説明

ヘッドレスト

【課題】 サポート部材を退避位置と作用位置とに容易に移動配置することができるヘッドレストを提供する。
【解決手段】 ヘッドレスト本体14の側部には、サポート部材20を移動可能に配設する。ヘッドレスト本体14内の前部には、着座者の頭部によって後方に移動される移動部材23を配設する。移動部材23とサポート部材20との間には、移動部材23の後方移動をサポート部材20に対しその前方移動として伝達するための伝達機構25を設ける。移動部材23が前方位置から後方位置に移動されたとき、伝達機構25を介してサポート部材20が後方の退避位置から前方の作用位置に移動されるように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、自動車等の車両において、シートの背もたれ部の上端部に設けられるヘッドレストに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のヘッドレストとしては、例えば、特許文献1及び特許文献2に開示されるような構成のものが提案されている。これらの従来構成においては、ヘッドレスト本体の両側部にサポート部材が回動可能に配設されている。そして、停車時等において、車室内で着座者が仮眠を取ったり、くつろいだりする場合、サポート部材をヘッドレスト本体の両側後方または前面の退避位置から両側前方の作用位置に回動させて、着座者の頭部をヘッドレスト本体の両側部からも支持できるようになっている。
【特許文献1】特開平9−224777号公報
【特許文献2】特開2001−137069号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところが、これらの従来構成においては、サポート部材を手動操作にて退避位置と作用位置とに移動配置する必要がある。このため、サポート部材の位置が着座者の後方で、背もたれ部の上部にあるということもあって、移動操作において無理な姿勢を強いられ、その移動操作が面倒であるという問題があった。
【0004】
この発明は、このような従来の技術に存在する問題点に着目してなされたものである。その目的は、無理な姿勢を強いられることなく、サポート部材を退避位置と作用位置とに容易に移動配置することができるヘッドレストを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、シートの背もたれ部の上端部に設けられるヘッドレストにおいて、ヘッドレスト本体の側部にはサポート部材を配置するとともに、ヘッドレスト本体内の前部には、着座者の頭部によって後方に移動される移動部材を設け、その移動部材とサポート部材との間には、移動部材の後方移動をサポート部材に対しその前方移動として伝達するための伝達手段を設け、前記移動部材が前方位置から後方位置に移動されることにより、サポート部材が後方の退避位置から前方の作用位置に移動されるように構成したことを特徴とするものである。
【0006】
請求項2に記載の発明においては、請求項1に記載の発明において、前記伝達手段が歯車機構を利用した構成であることを特徴とするものである。
請求項3に記載の発明においては、請求項1に記載の発明において、前記伝達手段がリンク機構を利用した構成であることを特徴とするものである。
【0007】
請求項4に記載の発明においては、請求項1〜請求項3のうちのいずれか一項に記載の発明において、移動部材を前方へ付勢するための付勢手段を設けたことを特徴とするものである。
【0008】
請求項5に記載の発明においては、請求項4に記載の発明において、前記付勢手段がヘッドレスト本体を構成する弾性パッドであることを特徴とするものである。
(作用)
この発明においては、車室内で着座者が仮眠を取ったりくつろいだりする場合、着座者が後方のヘッドレスト本体に頭部をあずけてヘッドレスト本体を押圧すると、その頭部により移動部材が前方位置から後方位置に移動される。これにより、伝達手段を介してサポート部材が後方の退避位置から前方の作用位置に移動される。また、着座者がヘッドレスト本体に対する頭部の押し付けを解放すると、移動部材が後方位置から前方位置に復帰移動され、伝達手段を介してサポート部材が作用位置から退避位置に復帰移動される。よって、サポート部材を手動操作によることなく、退避位置と作用位置とに容易に移動配置することができる。
【発明の効果】
【0009】
以上のように、この発明によれば、頭部の位置を変えるのみで、サポート部材を退避位置と作用位置とに容易に移動配置することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
(第1実施形態)
以下に、この発明の第1実施形態を、図1〜図4に基づいて説明する。
図1及び図2に示すように、自動車用シート11の背もたれ部12の上端部にはヘッドレスト13が配設されている。このヘッドレスト13は、ヘッドレスト本体14と正面形ほぼ逆U字状のステー15とを備えている。ヘッドレスト本体14は、袋状の表皮16内にステー15の基部15a及び両脚部15bの上端部を挿入するとともに、弾性パッドとしての発泡弾性材17を充填して構成されている。表皮16内の後部には前部側からの荷重を受けるための丈夫な剛体よりなる保持板18が配設されている。
【0011】
図1及び図3に示すように、前記ヘッドレスト本体14内において、ステー15の両脚部15bには一対の支持レバー19が基端部にて回動可能に取り付けられている。ヘッドレスト本体14の両側外部において、両支持レバー19の先端部には一対のサポート部材20が支持されている。各サポート部材20は、袋状の表皮21内に発泡弾性材22を充填して構成されている。そして、両支持レバー19がステー15の脚部15bを中心に回動されることにより、これらのサポート部材20が図3に実線で示す後方の退避位置と、鎖線で示す前方の作用位置とに移動配置されるようになっている。
【0012】
図1、図3及び図4に示すように、前記ヘッドレスト本体14の発泡弾性材17内の内部には前部から後部にかけて空間部17aが形成され、その空間部17aの内部には、移動部材23がシート部材24にて包囲した状態で前後方向へ移動可能に配設されている。前記シート部材24は、移動部材23の移動によって発泡弾性材17の内面が崩れるのを防止するためのものである。そして、通常時には発泡弾性材17の弾発力により、移動部材23がヘッドレスト本体14内の前方位置に保持され、着座者がヘッドレスト本体14に頭部をあずけたときには、移動部材23が頭部によって押圧されて前方位置から後方位置に移動されるようになっている。従って、発泡弾性材17は、移動部材23を前方へ付勢するための付勢手段を構成している。
【0013】
前記移動部材23と両サポート部材20との間には、移動部材23の後方移動を両サポート部材20に対しその前方移動として伝達するための歯車機構を利用した伝達手段としての伝達機構25が設けられている。すなわち、移動部材23の両側面には一対のラック26が形成されている。これらのラック26と噛み合うように、両支持レバー19の基端部にはピニオン27が形成されている。そして、移動部材23が前方位置から後方位置に移動されたとき、ラック26及びピニオン27を介して両支持レバー19が回動され、両サポート部材20が後方の退避位置から前方の作用位置に回動されるようになっている。
【0014】
次に、前記のように構成されたヘッドレストの作用を説明する。
さて、このヘッドレスト13の通常時、すなわち移動部材23が後方へ押圧されていないときには、図3に示すように、移動部材23が発泡弾性材17の弾発力により、ヘッドレスト本体14内の前方位置に配置されている。この場合、図3に実線で示すように、両サポート部材20は伝達機構25を介して、ヘッドレスト本体14の両側後方の退避位置に配置されている。この状態で、着座者が仮眠を取ったりくつろいだりするために、頭部をヘッドレスト本体14にあずけると、その頭部により移動部材23が押圧されて、前方位置から後方位置に移動される。これにより、伝達機構25のラック26及びピニオン27を介して、両支持レバー19がステー15を中心に回動され、図3に鎖線で示すように、両サポート部材20がヘッドレスト本体14の両側前方の作用位置に移動される。よって、この状態でヘッドレスト本体14及び両サポート部材20により、着座者の頭部を後方及び両側方から効果的に支持することができる。
【0015】
また、この状態から運転等のために着座者の頭部がヘッドレスト本体14から離されると、移動部材23がその後方の発泡弾性材17の弾性により後方位置から前方位置に復帰移動される。これにより、伝達機構25のラック26及びピニオン27を介して、両支持レバー19が前記と反対方向に回動され、両サポート部材20が作用位置から退避位置に復帰移動される。よって、この状態でサポート部材20が着座者の両側方の視界を邪魔するおそれはなく、広い視界のもとで運転を行うことができる。以上のように、このヘッドレスト13においては、両サポート部材20を手動操作する必要がなく、後方の退避位置と前方の作用位置とに容易に移動配置することができる。
【0016】
以上のように、この実施形態では以下の効果を発揮する。
・ 着座者が頭部に位置を変えるのみで、両サポート部材20を簡単に移動操作でき、その着座者がサポート部材20の移動操作のために無理な姿勢を強いられることはない。
【0017】
・ 着座者が頭部を後部側の位置から前部側の位置に戻すのみで、発泡弾性材17の弾性を利用して移動部材23を前方へ復帰移動するようにしたので、前述したように操作が簡単であるばかりでなく、移動部材23を前方へ戻すための専用のバネが不要となり、構成が簡単である。
【0018】
・ ヘッドレスト本体14の後部に丈夫な剛体よりなる保持板18を設けたため、ヘッドレスト本体14の前面が強圧されたとしても、移動部材23の必要以上の後方移動が規制され、ヘッドレスト13を快適に使用できる。
【0019】
(第2実施形態)
次に、この発明の第2実施形態を、前記第1実施形態と異なる部分を中心に説明する。
さて、この第2実施形態においては、図5(a)(b)に示すように、移動部材23と両サポート部材20との間の伝達機構25が、リンク機構を利用した構成であって、一対の伝達レバー31から構成されている。すなわち、ヘッドレスト本体14内において、ステー15の両脚部15bには伝達レバー31が中間部にて回動可能に取り付けられている。各伝達レバー31の外端部には、サポート部材20が支持軸32を介して相対回動可能に支持されている。各伝達レバー31の内端部の長孔31aには、移動部材23が連結軸33を介して相対回動可能に連結されている。そして、移動部材23が前方位置と後方位置とに移動されるとき、これらの伝達レバー31を介して、両サポート部材20が後方の退避位置と前方の作用位置とに移動配置されるようになっている。
【0020】
従って、この第2実施形態においても、前記第1実施形態の場合と同様に、両サポート部材20を手動操作する必要がなく、また無理な姿勢を強いられることなく、後方の退避位置と前方の作用位置とに容易に移動配置することができる。
(変更例)
なお、この実施形態は、次のように変更して具体化することも可能である。
【0021】
・ 移動部材23の移動を拘束するための拘束機構を設け、その拘束機構の拘束作用を手動により解除した状態で、移動部材23の前方位置から後方位置への移動により、サポート部材20が退避位置から作用位置に移動されるように構成すること。従って、この構成においては、拘束機構により、サポート部材20を移動可能な状態と、移動不能な状態とに切り替えることができる。
【0022】
・ 移動部材23が所定量後方移動したときに、それ以上の後方移動を阻止するストッパを設けること。
・ 移動部材23を前方へ付勢するためのコイルバネ等の専用の付勢手段を設けること。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】第1実施形態のヘッドレストを示す部分正面図。
【図2】図1の2−2線における断面図。
【図3】図1の3−3線における断面図。
【図4】図1の4−4線における断面図。
【図5】(a)は第2実施形態のヘッドレストを示す断面図、(b)は一部拡大断面図。
【符号の説明】
【0024】
11…自動車用シート、12…背もたれ部、13…ヘッドレス、14…ヘッドレスト本体、15…ステー、15b…脚部、17…付勢手段及び弾性パッドを構成する発泡弾性材、19…支持レバー、20…サポート部材、23…移動部材、25…伝達手段としての伝達機構、26…ラック、27…ピニオン、31…伝達レバー。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートの背もたれ部の上端部に設けられるヘッドレストにおいて、ヘッドレスト本体の側部にはサポート部材を配置するとともに、ヘッドレスト本体内の前部には、着座者の頭部によって後方に移動される移動部材を設け、その移動部材とサポート部材との間には、移動部材の後方移動をサポート部材に対しその前方移動として伝達するための伝達手段を設け、前記移動部材が前方位置から後方位置に移動されることにより、サポート部材が後方の退避位置から前方の作用位置に移動されるように構成したことを特徴とするヘッドレスト。
【請求項2】
前記伝達手段が歯車機構を利用した構成であることを特徴とする請求項1に記載のヘッドレスト。
【請求項3】
前記伝達手段がリンク機構を利用した構成であることを特徴とする請求項1に記載のヘッドレスト。
【請求項4】
移動部材を前方へ付勢するための付勢手段を設けたことを特徴とする請求項1〜請求項3のうちのいずれか一項に記載のヘッドレスト。
【請求項5】
前記付勢手段がヘッドレスト本体を構成する弾性パッドである請求項4に記載のヘッドレスト。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−123722(P2006−123722A)
【公開日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−314652(P2004−314652)
【出願日】平成16年10月28日(2004.10.28)
【出願人】(000119232)株式会社イノアックコーポレーション (1,145)
【Fターム(参考)】