説明

ベンゾキサゾシンおよびそれらの治療的使用

(1S)−8−シアノ−5−メチル−1−(3−メトキシ)フェニル−1,3,4,6−テトラヒドロ−5H−ベンズ[f]−2,5−オキサゾシン、(1R)−8−シアノ−5−メチル−1−(3−メトキシ)フェニル−1,3,4,6−テトラヒドロ−5H−ベンズ[f]−2,5−オキサゾシン、(1S)−8−シクロプロピル−5−メチル−1−(3−メトキシ)フェニル−1,3,4,6−テトラヒドロ−5H−ベンズ[f]−2,5−オキサゾシン、(1S)−8−シクロプロピル−5−メチル−1−(3−メトキシ)フェニル−1,3,4,6−テトラヒドロ−5H−ベンズ[f]−2,5−オキサゾシン、(1S)−5−メチル−1−(3−メトキシ)フェニル−1,3,4,6−テトラヒドロ−5H−ベンズ[f]−2,5−オキサゾシン−8−カルボキサミド、(1R)−5−メチル−1−(3−メトキシ)フェニル−1,3,4,6−テトラヒドロ−5H−ベンズ[f]−2,5−オキサゾシン−8−カルボキサミドから選択される化合物、およびその塩。これらの化合物は、治療的有用性を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規なベンゾキサゾシンに関し、また例えば鎮痛剤としてのそれらの治療的使用に関する。
【背景技術】
【0002】
ネフォパムベンゾキサゾシン テンプレート化合物であって、モノアミンであるノルアドレナリンの再取込みを選択的に阻害する能力を有するもの(SNRI)、およびモノアミンであるセロトニンの再取込みを選択的に阻害する能力を有するもの(SSRI)が国際公開第2004/056,788号中に記載されている。さらにこの明細書は、これらのモノアミンの両方の取込みを阻害する化合物(S+NRI)を記載している。その明細書は、参照により本明細書に組み込まれている。ネフォパムに関して、向上した有効性、および差別化された選択性を有する化合物が記載されている。8−シアノ−5−メチル−1−(3−メトキシ)フェニル−1,3,4,6−テトラヒドロ−5H−ベンズ[f]−2,5−オキサゾシン、8−シクロプロピル−5−メチル−1−(3−メトキシ)フェニル−1,3,4,6−テトラヒドロ−5H−ベンズ[f]−2,5−オキサゾシン、および5−メチル−1−(3−メトキシ)フェニル−1,3,4,6−テトラヒドロ−5H−ベンズ[f]−2,5−オキサゾシン−8−カルボキサミドなどの化合物が、ラセミ化合物として開示されている。
【0003】
セロトニンおよびノルアドレナリンは、脳および脊髄における下行性疼痛抑制経路を介する内因性鎮痛機序の促進に関係している。生体内の微小透析研究により、デュロキセチンなどのS+NRIが、げっ歯類の脳におけるセロトニンおよびノルアドレナリンの再取込みの有効な阻害剤であることが示されている。さらに、デュロキセチンなどの化合物は、ラットにおける持続性疼痛のホルマリンモデルにおいて後期の足舐め行動を用量依存的に抑制する。この点に関して、デュロキセチンは、別のS+NRIであるベンラファキシンよりも効力があることが示されており、また回転棒試験において神経筋機能障害をも招く投与量でのみ効力が観察されるアミトリプチリンよりも広い治療ウインドウを有する。パロキセチンなどのSSRI、およびチオニソキセチンなどのSNRIは、単独で投与された場合、ホルマリン誘発による後期相の足舐め行動が起こらないようにはしないが、組み合わせて投与された場合には効力が見られる。これらのデータは、セロトニンおよびノルアドレナリンの両方が下行性疼痛経路の重要なメディエータとしての役割を有することを裏付けている。その上、デュロキセチンなどの化合物によるS+NRIは、ヒトにおける持続性疼痛状態について高度に有効かつ安全な治療を提供できる。
【0004】
臨床環境においてSSRIには、うつ病の治療に使用された場合、吐き気、嘔吐、および性機能障害などの、投与量を制約する副作用があることが知られている。アトモキセチンなどのSNRIには、同じ副作用がない。デュロキセチン(S+NRIの1つ)は、うつ病、神経障害性疼痛、および排尿障害の治療が行われた患者に吐き気を誘発する。さらに、この化合物は、シトクロムP450 2D6(CYP 2D6)によって実質的に代謝され、かつ同じ酵素の阻害剤であり、また、他のCYP 2D6阻害剤とも、やはりCYP 2D6により実質的に代謝される化合物とも組み合わせて使用できないものとなっている。このことには、コデインおよびトラマドールなどのいくつかの臨床的に有用な鎮痛剤が含まれる。
【0005】
(発明の概要)
本発明は、選択された化合物が、それらの単一の鏡像異性体として試験した場合に特に有利な性質を示すとの観察に基づいている。例えば、単一の鏡像異性体(1S)−(+)−8−シアノ−5−メチル−1−(3−メトキシ)フェニル−1,3,4,6−テトラヒドロ−5H−ベンズ[f]−2,5−オキサゾシンは、臨床的に関連するCYP 2D6阻害活性が欠けているものであり(IC50=5.7μM)、またある範囲のシトクロムP450酵素により代謝されることが知られている。さらに、この鏡像異性体は、ラセミ混合物の大部分のSSRI活性を含有し(IC50=8.9nM)、かつ親化合物ネフォパムに優る大いに改善された薬物動態学的プロフィルを示す。その上、デュロキセチンとは異なり、(1S)−(+)−8−シアノ−5−メチル−1−(3−メトキシ)フェニル−1,3,4,6−テトラヒドロ−5H−ベンズ[f]−2,5−オキサゾシンは、ラットにおける初期および後期相両方のホルマリン誘発による足舐めが起こらないようにするものであり、これは、この化合物が、急性および持続性疼痛の両方に有用性を見出し得ることを示している。このことは、マウスホットプレートモデルなどの急性痛モデルにおけるこの化合物の効力によって裏付けられ、その場合(1S)−(+)−鏡像異性体は、ラセミ化合物よりも大きい効力を有しているが、そのラセミ化合物は、(1R)−(−)−鏡像異性体よりも大きい効力のものである。
【0006】
意外なことに、8−シクロプロピル−5−メチル−1−(3−メトキシ)フェニル−1,3,4,6−テトラヒドロ−5H−ベンズ[f]−2,5−オキサゾシンについては、状況が幾分異なっている。この場合、両方の鏡像異性体が、興味深い、しかしかなり異なった生物学的活性を有する。(1S)−(+)−シクロプロピル−5−メチル−1−(3−メトキシ)フェニル−1,3,4,6−テトラヒドロ−5H−ベンズ[f]−2,5−オキサゾシンは有効なS+NRI(SRIとしてIC50=5.2nM、またNRIとして46nM)であるが、この化合物は、いくらかのCYP 2D6阻害性をも有する(IC50=1.1μM)。これとは異なり、(1R)−(−)−シクロプロピル−5−メチル−1−(3−メトキシ)フェニル−1,3,4,6−テトラヒドロ−5H−ベンズ[f]−2,5−オキサゾシンはより大きいSSRIプロフィルを有し(SRIとしてIC50=21nM、またNRIとして>1μM)、また、著しく低下したCYP 2D6阻害性を示している(IC50=10μM)。両方の鏡像異性体は、急性および持続性疼痛の両方の治療に有用性を見出し得るものである。実際に、8−シアノ−5−メチル−1−(3−メトキシ)フェニル−1,3,4,6−テトラヒドロ−5H−ベンズ[f]−2,5−オキサゾシンと異なり、シクロプロピル−5−メチル−1−(3−メトキシ)フェニル−1,3,4,6−テトラヒドロ−5H−ベンズ[f]−2,5−オキサゾシンの両方の鏡像異性体は、マウスホットプレートモデルにおいて活性がある。
【0007】
さらに、(1S)−(+)−シクロプロピル−5−メチル−1−(3−メトキシ)フェニル−1,3,4,6−テトラヒドロ−5H−ベンズ[f]−2,5−オキサゾシンも、(1S)−(+)−シアノ−5−メチル−1−(3−メトキシ)フェニル−1,3,4,6−テトラヒドロ−5H−ベンズ[f]−2,5−オキサゾシンも、フェレットでのモルヒネ誘発嘔吐モデルにおいて抗嘔吐作用があることが示されている。その含意は、これらの単一の鏡像異性体が鎮痛剤となる可能性を有し、しかしこの部類の他の化合物に関連している吐き気および嘔吐を生じないものであるということである。
【0008】
(発明の説明)
本発明の化合物は、単一の異性体である。このことは、それらが、逆の異性体に対して少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%、また最も好ましくは少なくとも99%の鏡像体過剰率のものであることを意味する。
【0009】
本発明は、選択された化合物の単一の鏡像異性体、医薬的に活性な塩、多形および「活性な」代謝産物の使用、それらの医薬製剤、ならびに鎮痛剤としてのそれらの治療的有用性に関する。さらに、この部類の化合物は、うつ病、外傷後ストレス障害、物質乱用、中毒、アルコールもしくは薬物依存症(例えばニコチン中毒、アルコール依存症);アカシジア(不穏下肢症候群)、不安/うつ病性障害(例えば双極性障害、全般性不安障害、大うつ病性障害、気分障害、社会不安障害、パニック障害、月経前障害、強迫性障害、外傷後ストレス障害)、注意欠陥多動障害;中枢神経系疾患(例えばアルツハイマー病、認知症、運動異常症、神経変性障害、パーキンソン病、統合失調症)、摂食障害(例えば拒食症、暴食、過食症)、疲労関連症候群(例えば線維筋痛症候群、慢性疲労症候群、複合局部性疼痛症候群、顔面筋痛および非定型胸部痛)、機能性腸障害(例えば過敏性腸症候群)、更年期障害、排尿障害(例えば緊張性尿失禁、切迫尿失禁)、片頭痛、肥満症、痛み(例えば急性、慢性の良性疼痛、あるいは糖尿病性神経障害および帯状疱疹後神経痛を含む神経障害性疼痛、術後痛、癌、手術、関節炎、口腔外科治療、有痛性神経障害、外傷、筋骨格性外傷もしくは疾患、内臓疾患、月経困難症、または片頭痛に関連した痛み)、末梢血管疾患、掻痒症;睡眠障害、性機能障害(例えば勃起不全、女性性機能障害、早発射精)を含むがそれらに限定されない広い範囲の他の適応症において有用である。
【0010】
痛みの治療のために、また上記において強調したものなどの他の疾患および適応症において、本発明の化合物は、無毒性の、医薬的に許容できる担体、補助剤および賦形剤を含有する投与単位製剤として経口的に、局所的に、非経口的に、吸入もしくは鼻噴霧により、または直腸的に投与できる。本明細書において使用される用語、非経口的には、皮下注射、静脈内、筋肉内、胸骨内注射または注入技術が含まれる。マウス、ラット、ウマ、ウシ、ヒツジ、イヌ、ネコなどの温血動物の治療のほかに、本発明の化合物は、ヒトの治療において有効であろう。
【0011】
活性成分を含有する医薬組成物は、例えば錠剤、トローチ、ロゼンジ、水性もしくは油性懸濁液、分散可能な粉末もしくは顆粒、エマルジョン、硬質もしくは軟質カプセル、またはシロップもしくはエリキシルとして経口使用に適した形態のものとしてよい。経口使用を意図した組成物は、医薬組成物の製造のため当分野に知られている任意の方法により調製でき、このような組成物は、医薬として上品かつ口当りのよい製剤を提供するために甘味剤、矯味剤、着色剤、および保存剤からなる群から選択される1種または複数の物質を含有できる。錠剤は、錠剤の製造に適している無毒性の、医薬的に許容できる賦形剤と混和して、有効成分を含有する。これらの賦形剤は、例えば炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、ラクトース、リン酸カルシウムまたはリン酸ナトリウムなどの不活性希釈剤;造粒剤および崩壊剤、例えばコーンスターチ、またはアルギン酸;結合剤、例えばデンプン、ゼラチン、またはアラビアゴム;ならびに潤沢剤、例えばステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、またはタルクとしてよい。錠剤はコーティングしないでもよく、あるいは既知の技術によりコーティングして、消化管内における崩壊および吸収を遅らせ、それによってより長期にわたり持続する作用を提供できる。例えばモノステアリン酸グリセリル、またはジステアリン酸グリセリルなどの時間遅延物質を使用できる。それらの錠剤はまた、米国特許第4,256,108号、米国特許第4,166,452号、および米国特許第4,265,874号に記載されている技術によりコーティングして、制御放出のための浸透性治療錠剤を形成してもよい。
【0012】
経口使用向け製剤は、活性成分を、不活性固体希釈剤、例えば炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、またはカオリンと混合している硬質ゼラチンカプセルとして、あるいは、活性成分を、水、または油性媒質、例えばラッカセイ油、流動パラフィン、またはオリーブ油と混合している軟質ゼラチンカプセルとしても提供できる。
【0013】
水性懸濁液は、水性懸濁液の製造に適している賦形剤と混和して、活性成分を含有する。このような賦形剤は、懸濁剤、例えばカルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、ポリビニル−ピロリドン、トラガカントゴム、およびアラビアゴムである。分散剤または湿潤剤は、天然のリン脂質、例えばレシチン、あるいはアルキレンオキシドと脂肪酸との縮合生成物、例えばポリオキシエチレンステアレート、またはエチレンオキシドと長鎖脂肪族アルコールとの縮合生成物、例えばヘプタデカエチレンオキシセタノール、あるいはエチレンオキシドと脂肪酸およびヘキシトール由来の部分エステルとの縮合生成物、例えばポリオキシエチレンソルビタンモノオレアートであってよい。水性懸濁液はまた、1種または複数の保存剤、例えばエチルまたはn−プロピル p−ヒドロキシベンゾアート、1種または複数の着色剤、1種または複数の矯味剤、および1種または複数の甘味剤(スクロースまたはサッカリンなど)をも含有できる。
【0014】
油性懸濁液は、活性成分を、植物油、例えばラッカセイ油、オリーブ油、ゴマ油、またはヤシ油中に、あるいは流動パラフィンなどの鉱油中に懸濁させることにより製剤できる。油性懸濁液は、増粘剤、例えばミツロウ、固形パラフィン、またはセチルアルコールを含有してよい。上記に示したものなどの甘味剤、および矯味剤を添加して、口当りのよい経口製剤を提供できる。これらの組成物は、アスコルビン酸などの酸化防止剤の添加により保存できる。
【0015】
水の添加により水性懸濁液を調製するのに適した分散可能な粉末および顆粒は、活性成分を、分散剤または湿潤剤、懸濁剤、および1種または複数の保存剤と混和して提供する。適切な分散剤または湿潤剤および懸濁剤は例示されており、例えば甘味剤、矯味剤、および着色剤も存在してよい。
【0016】
本発明の医薬組成物は、水中油型エマルジョンの形態としてもよい。油相は、植物油、例えばオリーブ油もしくはラッカセイ油、または鉱油、例えば流動パラフィン、あるいはこれらの混合物としてよい。適切な乳化剤は、天然のゴム、例えばアラビアゴムまたはトラガカントゴム、天然のリン脂質、例えば大豆レシチン、ならびに脂肪酸およびヘキシトール無水物由来のエステルまたは部分エステル、例えばソルビタンモノオレアート、およびエチレンオキシドとの前記部分エステルの縮合生成物、例えばポリオキシエチレンソルビタンモノオレアートとしてよい。エマルジョンは、甘味剤および矯味剤をも含有できる。
【0017】
シロップおよびエリキシルは、甘味剤、例えばグリセロール、プロピレングリコール、ソルビトール、またはスクロースを用いて製剤できる。このような製剤は、粘滑剤、保存剤、ならびに矯味剤および着色剤をも含有できる。医薬組成物は、無菌注射用の水性もしくは油性懸濁液の形態のものとしてよい。この懸濁液は、上記において挙げている適切な分散剤または湿潤剤および懸濁剤を使用して、既知の技術により製剤できる。無菌注射用製剤は、無毒性の非経口的に許容できる希釈剤または溶媒中の無菌注射溶液または懸濁液、例えば1,3−ブタンジオール中の溶液としてもよい。使用できる許容できる賦形剤および溶媒の中には、水、リンゲル液、および等張性塩化ナトリウム溶液がある。さらに、無菌の不揮発性油が溶媒または懸濁媒として従来から使用されている。この目的のために、合成モノ−またはジグリセリドを含む任意の無刺激不揮発性油が使用できる。さらに、オレイン酸などの脂肪酸が、注射液の調製に用途を見出している。
【0018】
本化合物は、薬物の直腸投与用坐薬の形態でも投与できる。これらの組成物は、薬物を、常温で固体であるが直腸温度では液体であり、そのために直腸内で融解して薬物を放出する適切な無刺激性賦形剤と混合することにより調製することができる。このような物質は、カカオ脂およびポリエチレングリコールである。
【0019】
局所使用のために、本化合物を含有するクリーム、軟膏、ゼリー、溶液、または懸濁液などが用いられる。本明細書の目的のために、局所適用物にはマウスウォッシュおよび含嗽剤が含まれる。
【0020】
体重1キログラム当り1日当り約0.05mg〜約140mgのオーダーの投与量レベルが、上記に示した病態を治療するのに有用である(患者1人当り1日当り約2.5mg〜約7g)。例えば、体重1キログラム当り1日当り約0.01〜50mgの化合物の投与によって、痛みを効果的に治療できる(患者1人当り1日当り約0.5mg〜約3.5g)。
【0021】
担体物質と組み合わせて単一投与形態を形成できる活性成分の量は、治療される宿主、および特定の投与方式に応じて変動するであろう。例えば、ヒトについて経口投与することを意図した製剤では、組成物全体の約5%から約95%まで変動し得る。投与単位形態には、一般に約1mg〜約500mgの活性成分が含有されるであろう。
【0022】
しかし、任意の特定の患者についての固有の投与量レベルは、用いられる特定の化合物の活性、年齢、体重、一般的健康状態、性別、食事、投与時間、投与経路、排泄率、薬物の組合せ、および治療を受ける特定の疾患の重症度を含む、様々な因子によって決まることが理解されるであろう。
【0023】
本発明の単一の鏡像異性体は、キラルHPLCによって、対応するラセミ化合物から分離できる。
【0024】
下記の実施例は、本発明を例証している。
【0025】
(実施例1)
(1S)−8−シアノ−5−メチル−1−(3−メトキシ)フェニル−1,3,4,6−テトラヒドロ−5H−ベンズ[f]−2,5−オキサゾシン
【化1】

【0026】
国際公開第2004/056,788号、実施例22に記載されている通りにラセミ物質を調製した。CHIRALPAK AD20μm(250mm×50mm)クロマトグラフィーカラムを用いて、アセトニトリル100%の溶離液、120ml/分の流速、および290nmにおけるUV波長検出により、8−シアノ−5−メチル−1−(3−メトキシ)フェニル−1,3,4,6−テトラヒドロ−5H−ベンズ[f]−2,5−オキサゾシン(3g)を精製した。第2溶離ピーク、HPLC98.8%、鏡像体過剰率>99.5として、1.02gの黄色油を単離した。
【0027】
(実施例2)
(1R)−8−シアノ−5−メチル−1−(3−メトキシ)フェニル−1,3,4,6−テトラヒドロ−5H−ベンズ[f]−2,5−オキサゾシン
国際公開第2004/056,788号、実施例22に記載されている通りにラセミ物質を調製した。CHIRALPAK AD20μm(250mm×50mm)クロマトグラフィーカラムを用いて、アセトニトリル100%の溶離液、120ml/分の流速、および290nmにおけるUV波長検出により、8−シアノ−5−メチル−1−(3−メトキシ)フェニル−1,3,4,6−テトラヒドロ−5H−ベンズ[f]−2,5−オキサゾシン(3g)を精製した。第1溶離ピーク、HPLC97.0%、鏡像体過剰率>99.5として、528mgの褐色固体を単離した。
【0028】
(実施例3)
単一の鏡像異性体8−シクロプロピル−5−メチル−1−(3−メトキシ)フェニル−1,3,4,6−テトラヒドロ−5H−ベンズ[f]−2,5−オキサゾシン(第2溶離ピーク)
【化2】

【0029】
国際公開第2004/056,788号、実施例29に記載されている通りにラセミ物質を調製した。CHIRALPAK AD20μm(250mm×10mm)クロマトグラフィーカラムを用いて、メタノール100%の溶離液、9ml/分の流速、および280nmにおけるUV波長検出により、8−シクロプロピル−5−メチル−1−(3−メトキシ)フェニル−1,3,4,6−テトラヒドロ−5H−ベンズ[f]−2,5−オキサゾシン(300mg)を精製した。第2溶離ピーク、HPLC97.0%、鏡像体過剰率>99.5として、93mgのピンク色粘性油を単離した。
【0030】
(実施例4)
単一の鏡像異性体8−シクロプロピル−5−メチル−1−(3−メトキシ)フェニル−1,3,4,6−テトラヒドロ−5H−ベンズ[f]−2,5−オキサゾシン(第1溶離ピーク)
国際公開第2004/056,788号、実施例29に記載されている通りにラセミ物質を調製した。CHIRALPAK AD20μm(250mm×10mm)クロマトグラフィーカラムを用いて、メタノール100%の溶離液、9ml/分の流速、および280nmにおけるUV波長検出により、8−シクロプロピル−5−メチル−1−(3−メトキシ)フェニル−1,3,4,6−テトラヒドロ−5H−ベンズ[f]−2,5−オキサゾシン(300mg)を精製した。第1溶離ピーク、HPLC97.2%、鏡像体過剰率>99.5として、89mgのピンク色粘性油を単離した。
【0031】
(実施例5)
単一の鏡像異性体5−メチル−1−(3−メトキシ)フェニル−1,3,4,6−テトラヒドロ−5H−ベンズ[f]−2,5−オキサゾシン−8−カルボキサミド(第2溶離ピーク)
【化3】

【0032】
国際公開第05/103,019号、実施例10に記載されている通りにラセミ物質を調製した。CHIRALPAK AD20μm(245mm×50mm)クロマトグラフィーカラムを用いて、メタノール100%の溶離液、120ml/分の流速、および250nmにおけるUV波長検出により、5−メチル−1−(3−メトキシ)フェニル−1,3,4,6−テトラヒドロ−5H−ベンズ[f]−2,5−オキサゾシン−8−カルボキサミド(105mg)を精製した。第2溶離ピーク、HPLC98.1%、鏡像体過剰率96.3として、50mgの透明なガラス質物質を単離した。
【0033】
(実施例6)
単一の鏡像異性体5−メチル−1−(3−メトキシ)フェニル−1,3,4,6−テトラヒドロ−5H−ベンズ[f]−2,5−オキサゾシン−8−カルボキサミド(第1溶離ピーク)
国際公開第05/103,019号、実施例10に記載されている通りにラセミ物質を調製した。CHIRALPAK AD20μm(245mm×50mm)クロマトグラフィーカラムを用いて、メタノール100%の溶離液、120ml/分の流速、および250nmにおけるUV波長検出により、5−メチル−1−(3−メトキシ)フェニル−1,3,4,6−テトラヒドロ−5H−ベンズ[f]−2,5−オキサゾシン−8−カルボキサミド(105mg)を精製した。第1溶離ピーク、HPLC99.6%、鏡像体過剰率99.4として、50mgの透明なガラス質物質を単離した。
【0034】
下記の試験では、本発明の拠りどころとなる証拠を提供している。
【0035】
(CYP 2D6阻害性)
本発明の化合物は、セロトニンおよびノルアドレナリントランスポーターに対して差別化された活性を有することが示されており、CYP 2D6に対する阻害性を測定するために、基質ベースアッセイで試験している。CYP 2D6阻害性アッセイは、Onoらの方法(1996−Xenobiotica,26:681〜693)に従って行った。5−HTトランスポーター結合アッセイは、Tatsumiらの方法(1997−Eur.J.Pharmacol.,340:249〜258)に従って行った。NAトランスポーター結合アッセイは、Pacholczykらの方法(1991−Nature,350:350〜354)に従って行った。結果を表1に示している。
【表1】

【0036】
(急性鎮痛のマウスホットプレートモデル)
本発明の化合物を、急性鎮痛のマウスホットプレートモデルにおいても評価している。金属製ホットプレート上にマウスを置くと、足舐めによって、またはプレートから飛び上がることによって応答する(Eddyら,1950−J.Pharmacol.Exp.Ther.;98:121〜137)。鎮痛剤は、侵害受容反応潜時を延長させる。
【0037】
マウス(17〜23gのオスSwissマウスICO:OF1)を56±0.2℃に維持した金属製ホットプレート上に置いた。前足の舐め反射により、またはプレートからの飛び出しにより特徴付けられる侵害受容反応潜時を記録した。プレートの加熱中断時間は30秒であった。試験の60分前に、試験用物質および賦形剤を経口投与した。結果を表2に示している(nt=試験されなかった。は統計的有意性が達成されたことを示す)。
【表2】

【0038】
(マウスにおけるホルマリン誘発による足舐め)
本発明の化合物を、マウスのホルマリン誘発による足舐めモデルにおいても評価している。対照標準としてのデュロキセチンおよびネフォパムに対する初期段階応答および後期段階応答の両方について、化合物を評価した。
【0039】
マウスの右後足(20〜25gオスRj:NMRI)への、5%ホルマリン溶液(0.02ml)の足底皮下注射によって、炎症を誘発させた。ホルマリン注射後の0〜5分の間(初期相)および20〜30分の間(後期相)、後足舐め時間を、盲検法で連続的に記録した(Hunskaarら,1985−J.Neurosci.Methods;14:69〜76)。
【0040】
ホルマリン注射の60分前に、試験用物質および賦形剤を経口投与した。結果を表3に示している(nt=試験されなかった。は統計的有意性が達成されたことを示す)。
【表3】

【0041】
(モルヒネ攻撃試験)
本発明の化合物は抗嘔吐作用を有することが、フェレットにおけるモルヒネ攻撃の結果として立証されている。この点に関して、本発明の化合物は、慢性用途についてネフォパムの低副作用可能性を保持する一方で、より大きな有効性、およびより有利な薬物動態学的パラメータを有する。
【0042】
白色種またはケナガイタチであるオスのフェレット(0.9〜1.7kg)にモルヒネを投与して(0.125mg/Kg皮下)、嘔吐を誘発させた。嘔吐は、消化管からの固体または液体物質の経口放出(すなわち嘔吐)と関連しているか、または物質の通過と関連していない(すなわち吐き気を催す運動)かいずれかの律動性腹部収縮により特徴付けられていた。高度に弁別された腹部収縮の回数を計数した。
【0043】
モルヒネ投与の60分前に、腹腔内注射により試験用物質および賦形剤を投与した。結果を表4に示している(は統計的有意性が達成されたことを示す)。
【表4】

【0044】
(絶望行動試験)
本発明の化合物を、抗うつ活性を検出するモデルである絶望行動試験において評価している。
【0045】
絶望行動試験は、Porsoltらの方法(1977−Arch.Int.Pharmacodyn.,229:327〜336)に従って行った。脱出することができない状況において泳ぐことを強制されたマウスは、速やかに無動となる。抗うつ剤は、無動持続時間を短縮する。
【0046】
マウス(20〜27gオスRj:NMRI)を個別に、水(22℃)10cmが入っている円筒(高さ=24cm、直径=13cm)内に置いたが、そこからマウスは脱出することができない。マウスを水中に6分間置き、最後の4分間における無動持続時間を測定した。全ての化合物は、試験の30分前に腹腔内投与し、賦形剤の対照標準群と比較した。結果を表5に示している(nt=試験されなかった。は統計的有意性が達成されたことを示す)。
【表5】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1S)−8−シアノ−5−メチル−1−(3−メトキシ)フェニル−1,3,4,6−テトラヒドロ−5H−ベンズ[f]−2,5−オキサゾシン、
(1R)−8−シアノ−5−メチル−1−(3−メトキシ)フェニル−1,3,4,6−テトラヒドロ−5H−ベンズ[f]−2,5−オキサゾシン、
(1S)−8−シクロプロピル−5−メチル−1−(3−メトキシ)フェニル−1,3,4,6−テトラヒドロ−5H−ベンズ[f]−2,5−オキサゾシン、
(1S)−8−シクロプロピル−5−メチル−1−(3−メトキシ)フェニル−1,3,4,6−テトラヒドロ−5H−ベンズ[f]−2,5−オキサゾシン、
(1S)−5−メチル−1−(3−メトキシ)フェニル−1,3,4,6−テトラヒドロ−5H−ベンズ[f]−2,5−オキサゾシン−8−カルボキサミド、
(1R)−5−メチル−1−(3−メトキシ)フェニル−1,3,4,6−テトラヒドロ−5H−ベンズ[f]−2,5−オキサゾシン−8−カルボキサミド
から選択される化合物、およびその塩。
【請求項2】
(1S)−8−シアノ−5−メチル−1−(3−メトキシ)フェニル−1,3,4,6−テトラヒドロ−5H−ベンズ[f]−2,5−オキサゾシンである、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
(1R)−8−シアノ−5−メチル−1−(3−メトキシ)フェニル−1,3,4,6−テトラヒドロ−5H−ベンズ[f]−2,5−オキサゾシンである、請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
(1S)−8−シクロプロピル−5−メチル−1−(3−メトキシ)フェニル−1,3,4,6−テトラヒドロ−5H−ベンズ[f]−2,5−オキサゾシンである、請求項1に記載の化合物。
【請求項5】
(1S)−8−シクロプロピル−5−メチル−1−(3−メトキシ)フェニル−1,3,4,6−テトラヒドロ−5H−ベンズ[f]−2,5−オキサゾシンである、請求項1に記載の化合物。
【請求項6】
(1S)−5−メチル−1−(3−メトキシ)フェニル−1,3,4,6−テトラヒドロ−5H−ベンズ[f]−2,5−オキサゾシン−8−カルボキサミドである、請求項1に記載の化合物。
【請求項7】
(1R)−5−メチル−1−(3−メトキシ)フェニル−1,3,4,6−テトラヒドロ−5H−ベンズ[f]−2,5−オキサゾシン−8−カルボキサミドである、請求項1に記載の化合物。
【請求項8】
治療において使用するための医薬組成物であって、請求項1から7のいずれか1項に記載の化合物と、医薬的に許容できる希釈剤または担体とを含む医薬組成物。
【請求項9】
請求項1から7のいずれか1項に記載の化合物の使用であって、モノアミン再取込みに関連した病態を治療または予防する薬物を製造するための使用。
【請求項10】
前記病態が、急性、慢性、もしくは神経障害性の疼痛(癌、手術、関節炎、口腔外科治療、有痛性神経障害、外傷、筋骨格性外傷もしくは疾患、または内臓疾患に関連した痛みを含むがそれらに限定されない)、月経困難症、または片頭痛である、請求項9に記載の使用。
【請求項11】
対象が、鎮静剤によっても治療される、請求項10に記載の使用。
【請求項12】
対象が、アセトアミノフェン、非ステロイド系抗炎症薬、麻薬性鎮痛剤、局所麻酔剤、NMDA拮抗薬、神経弛緩剤、抗痙攣剤、鎮痙剤、抗うつ剤、または筋弛緩剤から選択される鎮痛誘導物質によっても治療される、請求項10に記載の使用。
【請求項13】
前記病態が嘔吐である、請求項9に記載の使用。
【請求項14】
前記嘔吐が、急性、遅発性、術後性、最終期、または予測性嘔吐である、請求項13に記載の使用。
【請求項15】
前記嘔吐が、化学療法、放射線、毒素、妊娠、前庭障害、動揺、術後疾病、手術、胃腸障害、胃腸運動性低下、内臓痛、片頭痛、またはオピオイド鎮痛薬によって誘発される、請求項13に記載の使用。
【請求項16】
前記病態が、物質乱用、中毒、またはアルコールもしくは薬物依存症である、請求項9に記載の使用。
【請求項17】
前記病態が、アカシジア(不穏下肢症候群)、うつ病、または不安/うつ病性障害(例えば双極性障害、全般性不安障害、大うつ病性障害、気分障害、社会不安障害、パニック障害、月経前障害、強迫性障害、または外傷後ストレス障害を含むがそれらに限定されない)である、請求項9に記載の使用。
【請求項18】
前記病態が注意欠陥多動障害である、請求項9に記載の使用。
【請求項19】
前記病態が、アルツハイマー病、認知症、運動異常症、神経変性障害、パーキンソン病、または統合失調症などの中枢神経系疾患である、請求項9に記載の使用。
【請求項20】
前記病態が、拒食症、暴飲、または過食症などの摂食障害である、請求項9に記載の使用。
【請求項21】
前記病態が疲労関連症候群(線維筋痛症候群、慢性疲労症候群、複合局部性疼痛症候群、顔面筋痛、または非定型的胸部痛を含むがそれらに限定されない)である、請求項9に記載の使用。
【請求項22】
前記病態が、過敏性腸症候群などの機能性腸障害である、請求項9に記載の使用。
【請求項23】
前記病態が、更年期障害、肥満症、末梢血管疾患、掻痒症、睡眠障害、および性機能障害(勃起不全、女性性機能障害、または早発射精など)から選択される、請求項9に記載の使用。
【請求項24】
前記病態が、緊張性尿失禁または切迫尿失禁などの排尿障害である、請求項9に記載の使用。

【公表番号】特表2008−532992(P2008−532992A)
【公表日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−500272(P2008−500272)
【出願日】平成18年3月10日(2006.3.10)
【国際出願番号】PCT/GB2006/000858
【国際公開番号】WO2006/095187
【国際公開日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【出願人】(507303376)ソーセイ アールアンドディ リミテッド (16)
【Fターム(参考)】