説明

プロテクタ内への水侵入確認方法

【課題】プロテクタのどこから凝縮水が侵入したかや、プロテクタ内に侵入した凝縮水の状態を確実に把握することができるプロテクタ内への水侵入確認方法を提供すること。
【解決手段】エンジン53を作動させて排気管55内の凝縮水を飛散させ、プロテクタ1内に侵入する凝縮水の状態を調べるプロテクタ1内への水侵入確認方法である。この方法では、環状の可視化装置用治具67と環状のプロテクタ用治具69とを軸方向を合わせて着脱可能に接続した観測装置59を用いる。この観測装置59は、プロテクタ1を備えており、観測装置59の中心孔にプロテクタ1の内部を観察可能なようにファイバースコープ73を挿入する。そして、観測装置59を排気管55のガスセンサ2の取付位置に配置し、エンジン53を作動させて、ファイバースコープ73によってプロテクタ1内に侵入する凝縮水の状態を観測する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、四輪や二輪の車両の排気管に配置される、O2センサ、NOxセンサ等のセンサに用いられるプロテクタ内への水侵入確認方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、自動車などの排気ガス中の特定ガス、例えば酸素やNOx(窒素酸化物)などの濃度に応じ、大きさの異なる起電力が生じたり、抵抗値が変化したりする検出素子を備えたガスセンサが知られている。
【0003】
この種のガスセンサにおいては、水や被毒物質等が検出素子に直接に当ることを防ぐために、検出素子の周囲を覆う様に、(排気ガスの通過は可能な)プロテクタが取付けられている。
【0004】
ところで、エンジンの停止中や冷間始動時に、排気ガス中に含まれる水分が凝縮して(以下凝縮水という)、排気管の内壁面に凝縮水が付着することがある。この状態でエンジンを通常始動させると、排気管の内壁面に付着した凝縮水は、エンジンの振動や排気ガスの流れによって飛散する。そして、飛散した凝縮水が、プロテクタに当たった後に、加熱された検出素子に付着すると、熱衝撃によって検出素子に亀裂が生じることがある。
【0005】
この対策として、ガスセンサを排気管に取付けて使用する前に、予め検出素子が被水により割れるか否かを評価する方法が開発されている。この評価を行う試験方法としては、例えば、ガスセンサの取付位置にプロテクタを備えたカーボン素子を配置し、このカーボン素子に付着した凝縮水の状態に基づいて検出素子の被水状態を推定する方法が知られている(特許文献1、2参照)。
【0006】
また、これとは別に、凝縮水の影響を受けにくいガスセンサの設計のために、排気管内のガスセンサの取付位置に可視化装置を取付けて、凝縮水の飛散状態を調べる装置が提案されている。この装置とは、プロテクタの代わりに円筒状の透明なハウジングを用い、このハウジング内にファイバースコープを挿入し、ハウジングに対して飛散する凝縮水の状態を実際に観察するものである(特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−234757号公報
【特許文献2】特開2008−281583号公報
【特許文献3】特開2009−53128号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、プロテクタ内部に侵入した凝縮水全てがカーボン素子に付着することはなく、上述した特許文献1、2の技術では、プロテクタ内への凝縮水の侵入の状態を正確に把握できないという問題があった。特に、プロテクタのどこから凝縮水が侵入したのかや、プロテクタ内に侵入した凝縮水がどのような挙動をするかなど、プロテクタ内における凝縮水の状態を精度良く把握できないという問題があった。
【0009】
また、上述した特許文献3の技術では、ガスセンサに対して飛んでくる凝縮水の量などは把握できるが、実際のプロテクタを排気管に取付けているわけでないため、前記特許文献1、2の技術と同様に、プロテクタのどこから凝縮水が侵入するかや、プロテクタ内に侵入した凝縮水がどのような挙動をするかなど、プロテクタ内における凝縮水の状態を正確に把握することができないという問題があった。
【0010】
そのため、プロテクタ内に侵入する凝縮水に対する有効な対策を立てることが難しいという問題があった。
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであり、プロテクタのどこから凝縮水が侵入したかや、プロテクタ内に侵入した凝縮水の挙動などを確実に把握することができるプロテクタ内への水侵入確認方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
(1)本発明は、請求項1に記載の様に、エンジンの排気管内(例えばガスセンサの取付位置)にガスセンサのプロテクタを配置し、前記エンジンを作動させて前記排気管内の水を飛散させ、前記プロテクタ内に侵入する水の状態を、可視化装置を用いて調べるプロテクタ内への水侵入確認方法であって、軸方向に第1貫通孔を有し、該第1貫通孔内に挿通された前記可視化装置を保持する環状の可視化装置用治具と、軸方向に第2貫通孔を有し、先端側に前記プロテクタが取付可能な環状のプロテクタ用治具とを用い、前記プロテクタ用治具に前記プロテクタを取付けて、プロテクタ付き治具を作製するとともに、前記第2貫通孔内に前記可視化装置の先端側を挿入するようにして、前記プロテクタ付き治具の後端側と前記可視化装置用治具の先端側とを前記軸方向を合わせて組み付け、その後、前記プロテクタが排気管中の排気ガスに接するように前記排気管に取付けることを特徴とする。
【0012】
本発明では、プロテクタが取付け可能なプロテクタ用治具に、可視化装置を保持する可視化装置用治具を組み付けると共に、可視化装置の先端側をプロテクタ用治具の第2貫通孔内に挿入することで、プロテクタを排気管に取付けている。これにより、エンジンを作動させた場合に、プロテクタ内に侵入する凝縮水の状態を確実に把握することができる。
【0013】
つまり、本発明では、実際のプロテクタを排気管に取付け、その内部を可視化装置で確認することができるため、プロテクタ内への凝縮水の侵入を確実に捉えることが可能になり、被水リスクを漏らさず抽出することが可能になる。また、プロテクタ内への凝縮水の侵入経路やプロテクタ内での凝縮水の挙動を確実に検出できるので、新規のより好ましいプロテクタの開発が可能になり、更に、ガスセンサの排気管へのより好ましい取付けレイアウトを求めることができる。
【0014】
即ち、本発明により、実際のプロテクタ内への凝縮水の侵入状況を確実に把握できるので、凝縮水に対する有効な対策を立てることが容易となる。
(2)本発明では、請求項2に記載の様に、同一種類又は異なる種類の複数のプロテクタに対して、それぞれ前記プロテクタ用治具を取付けて、複数の前記プロテクタ付き治具を作製するとともに、前記複数のプロテクタよりも少ない特定数の可視化装置用治具がいずれのプロテクタ付き治具にも着脱可能に構成することができる。
【0015】
本発明のプロテクタ内への水侵入確認方法は、新規のより好ましいプロテクタの開発等に行われることが多く、このため、同一種類の複数のプロテクタや、異なる種類(異種)の複数のプロテクタを用いて行われることが多い。すると、可視化装置及び可視化装置用治具についても、それぞれプロテクタやプロテクタ用治具(プロテクタ付き治具)に一対一に対応する個数を準備する必要があるが、可視化装置及び可視化装置用治具を複数準備すると、装置が複雑となり、またコストが高くなる。
【0016】
そこで、本発明では、同一種類の複数のプロテクタ又は異なる種類のプロテクタに対して、それぞれ凝縮水の侵入状態を調べる場合(試験する場合)には、複数のプロテクタ付き治具に対して、それぞれに着脱可能な、複数のプロテクタよりも少ない特定数の可視化装置用治具を準備する。このようにすれば、例えば、単一の可視化装置を保持させた可視化装置用治具に対して、各プロテクタ付き治具を付け替えることにより、複数のプロテクタに対する試験を、単一の可視化装置及び可視化装置用治具を用いて行うことができる。従って、試験に使用する装置を簡易化でき、コスト的に有利である。
【0017】
なお、「複数のプロテクタよりも少ない特定数の可視化装置用治具」とは、例えば、プロテクタが3個ある場合に、可視化装置用治具が1個、又は2個であるように、可視化装置用治具の個数がプロテクタの個数よりも少ない個数であることを指す。
【0018】
(3)本発明では、請求項3に記載の様に、可視化装置用治具とプロテクタ用治具との間に、両治具間におけるガスのリークを防止する第1気密部材を配置することが好ましい。
【0019】
これにより、可視化装置用治具とプロテクタ用治具との間におけるガスのリークを防止することができる。
(4)本発明では、請求項4に記載の様に、可視化装置と、少なくとも可視化装置用治具及びプロテクタ用治具との間に、両部材間におけるガスのリークを防止する第2気密部材を配置することが好ましい。
【0020】
これにより、可視化装置と可視化装置用治具又はプロテクタ用治具との間におけるガスのリークを防止することができる。
(5)本発明では、請求項5に記載の様に、可視化装置の先端が、プロテクタ用治具におけるプロテクタの取付位置より突出しないことが好ましい。
【0021】
これにより、プロテクタの内部を広範囲に確認(例えば視認や撮影)することができると共に、可視化装置をプロテクタ内部へ挿入した場合に、可視化装置がプロテクタ内での凝縮水の挙動に影響を及ぼす問題を解消できる。よって、プロテクタ内への凝縮水の侵入状況を正確に把握できる。
【0022】
(6)本発明では、請求項6に記載の様に、プロテクタとしては、内側の筒状の内部プロテクタと、内部プロテクタの外周側を覆う筒状の外部プロテクタとを、同心状に配置した2重プロテクタが挙げられる。
【0023】
プロテクタが2重構造の場合には、プロテクタの外部から内部プロテクタ内に侵入する凝縮水の状態(プロテクタ内への凝縮水の侵入経路やプロテクタ内での凝縮水の挙動)が1重プロテクタとは異なる。よって、外部プロテクタに向かって飛んでくる凝縮水を確認するだけでは、内部プロテクタ内に侵入する凝縮水の状態を確認することは困難である。
【0024】
しかしながら、本発明では、内部プロテクタの内部を確認できる位置に可視化装置を配置することにより、二重プロテクタであっても、内部プロテクタ内に侵入する凝縮水の状態を確実に把握することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】実施形態の観測対象のプロテクタを備えたガスセンサの部分断面図である。
【図2】プロテクタ内への水侵入確認方法に用いる試験装置を示す説明図である。
【図3】図2のA−A断面を拡大し、観測装置を排気管に取付けた状態を示す説明図である。
【図4】観測装置を軸方向に沿って破断した状態を示す説明図である。
【図5】(a)はプロテクタ用治具を示す平面図、(b)はプロテクタ用治具及びプロテクタを示す正面図、(c)は可視化装置用治具を示す平面図、(d)は可視化装置用治具及びプロテクタ付き治具を示す正面図、(e)は観測装置本体を示す正面図である。
【図6】実験例1の実験方法を説明する説明図である。
【図7】他の観測装置を示す説明図である。
【図8】(a)は他のプロテクタ用治具及びプロテクタを示す正面図、(b)は他の可視化装置用治具及びプロテクタ付き治具を示す正面図、(c)は他の観測装置本体を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明が適用されたプロテクタ内への水侵入確認方法の実施形態について図面を用いて説明する。
[実施形態]
a)最初に、本実施形態のプロテクタ内への水侵入確認方法の対象となるプロテクタを備えたガスセンサについて簡単に説明する。
【0027】
図1に示す様に、本実施形態では、プロテクタ内への水侵入確認方法の対象となるプロテクタ1を備えたガスセンサ2は、例えば自動車の排気ガスの空燃比を検出するいわゆる全領域空燃比センサである。
【0028】
このガスセンサ2は、排気管に固定するためのネジ部3が形成された筒状の主体金具5と、軸線方向(図中上下方向)に延びる板状形状の検出素子7と、検出素子7の径方向周囲を取り囲むように配置される筒状のセラミックスリーブ9と、検出素子7の後端部の周囲を取り囲む状態で配置される絶縁コンタクト部材11と、検出素子7と絶縁コンタクト部材11との間に配置される複数の接続端子13と、を備えている。
【0029】
このうち、検出素子7は、軸線方向に延びる板状形状の素子部15と、同じく軸線方向に延びる板状形状のヒータ17とが積層されたものであり、測定対象となるガスに向けられる先端側には、多孔質層19に覆われた検出部21が形成されている。
【0030】
主体金具5は、略筒状形状であり、軸線方向に貫通する貫通孔23と、貫通孔23の径方向内側に突出する棚部25とを有する。この主体金具5は、検出部21を貫通孔23の先端側外部に配置し、貫通孔23の後端側外部に複数の電極端子部27を配置する状態で検出素子7を保持するよう構成されている。なお、主体金具5の貫通孔23の内部には、セラミックホルダ29、粉末充填層31、33、セラミックスリーブ9が配置されている。
【0031】
また、主体金具5の先端部35の外周には、検出素子7の突出部分を覆う金属製の2重構造の前記プロテクタ1、即ち同心状に配置された円筒形状の外部プロテクタ39及び内部プロテクタ41からなるプロテクタ1が溶接等によって取付けられている。
【0032】
更に、主体金具5の後端側外周には外筒43が固定され、外筒43の内側には絶縁コンタクト部材11を保持する保持部材45が固定されている。また、外筒43の後端側の開口部にはグロメット47が配置され、グロメット47には、検出素子7の各電極端子部27と接続される複数のリード線49が挿通されている。
【0033】
b)次に、本実施形態のプロテクタ内への水侵入確認方法に用いられる装置の全体構成ついて、図2及び図3に基づいて説明する。
図2に示す様に、プロテクタ内への水侵入確認方法に用いられる試験装置51は、自動車等に用いられるエンジン53の排気管55の正規ポート57、即ち、通常、エンジン53の作動中に空燃比を検出する前記ガスセンサ2を取付けるポートに、観測装置59を取付けたものである。
【0034】
この正規ポート57は、図3に示す様に、円筒形の排気管55の径方向の一端側(図3の上方)に形成された円形の貫通孔61と、貫通孔61の周囲を囲む様に排気管55の外周側に接合された環状の観測装置取付部63とから構成されている。
【0035】
この観測装置取付部63の内周面には、ねじ部65が形成されており、後に詳述する様に、このねじ部65に観測装置59をねじ止めすることにより、プロテクタ1を排気管55内に突出させた状態で、観測装置59を排気管55に対して垂直に取付けることができる。
【0036】
c)次に、本実施形態の要部である観測装置59について詳しく説明する。
(1)観測装置59の構成
図4に示す様に、観測装置59は、筒状の可視化装置用治具67と筒状のプロテクタ用治具69と筒状のプロテクタ1とを、同軸に結合した観測装置本体71を備えるとともに、観測装置本体71の軸中心に、ファイバースコープ73(特許請求の範囲の可視化装置に相当)を取付けたものである。
【0037】
このうち、可視化装置用治具67は、例えば、ステンレス鋼からなる筒状の先端金具75と例えば、ステンレス鋼からなる筒状の後端金具77とを、同軸にねじ結合したものであり、この先端金具75と後端金具77との間には、例えば、フッ素ゴムからなる環状の弾性を有するパッキン79(特許請求の範囲の第2気密部材に相当)が配置されている。
【0038】
前記先端金具75は、先端部80とそれより外径の大きな(後端側の)後端部81とから構成されており、後端部81の外周の後端側は六角形状とされている。なお、先端部80の外周面には、プロテクタ用治具69との結合のためのねじ部83が形成されている。
【0039】
また、先端金具75の軸中心には、中心孔85が形成されており、中心孔85は、ファイバースコープ73の外径より僅かに内径が大きな中心孔先端部87と、それより内径の大きな(後端側の)中心孔後端部89とから構成されている。
【0040】
この中心孔後端部89の後端側の内周面には、先端金具75と後端金具77とを結合するためのねじ部91が形成されている。なお、中心孔後端部89の先端側には前記パッキン79が配置されている。
【0041】
一方、後端金具77も、先端部93とそれより外径の大きな(後端側の)後端部95とから構成されており、後端部95の外周は六角形状とされている。後端金具77の軸中心には、ファイバースコープ73の外径より僅かに内径が大きな中心孔97が形成されている。また、先端部93の外周面には、先端金具75と後端金具77とを結合するためのねじ部99が形成されている。
【0042】
なお、先端金具75の中心孔85と後端金具77の中心孔97とにより、可視化装置用治具67の第1貫通孔100が構成されている。
更に、前記プロテクタ用治具69は、先端側より、プロテクタ1が外嵌されて接合される先端部101と、先端部101より外径が大きく、その外周に(観測装置59を)排気管55に固定するためのねじ部103を備えた中央部105と、中央部105より外径の大きな後端部107とを備えている。
【0043】
また、プロテクタ用治具69の軸中心には、中心孔(第2貫通孔)109が形成されており、中心孔109は、ファイバースコープ73の外径より僅かに内径が小さい中心孔先端部111と、中心孔先端部111より内径の大きな(後端側の)中心孔中央部113と、中心孔中央部113より内径の大きな(後端側の)中心孔後端部115とから構成されている。なお、中心孔中央部113と中心孔後端部115の内径は、ファイバースコープ73の外径より大である。
【0044】
この中心孔後端部115の内周面には、撮影用治具67とプロテクタ治具69とを結合するためのねじ部117が形成されている。
なお、第1貫通孔100と第2貫通孔109とによって、ファイバースコープ73が挿入される結合貫通孔118が構成され、プロテクタ用治具69とプロテクタ1とによってプロテクタ付き治具120が構成されている。
【0045】
更に、可視化装置用治具67とプロテクタ用治具69との間、詳しくは、プロテクタ用治具69の後端部107の後端面と撮影用治具67の後端部81の先端面との間にて、撮影用治具67の先端部79に外嵌するように、例えば、ステンレス鋼からなる環状のパッキン119(特許請求の範囲の第1気密部材に相当)が配置されている。
【0046】
そして、前記ファイバースコープ73は、観測装置本体71の軸中心の結合貫通孔118に挿入される様に、即ち、後端金具77の中心孔97、先端金具45の中心孔先端部87、プロテクタ用治具69の中心孔中心部113を貫くように配置されている。
【0047】
このファイバースコープ73の先端は、プロテクタ用治具69の中心孔先端部111と中心孔中央部113との間の段部121に当接して位置決めされており、その先端は、プロテクタ1の接合部分より後端側に配置されている。
【0048】
従って、このファイバースコープ73から、プロテクタ1の内部(詳しくは内部プロテクタ41の内部)の画像を得ることができる。
なお、前記プロテクタ1は、前記ガスセンサ2に取付けられるものと同様な形状の2重構造を有しており、外部プロテクタ39及び内部プロテクタ41の側壁には、排気ガスの通過が可能なように、それぞれ通気孔40、42が複数形成されている。なお、内部プロテクタ41の先端には排気及び排水のための先端孔44が形成されている。
【0049】
(2)観測装置59の組み立て方法
観測装置59を組み立てる場合には、まず、図5(b)に示す様に、プロテクタ用治具69の先端部101にプロテクタ1を外嵌し、その周囲を溶接(例えばレーザ溶接)して接合する。これにより、プロテクタ付き治具120が作製される。
【0050】
詳しくは、プロテクタ1は、外部プロテクタ39と内部プロテクタ41の2重構造であるので、最初に内部プロテクタ41をプロテクタ用治具69の先端部101に嵌め、その後、内部プロテクタ41の外側に外部プロテクタ39を嵌め、溶接によって、外部プロテクタ39と内部プロテクタ41とを先端部101に接合する。
【0051】
次に、前記図4に示す様に、先端金具75の中心孔後端部89にパッキン79を配置し先端金具75のねじ部91に後端金具77のねじ部99を部分的に螺合させて、可視化装置用治具67を作製する。
【0052】
次に、図5(d)に示す様に、この可視化装置用治具67とプロテクタ付き治具120との間に、パッキン119を挟むようにして、可視化装置用治具67の先端金具75の先端部79のねじ部83とプロテクタ付き治具120の後端部107のねじ部117とを螺合して、可視化装置用治具67とプロテクタ付き治具120とを一体に固定する。これにより、図5(e)に示す様な、観測装置本体71が作製される。
【0053】
次に、前記図4に示す様に、観測装置本体71の後端側より、その軸中心の結合貫通孔118にファイバースコープ73を挿入し、上述した段部121に当接させる。
その後、後端金具77を先端金具75に強くねじ込むことにより、可視化装置用治具67(従って観測装置本体71)とファイバースコープ73とを一体に固定する。
【0054】
つまり、先端金具75に後端金具77をねじ込むにつれて、パッキン79が押し潰されて平面方向に広がって、ファイバースコープ73を外周側から押圧することにより、ファイバースコープ73を可視化装置用治具67に固定する。
【0055】
(3)観測装置59の取付け方法
観測装置59を排気管55に取付ける場合には、前記図3に示す様に、観測装置59を正規ポート57にねじ止めする。
【0056】
詳しくは、観測装置59の先端金具69の中央部105に、例えば、ステンレス鋼からなる環状のパッキン125を嵌め、中央部105のねじ部103を観測装置取付部63のねじ部65に螺合させる。
【0057】
これにより、プロテクタ1を排気管55内に突出させた状態で、観測装置59を排気管55に対して垂直に取付けることができる。
なお、観測装置59のファイバースコープ73の後端には、図示しないが、ファイバースコープ73からの光情報を捉えるCCDカメラ、捉えた情報(画像)を表示するモニタ、情報(画像)を記録するビデオ装置等を接続する。
【0058】
また、観測装置59には、図示しないが、ファイバースコープ73の先端面が結露することを防止するヒータや、プロテクタ1の内部を照らすライト等を設けてよい。
d)次に、プロテクタ内への水侵入確認方法の実験手順について説明する。
【0059】
(1)実験例1(1種類のプロテクタによる確認方法)
図6に示す様に、排気管55の正規ポート57に観測装置59を取付けた状態で、エンジン53、エンジン53の冷却水、及び排気管55を、例えば露点よりも低温下に晒す。なお、エンジン53の制御に用いるガスセンサ2は、正規ポート57と異なる箇所(例えば正規ポート57の下流側)に取付けておけばよい。
【0060】
その後、エンジン53を少なくとも一回(ここでは複数回)所定時間(例えば合計2分間)作動させて、凝縮水を排気管55内に発生させる。
その後、この発生させた凝縮水を排気ガスの掃気(レーシング:Racing)によって下流側に飛ばし、その際にプロテクタ1内に侵入する凝縮水の状態を観測装置59によって確認する。
【0061】
なお、ファイバースコープ73の視野は、ファイバースコープ73の先端から円錐形状(軸中心:光軸から60°の角度)に広がる範囲であるので、ファイバースコープ73によって得られる画像には、プロテクタ1の内部全体(詳しくは内部プロテクタ41の内部全体)の画像が含まれている。
【0062】
(2)実験例2(他の種類のプロテクタによる確認方法)
前記実験例1によって、プロテクタ1における凝縮水の侵入状態を調べた後に、図7及び図8に示す様に、実験例2によって、他の構造のプロテクタ131を備えた他の観測装置133を用いて同様な実験を行う。
【0063】
この実験例2の観測装置133においては、プロテクタ131(従ってプロテクタ付き治具135)の構造は、前記実験例2の観測装置59とは異なるが、それ以外の部品(可視化装置用治具67、ファイバースコープ73等)は、前記実験例1の観測装置59と同じである。
【0064】
なお、プロテクタ用治具137自体は、その形状は実験例1と同じであるが、他の構造のプロテクタ131が接合されるものであるので、製品自体は異なるものである。従って、このプロテクタ用治具137は、前記実験例1に使用し可視化装置用治具67とねじによる結合が可能である。
【0065】
本実験例2では、予め、他の構造のプロテクタ131を実験例1と同様な構造のプロテクタ用治具137に接合して、プロテクタ付き治具135を作製しておく。
そして、前記実験例1の後に、観測装置59を排気管55から取り外し、その観測装置59において、可視化装置用治具67とプロテクタ用治具69(従ってプロテクタ付き治具135)とのねじ結合を緩めて、可視化装置用治具67とプロテクタ付き治具135とを分離する。このとき、ファイバースコープ73は、可視化装置用治具67に固定されたままである。
【0066】
その後、可視化装置用治具67に、前記他の構造のプロテクタ付き治具135をねじ止めすることにより、新たな観測装置133を構成する。
従って、この新たな観測装置133を排気管55に取付けて、上述の実験例1と同様にして、プロテクタ131への凝縮水の侵入確認を行うことができる。
【0067】
e)この様に、本実施形態では、プロテクタ1が取付け可能なプロテクタ用治具69に、可視化装置(ファイバースコープ73)を保持する可視化装置用治具67を組み付けるとともに、ファイバースコープ73の先端側をプロテクタ用治具69の第2貫通孔109に挿入することで、プロテクタ1を排気管55に取付ける。これにより、エンジン53を作動させた場合に、プロテクタ1内に侵入する凝縮水の状態を確実に把握することができる。
【0068】
つまり、実際のプロテクタ1を排気管55に取付け、その内部をファイバースコープ73で確認することができるため、プロテクタ1内への凝縮水の侵入を確実に捉えることが可能になり、被水リスクを漏らさず抽出することが可能になる。また、プロテクタ1内への凝縮水の侵入経路やプロテクタ1内での凝縮水の挙動を確実に検出できるので、新規のより好ましいプロテクタ1の開発が可能になり、更に、ガスセンサ2の排気管55へのより好ましい取付けレイアウトを求めることができる。
【0069】
また、本実施形態では、同一種類の複数のプロテクタ1又は異なる種類のプロテクタ131に対して、それぞれ凝縮水の侵入状態を調べる場合には、複数のプロテクタ付き治具120、135に対して、それぞれ着脱可能な、複数のプロテクタ1よりも少ない特定数の可視化装置用治具67を準備する。このようにすれば、単一の(ファイバースコープ73を取付けた)可視化装置用治具67に対して、各プロテクタ付き治具120、135を付け替えることにより、複数のプロテクタ1、131に対する試験を、単一のファイバースコープ73及び可視化装置用治具67を用いて行うことができる。従って、試験に使用する装置を簡易化でき、コスト的に有利である。
【0070】
更に、本実施形態では、可視化装置用治具67とプロテクタ用治具69との間に、両治具間におけるガスのリークを防止するパッキン119を配置している。これにより、可視化装置用治具67とプロテクタ用治具69との間におけるガスのリークを防止することができる。
【0071】
その上、本実施形態では、ファイバースコープ73と観測装置本体71との間に、両部材間におけるガスのリークを防止するパッキン79を配置している。これにより、ファイバースコープ73と観測装置本体71との間におけるガスのリークを防止することができる。
【0072】
また、本実施形態では、ファイバースコープ73の先端が、プロテクタ用治具69におけるプロテクタ1の取付位置より突出しないように、ファイバースコープ73の取付位置を設定している。これにより、プロテクタ1の内部を広範囲に確認(例えば撮影)することができると共に、ファイバースコープ73をプロテクタ1内部へ挿入した場合に、ファイバースコープ73がプロテクタ1内での凝縮水の挙動に影響を及ぼす問題を解消できる。よって、プロテクタ1内への凝縮水の侵入状態を正確に把握できる。
【0073】
更に、本実施形態では、プロテクタ1として、同心状に配置した2重プロテクタを用いている。プロテクタ1が2重構造の場合には、プロテクタ1の外部から内部プロテクタ41内に侵入する凝縮水の状態が1重プロテクタとは異なる。よって、外部プロテクタ39に向かって飛んでくる凝縮水を確認するだけでは、内部プロテクタ41内に侵入する凝縮水の状態を確認することは困難である。しかしながら、本実施形態では、内部プロテクタ41内を確認できる位置にファイバースコープ73を配置することにより、内部プロテクタ41内に侵入する凝縮水の状態を確実に把握することができる。
【0074】
以上、本発明の実施形態等について説明したが、本発明は、前記実施形態等に限定されるものではなく、種々の態様を採ることができる。
(1)例えば、本発明は、全領域空燃比センサに適用できるだけでなく、その他の酸素センサ、或いはNOxセンサ、HCセンサ等にも適用することが可能である。
【0075】
(2)また、前記実施形態では、ヒータと一体型の、板状の形状の検出素子を用いて説明したが、本発明は、ヒータを別に備えた有底筒状の検出素子の場合にも適用できる。
【符号の説明】
【0076】
1、131…プロテクタ
2…ガスセンサ
51…試験装置
53…エンジン
55…排気管
57…正規ポート
59、133…観測装置
71…観測装置本体
73…ファイバースコープ
67…可視化装置用治具
69、137…プロテクタ用治具
79…パッキン(第2気密部材)
100…第1貫通孔
109…第2貫通孔
118…結合貫通孔
119…パッキン(第1気密部材)
120、135…プロテクタ付き治具

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンの排気管内にガスセンサのプロテクタを配置し、前記エンジンを作動させて前記排気管内の水を飛散させ、前記プロテクタ内に侵入する水の状態を、可視化装置を用いて調べるプロテクタ内への水侵入確認方法であって、
軸方向に第1貫通孔を有し、該第1貫通孔内に挿通された前記可視化装置を保持する環状の可視化装置用治具と、
軸方向に第2貫通孔を有し、先端側に前記プロテクタが取付可能な環状のプロテクタ用治具とを、用い、
前記プロテクタ用治具に前記プロテクタを取付けて、プロテクタ付き治具を作製するとともに、前記第2貫通孔内に前記可視化装置の先端側を挿入するようにして、前記プロテクタ付き治具の後端側と前記可視化装置用治具の先端側とを前記軸方向を合わせて組み付け、
その後、前記プロテクタが排気管中の排気ガスに接するように前記排気管に取付けることを特徴とするプロテクタ内への水侵入確認方法。
【請求項2】
同一種類又は異なる種類の複数の前記プロテクタに対して、それぞれ前記プロテクタ用治具を取付けて、複数のプロテクタ付き治具を作製するとともに、前記複数のプロテクタよりも少ない特定数の前記可視化装置用治具がいずれの前記プロテクタ付き治具にも着脱可能であることを特徴とする請求項1に記載のプロテクタ内への水侵入確認方法。
【請求項3】
前記可視化装置用治具と前記プロテクタ用治具との間に、両治具間におけるガスのリークを防止する第1気密部材を配置したことを特徴とする請求項1又は2に記載のプロテクタ内への水侵入確認方法。
【請求項4】
前記可視化装置と、少なくとも前記可視化装置用治具及び前記プロテクタ用治具との間に、両部材間におけるガスのリークを防止する第2気密部材を配置したことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のプロテクタ内への水侵入確認方法。
【請求項5】
前記可視化装置の先端が、前記プロテクタ用治具における前記プロテクタの取付位置より突出しないことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のプロテクタ内への水侵入確認方法。
【請求項6】
前記プロテクタは、内側の筒状の内部プロテクタと、該プロテクタの外周側を覆う筒状の外部プロテクタとを、同心状に配置した2重プロテクタであることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のプロテクタ内への水侵入確認方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−63165(P2012−63165A)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−205736(P2010−205736)
【出願日】平成22年9月14日(2010.9.14)
【出願人】(000004547)日本特殊陶業株式会社 (2,912)
【Fターム(参考)】