説明

ヘッダーアッシー、スクイブならびにエアバッグ用ガス発生装置およびシートベルトプリテンショナー用ガス発生装置

【課題】高い生産性の下で、サイズの縮小化と品質の向上を可能ならしめたスクイブ、その構成部品であるヘッダーアッシーおよび点火素子搭載コンデンサならびにかかるスクイブを搭載したエアバッグ用ガス発生装置およびシートベルトプリテンショナー用ガス発生装置を提供する。
【解決手段】複数の電極ピンを互いに絶縁して保持するヘッダーと、コンデンサの中央外周面に点火素子と電気的に接続するための外部端子電極をそなえ、その上に点火素子を載置した点火素子搭載コンデンサと、該点火素子搭載コンデンサの両端電極および該外部端子電極と電気的に接続される第1、第2および第3の電極パッドならびに外部との通信のためにヘッダーの電極ピンに電気的に接続するための通信用電極をそなえるICとを有し、該ヘッダー上に該ICを設置し、該IC上に該点火素子搭載コンデンサを設置すると共に、該ICに設けた該通信用電極を通して該電極ピンと電気的に接続する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エアバッグ等の自動車の安全装置に使用されるガス発生器等に搭載されるスクイブに関するものである。
また、本発明は、上記したスクイブの構成部品であるヘッダーアッシーに関するものである。
さらに、本発明は、上記のスクイブを搭載したエアバッグ用ガス発生装置およびシートベルトプリテンショナー用ガス発生装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車に装着されるエアバッグを膨張させるためのガス発生器用のスクイブとして、従来から種々の電気式スクイブが開発されている。
このスクイブは、通常、外部と電気的に接続するための金属ピンを有し、またこの金属ピンの他端には火薬に点火するための加熱素子をそなえている。
【0003】
従来使用されてきた点火具は、点火薬に点火するために、架橋ワイヤを使用していた。架橋ワイヤとしては、ニクロム線を用いており、架橋ワイヤの線径が細すぎると取り付けることができない。また、取り付けることができる線径の架橋ワイヤでは熱容量が大きいために、BUSシステムのような通信のエネルギーだけで点火薬を点火するためには、容量の大きなコンデンサに十分な電荷を蓄積する必要があった。
【0004】
また別の点火具として、プリント回路基板の製造技術を用い、プリント回路基板上に直接厚膜抵抗体を形成する方法が知られている。
例えば特許文献1には、プリント回路基板を用い、厚膜抵抗体を直接プリント回路基板上に形成し、回路基板上の別の部分に静電気保護の目的でバリスタを搭載したスクイブが示されている。
また、特許文献2には、同様に、プリント回路基板に抵抗性加熱素子を搭載し、コンデンサとバリスタをハンダでプリント回路基板に接続したものを、さらに電極ピンに接続して得られるスクイブが開示されている。
これらの技術により、点火に必要なエネルギーは架橋ワイヤを用いる場合よりも低く改善されたとはいえ、まだ十分とは言えなかった。
【特許文献1】特開2003-205823号公報
【特許文献2】特開2000-108838号公報
【0005】
一方、半導体ブリッジ(SCB:Semiconductor Bridge)は、スパッタや蒸着などの半導体技術を用いて製造されたブリッジを総称するものであるが、架橋ワイヤやプリント回路基板に比べ半導体ブリッジを用いた点火具は、線幅を細くした非常に微細な構造を作ることができ、厚みも数ミクロン程度の膜厚の薄膜ブリッジを利用するので、熱容量を小さくすることができ、高速応答性と低エネルギーでの点火性を持たせることが可能である。架橋ワイヤでは、1.2Aの通電で点火薬を点火温度まで加熱するのに800から1000マイクロ秒程度の時間を要するので、点火に必要なエネルギーは2.9 mJ程度必要であったが、半導体ブリッジでは、小容量のコンデンサからの放電により0.44 mJ以下で点火薬を点火することができる。また、SCBは、スパッタや蒸着などの半導体製造設備を使うので基板サイズを大幅に小さくできるだけでなく、発熱部の熱容量を小さく、かつ正確に制御することができるので、点火応答性が高くかつ低エネルギー着火のスクイブを安定して作ることができる。
【0006】
また、BUSシステムと呼ばれる通信による点火を可能にするために、ICを内蔵したスクイ ブとして特許文献3に開示の点火装置が知られている。
この点火装置は、ヘッダーの上に、集積化された回路装置を含む第2の半導体小板を設置し、さらにその上に、点火素子を点火させるためのエネルギーを蓄積したコンデンサを含む第1の半導体小板と点火素子を含む第3の半導体小板とを順次に積層した構造になっている。
【特許文献3】特表2000-513799号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述したとおり、点火素子としてSCBを使用した場合には、特許文献3によると半導体ブリッジ(SCB)の接続はワイヤーボンディングが用いられるが、点火薬を点火するためにはSCBを点火薬に密着する必要があるので、密着の力によりワイヤーボンディングが断線するおそれがある。さらに、特許文献3によると点火のためのエネルギー蓄積用コンデンサとして、半導体コンデンサを使用しているために、このコンデンサが蓄積できる電気エネルギーが小さいので、このエネルギーで点火するためには高い点火感度のSCBを使う必要があるが、その場合、点火感度が非常に高いがゆえにノイズによる誤爆の危険性が高まる。
また、点火の信頼性を高めるためにはコンデンサに蓄積するエネルギーを多くすることと、コンデンサからの点火用電流の放電波形をよりシャープなものにすることが好ましい。
【0008】
その他、ヘッダー上に、点火素子やコンデンサを設置した場合、ヘッダー基板の表面に凹凸が生じるため、点火薬を有するカップ体との組み付け時に点火薬密度にムラが生じるなどの問題が懸念される。
【0009】
本発明は、上記の問題を有利に解決するもので、高い生産性の下で、サイズの縮小化と信頼性の向上を可能ならしめたスクイブを、その構成部品であるヘッダーアッシー、さらにはかかるスクイブを搭載したエアバッグ用ガス発生装置およびシートベルトプリテンショナー用ガス発生装置と共に提案することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
さて、発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、以下に述べる知見を得た。
(1) ヘッダー上に点火素子とコンデンサとを個別に設置するのではなく、コンデンサの上に点火素子を搭載する構造にすれば、スクイブの小型化が達成される。
(2) また、コンデンサをICの直上に設置し、点火素子をその直上に設置し、この点火素子とICをコンデンサに設けた外部端子電極を通して接続することにより、高い点火信頼性を得ることができる。
(3) 上記のような配置形態とした場合、主にコンデンサの厚みに起因した表面凹凸が問題となるが、この点に関しては、外径がヘッダーの外周径に等しく、かつ頭部が少なくとも点火素子の高さレベルに達し、しかもこの点火素子の素子面を除く領域を樹脂で覆うことにより、点火薬との接触面を平坦化することができる。
(4) コンデンサとして、セラミックコンデンサを用いることにより、直接IC上への実装ができるサイズに電極の配置が可能であると同時に、小型化と点火信頼性を両立できる。
本発明は、上記の知見に立脚するものである。
【0011】
すなわち、本発明の要旨構成は次のとおりである。
1.複数の電極ピンを有し、点火薬の入ったカップ体の開口部を塞ぐヘッダーアッシーであって、
該複数の電極ピンを互いに絶縁して保持するヘッダーと、
コンデンサの中央外周面に点火素子と電気的に接続するための外部端子電極をそなえ、その上に点火素子を載置した点火素子搭載コンデンサと、
該点火素子搭載コンデンサの両端電極および該外部端子電極と電気的に接続される第1、第2および第3の電極パッドならびに外部との通信のためにヘッダーの電極ピンに電気的に接続するための通信用電極をそなえるICとを有し、
該ヘッダー上に該ICを設置し、該IC上に該点火素子搭載コンデンサを設置すると共に、該ICに設けた該通信用電極を通して該電極ピンと電気的に接続したことを特徴とするヘッダーアッシー。
【0012】
2.上記1において、前記コンデンサが、セラミックコンデンサであることを特徴とするヘッダーアッシー。
【0013】
3.上記1または2において、前記点火素子が、SCBとその基板からなるSCBチップであることを特徴とするヘッダーアッシー。
【0014】
4.上記1〜3のいずれかにおいて、前記ヘッダー上に、外径が該ヘッダーの外周径に等しく、かつ円筒頭部が少なくとも該点火素子の高さレベルに達する円筒状のカラーを配置し、該カラーの内側で、該点火素子の素子面を除く領域に樹脂を充填して、点火薬との接触面を平坦化したことを特徴とするヘッダーアッシー。
【0015】
5.内部に点火薬を有するカップ体の開口部に、請求項1〜4のいずれかに記載のヘッダーアッシーを、圧入・固定したことを特徴とするスクイブ。
【0016】
6.上記5に記載のスクイブを有するエアバッグ用ガス発生装置。
【0017】
7.上記5に記載のスクイブを有するシートベルトプリテンショナー用ガス発生装置。
【発明の効果】
【0018】
本発明の効果を列挙すると次のとおりである。
(1) コンデンサの上に点火素子を搭載する構造としたので、スクイブのより一層の小型化が達成される。
(2) 点火用コンデンサをICの直上に設置し、点火素子をその直上に配置して外部端子電極で接続することにより、IC内部のスイッチング回路をONにしたときに点火素子に流れる電流の経路が極めて短くなり、インダクタンス成分が小さくロスが少なくなるので、コンデンサからのシャープな放電波形をそのまま点火素子に伝達することができ、その結果、点火信頼性が格段に向上する。
(3) ヘッダー上に各パーツを横置きにして、樹脂により点火薬との接触面を平坦化できるので、点火薬への押し付け時における点火薬密度の偏りを解消することができ、コンパクトにヘッダアッシーを構成できると共に、点火薬と各電極との絶縁を確保することができるので、点火具の誤発火を防止することができる。
(4) コンデンサとして、セラミックコンデンサを用いることにより、直接IC上への実装ができるサイズに電極の配置が可能であると同時に、大きな静電容量を持たせることができるので小型化と点火信頼性が向上する。また、蓄積できるエネルギーが大きいので低い点火感度のSCBを使用することができ、ノイズによる誤発火の危険を減少させることができる。
(5) 点火素子を、コンデンサに設けた第3の外部端子電極を通してICに接続するようにしたことにより、最上面の点火素子と最下面のICをワイヤボンディングを用いることなく電気的に接続することができ、点火薬との接触面にワイヤボンディングがないので、高い点火信頼性を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明を具体的に説明する。
図1(a),(b),(c)に、本発明に従う点火素子搭載コンデンサの好適例を、平面、底面および側面で示す。
図中、番号1は点火素子、2はコンデンサ本体であり、この点火素子1がコンデンサ本体2の上に載置されて点火素子搭載コンデンサ3を構成している。
また、コンデンサ本体2の中央外周面には、外部端子電極4が設けられていて、この外部端子電極4は点火素子1と電気的に接続されている。なお、5−1,5−2はそれぞれコンデンサの両端電極である。
【0020】
本発明のコンデンサとしては、セラミックコンデンサがとりわけ有利に適合する。ここに、コンデンサ部の容量は0.5〜10μF程度とすることが好ましい。
【0021】
なお、コンデンサとしては、セラミックコンデンサに限られるものではなく、フィルムコンデンサなど、誘電体層として耐熱性を有する樹脂を用いるものであってもよい。
【0022】
さて、本発明では、コンデンサ本体に、点火素子を載置する。この点火素子を載置する面は、コンデンサを後述するIC上に設置するための面すなわち実装面以外の面であれば、いずれでもよいが、実装面の反対側の面(コンデンサの上面)に載置することが有利である。
そして、外部端子電極と点火素子とを電気的に接続する。この接続形態については特に限定されるものではないが、以下、点火素子としてSCBとその基板からなるSCBチップを用いる場合について説明する。
【0023】
図2(a),(b)に、その構成の一例を図解するが、番号6が薄膜抵抗(SCB)、7がその基板であり、両者でSCBチップ8を構成する。そして9が、SCB6と外部端子電極をつなぐ中継導体としてSCBチップ基板7に設けた側面電極である。
図示したとおり、SCBチップ基板7には、その上面から底面に延びる側面電極9が設けられており、SCB6は、この側面電極9を介して外部端子電極と電気的に接続している。SCB6は、例えば、Ti層とSiO2層とが交互に積層された構造を有する。なお、側面電極9の材質としては、例えばAu、Niなどを用いることができる。
【0024】
次に、図3(a),(b)に、SCB6として絶縁層を含む積層構造のものを採用した場合の例を示す。図中、番号10はカバー電極であり、22で積層構造の絶縁層を、また23で積層構造の金属層を示す。
上述したとおり、SCB6と側面電極9との接続は、SCB6が単層の場合はそのままSCB6の両端と側面電極9が重なるようにすればよいが、SCB6が複数層で、間に絶縁層22が含まれる場合は、SCBの両端と側面電極9にまたがる位置にカバー電極10を設けることでSCB両端と側面電極9の導通を確保することができる。
【0025】
次に、別の接続形態について説明する。
また、図4は、側面電極の別例としてサイドスルーホール電極11を用いた場合である。このサイドスルーホール電極11は、SCB6を成膜する前に基板7にスルーホール電極を形成しておき、SCB6を成膜後、最終工程でチップに分割するときにこのスルーホール上を切断することで、半円形のサイドスルーホール電極11がSCBチップ基板7の側面に露出した形で形成される。なお、このサイドスルーホール電極11の形状は、円形だけでなく、マイクロブラストやレーザー加工などを用いることによって、任意の形状にすることができる。そして、この方法を用いれば、より簡便に側面電極を形成することができる。
さらに、この方法に、金属層23と絶縁層22を含む積層構造のSCB6を採用した場合でも、前述したようにカバー電極10を用いることでサイドスルーホール電極11との導通を確保することができる。
【0026】
SCBチップの基板の材質としては、プリント回路基板として使用されるものであればいずれでも良いが、特にガラス基板、セラミック基板、LTCC(Low temperature Co-fired Multilayer Ceramic Substrates)およびシリコン基板等が好ましい。というのは、発熱抵抗体に通電することにより発熱抵抗体は発熱する。この熱を受けて火薬は、点火する温度である約300℃に達して発火する。それゆえ、基板材質としてはこのときの基板温度まで安定な材質であることが好ましいからである。
【0027】
次に、上記した点火素子搭載コンデンサを載置するICについて説明する。
図5に示すように、このIC12は、コンデンサの両端電極と接続するための電極パッド、外部端子電極と接続するための電極パッドおよび外部接続用の電極ピンと接続するための電極パッドをそなえており、かような電極パッドを介して点火素子を作動させるわけである。
図中、12−1がコンデンサの両端電極5−1と接続するための第1の電極パッド、12−2が同じくコンデンサの両端電極5−2と接続するための第2の電極パッド、12−3が外部端子電極と接続するための第3の電極パッド、そして12−4が電極ピンと接続するための第4の電極パッド(通信用電極)である。
かようなICの基板素材としては、シリコン等が有利に適合する。
【0028】
このICに対して、電極ピンに接続されたIC12の第4の電極パッド12−4を通して外部から通信の信号が伝達される。IC12は、信号から必要な情報を取り出すと同時に、第1,第2の電極パッド12−1,12−2に接続された両端電極を通してコンデンサに、点火素子の点火のためのエネルギーを蓄積する。また、第3の電極パッド12−3は、外部端子電極を通してSCBに接続される。IC12は、通信によってエアバッグシステムの中央制御装置と情報の交換を行うことができ、中央制御装置が自動車の衝突を検知した場合、信号により所望のICに点火の命令が伝達される。その信号により所望のスクイブを点火するわけであるが、点火が所望されたスクイブのICは、IC内部のスイッチング回路によって、コンデンサに蓄積されたエネルギーをSCBに流すことができる。コンデンサからエネルギーが供給されるとSCBは加熱され火薬を点火する。
【0029】
次に、上記したようなICおよび点火素子搭載コンデンサを内蔵するヘッダアッシーについて説明する。
図6に、本発明に従う好適なヘッダアッシーを例示する。
図中、番号13はヘッダー、14は電極ピン、そして15はかかる電極ピン14を互いに絶縁するための封止ガラスである。
そして、ヘッダー13の上にIC12を載置し、このIC12の上に点火素子搭載コンデンサ3を載置することにより、ヘッダアッシー16を構成している。なお、図中番号2−1でコンデンサの実装面を示す。
【0030】
ここに、点火素子搭載コンデンサの両端電極5−1,5−2(図1参照)およびコンデンサ本体2の中央外周面に設けた外部端子電極4(図1参照)と、IC12(図5参照)に設けた第1,第2,第3の電極パッド12−1,12−2,12−3(図5参照)との接続手段としてはハンダや導電ペーストが有利に適合する。
また、IC12に設けた第4の電極パッド12−4と電極ピン14を接続するにもハンダや導電ペーストを使用することが有利である。なお、この場合、ハンダや導電ペーストを絶縁物で覆う必要がある、また、ヘッダーの上面を後述する樹脂で覆う場合には、第4の電極パッド12−4と電極ピン14の接続はワイヤボンディングを利用することもできる。
【0031】
さらに、図7に、本発明の別のヘッダアッシーを示す。
この例は、一方の電極ピン14′をヘッダー13の金属部に直接取り付けた場合である。
このようにヘッダーの金属部と一方の電極ピンが接続された構造とすることにより、電極ピンとヘッダー金属部に静電気が印加された場合でも確実に誤発火が防げるようになる。
【0032】
ところで、図6および図7に示したところから明らかなように、ヘッダー13の上に、IC12と点火素子搭載コンデンサ3を載置した場合、この載置領域は、IC12と点火素子搭載コンデンサ3の厚みの分だけ、ヘッダー13から突出する。
このように、ヘッダー13の上面に段差が生じていると、かかるヘッダーアッシー16をカップ体内に挿入して点火薬と圧接させた場合、突出した点火素子6の上方の点火薬は密に圧縮される反面、その周りの領域は密度が疎になるため、スクイブを作動させたときに、点火感度や点火時間のばらつきが大きく、スクイブの作動安定性が阻害されるおそれがある。
【0033】
かような弊害を解消するためには、ヘッダー上を、外径がヘッダーの外周径に等しく、かつ頭部が少なくとも点火素子の高さレベルに達する樹脂で覆うことが好ましい。
このような樹脂被覆を形成するには、例えば図8に示すように、ヘッダー13の外周に、その頭部が少なくとも点火素子6の高さレベルとほぼ等しい円筒状のカラー17を設け、その内側に樹脂18を充填してやればよい。
【0034】
このようして樹脂18を充填することにより、円筒状カラー17の内部エリアは平坦化され、その結果、カップ体内の点火薬の圧縮密度を均一化することができる。
なお、その際、充填した樹脂18が点火素子6の素子面を覆うと、点火薬を点火させることができなくなるので、樹脂18の充填に際しては、点火素子6の素子面を除く領域に充填することが重要である。
【0035】
なお、樹脂18を充填する場合、点火素子6と同じ高さレベルとすることが最適であるのは前述したとおりであるが、点火素子6の高さレベルとその周りに充填する樹脂18の高さレベルを等しくしようとすると、充填した樹脂18が点火素子6の素子面まで覆ってしまうおそれがある。
そこで、発明者らは、点火素子6の素子面と樹脂18の上面との高さレベル差とスクイブの作動安定性との関係について調査した結果、この高さレベル差が好ましくは0.5mm以内、さらに好ましくは0.3mm以内であれば、スクイブの作動安定性にほとんど差異は生じないことを確認した。
【0036】
次に、上記したようなヘッダアッシーを、内部に点火薬を有するカップ体の開口部に圧入・固定して完成させたスクイブの全体を、図9に断面で示す。
図9中、番号19が点火薬、20がカップ体、21が保護用樹脂カップである。図示したとおり、円筒状のカラー17の内側に樹脂18を充填することにより、ヘッダー13の上面は平坦になっているので、かようなヘッダアッシーをカップ体内に圧入したとしても、点火薬密度にムラが生じることはなく、従ってスクイブを作動させたときに、点火感度や点火時間のばらつきが生じることはない。
【0037】
本発明に使用する点火薬としては、その組成中にジルコニウムを含むものが好適である。その他、水素化チタンやボロン、トリシネート等を含むものも有利に適合する。また、その他に特開2002−362992号公報に開示のものが使用でき、特に限定されるものではない。そしてかかる点火薬に接触させて発熱抵抗体である薄膜抵抗を配置する。
【0038】
また、本発明では、点火素子の上面に、予め点火薬組成物を塗布しておくこともできる。すなわち、薄膜抵抗の上面にスラリー状の点火薬をディスペンスし、乾燥させる。この点火薬組成物は粉末状の点火薬を単に充填した場合に比べると点火薬と薄膜抵抗の接触が安定であるため、確実な点火と点火時間の短縮に有効に寄与する。
【0039】
次に、本発明の点火装置を用いたエアバッグ用ガス発生装置について説明する。
図10に、エアバッグ用ガス発生装置の概念図を示す。同図に示したとおり、エアバッグ用ガス発生装置31は、その内部にスクイブ32、エンハンサー剤33、ガス発生剤34、フィルター35を有し、外部はガス発生剤34の燃焼圧力に耐え得る外郭容器36からなる。外郭容器36には、発生したガスをエアバッグ側に放出するための孔37が開けられている。
スクイブ32が作動すると、スクイブ32から発生する熱エネルギーでエンハンサー剤33が燃焼し火炎および熱粒子を発生する。この火炎および熱粒子によりガス発生剤34が燃焼し、エアバッグを膨らませるためのガスが発生する。このガスは、エアバッグの外郭容器36に開いた孔37から外部に放出されるが、このときフィルター35を通過させることで燃焼したガス発生剤の残渣が捕集されると同時にガス自身が冷却される。
【0040】
さらに、本発明の点火装置を用いたシートベルトプリテンショナー用ガス発生装置について説明する。
図11に、シートベルトプリテンショナー用ガス発生装置(マイクロガスジェネレータ)の概念図を示す。同図に示したとおり、マイクロガスジェネレータ41は、その内部にスクイブ42とガス発生剤43を有し、スクイブ42はホルダーと呼ばれる基台44に固定されている。さらにガス発生剤43を格納するカップ体45も、ホルダーに例えばカシメによつて固定された構造になっている。スクイブ42が作動すると、スクイブ42からの火炎および熱粒子により、カップ体45内のガス発生剤43が燃焼してガスが発生する。
【0041】
次に、中央制御ユニットによる制御要領について説明する。
図12は、中央制御ユニット110と、4つのエアバッグモジュール111a,111b,111c,111dとを接続したLAN化されたエアバッグシステムの例を示したものである。2つのエアバッグモジュール111bと111cは各々、例えばフロントエアバッグを膨張させるガス発生器を有することができ、他の2つのエアバッグモジュール111aと111dは各々、例えばサイドエアバッグを膨張させるガス発生器を有することができる。
【0042】
これらモジュールの各々に含まれるガス発生器内に点火装置が収納されていて、各点火装置は2つの電極ピン114,115を有し、電極ピン114が中央制御ユニット110に連絡された第1の電気供給導電体112に接続され、電極ピン115が中央制御ユニット110に連絡された第2の電気供給導電体113に接続されている。
【0043】
通常の動作状態、すなわち自動車が1以上のエアバッグモジュール111a,111b,111c,111dを活性化することを求める特定の衝撃に巻き込まれていない時には、中央制御ユニット110は定期的に該電気供給導電体112,113に低い強度の電流を与え、この電流は電極ピン114と115を介して4つのエアバッグモジュール111a,111b,111c,111dの各々に含まれる点火装置の電気エネルギー蓄積手段(コンデンサー)に送られる。
【0044】
衝撃が生じて、例えばエアバッグ111cを活性化することが望ましい場合には、中央制御ユニット110は第1の電気供給導電体112にエアバッグモジュール111cの点火装置のための点火コマンドを構成する特有の電気パルスの列を送る。この特有の電気パルスの列は電極ピン114と115を介して各点火装置に送られるが、エアバッグモジュール111cの点火装置に含まれるICのみがそのコマンドに反応してコンデンサから電気エネルギーを点火素子に供給し、上述したように点火薬を点火する。
【0045】
もし、衝撃に続いて幾つかのエアバッグモジュール、例えばエアバッグモジュール111a,111bを活性化することが望ましい場合には、中央制御ユニット110は、第1の電気供給導電体112にエアバッグモジュール111aと111bの各々に含まれる点火装置のための特有の電気パルスの列を与える。2つの点火装置の各々の動作は上述したとおりである。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明に従う点火素子搭載コンデンサの好適例の平面図(a)、底面図(b)および側面図(c)である。
【図2】側面電極を持つSCBチップの断面図(a)および平面図(b)である。
【図3】積層構造のSCBと側面電極の導通にカバー電極を用いたSCBチップの断面図(a)および平面図(b)である。
【図4】側面電極としてサイドスルーホール電極を持つSCBチップの断面図(a)および平面図(b)である。
【図5】点火素子搭載コンデンサを載置するICの平面図(a)およびこのIC上にSCBチップを設置した状態を示した図(b)である。
【図6】本発明に従うヘッダアッシーの好適例の断面図である。
【図7】電極ピンのうち片方がアースされた構造のヘッダーに本発明のSCBチップとコンデンサを搭載した例の断面図である。
【図8】ヘッダーの外周に円筒状のカラーを設け、その内側に樹脂を充填した状態を示した図である。
【図9】本発明に従うスクイブの全体図である。
【図10】エアバッグ用ガス発生装置の概念図である。
【図11】シートベルトプリテンショナー用ガス発生装置の概念図である。
【図12】中央制御ユニットの説明図である。
【符号の説明】
【0047】
1 点火素子
2 コンデンサ本体
2−1 コンデンサの実装面
3 点火素子搭載コンデンサ
4 外部端子電極
5−1 コンデンサの両端電極
5−2 コンデンサの両端電極
6 薄膜抵抗(SCB)
7 SCB基板
8 SCBチップ
9 側面電極
10 カバー電極
11 サイドスルーホール電極
12 IC
12−1 コンデンサの両端電極と接続するための第1の電極パッド
12−2 コンデンサの両端電極と接続するための第2の電極パッド
12−3 外部端子電極と接続するための第3の電極パッド
12−4 電極ピンと接続するための第4の電極パッド
13 ヘッダー
14,14′電極ピン
15 封止ガラス
16 ヘッダアッシー
17 円筒状カラー
18 樹脂
19 点火薬
20 カップ体
21 保護用樹脂カップ
22 絶縁層
23 金属層
31 エアバッグ用ガス発生装置
32 スクイブ
33 エンハンサー剤
34 ガス発生剤
35 フィルター
36 外郭容器
37 孔
41 シートベルトプリテンショナー用ガス発生装置(マイクロガスジェネレータ)
42 スクイブ
43 ガス発生剤
44 基台(ホルダー)
45 カップ体
110 中央制御ユニット
111a〜111d エアバッグモジュール
114,115 電極ピン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の電極ピンを有し、点火薬の入ったカップ体の開口部を塞ぐヘッダーアッシーであって、
該複数の電極ピンを互いに絶縁して保持するヘッダーと、
コンデンサの中央外周面に点火素子と電気的に接続するための外部端子電極をそなえ、その上に点火素子を載置した点火素子搭載コンデンサと、
該点火素子搭載コンデンサの両端電極および該外部端子電極と電気的に接続される第1、第2および第3の電極パッドならびに外部との通信のためにヘッダーの電極ピンに電気的に接続するための通信用電極をそなえるICとを有し、
該ヘッダー上に該ICを設置し、該IC上に該点火素子搭載コンデンサを設置すると共に、該ICに設けた該通信用電極を通して該電極ピンと電気的に接続したことを特徴とするヘッダーアッシー。
【請求項2】
請求項1において、前記コンデンサが、セラミックコンデンサであることを特徴とするヘッダーアッシー。
【請求項3】
請求項1または2において、前記点火素子が、SCBとその基板からなるSCBチップであることを特徴とするヘッダーアッシー。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかにおいて、前記ヘッダー上に、外径が該ヘッダーの外周径に等しく、かつ円筒頭部が少なくとも該点火素子の高さレベルに達する円筒状のカラーを配置し、該カラーの内側で、該点火素子の素子面を除く領域に樹脂を充填して、点火薬との接触面を平坦化したことを特徴とするヘッダーアッシー。
【請求項5】
内部に点火薬を有するカップ体の開口部に、請求項1〜4のいずれかに記載のヘッダーアッシーを、圧入・固定したことを特徴とするスクイブ。
【請求項6】
請求項5に記載のスクイブを有するエアバッグ用ガス発生装置。
【請求項7】
請求項5に記載のスクイブを有するシートベルトプリテンショナー用ガス発生装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2008−138946(P2008−138946A)
【公開日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−326222(P2006−326222)
【出願日】平成18年12月1日(2006.12.1)
【出願人】(000004086)日本化薬株式会社 (921)
【出願人】(503121103)株式会社ルネサステクノロジ (4,790)
【出願人】(596163770)菱電商事株式会社 (5)
【Fターム(参考)】