ヘリコバクター・ピロリ関連疾患の治療方法
本発明は、ヘリコバクター種感染、特にH.ピロリ感染に関連する病的状態を治療するための方法に関するものである。更に、本発明は、過剰胃酸分泌を特徴とする病理を治療するための方法に関するものである。本発明の方法は、胃で局所的に有効なペンタガストリンを、胃プロトン・ポンプ・インヒビターとともに経口投与することを含む。経口投与されるPGは胃で局所効果を発揮し、過剰胃酸分泌を特徴とする病的状態及びヘリコバクター種感染に関連する病的状態を治療するためにPPIと組合わせて使用してもよいことが本明細書に初めて開示される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヘリコバクター・ピロリ関連疾患を治療及び/又は予防するための方法に関するものであり、特に、H.ピロリの局所胃内根絶が意図される。
【背景技術】
【0002】
かつてストレス、胃酸過多、又は胃粘膜防御因子の減少が原因であると考えられていた消化性潰瘍は、現在、多くの場合ヘリコバクター・ピロリ(H.ピロリ)による細菌感染の結果であると考えられている。消化性潰瘍におけるH.ピロリの関与は、「消化性潰瘍及び胃炎におけるヘリコバクター・ピロリ」、Barry J.Marshall、Richard W.McCallum及びRichard L.Guerraut編、Blackwell Scientific Publications、ボストン、米国に詳しく記載されている。胃潰瘍又は十二指腸潰瘍の長期再発におけるH.ピロリ感染の治療効果は、David Y.GrahamらのAnnals of Internal Medicine 1992;116:No.9に記載されている。
【0003】
H.ピロリはヒト胃粘膜の粘液層内に存在している。胃は非常に低pHであるため、他のほとんどの微生物にとって厳しい環境である。H.ピロリの胃での繁殖能はウレアーゼ産生のような保護機構によるものであり、塩基性の微小環境を作り出すことにより細菌を胃の酸性度から保護する[Taylor DN及びBlaser MJ、Epidemiol Rev(1991)13:42−59]。
【0004】
現在、慢性活動性胃炎及び消化性潰瘍疾患の治療に採用される主な療法には、胃の酸性度を低下させる薬剤、例えば、酸及びペプシンの分泌を抑制するヒスタミンH2−レセプター・アンタゴニスト、並びに壁細胞の酸分泌に関与するH+/K+ ATPアーゼを阻害することで作用するプロトン・ポンプ・インヒビターが含まれる。プロトン・ポンプ・インヒビター(PPI)、例えばオメプラゾール及びその医薬的に許容可能な塩は、例えばEP124495号に開示されている。米国特許第5,093,342号は、オメプラゾールが有効な抗細菌剤としても使用できることを開示している。
【0005】
H.ピロリ感染の他の療法には、ビスマス化合物及び抗生物質が含まれる。しかしながら、最近用いられている治療法は治療後の再発率が上昇しているため、問題のあるものである。加えて、こうした治療のいくつかは重大な副作用を伴う。例えば、H.ピロリ感染の有効な抗生物質処置は、長期にわたる処置を必要とし(1〜2週間)、下痢及び腸の不快感を誘発し得る。ビスマス化合物も、多くの望ましくない重大な副作用を有することが知られている。
【0006】
H.ピロリ感染に対する最近の抗生物質処置は、通常2種の抗生物質と、通常PPI又はH2ブロッカーである補助薬との組合わせから成る。H.ピロリの抗生物質耐性は罹患率を増加させている[Hazell,SL、Eur J Clin Infect Dis(1999)18:83−86]。3剤併用療法(テトラサイクリンとメトロニダゾール及びトリカリウム・ジシトラトビスマセート(tripotassium dicitratobismuthate)(TDB)の組合わせ)は、単剤療法よりも有効であることがわかっているが、患者のコンプライアンス及び薬物耐性が更にその適用可能性を制限している。
【0007】
米国特許第5,196,205号(特許出願WO89/03219号に対応)は、ビスマス化合物、ペニシリンやテトラサイクリンの群に属する抗生物質、及びメトロニダゾールのような第2の抗生物質の投与から成るH.ピロリ感染の治療方法について記載している。したがって、関連療法は、3種の薬物を(各活性成分について1種)1日に数回投与することから成る。
【0008】
米国特許第5,472,695号、第5,560,912号、第5,582,837号、WO92/11848号及びWO96/02237号のように、H.ピロリの根絶に関する単剤療法又は多剤療法を記載する特許又は特許出願は他にも存在する。これらの特許及び特許出願に、活性成分の相互作用の問題を簡便且つ有効な方法で克服するものはない。
【0009】
ヒトホルモンのガストリンは細菌の増殖因子として作用することが本発明者の1人によって以前に示されている(Chowersら、1999、Gastroenterology 1999 117(5):1113−8)。この観察は、ガストリンアナログ、特にペンタガストリン(PG)のようなガストリン分子のC−末端は、ガストリンのH.ピロリ増殖促進作用を阻害し、よってこの細菌の根絶に用いることができるという発見をもたらした。(WO99/65513号)。
【0010】
現在の技術によると、PGは典型的には胃酸分泌機能を評価するための診断剤として用いられている。PGは胃中でペプシン分解されやすく、したがって、PGは経口投与されると不活性であると考えられている。実際、PGの経口投与を受けた4人の健常被験者では酸分泌に対する効果が記載されなかったが、胃腸異常のある3人の更なる患者では多少の効果が記載されている(Morrell&Keynes Lancet.1975 Oct 11;2(7937):712)。これらの発見は、PGの吸収は障害を受けた十二指腸粘膜を通して起こるが、胃からは吸収されないことを示唆している。実際、この研究はPGの経口吸収の欠如を証明するものとして薬理学の教科書に引用されている(Martindale 第32版、p1616、「補足の薬物及び他の物質」の章)。更に、ウシガエルモデルを用いるin vitro研究は、PGを内腔表面に投与したとき胃粘膜に影響しないことを示唆している(Ayalon A.ら、1981 The Am.J.Surg.141:94−97)。
【0011】
WO01/22985号は、胃酸分泌を抑制するため又は利尿薬として、PPIとともにPGを全身使用することについて記載する。この公報によれば、PG及びPPIの組合わせ投与は、過剰胃酸分泌を軽減/緩和する上でPPIの有効性を増加させる。この公報は、PG/PPI組合わせプロトコールは、H.ピロリ感染の治療に用いられる抗生物質の生物利用能を高めることで、H.ピロリ感染の治療に用いることができると言及する。PGを経口投与した場合、胃で活性であり得ることはWO01/22985号には開示も示唆もされていない。
【0012】
H.ピロリ感染のようなヘリコバクター種感染の有効な治療の開発は、長い間の切実な必要性を実現させるであろう。PPIと組合わせて経口投与されるPGがH.ピロリ関連疾患の治療に有効であることを示唆又は開示する先行技術文献はない。
【発明の開示】
【0013】
発明の概要
本発明の目的は、ヘリコバクター種感染、特にH.ピロリ感染に関連する病的状態、及び胃酸分泌阻害が必要とされる他の病的状態を治療するための新規方法を提供することである。特に、本発明は、経口投与されたペンタガストリン(PG)が、胃内効果を発揮するのに十分な時間、胃中で安定であるという発見に関係するものである。したがって、経口投与されたPGが胃中で局所抗細菌作用を有することが本明細書に初めて開示される。更に、PPIと組合わせたPGの胃内投与は、H.ピロリ感染の根絶に相乗効果を発揮する。胃中で局所効果を発揮させるのにPGを非経口経路で投与する必要がないという初めての指摘を提供するものであるため、本発見は非常に重要である。
【0014】
1つの側面において、本発明は、ヘリコバクター種感染に関連する病的状態に罹患する被験者を治療するための方法に関するものであり、この方法は、アミノ酸配列Trp−Met−Asp−PheNH2(配列番号1に示す)を含む医薬的に有効量のペプチドを、プロトン・ポンプ・インヒビター(PPI)とともに被験者に投与することを含む。その際、このペプチドは経口投与され、抗細菌作用を発揮するのに十分な時間、胃中で活性である。本発明の方法に使用される好ましいペプチドは、アミノ酸配列βAla−Trp−Met−Asp−PheNH2(配列番号2に示す)を含むPGである。しかしながら、本発明は、他のガストリン又はPGアナログ又はその誘導体の使用も意図するものである。
【0015】
本発明の方法は、PPIとともにPGを経口投与することを包含する。PGは、PPIの前に、同時に、又は後に投与することができる。投与されるPPIが遅延性の腸溶コーティング型である場合、PPI投与はPG投与に先行することが好ましい。投与されるPPIが即時性の非腸溶コーティング型である場合、胃で局所的に作用するPPIがPGとともに抗細菌作用を確実に発揮するために、PG投与はPPI投与に先行してもPPI投与とともに行うのも好ましい。
【0016】
アミノ酸配列βAla−Trp−Met−Asp−PheNH2(配列番号2に示す)を含むPGに加えて、本発明はガストリン又はPGアナログ又はその誘導体の使用も意図するものである。このようなアナログ又は誘導体は当業者に周知である。このような変異体には、限定されるものではないが、ガストリンの34アミノ酸、17アミノ酸、及び14アミノ酸種、並びにセルレインのような変異体を含めた他のペプチドが含まれる。これら短鎖型変異体は、配列番号1に示す活性C端テトラペプチドTrp−Met−Asp−PheNH2を含み、これは完全な薬理活性を有することが文献に報告されている(Tracey及びGregory(1964)Nature(ロンドン)、204:935を参照されたい)。
【0017】
更に含まれるのはガストリン及び/又は短鎖型ガストリンの変異体であり、天然アミノ酸が保存的置換により置換されている。更に含まれるのは、限定されるものではないが例えばPGのN−保護誘導体Boc−βAla−Trp−Met−Asp−PheNH2又はF−Moc−βAla−Trp−Met−Asp−PheNH2を含めたこれら分子の種々のアナログである。ここで、Bocはtert−ブチルオキシカルボニル基であり、Mocはメトキシカルボニルである。
【0018】
更に、ガストリンは、胃腸組織及びCNSに存在する構造的に関連のある神経ペプチドであるコレシストキニン(CCK)分子と構造的に関連があることが注目される(Mutt V.、Gastrointestinal Hormones、Glass G.B.J.、[編]Raven Press、ニューヨーク、p169及びNisson G.、前記、127を参照されたい)。したがって、CCK又はそのアナログ若しくは誘導体は本発明に有用であると考えられる。
【0019】
1つの態様において、本発明は、齧歯動物、ウシ、ウマ、イヌ、ウマ(equine)、非ヒト霊長類又はヒトなどの哺乳動物におけるH.ピロリ感染に関連する病的状態を治療するための方法を提供する。
【0020】
本発明の方法は、単一PG/アナログの使用、又は単一PGの使用に限定されるものではない。ある態様において、2種以上のPPI、及び/又は2種以上PG若しくはそのアナログの組合わせが意図される。
【0021】
ある態様において、1種以上の抗生物質をPPI及びPGとともに投与することが望ましい。したがって、例えばヘリコバクター種感染(例えばヘリコバクター・ピロリ)に関連する潰瘍の治療において、抗生物質は病理の細菌成分を緩和/除去するであろう。
【0022】
H.ピロリは、胃潰瘍、十二指腸潰瘍、胃炎、十二指腸炎、非潰瘍性消化不良及び胃癌のような多発性胃腸病理に関連する微好気性グラム陰性細菌である。したがって、本発明の組合わせは、H.ピロリに関連する胃腸病理の予防及び治療に用いることができる。多くの場合、胃潰瘍はH.ピロリによる細菌感染の結果であると考えられているため、本発明の組合わせは、例えば非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)療法(低用量アスピリンを含む)中の患者、非潰瘍性消化不良の患者、症候性胃食道逆流性疾患(GERD)の患者、急性上部胃腸出血の患者、及びストレス性潰瘍の状態において、胃酸分泌に関連する臨床愁訴に関連する胃腸病理の予防又は治療に用いることができる。更に、本発明の組合わせは、ゾリンジャー−エリソン症候群(ZES)、ウェルナー症候群、及び全身性肥満細胞症のような状態の治療に用いることができる。
【0023】
更に本発明は、PG及びPPIを含む新規経口組成物にかかるものである。この経口組成物は抗生物質を更に含んでいてもよい。そのような経口剤形は、即時放出型又は持続放出型の薬剤のうちの1つ又は両方を含有することができる。経口剤形は、錠剤、カプセル、トローチ、ロゼンジ、水性又は油性の懸濁液、分散性の粉末又は顆粒、エマルジョン、多粒子(multiparticulate)製剤、シロップ、エリキシル等の形態であることができる。
【0024】
1つの態様によれば、経口組成物は単一経口剤形で、好ましくは2層の固形若しくは半固形錠剤又は硬ゼラチンカプセルで、PG及びPPIを含む。単一経口剤形でPG及びPPIを含む経口組成物は、更に抗生物質を含んでいてもよい。本発明の好ましい剤形は、それぞれが特徴的な保護層及び非活性成分を有するオメプラゾール及びPGのビーズを含有するカプセルである。本発明の他の好ましい剤形は、コアに腸溶コーティングされたオメプラゾールを含み、即時放出型コーティング層にPGを含む錠剤である。
【0025】
他の態様によれば、PG、PPI、及び場合により抗生物質を含む経口組成物は、別々の経口剤形である。例えば、PGは経口懸濁液で投与され、PPI及び抗生物質は錠剤又はカプセルで投与されてもよい。他の例において、PG、PPI及び抗生物質は錠剤又はカプセルで投与される。本発明の種々の態様によれば、PPIは腸溶コーティング型で投与しても非腸溶コーティング型で投与してもよい。
【0026】
種々の態様によれば、経口組成物は、充填剤、潤滑剤、胃中でPGの生体接着性を高める薬剤、緩衝薬及び可溶化剤のような賦形剤を更に含む。PGの胃内放出は、制御放出手段、好ましくは胃内保持剤(gastro retentive agent)により持続される。他の態様において、PGの胃内放出は即時性である。
【0027】
好ましい態様によれば、本発明に用いられるPPIは、胃での分解を妨げるため、腸溶コーティングされている。PPIが腸溶コーティングされている場合、PPI顆粒は腸環境に到達したときにのみ吸収されるであろう。他の態様によれば、本発明に用いられるPPIは、胃のH+/K+−ATPアーゼ・ポンプに対する即時作用を可能にするため、非腸溶コーティング型である。他の態様には、PGとともに投与される腸溶コーティング型及び非腸溶コーティング型PPIが含まれる。
【0028】
これら及び更なる態様は、以下の詳細な説明及び実施例から明らかになるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
発明の詳細な説明
本発明は、胃でPGの局所効果を働かせるためにPGを非経口経路で投与する必要がないことを初めて開示する。したがって、オメプラゾールのようなPPIとともに経口投与されるPGは、H.ピロリ感染の根絶、及び胃酸分泌の阻害が必要とされる胃腸の他の病的状態の治療に相乗効果を発揮する。
【0030】
実施例で証明するように、PGはH.ピロリをin vitroで有効に根絶可能である。更に、PGとオメプラゾールのようなPPIとの組合わせは、in vitroで細菌根絶に相乗効果を現した。経口投与後の胃でのPGの局所作用をin vitro及びin vivoで調べた。in vitro実験によれば、非分解PGのかなりの部分が、通常胃に存在する酸性pHで、ペプシンと15分間インキュベーションした後に残る。更に、PPI処置下の胃液のpH範囲内であるpH>4.5で、PG分解の動態が非常に長くなり、胃内の生物活性について観察する機会を残している。in vivo実験はin vitroの結果を確認するものであり、オメプラゾールのようなPPIとともに経口投与されたPGが胃酸分泌の軽減においてPPIの効果と相乗的であることを示した。更に、in vivo実験は、PGが、小腸粘膜を介した血流への吸収によるものではなく、内腔側から胃壁に作用することを現した。したがって、PPIと組合わせて経口投与されるPGは、胃で局所作用を発揮することが可能である。PGの胃内局所作用は、胃でのH.ピロリの根絶及び胃酸分泌の軽減に関与する。
【0031】
本明細書に開示されるように、PGはPPIとともに経口投与される。「とともに」という用語を用いる場合、生物に対する生理活性に少なくともいくらかの時間的重複があるようにPPIとPGが投与されることを意味する。したがって、PPIとPGは同時に及び/又は逐次的に投与することができる。
【0032】
PGは、PPIの前に、同時に、又は後に投与することができる。投与されるPPIが遅延性腸溶コーティング型である場合、PGが胃中で依然として活性であるあいだ、小腸に吸収されるPPIが確実に生物的に利用できるように、PPI投与はPG投与に先行することが好ましい。投与されるPPIが即時性非腸溶コーティング型である場合、胃で局所的に作用するPPIが細菌根絶において確実にPGと相乗的に作用するように、PG投与はPPIに先行するか又はいっしょに投与することが好ましい。
【0033】
したがって、連続的投与において、PPIが投与されるか又は生体内で活性になるとPGが生物に対し生物学的変化を現す限り、PGとPPIの投与のあいだに実質的な遅延(例えば分又は数時間のこともある)があってもよい。
【0034】
好ましい態様によれば、本発明は、アミノ酸配列βAla−Trp−Met−Asp−PheNH2(配列番号2に示す)を含むPGに関するものである。しかしながら、他のガストリン又はPGアナログ又はそれらの誘導体は本発明の範囲内である。そのようなアナログ又は誘導体は当業者に周知である。そのような変異体には、限定されるものではないが、ガストリンの34アミノ酸、17アミノ酸、及び14アミノ酸種、並びに完全な薬理活性を有すると文献に報告されている配列番号1に示す活性C端テトラペプチドTrp−Met−Asp−PheNH2を含む、他の短鎖型変異体が含まれる(Tracey及びGregory(1964)Nature(ロンドン)、204:935を参照されたい)。
【0035】
更に含まれるのは、本来のアミノ酸が保存的置換により置き換わっている、ガストリン及び/又は短鎖型ガストリンの変異体である。更に含まれるのは、例えば、限定されるものではないが、PGのN−保護誘導体を含めたこれら分子の種々のアナログである。PGの好適な保護基には、例えばメトキシメチル(MOM)、β−メトキシエトキシメチル(MEM)、トリアルキルシリル、トリフェニルメチル(トリチル)、tert−ブトキシカルボニル(t−BOC)、エトキシエチル(EE)、f−MOC(メトキシカルボニル)、TROC、等の当該技術分野に公知の標準のヒドロキシル保護基が含まれる。保護基は、当業者に一般に公知の標準方法で除去し、所望のPG誘導体を得ることができる(T.W.Green、有機合成の保護基、第2章、10〜69頁(1981))。
【0036】
更に、ガストリンが、消化管及びCNSに存在するCCK神経ペプチドに、構造的に関連があることが注目される(Mutt V.、Gastrointestinal Hormones、Glass G.B.J.、[編]Raven Press、ニューヨーク、p169及びNisson G.、前記、127を参照されたい)。したがって、内在性ガストリン分泌を刺激するCCK又はそのアナログ又はその誘導体は、本発明の方法に有用であると考えられる。
【0037】
ガストリン、ペンタガストリン、又はアナログは市販されている。更に、合成プロトコールも周知である。したがって、例えば、PGは周知のペプチド合成法を用いて化学的に合成することができる(例えばBarany及びMerrifield、固相ペプチド合成;pp.3−284、ペプチド:解析、合成、生物学.Vol.2:ペプチド合成の特殊法、part a.中;Merrifieldら(1963)J.Am.Chem.Soc.85:2149−2156;並びにStewartら(1984)固相ペプチド合成、第2版 Pierce Chem.Co.、ロックフォード、イリノイ州)。更に、PGは、Boc−Ala残基をテトラペプチドTrp−Met−Asp−PheNH2へ結合させることにより化学的に合成することができる。
【0038】
多くのプロトン・ポンプ・インヒビターが当業者に公知である。したがって、例えば、米国特許第6,093,738号は、プロトン・ポンプ・インヒビターとして有効な新規チアジアゾール化合物を記載している。プロトン・ポンプ・インヒビターとして、欧州特許第322133号及び第404322号はキナゾリン誘導体を開示し、欧州特許第259174号はキノリン誘導体を開示し、そしてWO91/13337号及び米国特許第5,750,531号はピリミジン誘導体を開示する。好適なプロトン・ポンプ・インヒビターは、例えば、EP−A1−174726号、EP−A1−166287号、GB 2 163 747号及びWO90/06925号、WO91/19711号、WO91/19712号、WO94/27988号及びWO95/01977号にも開示されている。一般に、酸小管内で活性化され、H+/K+−アデノシン・トリホスファターゼ(ATPase)プロトン・ポンプの活性を阻害する如何なるプロトン・ポンプ・インヒビターもPGと組合わせて使用できる。特に好ましいPPIには、限定されるものではないが、オメプラゾール、ラベプラゾール、ランソプラゾール及びパントプラゾール、並びにそれらの誘導体又はアナログが含まれる。
【0039】
本発明の剤形に用いられるPPIは、中性又は塩(例えばアルカリ塩)、例えばMg2+、CA2+、NA+、K+又はLi+の塩、好ましくはMg2+塩の形態で用いることができる。更に、適用可能な場合、化合物は、ラセミ型若しくはそのエナンチオマーの形態、又はラセミ化合物若しくは単一エナンチオマーの塩で用いることができる。
【0040】
更に本発明は、PG、PPI及び医薬的に許容可能な担体を含む新規経口組成物に関するものである。経口組成物は、ヘリコバクター種感染(例えばヘリコバクター・ピロリ)に関連する潰瘍を治療するための抗生物質を更に含む。そのような抗生物質は、例えばアモキシシリン、クラリスロマイシン若しくは他のマクロライド、メトロニダゾール及び関連抗生物質、テトラサイクリン、キノロン、リファブチン又はフラゾリドンである。
【0041】
本発明の好ましい態様において、プロトン・ポンプ・インヒビター及びPGを含有する医薬組成物は経口投与される。このような経口剤形は、即時放出型又は持続放出型の薬物の1つ又は両方を含有することができる。経口剤形は、錠剤、カプセル、トローチ、ロゼンジ、水性又は油性の懸濁液、分散性の粉末又は顆粒、エマルジョン、多粒子製剤、シロップ、エリキシル等の形態であり得る。
【0042】
医薬的に許容可能な好適な担体には、限定されるものではないが、水、塩溶液、アルコール、アラビアゴム、植物油、ベンジルアルコール、ポリエチレングリコール、ゲル化物(gelate)、ラクトース、アミロース又はスターチのような炭水化物、タルク ステアリン酸マグネシウム、ケイ酸、粘性パラフィン、香油、脂肪酸のモノグリセリド及びジグリセリド、ペンタエリスリトール脂肪酸エステル、ヒドロキシメチルセルロース、ポリビニルピロリドン等が含まれる。医薬製剤は滅菌され、所望により補助物質、例えば潤滑剤、防腐剤、安定剤、湿潤剤、乳化剤、浸透圧バッファーに影響を与えるための塩、着色剤、着香料及び/又は芳香性物質等と混合することができる。これらは所望により他の活性物質、例えば抗生物質と組合わせることもできる。経口投与に関し、特に好適なのは、錠剤、糖衣錠、リキッド、ドロップ、座薬、又はカプセル、カプレット及びジェルキャップである。経口用途が意図された組成物は、当該技術分野に公知のいずれの方法により調製してもよく、そのような組成物は、錠剤の製造に好適な、不活性で非毒性の医薬賦形剤から成る群より選択される1種以上の薬剤を含有することができる。そのような賦形剤には、例えば、ラクトースのような不活性希釈剤;コーンスターチのような顆粒化剤及び崩壊剤;スターチのような結合剤;並びにステアリン酸マグネシウムのような潤滑剤が含まれる。錠剤はコーティングされていなくてもよく、又はエレガンスのため若しくは活性成分の放出を遅延させるために公知技術によりコーティングされていてもよい。経口用途製剤は、活性成分が不活性希釈剤と混合されている硬ゼラチンカプセルとして存在してもよい。
【0043】
1つの態様によれば、単一経口剤形中にPG及びPPIを含む経口組成物は、好ましくは2層錠又は硬ゼラチンカプセルである。単一経口剤形中にPG及びPPIを含む経口組成物は、更に抗生物質を含んでいてもよい。本発明の好ましい剤形は、それぞれが特徴的保護層及び非活性成分を有するオメプラゾール及びPGのビーズを含有するカプセルである。
【0044】
他の態様によれば、PG、PPIそして場合により抗生物質を含む経口組成物は、異なる経口剤形中にある。例えば、1つの好ましい態様によれば、PGは経口溶液で投与され、PPI及び抗生物質は錠剤又はカプセルで投与してもよい(硬ゼラチンカプセル又は軟ゼラチンカプセル)。他の好ましい態様によれば、PG、PPI及び抗生物質は錠剤又はカプセルで投与される(硬ゼラチンカプセル又は軟ゼラチンカプセル)。活性成分を錠剤又はカプセルに製剤化する場合、PGの生体接着性を高めるために生体接着剤を導入することが好ましい。例えば、PGは顆粒化してもよく、又はカルボポール、ユードラジット(登録商標)(メタクリル酸コポリマー)、CMC、キトサン誘導体、デキストラン誘導体又はポリオックスのような生体接着性ポリマーとともにマイクロスフェアを調製してもよい。
【0045】
種々の態様によれば、本発明に用いるPPIは、腸溶コーティング型を用いる場合、小腸で吸収されることができる。あるいは、PPIは非コーティング型でもよく、この場合、胃壁内腔に直接作用する。好ましい態様によれば、本発明に用いるPPI顆粒は、胃での分解を妨げるために、例えばユードラジットを用いて腸溶コーティングされる。この場合、コーティングされたPPI顆粒は、pH5以上の小腸環境に到達したときに即座に分解されるであろう。
【0046】
好適な腸溶ポリマーの例には、酢酸フタル酸セルロース、フタル酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース、酢酸フタル酸ポリビニル、メタクリル酸コポリマー、シェラック、コハク酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース、酢酸トリメリト酸セルロース、及びこれらのいずれかの混合物が含まれる。好適な市販の腸溶材料は、例えば上で定義したようなユードラジットTML 100−555という商標の固体である。このコーティングは、本発明のこの態様の他の層に関して先に言及したように、基剤に対して噴霧コーティングすることができる。プロトン・ポンプ・インヒビターと酸性胃液の接触を妨げるためのコーティングは、中間分離層なしにプロトン・ポンプ・インヒビターに直接施されることが好ましい。
【0047】
1つの態様によれば、PG、PPI、及び場合により抗生物質を含む単一剤形は、硬ゼラチンカプセルの形態に調製される。1つの例において、アモキシシリンのような抗生物質、PG及びオメプラゾールは、硬ゼラチンカプセルに充填される。硬ゼラチンカプセルは、アビセル(登録商標)として知られる微結晶性セルロースのような充填剤、潤滑剤、PGの生体接着性を高める物質、及び可溶化剤を更に含む。
【0048】
硬ゼラチンカプセルに好ましい潤滑剤は、例えばステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、ラクトス(lactos)、リン酸2カルシウム、コロイド状シリカ及びタルクである。硬ゼラチンカプセルに好ましい可溶化剤は、例えばTween 80、ビタミンE TPGS、スターチ及びクロスカルメロースナトリウムである。
【0049】
他の態様によれば、PG、PPI、及び場合により抗生物質を含む単一剤形は、錠剤の形態に調製される。1つの例において、アモキシシリン(又は他の抗生物質)、ペンタガストリン及びオメプラゾールが2層錠に充填される。好ましい態様によれば、第1層は、好ましくはカルボポール971P及びラクトースのような生体接着性ポリマーの存在下で、PGとともに顆粒化されたアモキシシリンを含む。第2層は、ユードラジットのような腸溶性ポリマーとともに顆粒化されたオメプラゾールを含む。
【0050】
上記薬物の組合わせ及びその混合物を含有する水性懸濁液は、懸濁剤として好適な1種以上の賦形剤、例えば医薬的に許容可能なヒドロキシプロピルメチルセルロースのような合成ゴム又は天然ゴムを有する。油性懸濁液は、上記薬物の組合わせを植物油又は鉱油中に懸濁することにより製剤化することができる。油性懸濁液は、蜜蝋又はセチルアルコールのような増粘剤を含有することができる。甘くしたビヒクルを使用する場合は、シロップ、エリキシルなどを用いることができる。
【0051】
腸溶コーティングされたプロトン・ポンプ・インヒビターを含む多粒子基剤を用いて調製された製剤において、そのような多粒子をPG(例えば粒状又は粉末状)と混合し、それから単位用量に分けることができる。あるいは、プロトン・ポンプ・インヒビターを含有する腸溶コーティングされた基剤は、その後PGでコーティングされることができる(更なる任意のオーバーコーティングはあってもなくてもよい)。あるいは、2つの異なる基剤集団を用いることができ、一方の基剤集団はプロトン・ポンプ・インヒビターでコーティングされた後腸溶コーティングされ、他方の基剤集団はPGを含む。PG含有基剤は、PGでコーティングされた不活性ビーズを含むことができ、またはPGを含有する複数の中間放出マトリックスを含むことができる。その後、2つの基剤集団それぞれの必要量が、例えば錠剤又はゼラチンカプセルに導入されるであろう。
【0052】
基剤が医薬的に許容可能な不活性ビーズを含む場合の態様において、ビーズがコーティングされる前に、薬物を更なる成分と混合することができる。成分には、限定されるものではないが、結合剤、界面活性剤、充填剤、崩壊剤、アルカリ添加物又は他の医薬的に許容可能な成分が単独又は混合物で含まれる。結合材には、例えばヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース及びカルボキシメチルセルロースナトリウムのようなセルロース、ポリビニルピロリドン、糖、スターチ及び粘着特性を有する他の医薬的に許容可能な物質が含まれる。好適な界面活性剤には、医薬的に許容可能な非イオン性又はイオン性の界面活性剤が含まれる。好適な界面活性剤の例は、ラウリル硫酸ナトリウムである。不活性ビーズは、初めにプロトン・ポンプ・インヒビターでコーティングされ、腸溶コーティングでオーバーコーティングされ、そしてPGでコーティングされることができる(更なる任意のオーバーコーティングはあってもなくてもよい)。あるいは、2つの異なるビーズ集団を用いることができ、一方のビーズ集団はプロトン・ポンプ・インヒビターでコーティングされた後に腸溶コーティングされ、他方のビーズ集団はPGでコーティングされている。その後、2つのビーズ集団それぞれの必要量は、例えば錠剤又はゼラチンカプセルに導入されるであろう。
【0053】
あるいは、プロトン・ポンプ・インヒビターは、上記のように、任意にアルカリ化合物と混合し、更に好適な成分と混合することができ(PGはあってもなくてもよい)、その後基剤中に製剤化される。このような基剤は、さまざまなプロセス装置を用いて、押出し/球状化、ボーリング又は圧縮により製造することができる。基剤の大きさは、例えば約0.1〜約4mm、好ましくは約0.1〜約2mmであることができる。あるいは、基剤は追加成分を含んでいてもよい。そのような好適な成分には、充填剤、結合材、潤滑剤、崩壊剤、界面活性剤及び他の医薬的に許容可能な添加物が含まれる。アルカリ化合物は、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム及びアルミニウムのリン酸、炭酸、クエン酸又は他の好適な弱い無機酸若しくは有機酸の塩;水酸化アルミニウム/重炭酸ナトリウム共沈物;アルミニウム、カルシウム及びマグネシウムの水酸化物のような制酸製剤に通常用いられる物質;酸化マグネシウム又は複合物質;トリヒドロキシメチルアミノメタン、塩基性アミノ酸及びそれらの塩のような有機pH緩衝剤、又は他の類似の医薬的に許容可能なpH緩衝物質、のような物質からから選択することができる。あるいは、上記基剤は、噴霧乾燥又は噴霧凝固技術を用いて調製することができる。
【0054】
プロトン・ポンプ・インヒビターのオメプラゾールは、硫黄原子に不斉中心を有する。即ち、2つの光学異性体(エナンチオマー)として存在する。純粋なエナンチオマーそれぞれ、ラセミ混合物(エナンチオマーそれぞれが50%)及び2つのエナンチオマーの等量でない混合物は本発明の医薬製剤に好適である。本発明による多粒子剤形の調製に好適なオメプラゾールの形態は、特定の結晶度、及び本明細書に援用されるWO95/01977号に開示された他の物理特性を有するオメプラゾールのマグネシウム塩であり得る。活性物質の他の好適な形態は、オメプラゾールの単一エナンチオマーのナトリウム、カリウム、マグネシウム及びカルシウムの塩、特に本明細書に援用されるWO94/27988号に記載の結晶形である。
【0055】
基剤に腸溶コーティング層を適用する前に、場合により基剤は1つ以上の分離(中間)層で被覆されてもよいが、好ましい態様において、腸溶コーティングは、分離層を必要とせずにプロトン・ポンプ・インヒビターに直接適用される。
【0056】
1つ以上の腸溶コーティング層は好適なコーティング技術を用いて基剤に適用されることが好ましい。腸溶コーティング層物質は水又は好適な有機溶媒中に分散又は溶解させることができる。腸溶コーティング層ポリマーとして、以下の1種以上を単独で又は組合わせて用いることができる:例えば、メタクリル酸コポリマー、酢酸フタル酸セルロース、フタル酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース、酢酸コハク酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース、酢酸フタル酸ポリビニル、酢酸トリメリト酸セルロース、カルボキシメチルエチルセルロース、シェラック又は他の好適な腸溶コーティング層ポリマーの溶液又は分散液。
【0057】
腸溶コーティング層は、腸溶コーティング層の柔軟性及び硬度のような所望の機械特性を得るために、有効量の医薬的に許容可能な可塑剤を含有することが好ましい。そのような可塑剤は、例えば、限定されるものではないが、トリアセチン、クエン酸エステル、フタル酸エステル、セバシン酸ジブチル、セチルアルコール、ポリエチレングリコール、ポリソルベート又は他の可塑剤である。可塑剤の量は好ましい状態のために最適化される。可塑剤の量は通常腸溶コーティング層ポリマーの10重量%以上、好ましくは15〜50%、より好ましくは20〜50%である。分散剤、着色剤、顔料、ポリマー、例えばポリ(エチルアクリレート、メチルメタクリレート)、抗粘着剤及び消泡剤のような添加剤を腸溶コーティング層に含めることもできる。膜厚を増加させ、添加された影響を受けやすい物質へ酸性の胃液が拡散するのを減少させるために、他の化合物を添加してもよい。
【0058】
上記のように被覆された基剤に、例えば、コーティング・パン、コーティング造粒機のような好適な装置で、あるいはコーティング処理又は積層処理のために水及び/又は有機溶媒を用いた流動床装置で、コーティング法又は積層法により、オーバーコーティングを適用してもよい。好適なオーバーコーティング物質には、糖、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、酢酸ポリビニル、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウムなどが含まれる。可塑剤、着色剤、顔料、充填剤、抗粘着剤及び帯電防止剤のような添加剤、例えばステアリン酸マグネシウム、2酸化チタン、タルク及び他の添加剤をオーバーコーティング層に含めてもよい。
【0059】
次に、腸溶コーティングされた基剤は、錠剤賦形剤と混合され、本発明の多単位錠剤型に圧縮され、あるいは、単位用量として適切な大きさのゼラチンカプセルに導入されることができる。本発明により調製された圧縮された錠剤は、錠剤の滑らかな表面を得るために、更に錠剤の安定性を高めるために、包装及び輸送のあいだ、場合により被膜剤で被覆されている。そのような錠剤コーティング層は、外観のよい錠剤を得るために、抗粘着剤、着色剤及び顔料又は他の添加剤のような添加剤を更に含むことができる。多単位錠剤型を製剤化するためのコンパクション処理(圧縮)は、腸溶コーティングされた基剤の酸耐性に重大な影響を与えてはならない。換言すれば、腸溶コーティング層の柔軟性や硬度のような機械特性、及び厚さは、米国薬局方における腸溶コーティングされた粒子に対する必要性が達成されること、及びペレットを錠剤に圧縮するあいだに酸耐性が10%以上減少しないことを確保する必要がある。
【0060】
ある好ましい態様において、プロトン・ポンプ・インヒビター基剤の腸溶コーティング後にPGが製剤に導入される場合、基剤への腸溶コーティング添加後のPGの添加は、PGの即時性放出及びプロトン・ポンプ・インヒビターの遅延性放出を可能にする。PGは、その放出を遅らせない形態で外部コーティングに存在してもよく、又は上記のような製剤中に別々に導入されてもよい。
【0061】
場合により、上記のような活性成分を含む組成物及び公知の植物油をカプセルに充填することにより、軟ゼラチンカプセルを製造することができる。それぞれ上記のような活性成分を含む錠剤、顆粒又はペレット、及びラクトース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、ポテトスターチ、コーンスターチ、アミロペクチン、セルロース誘導体又はゼラチンのような固体粒状担体をカプセルに充填することにより、硬ゼラチンカプセルも製造することができる。
【0062】
pH依存性コーティングを利用して製剤を得る本発明の製剤は、反復作用効果を付与することもでき、それにより保護されていない薬物、好ましくはPGは腸溶コーティングに対して被覆され、胃で放出される。一方、好ましくはプロトン・ポンプ・インヒビターを含有する残りは腸溶コーティングによって保護されており、胃腸管の更に下部で放出される。pH依存性のコーティングは、シェラック、酢酸フタル酸セルロース(CAP)、酢酸フタル酸ポリビニル(PVAP)、フタル酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース、及びメタクリル酸エステルコポリマー、ゼインなどを含めて本発明により使用することができる。
【0063】
ある好ましい態様において、プロトン・ポンプ・インヒビター及びPGを含有する基剤(例えば錠剤コアビーズ、マトリックス粒子)は、(i)アルキルセルロース;(ii)アクリル酸ポリマー;又は(iii)それらの混合物より選択される疎水性物質で被覆される。コーティングは、有機性又は水性の溶液又は分散液の形態で適用することができる。コーティングを基剤の約2〜約25%増量するために適用し、所望の徐放性放出プロファイルを得ることができる。
【0064】
上記成分に加えて、マトリックスは好適量の他の物質、例えば医薬分野に慣用の希釈剤、潤滑剤、結合剤、造粒補助剤、着色剤、着香料及び流動促進剤を含有することもできる。これら追加物質の量は所望の効果を所望の製剤に提供するのに十分なものであろう。経口剤形を製剤するのに用いることができる医薬的に許容可能な担体及び賦形剤の特定の例は、本明細書に援用される医薬賦形剤のハンドブック、米国薬学会(1986)に記載されている。
【0065】
マトリックスに添加することができる更なる成分は、本発明の目的のために、薬物のイオン化を減少させ、それによりマトリックスから溶液への薬物の放出を容易にする物質を意味すると定義されるpH変性剤である。好適なpH変性剤はクエン酸、コハク酸、フマル酸、リンゴ酸、マレイン酸、グルタル酸又は乳酸などの有機酸である。
【0066】
典型的な治療剤、特にPPI及びPGの投薬量は、当業者に周知である。更に、そのような投薬量は典型的には事実上助言的なものであり、特定の治療背景、患者の耐容性などに依存して調製することができる。組成物の単一又は複数の投薬量は、患者が必要とし且つ耐容であるような用量及び頻度に依存して投与することができる。
【0067】
好ましい態様において、PG及びPPIは、細菌又は胃酸分泌に対し測定可能な効果を得るのに十分な量で投与することができる。特に、PG及びPPIは、胃酸分泌に有意な減少(例えば、信頼水準90%、より好ましくは95%、最も好ましくは98%又は99%の統計的に有意な減少)をもたらすのに十分な量で投与することができる。
【0068】
同様に、PG及びPPIが抗生物質と組合わせて投与される場合、抗生物質は典型的には実際の臨床に一致した方法及び濃度で投与される。
オメプラゾールの好ましい投薬量は10〜40mg/日であり、ランソプラゾールは典型的には約15〜30mg/日で投与され;ラベプラゾールは典型的には20mg/日で投与され、そしてパントプラゾールは典型的には40mg/日で投与される。しかしながら、これら薬剤のどのような治療的用量又は治療量以下の用量も本発明の範囲内であると考えられる。経口投与されるPGの好ましい投薬量は2.5〜20mg/日、好ましくは5mg/日である。
【0069】
以下の実施例は、本発明のある態様をより完全に説明するためにある。しかしながら、それらは決して本発明の広範な範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。当業者は、本発明の範囲を逸脱することなく、本明細書に開示した原理について多くの変動及び改変を容易に工夫することができる。
【0070】
実施例
方法及び試薬:
本試験に使用するペプチドには、ペンタガストリン(PG)又はセルレイン(シグマ、セントルイス、ミズーリ州、米国)のいずれかを含めた。原液として、ペプチドを酢酸/水(1:1)で1mg/ml濃度に希釈し、その後、最終濃度まで水又は直接培地に希釈した。ある実験では、PGを酢酸/水 1:1及び2.5%DMSO(シグマ)に希釈した。オメプラゾール(Dexxon、Or Akiva、イスラエル)は2.5%DMSOを含むPBSで希釈し、32μg/mlで使用した。
【0071】
使用した細菌株はH.ピロリ株J.99又はH−88(臨床分離株)を含み、チョコレート観点培地プレート(Remel Novamed、エルサレム、イスラエル)上で増殖させた。細菌を溶解し、ガス発生キット(AnaeroPack system、三菱ガス化学株式会社、ニューヨーク、ニューヨーク州、米国)を用いて微好気性条件下で2日間増殖させた。培養後、第2継代を同様条件下で行い、細菌を更に1日増殖させた。実験のため、細菌をPBSで希釈し、その後、0.02OD600の第2継代細菌(>80%が棹状型)を、25cm2組織培養フラスコ(Nunc、ロスキレ、デンマーク)中、適切なペプチドを含有する0.5〜2%非働化ヒト血清含有のブルセラ(ベクトン・ディッキンソン、コッキーズビル、メリーランド州、USA)又はブレインハート(Biolife、ミラノ、イタリア)ブロスへ移した。細菌を48時間まで増殖させた。全ての培養は37℃で行った。OD600値又はCFUカウントを用いて増殖を評価した。他の実験では、第2継代細菌をPBSで洗浄し、その後、0.5OD(最終濃度)を24穴プレート(TPP、スイス)中のF12 HAM培地(Biological industries、Beit Haemek、イスラエル)に再懸濁させた。PG又はセルレインの存在下で細菌を5時間インキュベートした。ペプチドの細菌増殖に対する効果をCFU定量法により評価した。細菌生存率をcellTiter 96 Aqueous細胞増殖アッセイ(プロメガ、マディソン、ウィスコンシン州、USA)で評価した。
【実施例1】
【0072】
PG、セルレイン又はオメプラゾールによる細菌増殖の阻害
予備実験において、PG、セルレイン、及びオメプラゾールのH.ピロリ増殖に対する効果を証明した。この実験において、H.ピロリ(H−88臨床分離株)を、酢酸で希釈したPG及びセルレインを含有する液体培地中で増殖させた。平行して、オメプラゾールの細菌増殖に対する効果も評価した。未処理細菌を対照とした。細菌増殖をCFUカウントで評価した。図1Aからわかるように、両ペプチドは、48時間のインキュベーション中、オメプラゾールと同程度まで細菌増殖を阻害した。これら化合物が、短期培養で、細菌増殖を阻害するだけでなく細菌生存率にも影響するかどうかを評価するために更なる実験を行った。図1Bからわかるように、両ペプチド及びオメプラゾールは、短期培養で同様の効果を有していた。
【実施例2】
【0073】
ペンタガストリン及びオメプラゾールはH.ピロリ増殖を相乗的に阻害する
オメプラゾール又はペンタガストリンはH.ピロリの増殖をin vitroで阻害することが先に示されている。組合わせ投与の効果を調べるため、オメプラゾール、ペンタガストリン又は両方の存在下で細菌増殖を試験した。細菌を1%ヒト血清を有する6mlのブレインハートブロス中に接種し、37℃で18時間、微好気性条件で増殖させた。次に、同様に増殖した培養物全てに90μMオメプラゾール、又は25nMペンタガストリン、又は両方を追加し、更に32時間インキュベートした。化学物質非存在下で培養した細菌培養物を細菌増殖の陽性対照として用いた。処理後6時間、24時間、及び32時間に細菌増殖レベルを分光光度計でモニターした。図2に示すように、オメプラゾール又はペンタガストリンによる単剤処理は細菌増殖に対し中程度の阻害を示した。両薬剤を添加すると増殖が有意に遅延し、オメプラゾールとペンタガストリンとの組合わせはH.ピロリ増殖に対して相乗的阻害作用を有することを示唆した。
【実施例3】
【0074】
ペンタガストリン、オメプラゾール、及びアモキシシリンはH.ピロリ増殖を相乗的に阻害する
H.ピロリ根絶用細菌製剤を最適化するために、アモキシシリンと組合わせて提供されるペンタガストリン及びオメプラゾールの効果を試験した。アモキシシリンは、H.ピロリ治療に用いられる一般に受容された抗生物質である。3剤投与の効果を調べるため、オメプラゾール、ペンタガストリン、アモキシシリンの存在下で細菌増殖を試験し、可能な組合わせを試験した。薬剤非存在下で増殖させた細菌を陰性対照として用いた。処理後18時間、24時間、及び46時間に細菌増殖レベルを分光光度計でモニターした。
【0075】
オメプラゾール、ペンタガストリン、又はアモキシシリンによる単剤処理は、細菌増殖に対して中程度の阻害を示した(図3)。3剤組合わせ処理に細菌を曝すと最も高レベルの阻害を示した。この効果は、単剤処理(PG、OMP、又はAMX)及び2剤処理(PG及びOMP、PG及びAMX、OMP及びAMX)よりも有意に強い(図3)。本結果は、ペンタガストリン、オメプラゾール、及びアモキシシリンを組合わせた治療製剤は、H.ピロリ根絶に最適であると考えられることを意味している。
【実施例4】
【0076】
セルレイン及びオメプラゾールはH.ピロリの根絶に有効である
H.ピロリを、オメプラゾール及びPG又はセルレインの組合わせの存在下でインキュベートし、OD600測定値及び生存率測定値により細菌の増殖を評価した。表1からわかるように、オメプラゾールといずれかの薬剤との組合わせは細菌根絶に高度に有効であった。薬物の組合わせ効果は、代謝生存率アッセイにより5時間後に明らかとなり、殺菌効果を有することを示した。細菌を薬物の組合わせとともに48時間インキュベートした後の類似の効果が注目された。これらの発見は、薬物の組合わせも細菌増殖の阻害に有効であることを示している。
【0077】
【表1】
【実施例5】
【0078】
in vivoで酸分泌を阻害するためのPGとPPIの組合わせ製剤
試薬及び動物:
実験中、以下の試薬を用いた:ケタミンHCL(Ketaset、ファイザーGmbH、カルルスルーエ、ドイツ)、塩酸メデトミジン(ドミトール、ファイザー)、ランソプラゾール(ゾトン、CTS Chemical Industries、Kiryat Malachi、イスラエル)、オメプラゾール(Dexxonより善意供与、Or Akiva、イスラエル)、注射用ペンタガストリン(ケンブリッジ研究所、英国)。水酸化ナトリウムはシグマから得た(セントルイス、米国)。
【0079】
週齢7〜10の雄及び雌ウィスターハノーバーラットは、Harlan Laboratories(レホボト、イスラエル)から得た。動物に標準飼料を給餌し、非制限給水とした。動物を、自動温度制御(20〜24℃)、12時間の明/暗サイクル、及び1時間に15回換気、に保った。
【0080】
実験計画:
試験前24時間ラットを絶食させた(自由給水)。スチールの給餌針でPG又は生理食塩水を胃に導入した。その後、動物にドミトール及びKetasetを注射した;腹壁を切開し、表示時点に胃液(およそ30μl)を針(0,45×13 2006−09 Artsana S.P.A.、Grandate(CO)、イタリア)で穿刺により回収した。胃液は使用するまで−80℃に凍結させた。いくつかの実験ではラットに最初に麻酔してから切開し、その後、試験試薬を直接胃に注射して導入した。更なる実験では、試験試薬の経口導入を行い、その後腹壁を迅速に切開して幽門結紮した(外科用縫合糸及び角針を用いた、Dermalon、Sherwood、Davis&Geck、セントルイス、米国)。その後、記載するように胃内容物を吸引した。
【0081】
実験には以下の処置を受けた動物を含んだ:
A.幽門結紮なし:
200μl生理食塩水中のPG 50μg、経口
50μl生理食塩水中のPG 6μg/Kg、皮下
200μl生理食塩水、経口
B.幽門結紮を伴う試験:
200μl生理食塩水中のPG 50μg、経口
200μl生理食塩水、経口
【0082】
更に他の実験において、前処理として、プロピレングリコールに溶解させた7.5mgのオメプラゾール又は正常生理食塩水を経口強制飼養により投与した。30分後、以下の群にしたがい、動物を経口的に又は直接胃内注入により試験した:
200μl生理食塩水中のPG 50μg、経口
200μl生理食塩水中のPG 50μg、経口及び7.5mgオメプラゾール
【0083】
最後に、安全で有効な治療を可能にするために、ペンタガストリンと組合わせるオメプラゾールの最適用量を見出すためのオメプラゾール用量反応試験を行った。この試験において、動物にペンタガストリン(50μg/kg、直接胃内注入により投与)とともに異なる用量のオメプラゾール(30、10、及び5mg/kg)を与えた。
【0084】
胃液酸性度の測定:
凍結胃液を室温で溶解し、ボルテックスで混合し、14,000rpmで5分間遠心した。試料10μlを40μlの蒸留水で希釈した。pHを測定し、pHメーター(pH211、Hanna Instruments、35030 Sameola di Rubano、イタリア)を用いたpHの測定で決定されるように、試料がpH7に達するまでNaOH(0.001N)を添加した。
【0085】
統計
データを標準誤差とともに示す。結果の有意性はマンホイットニーのノンパラメトリック検定を用いて試験した。
【0086】
A. PGの経口導入
絶食ラットへのPGの経口導入の結果を測定するために、初期実験に着手した。酸分泌測定値は吸収されたPGの効果の代用マーカーとして用いた。図4に示すように、経口PG投与は胃内腔への有意な酸分泌をもたらす。この効果は経口PG投与後30分で最大且つ有意であり(p=0.05)、PGの皮下(SC)投与及び中性の生理食塩水単独対照の曝露後60分の酸性レベルと比較して一貫して上昇したままであった。この観察結果は、驚くべきことに、先に公開された情報に反して、PGは経口投与後、より深い胃粘膜層まで生物学的に利用可能であることを示唆した。
【0087】
PGの吸収は多くの解剖学的部位を介して起こるであろう。したがって、ペプチドは直接胃から吸収されるかもしれない。あるいは、多くのペプチドが正常に吸収される部位である小腸からの吸収後に、血流を介して胃粘膜層に到達するかもしれない。PGが胃内腔から吸収されるかどうかを評価するため、幽門結紮ラットへ投与後、酸分泌に対する効果を試験した。図5A及び5Bに示すように、結紮された胃へのPG経口投与は有意な胃酸分泌を誘導した:PG投与後、生理食塩水と比較して、全ての試験時点において初期pHは低下し、胃酸排出は有意に増加した(p<0.05)。この観察は、PGが、おそらく胃粘膜内のガストリン/CCK−Bレセプターに到達することにより、胃内腔を介して直接その効果を発揮したことを示した。
【0088】
胃酸分泌刺激に関して観察された効果は異なる機構で起こり得る。PGは胃の酵素によって分解され、産生する遊離アミノ酸が酸分泌を直接刺激するかもしれない。あるいは、完全長ペプチドが実際に胃内腔から吸収され、ECL細胞及び壁細胞上のCCK−Bレセプターに対してその効果を発揮するかもしれない。関連して、先の研究は、CCK−Bレセプターの刺激が膵インスリン分泌をもたらし得ることを証明した(Abrenら、Diabetologia 81、20(1):54−9)。更なる研究は、ガストリン及びペンタガストリンのレセプターであるCCK−Bが、膵で発現される優性型であることを証明した(Funakoshi,A.ら、Digestion 1999 60 suppl.1:75−80;Nishimori,I.ら、Pancrease 1999 19(2):109−13)。血中グルコースレベルは末梢インスリンの活性に影響するため、PG又は生理食塩水の投与後、幽門結紮ラットのグルコースレベルを測定した。これら測定値は、ECL細胞及び壁細胞上のCCK−Bレセプターの活性化を介したPG誘導インスリン放出の代用マーカーとして役立つ。図6に示すように、経口経路でPG処理された動物において、対照と比較し、血中グルコースレベルが減少した。この観察は、PGが完全なまま吸収され、それにより胃組織に直接効果を発揮し、胃酸分泌を刺激するという考えを支持する。このデータはPGがin vivo条件下で粘膜層に完全なまま浸透できることを証明するため、特に重要である。総合すると、これらの研究は、最近のモデルに反し、驚くべきことに、PGが胃粘膜を通して直接、完全なまま吸収されることを証明している。
【0089】
B. PG及びオメプラゾールの同時投与
示されるように、オメプラゾールとPG又はセルレインとの組合わせは、H.ピロリ根絶の有力な手段である。更に、PPI剤は現在、H.ピロリ根絶の標準療法として受容されている。したがって、発明者らは、これら薬剤の同時投与の酸分泌に対する効果を試験した。この情報は、このような組合わせ治療の安全性の評価に不可欠なものである。プロピレングリコールに懸濁したオメプラゾール又は生理食塩水でラットを前処理し、その後PG、又はPGとオメプラゾールを動物に与えた。齧歯類におけるPPIのT1/2はおよそ15分であるため(Regardhら、Scand.J.Gastroenterol.Suppl.1985 108:79−9)、7.5mgのオメプラゾールをPG投与前30分に与えた。胃腸管からのオメプラゾールの吸収に関して評価された時間を考慮すると、この実験経過は、PGがその酸刺激効果を発揮する一方で、有効用量のオメプラゾールが可能になることが予見された。図7A及び7Bからわかるように、経口オメプラゾールによる前処理は胃酸分泌を有意に阻害した(p<0.05)。この効果は刺激後10分及び30分に見られた。酸分泌抑制はPGの前30分にオメプラゾールを与えたときに意味深い。しかしながら、オメプラゾールと同時のPG投与もPG単独投与と比較して酸分泌を抑制した。したがって、動物に生理食塩水のみを与え、30分後、オメプラゾール及びPGを投与したとき、酸分泌はPG単独群よりも低かった(おそらく、動物数が少なかったために結果は統計的有意性に達しなかった[p=0.07]が、傾向はそのような結果と一致した)。オメプラゾールを前供与した動物における酸分泌のより強力な阻害は、単にPPIの2倍用量によるものかもしれない。このような可能性は、異なる用量のオメプラゾール(30、10、及び5mg/kg)をペンタガストリン(200μg/kg、前処理なし)と組合わせて経口投与すると用量と反応の良好な相関を示した図8に示す結果に支持される。これらの観察は、標準的なPPI剤との同時療法は潰瘍のクレーターの治癒に必要な好適なpHを可能にするため、PG投与によるH.ピロリ感染治療の実現可能性を支持するものである。
【実施例6】
【0090】
PGのpH依存的溶解
PGの経口投与成功の主な要因は、胃内環境に広がる条件下での送達の最適化である。図9Aに種々のpH条件下におけるペンタガストリンの溶解性の結果を示す。結果は、PPI処理後に起こることが期待される値を含めて、胃内環境の関連代謝pH値の勾配に関係して示されている。NAClを伴うpH1.2における最低レベルの溶解度は40ppmであり(全ての実験はこの濃度で行った)、pH値が段階的に上昇するとともに顕著な増加が観察された。これらの結果は、オメプラゾール又は胃液のpHを上昇させる他の化合物ととともに、PGを経口投与する実現可能性を更に支持する。
【実施例7】
【0091】
PGの酸依存的及びペプシン依存的分解
酵素分解の効果を試験するために、pH1.2及び3.5、37℃においてペプシンなしでPGのHCL依存的分解を試験した。図9Bに示すように、ペプシン非存在下において、反応開始時に激しい分解が見られ、ペンタガストリンの最大喪失は40%であった。主な分解産物(全産物の>80%)は、BOCのないペンタペプチドの標準に対応する(RT=8.83)。そのような断片はH.ピロリの根絶に依然として活性であろう。
【0092】
分光光度計(USP)を用いてペプシン沈殿を試験した。この沈殿条件下で、ほぼ100%のペプシン沈殿が観察された。HPLCで、時間=0でpH1.2の試料に有機溶媒を添加することにより、ペンタガストリン回収を試験した。7回の実験の平均で、時間=0のペプシン沈殿後、混合物からPGが98.3%回収された。
【0093】
図9Cに示すように、ペプチドの酵素分解はpH及び時間に依存的である。ペプシン活性に最適なpH1.2〜3.5で、結果は非常に類似している。この範囲において、5分、10分、及び15分でそれぞれ30%、50%、及び70%の分解率が観察された。
【0094】
pH6.4で、ペンタガストリンは30分間ほとんど分解しなかった。PPIで処理された胃に最も関連のあるpH4.7で、おそらくペプシンのpK動態のために、ほとんど一貫性のない結果が観察された。それにもかかわらず、平均データは満足のいくものであり、20分のインキュベーション後であっても非分解化合物は50%を越えた。
【0095】
図10はペプシン依存的分解産物のHPLC解析を示す。図からわかるように、この分解の主産物は同定されておらず、RT=12.4分であり、クロマトグラムの疎水性部分(BOC−含有)に関連する。ペンタペプチド、テトラペプチド、又はジペプチドの標準には相関しない。したがって、切断は生物活性なアミノ末端部位で起こり、即ちペプチドはその生物活性を失うことが提唱される。この産物の濃度は図11A及び11Bに示すようにPG分解にしたがい増加する。
【0096】
要約すると、PGは37℃でさまざまな低pHにおいて安定であり;したがって、酸性度単独ではその生物活性を全く変化させないはずである。しかしながら、ペプシン介在分解は非活性代謝産物の産生をもたらすことは明らかである。この代謝産物の産生速度はpH依存的であり、酸性pHにおけるペプシン活性に相関する。有望な事実は、pH>4.5におけるPG分解の動態が生物活性について知る機会を残すことである。このpHは、PPI処理下の胃液の生理学的pH範囲内である。加えて、PPI介在効果を模倣するpH下のPGの溶解度には良好な可能性がある。
【0097】
本発明は、上で具体的に示し、説明したものによって限定されないことは当業者に認識されるであろう。むしろ、本発明の範囲は以下の特許請求の範囲により定義される。
【図面の簡単な説明】
【0098】
【図1】図1は、48時間(A)又は5時間(B)インキュベーション後のin vitro細菌増殖に対するPG、セルレイン、又はオメプラゾールの効果を示す。細菌の生存率はCFUカウントにより評価した。
【図2】図2は、PG及びオメプラゾールのin vitro細菌根絶に対する相乗効果を示す。
【図3】図3は、PG、オメプラゾール及びアモキシシリンのin vitro細菌根絶に対する相乗効果を示す。
【図4】図4は、経口投与されたPGが胃酸分泌誘発に有効であることを示す。
【図5】図5は、幽門結紮ラットへのPG経口投与後の胃酸分泌を示す。結果は、PG経口投与後に得られたpH値(A)及び胃酸排出(meqH+/時間)(B)を示す。
【図6】図6は、経口PGで誘発されたラットの血中グルコースレベルを示す。
【図7】図7は、オメプラゾール又は生理食塩水で予め処理されたラットにおけるPG経口投与後の胃酸分泌を示す。10分(A)及び30分(B)に穿刺により胃液を除去し、pH値を測定した。
【図8】図8は、ペンタガストリンと併せたオメプラゾールの用量作用試験を示す。
【図9A】図9Aは、さまざまなpHレベルにおけるペンタガストリンの溶解性を示す。
【図9B】図9Bは、37℃、さまざまなpHにおけるペンタガストリンの安定性を示す。
【図9C】図9Cは、ペプシン存在下、さまざまなpHにおけるペンタガストリンの安定性を示す。
【図10】図10は、PG(トップ)及びPG標準(ボトム)の代謝分解産物のHPLC解析を示す。
【図11】図11は、pH1.2(A)及び4.5(B)におけるPGレベルの減少(−◇−)と分解産物の増加との相関を示す。
【配列表】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヘリコバクター・ピロリ関連疾患を治療及び/又は予防するための方法に関するものであり、特に、H.ピロリの局所胃内根絶が意図される。
【背景技術】
【0002】
かつてストレス、胃酸過多、又は胃粘膜防御因子の減少が原因であると考えられていた消化性潰瘍は、現在、多くの場合ヘリコバクター・ピロリ(H.ピロリ)による細菌感染の結果であると考えられている。消化性潰瘍におけるH.ピロリの関与は、「消化性潰瘍及び胃炎におけるヘリコバクター・ピロリ」、Barry J.Marshall、Richard W.McCallum及びRichard L.Guerraut編、Blackwell Scientific Publications、ボストン、米国に詳しく記載されている。胃潰瘍又は十二指腸潰瘍の長期再発におけるH.ピロリ感染の治療効果は、David Y.GrahamらのAnnals of Internal Medicine 1992;116:No.9に記載されている。
【0003】
H.ピロリはヒト胃粘膜の粘液層内に存在している。胃は非常に低pHであるため、他のほとんどの微生物にとって厳しい環境である。H.ピロリの胃での繁殖能はウレアーゼ産生のような保護機構によるものであり、塩基性の微小環境を作り出すことにより細菌を胃の酸性度から保護する[Taylor DN及びBlaser MJ、Epidemiol Rev(1991)13:42−59]。
【0004】
現在、慢性活動性胃炎及び消化性潰瘍疾患の治療に採用される主な療法には、胃の酸性度を低下させる薬剤、例えば、酸及びペプシンの分泌を抑制するヒスタミンH2−レセプター・アンタゴニスト、並びに壁細胞の酸分泌に関与するH+/K+ ATPアーゼを阻害することで作用するプロトン・ポンプ・インヒビターが含まれる。プロトン・ポンプ・インヒビター(PPI)、例えばオメプラゾール及びその医薬的に許容可能な塩は、例えばEP124495号に開示されている。米国特許第5,093,342号は、オメプラゾールが有効な抗細菌剤としても使用できることを開示している。
【0005】
H.ピロリ感染の他の療法には、ビスマス化合物及び抗生物質が含まれる。しかしながら、最近用いられている治療法は治療後の再発率が上昇しているため、問題のあるものである。加えて、こうした治療のいくつかは重大な副作用を伴う。例えば、H.ピロリ感染の有効な抗生物質処置は、長期にわたる処置を必要とし(1〜2週間)、下痢及び腸の不快感を誘発し得る。ビスマス化合物も、多くの望ましくない重大な副作用を有することが知られている。
【0006】
H.ピロリ感染に対する最近の抗生物質処置は、通常2種の抗生物質と、通常PPI又はH2ブロッカーである補助薬との組合わせから成る。H.ピロリの抗生物質耐性は罹患率を増加させている[Hazell,SL、Eur J Clin Infect Dis(1999)18:83−86]。3剤併用療法(テトラサイクリンとメトロニダゾール及びトリカリウム・ジシトラトビスマセート(tripotassium dicitratobismuthate)(TDB)の組合わせ)は、単剤療法よりも有効であることがわかっているが、患者のコンプライアンス及び薬物耐性が更にその適用可能性を制限している。
【0007】
米国特許第5,196,205号(特許出願WO89/03219号に対応)は、ビスマス化合物、ペニシリンやテトラサイクリンの群に属する抗生物質、及びメトロニダゾールのような第2の抗生物質の投与から成るH.ピロリ感染の治療方法について記載している。したがって、関連療法は、3種の薬物を(各活性成分について1種)1日に数回投与することから成る。
【0008】
米国特許第5,472,695号、第5,560,912号、第5,582,837号、WO92/11848号及びWO96/02237号のように、H.ピロリの根絶に関する単剤療法又は多剤療法を記載する特許又は特許出願は他にも存在する。これらの特許及び特許出願に、活性成分の相互作用の問題を簡便且つ有効な方法で克服するものはない。
【0009】
ヒトホルモンのガストリンは細菌の増殖因子として作用することが本発明者の1人によって以前に示されている(Chowersら、1999、Gastroenterology 1999 117(5):1113−8)。この観察は、ガストリンアナログ、特にペンタガストリン(PG)のようなガストリン分子のC−末端は、ガストリンのH.ピロリ増殖促進作用を阻害し、よってこの細菌の根絶に用いることができるという発見をもたらした。(WO99/65513号)。
【0010】
現在の技術によると、PGは典型的には胃酸分泌機能を評価するための診断剤として用いられている。PGは胃中でペプシン分解されやすく、したがって、PGは経口投与されると不活性であると考えられている。実際、PGの経口投与を受けた4人の健常被験者では酸分泌に対する効果が記載されなかったが、胃腸異常のある3人の更なる患者では多少の効果が記載されている(Morrell&Keynes Lancet.1975 Oct 11;2(7937):712)。これらの発見は、PGの吸収は障害を受けた十二指腸粘膜を通して起こるが、胃からは吸収されないことを示唆している。実際、この研究はPGの経口吸収の欠如を証明するものとして薬理学の教科書に引用されている(Martindale 第32版、p1616、「補足の薬物及び他の物質」の章)。更に、ウシガエルモデルを用いるin vitro研究は、PGを内腔表面に投与したとき胃粘膜に影響しないことを示唆している(Ayalon A.ら、1981 The Am.J.Surg.141:94−97)。
【0011】
WO01/22985号は、胃酸分泌を抑制するため又は利尿薬として、PPIとともにPGを全身使用することについて記載する。この公報によれば、PG及びPPIの組合わせ投与は、過剰胃酸分泌を軽減/緩和する上でPPIの有効性を増加させる。この公報は、PG/PPI組合わせプロトコールは、H.ピロリ感染の治療に用いられる抗生物質の生物利用能を高めることで、H.ピロリ感染の治療に用いることができると言及する。PGを経口投与した場合、胃で活性であり得ることはWO01/22985号には開示も示唆もされていない。
【0012】
H.ピロリ感染のようなヘリコバクター種感染の有効な治療の開発は、長い間の切実な必要性を実現させるであろう。PPIと組合わせて経口投与されるPGがH.ピロリ関連疾患の治療に有効であることを示唆又は開示する先行技術文献はない。
【発明の開示】
【0013】
発明の概要
本発明の目的は、ヘリコバクター種感染、特にH.ピロリ感染に関連する病的状態、及び胃酸分泌阻害が必要とされる他の病的状態を治療するための新規方法を提供することである。特に、本発明は、経口投与されたペンタガストリン(PG)が、胃内効果を発揮するのに十分な時間、胃中で安定であるという発見に関係するものである。したがって、経口投与されたPGが胃中で局所抗細菌作用を有することが本明細書に初めて開示される。更に、PPIと組合わせたPGの胃内投与は、H.ピロリ感染の根絶に相乗効果を発揮する。胃中で局所効果を発揮させるのにPGを非経口経路で投与する必要がないという初めての指摘を提供するものであるため、本発見は非常に重要である。
【0014】
1つの側面において、本発明は、ヘリコバクター種感染に関連する病的状態に罹患する被験者を治療するための方法に関するものであり、この方法は、アミノ酸配列Trp−Met−Asp−PheNH2(配列番号1に示す)を含む医薬的に有効量のペプチドを、プロトン・ポンプ・インヒビター(PPI)とともに被験者に投与することを含む。その際、このペプチドは経口投与され、抗細菌作用を発揮するのに十分な時間、胃中で活性である。本発明の方法に使用される好ましいペプチドは、アミノ酸配列βAla−Trp−Met−Asp−PheNH2(配列番号2に示す)を含むPGである。しかしながら、本発明は、他のガストリン又はPGアナログ又はその誘導体の使用も意図するものである。
【0015】
本発明の方法は、PPIとともにPGを経口投与することを包含する。PGは、PPIの前に、同時に、又は後に投与することができる。投与されるPPIが遅延性の腸溶コーティング型である場合、PPI投与はPG投与に先行することが好ましい。投与されるPPIが即時性の非腸溶コーティング型である場合、胃で局所的に作用するPPIがPGとともに抗細菌作用を確実に発揮するために、PG投与はPPI投与に先行してもPPI投与とともに行うのも好ましい。
【0016】
アミノ酸配列βAla−Trp−Met−Asp−PheNH2(配列番号2に示す)を含むPGに加えて、本発明はガストリン又はPGアナログ又はその誘導体の使用も意図するものである。このようなアナログ又は誘導体は当業者に周知である。このような変異体には、限定されるものではないが、ガストリンの34アミノ酸、17アミノ酸、及び14アミノ酸種、並びにセルレインのような変異体を含めた他のペプチドが含まれる。これら短鎖型変異体は、配列番号1に示す活性C端テトラペプチドTrp−Met−Asp−PheNH2を含み、これは完全な薬理活性を有することが文献に報告されている(Tracey及びGregory(1964)Nature(ロンドン)、204:935を参照されたい)。
【0017】
更に含まれるのはガストリン及び/又は短鎖型ガストリンの変異体であり、天然アミノ酸が保存的置換により置換されている。更に含まれるのは、限定されるものではないが例えばPGのN−保護誘導体Boc−βAla−Trp−Met−Asp−PheNH2又はF−Moc−βAla−Trp−Met−Asp−PheNH2を含めたこれら分子の種々のアナログである。ここで、Bocはtert−ブチルオキシカルボニル基であり、Mocはメトキシカルボニルである。
【0018】
更に、ガストリンは、胃腸組織及びCNSに存在する構造的に関連のある神経ペプチドであるコレシストキニン(CCK)分子と構造的に関連があることが注目される(Mutt V.、Gastrointestinal Hormones、Glass G.B.J.、[編]Raven Press、ニューヨーク、p169及びNisson G.、前記、127を参照されたい)。したがって、CCK又はそのアナログ若しくは誘導体は本発明に有用であると考えられる。
【0019】
1つの態様において、本発明は、齧歯動物、ウシ、ウマ、イヌ、ウマ(equine)、非ヒト霊長類又はヒトなどの哺乳動物におけるH.ピロリ感染に関連する病的状態を治療するための方法を提供する。
【0020】
本発明の方法は、単一PG/アナログの使用、又は単一PGの使用に限定されるものではない。ある態様において、2種以上のPPI、及び/又は2種以上PG若しくはそのアナログの組合わせが意図される。
【0021】
ある態様において、1種以上の抗生物質をPPI及びPGとともに投与することが望ましい。したがって、例えばヘリコバクター種感染(例えばヘリコバクター・ピロリ)に関連する潰瘍の治療において、抗生物質は病理の細菌成分を緩和/除去するであろう。
【0022】
H.ピロリは、胃潰瘍、十二指腸潰瘍、胃炎、十二指腸炎、非潰瘍性消化不良及び胃癌のような多発性胃腸病理に関連する微好気性グラム陰性細菌である。したがって、本発明の組合わせは、H.ピロリに関連する胃腸病理の予防及び治療に用いることができる。多くの場合、胃潰瘍はH.ピロリによる細菌感染の結果であると考えられているため、本発明の組合わせは、例えば非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)療法(低用量アスピリンを含む)中の患者、非潰瘍性消化不良の患者、症候性胃食道逆流性疾患(GERD)の患者、急性上部胃腸出血の患者、及びストレス性潰瘍の状態において、胃酸分泌に関連する臨床愁訴に関連する胃腸病理の予防又は治療に用いることができる。更に、本発明の組合わせは、ゾリンジャー−エリソン症候群(ZES)、ウェルナー症候群、及び全身性肥満細胞症のような状態の治療に用いることができる。
【0023】
更に本発明は、PG及びPPIを含む新規経口組成物にかかるものである。この経口組成物は抗生物質を更に含んでいてもよい。そのような経口剤形は、即時放出型又は持続放出型の薬剤のうちの1つ又は両方を含有することができる。経口剤形は、錠剤、カプセル、トローチ、ロゼンジ、水性又は油性の懸濁液、分散性の粉末又は顆粒、エマルジョン、多粒子(multiparticulate)製剤、シロップ、エリキシル等の形態であることができる。
【0024】
1つの態様によれば、経口組成物は単一経口剤形で、好ましくは2層の固形若しくは半固形錠剤又は硬ゼラチンカプセルで、PG及びPPIを含む。単一経口剤形でPG及びPPIを含む経口組成物は、更に抗生物質を含んでいてもよい。本発明の好ましい剤形は、それぞれが特徴的な保護層及び非活性成分を有するオメプラゾール及びPGのビーズを含有するカプセルである。本発明の他の好ましい剤形は、コアに腸溶コーティングされたオメプラゾールを含み、即時放出型コーティング層にPGを含む錠剤である。
【0025】
他の態様によれば、PG、PPI、及び場合により抗生物質を含む経口組成物は、別々の経口剤形である。例えば、PGは経口懸濁液で投与され、PPI及び抗生物質は錠剤又はカプセルで投与されてもよい。他の例において、PG、PPI及び抗生物質は錠剤又はカプセルで投与される。本発明の種々の態様によれば、PPIは腸溶コーティング型で投与しても非腸溶コーティング型で投与してもよい。
【0026】
種々の態様によれば、経口組成物は、充填剤、潤滑剤、胃中でPGの生体接着性を高める薬剤、緩衝薬及び可溶化剤のような賦形剤を更に含む。PGの胃内放出は、制御放出手段、好ましくは胃内保持剤(gastro retentive agent)により持続される。他の態様において、PGの胃内放出は即時性である。
【0027】
好ましい態様によれば、本発明に用いられるPPIは、胃での分解を妨げるため、腸溶コーティングされている。PPIが腸溶コーティングされている場合、PPI顆粒は腸環境に到達したときにのみ吸収されるであろう。他の態様によれば、本発明に用いられるPPIは、胃のH+/K+−ATPアーゼ・ポンプに対する即時作用を可能にするため、非腸溶コーティング型である。他の態様には、PGとともに投与される腸溶コーティング型及び非腸溶コーティング型PPIが含まれる。
【0028】
これら及び更なる態様は、以下の詳細な説明及び実施例から明らかになるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
発明の詳細な説明
本発明は、胃でPGの局所効果を働かせるためにPGを非経口経路で投与する必要がないことを初めて開示する。したがって、オメプラゾールのようなPPIとともに経口投与されるPGは、H.ピロリ感染の根絶、及び胃酸分泌の阻害が必要とされる胃腸の他の病的状態の治療に相乗効果を発揮する。
【0030】
実施例で証明するように、PGはH.ピロリをin vitroで有効に根絶可能である。更に、PGとオメプラゾールのようなPPIとの組合わせは、in vitroで細菌根絶に相乗効果を現した。経口投与後の胃でのPGの局所作用をin vitro及びin vivoで調べた。in vitro実験によれば、非分解PGのかなりの部分が、通常胃に存在する酸性pHで、ペプシンと15分間インキュベーションした後に残る。更に、PPI処置下の胃液のpH範囲内であるpH>4.5で、PG分解の動態が非常に長くなり、胃内の生物活性について観察する機会を残している。in vivo実験はin vitroの結果を確認するものであり、オメプラゾールのようなPPIとともに経口投与されたPGが胃酸分泌の軽減においてPPIの効果と相乗的であることを示した。更に、in vivo実験は、PGが、小腸粘膜を介した血流への吸収によるものではなく、内腔側から胃壁に作用することを現した。したがって、PPIと組合わせて経口投与されるPGは、胃で局所作用を発揮することが可能である。PGの胃内局所作用は、胃でのH.ピロリの根絶及び胃酸分泌の軽減に関与する。
【0031】
本明細書に開示されるように、PGはPPIとともに経口投与される。「とともに」という用語を用いる場合、生物に対する生理活性に少なくともいくらかの時間的重複があるようにPPIとPGが投与されることを意味する。したがって、PPIとPGは同時に及び/又は逐次的に投与することができる。
【0032】
PGは、PPIの前に、同時に、又は後に投与することができる。投与されるPPIが遅延性腸溶コーティング型である場合、PGが胃中で依然として活性であるあいだ、小腸に吸収されるPPIが確実に生物的に利用できるように、PPI投与はPG投与に先行することが好ましい。投与されるPPIが即時性非腸溶コーティング型である場合、胃で局所的に作用するPPIが細菌根絶において確実にPGと相乗的に作用するように、PG投与はPPIに先行するか又はいっしょに投与することが好ましい。
【0033】
したがって、連続的投与において、PPIが投与されるか又は生体内で活性になるとPGが生物に対し生物学的変化を現す限り、PGとPPIの投与のあいだに実質的な遅延(例えば分又は数時間のこともある)があってもよい。
【0034】
好ましい態様によれば、本発明は、アミノ酸配列βAla−Trp−Met−Asp−PheNH2(配列番号2に示す)を含むPGに関するものである。しかしながら、他のガストリン又はPGアナログ又はそれらの誘導体は本発明の範囲内である。そのようなアナログ又は誘導体は当業者に周知である。そのような変異体には、限定されるものではないが、ガストリンの34アミノ酸、17アミノ酸、及び14アミノ酸種、並びに完全な薬理活性を有すると文献に報告されている配列番号1に示す活性C端テトラペプチドTrp−Met−Asp−PheNH2を含む、他の短鎖型変異体が含まれる(Tracey及びGregory(1964)Nature(ロンドン)、204:935を参照されたい)。
【0035】
更に含まれるのは、本来のアミノ酸が保存的置換により置き換わっている、ガストリン及び/又は短鎖型ガストリンの変異体である。更に含まれるのは、例えば、限定されるものではないが、PGのN−保護誘導体を含めたこれら分子の種々のアナログである。PGの好適な保護基には、例えばメトキシメチル(MOM)、β−メトキシエトキシメチル(MEM)、トリアルキルシリル、トリフェニルメチル(トリチル)、tert−ブトキシカルボニル(t−BOC)、エトキシエチル(EE)、f−MOC(メトキシカルボニル)、TROC、等の当該技術分野に公知の標準のヒドロキシル保護基が含まれる。保護基は、当業者に一般に公知の標準方法で除去し、所望のPG誘導体を得ることができる(T.W.Green、有機合成の保護基、第2章、10〜69頁(1981))。
【0036】
更に、ガストリンが、消化管及びCNSに存在するCCK神経ペプチドに、構造的に関連があることが注目される(Mutt V.、Gastrointestinal Hormones、Glass G.B.J.、[編]Raven Press、ニューヨーク、p169及びNisson G.、前記、127を参照されたい)。したがって、内在性ガストリン分泌を刺激するCCK又はそのアナログ又はその誘導体は、本発明の方法に有用であると考えられる。
【0037】
ガストリン、ペンタガストリン、又はアナログは市販されている。更に、合成プロトコールも周知である。したがって、例えば、PGは周知のペプチド合成法を用いて化学的に合成することができる(例えばBarany及びMerrifield、固相ペプチド合成;pp.3−284、ペプチド:解析、合成、生物学.Vol.2:ペプチド合成の特殊法、part a.中;Merrifieldら(1963)J.Am.Chem.Soc.85:2149−2156;並びにStewartら(1984)固相ペプチド合成、第2版 Pierce Chem.Co.、ロックフォード、イリノイ州)。更に、PGは、Boc−Ala残基をテトラペプチドTrp−Met−Asp−PheNH2へ結合させることにより化学的に合成することができる。
【0038】
多くのプロトン・ポンプ・インヒビターが当業者に公知である。したがって、例えば、米国特許第6,093,738号は、プロトン・ポンプ・インヒビターとして有効な新規チアジアゾール化合物を記載している。プロトン・ポンプ・インヒビターとして、欧州特許第322133号及び第404322号はキナゾリン誘導体を開示し、欧州特許第259174号はキノリン誘導体を開示し、そしてWO91/13337号及び米国特許第5,750,531号はピリミジン誘導体を開示する。好適なプロトン・ポンプ・インヒビターは、例えば、EP−A1−174726号、EP−A1−166287号、GB 2 163 747号及びWO90/06925号、WO91/19711号、WO91/19712号、WO94/27988号及びWO95/01977号にも開示されている。一般に、酸小管内で活性化され、H+/K+−アデノシン・トリホスファターゼ(ATPase)プロトン・ポンプの活性を阻害する如何なるプロトン・ポンプ・インヒビターもPGと組合わせて使用できる。特に好ましいPPIには、限定されるものではないが、オメプラゾール、ラベプラゾール、ランソプラゾール及びパントプラゾール、並びにそれらの誘導体又はアナログが含まれる。
【0039】
本発明の剤形に用いられるPPIは、中性又は塩(例えばアルカリ塩)、例えばMg2+、CA2+、NA+、K+又はLi+の塩、好ましくはMg2+塩の形態で用いることができる。更に、適用可能な場合、化合物は、ラセミ型若しくはそのエナンチオマーの形態、又はラセミ化合物若しくは単一エナンチオマーの塩で用いることができる。
【0040】
更に本発明は、PG、PPI及び医薬的に許容可能な担体を含む新規経口組成物に関するものである。経口組成物は、ヘリコバクター種感染(例えばヘリコバクター・ピロリ)に関連する潰瘍を治療するための抗生物質を更に含む。そのような抗生物質は、例えばアモキシシリン、クラリスロマイシン若しくは他のマクロライド、メトロニダゾール及び関連抗生物質、テトラサイクリン、キノロン、リファブチン又はフラゾリドンである。
【0041】
本発明の好ましい態様において、プロトン・ポンプ・インヒビター及びPGを含有する医薬組成物は経口投与される。このような経口剤形は、即時放出型又は持続放出型の薬物の1つ又は両方を含有することができる。経口剤形は、錠剤、カプセル、トローチ、ロゼンジ、水性又は油性の懸濁液、分散性の粉末又は顆粒、エマルジョン、多粒子製剤、シロップ、エリキシル等の形態であり得る。
【0042】
医薬的に許容可能な好適な担体には、限定されるものではないが、水、塩溶液、アルコール、アラビアゴム、植物油、ベンジルアルコール、ポリエチレングリコール、ゲル化物(gelate)、ラクトース、アミロース又はスターチのような炭水化物、タルク ステアリン酸マグネシウム、ケイ酸、粘性パラフィン、香油、脂肪酸のモノグリセリド及びジグリセリド、ペンタエリスリトール脂肪酸エステル、ヒドロキシメチルセルロース、ポリビニルピロリドン等が含まれる。医薬製剤は滅菌され、所望により補助物質、例えば潤滑剤、防腐剤、安定剤、湿潤剤、乳化剤、浸透圧バッファーに影響を与えるための塩、着色剤、着香料及び/又は芳香性物質等と混合することができる。これらは所望により他の活性物質、例えば抗生物質と組合わせることもできる。経口投与に関し、特に好適なのは、錠剤、糖衣錠、リキッド、ドロップ、座薬、又はカプセル、カプレット及びジェルキャップである。経口用途が意図された組成物は、当該技術分野に公知のいずれの方法により調製してもよく、そのような組成物は、錠剤の製造に好適な、不活性で非毒性の医薬賦形剤から成る群より選択される1種以上の薬剤を含有することができる。そのような賦形剤には、例えば、ラクトースのような不活性希釈剤;コーンスターチのような顆粒化剤及び崩壊剤;スターチのような結合剤;並びにステアリン酸マグネシウムのような潤滑剤が含まれる。錠剤はコーティングされていなくてもよく、又はエレガンスのため若しくは活性成分の放出を遅延させるために公知技術によりコーティングされていてもよい。経口用途製剤は、活性成分が不活性希釈剤と混合されている硬ゼラチンカプセルとして存在してもよい。
【0043】
1つの態様によれば、単一経口剤形中にPG及びPPIを含む経口組成物は、好ましくは2層錠又は硬ゼラチンカプセルである。単一経口剤形中にPG及びPPIを含む経口組成物は、更に抗生物質を含んでいてもよい。本発明の好ましい剤形は、それぞれが特徴的保護層及び非活性成分を有するオメプラゾール及びPGのビーズを含有するカプセルである。
【0044】
他の態様によれば、PG、PPIそして場合により抗生物質を含む経口組成物は、異なる経口剤形中にある。例えば、1つの好ましい態様によれば、PGは経口溶液で投与され、PPI及び抗生物質は錠剤又はカプセルで投与してもよい(硬ゼラチンカプセル又は軟ゼラチンカプセル)。他の好ましい態様によれば、PG、PPI及び抗生物質は錠剤又はカプセルで投与される(硬ゼラチンカプセル又は軟ゼラチンカプセル)。活性成分を錠剤又はカプセルに製剤化する場合、PGの生体接着性を高めるために生体接着剤を導入することが好ましい。例えば、PGは顆粒化してもよく、又はカルボポール、ユードラジット(登録商標)(メタクリル酸コポリマー)、CMC、キトサン誘導体、デキストラン誘導体又はポリオックスのような生体接着性ポリマーとともにマイクロスフェアを調製してもよい。
【0045】
種々の態様によれば、本発明に用いるPPIは、腸溶コーティング型を用いる場合、小腸で吸収されることができる。あるいは、PPIは非コーティング型でもよく、この場合、胃壁内腔に直接作用する。好ましい態様によれば、本発明に用いるPPI顆粒は、胃での分解を妨げるために、例えばユードラジットを用いて腸溶コーティングされる。この場合、コーティングされたPPI顆粒は、pH5以上の小腸環境に到達したときに即座に分解されるであろう。
【0046】
好適な腸溶ポリマーの例には、酢酸フタル酸セルロース、フタル酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース、酢酸フタル酸ポリビニル、メタクリル酸コポリマー、シェラック、コハク酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース、酢酸トリメリト酸セルロース、及びこれらのいずれかの混合物が含まれる。好適な市販の腸溶材料は、例えば上で定義したようなユードラジットTML 100−555という商標の固体である。このコーティングは、本発明のこの態様の他の層に関して先に言及したように、基剤に対して噴霧コーティングすることができる。プロトン・ポンプ・インヒビターと酸性胃液の接触を妨げるためのコーティングは、中間分離層なしにプロトン・ポンプ・インヒビターに直接施されることが好ましい。
【0047】
1つの態様によれば、PG、PPI、及び場合により抗生物質を含む単一剤形は、硬ゼラチンカプセルの形態に調製される。1つの例において、アモキシシリンのような抗生物質、PG及びオメプラゾールは、硬ゼラチンカプセルに充填される。硬ゼラチンカプセルは、アビセル(登録商標)として知られる微結晶性セルロースのような充填剤、潤滑剤、PGの生体接着性を高める物質、及び可溶化剤を更に含む。
【0048】
硬ゼラチンカプセルに好ましい潤滑剤は、例えばステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、ラクトス(lactos)、リン酸2カルシウム、コロイド状シリカ及びタルクである。硬ゼラチンカプセルに好ましい可溶化剤は、例えばTween 80、ビタミンE TPGS、スターチ及びクロスカルメロースナトリウムである。
【0049】
他の態様によれば、PG、PPI、及び場合により抗生物質を含む単一剤形は、錠剤の形態に調製される。1つの例において、アモキシシリン(又は他の抗生物質)、ペンタガストリン及びオメプラゾールが2層錠に充填される。好ましい態様によれば、第1層は、好ましくはカルボポール971P及びラクトースのような生体接着性ポリマーの存在下で、PGとともに顆粒化されたアモキシシリンを含む。第2層は、ユードラジットのような腸溶性ポリマーとともに顆粒化されたオメプラゾールを含む。
【0050】
上記薬物の組合わせ及びその混合物を含有する水性懸濁液は、懸濁剤として好適な1種以上の賦形剤、例えば医薬的に許容可能なヒドロキシプロピルメチルセルロースのような合成ゴム又は天然ゴムを有する。油性懸濁液は、上記薬物の組合わせを植物油又は鉱油中に懸濁することにより製剤化することができる。油性懸濁液は、蜜蝋又はセチルアルコールのような増粘剤を含有することができる。甘くしたビヒクルを使用する場合は、シロップ、エリキシルなどを用いることができる。
【0051】
腸溶コーティングされたプロトン・ポンプ・インヒビターを含む多粒子基剤を用いて調製された製剤において、そのような多粒子をPG(例えば粒状又は粉末状)と混合し、それから単位用量に分けることができる。あるいは、プロトン・ポンプ・インヒビターを含有する腸溶コーティングされた基剤は、その後PGでコーティングされることができる(更なる任意のオーバーコーティングはあってもなくてもよい)。あるいは、2つの異なる基剤集団を用いることができ、一方の基剤集団はプロトン・ポンプ・インヒビターでコーティングされた後腸溶コーティングされ、他方の基剤集団はPGを含む。PG含有基剤は、PGでコーティングされた不活性ビーズを含むことができ、またはPGを含有する複数の中間放出マトリックスを含むことができる。その後、2つの基剤集団それぞれの必要量が、例えば錠剤又はゼラチンカプセルに導入されるであろう。
【0052】
基剤が医薬的に許容可能な不活性ビーズを含む場合の態様において、ビーズがコーティングされる前に、薬物を更なる成分と混合することができる。成分には、限定されるものではないが、結合剤、界面活性剤、充填剤、崩壊剤、アルカリ添加物又は他の医薬的に許容可能な成分が単独又は混合物で含まれる。結合材には、例えばヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース及びカルボキシメチルセルロースナトリウムのようなセルロース、ポリビニルピロリドン、糖、スターチ及び粘着特性を有する他の医薬的に許容可能な物質が含まれる。好適な界面活性剤には、医薬的に許容可能な非イオン性又はイオン性の界面活性剤が含まれる。好適な界面活性剤の例は、ラウリル硫酸ナトリウムである。不活性ビーズは、初めにプロトン・ポンプ・インヒビターでコーティングされ、腸溶コーティングでオーバーコーティングされ、そしてPGでコーティングされることができる(更なる任意のオーバーコーティングはあってもなくてもよい)。あるいは、2つの異なるビーズ集団を用いることができ、一方のビーズ集団はプロトン・ポンプ・インヒビターでコーティングされた後に腸溶コーティングされ、他方のビーズ集団はPGでコーティングされている。その後、2つのビーズ集団それぞれの必要量は、例えば錠剤又はゼラチンカプセルに導入されるであろう。
【0053】
あるいは、プロトン・ポンプ・インヒビターは、上記のように、任意にアルカリ化合物と混合し、更に好適な成分と混合することができ(PGはあってもなくてもよい)、その後基剤中に製剤化される。このような基剤は、さまざまなプロセス装置を用いて、押出し/球状化、ボーリング又は圧縮により製造することができる。基剤の大きさは、例えば約0.1〜約4mm、好ましくは約0.1〜約2mmであることができる。あるいは、基剤は追加成分を含んでいてもよい。そのような好適な成分には、充填剤、結合材、潤滑剤、崩壊剤、界面活性剤及び他の医薬的に許容可能な添加物が含まれる。アルカリ化合物は、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム及びアルミニウムのリン酸、炭酸、クエン酸又は他の好適な弱い無機酸若しくは有機酸の塩;水酸化アルミニウム/重炭酸ナトリウム共沈物;アルミニウム、カルシウム及びマグネシウムの水酸化物のような制酸製剤に通常用いられる物質;酸化マグネシウム又は複合物質;トリヒドロキシメチルアミノメタン、塩基性アミノ酸及びそれらの塩のような有機pH緩衝剤、又は他の類似の医薬的に許容可能なpH緩衝物質、のような物質からから選択することができる。あるいは、上記基剤は、噴霧乾燥又は噴霧凝固技術を用いて調製することができる。
【0054】
プロトン・ポンプ・インヒビターのオメプラゾールは、硫黄原子に不斉中心を有する。即ち、2つの光学異性体(エナンチオマー)として存在する。純粋なエナンチオマーそれぞれ、ラセミ混合物(エナンチオマーそれぞれが50%)及び2つのエナンチオマーの等量でない混合物は本発明の医薬製剤に好適である。本発明による多粒子剤形の調製に好適なオメプラゾールの形態は、特定の結晶度、及び本明細書に援用されるWO95/01977号に開示された他の物理特性を有するオメプラゾールのマグネシウム塩であり得る。活性物質の他の好適な形態は、オメプラゾールの単一エナンチオマーのナトリウム、カリウム、マグネシウム及びカルシウムの塩、特に本明細書に援用されるWO94/27988号に記載の結晶形である。
【0055】
基剤に腸溶コーティング層を適用する前に、場合により基剤は1つ以上の分離(中間)層で被覆されてもよいが、好ましい態様において、腸溶コーティングは、分離層を必要とせずにプロトン・ポンプ・インヒビターに直接適用される。
【0056】
1つ以上の腸溶コーティング層は好適なコーティング技術を用いて基剤に適用されることが好ましい。腸溶コーティング層物質は水又は好適な有機溶媒中に分散又は溶解させることができる。腸溶コーティング層ポリマーとして、以下の1種以上を単独で又は組合わせて用いることができる:例えば、メタクリル酸コポリマー、酢酸フタル酸セルロース、フタル酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース、酢酸コハク酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース、酢酸フタル酸ポリビニル、酢酸トリメリト酸セルロース、カルボキシメチルエチルセルロース、シェラック又は他の好適な腸溶コーティング層ポリマーの溶液又は分散液。
【0057】
腸溶コーティング層は、腸溶コーティング層の柔軟性及び硬度のような所望の機械特性を得るために、有効量の医薬的に許容可能な可塑剤を含有することが好ましい。そのような可塑剤は、例えば、限定されるものではないが、トリアセチン、クエン酸エステル、フタル酸エステル、セバシン酸ジブチル、セチルアルコール、ポリエチレングリコール、ポリソルベート又は他の可塑剤である。可塑剤の量は好ましい状態のために最適化される。可塑剤の量は通常腸溶コーティング層ポリマーの10重量%以上、好ましくは15〜50%、より好ましくは20〜50%である。分散剤、着色剤、顔料、ポリマー、例えばポリ(エチルアクリレート、メチルメタクリレート)、抗粘着剤及び消泡剤のような添加剤を腸溶コーティング層に含めることもできる。膜厚を増加させ、添加された影響を受けやすい物質へ酸性の胃液が拡散するのを減少させるために、他の化合物を添加してもよい。
【0058】
上記のように被覆された基剤に、例えば、コーティング・パン、コーティング造粒機のような好適な装置で、あるいはコーティング処理又は積層処理のために水及び/又は有機溶媒を用いた流動床装置で、コーティング法又は積層法により、オーバーコーティングを適用してもよい。好適なオーバーコーティング物質には、糖、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、酢酸ポリビニル、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウムなどが含まれる。可塑剤、着色剤、顔料、充填剤、抗粘着剤及び帯電防止剤のような添加剤、例えばステアリン酸マグネシウム、2酸化チタン、タルク及び他の添加剤をオーバーコーティング層に含めてもよい。
【0059】
次に、腸溶コーティングされた基剤は、錠剤賦形剤と混合され、本発明の多単位錠剤型に圧縮され、あるいは、単位用量として適切な大きさのゼラチンカプセルに導入されることができる。本発明により調製された圧縮された錠剤は、錠剤の滑らかな表面を得るために、更に錠剤の安定性を高めるために、包装及び輸送のあいだ、場合により被膜剤で被覆されている。そのような錠剤コーティング層は、外観のよい錠剤を得るために、抗粘着剤、着色剤及び顔料又は他の添加剤のような添加剤を更に含むことができる。多単位錠剤型を製剤化するためのコンパクション処理(圧縮)は、腸溶コーティングされた基剤の酸耐性に重大な影響を与えてはならない。換言すれば、腸溶コーティング層の柔軟性や硬度のような機械特性、及び厚さは、米国薬局方における腸溶コーティングされた粒子に対する必要性が達成されること、及びペレットを錠剤に圧縮するあいだに酸耐性が10%以上減少しないことを確保する必要がある。
【0060】
ある好ましい態様において、プロトン・ポンプ・インヒビター基剤の腸溶コーティング後にPGが製剤に導入される場合、基剤への腸溶コーティング添加後のPGの添加は、PGの即時性放出及びプロトン・ポンプ・インヒビターの遅延性放出を可能にする。PGは、その放出を遅らせない形態で外部コーティングに存在してもよく、又は上記のような製剤中に別々に導入されてもよい。
【0061】
場合により、上記のような活性成分を含む組成物及び公知の植物油をカプセルに充填することにより、軟ゼラチンカプセルを製造することができる。それぞれ上記のような活性成分を含む錠剤、顆粒又はペレット、及びラクトース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、ポテトスターチ、コーンスターチ、アミロペクチン、セルロース誘導体又はゼラチンのような固体粒状担体をカプセルに充填することにより、硬ゼラチンカプセルも製造することができる。
【0062】
pH依存性コーティングを利用して製剤を得る本発明の製剤は、反復作用効果を付与することもでき、それにより保護されていない薬物、好ましくはPGは腸溶コーティングに対して被覆され、胃で放出される。一方、好ましくはプロトン・ポンプ・インヒビターを含有する残りは腸溶コーティングによって保護されており、胃腸管の更に下部で放出される。pH依存性のコーティングは、シェラック、酢酸フタル酸セルロース(CAP)、酢酸フタル酸ポリビニル(PVAP)、フタル酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース、及びメタクリル酸エステルコポリマー、ゼインなどを含めて本発明により使用することができる。
【0063】
ある好ましい態様において、プロトン・ポンプ・インヒビター及びPGを含有する基剤(例えば錠剤コアビーズ、マトリックス粒子)は、(i)アルキルセルロース;(ii)アクリル酸ポリマー;又は(iii)それらの混合物より選択される疎水性物質で被覆される。コーティングは、有機性又は水性の溶液又は分散液の形態で適用することができる。コーティングを基剤の約2〜約25%増量するために適用し、所望の徐放性放出プロファイルを得ることができる。
【0064】
上記成分に加えて、マトリックスは好適量の他の物質、例えば医薬分野に慣用の希釈剤、潤滑剤、結合剤、造粒補助剤、着色剤、着香料及び流動促進剤を含有することもできる。これら追加物質の量は所望の効果を所望の製剤に提供するのに十分なものであろう。経口剤形を製剤するのに用いることができる医薬的に許容可能な担体及び賦形剤の特定の例は、本明細書に援用される医薬賦形剤のハンドブック、米国薬学会(1986)に記載されている。
【0065】
マトリックスに添加することができる更なる成分は、本発明の目的のために、薬物のイオン化を減少させ、それによりマトリックスから溶液への薬物の放出を容易にする物質を意味すると定義されるpH変性剤である。好適なpH変性剤はクエン酸、コハク酸、フマル酸、リンゴ酸、マレイン酸、グルタル酸又は乳酸などの有機酸である。
【0066】
典型的な治療剤、特にPPI及びPGの投薬量は、当業者に周知である。更に、そのような投薬量は典型的には事実上助言的なものであり、特定の治療背景、患者の耐容性などに依存して調製することができる。組成物の単一又は複数の投薬量は、患者が必要とし且つ耐容であるような用量及び頻度に依存して投与することができる。
【0067】
好ましい態様において、PG及びPPIは、細菌又は胃酸分泌に対し測定可能な効果を得るのに十分な量で投与することができる。特に、PG及びPPIは、胃酸分泌に有意な減少(例えば、信頼水準90%、より好ましくは95%、最も好ましくは98%又は99%の統計的に有意な減少)をもたらすのに十分な量で投与することができる。
【0068】
同様に、PG及びPPIが抗生物質と組合わせて投与される場合、抗生物質は典型的には実際の臨床に一致した方法及び濃度で投与される。
オメプラゾールの好ましい投薬量は10〜40mg/日であり、ランソプラゾールは典型的には約15〜30mg/日で投与され;ラベプラゾールは典型的には20mg/日で投与され、そしてパントプラゾールは典型的には40mg/日で投与される。しかしながら、これら薬剤のどのような治療的用量又は治療量以下の用量も本発明の範囲内であると考えられる。経口投与されるPGの好ましい投薬量は2.5〜20mg/日、好ましくは5mg/日である。
【0069】
以下の実施例は、本発明のある態様をより完全に説明するためにある。しかしながら、それらは決して本発明の広範な範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。当業者は、本発明の範囲を逸脱することなく、本明細書に開示した原理について多くの変動及び改変を容易に工夫することができる。
【0070】
実施例
方法及び試薬:
本試験に使用するペプチドには、ペンタガストリン(PG)又はセルレイン(シグマ、セントルイス、ミズーリ州、米国)のいずれかを含めた。原液として、ペプチドを酢酸/水(1:1)で1mg/ml濃度に希釈し、その後、最終濃度まで水又は直接培地に希釈した。ある実験では、PGを酢酸/水 1:1及び2.5%DMSO(シグマ)に希釈した。オメプラゾール(Dexxon、Or Akiva、イスラエル)は2.5%DMSOを含むPBSで希釈し、32μg/mlで使用した。
【0071】
使用した細菌株はH.ピロリ株J.99又はH−88(臨床分離株)を含み、チョコレート観点培地プレート(Remel Novamed、エルサレム、イスラエル)上で増殖させた。細菌を溶解し、ガス発生キット(AnaeroPack system、三菱ガス化学株式会社、ニューヨーク、ニューヨーク州、米国)を用いて微好気性条件下で2日間増殖させた。培養後、第2継代を同様条件下で行い、細菌を更に1日増殖させた。実験のため、細菌をPBSで希釈し、その後、0.02OD600の第2継代細菌(>80%が棹状型)を、25cm2組織培養フラスコ(Nunc、ロスキレ、デンマーク)中、適切なペプチドを含有する0.5〜2%非働化ヒト血清含有のブルセラ(ベクトン・ディッキンソン、コッキーズビル、メリーランド州、USA)又はブレインハート(Biolife、ミラノ、イタリア)ブロスへ移した。細菌を48時間まで増殖させた。全ての培養は37℃で行った。OD600値又はCFUカウントを用いて増殖を評価した。他の実験では、第2継代細菌をPBSで洗浄し、その後、0.5OD(最終濃度)を24穴プレート(TPP、スイス)中のF12 HAM培地(Biological industries、Beit Haemek、イスラエル)に再懸濁させた。PG又はセルレインの存在下で細菌を5時間インキュベートした。ペプチドの細菌増殖に対する効果をCFU定量法により評価した。細菌生存率をcellTiter 96 Aqueous細胞増殖アッセイ(プロメガ、マディソン、ウィスコンシン州、USA)で評価した。
【実施例1】
【0072】
PG、セルレイン又はオメプラゾールによる細菌増殖の阻害
予備実験において、PG、セルレイン、及びオメプラゾールのH.ピロリ増殖に対する効果を証明した。この実験において、H.ピロリ(H−88臨床分離株)を、酢酸で希釈したPG及びセルレインを含有する液体培地中で増殖させた。平行して、オメプラゾールの細菌増殖に対する効果も評価した。未処理細菌を対照とした。細菌増殖をCFUカウントで評価した。図1Aからわかるように、両ペプチドは、48時間のインキュベーション中、オメプラゾールと同程度まで細菌増殖を阻害した。これら化合物が、短期培養で、細菌増殖を阻害するだけでなく細菌生存率にも影響するかどうかを評価するために更なる実験を行った。図1Bからわかるように、両ペプチド及びオメプラゾールは、短期培養で同様の効果を有していた。
【実施例2】
【0073】
ペンタガストリン及びオメプラゾールはH.ピロリ増殖を相乗的に阻害する
オメプラゾール又はペンタガストリンはH.ピロリの増殖をin vitroで阻害することが先に示されている。組合わせ投与の効果を調べるため、オメプラゾール、ペンタガストリン又は両方の存在下で細菌増殖を試験した。細菌を1%ヒト血清を有する6mlのブレインハートブロス中に接種し、37℃で18時間、微好気性条件で増殖させた。次に、同様に増殖した培養物全てに90μMオメプラゾール、又は25nMペンタガストリン、又は両方を追加し、更に32時間インキュベートした。化学物質非存在下で培養した細菌培養物を細菌増殖の陽性対照として用いた。処理後6時間、24時間、及び32時間に細菌増殖レベルを分光光度計でモニターした。図2に示すように、オメプラゾール又はペンタガストリンによる単剤処理は細菌増殖に対し中程度の阻害を示した。両薬剤を添加すると増殖が有意に遅延し、オメプラゾールとペンタガストリンとの組合わせはH.ピロリ増殖に対して相乗的阻害作用を有することを示唆した。
【実施例3】
【0074】
ペンタガストリン、オメプラゾール、及びアモキシシリンはH.ピロリ増殖を相乗的に阻害する
H.ピロリ根絶用細菌製剤を最適化するために、アモキシシリンと組合わせて提供されるペンタガストリン及びオメプラゾールの効果を試験した。アモキシシリンは、H.ピロリ治療に用いられる一般に受容された抗生物質である。3剤投与の効果を調べるため、オメプラゾール、ペンタガストリン、アモキシシリンの存在下で細菌増殖を試験し、可能な組合わせを試験した。薬剤非存在下で増殖させた細菌を陰性対照として用いた。処理後18時間、24時間、及び46時間に細菌増殖レベルを分光光度計でモニターした。
【0075】
オメプラゾール、ペンタガストリン、又はアモキシシリンによる単剤処理は、細菌増殖に対して中程度の阻害を示した(図3)。3剤組合わせ処理に細菌を曝すと最も高レベルの阻害を示した。この効果は、単剤処理(PG、OMP、又はAMX)及び2剤処理(PG及びOMP、PG及びAMX、OMP及びAMX)よりも有意に強い(図3)。本結果は、ペンタガストリン、オメプラゾール、及びアモキシシリンを組合わせた治療製剤は、H.ピロリ根絶に最適であると考えられることを意味している。
【実施例4】
【0076】
セルレイン及びオメプラゾールはH.ピロリの根絶に有効である
H.ピロリを、オメプラゾール及びPG又はセルレインの組合わせの存在下でインキュベートし、OD600測定値及び生存率測定値により細菌の増殖を評価した。表1からわかるように、オメプラゾールといずれかの薬剤との組合わせは細菌根絶に高度に有効であった。薬物の組合わせ効果は、代謝生存率アッセイにより5時間後に明らかとなり、殺菌効果を有することを示した。細菌を薬物の組合わせとともに48時間インキュベートした後の類似の効果が注目された。これらの発見は、薬物の組合わせも細菌増殖の阻害に有効であることを示している。
【0077】
【表1】
【実施例5】
【0078】
in vivoで酸分泌を阻害するためのPGとPPIの組合わせ製剤
試薬及び動物:
実験中、以下の試薬を用いた:ケタミンHCL(Ketaset、ファイザーGmbH、カルルスルーエ、ドイツ)、塩酸メデトミジン(ドミトール、ファイザー)、ランソプラゾール(ゾトン、CTS Chemical Industries、Kiryat Malachi、イスラエル)、オメプラゾール(Dexxonより善意供与、Or Akiva、イスラエル)、注射用ペンタガストリン(ケンブリッジ研究所、英国)。水酸化ナトリウムはシグマから得た(セントルイス、米国)。
【0079】
週齢7〜10の雄及び雌ウィスターハノーバーラットは、Harlan Laboratories(レホボト、イスラエル)から得た。動物に標準飼料を給餌し、非制限給水とした。動物を、自動温度制御(20〜24℃)、12時間の明/暗サイクル、及び1時間に15回換気、に保った。
【0080】
実験計画:
試験前24時間ラットを絶食させた(自由給水)。スチールの給餌針でPG又は生理食塩水を胃に導入した。その後、動物にドミトール及びKetasetを注射した;腹壁を切開し、表示時点に胃液(およそ30μl)を針(0,45×13 2006−09 Artsana S.P.A.、Grandate(CO)、イタリア)で穿刺により回収した。胃液は使用するまで−80℃に凍結させた。いくつかの実験ではラットに最初に麻酔してから切開し、その後、試験試薬を直接胃に注射して導入した。更なる実験では、試験試薬の経口導入を行い、その後腹壁を迅速に切開して幽門結紮した(外科用縫合糸及び角針を用いた、Dermalon、Sherwood、Davis&Geck、セントルイス、米国)。その後、記載するように胃内容物を吸引した。
【0081】
実験には以下の処置を受けた動物を含んだ:
A.幽門結紮なし:
200μl生理食塩水中のPG 50μg、経口
50μl生理食塩水中のPG 6μg/Kg、皮下
200μl生理食塩水、経口
B.幽門結紮を伴う試験:
200μl生理食塩水中のPG 50μg、経口
200μl生理食塩水、経口
【0082】
更に他の実験において、前処理として、プロピレングリコールに溶解させた7.5mgのオメプラゾール又は正常生理食塩水を経口強制飼養により投与した。30分後、以下の群にしたがい、動物を経口的に又は直接胃内注入により試験した:
200μl生理食塩水中のPG 50μg、経口
200μl生理食塩水中のPG 50μg、経口及び7.5mgオメプラゾール
【0083】
最後に、安全で有効な治療を可能にするために、ペンタガストリンと組合わせるオメプラゾールの最適用量を見出すためのオメプラゾール用量反応試験を行った。この試験において、動物にペンタガストリン(50μg/kg、直接胃内注入により投与)とともに異なる用量のオメプラゾール(30、10、及び5mg/kg)を与えた。
【0084】
胃液酸性度の測定:
凍結胃液を室温で溶解し、ボルテックスで混合し、14,000rpmで5分間遠心した。試料10μlを40μlの蒸留水で希釈した。pHを測定し、pHメーター(pH211、Hanna Instruments、35030 Sameola di Rubano、イタリア)を用いたpHの測定で決定されるように、試料がpH7に達するまでNaOH(0.001N)を添加した。
【0085】
統計
データを標準誤差とともに示す。結果の有意性はマンホイットニーのノンパラメトリック検定を用いて試験した。
【0086】
A. PGの経口導入
絶食ラットへのPGの経口導入の結果を測定するために、初期実験に着手した。酸分泌測定値は吸収されたPGの効果の代用マーカーとして用いた。図4に示すように、経口PG投与は胃内腔への有意な酸分泌をもたらす。この効果は経口PG投与後30分で最大且つ有意であり(p=0.05)、PGの皮下(SC)投与及び中性の生理食塩水単独対照の曝露後60分の酸性レベルと比較して一貫して上昇したままであった。この観察結果は、驚くべきことに、先に公開された情報に反して、PGは経口投与後、より深い胃粘膜層まで生物学的に利用可能であることを示唆した。
【0087】
PGの吸収は多くの解剖学的部位を介して起こるであろう。したがって、ペプチドは直接胃から吸収されるかもしれない。あるいは、多くのペプチドが正常に吸収される部位である小腸からの吸収後に、血流を介して胃粘膜層に到達するかもしれない。PGが胃内腔から吸収されるかどうかを評価するため、幽門結紮ラットへ投与後、酸分泌に対する効果を試験した。図5A及び5Bに示すように、結紮された胃へのPG経口投与は有意な胃酸分泌を誘導した:PG投与後、生理食塩水と比較して、全ての試験時点において初期pHは低下し、胃酸排出は有意に増加した(p<0.05)。この観察は、PGが、おそらく胃粘膜内のガストリン/CCK−Bレセプターに到達することにより、胃内腔を介して直接その効果を発揮したことを示した。
【0088】
胃酸分泌刺激に関して観察された効果は異なる機構で起こり得る。PGは胃の酵素によって分解され、産生する遊離アミノ酸が酸分泌を直接刺激するかもしれない。あるいは、完全長ペプチドが実際に胃内腔から吸収され、ECL細胞及び壁細胞上のCCK−Bレセプターに対してその効果を発揮するかもしれない。関連して、先の研究は、CCK−Bレセプターの刺激が膵インスリン分泌をもたらし得ることを証明した(Abrenら、Diabetologia 81、20(1):54−9)。更なる研究は、ガストリン及びペンタガストリンのレセプターであるCCK−Bが、膵で発現される優性型であることを証明した(Funakoshi,A.ら、Digestion 1999 60 suppl.1:75−80;Nishimori,I.ら、Pancrease 1999 19(2):109−13)。血中グルコースレベルは末梢インスリンの活性に影響するため、PG又は生理食塩水の投与後、幽門結紮ラットのグルコースレベルを測定した。これら測定値は、ECL細胞及び壁細胞上のCCK−Bレセプターの活性化を介したPG誘導インスリン放出の代用マーカーとして役立つ。図6に示すように、経口経路でPG処理された動物において、対照と比較し、血中グルコースレベルが減少した。この観察は、PGが完全なまま吸収され、それにより胃組織に直接効果を発揮し、胃酸分泌を刺激するという考えを支持する。このデータはPGがin vivo条件下で粘膜層に完全なまま浸透できることを証明するため、特に重要である。総合すると、これらの研究は、最近のモデルに反し、驚くべきことに、PGが胃粘膜を通して直接、完全なまま吸収されることを証明している。
【0089】
B. PG及びオメプラゾールの同時投与
示されるように、オメプラゾールとPG又はセルレインとの組合わせは、H.ピロリ根絶の有力な手段である。更に、PPI剤は現在、H.ピロリ根絶の標準療法として受容されている。したがって、発明者らは、これら薬剤の同時投与の酸分泌に対する効果を試験した。この情報は、このような組合わせ治療の安全性の評価に不可欠なものである。プロピレングリコールに懸濁したオメプラゾール又は生理食塩水でラットを前処理し、その後PG、又はPGとオメプラゾールを動物に与えた。齧歯類におけるPPIのT1/2はおよそ15分であるため(Regardhら、Scand.J.Gastroenterol.Suppl.1985 108:79−9)、7.5mgのオメプラゾールをPG投与前30分に与えた。胃腸管からのオメプラゾールの吸収に関して評価された時間を考慮すると、この実験経過は、PGがその酸刺激効果を発揮する一方で、有効用量のオメプラゾールが可能になることが予見された。図7A及び7Bからわかるように、経口オメプラゾールによる前処理は胃酸分泌を有意に阻害した(p<0.05)。この効果は刺激後10分及び30分に見られた。酸分泌抑制はPGの前30分にオメプラゾールを与えたときに意味深い。しかしながら、オメプラゾールと同時のPG投与もPG単独投与と比較して酸分泌を抑制した。したがって、動物に生理食塩水のみを与え、30分後、オメプラゾール及びPGを投与したとき、酸分泌はPG単独群よりも低かった(おそらく、動物数が少なかったために結果は統計的有意性に達しなかった[p=0.07]が、傾向はそのような結果と一致した)。オメプラゾールを前供与した動物における酸分泌のより強力な阻害は、単にPPIの2倍用量によるものかもしれない。このような可能性は、異なる用量のオメプラゾール(30、10、及び5mg/kg)をペンタガストリン(200μg/kg、前処理なし)と組合わせて経口投与すると用量と反応の良好な相関を示した図8に示す結果に支持される。これらの観察は、標準的なPPI剤との同時療法は潰瘍のクレーターの治癒に必要な好適なpHを可能にするため、PG投与によるH.ピロリ感染治療の実現可能性を支持するものである。
【実施例6】
【0090】
PGのpH依存的溶解
PGの経口投与成功の主な要因は、胃内環境に広がる条件下での送達の最適化である。図9Aに種々のpH条件下におけるペンタガストリンの溶解性の結果を示す。結果は、PPI処理後に起こることが期待される値を含めて、胃内環境の関連代謝pH値の勾配に関係して示されている。NAClを伴うpH1.2における最低レベルの溶解度は40ppmであり(全ての実験はこの濃度で行った)、pH値が段階的に上昇するとともに顕著な増加が観察された。これらの結果は、オメプラゾール又は胃液のpHを上昇させる他の化合物ととともに、PGを経口投与する実現可能性を更に支持する。
【実施例7】
【0091】
PGの酸依存的及びペプシン依存的分解
酵素分解の効果を試験するために、pH1.2及び3.5、37℃においてペプシンなしでPGのHCL依存的分解を試験した。図9Bに示すように、ペプシン非存在下において、反応開始時に激しい分解が見られ、ペンタガストリンの最大喪失は40%であった。主な分解産物(全産物の>80%)は、BOCのないペンタペプチドの標準に対応する(RT=8.83)。そのような断片はH.ピロリの根絶に依然として活性であろう。
【0092】
分光光度計(USP)を用いてペプシン沈殿を試験した。この沈殿条件下で、ほぼ100%のペプシン沈殿が観察された。HPLCで、時間=0でpH1.2の試料に有機溶媒を添加することにより、ペンタガストリン回収を試験した。7回の実験の平均で、時間=0のペプシン沈殿後、混合物からPGが98.3%回収された。
【0093】
図9Cに示すように、ペプチドの酵素分解はpH及び時間に依存的である。ペプシン活性に最適なpH1.2〜3.5で、結果は非常に類似している。この範囲において、5分、10分、及び15分でそれぞれ30%、50%、及び70%の分解率が観察された。
【0094】
pH6.4で、ペンタガストリンは30分間ほとんど分解しなかった。PPIで処理された胃に最も関連のあるpH4.7で、おそらくペプシンのpK動態のために、ほとんど一貫性のない結果が観察された。それにもかかわらず、平均データは満足のいくものであり、20分のインキュベーション後であっても非分解化合物は50%を越えた。
【0095】
図10はペプシン依存的分解産物のHPLC解析を示す。図からわかるように、この分解の主産物は同定されておらず、RT=12.4分であり、クロマトグラムの疎水性部分(BOC−含有)に関連する。ペンタペプチド、テトラペプチド、又はジペプチドの標準には相関しない。したがって、切断は生物活性なアミノ末端部位で起こり、即ちペプチドはその生物活性を失うことが提唱される。この産物の濃度は図11A及び11Bに示すようにPG分解にしたがい増加する。
【0096】
要約すると、PGは37℃でさまざまな低pHにおいて安定であり;したがって、酸性度単独ではその生物活性を全く変化させないはずである。しかしながら、ペプシン介在分解は非活性代謝産物の産生をもたらすことは明らかである。この代謝産物の産生速度はpH依存的であり、酸性pHにおけるペプシン活性に相関する。有望な事実は、pH>4.5におけるPG分解の動態が生物活性について知る機会を残すことである。このpHは、PPI処理下の胃液の生理学的pH範囲内である。加えて、PPI介在効果を模倣するpH下のPGの溶解度には良好な可能性がある。
【0097】
本発明は、上で具体的に示し、説明したものによって限定されないことは当業者に認識されるであろう。むしろ、本発明の範囲は以下の特許請求の範囲により定義される。
【図面の簡単な説明】
【0098】
【図1】図1は、48時間(A)又は5時間(B)インキュベーション後のin vitro細菌増殖に対するPG、セルレイン、又はオメプラゾールの効果を示す。細菌の生存率はCFUカウントにより評価した。
【図2】図2は、PG及びオメプラゾールのin vitro細菌根絶に対する相乗効果を示す。
【図3】図3は、PG、オメプラゾール及びアモキシシリンのin vitro細菌根絶に対する相乗効果を示す。
【図4】図4は、経口投与されたPGが胃酸分泌誘発に有効であることを示す。
【図5】図5は、幽門結紮ラットへのPG経口投与後の胃酸分泌を示す。結果は、PG経口投与後に得られたpH値(A)及び胃酸排出(meqH+/時間)(B)を示す。
【図6】図6は、経口PGで誘発されたラットの血中グルコースレベルを示す。
【図7】図7は、オメプラゾール又は生理食塩水で予め処理されたラットにおけるPG経口投与後の胃酸分泌を示す。10分(A)及び30分(B)に穿刺により胃液を除去し、pH値を測定した。
【図8】図8は、ペンタガストリンと併せたオメプラゾールの用量作用試験を示す。
【図9A】図9Aは、さまざまなpHレベルにおけるペンタガストリンの溶解性を示す。
【図9B】図9Bは、37℃、さまざまなpHにおけるペンタガストリンの安定性を示す。
【図9C】図9Cは、ペプシン存在下、さまざまなpHにおけるペンタガストリンの安定性を示す。
【図10】図10は、PG(トップ)及びPG標準(ボトム)の代謝分解産物のHPLC解析を示す。
【図11】図11は、pH1.2(A)及び4.5(B)におけるPGレベルの減少(−◇−)と分解産物の増加との相関を示す。
【配列表】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
治療を必要とする患者においてヘリコバクター種関連疾患を治療又は予防するための方法であって、治療的に有効量の、配列番号1を含むペプチドを、プロトン・ポンプ・インヒビター(PPI)とともに患者に投与することを含み、該ペプチドは、経口投与され、H.ピロリ関連疾患を治療又は予防するのに十分な時間、胃中で活性である、前記方法。
【請求項2】
ペプチドがガストリンの断片又はガストリンの合成アナログである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ペプチドがペンタガストリン(PG)、又はその活性断片、又はその合成アナログである、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
ペプチドが、メトキシメチル(MOM)、β−メトキシエトキシメチル(MEM)、トリアルキルシリル、トリフェニルメチル(トリチル)、TIPSO、tert−ブトキシカルボニル(t−BOC)、エトキシエチル(EE)、F−MOC、及びTROCから選択される、PGのN−保護誘導体である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
ヘリコバクター種関連疾患がヘリコバクター種関連胃腸疾患である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
胃腸疾患が、胃潰瘍、十二指腸潰瘍、胃炎、十二指腸炎、非潰瘍性消化不良及び胃癌から選択される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
ペプチドが、PPI投与と同時に、前に又は後に投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
PPIが:ラベプラゾール、オメプラゾール、イソメプラゾール、ランソプラゾール、パントプラゾール、レミノプラゾール、それらの単一エナンチオマー、それらのアルカリ塩及びそれらの混合物から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
ヘリコバクター種がヘリコバクター・ピロリである、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
医薬的に有効量のペンタガストリン(PG)、その活性断片、又はPGの合成アナログを含む経口医薬組成物であって、PG、その活性断片、又はPGの合成アナログが配列番号1を含み、経口投与に好適な形態である、前記組成物。
【請求項11】
錠剤、カプセル、溶液、懸濁液、分散液又はエマルジョンの形態である、請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
更にPPIを単位剤形で含む、請求項10に記載の組成物。
【請求項13】
錠剤又はカプセルの形態である、請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
錠剤が2層錠であり、第1層がPGを含み、第2層がPPIを含む、請求項13に記載の組成物。
【請求項15】
PPIがラベプラゾール、オメプラゾール、ランソプラゾール及びパントプラゾールから選択される、請求項12に記載の組成物。
【請求項16】
錠剤又はカプセルが、放出制御製剤、生体接着性ポリマー、腸溶剤、プロテアーゼ・インヒビター又は抗生物質を更に含む、請求項13に記載の組成物。
【請求項17】
PPIが腸溶コーティング型又は非腸溶コーティング型に粒状化される、請求項15に記載の組成物。
【請求項18】
配列番号1を含むペプチドをプロトン・ポンプ・インヒビター(PPI)とともに哺乳動物に投与することを含む、胃酸分泌を阻害することにより哺乳動物の病理を治療するための方法であって、該ペプチドは、経口投与され、胃酸分泌を阻害するのに十分な時間胃中で活性であり、それにより病理を治療する、前記方法。
【請求項19】
ペプチドがガストリンの断片又はガストリンの合成アナログである、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
ペプチドがペンタガストリン(PG)、その活性断片、又はPGの合成アナログである、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
ペプチドが、メトキシメチル(MOM)、β−メトキシエトキシメチル(MEM)、トリアルキルシリル、トリフェニルメチル(トリチル)、TIPSO、tert−ブトキシカルボニル(t−BOC)、エトキシエチル(EE)、F−MOC、及びTROCから選択される、PGのN−保護誘導体である、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
病理が:逆流性食道炎、胃炎、十二指腸炎、胃潰瘍、十二指腸潰瘍、非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)に関連する病理、非潰瘍性消化不良、胃食道逆流性疾患、急性上部胃腸出血、ストレス性潰瘍、ヘリコバクター感染、ゾリンジャー−エリソン症候群(ZES)、ウェルナー症候群、及び全身性肥満細胞症から成る群より選択される、請求項18に記載の方法。
【請求項23】
哺乳動物がヒトである、請求項18に記載の方法。
【請求項24】
ペプチドが、PPI投与と同時に、前に又は後に投与される、請求項18に記載の方法。
【請求項25】
PPIが:ラベプラゾール、オメプラゾール、イソメプラゾール、ランソプラゾール、パントプラゾール、レミノプラゾール、それらの単一エナンチオマー、それらのアルカリ塩及びそれらの混合物から選択される、請求項18に記載の方法。
【請求項1】
治療を必要とする患者においてヘリコバクター種関連疾患を治療又は予防するための方法であって、治療的に有効量の、配列番号1を含むペプチドを、プロトン・ポンプ・インヒビター(PPI)とともに患者に投与することを含み、該ペプチドは、経口投与され、H.ピロリ関連疾患を治療又は予防するのに十分な時間、胃中で活性である、前記方法。
【請求項2】
ペプチドがガストリンの断片又はガストリンの合成アナログである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ペプチドがペンタガストリン(PG)、又はその活性断片、又はその合成アナログである、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
ペプチドが、メトキシメチル(MOM)、β−メトキシエトキシメチル(MEM)、トリアルキルシリル、トリフェニルメチル(トリチル)、TIPSO、tert−ブトキシカルボニル(t−BOC)、エトキシエチル(EE)、F−MOC、及びTROCから選択される、PGのN−保護誘導体である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
ヘリコバクター種関連疾患がヘリコバクター種関連胃腸疾患である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
胃腸疾患が、胃潰瘍、十二指腸潰瘍、胃炎、十二指腸炎、非潰瘍性消化不良及び胃癌から選択される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
ペプチドが、PPI投与と同時に、前に又は後に投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
PPIが:ラベプラゾール、オメプラゾール、イソメプラゾール、ランソプラゾール、パントプラゾール、レミノプラゾール、それらの単一エナンチオマー、それらのアルカリ塩及びそれらの混合物から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
ヘリコバクター種がヘリコバクター・ピロリである、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
医薬的に有効量のペンタガストリン(PG)、その活性断片、又はPGの合成アナログを含む経口医薬組成物であって、PG、その活性断片、又はPGの合成アナログが配列番号1を含み、経口投与に好適な形態である、前記組成物。
【請求項11】
錠剤、カプセル、溶液、懸濁液、分散液又はエマルジョンの形態である、請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
更にPPIを単位剤形で含む、請求項10に記載の組成物。
【請求項13】
錠剤又はカプセルの形態である、請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
錠剤が2層錠であり、第1層がPGを含み、第2層がPPIを含む、請求項13に記載の組成物。
【請求項15】
PPIがラベプラゾール、オメプラゾール、ランソプラゾール及びパントプラゾールから選択される、請求項12に記載の組成物。
【請求項16】
錠剤又はカプセルが、放出制御製剤、生体接着性ポリマー、腸溶剤、プロテアーゼ・インヒビター又は抗生物質を更に含む、請求項13に記載の組成物。
【請求項17】
PPIが腸溶コーティング型又は非腸溶コーティング型に粒状化される、請求項15に記載の組成物。
【請求項18】
配列番号1を含むペプチドをプロトン・ポンプ・インヒビター(PPI)とともに哺乳動物に投与することを含む、胃酸分泌を阻害することにより哺乳動物の病理を治療するための方法であって、該ペプチドは、経口投与され、胃酸分泌を阻害するのに十分な時間胃中で活性であり、それにより病理を治療する、前記方法。
【請求項19】
ペプチドがガストリンの断片又はガストリンの合成アナログである、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
ペプチドがペンタガストリン(PG)、その活性断片、又はPGの合成アナログである、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
ペプチドが、メトキシメチル(MOM)、β−メトキシエトキシメチル(MEM)、トリアルキルシリル、トリフェニルメチル(トリチル)、TIPSO、tert−ブトキシカルボニル(t−BOC)、エトキシエチル(EE)、F−MOC、及びTROCから選択される、PGのN−保護誘導体である、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
病理が:逆流性食道炎、胃炎、十二指腸炎、胃潰瘍、十二指腸潰瘍、非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)に関連する病理、非潰瘍性消化不良、胃食道逆流性疾患、急性上部胃腸出血、ストレス性潰瘍、ヘリコバクター感染、ゾリンジャー−エリソン症候群(ZES)、ウェルナー症候群、及び全身性肥満細胞症から成る群より選択される、請求項18に記載の方法。
【請求項23】
哺乳動物がヒトである、請求項18に記載の方法。
【請求項24】
ペプチドが、PPI投与と同時に、前に又は後に投与される、請求項18に記載の方法。
【請求項25】
PPIが:ラベプラゾール、オメプラゾール、イソメプラゾール、ランソプラゾール、パントプラゾール、レミノプラゾール、それらの単一エナンチオマー、それらのアルカリ塩及びそれらの混合物から選択される、請求項18に記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9A】
【図9B】
【図9C】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9A】
【図9B】
【図9C】
【図10】
【図11】
【公表番号】特表2006−506367(P2006−506367A)
【公表日】平成18年2月23日(2006.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−544577(P2004−544577)
【出願日】平成15年10月9日(2003.10.9)
【国際出願番号】PCT/IB2003/004453
【国際公開番号】WO2004/034957
【国際公開日】平成16年4月29日(2004.4.29)
【出願人】(505138831)ヴェクタ・リミテッド (1)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成18年2月23日(2006.2.23)
【国際特許分類】
【出願日】平成15年10月9日(2003.10.9)
【国際出願番号】PCT/IB2003/004453
【国際公開番号】WO2004/034957
【国際公開日】平成16年4月29日(2004.4.29)
【出願人】(505138831)ヴェクタ・リミテッド (1)
【Fターム(参考)】
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