説明

プロジェクター

【課題】光学補償素子の姿勢を良好に調整できるプロジェクターを提供する。
【解決手段】プロジェクター1は、入射した光束を変調する光変調装置と、光変調装置を介した光束の位相差を補償する光学補償素子6と、光学補償素子6が取り付けられ、光学補償素子6の位置を調整する調整部材7と、調整部材7を支持する支持部材8とを備える。調整部材7は、互いに離間する方向に突出する一対の腕部72を有する。支持部材8は、一対の腕部72の先端721にそれぞれ対向する一対の起立部821,823を有する。腕部72及び起立部821,823のいずれか一方には、いずれか他方に向けて突出する突起部722、及び突起部722が挿通される挿通孔821A,823Aを有し、挿通孔821A,823Aに突起部722が挿通された状態で支持部材8に対して調整部材7を回転可能とする係合構造が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プロジェクターに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、プロジェクターにおいて、投影画像のコントラストを向上させることを目的として、光変調装置の光入射側や光出射側に光学補償素子(位相補償板)を配設した構成が知られている(例えば、特許文献1参照)。
特許文献1に記載の技術では、光変調装置として、透過型の液晶パネルを採用している。
また、光学補償素子は、補償素子調整機構により、入射する光束の光軸に直交し、かつ、液晶パネルの縦方向及び横方向に対して傾斜した仮想線を中心として回転(姿勢調整)可能に配設されている。
【0003】
この補償素子調整機構は、光学補償素子を保持する板状の位相補償板金具と、位相補償板金具を回転可能に支持する出射偏光板金具とを備える。
位相補償板金具には、光学補償素子が固定される枠体部の外部から突出する2つの折り曲げリブが形成されている。
また、出射偏光板金具には、位相補償板金具を保持するための2つのV溝部が形成されている。
そして、位相補償板金具は、出射偏光板金具の各V溝部に2つの折り曲げリブが係止された状態で、出射偏光板金具に対して支持されるとともに、各折り曲げリブと各V溝部との各係止位置を結ぶ直線(上記仮想線)を中心として回転可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−54657号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、位相補償板金具は、各折り曲げリブが各V溝部に係止され、当該各係止位置を結ぶ直線を中心として回転(姿勢調整)されるため、回転時にV溝部に対して折り曲げリブがずれやすいものとなっている。
すなわち、位相補償板金具(光学補償素子)の回転(姿勢調整)時に、V溝部に対して折り曲げリブがずれた場合には、回転中心線(上記仮想線)がずれることとなり、光学補償素子の姿勢を良好に調整することができない、という問題がある。
【0006】
本発明の目的は、光学補償素子の姿勢を良好に調整できるプロジェクターを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のプロジェクターは、入射した光束を変調する光変調装置と、前記光変調装置を介した光束の位相差を補償する光学補償素子と、前記光学補償素子が取り付けられ、前記光学補償素子の位置を調整する調整部材と、前記調整部材を支持する支持部材とを備え、前記調整部材は、互いに離間する方向に突出する一対の腕部を有し、前記支持部材は、前記一対の腕部の先端にそれぞれ対向する一対の起立部を有し、前記腕部及び前記起立部のいずれか一方には、いずれか他方に向けて突出する突起部、及び前記突起部が挿通される挿通孔を有し、前記挿通孔に前記突起部が挿通された状態で前記支持部材に対して前記調整部材を回転可能とする係合構造が設けられていることを特徴とする。
【0008】
本発明では、調整部材は、突起部及び挿通孔を有する上述した係合構造により、支持部材に対して回転可能に構成されている。すなわち、調整部材(光学補償素子)は、挿通孔に突起部が挿通された状態で、支持部材に対して回転(姿勢調整)することとなる。
このため、光学補償素子の姿勢調整時に、回転中心線がずれることがなく、光学補償素子の姿勢を良好に調整できる。
【0009】
本発明のプロジェクターでは、前記一対の起立部は、前記挿通孔に前記突起部が挿通された状態で弾性変形しながら前記一対の腕部にそれぞれ当接することが好ましい。
本発明では、一対の起立部が弾性変形しながら一対の腕部にそれぞれ当接するので、調整部材の回転時には、起立部及び腕部間に上記起立部の弾性変形等に応じた摩擦力が生じることとなる。
すなわち、調整部材は、当該摩擦力により、調整部材や光学補償素子の自重等によって不要に回転することが抑制される。このため、光学補償素子の姿勢を精度良く調整(微調整)できる。
【0010】
本発明のプロジェクターでは、前記光変調装置は、液晶分子の配列状態を変化させることで入射した光束を変調する第1の液晶パネル及び第2の液晶パネルを備え、前記第1の液晶パネルは、前記第2の液晶パネルに対して、前記液晶分子のねじれ方向が異なる方向に設定され、前記調整部材は、前記第1の液晶パネルにおける前記液晶分子のねじれ方向に対応した第1の仮想線に沿って突出する前記一対の腕部を有し、前記第1の仮想線を中心として前記支持部材に対して回転可能とする第1の調整部材と、前記第2の液晶パネルにおける前記液晶分子のねじれ方向に対応した第2の仮想線に沿って突出する前記一対の腕部を有し、前記第2の仮想線を中心として前記支持部材に対して回転可能とする第2の調整部材とを備え、前記支持部材は、前記第1の調整部材及び前記第2の調整部材における各前記一対の腕部の先端にそれぞれ対向する4つの前記起立部を有することが好ましい。
【0011】
例えば、3つの液晶パネルを採用した三板式のプロジェクターでは、投影画像の色ムラ等を軽減させるために、液晶分子のねじれ方向が異なる第1液晶パネル及び第2液晶パネルの2種類の液晶パネル(所謂、L液晶パネル、R液晶パネル)が採用される。
このように2種類の液晶パネルを採用した場合には、光学補償素子の姿勢を調整する際の回転中心線も当該液晶パネルのねじれ方向に応じて設定する必要がある。
【0012】
本発明では、支持部材は、第1,第2の調整部材における各一対の腕部の先端にそれぞれ対向する4つの起立部を有する。
このことにより、支持部材として、第1の調整部材に対応した支持部材、及び第2の調整部材に対応した支持部材の2種類の支持部材を設ける必要がない。すなわち、支持部材が第1,第2の調整部材に共通に用いることができる部材となり、支持部材の製造コストを低減できる。
【0013】
本発明のプロジェクターでは、前記調整部材は、調整部材本体と、前記調整部材本体から突出する前記一対の腕部と、前記調整部材本体から突出し、外部から操作される操作部とを備え、前記操作部は、前記光学補償素子の位置が調整された後、前記支持部材に固定されることが好ましい。
本発明では、光学補償素子の姿勢調整後、支持部材に対する調整部材の回転中心線から離間した位置にある上述した操作部が支持部材に固定される。
このことにより、例えば支持部材に対して調整部材が回転中心線に近接した位置で固定される構成と比較して、調整部材等に外力が加わった場合であっても、光学補償素子を姿勢調整後の所望の姿勢で良好に維持できる。
【0014】
本発明のプロジェクターでは、前記操作部は、前記調整部材本体から鉛直軸に沿って上方に突出する形状を有し、前記操作部には、鉛直軸に略直交して張り出す第1固定部が形成され、前記支持部材には、鉛直軸に略直交して張り出し、前記第1固定部に対向する第2固定部が形成され、前記第1固定部及び前記第2固定部は、互いに接着固定されることが好ましい。
本発明では、操作部及び支持部材には、上述した第1,第2固定部がそれぞれ形成されている。
このことにより、光学補償素子の姿勢調整後、支持部材に対して調整部材を固定するために第1固定部の上方側から接着剤を塗布した際に、第2固定部の上面にて接着剤を受けることができ、接着剤が垂れて、光学補償素子等の他の部位に付着することを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本実施形態におけるプロジェクターの概略構成を示す図。
【図2】本実施形態における光学補償ユニットの構成を示す図。
【図3】本実施形態における光学補償ユニットの構成を示す図。
【図4】本実施形態における第1の調整部材を光入射側から見た斜視図。
【図5】本実施形態における第2の調整部材を光入射側から見た斜視図。
【図6】本実施形態における光学補償素子の姿勢調整方法を説明するための図。
【図7】本実施形態における光学補償素子の姿勢調整方法を説明するための図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の一形態を図面に基づいて説明する。
〔プロジェクターの構成〕
図1は、プロジェクター1の概略構成を示す図である。
プロジェクター1は、画像を投射してスクリーン(図示略)上に投影画像を表示する。
そして、このプロジェクター1は、図1に示すように、外装筐体2内部に収納される光学ユニット3を備える。
【0017】
〔光学ユニットの構成〕
この光学ユニット3は、図1に示すように、光源ランプ311及びリフレクター312を有する光源装置31と、レンズアレイ321,322、偏光変換素子323、及び重畳レンズ324を有する照明光学装置32と、ダイクロイックミラー331,332、及び反射ミラー333を有する色分離光学装置33と、入射側レンズ341、リレーレンズ343、及び反射ミラー342,344を有するリレー光学装置34と、3つの入射側偏光板35と、光変調装置としての3つの液晶パネル4と、3つの光学補償ユニット5と、3つの出射側偏光板36と、色合成光学装置としてのクロスダイクロイックプリズム37と、投射光学装置としての投射レンズ38とを備える。
そして、光学ユニット3では、上述した構成により、光源装置31から出射され照明光学装置32を介した光束は、色分離光学装置33にて赤(R),緑(G),青(B)の3つの色光に分離される。また、分離された各色光は、各液晶パネル4にてそれぞれ変調される。変調された各色光は、プリズム37にて合成されて画像となり、投射レンズ38にてスクリーンに投射される。
【0018】
ここで、上述した3つの液晶パネル4、3つの光学補償ユニット5、3つの出射側偏光板36は、具体的な図示は省略したが、プリズム37の各光入射面371(図1)に対して、3つの固定部材(図示略)を介してそれぞれ固定されるものである。
なお、上述した各部材31〜38は、一般的なプロジェクターで用いられる構成であるため、以下では、液晶パネル4と、光学補償ユニット5の構成のみを説明する。
【0019】
〔液晶パネルの構成〕
3つの液晶パネル4は、図1に示すように、各入射側偏光板35の光路後段側にそれぞれ配設されている。
この液晶パネル4は、具体的な図示は省略するが、例えばツィストネマティック方式の透過型の液晶パネルであり、TFT基板と対向基板との間に液晶分子が密閉封入された構成を有する。そして、液晶パネル4は、制御装置(図示略)からの信号に基づいて電圧が印加されることで液晶分子の配列状態を変化させ、入射側偏光板35から出射された光束を変調する。
なお、以下では、説明の便宜上、R色光側の液晶パネル4を液晶パネル4Rとし、G色光側の液晶パネル4を液晶パネル4Gとし、B色光側の液晶パネル4を液晶パネル4Bとする(図1)。
【0020】
上述したように、光学ユニット3は、リレー光学装置34を採用している。
このため、各液晶パネル4R,4G,4Bを同一の製法で形成された液晶パネルで構成した場合には、R,G,Bの各色光のうち、リレー光学装置34を辿ることのない2つのG,Bの各色光側の各液晶パネル4G,4Bへの入射状態は略同一となるが、リレー光学装置34を辿るR色光側の液晶パネル4Rへの入射状態は、G,Bの各色光側の各液晶パネル4への入射状態に対して上下左右が逆転する。そして、このような状態では、画像に色ムラが生じやすい。
【0021】
そして、本実施形態では、上述した画像に生じる色ムラを軽減させるために、各液晶パネル4R,4Bを同一の製法で形成された液晶パネルで構成し、液晶パネル4Gを各液晶パネル4R,4Bとは異なる製法で形成された液晶パネルで構成している。
すなわち、3つの液晶パネル4を2種類の液晶パネルで構成している。
具体的に、液晶パネル4Gから出射された色光はプリズム37内の誘電体多層膜372(図1)を透過し、残りの各液晶パネル4R,4Bから出射された各色光はプリズム37内の誘電体多層膜372で反射されることによって、液晶パネル4R,4G,4Bからの各色光が合成される。
このため、それぞれ光の進行方向に向って、液晶パネル4Gの左側から出射された光は、液晶パネル4R,4Bの各右側の光と合成される。
以上のことから、各液晶パネル4R,4Bと、液晶パネル4Gとを異なる製法で形成された液晶パネルで構成している。
【0022】
具体的に、2種類の液晶パネルは、以下の通りである。
すなわち、2種類の液晶パネルのうち、一方の液晶パネルは、対向基板側のラビング方向を基準として、TFT基板のラビング方向を90度左(反時計方向に)回転させ、液晶分子を左ねじれに設定した液晶パネル、所謂L液晶パネルである。
また、他方の液晶パネルは、対向基板側のラビング方向を基準として、TFT基板のラビング方向を90度右(時計方向に)回転させ、液晶分子を右ねじれに設定した液晶パネル、所謂R液晶パネルである。
そして、本実施形態では、各液晶パネル4R,4BをR液晶パネルで構成し、液晶パネル4GをL液晶パネルで構成している。
なお、以下では、説明の便宜上、各液晶パネル4R,4Bを第1の液晶パネル41(図1)とし、液晶パネル4Gを第2の液晶パネル42(図1)として説明する。
【0023】
〔光学補償ユニットの構成〕
図2及び図3は、光学補償ユニット5の構成を示す図である。具体的に、図2(A)は光学補償ユニット5を光入射側から見た図であり、図2(B)は光学補償ユニット5の側面図であり、図2(C)は光学補償ユニット5を光出射側から見た図である。図3は、光学補償ユニット5を光出射側から見た分解斜視図である。
3つの光学補償ユニット5は、図1に示すように、各液晶パネル4と各出射側偏光板36との間にそれぞれ配設される。
【0024】
そして、3つの光学補償ユニット5は、第1の液晶パネル41(4R,4B)に対応した2つの第1の光学補償ユニット51(図1)と、第2の液晶パネル42(4G)に対応した1つの第2の光学補償ユニット52(図1)との2種類で構成されている。
なお、図2及び図3では、光学補償ユニット5の構成として、第1の光学補償ユニット51の構成を図示している。
第1,第2の光学補償ユニット51,52は、略同様の構成を有し、後述するように調整部材7の構造が異なるのみである。このため、以下では、第1の光学補償ユニット51を主に説明し、第2の光学補償ユニット52については、第1の光学補償ユニット51と同様の構造に同一符号を付して、構造が異なる調整部材7のみを主に説明する。
【0025】
〔第1の光学補償ユニットの構成〕
第1の光学補償ユニット51は、図2または図3に示すように、光学補償素子6と、調整部材7と、支持部材8とを備える。
なお、調整部材7については、説明の便宜上、第1の光学補償ユニット51を構成する調整部材7を第1の調整部材7Aとし、第2の光学補償ユニット52を構成する調整部材7を第2の調整部材7B(図5参照)とする。
【0026】
〔光学補償素子の構成〕
光学補償素子6は、ガラスまたはプラスチック等のポリマー製の透明板状に、複屈折性を有する無機若しくは有機材料からなる板状部材、または、これらを複合した板状部材、WV(Wide View)フィルム等を取り付けたものである。
この光学補償素子6は、液晶パネル4(第1の光学補償ユニット51では第1の液晶パネル41、第2の光学補償ユニット52では第2の液晶パネル42)にて正確に変調できなかった位相変調量を微調整し(液晶パネル4を介した光束の位相差を補償し)、投影画像のコントラストを向上させる。
【0027】
〔第1の調整部材の構成〕
図4は、第1の調整部材7Aを光入射側から見た斜視図である。
第1の調整部材7Aは、光学補償素子6が取り付けられ、第1の仮想線Ax1(図2〜図4)を中心として回転することで、光学補償素子6の位置を調整する。
この第1の調整部材7Aは、金属板が板金加工されることにより形成され、図3または図4に示すように、調整部材本体71と、一対の腕部72と、操作部73とを備える。
調整部材本体71は、図3に示すように、光学補償素子6と略同様の大きさを有する矩形状の板体で構成されている。
この調整部材本体71において、中央部分には、図3または図4に示すように、光束を通過させるための矩形状の開口部711が形成されている。
そして、光学補償素子6は、図2(C)または図3に示すように、調整部材本体71における光出射側の端面において、開口部711を閉塞するように取り付けられる。
【0028】
一対の腕部72は、図3または図4に示すように、光入射側から見て調整部材本体71における右上角部C1及び左下角部C3から第1の仮想線Ax1に沿って互いに離間する方向に突出する。そして、一対の腕部72は、先端部分721が光出射側に向けて略90°折り曲げられた略L字形状をそれぞれ有する。
なお、第1の仮想線Ax1は、第1の調整部材7Aに光学補償素子6が取り付けられた状態で、光入射側から見て、矩形形状を有する光学補償素子6の右上角部及び左下角部を結ぶ直線に略平行した仮想線である。
また、一対の腕部72において、先端部分721におけるL字外側部分には、図3または図4に示すように、第1の仮想線Ax1に沿って互いに離間する方向に突出する円柱状の突起部722がそれぞれ形成されている。
【0029】
操作部73は、外部から操作される部分である。
この操作部73は、図3または図4に示すように、調整部材本体71の上縁部71Uにおける左右方向の略中央部分から鉛直軸に沿って上方側に突出する。
具体的に、操作部73の先端部分731は、支持部材8に対して調整部材7が組み込まれた状態で、図2に示すように、光入射側または光出射側から見て、支持部材8よりも上方側に突出している。
ここで、先端部分731の左右両端部分731Aは、図3または図4に示すように、光出射側に向けて略90°折り曲げられている。また、当該折り曲げられた左右両端部分731Aの各下端部分731Bは、互いに離間する方向に略90°折り曲げられ、鉛直軸に直交する水平面に沿って張り出すように形成される。そして、当該折り曲げられた各下端部分731Bは、下方側の端面731Cが水平面に略平行となり、支持部材8に対して第1の調整部材7Aを固定する際に利用される。
すなわち、折り曲げられた各下端部分731Bが本発明に係る第1固定部に相当する(以下、第1固定部731Bと記載)。
【0030】
なお、本実施形態では、操作部73は、光学補償素子6の姿勢調整時の操作性を向上させるために、以下に示すように、設定されている。
すなわち、操作部73は、図2(B)に示すように、調整部材本体71の板面に対して先端部分731が光出射側に位置するように、調整部材本体71に対して基端(調整部材本体71との接続部分)が若干、折り曲げられている。
また、操作部73は、具体的な図示は省略したが、光入射側から見て左側の第1固定部731Bが右側の第1固定部731Bに対して光出射側に位置するように、調整部材本体71に対して若干、捩れた状態となっている。
【0031】
〔支持部材の構成〕
支持部材8は、光学補償素子6の姿勢調整時に調整部材7を回転可能に軸支するとともに、姿勢調整後に調整部材7が固定される部分である。
この支持部材8は、金属板が板金加工されることにより形成され、図2または図3に示すように、支持部材本体81と、一対の保持部82と、一対の第2固定部83とを備える。
【0032】
支持部材本体81は、図2または図3に示すように、調整部材本体71よりも大きい略矩形状の板体で構成されている。
そして、この支持部材本体81において、中央部分には、光束を通過させるための矩形状の開口部811が形成されている。
また、支持部材本体81において、四隅部分には、固定用孔812がそれぞれ形成されている。
なお、4つの固定用孔812は、具体的な図示を省略したが、プリズム37の光入射面371に固定される前記固定部材(図示略)に形成された4つのピン(図示略)が挿通される部分であり、すなわち、光学補償ユニット5をプリズム37の光入射面371に固定するために利用される。
【0033】
一対の保持部82は、光学補償素子6の姿勢調整時に、調整部材7を回転可能に軸支する部分である。
具体的に、一対の保持部82は、図2または図3に示すように、支持部材本体81における左右両端部分の一部が光出射側に向けて略90°折り曲げられた部分である。
一対の保持部82において、基端側(折り曲げられた箇所に近接する側)には、図2(B)または図3に示すように、上下縁部分から上下方向の略中央位置に向けて切り欠かれた切り欠き部82A〜82Dが形成されている。
【0034】
また、一対の保持部82において、先端側(折り曲げられた箇所から離間する側)の上下端部821〜824は、図2(C)または図3に示すように、光出射側から見て、開口部811に向けて略45°折り曲げられている。
これら各端部821〜824は、支持部材8に対して調整部材7が組み込まれた状態で、調整部材7における腕部72の先端部分721に対向する。
例えば、支持部材8に対して第1の調整部材7Aが組み込まれた場合には、図2(C)に示すように、光入射側から見て右上及び左下の各端部821,823が第1の調整部材7Aにおける一対の腕部72の先端部分721に対向する。
【0035】
また、各端部821〜824には、図3に示すように、調整部材7の突起部722が挿通される挿通孔821A〜824Aがそれぞれ形成されている。
そして、調整部材7は、突起部722が挿通孔821A〜824Aにそれぞれ挿通される(例えば、第1の調整部材7Aでは、各突起部722が挿通孔821A,823Aにそれぞれ挿通される)ことで、支持部材8に対して回転可能に軸支される。
すなわち、各端部821〜824は、本発明に係る起立部に相当する(以下、起立部821〜824と記載)。
また、突起部722及び挿通孔821A〜824Aが本発明に係る係合構造に相当する。
【0036】
一対の第2固定部83は、光学補償素子6の姿勢調整後、調整部材7が固定される部分である。
具体的に、一対の第2固定部83は、図2または図3に示すように、支持部材本体81の上端部分の一部が光出射側に向けて略90°折り曲げられた部分である。
これら一対の第2固定部83は、図2に示すように、支持部材8に対して調整部材7が組み込まれた際に、光出射側から見て、調整部材7の操作部73を挟む左右両側にそれぞれ位置する。
【0037】
そして、一対の第2固定部83における各上方側の端面831は、図2(B)に示すように、側方から見て、上方側に凸となるように緩やかに湾曲した曲面状に形成され、支持部材8に対して調整部材7が組み込まれた際に、調整部材7の第1固定部731Bの各端面731Cに対して所定の隙間を空けた状態で対向する。
なお、各上方側の端面831は、光学補償素子6の姿勢調整を考慮して、各端面731Cよりも大きい面積を有するように形成されている。
【0038】
〔第2の光学補償ユニットの構成〕
第2の光学補償ユニット52は、上述したように、第1の光学補償ユニット51と同様の構成6〜8を有し、第2の調整部材7Bの構造が第1の調整部材7Aの構造と異なるのみである。
【0039】
〔第2の調整部材の構成〕
図5は、第2の調整部材7Bを光入射側から見た斜視図である。
第2の調整部材7Bは、図7に示すように、第1の調整部材7Aに対して、一対の腕部72の形成位置が異なるのみである。
具体的に、第2の調整部材7Bにおける一対の腕部72は、図5に示すように、光入射側から見て調整部材本体71における左上角部C2及び右下角部C4から第2の仮想線Ax2に沿って互いに離間する方向に突出する。
なお、第2の仮想線Ax2は、第2の調整部材7Bに光学補償素子6が取り付けられた状態で、光入射側から見て、光学補償素子6の左上角部及び右下角部を結ぶ直線(第1の仮想線Ax1に交差する直線)に略平行した仮想線である。
【0040】
そして、第2の調整部材7Bは、支持部材8に組み込まれた状態で、一対の腕部72の各先端部分721が支持部材8における光入射側から見て左上及び右下の各起立部822,824にそれぞれ対向する。また、各突起部722は、各起立部822,824の各挿通孔822A,824Aに挿通される。そして、第2の調整部材7Bは、支持部材8に対して回転可能に軸支される。
なお、具体的な図示は省略したが、第2の調整部材7Bにおける操作部73は、光学補償素子6の姿勢調整時の操作性を向上させるために、第1の調整部材7Aとは異なり、光入射側から見て左側の第1固定部731Bが右側の第1固定部731Bに対して光入射側に位置するように、調整部材本体71に対して若干、捩れた状態となっている。
【0041】
〔光学補償素子の姿勢調整方法〕
次に、光学補償素子6の姿勢調整方法について説明する。
図6及び図7は、光学補償素子6の姿勢調整方法を説明するための図である。具体的に、図6は第1の光学補償ユニット51を構成する光学補償素子6の姿勢調整方法を説明するための図であり、図7は第2の光学補償ユニット52を構成する光学補償素子6の姿勢調整方法を説明するための図である。
先ず、作業者は、3つの光学補償ユニット5(2つの第1の光学補償ユニット51、及び1つの第2の光学補償ユニット52)を組み立てる。
【0042】
具体的に、作業者は、第1の光学補償ユニット51を以下に示すように組み立てる。
すなわち、作業者は、光学補償素子6を第1の調整部材7Aに対して、接着剤等により取り付ける。
また、作業者は、光出射側から第1の調整部材7Aの一対の腕部72の各先端部分721を支持部材8の一対の起立部821,823間にあてがう。そして、作業者は、各突起部722が各挿通孔821A,823Aに挿通されるまで、第1の調整部材7Aを支持部材8に向けて押し込む。
この状態では、一対の起立部821,823は、互いに離間する方向に弾性変形し、一対の腕部72の各先端部分721にそれぞれ当接する。
すなわち、一対の起立部821,823間の離間寸法は、一対の腕部72の各先端部分721間の離間寸法に対して、略同一あるいは若干小さく設定されている。
また、作業者は、光学補償素子6を第2の調整部材7Bに固定する。そして、作業者は、上記同様に第2の調整部材7Bを支持部材8に取り付けることで、第2の光学補償ユニット52を組み立てる。
この状態では、上記同様に、一対の起立部822,824は、互いに離間する方向に弾性変形し、一対の腕部72の各先端部分721にそれぞれ当接する。
【0043】
次に、作業者は、前記固定部材を利用して、3つの液晶パネル4、上記のように組み立てられた3つの光学補償ユニット5、及び3つの出射側偏光板36をプリズム37の各光入射面371に固定する。
次に、作業者は、3つの光学補償ユニット5を構成する各光学補償素子6の姿勢調整を実施する。
例えば、第1の光学補償ユニット51を構成する光学補償素子6の姿勢調整については、以下に示すように実施する。
すなわち、作業者は、光学補償素子6の姿勢調整を行う調整装置(図示略)を利用して、第1の液晶パネル41に向けて姿勢調整用の光束を出射させる。
そして、作業者は、第1の液晶パネル41にて変調され、光学補償素子6、出射側偏光板36、プリズム37、及び投射レンズ(図示略)を介してスクリーンに投射された投影画像を確認しながら、当該投影画像のコントラストが最大となるように、光学補償素子6の姿勢調整を実施する。
【0044】
すなわち、作業者は、図6に示すように、上方側に突出した操作部73の先端部分731を、入射した光束の光軸に沿って前後に移動させることで、第1の仮想線Ax1を中心として第1の調整部材7A(光学補償素子6)を回転させる。
そして、作業者は、上述したように光学補償素子6を回転させ、投影画像のコントラストが最大となる位置(液晶パネル4の液晶材料や配向状態に応じて光学補償素子6の光学軸の方位が適正となる位置)に位置付けた後、以下に示すように、支持部材8に対して第1の調整部材7Aを固定する。
すなわち、作業者は、各第1固定部731Bの上方側から接着剤(例えば、光硬化型接着剤)を塗布し、各第1固定部731Bを各第2固定部83に固定する。
【0045】
なお、第2の光学補償ユニット52を構成する光学補償素子6の姿勢調整、及び支持部材8に対する第2の調整部材7Bの固定については、図7に示すように第2の仮想線Ax2を中心として第2の調整部材7B(光学補償素子6)を回転させる以外は、上記同様であるため、説明を省略する。
【0046】
上述した本実施形態によれば、以下の効果がある。
本実施形態では、調整部材7は、突起部722及び挿通孔821A,823A(822A,824A)を有する係合構造により、支持部材8に対して回転可能に構成されている。すなわち、調整部材7(光学補償素子6)は、挿通孔821A,823A(822A,824A)に突起部722が挿通された状態で、支持部材8に対して回転(姿勢調整)することとなる。
このため、光学補償素子6の姿勢調整時に、回転中心線(第1,第2の仮想線Ax1,Ax2)がずれることがなく、光学補償素子6の姿勢を良好に調整できる。
【0047】
また、一対の起立部821,823(822,824)は、弾性変形しながら一対の腕部72にそれぞれ当接する。このため、調整部材7の回転時には、起立部821,823(822,824)及び腕部72間に起立部821,823(822,824)の弾性変形等に応じた摩擦力が生じることとなる。
すなわち、調整部材7は、当該摩擦力により、調整部材7や光学補償素子6の自重等によって不要に回転することが抑制される。このため、光学補償素子6の姿勢を精度良く調整(微調整)できる。
【0048】
さらに、支持部材8は、第1,第2の調整部材7A,7Bにおける各一対の腕部72の先端部分721にそれぞれ対向する4つの起立部821〜824を有する。
このことにより、支持部材8として、第1の調整部材7Aに対応した支持部材、及び第2の調整部材7Bに対応した支持部材の2種類の支持部材を設ける必要がない。すなわち、支持部材8が第1,第2の調整部材7A,7Bに共通に用いることができる部材となり、支持部材8の製造コストを低減できる。
【0049】
また、光学補償素子6の姿勢調整後、支持部材8に対する調整部材7の回転中心線(第1,第2の仮想線Ax1,Ax2)から離間した位置にある操作部73が支持部材8に固定される。
このことにより、例えば支持部材8に対して調整部材7が回転中心線(第1,第2の仮想線Ax1,Ax2)に近接する位置で固定される構成と比較して、調整部材7等に外力が加わった場合であっても、光学補償素子6を姿勢調整後の所望の姿勢で良好に維持できる。
【0050】
さらに、操作部73及び支持部材8には、第1,第2固定部731B,83がそれぞれ形成されている。
このことにより、光学補償素子6の姿勢調整後、支持部材8に対して調整部材7を固定するために第1固定部731Bの上方側から接着剤を塗布した際に、第2固定部83の上方側の端面831にて接着剤を受けることができ、接着剤が垂れて、光学補償素子6等の他の部位に付着することを防止できる。
【0051】
なお、本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
前記実施形態では、腕部72に突起部722を設け、起立部821〜824に挿通孔821A〜824Aを設けていたが、これに限らず、腕部に挿通孔を設け、起立部に突起部を設けた構成を採用しても構わない。
前記実施形態では、一対の腕部72の各先端部分721は、起立部821,823(822,824)に対して内側に位置するように構成されていたが、これに限らず、起立部821,823(822,824)に対して外側に位置するように構成しても構わない。
【0052】
前記実施形態では、液晶パネル4R,4Bを第1の液晶パネル41(R液晶パネル)とし、液晶パネル4Gを第2の液晶パネル42(L液晶パネル)としていたが、これに限らない。逆に、液晶パネル4R,4Bを第2の液晶パネル42(L液晶パネル)とし、液晶パネル4Gを第1の液晶パネル41(R液晶パネル)としても構わない。
【0053】
前記実施形態では、光変調装置として、透過型の液晶パネル4を採用したが、これに限らず、反射型の液晶パネルを採用しても構わない。
前記実施形態において、光学補償素子6の姿勢調整方法は、前記実施形態で説明した姿勢調整方法に限らない。
例えば、前記実施形態では、スクリーン上の投影画像を確認しながら光学補償素子6の姿勢調整を実施していたが、これに限らず、プリズム37から出射される姿勢調整用の光束をCCDカメラ等で直接、検出しながら姿勢調整を実施する方法を採用しても構わない。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明は、プレゼンテーションやホームシアター等に用いられるプロジェクターに利用できる。
【符号の説明】
【0055】
1・・・プロジェクター、4・・・液晶パネル(光変調装置)、41・・・第1の液晶パネル、42・・・第2の液晶パネル、6・・・光学補償素子、7・・・調整部材、7A・・・第1の調整部材、7B・・・第2の調整部材、8・・・支持部材、71・・・調整部材本体、72・・・腕部、73・・・操作部、83・・・第2固定部、722・・・突起部(係合構造)、731B・・・第1固定部、821〜824・・・起立部、821A〜824A・・・挿通孔(係合構造)、Ax1・・・第1の仮想線、Ax2・・・第2の仮想線。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入射した光束を変調する光変調装置と、
前記光変調装置を介した光束の位相差を補償する光学補償素子と、
前記光学補償素子が取り付けられ、前記光学補償素子の位置を調整する調整部材と、
前記調整部材を支持する支持部材とを備え、
前記調整部材は、
互いに離間する方向に突出する一対の腕部を有し、
前記支持部材は、
前記一対の腕部の先端にそれぞれ対向する一対の起立部を有し、
前記腕部及び前記起立部のいずれか一方には、
いずれか他方に向けて突出する突起部、及び前記突起部が挿通される挿通孔を有し、前記挿通孔に前記突起部が挿通された状態で前記支持部材に対して前記調整部材を回転可能とする係合構造が設けられている
ことを特徴とするプロジェクター。
【請求項2】
請求項1に記載のプロジェクターにおいて、
前記一対の起立部は、
前記挿通孔に前記突起部が挿通された状態で弾性変形しながら前記一対の腕部にそれぞれ当接する
ことを特徴とするプロジェクター。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のプロジェクターにおいて、
前記光変調装置は、
液晶分子の配列状態を変化させることで入射した光束を変調する第1の液晶パネル及び第2の液晶パネルを備え、
前記第1の液晶パネルは、
前記第2の液晶パネルに対して、前記液晶分子のねじれ方向が異なる方向に設定され、
前記調整部材は、
前記第1の液晶パネルにおける前記液晶分子のねじれ方向に対応した第1の仮想線に沿って突出する前記一対の腕部を有し、前記第1の仮想線を中心として前記支持部材に対して回転可能とする第1の調整部材と、
前記第2の液晶パネルにおける前記液晶分子のねじれ方向に対応した第2の仮想線に沿って突出する前記一対の腕部を有し、前記第2の仮想線を中心として前記支持部材に対して回転可能とする第2の調整部材とを備え、
前記支持部材は、
前記第1の調整部材及び前記第2の調整部材における各前記一対の腕部の先端にそれぞれ対向する4つの前記起立部を有する
ことを特徴とするプロジェクター。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれかに記載のプロジェクターにおいて、
前記調整部材は、
調整部材本体と、前記調整部材本体から突出する前記一対の腕部と、前記調整部材本体から突出し、外部から操作される操作部とを備え、
前記操作部は、
前記光学補償素子の位置が調整された後、前記支持部材に固定される
ことを特徴とするプロジェクター。
【請求項5】
請求項4に記載のプロジェクターにおいて、
前記操作部は、
前記調整部材本体から鉛直軸に沿って上方に突出する形状を有し、
前記操作部には、
鉛直軸に略直交して張り出す第1固定部が形成され、
前記支持部材には、
鉛直軸に略直交して張り出し、前記第1固定部に対向する第2固定部が形成され、
前記第1固定部及び前記第2固定部は、
互いに接着固定される
ことを特徴とするプロジェクター。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−189776(P2012−189776A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−52764(P2011−52764)
【出願日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】