プロンプター
【課題】表示する情報量を多くすることができるプロンプターを提供する。
【解決手段】本発明のプロンプター1は、入力される画像信号に基づいて画像を表示する表示面を有する表示ユニット4と、表示面上の画像の実像として空間像を生成するフレネルレンズ5と、を備え、フレネルレンズ5の光射出側から実像としての空間像が視認可能とされている。
【解決手段】本発明のプロンプター1は、入力される画像信号に基づいて画像を表示する表示面を有する表示ユニット4と、表示面上の画像の実像として空間像を生成するフレネルレンズ5と、を備え、フレネルレンズ5の光射出側から実像としての空間像が視認可能とされている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プロンプターに関する。
【背景技術】
【0002】
プロンプターは、例えば講演会等において講演者を補助するために、講演者が聴衆の方向を向いたまま原稿を読むことができるようにした装置である。プロンプターは、画像を生成する表示装置に液晶パネルが用いられることが多いが、液晶パネルは一般的に輝度が低く、射出される光の拡散角が広いため、明るい画像を表示するのが難しい。また、ハーフミラーを通して講演者から聴衆が見えるように、もしくは聴衆から講演者が見えるように、ハーフミラーの反射率が低めに抑えられている。そのため、会場が明るいと画像が見にくいという問題があった。
【0003】
そこで、上記の問題を解決するために、下記の特許文献1では、投射型画像表示装置からの投射光を結像レンズによりスクリーン上に結像させて画像を生成し、ハーフミラーで反射した画像を講演者が見るようにしたプロンプターが開示されている。特許文献1には、このプロンプターでは、投射光を結像レンズの作用により近距離に配置されたスクリーン上に結像させるので、反射率が低いハーフミラーを介しても明るい画像を観察することができる、と記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−104566号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1には、近距離に配置されたスクリーンと記載されているものの、聴衆からスクリーンが目立たないようにするためにスクリーンをあまり高い位置に設置することができず、床面に近い位置に設置することになる。また、講演者の前に演台が設置されている場合には、演台を跨いだ位置にスクリーンを設置することになる。そのため、スクリーンからハーフミラーで反射して講演者の目に至るまでの光の光路長は長くならざるを得ない。このプロンプターの構成において、講演者から見える像は、ハーフミラーで反射してできるスクリーン上の像の虚像であるため、ハーフミラーとスクリーンとの間の距離と同じだけ、目とハーフミラーとを結ぶ直線を延長した延長線上の先の位置に見えることになる。
【0006】
このように、特許文献1のプロンプターでは、講演者は自身からかなり遠い位置に形成される虚像を見るため、大きい文字で原稿を表示せざるを得なかった。そのため、表示する情報量を増やすためには表示画面を頻繁に切り替えなければならない、という煩わしさがあった。また、講演者が近視の場合には、表示する文字をさらに大きくする必要があり、情報量がさらに減ってしまうという課題があった。
【0007】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであって、表示する情報量を多くすることができるプロンプターを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、本発明のプロンプターは、入力された画像信号に基づいて画像を表示する表示面を有する表示ユニットと、前記表示面上の画像の実像として空間像を生成する結像レンズと、を備え、前記結像レンズの光射出側から前記実像としての空間像を視認可能としたことを特徴とする。
【0009】
本発明によれば、使用者は、結像レンズの光射出側から実像としての空間像を視認できるので、使用者が見る像の位置が従来のプロンプターに比べて使用者に近くなる。これにより、従来に比べて文字等の情報の大きさを小さくでき、多くの情報を表示することができる。また、使用者が近視の場合でも表示する画像を見やすくすることができる。
【0010】
本発明のプロンプターにおいて、前記表示ユニットが複数設けられ、前記結像レンズが、前記複数の表示ユニットから射出される複数の光をそれぞれ結像させ、複数の画像の実像として複数の空間像を生成する構成としても良い。
この構成によれば、複数の空間像を、位置を変えて表示することができるため、複数種の情報を同時に表示し、使用者は必要な情報を選択的に見ることができる。
【0011】
本発明のプロンプターにおいて、前記表示ユニットは、投射型表示装置と、前記投射型表示装置で生成される画像が投射される透過型スクリーンと、を備えた構成とすることが望ましい。
この構成によれば、透過型スクリーンから射出された光を結像レンズに入射させれば良いため、投射型表示装置で投射した像を鑑賞する一般のスクリーンと比べて、視野角をはるかに狭くすることができ、その結果、スクリーンゲインを高くすることができる。そのため、投射型表示装置の光出力を大きくすることなく、明るい画像が得られる。また、画像の明るさが従来と同じで良い場合には、投射型表示装置の光出力を小さくすることができ、消費電力を低減することができる。
【0012】
本発明のプロンプターにおいて、前記透過型スクリーンが、拡散板と、前記拡散板の両面にそれぞれ設けられたフレネルレンズと、を備えた構成とすることが望ましい。
この構成によれば、透過型スクリーンが2枚のフレネルレンズを備えているので、1枚のフレネルレンズを備えた場合と比べて各フレネルレンズの焦点距離を長くすることができる。これにより、フレネルレンズを構成する微小プリズムの頂角を大きくできるため、特にフレネルレンズの周辺部において入射角が大き過ぎることで反射光が生じる虞が小さくなる。
【0013】
本発明のプロンプターにおいて、前記結像レンズの光軸に対する前記表示ユニットの光軸の位置を調整する光軸位置調整手段を備えた構成とすることが望ましい。
この構成によれば、光軸位置調整手段を用いて結像レンズの光軸に対する表示ユニットの光軸の位置を調整することにより、空間像の位置を使用者が見やすい位置に適宜調整することができる。
【0014】
本発明のプロンプターにおいて、前記結像レンズの光軸に対する前記表示ユニットの光軸の方向を調整する光軸方向調整手段を備えた構成とすることが望ましい。
この構成によれば、光軸方向調整手段を用いて結像レンズの光軸に対する表示ユニットの光軸の方向を調整することにより、空間像の向きを使用者が見やすい向きに適宜調整することができる。例えば使用者から見て空間像が正対する向きに調整すれば、横向きの台形歪みが少ない状態で画像を見ることができる。
【0015】
本発明のプロンプターにおいて、前記表示ユニットと前記結像レンズとを保持する筐体を備えた構成とすることが望ましい。
この構成によれば、筐体によって表示ユニットと結像レンズとの位置関係が固定されるとともに、表示ユニットと結像レンズを保護することができ、取り扱いがしやすいプロンプターを構成できる。
【0016】
本発明のプロンプターにおいて、前記結像レンズから射出される光の光路上に設けられた反射手段を備え、前記実像としての空間像が、前記反射手段の光射出側に生成される構成としても良い。
この構成によれば、例えば講演者から見て演台を跨いだ位置に反射手段を設置したとしても、空間像が反射手段よりも講演者側に形成され、講演者と空間像との距離が短いため、文字等の情報の大きさを小さくして多くの情報を表示することができる。逆に言えば、空間像が反射手段よりも講演者側に形成されるため、反射手段を演台から離れた場所に配置することができ、反射手段が邪魔になりにくい。
【0017】
本発明のプロンプターにおいて、前記表示ユニットが、投射型表示装置と、前記投射型表示装置で生成される画像を投射する透過型スクリーンと、を備えた構成とすることが望ましい。
この構成によれば、透過型スクリーンから射出された光を結像レンズに入射させれば良いため、投射型表示装置で投射した像を鑑賞する一般のスクリーンと比べて、視野角をはるかに狭くすることができ、その結果、スクリーンゲインを高くすることができる。そのため、投射型表示装置の光出力を大きくすることなく、明るい画像が得られる。また、画像の明るさが従来と同じで良い場合には、投射型表示装置の光出力を小さくすることができ、消費電力を低減することができる。
【0018】
本発明のプロンプターにおいて、前記透過型スクリーンが、拡散板と、前記拡散板の両面にそれぞれ設けられたフレネルレンズと、を備えた構成とすることが望ましい。
この構成によれば、透過型スクリーンが2枚のフレネルレンズを備えているので、1枚のフレネルレンズを備えた場合と比べて各フレネルレンズの焦点距離を長くすることができる。これにより、フレネルレンズを構成する微小プリズムの頂角を大きくできるため、特にフレネルレンズの周辺部において入射角が大き過ぎることで反射光が生じる虞が小さくなる。
【0019】
本発明のプロンプターにおいて、前記表示ユニットの少なくとも一部と前記結像レンズとを保持する筐体を備えた構成とすることが望ましい。
この構成によれば、筐体によって表示ユニットの少なくとも一部と結像レンズとの位置関係が固定されるとともに、表示ユニットと結像レンズを保護することができ、取り扱いがしやすいプロンプターを構成できる。
【0020】
本発明のプロンプターにおいて、前記筐体に、前記空間像の生成位置を示す指標が備えられた構成とすることが望ましい。
この構成によれば、指標を目安として使用者が空間像の位置に目のピントを合わせやすい。これにより、例えば使用者が空間像以外の場所を見ている状態から急遽空間像を見ようとする場合、空間像の位置を即座に把握して比較的容易に見ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の第1実施形態のプロンプターの使用状態を示す図である。
【図2】本実施形態のプロンプターの構成を示す側面図である。
【図3】本実施形態のプロンプターの表示ユニットを示す斜視図である。
【図4】表示ユニットを構成するスクリーンを示す図であって、(A)正面図、(B)(A)のA−A’線に沿う断面図である。
【図5】本実施形態のプロンプターの筐体を示す斜視図である。
【図6】本実施形態のプロンプターのフレネルレンズを示す図であって、(A)正面図、(B)(A)のB−B’線に沿う断面図である。
【図7】表示ユニットの取付部を示す斜視図である。
【図8】筐体の一面を構成する取付板を示す正面図である。
【図9】空間像の表示原理を説明するための図である。
【図10】表示ユニットを移動したときの空間像の位置を示す図である。
【図11】表示ユニットを傾けたときの空間像の向きを示す図である。
【図12】複数の表示ユニットにおける複数の空間像の位置と向きを示す図である。
【図13】講演者側から見た複数の空間像の位置と向きを示す図である。
【図14】講演者からの画像の見え方を説明するための図である。
【図15】本発明の第2実施形態のプロンプターの構成を示す側面図である。
【図16】本発明の第3実施形態のプロンプターの表示ユニットを示す斜視図である。
【図17】本発明の第4実施形態のプロンプターの構成を示す断面図である。
【図18】本実施形態のプロンプターの表示ユニットを構成するスクリーンを示す断面図である。
【図19】本実施形態のプロンプターのフレネルレンズを示す図であって、(A)正面図、(B)(A)のC−C’線に沿う断面図である。
【図20】空間像の表示原理を説明するための図である。
【図21】本発明の第5実施形態のプロンプターの構成を示す断面図である。
【図22】本実施形態のプロンプターの筐体に設けられた指標を示す正面図である。
【図23】本発明の第6実施形態のプロンプターの構成を示す断面図である。
【図24】本発明の第7実施形態のプロンプターの構成を示す断面図である。
【図25】従来のプロンプターの問題点を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
[第1実施形態]
以下、本発明の第1実施形態について、図1〜図14を用いて説明する。
図1は、本実施形態のプロンプターの使用状態を示す図である。図2は、本実施形態のプロンプターの構成を示す側面図である。
なお、以下の全ての図面においては各構成要素を見やすくするため、構成要素によって寸法の縮尺を異ならせて示すことがある。
【0023】
本実施形態のプロンプター1は、図1に示すように、講演会などの会場において聴衆席2の後方に設置されており、演台3の上方の講演者Kの視線方向に空間像Zを形成するものである。講演者Kは、プロンプター1の方向を見ることで空間像Zを見ることができ、講演の補助となる原稿の文字情報を空間像Zとして見ながら講演を行うことができる。講演者Kは、プロンプター1の方向を見ない限り、空間像Zを見ることはできない。よって、講演者Kの方を向いている聴衆からは空間像Zが見えないようになっている。
【0024】
プロンプター1は、図2に示すように、表示ユニット4と、フレネルレンズ5(結像レンズ)と、筐体6と、を備えている。表示ユニット4は、プロジェクター7(投射型表示装置)と、スクリーン8と、から構成されている。講演者から見て手前側(光が射出される側)の面をプロンプター1の前面、講演者から見て奥側(光が射出される側と反対側)の面をプロンプター1の後面と呼ぶことにすると、プロンプター1の外殻を構成する筐体6の前面にフレネルレンズ5が設けられ、筐体6の後面には表示ユニット4が設置されている。
【0025】
表示ユニット4は、図3に示すように、プロジェクター7と、スクリーン8と、底板9と、を備えている。プロジェクター7とスクリーン8とは、所定の間隔を空けて底板9の上に固定されている。プロジェクター7には、図示しないパーソナルコンピューターやカメラ等の機器が接続され、これらの機器から画像信号が入力される。プロジェクター7ではこの画像信号に基づいて画像が生成され、その画像がスクリーン8に投射される。底板9には、表示ユニット4を後述する取付治具に固定するためのネジ穴10が設けられている。
【0026】
スクリーン8は、図4(A)、(B)に示すように、フレネルレンズ11と拡散シート12とが密着して貼り合わされたものであり、一種のリアスクリーンとして構成されている。スクリーン8は、フレネルレンズ11の側がプロジェクター7を向くように設置されており、プロジェクター7からの投射光はフレネルレンズ11に入射する。フレネルレンズ11は複数のプリズム13が微小な間隔で同心円状に設けられた構成であり、これら複数のプリズム13が全体として凸レンズを構成している。なお、拡散シートの両面にフレネルレンズがそれぞれ貼り合わされたスクリーンを用いても良い。フレネルレンズを2枚備えたスクリーンを用いた場合、フレネルレンズが1枚の場合に比べて各フレネルレンズの焦点距離を長くできるため、各プリズムの頂角を大きくできる。そのため、特にフレネルレンズの周縁部に光が入射する際、入射角が大きすぎて反射光が生じるのを抑えやすくなる。
【0027】
プロジェクター7から射出された投射光はスクリーン8に入射する前は拡散光であるが、フレネルレンズ11の作用により光軸方向にある程度集束された状態で拡散シート12に入射する。拡散シート12では投射光が結像し、像が形成された後、予め設定された角度で投射光が拡散する。なお、フレネルレンズ11は、空間像Zの見え方が最適になるように焦点距離を設定すれば良い。また、拡散シート12の側がプロジェクター7を向くように設置され、プロジェクター7からの投射光が拡散シート12に入射する構成であっても良い。その場合も上記とほぼ同等な機能を実現することができる。
【0028】
筐体6は、図5に示すように、表示ユニット4とフレネルレンズ5とを保持する箱状の部材である。筐体6の前面は開口部14となっており、天面と両側面には開閉可能な扉15が設けられている。通常、使用状態では扉15を閉じた状態とするが、扉15を開けた状態とすれば、プロンプター1の使用者は例えば表示ユニット4の位置調整等の作業を行うことができる。筐体6の前面の開口部14には、図2に示すように、フレネルレンズ5が嵌め込まれている。一方、筐体6の後面は後述する取付板16となっており、取付板16には取付治具17を介して表示ユニット4が取り付けられている。
【0029】
フレネルレンズ5は、図6(A)、(B)に示すように、微小な間隔で同心円状に設けられた複数のプリズム18を有している。フレネルレンズ5の基本構成はスクリーン8の一部を構成するフレネルレンズ11と同様であるが、全体の寸法、各プリズム18の寸法や焦点距離が異なっている。
【0030】
取付治具17(光軸位置調整手段、光軸方向調整手段)は、図7に示すように、固定部19と、前後移動部20と、左右移動部21と、回転部22と、を備えている。L字状の固定部19の上面に矩形板状の前後移動部20が設けられ、前後移動部20の上面に矩形板状の左右移動部21が設けられ、左右移動部21の上面に円板状の回転部22が設けられている。固定部19の上面にはガイドレール23が前後方向に延在しており、前後移動部20とその上に載置された左右移動部21および回転部22とがガイドレール23に沿って前後方向にスライドし、所定の位置で固定できる構成となっている。前後移動部20の上面にはガイドレール24が左右方向に延在しており、左右移動部21とその上に載置された回転部22とがガイドレール24に沿って左右方向にスライドし、所定の位置で固定できる構成となっている。回転部22は、左右移動部21の上面において板面に垂直な回転軸J1を中心として回転し、所定の角度で固定できる構成となっている。
【0031】
筐体6の後面は、図8に示すように、複数のネジ穴25が一定間隔で設けられた取付板16となっている。また、図7に示した固定部19の後板19aには取付治具17の全体を取付板16に固定するためのネジ穴26が設けられている。これにより、取付板16の複数のネジ穴25のうち、いずれのネジ穴25を用いるかによって、筐体6に対する取付治具17、すなわち表示ユニット4の位置を変えることができる。また、回転部22の上面には、表示ユニット4の底板9を固定するためのネジ孔27が設けられている。よって、回転部22の上面に表示ユニット4を固定した状態で回転部22を回転させることにより、表示ユニット4の向き、すなわちスクリーン8からの光の投射方向を変えることができる。
【0032】
筐体6に対するフレネルレンズ5の位置は固定されているため、取付板16のネジ穴25を適宜選択することでフレネルレンズ5に対する表示ユニット4の相対位置を調整でき、フレネルレンズ5の光軸に対する表示ユニット4の光軸の位置を調整することができる。さらに、回転部22の回転角度を適宜調整することでフレネルレンズ5に対する表示ユニット4の向きを調整でき、フレネルレンズ5の光軸に対する表示ユニット4の光軸の方向を調整することができる。
【0033】
以下、上記構成のプロンプター1で空間像が生成される原理について説明する。
図9は、図2に示すプロンプター1を上側から見た図であり、プロンプター1の構成要素のうち、スクリーン8とフレネルレンズ5のみを取り出して示している。この例では、スクリーン8の光軸とフレネルレンズ5の光軸とは一致している。なお、スクリーン8の光軸とは、スクリーン8の投射面の中心を通り、スクリーン8の投射面に垂直な軸のことである。
【0034】
ここで、スクリーン8からフレネルレンズ5までの距離をa、フレネルレンズ5の焦点距離をfとすると、フレネルレンズ5から生成される空間像Zまでの距離bは、b=a×f/(a−f)で求められる。すなわち、筐体6の前面のフレネルレンズ5から距離bだけ離れた位置に、スクリーン上の画像が空間像Zとして表示されることになる。また、光の射出側(講演者側)から見てスクリーン8の左側(図9の下側)からフレネルレンズ5の右端に向かった光線p0はフレネルレンズ5で曲げられ、光線p1となって図9の右側に向かう。同様に、光線q0は光線q1、光線r0は光線r1となり、空間像Zの位置ではスクリーン8の位置に対して像の左右が反転する。また、図9の奥行き方向に相当する像の上下方向についても、空間像Zの位置ではスクリーン8の位置に対して像が反転する。
【0035】
したがって、表示ユニット4のスクリーン8上で上下左右が反転した画像を表示するようにプロジェクター1を設定しておけば、空間像Zの上下左右は正しく表示され、講演者は文字情報等を支障なく見ることができる。また、光の射出側から見てスクリーンの右側(図9の上側)からフレネルレンズ5の左端に向かった光線s0,t0,u0についてもそれぞれ光線s1,t1,u1となり、上記と同様である。なお、これらの光線はフレネルレンズ5の両端への光線を説明したものであり、実際の光線はフレネルレンズ5の全体を通って空間像Zの位置に結像するものである。
【0036】
ここで、空間像Zを見る場合、空間像Zを生成する光線はフレネルレンズ5を通して来るものであるから、空間像Zの位置の奥側にフレネルレンズ5が見える位置でなければ空間像Zを見ることができない。すなわち、空間像Zの右端を見るには、フレネルレンズ5の右端と空間像Zの右端を結ぶ光線p1とフレネルレンズ5の左端と空間像Zの右端を結ぶ光線u1との範囲内でなければならない。同様に、空間像Zの左端を見るには、フレネルレンズ5の左端と空間像Zの左端を結ぶ光線s1とフレネルレンズ5の右端と空間像Zの左端を結ぶ光線s1との範囲内でなければならない。したがって、空間像Zの全体が見えるのは、光線p1と光線s1とが交差した後の領域(図9に斜線で示した領域)ということになる。以下、このような空間像Zの全体が見える領域のことを「適視範囲T」と称する。
【0037】
図10は、光の射出側(講演者側)から見てフレネルレンズ5に対してスクリーン8(表示ユニット4)を左側(図10の下側)に移動させた場合の空間像Zの位置を示している。スクリーン8を移動させるということは、図9においてスクリーン8のサイズを大きくしたことと等価である。すなわち、空間像Zはスクリーン8上の像に対してb/aの倍率のサイズとなるため、空間像Zは右側(図10の上側)の方向に、スクリーン8の移動距離のb/a倍の位置に移動する。また、この場合の適視範囲は図9の場合と同様に考えられ、符号T1の領域となる。
【0038】
図11は、フレネルレンズ5に対してスクリーン8(表示ユニット4)を傾けた場合を示し、この例では光の射出側(講演者側)から見てスクリーン8の右端を奥側(図11のスクリーン8の上端を左側)に、スクリーン8の左端を手前側(図11のスクリーン8の下端を右側)に傾けた場合の空間像Zの位置を示している。この場合、シャインプルーフの法則で示されるように、フレネルレンズ5のレンズ面の延長線とスクリーン8の投射面の延長線との交点Aを空間像Zの形成面の延長線が通ることになる。すなわち、空間像Zは、講演者側から見て空間像Zの右端が手前側(図11の空間像Zの上端が右側)に、空間像Zの左端が奥側(図11の空間像Zの下端が左側)に傾いて形成される。さらに、空間像Zは、スクリーン8の中心とフレネルレンズ5の中心とを結ぶ直線L1上に位置する。この場合の適視範囲は符号T2の領域となる。
【0039】
以上の説明では、1つのフレネルレンズ5に対して1組の表示ユニット4が対応している例を挙げた。これに対して、1つのフレネルレンズ5に対して複数組(具体的には3組)の表示ユニット4が対応している例を図12に示す。各表示ユニット4に対応する空間像は上記の表示原理に従って生成され、スクリーン8A上の像は空間像ZA、スクリーン8B上の像は空間像ZB、スクリーン8C上の像は空間像ZCとして生成される。
【0040】
例えば図12に示したような各スクリーン8A,8B,8Cの位置および角度は、前述したように、筐体6の取付板16に対する取付治具17の取り付け位置、および取付治具17の位置調整、角度調整によって任意に設定することができる。この例では、スクリーン8Aおよびスクリーン8Bはフレネルレンズ5の光軸に対して垂直に設置されているが、スクリーン8Cはフレネルレンズ5の光軸に対して傾けて設置されている。各空間像ZA,ZB,ZCの適視範囲は、それぞれ符号TA、符号TB、符号TCの領域となる。
【0041】
図13には、このようにして形成される3つの空間像ZA,ZB,ZCとプロンプター1との位置関係を示す。図14には、講演者Kから見た各空間像ZA,ZB,ZCの様子を示す。これらの図に示す例では、講演者Kは、中央の空間像ZBの奥側にフレネルレンズ5が見える位置に立っており、空間像ZBの全体を見ることができる。空間像ZA,ZCも形成されてはいるが、この位置では講演者Kは見ることができない。したがって、講演者Kは、フレネルレンズ5に空間像ZAが重なる位置まで左側に移動すれば、空間像ZAを見ることができる。同様に、フレネルレンズ5に空間像ZCが重なる位置まで右側に移動すれば、空間像ZCを見ることができる。
【0042】
図12に示したように、空間像ZCは左端が講演者Kの手前側に傾いているため、講演者Kがフレネルレンズ5の方向を向いたとき、空間像ZCは空間像ZAに比べて講演者Kに正対する状態となる。したがって、例えば空間像ZAを見たときには横向きの台形歪みが気になったとしても、空間像ZCを見たときには横向きの台形歪みを感じにくくなる。そして、例えば3つの空間像ZA,ZB,ZCとして、それぞれに異なる原稿を表示させれば、講演者Kは立つ位置を移動して異なる原稿を見ながら講演を進めることができる。
【0043】
なお、講演者Kは、適視範囲T内に立てば、それに対応した空間像Zの全体を見ることができる。しかしながら、講演者Kは、適視範囲T外で空間像Zの一部しかフレネルレンズ5と重ならない位置に立ったとしても、空間像Zのうち、フレネルレンズ5と重なった部分だけは見ることができる。したがって、空間像Zの見えた部分を目安として身体をいずれかの方向に少し移動させれば、空間像Z全体が見えるようになるため、空間像Zの位置を探しやすい。
【0044】
本実施形態のプロンプター1によれば、講演者Kは、フレネルレンズ5の光射出側から実像としての空間像Zを視認できるので、講演者Kが見る像の位置が従来のプロンプターに比べて近くなる。これにより、従来に比べて文字等の情報の大きさをスクリーン8上で小さくでき、多くの情報を表示することができる。その結果、表示画面を頻繁に切り替えることなく、表示する情報量を増やすことができ、講演者Kが複数の情報を選択的に見ながら講演を円滑に進めることができる。また、講演者Kが近視の場合でも表示する画像を見やすくすることができる。
【0045】
特に本実施形態の場合、図1に示すように、講演者Kの近傍にハーフミラーを配置する必要がないため、聴衆Cから講演者Kの顔や姿が見やすく、講演者Kからも聴衆Cが見やすくなる。また、講演者Kが指し棒等を使用する場合でも、指し棒がハーフミラーにぶつかる心配がない。
【0046】
また、空間像Zの位置を表示ユニット4の取付治具17によって調整できるので、表示したい位置に空間像Zを容易に表示させることができる。そのため、講演の進行に応じて、必要となる情報を予め講演者の立ち位置に合わせて表示しておくことで、表示する空間像を切り替える頻度を少なくすることができる。例えば、講演者が他の大型スクリーン上の画像を指し示しながら説明を行うような場合、講演者がその画像を指し示しやすい立ち位置から見える位置に、その画像に関連する説明原稿等の情報を表示しておくことができる。
【0047】
また、フレネルレンズ5を前面に設置した筐体6の内部に表示ユニット4を収納したため、スクリーン8やフレネルレンズ5の内側に入射する照明光などの影響を低減することができる。そのため、表示される空間像Zのコントラストの低下を抑えることができる。
【0048】
なお、本実施形態では、3組の表示ユニット4を備え、3つの空間像ZA,ZB,ZCを表示する例を示したが、空間像の数はこれに限ることなく、任意に選択することができる。また、複数の空間像を左右方向に並べて表示する例を示したが、複数の空間像を上下方向に並べることもできる。
【0049】
[第2実施形態]
以下、本発明の第2実施形態について、図15を用いて説明する。
本実施形態の基本構成は第1実施形態と共通であり、筐体の内部で光路を折り曲げている点が異なっている。
したがって、図15において第1実施形態の図2と共通な構成要素には同一の符号を付し、説明を省略する。
【0050】
本実施形態のプロンプター31は、図15に示すように、表示ユニット4と、フレネルレンズ5(結像レンズ)と、ミラー32と、筐体33と、を備えている。本実施形態では、取付板16が筐体33の底面をなしており、取付板16の外面に脚部34が設けられている。フレネルレンズ5が筐体33の前面側の開口部35に設置されている点は第1実施形態と同様である。この構成により、プロンプター31は、脚部34を下方に向けて床もしくは机の上等に置いて使用する形態となる。よって、表示ユニット4を構成するプロジェクター7の投射レンズが上方を向き、プロジェクター7は上方に向けて光を投射する。
【0051】
プロジェクター7から射出される投射光の光路上にミラー32が設けられている。このため、プロジェクター7からの投射光はスクリーン8上で結像された後、ミラー32によってその光路を折り曲げられる。ミラー32を経た光はフレネルレンズ5に入射し、フレネルレンズ5で結像されて講演者の前方に空間像が生成される点は第1実施形態と同様である。
【0052】
本実施形態のプロンプター31においても、表示画面を頻繁に切り替えることなく、表示する情報量を増やすことができるといった第1実施形態と同様の効果が得られる。さらに本実施形態では、スクリーン8からフレネルレンズ5に至る光の光路をミラー32で折り曲げているため、筐体33の奥行き方向の寸法を小さくすることができる。そのため、プロンプター31を比較的狭い場所でも使用することができる。
【0053】
[第3実施形態]
以下、本発明の第3実施形態について、図16を用いて説明する。
本実施形態のプロンプターの構成は第1実施形態と共通であり、表示ユニットの構成のみが異なっている。
【0054】
第1、第2実施形態では、表示ユニットがプロジェクターとスクリーンで構成されていたのに対し、本実施形態では、図16に示すように、表示ユニット39がフラットパネルディスプレイ38で構成されている。フラットパネルディスプレイ38としては、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ等を用いることができる。この種のフラットパネルディスプレイ38が底板9に固定されている。すなわち、本実施形態の表示ユニット39は、第1、第2実施形態においてスクリーンが設けられた位置に、スクリーンに代えて、フラットパネルディスプレイ38が設けられたものである。その他の構成は第1、第2実施形態と同様である。
【0055】
本実施形態のプロンプターにおいても、表示画面を頻繁に切り替えることなく、表示する情報量を増やすことができるといった第1、第2実施形態と同様の効果が得られる。なお、一般的にフラットパネルディスプレイは直視で見やすいように視野角が広く設計されている。しかしながら、本実施形態に適用する場合、例えばフラットパネルディスプレイ38の前面側にフレネルレンズ等の凸レンズ系の光学素子を設け、射出される光線の角度を狭めるようにすれば、空間像の明るさを向上させることができる。
【0056】
[第4実施形態]
以下、本発明の第4実施形態について、図17〜図20を用いて説明する。
第1〜第3実施形態のプロンプターはハーフミラーを備えていない構成であったのに対し、本実施形態のプロンプターはハーフミラーを備えている点で第1〜第3実施形態と異なっている。
【0057】
本実施形態のプロンプター41は、図17に示すように、講演会等の会場において講演者Kから見て演台3を跨いだ位置に設置されており、講演者Kと後述するハーフミラー42との間の空間に空間像Zを形成するものである。講演者Kは、ハーフミラー42の方向を見ることで空間像Zを見ることができ、講演の補助となる原稿の文字情報を空間像として見ながら講演を行うことができる。
【0058】
プロンプター41は、表示ユニット43と、ミラー44と、フレネルレンズ45(結像レンズ)と、ハーフミラー42(反射手段)と、を備えている。表示ユニット43は、プロジェクター46(投射型表示装置)と、スクリーン47と、から構成されている。表示ユニット43は床面Yの近傍に設置され、プロジェクター46とスクリーン47とは所定の間隔を空けて設置されている。プロジェクター46からの投射光は、略水平方向に向けて射出され、スクリーン47上で結像されて像が生成される。プロジェクター46には、図示しないパーソナルコンピューターやカメラ等の機器が接続され、これらの機器から画像信号が入力される。プロジェクター46では画像信号に基づいて画像が生成され、その画像がスクリーン47に投射される。
【0059】
スクリーン47は、図18に示すように、拡散シート12(拡散板)の両面にフレネルレンズ11がそれぞれ密着して貼り合わされたものであり、一種のリアスクリーンとして構成されている。スクリーン47の平面形状は、例えば正方形でも良いし、プロジェクター46から投射する画像のアスペクト比に対応させた長方形でも良い。フレネルレンズ11は複数のプリズム13が微小な間隔で同心円状に設けられた構成であり、これら複数のプリズム13が全体として凸レンズを構成している。
【0060】
プロジェクター46からの投射光が図18の左側からスクリーン47に入射すると、入射前に拡散光線であった光が入射側のフレネルレンズ11によって集束され、平行光線に近い形状で拡散シート12に入射する。拡散シート12では投射光の像が結像されるとともに、所定の拡散角度で光が拡散し、さらに射出側のフレネルレンズ11によって全体の光線が広がりすぎないように調整されて射出される。なお、この例ではフレネルレンズ11を2枚備えたスクリーン47を例示したが、フレネルレンズを1枚のみ備えたスクリーンを用いても良い。ただし、フレネルレンズ11を2枚備えたスクリーン47を用いた場合、フレネルレンズが1枚の場合に比べて各フレネルレンズ11の焦点距離を長くできるため、各プリズム13の頂角を大きくすることができる。そのため、特にフレネルレンズ11の周縁部に光が入射する際、入射角が大きすぎて反射光が生じるのを抑えやすくなる。
【0061】
ここで、スクリーン47からの射出光はフレネルレンズ45にさえ入射すれば良いため、本実施形態のスクリーン47の場合、投射面上の像を直接鑑賞する一般のプロジェクター用スクリーンの場合と比べて視野角を十分に狭くすることができる。これにより、スクリーンゲインを高くすることができる。例えば、一般のスクリーンの視野角が120度程度であるのに対し、本実施形態のスクリーン47の視野角は例えば25度程度で良い。したがって、本実施形態ではスクリーンゲインを従来一般の23倍程度に高くすることができる。そのため、同じ明るさを得るのに必要なプロジェクター46の光出力は従来一般の1/23程度で済み、消費電力の低減が図れる。
【0062】
さらに、スクリーン47のサイズも例えば15インチ程度で良いため、本実施形態のプロジェクター46の光出力は、100インチ程度のスクリーンに使用する従来のプロジェクターの光出力の1/44程度で済む。すなわち、スクリーン47の視野角を狭くできる効果とサイズを小さくできる効果を合わせると、本実施形態のプロジェクター46の光出力は従来のプロジェクターの光出力の1/1000程度で済む。実際には、フレネルレンズ45やハーフミラー42の効率を考慮する必要があるが、それらを1/10としても、プロジェクター46の光出力は従来のプロジェクターの光出力の1/100程度で良い。したがって、プロジェクター46として、例えば発光ダイオード(LED)を光源とした小型プロジェクターを使用することができる。
【0063】
図17に示すように、スクリーン47から射出された光の光路上にミラー44が設置されている。このミラー44により、スクリーン47からの射出光の光路は鉛直方向上方に折り曲げられる。また、ミラー44で反射した光の光路上にフレネルレンズ45が設置されている。フレネルレンズ45は、図19(A)、(B)に示すように、微小な間隔で同心円状に設けられた複数のプリズム48を有している。フレネルレンズ45の基本構成はスクリーン47の一部を構成する上記のフレネルレンズ11と同様であるが、全体の寸法、各プリズムの寸法や焦点距離が異なっている。スクリーン47からの射出光はフレネルレンズ45によって結像され、スクリーン47上の像の空間像が実像として生成される。
【0064】
図17に示すように、フレネルレンズ45から射出された光の光路上で、フレネルレンズ45と空間像Zとの間にハーフミラー42が設置されている。このハーフミラー42により、フレネルレンズ45から鉛直方向上方に射出された光が反射され、光路は概ね水平方向(講演者K側)に折り曲げられる。これにより、講演者Kとハーフミラー42との間の空中に空間像Zが実像として形成される。講演者Kがハーフミラー42の方向を見ると、空間像Zが空中に浮かんで見えることになる。ここで見える空間像Zはスクリーン47を直接見た場合と比べて上下左右が反転した像となる。したがって、プロジェクター46で予め上下左右を反転させた像を作っておくことにより、講演者Kは元のパーソナルコンピューターやカメラ等で生成された画像をそのまま見ることができる。
【0065】
ここで、生成される空間像Zについて、図20を用いて説明する。
図20は、図17からミラー44とハーフミラー42を取り除き、プロンプター41の構成を直線系で表したものである。この例では、スクリーン47の光軸とフレネルレンズ45の光軸とは一致している。なお、スクリーン47の光軸とは、スクリーン47の投射面の中心を通り、スクリーン47の投射面に垂直な軸のことである。
【0066】
ここで、スクリーン47からフレネルレンズ45までの距離をa、フレネルレンズ45の焦点距離をfとすると、フレネルレンズ45から空間像Zまでの距離bは、b=a×f/(a−f)で求められる。すなわち、フレネルレンズ45から距離bだけ離れた位置に、スクリーン47上の画像が空間像Zとして表示されることになる。また、スクリーン47上の像のサイズに対する空間像Zのサイズの拡大率mは、m=b/aとなる。これらの値は、必要とするプロンプターの全体のサイズに応じて適宜決定すればよい。
【0067】
スクリーン47上の点Pa、点Qa、点Raは、それぞれ点Pb、点Qb、点Rbとして空間像Zの位置に結像される。空間像Zの位置での各点Pb、Qb、Rbの光線は、フレネルレンズ45の全体を通して結像されているため、各点Pb、Qb、Rbにおける最も外側の光線は図20に示すような広がりを持つ。よって、点Pb、点Qb、点Rbを通った光線の広がりの重なる領域から空間像Zを見れば、空間像Zの全体が見えることになるため、この領域が適視範囲Tとなる。すなわち、適視範囲Tが講演者の眼の位置に対応するようにすれば、講演者は空間像Zの全体を見ることができる。なお、図17は図20の構成にミラー44とハーフミラー42を挿入したものであり、上記の結像関係はそのまま保たれる。
【0068】
本実施形態のプロンプター41によれば、図17に示したように、空間像Zがハーフミラー42よりも講演者K側に実像として形成されるため、ハーフミラー42を演台3から離れた位置に設置しても、講演者Kが空間像Zを見にくくなることが避けられる。一方、従来のプロンプターでは、図25に示すように、講演者Kは、ハーフミラー142の奥にある、自身からかなり遠い位置に形成された虚像Qを見ることになるため、大きい文字で原稿を表示せざるを得なかった。そのため、表示する情報量を増やすためには表示画面を頻繁に切り替えなければならないという問題があった。
【0069】
図17と図25を比較すると明らかなように、本実施形態のプロンプター41によれば、講演者Kが見る空間像Zの位置が従来のプロンプターに比べてはるかに近くなる。これにより、従来に比べて文字等の情報の大きさをスクリーン47上で小さくでき、多くの情報を表示することができる。その結果、表示画面を頻繁に切り替えることなく、表示する情報量を増やすことができ、講演者Kが円滑に講演を進めることができる。また、講演者Kが近視の場合でも表示する画像を見やすくすることができる。
【0070】
逆に言えば、本実施形態のプロンプター41によれば、講演者Kが文字等の情報を十分に見える範囲で、従来よりもハーフミラー42を講演者Kから遠い位置に配置することができる。そのため、聴衆が講演者Kを見る場合にハーフミラー42が邪魔になりにくく、講演者Kの顔や姿を直接見やすくなる。また、例えば講演者Kが他の大型スクリーンや掲示物等を指し棒で指し示しながら説明するような場合、指し棒がハーフミラー42にぶつかるのを避けることができる。
【0071】
また、講演者Kはハーフミラー42の手前に結像した実像である空間像Zを見るため、眼の焦点は実像の位置に合うことになる。したがって、ハーフミラー42に汚れがある場合にも、像を見るのに邪魔になりにくい。
さらに、スクリーン47の拡散角度を小さくできるので、プロジェクター46の光出力が十分小さくても明るい画像が得られる。さらに、プロジェクター46を小型化し、光源による排熱を小さくすることができるため、排熱による騒音も小さくすることができる。
【0072】
[第5実施形態]
以下、本発明の第5実施形態について、図21、図22を用いて説明する。
本実施形態の基本構成は第4実施形態と同様であり、各構成要素を収容する筐体を備えた点が異なっている。
したがって、図21において第4実施形態の図17と共通な構成要素には同一の符号を付し、説明を省略する。
【0073】
本実施形態のプロンプター51は、図21に示すように、プロジェクター46とスクリーン47とからなる表示ユニット43と、ミラー44と、フレネルレンズ45(結像レンズ)と、ハーフミラー42と、筐体52と、を備えている。筐体52の内部に、表示ユニット43とミラー44とフレネルレンズ45とが収容され、筐体52の上部に、ハーフミラー42が固定されている。表示ユニット43とミラー44とフレネルレンズ45とは筐体52に固定されており、これら構成要素相互の位置関係が固定されている。
【0074】
筐体52の上面の講演者K側の位置には、空間像Zの位置を示す指標53が設けられている。指標53は、図22に示すように、講演者K側から見てT字状の形状であり、鉛直方向に延びる棒状部53aと、棒状部53aの先端に設けられた水平方向に延びる棒状部53bとを有している。棒状部53bの位置は空間像Zの形成位置に略一致している。
【0075】
本実施形態のプロンプター51においても、表示する情報が見やすく、情報量を増やすことができるといった第4実施形態と同様の効果が得られる。また、筐体52によって表示ユニット43とフレネルレンズ45との位置関係が固定されるとともに、表示ユニット43とフレネルレンズ45を保護することができ、取り扱いがしやすいプロンプターを構成できる。
【0076】
また、空間像Zの位置を示す指標53が備えられているため、指標53を目安として講演者Kが空間像Zの位置に眼の焦点を合わせやすい。これにより、例えば講演者Kが空間像Z以外の場所を見ている状態から空間像Zを見ようとする場合、空間像Zの位置を即座に探すことができる。
【0077】
また、指標53が棒状の部材で構成されているため、目立ちにくく、聴衆が講演者Kを見るのに邪魔になりにくい。さらに、指標53が筐体52の一部に固定されているため、指標53は常に空間像Zの形成位置からずれることがなく、筐体52を移動させても空間像Zの位置を容易に把握することができる。なお、指標53の形状については、本実施形態に限定されることなく、種々の形状とすることが可能である。
【0078】
[第6実施形態]
以下、本発明の第6実施形態について、図23を用いて説明する。
本実施形態の基本構成は第5実施形態と類似しているが、プロジェクターが演台に内蔵された点が異なっている。
図23において、第5実施形態の図21と共通な構成要素には同一の符号を付し、説明を省略する。
【0079】
本実施形態のプロンプター56は、図23に示すように、プロジェクター46とスクリーン47とからなる表示ユニット43と、ミラー44と、フレネルレンズ45(結像レンズ)と、ハーフミラー42と、筐体57と、を備えている。ただし、本実施形態においては、表示ユニット43のうち、プロジェクター46は演台3に内蔵され、スクリーン47は筐体57に内蔵されている。
【0080】
プロジェクター46は演台3の内部に固定されており、演台3の前面にはプロジェクター46からの投射光を射出させるための開口部3aが設けられている。演台3の底面には、演台3を移動させるためのキャスター58が設けられている。
【0081】
一方、筐体57にはスクリーン47よりも後段の構成要素が内蔵されており、これらが筐体57に固定されている。筐体57には、演台3の開口部3aに対向する位置にプロジェクター46からの投射光を入射させるための開口部57aが設けられている。筐体57の底面には、筐体57を移動させるためのキャスター59が設けられている。また、筐体57の下部には、位置決め部材60が設けられている。位置決め部材60は、筐体57から演台3の方向に突出して開口部57aを囲む筒状の部材で構成されている。
【0082】
本実施形態のプロンプター56においても、表示する情報が見やすく、情報量を増やすことができるといった第4、第5実施形態と同様の効果が得られる。
特に本実施形態の場合、演台3と筐体57とは分離できる構造であるため、例えばプロンプター56を使用しない場合には演台3と筐体57を別個に移動し、容易に片付けることができる。また、プロンプター56を使用する場合には、プロジェクター46からの投射光がスクリーン47上に確実に結像されるように、演台3と筐体57とを所定の位置関係に配置する必要がある。このとき、位置決め部材60の先端を演台3に当接させることで演台3と筐体57とが位置決めされるため、プロジェクター46とスクリーン47との位置決めを簡単に行うことができる。
【0083】
また、位置決め部材60が開口部57aを覆っているため、位置決め部材60によって筐体57の内部への外光の入射を防ぐことができる。その結果、表示される空間像Zのコントラストを向上させることができる。ただし、空間像Zのコントラスト向上効果を求めないのであれば、必ずしも位置決め部材が開口部を覆う形状とする必要はなく、位置決め部材の形状や位置を適宜決定すればよい。
【0084】
[第7実施形態]
以下、本発明の第7実施形態について、図24を用いて説明する。
本実施形態の基本構成は第5、第6実施形態と類似しているが、筐体が天井に設置された点が異なっている。
図24において、第5実施形態の図21と共通な構成要素には同一の符号を付し、説明を省略する。
【0085】
本実施形態のプロンプター61は、図24に示すように、プロジェクター46とスクリーン47とからなる表示ユニット43と、ミラー44と、フレネルレンズ45(結像レンズ)と、ハーフミラー42と、筐体62と、を備えている。本実施形態においては、ハーフミラー42を除く構成要素、すなわち、表示ユニット43、ミラー44、およびフレネルレンズ45が筐体62に内蔵され、筐体62が講演者Kの頭上にあたる天井Wに設置されている。また、ハーフミラー42は、支持具63を介して演台3に固定されている。
【0086】
本実施形態の場合、ミラー44によってスクリーン47からの射出光の光路は鉛直方向下方に折り曲げられる。ミラー44で反射した光の光路上にはフレネルレンズ45が設置されており、スクリーン47からの射出光はフレネルレンズ45によって結像される。フレネルレンズ45の鉛直方向下方にあたるフレネルレンズ45からの射出光の光路上にハーフミラー42が配置されており、ハーフミラー42によって光の光路は概ね水平方向に折り曲げられる。このようにして、スクリーン47上の像の空間像Zが、実像としてハーフミラー42と講演者Kとの間の空中に生成される。
【0087】
筐体62には、鉛直方向下方に向けてレーザー光もしくはスポットライトを投射するマーカー投射部64が、図24の紙面に垂直な方向に2つ設けられている。マーカー投射部64は、筐体62に対する演台3の位置を決めるための光を投射する。一方、演台3には、マーカー投射部64からの光の照射位置に対応して、位置決め用マーク65が図24の紙面に垂直な方向に2箇所設けられている。2つのマーカー投射部64からの光が2箇所の位置決め用マーク65にそれぞれ照射されるように、キャスター58によって演台3の位置や向きを調整すれば、筐体62に対してハーフミラー42を正しい位置に設置することができる。なお、ハーフミラー42を位置合わせした後はマーカー投射部64からの光の投射を停止すれば良い。
【0088】
また、演台3に対して支持具63を保持するための保持部66には、支持具63を上下移動可能とする機構が備えられている。これにより、例えば空間像Zの位置を高くしたい場合には、支持具63を上昇させてハーフミラー42の位置が高くなるように調整すればよい。さらに、保持部66には、支持具63を水平移動可能とする機構が備えられている。これにより、フレネルレンズ45からの投射光がハーフミラー42に入射する位置を微調整することができる。なお、ハーフミラー42の水平方向の位置を変えると、空間像Zの高さも変わる。その場合には、保持部66の上下移動機構を用いて空間像Zの高さを再調整すれば良い。
【0089】
本実施形態のプロンプター61においても、表示する情報が見やすく、情報量を増やすことができるといった第4〜第6実施形態と同様の効果が得られる。また、演台3の前に筐体62を設置する必要がないため、演台3の周辺を広く使うことができる。また、演台3の前にスペースが取れないような場合にも好適に用いることができる。
【0090】
本実施形態の場合、プロンプター61の筐体が天井Wに設置されるため、フレネルレンズ45の周辺が聴衆から見える虞がある。しかしながら、フレネルレンズ4上では像は結像しておらず、さらにフレネルレンズ45から射出される光がハーフミラー42以外の部分に広がることはほとんどない。そのため、聴衆からフレネルレンズ45が直接見えたとしても、表示されている空間像Zが見えることはない。
【0091】
なお、本発明の技術範囲は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば上記第1〜第3実施形態において、電動アクチュエーター等の駆動手段を用いて表示ユニットの取付治具をリモートコントロールできる構成としても良い。そのようにすれば、講演者の立ち位置で実際の空間像を見ながら空間像の位置や向きを調整することができる。さらに、プロジェクターの投射レンズの近傍にフォトセンサーを設け、表示ユニットの取付治具を自動的に移動可能に構成しても良い。そのようにすれば、講演者が空間像を表示させたい位置に発光素子を置き、発光素子の射出光を筐体の方に向ければ、表示ユニットの位置を自動的に最適化できるように構成することができる。
【0092】
その他、プロンプターの各構成要素の形状、数、配置等の具体的な構成は、上記実施形態に限ることなく、適宜変更が可能である。
【符号の説明】
【0093】
1,31,41,51,56,61…プロンプター、4,39,43…表示ユニット、5,45…フレネルレンズ(結像レンズ)、6,33,52,57,62…筐体、7,46…プロジェクター(投射型表示装置)、8,8A,8B,8C,47…スクリーン、11…フレネルレンズ、12…拡散シート(拡散板)、17…取付治具(光軸位置調整手段、光軸方向調整手段)、38…フラットパネルディスプレイ、42…ハーフミラー(反射手段)、53…指標、Z,ZA,ZB,ZC…空間像。
【技術分野】
【0001】
本発明は、プロンプターに関する。
【背景技術】
【0002】
プロンプターは、例えば講演会等において講演者を補助するために、講演者が聴衆の方向を向いたまま原稿を読むことができるようにした装置である。プロンプターは、画像を生成する表示装置に液晶パネルが用いられることが多いが、液晶パネルは一般的に輝度が低く、射出される光の拡散角が広いため、明るい画像を表示するのが難しい。また、ハーフミラーを通して講演者から聴衆が見えるように、もしくは聴衆から講演者が見えるように、ハーフミラーの反射率が低めに抑えられている。そのため、会場が明るいと画像が見にくいという問題があった。
【0003】
そこで、上記の問題を解決するために、下記の特許文献1では、投射型画像表示装置からの投射光を結像レンズによりスクリーン上に結像させて画像を生成し、ハーフミラーで反射した画像を講演者が見るようにしたプロンプターが開示されている。特許文献1には、このプロンプターでは、投射光を結像レンズの作用により近距離に配置されたスクリーン上に結像させるので、反射率が低いハーフミラーを介しても明るい画像を観察することができる、と記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−104566号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1には、近距離に配置されたスクリーンと記載されているものの、聴衆からスクリーンが目立たないようにするためにスクリーンをあまり高い位置に設置することができず、床面に近い位置に設置することになる。また、講演者の前に演台が設置されている場合には、演台を跨いだ位置にスクリーンを設置することになる。そのため、スクリーンからハーフミラーで反射して講演者の目に至るまでの光の光路長は長くならざるを得ない。このプロンプターの構成において、講演者から見える像は、ハーフミラーで反射してできるスクリーン上の像の虚像であるため、ハーフミラーとスクリーンとの間の距離と同じだけ、目とハーフミラーとを結ぶ直線を延長した延長線上の先の位置に見えることになる。
【0006】
このように、特許文献1のプロンプターでは、講演者は自身からかなり遠い位置に形成される虚像を見るため、大きい文字で原稿を表示せざるを得なかった。そのため、表示する情報量を増やすためには表示画面を頻繁に切り替えなければならない、という煩わしさがあった。また、講演者が近視の場合には、表示する文字をさらに大きくする必要があり、情報量がさらに減ってしまうという課題があった。
【0007】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであって、表示する情報量を多くすることができるプロンプターを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、本発明のプロンプターは、入力された画像信号に基づいて画像を表示する表示面を有する表示ユニットと、前記表示面上の画像の実像として空間像を生成する結像レンズと、を備え、前記結像レンズの光射出側から前記実像としての空間像を視認可能としたことを特徴とする。
【0009】
本発明によれば、使用者は、結像レンズの光射出側から実像としての空間像を視認できるので、使用者が見る像の位置が従来のプロンプターに比べて使用者に近くなる。これにより、従来に比べて文字等の情報の大きさを小さくでき、多くの情報を表示することができる。また、使用者が近視の場合でも表示する画像を見やすくすることができる。
【0010】
本発明のプロンプターにおいて、前記表示ユニットが複数設けられ、前記結像レンズが、前記複数の表示ユニットから射出される複数の光をそれぞれ結像させ、複数の画像の実像として複数の空間像を生成する構成としても良い。
この構成によれば、複数の空間像を、位置を変えて表示することができるため、複数種の情報を同時に表示し、使用者は必要な情報を選択的に見ることができる。
【0011】
本発明のプロンプターにおいて、前記表示ユニットは、投射型表示装置と、前記投射型表示装置で生成される画像が投射される透過型スクリーンと、を備えた構成とすることが望ましい。
この構成によれば、透過型スクリーンから射出された光を結像レンズに入射させれば良いため、投射型表示装置で投射した像を鑑賞する一般のスクリーンと比べて、視野角をはるかに狭くすることができ、その結果、スクリーンゲインを高くすることができる。そのため、投射型表示装置の光出力を大きくすることなく、明るい画像が得られる。また、画像の明るさが従来と同じで良い場合には、投射型表示装置の光出力を小さくすることができ、消費電力を低減することができる。
【0012】
本発明のプロンプターにおいて、前記透過型スクリーンが、拡散板と、前記拡散板の両面にそれぞれ設けられたフレネルレンズと、を備えた構成とすることが望ましい。
この構成によれば、透過型スクリーンが2枚のフレネルレンズを備えているので、1枚のフレネルレンズを備えた場合と比べて各フレネルレンズの焦点距離を長くすることができる。これにより、フレネルレンズを構成する微小プリズムの頂角を大きくできるため、特にフレネルレンズの周辺部において入射角が大き過ぎることで反射光が生じる虞が小さくなる。
【0013】
本発明のプロンプターにおいて、前記結像レンズの光軸に対する前記表示ユニットの光軸の位置を調整する光軸位置調整手段を備えた構成とすることが望ましい。
この構成によれば、光軸位置調整手段を用いて結像レンズの光軸に対する表示ユニットの光軸の位置を調整することにより、空間像の位置を使用者が見やすい位置に適宜調整することができる。
【0014】
本発明のプロンプターにおいて、前記結像レンズの光軸に対する前記表示ユニットの光軸の方向を調整する光軸方向調整手段を備えた構成とすることが望ましい。
この構成によれば、光軸方向調整手段を用いて結像レンズの光軸に対する表示ユニットの光軸の方向を調整することにより、空間像の向きを使用者が見やすい向きに適宜調整することができる。例えば使用者から見て空間像が正対する向きに調整すれば、横向きの台形歪みが少ない状態で画像を見ることができる。
【0015】
本発明のプロンプターにおいて、前記表示ユニットと前記結像レンズとを保持する筐体を備えた構成とすることが望ましい。
この構成によれば、筐体によって表示ユニットと結像レンズとの位置関係が固定されるとともに、表示ユニットと結像レンズを保護することができ、取り扱いがしやすいプロンプターを構成できる。
【0016】
本発明のプロンプターにおいて、前記結像レンズから射出される光の光路上に設けられた反射手段を備え、前記実像としての空間像が、前記反射手段の光射出側に生成される構成としても良い。
この構成によれば、例えば講演者から見て演台を跨いだ位置に反射手段を設置したとしても、空間像が反射手段よりも講演者側に形成され、講演者と空間像との距離が短いため、文字等の情報の大きさを小さくして多くの情報を表示することができる。逆に言えば、空間像が反射手段よりも講演者側に形成されるため、反射手段を演台から離れた場所に配置することができ、反射手段が邪魔になりにくい。
【0017】
本発明のプロンプターにおいて、前記表示ユニットが、投射型表示装置と、前記投射型表示装置で生成される画像を投射する透過型スクリーンと、を備えた構成とすることが望ましい。
この構成によれば、透過型スクリーンから射出された光を結像レンズに入射させれば良いため、投射型表示装置で投射した像を鑑賞する一般のスクリーンと比べて、視野角をはるかに狭くすることができ、その結果、スクリーンゲインを高くすることができる。そのため、投射型表示装置の光出力を大きくすることなく、明るい画像が得られる。また、画像の明るさが従来と同じで良い場合には、投射型表示装置の光出力を小さくすることができ、消費電力を低減することができる。
【0018】
本発明のプロンプターにおいて、前記透過型スクリーンが、拡散板と、前記拡散板の両面にそれぞれ設けられたフレネルレンズと、を備えた構成とすることが望ましい。
この構成によれば、透過型スクリーンが2枚のフレネルレンズを備えているので、1枚のフレネルレンズを備えた場合と比べて各フレネルレンズの焦点距離を長くすることができる。これにより、フレネルレンズを構成する微小プリズムの頂角を大きくできるため、特にフレネルレンズの周辺部において入射角が大き過ぎることで反射光が生じる虞が小さくなる。
【0019】
本発明のプロンプターにおいて、前記表示ユニットの少なくとも一部と前記結像レンズとを保持する筐体を備えた構成とすることが望ましい。
この構成によれば、筐体によって表示ユニットの少なくとも一部と結像レンズとの位置関係が固定されるとともに、表示ユニットと結像レンズを保護することができ、取り扱いがしやすいプロンプターを構成できる。
【0020】
本発明のプロンプターにおいて、前記筐体に、前記空間像の生成位置を示す指標が備えられた構成とすることが望ましい。
この構成によれば、指標を目安として使用者が空間像の位置に目のピントを合わせやすい。これにより、例えば使用者が空間像以外の場所を見ている状態から急遽空間像を見ようとする場合、空間像の位置を即座に把握して比較的容易に見ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の第1実施形態のプロンプターの使用状態を示す図である。
【図2】本実施形態のプロンプターの構成を示す側面図である。
【図3】本実施形態のプロンプターの表示ユニットを示す斜視図である。
【図4】表示ユニットを構成するスクリーンを示す図であって、(A)正面図、(B)(A)のA−A’線に沿う断面図である。
【図5】本実施形態のプロンプターの筐体を示す斜視図である。
【図6】本実施形態のプロンプターのフレネルレンズを示す図であって、(A)正面図、(B)(A)のB−B’線に沿う断面図である。
【図7】表示ユニットの取付部を示す斜視図である。
【図8】筐体の一面を構成する取付板を示す正面図である。
【図9】空間像の表示原理を説明するための図である。
【図10】表示ユニットを移動したときの空間像の位置を示す図である。
【図11】表示ユニットを傾けたときの空間像の向きを示す図である。
【図12】複数の表示ユニットにおける複数の空間像の位置と向きを示す図である。
【図13】講演者側から見た複数の空間像の位置と向きを示す図である。
【図14】講演者からの画像の見え方を説明するための図である。
【図15】本発明の第2実施形態のプロンプターの構成を示す側面図である。
【図16】本発明の第3実施形態のプロンプターの表示ユニットを示す斜視図である。
【図17】本発明の第4実施形態のプロンプターの構成を示す断面図である。
【図18】本実施形態のプロンプターの表示ユニットを構成するスクリーンを示す断面図である。
【図19】本実施形態のプロンプターのフレネルレンズを示す図であって、(A)正面図、(B)(A)のC−C’線に沿う断面図である。
【図20】空間像の表示原理を説明するための図である。
【図21】本発明の第5実施形態のプロンプターの構成を示す断面図である。
【図22】本実施形態のプロンプターの筐体に設けられた指標を示す正面図である。
【図23】本発明の第6実施形態のプロンプターの構成を示す断面図である。
【図24】本発明の第7実施形態のプロンプターの構成を示す断面図である。
【図25】従来のプロンプターの問題点を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
[第1実施形態]
以下、本発明の第1実施形態について、図1〜図14を用いて説明する。
図1は、本実施形態のプロンプターの使用状態を示す図である。図2は、本実施形態のプロンプターの構成を示す側面図である。
なお、以下の全ての図面においては各構成要素を見やすくするため、構成要素によって寸法の縮尺を異ならせて示すことがある。
【0023】
本実施形態のプロンプター1は、図1に示すように、講演会などの会場において聴衆席2の後方に設置されており、演台3の上方の講演者Kの視線方向に空間像Zを形成するものである。講演者Kは、プロンプター1の方向を見ることで空間像Zを見ることができ、講演の補助となる原稿の文字情報を空間像Zとして見ながら講演を行うことができる。講演者Kは、プロンプター1の方向を見ない限り、空間像Zを見ることはできない。よって、講演者Kの方を向いている聴衆からは空間像Zが見えないようになっている。
【0024】
プロンプター1は、図2に示すように、表示ユニット4と、フレネルレンズ5(結像レンズ)と、筐体6と、を備えている。表示ユニット4は、プロジェクター7(投射型表示装置)と、スクリーン8と、から構成されている。講演者から見て手前側(光が射出される側)の面をプロンプター1の前面、講演者から見て奥側(光が射出される側と反対側)の面をプロンプター1の後面と呼ぶことにすると、プロンプター1の外殻を構成する筐体6の前面にフレネルレンズ5が設けられ、筐体6の後面には表示ユニット4が設置されている。
【0025】
表示ユニット4は、図3に示すように、プロジェクター7と、スクリーン8と、底板9と、を備えている。プロジェクター7とスクリーン8とは、所定の間隔を空けて底板9の上に固定されている。プロジェクター7には、図示しないパーソナルコンピューターやカメラ等の機器が接続され、これらの機器から画像信号が入力される。プロジェクター7ではこの画像信号に基づいて画像が生成され、その画像がスクリーン8に投射される。底板9には、表示ユニット4を後述する取付治具に固定するためのネジ穴10が設けられている。
【0026】
スクリーン8は、図4(A)、(B)に示すように、フレネルレンズ11と拡散シート12とが密着して貼り合わされたものであり、一種のリアスクリーンとして構成されている。スクリーン8は、フレネルレンズ11の側がプロジェクター7を向くように設置されており、プロジェクター7からの投射光はフレネルレンズ11に入射する。フレネルレンズ11は複数のプリズム13が微小な間隔で同心円状に設けられた構成であり、これら複数のプリズム13が全体として凸レンズを構成している。なお、拡散シートの両面にフレネルレンズがそれぞれ貼り合わされたスクリーンを用いても良い。フレネルレンズを2枚備えたスクリーンを用いた場合、フレネルレンズが1枚の場合に比べて各フレネルレンズの焦点距離を長くできるため、各プリズムの頂角を大きくできる。そのため、特にフレネルレンズの周縁部に光が入射する際、入射角が大きすぎて反射光が生じるのを抑えやすくなる。
【0027】
プロジェクター7から射出された投射光はスクリーン8に入射する前は拡散光であるが、フレネルレンズ11の作用により光軸方向にある程度集束された状態で拡散シート12に入射する。拡散シート12では投射光が結像し、像が形成された後、予め設定された角度で投射光が拡散する。なお、フレネルレンズ11は、空間像Zの見え方が最適になるように焦点距離を設定すれば良い。また、拡散シート12の側がプロジェクター7を向くように設置され、プロジェクター7からの投射光が拡散シート12に入射する構成であっても良い。その場合も上記とほぼ同等な機能を実現することができる。
【0028】
筐体6は、図5に示すように、表示ユニット4とフレネルレンズ5とを保持する箱状の部材である。筐体6の前面は開口部14となっており、天面と両側面には開閉可能な扉15が設けられている。通常、使用状態では扉15を閉じた状態とするが、扉15を開けた状態とすれば、プロンプター1の使用者は例えば表示ユニット4の位置調整等の作業を行うことができる。筐体6の前面の開口部14には、図2に示すように、フレネルレンズ5が嵌め込まれている。一方、筐体6の後面は後述する取付板16となっており、取付板16には取付治具17を介して表示ユニット4が取り付けられている。
【0029】
フレネルレンズ5は、図6(A)、(B)に示すように、微小な間隔で同心円状に設けられた複数のプリズム18を有している。フレネルレンズ5の基本構成はスクリーン8の一部を構成するフレネルレンズ11と同様であるが、全体の寸法、各プリズム18の寸法や焦点距離が異なっている。
【0030】
取付治具17(光軸位置調整手段、光軸方向調整手段)は、図7に示すように、固定部19と、前後移動部20と、左右移動部21と、回転部22と、を備えている。L字状の固定部19の上面に矩形板状の前後移動部20が設けられ、前後移動部20の上面に矩形板状の左右移動部21が設けられ、左右移動部21の上面に円板状の回転部22が設けられている。固定部19の上面にはガイドレール23が前後方向に延在しており、前後移動部20とその上に載置された左右移動部21および回転部22とがガイドレール23に沿って前後方向にスライドし、所定の位置で固定できる構成となっている。前後移動部20の上面にはガイドレール24が左右方向に延在しており、左右移動部21とその上に載置された回転部22とがガイドレール24に沿って左右方向にスライドし、所定の位置で固定できる構成となっている。回転部22は、左右移動部21の上面において板面に垂直な回転軸J1を中心として回転し、所定の角度で固定できる構成となっている。
【0031】
筐体6の後面は、図8に示すように、複数のネジ穴25が一定間隔で設けられた取付板16となっている。また、図7に示した固定部19の後板19aには取付治具17の全体を取付板16に固定するためのネジ穴26が設けられている。これにより、取付板16の複数のネジ穴25のうち、いずれのネジ穴25を用いるかによって、筐体6に対する取付治具17、すなわち表示ユニット4の位置を変えることができる。また、回転部22の上面には、表示ユニット4の底板9を固定するためのネジ孔27が設けられている。よって、回転部22の上面に表示ユニット4を固定した状態で回転部22を回転させることにより、表示ユニット4の向き、すなわちスクリーン8からの光の投射方向を変えることができる。
【0032】
筐体6に対するフレネルレンズ5の位置は固定されているため、取付板16のネジ穴25を適宜選択することでフレネルレンズ5に対する表示ユニット4の相対位置を調整でき、フレネルレンズ5の光軸に対する表示ユニット4の光軸の位置を調整することができる。さらに、回転部22の回転角度を適宜調整することでフレネルレンズ5に対する表示ユニット4の向きを調整でき、フレネルレンズ5の光軸に対する表示ユニット4の光軸の方向を調整することができる。
【0033】
以下、上記構成のプロンプター1で空間像が生成される原理について説明する。
図9は、図2に示すプロンプター1を上側から見た図であり、プロンプター1の構成要素のうち、スクリーン8とフレネルレンズ5のみを取り出して示している。この例では、スクリーン8の光軸とフレネルレンズ5の光軸とは一致している。なお、スクリーン8の光軸とは、スクリーン8の投射面の中心を通り、スクリーン8の投射面に垂直な軸のことである。
【0034】
ここで、スクリーン8からフレネルレンズ5までの距離をa、フレネルレンズ5の焦点距離をfとすると、フレネルレンズ5から生成される空間像Zまでの距離bは、b=a×f/(a−f)で求められる。すなわち、筐体6の前面のフレネルレンズ5から距離bだけ離れた位置に、スクリーン上の画像が空間像Zとして表示されることになる。また、光の射出側(講演者側)から見てスクリーン8の左側(図9の下側)からフレネルレンズ5の右端に向かった光線p0はフレネルレンズ5で曲げられ、光線p1となって図9の右側に向かう。同様に、光線q0は光線q1、光線r0は光線r1となり、空間像Zの位置ではスクリーン8の位置に対して像の左右が反転する。また、図9の奥行き方向に相当する像の上下方向についても、空間像Zの位置ではスクリーン8の位置に対して像が反転する。
【0035】
したがって、表示ユニット4のスクリーン8上で上下左右が反転した画像を表示するようにプロジェクター1を設定しておけば、空間像Zの上下左右は正しく表示され、講演者は文字情報等を支障なく見ることができる。また、光の射出側から見てスクリーンの右側(図9の上側)からフレネルレンズ5の左端に向かった光線s0,t0,u0についてもそれぞれ光線s1,t1,u1となり、上記と同様である。なお、これらの光線はフレネルレンズ5の両端への光線を説明したものであり、実際の光線はフレネルレンズ5の全体を通って空間像Zの位置に結像するものである。
【0036】
ここで、空間像Zを見る場合、空間像Zを生成する光線はフレネルレンズ5を通して来るものであるから、空間像Zの位置の奥側にフレネルレンズ5が見える位置でなければ空間像Zを見ることができない。すなわち、空間像Zの右端を見るには、フレネルレンズ5の右端と空間像Zの右端を結ぶ光線p1とフレネルレンズ5の左端と空間像Zの右端を結ぶ光線u1との範囲内でなければならない。同様に、空間像Zの左端を見るには、フレネルレンズ5の左端と空間像Zの左端を結ぶ光線s1とフレネルレンズ5の右端と空間像Zの左端を結ぶ光線s1との範囲内でなければならない。したがって、空間像Zの全体が見えるのは、光線p1と光線s1とが交差した後の領域(図9に斜線で示した領域)ということになる。以下、このような空間像Zの全体が見える領域のことを「適視範囲T」と称する。
【0037】
図10は、光の射出側(講演者側)から見てフレネルレンズ5に対してスクリーン8(表示ユニット4)を左側(図10の下側)に移動させた場合の空間像Zの位置を示している。スクリーン8を移動させるということは、図9においてスクリーン8のサイズを大きくしたことと等価である。すなわち、空間像Zはスクリーン8上の像に対してb/aの倍率のサイズとなるため、空間像Zは右側(図10の上側)の方向に、スクリーン8の移動距離のb/a倍の位置に移動する。また、この場合の適視範囲は図9の場合と同様に考えられ、符号T1の領域となる。
【0038】
図11は、フレネルレンズ5に対してスクリーン8(表示ユニット4)を傾けた場合を示し、この例では光の射出側(講演者側)から見てスクリーン8の右端を奥側(図11のスクリーン8の上端を左側)に、スクリーン8の左端を手前側(図11のスクリーン8の下端を右側)に傾けた場合の空間像Zの位置を示している。この場合、シャインプルーフの法則で示されるように、フレネルレンズ5のレンズ面の延長線とスクリーン8の投射面の延長線との交点Aを空間像Zの形成面の延長線が通ることになる。すなわち、空間像Zは、講演者側から見て空間像Zの右端が手前側(図11の空間像Zの上端が右側)に、空間像Zの左端が奥側(図11の空間像Zの下端が左側)に傾いて形成される。さらに、空間像Zは、スクリーン8の中心とフレネルレンズ5の中心とを結ぶ直線L1上に位置する。この場合の適視範囲は符号T2の領域となる。
【0039】
以上の説明では、1つのフレネルレンズ5に対して1組の表示ユニット4が対応している例を挙げた。これに対して、1つのフレネルレンズ5に対して複数組(具体的には3組)の表示ユニット4が対応している例を図12に示す。各表示ユニット4に対応する空間像は上記の表示原理に従って生成され、スクリーン8A上の像は空間像ZA、スクリーン8B上の像は空間像ZB、スクリーン8C上の像は空間像ZCとして生成される。
【0040】
例えば図12に示したような各スクリーン8A,8B,8Cの位置および角度は、前述したように、筐体6の取付板16に対する取付治具17の取り付け位置、および取付治具17の位置調整、角度調整によって任意に設定することができる。この例では、スクリーン8Aおよびスクリーン8Bはフレネルレンズ5の光軸に対して垂直に設置されているが、スクリーン8Cはフレネルレンズ5の光軸に対して傾けて設置されている。各空間像ZA,ZB,ZCの適視範囲は、それぞれ符号TA、符号TB、符号TCの領域となる。
【0041】
図13には、このようにして形成される3つの空間像ZA,ZB,ZCとプロンプター1との位置関係を示す。図14には、講演者Kから見た各空間像ZA,ZB,ZCの様子を示す。これらの図に示す例では、講演者Kは、中央の空間像ZBの奥側にフレネルレンズ5が見える位置に立っており、空間像ZBの全体を見ることができる。空間像ZA,ZCも形成されてはいるが、この位置では講演者Kは見ることができない。したがって、講演者Kは、フレネルレンズ5に空間像ZAが重なる位置まで左側に移動すれば、空間像ZAを見ることができる。同様に、フレネルレンズ5に空間像ZCが重なる位置まで右側に移動すれば、空間像ZCを見ることができる。
【0042】
図12に示したように、空間像ZCは左端が講演者Kの手前側に傾いているため、講演者Kがフレネルレンズ5の方向を向いたとき、空間像ZCは空間像ZAに比べて講演者Kに正対する状態となる。したがって、例えば空間像ZAを見たときには横向きの台形歪みが気になったとしても、空間像ZCを見たときには横向きの台形歪みを感じにくくなる。そして、例えば3つの空間像ZA,ZB,ZCとして、それぞれに異なる原稿を表示させれば、講演者Kは立つ位置を移動して異なる原稿を見ながら講演を進めることができる。
【0043】
なお、講演者Kは、適視範囲T内に立てば、それに対応した空間像Zの全体を見ることができる。しかしながら、講演者Kは、適視範囲T外で空間像Zの一部しかフレネルレンズ5と重ならない位置に立ったとしても、空間像Zのうち、フレネルレンズ5と重なった部分だけは見ることができる。したがって、空間像Zの見えた部分を目安として身体をいずれかの方向に少し移動させれば、空間像Z全体が見えるようになるため、空間像Zの位置を探しやすい。
【0044】
本実施形態のプロンプター1によれば、講演者Kは、フレネルレンズ5の光射出側から実像としての空間像Zを視認できるので、講演者Kが見る像の位置が従来のプロンプターに比べて近くなる。これにより、従来に比べて文字等の情報の大きさをスクリーン8上で小さくでき、多くの情報を表示することができる。その結果、表示画面を頻繁に切り替えることなく、表示する情報量を増やすことができ、講演者Kが複数の情報を選択的に見ながら講演を円滑に進めることができる。また、講演者Kが近視の場合でも表示する画像を見やすくすることができる。
【0045】
特に本実施形態の場合、図1に示すように、講演者Kの近傍にハーフミラーを配置する必要がないため、聴衆Cから講演者Kの顔や姿が見やすく、講演者Kからも聴衆Cが見やすくなる。また、講演者Kが指し棒等を使用する場合でも、指し棒がハーフミラーにぶつかる心配がない。
【0046】
また、空間像Zの位置を表示ユニット4の取付治具17によって調整できるので、表示したい位置に空間像Zを容易に表示させることができる。そのため、講演の進行に応じて、必要となる情報を予め講演者の立ち位置に合わせて表示しておくことで、表示する空間像を切り替える頻度を少なくすることができる。例えば、講演者が他の大型スクリーン上の画像を指し示しながら説明を行うような場合、講演者がその画像を指し示しやすい立ち位置から見える位置に、その画像に関連する説明原稿等の情報を表示しておくことができる。
【0047】
また、フレネルレンズ5を前面に設置した筐体6の内部に表示ユニット4を収納したため、スクリーン8やフレネルレンズ5の内側に入射する照明光などの影響を低減することができる。そのため、表示される空間像Zのコントラストの低下を抑えることができる。
【0048】
なお、本実施形態では、3組の表示ユニット4を備え、3つの空間像ZA,ZB,ZCを表示する例を示したが、空間像の数はこれに限ることなく、任意に選択することができる。また、複数の空間像を左右方向に並べて表示する例を示したが、複数の空間像を上下方向に並べることもできる。
【0049】
[第2実施形態]
以下、本発明の第2実施形態について、図15を用いて説明する。
本実施形態の基本構成は第1実施形態と共通であり、筐体の内部で光路を折り曲げている点が異なっている。
したがって、図15において第1実施形態の図2と共通な構成要素には同一の符号を付し、説明を省略する。
【0050】
本実施形態のプロンプター31は、図15に示すように、表示ユニット4と、フレネルレンズ5(結像レンズ)と、ミラー32と、筐体33と、を備えている。本実施形態では、取付板16が筐体33の底面をなしており、取付板16の外面に脚部34が設けられている。フレネルレンズ5が筐体33の前面側の開口部35に設置されている点は第1実施形態と同様である。この構成により、プロンプター31は、脚部34を下方に向けて床もしくは机の上等に置いて使用する形態となる。よって、表示ユニット4を構成するプロジェクター7の投射レンズが上方を向き、プロジェクター7は上方に向けて光を投射する。
【0051】
プロジェクター7から射出される投射光の光路上にミラー32が設けられている。このため、プロジェクター7からの投射光はスクリーン8上で結像された後、ミラー32によってその光路を折り曲げられる。ミラー32を経た光はフレネルレンズ5に入射し、フレネルレンズ5で結像されて講演者の前方に空間像が生成される点は第1実施形態と同様である。
【0052】
本実施形態のプロンプター31においても、表示画面を頻繁に切り替えることなく、表示する情報量を増やすことができるといった第1実施形態と同様の効果が得られる。さらに本実施形態では、スクリーン8からフレネルレンズ5に至る光の光路をミラー32で折り曲げているため、筐体33の奥行き方向の寸法を小さくすることができる。そのため、プロンプター31を比較的狭い場所でも使用することができる。
【0053】
[第3実施形態]
以下、本発明の第3実施形態について、図16を用いて説明する。
本実施形態のプロンプターの構成は第1実施形態と共通であり、表示ユニットの構成のみが異なっている。
【0054】
第1、第2実施形態では、表示ユニットがプロジェクターとスクリーンで構成されていたのに対し、本実施形態では、図16に示すように、表示ユニット39がフラットパネルディスプレイ38で構成されている。フラットパネルディスプレイ38としては、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ等を用いることができる。この種のフラットパネルディスプレイ38が底板9に固定されている。すなわち、本実施形態の表示ユニット39は、第1、第2実施形態においてスクリーンが設けられた位置に、スクリーンに代えて、フラットパネルディスプレイ38が設けられたものである。その他の構成は第1、第2実施形態と同様である。
【0055】
本実施形態のプロンプターにおいても、表示画面を頻繁に切り替えることなく、表示する情報量を増やすことができるといった第1、第2実施形態と同様の効果が得られる。なお、一般的にフラットパネルディスプレイは直視で見やすいように視野角が広く設計されている。しかしながら、本実施形態に適用する場合、例えばフラットパネルディスプレイ38の前面側にフレネルレンズ等の凸レンズ系の光学素子を設け、射出される光線の角度を狭めるようにすれば、空間像の明るさを向上させることができる。
【0056】
[第4実施形態]
以下、本発明の第4実施形態について、図17〜図20を用いて説明する。
第1〜第3実施形態のプロンプターはハーフミラーを備えていない構成であったのに対し、本実施形態のプロンプターはハーフミラーを備えている点で第1〜第3実施形態と異なっている。
【0057】
本実施形態のプロンプター41は、図17に示すように、講演会等の会場において講演者Kから見て演台3を跨いだ位置に設置されており、講演者Kと後述するハーフミラー42との間の空間に空間像Zを形成するものである。講演者Kは、ハーフミラー42の方向を見ることで空間像Zを見ることができ、講演の補助となる原稿の文字情報を空間像として見ながら講演を行うことができる。
【0058】
プロンプター41は、表示ユニット43と、ミラー44と、フレネルレンズ45(結像レンズ)と、ハーフミラー42(反射手段)と、を備えている。表示ユニット43は、プロジェクター46(投射型表示装置)と、スクリーン47と、から構成されている。表示ユニット43は床面Yの近傍に設置され、プロジェクター46とスクリーン47とは所定の間隔を空けて設置されている。プロジェクター46からの投射光は、略水平方向に向けて射出され、スクリーン47上で結像されて像が生成される。プロジェクター46には、図示しないパーソナルコンピューターやカメラ等の機器が接続され、これらの機器から画像信号が入力される。プロジェクター46では画像信号に基づいて画像が生成され、その画像がスクリーン47に投射される。
【0059】
スクリーン47は、図18に示すように、拡散シート12(拡散板)の両面にフレネルレンズ11がそれぞれ密着して貼り合わされたものであり、一種のリアスクリーンとして構成されている。スクリーン47の平面形状は、例えば正方形でも良いし、プロジェクター46から投射する画像のアスペクト比に対応させた長方形でも良い。フレネルレンズ11は複数のプリズム13が微小な間隔で同心円状に設けられた構成であり、これら複数のプリズム13が全体として凸レンズを構成している。
【0060】
プロジェクター46からの投射光が図18の左側からスクリーン47に入射すると、入射前に拡散光線であった光が入射側のフレネルレンズ11によって集束され、平行光線に近い形状で拡散シート12に入射する。拡散シート12では投射光の像が結像されるとともに、所定の拡散角度で光が拡散し、さらに射出側のフレネルレンズ11によって全体の光線が広がりすぎないように調整されて射出される。なお、この例ではフレネルレンズ11を2枚備えたスクリーン47を例示したが、フレネルレンズを1枚のみ備えたスクリーンを用いても良い。ただし、フレネルレンズ11を2枚備えたスクリーン47を用いた場合、フレネルレンズが1枚の場合に比べて各フレネルレンズ11の焦点距離を長くできるため、各プリズム13の頂角を大きくすることができる。そのため、特にフレネルレンズ11の周縁部に光が入射する際、入射角が大きすぎて反射光が生じるのを抑えやすくなる。
【0061】
ここで、スクリーン47からの射出光はフレネルレンズ45にさえ入射すれば良いため、本実施形態のスクリーン47の場合、投射面上の像を直接鑑賞する一般のプロジェクター用スクリーンの場合と比べて視野角を十分に狭くすることができる。これにより、スクリーンゲインを高くすることができる。例えば、一般のスクリーンの視野角が120度程度であるのに対し、本実施形態のスクリーン47の視野角は例えば25度程度で良い。したがって、本実施形態ではスクリーンゲインを従来一般の23倍程度に高くすることができる。そのため、同じ明るさを得るのに必要なプロジェクター46の光出力は従来一般の1/23程度で済み、消費電力の低減が図れる。
【0062】
さらに、スクリーン47のサイズも例えば15インチ程度で良いため、本実施形態のプロジェクター46の光出力は、100インチ程度のスクリーンに使用する従来のプロジェクターの光出力の1/44程度で済む。すなわち、スクリーン47の視野角を狭くできる効果とサイズを小さくできる効果を合わせると、本実施形態のプロジェクター46の光出力は従来のプロジェクターの光出力の1/1000程度で済む。実際には、フレネルレンズ45やハーフミラー42の効率を考慮する必要があるが、それらを1/10としても、プロジェクター46の光出力は従来のプロジェクターの光出力の1/100程度で良い。したがって、プロジェクター46として、例えば発光ダイオード(LED)を光源とした小型プロジェクターを使用することができる。
【0063】
図17に示すように、スクリーン47から射出された光の光路上にミラー44が設置されている。このミラー44により、スクリーン47からの射出光の光路は鉛直方向上方に折り曲げられる。また、ミラー44で反射した光の光路上にフレネルレンズ45が設置されている。フレネルレンズ45は、図19(A)、(B)に示すように、微小な間隔で同心円状に設けられた複数のプリズム48を有している。フレネルレンズ45の基本構成はスクリーン47の一部を構成する上記のフレネルレンズ11と同様であるが、全体の寸法、各プリズムの寸法や焦点距離が異なっている。スクリーン47からの射出光はフレネルレンズ45によって結像され、スクリーン47上の像の空間像が実像として生成される。
【0064】
図17に示すように、フレネルレンズ45から射出された光の光路上で、フレネルレンズ45と空間像Zとの間にハーフミラー42が設置されている。このハーフミラー42により、フレネルレンズ45から鉛直方向上方に射出された光が反射され、光路は概ね水平方向(講演者K側)に折り曲げられる。これにより、講演者Kとハーフミラー42との間の空中に空間像Zが実像として形成される。講演者Kがハーフミラー42の方向を見ると、空間像Zが空中に浮かんで見えることになる。ここで見える空間像Zはスクリーン47を直接見た場合と比べて上下左右が反転した像となる。したがって、プロジェクター46で予め上下左右を反転させた像を作っておくことにより、講演者Kは元のパーソナルコンピューターやカメラ等で生成された画像をそのまま見ることができる。
【0065】
ここで、生成される空間像Zについて、図20を用いて説明する。
図20は、図17からミラー44とハーフミラー42を取り除き、プロンプター41の構成を直線系で表したものである。この例では、スクリーン47の光軸とフレネルレンズ45の光軸とは一致している。なお、スクリーン47の光軸とは、スクリーン47の投射面の中心を通り、スクリーン47の投射面に垂直な軸のことである。
【0066】
ここで、スクリーン47からフレネルレンズ45までの距離をa、フレネルレンズ45の焦点距離をfとすると、フレネルレンズ45から空間像Zまでの距離bは、b=a×f/(a−f)で求められる。すなわち、フレネルレンズ45から距離bだけ離れた位置に、スクリーン47上の画像が空間像Zとして表示されることになる。また、スクリーン47上の像のサイズに対する空間像Zのサイズの拡大率mは、m=b/aとなる。これらの値は、必要とするプロンプターの全体のサイズに応じて適宜決定すればよい。
【0067】
スクリーン47上の点Pa、点Qa、点Raは、それぞれ点Pb、点Qb、点Rbとして空間像Zの位置に結像される。空間像Zの位置での各点Pb、Qb、Rbの光線は、フレネルレンズ45の全体を通して結像されているため、各点Pb、Qb、Rbにおける最も外側の光線は図20に示すような広がりを持つ。よって、点Pb、点Qb、点Rbを通った光線の広がりの重なる領域から空間像Zを見れば、空間像Zの全体が見えることになるため、この領域が適視範囲Tとなる。すなわち、適視範囲Tが講演者の眼の位置に対応するようにすれば、講演者は空間像Zの全体を見ることができる。なお、図17は図20の構成にミラー44とハーフミラー42を挿入したものであり、上記の結像関係はそのまま保たれる。
【0068】
本実施形態のプロンプター41によれば、図17に示したように、空間像Zがハーフミラー42よりも講演者K側に実像として形成されるため、ハーフミラー42を演台3から離れた位置に設置しても、講演者Kが空間像Zを見にくくなることが避けられる。一方、従来のプロンプターでは、図25に示すように、講演者Kは、ハーフミラー142の奥にある、自身からかなり遠い位置に形成された虚像Qを見ることになるため、大きい文字で原稿を表示せざるを得なかった。そのため、表示する情報量を増やすためには表示画面を頻繁に切り替えなければならないという問題があった。
【0069】
図17と図25を比較すると明らかなように、本実施形態のプロンプター41によれば、講演者Kが見る空間像Zの位置が従来のプロンプターに比べてはるかに近くなる。これにより、従来に比べて文字等の情報の大きさをスクリーン47上で小さくでき、多くの情報を表示することができる。その結果、表示画面を頻繁に切り替えることなく、表示する情報量を増やすことができ、講演者Kが円滑に講演を進めることができる。また、講演者Kが近視の場合でも表示する画像を見やすくすることができる。
【0070】
逆に言えば、本実施形態のプロンプター41によれば、講演者Kが文字等の情報を十分に見える範囲で、従来よりもハーフミラー42を講演者Kから遠い位置に配置することができる。そのため、聴衆が講演者Kを見る場合にハーフミラー42が邪魔になりにくく、講演者Kの顔や姿を直接見やすくなる。また、例えば講演者Kが他の大型スクリーンや掲示物等を指し棒で指し示しながら説明するような場合、指し棒がハーフミラー42にぶつかるのを避けることができる。
【0071】
また、講演者Kはハーフミラー42の手前に結像した実像である空間像Zを見るため、眼の焦点は実像の位置に合うことになる。したがって、ハーフミラー42に汚れがある場合にも、像を見るのに邪魔になりにくい。
さらに、スクリーン47の拡散角度を小さくできるので、プロジェクター46の光出力が十分小さくても明るい画像が得られる。さらに、プロジェクター46を小型化し、光源による排熱を小さくすることができるため、排熱による騒音も小さくすることができる。
【0072】
[第5実施形態]
以下、本発明の第5実施形態について、図21、図22を用いて説明する。
本実施形態の基本構成は第4実施形態と同様であり、各構成要素を収容する筐体を備えた点が異なっている。
したがって、図21において第4実施形態の図17と共通な構成要素には同一の符号を付し、説明を省略する。
【0073】
本実施形態のプロンプター51は、図21に示すように、プロジェクター46とスクリーン47とからなる表示ユニット43と、ミラー44と、フレネルレンズ45(結像レンズ)と、ハーフミラー42と、筐体52と、を備えている。筐体52の内部に、表示ユニット43とミラー44とフレネルレンズ45とが収容され、筐体52の上部に、ハーフミラー42が固定されている。表示ユニット43とミラー44とフレネルレンズ45とは筐体52に固定されており、これら構成要素相互の位置関係が固定されている。
【0074】
筐体52の上面の講演者K側の位置には、空間像Zの位置を示す指標53が設けられている。指標53は、図22に示すように、講演者K側から見てT字状の形状であり、鉛直方向に延びる棒状部53aと、棒状部53aの先端に設けられた水平方向に延びる棒状部53bとを有している。棒状部53bの位置は空間像Zの形成位置に略一致している。
【0075】
本実施形態のプロンプター51においても、表示する情報が見やすく、情報量を増やすことができるといった第4実施形態と同様の効果が得られる。また、筐体52によって表示ユニット43とフレネルレンズ45との位置関係が固定されるとともに、表示ユニット43とフレネルレンズ45を保護することができ、取り扱いがしやすいプロンプターを構成できる。
【0076】
また、空間像Zの位置を示す指標53が備えられているため、指標53を目安として講演者Kが空間像Zの位置に眼の焦点を合わせやすい。これにより、例えば講演者Kが空間像Z以外の場所を見ている状態から空間像Zを見ようとする場合、空間像Zの位置を即座に探すことができる。
【0077】
また、指標53が棒状の部材で構成されているため、目立ちにくく、聴衆が講演者Kを見るのに邪魔になりにくい。さらに、指標53が筐体52の一部に固定されているため、指標53は常に空間像Zの形成位置からずれることがなく、筐体52を移動させても空間像Zの位置を容易に把握することができる。なお、指標53の形状については、本実施形態に限定されることなく、種々の形状とすることが可能である。
【0078】
[第6実施形態]
以下、本発明の第6実施形態について、図23を用いて説明する。
本実施形態の基本構成は第5実施形態と類似しているが、プロジェクターが演台に内蔵された点が異なっている。
図23において、第5実施形態の図21と共通な構成要素には同一の符号を付し、説明を省略する。
【0079】
本実施形態のプロンプター56は、図23に示すように、プロジェクター46とスクリーン47とからなる表示ユニット43と、ミラー44と、フレネルレンズ45(結像レンズ)と、ハーフミラー42と、筐体57と、を備えている。ただし、本実施形態においては、表示ユニット43のうち、プロジェクター46は演台3に内蔵され、スクリーン47は筐体57に内蔵されている。
【0080】
プロジェクター46は演台3の内部に固定されており、演台3の前面にはプロジェクター46からの投射光を射出させるための開口部3aが設けられている。演台3の底面には、演台3を移動させるためのキャスター58が設けられている。
【0081】
一方、筐体57にはスクリーン47よりも後段の構成要素が内蔵されており、これらが筐体57に固定されている。筐体57には、演台3の開口部3aに対向する位置にプロジェクター46からの投射光を入射させるための開口部57aが設けられている。筐体57の底面には、筐体57を移動させるためのキャスター59が設けられている。また、筐体57の下部には、位置決め部材60が設けられている。位置決め部材60は、筐体57から演台3の方向に突出して開口部57aを囲む筒状の部材で構成されている。
【0082】
本実施形態のプロンプター56においても、表示する情報が見やすく、情報量を増やすことができるといった第4、第5実施形態と同様の効果が得られる。
特に本実施形態の場合、演台3と筐体57とは分離できる構造であるため、例えばプロンプター56を使用しない場合には演台3と筐体57を別個に移動し、容易に片付けることができる。また、プロンプター56を使用する場合には、プロジェクター46からの投射光がスクリーン47上に確実に結像されるように、演台3と筐体57とを所定の位置関係に配置する必要がある。このとき、位置決め部材60の先端を演台3に当接させることで演台3と筐体57とが位置決めされるため、プロジェクター46とスクリーン47との位置決めを簡単に行うことができる。
【0083】
また、位置決め部材60が開口部57aを覆っているため、位置決め部材60によって筐体57の内部への外光の入射を防ぐことができる。その結果、表示される空間像Zのコントラストを向上させることができる。ただし、空間像Zのコントラスト向上効果を求めないのであれば、必ずしも位置決め部材が開口部を覆う形状とする必要はなく、位置決め部材の形状や位置を適宜決定すればよい。
【0084】
[第7実施形態]
以下、本発明の第7実施形態について、図24を用いて説明する。
本実施形態の基本構成は第5、第6実施形態と類似しているが、筐体が天井に設置された点が異なっている。
図24において、第5実施形態の図21と共通な構成要素には同一の符号を付し、説明を省略する。
【0085】
本実施形態のプロンプター61は、図24に示すように、プロジェクター46とスクリーン47とからなる表示ユニット43と、ミラー44と、フレネルレンズ45(結像レンズ)と、ハーフミラー42と、筐体62と、を備えている。本実施形態においては、ハーフミラー42を除く構成要素、すなわち、表示ユニット43、ミラー44、およびフレネルレンズ45が筐体62に内蔵され、筐体62が講演者Kの頭上にあたる天井Wに設置されている。また、ハーフミラー42は、支持具63を介して演台3に固定されている。
【0086】
本実施形態の場合、ミラー44によってスクリーン47からの射出光の光路は鉛直方向下方に折り曲げられる。ミラー44で反射した光の光路上にはフレネルレンズ45が設置されており、スクリーン47からの射出光はフレネルレンズ45によって結像される。フレネルレンズ45の鉛直方向下方にあたるフレネルレンズ45からの射出光の光路上にハーフミラー42が配置されており、ハーフミラー42によって光の光路は概ね水平方向に折り曲げられる。このようにして、スクリーン47上の像の空間像Zが、実像としてハーフミラー42と講演者Kとの間の空中に生成される。
【0087】
筐体62には、鉛直方向下方に向けてレーザー光もしくはスポットライトを投射するマーカー投射部64が、図24の紙面に垂直な方向に2つ設けられている。マーカー投射部64は、筐体62に対する演台3の位置を決めるための光を投射する。一方、演台3には、マーカー投射部64からの光の照射位置に対応して、位置決め用マーク65が図24の紙面に垂直な方向に2箇所設けられている。2つのマーカー投射部64からの光が2箇所の位置決め用マーク65にそれぞれ照射されるように、キャスター58によって演台3の位置や向きを調整すれば、筐体62に対してハーフミラー42を正しい位置に設置することができる。なお、ハーフミラー42を位置合わせした後はマーカー投射部64からの光の投射を停止すれば良い。
【0088】
また、演台3に対して支持具63を保持するための保持部66には、支持具63を上下移動可能とする機構が備えられている。これにより、例えば空間像Zの位置を高くしたい場合には、支持具63を上昇させてハーフミラー42の位置が高くなるように調整すればよい。さらに、保持部66には、支持具63を水平移動可能とする機構が備えられている。これにより、フレネルレンズ45からの投射光がハーフミラー42に入射する位置を微調整することができる。なお、ハーフミラー42の水平方向の位置を変えると、空間像Zの高さも変わる。その場合には、保持部66の上下移動機構を用いて空間像Zの高さを再調整すれば良い。
【0089】
本実施形態のプロンプター61においても、表示する情報が見やすく、情報量を増やすことができるといった第4〜第6実施形態と同様の効果が得られる。また、演台3の前に筐体62を設置する必要がないため、演台3の周辺を広く使うことができる。また、演台3の前にスペースが取れないような場合にも好適に用いることができる。
【0090】
本実施形態の場合、プロンプター61の筐体が天井Wに設置されるため、フレネルレンズ45の周辺が聴衆から見える虞がある。しかしながら、フレネルレンズ4上では像は結像しておらず、さらにフレネルレンズ45から射出される光がハーフミラー42以外の部分に広がることはほとんどない。そのため、聴衆からフレネルレンズ45が直接見えたとしても、表示されている空間像Zが見えることはない。
【0091】
なお、本発明の技術範囲は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば上記第1〜第3実施形態において、電動アクチュエーター等の駆動手段を用いて表示ユニットの取付治具をリモートコントロールできる構成としても良い。そのようにすれば、講演者の立ち位置で実際の空間像を見ながら空間像の位置や向きを調整することができる。さらに、プロジェクターの投射レンズの近傍にフォトセンサーを設け、表示ユニットの取付治具を自動的に移動可能に構成しても良い。そのようにすれば、講演者が空間像を表示させたい位置に発光素子を置き、発光素子の射出光を筐体の方に向ければ、表示ユニットの位置を自動的に最適化できるように構成することができる。
【0092】
その他、プロンプターの各構成要素の形状、数、配置等の具体的な構成は、上記実施形態に限ることなく、適宜変更が可能である。
【符号の説明】
【0093】
1,31,41,51,56,61…プロンプター、4,39,43…表示ユニット、5,45…フレネルレンズ(結像レンズ)、6,33,52,57,62…筐体、7,46…プロジェクター(投射型表示装置)、8,8A,8B,8C,47…スクリーン、11…フレネルレンズ、12…拡散シート(拡散板)、17…取付治具(光軸位置調整手段、光軸方向調整手段)、38…フラットパネルディスプレイ、42…ハーフミラー(反射手段)、53…指標、Z,ZA,ZB,ZC…空間像。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力された画像信号に基づいて画像を表示する表示面を有する表示ユニットと、
前記表示面上の画像の実像として空間像を生成する結像レンズと、を備え、
前記結像レンズの光射出側から前記実像としての空間像を視認可能としたことを特徴とするプロンプター。
【請求項2】
前記表示ユニットが複数設けられ、
前記結像レンズが、前記複数の表示ユニットから射出される複数の光をそれぞれ結像させ、複数の画像の実像として複数の空間像を生成することを特徴とする請求項1に記載のプロンプター。
【請求項3】
前記表示ユニットは、投射型表示装置と、前記投射型表示装置で生成される画像が投射される透過型スクリーンと、を備えたことを特徴とする請求項1または2に記載のプロンプター。
【請求項4】
前記透過型スクリーンが、拡散板と、前記拡散板の両面にそれぞれ設けられたフレネルレンズと、を備えたことを特徴とする請求項3に記載のプロンプター。
【請求項5】
前記結像レンズの光軸に対する前記表示ユニットの光軸の位置を調整する光軸位置調整手段を備えたことを特徴とする請求項1ないし4のいずれか一項に記載のプロンプター。
【請求項6】
前記結像レンズの光軸に対する前記表示ユニットの光軸の方向を調整する光軸方向調整手段を備えたことを特徴とする請求項1ないし5のいずれか一項に記載のプロンプター。
【請求項7】
前記表示ユニットと前記結像レンズとを保持する筐体を備えたことを特徴とする請求項1ないし6のいずれか一項に記載のプロンプター。
【請求項8】
前記結像レンズから射出される光の光路上に設けられた反射手段を備え、前記実像としての空間像が、前記反射手段の光射出側に生成されることを特徴とする請求項1に記載のプロンプター。
【請求項9】
前記表示ユニットが、投射型表示装置と、前記投射型表示装置で生成される画像を投射する透過型スクリーンと、を備えたことを特徴とする請求項8に記載のプロンプター。
【請求項10】
前記透過型スクリーンが、拡散板と、前記拡散板の両面にそれぞれ設けられたフレネルレンズと、を備えたことを特徴とする請求項9に記載のプロンプター。
【請求項11】
前記表示ユニットの少なくとも一部と前記結像レンズとを保持する筐体を備えたことを特徴とする請求項8ないし10のいずれか一項に記載のプロンプター。
【請求項12】
前記筐体に、前記空間像の生成位置を示す指標が備えられたことを特徴とする請求項11に記載のプロンプター。
【請求項1】
入力された画像信号に基づいて画像を表示する表示面を有する表示ユニットと、
前記表示面上の画像の実像として空間像を生成する結像レンズと、を備え、
前記結像レンズの光射出側から前記実像としての空間像を視認可能としたことを特徴とするプロンプター。
【請求項2】
前記表示ユニットが複数設けられ、
前記結像レンズが、前記複数の表示ユニットから射出される複数の光をそれぞれ結像させ、複数の画像の実像として複数の空間像を生成することを特徴とする請求項1に記載のプロンプター。
【請求項3】
前記表示ユニットは、投射型表示装置と、前記投射型表示装置で生成される画像が投射される透過型スクリーンと、を備えたことを特徴とする請求項1または2に記載のプロンプター。
【請求項4】
前記透過型スクリーンが、拡散板と、前記拡散板の両面にそれぞれ設けられたフレネルレンズと、を備えたことを特徴とする請求項3に記載のプロンプター。
【請求項5】
前記結像レンズの光軸に対する前記表示ユニットの光軸の位置を調整する光軸位置調整手段を備えたことを特徴とする請求項1ないし4のいずれか一項に記載のプロンプター。
【請求項6】
前記結像レンズの光軸に対する前記表示ユニットの光軸の方向を調整する光軸方向調整手段を備えたことを特徴とする請求項1ないし5のいずれか一項に記載のプロンプター。
【請求項7】
前記表示ユニットと前記結像レンズとを保持する筐体を備えたことを特徴とする請求項1ないし6のいずれか一項に記載のプロンプター。
【請求項8】
前記結像レンズから射出される光の光路上に設けられた反射手段を備え、前記実像としての空間像が、前記反射手段の光射出側に生成されることを特徴とする請求項1に記載のプロンプター。
【請求項9】
前記表示ユニットが、投射型表示装置と、前記投射型表示装置で生成される画像を投射する透過型スクリーンと、を備えたことを特徴とする請求項8に記載のプロンプター。
【請求項10】
前記透過型スクリーンが、拡散板と、前記拡散板の両面にそれぞれ設けられたフレネルレンズと、を備えたことを特徴とする請求項9に記載のプロンプター。
【請求項11】
前記表示ユニットの少なくとも一部と前記結像レンズとを保持する筐体を備えたことを特徴とする請求項8ないし10のいずれか一項に記載のプロンプター。
【請求項12】
前記筐体に、前記空間像の生成位置を示す指標が備えられたことを特徴とする請求項11に記載のプロンプター。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【公開番号】特開2012−194343(P2012−194343A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−57934(P2011−57934)
【出願日】平成23年3月16日(2011.3.16)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年3月16日(2011.3.16)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
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