説明

ベルト駆動装置

【課題】ベルトの蛇行を未然に防止でき、かつ、小型に構成できるベルト駆動装置を得る。
【解決手段】駆動ローラ10と従動ローラ20とに無端状に張り渡されたベルト30を一方向Xに回転駆動するベルト駆動装置。ベルト30は駆動ローラ10との摩擦によって回転駆動され、従動ローラ20はベルト30との摩擦によって従動回転する。従動ローラ20は、駆動ローラ10と従動ローラ20のそれぞれの軸心を結ぶラインHよりもベルト30にたるみが生じる側、即ち、回転方向Xの上流側に向かってガイド面25に沿って移動可能に設置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベルト駆動装置、特に、複写機やプリンタなどの画像形成装置に搭載されるベルト駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複写機やプリンタなどの電子写真法による画像形成装置では、種々のベルト駆動装置が搭載されている。例えば、トナーを加熱定着する定着装置にあっては、電力消費を抑えるために熱容量の小さいベルトを使用するのが一般的である。搬送されてきた用紙を加圧ローラとで挟み込む定着ローラと、熱源を内蔵した加熱ローラとに定着ベルトが無端状に張り渡されている。この場合、定着ローラがベルトを回転駆動する駆動ローラとして機能し、加熱ローラが従動ローラとして機能している。
【0003】
加熱ローラ(従動ローラ)は、室温から200℃程度の高温までの広範囲の温度帯で使用されるため、熱膨張で軸方向の伸縮が生じる。このため、軸受部分には回転方向の負荷と軸方向の負荷が加わり、場合によっては軸受が傾いて加熱ローラの回転負荷が増大することがある。このような場合、加熱ローラに傾きが生じて定着ベルトが蛇行する。
【0004】
また、トナーが1次転写される中間転写ベルトは、駆動ローラと従動ローラとの間に無端状に張り渡されている。中間転写ベルトに対しては、残留トナーを除去するためのクリーナブレードが圧接されており、該ベルトの表面状態やクリーナブレードのエッジの摩耗などで摺動抵抗が変動することがある。このような場合、従動ローラに傾きが生じるとともに中間転写ベルトに傾きが生じて該ベルトが蛇行する。
【0005】
前記定着ベルトや前記中間転写ベルトにあっては、従動ローラにフランジなどを設けてベルトの蛇行を規制しているが、規制の許容値を超えると蛇行を規制することができず、ベルトの変形、破損につながるという問題点を有していた。
【0006】
特許文献1には、ベルトの蛇行を防止するために、駆動ローラに加えて、第1張架ローラ及び第2張架ローラを配置し、ベルトの側部に設けた規制部材が第1張架ローラに乗り上げて該ローラが移動する際に、移動方向を第2張架ローラより離れる方向とするベルト駆動装置が記載されている。しかし、このベルト駆動装置では、ベルトを張架するのに少なくとも3本のローラを必要とし、小スペースに配置することが困難であり、コストも増大してしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−154790号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、本発明の目的は、ベルトの蛇行を未然に防止でき、かつ、小型に構成できるベルト駆動装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
以上の目的を達成するため、本発明の一形態であるベルト駆動装置は、
駆動ローラと従動ローラとに無端状に張り渡されたベルトを一方向に回転駆動するベルト駆動装置において、
前記ベルトは駆動ローラとの摩擦によって回転駆動され、従動ローラは前記ベルトとの摩擦によって従動回転し、
従動ローラは、駆動ローラと従動ローラのそれぞれの軸心を結ぶラインよりも前記ベルトにたるみが生じる側に移動可能に設置されていること、
を特徴とする。
【0010】
前記ベルト駆動装置において、従動ローラにベルトの回転による負荷が大きく作用すると、従動ローラは駆動ローラと従動ローラのそれぞれの軸心を結ぶラインよりもベルトにたるみが生じる側に移動し、ベルトの蛇行が未然に防止される。即ち、従動ローラに作用する負荷が増大すると、従動ローラに傾きが生じる傾向にあるが、従動ローラの移動によってその傾きが矯正される。それゆえ、ベルトの蛇行が防止される。また、前記ベルト駆動装置は駆動ローラと従動ローラとの2軸張架構造であり、多数のローラを必要としていないので小型に構成でき、小スペースに配置することが可能である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ベルトの蛇行を未然に防止でき、かつ、ベルト駆動装置自体を小型に構成できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に係るベルト駆動装置の基本形態を示し、(A)は通常状態の説明図、(B)は負荷増大状態の説明図である。
【図2】本発明に係るベルト駆動装置の制約条件を示すための説明図である。
【図3】本発明を定着装置に適用した場合の概略構成図である。
【図4】本発明を中間転写装置に適用した場合の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係るベルト駆動装置の実施例について、添付図面を参照して説明する。なお、各図において同じ部材、部分を示す符号は共通して用いている。
【0014】
本発明に係るベルト駆動装置は、図1(A)に示す基本形態を備えている。即ち、駆動ローラ10と従動ローラ20とに無端状に張り渡されたベルト30を一方向(矢印X方向)に回転駆動するベルト駆動装置であり、ベルト30は駆動ローラ10との摩擦によって回転駆動され、従動ローラ20はベルト30との摩擦によって従動回転する。駆動ローラ10は支軸11を中心として図示しない駆動源によって矢印X方向に回転駆動される。従動ローラ20は支軸21を中心として従動回転する。
【0015】
そして、従動ローラ20は、駆動ローラ10と従動ローラ20のそれぞれの軸心を結ぶラインHよりもベルト30にたるみが生じる側(図2参照)、即ち矢印X方向の上流側に向かって移動可能に設置されている。具体的には、支軸21は円弧状のガイド面25によってガイドされる。このガイド面25は、駆動ローラ10の軸心を中心とした同心円上に延在しており、かつ、従動ローラ20を図1(A)に示す所定位置に位置決め保持している。
【0016】
本ベルト駆動装置において、従動ローラ20にベルト30の回転による負荷が大きく作用すると、支軸21に歪みが生じて従動ローラ20が傾こうとする。このような歪み(傾き)を解消するために、従動ローラ20はガイド面25に沿って、駆動ローラ10と従動ローラ20のそれぞれの軸心を結ぶラインHよりもベルト30にたるみが生じる側(矢印X方向の上流側)に移動し、支軸21の平行度が維持されるので、ベルト30の蛇行が未然に防止される。ベルト30は従動ローラ20によってストップ力が作用すると、従動ローラ20の回転方向上流側にたるみを生じる。
【0017】
つまり、従動ローラ20に作用する負荷が増大すると、従動ローラ20に傾きが生じる傾向にある。しかし、従動ローラ20の前述のような移動によってその傾きが矯正される。それゆえ、ベルト30の蛇行が防止される。また、ベルト駆動装置は駆動ローラ10と従動ローラ20との2軸張架構造であり、多数のローラを必要としていないので小型に構成でき、小スペースに配置することが可能である。
【0018】
なお、本ベルト駆動装置にはベルト30の蛇行を規制するための手段が施されている。例えば、ベルト30の両側部に、ローラ10,20に接触する蛇行規制部材を取り付けたり、ローラ10,20に蛇行規制用のフランジ部を設けたりしている。このような蛇行規制手段を設けていても、蛇行力が規制許容値を超えるとベルトの変形、破損につながる。しかし、本ベルト駆動装置にあっては、従動ローラ20の前記移動によってベルト30の蛇行自体が抑えられるため、ベルト30の変形、破損が未然に防止されるのである。
【0019】
ところで、以上のごとくベルト30の蛇行を効果的に防止するには、以下の制約条件を満足することが好ましい。駆動ローラ10と従動ローラ20とが両者の間隔が最も広い状態において、ベルト30が従動ローラ20から離れる点をA、ベルト30が駆動ローラ10に接する点をBとし、図1(B)に示すように、従動ローラ20が移動した位置でベルト30が従動ローラ20から離れる点をCとしたとき、A点からB点までのベルト長さがC点からB点までのベルト長さに等しいことである。
【0020】
図2に示すように、駆動ローラ10と従動ローラ20の半径rが等しく、駆動ローラ10の軸心から従動ローラ20の軸心までの距離をL、従動ローラ20の移動による回転角をθ、従動ローラ20の垂直方向の移動量をYとする。この場合、従動ローラ20の移動軌跡はθとYとの関係において以下の式で示される。
【0021】
Y={L−2πr×(θ/360)}×sinθ
【0022】
本発明に係るベルト駆動装置を定着装置に適用した例を図3に示す。駆動ローラ10aと従動ローラ20aとに定着ベルト30aが無端状に張り渡されており、定着ベルト30aは矢印X方向に回転駆動される。定着ベルト30aには加圧ローラ40が圧接して定着ニップ部41を形成している。従動ローラ20aにはヒータ45が内蔵されている。用紙Sは転写されたトナー画像を定着ベルト30aに向けて下方から定着ニップ部41に送り込まれる。
【0023】
本定着装置においても、従動ローラ20aは、駆動ローラ10aと従動ローラ20aのそれぞれの軸心を結ぶラインよりも定着ベルト30aにたるみが生じる側に移動可能に設置されていることは勿論である。
【0024】
本発明に係るベルト駆動装置を中間転写装置に適用した例を図4に示す。駆動ローラ10bと従動ローラ20bとに中間転写ベルト30bが無端状に張り渡されており、中間転写ベルト30bは矢印X方向に回転駆動される。中間転写ベルト30bには2次転写ローラ50が接触して転写ニップ部51を形成している。また、中間転写ベルト30bには従動ローラ20b側に残留トナーのクリーナブレード52が圧接している。また、中間転写ベルト30bの下側には感光体60y,60m,60c,60k及び1次転写ローラ61y,61m,61c,61kが配置されている。これらの感光体及び1次転写ローラは、それぞれ、Y(イエロー)、M(マゼンタ)、C(シアン)K(ブラック)のトナー画像を形成するためのものである。それぞれの感光体上に形成されたトナー画像は、中間転写ベルト30bに順次1次転写されてカラー画像に合成され、転写ニップ部51を搬送される用紙Sに2次転写される。
【0025】
なお、感光体60y,60m,60c,60kにトナー画像を形成して、1次転写、2次転写を行う、タンデム方式のカラー画像の形成プロセスは周知であり、その詳細な説明は省略する。
【0026】
本中間転写装置においても、従動ローラ20bは、駆動ローラ10bと従動ローラ20bのそれぞれの軸心を結ぶラインよりも定着ベルト30bにたるみが生じる側に移動可能に設置されていることは勿論である。なお、本中間転写装置において、中間転写ベルト30bは従動ローラ20bの近傍において感光体60yと1次転写ローラ61yにて挟着されている(挟着点62)。従って、中間転写ベルト30bに負荷が作用した場合、従動ローラ20bは挟着点62を中心に移動することになる。
【0027】
(他の実施例)
なお、本発明に係るベルト駆動装置は前記実施例に限定するものではなく、その要旨の範囲内で種々に変更することができる。
【0028】
例えば、従動ローラの移動をガイドする手段は前記ガイド面25以外にガイド溝などであってもよい。また、ベルト駆動装置は、定着装置や中間転写装置以外の装置に適用することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0029】
以上のように、本発明は、ベルト駆動装置に有用であり、特に、ベルトの蛇行を未然に防止でき、かつ、ベルト駆動装置自体を小型に構成できる点で優れている。
【符号の説明】
【0030】
10,10a,10b…駆動ローラ
11…支軸
20,20a,20b…従動ローラ
21…支軸
25…ガイド面
30,30a,30b…ベルト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動ローラと従動ローラとに無端状に張り渡されたベルトを一方向に回転駆動するベルト駆動装置において、
前記ベルトは駆動ローラとの摩擦によって回転駆動され、従動ローラは前記ベルトとの摩擦によって従動回転し、
従動ローラは、駆動ローラと従動ローラのそれぞれの軸心を結ぶラインよりも前記ベルトにたるみが生じる側に移動可能に設置されていること、
を特徴とするベルト駆動装置。
【請求項2】
駆動ローラと従動ローラとが両者の間隔が最も広い状態において、前記ベルトが従動ローラから離れる点をA、前記ベルトが駆動ローラに接する点をBとし、従動ローラが移動した位置で前記ベルトが従動ローラから離れる点をCとしたとき、A点からB点までのベルト長さがC点からB点までのベルト長さに等しいこと、を特徴とする請求項1に記載のベルト駆動装置。
【請求項3】
従動ローラは、駆動ローラの軸心を中心とした同心円上に延在するガイド面によってその移動をガイドされること、を特徴とする請求項1又は請求項2に記載のベルト駆動装置。
【請求項4】
前記ベルトはトナーを加熱定着するための定着ベルトであること、を特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれかに記載のベルト駆動装置。
【請求項5】
前記ベルトはトナーが転写される中間転写ベルトであること、を特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれかに記載のベルト駆動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−237522(P2011−237522A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−107295(P2010−107295)
【出願日】平成22年5月7日(2010.5.7)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】