説明

ヘッダー

【課題】ヘッダーピースの嵌合連結部における変形を防止し、嵌合連結部の連結を強固に維持することができると共に、ヘッダーピース間の軸線のぶれを防止することができるヘッダーを提供する。
【解決手段】ヘッダー10は、複数のヘッダーピースの凸状連結部17と凹状連結部18とが嵌合連結されて構成されている。ヘッダーピースの嵌合連結部19の外周には凸状連結部17及び凹状連結部18の径方向への撓みを抑えてヘッダーピース間の軸線を保持する補強リング21が装着されると共に、嵌合連結部19の内周には凸状連結部17及び凹状連結部18の軸線方向への相対移動を規制する規制手段が設けられている。凸状連結部17の外周面には環状係合溝27が形成されると共に、補強リング21の一端には係合突条22が形成され、該係合突条22が前記環状係合溝27に係合するように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば給水系や給湯系の配管システムにおいて用いられるヘッダーに関するものであり、詳しくは複数のヘッダーピースを嵌合連結し、嵌合連結部における変形を防止し、嵌合連結部の連結を強固に維持することができると共に、ヘッダーピース間の軸線のぶれを防止することができるヘッダーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、給水、給湯用或いは排水用のパイプとして樹脂パイプが広く用いられるようになり、係る樹脂パイプがヘッダーに接続されて給水系や給湯系或いは排水系の配管システムが構築されている。ここで用いられるヘッダーとして、最近では複数のヘッダーピースを連結した構造のものが採用されている。
【0003】
このような構造のヘッダーとして、具体的には次のようなヘッダーが提案されている(例えば、特許文献1を参照)。このヘッダーは、内部に直線流路と立ち上がり流路を形成したT字状をなすT字状ヘッダー基体である。係るT字状ヘッダー基体は、PPS(ポリフェニレンスルフィド又はポリフェニレンサルファイド)樹脂製の内筒にトロガミド樹脂(微結晶ポリアミド樹脂)製の外筒が装着され、該外筒の前端にパイプ保持リングを取付け、これらの抜け出しを防止するキャップが螺着されて構成されている。このように構成することにより、複数本の樹脂パイプを所定方向に配管することができ、施工を簡略にでき、部材の省略を図ることができる。
【0004】
また、樹脂製ヘッダーの接続部における補強構造について提案されている(例えば、特許文献2を参照)。すなわち、ヘッダー本体の開口端部又は分岐管の開口部に突設されたフランジを継手部材のフランジと突き合せて両フランジを連結部材により接続するにあたり、ヘッダー本体又は分岐管のフランジの裏側に形成された環状溝に補強部材が嵌着され、連結部材が補強部材を介してフランジに装着されるように構成されている。
【特許文献1】特開2007−100807号公報(第2頁、第3頁及び第8頁)
【特許文献2】特開2005−188682号公報(第2頁、第3頁及び第7頁)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、特許文献1に記載されているT字状ヘッダー基体では、キャップが螺着されているため内筒及び外筒の径方向への変形は規制されるが、内筒の外周方に外筒が嵌挿され、内筒に対して外筒が樹脂パイプ差し込み口を形成するように係合されているのみである。このため、内筒と外筒の連結部に外部から衝撃力や引き抜き力が加わったときには、内筒と外筒が軸線方向に相対移動し、それらの連結が外れるおそれがあると共に、衝撃力や引き抜き力が強い場合には内筒又は外筒が損傷を受けるおそれがあった。
【0006】
一方、特許文献2に記載の樹脂製ヘッダーでは、補強部材が具体的にはC字状をなすように形成されていることから、ヘッダー本体又は分岐管が径方向への力を受けたときその力を十分に受け止めることができず、ヘッダー本体又は分岐管の径方向への変形を十分に抑えることができなかった。加えて、連結部材は具体的にはクイックファスナーであってフランジ間を連結しているものの、係るクイックファスナーは略C環状に形成されているため、連結部に強い力が作用したときには外れるおそれがあった。
【0007】
そこで本発明の目的とするところは、ヘッダーピースの嵌合連結部における変形を防止し、嵌合連結部の連結を強固に維持することができると共に、ヘッダーピース間の軸線のぶれを防止することができるヘッダーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、請求項1に係る発明のヘッダーは、複数のヘッダーピースの凸状連結部と凹状連結部とが嵌合連結され、各ヘッダーピース間が相対回動可能に構成されている。そして、各ヘッダーピースの嵌合連結部の外周には凸状連結部及び凹状連結部の径方向への撓みを抑えてヘッダーピース間の軸線を保持する補強リングが装着されると共に、嵌合連結部の内周には凸状連結部及び凹状連結部の軸線方向への相対移動を規制する規制手段が設けられていることを特徴とする。
【0009】
請求項2に係る発明のヘッダーは、請求項1において、前記補強リングは、凸状連結部と凹状連結部とが嵌合連結されたとき凸状連結部及び凹状連結部の外周面に跨って設けられていることを特徴とする。
【0010】
請求項3に係る発明のヘッダーは、請求項2において、前記凸状連結部又は凹状連結部の外周面には環状係合溝が形成されると共に、補強リングの一端には係合突条が形成され、該係合突条が前記環状係合溝に係合するように構成されていることを特徴とする。
【0011】
請求項4に係る発明のヘッダーは、請求項3において、前記環状係合溝が形成されていない凹状連結部又は凸状連結部の外周面には、補強リングの他端が当接される係止突部が設けられていることを特徴とする。
【0012】
請求項5に係る発明のヘッダーは、請求項3又は請求項4において、前記凸状連結部の外周面には凸状連結部と凹状連結部の嵌合連結時にCリングを縮径させて収容する収容溝を形成すると共に、凹状連結部の内周面には凸状連結部と凹状連結部とが嵌合された状態でCリングの一部が収容される環状溝が形成され、これらCリング、収容溝及び環状溝によって前記規制手段が構成されていることを特徴とする。
【0013】
請求項6に係る発明のヘッダーは、請求項5において、前記収容溝には、凸状連結部と凹状連結部との嵌合連結時にCリングの一部を収容溝から環状溝へと誘導するための切欠き溝が形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に係る発明のヘッダーでは、各ヘッダーピースの嵌合連結部の外周には補強リングが装着されることから、凸状連結部及び凹状連結部の径方向への撓みが抑えられ、ヘッダーピース間の軸線が保持される。さらに、嵌合連結部の内周には規制手段が設けられていることから、凸状連結部及び凹状連結部の軸線方向への相対移動が規制される。従って、係るヘッダーにおいては、外部から衝撃力や引き抜き力が加わったときでもヘッダーピースの嵌合連結部における変形を防止でき、嵌合連結部の連結を強固に維持することができると共に、ヘッダーピース間の軸線のぶれを防止することができる。
【0015】
請求項2に係る発明のヘッダーでは、補強リングは凸状連結部と凹状連結部とが嵌合連結されたとき凸状連結部及び凹状連結部の外周面に跨って設けられている。このため、請求項1に係る発明の効果に加え、凸状連結部及び凹状連結部についてそれらの軸線方向を外れる動きが規制され、ヘッダーピース間の軸線のぶれを有効に防止することができる。
【0016】
請求項3に係る発明のヘッダーでは、凸状連結部又は凹状連結部の外周面には環状係合溝が形成されると共に、補強リングの一端には係合突条が形成され、該係合突条が前記環状係合溝に係合するように構成されている。このため、請求項2に係る発明の効果に加えて、補強リングが凸状連結部又は凹状連結部の環状係合溝に係合して位置決めされ、嵌合連結部の変形防止効果を向上させることができる。
【0017】
請求項4に係る発明のヘッダーでは、環状係合溝が形成されていない凹状連結部又は凸状連結部の外周面には、補強リングの他端が当接される係止突部が設けられている。従って、請求項3に係る発明の効果に加えて、凸状連結部と凹状連結部とを連結させるときに、補強リングの他端が係止突部に当接された状態で行われ、補強リングを嵌合連結部に跨るように容易に位置させることができる。
【0018】
請求項5に係る発明のヘッダーでは、凸状連結部の外周面には凸状連結部と凹状連結部の嵌合連結時にCリングを縮径させて収容する収容溝を形成すると共に、凹状連結部の内周面には凸状連結部と凹状連結部とが嵌合された状態でCリングの一部が収容される環状溝が形成されている。このため、請求項3又は請求項4に係る発明の効果に加えて、凸状連結部と凹状連結部とが嵌合された状態でCリングが収容溝と環状溝の双方に収容され、ヘッダーピースの嵌合連結部の連結を強固なものにすることができる。
【0019】
請求項6に係る発明のヘッダーでは、収容溝には凸状連結部と凹状連結部との嵌合連結時にCリングの一部を収容溝から環状溝へと誘導するための切欠き溝が形成されている。従って、請求項5に係る発明の効果に加えて、凸状連結部と凹状連結部との嵌合連結時にCリングを収容溝から環状溝へ円滑に導くことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の最良と思われる実施形態につき、図面を用いて詳細に説明する。
図1及び図2に示すように、本実施形態のヘッダー10は、逆T字状をなす第1ヘッダーピース11(図中左端部)に同じく逆T字状をなす第2ヘッダーピース12(図中中間部)が嵌合連結され、該第2ヘッダーピース12には逆L字状をなす第3ヘッダーピース13(図中右端部)が嵌合連結されて構成されている(3連)。このため、第1ヘッダーピース11と第2ヘッダーピース12との間及び第2ヘッダーピース12と第3ヘッダーピース13との間は、いずれも相対回動自在になっており、各ヘッダーピースを所定方向へ向けることができる。
【0021】
これらのヘッダーピースは、PPS樹脂などの合成樹脂(エンジニアリングプラスチック)により形成されている。第1ヘッダーピース11は、その内部に図中横方向に直線状に延びる主流路14と、該主流路14に直交して延びる分岐流路15とを有している。主流路14の一端部(図中左端部)と分岐流路15の先端部には樹脂パイプ16が接続されるように構成されると共に、主流路14の他端側(図中右端側)は凸状連結部17となっている。
【0022】
第2ヘッダーピース12は、主流路14の一端側(図中左端側)が凹状連結部18となり、他端側が凸状連結部17となると共に、分岐流路15の先端部には樹脂パイプ16が接続可能に構成されている。前記第1ヘッダーピース11の凸状連結部17には、第2ヘッダーピース12の凹状連結部18が嵌合連結されるように構成されている。第3ヘッダーピース13は、主流路14の先端側が凹状連結部18となり、分岐流路15の先端部には樹脂パイプ16が接続可能に構成されている。前記第2ヘッダーピース12の凸状連結部17には、第3ヘッダーピース13の凹状連結部18が嵌合連結されるようになっている。
【0023】
図3は第3ヘッダーピース13を示す断面図であり、その嵌合連結部19を構成する凹状連結部18について説明する。凹状連結部18は円筒状に形成され、その外周面には円環状をなす係止突部20が設けられている。凹状連結部18の外周面には、図5(a)及び(b)に示すような薄い円筒状の補強リング21が外嵌され、その端部が係止突部20に当接されるようになっている(図6(b)参照)。補強リング21の一端には図5(a)の拡大図に示すように、内方へ屈曲形成された係合突条22が設けられている。補強リング21は、ステンレス鋼等の剛性の高い金属材料で形成されている。凹状連結部18の内周面には、断面半円状に形成され周方向に延びる環状溝23が形成されると共に、開口部内周面には開口側ほど拡径するテーパ状のガイド面24が形成されている。
【0024】
図4は第2ヘッダーピース12を示す断面図であり、その嵌合連結部19を構成する凸状連結部17について説明する。凸状連結部17はその外径が前記凹状連結部18の内径よりわずかに小さくなるように円筒状に形成され、凹状連結部18に嵌合連結されるように構成されている。凸状連結部17の基端部には、前記凹状連結部18のガイド面24に対応するように基端側ほど拡径したテーパ状の傾斜面25を介して先端部より拡径された段部26が設けられている。その段部26の外周には環状係合溝27が凹設され、該環状係合溝27には前記補強リング21の係合突条22が係合されるようになっている。そして、凸状連結部17と凹状連結部18の嵌合連結部19の外周に円筒状に形成された補強リング21が嵌め込まれることにより、凸状連結部17と凹状連結部18との径方向(図1の上下方向)への撓み(拡縮又は変形)が規制される。
【0025】
凸状連結部17の傾斜面25より先端側には、周方向に延びCリング28を収容する収容溝29が設けられ、凸状連結部17と凹状連結部18との嵌合連結時にCリング28を縮径させて収容溝29内に完全に収容される大きさに設定されている。このCリング28は、リン青銅、ステンレス鋼等のばね性を有する金属により、拡縮自在に構成されている。係る収容溝29の先端側開口部には、円弧状に切欠かれ、Cリング28の一部を収容溝29から凹状連結部18の前記環状溝23へ誘導するための切欠き溝30が設けられている。これらCリング28、収容溝29及び環状溝23により、凸状連結部17及び凹状連結部18の軸線方向(図1の左右方向)への相対移動を規制する規制手段が構成されている。そして、凸状連結部17と凹状連結部18との嵌合状態でCリング28が収容溝29と環状溝23の双方に収容されることにより(図6(d)参照)、凸状連結部17及び凹状連結部18の軸線方向への移動が規制されるようになっている。凸状連結部17の収容溝29よりも先端側には、一対の収納孔31が設けられ、各収納孔31にはゴム製のシールリング32が嵌着されている。これらのシールリング32により、凸状連結部17と凹状連結部18との間が水密に形成される。
【0026】
次に、各ヘッダーピースにおける樹脂パイプ16が接続される部分の構造は同様に構成されているため、第3ヘッダーピース13の構造について説明する。
図3に示すように、第3ヘッダーピース13の本体筒部41は略円筒状をなし、該本体筒部41の外周側において突出形成された外側筒部43と、本体筒部41の内周側において突出形成され樹脂パイプ16が外嵌される円筒状の内側筒部44とにより構成されている。内側筒部44の内周には、水が流通する分岐流路15が形成されている。
【0027】
前記外側筒部43の外周面には複数の突条45が設けられると共に、本体筒部41の内周側には樹脂パイプ16が挿入される挿入空間46が形成されている。キャップ47はその内周面に複数の凹条48を有し、キャップ47を外側筒部43に対して嵌め込むことによりその凹条48が外側筒部43の突条45に係合され、キャップ47が本体筒部41に連結されるように構成されている。キャップ47の外周面には環状係合溝27が設けられ、前記と同様の補強リング21の係合突条22が係合されている。このため、外側筒部43とキャップ47とについてそれらの径方向への動きが規制され、外側筒部43に対してキャップ47が外れることを防止することができる。キャップ47の外端部には、樹脂パイプ16が挿入されるパイプ挿入用開口49が設けられている。
【0028】
外側筒部43の内側には、その内周面の係止段部に係合される係合段部を有する中間筒体50が配設されている。外側筒部43の外端面とキャップ47の内周面との間には、ステンレス鋼等の金属で形成された抜け止めリング51が規制体52によって位置規制された状態で介装されている。抜け止めリング51の内周部には抜け止め片51aが斜め方向に突出形成され、樹脂パイプ16の外周部に食い込んで樹脂パイプ16の抜け止めを行うようになっている。この抜け止めリング51とキャップ47の内周の第1斜面53との間には、割りリング54が介在され、抜け止め片51aの傾斜角度を保持するように構成されている。
【0029】
該割りリング54の外端部には、キャップ47の第1斜面53と同じ傾斜角度をもつ第2斜面55が設けられ、樹脂パイプ16の引き抜き方向への力により抜け止め片51aを介して割りリング54が軸線方向外方へ力を受けたとき、割りリング54を縮径させるように構成されている。そして、割りリング54の内周面に設けられた締付面56が樹脂パイプ16を締付けるようになっている。前記本体筒部41と中間筒体50との間には、ゴム製のOリング57が配置され、挿入される樹脂パイプ16の外周面に密接して止水するようになっている。
【0030】
前記割りリング54の内側には、樹脂パイプ16の先端部に押圧されて樹脂パイプ16の挿入を案内する挿入ガイド58が配置されている。該挿入ガイド58はCリング状に形成され、拡縮可能に構成されている。挿入ガイド58の外径は樹脂パイプ16の外径と同一又は若干大きく形成され、内径は内側筒部44の外径より若干大きく形成されている。割りリング54の内周面には、抜け止め用段差が設けられ、該抜け止め用段差に挿入ガイド58の当接面59の外周部が係合され、挿入ガイド58が抜け止め保持されるようになっている。挿入ガイド58の内端側の内周面には円弧面が形成され、挿入ガイド58が内側筒部44の外周面を内方へ移動するときに円滑に移動できるようになっている。
【0031】
前記本体筒部41、キャップ47、中間筒体50、割りリング54、挿入ガイド58等は、PPS樹脂、ポリアセタール樹脂(POM)等の合成樹脂(エンジニアリングプラスチック)によって形成されている。また、樹脂パイプ16は、ポリオレフィン(架橋ポリエチレン、ポリブテン等)等の合成樹脂により形成されている。
【0032】
そして、樹脂パイプ16をキャップ47のパイプ挿入用開口49から挿入すると、樹脂パイプ16の先端面が挿入ガイド58の当接面59に当接する。その状態から、樹脂パイプ16をさらに挿入すると樹脂パイプ16は挿入ガイド58に案内され、挿入ガイド58及び樹脂パイプ16は抜け止めリング51の抜け止め片51aを通過し、挿入ガイド58の先端部がOリング57に到達する。続いて、樹脂パイプ16をさらに挿入すると、挿入ガイド58及び樹脂パイプ16はOリング57を通過して挿入空間46に入り、挿入ガイド58の先端部が挿入空間46を形成する内奥壁に当接して樹脂パイプ16の挿入が完了する。
【0033】
次に、以上のように構成されたヘッダーについてその作用を説明する。
図6(a)に示すように、第2ヘッダーピース12の凸状連結部17を第3ヘッダーピース13の凹状連結部18に嵌合連結させる場合には、凸状連結部17の収容溝29の位置にCリング28を装着すると共に、一対の収納孔31にシールリング32を収容する。一方、凹状連結部18の外周に補強リング21を外嵌し、その端部を係止突部20に当接させる。その状態で、図6(b)に示すように、第2ヘッダーピース12の凸状連結部17を第3ヘッダーピース13の凹状連結部18に嵌入させる。このとき、Cリング28は凹状連結部18のガイド面24に押圧されて縮径され、収容溝29内へと収容される。
【0034】
続いて、図6(c)に示すように、凸状連結部17を凹状連結部18にさらに嵌入させると、Cリング28は一層縮径されてほとんど収容溝29内に収容されると共に、補強リング21の係合突条22側が凸状連結部17の段部26の外周面上を摺動する。最後に、図6(d)に示すように、凸状連結部17を凹状連結部18にさらに嵌入させて凹状連結部18の先端面を凸状連結部17の段部26の外側面に当接させる。このとき、凸状連結部17の外周部では、補強リング21の係合突条22が凸状連結部17の段部26外周面の環状係合溝27に係合して位置決めされる。そのため、剛性の高い円筒状の補強リング21は凸状連結部17と凹状連結部18との嵌合連結部19を覆うように配置され、凸状連結部17及び凹状連結部18の径方向への撓みが抑えられる。さらに、補強リング21が凸状連結部17の段部26の外周面及び凹状連結部18の係止突部20までの外周面に跨って設けられているため、凸状連結部17及び凹状連結部18について軸線方向を外れる動きが抑えられる。
【0035】
一方、凹状連結部18の内周部ではCリング28が拡径され、その一部が切欠き溝30から環状溝23内へ案内され収容される。このように、Cリング28のほぼ半分が環状溝23に入り、残りの半分が収容溝29及び切欠き溝30に入る。従って、前記のように凸状連結部17及び凹状連結部18は補強リング21により径方向への動きが抑えられ、かつ凸状連結部17及び凹状連結部18はCリング28により軸線方向への動きが抑えられている。よって、凸状連結部17又は凹状連結部18に軸線方向への引き抜き力が作用したときに凸状連結部17と凹状連結部18の嵌合が外れるのを回避することができる。以上の操作手順により、凸状連結部17と凹状連結部18とが嵌合され、連結される。
【0036】
以上の実施形態によって発揮される効果について、以下にまとめて記載する。
・ 第1実施形態のヘッダー10では、各ヘッダーピースの嵌合連結部19の外周に補強リング21が装着されることから、凸状連結部17及び凹状連結部18の径方向への撓みが抑えられ、ヘッダーピース間の軸線が保持される。さらに、嵌合連結部19の内周にはCリング28、収容溝29及び環状溝23により規制手段が設けられていることから、凸状連結部17及び凹状連結部18の軸線方向への相対移動が規制される。従って、係るヘッダー10においては、外部から衝撃力や引き抜き力が加わったときでもヘッダーピースの嵌合連結部19における変形を防止でき、嵌合連結部19の連結を強固に維持することができ、耐久性を向上させることができると共に、ヘッダーピース間の軸線のぶれを防止することができる。
【0037】
・ 前記補強リング21は凸状連結部17と凹状連結部18とが嵌合連結されたとき凸状連結部17の段部26の外周面及び凹状連結部18の外周面(係止突部20より先端側)に跨って設けられている。そのため、凸状連結部17及び凹状連結部18についてそれらの軸線方向が保持され、ヘッダーピース間の軸線のぶれを有効に防止することができる。
【0038】
・ 凸状連結部17の外周面には環状係合溝27が形成されると共に、補強リング21の一端には係合突条22が形成され、該係合突条22が環状係合溝27に係合するように構成されている。このため、補強リング21が凸状連結部17の環状係合溝27に係合して位置決めされ、嵌合連結部19の変形防止効果を向上させることができる。
【0039】
・ 凹状連結部18の外周面には、補強リング21の他端が当接される係止突部20が設けられている。従って、凸状連結部17と凹状連結部18とを連結させるとき、補強リング21の他端が係止突部20に当接された状態で行われ、補強リング21を嵌合連結部19に跨るように容易に位置させることができる。
【0040】
・ 凸状連結部17の外周面には凸状連結部17と凹状連結部18の嵌合連結時にCリング28を縮径させて収容する収容溝29を形成すると共に、凹状連結部18の内周面には凸状連結部17と凹状連結部18とが嵌合された状態でCリング28の一部が収容される環状溝23が形成されている。このため、凸状連結部17と凹状連結部18とが嵌合された状態でCリング28が収容溝29と環状溝23の双方に収容され、ヘッダーピースの嵌合連結部19の連結を強固なものにすることができる。
【0041】
・ 収容溝29には凸状連結部17と凹状連結部18との嵌合連結時にCリング28の一部を収容溝29から環状溝23へと誘導するための切欠き溝30が形成されている。従って、凸状連結部17と凹状連結部18との嵌合連結時にCリング28を収容溝29から環状溝23へ円滑に導くことができる。
【0042】
なお、本実施形態は、次のように変更して具体化することも可能である。
・ 図7に示すように、凸状連結部17及び凹状連結部18の軸線方向への相対移動を規制する規制手段として、前記Cリング28、収容溝29及び環状溝23に代えて、凸状連結部17の外周面に鋸刃状の規制突条33を設けると共に、凹状連結部18の内周面に規制突条33に係合する規制凹条34を設けることができる。このように構成した場合には、凸状連結部17を凹状連結部18に嵌入させるだけで簡単に凸状連結部17と凹状連結部18とを連結させることができる。
【0043】
・ 図8に示すように、補強リング21の両端に係合突条22を設けると共に、凹状連結部18の外周面の係止突部20に代えて係止凹部35を設け、該係止凹部35に補強リング21の係合突条22を係合させるように構成することもできる。このように構成した場合、補強リング21の一端の係合突条22を凸状連結部17の環状係合溝27に係合させ、他端の係合突条22を凹状連結部18の係止凹部35に係合させることができるため、補強リング21によって凸状連結部17及び凹状連結部18の軸線方向への動きを規制することができる。
【0044】
・ 図9に示すように、補強リング21の係合突条22を断面半円状の係合凹所36に代えると共に、凸状連結部17の環状係合溝27を係合突起37に代えることもできる。この場合にも、補強リング21の係合凹所36を凸状連結部17の係合突起37に係合させることができ、補強リング21の位置決めをすることができる。
【0045】
・ 図10に示すように、補強リング21の一端の係合突条22を断面半円状の係合凹所36に代えると共に、他端を係合突条22にすることもできる。一方、凸状連結部17の環状係合溝27を係合突起37に代えると共に、凹状連結部18の外周面の係止突部20を係止凹部35に代えることもできる。この場合、補強リング21の一端の係合凹所36に凸状連結部17の係合突起37を係合させ、他端の係合突条22を凹状連結部18の係止凹部35に係合させることができるため、補強リング21によって凸状連結部17及び凹状連結部18の軸線方向への動きを規制することができる。
【0046】
・ 前記実施形態において、補強リング21の係合突条22を内端側ではなく、外端側に設け、環状係合溝27を凸状連結部17ではなく、凹状連結部18の外周面に設けると共に、係止突部20を凹状連結部18ではなく、凸状連結部17の外周面に設けることもできる。この場合も実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0047】
・ 実施形態では、ヘッダー10として3つのヘッダーピースを連結した3連のもので構成したが、2つのヘッダーピースを連結した2連のもの、或いは4つ以上のヘッダーピースを連結したもので構成することもできる。この場合、嵌合連結部19の連結構成は、前記実施形態と同様である。
【0048】
・ 補強リング21の厚さは均一でなくともよく、例えば係合突条22の部分を厚くしたりすることもできる。
・ 前記ヘッダーピースを、銅、アルミニウム等の柔らかい金属で構成することも可能である。
【0049】
・ 樹脂パイプ16に代えて、銅、銅合金等の柔らかい金属製のパイプを用いることも可能である。
さらに、前記実施形態より把握できる技術的思想について以下に記載する。
【0050】
・ 前記ヘッダーピースは合成樹脂により構成されていることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか1項に記載のヘッダー。このように構成した場合、合成樹脂製のヘッダーについて、請求項1から請求項6のいずれかに係る発明の効果を有効に発揮させることができる。
【0051】
・ 前記凹状連結部の先端側内周面にはテーパ状のガイド面が形成されると共に、凸状連結部の基端側外周面には前記ガイド面に対応する傾斜面が形成されていることを特徴とする請求項5又は請求項6に記載のヘッダー。このように構成した場合、請求項5又は請求項6に係る発明の効果に加えて、凸状連結部を凹状連結部に嵌合させるときにCリングを円滑に縮径させて収容溝に収容することができる。
【0052】
・ 前記凸状連結部及び凹状連結部の外周面には環状係合溝が形成されると共に、補強リングの両端には係合突条が形成され、補強リングの一方の係合突条が凸状連結部の環状係合溝に係合し、他方の係合突条が凹状連結部の環状係合溝に係合するように構成されていることを特徴とする請求項1に記載のヘッダー。このように構成した場合、請求項1に係る発明の効果に加えて、補強リングを嵌合連結部の位置に保持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】実施形態におけるヘッダーを示す断面図。
【図2】実施形態のヘッダーを示す正面図。
【図3】第3ヘッダーピースを示す断面図。
【図4】第2ヘッダーピースを示す断面図。
【図5】(a)は補強リングを示す断面図、(b)は補強リングを示す側面図。
【図6】(a)〜(d)はヘッダーピースの凸状連結部を凹状連結部に嵌入する場合の作用を説明するための断面図。
【図7】本発明における凸状連結部と凹状連結部の連結構造の別例を示す嵌合連結部の断面図。
【図8】本発明における補強リングの別例を示す嵌合連結部の断面図。
【図9】本発明における補強リングの凸状連結部に対する係合の別例を示す嵌合連結部の断面図。
【図10】本発明における補強リング及びその凸状連結部に対する係合の別例を示す嵌合連結部の断面図。
【符号の説明】
【0054】
10…ヘッダー、11…第1ヘッダーピース、12…第2ヘッダーピース、13…第3ヘッダーピース、17…凸状連結部、18…凹状連結部、19…嵌合連結部、20…係止突部、21…補強リング、22…係合突条、23…環状溝、27…環状係合溝、28…Cリング、29…収容溝、30…切欠き溝。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のヘッダーピースの凸状連結部と凹状連結部とが嵌合連結され、各ヘッダーピース間が相対回動可能に構成されるヘッダーであって、
各ヘッダーピースの嵌合連結部の外周には凸状連結部及び凹状連結部の径方向への撓みを抑えてヘッダーピース間の軸線を保持する補強リングが装着されると共に、嵌合連結部の内周には凸状連結部及び凹状連結部の軸線方向への相対移動を規制する規制手段が設けられていることを特徴とするヘッダー。
【請求項2】
前記補強リングは、凸状連結部と凹状連結部とが嵌合連結されたとき凸状連結部及び凹状連結部の外周面に跨って設けられていることを特徴とする請求項1に記載のヘッダー。
【請求項3】
前記凸状連結部又は凹状連結部の外周面には環状係合溝が形成されると共に、補強リングの一端には係合突条が形成され、該係合突条が前記環状係合溝に係合するように構成されていることを特徴とする請求項2に記載のヘッダー。
【請求項4】
前記環状係合溝が形成されていない凹状連結部又は凸状連結部の外周面には、補強リングの他端が当接される係止突部が設けられていることを特徴とする請求項3に記載のヘッダー。
【請求項5】
前記凸状連結部の外周面には凸状連結部と凹状連結部の嵌合連結時にCリングを縮径させて収容する収容溝を形成すると共に、凹状連結部の内周面には凸状連結部と凹状連結部とが嵌合された状態でCリングの一部が収容される環状溝が形成され、これらCリング、収容溝及び環状溝によって前記規制手段が構成されていることを特徴とする請求項3又は請求項4に記載のヘッダー。
【請求項6】
前記収容溝には、凸状連結部と凹状連結部との嵌合連結時にCリングの一部を収容溝から環状溝へと誘導するための切欠き溝が形成されていることを特徴とする請求項5に記載のヘッダー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−63018(P2009−63018A)
【公開日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−229240(P2007−229240)
【出願日】平成19年9月4日(2007.9.4)
【出願人】(502042724)株式会社 オンダ製作所関工場 (34)
【Fターム(参考)】