説明

プロモータ工学及び遺伝子制御

【課題】遺伝子発現、タンパク質発現、又は遺伝子若しくはタンパク質の輸送の調節を最適化する方法を提供する。
【解決手段】本発明に係るライブラリの各発現ベクターにおけるプロモータの核酸配列は、対応する野生型プロモータの核酸配列に対してランダムに変異している。本発明に係る、遺伝子発現を調節する方法は、(a)複数の細胞を発現ベクターのライブラリに接触させるステップであって、前記発現ベクターのそれぞれが、少なくとも1つの目的の遺伝子とそれに作用可能に連結した調節可能なプロモータとを含み、(i)前記調節可能なプロモータのそれぞれが核酸を含み、前記核酸の配列が前記ライブラリの他の配列に対してランダムに変異をしており、(ii)遺伝子発現を制御する条件下では、前記目的の遺伝子の発現レベル、前記目的の遺伝子の発現条件、又はそれらの組み合わせが前記プロモータ配列の前記変異に応じて相対的に変わるステップと、(b)野生型遺伝子の発現が非最適に発生する条件下で、ステップ(a)で得られた前記複数の細胞の遺伝子発現を検出するステップと、(c)前記野生型遺伝子の発現が非最適に発生する条件下で、前記複数の細胞から前記ベクターからより高い発現レベルが得られた細胞を同定するステップと、(d)ステップ(c)で同定された前記細胞を前記条件下で培養するステップとを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プロモータを含むベクター又は発現カセットであって、前記各プロモータが核酸を含み、前記核酸の配列が野生型プロモータの配列に対してランダムに変異しており、前記変異の結果として前記プロモータの調節が改変されているベクター又は発現カセットを提供する。下記に、本発明に係るベクター、ライブラリ、又は細胞を用いて遺伝子発現、タンパク質発現、又は遺伝子若しくはタンパク質の輸送の調節を最適化する方法を説明する。
【背景技術】
【0002】
有益になるようにタンパク質を改良する(抗体結合親和性、酵素制御、及び基質特異性などの特性に関して)タンパク質工学において、並びに他の生物学的配列に対して、定方向進化(directed evolution)が広く利用されてきた。近年、この手法は、プロモータにまで及ぶようになった。原核細胞及び真核細胞の両方のシステムにおいて、プロモータ誘導の遺伝子発現の強度が様々なランダム変異のライブラリが構築された。
【0003】
基礎及び応用生物学的研究(例えば、有毒なタンパク質又は代謝産物を生成するように操作された株の開発のための必須遺伝子の機能的ゲノム研究、並びに遺伝子療法研究及び農業研究)では、調節可能なプロモータは不可欠なツールとなった。調節可能なプロモータは、利用法によっては、入手可能な天然プロモータ又は合理的な手法でカスタマイズされたプロモータでは通常得られない非常に特異的な調節特性を示す必要がある。今日まで、発現のための最適な条件を確立するプロモータ調節を実現できる満足の行く方法は存在しない。
【0004】
例えば、生体触媒として酵母を利用する産業プロセスのための理想的な調節可能なプロモータは、(i)緊密に調節でき、(ii)低費用で誘導でき、(iii)誘導後に高レベルの発現を実現し、(iv)容易に操作できるものでなくてはならない。サッカロミセス・セレヴィシエ(Saccharomyces cerevisiae:出芽酵母)で遺伝子発現を誘導できるシステムの中で、これらの全ての要点を満たすものは存在しない。それらのシステムのほとんどは、緊密に調節できず、扱いが困難であり、さらに/或いは高価、有毒、若しくは入手が困難なインデューサ(ドキシサイクリン、ガラクトース、銅イオン、熱、又は光)を必要とする。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0005】
ある実施形態では、本発明は、調節可能なプロモータを含むベクター又は発現カセットであって、前記調節可能なプロモータが核酸を含み、前記核酸の配列が野生型プロモータの配列に対してランダムに変異しており、前記変異によって前記プロモータの調節機構が改変されているベクター又は発現カセットを提供する。ある実施形態では、改変された調節機構は、目的の遺伝子の発現レベル、目的の遺伝子の発現条件、又はそれらの組み合わせに反映される。
【0006】
ある実施形態では、本発明は、SEQ ID No(配列認識番号):1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10に相当する又は相同な変異型DAN1プロモータを含む単離された核酸を提供する。他の実施形態では、本発明は、変異型DAN1プロモータを含む単離された核酸であって、前記プロモータが、SEQ ID No:11における1〜56、66〜139、148〜232、245〜283、290〜293、301〜302、310、322〜326、334〜347、357〜371、380〜450、又は458〜551の1つ以上の部位において、少なくとも1つの核酸で変異を有する単離された核酸を提供する。
【0007】
他の実施形態では、本発明は、変異型DAN1プロモータを含む単離された核酸であって、前記変異型プロモータがSEQ ID No:11に記載の配列の、(a)ヌクレオチド配列の部位4、15、19、36、53、56、60、66、74、75、78、86、99、132、136、176、201、205、207、216、226、228、269、277、281、285、299、303、310、327、331、332、375、376、390、428、434、467、477、480、508、511若しくはそれらの組み合わせにおいてTをCに置換した配列、(b)ヌクレオチド配列の部位7、18、26、40、122、135、149、153、162、164、165、171、172、187、196、211、233、234、237、241、260、274、280、308、313、322、337、343、344、346、366、368、381、386、396、397、402、404、422、427、429、432、445、470、490、492若しくはそれらの組み合わせにおいてAをGに置換した配列、(c)ヌクレオチド配列の部位21においてCをAに置換した配列、(d)ヌクレオチド配列の部位237、338、469、514、518においてAをTに置換した配列、(e)ヌクレオチド配列の部位28、296、307、373、392、528若しくはそれらの組み合わせにおいてCをTに置換した配列、(f)ヌクレオチド配列の部位22、63、391、439若しくはそれらの組み合わせにおいてGをAに置換した配列、(g)ヌクレオチド配列の部位198においてTをGに置換した配列、又はそれらの配列の組み合わせを有する単離された核酸を提供する。
【0008】
ある実施形態では、本発明は、調節可能なプロモータの制御下にある遺伝子の発現を最適化する方法であって、
(a)複数の細胞を発現ベクターのライブラリに接触させるステップであって、
前記発現ベクターのそれぞれが、少なくとも1つの目的の遺伝子及びそれに作用可能に連結した調節可能なプロモータを含み、
前記調節可能なプロモータのそれぞれが核酸を含み、前記核酸の配列が前記ライブラリの他の核酸の配列に対してランダムに変異しており、
遺伝子発現を制御する条件下では、前記目的の遺伝子の発現レベルが前記プロモータ配列の前記変異に応じて相対的に変わるステップと、
(b)前記遺伝子発現を調節する条件下で培養されたステップ(a)の細胞の遺伝子発現レベルを検出するステップと、
(c)前記条件下で、前記複数の細胞から発現レベルが最適化された細胞を同定するステップとを含む方法を提供する。
【0009】
他の実施形態では、本発明は、遺伝子発現を調節する方法であって、
(a)複数の細胞を発現ベクターのライブラリに接触させるステップであって、
前記発現ベクターのそれぞれが、少なくとも1つの目的の遺伝子及びそれに作用可能に連結した調節可能なプロモータを含み、
前記調節可能なプロモータのそれぞれが核酸を含み、前記核酸の配列が前記ライブラリの他の配列に対してランダムに変異しており、
遺伝子発現を制御する条件下では、前記目的の遺伝子の発現レベルが前記プロモータ配列の前記変異に応じて相対的に変わるステップと、
(b)野生型遺伝子の発現が非最適な条件下で、ステップ(a)で得られた前記複数の細胞の遺伝子発現レベルを検出するステップと、
(c)前記野生型遺伝子の発現が非最適な条件下で、前記複数の細胞から、発現レベルが増加した細胞を同定するステップと、
(d)ステップ(c)で同定された前記細胞を前記条件下で培養するステップとを含む方法を提供する。
【0010】
本発明のこれらの態様によれば及びある実施形態では、前記ライブラリの各ベクターは、目的の遺伝子の一定レベルの発現を提供する。このことは、他の実施形態では、少なくとも2つの異なる方法によって確認される。ある実施形態では、前記方法は、単一細胞レベルで発現を確認する。他の実施形態では、前記方法は、蛍光活性化細胞選別法、蛍光顕微鏡検査法、又はそれらの組み合わせを含み得る。
【0011】
他の実施形態では、前記方法は、前記細胞内のプロモータを同定するステップをさらに含む。他の実施形態では、本発明は、対象へのタンパク質の輸送の調節を最適化する方法であって、前記目的のタンパク質をコードしている遺伝子に作用可能に連結した本発明に係る方法によって同定されたプロモータを含むベクターを対象に投与するステップを含む方法を提供する。
【0012】
他の実施形態では、本発明は、本発明に係る方法によって同定された目的の遺伝子の所望の発現レベルを有する細胞を提供する。ある実施形態では、前記目的の遺伝子は、野生型遺伝子の発現を非最適に誘導する条件下で発現する。
【0013】
他の実施形態では、本発明は、対象へのタンパク質の輸送の調節を最適化する方法であって、本発明に係る方法によって同定された、前記タンパク質の発現が最適に調節された細胞を前記対象に投与するステップを含む方法を提供する。ある実施形態では、前記タンパク質は、野生型タンパク質の発現を非最適に誘導する条件下で発現される。
【0014】
他の実施形態では、本発明は、野生型遺伝子の発現を非最適に誘導する条件下で、目的のタンパク質の生成を最適に調節する方法であって、野生型遺伝子の発現を非最適に誘導する条件下で本発明の細胞を培養するステップを含む方法を提供する。前記細胞は、ある実施形態では真核細胞であり、他の実施形態では原核細胞である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明は、ある実施形態では、プロモータを含むベクター又は発現カセットであって、前記プロモータのそれぞれが核酸を含み、前記核酸の配列が野生型プロモータの配列に対してランダムに変異しており、前記プロモータの調節機構が改変されているベクター又は発現カセットを提供する。ある実施形態では、本発明は、前記ベクターを含む細胞を提供する。ある実施形態では、前記ベクターは、発現ライブラリの一部である。ある実施形態では、前記プロモータは、少なくとも1つの目的の遺伝子に作用可能に連結している。ある実施形態では、前記プロモータは、真核細胞に由来する。他の実施形態では、前記ベクターを含む細胞は、真核細胞である。
【0016】
ある実施形態では、カスタマイズされたデザインが必要な調節可能なプロモータの一例は、S.セレヴィシエ(S. cerevisiae)のDAN1プロモータである。DAN1プロモータは、好気条件下では不活性であるが、嫌気条件下では高活性である。このプロモータの調節機構は複雑であり、酸素欠失によって生じるヘム濃度の減少に順々に対応する少なくとも4つの公知の転写因子を必要とする。DAN1プロモータの効率的な誘導に必要とされる厳密な嫌気条件は、培地を窒素で泡立てて酸素を使い果たすことによって実現される。大きなスケールでは、物質移動力(mass transfer dynamic)がより小さくなるので、このステップは、多大な時間を要する、又は産業関連の条件下では実施不可能である。より実用的で便利な誘導方法は、エアレーションの単なる除外又は減少を含み、DAN1プロモータの調節機構を改変することを必要とする。
【0017】
ここで実証されるように、酸素によって調節されたS.セレヴィシエのDAN1プロモータの派生物は、変異性PCRによって変異させられ、プラスミドのレポーター遺伝子の上流にクローンさせられている。低酸素条件下で3倍の最大発現量を有する高生成性変異体が単離された。この系の遺伝子発現の調節は複雑であり、また多様な転写因子、リプレッサー等を必要とすることを考えると、このことはいくぶん予期せぬ発見であった。したがって、ランダム変異によって、複数の調節制御レベルを有するプロモータの発現が増大することは予想することができなかった。さらに、プロモータの変異により、発現の誘導に必要な条件が変わる。ここで実証されるように、変異した調節可能なプロモータは、嫌気条件下又は微好気条件下のいずれでも、野生型プロモータよりも多く遺伝子発現をもたらす。また、驚くべきことに、微好気条件下で発現誘導が低かったプロモータは、本発明に係る方法を行った後には、微好気条件下で発現を顕著に誘導するようになった。したがって、本発明の技術は、幾つかの実施形態では、調節因子のプロモータへの結合の種類及び強度、誘導が発生する条件の厳密性、プロモータの性能、又はそれらの組み合わせについて、プロモータ配列を調節する。
【0018】
ある実施形態では、本発明は、本発明の発現ベクターのライブラリであって、前記各ベクターが少なくとも1つの目的の遺伝子とそれに作用可能に連結した調節可能なプロモータを含み、前記各プロモータは核酸を有し、前記核酸の配列が前記ライブラリの他の配列に対してランダムに変異しているライブラリを提供する。ある実施形態では、前記変異は、プロモータの調節機構を改変する。ある実施形態では、前記プロモータは、真核細胞に由来する。他の実施形態では、前記ベクターを含む細胞は、真核細胞である。
【0019】
ある実施形態では、「プロモータ」という用語は、ある実施形態では、コード配列の上流に直接的に配置し、遺伝子の基底転写及び/又は調節された転写にとって重要なDNA配列を意味する。ある実施形態では、プロモータ内のほんのわずかのヌクレオチドだけがプロモータの機能に必要不可欠である。本発明に係るプロモータは、ある実施形態では、目的の遺伝子に作用可能に連結しており、他の実施形態では、目的の遺伝子に作用可能に連結していない。
【0020】
ある実施形態では、前記プロモータは、通常は適切な条件下で前記目的の遺伝子の発現に関連する内在性プロモータの変異体である。ある実施形態では、このようなプロモータは、ランダムに変異しており、本発明に係るライブラリを構成する。他の実施形態では、このような変異体は、前記目的の遺伝子の発現レベルに関して、プロモータ強度が評価される。ある実施形態では、前記発現は、少なくとも2つの方法で評価される。また、他の実施形態では、前記発現は、ここに例示されたように、集団又は単一の細胞レベルで評価される。或いは、前記発現は、当業者に周知の他の方法によって評価される。
【0021】
他の実施形態では、前記プロモータは、調節可能なプロモータである。調節可能なプロモータは、ある実施形態では、特定のプロモータからの発現を促進する特定の条件の発生又は設定に応じて、下流にある遺伝子の発現が発生するプロモータを意味する。幾つかの実施形態では、かかる条件は、発現を直接的に開始させる。或いは、他の実施形態では、かかる条件は、発現に対する障害を取り除く。幾つかの実施形態では、かかる条件は、発現を停止させる又は減少させる。
【0022】
ある実施形態では、かかる条件は、培養条件の操作によって反映される。前記培養条件は、例えば、培地内の酸素濃度である(幾つかの実施形態では微好気的条件であり、他の実施形態では嫌気条件である)。他の実施形態では、かかる条件は、特定の温度、栄養素、栄養素の欠失、金属の存在、又は当業者に周知の他の刺激物質若しくは環境因子を含む。ある実施形態では、調節可能なプロモータは、ガラクトース(例えば、UDP−ガラクトースエピメラーゼ(GAL10)、ガラクトキナーゼ(GAL1))、グルコース(例えば、アルコールデヒドロゲナーゼII(ADH2))、又はリン酸(例えば、酸性ホスファターゼ(PHO))によって調節される。他の実施形態では、調節可能なプロモータは、熱ショック(熱ショックプロモータ)、化学物質(例えば、IPTG又はテトラサイクリン)、又は当業者に周知の他の方法によって活性化される。いかなる調節可能なプロモータ及び調節するための条件も、本発明に係るベクター、核酸、及び方法に包含され、本発明の実施形態に相当することを理解されたい。ある実施形態では、調節可能なプロモータは、GAL1、GAL2、GAL3、GAL4、GAL6、GAL7、GAL8、GAL9、GAL10、MET3、MET25、テトラサイクリン、又はCUP1プロモータであり得る。
【0023】
ある実施形態では、本発明は、SEQ ID No:1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10に相当する又は相同な変異型DAN1プロモータを含む単離された核酸を提供する。ある実施形態では、本発明は、SEQ ID No:1、2、3、4、5又は6に相当する又は相同な変異型DAN1プロモータを含む単離された核酸を提供する。ある実施形態では、本発明は、SEQ ID No:1又は2に相当する又は相同な変異型DAN1プロモータを含む単離された核酸を提供する。他の実施形態では、本発明は、変異型DAN1プロモータを含む単離された核酸配列であって、前記プロモータが、SEQ ID No:11における1〜56、66〜139、148〜232、245〜283、290〜293、301〜302、310、322〜326、334〜347、357〜371、380〜450、又は458〜551の1つ以上の部位において、少なくとも1つの核酸で変異を有する単離された核酸を提供する。この態様によれば及びある実施形態では、前記変異は、4、7、15、18、19、21、22、26、28、36、40、53、56、60、63、66、74、75、78、86、99、122、132、135、136、149、153、162、164、165、171、172、176、187、196、198、201、205、207、211、216、226、228、233、234、237、241、260、269、274、277、280、281、285、296、299、303、307、308、310、313、322、327、331、332、337、338、343、344、346、366、368、373、375、376、381、384、386、390、391、392、396、397、402、404、422、427、428、429、432、434、439、445、467、469、470、477、480、490、492、508、511、514、518、528、又はそれらの組み合わせの部位に存在する。ある実施形態では、これらの部位での変異は、野生型ヌクレオチド以外の任意のヌクレオチドになるように生じ得る。他の実施形態では、各部位での変異は、後述するように、特定のヌクレオチドになるように生じる。
【0024】
他の実施形態では、本発明は、変異型DAN1プロモータを含む単離された核酸であって、前記変異型プロモータがSEQ ID No:11に記載の配列の、(a)ヌクレオチド配列の部位4、15、19、36、53、56、60、66、74、75、78、86、99、132、136、176、201、205、207、216、226、228、269、277、281、285、299、303、310、327、331、332、375、376、390、428、434、467、477、480、508、511、若しくはそれらの組み合わせにおいてTをCに置換した配列、(b)ヌクレオチド配列の部位7、18、26、40、122、149、153、149、153、162、164、165、171、172、187、196、211、233、234、237、241、260、274、280、308、313、322、337、343、344、346、366、368、381、386、396、397、402、404、422、427、429、432、445、470、490、492、若しくはそれらの組み合わせにおいてAをGに置換した配列、(c)ヌクレオチド配列の部位21においてCをAに置換した配列、(d)ヌクレオチド配列の部位237、338、469、514、518においてAをCに置換した配列、(e)ヌクレオチド配列の部位28、296、307、373、392、528、若しくはそれらの組み合わせにおいてCをTに置換した配列、(f)ヌクレオチド配列の部位22、63、439、若しくはそれらの組み合わせにおいてGをAに置換した配列、(g)ヌクレオチド配列の部位198においてTをGに置換した配列、又はそれらの配列の組み合わせを有する単離された核酸を提供する。
【0025】
上記に記載した以外のヌクレオチド配列の部位での変異も本発明の一部と見なされることを理解されたい。ある実施形態では、本明細書中に記載されているように、変異したDAN1プロモータの一部と構造的又は機能的に相同な他のプロモータの一部での変異も、本発明の一部と見なされることを理解されたい。他の実施形態では、本発明は、前記DAN1プロモータに相同なプロモータの変異を含む。ある実施形態では、前記相同なプロモータ又はその一部は、S.セレヴィシエ配列に由来する。他の実施形態では、前記相同なプロモータ又はその一部は、サッカロミセス種に由来する。他の実施形態では、前記相同なプロモータ又はその一部は、サッカロミセス科に由来する。他の実施形態では、前記相同なプロモータ又はその一部は、サッカロミセス目に由来する。他の実施形態では、前記相同なプロモータ又はその一部は、サッカロミセス綱に由来する。他の実施形態では、前記相同なプロモータ又はその一部は、サッカロミセス亜門に由来する。他の実施形態では、前記相同なプロモータ又はその一部は、子嚢菌門に由来する。他の実施形態では、前記相同なプロモータ又はその一部は、真菌種に由来する。他の実施形態では、DAN1プロモータに相同なプロモータは、DAN1プロモータと同様の酸素依存性を示す。当業者は、当該技術分野で通常的な方法を用いることによって、プロモータの酸素依存性を評価することができる。相同的プロモータ又はプロモータ領域の決定は、当業者が当該技術分野で公知のツール(例えば配列アラインメントなど)を使用することによって通常的に行われる。
【0026】
ある実施形態では、DAN1に相同なプロモータは、DAN2、DAN3、DAN4、TIR1、TIR2、TIR3、又はTIR4である。他の実施形態では、DAN1に相同なプロモータは、CYC1、CYC7、ANB1、COX5b、ERG11、MOX1、MOX2、MOX4/UPC2、ROX7/MOT3、又はROX1プロモータである。
【0027】
ある実施形態では、変異は、嫌気応答要素結合部位(ある実施形態では、AR1又はAR2)に相当するプロモータの一部で起こる。一方、他の実施形態では、変異は、Mot3又はRox1結合部位で起こる。
【0028】
幾つかの実施形態では、本発明の組成物は、任意の1つ以上の変異を有する又は本明細書中に記載されたいずれかの実施形態に従ったDAN1プロモータ又はDAN1プロモータの相同体を含む核酸、ベクター又はライブラリを含む。幾つかの実施形態では、本発明の組成物は、任意の1つ以上の変異を有する又は本明細書中に記載されたいずれかの実施形態に従ったDAN1プロモータ又はDAN1プロモータの相同体を含む核酸、ベクター又はライブラリから成る。幾つかの実施形態では、本発明の組成物は、本質的に、任意の1つ以上の変異を有する又は本明細書中に記載されたいずれかの実施形態に従ったDAN1プロモータ又はDAN1プロモータの相同体を含む核酸、ベクター又はライブラリから成る。幾つかの実施形態では、本発明の核酸、ベクター又はライブラリは、本質的に、単一プロモータ(ある実施形態ではDAN1プロモータ、他の実施形態ではDAN1プロモータ相同体)に作用可能に連結した目的の遺伝子から成る。
【0029】
本明細書中で使用される「相同」という用語は、核酸配列に関する場合は、ある候補配列のヌクレオチドが、対応する天然型核酸配列のヌクレオチドと一致するパーセンテージを示す。
【0030】
ある実施形態では、「相同」、「相同体」又は「相同な」という用語は、いかなる場合でも、或る核酸配列が対応する配列に対して少なくとも70%の一致を示すことを意味する。他の実施形態では、或る核酸配列が対応する配列に対して少なくとも少なくとも72%の一致を示す。他の実施形態では、或る核酸配列が対応する配列に対して少なくとも少なくとも75%の一致を示す。他の実施形態では、或る核酸配列が対応する配列に対して少なくとも77%の一致を示す。他の実施形態では、或る核酸配列が対応する配列に対して少なくとも80%の一致を示す。他の実施形態では、或る核酸配列が対応する配列に対して少なくとも82%の一致を示す。他の実施形態では、或る核酸配列が対応する配列に対して少なくとも85%の一致を示す。他の実施形態では、或る核酸配列が対応する配列に対して少なくとも87%の一致を示す。他の実施形態では、或る核酸配列が対応する配列に対して少なくとも90%の一致を示す。他の実施形態では、或る核酸配列が対応する配列に対して少なくとも92%の一致を示す。他の実施形態では、或る核酸配列が対応する配列に対して少なくとも95%以上の一致を示す。他の実施形態では、或る核酸配列が対応する配列に対して少なくとも95〜100%の一致を示す。同様に、特定の配列に対する一致は、或る配列に対する直接的な一致と、ここに定義されたような、或る配列に対する相同との両方を意味する。
【0031】
相同は、当該技術分野で公知の方法によって、配列アラインメントについてのコンピュータ・アルゴリズムにより判断される。例えば、核酸配列の相同を分析するためのコンピュータ・アルゴリズムとしては、例えば、BLAST、DOMAIN、BEAUTY(BLAST Enhanced Alignment Utility)、GENPEPT、及びTREMBLなどの市販されている様々なソフトウエアパッケージがある。
【0032】
相同を判断する他の方法としては、当該技術分野では公知である、候補配列のハイブリダイゼーションの検出による方法がある(例えば、「"Nucleic Acid Hybridization" Hames, B. D., and Higgins S. J., Eds. (1985)」、「Sambrook et al., 1989, Molecular Cloning, A Laboratory Manual, (Volumes 1-3) Cold Spring Harbor Press, N.Y.」、及び「Ausubel et al., 1989, Current Protocols in Molecular Biology, Green Publishing Associates and Wiley Interscience, N.Y」を参照されたい)。例えば、ハイブリダイゼーションの方法は、適度から厳密な条件下で、天然型カスパーゼペプチドをコードしているDNAの補体に対して行われる。ハイブリダイゼーション条件は、例えば、10〜20%のホルムアルデヒド、5×SSC(150mMのNaCl、15mMのクエン酸三ナトリウム)、50mMのリン酸ナトリウム(pH7.6)、5×Denhardt's溶液10%の硫酸デキストラン、及び20μg/mlのせん断された変性サケ精子DNAとを含む溶液内で、42℃で一晩培養することである。
【0033】
ある実施形態では、本発明で説明されるライブラリは、ゲノムDNA,cDNA、又は増幅された核酸を含む核酸断片から構成される。ある実施形態では前記プロモータは、及び/又は、他の実施形態では目的の遺伝子が若しくは他の実施形態ではプロモータの制御下にある目的の遺伝子は、1つ又は2つ或いはそれ以上のゲノムから得られる。前記ゲノムは、他の実施形態では、性質がよく知られているゲノムであり得る。
【0034】
本発明で使用される核酸は、当該技術分野で公知の任意の合成法又は組み換え法によって生成することができる。また、前記核酸は、当該技術分野で公知の方法を用いて、その生物物理学的又は生物学的な性質を改変するように調節することができる。例えば、前記核酸を調節することにより、ヌクレアーゼに対する安定性(例えば、「末端キャッピング」)を増大させたり、前記核酸における、親油性、溶解度、又は、相補配列に対する親和性を改変させたりすることができる。これらの核酸配列は、ベクター、発現カセット、プロモータ配列、目的の遺伝子、又はそれらの任意の組み合わせを含み得る。
【0035】
本発明に係るDNAは、当該技術分野で公知の方法によって、化学的に合成することもできる。例えば、当該技術分野で公知の方法によって、4つのヌクレオチドからDNAの全体又は一部を化学的に合成することができる。このような方法として、Caruthers(1985年)に開示された方法がある。また、DNAは、重複する二重鎖のオリゴヌクレオチドを作成して、ギャップを埋め、末端を互いに連結させることによって合成することもできる(例えば、「Sambrook et al. (1989)」、及び「Glover et al. (1995)」を参照されたい)。タンパク質の機能的相同体を発現するDNAは、部位特異的変異誘発法によって、野生型DNAから作成することができる(例えば、「Zoller et al. (1982)」、「Zoller (1983)」、「Zoller (1984)」、及び「McPherson (1991)」を参照されたい)。得られたDNAは、当該技術分野で公知の方法によって増幅することができる。適切な方法の1つは、「Saiki et al. (1988)」、米国特許第4,683,195号(Mullis et al.)、及び「Sambrook et al. (1989)」に開示されたポリメラーゼ連鎖反応(polymerase chain reaction:PCR)法がある。
【0036】
ある実施形態では、選択されるゲノムは、性質がよく知られているゲノムである。ある実施形態では、前記ゲノムは、真核生物(即ち、原性生物、渦鞭毛藻、藻、植物、真菌、糸状菌類、無脊椎動物、脊椎動物など)に由来する小型のゲノムである。前記真核生物は、例えば、シロイヌナズナ、ガンビエハマダラカ、シノラブディス・エレガンス、ゼブラフィッシュ、キイロショウジョウバエ、トラフグ、クリプトスポリジウム、クルーズ・トリパノソーマ、サッカロミセス・セレヴィシエ、及びシゾサッカロミセス・ポンベである。他の実施形態では、前記ゲノムは、マウス、ラット、サル、及びヒトに由来する。
【0037】
他の実施形態では、前記ゲノムは、原核生物(即ち、バクテリア、真正細菌、シアノバクテリアなど)に由来する小型のゲノムである。前記原核生物は、例えば、アーキオグロバス・ジュルジィディス(Archaeoglobus julgidis)、超好熱菌(Aquifex aeolicus)、エアロパイラム・ペルニクス、枯草菌、百日咳菌、TOX6、ボレリア・ブルグドルフェリ、クラミジア・トラコマチス、大腸菌K12、インフルエンザ菌(rd)、ヘリコバクター・ピロリ、メタノバクテリウム・サーモオートトロフィカム、メタン生成細菌(Methanococcus jannaschii)、マイコプラズマ・ニューモニエ、髄膜炎菌、緑膿菌、超好熱古細菌(Pyrococcus horikoshii)、ラン藻(Synechocystis PCC 6803)、好熱性古細菌(Thermoplasma volcanium)、又は好熱性細菌(Thermotoga maritima)である。
【0038】
他の実施形態では、前記プロモータライブラリは、次のものの配列から得られる。アクチノバチルス・プルロニューモニエ、エアロパイラム・ペルニクス、アグロバクテリウム・トゥメファシエンス、ガンビエハマダラカ、アクイフェックス・エオリカス、シロイヌナズナ、アーチグローバス・フルージディス(Archeglobus fulgidis)、炭疽菌、セレウス菌、バチルス・ハロデュランス、枯草菌、バクテロイデス・セタイオタオミクロン、デロビブリオ・バクテリオボラス、ビフィオバクテリアム・ロンガム、気管支敗血症菌、百日咳菌、ボレリア・ブルグドルフェリ、ブラジリゾビウムジャポニクム、マルタ熱菌、ブタ流産菌、ブルキネラ・アフィジコラ(Bruchnera aphidicola)、マレー糸状虫、シノラブディス・エレガンス、カンピロバクター・ジェジュニ、カンディダタス・ブロフマニアフロリダヌス(Candidatus blochmanniafloridanus)、カウロバクター・クレセンタス、クラミジア・ムリダルム、クラミジア・トラコマチス、クラミドフィラ・キャビエ、クラミジア・ニューモニエ、クロロビウムテピダム、クロモバクテリウム・ヴィオラセウム、クロストリジウム・アセトブチリクム、クロストリジウム・パーフリンジェンス、破傷風菌、ジフテリア菌、コリネバクテリウム・エフィシェンス、コリネバクテリウム・グルタミクム、コクシエラ・バーネッティ、ダニオ・レリオ、デクロロモナス・アロマティカ、デイノコックス・ラジオデュランス、キイロショウジョウバエ、アイメリアテネラ、アイメリアアセルブリナ、赤痢アメーバ、大便連鎖球菌、大腸菌、フゾバクテリウム・ヌクレアタム、ジオバクター・サルファーレデュセンス(Geobacter Sulfurreducens)、グロエオバクター・ヴィオラセウス、デュクレー菌、ヘモフィルス・インフルエンザ、ハロバクテリウム、ヘリコバクター・ヘパティクス、ヘリコバクター・ピロリ、ラクトバチルス・ジョンソニ、ラクトバチルス・プランタルム、ラクトコッカス・ラクティス、レプトスピラ・インテロガンス血清型、リステリア・イノキュア、リステリア菌、メソリゾビウムロティ、メタノバクター・サーモオートトロフィクス(Methanobacter thermoautotrophicus)、メタノカルドコッスス・ジャナスキ(Methanocaldocossus jannaschii)、メタノコッコイデス・ブルトニ(Methanococcoides burtonii)、メタノピルス・カンドレリ、メタノサルシナ・アセチボランス、メタノサルシナ・マゼイ・ゴエル、トリ結核菌、ウシ結核菌、ハンセン菌、ヒト結核菌、マイコプラズマ・ガリセプティクム・R菌株、マイコプラズマ・ゲニタリウム、マイコプラズマ・ペネトランス、マイコプラズマ肺炎、マイコプラズマ・プルモニス、ナノ古細菌同等物、髄膜炎菌、ニトロソモナスユーロピア、ノストク、オーシャンバチルス・イヘヤエンシス、オニオンイエローファイトプラズマ、メダカ、オリザ・サティバ、パスツレラ・ムルトシダ、フォトラブダス・ルミネセンス(Photorhabdus luminescens)、ピレルラ、熱帯熱マラリア原虫、三日熱マラリア原虫、ネズミマラリア原虫(Plasmodium yoelii)、ポルフィロモナス・ジンジバリス、プロクロロコッカス・マリナス、緑膿菌、シュードモナス・プチダ、シュードモラス・シリンゲ、パイロバクラム・エアロファイラム(Pyrobaculum aerophilum)、パイロコッカス・アビシ、パイロコッカス・フリオサス、パイロコッカス・ホリコシ、ラルストニア・ソラナセアルム、ロードシュードモナス・パルストリス、リケッチア・コノリ、リケッチア・プロワゼキ、リケッチア・リケッチイ、サッカロミセス・セレヴィシエ、サルモネラ・エンテリカ、ネズミチフス菌、サルコシスティス・クルーズ(Sarcocystis cruzi)、マンソン住血吸虫、シゾサッカロミセス・ポンベ、シェワネラ・オネイデンシス、シゲラ・フレックスネリ、シノリゾビウム・メリロティ、黄色ブドウ球菌、表皮ブドウ球菌、ストレプトコッカス・アガラクチエ、ストレプトコッカス・アガラクチエ、ミュータンス連鎖球菌、肺炎連鎖球菌、化膿連鎖球菌、ストレプトミセス・アベルミティリス、ストレプトミセス・セリカラー、スフィブロブス・トコダイイ(Suffiblobus tokodaii)、シネコシスティスsp.、トラフグ、テトラオドン・フルイアティリス、タイレリア・パルバ、サーモアナエロバクター・テングコンゲンシス(Thermoanaerobacter tengcongensis)、サーモプラズマ・アシドファイラム(Thermoplasma acidophilum)、サーモプラズマ・ヴォレアニウム(Thermoplasma voleanium)、サーモシネココッカス・エロンガタス、エアモトガ・マリティマ(Aermotoga maritima)、トキソプラズマ原虫、トレポネーマ・デンティコーラ、梅毒トレポネーマ、トロフェリマ・ウィッペリ(Tropheryma whipplei)、トリパノソーマ・ブルーセイ、クルーズ・トリパノソーマ、ウレアプラズマ・ウレアリティクム、コレラ菌、腸炎ビブリオ、ビブリオ・ブルニフィクス、グロシナ・ブレビパルピスのウィグルスワーシア・グロシニジア・エンドシンビオント(Wigglesworthia glossinidia endosymbiont of Glossina brevipalpis)、キイロショウジョウバエのウォルバキア・エンドシンビオント、ウォリネラ・スクシノゲネス、キサントモナス・アクソノポディス・パソバー・シトリ、キサントモナス・カンペストリス・パソバー・カンペストリス、キシレラファスチジオサ、又はペスト菌。
【0039】
他の実施形態では、核酸断片は、次のウイルスゲノムから得られる。T7ファージ、HIV、ウマ動脈炎ウイルス、乳酸脱水素酵素上昇ウイルス、レリスタッド・ウイルス、豚繁殖・呼吸障害症候群ウイルス、サル出血熱ウイルス、鶏腎炎ウイルス、七面鳥アストロウイルス、ヒトアストロウイルス1、2若しくは8型、ミンクアストロウイルス1、ヒツジアストロウイルス1、鳥類伝染性気管支炎ウイルス、ウシコロナウイルス、ヒトコロナウイルス、マウス肝炎ウイルス、ブタ流行性下痢ウイルス、SARSコロナウイルス、伝染性胃腸炎ウイルス、急性ミツバチ麻痺ウイルス、致死性アブラムシ麻痺ウイルス、ブラッククイーン細胞ウイルス(black queen cell virus)、クリケット麻痺ウイルス、ショウジョウバエCウイルス、ヒメトビPウイルス、カシミール豆ウイルス、チャバネアオカメムシ腸管ウイルス、ムギクビレアブラムシウイルス、タウラ症候群ウイルス、トリアトマウイルス、アルチュナ・ウイルス(allchunna virus)、アポイウイルス、細胞融合媒介ウイルス(cell fusing agent virus)、鹿ダニウイルス、デングウイルス1、2、3若しくは4型、日本脳炎ウイルス、カミティリバーウイルス(Kamiti River virus)、クンジンウイルス、ランガットウイルス、跳躍病ウイルス、モドックウイルス、モンタナ筋炎白質脳炎ウイルス、マリーバレー脳炎ウイルス、オムスク出血熱ウイルス、ポワッサンウイルス、リオブラボーウイルス、タマナ・バット・ウイルス(Tamana bat virus)、ダニ媒介性脳炎ウイルス、西ナイルウイルス、黄熱ウイルス、ヨコセウイルス、C型肝炎ウイルス、ボーダー病ウイルス、牛ウイルス性下痢I若しくは2、豚コレラウイルス、キリンペスチウイルス、トナカイペスチウイルス、GBウイルスC、G型肝炎ウイルス、GB型肝炎ウイルス、バクテリオファージMI1、バクテリオファージQベータ、バクテリオファージSP、エンテロバクテリア・ファージMXI、エンテロバクテリアNL95、バクテリオファージAP205、エンテロバクテリア・ファージfr、エンテロバクテリア・ファージGA、エンテロバクテリア・ファージKU1、エンテロバクテリア・ファージM12、エンテロバクテリア・ファージMS2、シュードモナス・ファージPP7、ピー・エネーション・モザイクウイルス1、オオムギ黄萎ウイルス、オオムギ黄萎ウイルスGAV、オオムギ黄萎ウイルスMAW、オオムギ黄萎ウイルスPAS、オオムギ黄萎ウイルスPAV、ビーンリーフロールウイルス、ダイズわい化ウイルス、ビート萎黄ウイルス、ビートマイルドイエローウイルス、ビート西部萎黄ウイルス、シリアル黄萎ウイルスRPS、シリアル黄萎ウイルスRPV、アブラムシ媒介性カボチャ萎黄ウイルス、ポテトリーフロールウイルス、カブ萎黄ウイルス、サトウキビ萎黄リーフウイルス、馬鼻炎Aウイルス、口蹄疫ウイルス、脳心筋炎ウイルス、タイロウイルス(theilovirus)、ウシエンテロウイルス、ヒトエンテロウイルスA、B、C、D若しくはE、ポリオウイルス、ブタエンテロウイルスA若しくはB、未分類エントロウイルス、馬鼻炎Bウイルス、A型肝炎ウイルス、アイチウイルス、ヒトパレコウイルス1、2若しくは3、イジュンガン・ウイルス(Ijungan virus)、ウマライノウイルス3、ヒトライノウイルスA及びB、豚テシオウイルス1、2−7、8、9、10若しくは11、鶏脳脊髄炎ウイルス、カカゴ・ウイルス(kakago virus)、サルピコルナウイルス1、アウラウイルス、バートナー森林ウイルス(bartnah forest virus)、チクングニアウイルス、東部ウマ脳炎ウイルス、イグボ・オラ・ウイルス(igbo ora virus)、マヤロウイルス、オッケルボ・ウイルス(ockelbo virus)、オニョンニョンウイルス、ロスリバーウイルス、サギヤマウイルス、サケ膵臓病ウイルス(salmon pancrease disease virus)、セムリキ森林ウイルス、シンドビスウイルス、シンドバス様ウイルス、睡眠病ウイルス、ベネズエラウマ脳炎ウイルス、西部ウマ脳脊髄炎ウイルス、風疹ウイルス、ブドウフレックウイルス、メイズ・ラヤド・フィノ・ウイルス(maize rayado fino virus)、オートムギ・ブルー・ドワーフ・ウイルス(oat blue dwarf virus)、ハヤトウリモザイクウイルス、ナスモザイクウイルス、エリシマムラテントウイルス、ケネディア黄斑モザイクウイルス、オニオン黄斑モザイクウイルス、ホオズキ斑紋ウイルス、カブ黄斑モザイクウイルス又はポインセチアモザイクウイルス。
【0040】
他の実施形態では、前記ゲノムは、ヒトゲノム、又はクマネズミ属若しくはハツカネズミ属のゲノムである。他の実施形態では、前記ゲノムは、サルのゲノムである。
【0041】
他の実施形態では、本発明の核酸、ベクター又はライブラリは、上記した又は当業者に周知の任意の生物に導入される。このことによって、ある実施形態では、特定の条件下で、特定の生物において、特定の遺伝子の目的とする発現をさせることが可能になる。前記特定の条件下は、他の実施形態では、利用可能な酸素レベルに関連する。
【0042】
配列を決められたウイルス及び/又は細菌及び/又は他のソース(例えば動物やヒトなど)に関する情報は、例えば、米国バイオテクノロジー情報センター(NCBI)、アントレ(Entrez)ゲノム、サングレセンター(Sangre Center)、米国ゲノム研究所(TIGR)、米国ゲノムリソースセンター(NCGR)又はその他のデータベースなどの公表されているソースから容易に入手される。
【0043】
ある実施形態では、核酸断片が様々な生物の組み合わせから得られるとき、前記生物は、自然では一緒に見られない。本発明のこの実施形態に従って、自然では通常互一緒に見られない様々な生物に由来する核酸断片を組み合わせるプロセスを使用することによって、そのような核酸断片を使用して産出される発現ライブラリの多様性を促進及び制御することができる。
【0044】
本発明の発現カセット又は発現ライブラリの生成に用いられる核酸断片は、当分野で認められている方法、例えば、機械的せん断、ヌクレアーゼによる消化、制限エンドヌクレアーゼによる消化を含む群から選択される方法などを用いて産出されることを理解されたい。
【0045】
そのような方法の組合せは、ゲノム断片を生成するためにも用いられることができるが、そのようなゲノム断片は、所定のプロモータ及び/又は遺伝子を含み、本発明の発現カセット及び/又はライブラリを構成しかつ/又は本発明の方法において用いられるようなものである。ある実施形態では、1又は2若しくはそれ以上のゲノムからの核酸断片のコピーは、ランダムオリゴヌクレオチドプライマーを用いるポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を用いて産出される。
【0046】
他の実施形態では、カセット又はゲノムは、当分野で既知である任意の手段、例えば化学的な変異誘発などによって、あるいは当分野で既知でありかつ本明細書中で例証されている変異性PCRの使用によって、ランダムに変異される。調節可能な酵母(S. cerevisiae)BY474のDAN1プロモータの誘導体は、変異性PCRにより変異させられ、yECitrine遺伝子のレポータープラスミド上流にクローン化され、グルコースYPD培地における蛍光信号に基づき酵母(S. cerevisiae)菌株BY4741においてスクリーニングが行われた。変異体の機能的プロモータライブラリが形成され、そこでは再現性かつ均質の蛍光分布がフローサイトメトリーによって測定された(図1)。
【0047】
他の実施形態では、PCRを用いてランダム変異を誘発する方法は、当分野で既知であり、例えば、Dieffenbach (ed) and Dveksler (ed)(In: PCR Primer: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbour Laboratories, NY, 1995)に記載されている。他の実施形態では、例えば、Diversify PCRランダム変異誘発キット(クロンテック)又はGeneMorphランダム変異誘発キット(ストラタジーン)などの、変異誘発PCRに用いられる市販のキットが利用される。
【0048】
ある実施形態では、PCR反応は、少なくとも約200mMのマンガン又はその塩の存在下で行われる。そのような濃度のマンガンイオン又はマンガン塩は、増幅された核酸1000塩基対(bp)当たり約2の変異から1000bp毎に約10の変異までを誘発する(Leung et al., Technique 1, 11-15, 1989)。
【0049】
他の実施形態では、PCR反応は、例えば約150mMないし約200mMの高められたか又は増加させたか又は高い濃度のdGTPの存在下で行われる。そのような高濃度のdGTPは、増幅された核酸1000bp毎に約1ヌクレオチドから約3ヌクレオチドの間の割合でPCR産物へのヌクレオチドの誤取り込みを生じさせる(Shahani et al., BioTechniques 23, 304-306, 1997)。
【0050】
他の実施形態では、発現カセット及び/又はライブラリの核酸は、核酸を変異させることができる宿主細胞への挿入によって変異される。そのような宿主細胞は、1若しくは複数の酵素、例えば1若しくは複数の組換え又はDNA修復酵素などが欠乏しており、それによって変異の頻度を非変異体細胞より約5,000ないし10,000倍高い頻度に高める。
【0051】
ある実施形態では、核酸の変異に有用な菌株は、ミスマッチ修復経路の構成要素を改変又は不活化する対立遺伝子を保有する。そのような対立遺伝子の例には、muff、mutM、mutD、muff、mutA、mutC又はmutSが含まれる。ミスマッチ修復経路の構成要素を修飾又は不活化する対立遺伝子を保有する細菌細胞は、当分野で既知であり、例えば、XLIRed、XL-mutS及びXL-mutS-Kad細菌細胞(ストラタジーン)である。
【0052】
他の実施形態では、核酸断片は、好適には修復ポリメラーゼPol Iによって細菌細胞内で複製される核酸ベクターにクローン化されることがある。Pol I変異株は、導入された核酸ベクターにおいて高レベルの変異を誘発するものであり、ある実施形態では、Fabret et al(In: Nucl Acid Res, 28, 1-5 2000)(引用を以って本明細書の一部となす)に記載の方法を適合させて用いられることがある。
【0053】
他の実施形態では、変異を起こさせられたライブラリは、トランスポゾンを用いて作成されることがある。ある実施形態では、マリナートランスポゾンが用いられることがある。マリナー遺伝子転移は、インビトロで効率的に発生し、細胞補因子を必要とせず、挿入部位特異性をほとんど示さず、標的配列においてジヌクレオチドTAのみを必要とする(そしてこの僅かな部位特異性でさえも、異なるインビトロ反応条件を用いて容易に変えられることができる)。他の実施形態では、Tn7トランスポゾンが用いられることがある。
【0054】
トランスポゾンは、トランスポザーゼと呼ばれる酵素をコードするDNA配列として自然に発生するが、これはトランスポザーゼ遺伝子に隣接する部位でDNAを認識しかつ切断する。トランスポザーゼに対する結合部位又は認識部位は、逆方向反復配列と呼ばれる。そのようなものとして、転移因子は、活性化されるときに酵素を生成し、これがDNAにおける1つの位置からのそれ自体の切除及び別の部位における励起されたDNAの挿入を促進する。一部の実施形態においては、選択されるトランスポゾンは、いわゆる「ホットスポット(変異を起こしやすい遺伝子の部位)」で部位特異的な挿入を示すことになる。
【0055】
他の実施形態では、トランスポゾンは、Tn551、ミノス(Minos)、ハーメス(Hermes)又はピギーバック(piggyback)であることがある。他の実施形態では、トランスポゾンは、AT−2(tylベースのトランスポゾン,パーキンエルマー(Perkin Elmer);Devine et al. (1997) Genome Res. 7:551-563)、GPS−1(ニュー・イングランド・バイオラボ)、GPS−2(New England Biolabs)、EZ::tn(Tn5ベースのトランスポゾン、Epicenter Technologies)、SIF(Tn7ベースのトランスポゾン、Biery et al. (2000) Nucl Acid Res 28:1067-1077)又はMu(フィンザイムス(Finnzymes)、Haapa et al. (1999) Nucl Acid Res 13:2777-2784)であることがある。本発明の方法において任意のトランスポゾンが用いられ得ることを理解されたい。
【0056】
トランスポゾンは、ある実施形態ではその天然の同族のトランスポザーゼと共に、あるいは他の実施形態では改変されかつ/又は改良されたトランスポザーゼを用いて、使用されることがある。
【0057】
他の実施形態では、トランスポゾンは、異種ポリペプチドをコードする核酸配列を含むことがある。この配列は、トランスポゾンが組み込まれる際にトランスポゾンと共に細胞のゲノムに組み込まれることがある。ある実施形態では、トランスポゾンが転移する際に、異種ポリペプチドの核酸配列もトランスポゾンと共に切断され得る。ある実施形態では、異種ポリペプチドは、検出可能なマーカー、例えば、緑色蛍光タンパク質(GFP)、又は変異体、その同族である。
【0058】
GFPは、オワンクラゲ(Aequorea victoria)、ウミシイタケ(Renilla reniformis)及びクラゲ類(Phialidium gregarium)から単離される(Ward et al., 1982, Photochem. Photobiol., 35: 803-808、Levine et al., 1982, Comp. Biochem. Physiol., 72B: 77-85)。Matz, et al., 1999 も参照されたい。同書は、花虫綱種から最近単離された蛍光タンパク質(アクセス番号AF168419、AF168420、AF168421、AF168422、AF168423及びAF168424)に関し、これらはそれぞれ本発明の方法に組み込まれることがある。
【0059】
有用な励起及び発光スペクトルを有する種々のAequorea関連のGFPは、オワンクラゲから自然に発生するGFPのアミノ酸配列を改変することによって操作されてきた(Prasher et al., 1992, Gene, 111: 229-233; Heim et al., 1994, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A., 91: 12501-12504; PCT/US95/14692)。
【0060】
他の実施形態では、インビトロ遺伝子転移は、ベクター(例えば、コスミド、ファージ、プラスミド、YAC(酵母人工染色体)、又はBAC(細菌人工染色体))にクローン化されたゲノムDNA上で行われることがある。同様の高密度変異誘発は、対立遺伝子置換ベクターにクローン化されたゲノムDNAを用いて非天然型コンピテント生物内で行うことができる(例えば、米国特許第6,207,384号を参照)。
【0061】
ある実施形態では、目的の細胞からの染色体のDNAは、単離され、変異を導入されるが、それは、Himar1トランスポザーゼによって、そして他の実施形態では、例えば、カナマイシン又はクロラムフェニコール抵抗性のいずれかのための遺伝子などのマーカー遺伝子をコードする人工ミニトランスポゾンによって行われる。
【0062】
トランスポゾンが挿入されると、挿入部位のいずれかの末端上に短い一本鎖のギャップが生じる。ある実施形態では、一本鎖DNAを取ることが知られている菌株が利用され、本発明のこの態様に従って、これらのギャップは、染色体への組換えに必要なフランキングDNA配列を生成するために修復(DNAポリメラーゼ及びDNAリガーゼによって)を必要とすることがある。
【0063】
他の実施形態では、変異を有するカセット及び/又はライブラリは、放射線の使用によって作成される。放射線により変異を引き起こすとき、ある実施形態ではは紫外線(UV)が、他の実施形態ではは電離放射線が用いられることがある。遺伝的変異のための適切な短波UV波長は、200〜300nmの範囲内にあることがあり、ある実施形態では、254nmが好ましい。この波長のUV放射線は、主に、核酸配列内でグアニジン及びシトシンをアデニン及びチミジンへ変える。全ての細胞は、たいていのUVに誘発された変異を修復するであろうDNA修復メカニズムを有するので、修復プロセスを中断して有効な変異の数を最大にするようにカフェインなどの作用因子及び他の阻害因子が加えられることがある。300nmから400nmの範囲の光を用いる長波UV変異が、他の実施形態では用いられることがあり、他の実施形態ではDNAと相互作用するソラレン色素などの種々の活性化因子と併用されることがある。
【0064】
他の実施形態では、化学薬品による変異誘発が用いられることもある。そのような化学的変異誘発物質は、他の実施形態では、フレームシフト変異を起こすことが知られているような、アクリジン色素などの複製DNAに影響を及ぼす作用因子と、HNO及びNHOHなどの非複製DNAに影響を及ぼす化学薬品とを含むことがある。放射線又は化学薬品を用いて変異体を作製する方法は、当分野で公知であり、本発明の方法に対して任意の方法が用いられることがある(例えば、Thomas D. Brock in Biotechnology: A Textbook of Industrial Microbiology, Second Edition (1989) Sinauer Associates, Inc., Sunderland, MA., or Deshpande, Mukund V., Appl. Biochem. Biotechnol. 36, 227 (1992) を参照)。
【0065】
変異を起こさせられたDNAは、ある実施形態ではは細菌に、あるいは他の実施形態ではは他の所定の細胞に、当分野で公知の説明された方法(例えば、"Methods in Enzymology" Vol. 1-317, Academic Press, Current Protocols in Molecular Biology, Ausubel F.M. et al. (eds.) Greene Publishing Associates, (1989) and in Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 2nd Edition, Sambrook et al. Cold Spring Harbor Laboratory Press, (1989)、又は他の標準的な実験室マニュアルを参照)によって形質転換される。相同的組換えによってトランスポゾンが挿入される細胞は、例えば適切な抗生物質含有媒体上でのプレーティングによって選択される。他の実施形態では、細胞は、蛍光活性化細胞分類法を用いて選択されることがある。
【0066】
ある実施形態では、トランスポゾンの挿入を検証するために、個々のトランスポゾン変異体、又は他の実施形態では、個々の変異細胞から切断されたDNAに対してサザンブロット解析が行われる。他の実施形態では、例えばトランスポゾン挿入又は変異性PCRなどによる変異誘発を判定するために、配列解析、PCR、及び/又はハイブリダイゼーションが利用されることがある。
【0067】
変異のライブラリのスクリーニングは、本明細書で例証されているように、可変条件下でレポータ遺伝子の様々な発現(プロモータに導入された変異に応じる)を示す、フローサトメトリで特定された細胞を用いることで行われる。これは、本発明の実施形態を含む。他のプロモータ及びそれに関してそのようなプロモータにおいて調節された発現に関与する変異は、本明細書中に記載されているように本発明の方法によって同定されることがあることを理解されたい。同定の方法及びその方法によって得られる菌株は、本発明の一部であると考えられる。
【0068】
プロモータ配列においてランダム変異を発生させる任意の方法が、本発明のカセット、ライブラリ及び/又はベクターを産出するために用いられることがあり、本発明の一実施形態であると考えられるものと理解されたい。そのような方法は、組み合わせられることがあり、本発明の更なる実施形態を含むことがあることも理解されたい。
【0069】
ある実施形態では、前記カセット及び/又はベクターは、目的とする発現をする遺伝子に作用可能に連結された、核酸断片又はcDNA、或いはそれらから得られた増幅されたDNAを含む。また、様々なプロモータライブラリの制御下で、前記遺伝子の調節された発現に使用される構築体は、発現のスクリーニングを、質的及び量的なレベルで容易にするカセットを含み得る。したがって、ある実施形態では、前記ライブラリのスクリーニングに適した発現フォーマットが考えられている。
【0070】
ある実施形態では、本発明での「ベクター」という用語は、複製起点をさらに含む核酸構築体を意味し、原核細胞及び真核細胞の両方において増殖させることができるシャトルベクターであり得る。或いは、前記ベクターは、選択された生物のゲノム内への統合を容易にするように構成され得る。前記ベクターは、他の実施形態では、例えば、プラスミド、バクミド、ファージミド、コスミド、ファージ、ウイルス又は人工染色体であり得る。
【0071】
ある実施形態では、「発現カセット」又は「カセット」という用語は、プロモータ配列と、それに作用可能に連結された遺伝子とを含む核酸を意味する。前記プロモータは、本明細書中で説明されたように、特定用途のための前記目的の遺伝子の発現を最適化するために変異される。ある実施形態では、前記カセットは、例えば発現ベクター内などの任意の位置に配置される。或いは、前記カセットは、目的の細胞の染色体内に統合されるように人為的に操作される。
【0072】
他の実施形態では、本発明に係る前記カセット及び/又はベクターは、マーカーポリペプチドをコードしている異種の核酸配列の挿入をさらに含む。前記マーカーポリペプチドは、例えば、yECitrine、緑色蛍光タンパク質(green fluorescent protein:GFP)、DS−Red(赤色蛍光タンパク質)、分泌アルカリホスファターゼ(secreted alkaline phosphatase:SEAP)、ベータ・ガラクトシダーゼ、ルシフェラーゼ、又は、当該技術分野で公知の他のレポータタンパク質を含む。
【0073】
ある実施形態では、「最適化」という用語は所望の改変を意味し、ある実施形態では遺伝子発現の改変を、他の実施形態ではタンパク質の発現の改変を意味する。ある実施形態では、遺伝子発現の最適化は、遺伝子発現の調節の最適化である。他の実施形態では、遺伝子発現の最適化は、遺伝子発現の増大である。この態様によれば及びある実施形態では、遺伝子発現は、野生型と比較して2倍〜1000倍増大する。他の実施形態では、遺伝子発現は、2倍〜500倍増大する。他の実施形態では、遺伝子発現は、2倍〜100倍増大する。他の実施形態では、遺伝子発現は、2倍〜50倍増大する。他の実施形態では、遺伝子発現は、2倍〜20倍増大する。他の実施形態では、遺伝子発現は、2倍〜10倍増大する。他の実施形態では、遺伝子発現は、3倍〜5倍増大する。他の実施形態では、遺伝子発現の最適化は、特定の環境条件下での遺伝子発現の増大である。他の実施形態では、遺伝子発現の最適化は、特定の環境条件下のみでの遺伝子発現の減少である。
【0074】
ある実施形態では、「遺伝子」という用語は、コード配列に先行(5´非コード配列)及び後続(3´非コード配列)する調節配列を有し、特定のタンパク質として発現することができる核酸断片を意味する。「陰性遺伝子」は、天然に見られるような、固有の調節配列を有する遺伝子を意味する。「キメラ遺伝子」は、天然では見られない調節及びコード配列を含んでいる、陰性遺伝子ではない任意の遺伝子を意味する。したがって、キメラ遺伝子は、異なるソースから得られる調節配列及びコード配列、又は、同一のソースから得られる調節配列及びコード配列を含み得るが、天然に見られるものとは異なるように改変されている。「内在性遺伝子」は、生物のゲノムの生来位置に位置する陰性遺伝子を意味する。「外来性」遺伝子は、宿主生物には通常は見られないが、遺伝子導入によって宿主生物に導入された遺伝子を意味する。外来性遺伝子は、非天然生物に挿入された天然遺伝子、又はキメラ遺伝子を含むことができる。「トランス遺伝子」は、形質転換法によってゲノムに導入された遺伝子である。
【0075】
目的の遺伝子の調節された発現は、本発明のカセット、ベクター及び/又はライブラリを使用して、及び、当該技術分野で公知の任意の手段によって実現し得る。ある実施形態では、かかる発現は、遺伝子操作バクテリア、真核細胞(例えば酵母)、及び/又は哺乳類細胞に対して効果がある。このような細胞は、本発明の一部と見なされる。ある実施形態では、細胞内で相同な組み換え現象を選択することができるように、構築体が原核生物又は真核生物が導入される。構築体によって相同的組み換え現象を受けるトランスフェクト細胞を効率的に選択するための陽性及び陰性選択遺伝子の両方を含む構築体は、当業者であれば容易にデザインすることができる。
【0076】
本発明の方法に影響を及ぼす、カセット及び/またはベクターを細胞内に導入するための、当分野で既知の多くの技術があり、例として、それらに限定されるものではないが、例えば、直接DNAを取り込ませる技術と、ウイルス、プラスミド、線状DNAまたはリポソームの媒介による形質導入と、リン酸カルシウム及びDEAE−デキストランによる導入方法を利用したレセプター媒介性取込及びマグネトロポレーション(magnetoporation)法と、エレクトロポレーション(電気穿孔法)またはリポソームの媒介による形質移入などである(より詳細については、例えば、"Methods in Enzymology" Vol. 1-317, Academic Press, Current Protocols in Molecular Biology, Ausubel F.M. et al. (eds.) Greene Publishing Associates, (1989) and in Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 2nd Edition, Sambrook et al. Cold Spring Harbor Laboratory Press, (1989)、又は他の標準的な実験室マニュアルを参照)。核酸コーティングされた粒子を衝突させる(bombardment with nucleic acid coated particles)方法も想定される。当然のことながら、これらの方法のどれをも所望の配列の細胞への導入のために利用することができ、それによって産出される細胞は、本発明の方法を達成するために用いられるので、本発明の一部と考えられるべきである。
【0077】
ある実施形態では、ベクターまたは遺伝子構築物は、発現されたペプチドのインビトロディスプレイに適している。好適なインビトロディスプレイ形式は、リボソームディスプレイ、mRNAディスプレイまたは共有結合ディスプレイ(covalent display)を含む。
【0078】
他の実施形態では、カセット、ベクター、又は遺伝子構築物は、細胞宿主においてペプチドを発現するのに適している。この場合における好ましい細胞宿主は、外来性またはエピソーム性のDNAの発現を支持することができ、例えば、細菌細胞、酵母細胞、昆虫細胞、哺乳動物細胞、又は植物細胞などの細胞宿主であり得る。
【0079】
他の実施形態では、ベクター又は遺伝子構築物は、多細胞生物におけるペプチド発現に適している。このような多細胞生物として、高速ハイスループット・スクリーニングを容易にする小型のゲノム及び/又は短いライフサイクルを有する多細胞生物、例えば植物(例えば、シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)又はタバコ(Nicotinia tabaccum))、又は線虫(Caenorhabditis elegans)、ゼブラフィッシュ(Danio rerio)、キイロショウジョウバエ(Drosophila melanogaster)、トラフグ(Takifugu rubripes)、ハツカネズミ属、若しくはクマネズミ属などの動物がある。
【0080】
他の実施形態では、ベクターまたは遺伝子構築物は、原核生物における発現に適している。他の実施形態では、ベクターまたは遺伝子構築物は、任意の真核細胞における発現に適している。
【0081】
<治療性タンパク質をコードする構築物>
【0082】
ある実施形態では、本発明の構築物は、治療性タンパク質をコードする目的の遺伝子を含む。
【0083】
ある実施形態では、「構築物」という用語は、本明細書中に記載されているような、発現カセット、ベクター、又はベクターのライブラリを指す。
【0084】
ある実施形態では、「治療性」という用語は、それが必要とされている対象(被検者)に与えられるときに有益な効果を与える分子を指す。場合によっては、分子は、対象においてそのような分子の非存在または減少した存在を補完するように機能する点で治療的である。ある実施形態では、治療性タンパク質は、内因性のヌル変異又はミスセンス突然変異によって必要なタンパク質が欠失した対象における、欠失した前記必要なタンパク質そのものである。他の実施形態では、内因性タンパク質は、変異しており、非機能的であり、機能的タンパク質を提供することにより補償される。他の実施形態では、異種タンパク質の発現レベルが内因性の低い発現レベルに付加することで、所定のタンパク質の発現量が高まることになる。他の実施形態において、前記分子は、細胞または宿主の機能に重要な要素の発現又は分泌などを引き起こすシグナル伝達カスケードを刺激する。
【0085】
ある実施形態では、治療性タンパク質には、酵素、酵素補因子、細胞障害性タンパク質、抗体、チャネルタンパク質、運搬タンパク質、成長因子、ホルモン、又はサイトカインが含まれ得る。
【0086】
ある実施形態では、「抗体」または「抗体断片」という用語は、インタクト(無傷)抗体分子と、その機能的断片であって、エピトープに結合することができるFab、F(ab’)2及びFvなどを指す。ある実施形態では、Fab断片は、抗体分子の一価の抗原結合断片を含む断片を意味する。この断片は、酵素パパインで抗体全体を消化することによって産出される(結果として、インタクトなL鎖及び1本のH鎖の一部が産出される)。ある実施形態では、Fab’断片は、ペプシンで抗体全体を処理して続いて還元する(結果として、インタクトなL鎖及び1本のH鎖の一部が産出される)ことによって得られる抗体分子の一部を指す。1つの抗体分子から2つのFab’断片が得られる場合がある。ある実施形態では、(Fab’)は、後に続く還元なしに抗体全体を酵素ペプシンで処理することによって得られる抗体の断片を指す。他の実施形態では、(Fab’)は、2つのジスルフィド結合によって結合した2つのFab’断片の二量体である。ある実施形態では、Fvは、2つの鎖として発現されるL鎖の可変領域及びH鎖の可変領域を含む遺伝子組換え断片を指すことがある。ある実施形態では、抗体断片は、適切なポリペプチドリンカーによって連結したL鎖の可変領域及びH鎖の可変領域を含む遺伝子操作された分子である一本鎖抗体(SCA:single chain antibody)(遺伝的に融合した一本鎖分子)であり得る。
【0087】
これらの断片を作成する方法は、当分野で既知である(例えば、Harlow and Lane, Antibodies: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory, New York, 1988 を参照。引用を以って本明細書の一部となす)。
【0088】
ある実施形態では、抗体は、エピトープを認識する。エピトープは、他の実施形態では、抗体のパラトープが結合する抗原における抗原決定基を指す。エピトープの決定基は、他の実施形態では、アミノ酸又は糖側鎖などの分子群の化学的に活性な表面部位で構成されることがあり、他の実施形態においては固有の3次元構造特性を有し、且つ/又は他の実施形態においては固有の電荷特性を有することがある。
【0089】
ある実施形態では、認識されるエピトープは、病原体、病原性細胞、異常に発現したタンパク質から由来する。「異常に発現した」は、他の実施形態では、発現の位置、量またはその組み合わせを指すことがある。
【0090】
本発明による抗体断片は、抗体をタンパク分解性加水分解することよって、あるいは断片をコード化するDNAを哺乳動物細胞(例えばチャイニーズハムスター卵巣細胞培養物又は他のタンパク質発現系)又は大腸菌において発現させることによって作成することができる。
【0091】
他の実施形態において、抗体断片は、従来の方法による抗体全体のペプシンまたはパパイン消化によって得ることができる。例えば、抗体断片は、ペプシンで抗体を酵素的に切断することによって作成することができ、その場合、F(ab’)2と呼ばれる5S断片が得られる。この断片をチオール還元剤でさらに切断し、ジスルフィド結合の切断で生じるスルフヒドリル基に対する保護基を随意的に用いることで、3.5S Fab’一価断片を作成することができる。あるいは、ペプシンによる酵素切断を用いると、直接2つの一価のFab’断片及びFc断片が得られる。これらの方法は、例えば、米国特許第4,036,945号及び第4,331,647号及びその引用文献に記載されており、これらの特許は全体として引用を以って本明細書の一部となす。Porter, R. R., Biochem. J., 73: 119-126, 1959 も参照されたい。他の抗体切断方法、例えば、H鎖を分離して一価のL−H鎖断片を形成する方法、断片の更なる切断、又は他の酵素的、化学的若しくは遺伝的技術が用いられることもある(断片がインタクト抗体によって認識される抗原に結合する限り、)。
【0092】
Fv断片は、VH鎖及びVL鎖の会合を含む。この会合は、Inbar et al., Proc. Natl Acad. Sci. USA 69:2659-62, 1972 に記載されているように非共有結合的であることがある。あるいは、可変鎖は、分子間のジスルフィド結合によって結び付けられるかあるいはグルタルアルデヒドなどの化学薬品によって架橋されることができる。Fv断片は、ペプチドリンカーによって結合されたVH及びVL鎖を含むのが好ましい。これらの一本鎖抗原結合タンパク質(sFv)は、オリゴヌクレオチドによって結合されるVH及びVLドメインをコード化するDNA配列を含む構造遺伝子を構成することによって作成される。構造遺伝子は、発現ベクター内に導入され、これは引き続いて大腸菌などの宿主細胞内に導入される。組換え宿主細胞は、2つのVドメインを架橋するリンカーペプチドを用いて一本のポリペプチド鎖を合成する。sFvを産出する方法は、例えば、Whitlow and Filpula, Methods, 2: 97-105, 1991; Bird et al., Science 242:423-426, 1988、Pack et al., Bio/Technology 11:1271-77. 1993、Ladner et al., U.S. Pat. No. 4,946,778 に記載されており、これは全体として引用を以って本明細書の一部となす。
【0093】
抗体断片の別の形態は、1つの相補性決定領域(CDR:complementarity-determing region)をコードするペプチドである。CDRペプチド(「最小認識単位」)は、所定の抗体のCDRをコード化する遺伝子を作成することによって得られる。そのような遺伝子は、抗体産出細胞のRNAから可変領域を合成するために例えばポリメラーゼ連鎖反応を用いることによって作成される。例えば、Larrick and Fry, Methods, 2: 106- 10, 1991を参照されたい。
【0094】
ある実施形態では、抗体は殺腫瘍性であり、そのために、ある種のガンを治療する。殺腫瘍活性を有する抗体はまた当分野で既知であり、そのいずれを使用することも本発明の実施形態を表し得る。そのような抗体には、EV1C−C225、EMD 72000、OvaRex Mab B43.13、抗ガングリオシドG(D2)抗体chl4.18、CO17−1A、トランスツズマブ(trastuzumab)、rhuMAb VEGF、sc−321、AF349、BAF349、AF743、BAF743、MAB743、AB 1875、抗Flt−4AB3127、FLT41−A、リツキシマブ(rituximab)、2C3、CAMPATH IH、2G7、Alpha IR−3、ABX−EGF、MDX−447、抗p75 IL−2R、抗p64 IL−2R、2Al1が含まれる。
【0095】
他の実施形態では、治療性タンパク質には、酵素、例えばグリコーゲンの貯蓄又は分解に関与する酵素などが含まれ得る。ある実施形態では、酵素は代謝経路に含まれる。他の実施形態では、本発明は、化合物の生成の最適化された調節を提供するが、これは、所定の遺伝子の調節された発現の機能である。ある実施形態では、化合物はタンパク質であり、あるいは他の実施形態では脂質であり、あるいは他の実施形態では炭水化物であり、あるいは他の実施形態ではミネラルであり、あるいは他の実施形態ではビタミンであり、あるいは他の実施形態ではは、任意の化合物であってその生成が所定の遺伝子産物によって影響されることがありその発現が調節されることがあるような化合物である。
【0096】
他の実施形態では、ベクターは、ベクターが導入される細胞のゲノムにおいて、プロモータと所定の遺伝子の安定な組み込みを可能にさせる配列を含む。本発明のこの態様によれば、及びある実施形態では、このような組み込まれた系を使用することで、プラスミドベースの系を用いる際に時折見られる内在性遺伝子の過剰発現のような不安定性を回避することができる。しかし、本発明の他の実施形態では、本発明の構築物を用いるプラスミドベースの系もまた想定される。
【0097】
ある実施形態では、本発明の構築物を用いて増殖収率及びリコピン生成が評価される。ある実施形態では、重要な補酵素であるホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼをコードするppc遺伝子調節が評価される。
【0098】
代謝経路の速度制御(kinetic control)は、多くの場合は、経路内での幾つかの遺伝子の発現レベルに依存する。プロモータ輸送実験(promoter delivery experiment)は、この制御の定量化を可能にする。
【0099】
タンパク質発現の最適化された調節は、複数の遺伝子産物に依存し得るので、ある実施形態では、本発明は、ライブラリ及びその使用方法を提供するが、ここでは、説明されているように、2以上の所定の遺伝子が調節可能プロモータの制御下にある。他の実施形態では、本発明に係る構築物を使用するために、他の遺伝子を人工的に操作することがある。例えば、目的の遺伝子が標的にする所定の経路に関与する特定の遺伝子が遺伝的に破壊された細胞に、本明細書に記載のベクターが導入される。他の実施形態では、ベクターは、目的の遺伝子が標的にする所定の経路において特定の遺伝子を過剰発現するように、遺伝子操作される細胞内に導入される。ある実施形態では、発現のタイミングは、観察される表現型に関与し、本発明のベクター、核酸及び/またはライブラリに応じて調節されることがある。
【0100】
例えば、本発明のある実施形態では、研究される代謝経路は、カロテノイド生成に関与する代謝経路である。ある実施形態では、本発明のライブラリまたはベクターを利用したかあるいは本発明の方法に従ったそのような生成は、発現の最適な調節をもたらし、所定の化合物の生成の最適な調節を獲得する手段の一実施形態を表すようなカロテノイド遺伝子の異種生物への移入に関わることがある。
【0101】
ある実施形態では、目的の化合物は、目的の遺伝子産物の生成の最適な調節の結果として生成される。例えば、カロテノイド調節は、本発明のライブラリ及び方法によって、所望の産物、例えばカロテノイドのプロセシングに関与する酵素などの遺伝子産物の調節を最適化することによって、最適化されることがある。
【0102】
ある実施形態では、当業者であれば分かるように、目的の化合物の生成と最大生成量の評価の両方のために、1つの生物由来の遺伝子が他の生物で発現されることがある。例えば、エルウィニア−ウレドボラ(Erwina uredovora)及びヘマトコッカス−プリビアリス(Haematococcus pluvialis)からの遺伝子は、共に大腸菌において機能することになる(Kajiwara et al. Plant MoI. Biol. 29.343-352 (1995))。エルウィニア‐ヘルビコーラ(E. herbicola)遺伝子は、ロドバクター‐スフェロイデス(R. sphaeroides)において機能することになる(Hunter et al. J. Bact. 176.3692-3697 (1994))。
【0103】
本発明の他の実施形態では、本発明のライブラリまたはベクターは、細菌内で発現されることがある。ある実施形態では、細菌は、酢酸菌属、エシェリヒア属、サルモネラ属、赤痢菌属、エルウィニア属、ヘマトコッカス属、ロドバクターミクソコッカス属(Rhodobactermyxococcus)、コリネバクテリア属(Corynebacteria)、シュードモナス属、パイロコッカス属(Pyrococcus)、ルミノコッカス属、ミコバクテリア属、バチルス属に属することがある。他の実施形態では、細菌は、メチロトローフであることがあり、あるいは他の実施形態では、例えばメチロモナス属、メチロバクターメチロコッカス属(Methylobactermehtylococcus)、メチロサイナス属(Methylosinus)、Methylocyctis、メチロマイクロビウム属(Methylomicrobium)、Meihanomonas、メチロフィルス属(Methylophilus)、メチロバチルス属(Methylobacillus)、メチロバクテリウム属などのメタノトローフであることがある。
【0104】
「メチロトローフ」という用語は、ある実施形態では、炭素炭素結合を含まない有機化合物を酸化することができる生物を指す。メチロトローフがメタン(CH)を酸化することができるとき、メチロトローフはメタノトローフでもある。ある実施形態では、メチロトローフはその主要な炭素源としてメタノール及び/又はメタンを用いる。
【0105】
ある実施形態では、メチロトローフ及び/またはメタノトローフは、C1代謝細菌である。ある実施形態では、「C1代謝細菌」という用語は、唯一のエネルギー及びバイオマスの源として一炭素基質を用いる能力を有する細菌を指す。
【0106】
ある実施形態では、「C1炭素基質」という用語は、炭素炭素結合を欠いている任意の炭素含有分子を指す。限定的でない例は、メタン、メタノール、ホルムアルデヒド、蟻酸、ギ酸塩、メチル化アミン(例えば、モノ−、ジ−、トリ−メチルアミン)、メチル化チオール、二酸化炭素である。他の実施形態では、C1炭素基質は、メタノール及び/またはメタンからなる群から選択される。
【0107】
「メタノトローフ」または「メタノトローフ細菌」という用語は、他の実施形態では、その主要な炭素及びエネルギー源としてメタンを用いることができる原核生物を指す。メタンの二酸化炭素への完全酸化は、好気性分解経路によって生じる。本発明において有用であるメタノトローフの典型的な例には、(限定されるものではないが)メチロモナス属、メチロバクターメチロコッカス属、メチロサイナス属が含まれる。ある実施形態では、メタノトローフ細菌は、その主要な炭素源としてメタン及び/またはメタノールを用いる。
【0108】
ある実施形態では、「高成長メタノトローフ細菌I型株」という用語は、唯一の炭素及びエネルギー源としてメタン及び/またはメタノールを用いて生育することができ、機能的なエムデン‐マイヤーホフ炭素フラックス経路を持ち、結果として、代謝されたC1基質1グラム当たりの細胞集団の生育速度が高く、且つ細胞量の増加が大きい細菌を指す(米国特許第6,689,601号、引用を以って本明細書の一部となす)。本明細書に記載されているある種の「高成長メタノトローフ細菌I型株」は、「メチロモナス属16a(Methylomonas 16a)」、「16a」または「メチロモナス属種16a(Methylomonas sp. 16a)」と呼ばれ、これらの語は互換可能に用いられ、本発明において用いられるメチロモナス属株を指す。
【0109】
C1代謝細菌の形質転換のための技術は、他の細菌のために利用される一般的な手順を類似のものとして示すことができ、それは当業者に公知である。
【0110】
エレクトロポレーションは、メチロバクテリウム‐エクストルクエンス(Methylobacterium extorquens)AM1(Toyama, H., et al., FEMS Microbiol. Lett., 166:1 7 (1998))、メチロフィルス‐メチロトロファス(Methylophilus methylotrophus)AS1(Kim, C.S., and T. K. Wood, Appl. Microbiol. Biotechnol., 48: 105 108 (1997))、メチロバチルス種株12S(Yoshida, T., et al., Biotechnol. Lett., 23: 787 791 (2001))の形質転換に問題なく使用されきた。
【0111】
細菌の接合は、ドナー(供与)細胞及びレシピエント(受容)細胞の直接接触に頼っているが、遺伝子のC1代謝細菌への移入にも用いられることがある。細菌の接合プロセスは、「ドナー」及び「レシピエント」細胞を互いに密接して混ぜ合わせるステップを含むことがある。接合は、ドナーとレシピエントの両細菌間の細胞質結合の形成によって生じるが、それは新たに合成されたドナーDNAのレシピエント細胞への直接移入を伴う。接合におけるレシピエントは、ドナー細菌からの水平移動によってDNAを受容する。接合性移入におけるドナーは、接合性プラスミド、接合性トランスポゾンまたは可動性プラスミドを有することがある。
【0112】
場合によっては、接合にはドナー及びレシピエントのみが必要とされる。これは、移入されることになるプラスミドが、接合性でもあり可動性でもある(即ち、Mobタンパク質をコードする遺伝子及びtra遺伝子の両方を保有している)自己伝達性プラスミドであるときに起こる。一般に、プロセスは以下のステップを含む。1)oriT上の特定部位で二本鎖プラスミドDNAに切れ目(ニック)が入れられる、2)一本鎖DNAが細孔または線毛構造を介してレシピエントに放出される、3)DNAリラキサーゼ(relaxase)酵素がoriTで二本鎖DNAを切断し、放出された5’末端に結合する(中間構造としてリラクソソーム(relaxosome)を形成する)、4)その後、補助タンパク質の複合体がoriTに集合してDNA移入のプロセスを促進する。
【0113】
「三親」接合もまた、ドナープラスミドのレシピエントへの移動に必要とされることがある。このタイプの接合においては、ドナー細胞、レシピエント細胞及び「ヘルパー」プラスミドが関与している。ドナー細胞は、可動性プラスミドまたは接合性トランスポゾンを保有する。可動性ベクターは、ニッカーゼをコードする遺伝子であるoriTを含み、Mobタンパク質をコード化する遺伝子を有するが、Mobタンパク質単独ではゲノムの移動を達成するのに十分ではない。それゆえ、可動性プラスミドは、ヘルパープラスミド(ドナー内または「ヘルパー」細胞内に位置する)によって適切な接合系が与えられるまでは、自身の移動を促進することができない。接合性プラスミドは、接合対(ペア)の形成及びDNA移入に必要とされている。というのも、このプラスミドは、細孔または線毛の形成に関与する、移動のためのタンパク質(Tra)をコードするからである。
【0114】
C1代謝バクテリアを含む成功的な結合の例は、次の研究結果を含む。Stolyarら(Mikrobiologiya, 64(5): 686 691 (1995))、Motoyama, H.ら(Appl. Micro. Biotech., 42(1): 67 72 (1994))、Lloyd, J.S.ら(Archives of Microbiology, 171(6): 364 370 (1999))、Odom, J. M.ら(WO 02/18617に相当するUS 09/941947)、US10/997308、及びUS10/997844(この引用により本発明に組み込まれる)。
【0115】
ある実施形態では、「経路」という用語は、複数のタンパク質が調節的な役割を果たす代謝経路を意味する。前記調節的な役割としては、例えば、異なる酵素の活性が、開裂若しくは水素化又は脱水素化などによって、特定の生成物若しくは前駆体の生成又は前記生成物の望ましくない形態の生成を調節することがある。
【0116】
他の実施形態では、「経路」という用語は、全体の反応が必要な場合に、前記2つの協調した活性が望ましい結果を生成するような機能を有するタンパク質を意味する。例えば、前記目的の遺伝子は、特定のワクチンの投与時に、免疫刺激及び反応性を最大化するために、特定のHLA型を有するホスト細胞内に調節された発現を提供するサイトカインであり得る。
【0117】
他の実施形態では、抗原タンパク質又はペプチドの調節された発現は、所望の免疫応答を生成するのに望ましい。例えば、ある実施形態では、タンパク質、ペプチドが得られるソース、又は関連するペプチド若しくはタンパク質に対しての免疫刺激のためには、タンパク質/ペプチドの低レベルの発現が望ましい。一方、他の実施形態では、タンパク質、ペプチドが得られるソース、又は関連するペプチド若しくはタンパク質に対しての免疫寛容のためには、タンパク質/ペプチドの高レベルの発現が望ましい。いくつかの実施形態では、かかるシナリオにおける特定のサイトカインの発現は、例えば、ロバスト自己免疫応答に関係しないものをバイアスするので、同様に望ましい。ある実施形態では、自己免疫疾患では、例えば、特定の抗原に対する免疫応答を耐性化するために、IL−4発現と同時に発生する高レベルの発現が望ましい。他の実施形態では、応答T細胞への第2の信号輸送を阻害する抗体の発現と同時に発生し、前記応答T細胞を耐性化する、特定の自己免疫ペプチド又はタンパク質の高レベルの発現が望ましい。
【0118】
これらは、複数の生成物の発現が望ましいシナリオのいくつかの例であり、発現レベル及び/又は発現タイミングを調節する能力は、特定の用途に使用可能である。考えられる用途又は設定における、ライブラリを使用した又は本発明の方法によって決定された調節された発現のいかなる使用も、本発明の実施形態と見なされることを理解されたい。
【0119】
他の実施形態では、前記治療用タンパク質はトランスポーターを含む。そのようなトランスポーターとしては、イオントランスポーター(例えばCFTR)、グルコーストランスポーター、又は、その欠乏若しくは不適切な発現により様々な病気を生じさせる他のトランスポーターがある。
【0120】
他の実施形態では、前記治療用タンパク質は、癌抑制因子、又は癌関連事象の進行を変えるプロアポトーシス化合物を含む。
【0121】
他の実施形態では、本発明の治療用化合物は、免疫調節タンパク質を含み得る。ある実施形態では、前記免疫調節タンパク質は、サイトカイン、ケモカイン、又は補体成分を含む。そのようなものとしては、インターロイキン1〜15、インターフェロン・アルファ、ベータ若しくはガンマ、腫瘍壊死因子、顆粒球単球コロニー刺激因子(GM−CSF)、マクロファージコロニー刺激因子(M−CSF)、顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF)、ケモカイン(好中球活性化タンパク質(NAP)、マクロファージ走化性及び活性化因子(MCAF)、RANTES、マクロファージ炎症ペプチドMIP−1a及びMIP−1b)、又は補体成分がある。
【0122】
他の実施形態では、本発明の治療用化合物は、成長因子、又は組織増多因子を含み得る。ある実施形態では、前記治療用化合物は、骨形成タンパク質、すなわちOP−1、OP−2、BMP−5、BMP−6、BMP−2、BMP−3、BMP−4、BMP−9、DPP、Vg−1、60A、又はVgr−1である。他の実施形態では、前記治療用化合物は、神経の再生又は修復を促進するものであり、NGF又は他の成長因子を含み得る。
【0123】
他の実施形態では、前記治療用分子は、次のものであり得る。天然又は非天然インスリン、アミラーゼ、プロテアーゼ、リパーゼ、キナーゼ、ホスファターゼ、グリコシルトランスフェラーゼ、トリプシノーゲン、キモトリプシノーゲン、カルボキシペプチダーゼ、ホルモン、リボヌクレアーゼ、デオキシリボヌクレアーゼ、トリアシルグリセロールリパーゼ、ホスホリパーゼA2、エラスターゼ、アミラーゼ、血液凝固因子、UDPグルクロン酸転移酵素、オルニチントランスカルバモイラーゼ、シトクロムp450酵素、アデノシンデアミナーゼ、血清胸腺因子、胸腺液性因子、サイモポエチン、成長ホルモン、ソマトメジン、共刺激因子、抗体、コロニー刺激因子、エリスロポエチン、上皮成長因子、肝造血因子(ヘパトポエチン)、肝細胞成長因子、インターロイキン、インターフェロン、陰性の成長因子、線維芽細胞成長因子、αファミリーの形質転換成長因子、βファミリーの形質転換成長因子、ガストリン、セクレチン、コレシストキニン、ソマトスタチン、セロトニン、サブスタンスP、転写因子、又はその組み合わせ。
【0124】
他の実施形態では、本発明は、本発明の発現ベクターのライブラリを含む複数の細胞を提供する。
【0125】
ある実施形態では、各細胞は、前記細胞のゲノム内に安定的に組み込まれるライブラリのベクターを含む。ある実施形態では、前記細胞は目的の遺伝子を内生的に発現しない、又は目的の遺伝子を内生的に発現しないように人為的に操作されている。
【0126】
他の実施形態では、前記遺伝子は、レポーター遺伝子である。ある実施形態では、前記レポーター遺伝子は、蛍光タンパク質をコードしている。ある実施形態では、前記蛍光タンパク質は、yECitrine又は黄色蛍光タンパク質である。ある実施形態では、前記蛍光タンパク質は、クラゲ由来の緑色蛍光タンパク質、又はその変異体若しくは変種である。
【0127】
他の実施形態では、前記レポーター遺伝子は、薬剤耐性を付与する。ある実施形態では、当業者には明らかなように、前記レポータ遺伝子は、例えば、アンピシリン、カナマイシン、テトラサイクリンなどの抗生物質に対する耐性を付与する。他の実施形態では、抗生物質耐性遺伝子としては、ネオマイシン(ネオ)、ブラストサイジン、スペクチノマイシン、エリスロマイシン、フレオマイシン、Tn917、ゲンタマイシン、及びブレオマイシンに対する耐性を付与するものが挙げられ得る。ネオマイシン耐性遺伝子の例としては、G418及びカナマイシンを含む様々な抗生物質に対する耐性を付与するネオマイシンホスホトランスフェラーゼ11をコードするトランスポゾンTn5由来ネオマイシン耐性遺伝子がある。
【0128】
他の実施形態では、前記レポーター遺伝子は、クロラムフェニコール・アセチルトランスフェラーゼ(cat)遺伝子であり、クロラムフェニコールに対する耐性を付与する。
【0129】
ある実施形態では、変異型プロモータの性能は、レポータ遺伝子のmRNA、タンパク質、又はその組み合わせの発現と、野生型プロモータを含んでいるレポータ遺伝子のmRNA、タンパク質、又はその組み合わせの発現との比較によって評価される。他の実施形態では、野生型及び変異プロモータの両方の制御下でのレポータ遺伝子の発現レベルは、構成的プロモータの制御下でのレポータ遺伝子の発現と比較される。これは、図2に例示される。
【0130】
他の実施形態では、使用される選択システムは、tk−、hgprt−、又はaprt−細胞にそれぞれ用いられる、単純ヘルペスウイルスのチミジンキナーゼ(Wigler et al., Cell, 11:223, 1977)、ヒポキサンチン・グアニン・ホスホリボシルトランスフェラーゼ(Szybalska et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 48:202, 1992)、及びアデニン・ホスホリボシルトランスフェラーゼ(Lowy et al., Cell, 22:817, 1980)遺伝子を含み得る。
【0131】
他の実施形態では、下記の遺伝子を包含することによって、代謝拮抗物質耐性を使用することができる。dhfr:メトトレキサートへの耐性を与える(Wigler et al., Natl. Acad. Sci. USA, 77:357, 1980、O'hare et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 78:1527, 1981)。gpt:ミコフェノール酸への耐性を与える(Mulligan et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 78:2072, 1981)。neo:アミノグリコシド抗生物質G418への耐性を与える(Clinical Pharmacy, 12:488-505、WU et al., Biotherapy, 3:87-95, 1991、Tolstoshev, Ann. Rev. Pharmacol. Toxicol., 32:573-596, 1993、Mulligan, Science, 260:926-932, 1993、Morgan et al., Ann. Rev. Biochem., 62:191-217, 1993、Tibtech 11(5):155-215, May 1993)。hygro:ハイグロマイシンへの耐性を与える(Santerre et al., Gene, 30:147, 1984)。
【0132】
他の実施形態では、前記ベクターは、2つ以上の目的の遺伝子を含み得る。
【0133】
本発明の他の態様は、本発明の発現ライブラリの核酸断片のヌクレオチド配列を含む、コンピュータ可読形式のデータベースを提供する。前記配列は、タンパク質の生成の調節を最適化に関して、本発明の方法のいくつかの仮想設計に使用され得る。
【0134】
ある実施形態では、調節可能なプロモータ内の変異は、調節可能なプロモータの調節機構を改変する。他の実施形態では、調節可能なプロモータの変異は、調節可能なプロモータ下流の遺伝子の発現を最適に調節する。前記最適な調節は、ある実施形態では、野生型プロモータの発現を誘導する条件下での遺伝子発現の増加、及び、野生型プロモータの発現を誘導しない条件下での遺伝子発現の無変化で有り得る。他の実施形態では、プロモータ変異の結果として生じる遺伝子発現の変化は、前記プロモータを介して遺伝子発現を誘導する、酸素感受性、温度、pH、栄養要求性、薬物感受性、化合物感受性の改変を含み得る。ある実施形態では、プロモータ変異は、遺伝子発現に必要とされる上記のパラメータの量を増加させる。一方、他の実施形態では、プロモータ変異は、前記パラメータの量を減少させる。他の実施形態では、発現の最適な調節は、遺伝子発現を誘導する組織特性又は発生的特性の変更を含む。他の実施形態では、発現の最適な調節は、時間又は空間依存性のプロモータによる遺伝子発現調節の変更を含む。
【0135】
ある実施形態では、プロモータ変異体は、好ましい条件下で、タンパク質の発現を増加させる。この態様によれば及びある実施形態では、調節可能なプロモータの変異は、微好気条件下で高レベルの遺伝子発現をもたらす。他の実施形態では、変異は、嫌気条件下で高レベルの遺伝子発現をもたらす。ある実施形態では、微好気条件は、低レベルの酸素が存在する条件である。他の実施形態では、微好気条件は、酸素が培地に入らないようにすることによって実現される。ある実施形態では、嫌気条件は、低レベルの酸素が存在しない条件である。他の実施形態では、嫌気条件は、培地を窒素で泡立てることによって実現される。これら2つの培養条件は、図2及び図4に例示される。
【0136】
ある実施形態では、各プロモータの変異は、結果として、プロモータ強度を改変する。ある実施形態では、プロモータ強度は、10〜100倍に変更される。ある実施形態では、目的の化合物の生成を最適に調節する方法は、ここで説明するように、目的の遺伝子が高レベルで発現される構築体を使用する。或いは、他の実施形態では、目的の化合物の生成に関わる他の遺伝子発現が同様に調節される場合は、最大生成量未満の生成をする構築体(最適な発現をし得る)が使用される。このような調節は、過剰発現、又は過小発現、又は他の実施形態では抑制発現を含み得る。
【0137】
ある実施形態では、本発明は、調節可能なプロモータの制御下にある遺伝子の発現を最適化する方法であって、
(a)複数の細胞を発現ベクターのライブラリに接触させるステップであって、
前記発現ベクターが、少なくとも1つの目的の遺伝子及びそれに作用可能に連結した調節可能なプロモータを含み、
前記プロモータのそれぞれが核酸を含み、前記核酸の配列が前記ライブラリの他の配列に対してランダムに変異しており、
遺伝子発現を制御する条件下では、前記目的の遺伝子の発現レベルが前記プロモータ配列の前記変異に応じて相対的に変わるステップと、
(b)前記遺伝子発現を調節する条件下で培養されたステップ(a)の細胞の遺伝子発現レベルを検出するステップと、
(c)前記条件下で、前記複数の細胞から、発現レベルが最適化された細胞を同定するステップとを含む方法を提供する。
【0138】
他の実施形態では、本発明は、遺伝子発現を調節する方法であって、
(a)複数の細胞を発現ベクターのライブラリに接触させるステップであって、
前記ベクターのそれぞれが、少なくとも1つの目的の遺伝子及びそれに作用可能に連結した調節可能なプロモータを含み、
(i)前記プロモータのそれぞれが核酸を含み、前記核酸の配列が前記ライブラリの他の配列に対してランダムに変異しており、
(ii)遺伝子発現を制御する条件下では、前記目的の遺伝子の発現レベル、前記目的の遺伝子の発現条件、又はそれらの組み合わせが前記プロモータ配列の前記変異に応じて相対的に変わるステップと、
(b)野生型遺伝子の発現が非最適な条件下で、ステップ(a)で得られた前記複数の細胞の遺伝子発現レベルを検出するステップと、
(c)前記野生型遺伝子の発現が非最適な条件下で、前記複数の細胞から発現レベルが増加した細胞を同定するステップと、
(d)ステップ(c)で同定された前記細胞を前記条件下で培養するステップとを含む方法を提供する。
【0139】
ある実施形態では、前記方法は、ここで説明したいずれかの実施形態、又はそれらの実施形態の組み合わせを含む、本発明のベクターを使用し得る。他の実施形態では、細胞ゲノム内でのプロモータと目的の遺伝子との安定した組み込みを可能にする配列を含む、本発明のベクターを使用し得る。前記細胞で、生成の最適化された調節が評価される。
【0140】
他の実施形態では、前記ライブラリの各ベクターは、目的の遺伝子の一定レベルの発現を提供する。このことは、他の実施形態では、少なくとも2つの異なる方法によって確認される。ある実施形態では、本発明の前記方法は、タンパク質の発現レベルを、蛍光分光計を使用して測定する。他の実施形態では、前記方法は、レポーター遺伝子のmRNA発現レベルを、定量RT−PCR法を用いて検出する。他の実施形態では、前記方法は、単一細胞レベルで発現を確認する。他の実施形態では、前記方法は、蛍光活性化細胞選別法、蛍光顕微鏡検査法、又はそれらの組み合わせを含む。他の実施形態では、発現の相対的変化の測定は、定量的ポリメラーゼ連鎖反応法を用いて実現される。他の実施形態では、少なくとも1つの目的の遺伝子が酵素をコードしている場合、発現の相対的変化の検出は、酵素活性を測定することにより実現される。
【0141】
前記方法の実施形態は、例えば、図2に示される。図2では、蛍光活性化細胞選別法を用いてレポータタンパク質の発現を測定し、定量RT−PCR法を用いてレポータの転写産物レベルを測定している。
【0142】
ある実施形態では、遺伝子発現の増加は、野生型プロモータでの発現と比較して評価される。一方、他の実施形態では、遺伝子発現の増加は、構成的プロモータでの発現と比較して評価される。ある実施形態では、変異したプロモータを含んでいる細胞を大量に培養すると、目的の遺伝子の発現が増加し得る。図4は、この実施形態を例示する。微好気条件で培養した場合に、DAN1プロモータ変異体のタンパク質発現のレベルが野生型での発現と比較して増加することを図2に例示する。また、微好気条件下及び嫌気条件下の両方で培養した場合に、タンパク質発現のレベルが野生型での発現と比較して増加することを図2に例示する。
【0143】
他の実施形態では、目的の化合物の生成の最適化された調節が評価される。前記化合物の生成は、目的の遺伝子(他の実施形態では、2つ以上の目的の遺伝子)の調節された発現の機能である。ある実施形態では、本発明のこの態様によれば、前記方法は、目的の遺伝子の最適化された遺伝子発現の測定において説明したと同様に行われる。
【0144】
ある実施形態では、本発明の前記方法は、目的のタンパク質をコードしている2つ以上の遺伝子を有するベクターを含む化合物の生成の最適化された調節を評価する場合は、相関するタンパク質をコードしている遺伝子を必要とする。ある実施形態では、代謝経路に関係するタンパク質をコードしている2つ又はそれ以上の遺伝子、又は2つ以上の遺伝子は、特定の経路におけるそれらの協奏効果について言えば相互に関係する。ある実施形態では、そのような遺伝子は、過剰発現する。
【0145】
他の実施形態では、本発明は、目的の遺伝子の所望の発現レベルを有し、本発明の方法により同定される細胞を提供する。他の実施形態では、本発明の前記方法に従った細胞は、内在的に発現しない。或いは、前記細胞は、前記遺伝子又は目的の遺伝子を内在的に発現しないように、人為的に操作される。他の実施形態では、前記ベクターは、前記プロモータと、前記細胞の前記ゲノム内の前記目的の遺伝子との安定した統合を可能にする配列を含む。
【0146】
他の実施形態では、前記方法は、前記細胞内のプロモータを同定するステップをさらに含む。この態様によれば及びある実施形態では、前記プロモータは、配列分析によって同定される。他の実施形態では、本発明は、対象へのタンパク質輸送の調節を最適化する方法であって、本発明の方法によって同定されたプロモータを含むベクターを対象に投与するステップを含む方法を提供する。
【0147】
他の実施形態では、本発明は、本発明は、対象へのタンパク質輸送の調節を最適化する方法であって、本発明の方法によって同定された、前記タンパク質の発現が最適に調節された細胞を前記対象に投与するステップを含む方法を提供する。
【0148】
ある実施形態では、発現を定量化する2つの異なる方法によって、相同な発現の測定が実現される。
【0149】
ある実施形態では、本発明のライブラリ及び方法は、機能的ゲノム学及び代謝工学のための不可欠のプラットホームを構成する。
【0150】
他の実施形態では、本発明は、対象へのタンパク質輸送の調節を最適化する方法であって、本発明の方法によって同定されたプロモータを含むベクターを前記対象に投与するステップを含む方法を提供する。本明細書中に記載されているように、及びある実施形態では、本発明は、本発明のライブラリを使用して化合物の生成の最適な調節を測定する方法を提供する。生成の最適な調節が測定されるとすぐに、前記生成の最適な調節を与える構成物が対象に投与される。ある実施形態では、前記生成の最適な調節は、単数の細胞又は複数の細胞で実現され、前記細胞は対象に投与される。ある実施形態では、前記構成物は、対象へ輸送される。ある実施形態では、前記細胞又は構成物の対象への輸送は、当業者には明らかなように、細胞又は遺伝子治療の手段である。
【0151】
ある実施形態では、本発明に係る、発現が最適に調節された前記細胞、又は発現を最適に調節するためのベクターに接触された細胞は、目的の遺伝子を内在的に発現しない、又は内在的に発現しないように人為的に操作されている。ある実施形態では、そのような細胞は、第2の目的の遺伝子又は他の実施形態では第1の目的の遺伝子の変異体を発現又は過剰発現するように、人為的に操作されている。他の実施形態では、そのような細胞は、本明細書中で説明したように、遺伝子又は目的の遺伝子の所望の発現レベルを提供するように、本発明で同定されたプロモータの制御下で、目的の遺伝子を発現する。
【0152】
他の実施形態では、そのような細胞は、原核性又は真核性であり得、培養物内で増殖し得る。ある実施形態では、そのような細胞は、体外で増殖させられ、培養物内で改変された後に、ホストに再移植される。そのような細胞は、ある実施形態では幹細胞であり得、他の実施形態では前駆細胞であり得、他の実施形態では分化細胞であり得る。ある実施形態では、前記細胞は、対象に移植される前記細胞は、前記細胞の所望する位置へのホーミング(homing)を促進するタンパク質を含めるために、さらに人為的に操作される。そのようなタンパク質は、当業者には認識されており、目的の部位への特定の輸送を可能にする、特定の接着分子、インテグリンなどを含み得る。他の実施形態では、部位への特定の輸送は、例えば、目的の部位への直接的な注入や、所望の部位への特定の剤形による投与などの輸送手段によって実現され得る。前記特定の剤形は、例えば、肺へ輸送する場合はエアロゾル剤形、特定の粘膜部へ輸送する場合は坐薬、肌へ投与する場合は局所製剤がある。
【0153】
ある実施形態では、前記目的の遺伝子は、レポーター遺伝子であり、ある実施形態では蛍光タンパク質又は発光タンパク質である。
【0154】
ある実施形態では、本発明の方法は、同定された細胞内のプロモータを同定するステップをさらに含む。
【0155】
ある実施形態では、本発明は、野生型遺伝子の発現を非最適に誘導する条件下でタンパク質の発現が最適になるように調節された、本発明の1つ以上の方法によって同定された細胞を提供する。
【0156】
ある実施形態では、本発明は、野生型遺伝子の発現を非最適に誘導する条件下で、目的のタンパク質の生成が最適になるように調節する方法であって、野生型遺伝子の発現を非最適に誘導する条件下で本発明の細胞を培養するステップを含む方法を提供する。前記細胞は、ある実施形態では真核細胞であり、他の実施形態では原核細胞である。
【0157】
他の実施形態では、本発明は、野生型遺伝子の発現を非最適に誘導する条件下で、対象へのタンパク質輸送を最適に調節する方法であって、本発明の細胞を前記対象に投与するステップを含む方法を提供する。このことにより、前記細胞では、野生型遺伝子の発現を非最適に誘導する条件下で、タンパク質は最適に調節される。ある実施形態では、前記細胞は幹細胞である。
【0158】
前記構築体を提供するためのいずれの輸送手段、又は本発明の細胞、及び/又は本発明の効果は、本発明の一部と見なされることを理解されたい。
【0159】
以下は、本発明を実施/実行する手段としての材料、方法及び例を例示することを目的としており、本発明を制限するものではない。
【実施例】
【0160】
≪材料及び実験方法≫
【0161】
<プラスミドの構築、株及び培養条件、並びに試薬>
【0162】
鋳型としてのサッカロミセス・セレヴィシエB4741からのゲノムDNAを、プライマーGTTAAAAATTGTTGAGCTCAATTC(SEQ ID NO:12)及びCGAGTTCTAGATACTTGGGGTATATATTTAGTATG(SEQ ID NO:13)と共に使用してPCRでDAN1プロモータ(DAN1コード配列の上流−551〜−1の領域)を増幅した。得られたPCR産物(563bp)をSacI及びXbaIで切断し、SacI/XbaIで制限処理したベクターp416−TEF−yECitrineにクローニングした。よって、yECitrineの上流のTEF1プロモータをDAN1プロモータで置換した。得られたプラスミドをp416−DAN−yECitrineと名づけた。
【0163】
プラスミドp416−TEF−yECitrineは、酵母用に最適化された黄色蛍光タンパク質であるyECitrine(Sheff & Thorn, Yeast 21, 661-670, 2004)のコード配列をTEF1プロモータの下流にクローニングすることで得られた。本研究でレポータタンパク質として使用したyECitrineのコード配列は、プライマーCGAGTTCTAGAAAAATGTCTAAAGGTGAAGAATTATTC(SEQ ID NO:14)及びTAGCGATCGATTTATTTGTACAATTCATCCATACC(SEQ ID NO:15)を使用して、EUROSCARF社から得られたプラスミドpKT140からPCRで増幅した。PCR産物は、ClaI及びXbaIで切断してClaI/XbaIで制限処理したATCC(アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション)から得られたベクターp416−TEF(Mumberg et al. Gene 156, 119-122 (1995))に連結した。
【0164】
本研究で使用したサッカロミセス・セレヴィシエ株BY4741(MATa、his3Δ1、leu2Δ0、met15Δ0、ura3Δ0)は、EUROSCARF社(ドイツ、フランクフルト市)から調達した。この株は、YPD培地(10g/リットルの酵母抽出物、20g/リットルのBacto Peptone、及び20g/リットルのグルコース)で培養した。酵母の形質転換のために、Frozen-EZ Yeast Transformation II(ZYMO RESEARCH社)を使用した。選択マーカーとしてURA3を有するプラスミドを含む酵母形質転換体を選択して培養するために、6.7g/リットルのYeast Nitrogen Base(Difco社)と20g/リットルのグルコースと適切なヌクレオチド及びアミノ酸(CSM-URA、Qbiogene社)とを含有する酵母完全合成培地(yeast synthetic complete:YSC)(以下、YSC URA−と呼ぶ)を使用した。培地を固形培地にするために、1.5%の寒天を添加した。酵母細胞は、通常通り、Erlenmeyerフラスコにて振盪しながら30℃で培養した。DAN1プロモータ変異を有する細胞を選択する蛍光活性化細胞選別法(FACS)に使用するマイクロタイタ・プレートの各ウエルには、10mg/Lのエルゴステロール及び420mg/LのTween 80含有のYSC Ura−を200μL加えた(Nelms, J. et al., Appl Environ Microbiol 58, 2592-2598 (1992))。
【0165】
実験室規模の微好気条件は、バイアルを培養液で上限まで完全に満たし、ねじぶたで密閉し、振盪することなく、30℃でインキュベートすることで達成した。嫌気条件は、高純度(99.8%)の窒素で培養液を2分間泡立てることで達成した。微好気的条件又は嫌気条件に使用した培地にも、10mg/Lのエルゴステロール及び420mg/LのTween 80を添加した。
【0166】
通常の形質転換に使用した大腸菌DH5α(Invitrogen社)は、100μg/mLのアンピシリン含有(必要に応じて)のLB培地にて37℃で培養した。細胞密度は、分光高度計を使用して600nmでモニターした。New England Biolabs社(Ipswich MA)から全てのPCR試薬及び制限酵素を調達した。他の全ての試薬は、Sigma-Aldrich社(St. Louis MO)から調達した。
【0167】
<ライブラリの構築>
【0168】
ヌクレオチド類似体による変異生成は、20μMの8−オキソ−2´デオキシグアノシン(8オキソ−dGTP)及び6−(2−デオキシ−β−D−リボフラノシル)−3,4−ジヒドロ−8H−ピリミド−[4,5−c][1,2]オキサジン−7−オン(dPTP)の存在下で行った(Zaccolo. & Gherardi J Mol Biol 285, 775-783 (1999))。鋳型としてのp416−DAN−yECitrineを、プライマーATTGGGACAACACCAGTGAATAATTCTTCACCTTTAGACATTTTTCT(SEQ ID NO:16)及びACGCCAAGCGCGCAATTAACCCTCACTAAAGGGAACAAAAGCTGGAGC(SEQ ID No:17)と共に使用して、増幅サイクルを10、20、及び30回行った。GeneClean Spin Kit(Qbiogene社、Morgan Irvine CA)を使用してPCR産物を精製した。変異したPCR産物の混合物を、SacI/XbaIで既に制限処理したp416−TEF−yECitrineと共に、組み換えクローニング(Raymond et al.. Biotechniques 26, 134-138, 140-131 (1999))で酵母に形質転換した。
【0169】
≪蛍光測定、フローサトメトリ、及び細胞分類≫
【0170】
特定の蛍光の測定は、振盪フラスコ(250mLのErlenmeyerフラスコ中20mLの培地)で対数増殖期にある細胞を回収して行った。培養液を希釈して(OD600値が0.1〜0.3になるように)蛍光キュベットに注入して蛍光分光計(励起波長:502nm、発光波長:532nm)でyECitrineの蛍光を測定した。特定の蛍光は、同じキュベットで測定された蛍光レベルとOD600値との比を意味する。フローサイトメトリー及びFACSに行うとき、指数増殖期(OD値が1.0〜1.5)にある細胞を600g、2分間で遠心分離して無菌の蒸留水に再懸濁して測定までに氷上に静置した。フローサイトメトリーは、Becton-Dickinson FACScan機器でCellQuestソフトウエアを使用して行った。Becton Dickinson FACS Aria高速細胞分別機及びDivaソフトウエアを使用して細胞をマイクロタイタ・プレートに分けた。
【0171】
成熟したyECitrineの形成に酸素が必要なので、微好気又は嫌気培養から採取した全てのサンプルを、蛍光測定前に振盪フラスコで45分間、30℃でインキュベートした。
【0172】
<RNA定量>
【0173】
酵母の全RNAは、RiboPureTM-Yeast Kit(AMBION社)を使用してDNAase処理を行って抽出した。260nmにおける吸光度を測定することでRNA濃度を定量した。yECitrineのmRNAは、SYBR Greenと共にiScipt One-Step RT-PCR Kit及びiCyclerサーモサイクラー(Bio-Rad社製)を使用して定量した。1つのRT−PCR反応につき100ngの全酵母RNAを使用した。RT−PCRには、プライマーATGGCTGACAAACAAAAGAATG(SEQ ID No:18)及びCAGATTGATAGGATAAGTAATG(SEQ ID NO:19)をRT−PCRに使用した。iCyclerソフトウエア(Bio-Rad Laboratories, Hercules CA)を使用してデータを分析した。
【0174】
<発酵>
【0175】
発酵実験に使用した合成培地には、100g/Lのスクロースと、24g/Lのグルタミン酸ナトリウムと、10g/LのNZアミンと、10g/Lの硫酸アンモニウムと、6.4g/Lの無水リン酸アンモニウムと、3g/Lの塩化カリウムと、1.5g/Lの硫酸マグネシウムと、0.2g/Lの塩化カルシウム、0.2g/Lのミオイノシトールと、1g/Lのロイシンと、1g/Lのヒスチジンと、1g/Lのメチオニン、8mg/LのD−パントテン酸、8mg/Lのピリドキシンと、8mg/Lのチアミンと、8mg/Lのニコチン酸と、46μg/Lのビオチンと、0.03g/Lの硫酸亜鉛と、0.03g/Lの硫酸マンガンと、5mg/Lの酸化モリブデンナトリウムと、8mg/Lの硫酸銅と、12.5mg/Lの硫酸鉄とが含まれていた。
【0176】
発酵実験は、2Lのワーキング容量(working volume)を有する3.2リットルのBIOSTAT-E発酵槽(Braun, Germany)にて30℃で行った。4MのHSO又は4MのKOHを自動的に加えることによってpHを5.0に維持した。600rpmで培養液を攪拌し、培養液中に空気を1vvmで拡散させた。この空気の拡散は、酸素が拡散した状態を微好気的条件に切り替える、又は嫌気条件を得るために窒素を5分間拡散する(1vvm)ときまでに行った。ポリエチレングリコール2000(60%(w/v))を加えることで泡の形成を防止した。オートクレーブで滅菌可能な酸素電極(Ingold, Switzerland)で溶解した酸素をモニターした。r-Biopharmキット(Darmstadt, Germany)を使用してスクロースを分析した。
【0177】
<プロモータのシーケンシング>
【0178】
プライマーATTGGGACAACACCAGTGAATAATTCTTCACCTTTAGACATTTTTCT(SEQ ID NO:16)及びACGCCAAGCGCGCAATTAACCCTCACTAAAGGGAACAAAAGCTGGAGC(SEQ ID No:17)を使用してプロモータの配列を確認した。
【0179】
≪実施例1≫
【0180】
<DAN1プロモータへの変異導入>
【0181】
翻訳開始領域の直上流に位置するDAN1プロモータの551bpの領域に変異を導入するために変異性PCR法(Zaccolo & Gherardi J MoI Biol 285, 775-783 (1999))を使用した(図1A)。PCRの後、平均変異率は、551nt当たり11.2変異と予想された。変異型プロモータのライブラリは、サッカロミセス・セレヴィシエでの発現に最適化されたyECitrine蛍光レポータタンパク質遺伝子の上流にクローニングした(Sheff & Thorn Yeast 21, 661-670 (2004))。組み換えクローニング法を使用して酵母株BY4741の形質転換体を約12000個得た。
【0182】
≪実施例2≫
【0183】
<DAN1及び変異体ライブラリにおける蛍光レポータタンパク質の生成>
【0184】
様々な酸素条件下で培養した変異体ライブラリ及び対照株(非変異型のDAN1プロモータを有する)の蛍光強度を表すヒストグラムが図1Bに示されている。好気条件を得るために、振盪フラスコを使用した。また、厳密な嫌気条件は、培養液を純粋な窒素で泡立てることで得られた。微好気条件を得るために、培養液を、密閉された気密のバイアル内で培養した。残存する溶解酸素が細胞増殖の間に消費されるので、酸素量は大幅に低下するが、酸素は、欠失することはなく、細胞増殖期の間には利用できる状態にある。非変異型のDAN1プロモータは、厳密な嫌気条件のときのみに完全に誘導された。
【0185】
厳密な嫌気条件下で培養した変異体ライブラリの蛍光ヒストグラム(図1B)は、ライブラリの約20%がある程度誘導されたことを示す。これは、ライブラリ内の多くの固体でDAN1の本質的な特徴が保持されていることを示す。微好気条件下で培養したライブラリの細胞に関する蛍光ヒストグラムは、見た目では、誘導しなかった好気条件のライブラリのものに類似するが、2つの分布は統計的に異なる(xテスト:983d.o.f.,p<10−9)。これは、微好気条件下でさえも、ライブラリの一部において誘導がされたことを示す。
【0186】
≪実施例3≫
【0187】
<蛍光活性化細胞分類>
【0188】
変異型プロモータのライブラリに対して、複数回の蛍光活性化細胞分類(fluorescence associated cell sorting:FACS)を行った。酸素に抑制されない変異型プロモータ全てを除去するために行った第1回目のFACSを行うために、好気条件下で細胞を前培養し、図1Bに示されているカットオフを用いて高強度の蛍光を示す変異体(すなわち、好気条件下でプロモータが活性化するもの)を除去した。このように単離したサブライブラリは、元のライブラリの87%のクローンを含んでいた。第2回目のFACSを行うために、前記サブライブラリの細胞を微好気条件下で4時間培養した。厳密な嫌気条件下では、ライブラリのクローンの大部分が野生型DAN1プロモータを有する細胞よりも低い蛍光度を示していたが、図1Bに示されているように、蛍光度分布の極端部(数値が高い方)の変異体に関して前記サブライブラリをスクリーニングした。この厳密なカットオフによって、ライブラリの99.8%の固体が除去された。
【0189】
≪実施例4≫
【0190】
<モノクローナル培養における選択したクローンの特性解析>
【0191】
残存の0.02%のライブラリから10クローンを単離し、モノクローナル培養で特性解析した。再形質転換(retransformation)前、10クローンのうちの9クローンが野生型DAN1プロモータよりも1.4〜3.5倍高い蛍光度を示した。プラスミドで再形質転換した後には、10クローンのうちの6クローンが野生型のDAN1プロモータよりも1.8〜2.9倍高い蛍光度を示した(微好気条件下で4時間培養した後(不図示))。他の4クローンは、野生型プロモータと統計的に同様な誘導レベルを示した。
【0192】
≪実施例5≫
【0193】
<選択したクローンの特性解析:誘導動態>
【0194】
蛍光測定及び量的RT−PCRを使用して2つの変異クローンの誘導動態を測定した(図2)。好気条件から微好気条件に切り替えた後に、yECitrineのmRNA転写産物及びyECitrineタンパク質のレベル(蛍光度で測定)は5時間にわたって増加した。2つの変異体における転写物は、3時間後に著しく増加し、5時間後には、誘導しなかったものに比べて少なくとも25倍(変異体1)から38倍(変異体2)の量で飽和した。
【0195】
しかしながら、誘導されなかったmRNAの濃度が、使用したRT−PCRプロトコールの基本雑音レベル(basal noise level)に近いと予想されるので、実際の増加量はさらに高い可能性がある。よりうまく比較するために、得られた全てのデータを、関連する構成プロモータ(TEF1プロモータ(Huet, J. et al. Embo J 4, 3539-3547 (1985)))によって得られたレベルに対して正規化した。変異型プロモータの5時間後の誘導は、TEF1プロモータによる転写産物レベルの約30〜40%の相対値に相当した(図2B)。一方、野生型DAN1培養液におけるyECitrineのmRNA転写物レベルは、誘導の4時間後までには増加せず、5時間後には、変異株の10%だけであった。タンパク質レベルは、mRNAレベルに密接に従った。誘導5時間後には、2つの変異体における蛍光強度は3.8及び4.5倍増加した。これは、TEF1プロモータによる発現の約15%に相当する(図2A)。野生型のサンプルで観察されたmRNAの微増は、タンパク質レベルにわずかに反映した(mRNAが1.9倍増加したのに対して、タンパク質発現はTEF1プロモータ強度の5%にまで増加した)。
【0196】
≪実施例6≫
【0197】
<選択したクローンの特徴解析:配列分析>
【0198】
単離した10の変異体の配列を分析したところ(表1)、DAN1プロモータの周知の転写因子結合部位において幾つかの変異が判明した(図3)。しかしながら、周知の転写因子結合部位の外側及びTATAボックスの外側にも多くの変異が存在していた(図3)。周知の転写因子結合部位では、明らかな変異の集積(concentration of mutations)は存在しなかった。これは、他の転写因子がこのプロモータからの酸素依存遺伝子発現に関わり得ることを示す。
【0199】
表1.野生型DAN1プロモータ配列、及び変異性PCRを使用して作成して単離した10の変異体の配列。




ハイライトされた配列は、野生型に対する変異を示す。
【0200】
≪実施例7≫
【0201】
<選択したクローンの特性解析:酵母のバッチ発酵>
【0202】
酸素欠失に関して異なる2つの条件を用いて、単離したクローンの性能を2Lの酵母バッチ発酵で分析した。酸素欠失に関する第1条件では、厳密な嫌気条件を得るために、濁度(A600値)が2である培養液を窒素で泡立てた。酸素欠失に関する第2条件では、より高密度のバッチ発酵液(A600の初期値が8)を微好気条件に曝した(空気供給を停止することによって)。分析した両方の条件では、変異型のプロモータを有する細胞は、野生型のDAN1プロモータを有する細胞よりも高いレベルのレポータをより速く発現した。窒素で培養液を泡立てた後、又は酸素供給を停止した後には、溶解酸素の濃度はすぐに検出不可能なレベルにまで低下した(データ不図示)。微好気条件下での低密度の発酵液では、検出可能な誘導が見られなかった(データ不図示)。低密度の発酵液では、溶解酸素の欠失に必要な時間は、より著しく長かった。これは、8時間後のこれらの培養液における溶解酸素の濃度が依然高かったため、十分な誘導が起きなかったことを意味する。
【0203】
上記の実施例は、インビボにおいて特定の条件下で遺伝子発現を調節する調節因子に対するプロモータの反応の調節を最適化する一般的な枠組みを提供する。調節される遺伝子発現の生物学的反応は、複数の転写因子との相互作用の複雑なネットワーク、並びにヘム生合成及び分解の代謝及び制御経路を介して発生し、複雑であるが、プロモータの配列を改変することによって具体的な方法で遺伝子の調節特性を操作することができる。サッカロミセス・セレヴィシエの酸素調節DAN1プロモータを使用した結果、プロモータの調節特性を最適化するのにプロモータ工学の概念を適切な選択手段と組み合わせて使用することができることが判明した。このプロモータの自身の調節因子に対する反応を最適化する方法は、他の様々なプロモータ及び調節因子に適用することができ、且つ他の生物にも応用することができる。したがって、既存のプロモータを改良し、新規なプロモータを作成するのに有益な手段となる。この手法は、特定の細胞、組織、及び薬剤依存性プロモータを必要とする産業及び生物医学研究に応用することができるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0204】
【図1】DAN1プロモータ変異ライブラリの構築、及び酸素欠失により敏感に応答する変異体の選択を示す図である。(A)レポータ遺伝子yECitrineの上流に、DAN1遺伝子上流の552bpの断片をクローニングしてプラスミドp416−DAN−yECitrineを作成した。天然型DAN1プロモータの変異性PCR産物を、組み換えクローニングを用いて酵母株BY4741で発現させた。(B)変異型DAN1プロモータライブラリの株及び野生型のDAN1プロモータを有する同質の基準株の蛍光ヒストグラムである。振盪フラスコを用いて好気条件を形成してプロモータを完全に抑制した。厳密な嫌気条件に関しては、培養液をバイアルに移してねじぶたで密閉し、窒素で泡立てたることで達成した。微好気条件は、培養液をバイアルに移してねじぶたで密閉することで得られた。ほとんどのライブラリクローンが野生型のプロモータよりも低い蛍光強度を示したが、最右のパネルに示されているようにFACS分離法を用いて高蛍光強度を示すわずかな部分からより優れた機能を有するプロモータを分離した。
【図2】異なる酸素条件下での2つの異なる変異型DAN1プロモータ及び野生型DAN1プロモータの性能を比較した(yECitrineレポータ遺伝子タンパク質及びmRNAで測定)グラフ、及び生育曲線を示す図である。yECitrineレポータ遺伝子の上流に天然型のDAN1プロモータ又は選択した2つの変異型DAN1プロモータのいずれかを含む3つの酵母株を好気条件下及び微好気条件下で培養した。誘導動態は、(A)レポータ遺伝子の蛍光強度、及び(B)RT−PCRで測定したレポータ遺伝子のmRNA転写産物でモニターした。(C)は、3つの全ての株の生育曲線を示す。レポータ遺伝子の蛍光強度及びmRNA転写産物のレベルは、レポータ遺伝子発現が構成的TEF1プロモータによって誘導される同質の基準株を用いて正規化した。
【図3A】天然型のDAN1プロモータ及び選択した10の変異型DAN1プロモータの配列アラインメントを示す図である。変異型プロモータ1〜6は、プラスミドの再形質転換後に、微好気条件による誘導が野生型DAN1プロモータよりも依然と1.8〜2.9倍高かった変異型プロモータを表す。下線個所の配列は、Cohenらが提案したDAN1プロモータの転写因子結合部位に相当する(Nucleic Acids Res 29:799-808, 2001)。
【図3B】天然型のDAN1プロモータ及び選択された10の変異型DAN1プロモータの配列アラインメントを示す図である。変異型プロモータ1〜6は、プラスミドの再形質転換後に、依然と微好気条件による誘導が野生型DAN1プロモータよりも1.8〜2.9倍高かった変異型プロモータを表す。下線個所の配列は、Cohenらが提案した(Nucleic Acids Res 29:799-808, 2001)DAN1プロモータの転写因子結合部位に相当する。
【図4】培養液を窒素で泡立てた後(厳密な嫌気条件)又は酸素供給を停止した後(微好気条件)の異なる発酵条件下での選択した変異型DAN1プロモータ及び野生型のDAN1プロモータの性能を示すグラフである。上のグラフは、厳密な嫌気条件及び微好気条件下のyECitrine遺伝子の蛍光強度を示す。一方、下のグラフは、それぞれの条件下の3つの株の8時間にわたる生育曲線を示す。レポータ遺伝子の蛍光レベルは、基準株を用いて正規化した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
単離された核酸であって、
SEQ ID No:1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10の配列に対応する又は相同な変異型DAN1プロモータを含むことを特徴とする核酸。
【請求項2】
単離された核酸であって、
SEQ ID No:1、2、3、4、5、又は6の配列に対応する又は相同な変異型DAN1プロモータを含むことを特徴とする核酸。
【請求項3】
単離された核酸であって、
SEQ ID No:1又は2の配列に対応する又は相同な変異型DAN1プロモータを含むことを特徴とする核酸。
【請求項4】
ベクターであって、
請求項1に記載の単離された核酸を含むことを特徴とするベクター。
【請求項5】
変異型DAN1プロモータを含む、単離された核酸であって、
前記プロモータは、SEQ ID No:11における
a)1〜56、
b)66〜139、
c)148〜232、
d)245〜283、
e)290〜293、
f)301〜302、
g)310、
h)322〜326、
i)334〜347、
j)357〜371、
k)380〜450、又は
l)458〜551
の1つ以上の部位において、少なくとも1つの核酸で変異を有することを特徴とする核酸。
【請求項6】
請求項5に記載の核酸であって、
前記変異は、4、7、15、18、19、21、22、26、28、36、40、53、56、60、63、66、74、75、78、86、99、122、132、135、136、149、153、162、164、165、171、172、176、187、196、198、201、205、207、211、216、226、228、233、234、237、241、260、269、274、277、280、281、285、296、299、303、307、308、310、313、322、327、331、332、337、338、343、344、346、366、368、373、375、376、381、384、386、390、391、392、396、397、402、404、422、427、428、429、432、434、439、445、467、469、470、477、480、490、492、508、511、514、518、528の部位、又はそれらの組み合わされた部位に存在することを特徴とする核酸。
【請求項7】
ベクターであって、
請求項5に記載の単離された核酸を含むことを特徴とするベクター。
【請求項8】
変異型DAN1プロモータを含む単離された核酸であって、
前記変異型プロモータは、SEQ ID NO:11に記載されている配列の
(a)ヌクレオチド配列部位4、15、19、36、53、56、60、66、74、75、78、86、99、132、136、176、201、205、207、216、226、228、269、277、281、285、299、303、310、327、331、332、375、376、390、428、434、467、477、480、508、若しくは511においてTをCに置換した配列、
(b)ヌクレオチド配列部位7、18、26、40、122、135、149、153、162、164、165、171、172、187、196、211、233、234、237、241、260、274、280、308、313、322、337、343、344、346、366、368、381、384、386、396、397、402、404、422、427、429、432、445、470、490、若しくは492においてAをGに置換した配列、
(c)ヌクレオチド配列部位21においてCをAに置換した配列、
(d)ヌクレオチド配列部位237、338、469、514、若しくは518においてAをCに置換した配列、
(e)ヌクレオチド配列部位28、296、307、373、392、若しくは528においてCをTに置換した配列、
(f)ヌクレオチド配列部位22、63、391、若しくは439においてGをAに置換した配列、
(g)ヌクレオチド配列部位198においてTをGに置換した配列、
又はそれらの組み合わせを含むことを特徴とする核酸。
【請求項9】
ベクターであって、
請求項8に記載の単離された核酸を含むことを特徴とするベクター。
【請求項10】
発現ベクターのライブラリであって、
請求項4、7、9、若しくはそれらの組み合わせに記載のベクターを含むことを特徴とするライブラリ。
【請求項11】
調節可能なプロモータの制御下にある遺伝子の最適化された発現を測定する方法であって、
(a)複数の細胞を発現ベクターのライブラリに接触させるステップであって、
前記発現ベクターのそれぞれが、少なくとも1つの目的の遺伝子とそれに作用可能に連結した調節可能なプロモータとを含み、
前記調節可能なプロモータのそれぞれが核酸を含み、前記核酸の配列が前記ライブラリの他の配列に対してランダムに変異しており、
遺伝子発現を調節する条件下では、前記目的の遺伝子の発現レベルが前記プロモータ配列の前記変異に応じて相対的に変わるステップと、
(b)遺伝子発現を調節する前記条件下で培養されたステップ(a)の細胞の遺伝子発現レベルを検出するステップと、
(c)前記複数の細胞から、前記条件下で発現レベルが最適化された細胞を同定するステップとを含むことを特徴とする方法。
【請求項12】
請求項11に記載の方法であって、
前記遺伝子は、レポータ遺伝子であることを特徴とする方法。
【請求項13】
請求項12に記載の方法であって、
前記レポータ遺伝子は、蛍光タンパク質又は発光タンパク質をコードすることを特徴とする方法。
【請求項14】
請求項11に記載の方法であって、
前記検出するステップは、蛍光分光計を使用することで実現されることを特徴とする方法。
【請求項15】
請求項11に記載の方法であって、
前記検出するステップは、定量的ポリメラーゼ連鎖反応を使用することで実現されることを特徴とする方法。
【請求項16】
請求項11に記載の方法であって、
前記細胞は、真核細胞であることを特徴とする方法。
【請求項17】
請求項16に記載の方法であって、
前記細胞は、酵母細胞であることを特徴とする方法。
【請求項18】
請求項16に記載の方法であって、
前記細胞は、哺乳類細胞であることを特徴とする方法。
【請求項19】
請求項11に記載の方法であって、
前記ライブラリの各ベクターは、前記目的の遺伝子の一定レベルの発現を提供することを特徴とする方法。
【請求項20】
請求項19に記載の方法であって、
前記一定レベルの発現は、少なくとも2つの異なる方法で確認されることを特徴とする方法。
【請求項21】
請求項20に記載の方法であって、
前記少なくとも2つの異なる方法の1つでは、単一細胞レベルで発現が確認されることを特徴とする方法。
【請求項22】
請求項20に記載の方法であって、
前記方法は、蛍光活性化細胞分類法、蛍光顕微鏡検査法、又はそれらの組み合わせを含むことを特徴とする方法。
【請求項23】
請求項11に記載の方法であって、
発現レベルを、野生型細胞の発現レベルと比較するステップをさらに含むことを特徴とする方法。
【請求項24】
請求項11に記載の方法であって、
前記細胞内の前記プロモータを同定するステップをさらに含むことを特徴とする方法。
【請求項25】
対象への目的のタンパク質の輸送の調節を最適化する方法であって、
前記目的のタンパク質をコードする遺伝子に作用可能なように連結した、請求項24で同定されたプロモータを含むベクターを前記対象に投与するステップを含むことを特徴とする方法。
【請求項26】
調節可能な目的の遺伝子の発現の最適化された調節を行う細胞であって、
請求項11の方法によって同定されたことを特徴とする細胞。
【請求項27】
請求項26に記載の細胞であって、
真核細胞であることを特徴とする細胞。
【請求項28】
請求項27に記載の細胞であって、
対象に投与されることを特徴とする細胞。
【請求項29】
請求項27に記載の細胞であって、
幹細胞であることを特徴とする細胞。
【請求項30】
対象への目的のタンパク質の輸送の調節を最適化する方法であって、
請求項26に記載の細胞を前記対象に投与するステップを含み、それによって前記細胞は、前記タンパク質の最適化された調節を示すことを特徴とする方法。
【請求項31】
遺伝子発現を調節する方法であって、
(a)複数の細胞を発現ベクターのライブラリに接触させるステップであって、
前記発現ベクターのそれぞれが、少なくとも1つの目的の遺伝子とそれに作用可能に連結した調節可能なプロモータとを含み、
(i)前記調節可能なプロモータのそれぞれが核酸を含み、前記核酸の配列が前記ライブラリの他の配列に対してランダムに変異をしており、
(ii)遺伝子発現を制御する条件下では、前記目的の遺伝子の発現レベル、前記目的の遺伝子の発現条件、又はそれらの組み合わせが前記プロモータ配列の前記変異に応じて相対的に変わるステップと、
(b)野生型遺伝子の発現が非最適に発生する条件下で、ステップ(a)で得られた前記複数の細胞の遺伝子発現を検出するステップと、
(c)前記野生型遺伝子の発現が非最適に発生する条件下で、前記複数の細胞から前記ベクターからより高い発現レベルが得られた細胞を同定するステップと、
(d)ステップ(c)で同定された前記細胞を前記条件下で培養するステップとを含むことを特徴とする方法。
【請求項32】
請求項31に記載の方法であって、
前記遺伝子は、レポータ遺伝子であることを特徴とする方法。
【請求項33】
請求項32に記載の方法であって、
前記レポータ遺伝子は、蛍光タンパク質又は発光タンパク質をコードすることを特徴とする方法。
【請求項34】
請求項31に記載の方法であって、
前記ライブラリの各ベクターは、前記目的の遺伝子の一定レベルの発現を提供することを特徴とする方法。
【請求項35】
請求項34に記載の方法であって、
前記一定レベルの発現は、少なくとも2つの異なる方法で確認されることを特徴とする方法。
【請求項36】
請求項35に記載の方法であって、
前記少なくとも2つの異なる方法の1つでは、単一細胞レベルで発現が確認されることを特徴とする方法。
【請求項37】
細胞であって、
請求項31のステップ(d)で得られたことを特徴とする細胞。
【請求項38】
タンパク質生成を最適化する方法であって、
請求項37に記載の細胞を培養するステップ含むことを特徴とする方法。
【請求項39】
請求項38に記載の方法であって、
前記細胞は、真核細胞であることを特徴とする方法。
【請求項40】
請求項38に記載の方法であって、
前記細胞は、原核細胞であることを特徴とする方法。
【請求項41】
請求項38に記載の方法であって、
前記タンパク質又は前記細胞は、対象に投与されることを特徴とする方法。
【請求項42】
請求項41に記載の方法であって、
前記細胞は、幹細胞であることを特徴とする方法。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4】
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【公表番号】特表2009−521936(P2009−521936A)
【公表日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−548884(P2008−548884)
【出願日】平成19年1月3日(2007.1.3)
【国際出願番号】PCT/US2007/000033
【国際公開番号】WO2007/079428
【国際公開日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【出願人】(591013573)マサチューセッツ・インスティチュート・オブ・テクノロジー (26)
【氏名又は名称原語表記】MASSACHUSETTS INSTITUTE OF TECHNOLOGY
【Fターム(参考)】