説明

ベンズアミジン誘導体含有組成物及びベンズアミジン誘導体の安定化方法

本発明は、加湿条件下においても分解しない、ベンズアミジン誘導体を含有する組成物及びベンズアミジン誘導体の安定化方法を提供する。本発明によれば、一般式(I)にて表されるベンズアミジン誘導体又はその薬理学上許容される塩に、アルカリ金属若しくはアルカリ土類金属のハロゲン及びアルカリ金属若しくはアルカリ土類金属の過塩素酸塩からなる群から選択される少なくとも1種の電解質を添加することにより、ベンズアミジン誘導体の分解反応を抑えることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベンズアミジン誘導体含有組成物及びベンズアミジン誘導体の安定化方法に関する。
【背景技術】
【0002】
下記一般式(I)で表されるベンズアミジン誘導体は、トロンビン受容体に拮抗作用を有しており、血栓症、血管再狭窄、脳梗塞、心疾患、播種性血管内血液凝固症候群、高血圧、炎症性疾患、リウマチ、喘息、糸球体腎炎、骨粗鬆症、神経疾患、悪性腫瘍等のトロンビンが関与する疾病の治療や予防において優れた効果を発揮するものとして期待されている化合物である(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
【化1】


【特許文献1】国際公開WO02/085855号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般式(I)で表されるベンズアミジン誘導体又はその薬理学上許容される塩は、単独では安定性の高い化合物であるものの、固体状態では加湿・加温条件下における製剤添加物との共存により、液体状態ではpHの高い状態において図1に示すような反応により分解物が生じてしまうことがある。ベンズアミジン誘導体又はその薬理学上許容される塩の安定性を向上させる方法としては、防湿包装を施す方法が考えられるが、この場合には、製造コストの上昇を招いてしまうという問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
そこで、本発明の発明者らは、かかる課題を解決するべく、鋭意検討した結果、意外にも、化学式(I)で表されるベンズアミジン誘導体に、アルカリ金属若しくはアルカリ土類金属のハロゲン化物塩及び過塩素酸のアルカリ金属塩若しくはアルカリ土類金属塩からなる群から選択される少なくとも1種の電解質を添加することによって、ベンズアミジン誘導体を安定化させることができるという知見を得て、本発明を完成するに至った。本発明の目的は、加湿・加温条件下においても分解が生じにくい、ベンズアミジン誘導体を含有する組成物及びベンズアミジン誘導体の安定化方法を提供することにある。即ち、本発明の組成物は、
(1)下記一般式(I)にて表されるベンズアミジン誘導体又はその薬理学上許容される塩と、アルカリ金属若しくはアルカリ土類金属のハロゲン化物塩及び過塩素酸のアルカリ金属塩若しくはアルカリ土類金属塩からなる群から選択される少なくとも1種の電解質と、を含有する組成物、
【0006】
【化1】


[式(I)中、R、Rは、それぞれ同一あるいは相異なって、水素原子、メトキシ基、エトキシ基を、Xは水素原子あるいはハロゲン原子を示し、Arは、メチル基、エチル基、メトキシ基、エトキシ基、t−ブチル基、モルホリニル基、又は下記の式(XX)で表される置換基から選ばれる1又は2以上の置換基で置換されていてもよいフェニル基を示し、
【0007】
【化2】


式(XX)中、WはCH又は窒素原子を示し、AはCH又は単結合を示し、Rは水素原子又はORを示し、XはCH、酸素原子、単結合又はカルボニル基を示し、Yは単結合又はC1−4アルキル基を示し、Rは水素原子、OR、シアノ基又はCOORを示し、R、R及びRは水素原子又はC1−4アルキル基を示す。]
(2)前記R及びRがエトキシ基であり、前記Xがフッ素原子である(1)の組成物、
(3)化学式(II)−(VIII)にて表されるベンズアミジン誘導体又はその薬理学上許容される塩と、アルカリ金属若しくはアルカリ土類金属のハロゲン化物及びアルカリ金属若しくはアルカリ土類金属の過塩素酸塩からなる群から選択される少なくとも1種の電解質と、を含有する組成物、
【0008】
【化3】


(4)前記ベンズアミジン誘導体又はその薬理学上許容される塩1重量部に対する電解質の量が、0.5重量部乃至30重量部である、(1)乃至(3)のいずれか一に記載の組成物、
(5)前記ベンズアミジン誘導体又はその薬理学上許容される塩が、化学式(II)にて表されるベンズアミジン誘導体の臭化水素酸塩である、(3)の組成物、
【0009】
【化4】


等に関する。
【0010】
また、本発明のベンズアミジン誘導体の安定化方法は、
(6)前記化学式(I)で表されるベンズアミジン誘導体又はその薬理学上許容される塩に、アルカリ金属若しくはアルカリ土類金属のハロゲン化物塩及びアルカリ金属若しくはアルカリ土類金属の過塩素酸塩からなる群から選択される少なくとも1種の電解質を添加する工程を含む、ベンズアミジン誘導体の安定化方法、
(7)前記化学式(II)で表されるベンズアミジン誘導体又はその薬理学上許容される塩に、アルカリ金属若しくはアルカリ土類金属のハロゲン化物及びアルカリ金属若しくはアルカリ土類金属の過塩素酸塩からなる群から選択される少なくとも1種の電解質を添加する工程を含む、ベンズアミジン誘導体の安定化方法、
(8)前記ベンズアミジン誘導体1重量部に対する電解質の量が、0.5重量部乃至30重量部である、(6)又は(7)に記載の方法、
等に関する。
【発明の効果】
【0011】
本発明のベンズアミジン誘導体含有組成物、及びベンズアミジン含有組成物の安定化方法は、以下のような効果を有する。すなわち、加湿条件下における分解反応を起こりにくくするため、安定性に優れたベンズアミジン誘導体製剤化が可能となり、また、防湿包装が不要となるため、製造コストを低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下の実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明をこの実施形態にのみ限定する趣旨ではない。本発明は、その要旨を逸脱しない限り、さまざまな形態で実施することができる。
【0013】
本発明に係る組成物は、(1)ベンズアミジン誘導体又はその薬理学上許容される塩と、(2)アルカリ金属若しくはアルカリ土類金属のハロゲン化物塩及び過塩素酸のアルカリ金属塩若しくはアルカリ土類金属塩からなる群から選択される少なくとも1種類の電解質と、を含有する。
【0014】
本発明において用いるベンズアミジン誘導体は、たとえば、国際公開WO02/085855号公報に記載された方法によって合成することができ、化学式(I)にて表されるベンズアミジン化合物が挙げられる。
【0015】
【化1】


[式(I)中、R、Rは、それぞれ同一あるいは相異なって、水素原子、メトキシ基、エトキシ基を、Xは水素原子あるいはハロゲン原子を示し、Arは、メチル基、エチル基、メトキシ基、エトキシ基、t−ブチル基、モルホリニル基、又は下記の式(XX)で表される置換基から選ばれる1又は2以上の置換基で置換されていてもよいフェニル基を示し、
【0016】
【化2】


式(XX)中、WはCH又は窒素原子を示し、AはCH又は単結合を示し、Rは水素原子又はORを示し、XはCH、酸素原子、単結合又はカルボニル基を示し、Yは単結合又はC1−4アルキル基を示し、Rは水素原子、OR、シアノ基又はCOORを示し、R、R及びRは水素原子又はC1−4アルキル基を示す。]
【0017】
本発明において用いる用語「ハロゲン原子」とは、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等を意味し、好ましくはフッ素原子または塩素原子であり、より好ましくはフッ素原子である。本発明において用いる用語「C1−4アルキル基」とは、炭素数が1〜4の直鎖状または分岐状のアルキル基を意味し、具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、iso−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基等が挙げられる。
【0018】
本発明において用いる化学式(I)にて表されるベンズアミジン化合物としては、表1に示した化合物A−Gを用いるのが好ましく、それらの名称はそれぞれ以下のとおりである;
A:1−(3−第三ブチル−4−メトキシ−5−モルフォリノ−フェニル)−2−(5,6−ジエトキシ−7−フルオロ−1−イミノ−1,3−ジヒドロ−イソインドール−2−イル)−エタノン、
B:1−{3−第三ブチル−5−[4−(2−ヒドロキシアセチル)−ピペラジン−1−イル]4−メトキシ−フェニル}−2−(5,6−ジエトキシ−7−フルオロ−1−イミノ−1,3−ジヒドロ−イソインドール−2−イル)−エタノン、
C:(4−{3−第三ブチル−5−[2−(5,6−ジエトキシ−7−フルオロ−1−イミノ−1,3−ジヒドロ−イソインドール−2−イル)−アセチル]−2−メトキシ−フェニル}−ピペラジン−1−イル)−アセトニトリル、
D:1−{3−第三ブチル−5−[(3S、4S)−3−ヒドロキシ−4−メトキシ−ピロリジン−1−イル]−4−メトキシ−フェニル}−2−(5,6−ジエトキシ−7−フルオロ−1−イミノ−1,3−ジヒドロ−イソインドール−2−イル)−エタノン、
E:1−(3−第三ブチル−4−メトキシ−5−ピペラジン−1−イル−フェニル)−2−(5,6−ジエトキシ−7−フルオロ−1−イミノ−1,3−ジヒドロ−イソインドール−2−イル)−エタノン、
F:1−[3−第三ブチル−5−(4−ヒドロキシピペリジン−1−イル)−4−メトキシ−フェニル]−2−(5,6−ジエトキシ−7−フルオロ−1−イミノ−1,3−ジヒドロ−イソインドール−2−イル)−エタノン、
G:エチル (4−{3−第三ブチル−5−[2−(5,6−ジエトキシ−7−フルオロ−1−イミノ−1,3−ジヒドロ−イソインドール−2−イル)−アセチル]−2−メトキシ−フェニル}−ピペラジン−1−イル)−アセテート、
である。これらのうちでも1−(3−第三ブチル−4−メトキシ−5−モルフォリノ−フェニル)−2−(5,6−ジエトキシ−7−フルオロ−1−イミノ−1,3−ジヒドロ−イソインドール−2−イル)−エタノン(表1中の化合物A)を用いるのが特に好ましく、その場合にはその臭化水素酸塩を用いるのが好ましい。
【0019】
【表1】

【0020】
本発明において用いるベンズアミジン誘導体は、フリー体であっても、その薬理学上許容される塩であってもよい。ここで、本発明に係る「薬理学上許容される塩」とは、本発明に係る化合物と塩を形成するものであり、かつ、薬理学的に許容されるものであれば限定されないが、好適な例としては、ハロゲン化水素酸塩(たとえば、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩等)、無機酸塩(たとえば、硫酸塩、硝酸塩、過塩素酸塩、リン酸塩、炭酸塩、重炭酸塩等)、有機カルボン酸塩(たとえば、酢酸塩、マレイン酸塩、酒石酸塩、フマル酸塩、クエン酸塩等)、有機スルホン酸塩(たとえば、メタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、トルエンスルホン酸塩、カンファースルホン酸塩等)、アミノ酸(たとえば、アスパラギン酸塩、グルタミン酸塩等)、四級アンモニウム塩、アルカリ金属塩(たとえば、ナトリウム塩、カリウム塩等)、アルカリ土類金属塩(たとえば、マグネシウム塩、カルシウム塩等)等が挙げられるが、このうちでも臭化水素塩を用いるのが最も好ましい。
【0021】
本発明において用いる電解質は、ハロゲン化物イオン又は過塩素酸イオンを含む塩であれば任意に用いることができ、たとえば、アルカリ金属若しくはアルカリ土類金属のハロゲン化物塩又は過塩素酸のアルカリ金属塩若しくはアルカリ土類金属塩を用いるのが好ましく、より具体的には、NaCl、KCl、MgCl、CaCl、KBr、KIを用いるのが好ましい。
【0022】
本発明において使用する電解質の量は、特に限定されず、ベンズアミジン誘導体の種類及び量、製剤の剤形、電解質の種類等によって適宜調節することができる。通常は、ベンズアミジン誘導体1重量部に対して、0.5〜30重量部程度がよく、好ましくは1〜20重量部程度、更に好ましくは1.5〜7.5重量部程度がよい。
【0023】
本発明のベンズアミジン誘導体含有組成物を製剤化する際の剤形は、特に限定されることなく任意の剤形とすることができ、たとえば、錠剤、顆粒剤、散剤、細粒剤等とすることができる。また、製剤化する際には、通常の製剤化工程において使用される賦形剤、結合剤、コーティング剤、着色剤、香料等の添加剤を含んでいてもよい。
【0024】
本発明において用いるベンズアミジン誘導体の一回投与量は、特に限定されず、剤形、疾患、症状、年齢、体重、性別等によって適宜調節することができるが、通常は0.1mg〜500mg程度がよく、好ましくは0.5mg〜200mg、より好ましくは1mg〜100mg程度がよい。
【0025】
また、本発明では、前記化学式(I)で表されるベンズアミジン誘導体又はその薬理学上許容される塩に、アルカリ金属若しくはアルカリ土類金属のハロゲン化物塩及び過塩素酸のアルカリ金属塩若しくはアルカリ土類金属塩からなる群から選択される少なくとも1種の電解質を添加する工程、を含む、ベンズアミジン誘導体の安定化方法を提供する。
【0026】
本発明を以下の試験例および実施例によってさらに詳細に説明するが、本発明の範囲はこれに限定されるものではない。本発明の記載に基づき、種々の変更、修飾が当業者には可能であり、これらの変更、修飾も本発明に包含される。
【0027】
(錠剤安定性試験)
本発明のベンズアミジン誘導体含有組成物の製剤安定性試験を行った。本錠剤安定性試験は、実施例1及び実施例2で得られた錠剤を60℃、相対湿度75%(60℃/75%R.H.)にて1週間保存した後における分解物(degradant)の量をHPLCで分析し、冷所保存した対照群と比較することによって行った。化合物Aを1mg含有する錠剤の試験結果を表2に、10mg含有する錠剤の試験結果を表3にそれぞれ示す。
【0028】
【表2】

【0029】
【表3】

【0030】
表2及び表3より明らかなように、加温・加湿条件下において、本発明のベンズアミジン誘導体含有組成物は、1mg錠及び10mg錠ともに、NaClを添加しない場合に比べて不純物量の増加が抑えられた。
【0031】
(顆粒剤安定性試験)
次に、本発明のベンズアミジン誘導体含有組成物の顆粒剤安定性試験結果を示す。本試験では、実施例3−7で得られた顆粒剤を60℃、相対湿度75%にて42時間保存した後における分解物の量を対照群と比較した。結果を表4に示す。
【0032】
【表4】

【0033】
表4より明らかなように、本発明のベンズアミジン誘導体含有組成物の顆粒剤は、いずれも電解質を添加しないreferenceに比べると分解物の量は低くなっており、塩の添加による安定化効果が認められた。
【0034】
(凍結乾燥粉体安定性試験)
以下には、本発明のベンズアミジン誘導体含有組成物の凍結乾燥粉体安定性試験結果を示す。本試験では、実施例8−23で得られた凍結乾燥粉体を60℃、相対湿度75%にて60時間保存した後における分解物の量を対照群と比較した。結果を表5に示す。
【0035】
【表5】

【0036】
表5より明らかなように、いずれのベンズアミジン誘導体においても、電解質の添加により、電解質を添加しない対照に比べると分解物の量が低くなっており、電解質の添加による安定化効果が認められた。
【0037】
(実施例)
以下に、本発明に係るベンズアミジン誘導体含有組成物の実施例として、表1に列挙した化合物を用いたもの具体例を示すが、特許請求の範囲がこれらに限定されるものではない。
【0038】
(実施例1)
以下の手順に従い、化合物Aを含有する錠剤を作製した。
(1)化合物A1g、乳糖(DMV Japan社製)117g、低置換度ハイドロキシプロピルセルロース(単に、「L-HPC」と称する場合もある:信越化学製)7.5g、ハイドロキシプロピルメチルセルロース(単に「HPMC」と称する場合もある:信越化学製)4.5gを1lミキサーに入れ、撹拌混合した。
(2)続いて、撹拌しながら、NaCl(和光純薬製)4.5gを溶解させた精製水を適当量加え、造粒した。
(3)乾燥機にて造粒顆粒を60℃で5時間乾燥した。
(4)これに結晶セルロース(旭化成製)15g、ステアリン酸マグネシウム(Mallinckrodt社製)0.75gを加え、ビニル袋内で混合した。
(5)本粉体を単発式打錠機にて打錠し、1錠(150mg)中に化合物Aを1mg含有する錠剤径6.5mmの錠剤を得た。
【0039】
(実施例2)
化合物Aの添加量を変えて、実施例1とほぼ同様の手順により、1錠(150mg)中に化合物Aを10mg含有する錠剤を得た。
【0040】
(実施例3)
(1)化合物A0.25g、乳糖(DMV Japan社製)27g、低置換度ハイドロキシプロピルセルロース(信越化学製)1.5g、HPMC(信越化学製)0.9gをミキサー(錠剤粉砕機)に入れ、撹拌混合した。
(2)(1)で製した粉体を940mgとNaCl(和光純薬製)を64mg量り乳鉢を用いて混合し、さらに精製水を適当量加えて造粒した。
(3)乾燥機にて造粒顆粒を60℃で5時間乾燥し、化合物A及びNaClを含有する顆粒剤を得た。
【0041】
(実施例4−7)
電解質としてNaClに代えて各々KCl、KBr、KI、NaClOを用い、実施例3と同様の手順により化合物Aを含有する顆粒剤を得た。
【0042】
(実施例8)
以下の手順に従い、化合物Bを含有する凍結乾燥粉体を作製した。
(1)フィルター付マイクロプレート上に、化合物Bを0.05mg含むメタノール水溶液(体積比はMeOH:HO=3:7)を0.05ml、Placebo成分(成分比:乳糖/L-HPC/HPMC=92/5/3)を4mg含む水懸濁液0.05ml、及びNaClOを0.252mg含む水溶液0.025mlを滴下した。
(2)プレートミキサーで攪拌した後、−40℃で、フリーザーにて3時間凍結させた。
(3)約24時間凍結乾燥を行い、マイクロプレート上に凍結乾燥粉体を得た。
【0043】
(実施例9)
電解質として、NaClOに変えてKBrを用い、実施例8と同様の手順により、化合物Bを0.05mg、Placebo成分を4mg、及びKBrを0.21mg含有する凍結乾燥粉体を得た。
【0044】
(実施例10−23)
実施例8と同様の手順により、化合物C−Gを含有する凍結乾燥粉体を作製した。実施例8−23で得られた凍結乾燥粉体中の電解質の添加量を表6にまとめた。また、それぞれの化合物について、電解質を含有しない凍結乾燥粉体も実施例8と同様の手順により作製して対照として作製した。
【0045】
【表6】

【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明のベンズアミジン誘導体含有組成物、及びベンズアミジン含有組成物の安定化方法は、以下のような効果を有する。加湿条件下における分解反応を起こりにくくするため、安定性に優れたベンズアミジン誘導体製剤化が可能となり、また、防湿包装が不要となるため、製造コストを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】ベンズアミジン誘導体の分解を表す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(I)にて表されるベンズアミジン誘導体又はその薬理学上許容される塩と、
アルカリ金属若しくはアルカリ土類金属のハロゲン化物塩及び過塩素酸のアルカリ金属塩若しくはアルカリ土類金属塩からなる群から選択される少なくとも1種の電解質と、
を含有する組成物。
【化1】


[式(I)中、R、Rは、それぞれ同一あるいは相異なって、水素原子、メトキシ基、エトキシ基を、Xは水素原子あるいはハロゲン原子を示し、Arは、メチル基、エチル基、メトキシ基、エトキシ基、t−ブチル基、モルホリニル基、又は下記の式(XX)で表される置換基から選ばれる1又は2以上の置換基で置換されていてもよいフェニル基を示し、
【化2】


式(XX)中、WはCH又は窒素原子を示し、AはCH又は単結合を示し、Rは水素原子又はORを示し、XはCH、酸素原子、単結合又はカルボニル基を示し、Yは単結合又はC1−4アルキル基を示し、Rは水素原子、OR、シアノ基又はCOORを示し、R、R及びRは水素原子又はC1−4アルキル基を示す。]
【請求項2】
前記R及びRがエトキシ基であり、前記Xがフッ素原子である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
(II)−(VIII)のいずれかの化学式にて表されるベンズアミジン誘導体又はその薬理学上許容される塩と、
アルカリ金属若しくはアルカリ土類金属のハロゲン化物塩及び過塩素酸のアルカリ金属塩若しくはアルカリ土類金属塩からなる群から選択される少なくとも1種の電解質と、
を含有する組成物。
【化3】

【請求項4】
前記ベンズアミジン誘導体又はその薬理学上許容される塩1重量部に対する電解質の量が、0.5重量部乃至30重量部である、請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項5】
前記ベンズアミジン誘導体又はその薬理学上許容される塩が、下記化学式(II)にて表されるベンズアミジン誘導体の臭化水素酸塩である、請求項3に記載の組成物。
【化4】

【請求項6】
化学式(I)で表されるベンズアミジン誘導体又はその薬理学上許容される塩に、アルカリ金属若しくはアルカリ土類金属のハロゲン化物塩及び過塩素酸のアルカリ金属塩若しくはアルカリ土類金属塩からなる群から選択される少なくとも1種の電解質を添加する工程、
を含む、ベンズアミジン誘導体の安定化方法。
【化1】


[式(I)中、R、Rは、それぞれ同一あるいは相異なって、水素原子、メトキシ基、エトキシ基を、Xは水素原子あるいはハロゲン原子を示し、Arは、メチル基、エチル基、メトキシ基、エトキシ基、t−ブチル基、モルホリニル基、又は下記の式(XX)で表される置換基から選ばれる1又は2以上の置換基で置換されていてもよいフェニル基を示し、
【化2】


式(XX)中、WはCH又は窒素原子を示し、AはCH又は単結合を示し、Rは水素原子又はORを示し、XはCH、酸素原子、単結合又はカルボニル基を示し、Yは単結合又はC1−4アルキル基を示し、Rは水素原子、OR、シアノ基又はCOORを示し、R、R及びRは水素原子又はC1−4アルキル基を示す。]
【請求項7】
(II)−(VIII)のいずれかの化学式で表されるベンズアミジン誘導体又はその薬理学上許容される塩に、アルカリ金属若しくはアルカリ土類金属のハロゲン化物塩及び過塩素酸のアルカリ金属塩若しくはアルカリ土類金属塩からなる群から選択される少なくとも1種の電解質を添加する工程、
を含む、ベンズアミジン誘導体の安定化方法。
【化3】

【請求項8】
前記ベンズアミジン誘導体1重量部に対する電解質の量が、0.5重量部乃至30重量部である、請求項6又は請求項7に記載の方法。



【図1】
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【国際公開番号】WO2005/084679
【国際公開日】平成17年9月15日(2005.9.15)
【発行日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−510737(P2006−510737)
【国際出願番号】PCT/JP2005/003742
【国際出願日】平成17年3月4日(2005.3.4)
【出願人】(506137147)エーザイ・アール・アンド・ディー・マネジメント株式会社 (215)
【Fターム(参考)】