説明

プロピレン系樹脂シート

【課題】高い透明性を有し臭気のないプロピレン系樹脂シートを提供する。
【解決手段】プロピレン系重合体(A)100重量部に対し、特定の環状リン酸エステルの金属塩系造核剤(B)0.01〜0.5重量部と高級脂肪酸アルミニウム塩(C)0.01〜0.5重量部を含有するプロピレン系樹脂組成物からなることを特徴とするプロピレン系樹脂シート。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プロピレン系樹脂シートに関し、特に優れた透明性を有し、かつ臭気の改善されたプロピレン系樹脂シートに関する。
【背景技術】
【0002】
ポリプロピレンは、優れた成形性、機械的特性、耐熱性および化学的な安定性を兼ね備えた汎用樹脂であるため、各種の広い分野に応用されており、特にポリプロピレンシートは、日用雑貨用途、食品包装容器等に使用されている。
近年、プロピレン系樹脂シートに関する要求性能は、ますます高くなっており、優れた透明性を有するものが強く求められている。例えば食品包装用容器向けの分野等においては、内容物が鮮明に透視できないと商品としての価値がアピールしにくいことから高透明のものが求められている。
【0003】
プロピレン系樹脂シートの製造は、通常T型ダイスによる押出成形により行われるが、プロピレン系重合体は、その高い結晶性のために、特にポリスチレン、ポリ塩化ビニル等に比較して透明性が著しく劣ると言う欠点がある。
そのため、プロピレン系重合体の透明性を改良する方法としては、例えば、α−オレフィンとの共重合を行って結晶性を低下させ透明性を改良したプロピレン系共重合体とすることが採用されている。しかしながら、このプロピレンとα−オレフィンとの共重合により透明性を改良する方法では、α−オレフィン量を多くするほど透明性が良くなるが、製品の剛性が著しく低下するため、α−オレフィンは少量しか使用できず、透明性改良効果はおのずと制限されるという問題点がある。また、プロピレン系重合体シート自体についてはある程度透明性を向上させることができても、得られたシートを熱成形等によって二次加工をするとその間に透明性が損なわれ、期待する程度の効果は得られないという問題がある。
【0004】
プロピレン系重合体のみでは、十分な光学性能を発揮させることが通常困難であり、プロピレン系重合体のみの性能向上で高透明シートの達成を目指すのには限界がある。
そこで、プロピレン系重合体に、ジベンジリデンソルビトール系、有機カルボン酸、有機カルボン酸の金属塩、有機リン酸金属塩等の造核剤を添加配合して透明性を改良する方法が一般に用いられている。特にジベンジリデンソルビトール系の透明造核剤が最も効果があり、広く使用されている(特許文献1参照)。
しかしながら、ソルビトール系造核剤を用いたシートは、透明性に優れるもののソルビトール系造核剤特有の臭気による臭気汚染が問題であり、シート成形時においても臭気の発生による環境の悪化や添加剤がロールを汚染し良好な品質を得るための清掃作業が不可欠となり、連続製膜困難による生産性の低下問題があった。
【0005】
また、有機リン酸系造核剤(特許文献2参照)も使用されており、ソルビトール系造核剤ほどの臭気は無いものの、有機リン酸金属塩系造核剤を添加したものは、透明性を十分に発現することが困難であるという欠点を有している。このためポリプロピレンの透明性改良目的のためには、有機リン酸金属塩系造核剤のうち透明核剤であるADEKA社製の有機リン酸系の透明核剤である商品名「アデカスタブNA−21」が通常良く用いられ、それなりの透明性を発現できるが、米国においてはアメリカ食品医薬品局(FDA)の安全性基準によりその使用が制限され、100℃以上の加熱殺菌処理を要する食品包装向けには使用できないという問題がある。
したがって、新たな手法により低臭気であって、優れた透明性をもつ、バランスの取れたプロピレン系樹脂シートが強く望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平4−339847号公報
【特許文献2】特開昭58−1736号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、透明性に優れ、臭気の問題がないプロピレン系樹脂シートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、プロピレン系重合体に対し、特定の造核剤と特定の脂肪酸金属塩をそれぞれ特定量を組合わせて用いることにより、格段に高い透明性と、低臭気性に優れたプロピレン系樹脂シートになり得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明の第1の発明によれば、プロピレン系重合体(A)100重量部に対し、下記一般式(1)で示されるリン酸エステル金属塩系造核剤(B)0.01〜0.5重量部と高級脂肪酸アルミニウム塩(C)0.01〜0.5重量部を含有するプロピレン系樹脂組成物からなることを特徴とするプロピレン系樹脂シートが提供される。
【化1】

(式(1)において、Rは水素原子又は炭素原子数1〜4のアルキル基を表し、R及びRは、同一又は異なっていてもよく、それぞれ水素原子又は炭素原子数1〜12のアルキル基を表し、Mはアルカリ金属原子又はアルミニウム原子を表し、pは1又は2を表し、qはMがアルカリ金属原子のときは0を表し、Mがアルミニウム原子のときは1又は2を表す。)
が提供される。
【0010】
また、本発明の第2の発明によれば、第1の発明において、シートの厚さが200μm以上であることを特徴とするプロピレン系樹脂シートが提供される。
【0011】
さらに、本発明の第3の発明によれば、第1または第2の発明において、熱成形用のシートであることを特徴とするプロピレン系樹脂シートが提供される。
【発明の効果】
【0012】
本発明のプロピレン系樹脂シートは、プロピレン系重合体(A)100重量部に対して前記一般式(1)で示されるリン酸エステル金属塩系造核剤(B)を0.01〜0.5重量部、これに高級脂肪酸アルミニウム塩(C)を0.01〜0.5重量部を併せて配合したプロピレン系樹脂組成物を用いることにより、低臭気で、従来のポリプロピレン組成物では実現しえなかった高い透明性を有することができる。
そして、本発明のプロピレン系樹脂シートは、透明性に優れ、臭気が改善されたものであり、各種用途に用いることにより高級感のある商品とすることができる。また、成形時に発生する臭気が抑制され環境の改善により連続製膜が可能になり生産効率の改善に大きく寄与することができる。
特に、熱成形を用いることにより、従来以上の高透明な熱成形品を製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明のプロピレン系樹脂シートに用いるプロピレン系樹脂組成物の各構成成分及びプロピレン系樹脂シートの製造法について、詳細に説明する。
【0014】
[I]プロピレン系樹脂組成物を構成する成分
(1)プロピレン系重合体(A)
プロピレン系樹脂組成物に用いられるプロピレン系重合体(A)は、プロピレン単独重合体であっても、プロピレン系共重合体であっても、あるいはこれらの混合物であってもよい。
プロピレン系共重合体は、プロピレンとα−オレフィンとの共重合体であり、ランダム共重合体であってもブロック共重合体であってもどちらでも良いが、透明性の観点からランダム共重合体が望ましい。共重合に用いられるα−オレフィンは、プロピレンを除く炭素数2〜20のα−オレフィンがあげられ、例えばエチレン、ブテン−1、ヘキセン−1、オクテン−1等を好ましく例示できる。プロピレンと共重合されるα−オレフィンは一種類でも二種類以上用いてもよい。これらのうちエチレン、ブテン−1がより好適であり、特に好ましくはエチレンである。
【0015】
具体的な共重合体の例を挙げると、プロピレン−エチレン共重合体、プロピレン−エチレン−ジエン共重合体、プロピレン−ブテン−1共重合体、プロピレン−ヘキセン−1共重合体、プロピレン−オクテン−1共重合体等を例示できる。このうちプロピレン−エチレン共重合体、プロピレン−ブテン−1共重合体、プロピレン−エチレン−ブテン−1共重合体が特に好ましい。プロピレンと共単量体であるα−オレフインの量の構成割合は、モル比で70〜99/30〜1であることが好ましい。通常は、α−オレフィン量は、0.05〜10.0重量%、好ましくは0.1〜5.0重量%程度が好ましい。勿論重合段階で、EPRのようなゴム成分をソフトセグメントとして、ポリプロピレン主体の結晶相からなるハードセグメントへ導入した、いわゆるポリプロピレン系重合体アロイも使用できる。
プロピレン系重合体または共重合体(A)のガラス転移温度は、−100〜20℃のものが好ましく、また、このようなプロピレン系重合体は、二種以上混合して使用してもよい。
【0016】
本発明で用いられるプロピレン系重合体(A)の230℃、2.16kg荷重におけるメルトフローレート(MFR)は、特に制限はないが、0.1〜50g/10分が望ましい。メルトフローレートが0.1g/10分を著しく下回ると、押出成形時に押出負荷が増大し、さらには表面の平滑性が損なわれ、成形品の外観が悪化する恐れがあり、逆に、50g/10分を著しく上回ると、本発明で用いられるリン酸エステル金属塩系造核剤(B)あるいは高級脂肪酸アルミニウム塩(C)のプロピレン系重合体(A)への均一分散性が悪化して透明性が発現しにくくる恐れがあり、さらにはシート成形時の成形安定性が損なわれやすくなる。
【0017】
(i) プロピレン系重合体(A)を得るために用いられる触媒
本発明で用いられるプロピレン系重合体(A)を得るために用いられる触媒は、特に限定されるものではなく、公知の触媒が使用可能である。例えば、チタン化合物と有機アルミニウムを組み合わせた、いわゆるチーグラー・ナッタ触媒、あるいは、メタロセン触媒が使用できる。公知の触媒の中でもメタロセン触媒を使用することがより好ましい。
【0018】
メタロセン触媒を用いて得られたプロピレン系重合体は、チーグラー・ナッタ触媒を用いて得られたプロピレン系重合体に比べ、分子量分布の指標の一つである、ゲルパーミエーション(GPC)法により測定される重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比、Mw/Mnが小さくなる傾向があることが既に広く知られている。例えばGPCで測定をした重量平均分子量(Mw)が5,000〜40,0000の程度、数平均分子量3,000〜300,000程度の領域のものの例で見れば、チーグラー触媒のポリプロピレン系重合体は、Mw/Mnは、約3〜12、メタロセン触媒のポリプロピレンは、約2、約2.4のような、約2〜6程度のものが多い。
分子量分布が狭いということは、溶媒抽出量が少ないということ、いわゆるアタックチックプロピレン、或いは低分子量副生物が少ないということであるから、製品のブロッキング性が低いばかりでなく、ポリプロピレン系重合体系包装用シートの透明性改良のための改質剤の作用に比較的有利に作用することが予測できる。
【0019】
Mw/Mnが、4、6、8、10と大きくなるということは、分子量の大きな成分と小さな成分がそれぞれより多く存在することを意味しており、結晶化に至る分子の運動性が異なる成分がより多く存在すると言える。結晶化挙動が分子の運動性の影響を大きく受けることを考慮すると、分子量分布の広いプロピレン系重合体からは、分子量分布の狭いプロピレン系重合体に比べ、より広い結晶性分布が生じるものと予測される。結果として結晶質部と非晶質部の屈折率に違いにより、半透明に成り易いことが予測されるので、本発明に用いられる造核剤や脂肪酸アルミニウム塩の機能を最大限に発揮する為には、ポリプロピレン系重合体は、Mw/Mnを小さくすることが有利である。ポリプロピレン系重合体の製造段階の重合方法までを考慮すれば、メタロセン触媒重合によるものがシートにおいて、耐ブロッキング性、透明性、光沢の面で有利であることが予測される。
このような、意味で、本発明で用いられるプロピレン系重合体(A)としては、Mw/Mnは2〜10、より好ましくは、2〜8、さらに好ましくは2〜4程度のものが好ましい。このような範囲のものは、透明性においても優れており、特に造核剤(B)および脂肪酸アルミニウム塩(C)の機能を高めるにおいても有利に作用する。
【0020】
チーグラー触媒としては、三塩化チタン、四塩化チタン、トリクロロエトキシチタン等のハロゲン化チタン化合物、前記ハロゲン化チタン化合物とハロゲン化マグネシウムに代表されるマグネシウム化合物との接触物等の遷移金属成分とアルキルアルミニウム化合物又はそれらのハロゲン化物、水素化物、アルコキシド等の有機金属成分との2成分系触媒、更にそれらの成分に窒素、炭素、リン、硫黄、酸素、ケイ素等を含む電子供与性化合物を加えた3成分系触媒が挙げられる。
【0021】
メタロセン触媒としては、(i)シクロペンタジエニル骨格を有する配位子を含む周期表第4族の遷移金属化合物(いわゆるメタロセン化合物)と、(ii)メタロセン化合物と反応して安定なイオン状態に活性化しうる助触媒と、必要により、(iii)有機アルミニウム化合物とからなる触媒であり、公知の触媒はいずれも使用できる。メタロセン化合物は、好ましくはプロピレンの立体規則性重合が可能な架橋型のメタロセン化合物であり、より好ましくはプロピレンのアイソ規則性重合が可能な架橋型のメタロセン化合物である。
【0022】
このようなメタロセン化合物(i)としては、例えば、特開昭60−35007号、特開昭61−130314号、特開昭63−295607号、特開平1−275609号、特開平2−41303号、特開平2−131488号、特開平2−76887号、特開平3−163088号、特開平4−300887号、特開平4−211694号、特開平5−43616号、特開平5−209013号、特開平6−239914号、特表平7−504934号、特開平8−85708号の各公報に開示されており、これらに記載されたものはいずれも好ましく使用できる。
【0023】
更に、具体的には、メチレンビス(2−メチルインデニル)ジルコニウムジクロリド、エチレンビス(2−メチルインデニル)ジルコニウムジクロリド、エチレン1,2−(4−フェニルインデニル)(2−メチル−4−フェニル−4H−アズレニル)ジルコニウムジクロリド、イソプロピリデン(シクロペンタジエニル)(フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、イソプロピリデン(4−メチルシクロペンタジエニル)(3−t−ブチルインデニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレン(2−メチル−4−t−ブチル−シクロペンタジエニル)(3’−t−ブチル−5’−メチル−シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス(インデニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス(4,5,6,7−テトラヒドロインデニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス[1−(2−メチル−4−フェニルインデニル)]ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス[1−(2−エチル−4−フェニルインデニル)]ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス[4−(1−フェニル−3−メチルインデニル)]ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレン(フルオレニル)t−ブチルアミドジルコニウムジクロリド、メチルフェニルシリレンビス[1−(2−メチル−4,(1−ナフチル)−インデニル)]ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス[1−(2−メチル−4,5−ベンゾインデニル)]ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス[1−(2−メチル−4−フェニル−4H−アズレニル)]ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス[1−(2−エチル−4−(4−クロロフェニル)−4H−アズレニル)]ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス[1−(2−エチル−4−ナフチル−4H−アズレニル)]ジルコニウムジクロリド、ジフェニルシリレンビス[1−(2−メチル−4−(4−クロロフェニル)−4H−アズレニル)]ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス[1−(2−エチル−4−(3−フルオロビフェニリル)−4H−アズレニル)]ジルコニウムジクロリド、ジメチルゲルミレンビス[1−(2−エチル−4−(4−クロロフェニル)−4H−アズレニル)]ジルコニウムジクロリド、ジメチルゲルミレンビス[1−(2−エチル−4−フェニルインデニル)]ジルコニウムジクロリドなどのジルコニウム化合物が好ましく例示できる。
【0024】
上記において、ジルコニウムをチタニウム、ハフニウムに置き換えた化合物も同様に使用できる。また、ジルコニウム化合物とハフニウム化合物等の混合物を使用することもできる。また、クロリドは他のハロゲン化合物、メチル、イソブチル、ベンジル等の炭化水素基、ジメチルアミド、ジエチルアミド等のアミド基、メトキシ基、フェノキシ基等のアルコキシド基、ヒドリド基等に置き換えることが出来る。
これらの内、インデニル基あるいはアズレニル基を珪素あるいはゲルミル基で架橋したメタロセン化合物が特に好ましい。
【0025】
また、メタロセン化合物は、無機または有機化合物の担体に担持して使用してもよい。担体としては、無機または有機化合物の多孔質化合物が好ましく、具体的には、イオン交換性層状珪酸塩、ゼオライト、SiO、Al、シリカアルミナ、MgO、ZrO、TiO、B、CaO、ZnO、BaO、ThO、等の無機化合物、多孔質のポリオレフィン、スチレン−ジビニルベンゼン共重合体、オレフィン−アクリル酸共重合体等からなる有機化合物、またはこれらの混合物が挙げられる。
【0026】
メタロセン化合物と反応して安定なイオン状態に活性化しうる助触媒(ii)としては、有機アルミニウムオキシ化合物(たとえば、アルミノキサン化合物)、イオン交換性層状珪酸塩、ルイス酸、ホウ素含有化合物、イオン性化合物、フッ素含有有機化合物等が挙げられる。
【0027】
有機アルミニウム化合物(iii)としては、トリエチルアルミニウム、トリイソプロピルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム等のトリアルキルアルミニウム、ジアルキルアルミニウムハライド、アルキルアルミニウムセスキハライド、アルキルアルミニウムジハライド、アルキルアルミニウムハイドライド、有機アルミニウムアルコキサイド等が好ましく挙げられる。
【0028】
(ii)プロピレン系重合体の製造方法
プロピレン系重合体の製造方法としては、上記触媒の存在下に、不活性溶媒を用いたスラリー法、溶液法、実質的に溶媒を用いない気相法や、あるいは重合モノマーを溶媒とするバルク重合法等が挙げられる。
例えば、スラリー重合法の場合には、n−ブタン、イソブタン、n−ペンタン、イソペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン等の不活性炭化水素又は液状モノマー中で行うことができる。重合温度は、通常−80〜150℃であり、好ましくは40〜120℃である。重合圧力は、1〜60気圧が好ましく、また得られるプロピレン系重合体の分子量の調節は、水素もしくは他の公知の分子量調整剤で行うことができる。重合は連続式又はバッチ式反応で行い、その条件は通常用いられている条件でよい。さらに重合反応は一段で行ってもよく、多段で行ってもよい。
【0029】
(2)造核剤(B)
本発明において用いられるリン酸エステル金属塩系造核剤(B)は、下記一般式(1)で表される芳香族リン酸エステル金属塩系造核剤である。リン酸エステル金属塩系造核剤(B)は、1種類のものを単独で、或いは複数種類のものを併用することも出来る。
【0030】
【化2】

【0031】
式(1)において、Rは水素原子又は炭素原子数1〜4のアルキル基を表す。Rで示される炭素原子数1〜4のアルキル基としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、第2ブチル、イソブチルなどが挙げられる。
及びRは、同一又は異なっていてもよく、それぞれ水素原子又は炭素原子数1〜12のアルキル基を表す。R及びRで示される炭素原子数1〜12のアルキル基としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、第2ブチル、第3ブチル、アミル、第3アミル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、イソオクチル、第3オクチル、2−エチルヘキシル、ノニル、イソノニル、デシル、イソデシル、ウンデシル、ドデシル、第3ドデシルなどが挙げられる。
【0032】
Mは、アルカリ金属原子またはアルミニウム原子である。アルカリ金属原子としては、Na、K、Li等が好ましく挙げられ、Mとしては、Na、K、Liまたはアルミニウム原子が特に好ましい。pは1又は2を表し、qはMがアルカリ金属原子のときは0を表し、Mがアルミニウム原子のときは1又は2を表す。
【0033】
式(1)で表されるリン酸エステル金属塩系造核剤のうち、好ましいものとしては、例えば、R:H、R:t−ブチル基、R:t−ブチル基のものが挙げられる。
また、MはNaであることが最も好ましい。
【0034】
一般式(1)で表される化合物の具体例としては、ナトリウム−2,2’−メチレン−ビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)フォスフェート、ナトリウム−2,2’−エチリデン−ビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)フォスフェート、リチウム−2,2’−メチレン−ビス−(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)フォスフェート、リチウム−2,2’−エチリデン−ビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)フォスフェート、ナトリウム−2,2’−エチリデン−ビス(4−i−プロピル−6−t−ブチルフェニル)フォスフェート、リチウム−2,2’−メチレン−ビス(4−メチル−6−t−ブチルフェニル)フォスフェート、リチウム−2,2’−メチレン−ビス(4−エチル−6−t−ブチルフェニル)フォスフェート、ナトリウム−2,2’−ブチリデン−ビス(4,6−ジ−メチルフェニル)フォスフェート、ナトリウム−2,2’−ブチリデン−ビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)フォスフェート、ナトリウム−2,2’−t−オクチルメチレン−ビス(4,6−ジ−メチルフェニル)フォスフェート、ナトリウム−2,2’−t−オクチルメチレン−ビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)フォスフェート、カルシウム−ビス−(2,2’−メチレン−ビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)フォスフェート)、マグネシウム−ビス[2,2’−メチレン−ビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)フォスフェート]、バリウム−ビス[2,2’−メチレン−ビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)フォスフェート]、ナトリウム−2,2’−メチレン−ビス(4−メチル−6−t−ブチルフェニル)フォスフェート、ナトリウム−2,2’−メチレン−ビス(4−エチル−6−t−ブチルフェニル)フォスフェート、ナトリウム−2,2’−エチリデン−ビス(4−m−ブチル−6−t−ブチルフェニル)フォスフェート、ナトリウム−2,2’−メチレン−ビス(4,6−ジ−メチルフェニル)フォスフェート、ナトリウム−2,2’−メチレン−ビス(4,6−ジ−エチルフェニル)フォスフェート、カリウム−2,2’−エチリデン−ビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)フォスフェート、カルシウム−ビス[2,2’−エチリデン−ビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)フオスフェート]、マグネシウム−ビス[2,2’−エチリデン−ビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)フォスフェート]、バリウム−ビス[2,2’−エチリデン−ビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)フォスフェート]、アルミニウム−トリス[2,2’−メチレン−ビス(4,6−ジ−t−ブチルフェル)フォスフェート]およびアルミニウム−トリス[2,2’−エチリデン−ビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)フォスフェート]、が挙げられ、これらの中ではナトリウム−2,2’−エチリデン−ビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)フォスフェートが好ましい。
【0035】
芳香族リン酸エステル金属塩の合成方法は特に限定されるものではなく、公知のいかなる方法により合成されたものでもよい。
リン酸エステル金属塩系造核剤(B)のうち市販されているものとしては、例えばアデカ(株)製のアデカスタブNA−11、NA−21、NA−71等が好ましく使用でき、これらは単独であるいは混合して使用することができる。
【0036】
造核剤(B)の配合量は、プロピレン系重合体(A)100重量部に対し、0.01〜0.5重量部であり、0.01重量部未満であると透明性を十分に発揮させることが困難であり、また、0.5重量部を超えると、透明性が低下していく傾向となり、透明性を十分に発揮できなくなる。造核剤(B)の好ましい配合量は、0.05〜0.3重量部である。
【0037】
本発明で用いられるプロピレン系樹脂組成物には、造核剤(B)以外に、他の造核剤として、ソルビトール系造核剤、芳香族燐酸エステル類、タルクなど既知の造核剤を添加することができ、造核剤の組み合わせ次第で相乗効果を期待できる場合がある。
しかしながら、前記式(1)で示される造核剤(B)以外の造核剤は、得られるシートの透明性が劣りやすく、更には、透明性に与える成形条件の依存性が大きくなりやすく、容易に透明性の高いポリプロピレン系シートを製造することは難しい傾向にある。
【0038】
(3)高級脂肪酸アルミニウム塩(C)
本発明で用いられるプロピレン系樹脂組成物においては、上記リン酸エステル金属塩系造核剤(B)に高級脂肪酸アルミニウム塩(C)を組み合わせて配合することが必要である。
高級脂肪酸アルミニウム塩として、好ましくは炭素数8〜30の飽和脂肪酸のアルミニウム塩を挙げることができる。脂肪酸として、ラウリル酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレイン酸、モンタン酸等を挙げることができる。脂肪酸の炭素数が小さい場合には臭気移行防止性能が不充分となり、炭素数が大き過ぎる場合には造核助剤効果が不充分となる傾向がある。好ましい高級脂肪酸アルミニウム塩として、炭素数が12〜26の飽和高級脂肪酸のアルミニウム塩、たとえば、ミリスチン酸アルルミニウム、パルミチン酸アルミニウム、ステアリン酸アルミニウムが好ましく、特にはステアリン酸アルミニウムが好ましい。
また、高級脂肪酸アルミニウム塩(C)としては、モノ、ジあるいはトリ塩のいずれであってもよく、またこれらの混合物であってもよい。
【0039】
高級脂肪酸アルミニウム塩(C)の配合量は、プロピレン系重合体(A)100重量部に対し、0.01〜0.5重量部の範囲であり、好ましくは0.015〜0.2重量部の範囲であることがより好ましい。配合量が0.5重量部を超えると、ブリードアウトの原因にもなり透明性を悪化させる。一方、0.01重量部より少ない場合、核剤助剤としての効果が発揮しにくくなるので好ましくない。
【0040】
本発明で用いられるプロピレン系樹脂組成物には、高級脂肪酸アルミニウム塩(C)以外に、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウムなどの金属脂肪酸塩、ハイドロタルサイト(協和化学工業(株)製商品名)等のマグネシウムアルミニウム複合水酸化物塩、ミズカラック(水沢化学(株)製商品名)等のリチウムアルミニウム複合水酸化物塩など既知の中和剤として使用されるものを添加することができ、組み合わせて併用することで効果を期待できる場合があるが、リン酸エステル金属塩系造核剤(B)との組合わせにおいての併用は、得られるシートの透明性が劣りやすく、更には、透明性に与える成形条件の依存性が大きくなりやすく、容易に透明性の高いポリプロピレン系シートを製造することは難しい傾向にある。
【0041】
(4)その他の成分
本発明のプロピレン系樹脂シートに用いられる樹脂組成物には、本発明の効果を著しく損なわない範囲で、他の付加的任意成分を配合することができる。このような任意成分としては、通常のポリオレフィン樹脂材料に使用される酸化防止剤、滑剤、アンチブロッキング剤、帯電防止剤、防曇剤、金属不活性剤、着色剤、分散剤、過酸化物、充填剤、蛍光増白剤、エラストマー等を挙げることができる。
上記各種添加剤について、以下に詳細に述べる。
【0042】
(i)酸化防止剤
酸化防止剤として、フェノール系酸化防止剤の具体例としては、トリス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−イソシアヌレート、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、ペンタエリスリチル−テトラキス{3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート}、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、3,9−ビス[2−{3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ}−1,1−ジメチルエチル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、1,3,5−トリス(4−t−ブチル−3−ヒドロキシ−2,6−ジメチルベンジル)イソシアヌル酸などを挙げることができる。
【0043】
また、燐系酸化防止剤の具体例としては、トリス(ミックスド、モノ及びジノニルフェニルホスファイト)、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェニル−ジ−トリデシル)ホスファイト、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ジ−トリデシルホスファイト−5−t−ブチルフェニル)ブタン、ビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ペンタエリスリトール−ジ−ホスファイト、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチル−5−メチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイト、ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトール−ジ−ホスファイトなどを挙げることができる。
さらに、硫黄系酸化防止剤の具体例としては、ジ−ステアリル−チオ−ジ−プロピオネート、ジ−ミリスチル−チオ−ジ−プロピオネート、ペンタエリスリトール−テトラキス−(3−ラウリル−チオ−プロピオネート)などを挙げることができる。
これら酸化防止剤は、本目的の効果を損なわない範囲で、1種または2種以上組み合わせて使用することができる。
【0044】
酸化防止剤の配合量は、プロピレン系重合体(A)100重量部に対し、通常0.01〜1.0重量部、好ましくは0.02〜0.5重量部、より好ましくは0.05〜0.1重量部であり、配合量が上記範囲未満では、熱安定性の効果が得られにくく、シートを製造する際に劣化が起こり、ヤケとなってフィッシュアイの原因となる。また、上記範囲を超えると、それ自体が異物となってフィッシュアイの原因となりやすく好ましくない。
【0045】
(ii)スリップ剤
スリップ剤としては、モノアマイド類、置換アマイド類、ビスアマイド類等が挙げられ、1種又は2種以上組み合わせて、使用することができる。
モノアマイド類の具体例としては、飽和脂肪酸モノアマイドとして、ラウリン酸アマイド、パルチミン酸アマイド、ステアリン酸アマイド、ベヘニン酸アマイド、ヒドロキシステアリン酸アマイド等が挙げられる。
また、不飽和脂肪酸モノアマイドとしては、オレイン酸アマイド、エルカ酸アマイド、リシノール酸アマイド等が挙げられる。
また、置換アマイド類の具体例としては、N−ステアリルステアリン酸アマイド、N−オレイルオレイン酸アマイド、N−ステアリルオレイン酸アマイド、N−オレイルステアリン酸アマイド、N−ステアリルエルカ酸アマイド、N−オレイルパルチミン酸アマイド等が挙げられる。
【0046】
さらに、ビスアマイド類の具体例としては、飽和脂肪酸ビスアマイドとして、メチレンビスステアリン酸アマイド、エチレンビスカプリン酸アマイド、エチレンビスラウリン酸アマイド、エチレンビスステアリン酸アマイド、エチレンビスイソステアリン酸アマイド、エチレンビスヒドロキシステアリン酸アマイド、エチレンビスベヘニン酸アマイド、ヘキサメチレンビスステアリン酸アマイド、ヘキサメチレンビスベヘニン酸アマイド、ヘキサメチレンビスヒドロキシステアリン酸アマイド、N,N’−ジステアリルアジピン酸アマイド、N,N’−ジステアリルセパシン酸アマイドなどが挙げられる。
また、不飽和脂肪酸ビスアマイドとしては、エチレンビスオレイン酸アマイド、ヘキサメチレンビスオレイン酸アマイド、N,N’−ジオレイルアジピン酸アマイド、N,N’−ジオレイルセパシン酸アマイドなどが挙げられる。
さらに、芳香族系ビスアマイドとしては、m−キシリレンビスステアリン酸アマイド、N,N’−ジステアリルイソフタル酸アマイドなどが挙げられる。
これらの中では、特に、脂肪酸アマイドが好ましく、オレイン酸アマイド、エルカ酸アマイド、ベヘニン酸アマイドが特に好適に使用される。
【0047】
スリップ剤を配合する場合の配合量としては、プロピレン系重合体(A)100重量部に対し、通常0.01〜1.0重量部、好ましくは0.05〜0.7重量部、より好ましくは0.1〜0.4重量部である。上記範囲未満では、開口性や滑り性が劣り易くなる。上記範囲を超えると、スリップ剤の浮き出しが過剰となり、シート表面にブリードし透明性が悪化しやすい。
【0048】
(iii)光安定剤
光安定剤としては、ヒンダードアミン系安定剤が好適に使用され、従来公知のピペリジンの2位および6位の炭素に結合しているすべての水素がメチル基で置換された構造を有する化合物が特に限定されることなく用いられるが、具体的には、以下のような化合物が好ましく用いられる。
【0049】
具体例としては、琥珀酸ジメチルと1−(2−ヒドロキシエチル)−4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジンとの重縮合物、テトラキス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、N,N−ビス(3−アミノプロピル)エチレンジアミン・2,4−ビス[N−ブチル−N−(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)アミノ]−6−クロロ−1,3,5−トリアジン縮合物、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ポリ[{6−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)イミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル}{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}ヘキサメチレン{2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル}イミノ]、ポリ[(6−モルホリノ−s−トリアジン−2,4−ジイル)[(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ]ヘキサメチレン{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}]などを挙げることができる。
これらのヒンダードアミン系安定剤は、本目的の効果を損なわない範囲で、1種または2種以上組み合わせて使用することができる。
【0050】
ヒンダードアミン系安定剤を配合する場合の配合量は、プロピレン系重合体(A)100重量部に対し、通常0.005〜2重量部、好ましくは0.01〜1重量部、さらに好ましくは0.05〜0.5重量部とするのが望ましい。
ヒンダードアミン系安定剤の含有量は、0.005重量部未満であると、耐熱性、耐老化性等の安定性の向上効果がなく、2重量部より多いと、それ自体が異物となってフィッシュアイの原因となり好ましくない。
【0051】
(iv)帯電防止剤
帯電防止剤としては、従来から静電防止剤または帯電防止剤として使用されている公知のものであれば、特に限定されることなく使用でき、例えばアニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、両性界面活性剤などが挙げられる。
【0052】
上記アニオン性界面活性剤としては、脂肪酸またはロジン酸セッケン、N−アシルカルボン酸塩、エーテルカルボン酸塩、脂肪酸アミン塩等のカルボン酸塩;スルホコハク酸塩、エステルスルホン酸塩、N−アシルスルホン酸塩等のスルホン酸塩;硫酸化油、硫酸エステル塩、硫酸アルキル塩、硫酸アルキルポリオキシエチレン塩、硫酸エーテル塩、硫酸アミド塩等の硫酸エステル塩;リン酸アルキル塩、リン酸アルキルポリオキシエチレン塩、リン酸エーテル塩、リン酸アミド塩等のリン酸エステル塩などが挙げられる。
【0053】
上記カチオン性界面活性剤としては、アルキルアミン塩等のアミン塩;アルキルトリメチルアンモニウムクロリド、アルキルベンジルジメチルアンモニウムクロリド、アルキルジヒドロキシエチルメチルアンモニウムクロリド、ジアルキルジメチルアンモニウムクロリド、テトラアルキルアンモニウム塩、N,N−ジ(ポリオキシエチレン)ジアルキルアンモニウム塩、N−アルキルアルカンアミドアンモニウムの塩等の第4級アンモニウム塩;1−ヒドロキシエチル−2−アルキル−2−イミダゾリン、1−ヒドロキシエチル−1−アルキル−2−アルキル−2−イミダゾリン等のアルキルイミダゾリン誘導体;イミダゾリニウム塩、ピリジニウム塩、イソキノリニウム塩などが挙げられる。
【0054】
上記非イオン性界面活性剤としては、アルキルポリオキシエチレンエーテル、p−アルキルフェニルポリオキシエチレンエーテル等のエーテル形;脂肪酸ソルビタンポリオキシエチレンエーテル、脂肪酸ソルビトールポリオキシエチレンエーテル、脂肪酸グリセリンポリオキシエチレンエーテル等のエーテルエステル形;脂肪酸ポリオキシエチレンエステル、モノグリセリド、ジグリセリド、ソルビタンエステル、ショ糖エステル、2価アルコールエステル、ホウ酸エステル等のエステル形;ジアルコールアルキルアミン、ジアルコールアルキルアミンエステル、脂肪酸アルカノールアミド、N,N−ジ(ポリオキシエチレン)アルカンアミド、アルカノールアミンエステル、N,N−ジ(ポリオキシエチレン)アルカンアミン、アミンオキシド、アルキルポリエチレンイミン等の含窒素形などが挙げられる。
【0055】
上記両性界面活性剤としては、モノアミノカルボン酸、ポリアミノカルボン酸等のアミノ酸形;N−アルキルアミノプロピオン酸塩、N,N−ジ(カルボキシエチル)アルキルアミン塩等のN−アルキル−β−アラニン形;N−アルキルベタイン、N−アルキルアミドベタイン、N−アルキルスルホベタイン、N,N−ジ(ポリオキシエチレン)アルキルベタイン、イミダゾリニウムベタイン等のベタイン形;1−カルボキシメチル−1−ヒドロキシ−1−ヒドロキシエチル−2−アルキル−2−イミダゾリン、1−スルホエチル−2−アルキル−2−イミダゾリン等のアルキルイミダゾリン誘導体などが挙げられる。
【0056】
これらの中では、非イオン性界面活性剤、両性界面活性剤が好ましく、中でもモノグリセリド、ジグリセリド、ホウ酸エステル、ジアルコールアルキルアミン、ジアルコールアルキルアミンエステル、アミド等のエステル形または含窒素形の非イオン性界面活性剤;ベタイン形の両性界面活性剤が好ましい。
【0057】
なお、帯電防止剤としては、市販品を使用することができ、例えば、エレクトロストリッパーTS5(花王(株)製、商標、グリセリンモノステアレート)、エレクトロストリッパーTS6(花王(株)製、商標、ステアリルジエタノールアミン)、エレクトロストリッパーEA(花王(株)製、商標、ラウリルジエタノールアミン)、エレクトロストリッパーEA−7(花王(株)製、商標、ポリオキシエチレンラウリルアミンカプリルエステル)、デノン331P(丸菱油化(株)製、商標、ステアリルジエタノールアミンモノステアレート)、デノン310(丸菱油化(株)製、商標、アルキルジエタノールアミン脂肪酸モノエステル)、レジスタットPE−139(第一工業製薬(株)製、商標、ステアリン酸モノ&ジグリセリドホウ酸エステル)、ケミスタット4700(三洋化成(株)製、商標、アルキルジメチルベタイン)、レオスタットS(ライオン(株)製、商標、アルキルジエタノールアミド)などが挙げられる。
【0058】
帯電防止剤を配合する場合の配合量は、プロピレン系重合体(A)100重量部に対し、0.01〜2重量部、好ましくは0.02〜1重量部、さらに好ましくは0.04〜0.8重量部である。これら帯電防止剤は、本目的の効果を損なわない範囲で、1種または2種以上組み合わせて使用することができる。帯電防止剤の配合量が0.01重量部未満では、表面固有抵抗を減らして帯電による障害を防止することができない。一方、2重量部より多いと、ブリードによるシート表面に粉吹きが発生しやすくなる。
【0059】
(v)エラストマー
エラストマーとしては、例えばエチレン・α−オレフィン共重合体、プロピレン・α−オレフィン共重合体、水添スチレン系エラストマーなどが挙げられる。エチレン・α−オレフィン共重合体としては、日本ポリエチレン(株)製「カーネル」シリーズや「ハーモレックス」シリーズ、ダウ・ケミカル日本(株)製「アフィニティ」シリーズや「エンゲージ」シリーズ等が例示でき、プロピレン・α−オレフィン共重合体としては、ダウ・ケミカル日本(株)製「バーシファイ」シリーズや、エクソンモービル社製「ビスタマックス」シリーズや三井化学(株)製「ノティオ」シリーズ等が例示でき、また、水添スチレン系エラストマーとしてはJSR(株)製「ダイナロン」シリーズ等が例示できるが、これらに限定されるものではない。
【0060】
(vi)その他
さらに、本発明の効果を著しく損なわない範囲内で、紫外線吸収剤、金属不活性剤、過酸化物、充填剤、抗菌防黴剤、蛍光増白剤、防曇剤、難燃剤、着色剤、顔料、天然油、合成油、ワックス、脂肪族系石油樹脂、脂環族系水添石油樹脂、芳香族系石油樹脂、C5系石油樹脂、テルペン樹脂、クマロン・インデン樹脂、フェノール樹脂、ロジン樹脂、タッキファイヤーなどを配合することができ、その配合割合は適宜量である。
【0061】
[II]シートの成形方法
シートを製造するには、このようなシートをつくるには、一般的に用いられる、例えば、押出成形法、カレンダー成形法、圧縮成形法、注型成形法等により製造することができ、好ましくは、押出シート成形である。
押出シート成形としては、単軸又は二軸のスクリュー押出機を通してコートハンガーダイからシート状に押出される。押出されたシートは、金属ロール表面にエアーナイフ、エアーチャンバー、硬質ゴムロール、スチールベルト、金属ロールにて押さえつけ冷却固化されてシートに製造される。又、シート両面をスチールベルトで挟んで冷却固化することもできる。
【0062】
具体的な例をT型ダイス成形機で説明すると、押出機に重合体を供給し、好ましくは180〜260℃、より好ましくは180〜240℃の温度で加熱溶融混練後、T型ダイスのダイリップよりシート状に押出し、エアーナイフ法やエアーチャンバー法、ポリシングロール法、スイングロール法、ベルトキャスト法、水冷法等で押出された溶融シートを冷却して、引取機で引き取ることによってシートを製出する。
シートの冷却方法としては、表面光沢、透明性の観点から、片面あるいは両面に金属ベルトを添接して狭圧冷却するベルトキャスト法が特に好ましい。
【0063】
単層シートとして成形され利用される場合は、その厚みは200μm以上、好ましくは200〜3mmであるのが普通である。厚みが200μmより大きく下回る場合は、シートの剛性が損なわれ、厚みが3mmを大きく上回る場合は、成形体の透明性が充分ではなくなる。
【0064】
押出しシート成形は、単層の他に多層シートも使用できる。多層シートとは、複数の押出機を用い、フィードブロックやマルチマニホールドを用いてガスバリア樹脂層、接着樹脂層、再生樹脂層、華燭樹脂層、等を重ねた多層シートとすることが出来る。
【0065】
また、本発明のシートは、その表面に透明性を損なわない範囲で、帯電防止剤、防曇剤、滑剤等の塗布剤を塗布しても差し支えない。
【0066】
さらに、本発明のシートは、真空成形、真空圧空成形等の熱成形により二次加工することによって各種容器、カップ、トレーや蓋等の各種成形体に加工することができる。
プロピレン系重合体シートを熱成形方法する方法としては、加熱したシートを金型上に配設した後、金型外面側から吸引する方法、吸引と共にプラグアシストする方法、あるいは、金型内面側から空気圧を加える方法、これにプラグアシストをする方法、吸引と空気による与圧を併用する方法等いわゆる真空成形方法あるいは真空圧空成形方法を採用することができるが、圧空圧力は通常2kg/cm以上、好ましくは2.5kg/cm以上、さらに好ましくは2.8kg/cm以上とされる。
【0067】
圧空圧力が上記範囲を下回ると、成形品の形が不完全になるおそれがあり、成形を容易にするためにシート温度を上げると透明性が損なわれる問題がある。本発明のシート成形用プロピレン系重合体組成物は、二次加工成形体用のシートの製造として適し、熱成形することによって、食品、衣料、日用雑貨、医薬品、その他商品の包装材料として広く使用することができる。
【実施例】
【0068】
以下、本発明を実施例及び比較例を挙げて、詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例で限定されるものではない。
なお、実施例、比較例で用いた評価方法及び使用樹脂は、以下の通りである。
【0069】
[1.評価方法]
(1)メルトフローレート(MFR)[単位:g/10min]:
プロピレン系樹脂は、JIS K7210:1999「プラスチック−熱可塑性プラスチックのメルトマスフローレイト(MFR)及びメルトボリュームフローレイト(MVR)の試験方法」のA法、条件M(230℃、2.16kg荷重)に準拠して測定した。
【0070】
(2)ヘイズ[単位:%]:
シート及び蓋形成形品を23℃、50%RHの雰囲気下にて24時間状態調整した後、JIS K7136:2000に準拠して、ヘイズメーターで測定した。得られた値が小さいほど透明性がよい。
【0071】
(3)引張弾性率:
シートを23℃、50%RHの雰囲気下にて24時間状態調整した後、JIS K7127に準拠して引張弾性率を測定した。得られた値が大きいほどシートの剛性が高いと言える。
【0072】
(4)光沢:成形シートを用いて、ASTM D2457−1970に準拠して測定した。
【0073】
(5)成形シート臭気評価
臭気評価:JIS Z9080に準拠して等級付け官能評価を行った。6Lポリエチレンテレフタレート製におい袋に成形シート100gと活性炭を通して得た無臭エアーを入れ、室温23℃、湿度50%下にて7日間保管したにおい袋内エアーの官能評価をパネラー5人により、以下の6段階評価を行った。
5:非常に強く臭う
4:強く臭う
3:臭う
2:弱く臭う
1:非常に弱く臭う
0:臭いを感じない
【0074】
(6)蓋型成形品の外観観察:
蓋型成形品のヘイズ値及び外観について目視観察した。
【0075】
[2.使用した樹脂および添加剤]
(1)プロピレン系重合体(A)
プロピレン系重合体(A)として、以下に記載する製造方法により得られた以下のポリプロピレン(A−1)〜(A−2)を用いた。
【0076】
プロピレン系樹脂(A−1)の製造
(1)触媒の製造
攪拌翼と還流装置を取り付けた5Lセパラブルフラスコに、純水1,700gを投入し、98%硫酸500gを滴下した。そこへ、平均粒径18μmに造粒したモンモリロナイト(原料として水澤化学工業社製商品名「ベンクレイSL」を用いた)を300g添加後、攪拌した。その後90℃で2時間反応させた。このスラリーをろ過、洗浄した。回収したケーキに27%硫酸リチウム水溶液1,230gを加え、90℃で2時間反応させた。このスラリーをろ過し、さらに、ろ液のpHが4以上となるまで洗浄した。回収したケーキを100℃で予備乾燥した後に200℃で2時間乾燥した。その結果、275gの化学処理モンモリロナイトを得た。
1Lフラスコに、化学処理モンモリロナイト20gを加え、ヘプタン129mlとトリイソブチルアルミニウムのヘプタン溶液71ml(50mmol)を加え、室温で1時間攪拌した。その後、ヘプタンで残液率1/100まで洗浄し、最後にスラリー量を100mlに調製した。さらに、トリノルマルオクチルアルミニウムのヘプタン溶液3ml(1mmol)を加えて、10分間室温で攪拌した。
200mlフラスコ中で、(r)−ジメチルシリレンビス[1,1’−{2−メチル−4−(4−クロロフェニル)−4H−アズレニル}]ハフニウム(300μmol)にヘプタン(50ml)を加えてスラリーとした後、上記1Lフラスコに加えて室温で60分間攪拌した。その後、ヘプタン181mlを加えて触媒スラリーを調製した。
【0077】
(2)予備重合
窒素で十分置換を行った内容積1.0Lの撹拌式オートクレーブに、上記触媒スラリーを全量導入した。温度が40℃に安定したところでプロピレンを10g/時間の速度で供給し、温度を維持した。4時間後プロプレンの供給を停止し、さらに1時間維持した。予備重合終了後、残モノマーをパージし、撹拌を停止させ、十分窒素置換を行った1Lフラスコにスラリーを抜き出した。このスラリーを減圧乾燥して予備重合触媒を63.4g回収した。
【0078】
(3)重合
内容積200Lの誘導撹拌機付オートクレーブ内をプロピレンで十分置換した後に、十分に脱水処理した液化プロピレン45kgを導入し30℃に保持した。これに、トリイソブチルアルミニウムのヘプタン溶液470ml(50g/l)を加えた。水素2.0NL、エチレンを0.9kg導入し、上記予備重合触媒1.7gをアルゴンで圧入した。温度65℃まで40分かけて昇温し、65℃で2時間反応させた。また、この間水素を0.12g/hrの定速で導入した。その後、エタノール100mlを圧入して、反応を停止させ、残ガスをパージした。その結果、18.4kgのプロピレン系樹脂(A−1)が得られた。該樹脂のMFRは、1.4g/10min、エチレン含量1.3重量%であった。
【0079】
プロピレン系樹脂(A−2)の製造
内容積200リットルの攪拌式重合槽により、プロピレン−エチレンランダム共重合体の製造を実施した。重合槽内をプロピレンで充分置換した後、脱水・脱酸素したn−ヘプタン60リットルを導入し、ジエチルアルミニウムクロライド30.0g、ソルベー社タイプ三塩化チタン触媒10gをプロピレン雰囲気下、60℃で導入した。
重合槽内の温度を60℃に昇温した後、プロピレンを5.9kg/時間、エチレンを0.18kg/時間のフィード速度で導入し、併用する水素は、気相部の水素濃度1.1vol.%で制御した。6時間重合を継続した後、プロピレンとエチレンの導入を止め、さらに重合槽内の温度を60℃で60分間継続させた。
このようにして得られたスラリーを、濾過、乾燥して32.0kgのパウダー状のプロピレン−エチレンランダム共重合体であるプロピレン系樹脂(A−2)を得た。得られたプロピレン系樹脂(A−2)は、MFR=1.0g/10分、エチレン含有量=2.5重量%であった。
【0080】
【表1】

【0081】
(2)造核剤(B)
(B−1)ADEKA社製商品名「アデカスタブNA−11SF」
リン酸−2,2’−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)ナトリウム塩系造核剤
(B−2)ADEKA社製商品名「アデカスタブNA−21」
リン酸−2,2’−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)アルミニウム塩系造核剤
【0082】
(3)本発明の造核剤(B)以外の造核剤として、以下のものを使用した。
(B−a)・ゲルオールMD:新日本理化社製商品名
ジメチルベンジリデンソルビトール系透明化核剤
【0083】
(4)高級脂肪酸アルミニウム塩(C)
(C−1)ステアリン酸アルミニウム塩
日東化成工業社製商品名「Al−St(103)」
(C−2)ステアリン酸アルミニウム塩
日東化成工業社製商品名「Al−St(102)」
(C−3)モンタン酸アルミニウム塩
日東化成工業社製商品名「AS−8」
【0084】
(5)高級脂肪酸アルミニウム以外の脂肪酸金属塩として、以下のものを使用した。
(C−a)ステアリン酸カルシウム
日東化成工業社製商品名「Ca−St」
(C−b)ステアリン酸マグネシウム
日東化成工業社製商品名「Mg−St」
(C−c)ステアリン酸亜鉛
日東化成工業社製商品名「Zn−St」
(C−d)ステアリン酸リチウム
日東化成工業社製商品名「Li−St」
【0085】
(6)酸化防止剤
(i)ヒンダードフェノール系酸化防止剤:
チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製商品名「イルガノックス1010」
テトラキス[メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシルフェニル)プロピオネート]メタン
(ii)リン系酸化防止剤:
チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製商品名「イルガホス168」
トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェノール)フォスファイト
【0086】
(実施例1〜7、比較例1〜7)
上記した各成分を、下記表2、表3に示す割合で、更に酸化防止剤としてテトラキス[メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン(「イルガノックス1010」)0.05重量部およびトリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト(「イルガホス168」)0.1重量部をヘンシェルミキサーに投入、750rpmで1分間室温で高速混合した後、スクリュー口径50mmのサーモ株式会社製単軸押出機にて、スクリュー回転数100rpm、吐出量25kg/hr、押出機温度230℃で溶融混練し、ストランドダイから押し出された溶融樹脂を、冷却水槽で冷却固化させながら引き取り、ストランドカッターを用いてプロピレン系樹脂組成物ペレットを得た。
【0087】
得られたプロピレン系樹脂組成物ペレットを230℃に加熱されたスクリュー径40mmの押出シート成形機にて幅750mm、ダイリップ間隔0.8mmのコートハンガーダイから水平方向に押出し、60℃の水が内部で循環している一対の鏡面加工された硬質クロムメッキの金属ロールで挟んで冷却固化し、厚み0.35mmのシートを製造した。得られたシートの物性を表2および表3に示した。
【0088】
このシートを、間接加熱式圧空成形機(浅野研究所社製、コスミック成形機)を使用して350℃のセラミックヒーターで上下より加熱し、圧空圧力2.5kg/cmの条件で、縦13cm、横18cm、深さ1cmの金型を使用して蓋形成形品を真空圧空成形した。評価結果を表2および表3に示した。
【0089】
【表2】

【0090】
【表3】

【0091】
これらの結果より明らかなように、本発明のシートは、ヘイズ値が小さく透明性に優れ、光沢にも優れ、臭いの問題もなく、剛性も高いものであることが分かる。さらに、本発明のシートを熱成形したものは、透明性が極めて高く、外観も良好でブツの発生や黄変等の問題もないことが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0092】
本発明のプロピレン系樹脂シートは、白味がなく、すっきりした透明感があり、優れた光沢性を持つため高級感があり、またブツの発生もなく、さらには臭気の改善されたシートとして極めて商品価値の高いものであるので、食品包装、医療、文具、雑貨などの広い範囲の用途に好適に使用することができる。また、成形時に発生する臭気が抑制され環境の改善により連続製膜が可能になり生産効率の改善に寄与するものであり、さらに本発明のシートは熱成形して各種製品に広く利用でき、本発明のプロピレン系樹脂シートの産業上の利用性は非常に高いものがある。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロピレン系重合体(A)100重量部に対し、下記一般式(1)で示されるリン酸エステル金属塩系造核剤(B)0.01〜0.5重量部と高級脂肪酸アルミニウム塩(C)0.01〜0.5重量部を含有するプロピレン系樹脂組成物からなることを特徴とするプロピレン系樹脂シート。
【化1】

(式(1)において、Rは水素原子又は炭素原子数1〜4のアルキル基を表し、R及びRは、同一又は異なっていてもよく、それぞれ水素原子又は炭素原子数1〜12のアルキル基を表し、Mはアルカリ金属原子又はアルミニウム原子を表し、pは1又は2を表し、qはMがアルカリ金属原子のときは0を表し、Mがアルミニウム原子のときは1又は2を表す。)
【請求項2】
シートの厚さが200μm以上であることを特徴とする請求項1に記載のプロピレン系樹脂シート。
【請求項3】
熱成形用のシートであることを特徴とする請求項1または2に記載のプロピレン系樹脂シート。

【公開番号】特開2011−219519(P2011−219519A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−86777(P2010−86777)
【出願日】平成22年4月5日(2010.4.5)
【出願人】(596133485)日本ポリプロ株式会社 (577)
【Fターム(参考)】