説明

プロセスストリームのための膜ベースの脱酸素器

【課題】脱酸素器によってプロセスストリームから溶存酸素を除去することによって、材料ストリームの連続工程のプロセス効率を向上させる。
【解決手段】材料ストリームを処理するためのシステムは、溶存酸素を除去するための脱酸素器を包含する。溶存酸素の除去により、システムを目詰まりさせたり汚損したりする可能性のある有害な不溶性物質を生じ得る反応やプロセスを低減する。脱酸素器は、流れている材料ストリームから溶存酸素を除去する酸素透過膜を備える。実質的に流れを中断することなく材料ストリームから溶存酸素を除去することができるため、プロセス全体に対する悪影響は少ない。材料ストリーム中における有害な副生成物の形成を低減又は排除するため、溶存酸素の除去によりプロセス効率が著しく向上する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、炭化水素又はオキシジェネートストリームを包むプロセスストリームを改善することに関する。より詳細には、本発明は、プロセス効率を向上するために、炭化水素及び他のオキシジェネートストリームから酸素を除去するための方法並びに装置に関する。
【背景技術】
【0002】
多くの製品の製造は、連続的に流れるガス又は液体ストリームのプロセス(処理加工)(即ち、連続工程)を包含する。例えば、石油製品は、原油ストリームから特定の所望する成分を分離して精製することによって製造される。多くの場合において、そのようなプロセス効率は、生成する副生成物量によってある程度決定する。例えば、弁、コンジット及びその他のフロー制御装置におけるコーク又は不溶性物質などの有害な副生成物の生成によって、プロセス効率が悪化する可能性がある。通常、プロセスは、それら副生成物の影響や生成を低減するよう改修されて最適化される。有害な副生成物の多くは、ガスや液体中の多量の溶存酸素に起因する反応並びに転化から生じる。いくつかの場合では、そのような望ましくない副生成物の生成を阻害するために、ガスや液体に酸化防止剤が添加される。
【0003】
いくつかのプロセスには、特定のプロセスに望ましい化学反応が発生、あるいはそのような反応を助長するよう、ガス又は液体を加熱する加熱工程が含まれる。炭化水素やオキシジェネートの加熱により、プロセスストリームを輸送するのに利用される設備やコンジットの内面を被覆して目詰まりさせる有害な不溶性物質の副生成物が生成する可能性があることは周知である。その結果生じた、ねばねばした目詰まりやコーキング、汚れによって、プロセス効率が低減する場合が多い。そのため、そのような有害な物質の形成を妨害するよう、低温で機能するようにプロセスは改善される。プロセス効率の増加は、プロセスを実施できる持続温度によって判定される場合が多い。しかしながら、都合の悪いことに、可能な最大効率を提供し得る温度や条件は、ストリーム中の溶存酸素によって有害な副生成物の生成を引き起こす一因ともなる。
【0004】
従って、継続可能なプロセス条件を改善するために、プロセスストリームから溶存酸素を除去するための方法並びに装置の開発が望まれている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、脱酸素器によってプロセスストリームから溶存酸素を除去することによって、材料ストリームの連続工程のプロセス効率を向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明一実施態様によるシステムにより、脱酸素器を用いて溶存酸素を除去することによってプロセスが改善される。
【0007】
本発明の一実施態様によるシステムは、材料ストリームから溶存酸素を除去するための脱酸素器を含む。材料ストリームは、連続的に流れるストリームとして処理加工される液体、気体、あるいは両方が合わさった形態の材料からなる。溶存酸素の除去は、炭化水素やオキシジェネートストリームに対して特に有用である。溶存酸素を除去することにより、システムを目詰まりさせたり汚染したりし得る有害な不溶性物質を生じる可能性のある反応や作用が低減される。
【0008】
脱酸素器は、流れている材料ストリームから溶存酸素を除去する酸素透過膜を備える。本質的に流れを中断させることなく、材料ストリームから溶存酸素を除去できるため、プロセス全体に対する悪影響がほとんどない。脱酸素器により、溶存酸素を除去しながら、システムの継続的な動作が提供される。
【0009】
従って、システムで利用される本発明の脱酸素器によって、材料ストリーム中の溶存酸素含有量を低減、あるいは除去することで、プロセス効率が大幅に向上する。
【0010】
本発明のこれら並びにその他の利点は、以下の詳細な説明、図面並びに図面の簡単な説明から十分に理解できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
図1を参照すると、ストリームを処理加工するためのシステム10が、概略的に示されており、このシステム10は、材料ストリーム14から溶存酸素を除去するための脱酸素器12を備えている。図1で示す例は、脱酸素器12を通る材料ストリーム14を供給する貯蔵タンク16を備える。材料ストリーム14は、連続的に流れるストリームとして処理加工される、液体、ガスあるいは両方の形態のいずれの材料を含んでよい。溶存酸素の除去は、炭化水素やオキシジェネートストリームを含む材料ストリームに対して特に有用である。脱酸素器12は、流れている材料ストリーム14から酸素を取り除く酸素透過膜を備える。本質的に流れを中断させることなく、材料ストリーム14から溶存酸素を取り除くことができるため、プロセス全体に与えられる悪影響はほとんどない。
【0012】
システム10は、熱源20からの熱を材料ストリー14に与える熱交換器18を備える。熱は、脱酸素器12内で溶存酸素が除去された後で材料ストリーム14に与えられる。溶存酸素の存在下で炭化水素やオキシジェネートを含む材料ストリーム14を加熱すると、それが装置の構成要素を汚染する不溶性の副生成物の生成などの有害な悪影響を及ぼす原因となり、過酸化物及びその他の酸化物が形成される原因となる可能性がある。従って、実質的な加熱の前に材料ストリーム14から酸素を取り除くことにより、有害な副生成物の生成を十分に排除することができる。十分に理解されるように、酸素除去のレベルは特定用途の製造要件に依存する。
【0013】
システム10は又、複数のプロセスステーション22を備える。プロセスステーション22は、材料ストリーム14をさらに処理加工して、改変する。材料ストリーム14から溶存酸素が除去されると、通常であれば過剰な溶存酸素成分に伴う、有害な副作用が生じることなく、さらなる処理加工を行うことができる。プロセスステーション22は、石油精製プロセスにおけるような、材料ストリーム14の構成成分の分離を含み得る。さらに、プロセスステーション22は、材料ストリーム14の組成並びに特性を変更するための材料ストリーム14への添加を含んでもよい。プロセスステーション22は、脱酸素器12によりストリーム中に実質的に溶存酸素が存在しないため、改善された方法で材料ストリーム14を連続的に改変する。
【0014】
材料ストリーム14は脱酸素器12を出ると、実質的な溶存酸素分は除去される。脱酸素器12を出た材料ストリーム14中に残存する溶存酸素量は、10ppm未満であることが好ましく、より好ましくは、2ppm未満である。理解されているように、材料ストリーム14から除去される酸素の具体的な量は、特定用途要件に依存する。プロセス効率は、溶存酸素の量を低減するほど、より大幅に向上するが、他のプロセスでは所望する効率を達成するために、溶存酸素を十分に排除する必要がある場合がある。
【0015】
システム10は、すでに実質的に酸素がなくなった材料ストリーム14を加熱する工程を含む。材料ストリーム14から溶存酸素を除去することにより、有害な副生成物の生成並びに形成に最も寄与する触媒が排除される。従って、熱交換器18は、材料ストリーム14を高温まで加熱することができる。そのため、不溶性物質のための設備がなくとも、材料ストリーム14を連続的に処理加工することができる。即ち、そのような不溶性物質の生成に起因する有害な影響が排除されるため、材料ストリーム14を高温まで加熱することができ、より高速で流すことができる。
【0016】
図2を参照すると、脱酸素器12が、概して断面において示されている複合酸素透過膜30を用いることにより、溶存酸素を除去することが示されている。酸素透過膜30は、多孔性の支持層34の上に配置された透過層32を備える。多孔性の支持層34は、材料ストリーム14からの酸素の拡散を最大するのを可能にする一方で、透過層32に対して必要な支持構造を提供する。透過層32は多孔性の支持層34上に被覆され、両層の間には機械的な結合が形成される。透過層32は、0.25μmの孔径を有する、0.005インチ(1.27×10-4m)厚のポリフッ化ビニリデン(PVDF)の支持層34上に設けられた、0.5〜20μm厚のテフロン(Tefron(登録商標))AF2400の被覆であることが好ましい。別の材料、厚さ、孔径の他の支持体も、必要な強度と開放性を有する限り使用可能である。
【0017】
透過層32は、デュポン社のテフロン(Teflon(登録商標))AF非晶質フッ素樹脂であることが好ましいが、ソルベイ社(Solvay)のハイフロン(Hyflon(登録商標))ADガラス状過フッ化樹脂や、旭硝子社のCYTOPポリ過フルオロブテニルビニルエーテルなど、当業者に周知のその他の材料も本発明の範囲内である。透過膜30の各複合成分は、多孔性基体36で支持される。多孔性基体36は、複合透過膜30にわたって酸素分圧差を形成するよう真空源40と連通している。
【0018】
作用において、分圧差は、透過膜30の非材料ストリーム側42と材料ストリーム側44の間に、真空源40によって形成される。矢印38で示す酸素は、材料ストリーム14から複合透過膜30を横断して多孔性基体36中へ拡散する。酸素38は、多孔性基体36からシステム10を出るため、材料ストリーム14から除去される。当分野で通常行われているように、窒素などのストリップガスを、材料ストリーム側44とは反対側の非材料ストリーム側42に、透過巻く30に隣接して流すことによって真空を形成することも可能である。
【0019】
脱酸素器12は、溶存酸素を除去しながら、システム10の継続的な作用を可能にする。さらに、溶存酸素を除去することによって、有害な副生成物の悪影響に対抗して、その生成を防ぐために、補足的な構成要素を追加する必要がない。実施態様のシステム10は、大規模な生産施設に関して、原油を精製して利用できる石油製品にするための工程から食料製品の処理まで、広範囲にわたって対応可能である。理解されるように、例えば、人間用の液状又は固形の飲食製品などを含む食料製品は、含まれる溶存酸素によって有害な成分の形成が促進され、悪化するため、有効な賞味期間が限られている場合が多い。このため、溶存酸素の除去により有効な賞味期間が延長される。
【0020】
従って、実施態様のシステム10で使用した本発明の脱酸素器12は、材料ストリーム中に含まれる溶存酸素を低減あるいは排除することによって処理効率を著しく増大する。さらに、システム10の脱酸素器は、飲料成分からなる材料ストリームの有効賞味期間を延長することができる。
【0021】
本発明の好ましい実施態様を説明してきたが、本発明の範囲内における一定の変更は実施可能であることは当業者であれば認識するであろう。このため、本発明の真の範囲と内容を確認するために、特許請求の範囲の記載を検討すべきである。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】材料ストリームから酸素を除去するシステムの概略図である。
【図2】本発明による酸素透過膜の断面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)材料ストリームを、酸素透過膜に隣接して流すステップと、
(b)酸素透過膜にわたる酸素分圧差によって、酸素透過膜を介して材料ストリームから酸素を引き出して除去するステップと、
(c)溶存酸素を除去した後に、材料ストリームを処理加工するステップ、
を含むことを特徴とする、材料ストリームから酸素を除去する方法。
【請求項2】
前記ステップ(c)が、前記材料ストリームをさらに改変することを含むことを特徴とする、請求項1記載の方法
【請求項3】
前記ステップ(c)が、脱酸素器を通って流れる前の材料ストリーム部分よりも高い温度まで前記材料ストリームを加熱することを含むことを特徴とする、請求項2記載の方法。
【請求項4】
前記ステップ(c)が、前記材料ストリームに追加成分を添加することを含むことを特徴とする、請求項2記載の方法。
【請求項5】
前記ステップ(c)が、前記材料ストリームの成分を分離することを含むことを特徴とする、請求項2記載の方法。
【請求項6】
前記材料ストリームが炭化水素からなることを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項7】
前記材料ストリームが液体の石油からなることを特徴とする、請求項6記載の方法。
【請求項8】
前記材料ストリームが、人間用の飲食製品からなることを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項9】
前記方法が、酸素分圧差を形成するために前記透過膜に隣接して真空を適用することを含むことを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項10】
前記方法が、酸素分圧差を形成するために前記酸素透過膜に隣接してストリップガスを流すことを含むことを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項11】
前記材料ストリームの流速の変化に応答して前記酸素透過膜にわたる酸素分圧差を変えることを含むことを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項12】
プロセスの間、材料ストリームが実質的に連続して流れるコンジットと、
実質的に連続して、材料ストリームから溶存酸素を除去するための脱酸素器と、
材料ストリームをさらに処理加工するための、脱酸素器の下流に配置されるプロセスステーション、
を含むことを特徴とする、材料ストリームを処理加工するためのシステム。
【請求項13】
前記プロセスステーションが、そこを出る材料ストリームと、前記脱酸素器を出る材料ストリームとが異なるように、前記材料ストリームの特性を改変することを特徴とする、請求項12記載のシステム。
【請求項14】
前記プロセスステーションが、脱酸素器を通って流れる前の材料ストリーム部分よりも高い温度まで前記材料ストリームを加熱するための熱交換器であることを特徴とする、請求項12記載のシステム。
【請求項15】
前記プロセスステーションが、前記材料ストリームに追加の成分を供給することを特徴とする、請求項12記載のシステム。
【請求項16】
前記プロセスステーションが、前記材料ストリームの成分を分離することを特徴とする、請求項12記載のシステム。
【請求項17】
前記脱酸素器が、多孔性基体上に設けられたポリテトラフルオロエチレン被膜を有する酸素透過膜を含んでなることを特徴とする、請求項12記載のシステム。
【請求項18】
前記材料ストリームから溶存酸素を除去するために、前記酸素透過膜にわたって酸素分圧差を形成するよう前記多孔性基体と連絡する真空源を含むことを特徴とする、請求項17記載のシステム。
【請求項19】
前記材料ストリームから溶存酸素を除去するために前記酸素透過膜にわたって酸素分圧差を形成するための、前記多孔性基体に連絡するストリッピングガス通路を含むことを特徴とする、請求項17記載のシステム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2006−231328(P2006−231328A)
【公開日】平成18年9月7日(2006.9.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−38728(P2006−38728)
【出願日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【出願人】(590005449)ユナイテッド テクノロジーズ コーポレイション (581)
【氏名又は名称原語表記】UNITED TECHNOLOGIES CORPORATION
【Fターム(参考)】