説明

ヘッダー配管における端末管

【課題】 構成な簡単によって配管作業を容易にする。
【解決手段】 端末管1の管本体2の両端に、ヘッダー5の接続口となっている継手6を覆うカバー部3と保護管と接続可能な接続部4とをそれぞれ一体成形してあり、管本体2はその内部をヘッダー5に接続される流水管の端末が貫通可能であり、接続部4は開口部41の縁部全周にこの開口部の内外各側へ折り曲げ可能な係止片42を一体的に形成してあり、かつ開口部41を通じて外周に溝を設けている上記保護管が挿入可能であり、上記係止片は上記溝に係合可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、給水、給湯などのヘッダーから分岐されたヘッダー配管における端末管に関するものである。
【背景技術】
【0002】
本出願人は、特開2005−121159号公報に記載の「ヘッダー配管における端末管」を提案した。この端末管は、管本体の外周面が溝によって蛇腹状に形成され、管本体内をヘッダーに接続される流水管の端末が貫通可能であり、先端にヘッダーの接続口となっている継手を覆うカバー部を設け、後端に係合部を有する接続部を設け、この接続部がコネクターを介して保護管と接続可能なものである。
端末管によるヘッダー配管の作業は、まず、端末管とコネクターとの接続作業をする。すなわち、端末管の接続部の下部をコネクター上部に差込み、係合部によってコネクターの上端開口内部に係合させることによって行う。ついで、流水管の上端部を保護管の下端側から通してこの上端部を上昇させて保護管、コネクター及び端末管を順次貫通させ、端末管より突出した段階でさらに流水管の上端部を上方に引っ張って継手まで達した時点で流水管の端末を継手に接続させる。その後、端末管のカバー部を上方に引っ張って上昇させると、端末管は伸張することになり、カバー部が継手を完全に覆う位置に達した段階で伸張操作を停止する。停止した段階でも、端末管の伸張状態が維持され、端末管によるヘッダー配管の作業を終える。
【特許文献1】特開2005−121159号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来例の改善点は次のとおりである。
端末管はコネクターを介して保護管と接続する構成であるため、接続作業にコネクターを介在させる必要がある分だけ、構成が複雑になり、配管作業に手間がかかることである。
従来例は広く利用されているものの、簡単な構成によって配管の作業を容易にし、作業性の向上を図る観点から改善の余地があった。
この発明の目的は、構成な簡単によって配管作業を容易にすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
この発明の第1の特徴は、管本体と、この管本体の一端に一体成形してありかつヘッダーの接続口となっている継手を覆うカバー部と、上記管本体の他端に一体成形してありかつ保護管と接続可能な接続部とを備えていることにある。上記管本体はその内部を上記ヘッダーに接続される管体の端末が貫通可能であり、上記接続部は、開口部の縁部にこの開口部の内外各側へ折り曲げ可能な係止片を一体的に形成してあり、かつ上記開口部を通じて外周に溝を設けている上記保護管が挿入可能であり、上記係止片は上記溝に係合可能である。
この発明の第2の特徴は、上記第1の特徴を備えており、係止片が開口部の縁部全周に形成されていることにある。
この発明の第3の特徴は、上記第1または第2の特徴を備えており、接続部の開口部側が外側に拡開した形状に形成され、開口部の縁部が係止片と共に、上記係止片が外側に折れ曲がった状態では断面山形状を形成していることにある。
この発明の第4の特徴は、上記第1乃至第3のいずれかの特徴を備えており、カバー部の外周面に配管識別表示プレートを取り付けるための支持部を形成してあることにある。
この発明の第5の特徴は、上記第4の特徴を備えており、支持部に配管識別表示プレートを係止するための係止部を設けていることにある。
この発明の第6の特徴は、上記第4の特徴を備えており、支持部に水平断面がC形の配管識別表示プレートを嵌め込まれており、上記支持部の外周面には円周方向に係止溝を形成してあり、上記配管識別表示プレートの内面に上記係止溝に係合可能である係合リブを形成していることにある。
【発明の効果】
【0005】
この発明によれば、端末管の一端に接続部を形成し、この接続部に係止片を一体成形してあるので、保護管との接続が容易であり、また簡単な構成によって接続が確実かつ簡易に行える。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
この発明を実施するための形態について図面を参照して説明する。
図1〜図3において、端末管1は管本体2と、この管本体の両端にそれぞれ管本体と一体成形してあるカバー部3及び接続部4とを備えている。
【0007】
端末管1はその管本体2の外周面が溝21によって蛇腹状に形成されているプラスチック管であって、管本体の軸心方向に伸縮可能である。端末管1における溝21は、図2に示すようにV字形であって、V字を構成している一辺21aが他辺21bより長い。このために、端末管1は図11に右側に図示している端末管のように収縮状態では、この形態を維持可能であって、ばね力で自動的に伸張して復元することはなく、そして図1に示すように伸長している場合でも伸長状態が維持可能である。
【0008】
カバー部3は、図1及び図4に示すように、端末管1の一端部(上端部)にほぼ筒状に形成されている。カバー部3はヘッダー5の接続口となっている継手6を覆うことができる。カバー部3の下半部は、その外周面に配管識別表示プレート7を取り付けるための支持部31を形成してある。支持部31には配管識別表示プレート7を係止するための係止部である係止溝31aを形成してある。
図3〜図5及び図9〜図11において、配管識別表示プレート7は、水平断面がC形に成形された弾性変形可能である筒体によって構成されている。配管識別表示プレート7の正面は、端末管1内を貫通する管体である流水管9A,9B(図11)が通じている機器名(例えば給湯器、浴室のシャワー、台所流しなど)の表示部71となっており、背面に開口部72を設けてある。
表示部71には識別表示文字71a、図3では「給湯器」が、図11では「給湯器」と「シャワー」が表示されており、端末管1が「給湯器」及び「シャワー」に通じている流水管9A,9Bに対応していることを示している。配管識別表示プレート7は開口部72の存在によって外側に弾性変形させてこの開口部を広げることができる。配管識別表示プレート7はその内周面に円周方向に係合部である係合リブ73を形成してある。係合リブ73は支持部31の係止溝31aに係合可能である。
配管識別表示プレート7をカバー部3の支持部31に取り付けるには、配管識別表示プレートを外側に引っ張って開口部72を広げて、この開口部を支持部31の正面側の外周面に向けて押し付けながら支持部に嵌め込む。
なお、流水管を総称する場合に符号を「9」を使用する(図11)。
【0009】
接続部4は管本体2の他端(下端)に形成されている。接続部4は図1、図2及び図7に示すように筒状に形成されている。接続部4は、図2に示すように開口部41側が外側に拡開した形状に形成されており、開口部の縁部に係止片42を一体的に形成してある。係止片42は開口部41の縁部全周に形成されている。係止片42は、また使用前では図1及び図2に示すように外側に突出(露出)された状態にあり、使用時には図3、図6及び図8に示すように示すように開口部41内側に折り曲げられるものである。このように係止片42は開口部41の内側又は外側に向けて折り曲げ可能なものである。
開口部41の側縁部は、図6に示すように係止片42が内側へ折り曲げられたときには、その断面形状が「レ」形を形成し、また図2に示すように係止片が外側へ折り曲げられたときには、その断面形状が山形を形成している。
接続部4内には、図6及び図8に示すように開口部41を通じて保護管8が挿入可能である。保護管8は内部を貫通する流水管9の端末を保護するものであり、その外周に溝81を設けている。流水管9はヘッダー5の継手6に接続される(図11)。
係止片42は保護管8の溝81に係合可能である。
接続部4の外周面には全周に複数の補強用の凹溝43を形成してある(図1)。
【0010】
端末管1と、継手6及び保護管8との相互関係について説明する。
端末管1と継手6との関係について説明する。
端末管1は給水用又は給湯用のヘッダー5に接続され、内部に配管されている流水管9の端末部分をシールしている。端末管1のカバー部3はヘッダー5の継手6を下側からこれを包み込むように覆っており、継手から漏れる水を受け入れる形態となっている(図1及び図11)。
端末管1と保護管8との関係について説明する。
図3〜図6に示すように、保護管8の端末が端末管1の接続部4内へ開口部41から差し込まれる。保護管8の端末が接続部4に差し込まれている状態では、接続部の係止片42は保護管8の溝81に係合されている。この係合を通じて端末管1は保護管8との結合が確実なものとなる。
端末管1と保護管8との結合を解除するためには、保護管を図3下方に向けて強く引っ張ると、係止片42が係合されている溝81が下方へ移動し、この移動の過程で係止片はその上端側が下方に引っ張られ、やがて弾性変形して下方に折り曲げられ、溝に対する係止機能が弱められるから、保護管をさらに下方に向けて引っ張ることによって保護管が端末管から引き出される。
反対に、端末管1に保護管8を接続させるためには、保護管の端末を接続部4の開口部41に押し込むと、係止片42は図2上方に押圧されるために、その上端側が弾性変形して内方に折れ曲げられ、保護管の端末が接続部内に挿入され、やがて係止片42が溝81に係合される。係止片42が内側にかつ上向きに折れ曲がった状態で保護管8の溝81と係合するために、保護管が接続部4から図6下方へ離脱しにくくなり、端末管1と保護管との結合が確実なものとなる。図4及び図11に示すように、ヘッダー5の下部には軸心方向に所定間隔をあけて複数の継手6が取り付けられており、そして両端にも図示していないが継手が取り付けられている
。各継手6には、給湯器、浴室のシャワー、台所流しなどに水又は湯を供給するための流水管9(9A,9B)の端末が接続されている。
【0011】
端末管1の配管作用について説明する。
予め、図2鎖線に示すように端末管1における係止片42を開口部41の内側に折り曲げておいても良いが、同図実線に示すように外側へ露出させておく。
まず、保護管8を端末管1の接続部4に接続させるには、保護管の端末部(上端部)を開口部41に押し込むと、係止片42が図2鎖線に示すように上方に押圧されるために、全体が弾性変形され上方に折れ曲げられ、保護管の端末の先端部側が開口部内に挿入され、そして保護管の押し込みが停止された段階で、図3に示すように、係止片42が内側に折れ曲がった状態で保護管8の溝81と係合される。この係合によって、保護管8が端末管1と接続部4を介して接続される。
ついで、図11に示すように、流水管9Aの上端部を保護管8の下端側から通してこの上端部を上昇させて保護管及び端末管1を順次貫通させ、端末管のカバー部3より突出した段階でさらに流水管の上端部を上方に引っ張って継手6まで達した時点で流水管の端末を継手6に接続させる。
その後、端末管1のカバー部3を図11の矢印方向に引っ張って上昇させると、端末管は伸張することになり、カバー部が継手6を完全に覆う位置に達した段階で伸張操作を停止する。停止した段階でも、端末管の伸張状態が維持され、図7に示すように端末管によるヘッダー配管の作業を終える。
この結果、保護管8とヘッダー5との間の隙間に位置している流水管9Aの端末部分は端末管1によってシールされ、継手6から漏れる水はカバー部3内に導かれ、端末管から保護管8へ案内される。
図11左側に位置している端末管1についても、上記配管操作と同様にして配管されているものであり、浴室のシャワーに通じている流水管9Bの端末部分は端末管1及び保護管8によってシールされている。
流水管の端末をヘッダー5の継手6に接続する際、端末管1は図11に示すように常に人手を介することなく収縮状態が維持されているから、流水管9(9A,9B)の端末を上方に引っ張る際に、作業者が両手を自由に使えるから作業がしやすい。また端末管1自体を上下動させる必要がないから、配管の作業スペースが狭くても配管作業に手間がかからない。
【0012】
図1に示す端末管1は、カバー部3及び接続部4が一体的に成形され、接続部には係止片42が内外に折り曲げ可能に一体に形成されているので、保護管8との接続のためのコネクターなど特別に接続部材が不要となるから、その分だけ構成が簡単となり、製造のコストダウンを図ることができる。
図1に示す端末管1によれば、接続部4の開口部41に係止片42を設けているので、保護管8を開口部内への差し込み及び端末管との接続がワンタッチ挿入のみで済むので、簡易にかつ迅速な接続操作ができ、配管作業の効率化の向上を図ることができる。
図1に示す端末管1によれば、係止片42を開口部41の縁部全周に設けているので、係止片と保護管8の溝81との係合が強化される。
図1に示す端末管1によれば、端末管1の開口部41側が外側に拡開した形状(拡開状)に形成されているので、保護管8の上端部の挿入が円滑に行え、しかも開口部の縁部全周に形成されている係止片42が内側へ折り曲げられた状態では縁部と共に断面「レ」字状に屈曲されるので、強固な係合が可能となる。
図1に示す端末管1によれば、カバー部3に配管識別表示プレート7を取り付けるための支持部31を設けているので、配管識別表示プレートを簡単にカバー部に取り付けることができる。
【0013】
支持部31はカバー部3に必ずしも設けることを要さず、端末管1の管本体2に設けても良い。
係止片42は接続部4の開口部41の全周に設けることが結合強化の観点から望ましいが、円周方向に間隔を置いて配置しても良い。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】この発明に係る端末管を示す正面図である。
【図2】この発明に係る端末管を示す拡大縦断面図であって、中間部分を省略している図である。
【図3】この発明に係る端末管を示す正面図であって、上端側に配管識別表示プレートを取り付け、下端側に保護管を接続している状態を示す図である。
【図4】この発明に係る端末管のカバー部を示す一部切欠拡大断面図である。
【図5】図4のV−V線拡大断面図である。
【図6】この発明に係る端末管の接続部を示す一部切欠拡大断面図である。
【図7】図2のVII−VII線断面図である。
【図8】図6のVIII−VIII線断面図である。
【図9】この発明に係る端末管に取り付ける配管識別表示プレートを示す拡大平面図である。
【図10】図9のX−X線断面図である。
【図11】この発明に係る端末管の配管過程を縮小して示す一部切欠正面図である。
【符号の説明】
【0015】
1 端末管
2 管本体
3 カバー部
31 支持部
31a 係止溝(係止部)
4 接続部
41 開口部
42 係止片
5 ヘッダー
6 継手
7 配管識別表示プレート
71 表示部
73 係合リブ
8 保護管
81 溝
9,9A,9B 流水管(管体)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
管本体と、この管本体の一端に一体成形してありかつヘッダーの接続口となっている継手を覆うカバー部と、上記管本体の他端に一体成形してありかつ保護管と接続可能な接続部とを備えており、
上記管本体はその内部を上記ヘッダーに接続される管体の端末が貫通可能であり、
上記接続部は、開口部の縁部にこの開口部の内外各側へ折り曲げ可能な係止片を一体的に形成してあり、かつ上記開口部を通じて外周に溝を設けている上記保護管が挿入可能であり、上記係止片は上記溝に係合可能である
ことを特徴とするヘッダー配管における端末管。
【請求項2】
係止片は、開口部の縁部全周に形成されていることを特徴とする請求項1記載のヘッダー配管における端末管。
【請求項3】
接続部の開口部側は外側に拡開した形状に形成され、開口部の縁部が係止片と共に、上記係止片が外側に折れ曲がった状態では断面山形状を形成していることを特徴とする請求項1または請求項2記載のヘッダー配管における端末管。
【請求項4】
カバー部の外周面に配管識別表示プレートを取り付けるための支持部を形成してあることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載のヘッダー配管における端末管。
【請求項5】
支持部に配管識別表示プレートを係止するための係止部を設けていることを特徴とする請求項4記載のヘッダー配管における端末管。
【請求項6】
支持部に水平断面がC形の配管識別表示プレートを嵌め込まれており、上記支持部の外周面には円周方向に係止溝を形成してあり、上記配管識別表示プレートの内面に上記係止溝に係合可能である係合リブを形成してあることを特徴とする請求項4記載のヘッダー配管における端末管。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2008−95925(P2008−95925A)
【公開日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−281572(P2006−281572)
【出願日】平成18年10月16日(2006.10.16)
【出願人】(592162829)株式会社マルイチ藤井 (9)
【Fターム(参考)】