説明

ベルトユニット及び画像形成装置

【課題】 転写ベルトを安定的に回転させることが可能なベルトユニット及び画像形成装置を提供する。
【解決手段】 サブフレーム18の揺動中心と駆動ローラ15の回転中心とを一致させた状態でサブフレーム18の長手方向と平行な方向に従動ローラ16を押圧するとともに、転写ベルト14の回転に伴って転写ベルト14が斜行したときに、その斜行を抑制するようにサブフレーム18を揺動させる。これにより、サブフレーム18が揺動した場合であっても、コイルバネ20Bが従動ローラ16に作用させる力は、転写ベルト14の展張面14Aに対して平行となる。したがって、サブフレーム18の状態によらず、直交成分力が発生しないので、サブフレーム18の揺動(挙動)を安定させることができ、転写ベルト14を安定的に回転させることが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベルトユニット、及びこのベルトユニットを用いた画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、カラー画像を形成することが可能な画像形成装置では、基礎となる色(例えば、ブラック、シアン、マゼンタ、イエロー)の現像剤像を重ね合わせることにより、多様な色の画像を形成する。
【0003】
このとき、例えば、ダイレクト方式の画像形成装置では、感光ドラムに担持された現像剤を転写ベルト上を搬送される記録シートに直接的に転写し、記録シート上で複数種類の現像剤像を重ね合わせてカラー画像を記録シートに形成する。
【0004】
また、中間転写方式の画像形成装置では、感光ドラムに担持された現像剤を中間転写ベルトに転写して、中間転写ベルト上で複数種類の現像剤像を重ね合わせた後、その中間転写ベルト上に形成されたカラー画像を記録シートに転写することにより記録シートにカラー画像を形成している。
【0005】
なお、感光ドラムは、基礎となる色毎に設けられるが、通常、これら複数個の感光ドラムは、中間転写ベルト又は転写ベルト(以下、これらのベルトを総称するときは、単に「ベルト」をいう。)の回転方向に沿って直列に並んで配設される。特に、ベルトのうち一対のローラにより張架されて平面状となる部分を展張面という。
【0006】
ところで、上記のような画像形成装置では、転写ベルト上を搬送される記録シート、又は中間転写ベルトに感光ドラムに担持された画像を転写するので、ベルトがその幅方向に移動するように斜行してベルトが斜行してしまうと、複数種類の現像剤像を正確に重ね合わせることができず、良質なカラー画像を形成することができない。
【0007】
因みに、ベルトの幅方向とは、ベルトの回転方向(循環方向)及び厚み方向と直交する方向をいい、通常、ベルトを回転駆動させる駆動ローラの軸方向と一致する。
そこで、特許文献1に記載の発明では、幅方向全域でベルトに接触してベルトと共に従動回転するテンションローラをベルトの斜行状態に応じて駆動ローラに対して傾動させることにより、ベルトの斜行を抑制している。
【0008】
具体的には、特許文献1に記載の発明では、軸方向両端にて駆動ローラを支持するとともにテンションローラ側に延びる一対のフレームのうち、一方のフレームに揺動アームを揺動可能に組み付け、かつ、テンションローラの軸方向一端側を揺動アームの先端側に組み付け、他端側を他方のフレームに組み付けている。
【0009】
そして、ベルトが斜行した際には、そのベルトが斜行しようとする力(以下、斜行力という。)を揺動アームを揺動させる力(以下、この力を斜行力による揺動力という。)に変換し、ベルトの斜行を抑制している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2006−162659号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ところで、特許文献1に記載の発明では、揺動アームの長手方向と平行な方向の弾性力をテンションローラに作用させることによりベルトに張力を付与しているので、揺動アームの長手方向とフレームの長手方向とが平行であるとき、つまり、駆動ローラとテンションローラとが平行であるときには、弾性力の方向と展張面とが平行となり、弾性力の全てが展張面に張力を発生させる力として寄与する。
【0012】
しかし、揺動アームが揺動変位すると、弾性力の方向が展張面に対して交差した方向となるので、展張面に対して直交する方向成分の力(以下、この力を直交成分力という。)が発生してしまい、この直交成分力は、揺動アームを揺動させる力として揺動アームに作用する。
【0013】
このため、特許文献1に記載の発明では、斜行力による揺動力に加えて、直交成分力による揺動力が作用するので、揺動アームの揺動(挙動)が不安定になってしまい、ベルトの斜行を効果的に抑制することが難しい。
【0014】
本発明は、上記点に鑑み、特許文献1に記載の発明と異なる新規な構成にてベルトを安定的に回転させることが可能なベルトユニット及び画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、上記目的を達成するために、無端状のベルト(14)と、ベルト(14)が架け渡され、軸方向が互いに略平行となるように配設された第1ローラ(15)及び第2ローラ(16)と、第1ローラ(15)の回転中心を揺動中心として揺動することができるとともに、第1ローラ(15)側から第2ローラ(16)側に延びて、第2ローラ(16)の軸方向端部側を支持する揺動アーム(18)と、揺動アーム(18)の長手方向と平行な方向であって、かつ、第2ローラ(16)を第1ローラ(15)から離間させる向きの力を第2ローラ(16)に作用させる付勢手段(20B)と、ベルト(14)の回転に伴ってベルト(14)が軸方向に移動するように斜行したときに、その斜行を抑制するように揺動アーム(18)を揺動させる揺動手段(21)とを備えることを特徴とする。
【0016】
これにより、本発明では、揺動アーム(18)の揺動中心と第1ローラ(15)の回転中心とが一致しているので、揺動アーム(18)が揺動した場合であっても、付勢手段(20B)が第2ローラ(16)に作用させる力は、ベルト(14)の展張面に対して平行となる。
【0017】
したがって、本発明では、揺動アーム(18)の状態によらず、直交成分力が発生しないので、揺動アーム(18)の揺動(挙動)を安定させることができ、特許文献1に記載の発明と異なる新規な構成にてベルト(14)を安定的に回転させることが可能となる。
【0018】
さらに、本発明では、揺動アーム(18)の状態によらず直交成分力が発生せず、付勢手段(20B)が第2ローラ(16)に作用させる力の殆ど全てを、ベルト(14)に張力を発生させるための力として付与することができるので、揺動アーム(18)の状態によらず展張面(14A)で発生する張力を一定に保持することができる。
【0019】
なお、「軸方向が互いに略平行となるように第1ローラ(15)及び第2ローラ(16)が配設されている」とは、少なくとも目視にて第1ローラ(15)及び第2ローラ(16)を確認したときに、第1ローラ(15)の軸方向と第2ローラ(16)の軸方向とが平行となっていれば十分である。
【0020】
因みに、上記各手段等の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段等との対応関係を示す一例であり、本発明は上記各手段等の括弧内の符号に示された具体的手段等に限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施形態に係る画像形成装置の中央断面を示す模式図である。
【図2】本発明の実施形態に係るベルトユニットの上面図である。
【図3】本発明の実施形態に係るベルトユニットの左側斜視図である。
【図4】本発明の実施形態に係るベルトユニットの右側斜視図である。
【図5】本発明の第1実施形態に係る揺動機構の斜視図である。
【図6】図5のA矢視図である。
【図7】図5のB矢視図である。
【図8】本発明の実施形態に係る揺動機構が作動した状態を示す図である。
【図9】(a)は駆動ローラ15及び従動ローラ16が互いに平行な場合における上面図であり、(b)は図9(a)の右側面図であり、(c)は従動ローラ16が傾動した状態における上面図であり、(d)は図9(c)の右側面図であり、(e)は図9(c)のA矢視図である。
【図10】(a)及び(b)は本発明の第1実施形態に係るベルトユニット13の特徴を示す図である。
【図11】本発明の第2実施形態に係る揺動機構の特徴を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本実施形態は、本発明に係る画像形成装置をダイレクトタンデム方式の画像形成装置に適用したものであり、以下に本発明の実施形態を図面と共に説明する。
(第1実施形態)
1.画像形成装置の概略構造
画像形成装置1の筐体3内には、図1に示すように、記録用紙やOHPシート等の記録シート(以下、用紙という。)に現像剤像を転写することにより、用紙に画像を形成する電子写真方式の画像形成部5が収納されており、この画像形成部5は、4つのプロセスカートリッジ7、転写ローラ8、露光器9及び定着器11等から構成されている。
【0023】
また、4つのプロセスカートリッジ7は、転写ベルト14の展張面14Aに面するように用紙搬送方向に沿って直列に並んでおり、本実施形態では、搬送方向上流側から順に、ブラック用のプロセスカートリッジ7K、イエロー用のプロセスカートリッジ7Y、マゼンタ用のプロセスカートリッジ7M、及びシアン用のプロセスカートリッジ7Cが配設されている。
【0024】
そして、各プロセスカートリッジ7K〜7Cは、現像剤像が担持される感光ドラム7A、及び感光ドラム7Aを帯電させる帯電器7B等から構成されている。なお、図1においては、紙面の都合上、シアン用のプロセスカートリッジ7Cのみに感光ドラム7A及び帯電器7Bの符号を付した。
【0025】
以上に説明した構成において、帯電した感光ドラム7Aを露光器9にて露光して感光ドラム7Aの外周面に静電潜像を形成した後、電荷を帯びた現像剤(本実施形態では、粉体状のトナー)を感光ドラム7Aに供給すると、感光ドラム7Aの外周面に現像剤像が担持(形成)される。
【0026】
また、展張面14Aを挟んで感光ドラム7Aと対向する位置には、感光ドラム7Aに担持された現像剤を用紙に転写させる転写ローラ8が設けられており、感光ドラム7Aに担持されていた現像剤像は、転写ベルト14上を搬送される用紙に転写される。そして、現像剤像が転写された用紙は、定着器11に搬送されて加熱され、用紙に転写された現像剤像が用紙に溶着(定着)する。
【0027】
2.ベルトユニット
2.1.ベルトユニットの概要
ベルトユニット13は、図2に示すように、転写ベルト14、駆動ローラ15、従動ローラ16、メインフレーム17及びサブフレーム18等から構成されており、このベルトユニット13は、装置本体に対して着脱可能に組み付けられている。
【0028】
そして、転写ベルト14は、樹脂材料(本実施形態では、熱可塑性エラストマー)からなるガイドベルトが無いガイドレス無端ベルトであって、駆動ローラ15と従動ローラ16との間に架け渡されて用紙を搬送するものである(図1参照)。
【0029】
なお、以下の実施形態においては、転写ベルト14のうち駆動ローラ15と従動ローラ16との間に張架されて平面上となる部分のうち、プロセスカートリッジ7(感光ドラム7A)と対向する範囲を展張面14A(図1参照)と記す。
【0030】
そして、駆動ローラ15は、図2に示すように、メインフレーム17に対する位置を不動とした状態でメインフレーム17に回転可能に組み付けられているとともに、その軸方向一端側に設けられた駆動歯車15Aを介して装置本体に設けられた電動モータ(図示せず。)から動力を得て回転することにより転写ベルト14を回転させる。
【0031】
このため、駆動ローラ15が回転して転写ベルト14が回転すると、従動ローラ16は転写ベルト14の回転と共に従動回転する。なお、本実施形態では、転写ベルト14は、展張面14Aにおいて従動ローラ16側から駆動ローラ15側に向かって移動するように回転する(図1参照)。
【0032】
また、メインフレーム17は、駆動ローラ15の軸方向両端側を支持するように設けられ、駆動ローラ15側から従動ローラ16側に延びる梁状の強度部材であり、これら一対のメインフレーム17には、駆動ローラ15に加えて、4本の転写ローラ8も組み付けられている。
【0033】
なお、4本の転写ローラ8は、その軸方向及びメインフレーム17の長手方向展張面14Aと直交する方向、つまり展張面14Aと直交する方向に変位可能にメインフレーム17に組み付けられているとともに、バネ等の付勢手段(図示せず。)により感光ドラム7A側に押圧されて転写ベルト14に接触している。
【0034】
また、従動ローラ16は、展張面14Aと直交する方向から見て、その軸方向が駆動ローラ15の軸方向に対して平行に配設されているとともに、軸方向一端側(本実施形態では、右端側)はメインフレーム17に直接的に組み付けられ、軸方向他端側は、メインフレーム17に揺動可能に連結されたサブフレーム18を介してメインフレーム17に間接的に組み付けられている。
【0035】
ここで、「従動ローラ16の軸方向が駆動ローラ15の軸方向に対して平行」とは、少なくとも目視にて駆動ローラ15及び従動ローラ16を確認したときに、駆動ローラ15の軸方向と従動ローラ16の軸方向とが平行となっているという意味である。
【0036】
そして、従動ローラ16の軸方向一端側のメインフレーム17には、図4に示すように、長径方向(長辺方向)がメインフレーム17の長手方向と一致するような矩形状の長穴17Aが設けられており、この長穴17Aには、従動ローラ16の回転軸16Aを回転可能に支持する軸受ブロック19Aが変位可能に組み付けられている。
【0037】
また、長穴17Aの内壁面のうちメインフレーム17の長手方向と平行な一対の内壁面17Bには、メインフレーム17の長手方向と平行な方向に延びる突条(図示せず。)が設けられ、一方、軸受ブロック19Aのうち内壁面17B側には、上記の突条が摺動可能に填り込むとともに、メインフレーム17の長手方向と平行な方向に延びる溝部(図示せず。)が設けられている。このため、軸受ブロック19A、つまり従動ローラ16の軸方向一端側は、メインフレーム17の長手方向と平行な方向のみに変位することができる。
【0038】
一方、従動ローラ16の軸方向他端側は、図3に示すように、サブフレーム18を介してメインフレーム17に組み付けられているものの、サブフレーム18と回転軸16Aとの組み付け構造は、図6に示すように、従動ローラ16の軸方向一端側と同様な構造である。
【0039】
つまり、サブフレーム18には、長径方向(長辺方向)がサブフレーム18の長手方向と一致するような矩形状の長穴18Aが設けられており、この長穴18Aには、回転軸16Aの外周に摺接する軸受ブロック19Bが変位可能に組み付けられている。
【0040】
そして、長穴18Aの内壁面のうち長径方向と平行な一対の内壁面18Bには、長径方向と平行な方向に延びる突条18Cが設けられ、一方、軸受ブロック19Bのうち内壁面18B側には、図7に示すように、突条18Cが摺動可能に填り込むとともに、長径方向と平行な方向に延びる溝部19Cが設けられている。このため、軸受ブロック19B、つまり従動ローラ16の軸方向他端側は、長径方向と平行な方向のみに変位することができる。
【0041】
また、サブフレーム18は、図2に示すように、駆動ローラ15側から従動ローラ16側に延びて従動ローラ16の軸方向他端側を支持するとともに、駆動ローラ15の回転中心を揺動中心として揺動することができるように、メインフレーム17又は駆動ローラ15の駆動軸に組み付けられている。
【0042】
そして、転写ベルト14が摺動フランジ22に接触しておらず、摺動フランジ22に斜行力F1が作用していない状態、つまり揺動機構21が機能していない非機能状態では、従動ローラ16の軸中心線方向のうちサブフレーム18により支持された他端(本実施形態では、左端)側は、図7に示すように、従動ローラ16の軸中心線方向一端(本実施形態では、右端)及び駆動ローラ15の軸中心線方向両端を含む仮想平面S1より下方側に位置している場合がある。なお、斜行力F1とは、転写ベルト14を軸中心線方向に斜行させる力をいう。
【0043】
因みに、本実施形態では、仮想平面S1は水平面と一致するように設定されており、かつ、揺動機構21が非機能状態にある場合には、上述のごとく、従動ローラ16の左端側が仮想平面S1より下側にずれた部位に位置する場合があるが、そのずれ量は目視では判別できない程度の微少な量であるので、図2〜図6等では、従動ローラ16の左端側が仮想平面S1上に位置するように記載されている。
【0044】
また、軸受ブロック19Aは、図4に示すように、メインフレーム17の長手方向と平行な方向の力であって従動ローラ16と駆動ローラ15との軸間距離が増大する向きの弾性力Fsをコイルバネ20Aから受け、一方、軸受ブロック19Bは、図6に示すように、サブフレーム18の長手方向と平行な方向の力であって従動ローラ16と駆動ローラ15との軸間距離が増大する向きの弾性力Fsをコイルバネ20Bから受けている。
【0045】
このため、本実施形態では、従動ローラ16は、展張面14A(転写ベルト14)に所定の張力を発生させるテンションローラとして機能し、転写ベルト14は、転写ベルト14と駆動ローラ15との接触部で発生する摩擦力により、駆動ローラ15に対して滑ることなく一体的に回転する。
【0046】
2.2.揺動機構
揺動機構21(図5参照)は、転写ベルト14の回転に伴って転写ベルト14が、駆動ローラ15又は従動ローラ16の軸方向と平行な方向(以下、単に、軸方向という。)に移動するように斜行したときに、その斜行を抑制するようにサブフレーム18を揺動させる揺動手段である。
【0047】
そして、揺動機構21は、図7に示すように、摺動フランジ22、傾動軸受23、及び傾斜フレーム24等から構成されている。そして、摺動フランジ22は、転写ベルト14が軸方向に変位したときに、転写ベルト14と共に軸方向に変位可能な変位部材であり、この摺動フランジ22は、回転軸16Aに対して回転しながら軸方向に変位することができる。
【0048】
また、傾動軸受23は、傾斜フレーム24と摺動フランジ22との間に配設され、回転軸16Aを回転可能に支持しながら回転軸16Aに対して軸方向に変位することが可能なものであり、この傾動軸受23の外周面には、図5に示すように、サブフレーム18の長手方向と平行な方向に突出するボス部23A、23Bが設けられている。
【0049】
そして、ボス部23A、23Bは、傾斜フレーム24に設けられた傾斜面24Aに摺動可能に接触しており、一方、傾斜フレーム24は、メインフレーム17と一体化されている。
【0050】
また、傾斜面24Aは、図7に示すように、傾動軸受23側に面しているとともに、摺動フランジ22側から傾斜フレーム24側に向かう向きの力が傾動軸受23に作用したときに、ボス部23A、23Bと傾斜面24Aとの接点にてボス部23A、23B(傾動軸受23)を感光ドラム7A側(本実施形態では、上方側)に移動させる向きの力が発生するように傾斜している。
【0051】
具体的には、傾斜面24Aは、感光ドラム7A側に向かうほど、摺動フランジ22(転写ベルト14)から離間するように傾斜している。このため、摺動フランジ22側から傾斜フレーム24側に向かう向きの力が傾動軸受23に作用すると、傾動軸受23は、傾斜面24Aに沿って感光ドラム7A側に変位するので、従動ローラ16の軸方向が駆動ローラ15の軸方向に対して傾動する。
【0052】
3.揺動機構の作動
3.1.転写ベルトの斜行抑制作動
例えば、転写ベルト14が摺動フランジ22側から傾斜フレーム24側に斜行すると、転写ベルト14の端部が摺動フランジ22に接触して摺動フランジ22が傾動軸受23側に押圧されるので、図7に示すように、摺動フランジ22と傾動軸受23とが接触し、摺動フランジ22側から傾斜フレーム24側に向かう向きの斜行力F1が傾動軸受23に作用し、揺動機構21が機能する。
【0053】
このため、ボス部23A、23Bと傾斜面24Aとの接点にてボス部23A、23B(傾動軸受23)を感光ドラム7A側(本実施形態では、上方側)に移動させる向きの力F2が発生するため、傾動軸受23が傾斜面24Aに沿って感光ドラム7A側に変位し、図8に示すように、従動ローラ16の左端側(サブフレーム18側)が仮想平面S1に近づくようにサブフレーム18が揺動する。
【0054】
そして、従動ローラ16の左端側が仮想平面S1に近づくようにサブフレーム18が揺動すると、駆動ローラ15に対する従動ローラ16の傾き量が小さくなって従動ローラ16が駆動ローラ15に対して次第に平行な状態となっていくので、転写ベルト14に発生した斜行力F1が小さくなり、転写ベルト14の斜行が抑制される。
【0055】
このとき、従動ローラ16の右端側の位置及び駆動ローラ15の位置が揺動機構21の作動によっては変位しないので、展張面14Aは次第に仮想平面S1に対して平行となっていく。なお、実際のサブフレーム18の揺動量(従動ローラ16の傾動量)は、目視では揺動したか否かを判別することが難しい程度の微量である。
【0056】
因みに、従動ローラ16の右端側の位置は、揺動機構21の作動によっては変位しないものの、回転軸16Aの傾動に伴ってメインフレーム17に対する回転軸16Aの角度は変化する。そこで、本実施形態では、軸受ブロック19A(溝部)と長穴17A(突条)との隙間で、メインフレーム17に対する回転軸16Aの角度変化を吸収する構成としている。
【0057】
また、斜行力F1が摺動フランジ22に作用したとき、摺動フランジ22と傾動軸受23とが接触するが、摺動フランジ22は転写ベルト14と共に回転するのに対して、ボス部23A、23Bが傾斜面24Aに係合した状態となり、傾動軸受23は回転しない。
【0058】
このため、摺動フランジ22と傾動軸受23との接触面で摩擦が発生し、転写ベルト14の回転抵抗が増大して転写ベルト14の幅方向端部に大きな力が作用するおそれがあるので、本実施形態では、摺動フランジ22及び傾動軸受23を摩擦抵抗が小さく、かつ、耐摩耗性に優れた樹脂(例えば、POM)製としている。
【0059】
また、転写ベルト14が回転すると、従動ローラ16から駆動ローラ15側に移動する部分(展張面14A)に発生する張力と、駆動ローラ15から従動ローラ16側に移動する部分に発生する張力との間で張力差が発生し、この張力差が大きい場合には、傾動軸受23が傾斜面24Aに沿って感光ドラム7A側に変位するおそれがある。
【0060】
しかし、本実施形態では、その張力差が比較的に小さいことに加えて、従動ローラ16に作用する重力により、上記の張力差だけで傾動軸受23が傾斜面24Aに沿って感光ドラム7A側に変位することはない。
【0061】
また、揺動機構21が非機能状態になると、ボス部23A、23Bは、傾斜面24Aと接触したまま傾斜面24Aに沿って下方側に変位する場合があり、この場合には、図7に示すように、傾動軸受23と摺動フランジ22とが接触したときにボス部23A、23Bの変位が停止する。
【0062】
つまり、本実施形態では、傾動軸受23と摺動フランジ22とが接触することにより、ボス部23A、23Bの下方側への変位が停止し、従動ローラ16の左端側が仮想平面S1に対して所定以上離間することを防止するストッパ手段が構成される。なお、摺動フランジ22は、転写ベルト14又は従動ローラ16に接触することにより、その位置が保持される。
【0063】
3.2.斜行発生の原理
上述したように、本実施形態では、従動ローラ16を傾動させることより、斜行力F1を小さくして転写ベルト14の斜行を抑制しているが、従動ローラ16を駆動ローラ15に対して相対的に傾動させると、以下のような原理にて転写ベルト14が斜行する。なお、以下の説明は、理解を容易にするために、詳細な部分の説明は省き、その概略のみ説明したものである。
【0064】
先ず、駆動ローラ15及び従動ローラ16の軸方向が互いに平行となるように配置した場合における、各ローラ15、16の長手方向中央断面それぞれにおいて、図9(a)及び図9(b)に示すように、A1点、A2点、B1点及びB2点を考える。
【0065】
ここで、A1点、A2点は、駆動ローラ15の外周面のうち、駆動ローラ15の回転中心を通り、かつ、駆動ローラ15の回転中心と従動ローラ16の回転中心とを結ぶ第1仮想線L1と直交する第2仮想線L2上の点である。また、B1点及びB2点は、従動ローラ16の外周面のうち、従動ローラ16の回転中心を通り、かつ、第1仮想線L1と直交する第3仮想線L3上の点である。
【0066】
そして、図9(a)及び図9(b)に示す状態から、例えば従動ローラ16が図9(d)及び図9(e)に示すように傾動すると、B1点及びB2点それぞれは、図9(e)に示すように、B1’点及びB2’点に移動するので、B1’点及びB2’点は、図9(c)に示すように、B1点及びB2点に対して軸方向にずれた位置となる。
【0067】
そして、転写ベルト14の幅方向中央部に仮想点P1を考えたとき、駆動ローラ15及び従動ローラ16の軸方向が互いに平行となるように配置した場合には、転写ベルト14が回転すると、仮想点P1がA1点→A2点→B1点→B2点→A1点……を通過するように移動するので、転写ベルト14は斜行しない。
【0068】
一方、例えば従動ローラ16が、図9(d)及び図9(e)に示すように傾動した場合においては、転写ベルト14が1回転する間に、仮想点P1がA1点→A2’点→B1’点→B2’点→A1’点を通過するように移動するので、転写ベルト14の回転と共に転写ベルト14が軸方向に斜行する。
【0069】
ところで、転写ベルト14の斜行方向は、上述の説明からも明らかなように、駆動ローラ15と従動ローラ16との相対的な位置関係及び転写ベルト14の回転方向により決定される。このため、駆動ローラ15及び従動ローラ16のうちいずれのローラを傾動させても、駆動ローラ15と従動ローラ16との相対的な位置関係が図9(d)のようになれば、図9(c)に示すように斜行する。
【0070】
また、駆動ローラ15と従動ローラ16との相対的な位置関係が図9(d)に示す状態において、転写ベルト14の回転方向が逆方向の場合には、図9(c)に示す方向と逆方向ように斜行する。
【0071】
したがって、本実施形態係るベルトユニット13において、傾動軸受23が仮想平面S1から感光ドラム7A側に変位すると、転写ベルト14を揺動機構21側(軸方向他端側)から揺動機構21が設けられていない側(軸方向一端側)に斜行させる斜行力F1が発生する。
【0072】
また仮に、傾動軸受23が仮想平面S1から感光ドラム7Aから離間する向きに変位すると、転写ベルト14を揺動機構21が設けられていない側(軸方向一端側)から揺動機構21側(軸方向他端側)に斜行させる斜行力F1が発生する。
【0073】
4.本実施形態に係る画像形成装置(特に、ベルトユニット)の特徴
本実施形態では、サブフレーム18の揺動中心と駆動ローラ15の回転中心とが一致しているので、図10(a)及び図10(b)に示すように、サブフレーム18が揺動した場合であっても、コイルバネ20Bが従動ローラ16に作用させる力は、転写ベルト14の展張面14Aに対して平行となる。
【0074】
したがって、本実施形態では、サブフレーム18の状態によらず、直交成分力が発生しないので、サブフレーム18の揺動(挙動)を安定させることができ、特許文献1に記載の発明と異なる新規な構成にて転写ベルト14を安定的に回転させることが可能となる。
【0075】
また、本実施形態では、サブフレーム18の状態によらず直交成分力が発生せず、コイルバネ20Bが従動ローラ16に作用させる力の殆ど全てを、転写ベルト14に張力を発生させるための力として付与することができるので、サブフレーム18の状態によらず展張面14Aで発生する張力を一定に保持することができる。
【0076】
また、本実施形態では、揺動機構21が非機能状態にある場合には、従動ローラ16の軸方向のうちサブフレーム18により支持された左端側は、従動ローラ16の軸方向右端及び駆動ローラ15の軸方向両端を含む仮想平面S1より下方側に位置している場合がある(図10(a)参照)。
【0077】
つまり、本実施形態では、揺動機構21が非機能状態にある場合には、従動ローラ16の左端は、重力により仮想平面S1より下方側に位置することとなるので、転写ベルト14が回転すると、転写ベルト14をサブフレーム18側に斜行させる斜行力F1が発生する。
【0078】
そして、サブフレーム18は、この斜行力F1を小さくするように仮想平面S1側に揺動するので(図10(b)参照)、転写ベルト14の斜行を抑制しつつ、転写ベルト14を安定的に回転させることができる。
【0079】
また、本実施形態では、揺動機構21が非機能状態にある場合には、図7に示すように、傾動軸受23と摺動フランジ22とが接触して従動ローラ16の左端側が必要以上に下がってしまうことを防止するので、展張面14Aの位置を適切な位置となるように転写ベルト14を安定的に回転させることができる。
【0080】
ところで、転写手段をなす転写ローラ8は、前述したように、バネ等の付勢手段(図示せず。)により感光ドラム7A側に押圧されているので、展張面14Aで発生する張力が上記バネによる押圧力に対して大きく変動すると、転写ローラ8と転写ベルト14との接触面圧が大きく変動してしまう。
【0081】
そして、転写ローラ8と転写ベルト14との接触面圧が大きく変動すると、転写ローラ8と感光ドラム7Aとの間の電気抵抗が変動し、現像剤像を転写させる際に影響を及ぼす可能性があるので、画像形成に障害が発生するおそれがある。
【0082】
これに対して、本実施形態では、展張面14Aに発生する張力を一定に保持することができるので、展張面14Aと対向する位置に配設された感光ドラム7A等の画像形成手段に対して転写ベルト14の張力が与える影響を小さくすることができ、良好な画像形成を行うことができる。
【0083】
5.発明特定事項と実施形態との対応関係
本実施形態では、駆動ローラ15が特許請求の範囲に記載された第1ローラに相当し、従動ローラ16が特許請求の範囲に記載された第2ローラに相当し、揺動機構21が特許請求の範囲に記載された揺動手段に相当し、傾斜フレーム24が特許請求の範囲に記載された楔部に相当し、摺動フランジ22が変位部材に相当する。
【0084】
また、メインフレーム17が特許請求の範囲に記載されたフレームに相当し、サブフレーム18が特許請求の範囲に記載された揺動アームに相当し、コイルバネ20A、20Bが特許請求の範囲に記載された付勢手段に相当し、傾動軸受23及び摺動フランジ22によりストッパ手段が構成されている。
【0085】
(第2実施形態)
第1実施形態では、傾動軸受23及び摺動フランジ22を接触させることによりストッパ手段を構成したが、本実施形態は、図11に示すように、メインフレーム17に、従動ローラ16の左端側が仮想平面S1に対して所定以上離間することを防止するストッパ17Dを設けたものである。
【0086】
(その他の実施形態)
上述の実施形態では、ダイレクトタンデム方式の画像形成装置に本発明を適用したが、本発明の適用はこれに限定されるものではなく、中間転写方式の画像形成装置にも適用できる。
【0087】
また、上述の実施形態では、揺動機構21が従動ローラ16の軸方向片側のみに設けられていたが、本発明はこれに限定されるものではなく、軸方向両側に揺動機構21を設けてもよい。
【0088】
また、上述の実施形態では、従動ローラ16はテンションローラを兼ねるローラであったが、本発明はこれに限定されるものではなく、従動ローラ16とは別にテンションローラを設けるとともに、このテンションローラの軸方向一端側若しくは両端側に揺動機構21を設ける、又は従動ローラ16の軸方向一端側又は両端側に揺動機構21を設けてもよい。
【0089】
また、上述の実施形態では、用紙搬送用のベルトユニット13に本発明を適用したが、本発明の適用はこれに限定されるものではなく、ADF(オートドキュメントフィーダ)の原稿搬送用ベルトユニット、又は定着器用ベルトユニットにも適用できるので、これらを有する画像形成装置にも適用できる。
【0090】
また、上述の実施形態では、付勢手段としてコイルバネを用いたが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、引張りコイルバネ、捻りバネ又はゴム等であってもよい。
【0091】
また、上述の実施形態では、転写ベルト14の斜行力F1を利用した揺動機構21であったが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば電気式のアクチュエータにより揺動機構21を構成してもよい。
【0092】
また、上述の実施形態では、従動ローラ16のみを傾動させたが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば駆動ローラ15、又は従動ローラ16及び従動ローラ16を傾動させてもよい。
【0093】
また、本発明は、特許請求の範囲に記載された発明の趣旨に合致するものであればよく、上述の実施形態に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0094】
1…画像形成装置、5…画像形成部、7…プロセスカートリッジ、
7A…感光ドラム、8…転写ローラ、9…及び図、9…露光器、11…定着器、
13…ベルトユニット、14…転写ベルト、14A…展張面、15…駆動ローラ、
16…従動ローラ、17…メインフレーム、18…サブフレーム、
19A、19B…軸受ブロック、20A、20B…コイルバネ、
21…揺動機構、22…摺動フランジ、23…傾動軸受、
23A、23B…ボス部、24…傾斜フレーム、24A…傾斜面。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無端状のベルトと、
前記ベルトが架け渡され、軸方向が互いに略平行となるように配設された第1ローラ及び第2ローラと、
前記第1ローラの回転中心を揺動中心として揺動することができるとともに、前記第1ローラ側から前記第2ローラ側に延びて、前記第2ローラの軸方向端部側を支持する揺動アームと、
前記揺動アームの長手方向と平行な方向であって、かつ、前記第2ローラを前記第1ローラから離間させる向きの力を前記第2ローラに作用させる付勢手段と、
前記ベルトの回転に伴って前記ベルトが前記軸方向に移動するように斜行したときに、その斜行を抑制するように前記揺動アームを揺動させる揺動手段と
を備えることを特徴とするベルトユニット。
【請求項2】
前記第1ローラに対する前記第2ローラの軸方向一端側の位置を不動とした状態で前記第2ローラの軸方向一端側を支持するフレームを備え、
前記揺動手段が機能していないときには、前記第2ローラの軸方向のうち前記揺動アームにより支持された他端側は、前記第2ローラの軸方向一端及び前記第1ローラの軸方向両端を含む仮想平面より下方側に位置していることを特徴とする請求項1に記載のベルトユニット。
【請求項3】
前記第2ローラの前記他端側が前記仮想平面に対して所定以上離間することを防止するストッパ手段を備えることを特徴とする請求項1又は2に記載のベルトユニット。
【請求項4】
前記揺動手段は、
前記ベルトが軸方向に変位したときに、前記ベルトと共に軸方向に変位することが可能な変位部材、
前記第2ローラを回転可能に支持するとともに、前記変位部材から力を受けて前記第2ローラの軸方向に変位可能な傾動軸受、及び
前記軸方向に対して傾斜するとともに、前記傾動軸受が変位可能に接触する傾斜面が設けられた楔部を有して構成され、
さらに、前記傾動軸受が前記変位部材に接触することにより前記ストッパ手段をなすことを特徴とする請求項3に記載のベルトユニット。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか1項に記載のベルトユニットと、
前記ベルトユニットの展張面と対向する位置に配設され、画像を形成するための画像形成手段と
を備えることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−64899(P2011−64899A)
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−214701(P2009−214701)
【出願日】平成21年9月16日(2009.9.16)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】