説明

プロテアーゼアッセイ

本発明は、生体内又は生体外でプロテアーゼの活性を評価するための診断薬又はアッセイ並びに癌性又は前癌性細胞の存在を検出する方法を提供する。
本発明のアッセイは、標的プロテアーゼに特異的な共通配列を含むオリゴペプチドリンケージを介して連結された二個の粒子からなる。標的プロテアーゼによる配列の開裂を、視覚的に又は種々のセンサーを用いて検出することができ、診断結果を癌の予後と相関させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連特許出願の相互参照)
本出願は、「蛍光プロテアーゼアッセイ」の名称で2008年3月3日に出願した米国仮出願第61/067,891号に基づく優先権を主張し、その全体をここに参照して援用する。
【0002】
(配列表)
本出願は、2009年2月25日に作製し、名称「40132−PCT」、9KBで、ASCII形式でのテキストファイルとして提出されたコンピュータ読み取り可能な様式(CRF)での配列表を備える。上記CRTの内容をここに参照して援用する。
【0003】
本発明は、一般に、癌に関連したプロテアーゼ活性を検出するための診断アッセイ、診断結果の癌の予後との相関、並びに癌性又は前癌性細胞の存在の検出方法に関する。
【背景技術】
【0004】
癌の予後は、その疾病の期に基づく。四つの主要な期として、初期の突然変異、細胞生存及び腫瘍進行、血管形成、最後に侵潤又は転移がある。最大の難題の一つは、癌が身体自身の細胞の疾病であることにある。このため、しばしば疾病が完全に進行するまで癌を診断することが極めて困難である。これはまた、治療効率に影響を及ぼす。その理由は、癌細胞が健常細胞と同じ酵素、複製機構、構造的特徴などを有し、健常細胞から癌細胞を線引きする治療を開発するのは困難だからである。このため、病期分類及び治療が、通常癌の源を特異的に標的化するよりも症状(すなわち、腫瘍のサイズ、リンパ節が癌を含むか否か、癌が最初の位置から身体の他の部位へ広がるか否か)に基づいている。
【0005】
より最近、多数のプロテアーゼが癌における疾病の進行に関連づけられてきた。プロテアーゼは、他のタンパク質におけるペプチド結合の開裂を触媒する酵素の一分類である。これらは非常に特異的(一つのタンパク質における一つのペプチド結合だけしか分解できない)又は非常に広範(例えばリシンのように常にペプチド結合を開裂できる)とすることができる。数種のプロテアーゼが種々の癌細胞系統によって過剰発現されることが既知である。癌の発生及び進行に必要であることが既知のプロテアーゼとしては、マトリックスメタロプロテイナーゼ(MMPs)、組織セリンプロテアーゼ及びカテプシンが挙げられる。これらプロテアーゼの多くは、癌細胞内で発現上昇する(すなわち、健常組織よりも腫瘍においてずっと高い活性を有する)か、誤発現する(すなわち、見出されるべきでないコンパートメント内で見出される)かのいずれか、又は胚発生に含まれるが、成体細胞においてかなりの程度で見出されるべきでない。
【0006】
MMPsは、古典的な癌関連プロテアーゼである。MMPsは、亜鉛と、共同因子として要求されるカルシウムイオンとに由来した一群の亜鉛プロテアーゼの系統である。21種類の異なる既知のMMPsがあり、その基質に基づいた群、すなわちコラゲナーゼ、ゼラチナーゼ、ストロメライシン、マトリライシン、金属エラスタナーゼ、エナメリシン及び膜型MMPsに分類される。かかる群の名前から分かるように、MMPsは、細胞外マトリックス(ECM)及び組織の基底膜(BM)を構成するタンパク質を分解する。通常、MMPsは癌性細胞自身によってではなく、腫瘍を囲む間質細胞によって産生される。これは、癌性細胞が周囲の間質細胞にMMPsの産生を高度に発現上昇させる様々な細胞信号を発するからである。MMPsはいくつかの理由で癌の生存及び進行に不可欠である。最初に、これらは間質及び上皮細胞から細胞表面結合増殖因子を開裂し、放出して癌細胞と相互作用して成長を刺激する。これらはまた、ECMを新しい血管発生に開くこと、並びに血管新生促進因子を放出し、血管新生促進プロテアーゼカスケードを開始することにより血管新生に役割を果たす。MMPsは、ECM及びBMを分解し、細胞が組織壁を通過できるようにすることにより腫瘍転移に主要な役割を果たす。これらはまた、ECM及びBM断片を放出し、細胞移動を刺激する。
【0007】
数種類のセリンプロテアーゼ、特にウロキナーゼプラスミノゲン活性化因子(uPA)及びプラスミンは癌においても十分に裏づけられた役割を有する。プラスミノゲン活性化システムのウロキナーゼ及び数種類の他の成分の上昇した発現レベルが腫瘍の悪性度と相関することが見出された。uPAは、その受容体uPARと結合する極めて特異なプロテアーゼであり、不活性なプラスミノゲン(チモーゲン)を活性なプラスミンに開裂する。これは、血管新生を生起する周知のカスケードにおける第一段階である。プラスミノゲン活性化に続く組織の分解は、組織侵潤を促進し、転移に寄与すると考えられている。
【0008】
カテプシンは、数個の例外はあるが、システインプロテアーゼである。カテプシンは通常低pH値で作動するが、いくつかは中性pHでも活性であることがしばしばリソソーム/エンドソーム経路において見出された。三種類のカテプシンB、D及びLは、中性pHで活性であり、しばしば癌において誤発現し、細胞の外側で活性化を起こす。この細胞外活性化はECM分解を生じうる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
プラスミノゲン/プラスミン成分の予後効果を評価するための多数の研究が、大部分外科的に取り出した腫瘍からの組織摘出物における抗原レベル定量化に基づいて行われた。その後、これらの値が幾つかのタイプの癌における予後と相関づけられた。しかし、癌性細胞を健常細胞から識別する方法を決定するには癌治療において大きな研究領域が残っており、生体内外で適応し得る癌進行及びその疾病の病期を定量的に検出する方法に対する要望が当業界でいまだにある。また、種々の癌病期の多重マーカーを別個の試験を要することなく一度に検出するための要望がある。また、癌の生体内特徴づけの要望があり、それにより治療を最も悪性の癌組織に向けることができる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、第一粒子、第二粒子及び第一と第二粒子間のリンケージを備え、該リンケージがプロテアーゼ共通配列からなることを特徴とするプロテアーゼ活性を検出するためのナノプラットフォーム組立体を提供する。
【0011】
本発明はまた、プロテアーゼの活性を評価するための診断アッセイ(試薬)と、薬学的に許容し得る担体とを備える組成物を提供する。当該診断アッセイは、第一粒子、第二粒子及び第一と第二粒子間のリンケージを備え、該リンケージがプロテアーゼに特異的な共通配列からなるナノプラットフォーム組立体を含む。
【0012】
加えて、本発明は、哺乳類における癌性又は前癌性細胞に関連したプロテアーゼの活性の検出方法を提供する。当該方法は、哺乳類からの体液試料を診断アッセイ(試薬)と接触させることを備える。該診断アッセイ(試薬)はナノプラットフォーム組立体を含み、かかるナノプラットフォーム組立体が第一粒子、第二粒子及び第一と第二粒子間のリンケージを備え、ここでリンケージがプロテアーゼに特異な共通配列からなる。上記アッセイ(試薬)をエネルギー源に曝露して該アッセイ(試薬)を励起する。次いで、アッセイ(試薬)の吸収又は発光スペクトルにおける変化を検出する。かかる変化はプロテアーゼ活性に対応する。
【0013】
本発明は、哺乳類における癌性又は前癌性細胞に関連したプロテアーゼの活性を検出する更なる方法を提供する。本発明の方法は、プロテアーゼの活性を評価するための本発明の診断アッセイと、薬学的に許容し得る担体とを含む組成物を哺乳類へ投与することを備える。その後、組成物中のアッセイを活性化する。癌性又は前癌性細胞を有することが疑われる哺乳類の領域を、上記アッセイを励起するエネルギー源に曝露し、該アッセイの吸収又は発光スペクトルにおける変化を検出する。これらの変化はプロテアーゼ活性に対応し、その後これを癌進行の予後と相関付けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】癌進行の四つの主要な期と、これらの期に関連したプロテアーゼを図示する。
【図2】例3におけるオリゴペプチドのウロキナーゼによる開裂前、中、後での金ナノ粒子の結合対のプラズモン吸収におけるスペクトルシフトを示す。
【図3】例4におけるナノプラットフォーム組立体の発光スペクトルを示す。
【図4】例5からのナノプラットフォーム組立体及びFRET系センサーの発光スペクトルを示す。
【図5】例5におけるλ1=607nm、λ2=654nm及びλ3=718nmで示した蛍光バンドの積分値の放出されたTCPPのモル百分率に対してプロットした比率を示す。
【図6】例5において光スイッチ系センサーを用いてMATBIII型癌細胞を含浸したラットの尿中のアッセイからのデータを示す。
【図7】図6からのデータを用いてλ=656nmで生ずるTCPPのルミネッセンスの相対強度のプロットを示す。
【図8】例5において尿採取の15日前にMATBIII型癌細胞を含浸したラットの尿を計測した際のλ=656nmで生ずるTCPPのルミネッセンスの相対強度のプロットを示す。
【図9】例5において尿採取の5日前にMATBIII型癌細胞を含浸したラットの尿を計測した際のλ=656nmで生ずるTCPPのルミネッセンスの相対強度のプロットを示す。
【図10】例6からのルミネッセンスによって示されるような合成中のCdSe量子ドットの成長を示す。挿入図はウルツ鉱型構造を有する高結晶質CdSe量子ドットの代表的像を示す。
【図11】例7のマウスの左右肢からの蛍光顕微鏡により記録した単一光子数スペクトルを示す。
【図12】例8の検量線結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
特定のプロテアーゼの存在が、成長し、やがて転移する多数の癌の能力に対するマーカーとして役立ち得ることを見出した。本発明は、プロテアーゼ活性を検出し、対応する疾病進行を診断する診断アッセイ並びに方法を提供する。本発明のアッセイを用いて、DNA系、RNA系、炭水化物系又はタンパク質系リンカーを開裂するあらゆるプロテアーゼ又は酵素を検出することができる。
【0016】
本発明の診断アッセイは、ナノプラットフォーム組立体を含む。該ナノプラットフォーム組立体は、二個の粒子間のリンカーとして用いるプロテアーゼ共通配列(プロテアーゼによって開裂されるアミノ酸の配列)からなる。より好適には、上記リンカーは共通配列を含むオリゴペプチドからなる。
【0017】
オリゴペプチドリンケージ及び共通配列
適切なオリゴペプチドは、末端カルボン酸基(C末端)及び末端アミノ基(N末端)を含む。オリゴペプチドはまた、C末端にチオール基を含むのが好ましいが、これをナノプラットフォーム組立体に用いる粒子に応じて修飾してもよい。より好適には、オリゴペプチドリンカーが、プロテアーゼ共通配列に対し少なくとも10個のアミノ酸N末端の親水性領域と、開裂配列に対しC末端の連結領域とを含み、ここで該C末端の連結領域がその末端にチオール反応性基を含む。更により好適には、オリゴペプチドのC末端はシステイン残基、リシン又はアスパラギン酸塩を含む。オリゴペプチドのN末端親水性領域は、過剰正電荷又は負電荷を約1:1の割合で有するのが好ましい。N末端親水性領域はまた、互いに水素結合を形成し得るアミノ酸残基を備えるのが好ましい。
【0018】
特に好適なC末端の連結領域は、GGGC(配列番号:14)、AAAC(配列番号:15)、SSSC(配列番号:16)、TTTC(配列番号:17)、GGC(配列番号:38)、GGK(配列番号:39)、GC(配列番号:40)及びGGD(配列番号:42)からなる群から選択した配列からなる。特に好適なオリゴペプチドのN末端領域は、SRSRSRSRSR(配列番号:1)、KSRSRSRSRSR(配列番号:19)、KKSRSRSRSRSR(配列番号:20)、CGGG(配列番号:23)、KGGG(配列番号:24)及びKGG(配列番号:37)からなる群から選択した配列からなる。N末端は、リシン、オルチニン、2、4ジアミノ酪酸及び23ジアミノプロピオン酸からなる群から選択した少なくとも一つの末端基を更に含むのが好ましい。もうひとつの好適なオリゴペプチドは下記の一般構造を有する。
【化1】


式中の「配列」はここに記載したあらゆるオリゴペプチド又は共通配列とすることができる。かかるオリゴペプチドは購入可能であるか、又は既知の方法(例えば、修飾メリフィールド合成法)を用いて合成可能である。
【0019】
本発明の診断アッセイに用いる共通配列は、セリンプロテアーゼ開裂配列、アスパルチルプロテアーゼ開裂配列、システインプロテアーゼ開裂配列及び金属プロテアーゼ開裂配列からなる群から選択されるのが好ましい。更により好適には、上記共通配列は、ウロキナーゼ、マトリックス金属ペプチダーゼ、カテプシン及びゼラチナーゼからなる群から選択したプロテアーゼ用の開裂配列からなるのが好ましい。特に好適なプロテアーゼ及びその対応する共通配列を下記の表1に記載する。
【0020】
【表1】

【0021】
図1を参照するに、上記プロテアーゼが癌進行における多くの特異的な事象に関連する。疾病進行の病期を、四つの事象、すなわち初期突然変異、細胞生存/腫瘍進行、血管新生(新しい血管の発生)及び侵潤/組織再構築に分ける。各期に関連したプロテアーゼの配列は、癌がどこまで進行し、予後がどうなるかをよく俯瞰できる図を与えうる。好適な診断薬又はアッセイは、uPA、MMP−1、MMP−2及びMMP−7からなる群から選択したプロテアーゼ用のプロテアーゼ共通配列を備える。uPA、MMP−1、MMP−2及びMMP−7をそれぞれ検出するのに最も好適なオリゴペプチド配列を、「−」で示した開裂点を用いて下記の表に記載する。
【0022】
【表2】

【0023】
再び図1を参照するに、正確な癌の予後を本発明のアッセイを用いて決定できる。特に、本発明のアッセイによってMMP−1及びMMP−7が検出され、他の二つのプロテアーゼが検出されない場合、癌の予後は細胞生存/腫瘍進行である。上記アッセイによってuPA及びMMP−7(MMP−1又はMMP−2ではなく)が検出される場合、予後は血管新生である。四つのプロテアーゼ全てが検出される場合、予後は浸潤及び最終的な転移である。それゆえ、これら四つのプロテアーゼの生体内での測定は、癌性組織の進行の空間分解測定を可能にし、体内の最も活発な腫瘍に対する治療を導くことができるより詳細な予後を可能にする。
【0024】
プロテアーゼの存在下でナノプラットフォーム組立体の共通配列を開裂し、この開裂によって生じたスペクトル変化を本発明のアッセイにより検出する。それゆえ、次の配列、KGGVPMS(配列番号:43)、MRGGGC(配列番号:44)、KGGIPVS(配列番号:45)、LRSGGC(配列番号:46)、KGGVPLS(配列番号:47)、LTMGGC(配列番号:48)、KGGGSGR(配列番号:49)、SAGGGC(配列番号:50)、CGGGSGR(配列番号:51)、SAGGC(配列番号:52)、DGGSGR(配列番号:53)、SAGGK(配列番号:54)、SRSRSRSRSRSGR(配列番号:55)、KGGSGR(配列番号:56)、SAGGD(配列番号:57)の二つ以上がナノプラットフォームによって標的にされたプロテアーゼに応じて得られる。
【0025】
アッセイ用の粒子
下記により詳細に論述するように、多数の異なるタイプの粒子を用いて、プロテアーゼ活性を測定するのに用いるセンサーの種類に応じて本発明のアッセイ用のナノプラットフォーム組立体を形成することができる。粒子の最大励起及び発光スペクトルは650〜800nmであるのが好ましい。診断アッセイの使用に好適な粒子は、ナノ粒子(例えば、金属、金属合金又はコア/シェル型)、発色団/発光団、量子ドット、ビオロゲン、並びにその組み合わせからなる群から選択される。
【0026】
1.ナノ粒子
ここで用いる「ナノ粒子」という用語は、金属又は非金属ナノ層シェルによって任意に囲み得る金属ナノ結晶質粒子を言う。適切なナノ粒子は、約1nm〜約100nm、より好適には約10nm〜約50nm、更により好適には約5nm〜約20nmの直径を有するのが好ましい。ナノ粒子は、あらゆる種類の金属(金属元素を含む)又は金属合金を含んでもよい。金属又は金属合金ナノ粒子は、金(Au)、銀(Ag)、銅(Cu)、ニッケル(Ni)、パラジウム(Pd)、白金(Pt)、コバルト(Co)、ロジウム(Rh)、イリジウム(Ir)、鉄(Fe)、ルテニウム(Ru)、オスミウム(Os)、マンガン(Mn)、レニウム(Re)、スカンジウム(Sc)、チタン(Ti)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、亜鉛 (Zn)、イットリウム(Y)、ジルコニウム(Zr)、ニオブ(Nb)、モリブデン(Mo)、テクネチウム(Tc)、カドミウム(Cd)、ランタン(La)、ルテチウム(Lu)、ハフニウム(Hf)、タンタル(Ta)、タングステン(W)、アクチニウム(Ac)、ローレンシウム(Lr)、ラザホージウム(Rf)、ドブニウム(Db)、シーボーギウム(Sg)、ボーリウム(Bh)、ハッシウム(Hs)、マイトネリウム(Mt)、ダームスタチウム(Ds)、レントゲニウム(Rg)、ウンウンビウム(Uub)、セレン(Se)からなる群から選択した金属、並びにその酸化物(例えば、FeO、Fe34、Fe23、Fexy(非化学量論的鉄酸化物)、CuO、NiO、Ag2O、Mn23)、水酸化物、硫化物、セレン化物及びテルル化物、並びにこれらの組み合わせからなるのが好ましい。
【0027】
コア/シェル型ナノ粒子は、金属又は金属合金コアと、金属シェルとを備えるのが好ましい。好適なコアは、Au、Ag、Cu、Co、Fe及びPtからなる群から選択される。好適なシェルは、Au、Ag、Cu、Co、Fe、Pt、その金属酸化物、並びにこれらの組み合わせからなる群から選択される。特に好適な金属コア/シェル型の組み合わせは、Fe/Au、Fe/Fe34及びAu/Fe23からなる群から選択される。該ナノ粒子のコアは、約1nm〜約25nm、より好適には約3nm〜約5nmの直径を有するのが好ましい。コア/シェル型ナノ粒子の金属シェルは、約0.5nm〜約10nm、より好適には約0.5〜約2nmの厚さを有するのが好ましい。
【0028】
ナノ粒子を安定化又は非安定化とすることができる。安定化ナノ粒子は、ナノ粒子コアを囲む有機単分子層からなるのが好ましいここで用いる「安定化」という用語は、ナノ粒子を被覆し、保護し(例えば、生体腐食から)又は特性(例えば、水溶性)を付与するためのリガンドシェル又は単分子層の使用を意味する。単分子層はいくつかの同一リガンド(すなわち、ホモリガンド)又は混合リガンドから構成することができる。リガンドを多様なナノ粒子の表面に結合する種々の技術が当業界で既知である。例えば、ナノ粒子をリガンドを含む溶液中で混合してナノ粒子の被覆を促進することができる。或いはまた、被覆物がナノ粒子に付着又は結合するようにナノ粒子を被覆材料の気相に曝露することによって被覆物をナノ粒子に塗布してもよい。リガンドをナノ粒子に共有結合により結合するのが好ましい。単分子層を形成するのに必要なリガンドの数は、ナノ粒子の寸法に左右される。
【0029】
リガンドは、ナノ粒子の金属表面に結合する官能基を含む。好適には、上記リガンドは、チオール、アルコール、ニトロ化合物、ホスフィン、ホスフィン酸化物、レソルシナレン、セレン化物、ホスフィン酸、ホスホン酸、スルホン酸、スルホン酸塩、カルボン酸、二硫化物、過酸化物、アミン、ニトリル、イソニトリル、チオニトリル、オキシニトリル、オキシシラン、アルカン、アルケン、アルキン、芳香族化合物及びセレノ部分からなる群から選択した少なくとも一つの基を含む。好適な有機単分子層は、アルカンチオレート単分子層、アミノアルキルチオレート単分子層、アルキルチオールサルフェート単分子層及び有機フェノール(例えば、ドーパミン及びその誘導体)からなる群から選択される。有機単分子層の厚さは、好ましくは約10nm未満、より好ましくは約5nm未満である。特に好適な安定化ナノ粒子は、トリオクチルホスフィン酸化物安定化ナノ粒子、アミン安定化ナノ粒子、カルボン酸安定化ナノ粒子、ホスフィン安定化ナノ粒子、チオール安定化ナノ粒子、アミノアルキルチオール安定化ナノ粒子及び有機フェノール安定化ナノ粒子からなる群から選択される。
【0030】
2.発色団/発光団
本発明のアッセイに使用するに適する発色団/発光団粒子としては、あらゆる有機又は無機の色素、フルオロフォア、燐光団、光吸収ナノ粒子(例えば、Au、Ag、Pt、Pd)、それらの組み合わせ、もしくはそれらの金属化錯体が挙げられる。好適には、発色団/発光団粒子は約100nm未満のサイズを有する。
【0031】
適当な有機色素は、クマリン、ピレン、シアニン、ベンゼン、N−メチルカルバゾール、エリスロシンB、N−アセチル−L−トリプトファンアミド、2、5-ジフェニルオキサゾール、ルブレン及びN−(3−スルホプロピル)アクリジニウムからなる群から選択される。好適なクマリンの具体例としては、7−アミノクマリン、7−ジアルキルアミノクマリン及びクマリン153が挙げられる。好適なベンゼンの例としては、1、4−ビス(5−フェニルオキサゾール−2−イル)ベンゼン及び1、4-ジフェニルベンゼンが挙げられる。好適なシアニンの例としては、オキサシアニン、チアシアニン、インドシアニン、メロシアニン及びカルボシアニンが挙げられる。他のシアニンの例としては、ECL Plus、ECF、C3−オキサシアニン、C3−チアシアニン色素(EtOH)、C3−チアシアニン色素(PrOH)、C5−インドシアニン、C5−オキサシアニン、C5−チアシアニン、C7−インドシアニン、C7−オキサシアニン、CypHer5、Dye−33、Cy7、Cy5、Cy5.5、Cy3Cy5 ET、Cy3B、Cy3、Cy3.5、Cy2、CBQCA、NIR1、NIR2、NIR3、NIR4、NIR820、SNIR1、SNIR2、SNIR4、メロシアニン540、ピナシアノールヨウ化物、1、1−ジエチル−4、4−カルボシアニンヨウ化物、Stains All、Dye−1041又はDye−304が挙げられる。
【0032】
適当な無機色素は、金属化及び非金属化ポルフィリン、フタロシアニン、クロリン(例えば、クロロフィルA及びB)、並びに金属化発色団からなる群から選択される。好適なポルフィリンは、テトラカルボキシ−フェニル−ポルフィリン(TCPP)及びZn−TCPPからなる群から選択される。好適な金属化発色団は、ルテニウムポリピリジル錯体、オスミウムポリピリジル錯体、ロジウムポリピリジル錯体、イリジウム(III)の3−(1−メチルベンゾイミダゾール−2−イル)−7−(ジエチルアミノ)−クマリン錯体及び、イリジウム(III)との3−(ベンゾチアゾール−2−イル)−7−(ジエチルアミノ)−クマリン錯体からなる群から選択される。
【0033】
適当なフルオロフォア及び燐光団は、燐光性色素、フルオレセイン、ローダミン(例えば、ローダミンB、ローダミン6G)及びアントラセン(例えば、9−シアノアントラセン、9、10−ジフェニルアントラセン、1−クロロ−9、10−ビス(フェニルエチニル)アントラセン)からなる群から選択される。
【0034】
3.量子ドット
量子ドットは、周期律表のII−VI族又はIII−V族元素からの原子で構成された半導体(例えば、CdSe、CdTe、InP)である。量子ドットの光学的特性は、(通常安定化している)シェルを合成することによって操ることができる。かかる量子ドットは、コア/シェル型量子ドット(例えば、CdSe/ZnS、InP/ZnS、InP/CdSe)として既知である。同一材料だが異なる寸法の量子ドットが、異なる色の光線を放射できる。その輝度は、三次元空間の全てにおける電子の閉じ込めによるエネルギー準位の量子化に起因する。バルク半導体において、電子−正孔対は各型の半導体に特有なボーア励起半径以内で結合される。量子ドットはボーア励起半径よりも小さく、離散エネルギー準位の出現をもたらす。半導体の価電子及び伝導帯間のバンドギャップΔEは、ナノ結晶の寸法及び形状の関数である。量子ドットは、従来の有機発蛍光団よりも若干低いルミネセンス量子収量を特徴付けるが、ずっと大きな吸収断面及び非常に低い光退色速度を有する。量子ドットのモル吸光係数は、約105〜106-1cm-1で、色素よりも10〜100倍大きい。
【0035】
コア/シェル型量子ドットは、その低いバンドギャップコアの周りに高いバンドギャップシェルを有し、光をシェルによりあらゆる吸収なしに放射する。シェルは、コアから表面無放射発光を不動態化し、それにより光ルミネセンス量子収量を亢進し、自然分解を防止する。I型量子ドットのシェル(例えばCdSe/ZnS)は、コアよりも高いエネルギーの伝導帯及び低いエネルギーの価電子帯を有し、コア内に電子と正孔を共に閉じ込める結果となる。II型量子ドット(例えば、CdTe/CdSe、CdSe/ZnTe)のシェルの伝導帯及び価電子帯は、コアよりも共に低いか共に高いかのいずれかである。そのため、電子及び正孔の運動が一次元に制限される。コア/シェル型界面における励起子の放射性再結合はII型発光を生ずる。II型量子ドットは、バンド端近傍で間接遷移型半導体として挙動し、そのため赤色及び近赤外にまで及ぶ吸収裾部を有する。I及びII型が最も好適であるけれども、合金化半導体量子ドット(CdSeTe)も使用できる。変動可能な合金組成及び内部構造は、粒子のサイズを変えることなく光学特性を調整しうる。これら量子ドットは、850nmまで発光できるため、生体内の生物学的アッセイ用の近赤外蛍光性プローブを開発するのに使用できる。
【0036】
特に好適な量子ドットは、CdSe/ZnSコア/シェル型量子ドット、CdTe/CdSeコア/シェル型量子ドット、CdSe/ZnTeコア/シェル型量子ドット及び合金化半導体量子ドット(例えば、CdSeTe)からなる群から選択される。量子ドットは、生体内で使用する際に腎臓経路を介して排出されるほど十分小さいのが好ましい。より好適には、量子ドットは、直径が約10nm未満、更により好適には直径が約2nm〜約5.5nm、最も好適には直径が約1.5nm〜約4.5nmである。多重センサー(多重検出)を創出するために異なる色の発光が必要な場合、異なる発光波長をもたらす量子ドットコアの寸法を変えることにより達成することができる。量子ドットは、上記ナノ粒子に関して論述したように安定化又は非安定化とすることができる。量子ドットの安定化に好適なリガンドはレゾルシナレンである。
【0037】
アッセイ用のナノプラットフォーム組立体
診断ナノプラットフォーム組立体は、上述のオリゴペプチド配列を介して相互に結合した少なくとも二個の粒子を備える。加えて、該組立体は、使用する粒子及びアッセイを検出するのに用いるスペクトルに応じて単一の中心粒子に連結した多重粒子を備えうる。検出中に全可視光及び近赤外スペクトルを用いる場合、十個までの粒子を中心粒子に連結できる(異なる開裂配列を用いて各粒子を連結する際に単一アッセイ内で10個までの異なるプロテアーゼ検出するために)。可視光スペクトル又は赤外スペクトルのいずれかを単独で使用する場合、五個までの粒子を中心粒子に連結できる(異なる開裂配列を用いて各粒子を連結する際に、単一アッセイ内で5個までの異なるプロテアーゼ検出するため)。オリゴペプチド配列のほかに、上記粒子間の連結をいずれかの粒子に結合したリガンド又はスペーサー部分(後述する)から更に構成することができる。
【0038】
当該組立体は、同型の粒子(すなわち、ナノ粒子に連結したナノ粒子)、又は異なる粒子(すなわち、発色団/発光団又は量子ドットのような異なる型の粒子に連結したナノ粒子)から構成することができる。組立体はまた、発色団/発光団に連結した発色団/発光団からなることもできる。二個のナノ粒子を同じ診断組立体に用いる場合、これらは同一(すなわち、同じ種類の金属、合金又はコア/シェル型からなり、また同じ形状(例えば、丸型、球状、棒状など)である)であるか、又は各粒子が異なる(すなわち、物理的及び/又は化学的に非同一)ことができる。好適には、粒子は異なる化学組成及び寸法を有し、組立体を異なるナノ粒子又は発色団/発光団を用いて創出するか、又は組立体をナノ粒子と発色団/発光団(すなわち、非同一粒子)の間で創出する。一形態において、当該組立体は、二つのフルオロフォア間で蛍光共鳴エネルギー転移又は表面プラズモン共鳴を可能にする距離によって分離した二つのフルオロフォアを備える。各フルオロフォアは蛍光性ナノ粒子又は蛍光性有機色素を含み、各々プロテアーゼ開裂配列を含むオリゴペプチドリンカーの各末端と結合する。
【0039】
組立体における粒子間距離は、オリゴペプチドリンカーの長さ、並びにいずれかの粒子に結合したすべてのリガンド又はスペーサーに依存する。しかしながら、かかる距離は、好適には約10nm未満、より好適には約5nm未満、更により好適には約1nm〜約3nmである。
【0040】
発色団/発光団の場合、かかる粒子を、発色団/発光団に結合したスペーサー部分を任意に介してオリゴペプチドリンカーと共有結合するのが好ましい。スペーサーが連結されるオリゴペプチドの端部に応じて、好適なスペーサー部分は、カルボキシル、チオール並びにその組み合わせからなる群から選択した反応性基を含む。一つの好適な実施形態において、スペーサー部分はアミド結合を介してオリゴペプチドリンカーのN末端に共有結合される。代替的な実施形態において、スペーサー部分はジスルフィド結合を介してオリゴペプチドリンカーのC末端に共有結合される。特に好適なスペーサー部分としては、二つの末端カルボキシル基又は末端カルボキシル基と末端チオール基とを有するエチレングリコール類(好適には、テトラエチレングリコールからドデカエチレングリコールのようなC3〜C20)、アミド類(好適にはC3〜C20)、アルキレン類(好適にはC3〜C20)又はエステル類(好適にはC3〜C20)が挙げられる。
【0041】
診断アッセイは、そのまま用いるか、又は診断アッセイと、薬学的に許容し得るキャリアーを含む組成物の一部として用いることができる。生体内での診断に関しては、上記アッセイを薬学的に許容し得るキャリアーを用いて送達するのが好ましい。適当な例としては、詳細を後述する従来のリポソーム送達が挙げられる。
【0042】
上記アッセイを用いて、AIDS関連癌、AIDS関連リンパ腫、肛門癌、虫垂癌、小児期小脳星細胞腫、小児期大脳星細胞腫、基底細胞癌腫、肝外胆管癌、小児期脳幹神経膠腫、成人脳腫瘍、小児期悪性神経膠腫、小児期脳室上衣腫、小児期髄芽腫、小児期テント上原始神経外胚葉性腫瘍、小児期視覚路及び視床下部神経膠腫、乳癌、妊娠関連乳癌、小児期乳癌、男性乳癌、小児期カルチノイド腫瘍、胃腸カルチノイド腫瘍、原発性中枢神経系リンパ腫、子宮頸癌、結腸癌、小児期結腸直腸癌、食道癌、小児期食道癌、眼内メラノーマ、網膜芽細胞腫、成人神経膠腫、成人(原発性)肝細胞癌、小児期(原発性)肝細胞癌、成人ホジキンリンパ腫、小児期ホジキンリンパ腫、島細胞腫瘍、カポジ肉腫、腎臓(腎細胞)癌、小児期腎臓癌、成人(原発性)肝臓癌、小児期(原発性)肝臓癌、非小細胞型肝臓癌、小細胞型肝臓癌、AIDS関連リンパ腫、バーキットリンパ腫、成人非ホジキンリンパ腫、小児期非ホジキンリンパ腫、原発性中枢神経系リンパ腫、メラノーマ、成人悪性中皮腫、小児期中皮腫、原発不明転移性扁平上皮性頸部癌、口腔癌、小児期多重内分泌腫瘍形成症候群、多発性骨髄腫/プラズマ細胞腫瘍、菌状息肉腫、脊髄形成異常性症候群、脊髄形成異常/脊髄増殖性疾患、成人急性脊髄性白血病、小児期急性脊髄性白血病、多発性骨髄腫、神経芽細胞腫、非小細胞肺癌、小児期卵巣癌、卵巣上皮癌、卵巣胚細胞腫瘍、卵巣低悪性度腫瘍、全子宮頸部癌、小児期全子宮頸部癌、島細胞全子宮頸部癌、副甲状腺癌、陰茎癌、プラズマ細胞腫瘍/多発性骨髄腫、胸膜肺芽腫、前立腺癌、直腸癌、小児期腎細胞癌、腎盂及び尿管、移行細胞癌、成人柔組織肉腫、小児期柔組織肉腫、子宮肉腫、皮膚癌(非メラノーマ)、小児期皮膚癌、メラノーマ、メルケル細胞皮膚癌腫、小細胞肺癌、小腸癌、偏平上皮細胞癌、胃癌、小児期胃癌、皮膚T細胞リンパ腫、精巣癌、甲状腺癌、小児期甲状腺癌及び膣癌からなる群から選択された癌に関連する癌性又は前癌性細胞を検出することができる。
【0043】
本発明の方法
本発明のアッセイの一つの利点は、利用し得る粒子に応じて酵素活性を検出するための多種のセンサー技術を用いて粒子を利用し得るセンサー技術に適合するように修飾することによって該アッセイを適合させる柔軟性である。
【0044】
1.FRET系センサー
本発明の一形態において、アッセイは、開裂配列によって連結した異なる化学組成又は寸法を有する粒子のような非同一粒子間、若しくは異なる発色団/発光団間、又はナノ粒子と発色団/発光団間の表面プラズモン共鳴及びフォルスター共鳴エネルギー転移(FRET)に基づいて作動する。FRETは二粒子間のエネルギー転移を描写する。表面プラズモン共鳴を用いて粒子を励起する。当初励起状態にあるドナー粒子は、エネルギーを近接にあるアクセプター粒子に無放射双極子−双極子結合を介して転移することができる。両粒子が蛍光性発色団/発光団である場合、エネルギーが実際には蛍光によって転移されないが、「蛍光共鳴エネルギー転移」という用語がしばしば代わりに使用される。本発明においては、FRETを用いてプロテアーゼ開裂を検出する。つまり、粒子をオリゴペプチドによって結合する一方、アクセプターからの発光をドナー粒子の励起により観測する。酵素が粒子間のリンケージを開裂すると、FRETの変化が観測され、発光スペクトルが変化する。ドナー発光のみが観測される。
【0045】
より詳細には、両粒子がいわゆるフォルスター距離内にある場合、エネルギー転移が二粒子間で生じ、吸収及び発光における赤色シフトが観測される。この超高速処理中、第一粒子の電子的に励起された状態、すなわち表面プラズモンのエネルギーが少なくとも部分的に第二粒子へ転移される。これらの条件下、光線が第二粒子から放射される。しかしながら、二粒子間の結合が酵素によって開裂されると、光線が第一粒子のみから放射され、吸収及び発光における明瞭な青色シフトが観測される。これは両粒子間の距離が大幅に増加したためである(下記式参照)。
【0046】
観測されたプラズモン共鳴の最大値を以下の式によって特徴付けることができる。
【数1】


式中、Δλ/λ0はプラズモンシフトの分数、c及びdは定数、sは粒子間の端縁−端縁の距離及びDは粒子径である。ナノプラットフォーム組立体において、粒子を分離する距離は、オリゴペプチド内に存在するアミノ酸当たり約0.3nmと計算できる。FRET効率(「E」)は下記式で特徴付けることができる。
【数2】


式中、R0はフォルスター距離(すなわち、ドナーがそのエネルギーの50%をFRETを介してアクセプターに転移する距離)である。FRETアッセイに用いる両粒子は、各粒子の吸収及び発光波長が明瞭に異なり、それゆえ明瞭なルミネセンスバンドとして現れるように選択することができる。好適には、アッセイを生体外及び生体内で行うことができる。それゆえ、生体内使用に関しヒト組織による吸収及び散乱を最小化するために、第一粒子の励起を、好適には約400nm〜約1000nm間、より好適には約500nm〜約800nm間、更により好適には約650nm〜約800nm間で行うことができる。また、発色団/発光団粒子を使用する場合、好適には適切なフォルスターエネルギー転移を可能にする第一発色団/発光団の励起スペクトルと第二発色団/発光団の蛍光又はりん光スペクトル間のオーバーラップが存在する。
【0047】
a.生体外(イン ビトロ)での方法
アッセイを用いて、哺乳類の尿又は血液試料のような生物学的液体を含む体液試料中のプロテアーゼ活性を検出することができる。一形態においては、尿試料を哺乳類から採取し、アッセイと物理的に混合する。尿中のアッセイの濃度は、好適には約1×10-4M〜約1×10-10M、より好適には約1×10-5M〜約1×10-8Mである。励起は、好適にはタングステンランプ、レーザーダイオード、レーザー及び生物発光(例えば、ルシフェラーゼ、レニラ属、緑色蛍光性タンパク質)からなる群から選択した適正な波長のエネルギー源で行われる。使用波長はナノプラットフォーム組立体に用いる粒子による。かかる波長は、好適には約400nm〜約1000nm間、より好適には約500nm〜800nm間である。高悪性腫瘍が存在する場合、尿試料中のプロテアーゼがオリゴペプチドリンカーを開裂するので、粒子の吸収及び発光における変化が約1秒間〜約30分間、好適には約30秒間〜約10分間の時間にわたって観測される。プロテアーゼの存在下、約5〜約200nm間の典型的な吸収及び発光の青色シフトが観測される。従って、本発明の方法において、最大吸収又は発光スペクトルにおける5〜200nm間の青色シフトが好適には哺乳類における癌性又は前癌性細胞の存在を示す。
【0048】
血液を哺乳類から採取し、上記尿のように分析することができる。血液試料中のアッセイの濃度は、好適には約1×10-4M〜約1×10-10M、より好適には約1×10-5M〜約1×10-8Mである。使用波長はナノプラットフォーム組立体に用いた粒子による。波長は、好適には約500nm〜約1000nm間、より好適には約600nm〜800nm間の範囲である。より好適には、血液の強い自己吸収のため、Ti−サファイアレーザーで波長約800nmでの多光子励起を用いて励起を行う。発光の変化が、高悪性腫瘍が存在する場合、約1秒間〜約30分間、好適には約30秒間〜約10分間の時間にわたって観測される。尿と同じく、血液中にプロテアーゼが存在する場合、約5〜約200nm間の典型的な発光青色シフトが観察される。これは好適には哺乳類における癌性又は前癌性細胞の存在を示す。
【0049】
その後、これらのアッセイ結果(尿又は血液からの)を、上述したようにuPA、MMP−1、MMP−2及びMMP−7という好適なプロテアーゼに関して検出された特異的プロテアーゼ活性に基づくか、又は後述するアッセイ速度に基づいて癌進行の予後と相関させることができる。
【0050】
b.生体内(イン ビボ)での方法
代替的な実施形態においては、上記アッセイを用いるプロテアーゼ活性の検出を哺乳類の生体内で行うことができる。上記診断アッセイ又は該アッセイを含む組成物を薬学的に許容し得るキャリアーを用いて投与するのが好ましい。かかるアッセイを血流内に注射により投与することができる。或いはまた、上記アッセイを腫瘍位置に直接又はその近くのような局所的な領域に注射により投与することができる。
【0051】
生体内での分析のための腫瘍位置への送達は、リポゾーム(リポゾーム送達)を用いることにより達成することができる。リポゾームはホスホリン脂質二重層を有し、好適にはコレステロールの添加によって安定化される。調製方法に応じて、リポゾームの寸法は100nm〜数マイクロメートル(好適には約100nm〜約5μm)の範囲にある。リポゾームの調製方法は当業界で既知である。例えば、ホスホリン脂質及びアッセイを反応容器(例えば、フラスコ)中でクロロホルム(CHCl3)又はテトラヒドロフラン(THF)のような非水性溶媒に溶解することによりリポゾームを調製するのが好ましい。次いで、溶媒をロータリーエバポレーター又は他の蒸留装置を用いて蒸発させて、反応容器壁上にフィルム状の堆積物を得る。その後、ショ糖水溶液(又は任意の他の糖又は塩の組み合わせ)を容器に添加し、引き続き凍結融解サイクル又は超音波処理のいずれかを行った。次いで、生成したスラリーをナノ細孔フィルターを介して押出し、より好適な送達剤である単壁リポゾームを形成するのが好ましい。
【0052】
その後、上記アッセイを含むリポゾームを血流中に注入するのが好ましい。有利なことに、血流中へ注入する場合、リポゾームは、急速な腫瘍成長のため血管が「漏出性」である腫瘍の近傍以外では血管から出ることができない。それゆえ、リポゾームは好適には腫瘍(すなわち、受動的標的化)の近傍に濃縮される。この処理は、既知の方法に従い腫瘍特異的抗体又はアプタマーをリポゾーム(すなわち、能動的標的化)に化学的に結合することで増強させることができる。その後、好適にはリポゾームを不安定化させ、その間に癌細胞間の間質内にアッセイを放出し、前記近傍におけるプロテアーゼ活性を検出する。
【0053】
より好適には、熱不安定性リポゾームを使用する。熱不安定性リポゾームは、N−イソプロピル−アクリルアミド型の重合体(例えば、ポリ(NIPAM/エチレングリコール)ブロック共重合体)を含み、化学的に結合した長鎖脂肪酸又はアルコールを介してリポゾームのホスホリン脂質二重層中に固着できる。次いで、リポゾームが標的位置に到達すると、少なくとも二本の交差するTi:サファイアレーザーを用いる800nmでの光物理学的照射によってリポゾームを加熱することができる。リポゾームを、好適には少なくとも約38℃、より好適には少なくとも約45℃の温度に加熱する。これは、感熱性リポゾームの熱崩壊をもたらす。
【0054】
光物理学的加熱(例えば、ナノ粒子が含まれる場合のプラズモン加熱)は、アッセイのナノ粒子を加熱し、その後熱をリポゾームへ放散させる。つまり、金属ナノ粒子を振動電場中に置いた場合、「自由」電子が周期的摂動に応答する。駆動電場を遮断すると、多様な散乱処理(すなわち、電子−電子、電子−フォノン、フォノン−表面など)による関与のため最終的に熱として発散される獲得エネルギーで自由電子の振動が数ピコ秒の時間尺度で急激に減衰する。急速な緩和は、熱を繰返し発生させ、大量のエネルギーをナノ粒子内に堆積させ得ることを確実にする。金属ナノ粒子を溶媒槽内に置く場合、この加熱方法がその周囲と熱的平衡にない熱源につながることができる。
【0055】
既述の生体内での像化用の代替的な実施形態において、水性緩衝液(例えば、リン酸塩緩衝生理食塩水(PBS))中に溶解したアッセイを腫瘍又は腫瘍領域内に直接注入できる。脳腫瘍の場合、これが唯一実行可能な選択とすることができる。
【0056】
アッセイが癌性細胞の近傍にあると、一又は二本の交差するTi:サファイアレーザーを用いてアッセイを励起するのが好ましい。他の適当な励起源としては、Nd:YAGレーザー(1064nmでの第一調和)、及びNd:YAGレーザーの532nmでの第二調波によって駆動するすべての種類の色素レーザーが挙げられる。次いで、アッセイからの光の放射を、カメラ、顕微鏡又は共焦点顕微鏡を用いて分析する。癌性領域から発した光は、癌性領域における標的プロテアーゼのより高い活性のため、健常組織領域から発した光と異なる色彩を有する。有利なことに、癌性組織は、例えば腫瘍遺伝学者や外科医に対して視覚的に識別可能である。好適には、Ti:サファイアレーザーを多重フォトン励起用の約830nmの波長に調整するので、励起ではなく光の放射のみを観測することができる。その後、アッセイの結果を、下記に詳述するように検出されたプロテアーゼ活性に基づいて癌進行の予後と相間させることができる。
【0057】
2.光スイッチ系センサー
もうひとつの形態において、アッセイは、オリゴペプチド開裂配列によって発色団/発光団又は量子ドットに連結されたナノ粒子を使用する。一以上の発色団/発光団又は量子ドットを単一中心ナノ粒子に連結することができる。しかしながら、多数の粒子を使用する場合、これらすべては、同じ種類の粒子からなるのが好ましい。好適な二つの組立体は、ナノ粒子と連結した少なくとも一つのポルフィリン又はナノ粒子と連結した少なくとも一つの量子ドットを備える。この方法において、コア/シェル型ナノ粒子の表面プラズモンは、連結したポルフィリンからの励起状態の発光スペクトルを消光できる。同様に、量子ドットは、コア/シェル型金属ナノ粒子の存在によって消光される場合以外、著しく発光性である。また、ビオロゲン(例えば、メチルビオロゲン又はプロピルビオロゲンスルホネート(PVS))も消光剤として使用できる。
【0058】
プロテアーゼが共通配列を開裂すると、量子ドット又はポルフィリンが放出され、発光し、ここでは「酵素トリガー光スイッチ」と言う。有利なことに、新たなルミネセンス/蛍光バンドの出現がずっとより敏感な検出を可能にする。量子ドットの発光波長はそのサイズに依存し、各標的酵素に割り当てられた量子ドットの一つの色(青色、緑色、黄色、赤色)を用いて組立体を構成することができる。4つまでの異なる共通配列を単一のナノ粒子(上記各色に対して一つ)に連結できる。この方法では、四つまでの酵素の活性を生体外又は生体内で同時に観察できる。励起を約400nm〜約500nm(単一光子)又は約800nm〜約900nm(多光子)の波長で行うのが好ましい。量子ドットの励起を、低強度可視光線光子源を使用するか、又は超高速赤外線レーザーパルスを使用する手段によって行うことができる。他の適当な励起源としては、Nd:YAGレーザー(1064nmでの第一調和)、及びNd:YAGレーザーの532nmでの第二調波によって駆動するすべての種類の色素レーザーが挙げられる。ポルフィリンの励起は、Ti:サファイアレーザーの870nmでの三光子励起を用いて行うのが好ましい。次いで、アッセイからの発光をカメラ、顕微鏡又は共焦点顕微鏡を用いて分析する。光スイッチ系センサーを、上記FRET系センサーに関して述べたのと厳密に同じ処置(生体外又は生体内)に利用することができる。
【0059】
いずれかのセンサー方法(生体外又は生体内)を用いる場合、本発明のアッセイ時間は試料又は組織中に存在するプロテアーゼの濃度に依存する。開裂速度は、プロテアーゼ濃度の増加指標に対し3〜5倍だけ増大する。高悪性腫瘍の存在下、アッセイ時間はほんの一瞬の速さとすることができる。健常組織においては、検出すべき活性に対し約24時間かけることができる。従って、アッセイがより高速なほど、腫瘍がより高悪性で、腫瘍の潜在的転移の可能性がより大きくなる。固形腫瘍の潜在的転移の決定用のナノ粒子系生体内ナノセンサーの構成のためにプロテアーゼ特異性オリゴペプチドを使用することは今までになかったものである。好適には、アッセイを腫瘍領域(又は腫瘍が疑われる領域)に直接注入する場合、注入後約30分で結果を決定できる。アッセイを静脈内に投与した場合、静脈内投与後約1時間(アッセイが標的領域に到達しうる)以内で、また投与後24時間までに結果を読み取ることができる。いずれの場合にも、アッセイが腫瘍の近傍にあると、10分以内に検出したプロテアーゼ活性を、腫瘍が高悪性である高い確率で相関させることができる。好適には、活性が最初の30分以内に検出されない場合、腫瘍が高悪性である確率は非常に低い。同様に、生体外での試験について、10分以内に検出したプロテアーゼ活性は、腫瘍が高悪性である高い確率で相関させることができる一方、試料とアッセイとの接触後最初の30分以内に活性が検出されないことは腫瘍が高悪性である確立が非常に低いことと相関させることができる。この反応速度は、アッセイ完了(及び結果)に数時間かかる既知の検出方法に対して明瞭な利点を提供する。
【実施例】
【0060】
以下の例は本発明に係る好適な方法を示す。しかしながら、これらの例は説明の目的で提供されるもので、本発明の全範囲において限定されるべきものではないことが分かる。
【0061】
例1
ナノ粒子組立体の合成
ここでは、ナノ粒子組立体の合成を記載する。ナノ粒子は既知の方法に従い合成することができる。これらはまた、例えばNanoscale社(カンザス州)及びSigma Aldrich社(ミズリー州)の多種の発売元から市販品が入手可能である。以下の方法での使用に適するナノ粒子としては、新たに調製した非安定化ナノ粒子又は安定化ナノ粒子が挙げられる。非安定化ナノ粒子は、下記のようにリガンド交換を用いて安定化させることができる。
【0062】
1.リガンド交換
第一組のナノ粒子を非極性又は双極性の非プロトン性溶媒に溶解し、次いで2−アミノエタンチオールで圧力下(1000psi)室温で1時間処理した。或いはまた、水溶性ナノ粒子を2−アミノエタンチオールでHO/アセトニトリル混合物中圧力下(1000psi)室温で1時間処理することができる。
【化2】


次いで、表面交換したナノ粒子を、分取型ゲル浸透クロマトグラフィー(HPLC)を用いて単離した。
【0063】
2.オリゴペプチドの調製及び第二ナノ粒子への結合
その後、標的プロテアーゼの共通配列(開裂配列)を選択し、ナノ粒子の結合用の共通配列を含むオリゴペプチドを古典的なペプチド合成(修飾メリフィールド合成)を使用することで調製する。これらオリゴペプチドはまた、Genscript社(ニュージャージー州)のような多数の会社から市販品が入手可能である。かかる配列は、チオール基を介して第二組のナノ粒子(非交換)と反応するため、C末端に対しシステインで終了する。そのN末端を用いて上述した第一組の表面交換ナノ粒子と反応させる。また、N末端の第二ナノ粒子への結合を強化するため、2個までのリシン残基をオリゴペプチドの末端に付加することができる。ペプチド配列のN末端に結合した一個のリシン残基を有するオリゴペプチド構造の一例を下記に示す
【化3】

【0064】
その後、第二組の非交換ナノ粒子をオリゴペプチドと非極性又は双極性非プロトン性溶媒若しくは水性緩衝液中室温でN2又はアルゴン雰囲気下24時間反応させる。反応溶液へNaBH4を添加してオリゴペプチドのシステイン単位がジスルフィド結合を形成しないことを確実にする。この反応を、希薄条件下(濃度<10-5M)で1:1付加体(ナノ粒子−オリゴペプチド)が高収率で形成できるように行わなければならない。
【0065】
3.第一及び第二ナノ粒子の結合
二個のナノ粒子を連結するため、表面交換ナノ粒子を先ず高濃縮溶液中カルボニル−ビス−イミダゾール(CDI)のジメチルホルムアミド(DMF)溶液を用いて40℃で 1時間処理した。
【化4】

【0066】
次いで、処理した表面交換ナノ粒子を上述した非交換ナノ粒子−オリゴペプチド混合物に添加した。オリゴペプチドのN末端を表面交換ナノ粒子に結合する確率を、二個までのリシン残基をオリゴペプチドリンケージのN末端に結合することによって高めることができる。
【化5】

【0067】
4.非交換ナノ粒子の表面交換処理
最後に、第二ナノ粒子を2−アミノエタンチオールで高圧下(1000psi)室温で1時間処理した。或いはまた、水溶性ナノ粒子を2−アミノエタンチオールのHO/アセトニトリル混合物で加圧下(1000psi)室温で1時間処理することができる。
【化6】

【0068】
アミノ基の一部がプロトンを結合し、水性環境中pH=7で負に帯電する。これは、ナノ粒子が互いに反発し、最大距離を保持してアッセイ中にナノ粒子のクラスタリングを回避することを確実にする。
【0069】
前述の処置に続いて、金属ナノ粒子(例えば、Au、Ag、Ptなど)、ナノ粒子合金(例えば、AuCu、FePt、CoFe/AuFeなど)及びコア/シェル型ナノ粒子を用いてナノ粒子組立体を合成することができる。
【0070】
例2
色素組立体の調製
ここでは、色素組立体の合成を記載する。標的プロテアーゼの共通配列(開裂配列)を選択する。その後、色素の結合用共通配列を含むオリゴペプチドを、古典的ペプチド合成(修飾メリフィールド合成)を用いて例1に示すような典型的なオリゴペプチドをもたらすことにより調製した。実際、あらゆる蛍光性又はりん光性色素がオリゴペプチドへの連結に適する。しかしながら、高い蛍光又はりん光量子収量を有する蛍光色素又はりん光性金属錯体がより適している。組立体において第一色素の励起スペクトルと第二色素の蛍光又はりん光スペクトルとの間にフォルスターエネルギー転移(下記参照)を可能にするためのオーバーラップがなければならない。適当な色素の例としては、全てがクマリン(特に単光子及び多重光子励起に適する)、ポルフィリン及び関連化合物、フルオレセイン及び関連化合物、ルテニウムポリピリジル錯体、並びにここに記載した他のフルオロフォア及び金属錯体が挙げられる。
【0071】
フルオロフォア又はりん光性金属錯体を、アミノ基を介して一つのカルボキシル基及び一つのチオール基を特徴とするスペーサーに連結する。次いで、カルボキシル基を用いて色素と安定なアミド結合を形成する。チオール基を用いて色素をオリゴペプチドのC末端システイン基に連結する。先ず、下記に示すように、ジシクロヘキシル−カルボジイミド (DCC)をN−ヒドロキシコハク酸イミド(NHS)と共に用いて色素をスペーサーと反応させる。
【化7】

【0072】
その後、スペーサーが結合した色素をオリゴペプチドと非極性又は双極性非プロトン性溶媒又は水性緩衝液中室温でN2又はアルゴン雰囲気下24時間反応させる。反応溶液へNaBH4を添加してシステイン単位がジスルフィド結合を形成しないことを確実にする。この反応を、希薄条件下(濃度<10-5M)で1:1付加体(色素−オリゴペプチド)が高収率で形成できるように行わなければならない。
【0073】
或いはまた、色素をオリゴペプチドのN末端に連結できる。この場合、スペーサーは、下記に示すように、二基のカルボキシル基を特徴とする。
【化8】


最終製品の分離を、逆相(C18)クロマトグラフィーを用いて行う。
【0074】
他のフルオロフォア及び金属錯体を、下記に例示するように、同じ方法に従って連結する。
【化9】


式中、R=−COOH又はN(R1)3、ここで各R1をH、アルキル及びアリールからなる群から選択する。
【0075】
例3
ナノ粒子−ナノ粒子:吸収分光法
ここでは、紫外線/可視光線吸収分光法を用いてuPAの活性を測定した。全ての化学薬品及び溶媒を、特記しない限り、Fisher/Acros社(ペンシルベニア州)から購入した。ナノ粒子−ナノ粒子組立体を、直径10nmのクエン酸安定化金ナノ粒子(Sigma−Aldrich社、ミズリー州)と、以下の配列CGGGSGRSAGGGC(配列番号:35)(GenScript社、ニュージャージー州)を有するオリゴペプチドとを用いて調製した。先ず、ナノ粒子1mgをグリセリン1.0×10-3を含有するテトラヒドロフラン(THF)25ml中に懸濁した。このミクロ不均一溶液を加圧(100psi)下アルゴン雰囲気中200℃に5時間加熱した。反応を高圧反応器 (Parr Instruments社から入手可能、イリノイ州)を用いて行った。消化熟成によりAuナノ粒子径を4〜5nmに縮小させた。次いで、ナノ粒子を30、000rpmでの超遠心分離によって溶液から除去し、その後THFに再懸濁させた。かかる処置を10回繰返して非結合グリシンすべてを除去した。
【0076】
次に、0.1mgのオリゴペプチドを無水THF1.0ml中のAuナノ粒子に添加し、続いて24時間撹拌する。オリゴペプチド及びナノ粒子を30、000rpmでの遠心分離によって沈降させ、その後THFに再懸濁させた。この処置を10回繰り返した。その後、連結したAu−Auナノ粒子組立体をリン酸塩緩衝液(PBS、pH=7.02)に溶解し、20、000rpmでの遠心分離によって沈降させ、PBSに再度懸濁させた。
【0077】
報告されたプラズモンの最大吸収で吸収係数はε=7.66×109-1cm-1である。この吸収係数を用いて1×10-4モルでのAu−Auナノ粒子の濃度を評価した。
【0078】
その後、Au−Auナノ粒子のPBS溶液を石英キュベット(約3.0ml)に添加した。該溶液を37℃に15分間加熱した。次に、ウロキナーゼ1×10-8モルのPBS0.050ml溶液(Innovative Research社、ミズリー州)を上記キュベットへ添加した。
【0079】
オリゴペプチドのウロキナーゼ開裂前、中、後における金ナノ粒子の結合対のプラズモン吸収におけるスペクトルシフトを図2に示す。恒温槽を備えたAgilent 8453紫外線−可視光線分光光度計を用いて発光スペクトルにおける変化を測定した。180秒以内で523nmから517nmへシフトする金のプラズモン吸収最大値が観測された。また、上記プラズモン吸収の強度が515nm(増大)及び525nm(減少)で大幅に変わることは明白である。両測定の指数はウロキナーゼ活性の信頼できる時間分解測定値を提供することができる。ウロキナーゼは、表1に示した全てのプロテアーゼに対するモデルとして機能できる。
【0080】
例4
蛍光/りん光アッセイ
発色団−発色団組立体
本例において、蛍光/りん光アッセイを用いてuPAの活性を測定した。ペプチド配列SRSRSRSRSRSGRSAGGGC(配列番号:18)(GenScript社)をピレンフルオロフォアとクマリンアクセプター間のスペーサーとして使用して発色団−発色団組立体を調製した。全ての化学薬品及び溶媒を、特記しない限り、Fisher/Acros社(ペンシルベニア州)から購入した。組立体を、クマリン0.00010モルをTHFに室温で溶解することによって調製した。次に、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDC)0.00012モルを固体としてアルゴン雰囲気下添加し、5時間反応させた。その後、二回蒸留した水(二回精製水)1mlに溶解したオリゴペプチド0.00010モルを上記反応物に添加することによってオリゴペプチドリンケージをクマリンに結合し、続いて室温で24時間アルゴン雰囲気下撹拌した。次に、メルカプトピレン0.0020モルを固体として上記溶液に添加し、5分以内で完全に溶解させた。該溶液を大気条件下さらに24時間連続的に撹拌した。
【0081】
その後、溶媒を真空除去し、組立体を溶離液としてアセトニトリル及びPBSを有する逆相(C18)カラムクロマトグラフィーを用いるHPLCによって精製した。得られた発色団-発色団組立体を以下に示す。
【化10】

【0082】
PBS中のナノプラットフォーム組立体(1×10-6モル)を石英キュベット(約3mL)に添加した。該溶液を37℃に15分間加熱した。その後、ウロキナーゼ約1×10-8モルのPBS0.050mlの溶液(Innovative Research社)を上記キュベットに添加した。
【0083】
アッセイからのスペクトルシフトを図3に示した。発光スペクトルにおける変化を、分光蛍光光度計(ISA−SPEX、Fluoromax−2、ISA社、ニュージャージー州)を用いて測定した。ピレンの280nmでの光励起によりFRETが生起し、結合したクマリンがりん光/ルミネセンスの大部分を放射した。ウロキナーゼが上記二つの発色団間のオリゴペプチドリンカーを開裂し、劇的に観測スペクトルを変えた。スペクトルは、0、2、4、6、8、10及び15 分間にわたるアッセイ時間を示す。オリゴペプチドリンカーをウロキナーゼによって開裂する際にFERTが減少するため、クマリンの発光が時間と共に減少し、クマリン及びピレン分子間の距離が増加する。
【0084】
例5
ポルフィリン含有量及び組成物のステルス保護及び最適化
本例において、化学的に結合した金属化及び非金属化テトラカルボキシ−フェニル−ポルフィリン(TCPP)を特徴とするステルスリガンドを、オリゴペプチドリンカーを有するコア/シェル型Fe/Fe34ナノ粒子(NanoScale社、カンサス州)に連結した。ポルフィリンを用いて、二種類の異なるウロキナーゼセンサーを作成できる。
【0085】
1.FRET系センサー
FRET系センサーに関しては、五個のZn−TCPPポルフィリンを一個の中心ステルス保護Fe/Fe34ナノ粒子に結合し、その後非金属化TCPPポルフィリンを後述する処理を用いて中心ナノ粒子に結合した。
【0086】
ステルス保護Fe/Fe34ナノ粒子を調製するため、ドーパミン−テトラエチレングリコールリガンド35mgをTHF5mlに溶解した。次に、Fe/Fe34ナノ粒子11.0mgを添加し、室温で1時間超音波処理をした。ナノ粒子のコアは約3〜5nmの直径を有した。Fe34シェルは、2nm未満の厚みを有した。その後、固体を磁石で集め、溶媒を注意深くデカントした。固体をTHF(3×3ml)で洗浄した。2時間の真空乾燥後、ステルス保護ナノ粒子生成物10.0mgを得た。
【0087】
その後、オリゴペプチドリンカーを金属化ポルフィリンに結合した。まず、ポルフィリン5.0mgをSOCl5.0ml中にて100℃で30分間還流した。その後、過剰のSOClを高真空下除去し、生成した固体を更に3時間真空乾燥した。次に、オリゴペプチド配列CGGGSGRSAGGGC(配列番号:35)4mg及びTHF5mlをポルフィリン固体へ添加し、室温で5時間撹拌した。その後、THFを真空下除去し、緑色がかった固体を得た。エレクトロスプレーイオン化(ESI)質量分析法は、少なくとも2つの連結ポルフィリン種(ポルフィリンに連結したモノペプチド及びジペプチド)の混合物を示した。上記処置を繰返してオリゴペプチドリンカーを非金属化ポルフィリンへ結合した。
【化11】

【0088】
ポルフィリンをナノ粒子に結合するため、金属化ポルフィリン−オリゴペプチド固体を10mlの乾燥THFに溶解した。次に、この溶液5.0mlをドーパミンテトラエチレングリコールで係留したFe/Fe34ナノ粒子10.0mgに添加し、続いて4-ジメチルアミノピリジン(DMAP)1.0mg及びEDC8.0mgを添加した。生成した懸濁液を室温で1時間超音波処理した。固体沈殿を磁石で採取し、THF(8×2ml)で徹底的に洗浄した。その後、試料を5時間高真空下乾燥した。8.0mgの生成物を得た。かかる処置を繰返して非金属化ポルフィリンをナノ粒子に結合した。
【0089】
ウロキナーゼ約1×10-8Mの存在下PBS中のナノプラットフォーム組立体(1×10-5M)の発光スペクトルを0分(A)、2分(B)、4分(C)及び6分(D)で図4に示した。ウロキナーゼによるFe/Fe34−ナノ粒子からのオリゴペプチド係留TCPPの放出は、λ1=607nmでの蛍光バンドの明瞭な減少から明らかである。他の二つの蛍光バンド(λ2=654nm、λ3=718nmでの)から生じる蛍光の濃度依存性は非線形であると観測された。観測された非線形挙動の理由は、非係留非金属化TCPPの高い蛍光量子収量に見出されうる。本発明者らは、Fe/Fe34ナノ粒子周りの球における高いポルフィリン濃度がFRETの増大に繋がり、その結果励起状態の無放射的失活に繋がる場合、係留状態よりもおよそ8倍大きいφ=0.082と見積もった。
【0090】
図5において、λ1=607nm、λ2=654nm及びλ3=718nmでの蛍光バンドの積分値の比率を、放出されたTCPP(光学検出系を備えたAgilent社ワークステーション(HP1050)を用いるHPLCにより測定した)のモル百分率に対してプロットした。R=I(l2)/I(l1)及びR=I(l3)/I(l1)のプロットは放出されたTCPPのモル百分率が増加するに従い増加する。これらプロットは、放出されたTCPPの0〜7モル%の濃度範囲で全く線形である。それゆえ、ウロキナーゼによって放出されたTCPPの濃度を、ナノプラットフォームの蛍光スペクトルを異なる時間隔で記録し、三種類の波長(λ1、λ2、λ3)での蛍光強度を比較することにより測定できる。特に単一光子計測技術(例えば、蛍光顕微鏡法)と結びついた場合、三種類の波長すべてが哺乳類の組織における生体内での測定を可能とすることに注目される。
【0091】
本例においてはテトラカルボキシ−フェニル−ポルフィリン(TCPP)を用いたが、実際にはあらゆる有機発色団、金属化発色団又は量子ドット(例えば、ZnS安定化CdSe)を使用し、オリゴペプチドリンカーを介してナノ粒子へ結合することができる。
【0092】
本組立体を用いて試験した他のオリゴペプチド配列はKGGSGRSAGGD(配列番号:41)である。
【0093】
2.プロテアーゼ活性検出用の「光スイッチ」
この種のウロキナーゼセンサーは、有機(例えば、ビオロゲン)又は無機消光剤(例えば金属、合金及びコア/シェル型ナノ粒子)を用いた発色団(例えば、ポルフィリン)の励起状態の消光に基づいている。ナノ粒子の発色団への近接(約2nm)のため、コア/シェル型ナノ粒子の表面プラズモンは、化学結合したポルフィリンからの発光スペクトルを消光することができる。ひとたびウロキナーゼ開裂によって放出されると、発色団の蛍光又はりん光が著しく増加する。この蛍光の増加は分光学的に検出することができる。識別可能な発光スペクトルを特徴とする数個の発色団を使用する場合、種々の酵素の活性を同時に検出可能である。組立体を、一種類のポルフィリンのみ(すなわち、非金属化のみ又は金属化のみ)を用いる以外は上記FRET系センサーに述べたのと同じ処置を用いて調製する。かかる機構を、オリゴペプチド配列DGGSGRSAGGK(配列番号:36)を有する化学結合した非金属化TCCPポルフィリンを特徴とするドーパミン−テトラエチレングリコールリガンドに連結した双磁性ナノ粒子を用いて下記に図示する
【化12】

【0094】
光スイッチの機構を、ウロキナーゼが哺乳類の腎臓を通過でき、尿中で少なくともいくらかの活性を残存するため、MATBIII型癌細胞を注入したラット(高悪性度乳癌のげっ歯類モデル)の3つの尿試料を用いて試験した。試料は、癌注入後それぞれ36、15及び5日後に採取し、−80℃で急速凍結した。36日の試料についての試験を二回行った。試験前に、尿試料を解凍し室温になるようにした。以下の処置を用いて各試料を試験した。
【0095】
TCPP-ナノ粒子ナノプラットフォーム組立体を、30分間の超音波処理を用いて、二回蒸留した水に溶解した。次に、尿100μlを上記ナノプラットフォーム0.1mgを含む水溶液2.0mlに添加した。温度を34℃で一定に保った。蛍光スペクトルを、36日及び5日の試料については2分間ごとに、15日の試料については1分間ごとに記録した。
【0096】
図6から分かるように、36日尿ついてはTCPPからのルミネセンスが時間とともに着実に増加した。図7は、図6に示した測定を用いてλ=656nmで生じるTCPPのルミネセンスの相対強度のプロット図を示す。
【0097】
図8は、15日尿のλ=656nmで生じるTCPPのルミネセンスの相対強度のプロット図を示す。
【0098】
MATBIII型癌細胞のラットへの注入のわずか5日後に採取されたラットの尿は、図9に示すように、あらゆる識別可能なウロキナーゼ活性を示さなかった。上記尿のデータは、ラットで観測されたMATBIII型腫瘍の成長曲線とうまく相関し、ここで最大の腫瘍成長をMATBIII型細胞注入のおよそ2週間後に識別することができる。しかしながら、幹細胞治療後、腫瘍を36日のものにより著しく減弱する。
【0099】
例6
量子ドット組立体
本例において、金で被覆されたFe23ナノ粒子に連結したCdSe/ZnSコア/シェル型量子ドットのナノプラットフォーム組立体の調製を記載する。CdSe/ZnS量子ドットは、初めにナノ粒子の金表面に結合した際、ナノ粒子の消光効果のために、「切」状態にある。オリゴペプチドが酵素ウロキナーゼによって開裂されると、CdSe/ZnSが放出され、蛍光性になる。この酵素トリガー光スイッチは、標的酵素の存在を示す。また、Au/Fe合金ナノ粒子をFe23ナノ粒子の代わりに使用できる。
【0100】
1.量子ドットの合成
CdSe/ZnS量子ドットの合成は十分に確立している。合成はヘキサデシルアミン中120℃で起こり、単一の前駆体Li4[Cd10Se4(SPh)16]を用いてCdSeコアを形成する。上記前駆体は長時間にわたり徐々に分解して高品質の結晶をもたらす。合成が完了すると、反応条件を極めて敏感に制御できる高温で現場光ルミネセンス技術によって示されるように、ZnSシェルをCdSeコアを覆うように成長させる。量子ドットの成長は、図10に示すように、光ルミネセンス(PL)最大発光のシフトによって表される。量子ドットを250℃に加熱する場合、未被覆の量子ドットの発光を強く消光する。上塗り工程で、量子ドットの発光が250℃であっても再び現れる。
【0101】
量子ドットは、非常に大きな吸収断面に沿って極めて高い光ルミネセンス収量を有し、生態系に対する熱負荷を低減する。多重センサー(多重検出)を作り出すために異なる色の発光が必要な場合、量子ドットコアの寸法を変えて異なる発光波長をもたらすことにより達成することができる。CdSeは寸法変化と共に500〜650nm間で容易に調整できる。これら量子ドットを実際あらゆる寸法に成長させることができる一方、生体内で使用する際にナノプラットフォームが身体(腎臓経路)のろ過系を効率的に離れることができるように量子ドットの成長を5.5nm未満に制限する。
【0102】
2.量子ドットの安定化
CdSe/ZnS量子ドットは生体腐食に対し十分に安定であるが、両親媒性レソルシアレーン−リガンドの結合が水溶性を著しく増大させ、特に以下の配列、すなわちa)ウロキナーゼに対するKGGGSGRSAGGGC、b)MMP1に対するKGGVPMS−MRGGGC、c)MMP2に対するKGGIPVS−LRSGGC及びd)MMP−7に対するKGGVPLS−LTMGGC(ここで「−」はプロテアーゼ開裂点を示す)を用いる際にプロテアーゼ共通配列を含有するオリゴペプチド配列と結合可能にする。上記リガンドは量子ドットの周りに単分子層シェルを形成する。量子ドット安定化(並びにナノ粒子の安定化)に好適なレゾルシナレンリガンドを以下に示す。
【化13】

【0103】
上記単分子層を、選択した量子ドット(又はナノ粒子)の合成経路に応じて量子ドット表面上に非水性液体(例えば、THF、DMF、アクリロニトリル)又は水性緩衝液(例えば、PBS、水/THF混合液又は水アルコール混合液)中のいずれかで形成できる。直径5nmのナノ粒子又は量子ドットは、単分子層の形成に55個のレソルシンアレーンリガンドを要する。かかるリガンドは両親媒性(logP=4.7)である。
【0104】
3.安定化量子ドットへのオリゴペプチドの結合
ナノプラットフォームの組立における次の工程は、CdSe/ZnS量子ドットを安定化するレソルシンアレーンリガンドの「脚部」におけるペンダントカルボン酸基へのオリゴペプチドリンカーの化学結合である。オリゴペプチドは市販品である。オリゴペプチドの末端リシン残基のレソルシンアレーンカルボキシレートへの結合は、タンパク質合成及び生物共役化での標準的処置である周知のDCC/NHS/HOBT法を用いることにより達成される。各開裂配列を、明瞭な最大ルミネセンス(寸法に応じて青色、緑色、黄色又は赤色)を特徴とし、酵素活性の多重検出を可能にする一つの特定の量子ドットへ結合する。反応溶媒からの量子ドットの分離は、遠心分離によって達成される。連結後、量子ドットを再び水性緩衝液(PBS)中へ段階的に移動する。
【0105】
エレクトロスプレー/飛行時間型質量分析法は組立体の全質量を計測するのに適しており、安定化量子ドットの表面にわたるオリゴペプチドの表面被覆の計測ができる。開裂位置に特徴ある結合したオリゴペプチドの層は、標的プロテアーゼ(例えば、ウロキナーゼ)の攻撃を許すにはいくぶん不完全(表面被覆率は最大約75パーセント)であり、完全な被覆を達成する(DCC/NHS/HOBT法はかかる被覆を可能にするほど十分に効率的ではない場合があるが)場合立体因子によって妨げられることは重要である。余分なHPLC工程を用いて高純度のオリゴペプチドを得る。量子ドットの表面にわたるオリゴペプチド被覆は表面被覆率25%をはじめとして体系的に変化しうる。タンパク質合成及び水性溶媒中での生物共役化に適したEDC/NHSS法を使用することもできる。
【0106】
4.金被覆酸化鉄ナノ粒子への量子ドットの結合
次に、CdSe/ZnS量子ドットを、オリゴペプチドリンカーのC末端上のシステイン残基を介してFe23/Auナノ粒子に連結する。一つの酵素の活性を決定するため、一種類(寸法)の量子ドットをナノ粒子に連結する。しかしながら、癌進行の生体内測定のために、4個までの異なる量子ドット(異なるオリゴペプチド配列を特徴とする)を単一の金被覆ナノ粒子へ結合する。この反応は、開裂配列末端システイン残基を酸化鉄ナノ粒子周囲の金シェルへ結合することで行われる。分子モデリングを用いて、四種類のオリゴペプチド各々の長さが4.5nm未満であることを求める。それゆえ、Fe23/Auナノ粒子及び安定化CdSe/ZnS量子ドット間の全長はおよそ5nm(すなわち、レソルシンアレーンリガンド+オリゴペプチドリンカー)であり、係留した際のAuナノシェルによる量子ドットの最大ルミネセンス消光用の最適距離である。
【0107】
例7
蛍光顕微鏡を用いたウロキナーゼ用生体内センサーの試験
生体内ウロキナーゼアッセイを、測定の10日前にB16F19マウスメラノーマ細胞を注入したチャールスリバー雌マウスで試験した。マウスを麻酔し、その後Fe/Fe34ナノ粒子−TCPP組立体溶液をマウスの静脈(IV)内に又は腫瘍(IT)に直接注入により投与した。IV溶液はナノ粒子組立体200μgのPBS200ml溶液であった。IT溶液はナノ粒子組立体100μgのPBS200ml溶液であった。アッセイの活性を測定するため、上記マウスを再度麻酔し、単一光子計数検出器を用いる蛍光顕微鏡下に静置した。本装置を社内で構築した。蛍光顕微鏡(解像度は1m×1m×1m)により記録したマウスの左右肢からの単一光子計数スペクトルの結果を図11に示す(赤色は左肢、青色は右肢)。区画Aは、測定30分前にIT注入したマウス1の結果を示す。区画Bは、測定12時間前にIV注入したマウス2(腫瘍なし)の結果を示す。区画Cは、測定12時間前にIV注入したマウス3(両足に腫瘍を患う)の結果を示す。区画Dは、測定24時間前にIV注入したマウス4の結果を示す。区画Eは、IT又はIV注入を行わない対照マウスの結果を示す。区画Fは、Cの繰り返しによるマウス7の結果である。
【0108】
マウスの後肢での腫瘍領域を赤外線領域のレーザー光線(Ti:サファイアレーザー、λ=870nm、P=6.5mW)を用いて励起した。TCPPは、この励起波長で三光子励起を必要とする。腫瘍を患うマウスの右足で得た信号強度は腫瘍寸法と相関する一方、左肢での信号は明らかに相関しないことは注目に値する。仮説的説明としては、上記腫瘍によるナノ粒子組立体の摂取が極めて速やかで、静脈注入によって遭遇した第一の腫瘍がほとんどすべてを取り込む。IT注入がIV注入よりも効果が低いことが見出された。なぜなら、ウロキナーゼが開裂配列の大部分を開裂する時間を有せず、ポルフィリンが発光しないためである。
【0109】
例8
PBS中のウロキナーゼ活性の測定
本例において、検量曲線を記録してウロキナーゼ活性(ここで論述したプロテアーゼすべてのモデルとして)がウロキナーゼ濃度の増加によってどのように変化するかを示した。発光スペクトルの変化を、分光蛍光光度計(ISA−SPEX、Fluoromax−2、ISA社、ニュージャージー州)を用いて測定した。全ての化学薬品及び溶媒を、特記しない限り、Fisher/Acros社から購入した。
【0110】
健常ラットの尿のpHは6.7±0.4である。それゆえ、PBS(pH=6.8)において四種類のウロキナーゼ濃度、1×10-10M、1×10-9M、5×10-8M(2×)及び1×10-8Mを用いて曲線を記録した。ウロキナーゼ開裂配列を特徴とするFe/Fe34ナノ粒子−TCPP組立体をPBSに溶解した。先ず、ナノ粒子組立体を水1mlあたりナノ粒子0.5mgの濃度で水に溶解し、続いて30分間超音波処理してナノ粒子を水に可溶にした。次に、ナノプラットフォーム0.1mgを含有する水2.0mlをPBSと混合した。温度を34℃で一定に保った。連続的な励起を417nmで行った。蛍光スペクトルを濃度に応じて一定の時間隔(10分間、5分間、2分間又は1分間)で記録した。その後、ウロキナーゼをPBS混合液に添加した。656nmでの発光バンドを監視した。
【0111】
結果を図12に示す。ここで、kは(I:蛍光強度)/(I:ウロキナーゼ添加前の蛍光強度)対時間(秒)のプロットによって得た速度定数である。図から分かるように、開裂速度はウロキナーゼ濃度の増加指標当たり3〜5倍だけ増大する。それゆえ、開裂速度を腫瘍の高悪性度と相関させることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一粒子、第二粒子及び前記第一及び第二粒子間のリンケージを備え、
前記リンケージがプロテアーゼ共通配列を含むことを特徴とするプロテアーゼ活性の検出用ナノプラットフォーム組立体。
【請求項2】
前記第一及び第二粒子それぞれが、約1〜約100nmの直径を有する請求項1に記載の組立体。
【請求項3】
前記第一及び第二粒子が、それぞれ独立してナノ粒子、発色団/発光団、量子ドット、ビオロゲン並びにその組み合わせからなる群から選択される請求項1又は2に記載の組立体。
【請求項4】
前記第一及び第二粒子が同一でない請求項1〜3のいずれか一項に記載の組立体。
【請求項5】
前記第一及び第二粒子が両者ともナノ粒子、発色団/発光団又は量子ドットである請求項1〜4のいずれか一項に記載の組立体。
【請求項6】
前記粒子の少なくとも一つがナノ粒子である請求項1〜5のいずれか一項に記載の組立体。
【請求項7】
前記ナノ粒子が、金属元素及び金属塩からなる群から選択された金属を備え、該金属塩が酸化物、硫化物、セレン化物及びテルル化物からなる群から選択される請求項6に記載の組立体。
【請求項8】
前記ナノ粒子が二以上の金属の合金からなる請求項6に記載の組立体。
【請求項9】
前記ナノ粒子が、金(Au)、銀(Ag)、銅(Cu)、ニッケル(Ni)、パラジウム(Pd)、白金(Pt)、コバルト(Co)、ロジウム(Rh)、イリジウム(Ir)、鉄(Fe)、ルテニウム(Ru)、オスミウム(Os)、マンガン(Mn)、レニウム(Re)、スカンジウム(Sc)、チタン(Ti)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、亜鉛 (Zn)、イットリウム(Y)、ジルコニウム(Zr)、ニオブ(Nb)、モリブデン(Mo)、テクネチウム(Tc)、カドミウム(Cd)、ランタン(La)、ルテチウム(Lu)、ハフニウム(Hf)、タンタル(Ta)、タングステン(W)、アクチニウム(Ac)、ローレンシウム(Lw)、ラザホージウム(Rf)、ドブニウム(Db)、シーボーギウム(Sg)、ボーリウム(Bh)、ハッシウム(Hs)、マイトネリウム(Mt)、ダームスタチウム(Ds)、レントゲニウム(Rg)、ウンウンビウム(Uub)、セレン(Se)からなる群から選択された金属、並びにその酸化物、水酸化物、硫化物、セレン化物及びテルル化物、又はその組み合わせを含む請求項6に記載の組立体。
【請求項10】
前記酸化物が、FeO、Fe34、Fe23、Fexy、CuO、NiO、Ag2O及びMn23からなる群から選択される請求項9に記載の組立体。
【請求項11】
前記ナノ粒子が、金属又は金属合金コア及び金属シェルからなるコア/シェル型ナノ粒子である請求項6に記載の組立体。
【請求項12】
前記コアが、Au、Ag、Cu、Co、Fe及びPtからなる群から選択される請求項11に記載の組立体。
【請求項13】
前記シェルが、Au、Ag、Cu、Co、Fe、Pt、その金属酸化物、並びにその組み合わせからなる群から選択される請求項11又は12に記載の組立体。
【請求項14】
前記コア/シェル型ナノ粒子が、Fe/Au、Fe/Fe34及びAu/Fe23からなる群から選択される請求項11に記載の組立体。
【請求項15】
前記コアが約1nm〜約25nmの直径を有する請求項11〜14のいずれか一項に記載の組立体。
【請求項16】
前記シェルが約0.5nm〜約10nmの厚みを有する請求項11〜15のいずれか一項に記載の組立体。
【請求項17】
前記ナノ粒子が、ナノ粒子を囲む有機単分子層を備える安定化ナノ粒子である請求項6〜16のいずれか一項に記載の組立体。
【請求項18】
前記単分子層がリガンドからなる請求項17に記載の組立体。
【請求項19】
前記リガンドが、チオール、アルコール、ニトロ化合物、ホスフィン、ホスフィン酸化物、レソルシンアレーン、セレン化物、ホスフィン酸、ホスホン酸、スルホン酸、スルホン酸塩、カルボン酸、ジスルフィド、過酸化物、アミン、ニトリル、イソニトリル、チオニトリル、オキシニトリル、オキシシラン、アルカン、アルケン、アルキン、芳香族化合物及びセレン部分からなる群から選択された少なくとも一つの構成部分を含む請求項18に記載の組立体。
【請求項20】
前記単分子層が、アルカンチオレート単分子層、アミノアルキルチオレート単分子層、アルキルチオールサルフェート単分子層及び有機フェノールからなる群から選択される請求項17〜19のいずれか一項に記載の組立体。
【請求項21】
前記ナノ粒子が、トリオクチルホスフィン酸化物安定化ナノ粒子、アミン安定化ナノ粒子、カルボン酸安定化ナノ粒子、ホスフィン安定化ナノ粒子、チオール安定化ナノ粒子、アミノアルキルチオール安定化ナノ粒子及び有機フェノール安定化ナノ粒子からなる群から選択される請求項17〜20のいずれか一項に記載の組立体。
【請求項22】
前記粒子の少なくとも一つが発色団/発光団である請求項1〜5のいずれか一項に記載の組立体。
【請求項23】
前記発色団/発光団が、有機色素、無機色素、フルオロフォア、ホスホフォア、光吸収ナノ粒子、その組み合わせ、並びにその金属化錯体からなる群から選択される請求項22に記載の組立体。
【請求項24】
前記発色団/発光団が、クマリン、ピレン、シアニン、ベンゼン、N−メチルカルバゾール、エリスロシンB、N−アセチル−L−トリプトファンアミド、2、5-ジフェニルオキサゾール、ルブレン及びN−(3−スルホプロピル)アクリジニウムからなる群から選択された有機色素である請求項23に記載の組立体。
【請求項25】
前記発色団/発光団が、ポルフィリン、フタロシアニン、クロリン及び金属化発色団からなる群から選択された無機色素である請求項23に記載の組立体。
【請求項26】
前記ポルフィリンが、テトラカルボキシ−フェニル−ポルフィリン(TCPP)及びZn−TCPPからなる群から選択される請求項25に記載の組立体。
【請求項27】
前記発色団/発光団が、ルテニウムポリピリジル錯体、オスミウムポリピリジル錯体、ロジウムポリピリジル錯体、イリジウム(III)の3−(1−メチルベンゾイミダゾール−2−イル)-7-(ジエチルアミノ)−クマリン錯体及びイリジウム(III)の3-(ベンゾチアゾール−2−イル)−7−(ジエチルアミノ)−クマリン錯体からなる群から選択された金属化発色団である請求項25に記載の組立体。
【請求項28】
前記発色団/発光団が、りん光性色素、フルオレセイン、ローダミン及びアントラセンからなる群から選択されたフルオロフォア又はホスホフォアである請求項23に記載の組立体。
【請求項29】
前記粒子の少なくとも一つが量子ドットである請求項1〜5のいずれか一項に記載の組立体。
【請求項30】
前記量子ドットが、CdSe/ZnSコア/シェル型量子ドット、CdTe/CdSeコア/シェル型量子ドット、CdSe/ZnTeコア/シェル型量子ドット及び合金化半導体量子ドットからなる群から選択される請求項29に記載の組立体。
【請求項31】
前記量子ドットが、直径約10nm未満である請求項29又は30に記載の組立体。
【請求項32】
前記量子ドットが、量子ドットを囲むレソルシンアレーンリガンドを備える安定化量子ドットである請求項29〜31のいずれか一項に記載の組立体。
【請求項33】
前記リンケージが、前記共通配列を含むオリゴペプチドからなる請求項1〜32のいずれか一項に記載の組立体。
【請求項34】
前記オリゴペプチドが、前記プロテアーゼ開裂領域に対する少なくとも10個のアミノ酸N末端の親水性領域と、前記プロテアーゼ開裂領域に対するC末端連結領域とを含む請求項33に記載の組立体。
【請求項35】
前記C末端連結領域が、その末端にチオール反応性基を備える請求項34に記載の組立体。
【請求項36】
前記C末端連結領域が、システイン残基、リシン又はアスパラギン酸塩を含む請求項34に記載の組立体。
【請求項37】
前記C末端連結領域が、GGGC(配列番号:14)、AAAC(配列番号:15)、SSSC(配列番号:16)、TTTC(配列番号:17)、GGC(配列番号:38)、GGK(配列番号:39)、GC(配列番号:40)及びGGD(配列番号:42)からなる群から選択された配列を含む請求項34に記載の組立体。
【請求項38】
前記N末端領域が、SRSRSRSRSR(配列番号:1)、KSRSRSRSRSR(配列番号:19)、KKSRSRSRSRSR(配列番号:20)、CGGG(配列番号:23)、KGGG(配列番号:24)及びKGG(配列番号:37)からなる群から選択された配列を含む請求項34に記載の組立体。
【請求項39】
前記N末端領域が、リシン、オルチニン、2、4ジアミノ酪酸及び2、3ジアミノプロピオン酸からなる群から選択された少なくとも一つの末端基を更に含む請求項34〜38のいずれか一項に記載の組立体。
【請求項40】
前記共通配列が、セリンプロテアーゼ開裂配列、アスパラギン酸塩プロテアーゼ開裂配列、システインプロテアーゼ開裂配列及び金属プロテアーゼ開裂配列からなる群から選択される請求項1〜39のいずれか一項に記載の組立体。
【請求項41】
前記共通配列が、SGRSA(配列番号:2)、VPMSMRGG(配列番号:3)、IPVSLRSG(配列番号:4)、RPFSMIMG(配列番号:5)、VPLSLTMG(配列番号:6)、VPLSLYSG(配列番号:7)、IPESLRAG(配列番号:8)、SGSPAFLAKNR(配列番号:9)、DAFK(配列番号:10)、SGKPILFFRL(配列番号:11)、SGKPIIFFRL(配列番号:12)、GPLGMLSQ(配列番号:13)、HGPEGLRVGFYESDVMGRGHARLVHVEEPHT(配列番号:25)、GPQGLAGQRGIF(配列番号:26)、SLLKSRMVPNFN(配列番号:27)、SLLIFRSWANFN(配列番号:28)及びSGVVIATVIVIT(配列番号:29)からなる群から選択される請求項1〜40のいずれか一項に記載の組立体。
【請求項42】
前記リンケージが、SRSRSRSRSRSGRSAGGGC(配列番号:18)、KGGVPMSMRGGGC(配列番号:30)、KGGIPVSLRSGGC(配列番号:31)、KGGVPLSLTMGGC(配列番号:32)、KGGGSGRSAGGGC(配列番号:33)、CGGGSGRSAGGC(配列番号:34)、CGGGSGRSAGGGC(配列番号:35)、DGGSGRSAGGK(配列番号:36)及びKGGSGRSAGGD(配列番号:41)からなる群から選択される請求項1〜40のいずれか一項に記載の組立体。
【請求項43】
前記第一及び第二粒子が共にナノ粒子である請求項1〜21及び33〜42のいずれか一項に記載の組立体。
【請求項44】
前記第一及び第二粒子が異なるナノ粒子である請求項43に記載の組立体。
【請求項45】
前記第一及び第二粒子が共に発色団/発光団である請求項1〜5、22〜28及び33〜42のいずれか一項に記載の組立体。
【請求項46】
前記第一及び第二粒子が異なる発色団/発光団である請求項45に記載の組立体。
【請求項47】
前記リンケージが前記粒子の一つと結合するスペーサー部分を更に含む請求項45又は46に記載の組立体。
【請求項48】
前記スペーサー部分がカルボキシル、チオール、その組み合わせからなる群から選択された反応性基を含む請求項47に記載の組立体。
【請求項49】
前記スペーサー部分が、アミド結合を通じて前記オリゴペプチドの前記N末端領域と共有結合する請求項47又は48に記載の組立体。
【請求項50】
前記スペーサー部分が、ジスルフィド結合を通じて前記オリゴペプチドのC末端連結領域と共有結合する請求項47又は48に記載の組立体。
【請求項51】
前記スペーサー部分が、二つの末端カルボキシル基又は一つの末端カルボキシル基及び一つの末端チオール基を各々有するエチレングリコール、アミド、アルキレン及びエステルからなる群から選択される請求項47〜50のいずれか一項に記載の組立体。
【請求項52】
前記第一粒子がナノ粒子であり、前記第二粒子が発色団/発光団である請求項1〜4、6〜28及び33〜42のいずれか一項に記載の組立体。
【請求項53】
前記第一粒子がナノ粒子であり、前記第二粒子が量子ドットである請求項1〜4、6〜21及び29〜42のいずれか一項に記載の組立体。
【請求項54】
前記第一及び第二粒子を、該第一及び第二粒子間でフォルスター共鳴エネルギー転移又は表面プラズモン共鳴を可能にする距離だけ分離する請求項1〜53のいずれか一項に記載の組立体。
【請求項55】
前記第一及び第二粒子を、該第一粒子が前記第二粒子の励起状態を消光できるようにする距離だけ分離する請求項52又は53に記載の組立体。
【請求項56】
前記第一及び第二粒子を約10nm未満の距離だけ分離する請求項54又は55に記載の組立体。
【請求項57】
9個までの付加粒子を更に備え、該付加粒子のそれぞれが前記第一粒子にそれぞれのリンケージによって連結し、各リンケージがプロテアーゼ共通配列を備える請求項1〜56のいずれか一項に記載の組立体。
【請求項58】
前記付加粒子それぞれと前記第一粒子の間のそれぞれのリンケージが異なるプロテアーゼ共通配列を備える請求項57に記載の組立体。
【請求項59】
前記付加粒子が、発色団/発光団及び量子ドットからなる群から選択される請求項57又は58に記載の組立体。
【請求項60】
前記第一粒子がナノ粒子からなる群から選択される請求項57〜59のいずれか一項に記載の組立体。
【請求項61】
請求項1〜60のいずれか一項に記載の組立体と、薬学的に許容し得るキャリアーとを含む診断アッセイを備えることを特徴とする組成物。
【請求項62】
前記薬学的に許容し得るキャリアーが、水性緩衝液及びリポゾームからなる群から選択される請求項61に記載の組成物。
【請求項63】
前記リポゾームが約100nm〜約5μmである請求項62に記載の組成物。
【請求項64】
前記リポゾームがホスホリン脂質二重層及びコレステロールを含む請求項62又は63に記載の組成物。
【請求項65】
前記リポゾームが熱不安定性である請求項62〜64のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項66】
前記リポゾームがN−イソプロピル−アクリルアミドを含む請求項65に記載の組成物。
【請求項67】
前記リポゾームが腫瘍に特異的な抗体又はアプタマーを更に含む請求項62〜66のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項68】
(a)哺乳類からの体液試料を、請求項1〜60のいずれか一項に記載のナノプラットフォーム組立体を含む診断アッセイと接触させ、
(b)前記アッセイをエネルギー源に曝露し、
(c)前記アッセイの吸収又は発光スペクトルにおける変化を検出し、前記変化がプロテアーゼ活性に対応することを特徴とする哺乳類における癌性又は前癌性細胞に関連するプロテアーゼの活性を検出する方法。
【請求項69】
前記エネルギー源が、タングステンランプ、レーザーダイオード、レーザー、生物発光並びにその組み合わせからなる群から選択される請求項68に記載の方法。
【請求項70】
前記曝露が約400nm〜約1000nmの波長で生起する請求項68又は69に記載の方法。
【請求項71】
前記曝露が約500nm〜約1000nmの波長で生起する請求項68又は69に記載の方法。
【請求項72】
前記体液試料が尿及び血液からなる群から選択される請求項68〜71のいずれか一項に記載の方法。
【請求項73】
前記体液試料との接触前の前記アッセイの吸収又は発光スペクトルに対する体液試料との接触後の前記アッセイの最大吸収又は発光における青色シフトが、哺乳類における癌性又は前癌性細胞の存在を示す請求項68〜72のいずれか一項に記載の方法。
【請求項74】
最大吸収又は発光スペクトルにおける約5nm〜約200nm間の青色シフトが、哺乳類における癌性又は前癌性細胞の存在を示す請求項68〜73のいずれか一項に記載の方法。
【請求項75】
前記変化が、前記流体試料と接触する前の前記アッセイの吸収又は発光スペクトルに対する新たな可視光色又はルミネセンスバンドの出現を含み、該可視光色又はルミネセンスバンドが哺乳類における癌性又は前癌性細胞の存在を示す請求項68〜72のいずれか一項に記載の方法。
【請求項76】
前記アッセイの前記吸収又は発光スペクトルにおける変化が、約1秒間〜約30分間の時限にわたって観測される請求項68〜75のいずれか一項に記載の方法。
【請求項77】
前記吸収又は発光スペクトルにおける変化が、uPA、MMP−1、MMP−2、MMP−7並びにその組み合わせからなる群から選択されたプロテアーゼの活性を示す請求項68〜76のいずれか一項に記載の方法。
【請求項78】
前記プロテアーゼ活性を癌進行の予後と相関させることを更に備える請求項77に記載の方法。
【請求項79】
uPA及びMMP−7両者の活性並びにMMP−1及びMMP−2両者の活性の欠如の検出が、血管新生の予後と相関する請求項78に記載の方法。
【請求項80】
uPA、MMP−1、MMP−2、MMP−7の全ての活性の検出が、細胞侵潤の予後と相関する請求項78に記載の方法。
【請求項81】
(a)請求項61〜67のいずれか一項に記載の組成物を哺乳類に投与し、
(b)前記組成物中のアッセイを活性化し、
(c)癌性又は前癌性細胞を有することが疑われる哺乳類の領域をエネルギー源に曝露し、
(d)前記アッセイの吸収又は発光スペクトルにおける変化を検出することを備え、
前記変化がプロテアーゼ活性に対応することを特徴とする哺乳類における癌性又は前癌性細胞に関連するプロテアーゼの活性を検出する方法。
【請求項82】
前記投与工程(a)が、前記組成物を前記癌性又は前癌性細胞を有することが疑われる哺乳類の領域内へ直接注入することを備える請求項81に記載の方法。
【請求項83】
前記投与工程(a)が、前記組成物を前記哺乳類の血流内へ注入することを備える請求項81に記載の方法。
【請求項84】
前記組成物が、注入後一時間以内に前記癌性又は前癌性細胞を有することが疑われる領域に到達する請求項83に記載の方法。
【請求項85】
前記活性化工程(b)が、前記アッセイを前記薬学的に許容し得るキャリアーから放出するに十分な温度へ前記アッセイを加熱することを備える請求項81〜84のいずれか一項に記載の方法。
【請求項86】
前記加熱が、前記アッセイの光物理学的加熱からなる請求項85に記載の方法。
【請求項87】
前記加熱が、前記薬学的に許容し得るキャリアーの熱崩壊を引き起こす請求項81〜86のいずれか一項に記載の方法。
【請求項88】
前記エネルギー源が、タングステンランプ、レーザーダイオード、レーザー、生物発光及びその組み合わせからなる群から選択される請求項81〜84のいずれか一項に記載の方法。
【請求項89】
前記曝露工程が、約400nm〜約500nm又は約800nm〜約900nmの波長で起こる請求項81〜88のいずれか一項に記載の方法。
【請求項90】
最大吸収又は発光スペクトルにおける約5nm〜約200nmの青色シフトが、哺乳類における癌性又は前癌性細胞の存在を示す請求項81〜89のいずれか一項に記載の方法。
【請求項91】
前記変化が、前記活性化(b)の前の前記アッセイの吸収又は発光スペクトルに対する新たなルミネセンスバンドの出現を含み、該ルミネセンスバンドが哺乳類における癌性又は前癌性細胞の存在を示す請求項81〜89のいずれか一項に記載の方法。
【請求項92】
前記プロテアーゼ活性を癌進行の予後と相関させることを更に備える請求項81に記載の方法。
【請求項93】
前記アッセイの活性化後10分以内に検出したプロテアーゼ活性を、癌性又は前癌性細胞が高悪性度である高い確率と相関する請求項81〜92のいずれか一項に記載の方法。
【請求項94】
前記アッセイの活性化後最初の30分以内でのプロテアーゼ活性検出の欠如が、前記癌性又は前癌性細胞が高悪性度である極めて低い確率と相関する請求項81〜92のいずれか一項に記載の方法。
【請求項95】
吸収又は発光スペクトルにおける変化が、uPA、MMP−1、MMP−2、MMP−7、並びにその組み合わせからなる群から選択されたプロテアーゼの活性を示す請求項81〜94のいずれか一項に記載の方法。
【請求項96】
uPA及びMMP−7両方の活性、並びにMMP−1及びMMP−2両方の活性の欠如の検出が、血管新生の予後と相関する請求項95に記載の方法。
【請求項97】
uPA、MMP−1、MMP−2、MMP−7の全ての活性の検出が、細胞侵潤の予後と相関する請求項95に記載の方法。
【請求項98】
前記プロテアーゼ活性が、KGGVPMS(配列番号:43)、MRGGGC(配列番号:44)、KGGIPVS(配列番号:45)、LRSGGC(配列番号:46)、KGGVPLS(配列番号:47)、LTMGGC(配列番号:48)、KGGGSGR(配列番号:49)、SAGGGC(配列番号:50)、CGGGSGR(配列番号:51)、SAGGC(配列番号:52)、DGGSGR(配列番号:53)、SAGGK(配列番号:54)、SRSRSRSRSRSGR(配列番号:55)、KGGSGR(配列番号:56)及びSAGGD(配列番号:57)からなる群から選択された二つ以上のオリゴペプチド配列になる請求項81に記載の方法。
【請求項99】
前記癌性又は前癌性細胞が、AIDS関連癌、AIDS関連リンパ腫、肛門癌、虫垂癌、小児期小脳星細胞腫、小児期大脳星細胞腫、基底細胞癌腫、肝外胆管癌、小児期脳幹神経膠腫、成人脳腫瘍、小児期悪性神経膠腫、小児期脳室上衣腫、小児期髄芽腫、小児期テント上原始神経外胚葉性腫瘍、小児期視覚路及び視床下部神経膠腫、乳癌、妊娠関連乳癌、小児期乳癌、男性乳癌、小児期カルチノイド腫瘍、胃腸カルチノイド腫瘍、原発性中枢神経系リンパ腫、子宮頸癌、結腸癌、小児期結腸直腸癌、食道癌、小児期食道癌、眼内メラノーマ、網膜芽細胞腫、成人神経膠腫、成人(原発性)肝細胞癌、小児期(原発性)肝細胞癌、成人ホジキンリンパ腫、小児期ホジキンリンパ腫、島細胞腫瘍、カポジ肉腫、腎臓(腎細胞)癌、小児期腎臓癌、成人(原発性)肝臓癌、小児期(原発性)肝臓癌、非小細胞型肝臓癌、小細胞型肝臓癌、AIDS関連リンパ腫、バーキットリンパ腫、成人非ホジキンリンパ腫、小児期非ホジキンリンパ腫、原発性中枢神経系リンパ腫、メラノーマ、成人悪性中皮腫、小児期中皮腫、原発不明転移性扁平上皮性頸部癌、口腔癌、小児期多重内分泌腫瘍形成症候群、多発性骨髄腫/プラズマ細胞腫瘍、菌状息肉腫、脊髄形成異常性症候群、脊髄形成異常/脊髄増殖性疾患、成人急性脊髄性白血病、小児期急性脊髄性白血病、多発性骨髄腫、神経芽細胞腫、非小細胞肺癌、小児期卵巣癌、卵巣上皮癌、卵巣胚細胞腫瘍、卵巣低悪性度腫瘍、全子宮頸部癌、小児期全子宮頸部癌、島細胞全子宮頸部癌、副甲状腺癌、陰茎癌、プラズマ細胞腫瘍/多発性骨髄腫、胸膜肺芽腫、前立腺癌、直腸癌、小児期腎細胞癌、腎盂及び尿管、移行細胞癌、成人柔組織肉腫、小児期柔組織肉腫、子宮肉腫、皮膚癌(非メラノーマ)、小児期皮膚癌、メラノーマ、メルケル細胞皮膚癌腫、小細胞肺癌、小腸癌、偏平上皮細胞癌、胃癌、小児期胃癌、皮膚T細胞リンパ腫、精巣癌、甲状腺癌、小児期甲状腺癌及び膣癌からなる群から選択された癌に関連する請求項68〜98のいずれか一項に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公表番号】特表2011−517934(P2011−517934A)
【公表日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−549817(P2010−549817)
【出願日】平成21年3月3日(2009.3.3)
【国際出願番号】PCT/US2009/035875
【国際公開番号】WO2009/111470
【国際公開日】平成21年9月11日(2009.9.11)
【出願人】(508374807)カンザス ステイト ユニバーシティ リサーチ ファウンデーション (3)
【Fターム(参考)】