデルデータ622として、モデルデータではなく、各ヒット判定モデルをゲーム空間の座標系(Xw,Yw,Zw)で定義することにしても良い。
【0060】
[処理の流れ]
図8は、ゲーム処理のフローチャートである。同図によれば、ゲーム演算部210は、先ず、初期設定として、ゲーム空間設定データ620に基づいて、三次元仮想空間にハーフパイプゲレンデであるゲーム空間を形成する(ステップA1)。このとき、ハーフパイプ10に合わせた壁ヒット判定モデル20及び判定面30も設定する。次いで、このゲーム空間に、プレーヤキャラクタPCやノンプレーヤキャラクタ等のキャラクタオブジェクトを配置する(ステップA3)。そして、全てのキャラクタの地形フラグを「0」に初期設定する(ステップA5)。その後、ゲームを開始する(ステップA7)。
【0061】
ゲーム中は、ゲーム空間に配置されているキャラクタそれぞれを対象としたループAの処理を行う。ループAでは、キャラ制御部214が、対象キャラクタがプレーヤキャラクタであり(ステップA9:YES)、且つ、対象キャラクタの地形フラグが「1」に設定されているならば(ステップA11:YES)、ゲーム空間に壁ヒット判定モデル20が存在するとして、操作入力部100から入力されるプレーヤの操作指示に従って対象キャラクタの移動及び挙動を制御する(ステップA13)。
【0062】
また、対象キャラクタがプレーヤキャラクタであり(ステップA9:YES)、且つ、地形フラグが「0」に設定されているならば(ステップA11:NO)、ゲーム空間に壁ヒット判定モデル20が存在しないとして、操作入力部100から入力されるプレーヤの操作指示に従って対象キャラクタの移動及び挙動を制御する(ステップA15)。
【0063】
また、対象キャラクタがノン・プレーヤキャラクタであり(ステップA9:NO)、且つ、対象キャラクタの地形フラグが「1」に設定されているならば(ステップA17:YES)、ゲーム空間に壁ヒット判定モデル20が存在するとして、対象キャラクタに定められた制御ルーチンに従って対象キャラクタの移動及び挙動を制御する(ステップA19)。
【0064】
また、対象キャラクタがノン・プレーヤキャラクタであり(ステップA9:NO)、且つ、対象キャラクタの地形フラグが「0」に設定されているならば(ステップA17:NO)、ゲーム空間に壁ヒット判定モデル20が存在しないとして、対象キャラクタに定められた制御ルーチンに従って対象キャラクタの移動及び挙動を制御する(ステップA21)。
【0065】
続いて、地形設定部212が、対象キャラクタが判定面30を通過したかを判定し、判定面30を通過したならば(ステップA23:YES)、通過時の該キャラクタの移動速度Vを速度閾値VTHと比較する。比較の結果、移動速度Vが速度閾値VTH以上ならば(ステップA25:YES)、該キャラクタの地形フラグを「1」に設定し(ステップA27)、速度閾値VTH未満ならば(ステップA25:NO)、該キャラクタの地形フラグを「0」に設定する(ステップA29)。ループAはこのように行われる。
【0066】
全てのキャラクタを対象としたループAの処理を行うと、ゲーム演算部210は、ゲーム終了か否かを判断し、終了しないならば(ステップA31:NO)、ステップA9に戻り、終了するならば(ステップA31:YES)、ゲーム処理を終了する。
【0067】
[作用・効果]
このように、本実施形態によれば、地形オブジェクトであるハーフパイプ10の地表面である内壁11を上方に延長するように、非表示面である壁ヒット判定モデル20が配置されている。また、移動体であるプレーヤキャラクタPCやノン・プレーヤブルキャラクタ等のキャラクタ毎に、該キャラクタが判定面30を通過したときの速度Vが速度閾値VTH以上であるか否かに応じて、壁ヒット判定モデル20の有効/無効が設定される。そして、壁ヒット判定モデルが有効に設定されているキャラクタについては、壁ヒット判定モデル20が存在するとして制御され、一方、壁ヒット判定モデル20が無効に設定されているキャラクタについては、壁ヒット判定モデル20が存在しないとして制御される。これにより、内壁11の端部であるリップ12から高速で飛び出したキャラクタが、あたかも内壁11に沿って上方にジャンプしたかのような制御が実現されるとともに、この制御は、予め配置した壁ヒット判定モデル20の有効/無効を切り替えるといった簡単な制御で済む。
【0068】
[変形例]
なお、本発明の適用可能な実施形態は、上述の実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能なのは勿論である。
【0069】
(A)壁ヒット判定モデル20の有効/無効の設定
上述の実施形態では、各キャラクタに対する壁ヒット判定モデル20の有効/無効を、該キャラクタが判定面30を通過したときの速度Vに応じて設定することにしたが、これを、次のようにしても良い。
【0070】
(A−1)判定面30の通過方向
例えば、速度Vに関わらず、キャラクタが判定面30を通過したか否かに応じて設定することにしても良い。具体的には、初期設定として、各キャラクタに対する壁ヒット判定モデル20を「無効」と設定しておく。そして、キャラクタが判定面30を通過したことを検出すると、該キャラクタに対する壁ヒット判定モデル20を「有効」に設定する。これにより、キャラクタがプラットフォーム13上からハーフパイプ10内に進入するときには、壁ヒット判定モデル20は無効であり、壁ヒット判定モデル20に遮られることなくハーフパイプ10内に進入することができ、一旦、ハーフパイプ10内に進入すると、進入した際に判定面30を通過することで、以降は壁ヒット判定モデル20が有効となる。
【0071】
(A−2)キャラクタの移動方向
また、壁ヒット判定モデル20の通過時のキャラクタの向き(移動方向)に応じて設定することにしても良い。例えば、壁ヒット判定モデル20に表面と裏面とを設定し、キャラクタが壁ヒット判定モデル20の裏面から通過しようとするときには、該キャラクタに対する壁ヒット判定モデル20を有効とし、表面から通過しようとするときには無効とする。壁ヒット判定モデル20とキャラクタの三次元的な移動方向(ベクトル)とから、通過しようとする壁ヒット判定モデル20の面が表面なのか裏面なのかを判定することができる。
【0072】
(A−3)キャラクタの移動履歴
また、キャラクタの移動履歴に応じて設定することにしても良い。具体的には、ハーフパイプ10の内壁を、ボトム(底部)とバーティカル(側面部)とに分類する。そしてキャラクタの位置が、ボトムからバーティカルに移動した場合に、該キャラクタに対する壁ヒット判定モデル20を有効とする。更に、壁ヒット判定モデル20を有効とした後、所定時間が経過すると、壁ヒット判定モデル20を無効に設定することにしても良い。
【0073】
(A−4)
また、速度判定位置は判定面30ではなく、リップ12部分としても良い。更には、判定位置の通過時の速度Vではなく、加速度αで判定することにしても良い
【0074】
(A−5)トリック動作の成否
また、キャラクタが行うトリック動作の成否に応じて設定することにしても良い。スノーボードのハーフパイプでは、キャラクタが、リップ12からジャンプして空中で様々なトリック(技)を行う。このトリックの成功/失敗(成否)は、ジャンプの高さや、該トリックに定められた難易度、キャラクタの能力値等によって決まるが、リップ12を飛び出したときの速度Vが大きな決定要因となる。そこで、プレーヤによってトリックを行わせる指示(トリック指示)が入力された際に、例えば判定面30を通過時の速度V等に応じてトリックの成否を判定し、成功と判定したならば壁ヒット判定モデル20を有効とし、それ以外ならば壁ヒット判定モデル20を無効とする。或いは、トリック指示が入力されたタイミング(すなわち、トリック指示が入力されたときのキャラクタの位置)に応じて、トリックの成否を判定することにしても良い。
【0075】
(A−6)アイテム
また、キャラクタが所定のアイテムを所持(装備)しているか否かに応じて設定することにしても良い。例えば、キャラクタがスノーボードを装着しているときに、該キャラクタに対する壁ヒット判定モデル20を有効とし、逆に、スノーボードを外しているときには壁ヒット判定モデル20を無効とし、歩いてプラットフォーム13上に乗ることができるようにする。
【0076】
(B)壁ヒット判定モデル20を可変
上述の実施形態では壁ヒット判定モデル20を固定としたが、可変としても良い。例えば、図9に示すように、判定面30の通過時の移動速度Vに応じて、壁ヒット判定モデル20の傾斜角度θを可変する。すなわち、壁ヒット判定モデル20を、鉛直に配置された位置(20A)を基準とし、ハーフパイプ10の外側に向けて所定角度θで傾斜した位置(20B)から、内側に向けて所定角度θで傾斜した位置(20C)までの間で可変する。壁ヒット判定モデル20の傾斜角度θは、移動速度Vに応じてアナログ的に可変することにしても良いし、或いは、予め複数の傾斜角度θと速度範囲ΔVとを対応付けておき、移動速度Vに対応する傾斜角度θに切り替えるといったように段階的に可変することにしても良い。また、壁ヒット判定モデル20を上方無限遠としたが、上方の長さ(高さ)を可変としても良いし、キャラクタが飛び越える可能性のない長さとしても良い。
【0077】
(C)壁ヒット判定モデル20の数
複数の非表示面である壁ヒット判定モデル20を配置することにしても良い。例えば、図9に示すように、略鉛直上方向に伸延する壁ヒット判定モデル20Aと、この壁ヒット判定モデル20Aに対してハーフパイプ10の外側に向けて傾いた壁ヒット判定モデル20Bと、ハーフパイプ10の内側に向けて傾いた壁ヒット判定モデル20Cとの3つの壁ヒット判定モデル20を配置する。各キャラクタに対しては、これら複数の壁ヒット判定モデル20のうちから、有効とする壁ヒット判定モデル20を選択して有効に設定する。
【0078】
具体的には、該キャラクタの判定面30の通過時の速度Vに応じて、有効とする壁ヒット判定モデル20を決定する。例えば、速度Vが速度閾値VTHb以上ならば、壁ヒット判定モデル20Bを有効とし、速度閾値VTHa以上且つ速度閾値VTHb未満ならば、壁ヒット判定モデル20Aを有効とし、速度閾値VTHc以上且つ速度閾値VTHa未満ならば、壁ヒット判定モデル20Cを有効とし、速度閾値VTHc未満ならば、全ての壁ヒット判定モデル20を無効とする。但し、VTHc<VTHa<VTHb、である。なお、有効に設定する壁ヒット判定モデル20の数は1つに限らず、複数としても良い。
【0079】
(D)壁ヒット判定モデル20の配置/非配置
上述の実施形態では、ゲーム空間に常に壁ヒット判定モデル20を配置することにしたが、これを、状況に応じて壁ヒット判定モデル20の配置/非配置を切り替えることにしても良い。具体的には、ゲーム空間中の所定のキャラクタ(例えば、プレーヤキャラクタ)が判定面30を通過したとき速度Vに応じて、壁ヒット判定モデル20の配置/非配置を決定する。例えば、速度Vが速度閾値VTH以上ならば壁ヒット判定モデル20を配置し、速度閾値VTH未満ならば壁ヒット判定モデル20を配置しない。
【0080】
(F)適用するゲーム
また、上述の実施形態では、本発明を、スノーボードのハーフパイプのゲームに適用した場合を説明したが、スケートボードやインラインスケート、BMXのハーフパイプ競技にも同様に適用可能である。
【0081】
また、他のゲームとして、キャラクタがハーフパイプ形状のレースコースを走行するレースゲームに適用することも可能である。
【0082】
図10に、カーレースゲームに適用した場合のゲーム画面の一例を示す。同図に示すように、このカーレースゲームでは、キャラクタCRが走行するレースコースとして、実施形態のハーフパイプ10に相当する上方に向けて開口した下コース51と、その上方に配置された、下コース51の上下を反転させた形状を有する上コース52とから構成される。プレーヤキャラクタCRは、初期位置として下コース51に配置される。
【0083】
また、図11は、このレースコースの進行方向に対する鉛直断面図である。同図に示すように、上コース52と下コース51との間には、プレーヤキャラクタCRが通過するのに充分な隙間が形成され、この隙間をふさぐように壁ヒット判定モデル20が配置されている。また、下コース51の内部には、判定面30が定められている。そして、同図(a)に示すように、キャラクタCRが下コース51の内壁を上方に向かって走行し、判定面30を速度Vで通過する。すると、同図(b)に示すように、キャラクタCRが判定面30を通過したときの速度Vが所定の速度閾値VTH以上ならば、壁ヒット判定モデル20は「有効」とされ、キャラクタCRは、壁ヒット判定モデル20に沿ってそのまま上昇し、上コース52の内壁を走行する。一方、判定面30を通過した時の速度Vが速度閾値VTH未満ならば、壁ヒット判定モデル20は「無効」とされ、キャラクタCRは、上コース52と下コース51との間隙から、レースコースの外に飛び出す。
【0084】
(G)適用するゲーム装置
また、上述の実施形態では、本発明を家庭用ゲーム装置に適用した場合を説明したが、業務用ゲーム装置や携帯型ゲーム装置といった他の形態のゲーム装置にも同様に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】ゲーム装置の概観図。
【図2】ゲーム画面例。
【図3】ハーフパイプの構成図。
【図4】判定面の説明図。
【図5】壁ヒット判定モデルの有効/無効の設定例。
【図6】ゲーム装置の機能構成図。
【図7】キャラクタデータのデータ構成例。
【図8】ゲーム処理のフローチャート。
【図9】壁ヒット判定モデルの配置の変形例。
【図10】カーレースゲームに適用した場合のゲーム画面例。
【図11】レースコースにおける壁ヒット判定モデルの有効/無効の設定例。
【符号の説明】
【0086】
1000 ゲーム装置
100 操作入力部
200 処理部
210 ゲーム演算部、212 地形設定部、214 キャラ制御部
230 画像生成部、240 音生成部
300 画像表示部、400 音出力部、500 通信部
600 記憶部
610 ゲームプログラム
620 コースデータ
630 キャラクタデータ、631 PCデータ、632 NPCデータ
640 速度閾値データ
10 ハーフパイプ
20 壁ヒット判定モデル(非表示面)
30 判定面(速度判定位置)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンピュータに、ゲーム空間中に配置された移動面上での移動体の移動制御を行って所定のゲームを実行させるためのプログラムであって、
面方向が異なる第1の移動面及び第2の移動面を隣接して配置する移動面配置手段、
前記第1の移動面と前記第2の移動面との隣接位置から前記第1の移動面の面方向を延長する非表示面を配置設定する非表示面配置設定手段、
前記移動体の移動制御における前記非表示面の有効無効を設定する設定手段、
前記移動面上を移動するように前記移動体を移動制御するとともに、前記設定手段により無効と設定された場合には前記非表示面が存在しないこととして前記移動体を移動制御し、有効と設定された場合には前記非表示面が存在することとして当該移動体を移動制御する移動制御手段、
前記非表示面を非表示として前記ゲーム空間の画像を生成する画像生成手段、
として前記コンピュータを機能させるためのプログラム。
【請求項2】
前記設定手段が、前記移動体の移動速度に基づいて前記非表示面の有効無効を設定するように前記コンピュータを機能させるための請求項1に記載のプログラム。
【請求項3】
前記非表示面の位置に到達する際の速度を代替的に求めるための速度判定位置を設定する速度判定位置設定手段として前記コンピュータを機能させ、
前記設定手段が、前記移動体の前記速度判定位置を通過する速度に基づいて前記非表示面の有効無効を設定するように前記コンピュータを機能させるための請求項2に記載のプログラム。
【請求項4】
前記設定手段が、前記非表示面に対する前記移動体の進行方向に基づいて前記非表示面の有効無効を設定するように前記コンピュータを機能させるための請求項1に記載のプログラム。
【請求項5】
前記移動面配置手段が、接続部分が凸状に形成されるように前記第1の移動面及び前記第2の移動面を隣接配置するように前記コンピュータを機能させるとともに、
プレーヤによる所定のジャンプアクション指示入力を検知するジャンプ指示入力検知手段、
前記ジャンプ指示入力検知手段による検知がなされた場合に、1)前記移動体の移動速度、及び/又は、2)前記ジャンプアクション指示入力がなされた時の前記移動体の位置に基づいてジャンプアクションの適否を判定するジャンプ適否判定手段、
前記ジャンプ適否判定手段により適合と判定された場合、前記移動体が前記第1の移動面及び前記第2の移動面の接続部分を通過する際に、前記ジャンプアクションとして定められた動作制御を前記移動体に行わせるジャンプアクション動作制御手段、
として前記コンピュータを機能させ、更に、
前記設定手段が、当該ジャンプ適否判定手段により適合と判定された場合に前記非表示面を有効とし、不適合と判定された場合に無効と設定するように前記コンピュータを機能させるための請求項1に記載のプログラム。
【請求項6】
前記非表示面配置設定手段が、前記第1の移動面の面方向を延長する角度が異なる複数の前記非表示面を配置し、
前記設定手段が、前記複数の非表示面の中から非表示面を選択する選択手段を有し、前記選択された非表示面を有効と設定し、残余の非表示面を無効と設定する、
ように前記コンピュータを機能させるための請求項1〜4の何れか一項に記載のプログラム。
【請求項7】
前記選択手段が、前記移動体の移動速度に基づいて前記非表示面を選択するように前記コンピュータを機能させるための請求項6に記載のプログラム。
【請求項8】
前記非表示面配置設定手段が、前記非表示面による前記第1の移動面の面方向を延長する角度を可変するように前記非表示面の配置角度を可変する可変手段を有するように前記コンピュータを機能させるための請求項1〜5の何れか一項に記載のプログラム。
【請求項9】
前記可変手段が、前記移動体の移動速度に基づいて配置角度を可変するように前記コンピュータを機能させるための請求項8に記載のプログラム。
【請求項10】
前記移動制御手段が、複数の前記移動体を移動制御し、
前記設定手段が、前記移動体毎に前記非表示面の有効無効を設定し、
前記移動制御手段が、前記移動体毎に、当該移動体に設定された前記非表示面の有効無効に従って当該移動体を移動制御する、
ように前記コンピュータを機能させるための請求項1〜9の何れか一項に記載のプログラム。
【請求項11】
コンピュータに、ゲーム空間中に配置された移動面上での移動体の移動制御を行って所定のゲームを実行させるためのプログラムであって、
面方向が異なる第1の移動面及び第2の移動面を隣接して配置する移動面配置手段、
非表示面を配置するか否かを設定する設定手段、
前記設定手段により配置すると設定された場合に前記第1の移動面と前記第2の移動面との隣接位置から前記第1の移動面の面方向を延長するように前記非表示面を配置設定する非表示面配置設定手段、
前記非表示面配置設定手段により配置設定された非表示面、前記第1の移動面及び前記第2の移動面に基づいて前記移動体を移動制御する移動制御手段、
前記非表示面を非表示として前記ゲーム空間の画像を生成する画像生成手段、
として前記コンピュータを機能させるためのプログラム。
【請求項12】
請求項1〜11の何れか一項に記載のプログラムを記憶したコンピュータ読み取り可能な情報記憶媒体。
【請求項13】
ゲーム空間中に配置された移動面上での移動体の移動制御を行って所定のゲームを実行するゲーム装置であって、
面方向が異なる第1の移動面及び第2の移動面を隣接して配置する移動面配置手段と、
前記第1の移動面と前記第2の移動面との隣接位置から前記第1の移動面の面方向を延長する非表示面を配置設定する非表示面配置設定手段と、
前記移動体の移動制御における前記非表示面の有効無効を設定する設定手段と、
前記移動面上を移動するように前記移動体を移動制御するとともに、前記設定手段により無効と設定された場合には前記非表示面が存在しないこととして前記移動体を移動制御し、有効と設定された場合には前記非表示面が存在することとして当該移動体を移動制御する移動制御手段と、
前記非表示面を非表示として前記ゲーム空間の画像を生成する画像生成手段と、
を備えたゲーム装置。
【請求項14】
ゲーム空間中に配置された移動面上での移動体の移動制御を行って所定のゲームを実行するゲーム装置であって、
面方向が異なる第1の移動面及び第2の移動面を隣接して配置する移動面配置手段と、
非表示面を配置するか否かを設定する設定手段と、
前記設定手段により配置すると設定された場合に前記第1の移動面と前記第2の移動面との隣接位置から前記第1の移動面の面方向を延長するように前記非表示面を配置設定する非表示面配置設定手段と、
前記非表示面配置設定手段により配置設定された非表示面、前記第1の移動面及び前記第2の移動面に基づいて前記移動体を移動制御する移動制御手段と、
前記非表示面を非表示として前記ゲーム空間の画像を生成する画像生成手段と、
を備えたゲーム装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2010−86431(P2010−86431A)
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−256904(P2008−256904)
【出願日】平成20年10月1日(2008.10.1)
【出願人】(000134855)株式会社バンダイナムコゲームス (1,157)
【Fターム(参考)】