説明

ベシクル組成物

【課題】pH変化に対する安定性及び保存安定性に優れたベシクル組成物の提供。
【解決手段】次の成分(A)、(B)及び(C):(A)一般式(1)


〔式中、R1は、1個の水酸基を有する天然ステリン若しくはその水素添加物、又は胆汁酸の水酸基の水素原子を除いたあとに残る残基を示し、R2は、炭素数1〜24の2価の炭化水素基を示し、Mは、水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム、総炭素数2〜9のアルカノールアンモニウム、総炭素数1〜22のアルキルアンモニウムもしくはアルケニルアンモニウム、炭素数1〜18のアルキル基もしくはアルケニル基で置換されたピリジニウム、又は塩基性アミノ酸を示す〕で表される有機酸0.0001〜20質量%、(B)スフィンゴシン類0.0001〜10質量%、(C)水を含有し、pH2〜11であるベシクル組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベシクル組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
脂質からなるベシクル又はリポソームは、そのほとんどが両親媒性物質であるリン脂質から構成されている(特許文献1、特許文献2、特許文献3、特許文献4)。リン脂質が天然膜の主要な構造成分であり、脂質ベシクルは天然膜を研究するモデルとして適している。
しかしながら、リン脂質自体が不安定なものであり、酸化防止剤などがないと分解してしまう。また、合成や精製に費用がかかるなどの問題もある。不安定な物質からなるベシクルは、その物自体も不安定であるという問題があった。
【0003】
陰陽どちらかのイオン性からなるベシクル組成物は、pHが変化するとベシクルが壊れ、安定ではなくなる。ベシクル中に有効成分が充填されている場合には、これらがベシクルから放出されてしまう。例えば、肌荒れに有効とされているセラミドのように、結晶性の高い成分をベシクル中で安定化した場合、pHの影響でベシクルが壊れると、セラミドが結晶化してしまい、効果を発揮することができなくなる。また、ベシクル中で安定な有効成分が、pHの影響でベシクルが壊れて放出されれば、有効成分が分解してしまい、効果を得られないなどの問題も生じる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−130651号公報
【特許文献2】特開2006−335651号公報
【特許文献3】特開2001−48721号公報
【特許文献4】特表2009−518297号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、pH変化に対する安定性及び保存安定性に優れたベシクル組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、特定の有機酸とスフィンゴシンを用いれば、pH変化に対する安定性及び保存安定性に優れたベシクル組成物が得られることを見出した。
【0007】
本発明は、次の成分(A)、(B)及び(C):
(A)一般式(1)
【0008】
【化1】

【0009】
〔式中、R1は、1個の水酸基を有する天然ステリン若しくはその水素添加物、又は胆汁酸の水酸基の水素原子を除いたあとに残る残基を示し、R2は、炭素数1〜24の2価の炭化水素基を示し、Mは、水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム、総炭素数2〜9のアルカノールアンモニウム、総炭素数1〜22のアルキルアンモニウムもしくはアルケニルアンモニウム、炭素数1〜18のアルキル基もしくはアルケニル基で置換されたピリジニウム、又は塩基性アミノ酸を示す〕
で表される有機酸 0.0001〜20質量%、
(B)スフィンゴシン類 0.0001〜10質量%、
(C)水
を含有し、pH2〜11であるベシクル組成物を提供するものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明のベシクル組成物は、pHによりベシクル表面電荷が変わっても安定で、保存安定性に優れたものであり、更に、皮膚になじみやすいものである。本発明において皮膚になじみやすいとは、組成物を皮膚に塗布すると速やかに吸収されていく感触であり、皮膚の表面にいつまでも組成物が残る残留感が低く、組成物が皮膚に入っていく感触をいう。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明で用いる成分(A)の有機酸は、前記一般式(1)で表されるものである。
一般式(1)において、R1で示される1個の水酸基を有する天然ステリンとしては、例えば、コレステロール、スチグマステロール、シトステロール、カンペステロール、ラノステロール、エルゴステロール等が挙げられ、その中でもコレステロールが好ましい。
【0012】
また、一般式(1)において、R2は、炭素数1〜24の2価の炭化水素基であり、直鎖又は分岐鎖のアルキレン基又はアルケニレン基が挙げられ、次式
【0013】
【化2】

【0014】
(式中、R3は、炭素数6〜20の直鎖又は分岐鎖のアルキル基又はアルケニル基を示す)で表される基が好ましい(なお、いずれも、*側には、カルボキシル基が結合する)。
【0015】
3としては、直鎖又は分岐鎖の2−ヘキセニル基、2−オクテニル基、2−デセテル基、2−ドデセニル基、2−テトラデセニル基、2−ヘキサデセニル基、2−オクタデセニル基、2−エイコセニル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、テトラデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基、エイコシル基等が挙げられ、その中でも2−テトラデセニル基、2−ヘキサデセニル基、2−オクタデセニル基、2−エイコセニル基、テトラデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基、エイコシル基が好ましい。
【0016】
このような有機酸(1)は、例えば、特開平5−294989号公報に記載の方法に従い、ステリン類をアルケニルコハク酸無水物若しくはアルキルコハク酸無水物と反応させ、必要に応じてアルカリ性物質で中和することにより得ることができる。
【0017】
成分(A)は、1種又は2種以上を用いることができ、全組成中に0.0001〜20質量%含有され、好ましくは0.001〜15質量%、より好ましくは0.01〜10質量%含有される。この範囲内であれば、使用感を損なわずにベシクル組成物が得られる。
【0018】
成分(B)のスフィンゴシン類としては、一般式(2)で表わされる1種又は2種以上のものが挙げられる。
【0019】
【化3】

【0020】
(式中、R1はヒドロキシル基、カルボニル基又はアミノ基が置換していてもよい、炭素数4〜30の直鎖アルキル基を示し;Yはメチレン基、メチン基又は酸素原子を示し;X1、X2、及びX3は各々独立して水素原子、ヒドロキシル基又はアセトキシ基を示し、X4は水素原子、アセチル基又はグリセリル基を示すか、隣接する酸素原子と一緒になってオキソ基を形成し(但し、Yがメチン基のとき、X1とX2のいずれか一方が水素原子であり、他方は存在しない。X4がオキソ基を形成するとき、X3は存在しない。);R2及びR3は各々独立して水素原子、ヒドロキシル基、ヒドロキシメチル基又はアセトキシメチル基を示し;aは2又は3の数を示し;a個のRは各々独立して水素原子又はアミジノ基であるか、ヒドロキシル基、ヒドロキシアルコキシ基、アルコキシ基及びアセトキシ基から選ばれる置換基を有していてもよい総炭素数1〜8の直鎖アルキル基を示し;破線部は不飽和結合であってもよいことを示す。)
【0021】
式中、R1は、ヒドロキシル基、カルボニル基又はアミノ基が置換していてもよい、炭素数4〜30、好ましくはヒドロキシル基が置換していてもよい炭素数7〜24の直鎖アルキル基である。更に、炭素数10〜24の直鎖アルキル基、一般式(2)のYに結合する炭素原子にヒドロキシル基を持つ炭素数10〜24の直鎖アルキル基が好ましい。具体的には、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、1−ヒドロキシトリデシル基、1−ヒドロキシペンタデシル基が好ましい。
【0022】
Yはメチレン基(CH2)、メチン基(CH)又は酸素原子のいずれかを示す。
1、X2、及びX3は、各々独立して水素原子、ヒドロキシル基又はアセトキシ基を示し、X4は水素原子、アセチル基、グリセリル基、隣接する酸素原子と一緒になってオキソ基を形成する置換基を示す。更に、X1、X2、及びX3のうち0〜1個がヒドロキシル基で、残余が水素原子、及びX4が水素原子であるものが好ましい。なお、Yがメチン基のとき、X1とX2のいずれか一方のみが水素原子であり、他方は存在しない。また、X4がオキソ基を形成するとき、X3は存在しない。
【0023】
2及びR3は各々独立して水素原子、ヒドロキシル基、ヒドロキシメチル基又はアセトキシメチル基を示し、更にR3は水素原子であることが好ましい。
【0024】
また、aは2又は3の数を示し、aが2のときRはR4及びR5を示し、aが3のときRはR4、R5及びR6を示す。
【0025】
4、R5及びR6は、各々独立して水素原子又はアミジノ基であるか、ヒドロキシル基、ヒドロキシアルコキシ基、アルコキシ基及びアセトキシ基から選ばれる置換基を有していてもよい総炭素数1〜8の直鎖アルキル基を示す。ここで、アルキル基に置換し得るヒドロキシアルコキシ基としては炭素数1〜7の直鎖又は分岐鎖のヒドロキシアルコキシ基が好ましい。またアルコキシ基としては、炭素数1〜7の直鎖又は分岐鎖のアルコキシ基が好ましい。R4、R5及びR6としては、例えば水素原子;メチル、エチル、プロピル、2−エチルへキシル、イソプロピル等の直鎖又は分岐鎖アルキル基;ビニル、アリル等のアルケニル基;アミジノ基;ヒドロキシメチル、2−ヒドロキシエチル、1,1−ジメチル−2−ヒドロキシエチル、2−ヒドロキシプロピル、2,3−ジヒドロキシプロピル、2−ヒドロキシ−3−メトキシプロピル、2,3,4,5,6−ペンタヒドロキシへキシル、1,1−ビス(ヒドロキシメチル)エチル、2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル、2−メトキシエチル、1−メチル−2−ヒドロキシエチル、3−ヒドロキシプロピル、3−メトキシプロピル、1,1−ビス(ヒドロキシメチル)−2−ヒドロキシエチル等のヒドロキシル基、ヒドロキシアルコキシ基及びアルコキシ基から選ばれる1〜6個が置換した総炭素数1〜8の炭化水素基が挙げられる。
【0026】
更に水素原子、又はメチル基、2−ヒドロキシエチル、1,1−ジメチル−2−ヒドロキシエチル、1,1−ビス(ヒドロキシメチル)エチル、2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル等のヒドロキシル基及びヒドロキシアルコキシ基から選ばれる1〜3個が置換していてもよいアルキル基が好ましい。
【0027】
一般式(2)で表わされるスフィンゴシン類としては、次の一般式(3)で表わされる天然又は天然型スフィンゴシン類、及びその誘導体(以下、天然型スフィンゴシンと記載する。)又は一般式(4)で表わされるスフィンゴシン構造を有する擬似型スフィンゴシン類(以下、擬似型スフィンゴシンと記載する。)から選ばれる1種又は2種以上が好ましい。
(I)一般式(3)で表わされる天然型スフィンゴシン。
【0028】
【化4】

【0029】
(式中、R7はヒドロキシル基が置換していてもよい炭素数7〜24の直鎖アルキル基を示し;Y1はメチレン基又はメチン基を示し;X5、X6及びX7は各々独立して水素原子、ヒドロキシル基又はアセトキシ基を示し、X8は水素原子を示すか、隣接する酸素原子と一緒になってオキソ基を形成し(但し、Y1がメチン基のとき、X5とX6のいずれか一方が水素原子を示し、他方は存在しない。X8がオキソ基を形成するとき、X7は存在しない。);R8はヒドロキシメチル基又はアセトキシメチル基を示し;a個のR1は各々独立して水素原子又はアミジノ基であるか、ヒドロキシル基、ヒドロキシアルコキシ基、アルコキシ基及びアセトキシ基から選ばれる置換基を有していてもよい総炭素数1〜4の直鎖アルキル基を示し;aは2又は3の数を示し;破線部は不飽和結合があってもよいことを示す。)
【0030】
ここでR7としては、炭素数7〜24の直鎖アルキル基が好ましく、更に炭素数13〜24の直鎖アルキル基が好ましい。aは2が好ましく、R1は各々独立して水素原子、又は炭素数1〜4の直鎖アルキル基が好ましい。
【0031】
一般式(3)で表わされる天然型スフィンゴシンとしては、天然のスフィンゴシン、ジヒドロスフィンゴシン、フィトスフィンゴシン、スフィンガジエニン、デヒドロスフィンゴシン、デヒドロフィトスフィンゴシン、及びこれらのN−アルキル体(例えばN−メチル体)から選ばれる1種又2種以上が好ましい。
これらのスフィンゴシンは天然型(D(+)体)の光学活性体を用いても、非天然型(L(−)体)の光学活性体を用いても、更に天然型と非天然型の混合物を用いてもよい。上記化合物の相対立体配置は、天然型の立体配置のものでも、それ以外の非天然型の立体配置のものでも良く、また、これらの混合物によるものでもよい。
更に、PHYTOSPHINGOSINE(INCI名;8th Edition)及び次式で表わされるものから選ばれる1種又は2種以上が好ましい。
【0032】
【化5】

【0033】
これらは、天然からの抽出物及び合成物のいずれでもよく、市販のものを用いることができる。
天然型スフィンゴシンの市販のものとしては、例えば、D-Sphingosine(4-Sphingenine)(SIGMA-ALDRICH社)、DS-phytosphingosine (DOOSAN社)、phytosphingosine(コスモファーム社)が挙げられる。
【0034】
(II)一般式(4)で表わされる擬似型スフィンゴシン。
【0035】
【化6】

【0036】
(式中、R9はヒドロキシル基が置換していてもよい炭素数10〜22の直鎖、分岐鎖又は環状の飽和又は不飽和の炭化水素基を示し;X9は水素原子、アセチル基又はグリセリル基を示し;a個のR2は各々独立して水素原子又はアミジノ基を示すか、ヒドロキシル基、ヒドロキシアルコキシ基、アルコキシ基及びアセトキシ基から選ばれる置換基を有していてもよい総炭素数1〜8の直鎖又は分岐鎖の飽和又は不飽和の炭化水素基を示し、aは2又は3の数を示す。)
【0037】
ここでR9としては、炭素数14〜20のイソ分岐アルキル基が好ましく、特にイソステアリル基が好ましい。イソステアリル基は、動植物油由来の脂肪酸を用いたダイマー酸製造時の副生成物由来のイソステアリルアルコールを原料油として得られるイソステアリル基がもっとも好ましい。
また、aが2のときR2はR21及びR22を示し、aが3のときR2はR21、R22及びR23である。
【0038】
21、R22及びR23 は、例えば水素原子;メチル、エチル、プロピル、2−エチルへキシル、イソプロピル等の直鎖又は分岐鎖のアルキル基;ビニル、アリル等のアルケニル基;アミジノ基;ヒドロキシメチル、2−ヒドロキシエチル、1,1−ジメチル−2−ヒドロキシエチル、2−ヒドロキシプロピル、2,3−ジヒドロキシプロピル、2−ヒドロキシ−3−メトキシプロピル、2,3,4,5,6−ペンタヒドロキシへキシル、1,1−ビス(ヒドロキシメチル)エチル、2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル、2−メトキシエチル、1−メチル−2−ヒドロキシエチル、3−ヒドロキシプロピル、3−メトキシプロピル、1,1−ビス(ヒドロキシメチル)−2−ヒドロキシエチル等のヒドロキシル基、ヒドロキシアルコキシ基及びアルコキシ基から選ばれる置換基を有する総炭素数1〜8のアルキル基が挙げられる。
特に、R21及びR22のいずれか1つが水素原子で、他方が2−ヒドロキシエチル、1,1−ジメチル−2−ヒドロキシエチル、1,1−ビス(ヒドロキシメチル)エチル、2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチルである2級アミンが好ましい。
【0039】
擬似型スフィンゴシンとしては、R9がイソステアリル基、X9は水素原子で、R21が水素原子、R22が2−ヒドロキシエチル基、1,1−ビス(ヒドロキシメチル)エチル基、1,1−ジメチル−2−ヒドロキシエチル基、又は2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル基等のヒドロキシル基及びヒドロキシアルコキシ基から選ばれる1〜3個が置換したアルキル基であるものが好ましい。
擬似型スフィンゴシンの具体例としては、次の擬似型スフィンゴシン(i)〜(iv)から選ばれる1種又は2種以上が好ましい。
【0040】
【化7】

【0041】
成分(B)は1種以上を用いることができ、全組成中に0.0001〜10質量%含有され、好ましくは0.001〜5質量%、より好ましくは0.01〜2質量%含有される。この範囲内であれば、使用感を損なうことなくベシクル組成物を得ることができる。
【0042】
本発明において、成分(A)と成分(B)の質量比((A)/(B))は、安定性を向上し、組成物の使用時の皮膚へのなじませやすさを向上する点から、0.001以上50以下であることが好ましく、0.05以上が好ましく、0.1以上がより好ましく、0.5以上がさらに好ましく、30以下がより好ましい。本発明のベシクル組成物のpHが5.5以上の場合、成分(A)と成分(B)の質量比((A)/(B))は、0.05以上20以下がより好ましく、15以下がさらに好ましい。
【0043】
本発明において、成分(C)の水は、全組成中に10〜99質量%含有されるのが好ましく、35〜98質量%含有されるのがより好ましい。
【0044】
本発明のベシクル組成物は、更に(D)セラミド類を含有することができ、安定性により優れるので好ましい。
かかるセラミド類としては、天然型セラミド、擬似型セラミドのいずれでも良く、次の一般式(5)又は(6)で表わされるものから選ばれる1種又は2種以上が好ましい。
(I)一般式(5)で表わされる天然型セラミドは、天然由来のセラミド類又は同構造の合成物であっても良い。
【0045】
【化8】

【0046】
(式中、R11はヒドロキシル基が置換していてもよい炭素数7〜19の直鎖、分岐鎖又は環状の飽和又は不飽和の炭化水素基を示し;Z1はメチレン基又はメチン基を示し;X11、X12、及びX13は各々独立して水素原子、ヒドロキシル基又はアセトキシ基を示し;X14は水素原子を示すか、隣接する酸素原子と一緒になってオキソ基を形成し(但し、Z1がメチン基のとき、X11とX12のいずれか一方が水素原子であり、他方は存在しない。X14がオキソ基を形成するとき、X13は存在しない。);R12はヒドロキシメチル基又はアセトキシメチル基を示し;R13は水素原子を示すか、炭素数1〜4のアルキル基を示し;R14はヒドロキシル基が置換していてもよい炭素数5〜30の直鎖、分岐鎖又は環状の飽和又は不飽和の炭化水素基であるか、又は該アルキル基のω末端に、ヒドロキシル基が置換していてもよい炭素数8〜22の直鎖又は分岐鎖の飽和又は不飽和の脂肪酸がエステル結合したものを示し;破線部は不飽和結合であってもよいことを示す。)
【0047】
好ましくは、R11が炭素数7〜19、更に好ましくは炭素数13〜15の直鎖アルキル基;R14がヒドロキシル基が置換しても良い炭素数9〜27の直鎖アルキル基又はリノール酸がエステル結合した炭素数9〜27の直鎖アルキル基である化合物が挙げられる。また、X14は水素原子を示すか、酸素原子とともにオキソ基を形成するのが好ましい。特に、R14としては、トリコシル、1−ヒドロキシペンタデシル、1−ヒドロキシトリコシル、ヘプタデシル、1−ヒドロキシウンデシル、ω位にリノール酸がエステル結合したノナコシル基が好ましい。
【0048】
天然型セラミドは、スフィンゴシン、ジヒドロスフィンゴシン、フィトスフィンゴシン又はスフィンガジエニンがアミド化されたセラミドType1〜7(例えば、J. Lipid Res., 24:759(1983)の図2、及びJ. Lipid. Res.,35:2069(1994)の図4記載のブタ及びヒトのセラミド類)から選ばれる1種又は2種以上が好ましい。
【0049】
更にこれらのN−アルキル体(例えばN−メチル体)も含まれる。
これらのセラミドは天然型(D(−)体)の光学活性体を用いても、非天然型(L(+)体)の光学活性体を用いても、更に天然型と非天然型の混合物を用いてもよい。上記化合物の相対立体配置は、天然型の立体配置のものでも、それ以外の非天然型の立体配置のものでも良く、また、これらの混合物によるものでもよい。なかでも、CERAMIDE1、CERAMIDE2、CERAMIDE3、CERAMIDE5、CERAMIDE6IIの化合物(以上、INCI、8th Edition)及び次式で表わされるものから選ばれる1種又は2種以上が好ましい。
【0050】
【化9】

【0051】
これらは天然からの抽出物及び合成物のいずれでもよく、市販のものを用いることができる。
このような天然型セラミドの市販のものを用いる場合には、Ceramide I、Ceramide III、Ceramide IIIA、Ceramide IIIB、Ceramide IIIC、Ceramide VI(以上、コスモファーム社)、Ceramide TIC-001(高砂香料社)、CERAMIDE II(Quest International社)、DS-Ceramide VI、DS-CLA-Phytoceramide、C6-Phytoceramide、DS-ceramide Y3S(DOOSAN社)、CERAMIDE2(セダーマ社)から選ばれる1種又は2種以上が好ましい。
【0052】
【化10】

【0053】
(II)一般式(6)で表わされる擬似型セラミド。
【0054】
【化11】

【0055】
(式中、R15は、ヒドロキシル基が置換していてもよい炭素数10〜22の直鎖、分岐鎖若しくは環状の飽和若しくは不飽和の炭化水素基又は水素原子を示し;X15は水素原子、アセチル基又はグリセリル基を示し;R16はヒドロキシル基又はアミノ基が置換していてもよい炭素数5〜22の直鎖、分岐鎖又は環状の飽和又は不飽和の炭化水素基であるか、又は該炭化水素基のω末端に、ヒドロキシル基が置換していてもよい炭素数8〜22の直鎖又は分岐鎖の飽和又は不飽和の脂肪酸がエステル結合したものを示し;R17は水素原子を示すか、ヒドロキシル基、ヒドロキシアルコキシ基、アルコキシ基又はアセトキシ基が置換していてもよい総炭素数1〜30のアルキル基を示す。)
【0056】
16としては、特にノニル、トリデシル、ペンタデシル、ω位にリノール酸がエステル結合したウンデシル基、ω位にリノール酸がエステル結合したペンタデシル基、ω位に12−ヒドロキシステアリン酸がエステル結合したペンタデシル基、ω位にメチル分岐イソステアリン酸がアミド結合したウンデシル基が好ましい。
【0057】
17は、R15が水素原子の場合は、ヒドロキシル基、ヒドロキシアルコキシ基、アルコキシ基又はアセトキシ基が置換していてもよい総炭素数10〜30の、好ましくは総炭素数12〜20のアルキル基であり、R15がヒドロキシル基が置換していてもよい炭素数10〜22の直鎖、分岐鎖又は環状の飽和又は不飽和の炭化水素基である場合には、水素原子を示すか、ヒドロキシル基、ヒドロキシアルコキシ基、アルコキシ基又はアセトキシ基が置換していてもよい総炭素数1〜8のアルキル基を示すものが好ましい。R17のヒドロキシアルコキシ基又はアルコキシ基としては炭素数1〜7のものが好ましい。
【0058】
【化12】

【0059】
一般式(6)としては、R15がヘキサデシル基、X15が水素原子、R16がペンタデシル基、R17がヒドロキシエチル基のもの;R15がヘキサデシル基、X15が水素原子、R16がノニル基、R17がヒドロキシエチル基の擬似型セラミド類から選ばれる1種以上が好ましく、一般式(6)のR15がヘキサデシル基、X15が水素原子、R16がペンタデシル基、R17がヒドロキシエチル基のもの(N−(ヘキサデシロキシヒドロキシプロピル)−N−ヒドロキシエチルヘキサデカナミド)が、さらに好ましい。
【0060】
【化13】

【0061】
成分(D)のセラミドは、成分(A)、(B)及び(C)と混合されることにより、成分(A)、(B)が形成するベシクル構造を安定化させ、保存安定性に寄与する。また、成分(D)のセラミドは、成分(A)、(B)が形成するベシクル構造中に含有されることにより、結晶化が抑制され、安定化することができる。
成分(D)のセラミドは、1種以上を用いることができ、全組成中に0.0001〜50質量%含有されるのが好ましく、0.001〜25質量%含有されるのがより好ましく、0.01〜10質量%含有されるのがさらに好ましい。
【0062】
本発明において、成分(D)と成分(B)の質量比((B)/(D))は、より安定性を向上し、水分の皮膚へのなじませやすさを向上し、使用後の皮膚の水分保持量を高める点から、0.01〜15であることが好ましく、0.05〜10であることがより好ましく、0.05〜5であることがさらに好ましい。
【0063】
本発明のベシクル組成物は、更に(E)コレステロール又はその誘導体を含有することができ、安定性がより向上するので好ましい。
コレステロール誘導体としては、脂肪酸コレステロールエステルが挙げられ、炭素数12〜24の脂肪酸とのコレステロールエステルが好ましい。より具体的には、ラウリン酸コレステリル、パルミチン酸コレステリル、ミリスチン酸コレステリル、オレイン酸コレステリル、イソステアリン酸コレステリル、リノール酸コレステリルから選ばれる1種又は2種以上が好ましい。
【0064】
成分(E)のコレステロール又はその誘導体は、成分(A)、(B)及び(C)と混合されることにより、成分(A)、(B)が形成するベシクル構造を安定化させ、保存安定性に寄与する。
コレステロール又はその誘導体は、1種以上を用いることができ、使用感をさらに良好にする点から、全組成中に0.0001〜10質量%含有されるのが好ましく、0.001〜5質量%含有されるのがより好ましく、0.01〜3質量%含有されるのがさらに好ましい。
【0065】
本発明のベシクル組成物は、更に(F)脂肪酸を含有することができ、安定性が向上するので好ましい。成分(F)の脂肪酸は、油溶性であり、水に溶解してpHが酸性を示す成分(A)及び後述する成分(H)の酸とは相違する。
脂肪酸としては、炭素数8〜30、更に炭素数12〜30の炭化水素基を有するものが好ましく、例えば、イソステアリン酸、オレイン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキン酸、ベヘニン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、モンタン酸、メリシン酸から選ばれる1種又は2種以上が好ましい。
脂肪酸は、使用時のなじませやすさが向上する点から、全組成中に0.0001〜10質量%含有されるのが好ましく、0.001〜5質量%含有されるのがより好ましく、0.01〜3質量%含有されるのがさらに好ましい。
【0066】
本発明の組成物は、pHを調整するため、更に、成分(B)以外の(G)塩基及び/又は成分(A)以外の(H)酸を含有することができる。
成分(G)の塩基としては、特に制限されず、有機塩基であっても無機塩基であっても良い。
有機塩基は、塩基性アミノ酸、アルカノールアミンから選ばれる1種又は2種以上が好ましい。具体的には、L−アルギニン、リジン、ヒスチジン等の塩基性アミノ酸;モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、アミノメチルプロパノール、アミノメチルプロパンジオール、アミノエチルプロパンジオール、トリスヒドロキシメチルアミノエタン等のアルカノールアミンから選ばれる1種又は2種以上が好ましい。
また、無機塩基は、水酸化カルシウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムから選ばれる1種又は2種以上が好ましい。
これらのうち、L−アルギニン、水酸化カルシウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムから選ばれる1種又は2種以上がより好ましい。
【0067】
成分(G)の塩基は、1種又は2種以上を組み合わせて用いることができ、使用感をさらに良好にする点から、全組成中に0〜10質量%含有されるのが好ましく、0.001〜5質量%含有されるのがさらに好ましい。
【0068】
また、成分(H)の酸は、成分(A)以外のもので、有機酸、無機酸のいずれでも良い。
有機酸はモノカルボン酸、ジカルボン酸、オキシカルボン酸、酸性アミノ酸から選ばれる1種又は2種以上が好ましい。具体的には、酢酸、プロピオン酸、酪酸等のモノカルボン酸;コハク酸、フタル酸、フマル酸、シュウ酸、マロン酸、グルタル酸等のジカルボン酸;グリコール酸、クエン酸、乳酸、ピルビン酸、リンゴ酸、酒石酸等のオキシカルボン酸;グルタミン酸、アスパラギン酸等の酸性アミノ酸から選ばれる1種又は2種以上が好ましい。
また、無機酸は、塩酸、硝酸、亜硝酸、硫酸、亜硫酸、リン酸、ホスホン酸、ホスフィン酸から選ばれる1種又は2種以上が好ましい。
これらの中で、酸性アミノ酸及びリン酸から選ばれる1種又は2種以上が好ましい。
【0069】
成分(H)は、1種以上を用いることができ、全組成中に0〜10質量%含有されるのが好ましく、0.001〜5質量%含有されるのがより好ましい。
【0070】
本発明のベシクル組成物の製造方法は、成分(A)及び(B)を含有する油相を加熱混合する工程1と、水溶性成分を含有する成分(C)を混合し攪拌する工程2とを備える。
さらに、前記工程1の後に、成分(G)又は成分(H)を成分(C)の一部に溶解し、前記油相に加えて混合する工程12、工程12の後に冷却する工程13を備えることが好ましい。また、前記工程2の後に、成分(G)又は成分(H)を成分(C)の一部に溶解し、組成物に加えて混合する工程22を備えることができる。なお、これらの場合、成分(C)の含有量は各工程で混合した量の合計量である。また、加熱混合する工程において、加熱温度は、混合する成分のうち最も高い融点以上、100℃以下の温度で加熱することが好ましい。
本発明のベシクル組成物の製造方法は、成分(A)及び(B)を含有する油相を加熱混合する工程1、成分(G)又は成分(H)を成分(C)の一部に溶解し、前記油相に加えて混合する工程12、工程12の後に冷却する工程13、残りの成分(C)を含む水相を混合し攪拌する工程2を備えるのが好ましい。
【0071】
また、本発明のベシクル組成物の製造方法は、前記工程12において、成分(A)及び(B)を含有する油相を混合する工程1の後に、成分(H)を成分(C)の一部に溶解し、前記油相に加えて混合し、好ましくはpH5.5以下に調整し、より好ましくはpH5以下に調整することができる。さらに、前記工程22において、成分(G)を成分(C)の一部に溶解して組成物に加え、pH2〜11に調整することができる。
或いは、前記工程12において、成分(A)及び(B)を含有する油相を混合する工程1の後に、成分(G)を成分(C)の一部に溶解し、前記油相に加えて混合し、好ましくはpHが5.5より大きくなるように調整し、より好ましくはpH7以上に調整することができる。さらに、前記工程22において、成分(H)を成分(C)の一部に溶解して組成物に加え、pH2〜11に調整することができる。
【0072】
本発明のベシクル組成物の製造方法は、工程12が、成分(G)を成分(C)の一部に溶解し、油相に加えて混合し、pHを5.5より大きくなるように調整し、より好ましくはpH7以上に調整する工程であり、工程2の後に、成分(H)を成分(C)の一部に溶解して組成物に加え、pH2〜11に調整する工程22を備えるのが好ましい。
また、工程12が、成分(H)を成分(C)の一部に溶解し、油相に加えて混合し、pHを5.5以下に調整する工程であり、工程2の後に、成分(G)を成分(C)の一部に溶解して組成物に加え、pH2〜11に調整するのが好ましい。
【0073】
成分(H)は、成分(A)以外の酸であって、系を酸性側にシフトさせるとともに、成分(B)をカチオン化させる。この結果、酸性側では、成分(B)が界面活性剤として働き、成分(A)が補助界面活性剤となり、ベシクル構造を形成することができる。
一方、成分(G)は、成分(B)以外の塩基であって、系を塩基性側にシフトさせるとともに、成分(A)をアニオン化させる。この結果、塩基性側では、成分(A)が界面活性剤として働き、成分(B)が補助界面活性剤となり、ベシクル構造を形成することができる。
従って、本件発明においては、酸性、塩基性のいずれでも安定なベシクル構造を形成することが可能である。
【0074】
本発明のベシクル組成物は、pH2〜11であって、皮膚への刺激低減や使用感の点から、好ましくはpH3〜9.5であり、より好ましくはpH4〜8である。安定性をさらに向上する点からベシクル組成物のpHは3以上5.5未満又はpH5.5より大きく9.5以下が好ましく、pH3以上5.2以下又はpH6以上8以下がより好ましい。
なお、本発明において、pHは、pHメーターを用い、25℃で測定する。
【0075】
本発明において、ベシクルが形成していることは、顕微鏡(偏光下)により、マルテーゼクロスが観察されることにより、確認することができる。
【0076】
ベシクルは塩の影響を受けやすいため、水溶性高分子を含有するのが好ましい。
水溶性高分子としては、アルキル基、特に炭素数8〜30のアルキル基を有する水溶性高分子が好ましく、更に、アルキル基を有する(メタ)アクリル酸又は糖骨格を有するものが好ましい。
より具体的には、アクリル酸・メタアクリル酸アルキル共重合体等のアルキル変性カルボキシビニルポリマー;アクリル酸アルキル・メタクリル酸アルキル・ポリオキシエチレン(20)ステアリルエーテル共重合体;特開平9-87130号公報に記載されているアルキル変性セルロース誘導体;ヒドロキシエチルセルロースヒドロキシプロピルステアリルエーテルヒドロキシプロピルスルホン酸ナトリウム等の特開平9-235301号公報、特開平10-292001号公報に記載されている多糖誘導体;特開2006-117746号公報に記載されている多糖誘導体から選ばれる1種又は2種以上が好ましい。
【0077】
このような水溶性高分子は、1種以上を用いることができ、全組成中に0.0001〜10質量%、特に0.01〜5質量%含有されるのが好ましい。
【0078】
本発明のベシクル組成物は、皮膚外用剤、化粧料等として適用することができる。
化粧料とする場合には、前記成分以外に、更に、通常の化粧料に用いられる成分、例えば、油性成分、低級アルコール、保湿剤、酸化防止剤、防腐剤、キレート剤、美白剤、紫外線吸収剤、ビタミン類、植物抽出物、その他各種薬効成分、粉体、香料、色材などを含有することができる。また、上述した実施形態に関し、本発明は、さらに以下のベシクル組成物、製造方法、或いは用途を開示する。
【0079】
[1]次の成分(A)、(B)及び(C):
(A)一般式(1)
【0080】
【化14】

【0081】
〔式中、R1は、1個の水酸基を有する天然ステリン若しくはその水素添加物、又は胆汁酸の水酸基の水素原子を除いたあとに残る残基を示し、R2は、炭素数1〜24の2価の炭化水素基を示し、Mは、水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム、総炭素数2〜9のアルカノールアンモニウム、総炭素数1〜22のアルキルアンモニウムもしくはアルケニルアンモニウム、炭素数1〜18のアルキル基もしくはアルケニル基で置換されたピリジニウム、又は塩基性アミノ酸を示す〕
で表される有機酸 0.0001〜20質量%、
(B)スフィンゴシン類 0.0001〜10質量%、
(C)水
を含有し、pH2〜11であるベシクル組成物。
[2]更に、(D)セラミド類を含有する前記[1]記載のベシクル組成物。
[3]成分(D)が、天然型セラミド及び擬似型セラミドから選ばれる1種又は2種以上であり、好ましくは一般式(5)
【0082】
【化15】

【0083】
(式中、R11はヒドロキシル基が置換していてもよい炭素数7〜19の直鎖、分岐鎖又は環状の飽和又は不飽和の炭化水素基を示し;Z1はメチレン基又はメチン基を示し;X11、X12、及びX13は各々独立して水素原子、ヒドロキシル基又はアセトキシ基を示し;X14は水素原子を示すか、隣接する酸素原子と一緒になってオキソ基を形成し(但し、Z1がメチン基のとき、X11とX12のいずれか一方が水素原子であり、他方は存在しない。X14がオキソ基を形成するとき、X13は存在しない。);R12はヒドロキシメチル基又はアセトキシメチル基を示し;R13は水素原子を示すか、炭素数1〜4のアルキル基を示し;R14はヒドロキシル基が置換していてもよい炭素数5〜30の直鎖、分岐鎖又は環状の飽和又は不飽和の炭化水素基であるか、又は該アルキル基のω末端に、ヒドロキシル基が置換していてもよい炭素数8〜22の直鎖又は分岐鎖の飽和又は不飽和の脂肪酸がエステル結合したものを示し;破線部は不飽和結合であってもよいことを示す。)
で表される天然型セラミド及び一般式(6)
【0084】
【化16】

【0085】
(式中、R15は、ヒドロキシル基が置換していてもよい炭素数10〜22の直鎖、分岐鎖若しくは環状の飽和若しくは不飽和の炭化水素基又は水素原子を示し;X15は水素原子、アセチル基又はグリセリル基を示し;R16はヒドロキシル基又はアミノ基が置換していてもよい炭素数5〜22の直鎖、分岐鎖又は環状の飽和又は不飽和の炭化水素基であるか、又は該炭化水素基のω末端に、ヒドロキシル基が置換していてもよい炭素数8〜22の直鎖又は分岐鎖の飽和又は不飽和の脂肪酸がエステル結合したものを示し;R17は水素原子を示すか、ヒドロキシル基、ヒドロキシアルコキシ基、アルコキシ基又はアセトキシ基が置換していてもよい総炭素数1〜30のアルキル基を示す。)
で表される擬似型セラミドから選ばれる1種又は2種以上である前記[2]記載のベシクル組成物。
[4]成分(D)の含有量が0.0001〜50質量%であって、好ましくは0.001〜25質量%であって、より好ましくは0.01〜10質量%である前記[2]又は[3]記載のベシクル組成物。
【0086】
[5]更に、(E)コレステロール又はその誘導体を含有する前記[1]〜[4]のいずれか1記載のベシクル組成物。
[6]成分(E)の含有量が0.0001〜10質量%であって、好ましくは0.001〜5質量%であって、より好ましくは0.01〜3質量%である前記[5]記載のベシクル組成物。
[7]成分(E)が、コレステロール又は脂肪酸コレステロールエステルであって、好ましくはコレステロール又は炭素数12〜24の脂肪酸コレステロールエステルであって、より好ましくは、コレステロール、ラウリン酸コレステリル、パルミチン酸コレステリル、ミリスチン酸コレステリル、オレイン酸コレステリル、イソステアリン酸コレステリル、リノール酸コレステリルから選ばれる1種又は2種以上である前記[5]又は[6]記載のベシクル組成物。
【0087】
[8]更に、(F)脂肪酸を含有する前記[1]〜[7]のいずれか1記載のベシクル組成物。
[9]成分(F)の含有量が0.0001〜10質量%であって、好ましくは0.001〜5質量%であって、より好ましくは0.01〜3質量%である前記[8]記載のベシクル組成物。
[10]成分(F)が炭素数8〜30の炭化水素基を有するものであって、より好ましくは炭素数12〜30の炭化水素基を有するものであって、さらに好ましくはイソステアリン酸、オレイン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキン酸、ベヘニン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、モンタン酸及びメリシン酸から選ばれる1種又は2種以上である前記[8]又は[9]記載のベシクル組成物。
【0088】
[11]更に、成分(B)以外の(G)塩基及び/又は成分(A)以外の(H)酸を含有する前記[1]〜[10]のいずれか1記載のベシクル組成物。
【0089】
[12]成分(B)が、一般式(2)
【0090】
【化17】

【0091】
(式中、R1はヒドロキシル基、カルボニル基又はアミノ基が置換していてもよい、炭素数4〜30の直鎖アルキル基を示し;Yはメチレン基、メチン基又は酸素原子を示し;X1、X2、及びX3は各々独立して水素原子、ヒドロキシル基又はアセトキシ基を示し、X4は水素原子、アセチル基又はグリセリル基を示すか、隣接する酸素原子と一緒になってオキソ基を形成し(但し、Yがメチン基のとき、X1とX2のいずれか一方が水素原子であり、他方は存在しない。X4がオキソ基を形成するとき、X3は存在しない。);R2及びR3は各々独立して水素原子、ヒドロキシル基、ヒドロキシメチル基又はアセトキシメチル基を示し;aは2又は3の数を示し;a個のRは各々独立して水素原子又はアミジノ基であるか、ヒドロキシル基、ヒドロキシアルコキシ基、アルコキシ基及びアセトキシ基から選ばれる置換基を有していてもよい総炭素数1〜8の直鎖アルキル基を示し;破線部は不飽和結合であってもよいことを示す。)
で表される1種又は2種以上であり、好ましくは天然型スフィンゴシン、擬似型スフィンゴシンから選ばれる1種又は2種以上であり、より好ましくは、天然のスフィンゴシン、ジヒドロスフィンゴシン、フィトスフィンゴシン、スフィンガジニエン、デヒドロスフィンゴシン、式(i)〜(iv)の擬似型スフィンゴシンから選ばれる1種又は2種以上である前記[1]〜[11]のいずれか1記載のベシクル組成物。
【0092】
【化18】

【0093】
[13]成分(A)が、一般式(1)中、R1がコレステロール、スチグマステロール、シトステロール、カンペステロール、ラノステロール、エルゴステロールから選ばれる1種以上であって、好ましくはコレステロールである[1]〜[12]のいずれか1記載のベシクル組成物。
【0094】
[14]成分(A)の含有量が0.001〜15質量%であって、好ましくは0.01〜10質量%である前記[1]〜[13]のいずれか1記載のベシクル組成物。
[15]成分(B)の含有量が0.001〜5質量%であって、好ましくは0.01〜2質量%である前記[1]〜[14]のいずれか1記載のベシクル組成物。
[16]化粧料である前記[1]〜[15]のいずれか1記載のベシクル組成物。
【0095】
[17]成分(A)及び(B)を含有する油相を加熱混合する工程1、成分(B)以外の(G)塩基又は成分(A)以外の(H)酸を成分(C)の一部に溶解し、前記油相に加えて混合する工程12、工程12の後に冷却する工程13、残りの成分(C)を含む水相を混合し攪拌する工程2を備える前記[1]〜[16]のいずれか1記載のベシクル組成物の製造方法。
[18]前記工程12が、成分(G)を成分(C)の一部に溶解し、前記油相に加えて混合し、pHを5.5より大きくなるように調整する工程であり、前記工程2の後に、成分(H)を成分(C)の一部に溶解して組成物に加え、pH2〜11に調整する工程22を備える前記[17]記載のベシクル組成物の製造方法。
[19]前記工程12が、成分(G)を成分(C)の一部に溶解し、前記油相に加えて混合し、pHを7以上に調整する工程である前記[18]記載のベシクル組成物の製造方法。
[20]前記工程12が、成分(H)を成分(C)の一部に溶解し、前記油相に加えて混合し、pHを5.5以下に調整する工程であり、前記工程2の後に、成分(G)を成分(C)の一部に溶解して組成物に加え、pH2〜11に調整する工程22を備える前記[17]記載のベシクル組成物の製造方法。
[21]前記工程12が、成分(H)を成分(C)の一部に溶解し、前記油相に加えて混合し、pHを5以下に調整する工程である前記[20]記載のベシクル組成物の製造方法。
【0096】
[22]皮膚外用剤の製造のための、前記[1]〜[15]のいずれか1記載のベシクル組成物の使用。
[23]化粧料の製造のための、前記[1]〜[15]のいずれか1記載のベシクル組成物の使用。
【実施例】
【0097】
実施例1〜18、比較例1〜2
表1に示す組成の組成物を製造し、pH、ベシクルの状態、保存安定性及び使用時のなじみやすさを評価した。結果を表1に併せて示す。
【0098】
(製造方法)
成分(G)又は成分(H)は、それぞれ成分(C)15質量%の水に溶解する。
実施例1、5、7〜9、12は、成分(A)、(B)、(D)、(E)、(F)及び油性成分を混合し、80℃〜95℃で加熱溶解し、攪拌する。更に、成分(C)水の一部に溶解した成分(G)を加えて均一にした。この後、攪拌しながら25℃まで冷却した。この後、ポリオール類、その他成分及び残部の成分(C)を混合し、攪拌して均一にした。
実施例3、6、10、14は、成分(A)、(B)、(D)、(E)、(F)及び油性成分と混合し、80℃〜95℃で加熱溶解し、攪拌する。更に、成分(C)水の一部に溶解した成分(H)を加えて均一にした。この後、攪拌しながら25℃まで冷却した。この後、ポリオール類、その他成分及び残部の成分(C)を混合し、攪拌して均一にした。
実施例2、13は、成分(A)、(B)、(D)及び(E)を混合し、80℃〜95℃で加熱溶解し攪拌する。更に、成分(C)水の一部に溶解した成分(G)を加えて均一にした。この後、攪拌しながら25℃まで冷却した。この後、ポリオール類、その他成分及び、一部を除く残部の成分(C)を混合し、攪拌して均一にした。更に、成分(C)水の一部に溶解した成分(H)を加えて均一にした。(pHの変化によるベシクルの安定性を確認した。)
実施例4、15、18は、成分(A)、(B)、(D)及び(E)を混合し、80℃〜95℃で加熱溶解し攪拌する。更に、成分(C)水の一部に溶解した成分(H)を加えて均一にした。この後、攪拌しながら、25℃まで冷却した。この後、ポリオール類、その他成分及び、一部を除く残部の成分(C)水を混合し、攪拌して均一にした。更に、成分(C)水の一部に溶解した成分(G)を加えて均一にした。(pHの変化によるベシクルの安定性を確認した。)
実施例11は、各成分を混合し、80℃〜95℃で加熱溶解し攪拌する。この後、攪拌しながら25℃まで冷却した。
実施例16は、成分(A)、(B)、(D)、(E)及び(F)を混合し、80℃〜95℃で加熱溶解し攪拌する。更に、成分(C)水の一部に溶解した成分(H)を加えて均一にした。この後、攪拌しながら25℃まで冷却した。この後、一部を除く残部の成分(C)を混合し、攪拌して均一にした。更に、成分(C)水の一部に溶解した成分(G)を加えて均一にした。(pHの変化によるベシクルの安定性を確認した。)
実施例17は、成分(A)、(B)、(D)、(E)及び(F)を混合し、80℃〜95℃で加熱溶解し攪拌する。更に、成分(C)水の一部に溶解した成分(G)を加えて均一にした。この後、攪拌しながら、25℃まで冷却した。この後、一部を除く残部の成分(C)を混合し、攪拌して均一にした。更に、成分(C)水の一部に溶解した成分(H)を加えて均一にした。(pHの変化によるベシクルの安定性を確認した。)
比較例1は、成分(A)、(D)及び(E)を混合し、80℃〜95℃で加熱溶解し攪拌する。更に、成分(C)水の一部に溶解した成分(G)を加えて均一にした。この後、攪拌しながら25℃まで冷却した。この後、ポリオール類及び一部を除く残部の成分(C)を混合し、攪拌して均一にした。更に、成分(C)水の一部に溶解した成分(H)を加えて均一にした。(pHの変化によるベシクルの安定性を確認した。)
比較例2は、成分(B)、(D)及び(E)を混合し、80℃〜95℃で加熱溶解し攪拌する。更に、成分(C)水の一部に溶解した成分(H)を加えて均一にした。この後、攪拌しながら、25℃まで冷却した。この後、ポリオール類及び一部を除く残部の成分(C)を混合し、攪拌して均一にした。更に、成分(C)水の一部に溶解した成分(G)を加えて均一にした。(pHの変化によるベシクルの安定性を確認した。)
【0099】
(評価方法)
(1)pH:
HORIBA社製、COMPACT pH METER B−212によって25℃で測定を行った。
なお、pHは、実施例1、3、5〜12、14は、各成分を混合し調製直後に測定した。また、実施例2、4、13、15〜18については、最後に混合する成分(G)又は(H)の混合前後で測定した。
【0100】
(2)ベシクルの状態:
ベシクルの観察は、実施例1、3、5〜12、14は、各成分を混合し調製直後に顕微鏡(偏光下)でマルテーゼクロスが観察されることにより、確認した。また、実施例2、4、13、15〜18については、最後に混合する成分(G)又は(H)の混合前後で、顕微鏡(偏光下)でマルテーゼクロスが観察されることにより、確認した。マルテーゼクロスが観察されたものを「○」、マルテーゼクロスが観察されなかったものを「×」とした。
【0101】
(3)保存安定性:
各組成物を、50℃、25℃及び5℃でそれぞれ1週間保存した後、外観を肉眼で観察した。また、ベシクルの有無、結晶の析出を光学顕微鏡で観察した。なお、ベシクルの形成は、顕微鏡で、マルテーゼクロスが観察されることにより、確認した。
結果は、結晶の析出やベシクルの消失が認められず、安定性に優れたいたものは「○」、結晶析出又はベシクルの消失は認められなかったが、粘度等外観の変化が僅かに見られたものは「△」、結晶析出又はベシクルの消失を認め、不安定であるものは「×」で示した。
【0102】
(4)使用時のなじみやすさ:
10名の専門パネラーにより、各乳化組成物約0.1gを手の甲に塗布し、「なじみやすさ」を官能評価した。結果を、「なじみやすい」と評価した人数で示した。
【0103】
【表1】

【0104】
試験例1
実施例1、2、3、6、18及び比較例2の組成物について、水分保持量を評価した。結果を表2に示す。
【0105】
(評価方法)
皮膚の水分量の測定は、前腕部の3部位について、各部位の近傍4カ所の合計12カ所を、コルネオメーター(CORNEOMETER CM825、インテグラル社製)で測定することにより行い、水分量としてコルネオメーターに表示された数値を用いた。はじめに、前腕部を洗顔料(ビオレ洗顔フォーム、花王社製)で洗浄し、水分をとってから10分後に測定した水分量を初期値とした。次に、各組成物を朝、及び入浴後に塗布することを3日間繰り返し、3日後に、上記洗顔料で洗浄し、水分をとってから10分後に水分量を測定した。3日後の水分量の測定値から初期値をひいた数値を水分保持量とした。合計12カ所の水分保持量の平均値を、各組成物の水分保持量とした。
【0106】
【表2】

【0107】
表2に示すように、実施例は比較例に比べ、水分保持量の高い結果が得られた。実施例の組成物は、pHによらず、皮膚への浸透性が極めて高いと考えられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の成分(A)、(B)及び(C):
(A)一般式(1)
【化1】

〔式中、R1は、1個の水酸基を有する天然ステリン若しくはその水素添加物、又は胆汁酸の水酸基の水素原子を除いたあとに残る残基を示し、R2は、炭素数1〜24の2価の炭化水素基を示し、Mは、水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム、総炭素数2〜9のアルカノールアンモニウム、総炭素数1〜22のアルキルアンモニウムもしくはアルケニルアンモニウム、炭素数1〜18のアルキル基もしくはアルケニル基で置換されたピリジニウム、又は塩基性アミノ酸を示す〕
で表される有機酸 0.0001〜20質量%、
(B)スフィンゴシン類 0.0001〜10質量%、
(C)水
を含有し、pH2〜11であるベシクル組成物。
【請求項2】
更に、(D)セラミド類を含有する請求項1記載のベシクル組成物。
【請求項3】
更に、(E)コレステロール又はその誘導体を含有する請求項1又は2記載のベシクル組成物。
【請求項4】
更に、(F)脂肪酸を含有する請求項1〜3のいずれか1項記載のベシクル組成物。
【請求項5】
更に、成分(B)以外の(G)塩基及び/又は成分(A)以外の(H)酸を含有する請求項1〜4のいずれか1項記載のベシクル組成物。
【請求項6】
化粧料である請求項1〜5のいずれか1項記載のベシクル組成物。
【請求項7】
成分(A)及び(B)を含有する油相を加熱混合する工程1、成分(B)以外の(G)塩基又は成分(A)以外の(H)酸を成分(C)の一部に溶解し、前記油相に加えて混合する工程12、工程12の後に冷却する工程13、残りの成分(C)を含む水相を混合し攪拌する工程2を備える請求項1〜6のいずれか1項記載のベシクル組成物の製造方法。
【請求項8】
前記工程12が、成分(G)を成分(C)の一部に溶解し、前記油相に加えて混合し、pHを5.5より大きくなるように調整する工程であり、前記工程2の後に、成分(H)を成分(C)の一部に溶解して組成物に加え、pH2〜11に調整する工程22を備える請求項7記載のベシクル組成物の製造方法。
【請求項9】
前記工程12が、成分(H)を成分(C)の一部に溶解し、前記油相に加えて混合し、pHを5.5以下に調整する工程であり、前記工程2の後に、成分(G)を成分(C)の一部に溶解して組成物に加え、pH2〜11に調整する工程22を備える請求項7記載のベシクル組成物の製造方法。

【公開番号】特開2012−214470(P2012−214470A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−82774(P2012−82774)
【出願日】平成24年3月30日(2012.3.30)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】