説明

ヘッドマウントディスプレイ装置

【課題】使用者が、周辺状況を短時間で正確且つ明確に認識可能な映像情報を表示等可能なヘッドマウントディスプレイを提供する。
【解決手段】小型カメラから取得した映像を表示可能なヘッドマウントディスプレイに赤外線センサを備え、この赤外線センサが観者周辺の段差等の障害物を検出した場合に、映像処理手段により輪郭強調等の映像処理を行い、段差等を目立たせた危険予測映像を表示することで、弱視等の視覚障害を有する者でも早期に段差等を認識可能とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヘッドマウントディスプレイ装置に係り、特に、段差や障害物等を検出し観者に警告を発する手段を備えたヘッドマウントディスプレイに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、頭部への懸架装置に小型のディスプレイを備えて眼前に電子映像を表示させるヘッドマウントディスプレイ(以下、単に「HMD」という。)が知られている。産業用、医療用又は映画の鑑賞用等、種々のHMDが開発され、その用途も多岐にわたっている。その中でも、眼鏡の形状を具備する懸架装置に小型ディスプレイを搭載するタイプのものは、外界の景色に電子映像を重畳的に表示するシースルー性を有しており、弱視者等の視覚的な障害をもつ者には、通常視界を補完する第二の眼として、益々ニーズが高まっている。
【0003】
視覚補助として機能するHMDには、観者の視線方向等を撮像する小型カメラが備えられているものもある。小型カメラから撮像された映像は、眼前のディスプレイに表示されるようになっている。観者は外部環境に応じて、外界光による視界とディスプレイ上の映像とを使い分けながら視覚情報を得ることが可能となっている。
また、視覚補助としての機能を有するHMDにおいては、単に、進行方向の景色等を表示するだけでなく、各種の障害物等の検出機能をもたせて、より積極的に観者に情報を提供するタイプのものも開発されている。この様な危険予測という視点からの発明として、特許文献1に提供されるHMDは、通路や天井に予め配設された複数の赤外線照射マーカからの赤外線を検出する赤外線センサを備えたHMDであって、位置の異なる複数のマーカからの信号で観者の現在地を演算により測定し、この測定結果に対応する映像を表示するものである。
また、特許文献2及び3では、各種の位置検出手段から使用者の位置を検出し、この検出結果に基づいて音声により周辺状況の情報を告知する装置が提供されている。
【特許文献1】特許3372926号公報
【特許文献2】特開平8−66441号公報
【特許文献3】特開2001−319288号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に提供される発明は、赤外線照射マーカから照射される赤外線に依存するものであり、マーカの設置上の制約により限られた空間内でしか周辺状況の情報を提供することができない。また、表示される映像が予め用意されたものであるため、突発的な状況変化に対応することができず、危険予測の手段としては危険性が高いといえる。
また、特許文献2又は3に提供される発明は、音声により周辺状況を案内するものである。使用者は、音声情報から周辺に危険があることは認識することができても、具体的にそれが何処にどのような形で存在しているのかを瞬時に判断することは困難である。特に、弱視等の外界光の検出が困難な者にとっては、視覚を通じての情報を得ることができず、このような傾向が強くなる。
【0005】
本発明の目的は、使用者が、周辺状況を短時間で正確且つ明確に認識可能な補助情報を提供することに有る。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、ヘッドマウントディスプレイ装置において、被写体を撮像する撮像手段と被写体の状況を検出し信号を出力する状況検出手段と、前記状況検出手段の検出信号に基づいて、前記撮像手段から取得された映像信号から危険予測映像信号を生成する映像処理手段と、前記映像処理手段により変換された危険予測映像信号から映像を表示する映像表示手段とを備えることを特徴とする。
【0007】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のヘッドマウントディスプレイ装置において、前記映像処理手段で行う信号生成処理は、前記撮像装置で撮像された映像信号の輪郭強調補正、色調補正、コントラスト補正又はこれらの組合せのいずれか一つであることを特徴とする。
【0008】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載のヘッドマウントディスプレイ装置において、前記状況測定手段は、光センサ又は音波検知器のいずれか一つであることを特徴とする。
【0009】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれか一項に記載のヘッドマウントディスプレイ装置において、前記ヘッドマウントディスプレイは、前記状況検出手段の検出信号に基づいて、危険予測情報を発する補助警告手段を更に備えることを特徴とする。
【0010】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載のヘッドマウントディスプレイ装置において、前記補助警告手段は、振動発生装置、音声発生装置又はLEDランプのいずれか一つであることを特徴とする。
【0011】
請求項6に記載の発明は、請求項1〜5のいずれか一項に記載のヘッドマウントディスプレイ装置において、前記状況検出手段の取り付け角度は、視界の水平方向に対し15度上方から60度下方の角度であることを特徴とする。
【0012】
請求項7に記載の発明は、ヘッドマウントディスプレイ装置において、被写体を撮像する撮像手段と、前記撮像手段から取得された映像信号を予め設定された規定映像信号でパターンマッチング処理を行う第一信号生成処理と、前記第一信号生成処理によるパターンマッチング処理により検出された検出信号に基づいて前記映像信号から危険予測映像信号を生成する第二信号生成処理とを含む映像処理手段と、前記映像処理手段により変換された危険予測映像信号を表示する映像表示手段を備えることを特徴とする。
【0013】
請求項8に記載の発明は、請求項7に記載のヘッドマウントディスプレイ装置において、前記第二信号生成処理で行う信号生成処理は、前記撮像装置で撮像された映像信号の輪郭強調補正、色調補正、コントラスト補正又はこれらの組合せのいずれか一つであることを特徴とする。
【0014】
請求項9に記載の発明は、請求項7又は8に記載のヘッドマウントディスプレイ装置において、前記ヘッドマウントディスプレイは、前記第一信号生成処理における検出信号に基づいて、危険予測情報を発する補助警告手段を更に備えることを特徴とする。
【0015】
請求項10に記載の発明は、請求項9に記載のヘッドマウントディスプレイ装置において、前記補助警告手段は、振動発生装置、音声発生装置又はLEDランプのいずれか一つであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
請求項1に記載の発明によれば、ヘッドマウントディスプレイ装置が、状況検出手段を備えることで、観者の周辺状況の変化を判別することが可能となる。また、状況検出手段の検出信号に基づいて、撮像手段で取得された映像信号に段差等の障害物を目立たせる危険予測映像信号を生成することから、観者が映像表示手段上で障害物の位置、大きさ及び態様を瞬時に認識することが可能となる。この結果、観者が障害物等の具体的情報を念頭において進行方向を決めることができ、観者が安全且つ安心感をもって歩行することが可能となる。
【0017】
請求項2に記載の発明によれば、映像処理手段により行われる信号生成が輪郭強調補正、色調補正、コントラスト補正又はこれらの組合せのいずれか一つであるため、段差等の障害物の視認性を向上させることが可能となる。この結果、瞬時に障害物を認識することが可能となる。また同時に、障害物の存在を念頭において進行方向を決めることが可能となり、観者が安全且つ安心感をもって歩行することが可能となる。
【0018】
請求項3に記載の発明によれば、状況測定手段の測定可能領域が比較的広い光センサ又は音波探知機であるため、観者から一定の距離をおいた場所の測定も可能とすることができる。このため、観者が、より早期に段差等の障害物を認識しながら安全且つ安心感をもって歩行することが可能となる。
【0019】
請求項4に記載の発明によれば、映像処理手段が映像信号を生成することで危険予測を可能とするのに加えて、危険予測情報を更に発する補助警告手段を備えることで、観者がより確実に段差等の障害物を認識することが可能となる。このため、観者が、より確実に段差等を認識しながら安全且つ安心感をもって歩行することが可能となる。
【0020】
請求項5に記載の発明によれば、前記補助警告手段が、振動発生装置であるため、観者が触覚で危険箇所の存在を認識することができる。また、音声発生装置であるため聴覚で危険箇所の存在を認識することができる。更に、LEDランプであるため、映像表示手段以外からも視覚により危険箇所の存在を認識することができる。このように複数の感覚を介して危険の予測を認識させるため、観者が、より確実に且つ安全に歩行することが可能となる。
【0021】
請求項6に記載の発明によれば、前記状況検出手段の取り付け角度は、視界の、水平方向に対し15度上方から60度上方の角度であるため、観者の進行方向に存在する障害物を確実に検出することが可能となる。
【0022】
請求項7に記載の発明によれば、撮像手段で取得された映像を、予め記憶された規定映像信号でパターンマッチング処理することで、ヘッドマウントディスプレイ装置が周辺状況の変化を判別することが可能となる。また、このような第一信号生成処理の検出信号に基づいて、第二信号生成処理で映像信号を危険予測映像信号に生成する処理が行われるため、観者が映像表示手段上で障害物の位置、大きさ及び態様を瞬時に認識することが可能となる。この結果、観者が、障害物等の具体的情報を念頭において進行方向を決めることができ、観者が安全且つ安心感をもって歩行することが可能となる。
【0023】
請求項8に記載の発明によれば、第二信号生成処理で行われる信号生成が輪郭強調補正、色調補正、コントラスト補正又はこれらの組合せのいずれか一つであるため、段差等の障害物の視認性を向上させることが可能となる。この結果、瞬時に障害物を認識することが可能となる。また同時に、障害物の具体的情報を念頭において進行方向を決めることができ、観者が安全且つ安心感をもって歩行することが可能となる。
【0024】
請求項9に記載の発明によれば、第二信号生成処理による危険予測映像信号の生成に加えて、第一信号生成処理の検出信号に基づいて、危険予測情報を発する補助警告手段を更に備えることで、観者がより確実に段差等の障害物を認識することが可能となる。このため、観者が、より確実に段差等を認識しながら安全且つ安心感をもって歩行することが可能となる。
【0025】
請求項10に記載の発明によれば、前記補助警告手段が、振動発生装置であるため、観者が触覚で危険箇所の存在を認識することができる。また、音声発生装置であるため聴覚で危険箇所の存在を認識することができる。更に、LEDランプであるため、映像表示手段以外からも視覚により危険箇所の存在を認識することができる。このように複数の感覚を介して危険の予測を認識させるため、観者が、より確実に且つ安全に歩行することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
次に、図を用いて、本発明を実施するための最良の形態について説明する。第1実施形態におけるHMDは、状況検出手段として赤外線センサを利用して周辺状況を検出し、この検出結果に基づいて特定の危険予測情報をHMDのディスプレイ上に表示するものである。
なお、以下の説明で、赤外線センサが検出する状況とは、使用者の正対方向を中心として広がる領域に存在する地面の段差、階段又は障害物あるいは地面から使用者の身長近傍の高さに存在する壁、梁、又は看板等を意味するものとする。
【0027】
図1は本発明を適用したHMDの外観構成を示した概要図である。なお、以下の説明において、接眼方向と反対の方向を正面とする。
HMD1は、通常の眼鏡と同様に、鼻当て2及びテンプル3が備えられるフレーム4とレンズ5を有する。このフレーム4のレンズ5の上方には、映像表示装置6、接眼光学系7及び撮像装置8が一体となって設置されている。また、これら映像表示装置6等が設置されるのと反対方向の側面(眼鏡の蝶番近傍)には、略正面方向に赤外線を照射する赤外線光源9が備えられる。この赤外線光源9から照射される赤外線が被写体に反射され、後述する赤外線受光機能を有する撮像装置8に入射することで状況検出手段として機能する構成となっている。
また、赤外線光源9は、映像表示装置6及び撮像装置8とともにケーブル10を介してコントロールボックスである制御ユニット20に接続されるものである。
【0028】
レンズ5と接眼光学系7とは、面方向が段差なく一致するように嵌合されている。なお、第1実施形態におけるHMD1は、映像表示装置6から照射される映像光を干渉させて映像を表示させるホログラムの原理により眼球に虚像を結ばせるものである。このような構成にすることで、外界光による視界上にホログラム映像を重畳的に表示させることができ、外界光による視界を妨げることなく補助情報を提供することが可能となる。
【0029】
撮像装置8は、映像情報の入力手段の一つであり、映像表示装置6の上部で且つフレーム4とテンプル3とを連結する蝶番近傍に備えられる。また、使用者の視線方向の視界をとらえるために、主に観者の前方を中心とした視界領域を撮影可能な向きで設置されている。撮像装置8は、被写体からの反射光を受光素子の光電変換作用により電子信号に変換し、ケーブル10を介して接続される制御ユニット20に送信するものである。制御ユニット20からは、一定の映像処理が施された信号が上記映像表示装置6に送信され、観者の視界上に視覚補助手段としての映像を表示させることが可能となっている。
撮像装置8としては、CCD(Charge Coupled Device)やCMOS(Complementary metal oxide semiconductor)イメージセンサ等を利用した撮像機器が適用できるが、第1実施形態では、赤外線光源9から照射されて被写体に反射される赤外線を捕らえるために赤外線受光機能を備えた小型CCDカメラを適用するものである。
【0030】
ここで、撮像装置8の赤外線受光領域は、映像表示装置6で表示可能な領域に設定されるものであるが、図2に示すように、視界の水平方向を0度とした場合に上方向に90度から下方向に−90度の範囲内であれば第1実施形態におけるHMD1の危険予測効果を十分に担保することができる。なお、上方向に15度から下方向に60度の範囲がより好ましい。使用者の進行方向に存在する段差等の障害物は比較的足元に集中するためである。
【0031】
映像表示装置6は、制御ユニット20から送信される映像信号を変換して映像を接眼光学系7に照射するものである。図3は、映像表示装置6及び接眼光学系7の左側面からの断面を示した側断面図である。映像表示装置6の本体となる筐体30の内部には、制御ユニット20から送信される映像信号から映像を生成する透過型の液晶表示器31、バックライト光源である発光ダイオード(LED)32及び発光ダイオード32からの照射光を液晶表示器31の全面に導くための照明光学系33が備えられる。
【0032】
接眼光学系7は、更に、プリズム34とホログラム素子35とからなる。プリズム34は、液晶表示器31でスペクトル変換された映像光束を採光し、内部に反射させながらホログラム素子35へと導光を行うものである。ホログラム素子35は、この導光された映像光束の照射を受けてホログラム映像を表示させるようになっている。
なお、プリズム34の上端は、液晶表示器31からの映像を採光しやすいように採光部36が正面方向に厚く形成された楔の形状を有する。このプリズム34の上端に位置する採光部36から採光された光は、プリズム34の内部で全反射されながら下端に設けられるホログラム素子35へと導かれる。この導かれた映像光束がホログラム素子35に照射され光の干渉により眼球Eに虚像を結ばせる構造となっている。
【0033】
次に、HMD1の制御ユニット20について説明する。
図4は、制御ユニット20の機能的構成を示したブロック図である。制御ユニット20は、演算処理部21、A/D変換器22、赤外線測定回路23、表示駆動装置24及び電源ユニット25からなり、演算処理部21は、更に、CPU26、ROM29、DSP27及びグラフィックメモリ28から構成される。
【0034】
以下に、各装置の機能の概要を説明する。CPU(Central Processing Unit)26は、予め記録されたプログラムに基づいてHMD1の全体制御を行うものである。また、ROM(Read Only Memory)29は、HMD1の制御全般に関わるプログラム及びDSP27で行われる映像処理に関する各種のプログラム等が格納されるものである。
【0035】
A/D(Analog/Digital)変換器22は、撮像装置8の光電変換により得られたアナログ映像信号をデジタル映像信号に変換しCPU26に送信するものである。また、赤外線測定回路23は、赤外線受光機能付きの撮像装置8から出力される赤外線レベルを測定するものであり、予め定められた入力値を下回る(あるいは上回る)場合にCPU26に検出信号を出力するようになっている。
【0036】
グラフィックメモリ28は、A/D変換器22から取得されたデジタル信号や、DSP27等で映像処理が施されたデジタル信号の一時記憶を行うものである。また、DSP27が実行するプログラムを展開するためのプログラムエリアが展開されるものである。
【0037】
電源ユニット25は、図示しない電源スイッチを介してHMD1を作動させる電源を供給するものであり、各種外部電源又は携帯電池若しくは充電池も適用可能であるが、本実施形態では、HMD1のポータブル性に鑑み、携帯型の電池が適用されている。
【0038】
DSP(Digital Signal Processor)27は、CPU26の指示に従い、グラフィックメモリ28に記録され未だ映像処理がされていないデジタル映像信号を読み込み、撮像装置8で取得した赤外線信号に基づいて、映像表示装置6に表示される映像信号の部分的な色調補正、各種のフィルタ処理あるいは合成処理を行うものである。
【0039】
ここで、色調補正としては、映像信号の部分的な輝度変換、コントラスト調節又は階調反転等を適用することができる。フィルタ処理としては、部分的な輪郭強調処理、エンボス処理、シャープ処理、アンシャープ処理あるいはモザイク処理等を適用することができる。また、合成処理としては、映像面上に予め定められた記号や危険を示す特定のテキストデータを表示する等の手段が適用できる。
【0040】
次に、図5を用いて、制御ユニット20の処理手順について説明する。
赤外線光源9から赤外線が照射されると(ステップS1)、被写体から反射される赤外線が赤外線受光機能を備えた撮像装置8に入射し、検出信号がA/D変換器22を介してCPU26に出力される(ステップS2)。このときCPU26に入力された電子信号の値が予め設定された値(例えば段差の無い平滑状態での赤外線の受光量の値)と異なる場合は(ステップS3:YES)CPU26は、DSP27に輪郭強調処理指示信号を出力する(ステップS4)。CPU26から輪郭強調処理信号を入力したDSP27は、グラフィックメモリ28から未処理の映像信号(以下、「RAW信号」という。)を読み込み(ステップ5)、予め定められたフィルタデータに基づいてRAW信号の輪郭強調処理を行う(ステップS6)。これにより段差を目立たせた危険予測映像信号が生成される(ステップS7)
【0041】
より具体的には、液晶表示器31の解像度に対応したドット毎の階調値から一定の方向に平均化された値を有するドット群をグループ化する。この処理はR、G、Bの各チャンネル毎に行われる。また、これらグループの境界に位置するドット群の階調から予め定められた階調値(例えば、R,G、Bの各値を赤色が表示される割合にする。)を生成する。これにより、段差のように急激に階調が異なる領域と観者が位置する平面の領域との境界を赤いラインで区別して表示することが可能となる。
【0042】
その後、輪郭強調処理が施された映像信号は、表示駆動装置を介して映像表示装置6に出力される(ステップS8)。
【0043】
以上のように、本実施形態によれば、観者が、段差等の障害物に対し、その位置及び態様を正確に判別することが可能となる。また、このような具体的情報を取得することで、危険に対する安心感が増し自然な歩行が可能になる。特に、輪郭強調、コントラスト調節、階調反転等の映像処理を施すことで階段等の段差の視認性が大幅に向上する。
また、赤外線による検出を利用することで、DSP27での処理時間を抑えることができ、装置の簡略化及び電力消費を低減させることが可能となる
【0044】
なお、映像処理による段差等の識別に加えて聴覚や触覚により警告を行う装置を更に備える構成とすることもできる(図4参照)。例えば、図6(a)に示すように、テンプル3に制御ユニット20と接続されるスピーカユニット41を備える構成としてもよい。CPU26からDSP27に輪郭強調処理指示信号を出力するのと同時に、警告音発生指示信号をスピーカユニット41に出力し、ピープ音や警告音声等を生じるようにすることもできる。また、図6(b)に示すように、テンプル3に小型振動モータ40を設けて、振動による警告を行う構成としても良い。フレーム4の近傍で、眼球から見える位置にLEDランプ42を設けても良い。
また、ROM29に、このような警告手段に複数のパターン(連続的あるいは断続的)を予め記憶させておき、段差等の度合いにより警告の度合いを段階的にする構成とすることも可能である。
【0045】
また、上記DSP27での輪郭強調は、平均的な階調値を有するグループの境界に属するドットの階調を規定化してライン表示する構成としたが、特定のグループの色を単色に表示するように変換してもよい。例えば、段差等の障害物は一般に彩度が高くなる傾向にあるが、この傾向を利用して一定の閾値を超える(超えない)階調を特定の色(例えば赤色)に塗りつぶすように変換する。これにより、段差等の位置、大きさ及び態様等がより目立ち、危険予測がしやすくなるという効果がある
【0046】
また、本実施形態では、障害物検出手段として赤外線を利用しているが、他の検出手段としてDSP27によるパターンマッチング処理を適用することも可能である。
即ち、予めROM29に、段差等の輪郭を示したテンプレートデータを記憶させておき、DSP27での輪郭強調処理による輪郭データとテンプレートデータを整合させることで、段差等の障害物の存在を判別することができ、CPU26又はDSP27により上記各種の警告手段を実現させることも可能である。この場合は、赤外線光源9及び撮像装置8の赤外線受光機能を省略することができる。
【0047】
以上、本発明を実施するための最良の形態について説明したが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明を適用した実施形態における外観構成を示した概要図である。
【図2】本発明を適用した実施形態における赤外線光源の光跡を示した模式図である。
【図3】本発明を適用した実施形態における映像表示装置の側断面図である。
【図4】本発明を適用した実施形態における機能的構成を示したブロック図である。
【図5】本発明を適用した実施形態における映像信号変換の処理手順を示したフロー図である。
【図6】本発明を適用した実施形態における他の警告手段を示した概要図である。
【符号の説明】
【0049】
1 HMD
2 鼻当て
3 テンプル
4 フレーム
5 レンズ
6 映像表示装置
7 接眼光学系
8 撮像装置
9 赤外線光源
10 ケーブル
20 制御ユニット
21 演算処理部
22 A/D変換器
23 赤外線測定回路
24 表示駆動装置
25 電源ユニット
26 CPU
27 DSP
28 グラフィックメモリ
29 ROM
30 筐体
31 液晶表示器
32 発光ダイオード
33 照明光学系
34 プリズム
35 ホログラム素子
36 採光部
40 振動モータ
41 スピーカユニット
42 LEDランプ
E 眼球

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被写体を撮像する撮像手段と
被写体の状況を検出し信号を出力する状況検出手段と、
前記状況検出手段の検出信号に基づいて、前記撮像手段から取得された映像信号から危険予測映像信号を生成する映像処理手段と、
前記映像処理手段により生成された危険予測映像信号から映像を表示する映像表示手段とを備えることを特徴とするヘッドマウントディスプレイ装置。
【請求項2】
請求項1に記載のヘッドマウントディスプレイ装置において、
前記映像処理手段で行う信号生成処理は、前記撮像装置で撮像された映像信号の輪郭強調補正、色調補正、コントラスト補正又はこれらの組合せのいずれか一つであることを特徴とするヘッドマウントディスプレイ装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のヘッドマウントディスプレイ装置において、
前記状況測定手段は、光センサ又は音波検知器のいずれか一つであることを特徴とするヘッドマウントディスプレイ装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載のヘッドマウントディスプレイ装置において、
前記ヘッドマウントディスプレイは、前記状況検出手段の検出信号に基づいて、危険予測情報を発する補助警告手段を更に備えることを特徴とするヘッドマウントディスプレイ装置。
【請求項5】
請求項4に記載のヘッドマウントディスプレイ装置において、
前記補助警告手段は、振動発生装置、音声発生装置又はLEDランプのいずれか一つであることを特徴とするヘッドマウントディスプレイ装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載のヘッドマウントディスプレイ装置において、
前記状況検出手段の取り付け角度は、視界の水平方向に対し15度上方から60度下方の角度であることを特徴とするヘッドマウントディスプレイ装置。
【請求項7】
被写体を撮像する撮像手段と、
前記撮像手段から取得された映像信号を予め設定された規定映像信号でパターンマッチング処理を行う第一信号生成処理と、前記第一信号生成処理によるパターンマッチング処理により検出された検出信号に基づいて前記映像信号から危険予測映像信号を生成する第二信号生成処理とを含む映像処理手段と、
前記映像処理手段により生成された危険予測映像信号から映像を表示する映像表示手段を備えることを特徴とするヘッドマウントディスプレイ装置。
【請求項8】
請求項7に記載のヘッドマウントディスプレイ装置において、
前記第二信号生成処理で行う信号生成処理は、前記撮像装置で撮像された映像信号の輪郭強調補正、色調補正、コントラスト補正又はこれらの組合せのいずれか一つであることを特徴とするヘッドマウントディスプレイ装置。
【請求項9】
請求項7又は8に記載のヘッドマウントディスプレイ装置において、
前記ヘッドマウントディスプレイは、前記第一信号生成処理における検出信号に基づいて、危険予測情報を発する補助警告手段を更に備えることを特徴とするヘッドマウントディスプレイ装置。
【請求項10】
請求項9に記載のヘッドマウントディスプレイ装置において、
前記補助警告手段は、振動発生装置、音声発生装置又はLEDランプのいずれか一つであることを特徴とするヘッドマウントディスプレイ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−146778(P2006−146778A)
【公開日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−338937(P2004−338937)
【出願日】平成16年11月24日(2004.11.24)
【出願人】(303050159)コニカミノルタフォトイメージング株式会社 (1,066)
【Fターム(参考)】