説明

ヘッドレスト付車両用シート

【課題】構造簡便、軽量、組付容易化のアクティブ型ヘッドレスト付車両用シート。
【解決手段】前方向移動可能ヘッドレスト16をシートバック13上部に設けた車両用シート11で、シートバックフレーム21の上部に設けたヘッドレストガイドブラケット31a31b、ヘッドレストガイドブラケット31a31bに下端部を露出して挿通され、シート12の前方向に向けて前傾姿勢となるように所定の角度を回動可能に枢着されるヘッドレストガイド33a33b、ヘッドレストガイドブラケット31a31b又はヘッドレストガイド33a33bのいずれか一方に係合されヘッドレストガイドブラケット31a31b又はヘッドレストガイド33a33bのいずれか他方を押圧してヘッドレストガイド33a33bを起立した位置に保持させる弾性部材、ヘッドレストガイド33a33bに挿着されるヘッドレストステー47を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヘッドレスト付車両用シートに関し、特に追突された時に乗員の頭部と頸部とを保護するために前方向に移動可能なアクティブ型ヘッドレスト付車両用シートに関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車などの車両がその後部を追突された時(以下、「後突時」という)、着座している乗員の頭部と頸部とを保護するために、背もたれであるシートバックの上部にヘッドレストが挿着されている。
【0003】
しかしながら、乗員は、通常の走行中、頭部をヘッドレストから所定間隔をあけた前方に位置させて、前方視界を良好に保つ姿勢で着座しているため、後突時には頭部が後方に急激に振られてしまい、このことがむち打ち症の発生につながっている。
【0004】
そこで、乗員の頭部の後方への振れを軽減するために、後突時において乗員の背中がシートバックに沈み込むことによる圧力を利用して、ヘッドレストを前方向に移動させるアクティブ型のヘッドレストが開発されている(特許文献1、2)。
【0005】
特許文献1には、シートバックフレームに設けたサイドフレームの左右上端に架設されるアッパクロスメンバと、このアッパクロスメンバに前後回転可能に軸支され、左右に延在するヘッドレスト支持部材と、このヘッドレスト支持部材に支持されるヘッドレストステー及びヘッドレスト本体と、ヘッドレスト支持部材に垂下される受圧部材とを備え、後突時の乗員のシートバックに沈み込むことによる圧力を受圧部材が受けてヘッドレストを前方に移動させる自動車用シートバックが開示されている。
【0006】
特許文献2では、後突時のシートバックに沈み込むことによる圧力をシートバック内部に設けたプレス板で受け、この圧力をリンク機構及びワイヤを通じてヘッドレストの骨格であるヘッドレスト組立体に伝達し、ヘッドレスト組立体を構成する頭部フレームを前記ワイヤと連結する連結機構により前方向に移動させる、アクティブ型ヘッドレスト付きの座席が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2001−58532公報
【特許文献2】特開2005−104259公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1、2に開示されたアクティブ型のヘッドレストによれば、後突時にヘッドレストが前方に移動するため、頭部の後方への振れを軽減することができる。
【0009】
しかしながら、特許文献1に開示された自動車用シートバックでは、シートバックフレームにサイドフレームを設け、このサイドフレームにアッパクロスメンバを架設させ、さらに左右に延在するヘッドレスト支持部材をアッパクロスメンバに前後回動自在に軸支させる構成のため、他種シートとの間で部品の共有化を図ることができず、さらに構造が複雑化して重量の増加が生じている。また、特許文献2に開示された座席では、ヘッドレスト内部に複雑なアクティブ機構となるヘッドレスト組立体が設けられているため、ヘッドレスト自体の構造が複雑化して重量が増加し、さらにシートバックとヘッドレストとをワイヤで連結した構造を持つため、ヘッドレストの組み付けや交換が容易でないという問題も生じている。
【0010】
本発明は、構造の簡便化、軽量化及び組み付けの容易化を図ることができるアクティブ型のヘッドレスト付車両用シートの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために本発明が提供するのは、起立した位置から回動してシートの前方向に移動可能なヘッドレストをシートバック上部に設けたヘッドレスト付車両用シートであって、シートバックフレームの上部に設けたヘッドレストガイドブラケットと、該ヘッドレストガイドブラケットに下端部を露出して挿通され、前記シートの前方向に向けて前傾姿勢となるように所定の角度を回動可能に枢着されるヘッドレストガイドと、前記ヘッドレストガイドブラケット又は前記ヘッドレストガイドのいずれか一方に係合され、前記ヘッドレストガイドブラケット又は前記ヘッドレストガイドのいずれか他方を押圧して前記ヘッドレストガイドを前記起立した位置に保持させる弾性部材と、前記ヘッドレストガイドに挿着される、前記ヘッドレストの支持部材であるヘッドレストステーと、を備えて成るヘッドレスト付車両用シートである。
【0012】
通常の走行中は、弾性部材によりヘッドレストガイドが起立した状態に置かれることから、ヘッドレストガイドに挿着されたヘッドレストステー及びヘッドレストも起立した状態に置かれる。後突時には、ヘッドレストガイドブラケットを挿通して露出するヘッドレストガイドの下端部に、シートバックに沈み込むことによる乗員の背中による力がシートの前方向から作用するので、弾性部材の弾性力に抗してヘッドレストガイドが前傾姿勢をとるように回動され、これに伴いヘッドレストも回動されてシート前方向に移動するので、乗員の頭部の後方への振れを軽減することができる。
【0013】
また、車両の走行中、駆動するエンジンの振動や路面の凹凸によりシートが振動すると、シートバック上部に位置するヘッドレストにはより大きな振動をもたらす力が伝わることになり、この力が所定以上のときにヘッドレストは弾性部材による起立保持状態を超えて振動状態に至る。このとき、シートバックに対するヘッドレストの振動は、シート全体の振動エネルギーを吸収する方向に作用するので、シートの振動を減衰、低減させるという効果も生じる。
【0014】
したがって、従来の振動低減装置がヘッドレストの内部に質量体やダンパー機構を設置した、シートの重量増加を招く構造である対し、本発明のヘッドレスト付車両用シートでは重量増加につながる質量体やダンパーを設置することなく、シートの振動低減を図ることができる。
【0015】
このように、ヘッドレストガイドブラケットに対してヘッドレストガイドを回動可能に挿着する構造であるから、構造が簡便であり特段の重量の増加を招くこともなく、組み付けの容易化を図ることができる。
【0016】
また、前記ヘッドレストガイドは左右側面に前記ヘッドレストガイドブラケットへの挿通の際に内側への弾性移動可能な断面円形状の凸部である一対の回動中心凸部が設けられ、前記ヘッドレストガイドブラケットは左右側面に前記回動中心凸部が挿入される一対の凸部用孔部が形成されて成り、該凸部用孔部に対して前記回動中心凸部が対応する位置に達したときに、前記回動中心凸部が内側への弾性移動を解除されて前記凸部用孔部へ挿入され、前記ヘッドレストガイドが前記ヘッドレストガイドブラケットに対し前記回動中心凸部を中心にして回動可能に枢着されて成る構成とすることができる。
【0017】
対応する位置に達したときに、回動中心凸部が内側への弾性移動を解除されてもとの突出した位置に戻り、凸部用孔部に挿入されるので、ヘッドレストガイドブラケットに対するヘッドレストガイドの枢着が容易かつ確実になる。
【0018】
また、前記ヘッドレストガイドが前記シートの前方向に向けて所定の角度を回動可能となるように、前記ヘッドレストガイドと前記ヘッドレストガイドブラケットとは、前後の側面同士がそれぞれ所定の間隙を設ける。この間隙はヘッドレストガイドの前傾する角度に応じて決定される。
【0019】
前記弾性部材は山形状の板状バネ部材から成り、その両端のうち少なくとも一端を前記ヘッドレストガイドの後部の側面に形成された係合部に係合され、前記山形状の頂上部が前記ヘッドレストガイドブラケットを押圧して前記ヘッドレストガイドを起立した位置に保持させることが好ましい。
【0020】
通常の走行中は板状バネ部材の弾性力によりヘッドレストガイドを起立した位置に保持させることができ、後突時には乗員の背中がシートバックに沈み込むことによる圧力の作用により、弾性力に抗してヘッドレストガイドを前傾姿勢となるように板状バネ部材の弾性率を決定する。
【0021】
さらに本発明が提供するのは、起立した位置から回動してシートの前方向に移動可能なヘッドレストをシートバック上部に設けたヘッドレスト付車両用シートであって、シートバックフレームの上部に設けたヘッドレストガイドベースブラケットと、該ヘッドレストガイドベースブラケットに挿通され、前記シートの前方向に向けて前傾姿勢となるように所定の角度を回動可能に枢着されるヘッドレストガイドブラケットと、前記ヘッドレストガイドベースブラケット又は前記ヘッドレストガイドブラケットのいずれか一方に係合され、前記ヘッドレストガイドベースブラケット又は前記ヘッドレストガイドブラケットのいずれか他方を押圧して前記ヘッドレストガイドを起立した位置に保持させる弾性部材と、前記ヘッドレストガイドブラケットに下端部を露出して挿通され、所定の位置に係止されるヘッドレストガイドと、前記ヘッドレストガイドに挿着される、前記ヘッドレストの支持部材であるヘッドレストステーと、を備えて成るヘッドレスト付車両用シートである。
【0022】
このように、ヘッドレストガイドベースブラケットをシートバックフレームの上部に設け、このヘッドレストガイドベースブラケットに対してヘッドレストガイドブラケットをシートの前方向に向けて前傾姿勢となるように所定の角度を回動可能に枢着することで、ヘッドレストガイドの改変を要することなく、より簡便な構造のアクティブ型のヘッドレスト付車両用シートを提供することができる。
【0023】
また、前記ヘッドレストガイドブラケットと前記ヘッドレストガイドベースブラケットとは、左右の側面同士をそれぞれピン部材により係合され、前記ヘッドレストガイドブラケットが前記シートの前方向に向けて所定の角度を回動可能となるように前記ヘッドレストガイドベースブラケットに枢着される構成とすることができる。
【0024】
さらにまた、上記ピン部材の使用に換えて、前記ヘッドレストガイドブラケットは左右側面に前記ヘッドレストガイドベースブラケットへの挿通の際に内側への弾性移動可能な断面円形状の凸部である一対の回動中心凸部が設けられ、前記ヘッドレストガイドベースブラケットは左右側面に前記回動中心凸部が挿入される一対の凸部用孔部が形成されて成り、該凸部用孔部に対して前記回動中心凸部が対応する位置に達したときに、位置前記回動中心凸部が内側への弾性移動を解除されて前記凸部用孔部へ挿入され、前記ヘッドレストガイドブラケットが前記ヘッドレストガイドベースブラケットに対し前記回動中心凸部を中心にして回動可能に枢着され構成とすることができる。
【0025】
このように、ヘッドレストガイドベースブラケットへのヘッドレストガイドブラケットの上記枢着は、ピン部材による枢着の場合よりも容易となる。
【0026】
また、前記弾性部材は山形状の板状バネ部材から成り、該板状バネ部材は前記ヘッドレストガイドベースブラケットの後部の側面と前記ヘッドレストガイドブラケットの後部の側面との間の所定の間隙に設けられ、その両端のうち少なくとも一端を前記ヘッドレストガイドベースブラケットの後部の側面内側に形成された係合部に係合され、前記山形状の頂上部により前記ヘッドレストガイドブラケットの後部の側面を押圧して前記ヘッドレストガイドブラケットを起立した位置に保持させることができる。
【0027】
また、前記ヘッドレストガイドベースブラケットの前部の側面上部には、前記ヘッドレストガイドブラケットが前記シートの前側に向けて所定角度を回動可能となるように、切り込みを形成することができる。
【0028】
さらに、前記ヘッドレストガイドブラケットを挿通して露出する前記ヘッドレストガイドの先端部の前部側に当接し、一端部を前記シートバック内のパッド部材に挿着される板状の受圧板を設けることで、後突時における乗員の背中によるシートバックへの圧力を効果的に受けて、ヘッドレストを前方に移動させることができる。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、後突時におけるシートバックへの乗員の背中の沈み込みによる圧力を受け、ヘッドレストガイドを前傾姿勢に回動させることでヘッドレストを前方向に移動させる簡便な構造としたので、構造の簡略化、軽量化を達成したアクティブ型のヘッドレスト付車両用シートを提供できる。
【0030】
また、弾性部材により起立状態に保持されるヘッドレストが、シートの振動に起因する所定以上の力を受けた際に生じる、ヘッドレストのシートバックに対する振動は、シート全体の振動エネルギーを吸収する方向に働き、シート全体の振動を低減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】図1(a)は本発明に係るヘッドレスト付車両用シートの第1実施形態の一部前方切欠斜視図であり、図1(b)は同じく第1実施形態の一部後方切欠斜視図である。
【図2】図2(a)は本発明に係るヘッドレスト付車両用シートの第1実施形態の一部分解斜視図であり、図2(b)は本発明に係るヘッドレスト付車両用シートの第1実施形態の一部拡大図である。
【図3】図3は本発明に係るヘッドレスト付車両用シートの第1実施形態で使用されるヘッドレストガイドを示す図で、図3(a)は回動中心凸部が設けられた正面図であり、図3(b)はその背面図であり、図3(c)はヘッドレストガイドの斜視図であり、図3(d)は図3(c)のヘッドレストガイドに板状バネ部材が係合された斜視図である。
【図4】図4は本発明に係るヘッドレスト付車両シートの第1実施形態で使用されるヘッドレストガイドをヘッドレストガイドブラケットに挿通する動作の説明図であり、図4(a)は挿通動作の途中を示す断面図であり、図4(b)は挿通動作を経て、ヘッドレストガイドがヘッドレストガイドブラケットに枢着された状態の断面図である。
【図5】図5は本発明に係るヘッドレスト付車両シートの第1実施形態におけるヘッドレストの動作説明図であり、図5(a)はヘッドレストが起立した通常の使用時の状態の断面図であり、図5(b)は後突時のヘッドレストがシートの前方向に移動した状態の断面図であり、図5(c)はヘッドレストの移動の前後を示す断面図である。
【図6】図6は本発明に係るヘッドレスト付車両シートの第1実施形態における、ヘッドレストガイドブラケットに対するヘッドレストガイドの動作説明図であり、図6(a)はヘッドレストガイドが起立した通常の使用時の時の一部断面図であり、図6(b)は後突時にヘッドレストガイドが回動してシートの前方向に傾斜した状態を示す一部断面図である。
【図7】図7は本発明に係るヘッドレスト付車両シートの第2実施形態の分解斜視図である。
【図8】図8は本発明に係るヘッドレスト付車両シートの第3実施形態を示す図で、図8(a)は一部前方切欠斜視図であり、図8(b)は一部縦断面図であり、図8(c)は一部拡大切欠斜視図である。
【図9】図9は本発明に係るヘッドレスト付車両シートの第4実施形態を示す図で、図9(a)はシートバックフレームに設けたヘッドレストガイドベースブラケットの斜視図であり、図9(b)は図9(a)の一部拡大斜視図であり、図9(c)はヘッドレスト付車両用シートの一部分解斜視図であり、図9(d)はヘッドレストガイドブラケットに係止されたヘッドレストガイドの拡大斜視図である。
【図10】図10は本発明に係るヘッドレスト付車両シートの第4実施形態におけるヘッドレストガイドブラケットをヘッドレストガイドベースブラケットに枢着した状態の説明図であり、図10(a)はその斜視図であり、図10(b)は平面図であり、図10(c)は正面図であり、図10(d)は側面図である。
【図11】図11は本発明に係るヘッドレスト付車両用シートの第5実施形態におけるヘッドレストガイドブラケットを示す図で、図11(a)はその斜視図であり、図11(b)は平面図であり、図11(c)は正面図であり、図11(d)は側面図である。
【図12】図12は本発明に係るヘッドレスト付車両シートの第5実施形態を示す説明図であり、図12(a)はシートバックフレームに設けたヘッドレストガイドベースブラケットの斜視図であり、図12(b)は図12(a)の一部拡大斜視図であり、図12(c)はヘッドレスト付車両用シートの一部分解斜視図であり、図12(d)はヘッドレストガイドブラケットに係止されたヘッドレストガイドの拡大斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、添付図面を参照して本発明の好ましい実施形態を説明する。
(第1実施形態)
図1、図2に示すように、ヘッドレスト付車両用シート11は、着座部となるシート12(鎖線で示す)と、シート12の後部に回動可能に設けられる背もたれ部としてのシートバック13と、シートバック13の上部に挿着されるヘッドレスト16とを備える。
【0033】
シート12は骨組みであるシートフレーム(図示せず)と座席のクッションとなるパッド部材(図示せず)及び表皮(図示せず)とを備え、シートバック13は骨組みであるシートバックフレーム21と、パッド部材22及び表皮23とを備えて成る。
【0034】
シートバックフレーム21は、左右一対に設けられるサイドフレーム25a、25bと、サイドフレーム25a、25bの上端部に接続される逆U字形状のシートバックメインフレーム27と、サイドフレーム25a、25bの下端部を接続する底部フレーム28と、サイドフレーム25a、25bの左右に張設されるスプリング部材29a、29b、29cとを備えて成る。
【0035】
シートバックメインフレーム27の上部のシート12側の面には、両端が開口された断面長方形状の筒状部材であるヘッドレストガイドブラケット31a、31bが、両端の開口を上下にする状態で左右一対に固設されている。ヘッドレストガイドブラケット31a、31bは断面長方形の短辺側の側面をボルト等の接続部材又は溶接によりシートバックメインフレーム27に固設されている。
【0036】
ヘッドレストガイドブラケット31a、31bには、頭部35と、胴部36と軸部37とから成る両端が開口された筒状のヘッドレストガイド33a、33bが挿通されている。ヘッドレストガイドブラケット31a、31bの断面よりも大きい断面の頭部35と、挿通された軸部37とがヘッドレストガイドブラケット31a、31bの両端からそれぞれ露出し、胴部36はその左右側面に設けた回動中心凸部41、41がヘッドレストガイドブラケット31a、31bの左右側面に形成された凸部用孔部42、42に挿通され、ヘッドレストガイド33a、33bはシート12の前方向に傾斜可能となるようにヘッドレストガイドブラケット31a、31bに枢着されている(図2(b)、図4(a)、図4(b)参照)。
【0037】
回動中心凸部41が設けられた左右側面には、回動中心凸部41の下方に外側に突き出た爪部43が設けられており、この爪部43がヘッドレストガイドブラケット31a、31bに形成された爪部用孔部45に挿通されるとき、回動中心凸部41も凸部用孔部42に挿通される配置になっている。ヘッドレストガイドブラケット31a、31bに対してヘッドレストガイド33a、33bが所定角度の回動が可能となるように、爪部用孔部45は爪部43よりも大きいサイズの開口に形成されている(図2(b)、図4(a)、図4(b)参照)。
【0038】
ヘッドレストガイド33a、33bの胴部36は、その前後の側面がヘッドレストガイドブラケット31a、31bの前後の側面との間に所定の間隙が設けられた状態で枢着されている。この所定の間隙が設けられることで、ヘッドレストガイド33a、33bはシート12の前方向に所定角度の傾斜が可能となる。胴部36の後部の側面とヘッドレストガイドブラケット31a、31bの後部の側面との間の間隙には、弾性部材である板状バネ部材46a、46bがヘッドレストガイドに係合された状態で設けられている(図2(a)、図2(b)参照)。
【0039】
ヘッドレスト16は、ヘッドレスト16の骨組みとなる逆U字形状のヘッドレストステー47と、このヘッドレストステー47を内包するパッド部材48と表皮49とを備えて成り、ヘッドレストステー47の両端がヘッドレストガイド33a、33bに挿着されている。ヘッドレストステー47は、例えば、所定ピッチで凹部が形成されており、ヘッドレストガイドに設けた凸状の係合部と係合することで上下位置をスライド調整可能に設けられる。ヘッドレストステー47は、ヘッドレストを通常の使用の高さ位置として、ヘッドレストガイド33a、33bに挿着されたときに、その両端部がヘッドレストガイド33a、33bから突き出した状態となる長さに形成されている(図1(a)、図1(b)参照)。両端が突き出ることで、後突時の際に乗員の背中が押す圧力をヘッドレストガイドと共に効果的に受けることができる。
【0040】
本発明に係るヘッドレスト付車両用シートの第1実施形態で使用されるヘッドレストガイドを示す図3(a)〜図3(d)を参照して、ヘッドレストガイドの形状及び構造を説明する。
【0041】
図3(a)〜図3(c)に示すように、ヘッドレストガイド33(33a、33b)は、上から順に頭部35、胴部36及び軸部37が一体に形成され、胴部36の左右側面(シート12に対して左右となる側面)に円筒状の凸部である回動中心凸部41、41と、同じ側面上の下方に上部が突き出た断面三角形状の爪部43、43が形成されている。ヘッドレストガイド33は、合成樹脂等の所定の弾性を有する材質で形成されている。
【0042】
回動中心凸部41とその下方に位置する爪部43は、逆U字形状のスリット44である溝の内側に形成され、回動中心凸部41又は爪部43に外側から圧力を加えたときは、ヘッドレストガイド33の材質が弾性を有することから、回動中心凸部41及び爪部43を含めたスリット44の内側にある側面の一部が胴部36の内側へ弾性移動可能な構造となっている。
【0043】
図3(d)に示すように、ヘッドレストガイド33の胴部36の後部の側面(シート12に対して後部となる側面、図2(b)参照)には、弾性部材である板状バネ部材46が設けられている。ヘッドレストガイド33の頭部35の後部側の下端には下方に向いた凹部形状の溝である係合部47が形成され、胴部36と軸部37との接続部には段差を有する鍔部48が形成されている。山形状に形成された板状バネ部材46の一端を係合部47に係合させて、板状バネ部材46がヘッドレストガイド33に設けられている。板状バネ部材46は、押圧されてその両端が伸びたときに、その他端が鍔部48の段差に係合する長さに形成されている。
【0044】
本実施形態における板状バネ部材46はヘッドレストガイド33(33a、33b)に係合されているが、板状バネ部材46としての同一の作用が働くのであれば、ヘッドレストガイドブラケット31(31a、31b)に係合されてもよい。
【0045】
図4(a)、図4(b)を参照して、ヘッドレストガイドブラケット31(31a、31b)へのヘッドレストガイド33(33a、33b)の挿通から枢着へと至る一連の動作を説明する。
【0046】
図4(a)に示すように、ヘッドレストガイドブラケット31の上端からヘッドレストガイド33を軸部37(図示せず)から胴部36へと順に挿入させていくと、胴部の左右側面から突出した回動中心凸部41及び爪部43は、ヘッドレストガイドブラケット31の内側側面に当接し、胴部36の内側に向けた力を受けるので、回動中心凸部41及び爪部43を含むスリット44(図3(a)〜図3(d)参照)に囲まれた部分は、胴部36の内側に向けた弾性移動をし、胴部36の外周面上の外部への突出した部分である回動中心凸部41及び爪部43はヘッドレストガイドブラケット31の内側側面を摺動し、ヘッドレストガイド33を所定の位置までヘッドレストガイドブラケット31に挿通することができる。
【0047】
図4(b)に示すように、ヘッドレストガイド33を所定の位置まで挿入すると、回動中心凸部41及び爪部43は、凸部用孔部42及び爪部用孔部45に対応する位置に達するので、弾性力によりもとの突出した位置まで戻り、ヘッドレストガイドブラケット31の凸部用孔部42と爪部用孔部45とにそれぞれ挿入され、ヘッドレストガイド33は回動中心凸部38を中心にシートの前方に回動可能に枢着される。
【0048】
枢着されたヘッドレストガイド33の内部には、ヘッドレストステー47がヘッドレストを所定位置となるように挿着されるので、回動中心凸部41及び爪部43を含むスリット44(図3(a)〜図3(d)参照)に囲まれた部分は、ヘッドレストステー47に当接した状態となるので、胴部36内側への弾性移動が阻止される。これより、回動中心凸部41及び爪部43の胴部36の内側への弾性移動が阻止されることで、ヘッドレストガイド33は枢着位置からの上下移動が抑えられる。
【0049】
後突時におけるヘッドレスト16の前方移動の動作を図5、図6を参照して説明する。
【0050】
図5(a)、図6(a)に示すように、通常の走行中はヘッドレスト16が起立した状態となるように、ヘッドレストガイドブラケット31とヘッドレストガイド33とに板状バネ部材46の弾性力が作用する。
【0051】
山形状に屈曲された板状バネ部材46は、上端部をヘッドレストガイド33の係合部47に係合され、下端部を胴部36に圧接され、頂上部をヘッドレストガイドブラケット31の内側側面に圧接されている。この頂上部が圧接される内側側面が、回動中心凸部41よりも下方に位置することから、板状バネ部材46の弾性力は、ヘッドレストガイド33に対して図6(a)の紙面上、回動中心凸部41を中心とした右回りとなるモーメントを作用させ、胴部36の後部の側面上部に位置する係合部47と、鍔部48の前部の側面とをヘッドレストガイドブラケット31に圧接した位置に保持させて、ヘッドレストステー47とヘッドレスト16とが略起立した状態となる。
【0052】
図5(b)、図6(b)に示すように、後突時には乗員の背中がシートバック13(図1参照)に沈み込み、ヘッドレストガイド33の軸部37に対して後方向に力が作用し、このときヘッドレストガイド33の回動中心凸部41よりも下方である軸部37には矢印51の向きの力が作用する。この矢印51の向きの力により、ヘッドレストガイド33に対して、図6(b)の紙面上、回動中心凸部41を中心とする左周りとなるモーメントが働き、板状バネ部材46は押圧され、鍔部48の後部の側面と、胴部36の前部の側面上部はヘッドレストガイドブラケット31に当接する位置まで回動させられ、同時にヘッドレストステー47とヘッドレスト16とが前方傾斜した位置に移動することになる。
【0053】
図5(c)に示すように、通常の使用時には起立した状態の位置(鎖線で示す)にあるヘッドレスト16は、上記したヘッドレストガイド33の回動により、後突時には前方の位置(実線で示す)に移動するので、後突時における乗員の首の後方向への振れを軽減することができる。
【0054】
また、車両の走行中、駆動するエンジンの振動や路面の凹凸によりシート12(図1参照)が振動すると、シートバック13上部に位置するヘッドレスト16にはより大きな振動をもたらす力が伝わることになり、この力が所定以上のときにヘッドレストは弾性部材である板状バネ部材46による起立保持状態を超えて振動する。このとき、シートバック13に対するヘッドレスト16の振動は、車両用シート11(図1参照)全体の振動エネルギーを吸収する方向に作用するので、車両用シート11の振動を減衰、低減させるという効果も生じる。
【0055】
したがって、従来の振動低減装置がヘッドレストの内部に質量体やダンパー機構を設置した、シートの重量増加を招く構造である対し、本発明のヘッドレスト付車両用シート11では重量増加につながる質量体やダンパーを設置することなく、車両用シート11の振動低減を図ることができる。
【0056】
次に、 図2(a)を参照して本発明に係るヘッドレスト付車両用シートの第1実施形態におけるヘッドレストの組み付けの手順を説明する。
【0057】
図2(a)に示すように、ヘッドレストガイドブラケット31a、31bが固設されたシートバックフレーム21に、パッド22及び表皮23を装着した後、パッド22及び表皮23の上部に設けられたヘッドレストステー47の挿入孔39a、39bから、板状バネ部材46a、46bを係合させたヘッドレストガイド33a、33bをシートバック13の内部に挿入する。ヘッドレストガイド33a、33bの回動中心凸部41及び爪部43がヘッドレストガイドブラケット31a、31bの凸部用孔部42及び爪部用孔部45に挿入される位置までヘッドレストガイド33a、33bを挿入してヘッドレストガイドブラケット31a、31bに枢着させる。
【0058】
ヘッドレストガイドブラケット31a、31bに枢着されたヘッドレストガイド33a、33bに、ヘッドレスト16から突き出たヘッドレストステー47の左右の端部を挿入し、所定の高さ位置に係止させてヘッドレストが組み付けられる。
(第2実施形態)
本発明の第2実施形態について図7を参照して説明する。
【0059】
図7に示すように、本実施形態は、ヘッドレストとシートバックのパッド及び表皮が一体に形成されたハイバック仕様シートに適用されたもので、第1実施形態とはヘッドレストガイドブラケット31a、31b、ヘッドレストガイド33a、33b、板状バネ部材46a、46b、ヘッドレストステー47などの構成部品は同一である。
【0060】
本実施形態におけるヘッドレスト付車両シートの組み付け手順が、第1実施形態と異なり、ヘッドレストとシートバックのパッド51及び表皮52が一体に形成されたハイバック仕様シートであることから、ヘッドレストガイドブラケット31a、31bに枢着されたヘッドレストガイド33a、33bに、ヘッドレストステーを挿着した後に、パッド51及び表皮52を装着することになる。
【0061】
このように、本願発明のヘッドレスト付車両用シートは、ローバック仕様シートの第1実施形態と同様に、ハイバック仕様のシートにも容易に適用することができる。
(第3実施形態)
本発明の第3実施形態について図8を参照して説明する。
【0062】
図8(a)〜図8(c)に示すように、本実施形態は第1実施形態のヘッドレスト付車両用シート11(図1参照)に荷重受け部材61を設けたものである。荷重受け部材61は、正面が逆U字形状の薄板部材の受圧板であり、ヘッドレストガイド33a、33bの軸部37、37の前側と、スプリング部材29aの前側にそれぞれ当接した位置に配置され、さらにその上端がパッド部材22に挿着されている。
【0063】
荷重受け部材61を設けることで、図8(b)の矢印63に示す後突時における乗員のシートバック13に対する背中からの圧力をヘッドレストガイド33a、33bの軸部37、37に効果的に伝達することができ、ヘッドレスト16の前方移動の動作をより確実にできる。
【0064】
本実施形態の荷重受け部材61は、シートバック13内のパッド部材22に挿着するものであり、簡便な構造となっている。なお、荷重受け部材61の落下防止のために、パッド部材22に接着剤を使用して挿着できる。
(第4実施形態)
本発明の第4実施形態について図9、図10を参照して説明する。なお、第1実施形態と形状、構造が共通する同一名称の部分には同一の符号を付す。
【0065】
図9、図10に示すように、本実施形態では、第1実施形態におけるヘッドレストガイドブラケット31a、31b(図1参照)に代えて、シートバックメインフレーム27に筒状のヘッドレストガイドベースブラケット71a、71bがボルト等の接続部材又は溶接により固設される。
【0066】
シートバックメインフレーム27に固設されたヘッドレストガイドベースブラケット71a、71bに、筒状のヘッドレストガイドブラケット73a、73bが挿入される。ヘッドレストガイドベースブラケット71a、71b及びヘッドレストガイドブラケット73a、73bの左右側面にそれぞれ形成された孔部に、ピン部材75、75が挿着され、ヘッドレストガイドベースブラケット71a、71bに対してヘッドレストガイドブラケット73a、73bが前傾姿勢となるようにシート(図示せず)の前方向に所定角度を回動可能に枢着される。各ピン部材75の軸がヘッドレストガイドブラケット73a、73bの回動の中心軸となるように枢着される。
【0067】
ヘッドレストガイドベースブラケット71a、71bに対してヘッドレストガイドブラケット73a、73bが所定角度の回動を可能となるように、ヘッドレストガイドベースブラケット71a、71bには、前部の側面の上部に所定の切り込み72a、72bが設けられている(図10(a)参照)。
【0068】
通常の走行中、ヘッドレスト16の起立状態を保持するために、ヘッドレストガイドブラケット73a、73bとヘッドレストガイドベースブラケット71a、71bとの後部の側面同士の間隙には、板状バネ部材76a、76bが設けられている。山型状に屈曲された板状バネ部材76a、76bは、その上端をヘッドレストガイドベースブラケット71a、71bの後部の側面の内側上端に係止され、下端をヘッドレストガイドベースブラケット71a、71bの後部の側面の内側下端に係合され、頂上部がヘッドレストガイドブラケット73a、73bの後部の側面下部を圧接する位置に設けられている(図10(a)、図10(d)参照)。
【0069】
板状バネ部材76の頂上部は、ヘッドレストガイドブラケット73a、73bの回動中心となるピン部材75の軸よりも下に位置し、板状バネ部材76による弾性力は、図10(d)の紙面上、ピン部材75の軸に対して右回りのモーメントを与えることになり、ヘッドレストガイドブラケット73a、73bとヘッドレストガイドベースブラケット71a、71bとは前部の側面下部同士が圧接した状態に保持される。この保持された状態のヘッドレストガイドブラケット73a、73bに順に挿着されるヘッドレストガイド78a、78b、及びヘッドレストステー47により、ヘッドレスト16は通常の走行中に使用する起立した状態に保持される。
【0070】
本実施形態では、板状バネ部材76a、76bをヘッドレストガイドベースブラケット71a、71bに係止、係合されているが、板状バネ部材76a、76bとしての同一の作用が働くのであれば、ヘッドレストガイドブラケット73a、73bに係止、係合されてもよい。
【0071】
ヘッドレストガイドブラケット73a、73bに挿着される筒状のヘッドレストガイド78a、78bには、ヘッドレストガイド78a、78bの抜け止め用に上部を底辺にして突出する断面三角形状の凸部状の爪部80が軸部の左右に形成されている。爪部80はヘッドレストガイド78a、78bの軸部の内部に向けて弾性移動ができるように、周囲にスリット(図示せず)が形成されている(図9(d)参照)。ヘッドレストガイド78a、78bは、上から順に頭部79a、胴部79b及び軸部79cが一体に形成され、ヘッドレストガイドブラケット73a、73bよりも断面が大きい頭部79aの下端がヘッドレストガイドブラケット73a、73bの上端に当接し、さらに軸部79cに形成される爪部80の外部への突出により、ヘッドレストガイド78a、78bはヘッドレストガイドブラケット73a、73bに係止される。
【0072】
ヘッドレストガイドブラケット73a、73bに係止されたヘッドレストガイド78a、78bには、ヘッドレスト16を支持するヘッドレストステー47が所定位置に挿着される。
【0073】
通常の走行中に起立した状態にあるヘッドレストの後突時における動作を説明する。後突時、ヘッドレストガイド78a、78bの下端部である軸部79cに作用する乗員の背中による圧力により、ヘッドレストガイドブラケット73a、73bは板状バネ部材76の頂上部を押圧し、図10(d)の紙面上、ピン部材75の軸に対して左回りのモーメントが作用し、このヘッドレストガイドブラケット73a、73bに順に挿着されるヘッドレストガイド78a、78b、及びヘッドレストステー47がシート前方への前傾姿勢となるように回動するので、ヘッドレスト16は前方に所定距離移動することになり、乗員の頭部の振れを軽減することができる。
【0074】
また、上記したヘッドレスト16の前方への所定距離移動は、後突時のほか、車両走行中のシート12の振動によって生じる場合がある。シートバック13の上部に設けられているヘッドレスト16には、シートバック13の振動がより大きな振動として伝えられるため、板状バネ部材46によるヘッドレスト16の起立状態保持力を超えた力が作用してヘッドレスト16が前方移動し、この前方移動の繰り返しにより振動状態に至る(図1、図10参照)。シートバック13に対するヘッドレスト16の振動は、車両用シート11全体の振動エネルギーを吸収する方向に作用するので、車両用シート11の振動を減衰、低減させるという効果が生じる。
【0075】
本実施形態のヘッドレスト付車両用シートのヘッドレストの組み付け手順は、図9(c)に示すように、シートバックメインフレーム27の上部に固設されたヘッドレストガイドベースブラケット71a、71bに、板状バネ部材76を係止し、さらにヘッドレストガイドブラケット73a、73bをピン部材75により枢着させる。
【0076】
ヘッドレストガイドブラケット73a、73bが枢着されたシートバックフレーム21にパッド22及び表皮23を装着した後に、パッド22及び表皮23の上部に設けられたヘッドレストステー47の挿入孔39a、39bからヘッドレストガイド78a、78bを挿入し、ヘッドレストガイドブラケット73a、73bに係止させる。
【0077】
次に、この係止されたヘッドレストガイド73a、73bにヘッドレスト16から突き出たヘッドレストステー47の左右の端部を挿入し、所定の高さ位置に係止させてヘッドレストの組み付けが成される。
【0078】
本実施形態は、ヘッドレストガイドブラケット73a、73bを回動可能とすべく、ヘッドレストガイドベースブラケット71a、71bに枢着させる構造となるので、他種のシートで使用されるヘッドレストガイド73a、73bを使用することができ、部品の共有化と簡便化を図ることができる。
(第5実施形態)
本発明の第5実施形態について図11、図12を参照して説明する。なお、第4実施形態と形状、構造が共通する同一名称の部分には同一の符号を付す。
【0079】
本実施形態は、第4実施形態と同様に、シートバックメインフレーム27に固設された筒状のヘッドレストガイドベースブラケット71a、71bに、同じく筒状のヘッドレストガイドブラケット82a、82bが挿入され、ヘッドレストガイドベースブラケット71a、71bに対してヘッドレストガイドブラケット82a、82bが前傾姿勢となるようにシート(図示せず)の前方向に所定角度を回動可能に枢着される。
【0080】
本実施形態は、ヘッドレストガイドブラケット82a、82bが、ヘッドレストガイドベースブラケット71a、71bに対して回動可能に枢着される等、第4実施形態と共通する部分が多いことから、本実施形態の説明は、第4実施形態との相違点を中心に説明する。
【0081】
第4実施形態ではピン部材75によりヘッドレストガイドブラケット73a、73bがヘッドレストガイドベースブラケット71a、71bに対して枢着されているのに対し(図9、図10参照)、本実施形態では、ヘッドレストガイドブラケット82a、82bの左右側面(図12(c)に示すシートバック13に対して左右となる側面)に円柱状の凸部である回動中心凸部83、83が形成され、この回動中心凸部83、83がヘッドレストガイドベースブラケット71a、71bの左右側面に形成された凸部用孔部74、74に挿着されて、ヘッドレストガイドブラケット82a、82bがヘッドレストガイドベースブラケット71a、71bに枢着される点が相違する。
【0082】
図11(a)〜図11(d)に示すように、ヘッドレストガイドブラケット82(82a、82b)の左右側面には、U字を逆さに向けた形となる逆U字形状のスリット85、85が形成され、このスリット85、85の内側上部に回動中心凸部83、83が設けられている。ヘッドレストガイドブラケット82(82a、82b)は、合成樹脂等の弾性を有する材質から成り、側面に上記したスリット85、85が形成されたことにより、回動中心凸部83、83はヘッドレストガイドブラケット82(82a、82b)の内部側への弾性移動可能な構造となっている。
【0083】
ヘッドレストガイドブラケット82(82a、82b)は、シートバックメインフレーム27(図12参照)側に向いた側面の上部に、シートバックメインフレーム27側に向けて突出した突状部86が段差として形成されており、後述するように、板状バネ部材76(76a、76b)の一端が突状部86の段差に係合される(図12参照)。
【0084】
上記したように、本実施形態は、ヘッドレストガイドブラケット82(82a、82b)の左右側面に回動中心凸部83、83を設け、スリット85、85の形成により回動中心凸部83、83が内部側に向けて弾性移動可能となる点、側面に突状部86が設けられている点が、第4実施形態と相違する。
【0085】
次に、本実施形態のヘッドレスト付車両シートのヘッドレストの組み付け手順について、図12を参照して説明する。
【0086】
図12(a)及び図12(b)に示すように、第4実施形態同様に、シートバックフレーム27の上部には、左右一対に筒状のヘッドレストガイドベースブラケット71a、71bがボルト等の接続部材又は溶接により固設されている。このヘッドレストガイドベースブラケット71a、71bの内部に、板状バネ部材76a、76、及びヘッドレストガイドブラケット82a、82bが上部から挿入される。
【0087】
ヘッドレストガイドブラケット82a、82bの左右側面に形成される回動中心凸部83、83は、ヘッドレストガイドベースブラケット71a、71bの内部に挿入されると、ヘッドレストガイドベースブラケット71a、71bの内側側面に当接するので、ヘッドレストガイドブラケット82a、82bの内側に向けて弾性移動する。
【0088】
ヘッドレストガイドブラケット82a、82bが挿入されて、回動中心凸部83、83が凸部用孔部74、74に対応する位置に達すると、回動中心凸部83、83は弾性力によりもとの突出した位置まで戻り、凸部用孔部74、74に挿入された状態となる。この状態のときに、ヘッドレストガイドブラケット82a、82bは、ヘッドレストガイドベースブラケット71a、71bに回動可能に枢着される。
【0089】
ヘッドレストガイドブラケット82a、82bが、ヘッドレストガイドベースブラケット71a、71bに枢着されたときに、山形状の板状バネ部材76a、76bは、その上側の一端がヘッドレストガイドブラケット82a、82bの突状部86、86に係合され、その下側の他端はヘッドレストガイドベースブラケット71a、71bの下端に係合される。山形状の頂上部はヘッドレストガイドブラケット82a、82bの後部側面(シートバックメインフレーム27側)を押圧するように当接される。なお、板状バネ部材76a、76bの上側の一端は、ヘッドレスト16が前傾姿勢に回動するときに伸長されてヘッドレストガイドブラケット82a、82bの突状部86、86に係合されるようにしてもよい。
【0090】
図12(c)に示すように、ヘッドレストガイドベースブラケット71a、71bにヘッドレストガイドブラケット82a、82bが枢着された後に、シートバックフレーム21にパッド22及び表皮23が装着され、パッド22及び表皮23の上部に設けられたヘッドレストステー47の挿入孔39a、39bからヘッドレストガイド78a、78bが挿入され、ヘッドレストガイドブラケット82a、82bに係止される。
【0091】
次に、係止されたヘッドレストガイド73a、73bにヘッドレストステー47、47を所定の高さ位置に挿着し、ヘッドレスト16の組み付けが成される。
【0092】
ヘッドレストガイド78a、78bは、第4実施形態と同様の形状、構造のもので、上から順に頭部79a、胴部79b及び軸部79cが一体に形成され、ヘッドレストガイドブラケット73a、73bよりも断面が大きい頭部79aの下端がヘッドレストガイドブラケット73a、73bの上端に当接し、さらに軸部79cに形成される爪部80の外部への突出により、ヘッドレストガイド78a、78bはヘッドレストガイドブラケット73a、73bに係止される(図12(d)参照)。
【0093】
本実施形態は、第4実施形態と同様、ヘッドレストガイドブラケット73a、73bを回動可能とすべく、ヘッドレストガイドベースブラケット71a、71bに枢着させる構造となるので、他種のシートで使用されるヘッドレストガイド73a、73bを使用することができ、部品の共有化と簡便化を図ることができる。
【0094】
また、ヘッドレストガイドブラケット73a、73bに弾性移動可能な回動中心凸部83を設けることで、ヘッドレストガイドベースブラケット71a、71bに枢着させる作業がより容易となる。
【0095】
本実施形態のヘッドレスト付車両用シートは、第1実施形態から第4実施形態のヘッドレスト付車両用シートと同様に、後突時には前方の位置(実線で示す)に移動するので、後突時における乗員の首の後方向への振れを軽減することができ、また、車両走行中に、シートバック13に対するヘッドレスト16の振動は、シート全体の振動エネルギーを吸収する方向に作用し、シート12の振動を減衰、低減させることができる。
【符号の説明】
【0096】
11 ヘッドレスト付車両用シート
12 シート
13 シートバック
16 ヘッドレスト
21 シートバックフレーム
25a、25b サイドフレーム
27 シートバックメインフレーム
31a、31b ヘッドレストガイドブラケット
33a、33b ヘッドレストガイド
35 頭部(ヘッドレスト)
36 胴部(ヘッドレスト)
37 軸部(ヘッドレスト)
41 回動中心凸部
42 凸部用孔部
43 爪部
44 スリット
45 爪部用孔部
47 板状バネ部材
71a、71b ヘッドレストガイドベースブラケット
73a、73b ヘッドレストガイドブラケット
76a、76b 板状バネ部材
78a、78b ヘッドレストガイド
80 爪部
82a、82b ヘッドレストガイドブラケット
83 回動中心凸部
85 スリット
86 突状部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
起立した位置から回動してシートの前方向に移動可能なヘッドレストをシートバック上部に設けたヘッドレスト付車両用シートであって、
シートバックフレームの上部に設けたヘッドレストガイドブラケットと、
該ヘッドレストガイドブラケットに下端部を露出して挿通され、前記シートの前方向に向けて前傾姿勢となるように所定の角度を回動可能に枢着されるヘッドレストガイドと、
前記ヘッドレストガイドブラケット又は前記ヘッドレストガイドのいずれか一方に係合され、前記ヘッドレストガイドブラケット又は前記ヘッドレストガイドのいずれか他方を押圧して前記ヘッドレストガイドを前記起立した位置に保持させる弾性部材と、
前記ヘッドレストガイドに挿着される、前記ヘッドレストの支持部材であるヘッドレストステーと、
を備えて成るヘッドレスト付車両用シート。
【請求項2】
前記ヘッドレストガイドは左右側面に前記ヘッドレストガイドブラケットへの挿通の際に内側への弾性移動可能な断面円形状の凸部である一対の回動中心凸部が設けられ、前記ヘッドレストガイドブラケットは左右側面に前記回動中心凸部が挿入される一対の凸部用孔部が形成されて成り、該凸部用孔部に対して前記回動中心凸部が対応する位置に達したときに、位置前記回動中心凸部が内側への弾性移動を解除されて前記凸部用孔部へ挿入され、前記ヘッドレストガイドが前記ヘッドレストガイドブラケットに対し前記回動中心凸部を中心にして回動可能に枢着されて成ることを特徴とする請求項1に記載のヘッドレスト付車両用シート。
【請求項3】
前記ヘッドレストガイドが前記シートの前方向に向けて所定の角度を回動可能となるように、前記ヘッドレストガイドと前記ヘッドレストガイドブラケットとは、前後の側面同士がそれぞれ所定の間隙を有して成ることを特徴とする請求項1又は2に記載のヘッドレスト付車両用シート。
【請求項4】
前記弾性部材は山形状の板状バネ部材から成り、その両端のうち少なくとも一端を前記ヘッドレストガイドの後部の側面に形成された係合部に係合され、前記山形状の頂上部が前記ヘッドレストガイドブラケットを押圧して前記ヘッドレストガイドを起立した位置に保持させて成ることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載のヘッドレスト付車両用シート。
【請求項5】
起立した位置から回動してシートの前方向に移動可能なヘッドレストをシートバック上部に設けたヘッドレスト付車両用シートであって、
シートバックフレームの上部に設けたヘッドレストガイドベースブラケットと、
該ヘッドレストガイドベースブラケットに挿通され、前記シートの前方向に向けて前傾姿勢となるように所定の角度を回動可能に枢着されるヘッドレストガイドブラケットと、
前記ヘッドレストガイドベースブラケット又は前記ヘッドレストガイドブラケットのいずれか一方に係合され、前記ヘッドレストガイドベースブラケット又は前記ヘッドレストガイドブラケットのいずれか他方を押圧して前記ヘッドレストガイドを起立した位置に保持させる弾性部材と、
前記ヘッドレストガイドブラケットに下端部を露出して挿通され、所定の位置に係止されるヘッドレストガイドと、
前記ヘッドレストガイドに挿着される、前記ヘッドレストの支持部材であるヘッドレストステーと、
を備えて成るヘッドレスト付車両用シート。
【請求項6】
前記ヘッドレストガイドブラケットと前記ヘッドレストガイドベースブラケットとは、左右の側面同士をそれぞれピン部材により係合され、前記ヘッドレストガイドブラケットが前記シートの前方向に向けて所定の角度を回動可能となるように前記ヘッドレストガイドベースブラケットに枢着されて成ることを特徴とする請求項5に記載のヘッドレスト付車両用シート。
【請求項7】
前記ヘッドレストガイドブラケットは左右側面に前記ヘッドレストガイドベースブラケットへの挿通の際に内側への弾性移動可能な断面円形状の凸部である一対の回動中心凸部が設けられ、前記ヘッドレストガイドベースブラケットは左右側面に前記回動中心凸部が挿入される一対の凸部用孔部が形成されて成り、該凸部用孔部に対して前記回動中心凸部が対応する位置に達したときに、位置前記回動中心凸部が内側への弾性移動を解除されて前記凸部用孔部へ挿入され、前記ヘッドレストガイドブラケットが前記ヘッドレストガイドベースブラケットに対し前記回動中心凸部を中心にして回動可能に枢着されて成ることを特徴とする請求項5に記載のヘッドレスト付車両用シート。
【請求項8】
前記弾性部材は山形状の板状バネ部材から成り、該板状バネ部材は前記ヘッドレストガイドベースブラケットの後部の側面と前記ヘッドレストガイドブラケットの後部の側面との間の所定の間隙に設けられ、その両端のうち少なくとも一端を前記ヘッドレストガイドベースブラケットの後部の側面内側に形成された係合部に係合され、前記山形状の頂上部により前記ヘッドレストガイドブラケットの後部の側面を押圧して前記ヘッドレストガイドブラケットを起立した位置に保持させて成ることを特徴とする請求項5乃至7のいずれか一項に記載のヘッドレスト付車両用シート。
【請求項9】
前記ヘッドレストガイドベースブラケットの前部の側面上部には、前記ヘッドレストガイドブラケットが前記シートの前側に向けて所定角度を回動可能となるように、切り込みが形成されて成ることを特徴とする請求項8に記載のヘッドレスト付車両用シート。
【請求項10】
前記ヘッドレストガイドブラケットを挿通して露出される前記ヘッドレストガイドの先端部の前部側に当接し、一端部を前記シートバック内のパッド部材に挿着される板状の受圧板を設けて成ることを特徴とする請求項1又は5に記載のヘッドレスト付車両用シート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2011−201526(P2011−201526A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−1692(P2011−1692)
【出願日】平成23年1月7日(2011.1.7)
【出願人】(000225887)難波プレス工業株式会社 (38)
【Fターム(参考)】