説明

プロセス制御システム

【課題】多層の回路パターンから形成される素子について、積層される回路パターン層の重ね合わせ精度を向上させることを課題とする。
【解決手段】複数層の回路パターンが重ね合わせて形成される素子の形成工程を制御するプロセス制御システムであって、各回路パターン層を形成するための一連の形成工程を実施する工程実行制御部と、一連の形成工程を実施することによって形成された回路パターンの重ね合わせ精度を示す情報を測定する測定部とを備え、工程実行制御部は、第1の回路パターン層を形成するときに測定された測定情報から生成された重ね合わせ位置を調整するためのフィードフォワード情報を、第1の回路パターン層よりも後に形成される第2の回路パターン層の特定の形成工程に適用し、第1の回路パターン層の回路パターンとの相対位置関係を調整して、第2の回路パターン層の特定の形成工程を実施することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、プロセス制御システムに関し、特に、固体撮像素子などの半導体素子の積層構造における重ね合わせ位置を制御するプロセス制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
固体撮像素子などの半導体素子は、多数の半導体回路パターンを重ね合わせて形成するプロセスを順次繰り返すことにより製造される。
半導体基板の上に、まず位置の基準点を持つ基準層を形成し、その位置の基準点を確認しながらその上にいくつかの半導体回路パターンの層を順次形成していく。
1つの半導体回路パターンは主として、レジスト塗布工程、露光工程、現像工程、位置ずれ検査工程、線幅測定工程、エッチング工程、レジスト除去工程などをこの順に実行することにより形成される。また、基板に不純物を注入する場合は、エッチング工程の代わりに、イオン注入工程が実行される。
【0003】
しかし、今日、半導体回路パターンの微細化が進行し、パターンの線幅の均一性や、積層される回路パターンの重ね合わせ精度のより一層の向上が求められている。そのため、製造する半導体素子のロットごとや製造装置ごとに、回路パターンを形成する露光条件を正確に管理制御する必要がある。
たとえば、ある回路パターンについて露光工程を実行した後にアライメントずれ等を測定し、その露光測定結果をフィードバックして、測定を行った製品とは異なる別の製品の同じ回路パターンを形成するときに、その露光工程における露光条件を決定することが行われている。すなわち、フィードバックされる測定結果は、その後に製造される別の製品の露光工程で利用される。
【0004】
また、露光後のアライメントずれ量及び線幅測定結果などのフィードバックに用いる測定結果を、生産品種、配線層、処理装置およびレチクルごとに集計するだけでなく、前配線層の処理装置別に集計することにより、複数の処理装置を、露光後のアライメントずれ測定結果などの傾向が等しいものをまとめた装置群として管理することによって、歩留を向上させる半導体装置の露光条件を制御する方法が提案されている(特許文献1参照)。
【0005】
また、ウエハーの検査、露光および現像の各工程を実行した後に、SEM等でCD(素子の臨界寸法)を検査し、その検査で収集した情報を、後続ロットへフィードバックしたり、さらに検査済みウエハーに施される次工程(たとえばエッチング工程)を調整するために、収集した情報をフィードフォワードすることにより、ロット間CD偏差の低減を図る半導体ウエハー工程の制御方法が提案されている(特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2004−342951号公報
【特許文献2】特開2001−143982号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特に固体撮像素子(CCD)では、高画素化に伴って、画素セルサイズを減少させることが必要であり、そのため、積層される半導体回路パターンの層の重ね合わせに要求される精度がますます高くなっている。
従来技術のように、単に1つの基準層を基準としてフィードバック手法を用いて重ね合わせ精度の向上を図るだけでは、この要求に対応することができない。
たとえば、各層と基準層との間の相対的位置関係が、所定の許容された範囲内に制御されたとしても、重ねられた各層相互間の位置ずれが許容外となり、不良品となる場合がある。
【0007】
また、特許文献1に記載のものは、従来と同様のフィードバック手法によって露光条件を制御するものであり、複数の処理装置ごとの条件の違いによる影響を反映した制御ができるものの、他の層を形成するための後工程に積極的にフィードフォワードする制御ではなかったため、重ね合わせの精度向上には限界があった。
また、特許文献2に記載された技術は、CD制御に関するものであり、各層内の回路パターンの線幅を制御することができるものの、重ね合わせられた各層の重ね合わせ精度を向上させることはできない。
【0008】
そこで、この発明は、以上のような事情を考慮してなされたものであり、従来のフィードバック手法を用いて重ね合わせ精度の向上を図るのに加えて、ある回路パターン層についてたとえば現像工程を実施した後の位置ずれ検査で得られた情報を、その後に実施する他の回路パターン層の特定の形成工程に利用することにより、半導体素子の回路パターンの重ね合わせ精度を向上させ、不良品の発生率を低減して歩留を向上させることのできるプロセス制御システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明は、複数層の回路パターンが重ね合わせて形成される素子の形成工程を制御するプロセス制御システムであって、各回路パターン層を形成するための一連の形成工程を実施する工程実行制御部と、前記一連の形成工程を実施することによって形成された回路パターンの重ね合わせ精度を示す情報を測定する測定部とを備え、前記工程実行制御部は、第1の回路パターン層を形成するときに測定された測定情報から生成された重ね合わせ位置を調整するためのフィードフォワード情報を、前記第1の回路パターン層よりも後に形成される第2の回路パターン層の特定の形成工程に適用し、第1の回路パターン層の回路パターンとの相対位置関係を調整して、前記第2の回路パターン層の特定の形成工程を実施することを特徴とするプロセス制御システムを提供するものである。
【0010】
これにより、前工程である第1の回路パターン層を形成したときに測定された測定情報から生成されたフィードフォワード情報を用いて、第1の回路パターン層よりも後に形成される第2の回路パターン層の回路パターンの形成位置を、第1の回路パターン層の回路パターンとの相対位置関係を考慮して調整するので、第1および第2の回路パターン層相互間の重ね合わせ精度を向上させることができ、この2層間の位置ずれが原因となる素子の不良品の発生率を少なくし、素子の歩留を向上させることができる。
【0011】
また、この発明はすでに製造された素子の前記第2の回路パターン層を形成するときに、前記測定部によって測定された測定情報から生成されたフィードバック情報を記憶した記憶部をさらに備え、前記フィードフォワード情報と、前記記憶部に記憶されていたフィードバック情報とを用いて、前記第1の回路パターン層よりも後に形成される第2の回路パターン層の特定の形成工程に適用される補正情報を生成し、その補正情報を用いて前記第2の回路パターン層の形成位置を調整することを特徴とする。
これによれば、フィードフォワード情報とフィードバック情報の2つの情報を用いているので、後工程で形成される第2の回路パターン層の形成位置をより高精度に調整できる。
【0012】
さらに、前記フィードフォワード情報を生成する補正部をさらに備え、前記測定部は、前記第1の回路パターン層に形成されるべき回路パターンを反映するレジスト線幅と、所定の形成工程を実行することにより形成された第1の回路パターン層の回路パターンの形成位置のずれ量とを測定し、前記補正部は、前記レジスト線幅と前記ずれ量とを用いて、前記第2の回路パターン層の回路パターンの第1の回路パターン層に対する位置を調整するためのフィードフォワード情報を生成することを特徴とする。
【0013】
また、前記補正情報を生成する条件決定部をさらに備え、前記条件決定部は、前記補正部によって前記第1の回路パターン層の測定情報から生成された第2の回路パターン層に適用されるフィードフォワード情報と、前記記憶部に記憶されていた第2の回路パターン層に関するフィードバック情報とを用いて、現在形成している素子の前記第1の回路パターン層の回路パターンとの相対位置関係と、すでに製造された素子の第2の回路パターン層の回路パターンの形成位置とに基づき、現在形成している素子の前記第2の回路パターン層の特定の形成工程に適用する補正情報を生成し、前記工程実行制御部は、生成された補正情報を用いて、前記第2の回路パターン層の特定の形成工程を実施することを特徴とする。
【0014】
また、前記第2の回路パターン層の特定の形成工程は、たとえば、形成すべき回路パターンの形状をパターニングするための露光工程である。
【0015】
また、この発明において、前記第1の回路パターン層よりも後に形成される前記第2の回路パターン層の回路パターンを形成するときに適用される前記フィードフォワード情報は、以下の何れかの式
・FF=[(X1−X0)−(W1−W0)/2]×K、
・FF=[(X1−X0)+(W1−W0)/2]×K、
FFはフィードフォワード情報、
W1は第1の回路パターン層のレジスト線幅の測定値、
W0は第1の回路パターン層のレジスト線幅のターゲット値、
X1は第1の回路パターン層の回路パターンのX方向のずれ量の測定値、
X0は第1の回路パターン層の回路パターンのX方向のずれ量のターゲット値、
Kは、予め設定された係数(0<K≦1)
により算出されることを特徴とする。
尚、上記2種類の数式は、X1の測定値の符号が示すずれの方向や、フィードフォワードにより精度よく制御したい相対位置関係が、第1回路パターンから見て左右何れの方向であるかによって使い分けることとする。
【発明の効果】
【0016】
この発明によれば、前工程で生成されたフィードフォワード情報を用いて、同一素子の後工程で形成される回路パターンの特定の形成工程を実施するので、前工程で形成された第1の回路パターン層の回路パターンと後工程で形成される第2の回路パターン層の回路パターンとの重ね合わせ位置の精度を向上させることができ、第1および第2の回路パターン層間で発生する位置ずれが原因となる素子の不良品の発生率を低減させ、素子の歩留を向上させることができる。
また、フィードフォワード情報に加え、すでに製造された素子について測定されたフィードバック情報を用いることにより、2層間の重ね合わせの精度を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、図面を使用して本発明の実施の形態を説明する。なお、以下の実施例の記載によって、この発明が限定されるものではない。
<プロセス制御システムの概略説明>
まず、この発明のプロセス制御システムの概略処理について説明する。
この発明で、プロセス制御の対象となる素子は、複数層の回路パターンが重ね合わせて形成される素子である。たとえば、CCD,CMOSイメージセンサ,不揮発性メモリなどの半導体素子である。
1つの回路パターンを有する層(回路パターン層)を形成するために、予め定められた一連の形成工程が実施される。1つの回路パターン層が形成された後、主として、その層の上に次の回路パターン層が積層される。
図1に、この発明の多層回路パターンの形成方法の一実施例の説明図を示す。
ここでは、基板上に3つの層を形成する工程(A,B,C)についてのみ示す。実際には、CCDなどの素子を製造する場合には、もっと多くの層が重ね合わせて形成される。
【0018】
図1(a)〜(d)には、積層構造を説明するために、一方向(X軸方向)の基板などの断面図を示している。紙面の左右方向を、X軸方向とする。
図1(a)において、工程Aでは、シリコンなどの基板11の上に、基準層を形成する。基準層は、素子として機能する所定の回路パターン(12)の他に、重ね合わせの位置の基準となる基準パターン12−2を形成した層である。
【0019】
工程Aにおいて、基準層を形成するためには、いわゆる一連のフォトリソグラフィー処理を行い、基板表面上に基準層の回路パターンを形成する。具体的には、たとえば、基板上への酸化膜の形成工程,レジスト塗布工程,露光工程,現像工程,酸化膜エッチング工程,レジスト除去工程を、この順に実施する。
【0020】
酸化膜のエッチング工程では、たとえば、露光工程により露光されレジストが除去された領域で、基準層の回路パターンとはならない部分の下地の酸化膜とを、化学反応で除去する。この処理により、素子として必要な基準層の回路パターンと共に、後工程を行うための重ね合わせの基準となる基準パターン12−2や、重ね合わせ精度の測定用のパターン12−1も形成される。
【0021】
また、現像工程を実施した後、残ったレジストのパターンの線幅やエッチング及びレジスト除去工程実施した後の線幅を品質管理のために測定し、RAMなどのメモリに記憶しておく。
【0022】
次に、図1(b)において、次の回路パターン層を形成する工程Bを実施する。
ここでは、次の回路パターン層は、基準層の上に膜を形成するのではなく、基板内の所定の領域に、イオンを注入することによって形成されるものとする。すなわち、ある工程で形成される層は、成膜によって積層される凸パターンの場合もあるが、膜を形成するのではなく、基板や積層膜の中にイオンを注入することによって形成される場合もある。
【0023】
図1(b)の工程Bにおいては、基板11の内部で表面近傍に、イオン注入領域14を形成している。
このイオン注入領域の形成は、たとえば、レジスト塗布工程,露光工程,現像工程,イオン注入工程,レジスト除去工程を、この順に実施することによって行う。
ここで、露光工程のとき、イオン注入領域14を形成するためのマスクの位置を決めるために、工程Aで形成した基準パターン12−2が用いられる。たとえば、基準パターン12−2の凸形状の画像信号を基に基準パターン12−2と同時に形成された重ね合わせ精度測定パターン12−1と、イオン注入工程の重ね合わせパターン14−1のずれ量を示すL2,L3の距離の差が設計値と同じになるようにマスク位置が調整される。この結果、素子として必要な基準層の回路パターン12とイオン注入領域14の端部とのX方向の距離が設計値L1となるようマスクの位置が調整されたこととなる。
なお、13は酸化膜等であり、イオン注入工程のときに基板へ与えるダメージを防ぐ目的で、工程B以前に拡散炉などによって形成される。
【0024】
また、工程Bにおいて、形成された回路パターン(ここではレジストパターン)の重ね合わせ精度を示す情報を測定する。まず、現像工程を実施した後、重ね合わせ精度測定パターン部の残ったレジストパターンと基準層の重ね合わせ精度測定パターンの距離L2,L3を測定し求める。このずれ量は、フィードフォワード情報の生成に利用される。
さらに、この測定の後、イオンを注入する前に、工程Bで形成された回路パターンのレジスト線幅を測定する。この工程Bで形成されるべき回路パターンを反映した寸法である。測定されたレジスト線幅も、設計時に決められた線幅の寸法(線幅ターゲット値)と比較され、フィードフォワード情報の生成に利用される。
上記のように、測定された回路パターンの形成位置のずれ量と、測定されたレジスト線幅とが、回路パターン部での工程Aと工程Bの相対的位置関係L1を示す情報である。
フィードフォワード情報とは、後工程で形成される回路パターンの重ね合わせ位置を調整するための情報であり、上記のような測定情報から生成される。
【0025】
図1の場合、基準層の測定重ね合わせ精度測定パターン12−1とイオン注入工程の重ね合わせ精度測定パターン14−1とのX方向距離の設計値L2,L3と、実測した距離L2',L3'との差(X方向アライメントずれ量)を算出する。同様に、紙面に垂直な方向のY方向についても理想的な設計値と実測した距離との差(Y方向アライメントずれ量)を算出する。すなわち、2つの工程(A,B)による重ね合わせ誤差を算出する。
上記した2つの測定処理によって測定された情報(レジスト線幅,形成位置のずれ量)は、RAM等のメモリに記憶され、その後に行われるフィードフォワード情報の生成処理(補正処理)で利用される。
【0026】
イオン注入工程では、たとえば、露光された領域14のレジストをパターニングして開口部に基板上の酸化膜表面を露出させた状態で、電気的に加速されたイオンを打ち込むことにより、その領域内の基板表面近傍に、砒素などの不純物を注入する。
また、イオン注入をした後で、残ったレジストを除去すると、このイオン注入領域14の上には、高さを持つ凸形状のパターンが残らない。したがって、工程Bを完了した後には、形成したイオン注入領域14や重ね合わせ測定パターン14−1は凸パターン形状として残らず、上記した重ね合わせ精度の測定はできないので、工程Bの現像工程を実施した後にレジストが残った状態で、上記のような測定を行う必要がある。
フィードフォワード情報の生成処理では、次の工程Cを行うときに利用する情報、具体的には、工程Cの露光工程を実行するときに、露光位置を調整するための情報(フィードフォワード情報)を生成する。すなわち、フィードフォワード情報は、後工程である工程Cで形成される回路パターン層の特定の形成工程に適用される。特定の形成工程とは、たとえば露光工程である。この生成処理の詳細については後述する。
【0027】
さらに、従来行われているようなフィードバック手法も利用するときは、後述する条件決定部によって補正処理を行い、今までにメモリに蓄積されているフィードバック情報(露光位置の補正量)を加え、フィードフォワード情報とフィードバック情報とを利用して、露光位置を補正する情報(補正情報)を算出する。
生成されたフィードフォワード情報や補正情報は、RAM等のメモリに記憶される。
【0028】
フィードフォワード情報や補正情報は、後工程で形成される回路パターン層の露光位置を決定するために用いられるが、図1(c)に示すように、イオン注入領域14の位置と工程Cで形成すべき回路パターン15との相対距離L4を決定するための情報と言うことができる。言いかえれば、前工程で形成された回路パターン14と、後工程で形成すべき回路パターン15との相対位置関係を調整する情報が、フィードフォワード情報や補正情報である。
【0029】
次に、図1(c)において、工程Cを実施し、第1パターン層15の回路パターンを形成する。
このとき形成される第1パターン層15は、上記したフィードフォワード情報,フィードバック情報,あるいは補正情報を利用して形成される。
工程Cでは、たとえば、成膜工程,レジスト塗布工程,露光工程,現像工程,エッチング工程が、この順に行われる。
【0030】
この工程Cの露光工程を実施する前に、メモリに記憶された補正情報を読み出し、その補正情報に基づいて、回路パターン15を形成するための露光位置を決定する。
この場合、工程Cで形成すべき回路パターン15の位置は、工程Bで実際に形成されたイオン注入領域14との予め定められた相対距離L4を利用して決定されることになる。
【0031】
一方、従来技術を用いて工程Cを実行する場合は、図1(d)に示すように、工程Aで形成された基準パターン12−2を用いて、この基準層の重ね合わせ測定パターン12−1とC工程の重ね合わせ測定パターン15−1との相対距離L5,L6が所定の設計値となるように調整することにより、回路パターンのL7が所定の設計値となるように露光工程が実施されていた。
この従来の方法では、基準パターン12−2に基づいて、イオン注入領域14の位置と回路パターン15の位置が決定されるが、イオン注入領域14と回路パターン15との相対位置関係を考慮した処理は行われていなかった。
【0032】
したがって、従来の方法の場合、領域14と回路パターン15のいずれもが、基準パターン12−2に対して、それぞれ所定の許容ずれ範囲内に形成されたとしても、領域14とパターン15とがその許容ずれ範囲内であっても逆方向にずれる場合があり、本来満たしてほしい領域14とパターン15との相対位置関係が保たれない場合もあり得る。たとえば、素子の設計上、このイオン注入領域14と回路パターン15との相対位置関係について非常に厳しい許容範囲が要求される場合は、この両者の逆方向のずれのために、相対位置関係が許容範囲外となり、基準パターンのみを用いる従来の方法では、素子が不良品となってしまう場合もあり得る。
【0033】
そこで、この発明のように、前工程である工程Bのときに生成したフィードフォワード情報や補正情報を用いて、領域14と回路パターン15との相対距離L4を考慮した露光条件を決定して、後工程である工程Cにより回路パターン15を形成するようにすれば、領域14と回路パターン15との相対位置関係について厳しい許容範囲が要求されていたとしても、その要求を満たすことが可能となり、その結果、不良品が発生するのを少なくすることができる。
【0034】
また、工程Cにおいて、現像工程を実施した後、工程Aや工程Bで実施したレジスト線幅測定処理や、工程Bで実施した重ね合わせ精度測定処理と同様の処理をしてもよい。
この2つの測定によって得られた情報は、すでに従来技術でも行われているようなフィードバック情報として利用することができる。この場合、フィードバック情報はハードディスクなどの不揮発性メモリに保存され、後に、この工程Cを実施してすでに製造された素子とは異なる別の素子を製造するときに用いられる。
あるいは、工程Cで上記2つの測定処理によって得られた情報は、工程Cの後に同じ素子についての他の工程Nがある場合は、その工程Nで、フィードフォワード情報として利用することもできる。
【0035】
<この発明のプロセス制御システムの構成>
図2に、この発明のプロセス制御システムの一実施例の構成ブロック図を示す。
ここで、プロセス制御システムは、主として、いくつかの工程を実行することによって複数の回路パターンを順次形成する回路パターン形成装置100と、この装置100で実行される工程の順序や処理条件を管理制御する工程制御装置200とから構成される。
工程制御装置200は、パソコンやワークステーションのような汎用コンピュータを用いてもよく、また、回路パターン形成装置100の中に組み込まれた制御機器であってもよい。
【0036】
回路パターン形成装置100は、主として、測定部101と、工程実行制御部102と、各回路パターンを形成するのに必要な設備であって、図2に示したようなレジスト塗布工程からレジスト除去工程までの各工程と測定処理(111〜119)を実施するための設備から構成される。
【0037】
測定部101は、1つの回路パターン層を形成するための一連の形成工程を実施することによって、実際に形成された回路パターンの重ね合わせ精度を示す情報を測定する部分である。また図2では、レジスト線幅測定実施部114,酸化膜パターン線幅測定実施部117,重ね合わせ精度測定実施部118によって測定された情報を収集して、これらの測定情報211を工程制御装置200へ送信する部分である。
ここで、測定情報211とは、前記したようなレジスト線幅,酸化膜パターン線幅,重ね合わせ位置の情報(アライメントずれ量),スケーリング,ローテーション,ウエハ面内情報,ショット情報などを意味する。スケーリングとは、伸縮率の情報である。ローテーションとは、回転成分の情報である。また、ウエハ面内情報とは、ウェハ単位での伸縮率・回転成分等であり、ショット情報とは、1レティクル上の乗り数単位での伸縮率・回転成分等の情報である。
【0038】
工程実行制御部102は、所定の実施条件に従って、図2に例示したような各回路パターン層を形成するための一連の形成工程(111〜119)を実行させる部分である。
各工程の実施条件は、予めROM等のメモリに記憶して提供してもよいが、この発明では、上記したように所定の2つの層相互間の回路パターンの相対位置関係を調整するために、工程制御装置200から与えられる補正情報214によって決定するようにする。
【0039】
工程制御装置200は、主として、測定情報取得部201,補正部202,条件決定部203,記憶部204とから構成される。
測定情報取得部201は、測定部101によって収集された測定情報211を取得して、記憶部204に保存する部分である。
補正部202は、重ね合わせ位置を調整するためのフィードフォワード情報(FF情報)212を生成する部分であり、フィードフォワード情報生成部とも呼ぶ。
FF情報の生成は、たとえば、前記したレジスト線幅と回路パターンの形成位置のずれ量を用いて行われる。
【0040】
条件決定部203は、補正部202で生成されたFF情報を用いて、いくつかの工程(111〜119)のうち同一素子の後工程の実施条件(たとえば、露光工程で用いる露光条件)に対応した補正情報214を生成する部分である。
FF情報のみを用いて補正を行う場合は、FF情報212から補正情報214が生成される。
また、記憶部204に蓄積されているフィードバック情報(FB情報)213を用いた補正も行う場合は、条件決定部203は、FF情報212とFB情報213とを用いて、補正情報214を生成する。
ここで、FB情報213としては、すでに製造された素子の回路パターン層を形成したときに、測定部によって測定されていた測定情報から生成された情報を用いる。
【0041】
したがって、条件決定部203は、補正部202によって生成されたFF情報212のみを利用して補正情報214を生成する場合と、FF情報212とFB情報213とを利用して補正情報214を生成する場合とがある。
どちらを採用するかは、製造する素子や工程の種類などによって、このシステムの利用者が予め設定できるようにすることが好ましい。
【0042】
たとえば、前工程である第1の回路パターン層の形成時に測定された測定情報から第2の回路パターン層に適用されるフィードフォワード情報212を生成する場合、このフィードフォワード情報212と、記憶部にすでに記憶されていた第2の回路パターン層に関するフィードバック情報213とを用いて、条件決定部203が、第2の回路パターン層の補正情報214を生成する。
【0043】
ここで生成される補正情報214は、現在形成している素子の第1の回路パターン層の回路パターンと、これから形成しようとしている第2の回路パターン層の回路パターンとの相対位置関係と、すでに製造された素子の第2の回路パターン層の回路パターンの形成位置とに基づき、現在形成している素子の第2の回路パターン層を形成する特定の形成工程に適用される情報である。
この場合、工程実行制御部102は、生成された補正情報214を用いて、第2の回路パターン層の特定の形成工程を実施する。ここで、特定の形成工程とは、たとえば、形成すべき第2の回路パターン層の回路パターンの形状をパターニングするための露光工程である。
【0044】
記憶部204には、主として、測定情報211,FF情報212,FB情報213,補正情報214が保存されるが、この他に、各機能ブロックの動作に必要な情報も保存される。
また、記憶部204としては、RAMやROMなどの半導体メモリの他に、ハードディスクなどの記憶装置が用いられ、FB情報213などの消えると困る情報は、ハードディスクなどの不揮発性メモリに保存される。
【0045】
また、測定情報取得部201,補正部202,条件決定部203は、CPU,ROM,RAM,I/Oコントローラ,タイマーなどを備えたマイクロコンピュータにより実現され、ROM等に保存された制御プログラムに基づいて、CPUが各種ハードウェアを動作させることにより、各機能ブロックの動作が実行される。
【0046】
<この発明の回路パターン形成プロセスの説明>
図3に、この発明の回路パターン形成プロセスの一実施例の説明図を示す。
ここでは、CCDなどの半導体素子を製造する場合に、基板上に、基準層と、N個の回路パターン層を形成するものとする。
また、1つの素子は、まず基準層を形成するための工程Aを実行し、次に回路パターン第1層を形成するための工程Bを実行し、さらに、残りの回路パターン層(第2〜第N層)を形成するための工程C〜工程Nを、順次実行することにより完成する。
また、工程A〜工程Nのそれぞれにおいて、図2に示したような複数の工程と測定処理(111〜119)のいずれかが実行されることにより、対応する回路パターンの層が形成されるものとする。
【0047】
図3の実施例では、工程Bを実行したときに得られた測定情報211を、次の工程Cの中の特定処理の実施条件の決定に用いるものとする。
この場合、工程Bで得られた測定情報211(たとえばレジスト線幅など)が補正部202に与えられると、測定情報211に対して所定の演算を行ってフィードフォワード情報(FF情報)212が生成される。このFF情報212は条件決定部203に与えられる。
また、工程Cでは、今までに蓄積されていたフィードバック情報213(FB情報)も利用するものとすると、記憶部204に保存されていたFB情報213が条件決定部203に与えられる。
条件決定部203は、与えられたFF情報212とFB情報213とを用いて、所定の演算を行って、補正情報214を生成する。
【0048】
生成された補正情報214は、工程実行制御部102に与えられ、工程Cの中の特定の工程(たとえば、露光工程)を実施するための条件データとして用いられる。たとえば、補正情報214は、工程Cの中の露光工程を実施するための露光条件(露光する位置を決めるためのデータ)を決定する情報として用いられる。
【0049】
このように、1つの素子を形成するためのある工程Bで得られた測定情報を用いて、その素子を形成するための工程Bよりも後の工程Cで用いるフィードフォワード情報および補正情報を生成しているので、基準層に形成された基準パターン2−1を利用した重ね合わせだけでなく、工程Bで形成された回路パターン第1層と工程Cで形成されるべき回路パターン第2層との相対位置関係を考慮した重ね合わせが可能となり、素子の重ね合わせ精度をより向上させることができ、素子の不良品の発生を低減させ、歩留を向上させることができる。
【0050】
なお、フィードバック情報213を用いない場合は、条件決定部203は、フィードフォワード情報212のみを用いて補正情報214を生成する。
また、図3では、工程Bで得られたフィードフォワード情報212をその次の工程Cで利用するものを示しているが、これに限られるものではない。
たとえば、工程Bで得られたフィードフォワード情報212を、工程Cよりも後の工程(たとえば工程N)で利用するようにしてもよい。また1つの後工程だけでなく、工程Bよりも後の複数の工程で、フィードフォワード情報212を利用するようにしてもよい。
【0051】
図4に、回路パターン形成プロセスの中で行われるフィードフォワード処理とフィードバック処理の一実施例のフローチャートを示す。ここでは、フィードフォワード情報を生成する層を第i層とし、そのフィードフォワード情報を利用する層を第j層とする。
また、第j層のフィードバック情報が、予め記憶部204に保存されているものとする。
【0052】
図4のステップS1において、工程実行制御部102が、第i層形成工程を実施する。たとえば、この工程が、図1の工程Bであったとすると、イオン注入領域14を形成するために、レジスト塗布処理,露光処理および現像処理が実行される。
【0053】
ステップS2において、測定部101によって、第i層の精度情報の測定処理が行われる。たとえば、図1の工程Bの場合、レジスト線幅W1の測定と、重ね合わせ位置の測定とが行われる。
重ね合わせ位置としては、X方向アテイメントずれ量X1と、Y方向アライメントずれ量Y1が測定される。レジスト線幅W1は、たとえば走査型電子顕微鏡を用いて測定される。また、アライメントずれ量(X1,Y1)は、重ね合わせ測定機を用いて、CCDによる画像認識より、重ね合わせ測定パターンの相対的距離を比較をすることにより測定される。
【0054】
ステップS3において、これらの測定した精度情報(測定情報)は、測定情報取得部201に送られ、記憶部204に記憶される。
ステップS4において、補正部202が、フィードフォワード情報212を生成し、記憶部204に記憶する。
【0055】
フィードフォワード情報(FF情報)212は、たとえば、測定されたレジスト線幅W1と、X方向アライメントずれ量X1とを用いて、以下の何れかの式により算出される。
・FF情報=[(X1−X0)−(W1−W0)/2]×K
・FF情報=[(X1−X0)+(W1−W0)/2]×K
ここで、X0は、X方向アライメントずれターゲット値であり、製造条件として製品毎に予め定められている。
W0は、線幅ターゲット値であり、X0と同様に製造条件として予め定められている。
尚、先に述べたように、上記2種類の数式は、X1の測定値の符号が示すずれの方向や、フィードフォワードにより精度よく制御したい相対位置関係が、第1回路パターンから見て左右何れの方向であるかによって使い分けることとする。
【0056】
Kは係数であり、0<K≦1の範囲内の任意の値が予め設定され、たとえば、K=0.8とすることができる。
また、係数Kは、主として、過剰補正による不具合を考慮して過去の製造実績から決定される。
測定値であるレジスト線幅W1と、X方向アライメントずれ量X1とは、1ヶ所の位置のデータだけでなく、第i層の複数の位置で測定を行い、それらの統計値を使用することが好ましい。
【0057】
次に、ステップS5において、フィードフォワード情報を利用する層である第j層のフィードバック情報(FB情報)213を取得する。このFB情報213は、以前に製造された素子の第j層形成時に取得された測定情報から生成された情報であり、記憶部204から読み出されるものである。たとえば、第j層の形成時に行われた重ね合わせ精度の測定によって求められたX方向アライメントずれ量やY方向アライメントずれ量が、取得されるFB情報213に相当する。
【0058】
ステップS6において、条件決定部203が、第j層形成工程の処理条件を決定し、第j層の補正情報を生成する。
ここでは、ステップS4で生成されたFF情報212と、ステップS5で取得されたFB情報213とが用いられる。
たとえば、第j層のFF情報212とFB情報213とを加算した値を、補正情報214とする。あるいは、この他に、補正情報214は、減算をすることにより算出してもよい。
なお、フィードバック情報213を利用しない場合は、ステップS5は不要であり、ステップS6では、FF情報212のみを用いて、補正情報214が生成される。
【0059】
補正情報214は、第j層の形成位置を調整するために利用されるが、たとえば第j層形成工程の中で露光工程を行うときの露光位置を決定する条件として利用される。生成された補正情報214は、記憶部204に記憶されると共に、工程実行制御部102へ送られる。
【0060】
次に、ステップS7において、生成した補正情報を用いて第j層形成工程を実施する。
第j層が第i層のすぐ次の工程であれば、ステップS6の後すぐにステップS7が実行されるが、第i層を形成した後に、第j層以外の層を形成する必要がある場合は、その他の層を形成した後に、ステップS7を実行する。
第j層形成工程では、たとえば、成膜工程,レジスト塗布工程,露光工程および現像工程などの、第j層を形成するために必要な一連の工程を実行する。
【0061】
ここで、上記したように、生成された補正情報214が、露光工程の露光条件に関するものである場合は、工程実行制御部102が、条件決定部203から与えられた補正情報214を用いて露光条件を設定する。具体的には、第j層の回路パターンを形成するための露光位置を設定し、露光設備の位置を調整する。
その後、工程実行制御部102は、設定した露光条件に基づいて、第j層の露光工程112を実施する。
また、露光工程を実施した後、次の測定処理を実行する前に必要な工程(たとえば、現像工程)も実行する。
【0062】
次に、ステップS8において、測定部101が、第j層の精度情報の測定を行う。
ここでの測定処理は、ステップS3で行われたものと同様の処理でもよい。たとえば、レジスト線幅の測定と、X方向およびY方向の重ね合わせ精度の測定とが行われる。この測定結果は、フィードバック情報213を生成するのに用いられる。
ステップS9において、上記測定の結果からフィードバック情報213を生成し、測定情報取得部201へ転送し、第j層のフィードバック情報213として記憶部204に保存する。
【0063】
以上の処理のうち、ステップS4,S6,S7がこの発明のフィードフォワード処理に関係する処理であり、ステップS5,S6,S7,S8,S9がフィードバック処理に関係する処理である。フィードフォワード処理では、同じ素子の製造過程における前工程で測定された情報が利用され、フィードバック処理ではすでに製造された素子の製造過程の同じ工程で測定された情報が利用される。
【0064】
<実施例>
以下に、固体撮像素子(CCD)の製造に、この発明のプロセス制御を利用した一実施例を説明する。
一般に、CCDは、主として10〜40程度の層からなる多層回路パターンから形成されるが、ここでは、この発明の特徴となるフィードフォワード処理とフィードバック処理を含む部分について説明する。
図5に、基準層形成工程(工程A)の一実施例のフローチャートを示す。
図6に、フィードフォワード元となる第iパターン層形成工程(工程B)の一実施例のフローチャートを示す。
図7に、フィードフォワード先となる第jパターン層形成工程(工程C)の一実施例のフローチャートを示す。
【0065】
図5のステップS21からS29において、基板上に基準層を形成し、その形成工程の中で、レジスト線幅と酸化膜パターンの線幅の測定を行う。
基準層を形成するときに、素子の機能を実現する所定の回路パターンとともに、基準パターン12−2や、後工程との重ね合わせ精度測定用のパターン12−1を形成する。基準パターン12−2及び、測定パターン12−1は、たとえば、スクライブラインのような無効領域にウェハ面内情報、及びショット情報が得られる位置に形成される。
測定されたレジスト線幅と酸化膜パターンの線幅は、たとえば、後工程の品質管理などで用いられる。
【0066】
図5のステップS21において、CCDの回路パターンを形成する基板11を準備する。基板としては、直径150mm〜300mm程度の大きさのシリコンウェハなどが用いられる。
基板11は、回路パターン形成装置100の拡散炉等に設置され、ステップS22において、酸素雰囲気中で熱処理をすることにより、基板表面全体に酸化膜を形成する。
ここで、膜厚10〜300nm程度の酸化膜を形成する。
【0067】
ステップS23において、酸化膜が形成された表面全体に、レジストを塗布する。 ステップS24において、レジストの上方から、UV光を照射することにより、基準層の回路パターンとなる部分を露光させる。ここで、回路パターンとなる部分の位置決めは、ウェハの方向を示すオリエンテーションフラット、または、ノッチ部を検出することによって行う。
【0068】
また、ステップS25において、露光された回路パターンのレジストを残すように現像する。現像処理は、たとえば、アルカリ現像液を用いて溶解することによって行えばよい。これにより、露光されていない領域のレジストが除去され、露光されたレジストの部分が残り、基準層の回路パターンがパターニングされる。
【0069】
ステップS26において、回路パターン形状となるべき位置に残ったレジストの線幅を測定する。レジストの線幅の測定は、たとえば、走査型電子顕微鏡を用いて行う。
ステップS27において、基準層の回路パターン形状の凸パターンを形成するために、不要な部分の酸化膜を除去する。たとえば、反応性イオンエッチングを用いて、レジストが除去された領域の酸化膜を、化学反応で除去する。
【0070】
ステップS28において、基準層の回路パターン部分に残ったレジストを除去する。
これにより残った酸化膜のパターンが、基準層の回路パターンとなる。CCDの基準層の回路パターンとしては、素子分離等の回路パターン,後工程の露光処理で用いる基準パターン12−2、後工程の重ね合わせ精度測定処理で用いる測定用パターン12−1などが形成される。
【0071】
ステップS29において、形成された酸化膜パターンの線幅を、走査型電子顕微鏡のような装置を用いて測定する。
また、測定された2つの線幅データは、記憶部204に記憶される。
【0072】
次に、図6に示した第iパターン層の形成工程(工程B)を実施する。
ここで、第iパターン層として、イオン注入領域を基板表面近傍の基板内部に生成するものとする。また、後工程で形成する第jパターン層のフィードフォワード情報を生成する。
【0073】
まず、ステップS41において、基準層の回路パターンが形成された基板の表面の全体に、レジストを塗布する。
次に、ステップS42において、予め決められた位置のイオン注入領域の上に塗布されたレジストに、UV光が照射されるように、露光処理を行う。
この露光処理のとき、イオン注入領域の位置の決定は、たとえば基準パターン12−2の凸形状の画像信号を用いることより行う。
【0074】
ステップS43において、現像処理を行い、露光された領域のレジストを除去する。これにより、イオン注入領域に相当する領域のレジストが除去され、その他の領域のレジストは除去されない。すなわち、イオンを注入すべき基板表面の領域が、開口部として露出させられる。
【0075】
ステップS44において、残ったレジストの線幅W1を測定する。このレジスト線幅の測定は、上記したステップS26と同様の方法で行われる。
ここで測定するレジストの線幅は、イオン注入領域を代表するような関係にある部分のパターンに関係する線幅である。このレジスト線幅は、フィードフォワード情報の生成のために用いられる。測定されたレジスト線幅W1は、測定情報211の一つとして記憶部204に記憶される。
【0076】
ステップS45において、重ね合わせ精度の測定を行う。
ここで、重ね合わせ精度の測定は、重ね合わせ測定機を用いて、CCDによる画像認識より、重ね合わせ測定パターンの相対的距離を比較をすることにより測定される。
また、重ね合わせ精度の情報として測定するデータは、種々のものが考えられるが、上記したようなX方向アライメントずれ量(X1)やY方向アライメントずれ量(Y1)は、重ね合わせ精度測定用パターンを用いることにより測定される。
また、その他に、伸縮率,回転成分等を、重ね合わせ精度情報として用いることもできる。測定された重ね合わせ精度情報は、測定情報211の一つとして、記憶部204に記憶される。
【0077】
ステップS46において、開口された領域に、たとえば砒素イオンを注入する。
これにより、開口領域の基板表面近傍の基板内部に、イオン注入領域が形成される。たとえば、基板表面から、10nm〜2μm程度の深さの領域に、N型領域が形成される。
ステップS47において、残っていたレジストを除去する。これにより、第i層の回路パターンとなるイオン注入領域の形成が完了する。
【0078】
次に、ステップS48において、補正部202が、フィードフォワード情報(FF情報)212を生成する。
FF情報212は、フィードフォワード先となる第jパターン層の露光工程で使用するものとする。同一CCD素子の第i層を形成した後に実行する第jパターン層形成工程の中の露光工程で用いる露光条件を決める情報の1つとして、FF情報212を用いる。
【0079】
ここで、ステップS44で測定したレジスト線幅W1の測定情報と、ステップS45で測定した重ね合わせ精度情報のうち、X方向アライメントずれ量X1とを利用するものとする。たとえば、次のような測定値が得られたとする。
レジスト線幅W1の測定値の平均値=0.520μm
X方向アライメントずれ量X1の測定値の平均値=0.010μm
また、CCDの設計時に設定されたターゲット値が、次のように設定されていたとする。
レジスト線幅のターゲット値W0=0.500μm
X方向アライメントずれ量のターゲット値X0=0.000μm
【0080】
このような情報を用いて、フィードフォワード情報(FF情報)は、以下の何れかの式で算出される。
・FF情報=[(X1−X0)−(W1−W0)/2]×K
・FF情報=[(X1−X0)+(W1−W0)/2]×K
ここで、たとえば、係数Kを0.8とする。この係数Kの値は、たとえば過去の製造実績を基に不具合を確認することにより、予め設定しておく。
また、係数Kは、一義的に1つの数値に固定設定するのではなく、製品や、工程により、設定変更する。
上記測定値の場合、上段の数式で求められるFF情報212は、0.016μmとなる。生成されたFF情報212は、記憶部204に記憶する。
【0081】
ステップS49において、条件決定部203が、第jパターン層のフィードバック情報(FB情報)を取得する。このフィードバック情報(FB情報)213は、記憶部204から読み出す。
ここで、フィードバック情報213としては、すでに製造されたCCDの第jパターン層形成工程で測定された重ね合わせ精度情報(たとえば、X方向アライメントずれ量)や、そのすでに製造されたCCDを製造したときに、露光条件として設定された設備制御情報などである。設備制御情報としては、X方向の露光位置の調整量や伸縮率調整量,回転成分の調整量などがある。
【0082】
ステップS50において、第jパターン層の補正情報214を生成する。補正情報214は、ステップS48で生成したFF情報212と、ステップS49で取得したFB情報213とから生成する。
たとえば、上記した式によって求めたFF情報212と、FB情報213に含まれるX方向アライメントずれ量とを用いる場合は、これらの情報を加算した値を、補正情報214とする。
あるいは、回転成分の場合は、FB情報に含まれる回転成分の調整量と、FF情報の回転成分補正量を加減算することにより、補正情報214を算出する。
【0083】
生成された補正情報214は、記憶部204に記憶されると共に、工程実行制御部102へ与えられる。
工程実行制御部102では、その後に行う第jパターン層形成工程の中の露光工程で使用するものと認識し、一時保存しておく。
以上により、第iパターン層の回路パターンが形成され、第jパターン層で用いる補正情報214が生成される。
【0084】
次に、図7に示した第jパターン層の形成工程(工程C)を実施する。
この工程では、生成された補正情報214を用いて露光工程が実施され、第jパターン層の回路パターンが形成される。
また、現在製造しているCCDとは別のCCDをその後に製造するときのために、第j層のフィードバック情報となるべき情報の測定処理も行う。
【0085】
図7のステップS61において、第j層となるべき膜の成膜処理を行う。たとえば、減圧CVDを用いて、工程Bを実施した後の表面全体に、ポリシリコンからなる膜を、100〜300nm程度形成する。
ステップS62において、上記膜が形成された表面全体に、レジストを塗布する。
【0086】
ステップS63において、工程実行制御部102は、露光工程実施部112により露光処理を行うための準備をする。ここで、条件決定部203から与えられた補正情報214を読み出し、露光条件を設定して、露光設備の位置を調整する。
具体的には、補正情報214から、X方向の露光位置の調整量,回転成分の調整量などの条件を決定し、露光設備への条件の指示を行う。
次に、ステップS64において、第jパターン層の回路パターンとなるべき位置のレジストが露光するようにして、表面全体にUV光を照射させる。
【0087】
ステップS65において、現像処理を行い、露光されなかった部分のレジストを除去する。これにより、第jパターン層の回路パターンとなる部分の膜とその上のレジストが残る。
ステップS66において、残ったレジストの線幅の測定を行う。レジスト線幅の測定は、ステップS26やS44で実施したのと同様の方法で行えばよい。
【0088】
ステップS67において、重ね合わせ精度の測定を行う。ここで、工程Aで形成された重ね合わせ精度測定パターン12−1と、ステップS65で形成された第j層の重ね合わせ精度測定パターン15−1部のレジストパターンとの距離L5,L6が測定される。その測定結果を用いて、たとえば、X方向アライメントずれ量X1や、Y方向アライメントずれ量Y1などを算出する。
ステップS66とS67によって測定されたこれらの測定情報211は、測定情報取得部201へ与えられ、フィードバック情報が生成され、記憶部204に、第jパターン層のフィードバック情報213として記憶される。
【0089】
次に、ステップS68において、第jパターン層の回路パターンを形成するために、ポリシリコン膜のエッチング処理を実行する。たとえば、反応性イオンエッチングを用いて、化学反応させることにより、レジストが除去された領域のポリシリコン膜をエッチングする。これにより、第jパターン層の回路パターンの形成が完了する。
【0090】
上記第jパターン層の露光工程において、前工程である工程Bで生成した補正情報214を用いて、露光条件を設定しているので、第iパターン層と第jパターン層で形成される回路パターンどうしの位置関係が考慮された重ね合わせ位置の調整が行われる。
したがって、従来の基準パターンのみを用いて重ね合わせ位置の調整を行っていたときと比較して、基準層とは異なる2つのパターン層どうしの相対位置関係を考慮した重ね合わせを行うので、この2つのパターン層の重ね合わせ精度をより高め、CCD素子としての不良品の発生率を低くし、製品の歩留を向上させることができる。
【0091】
たとえば、CCD素子において、図6および図7に示したフィードフォワード処理とフィードバック処理を組み合わせたプロセスを、CCDの回路パターンに適用した場合、注入層とゲートポリシリコン層の回路パターン相互間の位置ずれに起因すると考えられる不良品の発生率を、約1/4程度にまで、低減することができた。
【図面の簡単な説明】
【0092】
【図1】この発明の回路パターンの形成方法の一実施例の説明図である。
【図2】この発明のプロセス制御システムの一実施例の構成ブロック図である。
【図3】この発明の回路パターン形成プロセスの一実施例の説明図である。
【図4】この発明のフィードフォワード処理およびフィードバック処理の一実施例のフローチャートである。
【図5】この発明の基準層形成工程(工程A)の一実施例のフローチャートである。
【図6】この発明の第iパターン層形成工程(工程B)の一実施例のフローチャートである。
【図7】この発明の第jパターン層形成工程(工程C)の一実施例のフローチャートである。
【符号の説明】
【0093】
11 基板
12 基準層回路パターン
12−1 基準層重ね合わせ精度測定パターン
12−2 基準パターン
14 イオン注入領域
15 第1パターン層回路パターン
100 回路パターン形成装置
101 測定部
102 工程実行制御部
111 レジスト塗布工程実施部
112 露光工程実施部
113 現像工程実施部
114 レジスト線幅測定実施部
115 エッチング工程実施部
116 イオン注入工程実施部
117 酸化膜パターン線幅測定実施部
118 重ね合わせ精度測定実施部
119 レジスト除去工程実施部
200 工程制御装置
201 測定情報取得部
202 補正部(FF情報生成)
203 条件決定部(補正情報生成)
204 記憶部
211 測定情報
212 フィードフォワード情報
213 フィードバック情報
214 補正情報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数層の回路パターンが重ね合わせて形成される素子の形成工程を制御するプロセス制御システムであって、
各回路パターン層を形成するための一連の形成工程を実施する工程実行制御部と、前記一連の形成工程を実施することによって形成された回路パターンの重ね合わせ精度を示す情報を測定する測定部とを備え、
前記工程実行制御部は、第1の回路パターン層を形成するときに測定された測定情報から生成された重ね合わせ位置を調整するためのフィードフォワード情報を、前記第1の回路パターン層よりも後に形成される第2の回路パターン層の特定の形成工程に適用し、第1の回路パターン層の回路パターンとの相対位置関係を調整して、前記第2の回路パターン層の特定の形成工程を実施することを特徴とするプロセス制御システム。
【請求項2】
すでに製造された素子の前記第2の回路パターン層を形成するときに、前記測定部によって測定された測定情報から生成されたフィードバック情報を記憶した記憶部をさらに備え、
前記フィードフォワード情報と、前記記憶部に記憶されていたフィードバック情報とを用いて、前記第1の回路パターン層よりも後に形成される第2の回路パターン層の特定の形成工程に適用される補正情報を生成し、その補正情報を用いて前記第2の回路パターン層の形成位置を調整することを特徴とする請求項1のプロセス制御システム。
【請求項3】
前記フィードフォワード情報を生成する補正部をさらに備え、
前記測定部は、前記第1の回路パターン層に形成されるべき回路パターンを反映するレジスト線幅と、所定の形成工程を実行することにより形成された第1の回路パターン層の回路パターンの形成位置のずれ量とを測定し、
前記補正部は、前記レジスト線幅と前記ずれ量とを用いて、前記第2の回路パターン層の回路パターンの第1の回路パターン層に対する位置を調整するためのフィードフォワード情報を生成することを特徴とする請求項2のプロセス制御システム。
【請求項4】
前記補正情報を生成する条件決定部をさらに備え、
前記条件決定部は、前記補正部によって前記第1の回路パターン層の測定情報から生成された第2の回路パターン層に適用されるフィードフォワード情報と、前記記憶部に記憶されていた第2の回路パターン層に関するフィードバック情報とを用いて、現在形成している素子の前記第1の回路パターン層の回路パターンとの相対位置関係と、すでに製造された素子の第2の回路パターン層の回路パターンの形成位置とに基づき、現在形成している素子の前記第2の回路パターン層の特定の形成工程に適用する補正情報を生成し、
前記工程実行制御部は、生成された補正情報を用いて、前記第2の回路パターン層の特定の形成工程を実施することを特徴とする請求項3のプロセス制御システム。
【請求項5】
前記第1の回路パターン層よりも後に形成される前記第2の回路パターン層の特定の形成工程は、形成すべき回路パターンの形状をパターニングするための露光工程であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のプロセス制御システム。
【請求項6】
前記第1の回路パターン層よりも後に形成される前記第2の回路パターン層の回路パターンを形成するときに適用される前記フィードフォワード情報は、以下の何れかの式
・FF=[(X1−X0)−(W1−W0)/2]×K、
・FF=[(X1−X0)+(W1−W0)/2]×K、
FFはフィードフォワード情報、
W1は第1の回路パターン層のレジスト線幅の測定値、
W0は第1の回路パターン層のレジスト線幅のターゲット値、
X1は第1の回路パターン層の回路パターンのX方向のずれ量の測定値、
X0は第1の回路パターン層の回路パターンのX方向のずれ量のターゲット値、
Kは、予め設定された係数(0<K≦1)、
により算出されることを特徴とする請求項3のプロセス制御システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−118404(P2010−118404A)
【公開日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−288986(P2008−288986)
【出願日】平成20年11月11日(2008.11.11)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】