説明

プローブの補正用測定環境構成物及びプローブ包装物

【課題】補正用測定時にプローブ先端部に既知の光学的環境を与える補正用測定環境構成物を提供するにあたり、単一の当該補正用測定環境構成物により複数種類の既知の光学的環境を簡便な操作により確実に手際よく与えることができ、その結果、精度良く補正を実施することができるようにする。
【解決手段】開口部66から挿入されたプローブの先端部11にそれぞれ既知で相互に異なる光学的環境を与える内部空間を有する補正用測定環境構成物60(70,80)であって、内部空間内で一の光学的環境に置かれた先端部の挿入方向に沿った当該先端部の移動又は部品(72)の移動に従って、異なる一の光学的環境を先端部に与える。先端部に対向する隔壁部材64(74,84)が開放されて、異なる一の光学的環境が展開する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体組織の測定対象部位に照射光を照射して測定対象部位から放射される放射光を受光するための光学系を備えて当該放射光を測定するためのプローブに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、生体組織の測定対象部位へ励起光などの照射光を照射し、この照射光によって生体組織や、予め生体に注入しておいた薬物から発生する蛍光などの放射光を検出する特殊診断プローブが開発されており、生体組織の変性や癌等の疾患状態(例えば、疾患の種類や浸潤範囲)の診断に用いられている。
このようなプローブには、光源装置からの照射光を導光して生体の測定対象部位に照射し病変部から放射される放射光を受光し、検出器に導光するために光ファイバ、レンズ、プリズム等の光学系が構成される。
【0003】
このようなプローブを用いて正確な光学測定による診断を行うためには、以下に示す数種類の補正のうち適宜必要なものを行う必要がある。
【0004】
まず、第1種の補正として、プローブ、光源及び検出器の組み合わせによる波長ごとの光強度や検出感度のばらつきを補正することが求められる。そのための手法として、反射率スペクトルや発光スペクトルといった光学特性が既知の物質を測定対象とし、取得した結果が既知の光学特性と対応する様に、光学特性に関わる装置の設定内容又は検出器の検出信号を処理する計算処理内容の変更によって補正を行うことが一般的である。
この測定を行う際には、測定対象の光学応答を正確に検出する必要があるため、室内光等が迷光として検出器に入射することを防ぐことが必要である。
【0005】
第2種の補正として、例えばレンズや光ファイバ端面からの反射光や発光といった、プローブの内部構成に由来する反射光や発光が検出器に入射する場合には、検出した光の中で、生体組織から発せられた光と内部構成由来の迷光とを区別することも必要となる。このためには、あらかじめ内部構成由来の迷光の強度スペクトルを単独で取得しておくことが有効である。
この場合、室内光等の迷光を防ぐとともに、プローブから出射された光のプローブ以外の物質からの反射光又は拡散光、またはプローブ以外の物質からの発光がプローブに入射することを防ぐ必要がある。
【0006】
また、これら以外の補正として、第1種および第2種の補正と同様の構成をとるが、スペクトル形状の測定は必要なく、単に光強度のみを測定し、それに応じて、光学特性に関わる装置の設定内容又は検出器の検出信号を処理する計算処理内容の変更によって補正を行う場合もある。これらのケースは、それぞれ第1種、第2種の補正用測定からの派生とみなせる。
【0007】
上記の補正用測定は、単に装置の校正や得られた結果の訂正のためのみに用いられるものではなく、装置の経時劣化や故障を判定する目的にも利用可能である。
【0008】
光学測定によって体内診断を行うプローブでは、前述のように一種類以上の補正を行うことが必要であり、特に、暗室等の特別な環境ではなく、室内照明下で簡便に行えることが望ましい。このような作業は、処置の前段階で行なわれることになるが、医療現場において、作業者に、複雑、煩雑、面倒な作業を強いる事は出来る限り避けたいという要望がある。
【0009】
特許文献1には、内視鏡用カラーバランス調整具が記載されている。この内視鏡用カラーバランス調整具は、一端に内視鏡の先端部が挿入可能な内部空間に連通する開口部を有し、他端に閉じた構造を有する、外部からの光を遮る管体であって、前記管体の内面は、内視鏡の先端部の挿入軸に略平行に設けられた内側部材(同文献中103c)と、内視鏡の先端部が挿入された際に、対物レンズの視野領域内に入るように設けられた端面部材(同文献中102c)とからなり、内側部材は、光を吸収する光吸収面を有し、端面部材102cは、蛍光を発する蛍光発生面を有する。
特許文献2には、内視鏡用の色調整治具が記載されている。この色調整治具として、柱状の形状をなす治具であって、治具の一端部に形成された第1開口部と、前記治具の他端部に形成された第2開口部と、第1開口部と第2開口部とを貫通し、電子内視鏡のカラースコープの先端部が挿入可能な中空部と、第2開口部近傍に移動可能に支持された蓋体とを備え、蓋体は、一方の面にホワイトバランス調整用チャート、他方の面に色調整用チャートが載置され、蓋体の移動により、ホワイトバランス調整用チャート、または色調整用チャートのいずれかが中空部を介して第1開口部から観察可能であり、蓋体の移動は、蓋体の中心を通り第2開口部に軸支された回動軸を中心とした回動によるものが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2006−223591号公報
【特許文献2】特開2005−40210号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
補正を精度良く実施する為に、補正用測定を1種類ではなく複数種類実施する形態もあり得る。しかし、この形態は補正の精度が向上する反面、計測装置に対して補正用測定環境の切り替えを行う必要があり、使用者の作業性が悪くなることと、誤った手順をとることで補正が正常に行われないリスクが発生する。複数種類の補正用測定環境をいかに作業性良く確実に切り替え、精度良く補正を実施できるかが重要である。
【0012】
本発明は以上の従来技術における問題に鑑みてなされたものであって、生体組織の測定対象部位に照射光を照射して測定対象部位から放射される放射光を受光するための光学系を備えて当該放射光を測定するためのプローブを用いた光学測定システムに、補正用測定時にプローブ先端部に既知の光学的環境を与える補正用測定環境構成物を提供するにあたり、単一の当該補正用測定環境構成物により複数種類の既知の光学的環境を簡便な操作により確実に手際よく与えることができ、その結果、精度良く補正を実施することができるようにすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
以上の課題を解決するための請求項1記載の発明は、生体組織の測定対象部位に照射光を照射して測定対象部位から放射される放射光を受光するためのプローブの先端部が挿入される開口部を有し、前記開口部に連通し、前記開口部から挿入された前記先端部にそれぞれ既知で相互に異なる光学的環境を与える内部空間を有する補正用測定環境構成物であって、
前記内部空間内で一の前記光学的環境に置かれた前記先端部の挿入方向に沿った当該先端部の移動又は部品の移動に従って、異なる一の前記光学的環境を前記先端部に与えるプローブの補正用測定環境構成物である。
【0014】
請求項2記載の発明は、前記内部空間内で一の前記光学的環境に置かれた前記先端部に対向する隔壁部材が開放されて、異なる一の前記光学的環境を前記先端部に与える請求項1に記載のプローブの補正用測定環境構成物である。
【0015】
請求項3記載の発明は、前記内部空間内で一の前記光学的環境に置かれた前記先端部を前進させて前記隔壁部材を突き押させることによって、前記隔壁部材が開放されて異なる一の前記光学的環境を前記先端部に与える請求項2に記載のプローブの補正用測定環境構成物である。
【0016】
請求項4記載の発明は、前記内部空間内で一の前記光学的環境に置かれた前記先端部の逆側から前記部品に前記隔壁部材を突き押させることによって、前記隔壁部材が開放されて異なる一の前記光学的環境を前記先端部に与える請求項2に記載のプローブの補正用測定環境構成物である。
【0017】
請求項5記載の発明は、前記内部空間内で一の前記光学的環境に置かれた前記先端部の側方に前記先端部によって弾性変形を伴って押し退けられた隔壁部材が、前記先端部の後退移動によりその弾性回復力により展張して前記先端部の前方を遮蔽することによって、異なる一の前記光学的環境を前記先端部に与える請求項1に記載のプローブの補正用測定環境構成物である。
【0018】
請求項6記載の発明は、少なくとも前記開口部に前記先端部が挿入された状態にて前記内部空間への外光の入射を遮る遮光性を有することを特徴とする請求項1から請求項5のうちいずれか一に記載のプローブの補正用測定環境構成物である。
【0019】
請求項7記載の発明は、前記光学的環境のうちいずれか1又は2以上のそれぞれについて補正用測定の対象となる所定の測定対象物質を内蔵することを特徴とする請求項1から請求項6のうちいずれか一に記載のプローブの補正用測定環境構成物である。
【0020】
請求項8記載の発明は、前記隔壁部材が補正用測定の対象となる所定の測定対象物質から構成されたことを特徴とする請求項1から請求項7のうちいずれか一に記載のプローブの補正用測定環境構成物である。
【0021】
請求項9記載の発明は、前記開口部から挿入された前記先端部を所定の位置でさらなる挿入を規制する係止構造が構成されており、当該係止構造による規制状態で前記先端部が一の前記光学的環境に置かれることを特徴とする請求項1から請求項8のうちいずれか一に記載のプローブの補正用測定環境構成物である。
【0022】
請求項10記載の発明は、前記係止構造は、前記先端部を所定の係止力をもってさらなる挿入を規制するとともに前記所定の係止力を超える挿入力により前記先端部の前進を許容して、異なる一の前記光学的環境を前記先端部に与えるための前記先端部の移動を許容することを特徴とする請求項9に記載のプローブの補正用測定環境構成物である。
【0023】
請求項11記載の発明は、請求項1から請求項10のうちいずれか一に記載のプローブの補正用測定環境構成物と、
生体組織の測定対象部位に照射光を照射して測定対象部位から放射される放射光を受光するためのプローブと、を同一の包装体内に包装したプローブ包装物である。
【0024】
請求項12記載の発明は、前記プローブの前記先端部が前記開口部に挿入されて一の前記光学的環境に置かれた状態で前記包装体内に包装されてなる請求項11に記載のプローブ包装物である。
【発明の効果】
【0025】
本発明の補正用測定環境構成物によれば、プローブの先端部が挿入される開口部を有し、前記開口部に連通し、前記開口部から挿入された前記先端部にそれぞれ既知で相互に異なる光学的環境を与える内部空間を有し、前記内部空間内で一の前記光学的環境に置かれた前記先端部の挿入方向に沿った当該先端部の移動又は部品の移動に従って、異なる一の前記光学的環境を前記先端部に与えるので、単一の当該補正用測定環境構成物により複数種類の既知の光学的環境を簡便な操作により確実に手際よく与えることができ、その結果、精度良く補正を実施することができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の実施形態に係るプローブの収納状態を示す斜視図である。
【図2】本発明の実施形態に係るプローブの接続状態を示す斜視図である。
【図3】各種プローブの基本構成を示す側視模式図である。
【図4】本発明の第1実施形態に係る補正用測定環境構成物の構成部品を示す分解斜視図である。
【図5】本発明の第1実施形態に係る補正用測定環境構成物及びこれに挿入されたプローブ先端部の斜視図である。
【図6】本発明の第1実施形態に係る補正用測定環境構成物及びこれに挿入されたプローブ先端部の軸方向断面図であり、既知の光学的環境が構成される。
【図7】本発明の第1実施形態に係る補正用測定環境構成物及びこれに挿入されたプローブ先端部の軸方向断面図であり、図6とは異なる既知の光学的環境が構成される。
【図8】本発明の第2実施形態に係る補正用測定環境構成物の構成部品を示す分解斜視図である。
【図9】本発明の第2実施形態に係る補正用測定環境構成物及びこれに挿入されたプローブ先端部の斜視図である。
【図10】本発明の第2実施形態に係る補正用測定環境構成物及びこれに挿入されたプローブ先端部の軸方向断面図であり、既知の光学的環境が構成される。
【図11】本発明の第2実施形態に係る補正用測定環境構成物及びこれに挿入されたプローブ先端部の軸方向断面図であり、図10とは異なる既知の光学的環境が構成される。
【図12】本発明の第3実施形態に係る補正用測定環境構成物の外観を示す斜視図である。
【図13】本発明の第3実施形態に係る補正用測定環境構成物及びこれに挿入されたプローブ先端部の斜視図である。
【図14】本発明の第3実施形態に係る補正用測定環境構成物及びこれに挿入されたプローブ先端部の軸方向断面図であり、既知の光学的環境が構成される。
【図15】本発明の第3実施形態に係る補正用測定環境構成物及びこれに挿入されたプローブ先端部の軸方向断面図であり、図14とは異なる既知の光学的環境が構成される。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下に本発明の一実施形態につき図面を参照して説明する。以下は本発明の一実施形態であって本発明を限定するものではない。以下の実施形態においては、蛍光測定用のプローブを例として説明する。
【0028】
〔第1実施形態〕
まず、本発明の第1実施形態につき図1〜図7を参照して説明する。
図1に、本実施形態のプローブ10と、包装用トレイ30とが示される。図1及び図2に、本実施形態の光学測定システム1の主要部分が示される。光学測定システム1は、プローブ10と、ベースユニット20のほか、画像表示装置や操作入力装置を含んで構成される。プローブ10は、先端部11と、コネクタ部12と、ケーブル部13とから構成される。
プローブ10は滅菌処理され、図1に示すように、包装用トレイ30に収納され、さらに図示しない包装袋によって密閉されて包装され、医療現場等の使用者に提供される。
【0029】
図4〜図7に本発明第1実施形態の補正用測定環境構成物60が示される。補正用測定環境構成物60もまた滅菌処理され、上記包装に同胞される。図1に示す包装用トレイ30の部分31又は部分32に補正用測定環境構成物60用の収納部が設けられ、これに補正用測定環境構成物60は収納される。
補正用測定環境構成物60が部分31に収納される場合は、補正用測定環境構成物60はプローブ10と分離して収納される。補正用測定環境構成物60が部分32に収納される場合は、補正用測定環境構成物60にプローブ10の先端部11が図6に示す状態まで挿入されて収納される。
【0030】
使用者は、包装を解いてプローブ10のコネクタ部12を図2に示すように、ベースユニット20の接続部21に接続する。
ベースユニット20には、照射光の光源装置と、生体組織等からの放射光の光強度を検出するための検出器と、演算処理装置とが備えられる。
【0031】
(プローブの基本構成例)
ここで、プローブの基本構成例につき説明する。
光学測定によって体内診断を行うためのプローブは、その一端が体内に挿入され、生体組織に光を照射して生体組織によって反射された又は生体組織から発せられた光を取り込む光学系を有し、他端が光源装置及び検出器を有する装置(本実施形態においてはベースユニット20)に接続される機構を有する構成をとる。
プローブは、光学測定用の励起光や生体組織が発した光を導光するための一本以上の光ファイバを有する。プローブに構成される最も単純な光学系は、図3(a)に示した一本の導光用光ファイバ14aから成るものである。これに加えて、レンズやプリズム等の光学素子を有する場合もある。具体的には、図3(a-1)や図3(b)のように、集光効率を上げるためにファイバ先端にレンズ15を挿入した構成や、図3(c)のように、光の進行方向を変え、導光用光ファイバ14dと略平行な生体組織50を観察・測定するためにプリズム又はミラーである光学部品16を挿入した構成である。図3(c)に示すように、導光用光ファイバ14dの軸と垂直な方向に光を出射するプローブには、一般に導光用光ファイバ14dの先にプリズム又はミラーである光学部品16を配置し、光線を反射させてその進行方向を変える方法が適用されている。ここで、プリズム又はミラーである光学部品16の反射面の形状は、平面、放物面および球面が一般的であるが、これらに限らない。
また、図3(b)のように、生体組織50に照射光を照射する照射光導光用光ファイバ14bと生体組織50からの放射光を受光する信号光導光用光ファイバ14cに機能を分担したり、図3(d)のように、測定面積を増やす、又は集光効率若しくは集光量を高めたりする目的で、複数本の導光用光ファイバ14e,14f,14g・・・を用いる構成も採用されることがある。
【0032】
一般にこのようなプローブでは、一回の測定で生体組織のある一点の測定を行うものと、同時に複数点の測定を行うものとに大別されるが、本実施形態ではその両者を区別せずに合わせて説明する。想定される典型的なプローブ構成例は、図3に示した通りである。
プローブの基端側は、前述の光ファイバを、光源装置及び検出器を有する装置に接続、固定するための機構を有する。例えば、SMA、FC、ST、LC及びSC等の通常光ファイバを接続するための機構が用いられるが、これらに限らない。光ファイバが複数本あり、そのコネクタも複数となる場合は、個々のコネクタがケース又はカバーの中に設置されて固定され、その全体が図1及び図2に示したコネクタ部12に相当することとなる。
プローブ全体及び補正用測定環境構成物60は、滅菌された状態で使用者に提供されるため、用いられる材料は、必要な滅菌作業に耐えるものが選択される。
【0033】
(補正用測定環境構成物の構成)
ここで、本実施形態の補正用測定環境構成物60につき図4〜図7を参照して詳細に説明する。
補正用測定環境構成物60は、第1部品61と、第2部品62と、Oリング63と、第1シート64と、第2シート65とから構成される。
第1部品61は、プローブ保持孔61aと、これより大径のOリング保持孔61bとを中心軸A上に連続させた段付き貫通孔を有した筒状体である。
第2部品62は、部品連結孔62aと、これより小径の底穴62bとを中心軸A上に連続させた段付き穴を有したもので、外形は任意である。部品連結孔62aの一端は外に開口し、部品連結孔62aと反対側の底穴62bの一端は塞がれて底面を構成している。
底穴62bの底面に第2シート65が接着により設置される。
部品連結孔62a側から底穴62bの開口端を塞ぐように第1シート64が配置され、第1シート64の周縁部が段差部分の面62cに接着により固定される。
Oリング63がOリング保持孔61bに圧入された後、第1部品61のOリング保持孔61bが形成された端部が部品連結孔62aに挿入されて、第1部品61と、第2部品62と、Oリング63とが一体に組み立てられる。プローブ保持孔61aのOリング保持孔61bと逆側の開口部は、プローブ10の先端部11が挿入される開口部66を構成する。部品連結孔62aは、第1部品61の外径に対して嵌め合い公差を持った内径で構成されて、第1部品61と第2部品62とは、しまり嵌めにより固定される。又は、接着により第1部品61と第2部品62とを固定してもよい。
【0034】
第1部品61及び第2部品62は、成型により製作され、開口部66に先端部11が挿入された図6及び図7に示す状態にて内部空間への外光の入射を遮る遮光性を獲得するため、また先端部11から照射された光の散乱によるノイズを防ぐために、黒色の成形材料が用いられる。
【0035】
第1シート64は、先端部11に図6に示す既知の光学的環境が与えられる状態において、本システム1による補正用測定の対象となる所定の測定対象物質で構成される。
また第1シート64は、図6に示す光学的環境に置かれた先端部11に対向する隔壁部材に相当する。
第2シート65は、先端部11に図7に示す既知の光学的環境が与えられる状態において、本システム1による補正用測定の対象となる所定の測定対象物質で構成される。
【0036】
図6に示すように、プローブ10の先端部11が開口部66から挿入され、先端部11の先端周縁部がOリング63に突き当たると、Oリング63は先端部11を所定の係止力をもってさらなる挿入を規制する。かかる規制状態で先端部11が第1シート64に対して所定の距離に配置されて既知の光学的環境に置かれる。
【0037】
図6に示す既知の光学的環境に置かれた先端部11を、Oリング63による所定の係止力を超える挿入力によりさらに押し込むと、Oリング63は先端部11の前進を許容し、先端部11が隔壁部材である第1シート64を突き押すことによって、第1シート64が破られて、隔壁部材が開放され、図7に示す異なる既知の光学的環境が補正用測定環境構成物60の内部空間内に展開される。図7に示す光学的環境は、本実施形態においては、遮光された内部空間においてプローブ10の先端部11の先端面が第2シート65に当接した状態によって与えられる。
【0038】
以上のように第1シート64は破られるので、第1シート64は、プローブ10の先端部11の挿入圧で破ることが可能な強度(材料の機械的性質及び厚み)で構成される。第2シート65の強度は問わない。
【0039】
さらに使用手順に沿って補足説明する。
使用者はプローブ10の先端部11を開口部66に挿入する。この時の挿入性は、先端部11の外径とプローブ保持孔61aの内径とを適度な嵌め合い公差で決定しておき、プローブ10がプローブ保持孔61aから滑り落ちない程度のすきま嵌めにするのが好ましい。
圧入されたOリング63と接触する所まで先端部11を挿入すると、Oリング63との摩擦によりプローブの挿入性が変化する為、使用者は図6に示す既知の光学的環境下による第1の補正用測定を実施できる挿入状態を認識することができる。
本システム1により第1の補正用測定が実行された後、プローブ10を強く挿入すると、Oリング63が先端部11によって押し広げられるように変形することで先端部11が潤滑し、第1シート64を突き破る。この時、先端部11は底穴62b内に挿入されていき、破れた第1シート64は、底穴62bの内周面と先端部11の外周面との隙間に逃げ、先端部11の挿入を妨げることはない。そのため、底穴62bの内径は、先端部11より上記隙間を残す程度に大径にされる。また、第1シート64の破れ始めの位置に関係なく、破れた第1シート64が先端部11の先端面と第2シート65との間に挟まれないように、底穴62bの深さL1は、底穴62bの直径以上の十分な長さに構成される。
先端部11が底穴62bの底まで挿入されると、先端部11が第2シート65に当接してプローブ10が止まるため、使用者は図7に示す既知の光学的環境下による第2の補正用測定を実施できる挿入状態を認識することができる。
【0040】
(補正の手順)
改めて、システム全体の動作を含めて本実施形態の補正用測定環境構成物60を用いた補正の手順につき説明する。
使用者は、本プローブ10を使用する際には、まず滅菌された包装からプローブ10を取り出す。その後、プローブ10のコネクタ部12をベースユニット20に接続する。
ベースユニット20の接続部21に、スイッチやセンサなどの検出手段を設けておくことで、ベースユニット20は、プローブ10が接続されたことを自動検知し、補正用測定手順が実行される。ここで、本システム1は、音声や画面表示の少なくともいずれか一つによって、使用者に第1の補正用測定の手順を案内する。
使用者は、その案内に従って、補正用測定環境構成物60が部分31に収納されている場合は、補正用測定環境構成物60に先端部11を挿入し、補正用測定環境構成物60が部分32に収納される場合は、補正用測定環境構成物60に先端部11が正しく挿入されていることが確認する。これにより先端部11は、図6に示す既知の光学的環境に置かれる。その後、使用者はベースユニット20に第1の補正用測定開始の命令を入力し、ベースユニット20の光源装置からの光がファイバ先端部まで導光され、第1シート64に向けて出射される。このときプローブ10に得られた信号光がベースユニット20内の検出器に入力される。なお、補正用測定環境構成物60が部分32に収納される場合は、使用者による挿入作業を省くことができるため、作業性が向上する。補正用測定環境構成物60が部分31に収納されている場合は、使用者に挿入作業を担わせて補正用測定のための作業をより確実に意識的に行わせることで注意を喚起し、誤った手順で実施されることを抑制する効果がある。
【0041】
検出器に信号光が入力されると、ベースユニット20に備えられる演算処理装置は、得られた光量、分光特性に関する検出器の出力値を記憶保持する。
次に、本システム1は、使用者に第1の補正用測定の完了を表示するとともに、第2の補正用測定の手順を案内する。
使用者は、その案内に従って、プローブ10の先端部11を奥まで押し込む。これにより先端部11は、図7に示す既知の光学的環境に置かれる。その後、使用者はベースユニット20に第2の補正用測定の開始命令を入力し、ベースユニット20の光源装置からの光がファイバ先端部まで導光され、第2シート65に向けて出射される。このときプローブ10に得られた信号光がベースユニット20内の検出器に入力される。
【0042】
検出器に信号光が入力されると、ベースユニット20に備えられる演算処理装置は、得られた光量、分光特性に関する検出器の出力値を保持する。
同演算処理装置は、第1及び第2の補正用測定より得られた光量、分光特性に関する検出器の出力値と、あらかじめ設定されている値と比較する。ここで、同演算処理装置は、得られたデータが適正な誤差範囲に入っているかの判断、または適正な結果に補正するための補正係数の算出などを行う。これをベースユニット20内のメモリに保管しておき、その後の測定結果を補正するために用いる。すなわち、同演算処理装置は、補正用測定環境構成物60による光学的環境で測定した補正用測定結果を保持記憶し、当該補正用測定結果に基づき、あらかじめ定められたアルゴリズムに則って、生体組織を対象とした生体測定結果に補正をかける演算処理を実行する。
また、同演算処理装置は、得られた補正用測定時の出力値があらかじめ設定されている値と大きく異なる場合に、使用者に補正用測定が適切に完結しなかった旨を伝える。これにより、使用者は再度測定を行うか、そのプローブが不良であると判断し、新しいプローブを準備する。
すべての補正用測定が終了したら、本システム1は補正用測定の完了を画像又は音声により表示し、使用者はプローブ10の先端部11を補正用測定環境構成物60から抜き出し、内視鏡の鉗子チャンネルに挿入し、被験者の体内へ導く。
【0043】
なお、本発明のプローブの体内への挿入形態は、内視鏡に形成されたチャネルを通して行う形態のものであっても良いし、内視鏡とは独立して単体で体内に挿入される形態であってもよい。
また、補正用測定環境構成物60に対する先端部11の移動操作をアクチュエータと制御装置を用いて自動で行うようにシステムを構成してもよい。手動で行う場合は一連の補正用測定のための作業が確実に完了するまでの過程を使用者が容易に認識することができるため、補正用測定が未完了の状態で測定作業に移ることを防ぐことができる。自動で行う場合は、補正用測定中に使用者が別の作業に従事することが可能であるため、使用者の作業負担が軽減できる。
【0044】
蛍光は、広義には、X線や紫外線、可視光線が照射された被照射物が、そのエネルギーを吸収することで電子が励起し、それが基底状態に戻る際に余分なエネルギーを電磁波として放出するものである。ここでは、励起光(参照光)によって、その波長とは異なった波長の蛍光が戻り光として生じるので、検出器において入力された放射光を波長分光して、これを演算処理装置が上述したように補正し、解析して、発生した蛍光量を測定する。演算処理装置は、この蛍光測定データをデータ記録装置に記録したり、画像表示装置に表示したりするデータ処理を行う。また、内視鏡で撮像された生体組織の表面画像と蛍光測定データとを重ね合わせた画像を合成するデータ処理を行い、またこれをデータ記録装置に記録したり、画像表示装置に表示したりするデータ処理を行う。
【0045】
〔第2実施形態〕
次に、本発明の第2実施形態につき図8〜図11を参照して説明する。
本実施形態は、上記第1実施形態における補正用測定環境構成物60に代え、図8〜図11に示し以下に説明する補正用測定環境構成物70を適用したものであり、以下に説明する事項を除き、利用されるシステム及び手順は上記第1実施形態と同様である。
【0046】
本実施形態の補正用測定環境構成物70は、第1部品71と、第2部品72と、第1シート74と、第2シート75とから構成される。
第1部品71は、プローブ保持孔71aと、孔71bと、孔71cと、部品保持孔71dとを中心軸B上に連続させた段付き貫通孔を有した筒状体である。
孔71bはプローブ保持孔71aより小径に形成されており、これによりプローブ係止用の係止構造71eが形成されている。
孔71cは孔71bより大径に形成されている。部品保持孔71dは孔71cより大径に形成されている。
【0047】
第2部品72は、段階的に径が大きくなる突起部72aと、中間部72bと、頭部72cとを中心軸B上に連続させた段付き柱状体であるとともに、突起部72aの先端面に開口する穴72dが中心軸Bを中心に形成されている。
穴72dの底面に第2シート75が接着により設置される。
部品保持孔71d側から孔71cの開口端を塞ぐように第1シート74が配置され、第1シート74の周縁部が段差部分の面71gに接着により固定される。
第2部品72の突起部72a及び中間部72bが部品保持孔71dに挿入されて、第1部品71と、第2部品72とが一体に組み立てられる。
プローブ保持孔71aの孔71bと逆側の開口部は、プローブ10の先端部11が挿入される開口部76を構成する。
【0048】
第1部品71及び第2部品72は、成型により製作され、開口部76に先端部11が挿入された図10及び図11に示す状態にて内部空間への外光の入射を遮る遮光性を獲得するため、また先端部11から照射された光の散乱によるノイズを防ぐために、黒色の成形材料が用いられる。
【0049】
第1シート74は、先端部11に図10に示す既知の光学的環境が与えられる状態において、本システム1による補正用測定の対象となる所定の測定対象物質で構成される。
また第1シート74は、図10に示す光学的環境に置かれた先端部11に対向する隔壁部材に相当する。
第2シート75は、先端部11に図11に示す既知の光学的環境が与えられる状態において、本システム1による補正用測定の対象となる所定の測定対象物質で構成される。
【0050】
図10に示すように、プローブ10の先端部11が開口部76から挿入され、先端部11の先端周縁部が係止構造71eに突き当たると、係止構造71eは先端部11のさらなる挿入を規制する。かかる規制状態で先端部11が第1シート74に対して所定の距離に配置されて既知の光学的環境に置かれる。
【0051】
図10に示す既知の光学的環境に置かれた先端部11の反対側に位置する第2部品72を、先端部11を保持する第1部品71に対して、先端部11側に向けて押し込むと、突起部72aが隔壁部材である第1シート74を突き押すことによって、第1シート74が破られて、隔壁部材が開放され、図11に示す異なる既知の光学的環境が補正用測定環境構成物70の内部空間内に展開される。図11に示す光学的環境は、本実施形態においては、遮光された内部空間においてプローブ10の先端部11の先端面と、第2シート75とが所定間隔を隔てて対峙した状態によって与えられる。
【0052】
以上のように第1シート74は破られるので、第1シート74は、プローブ10の先端部11の挿入圧で破ることが可能な強度(材料の機械的性質及び厚み)で構成される。第2シート75の強度は問わない。
【0053】
さらに使用手順に沿って補足説明する。
使用者はプローブ10の先端部11を開口部76に挿入する。この時の挿入性は、先端部11の外径とプローブ保持孔71aの内径とを適度な嵌め合い公差で決定しておき、プローブ10がプローブ保持孔71aから滑り落ちない程度のすきま嵌めにするのが好ましい。
係止構造71eと接触する所まで先端部11を挿入すると、係止構造71eにより係止されて、その感覚が使用者に伝わる為、使用者は図10に示す既知の光学的環境下による第1の補正用測定を実施できる挿入状態を認識することができる。
本システム1により第1の補正用測定が実行された後、第2部品72の頭部72cを押すことによって、第2部品72を第1部品71内に押し込んでいくと、突起部72aが前進して第1シート74を突き破り、やがて頭部72cが第1部品71の端面71fに当接して止まる。この時、突起部72aは孔71cに挿入されていき、破れた第1シート74は、孔71cの内周面と突起部72aの外周面との隙間に逃げ、突起部72aの挿入を妨げることはない。そのため、孔71cの内径は、突起部72aより上記隙間を残す程度に大径にされる。また、第1シート74の破れ始めの位置に関係なく、破れた第1シート74が突起部72aの先端面と係止構造71eとの間や、孔71bと穴72dとの間に入り込まないように、孔71cの長さL2は、孔71cの直径以上の十分な長さに構成される。
第2部品72を第1部品71に押し込むと、頭部72cが第1部品71の端面71fに当接して第2部品72が第1部品71に対して止まるため、使用者は図11に示す既知の光学的環境下による第2の補正用測定を実施できる挿入状態を認識することができる。
第2部品72の中間部72bの外周面と、部品保持孔71dの内周面とが摩擦摺動するように、中間部72bの外径と、部品保持孔71dの内径とは嵌め合い公差を持って設定される。
【0054】
なお、係止構造71eによってプローブの先端部11の出入光部を遮らないように、係止構造71eの内側に配置される孔71bの内径が選定され、その限りにおいて、十分な面積を持って係止構造71eが先端部11に突き当たるのが好ましい。
係止構造71eの厚みは、挿入されたプローブの光軸方向に対しては極力薄い構造であることが望ましい。第1シート74や第2シート75と先端部11との距離を縮められるためである。
【0055】
また、図10に示す状態における先端部11と第1シート74との距離や、図11に示す状態における先端部11と第1シート74との距離は、孔71b、71cの長さや、穴72dの深さなどを含めた部品71,72の形状により設計することができ、等しい距離にすることも、異なった距離にすることもできる。等しい距離にすることが条件となる場合にも、これに応じて等しい距離に設定できるため、補正の精度に影響を与えることなく2種類の補正が実施できる。
また、穴72dの内径は、プローブからの光に干渉しない程度に大きな寸法にすることが望ましい。
【0056】
本実施形態によれば、補正用測定環境構成物70にプローブを挿入することで、第1の補正用測定を実施可能な状態にする手順を使用者に行わせ、これと大きく異なった第2部品72を押し込むという作業により第2の補正用測定を実施可能な状態にするので、本システムの使用者に対して第2の補正用測定を実施可能な状態への移行をより確実に実感させることに効果的であり、誤った手順をより確実に低減させることができる。
【0057】
〔第3実施形態〕
次に、本発明の第3実施形態につき図12〜図15を参照して説明する。
本実施形態は、上記第1実施形態における補正用測定環境構成物60に代え、図12〜図15に示し以下に説明する補正用測定環境構成物80を適用したものであり、以下に説明する事項を除き、利用されるシステム及び手順は上記第1実施形態と同様である。
【0058】
本実施形態の補正用測定環境構成物80は、プローブ10の先端部11が挿入される開口部86を有し、これに連通した内部空間が形成された構成を有する。図12に示す外形は一例であって補正用測定環境構成物80の外形は任意である。
図13に示すように補正用測定環境構成物80は、第1部品81と、第2部品82と、第1シート84と、第2シート85とから構成される。
第1部品81は、プローブ保持孔81aと、これより拡幅された矩形空間81bとを中心軸C上に連続させた段付き貫通孔を有した筒状体である。
第1シート84及び第2シート85は、矩形空間81bの軸C方向に垂直な断面に相当する矩形状に形成されている。
【0059】
プローブ保持孔81aの矩形空間81bへの開口を塞ぐように第1シート84が配置され、第1シート84の一辺部が段差部分の面81c(図14参照)に接着により固定される。このとき、第1シート84の他の3辺は矩形空間81bと嵌め合い公差をもって半固定される。また、嵌め合いとともに又は嵌め合いに代えて、他の3辺を着脱容易な弱い接着力をもって半固定しておく。
第2シート85は、第2部品82の一面の中央凸部82aに接着により固定される。中央凸部82aが矩形空間81bに嵌め入れられ、矩形空間81bの周囲の第1部品81の端面と、中央凸部82aの周囲の第2部品82の端面とが接着により接合され、矩形空間81bの開口端が塞がれて組立てられる。このとき、第2シート85は矩形空間81b内に収まり、プローブ保持孔81aの中心軸C上に、第2シート85が配置される。なお、第1部品81と第2部品82との固定は、接着剤を使用せずに、中央凸部82aと矩形空間81bとの嵌め合いによるしまり嵌めのみによってもよい。
【0060】
第1部品81及び第2部品82は、成型により製作され、開口部86に先端部11が挿入された図14及び図15に示す状態にて内部空間への外光の入射を遮る遮光性を獲得するため、また先端部11から照射された光の散乱によるノイズを防ぐために、黒色の成形材料が用いられる。
【0061】
第1シート84は、先端部11に図14に示す既知の光学的環境が与えられる状態において、本システム1による補正用測定の対象となる所定の測定対象物質で構成される。
また第1シート84は、図14に示す光学的環境に置かれた先端部11に対向する隔壁部材に相当する。
第2シート85は、先端部11に図15に示す既知の光学的環境が与えられる状態において、本システム1による補正用測定の対象となる所定の測定対象物質で構成される。
【0062】
図14に示すように、プローブ10の先端部11が開口部86から挿入され、先端部11の先端面が第1シート84に突き当たると、第1シート84は先端部11を所定の係止力をもってさらなる挿入を規制する。かかる規制状態で先端部11が第1シート84に当接した状態にされて既知の光学的環境に置かれる。
【0063】
図14に示す既知の光学的環境に置かれた先端部11を、第1シート84による所定の係止力を超える挿入力によりさらに押し込むと、第1シート84は先端部11の前進を許容し、先端部11が隔壁部材である第1シート84を突き押すことによって、第1シート84が撓み、隔壁部材が開放され、図15に示す異なる既知の光学的環境が補正用測定環境構成物80の内部空間内に展開される。図15に示す光学的環境は、本実施形態においては、遮光された内部空間においてプローブ10の先端部11の先端面が第2シート85に当接した状態によって与えられる。
【0064】
さらに使用手順に沿って補足説明する。
使用者はプローブ10の先端部11を開口部86に挿入する。この時の挿入性は、先端部11の外径とプローブ保持孔81aの内径とを適度な嵌め合い公差で決定しておき、プローブ10がプローブ保持孔81aから滑り落ちない程度のすきま嵌めにするのが好ましい。
第1シート84と接触する所まで先端部11を挿入すると、第1シート84との接触によりプローブの挿入性が変化する為、使用者は図14に示す既知の光学的環境下による第1の補正用測定を実施できる挿入状態を認識することができる。
本システム1により第1の補正用測定が実行された後、プローブ10を強く挿入すると、第1シート84が先端部11によって押し退けられ、図15に示すように第1シート84が先端部11の前方から側方に退避する。この時、先端部11は矩形空間81b内に挿入されていき、側方に退避した第1シート84は、矩形空間81bの内面と先端部11の外周面との隙間に逃げ、先端部11の挿入を妨げることはない。そのため、矩形空間81bの少なくとも第1シート84の固定端側は、上記隙間を残す程度に先端部11より外側に空間が形成される。また、第1シート64が先端部11の先端面と第2シート85との間に挟まれないように、矩形空間81bの長さL3は、側方に退避した第1シート84の軸C方向の延在長さL4以上の十分な長さに構成される。
先端部11が第2シート85に当接することにより、使用者は図15に示す既知の光学的環境下による第2の補正用測定を実施できる挿入状態を認識することができる。
【0065】
なお、先端部11と第1シート84とを所定距離隔てた状態で第1の補正用測定を実施する場合には、上記第1実施形態で説明したOリングによる係止構造を第1シート84の手前(開口部86寄り)に構成することで良好に実施できる。
【0066】
〔第4実施形態〕
次に、本発明の第4実施形態につき説明する。
本実施形態は、上記第3実施形態における補正用測定環境構成物80における第1シート84を弾性回復力により展張して閉塞状態に回復可能な構成としたものであり、以下に説明する事項を除き、補正用測定環境構成物80の構成、利用されるシステム及び手順は上記第3実施形態と同様である。
【0067】
まず、第1シート84の少なくとも図15に示す状態において屈曲する部分を必要な弾性特性を持つように構成する。例えば、所定の測定対象物質からなる可撓性のシートを弾性材料よりなる基材に貼付した構成としてもよい。
図15に示すように先端部11が補正用測定環境構成物80の奥まで挿入され、第2シート85を測定対象とした補正用測定が可能な状態で、図1に包装用トレイの部分32に示した補正用測定環境構成物80を収納して包装し、プローブ一式を使用者に提供する。 かかる状態においては、隔壁部材である第1シート84は、補正用測定環境構成物80の内部空間内で一の光学的環境に置かれた先端部11の側方に先端部11によって弾性変形を伴って押し退けられている。
この包装時のままの状態、すなわち、図15に示す第2シート85を測定対象として第1の補正用測定を行うこととする。
第1の補正用測定の実行後、使用者がプローブ10を図14に示す状態まで引き出す。使用者にとってその引き出し量が分かるように、先端部11の外周面の図14に示す状態において開口部86から露出する部位に目印を設けておくことで容易に実施できる。
図15に示す状態から、使用者がプローブ10を図14に示す状態まで引き出す過程において、第1シート84は、先端部11の後退移動によりその弾性回復力により展張して先端部11の前方を遮蔽する。これよって、図15とは異なる一の光学的環境が図14に示すように展開される。この光学的環境で第2の補正用測定を実行する。その後、使用者がプローブ10を補正用測定環境構成物80から完全に抜き出して、生体組織の測定に使用する。
【0068】
本実施形態の場合は、補正用測定環境構成物80がプローブ10の先端部11の保護キャップとして機能するとともに、使用者にとっては、プローブの通常の使用準備作業としての保護キャップからプローブを抜き出すという動作の中で一旦止めるだけで、補正用測定を実施できるため、使用者の作業性が向上する。
また、本実施形態のように、隔壁部材(第1シート84)がその弾性回復力により展張して閉塞状態に回復可能な構成とする場合には、図14に示す第1シート84を測定対象とした状態での補正用測定を先に行い、図15に示す第2シート85を測定対象とした状態での補正用測定を後に行うか、前者を後に後者を先に行うかの順序は問わない。
上記第1及び第2実施形態では、隔壁部材である第1シート64,74を破った後は、第1シート64,74を対象とした補正用測定を実施できない。
これに対し本実施形態にあっては、図14及び図15に示すいずれの状態も、プローブ10の先端部11の送り動作により繰り返し復元できるので、奥側の第2シート85を対象とした補正用測定の後であっても、いずれの補正用測定も繰り返し実施することができる。
【0069】
以上の実施形態においては、励起光を測定対象部位へ照射するとともに、この励起光に起因して生じる蛍光を受光することとして説明したが、照射光に起因して生じる散乱光またはラマン散乱光を受光することとしてもよい。これらの場合であっても、生体組織の変性や癌などの疾患状態の診断を行うことができる。
また、先端部11に、撮像素子を設置して、受光した信号光を電気信号に変換して、先端部11からプローブ基端まで、さらにベースユニット20の検出器まで電気信号ケーブルにより伝送する構成を採用しても、実施可能であることは勿論である。すなわち、どの段階でどのような形態の信号にされるかは本発明の実施に影響する事項ではない。
【0070】
また、以上の実施形態においては、第1の補正用測定及び第2の補正用測定における光学的環境に所定の測定対象物を設置したが、所定の測定対象物を設置せず、単に外部から遮光された空間(暗室)にプローブ10の先端部11を置くことをもって先端部11に既知の光学的環境を与えても良い。この構成は、上述した第2種の補正に適用できる。
【0071】
また、以上の実施形態においては、第1の補正用測定と第2の補正用測定とからなる2種の補正用測定を行う構成につき説明したが、3種以上の補正用測定が可能、すなわち、それぞれ既知で異なる3以上の光学的環境を先端部11に与えるように、隔壁部材を増設して隔壁部材により内部空間を3以上に仕切るようにすれば実施可能である。
【0072】
また、以上の実施形態においては、図3(a) ,(a-1),(b)及び(d)に例示した先端方向に照射光を照射し、先端方向からの放射光を受光する形態のプローブについて実施する場合につき説明したが、図3(c)に例示した側方に照射光を照射し、側方からの放射光を受光する形態のプローブについても本発明は実施可能である。その場合、例えば、上記第1実施形態において、第1シート64を排除又は単に隔壁部材として残し、プローブ10の先端部11の側方に各補正用測定のための必要な遮光された空間や測定対象物質を設置することで実施できる。また、上記第3実施形態において、第1シート84を単に隔壁部材として残し、プローブ10の先端部11の側方に各補正用測定のための必要な遮光された空間や測定対象物質を設置することで実施できる。
【符号の説明】
【0073】
1 光学測定システム
10 プローブ
11 先端部
12 コネクタ部
12a 面(接続時の上面)
13 ケーブル部
14(a〜g) 導光用光ファイバ
15 レンズ
16 光学部品
17 外装チューブ
20 ベースユニット
30 包装用トレイ
60 補正用測定環境構成物
61 第1部品
61a プローブ保持孔
61b Oリング保持孔
62 第2部品
62a 部品連結孔
62b 底穴
62c 面(第1シート貼付面)
63 Oリング
64 第1シート(隔壁部材)
65 第2シート
66 開口部(プローブ挿入用)
70 補正用測定環境構成物
71 第1部品
71a プローブ保持孔
71b 孔
71c 孔
71d 部品保持孔
71e 係止構造
71f 端面
71g 面(第1シート貼付面)
72 第2部品
72a 突起部
72b 中間部
72c 頭部
72d 穴
74 第1シート(隔壁部材)
75 第2シート
76 開口部(プローブ挿入用)
80 補正用測定環境構成物
81 第1部品
81a プローブ保持孔
81b 矩形空間
81c 面(第1シート貼付面)
82 第2部品
82a 中央凸部
84 第1シート(隔壁部材)
85 第2シート
86 開口部(プローブ挿入用)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体組織の測定対象部位に照射光を照射して測定対象部位から放射される放射光を受光するためのプローブの先端部が挿入される開口部を有し、前記開口部に連通し、前記開口部から挿入された前記先端部にそれぞれ既知で相互に異なる光学的環境を与える内部空間を有する補正用測定環境構成物であって、
前記内部空間内で一の前記光学的環境に置かれた前記先端部の挿入方向に沿った当該先端部の移動又は部品の移動に従って、異なる一の前記光学的環境を前記先端部に与えるプローブの補正用測定環境構成物。
【請求項2】
前記内部空間内で一の前記光学的環境に置かれた前記先端部に対向する隔壁部材が開放されて、異なる一の前記光学的環境を前記先端部に与える請求項1に記載のプローブの補正用測定環境構成物。
【請求項3】
前記内部空間内で一の前記光学的環境に置かれた前記先端部を前進させて前記隔壁部材を突き押させることによって、前記隔壁部材が開放されて異なる一の前記光学的環境を前記先端部に与える請求項2に記載のプローブの補正用測定環境構成物。
【請求項4】
前記内部空間内で一の前記光学的環境に置かれた前記先端部の逆側から前記部品に前記隔壁部材を突き押させることによって、前記隔壁部材が開放されて異なる一の前記光学的環境を前記先端部に与える請求項2に記載のプローブの補正用測定環境構成物。
【請求項5】
前記内部空間内で一の前記光学的環境に置かれた前記先端部の側方に前記先端部によって弾性変形を伴って押し退けられた隔壁部材が、前記先端部の後退移動によりその弾性回復力により展張して前記先端部の前方を遮蔽することによって、異なる一の前記光学的環境を前記先端部に与える請求項1に記載のプローブの補正用測定環境構成物。
【請求項6】
少なくとも前記開口部に前記先端部が挿入された状態にて前記内部空間への外光の入射を遮る遮光性を有することを特徴とする請求項1から請求項5のうちいずれか一に記載のプローブの補正用測定環境構成物。
【請求項7】
前記光学的環境のうちいずれか1又は2以上のそれぞれについて補正用測定の対象となる所定の測定対象物質を内蔵することを特徴とする請求項1から請求項6のうちいずれか一に記載のプローブの補正用測定環境構成物。
【請求項8】
前記隔壁部材が補正用測定の対象となる所定の測定対象物質から構成されたことを特徴とする請求項1から請求項7のうちいずれか一に記載のプローブの補正用測定環境構成物。
【請求項9】
前記開口部から挿入された前記先端部を所定の位置でさらなる挿入を規制する係止構造が構成されており、当該係止構造による規制状態で前記先端部が一の前記光学的環境に置かれることを特徴とする請求項1から請求項8のうちいずれか一に記載のプローブの補正用測定環境構成物。
【請求項10】
前記係止構造は、前記先端部を所定の係止力をもってさらなる挿入を規制するとともに前記所定の係止力を超える挿入力により前記先端部の前進を許容して、異なる一の前記光学的環境を前記先端部に与えるための前記先端部の移動を許容することを特徴とする請求項9に記載のプローブの補正用測定環境構成物。
【請求項11】
請求項1から請求項10のうちいずれか一に記載のプローブの補正用測定環境構成物と、
生体組織の測定対象部位に照射光を照射して測定対象部位から放射される放射光を受光するためのプローブと、を同一の包装体内に包装したプローブ包装物。
【請求項12】
前記プローブの前記先端部が前記開口部に挿入されて一の前記光学的環境に置かれた状態で前記包装体内に包装されてなる請求項11に記載のプローブ包装物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2012−149902(P2012−149902A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−6754(P2011−6754)
【出願日】平成23年1月17日(2011.1.17)
【出願人】(303000408)コニカミノルタアドバンストレイヤー株式会社 (3,255)
【Fターム(参考)】