説明

ヘッダプレートレス型の熱交換器

【課題】 ヘッダプレートを有しない熱交換器において、各偏平チューブ間に生じる隙間を完全に閉塞することができるものの提供。
【解決手段】 偏平チューブ4の側壁1の長手方向両端縁に隣接し、ヘッダ部7内面に凸条8を形成し、その凸条8が偏平チューブ4間に形成される隙間13を埋めるように被嵌され、その凸条8と偏平チューブ4とが一体にろう付けされる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、EGRクーラ等に用いられるヘッダプレートレス型の熱交換器に関し、特に積層される偏平チューブ間に形成されるヘッダ側の隙間を、確実に閉塞できる構造の簡単なものに関する。
【背景技術】
【0002】
両端部が膨出した偏平チューブを積層してコアを構成し、そのコア外周にケーシングを被嵌したヘッダプレートレス型の熱交換器につき、ケーシングとコアとの隙間を閉塞する提案が下記特許文献に記載されている。
これらはいずれも、図9に示すごとく、互いに溝型に形成された一対の溝型プレート2、溝型プレート3を互いに逆向きに重ね合わせて偏平チューブ4を形成し、その偏平チューブ4の両端部が厚み方向に膨出されている。このような偏平チューブ4を積層してコア5を形成し、そのコア5外周にケーシング6を被嵌したものである。そのコア5の端部はケーシング6により閉塞され、ヘッダ側よりみて隙間がないとされる。そして、コア5の長手方向両端にヘッダが配置され、コア5の中間部外面には第2流体が流通するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】WO 2006/102736 A1
【特許文献2】特開2007−225190号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
コア5の長手方向両端部は、ケーシング6により閉塞するとされているものの、実際には図9のごとく、各偏平チューブ4の幅方向両端において、隙間13が形成される。すると、ヘッダ側の流体がこの隙間13を介してケーシング内部に漏れるおそれがある。
そこで、本発明は係る隙間13を完全に閉塞する構造の簡単なヘッダプレートレス型の熱交換器を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に記載の本発明は、その長手方向の両端部の側壁(1) の高さが、他の部分より高く形成された一対の溝型プレート(2) (3) を互いに逆向きに嵌着して、その両端部に膨出部(14)を有する偏平チューブ(4)が形成され、
複数の偏平チューブ(4)を積層してコア(5)が形成され、そのコア(5)の外周にケーシング(6)が被嵌され、コア(5)の両端の延長上にヘッダ部(7) が配置されるヘッダプレートレス型の熱交換器において、
前記偏平チューブ(4)の側壁(1) の側で、その長手方向両端縁に隣接し、前記ヘッダ部(7) の内面に凸条(8) がプレス成形され、その凸条(8) が各偏平チューブ(4)間に形成される隙間(13)を埋めるように被嵌され、その凸条(8) と各偏平チューブ(4)とが一体にろう付けされたヘッダプレートレス型の熱交換器である。
【0006】
請求項2に記載の本発明は、その長手方向の両端部の側壁(1) の高さが他の部分より高く形成された一対の溝形プレート(2) (3) を互いに逆向きに嵌着して偏平チューブ(4)が形成され、
複数の偏平チューブ(4)を積層してコア(5)が形成され、そのコア(5)の外周にケーシング(6)が被嵌され、そのケーシング(6)の両端に一対のタンク本体(9) が嵌着されるヘッダプレートレス型の熱交換器において、
前記タンク本体(9) の端面(9a)が前記コア(5)の周縁に接触して、各偏平チューブ(4)間の隙間(13)を埋めるように配置され、その端面(9a)と偏平チューブ(4)の端面(4a)とが一体にろう付けされたヘッダプレートレス型の熱交換器である。
【発明の効果】
【0007】
本発明の熱交換器は、ヘッダプレートを有しないものにおいて、積層される複数の偏平チューブ4間に形成される隙間13が、ヘッダ部7内面にプレス成形された凸条8により埋められ、その凸条8と偏平チューブ4とが一体にろう付けされるので、ヘッダ部7内の流体が隙間13からケーシング側に漏れることを簡単な構造で防止することができる。
請求項2に記載の発明によれば、タンク本体9の端面9aが偏平チューブ4の端面4aに接して偏平チューブ4間に生じる隙間13を埋めるように配置されたから、タンク本体9内の流体が隙間13を介して、ケーシング側に漏れることを簡単な構造により防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の熱交換器の縦断面図。
【図2】同熱交換器の要部分解図。
【図3】図1のIII−III矢視断面拡大図。
【図4】同熱交換器の要部斜視図。
【図5】本発明の第2実施形態を示し、図3と同一の方向から見たもの
【図6】同第3実施形態の横断面図。
【図7】第2の本発明の縦断面図。
【図8】図7のVIII−VIII矢視断面図。
【図9】従来型熱交換器の説明図であって、ヘッダ側からみた側面図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
次に、図面に基づいて本発明の実施の形態につき説明する。
本発明は、この例では第1流体を第2流体により冷却する熱交換器であって、ヘッダにヘッダプレートを設けないものである。
そして、図2に示すごとく、各偏平チューブ4は、一対の溝型プレート2、3を逆向きに嵌着して形成したものであり、その各プレート2、3はその長手方向両端部の側壁1の高さが他の部分より高く形成され、その結果、偏平チューブ4の両端に膨出部14を形成するものである。
また、各溝型プレート2、3の中間部の外面側には膨出部14の高さ分だけディンプル12が多数、互いに離間して突設形成されている。その各偏平チューブ4にはインナーフィン15が介装される。このようにしてなる偏平チューブ4が、互いに積層されてコア5を構成する。
【0010】
次に、このコア5が収納されるケーシング6は、図1および図2示すごとく、両端にヘッダ部7を有する箱状に形成されたケーシング本体6aと、その上端開口を閉塞する上蓋6bとからなる。
そのケーシング本体6aには、コア5の両側縁の開口に隣接して凸条8がプレス成形により形成されている。この凸条8は、その端面8aが少なくとも溝型プレート2の板厚以上に形成され、それが偏平チューブ4の端面4aを閉塞することにより、偏平チューブ4間の隙間13を埋めるように被蔽される。そのために、ケーシング6の板厚は溝型プレート2、3のそれよりも十分厚く(一例として数倍以上)、プレス機械により、いわゆる半切り状態にされて、断面三角の凸条8が形成される。その凸条8は、図1に示すごとく、その下端から上端または、上端近傍まで連続形成される。
そして、ろう付けにより、ヘッダ部7側よりみて、各偏平チューブ4間および偏平チューブ4の端面4aと凸条8の端面8aとの間が気密に接合される。
【0011】
そして、ケーシング本体6aの長手方向両端の各ヘッダ部7には一対の第1流体出入口11が形成されると共に、凸条8よりも中心側で、そのケーシング本体6aの側部外面には一対づつの第2流体出入口10が形成される。なお、各偏平チューブ4の外面に突設されたディンプル12は互いに接触し、各部品の各接触部間が一体にろう付け接合される。
【0012】
このようにしてなる熱交換器は、一方のヘッダ部7の第1流体出入口11から第1流体が流入し、各偏平チューブ4内部を流通して、他方のヘッダ部7からそれが流出する。そして、コア5の外周には一方の第2流体出入口10を介して第2流体が流入し、それが他方の第2流体出入口10から流出し、第1流体と第2流体との間に熱交換が行われるものである。
【0013】
次に、図5は本発明の第2の実施の形態を示し、この例では凸条8の横断面の頂部が円弧状に形成されている。そして、その付根部により偏平チューブ4の端面4aを被蔽するものである。
次に、図6の例は、凸条8が横断面方形に形成され、その偏平チューブ4側端面が偏平チューブ4の端面4aを被蔽するものである。
【0014】
次に、図7および図8は、第2の本発明を示し、この例はケーシング6とタンク本体9とが別体に形成され、そのタンク本体9の開口部がケーシング6の開口内に嵌入される。そして、タンク本体9の開口の端面9aがコア5の長手方向両端開口縁に接して、図9における隙間13を閉塞するものである。すなわち、タンク本体9の端面9aが各偏平チューブ4の端面4aに当接されることにより、各偏平チューブ4間の隙間13が閉塞され、その状態で、両者間が気密にろう付け固定されるものである。
【符号の説明】
【0015】
1 側壁
2 溝型プレート
3 溝型プレート
4 偏平チューブ
4a 端面
5 コア
6 ケーシング
6a ケーシング本体
6b 上蓋
【0016】
7 ヘッダ部
8 凸条
8a 端面
9 タンク本体
9a 端面
10 第2流体出入口
11 第1流体出入口
12 ディンプル
13 隙間
14 膨出部
15 インナーフィン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
その長手方向の両端部の側壁(1) の高さが、他の部分より高く形成された一対の溝型プレート(2) (3) を互いに逆向きに嵌着して、その両端部に膨出部(14)を有する偏平チューブ(4)が形成され、
複数の偏平チューブ(4)を積層してコア(5)が形成され、そのコア(5)の外周にケーシング(6)が被嵌され、コア(5)の両端の延長上にヘッダ部(7) が配置されるヘッダプレートレス型の熱交換器において、
前記偏平チューブ(4)の側壁(1) の側で、その長手方向両端縁に隣接し、前記ヘッダ部(7) の内面に凸条(8) がプレス成形され、その凸条(8) が各偏平チューブ(4)間に形成される隙間(13)を埋めるように被嵌され、その凸条(8) と各偏平チューブ(4)とが一体にろう付けされたヘッダプレートレス型の熱交換器。
【請求項2】
その長手方向の両端部の側壁(1) の高さが他の部分より高く形成された一対の溝形プレート(2) (3) を互いに逆向きに嵌着して偏平チューブ(4)が形成され、
複数の偏平チューブ(4)を積層してコア(5)が形成され、そのコア(5)の外周にケーシング(6)が被嵌され、そのケーシング(6)の両端に一対のタンク本体(9) が嵌着されるヘッダプレートレス型の熱交換器において、
前記タンク本体(9) の端面(9a)が前記コア(5)の周縁に接触して、各偏平チューブ(4)間の隙間(13)を埋めるように配置され、その端面(9a)と偏平チューブ(4)の端面(4a)とが一体にろう付けされたヘッダプレートレス型の熱交換器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−38752(P2011−38752A)
【公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−189427(P2009−189427)
【出願日】平成21年8月18日(2009.8.18)
【出願人】(000222484)株式会社ティラド (289)
【Fターム(参考)】