説明

ベンゾフラン誘導体の製造法

【課題】2,3−ジヒドロベンゾフラン誘導体の新規製造法の提供。
【解決手段】(1)式:


〔式中、RおよびRは、水素原子、炭化水素基等、A環、B環はベンゼン環等〕において、Y=ハロゲン原子である原料物質を、式:WH〔式中、Wは


〔式中、C環はベンゼン環等、D環は5ないし7員含窒素複素環等、R、Rは水素原子、炭化水素基等〕〕で表される化合物と反応させ、要すれば脱保護する、(1)式においてY=Wで表される化合物の製造法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベンゾフラン誘導体の製造法、特に、2,3−ジヒドロベンゾフランの5位に置換されていてもよいアミノ基または縮合環状アミノ基を有する化合物の工業的に有利な製造法に関する。
【背景技術】
【0002】
2,3−ジヒドロベンゾフラン環を有する誘導体は種々の薬理活性が報告されており、その工業的に有利な合成法が広く求められている。2,3−ジヒドロベンゾフラン環の構築法としては、例えば、特許文献1、特許文献2、特許文献3、特許文献4に記載された方法等が知られている。また、2,3−ジヒドロベンゾフラン環の5位に置換アミノ基が導入された化合物は有用な生理活性を有する化合物が多く、重要である。
従来、2,3−ジヒドロベンゾフラン環の5位に置換アミノ基を導入するためには、特許文献5に記載されているように、あらかじめ所望の位置に置換アミノ基が導入されたフェノール誘導体を原料として用いて2,3−ジヒドロベンゾフランを構築するか、5位が無置換の2,3−ジヒドロベンゾフランのニトロ化、ニトロソ化を行った後に、還元反応に付し合成する方法が知られている。2,3−ジヒドロベンゾフラン化合物の有用性に鑑み、これらの工業的生産に適した、より緩和な反応条件下での好収率の製造法の提供が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5−194466号公報
【特許文献2】EP−A−483772
【特許文献3】特開平5−140142号公報
【特許文献4】WO98/08842
【特許文献5】WO00/34262
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような事情に鑑み、本発明は、2,3−ジヒドロベンゾフラン環を有するベンゾフラン誘導体の新規製造法、とりわけ、2,3−ジヒドロベンゾフラン環の5位に置換アミノ基ないしはイソインドリル基等ベンゼン環縮合環状アミノ基を有する化合物の効率的かつ簡便な、工業的生産に適した新規な製造法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、前記目的を達成するため鋭意研究を重ねた結果、2,3−ジヒドロベンゾフラン環の効率的かつ簡便なる構築法を見いだすとともに、2,3−ジヒドロベンゾフラン環が位置選択的に、特にその5位がハロゲン化され、さらにこのハロゲン原子がアミン誘導体によって容易に置換されることを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0006】
すなわち、本発明は、
(1)式:
【化1】

〔式中、RおよびRは、同一または異なって、水素原子、置換基を有していてもよい炭化水素基または置換基を有していてもよい複素環基を示すか、あるいはRとRが、隣接する炭素原子と共に置換基を有していてもよい3ないし8員同素または複素環を形成していてもよく、Yはハロゲン原子を示し、A環はY以外に、さらに置換基を有していてもよいベンゼン環を示し、B環は置換基を有していてもよいベンゼン環を示す。〕で表される化合物またはその塩を、式:
【化2】

〔式中、Wは
(i)式:
【化3】

(式中、C環は置換基を有していてもよいベンゼン環を示し、D環はハロゲンまたは置換基を有していてもよい炭化水素基で置換されていてもよい5ないし7員含窒素複素環を示す。)で表される基または
(ii)式:
【化4】

(式中、Rは〈1〉水素原子、〈2〉置換基を有していてもよい芳香族基で置換され、かつさらに置換基を有していてもよい脂肪族炭化水素基または〈3〉置換基を有していてもよい芳香族基を含有するアシル基を示し、Rは水素原子、置換基を有していてもよい炭化水素基またはアシル基を示し、あるいはRとRは隣接する窒素原子と共に置換基を有していてもよい4ないし8員含窒素環を形成していてもよい。)〕で表される化合物またはその塩と反応させ、要すれば脱保護することを特徴とする、式:
【化5】

〔式中、A環はW以外にさらに置換基を有していてもよいベンゼン環を示し、他の記号は前記と同意義を示す。〕で表される化合物またはその塩の製造法、
(2)Wが2,3−ジヒドロベンゾフラン環の5位に位置する化合物またはその塩を製造する前記(1)記載の製造法、
(3)式:
【化6】

〔式中、RおよびRは、同一または異なって、水素原子、置換基を有していてもよい炭化水素基または置換基を有していてもよい複素環基を示すか、あるいはRとRが、隣接する炭素原子と共に置換基を有していてもよい3ないし8員同素または複素環を形成していてもよく、A環はRHN以外にさらに置換基を有していてもよいベンゼン環を示し、B環は置換基を有していてもよいベンゼン環を示し、Rは〈1〉水素原子、〈2〉置換基を有していてもよい芳香族基で置換され、かつさらに置換基を有していてもよい脂肪族炭化水素基または〈3〉置換基を有していてもよい芳香族基を含有するアシル基を示す。〕で表される化合物またはその塩を製造する前記(1)記載の製造法、
(4)式:
【化7】

〔式中、RおよびRは、同一または異なって、水素原子、置換基を有していてもよい炭化水素基または置換基を有していてもよい複素環基を示すか、あるいはRとRが、隣接する炭素原子と共に置換基を有していてもよい3ないし8員同素または複素環を形成していてもよく、Yはハロゲン原子を示し、A環はY以外に、さらに置換基を有していてもよいベンゼン環を示し、B環は置換基を有していてもよいベンゼン環を示す。〕で表される化合物またはその塩が、式:
【化8】

〔式中、Y’は水素原子またはハロゲン原子を示し、A環はY’以外にさらに置換基を有していてもよいベンゼン環を示し、他の記号は前記と同意義を示す。〕で表される化合物またはその塩を、酸の存在下に閉環反応に付し、Y’が水素原子の場合は反応生成物をさらにハロゲン化して製造される前記(1)記載の製造法、
(5)式:
【化9】

〔式中、RおよびRは、同一または異なって、水素原子、置換基を有していてもよい炭化水素基または置換基を有していてもよい複素環基を示すか、あるいはRとRが、隣接する炭素原子と共に置換基を有していてもよい3ないし8員同素または複素環を形成していてもよく、Y’は水素原子またはハロゲン原子を示し、A環はY’以外に、さらに置換基を有していてもよいベンゼン環を示し、B環は置換基を有していてもよいベンゼン環を示す。〕で表される化合物またはその塩が、式:
【化10】

〔式中、各記号は前記と同意義を示す。〕で表される化合物またはその塩を還元反応に付して製造される前記(4)記載の製造法、
(6)式:
【化11】

〔式中、RおよびRは、同一または異なって、水素原子、置換基を有していてもよい炭化水素基または置換基を有していてもよい複素環基を示すか、あるいはRとRが、隣接する炭素原子と共に置換基を有していてもよい3ないし8員同素または複素環を形成していてもよく、Y’は水素原子またはハロゲン原子を示し、A環はY’以外に、さらに置換基を有していてもよいベンゼン環を示し、B環は置換基を有していてもよいベンゼン環を示す。〕で表される化合物またはその塩が、式:
【化12】

〔式中、各記号は前記と同意義を示す。〕で表される化合物またはその塩と、式:
【化13】

〔式中、Xはハロゲン原子またはOSOR(RはC1−6アルキル基または置換基を有していてもよいC6−14アリール基を示す。)を示し、他の記号は前記と同意義を示す。〕で表される化合物またはその塩とを塩基の存在下に反応させて製造される前記(5)記載の製造法、及び
(7)式:
【化14】

〔式中、RおよびRは、同一または異なって、水素原子、置換基を有していてもよい炭化水素基または置換基を有していてもよい複素環基を示すか、あるいはRとRが、隣接する炭素原子と共に置換基を有していてもよい3ないし8員同素または複素環を形成していてもよく、Yはハロゲン原子を示し、A環はY以外に、さらに置換基を有していてもよいベンゼン環を示し、B環は置換基を有していてもよいベンゼン環を示す。〕で表される化合物またはその塩が、式:
【化15】

〔式中、Y’は水素原子またはハロゲン原子を示し、A環はY’以外にさらに置換基を有していてもよいベンゼン環を示し、他の記号は前記と同意義を示す。〕で表される化合物またはその塩と、式:
【化16】

〔[式中、各記号は前記と同意義を示す。〕で表される化合物またはその塩とを酸の存在下に反応させ、Y’が水素原子の場合は反応生成物をさらにハロゲン化して製造される前記(1)記載の製造法を提供するものである。
【0007】
本発明の製造法においては、
(8)2−メチル−1−(4−メチルフェニル)−2−(2,3,5−トリメチルフェノキシ)−1−プロパノン、
(9)2−メチル−1−(4−メチルフェニル)−2−(2,3,5−トリメチルフェノキシ)−1−プロパノール、
(10)5−ブロモ−2,2,4,6,7−ペンタメチル−3−(4−メチルフェニル)−2,3−ジヒドロ−1−ベンゾフラン、及び
(11)N−ベンジル−2,2,4,6,7−ペンタメチル−3−(4−メチルフェニル)−2,3−ジヒドロ−1−ベンゾフラン−5−アミン
の新規化合物が得られ、本発明はまた、これら新規な化合物も提供するものである。
【発明の効果】
【0008】
以上記載したごとく、本発明によれば、従来の方法よりも少ない工程数で、かつ穏和な反応条件下に、2,3−ジヒドロベンゾフラン環に良好な位置選択性で置換基を導入できる。したがって、本発明により、副反応が抑えられ、工程全体としてより高収率が達成される医薬として有用なベンゾフラン誘導体の工業的生産に好適な新規製造法が提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
前記式中、RまたはRで示される「置換基を有していてもよい炭化水素基」の「炭化水素基」としては、例えば、鎖状または環状炭化水素基(例、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、アリール等)等が挙げられる。このうち、炭素数1ないし16個の鎖状または環状炭化水素基等が好ましい。
「アルキル」としては、例えばC1−6アルキル(例、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、ペンチル、ヘキシル等)等が好ましい。
「アルケニル」としては、例えばC2−6アルケニル(例、ビニル、アリル、イソプロペニル、ブテニル、イソブテニル、sec-ブテニル等)等が好ましい。
「アルキニル」としては、例えばC2−6アルキニル(例、エチニル、プロパルギル、ブチニル、1−ヘキシニル等)等が好ましい。
「シクロアルキル」としては、例えばC3−6シクロアルキル(例、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル等)等が好ましい。
「アリール」としては、例えばC6−14アリール(例、フェニル、1−ナフチル、2−ナフチル、ビフェニリル、2−アンスリル等)等が好ましい。
またはRで示される「置換基を有していてもよい炭化水素基」の「置換基」としては、例えば(1)ハロゲン原子(例、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素等)、(2)C1−3アルキレンジオキシ(例、メチレンジオキシ、エチレンジオキシ等)、(3)ニトロ、(4)シアノ、(5)ハロゲン化されていてもよいC1−6アルキル、(6)ハロゲン化されていてもよいC2−6アルケニル、(7)ハロゲン化されていてもよいC2−6アルキニル、(8)ハロゲン化されていてもよいC3−6シクロアルキル、(9)C6−14アリール(例、フェニル、1−ナフチル、2−ナフチル、ビフェニリル、2−アンスリル等)、(10)ハロゲン化されていてもよいC1−6アルコキシ、(11)ハロゲン化されていてもよいC1−6アルキルチオまたはメルカプト、(12)ヒドロキシ、(13)アミノ、(14)モノ−C1−6アルキルアミノ(例、メチルアミノ、エチルアミノ等)、(15)モノ−C6−14アリールアミノ(例、フェニルアミノ、1−ナフチルアミノ、2−ナフチルアミノ等)、(16)ジ−C1−6アルキルアミノ(例、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ等)、(17)ジ−C6−14アリールアミノ(例、ジフェニルアミノ等)、(18)アシル、(19)アシルアミノ、(20)アシルオキシ、(21)置換基を有していてもよい5ないし7員飽和環状アミノ、(22)5ないし10員芳香族複素環基(例、2−または3−チエニル、2−,3−または4−ピリジル、2−,3−,4−,5−または8−キノリル、1−,3−,4−または5−イソキノリル、1−,2−または3−インドリル、2−ベンゾチアゾリル、2−ベンゾ[b]チエニル、ベンゾ[b]フラニル等)、(23)スルホ、(24)C6−14アリールオキシ(例、フェニルオキシ、ナフチルオキシ等)等が挙げられる。
該「炭化水素基」は、例えば上記置換基を、置換可能な位置に1ないし5個、好ましくは1ないし3個有していてもよく、置換基数が2個以上の場合、各置換基は同一または異なっていてもよい。
【0010】
前記「ハロゲン化されていてもよいC1−6アルキル」としては、例えば1ないし5個、好ましくは1ないし3個のハロゲン原子(例、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素等)を有していてもよいC1−6アルキル(例、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、ペンチル、ヘキシル等)等が挙げられる。具体例としては、メチル、クロロメチル、ジフルオロメチル、トリクロロメチル、トリフルオロメチル、エチル、2−ブロモエチル、2,2,2−トリフルオロエチル、ペンタフルオロエチル、プロピル、3,3,3−トリフルオロプロピル、イソプロピル、ブチル、4,4,4−トリフルオロブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、5,5,5−トリフルオロペンチル、ヘキシル、6,6,6−トリフルオロヘキシル等が挙げられる。
前記「ハロゲン化されていてもよいC2−6アルケニル」としては、例えば1ないし5個、好ましくは1ないし3個のハロゲン原子(例、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素等)を有していてもよいC2−6アルケニル(例、ビニル、アリル、イソプロペニル、ブテニル、イソブテニル、sec-ブテニル等)等が挙げられる。具体例としては、ビニル、アリル、イソプロペニル、ブテニル、イソブテニル、sec-ブテニル、3,3,3−トリフルオロ−1−プロペニル、4,4,4−トリフルオロ−1−ブテニル等が挙げられる。
前記「ハロゲン化されていてもよいC2−6アルキニル」としては、例えば1ないし5個、好ましくは1ないし3個のハロゲン原子(例、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素等)を有していてもよいC2−6アルキニル(例、エチニル、プロパルギル、ブチニル、1−ヘキシニル等)等が挙げられる。具体例としては、エチニル、プロパルギル、ブチニル、1−ヘキシニル、3,3,3−トリフルオロ−1−プロピニル、4,4,4−トリフルオロ−1−ブチニル等が挙げられる。
前記「ハロゲン化されていてもよいC3−6シクロアルキル」としては、例えば1ないし5個、好ましくは1ないし3個のハロゲン原子(例、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素等)を有していてもよいC3−6シクロアルキル(例、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル等)等が挙げられる。具体例としては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、4,4−ジクロロシクロヘキシル、2,2,3,3−テトラフルオロシクロペンチル、4−クロロシクロヘキシル等が挙げられる。
前記「ハロゲン化されていてもよいC1−6アルコキシ」としては、例えば1ないし5個、好ましくは1ないし3個のハロゲン原子(例、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素等)を有していてもよいC1−6アルコキシ(例、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、イソブトキシ、sec-ブトキシ、ペンチルオキシ、ヘキシルオキシ等)等が挙げられる。具体例としては、例えばメトキシ、ジフルオロメトキシ、トリフルオロメトキシ、エトキシ、2,2,2−トリフルオロエトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、4,4,4−トリフルオロブトキシ、イソブトキシ、sec-ブトキシ、ペンチルオキシ、ヘキシルオキシ等が挙げられる。
【0011】
前記「ハロゲン化されていてもよいC1−6アルキルチオ」としては、例えば1ないし5個、好ましくは1ないし3個のハロゲン原子(例、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素等)を有していてもよいC1−6アルキルチオ(例、メチルチオ、エチルチオ、プロピルチオ、イソプロピルチオ、ブチルチオ、sec-ブチルチオ、tert-ブチルチオ等)等が挙げられる。具体例としては、メチルチオ、ジフルオロメチルチオ、トリフルオロメチルチオ、エチルチオ、プロピルチオ、イソプロピルチオ、ブチルチオ、4,4,4−トリフルオロブチルチオ、ペンチルチオ、ヘキシルチオ等が挙げられる。
前記「アシル」としては、例えばホルミル、カルボキシ、カルバモイル、C1−6アルキル−カルボニル(例、アセチル、プロピオニル等)、C3−6シクロアルキル−カルボニル(例、シクロプロピルカルボニル、シクロペンチルカルボニル、シクロヘキシルカルボニル等)、C1−6アルコキシ−カルボニル(例、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、プロポキシカルボニル、tert-ブトキシカルボニル等)、C6−14アリール−カルボニル(例、ベンゾイル、1−ナフトイル、2−ナフトイル等)、C7−16アラルキル−カルボニル(例、フェニルアセチル、フェニルプロピオニル等)、C6−14アリールオキシ−カルボニル(例、フェノキシカルボニル等)、C7−16アラルキルオキシ−カルボニル(例、ベンジルオキシカルボニル、フェネチルオキシカルボニル等)、5または6員複素環カルボニル(例、ニコチノイル、イソニコチノイル、2−テノイル、3−テノイル、2−フロイル、3−フロイル、モルホリノカルボニル、チオモルホリノカルボニル、ピペリジノカルボニル、1−ピロリジニルカルボニル等)、モノ−C1−6アルキル−カルバモイル(例、メチルカルバモイル、エチルカルバモイル等)、ジ−C1−6アルキル−カルバモイル(例、ジメチルカルバモイル、ジエチルカルバモイル、エチルメチルカルバモイル等)、C6−14アリール−カルバモイル(例、フェニルカルバモイル、1−ナフチルカルバモイル、2−ナフチルカルバモイル等)、チオカルバモイル、5または6員複素環カルバモイル(例、2−ピリジルカルバモイル、3−ピリジルカルバモイル、4−ピリジルカルバモイル、2−チエニルカルバモイル、3−チエニルカルバモイル等)、C1−6アルキルスルホニル(例、メチルスルホニル、エチルスルホニル等)、C6−14アリールスルホニル(例、フェニルスルホニル、1−ナフチルスルホニル、2−ナフチルスルホニル等)、C1−6アルキルスルフィニル(例、メチルスルフィニル、エチルスルフィニル等)、C6−14アリールスルフィニル(例、フェニルスルフィニル、1−ナフチルスルフィニル、2−ナフチルスルフィニル等)等が挙げられる。
【0012】
前記「アシルアミノ」としては、例えばホルミルアミノ、C1−6アルキル−カルボニルアミノ(例、アセチルアミノ等)、C6−14アリール−カルボニルアミノ(例、フェニルカルボニルアミノ、ナフチルカルボニルアミノ等)、C1−6アルコキシ−カルボキニルアミノ(例、メトキシカルボニルアミノ、エトキシカルボニルアミノ、プロポキシカルニルアミノ、ブトキシカルボニルアミノ等)、C1−6アルキルスルホニルアミノ(例、メチルスルホニルアミノ、エチルスルホニルアミノ等)、C6−14アリールスルホニルアミノ(例、フェニルスルホニルアミノ、2−ナフチルスルホニルアミノ、1−ナフチルスルホニルアミノ等)等が挙げられる。
前記「アシルオキシ」としては、例えばC1−6アルキル−カルボニルオキシ(例、アセトキシ、プロピオニルオキシ等)、C6−14アリール−カルボニルオキシ(例、ベンゾイルオキシ、ナフチルカルボニルオキシ等)、C1−6アルコキシ−カルボニルオキシ(例、メトキシカルボニルオキシ、エトキシカルボニルオキシ、プロポキシカルボニルオキシ、ブトキシカルボニルオキシ等)、モノ−C1−6アルキル−カルバモイルオキシ(例、メチルカルバモイルオキシ、エチルカルバモイルオキシ等)、ジ−C1−6アルキル−カルバモイルオキシ(例、ジメチルカルバモイルオキシ、ジエチルカルバモイルオキシ等)、C6−14アリール−カルバモイルオキシ(例、フェニルカルバモイルオキシ、ナフチルカルバモイルオキシ等)、ニコチノイルオキシ等が挙げられる。
【0013】
前記「置換基を有していてもよい5ないし7員飽和環状アミノ」の「5ないし7員飽和環状アミノ」としては、例えばモルホリノ、チオモルホリノ、ピペラジン−1−イル、ピペリジノ、ピロリジン−1−イル等が挙げられる。該「置換基を有していてもよい5ないし7員飽和環状アミノ」の「置換基」としては、例えばC1−6アルキル(例、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、ペンチル、ヘキシル等)、C6−14アリール(例、フェニル、1−ナフチル、2−ナフチル、ビフェニリル、2−アンスリル等)、5ないし10員芳香族複素環基(例、2−または3−チエニル、2−,3−または4−ピリジル、2−,3−,4−,5−または8−キノリル、1−,3−,4−または5−イソキノリル、1−,2−または3−インドリル、2−ベンゾチアゾリル、2−ベンゾ[b]チエニル、ベンゾ[b]フラニル等)等が1ないし3個挙げられる。
【0014】
またはRで示される「置換基を有していてもよい複素環基」の「複素環基」としては、炭素原子以外に窒素原子,硫黄原子および酸素原子から選ばれるヘテロ原子を1ないし4個含む5ないし14員複素環基(芳香族複素環基、飽和または不飽和の非芳香族複素環基)等が挙げられる。
該「芳香族複素環基」としては、例えば炭素原子以外に窒素原子、硫黄原子および酸素原子から選ばれるヘテロ原子を1個以上(例えば1ないし4個)を含む5ないし14員、好ましくは5ないし10員の芳香族複素環基等が挙げられる。具体的には、チオフェン、ベンゾチオフェン、ベンゾフラン、ベンズイミダゾール、ベンズオキサゾール、ベンゾチアゾール、ベンズイソチアゾール、ナフト[2,3−b]チオフェン、フラン、イソインドリジン、キサントレン、フェノキサチイン、ピロール、イミダゾール、ピラゾール、ピリジン、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、インドール、イソインドール、1H−インダゾール、プリン、4H−キノリジン、イソキノリン、キノリン、フタラジン、ナフチリジン、キノキサリン、キナゾリン、シンノリン、カルバゾール、β−カルボリン、フェナントリジン、アクリジン、フェナジン、チアゾール、イソチアゾール、フェノチアジン、オキサゾール、イソオキサゾール、フラザン、フェノキサジン等の芳香族複素環、またはこれらの環(好ましくは単環)が1ないし複数個(好ましくは1または2個)の芳香環(例、ベンゼン環等)と縮合して形成された環から任意の水素原子を除いてできる1価基等が挙げられる。
「芳香族複素環基」の好ましい例としては、1個のベンゼン環と縮合していてもよい5または6員芳香族複素環基等が挙げられる。具体例としては、2−,3−または4−ピリジル、2−,3−,4−,5−または8−キノリル、1−,3−,4−または5−イソキノリル、1−,2−または3−インドリル、2−ベンゾチアゾリル、2−ベンゾ[b]チエニル、ベンゾ[b]フラニル、2−または3−チエニル等が挙げられる。さらに好ましくは、2−または3−チエニル、2−,3−または4−ピリジル、2−または3−キノリル、1−イソキノリル、1−または2−インドリル、2−ベンゾチアゾリル等である。
「非芳香族複素環基」としては、例えばオキシラニル、アゼチジニル、オキセタニル、チエタニル、ピロリジニル、テトラヒドロフリル、チオラニル、ピペリジル、テトラヒドロピラニル、モルホリニル、チオモルホリニル、ピペラジニル等の3ないし8員(好ましくは5または6員)の飽和あるいは不飽和(好ましくは飽和)の非芳香族複素環基(脂肪族複素環基)等が挙げられる。
【0015】
またはRで示される「置換基を有していてもよい複素環基」の「置換基」としては、前記RまたはRで示される「置換基を有していてもよい炭化水素基」の「置換基」と同様のものが同個数用いられる。
とRとで形成される「置換基を有していてもよい3ないし8員同素環」の「3ないし8員同素環」としては、例えばシクロプロパン、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン等のC3−8シクロアルカン等が挙げられる。
とRとで形成される「置換基を有していてもよい3ないし8員複素環」の「3ないし8員複素環」としては、例えばアジリジン、アゼチジン、モルホリン、チオモルホリン、ピペラジン、ピペリジン、ピロリジン、ヘキサメチレンイミン、ヘプタメチレンイミン、ヘキサヒドロピリミジン等の炭素原子以外に窒素原子,硫黄原子および酸素原子から選ばれるヘテロ原子を1ないし4個含む3ないし8員複素環が挙げられる。
とRとで形成される「置換基を有していてもよい3ないし8員同素または複素環」の「置換基」としては、前記RまたはRで示される「置換基を有していてもよい炭化水素基」の「置換基」と同様のものが同個数用いられる。
【0016】
前記式中、Yはハロゲン原子、Y’はハロゲン原子または水素原子を示す。
YおよびY’で示されるハロゲン原子としては、例えば、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素等が挙げられる。
前記式中、A環は式中に示される置換基(すなわち、Y、Y’、WまたはRHN−)以外にさらに置換基を有していてもよいベンゼン環を示す。その「置換基」としては、前記RまたはRで示される「置換基を有していてもよい炭化水素基」の「置換基」と同様のものを、置換可能な位置に1ないし3個(好ましくは2または3個)有していてもよく、置換基数が2個以上の場合、各置換基は同一または異なっていてもよい。
B環は置換されていてもよいベンゼン環を示し、その置換基としては前記RまたはRで示される「置換基を有していてもよい炭化水素基」の「置換基」と同様のものが挙げられ、置換可能な位置に1ないし3個有していてもよく、置換基数が2個以上の場合、各置換基は同一または異なっていてもよい。
前記式中、Wは
(i)式:
【化17】

(式中、C環は置換基を有していてもよいベンゼン環を示し、D環はハロゲンまたは置換基を有していてもよい炭化水素基で置換されていてもよい5ないし7員含窒素複素環を示す。)で表される基または
(ii)式:
【化18】

(式中、Rは(1)水素原子、(2)置換基を有していてもよい芳香族基で置換され、かつさらに置換基を有していてもよい脂肪族炭化水素基または(3)置換基を有していてもよい芳香族基を含有するアシル基を示し、Rは水素原子、置換基を有していてもよい炭化水素基またはアシル基を示し、あるいはRとRは隣接する窒素原子と共に置換基を有していてもよい4ないし8員環を形成していてもよい。)で表される基を示す。
式WaにおけるC環で示される「置換基を有していてもよいベンゼン環」の「置換基」としては、前記RまたはRで示される「置換基を有していてもよい炭化水素基」の「置換基」と同様のものを、置換可能な位置に1ないし4個(好ましくは1または2個)有していてもよく、置換基数が2個以上の場合、各置換基は同一または異なっていてもよい。
D環で示される「5ないし7員含窒素複素環」としては、例えばピロール(例、1H−ピロール等)、ジヒドロピロール(例、2,5−ジヒドロ−1H−ピロール等)、ジヒドロピリジン(例、1,2−ジヒドロピリジン等)、テトラヒドロピリジン(例、1,2,3,4−テトラヒドロピリジン等)、アゼピン(例、1H−アゼピン等)、ジヒドロアゼピン(例、2,3−ジヒドロ−1H−アゼピン、2,5−ジヒドロ−1H−アゼピン、2,7−ジヒドロ−1H−アゼピン等)、テトラヒドロアゼピン(例、2,3,6,7−テトラヒドロ−1H−アゼピン、2,3,4,7−テトラヒドロ−1H−アゼピン等)等の5ないし7員含窒素複素環等が挙げられる。
D環が有していてもよい「置換基」としての「ハロゲン」としては、例えばフッ素、塩素、臭素、ヨウ素等が挙げられる。
D環が有していてもよい「置換基」としての「置換基を有していてもよい炭化水素基」としては、前記RまたはRで示される「置換基を有していてもよい炭化水素基」と同様のものが用いられる。
D環はこれらの置換基を置換可能な位置に1ないし3個有していてもよく、置換基数が2個以上の場合、各置換基は同一または異なっていてもよい。
【0017】
式WbにおけるRで示される「置換基を有していてもよい芳香族基で置換され、かつさらに置換基を有していてもよい脂肪族炭化水素基」の置換基としての「置換基を有していてもよい芳香族基」の「芳香族基」としては、芳香族炭化水素基、芳香族複素環基等が挙げられる。
該「芳香族炭化水素基」としては、例えば炭素数6ないし14個の単環式または縮合多環式(2または3環式)芳香族炭化水素基等が挙げられる。その具体例として、例えばフェニル、1−ナフチル、2−ナフチル、ビフェニリル、アンスリル等のC6−14アリール等、好ましくは例えばフェニル、1−ナフチル、2−ナフチル等のC6−10アリール等が挙げられる。
該「芳香族複素環基」としては、例えば炭素原子以外に窒素原子、硫黄原子および酸素原子から選ばれるヘテロ原子を1個以上(例えば1ないし4個)を含む5ないし14員、好ましくは5ないし10員の芳香族複素環基等が挙げられる。具体的には、チオフェン、ベンゾチオフェン、ベンゾフラン、ベンズイミダゾール、ベンズオキサゾール、ベンゾチアゾール、ベンズイソチアゾール、ナフト[2,3−b]チオフェン、フラン、イソインドリジン、キサントレン、フェノキサチイン、ピロール、イミダゾール、ピラゾール、ピリジン、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、インドール、イソインドール、1H−インダゾール、プリン、4H−キノリジン、イソキノリン、キノリン、フタラジン、ナフチリジン、キノキサリン、キナゾリン、シンノリン、カルバゾール、β−カルボリン、フェナントリジン、アクリジン、フェナジン、チアゾール、イソチアゾール、フェノチアジン、オキサゾール、イソオキサゾール、フラザン、フェノキサジン等の芳香族複素環、またはこれらの環(好ましくは単環)が1ないし複数個(好ましくは1または2個)の芳香環(例、ベンゼン環等)と縮合して形成された環から任意の水素原子を除いてできる1価基等が挙げられる。
「芳香族複素環基」の好ましい例としては、1個のベンゼン環と縮合していてもよい5または6員芳香族複素環基等が挙げられる。具体例としては、2−,3−または4−ピリジル、2−,3−,4−,5−または8−キノリル、1−,3−,4−または5−イソキノリル、1−,2−または3−インドリル、2−ベンゾチアゾリル、2−ベンゾ[b]チエニル、ベンゾ[b]フラニル、2−または3−チエニル等が挙げられる。さらに好ましくは、2−または3−チエニル、2−,3−または4−ピリジル、2−または3−キノリル、1−イソキノリル、1−または2−インドリル、2−ベンゾチアゾリル等である。
該「置換基を有していてもよい芳香族基」の「置換基」としては、前記RまたはRで示される「置換基を有していてもよい炭化水素基」の「置換基」と同様のものが同個数用いられる。
【0018】
で示される「置換基を有していてもよい芳香族基で置換され、かつさらに置換基を有していてもよい脂肪族炭化水素基」の「脂肪族炭化水素基」としては、例えばアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル等が挙げられる。中でも、C1−10アルキル、C2−10アルケニル、C2−10アルキニル、C3−10シクロアルキル等が好ましい。
「アルキル」としては、例えばC1−6アルキル(例、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、ペンチル、ヘキシル等)等が好ましい。
「アルケニル」としては、例えばC2−6アルケニル(例、ビニル、アリル、イソプロペニル、ブテニル、イソブテニル、sec-ブテニル等)等が好ましい。
「アルキニル」としては、例えばC2−6アルキニル(例、エチニル、プロパルギル、ブチニル、1−ヘキシニル等)等が好ましい。
「シクロアルキル」としては、例えばC3−6シクロアルキル(例、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル等)等が好ましい。
中でも、C1−6アルキルが好ましい。
該「脂肪族炭化水素基」は、「置換基を有していてもよい芳香族基」を、置換可能な位置に少なくとも1個有する。このような芳香族基をさらに1ないし2個有していてもよく、置換基数が2個以上の場合、各置換基は同一または異なっていてもよい。
該「脂肪族炭化水素基」がさらに有していていてもよい「置換基」としては、前記RまたはRで示される「置換基を有していてもよい炭化水素基」の「置換基」と同様のものが同個数用いられる。
で示される「置換基を有していてもよい芳香族基を含有するアシル基」の「アシル基」としては、前記RまたはRで示される「置換基を有していてもよい炭化水素基」の「置換基」としての「アシル基」と同様のものが用いられる。
で示される「置換基を有していてもよい芳香族基を含有するアシル基」の「置換基を有していてもよい芳香族基」としては、前記Rで示される「置換基を有していてもよい芳香族基を有し、かつさらに置換基を有していてもよい脂肪族炭化水素基」の「置換基を有していてもよい芳香族基」と同様のものが用いられる。
で示される「置換基を有していてもよい芳香族基を含有するアシル基」の具体例としては、C6−14アリール−カルボニル(例、ベンゾイル、1−ナフトイル、2−ナフトイル等)、C7−16アラルキル−カルボニル(例、フェニルアセチル、フェニルプロピオニル等)、C6−14アリールオキシ−カルボニル(例、フェノキシカルボニル等)、C7−16アラルキルオキシ−カルボニル(例、ベンジルオキシカルボニル、フェネチルオキシカルボニル等)、5または6員複素環カルボニル(例、ニコチノイル、イソニコチノイル、2−テノイル、3−テノイル、2−フロイル、3−フロイル、モルホリノカルボニル、チオモルホリノカルボニル、ピペリジノカルボニル、1−ピロリジニルカルボニル等)、C6−14アリール−カルバモイル(例、フェニルカルバモイル、1−ナフチルカルバモイル、2−ナフチルカルバモイル等)、5または6員複素環カルバモイル(例、2−ピリジルカルバモイル、3−ピリジルカルバモイル、4−ピリジルカルバモイル、2−チエニルカルバモイル、3−チエニルカルバモイル等)、C6−14アリールスルホニル(例、フェニルスルホニル、1−ナフチルスルホニル、2−ナフチルスルホニル等)、C6−14アリールスルフィニル(例、フェニルスルフィニル、1−ナフチルスルフィニル、2−ナフチルスルフィニル等)等が好ましい。
【0019】
で示される「置換基を有していてもよい炭化水素基」としては前記RまたはRで示される「置換基を有していてもよい炭化水素基」と同様な基が、また、「アシル基」としては、前記RまたはRで示される「置換基を有していてもよい炭化水素基」の「置換基」としての「アシル基」と同様のものが用いられる。
隣接する窒素原子と共にRとRとで形成される「置換基を有していてもよい4ないし8員含窒素環」の「4ないし8員含窒素環」としては、例えばアゼチジン、モルホリン、ピロリジン、ヘキサメチレンイミン、ヘプタメチレンイミン、ヘキサヒドロピリミジン、ピロール(例、1H−ピロール等)、ジヒドロピロール(例、2,5−ジヒドロ−1H−ピロール等)、ジヒドロピリジン(例、1,2−ジヒドロピリジン等)、ピペリジン、ピペラジン、アゼピン(例、1H−アゼピン等)、ジヒドロアゼピン(例、2,3−ジヒドロ−1H−アゼピン、2,5−ジヒドロ−1H−アゼピン、2,7−ジヒドロ−1H−アセピン等)、テトラヒドロアゼピン(例、2,3,6,7−テトラヒドロ−1H−アゼピン、2,3,4,7−テトラヒドロ−1H−アゼピン等)、ペンタヒドロアゼピン、1,4−ジアセパン等の4ないし8員含窒素環が挙げられる。
とRとで形成される「置換基を有していてもよい4ないし8員含窒素環」の「置換基」としては、前記RまたはRで示される「置換基を有していてもよい炭化水素基」の「置換基」と同様のものが同個数用いられる。
【0020】
Xはハロゲン原子またはOSOR(RはC1−6アルキル基または置換基を有していてもよいC6−14アリール基)を示す。ハロゲン原子としては、例えば、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素等が挙げられる。また、Rで示されるC1−6アルキル基としては、例えばメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、ペンチル、ヘキシル等が挙げられる。Rで示される「置換基を有していてもよいC6−14アリール基」の「C6−14アリール基」としては、例えば、フェニル、1−ナフチル、2−ナフチル、ビフェニリル、2−アンスリル等が挙げられ、その「置換基」としては前記RまたはRで示される「置換基を有していてもよい炭化水素基」の「置換基」と同様のものが同個数用いられる。
【0021】
前記式で示される化合物の塩としては、−COOH等の酸性基を有する場合には例えば金属塩、アンモニウム塩、有機塩基等との塩、−NH等の塩基性基を有する場合には例えば無機酸、有機酸、塩基性または酸性アミノ酸等との塩等の他分子内塩であってもよい。金属塩の好適な例としては、例えばナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩;カルシウム塩、マグネシウム塩、バリウム塩等のアルカリ土類金属塩;アルミニウム塩等が挙げられる。有機塩基との塩の好適な例としては、例えばトリメチルアミン、トリエチルアミン、ピリジン、ピコリン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジシクロヘキシルアミン、N,N−ジベンジルエチレンジアミン等との塩が挙げられる。無機酸との塩の好適な例としては、例えば塩酸、臭化水素酸酸、硝酸、硫酸、リン酸等との塩が挙げられる。有機酸との塩の好適な例としては、例えばギ酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、フマール酸、シュウ酸、酒石酸、マレイン酸、クエン酸、コハク酸、リンゴ酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸等との塩が挙げられる。塩基性アミノ酸との塩の好適な例としては、例えばアルギニン、リジン、オルニチン等との塩が挙げられ、酸性アミノ酸との塩の好適な例としては、例えばアスパラギン酸、グルタミン酸等との塩が挙げられる。
このうち、薬学的に許容し得る塩が好ましい。例えば、化合物内に酸性官能基を有する場合には、アルカリ金属塩(例、ナトリウム塩,カリウム塩等)、アルカリ土類金属塩(例、カルシウム塩,マグネシウム塩,バリウム塩等)との塩等の無機塩、アンモニウム塩等、また、化合物内に塩基性官能基を有する場合には塩酸塩、硫酸塩、リン酸塩、臭化水素酸酸塩等の無機塩または、酢酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、コハク酸塩、メタンスルホン酸塩、p−トルエンスルホン酸塩、クエン酸塩、酒石酸塩等の有機塩が挙げられる。
【0022】
本発明の製造法は、以下の反応式1で示される。
反応式1
【化19】

反応式1に従い、まず、化合物(II)と化合物(III)とを塩基の存在化に反応させ化合物(IV)を製造する。反応は通常溶媒中で行われる。該溶媒は、反応を阻害しない限りいかなる溶媒でもよく、例えば、アルコール類(例、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、tert-ブタノール、メトキシエタノール等)、ハロゲン化炭化水素類(例、ジクロロメタン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン、1,1,2,2−テトラクロロエタン等)、芳香族炭化水素類(例、ベンゼン、トルエン、キシレン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、ニトロベンゼン等)、エーテル類(例、エチルエーテル、イソプロピルエーテル、tert-ブチルメチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等)、ニトリル類(例、アセトニトリル、プロピオニトリル等)、エステル類(例、酢酸メチル、酢酸エチル、プロピオン酸エチル等)、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルホスホルアミド等が用いられる。これら溶媒は、2種以上を適宜の割合で混合して用いてもよい。
塩基としては、例えば3級アミン類(例、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン、N−エチルジイソプロピルアミン、N−メチルモルホリン、DBU(1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン)、DBN(1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]−5−ノネン)等)、芳香族アミン類(例、ピリジン、ピコリン、キノリン、N,N−ジメチルアニリン等)、炭酸アルカリ金属塩(例、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸セシウム等)、水酸化アルカリ金属塩(例、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カルシウム等)等が用いられる。
化合物(III)および塩基の使用量は、化合物(II)に対して、それぞれ1〜10当量、好ましくは1〜5当量である。
反応温度は通常−20〜150℃、好ましくは−10〜100℃である。
反応時間は通常30分間〜24時間、好ましくは1時間〜24時間である。
【0023】
ついで化合物(IV)を還元反応に付し、化合物(V)を製造する。
本還元反応に用いる還元剤としては、例えば、金属水素化物(例、水素化アルミニウム、水素化ジイソブチルアルミニウム、水素化トリブチルすず、トリエチルシラン等)、金属水素錯化合物(例、、水素化アルミニウムリチウム、水素化ホウ素ナトリウム、水素化ホウ素リチウム、水素化ビス(2−メトキシエトキシ)アルミニウムナトリウム、シアン化水素化ホウ素ナトリウム等)、ジボラン等が用いられる。
反応は通常溶媒中で行われる。該溶媒は、反応を阻害しない限りいかなる溶媒でもよく、例えば、アルコール類(例、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、tert-ブタノール、メトキシエタノール等)、ハロゲン化炭化水素類(例、ジクロロメタン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン、1,1,2,2−テトラクロロエタン等)、芳香族炭化水素類(例、ベンゼン、トルエン、キシレン等)、エーテル類(例、エチルエーテル、イソプロピルエーテル、tert−ブチルメチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等)、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルホスホルアミド等が用いられる。これら溶媒は、2種以上を適宜の割合で混合して用いてもよい。
還元剤の使用量は、化合物(IV)に対して、それぞれ0.5〜10当量、好ましくは1〜5当量である。
反応温度は通常−50〜150℃、好ましくは−10〜100℃である。
反応時間は通常15分間〜24時間、好ましくは0.5時間〜15時間である。
【0024】
また、場合によっては触媒を用いる水素添加(接触還元)によっても還元することもできる。本接触還元に用いる触媒としては、例えば、ラネーニッケル、酸化白金、白金黒、白金炭素、塩化パラジウム、パラジウム黒、パラジウム炭素等が挙げられる。
これら触媒の使用量は化合物(IV)の重量に対して0.01〜200%、好ましくは0.05〜100%である。
水素添加は通常、常圧〜20MPa、好ましくは常圧〜10MPaの圧力下に行われる。
反応は通常溶媒中で行われる。該溶媒は、反応を阻害しない限りいかなる溶媒でもよく、例えば、アルコール類(例、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、tert-ブタノール、メトキシエタノール等)、ハロゲン化炭化水素類(例、ジクロロメタン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン、1,1,2,2−テトラクロロエタン等)、芳香族炭化水素類(例、ベンゼン、トルエン、キシレン等)、エーテル類(例、エチルエーテル、イソプロピルエーテル、tert−ブチルメチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等)、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等が用いられる。これら溶媒は、2種以上を適宜の割合で混合して用いてもよい。
反応温度は通常0〜150℃、好ましくは10〜100℃である。
反応時間は通常15分間〜24時間、好ましくは0.5時間〜15時間である。
【0025】
つぎに化合物(V)は酸の存在下に閉環反応に付し化合物(VI)を製造する。
本反応に用いられる酸は、例えば鉱酸類(例、塩酸、臭化水素酸、硫酸、リン酸等)、有機酸類(例、ぎ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、メタンスルホン酸、トリクロロメタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸等、カンファースルホン酸等)、ルイス酸類(例、塩化アルミニウム、塩化亜鉛、塩化すず、塩化鉄、塩化チタニウム、ボロントリフルオリド、ボロントリブロミド等)、強酸性樹脂(例、Dowex 50、Amberlite IR 120 等)、ポリリン酸、ポリリン酸エステル等が挙げられる。
反応は通常溶媒中で行われる。該溶媒は、反応を阻害しない限りいかなる溶媒でもよく、例えば、アルコール類(例、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、tert-ブタノール、メトキシエタノール等)、ハロゲン化炭化水素類(例、ジクロロメタン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン、1,1,2,2−テトラクロロエタン等)、芳香族炭化水素類(例、ベンゼン、トルエン、キシレン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、ニトロベンゼン等)、エーテル類(例、エチルエーテル、イソプロピルエーテル、tert-ブチルメチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等)、ニトリル類(例、アセトニトリル、プロピオニトリル等)、エステル類(例、酢酸メチル、酢酸エチル、プロピオン酸エチル等)、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルホスホルアミド等が用いられる。これら溶媒は、2種以上を適宜の割合で混合して用いてもよい。また、場合によっては、使用した酸を溶媒として用いてもよい。
酸の使用量は、化合物(V)に対して、それぞれ0.1〜10当量、好ましくは1〜5当量である。
反応温度は通常−50〜150℃、好ましくは−30〜100℃である。
反応時間は通常30分間〜24時間、好ましくは1時間〜15時間である。
化合物(VI)はまた、化合物(II)と化合物(VII)との反応によっても製造することができる。本反応は化合物(V)を閉環させて化合物(VI)を製造する条件がそのまま当てはめられる。
【0026】
得られた化合物(VI)におけるY’がハロゲン原子の化合物は化合物(VIII)に相当し、直接(IX)との反応に付すことができる。また、Y’が水素原子の化合物(VI)は、ハロゲン化を行い、化合物(VIII)を製造する。
本ハロゲン化に用いるハロゲンとしては例えば、塩素、臭素、ヨー素が用いられる。また、N−クロロコハク酸イミド(NCS)、N−ブロモコハク酸イミド(NBS)、N−ブロモ酢酸アミド等のハロゲン化アミド類、塩化スルフリル等が用いられる。
反応は通常溶媒中で行われる。該溶媒は、反応を阻害しない限りいかなる溶媒でもよく、例えば、アルコール類(例、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、tert-ブタノール、メトキシエタノール等)、ハロゲン化炭化水素類(例、ジクロロメタン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン、1,1,2,2−テトラクロロエタン等)、芳香族炭化水素類(例、ベンゼン、トルエン、キシレン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、ニトロベンゼン等)、エーテル類(例、エチルエーテル、イソプロピルエーテル、tert-ブチルメチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等)、ニトリル類(例、アセトニトリル、プロピオニトリル等)、エステル類(例、酢酸メチル、酢酸エチル、プロピオン酸エチル等)、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルホスホルアミド等が用いられる。これら溶媒は、2種以上を適宜の割合で混合して用いてもよい。
また、場合によっては、ぎ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸等の有機酸を溶媒として用いることもある。
さらに場合によっては脱酸剤として塩基を共存させて反応を行う。このような塩基としては、例えば3級アミン類(例、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン、N−エチルジイソプロピルアミン、N−メチルモルホリン、DBU(1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン)、DBN(1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]−5−ノネン)等)、芳香族アミン類(例、ピリジン、ピコリン、キノリン、N,N−ジメチルアニリン等)、炭酸アルカリ金属塩(例、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸セシウム等)、水酸化アルカリ金属塩(例、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カルシウム等)、有機酸アルカリ金属塩(例、ぎ酸ナトリウム、ぎ酸カリウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、プロピオン酸ナトリウム、プロピオン酸カリウム等)等が用いられる。
ハロゲン化剤および塩基の使用量は、化合物(VI)に対して、それぞれ1〜10当量、好ましくは1〜5当量である。
反応温度は通常−20〜150℃、好ましくは0〜100℃である。
反応時間は通常30分間〜24時間、好ましくは1時間〜15時間である。
【0027】
つぎに化合物(VIII)と化合物(IX)とを、触媒および場合によってはリガンド(配位子)の存在下に反応させて化合物(XI)を製造する。本反応は下記の方法または、例えば、ケミストリー レターズ(Chemistry Letters)1983年、927−928頁記載の方法に準じて行ってもよい。
本反応に用いられる触媒としては、例えば遷移金属化合物類(例、トリス(ジベンジリデン)ジパラジウム、ビス(ジベンジリデン)パラジウム、酢酸パラジウム、パラジム炭素、塩化パラジウム、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム、ビス(アセチルアセトン)ニッケル、ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)ニッケル、ビス(1,5−シクロオクタジエン)ニッケル、ビス(1,10−フェナントロリン)ニッケル、ジクロロビス(1,10−フェナントロリン)、ラネーニッケル等が用いられる。
リガンド(配位子)としては例えばトリメチルフォスフィン、トリエチルフォスフィン、トリプロピルフォスフィン、トリイソプロピルフォスフィン、トリブチルフォスフィン、トリ−tert−ブチルホスフィン、トリシクロヘキシルフォスフィン、トリメチルフォスファイト、トリエチルフォスファイト、トリプロピルフォスファイト、トリイソプロピルフォスファイト、トリブチルフォスファイト、トリシクロヘキシルフォスファイト、トリフェニルフォスフィン、トリ(o−トリル)フォスフィン、2,2′−ビス(ジフェニルフォスフィノ)−1,1′−ビナフチル(以下、BINAPと称する)、1,2−ビス(ジメチルフォスフィノ)エタン、1,2−ビス(ジエチルフォスフィノ)エタン、1,2−ビス(ジブチルフォスフィノ)エタン、1,2−ビス(ジプロピルフォスフィノ)エタン、1,2−ビス(ジイソプロピルフォスフィノ)エタン、1,2−ビス(ジシクロヘキシルフォスフィノ)エタン、1,3−ビス(ジシクロヘエキシルフォスフィノ)プロパン、1,3−ビス(ジイソプロピルフォスフィノ)プロパン、1,4−ビス(ジイソプロピルフォスフィノ)ブタン、2,4−ビス(ジシクロヘキシルフォスフィノ)ペンタン、2−(N,N−ジメチルアミノ)−2′−(ジシクロヘキシルフォスフィノ)ビフェニル、2−(ジ−tert−ブチルフォスフィノ)ビフェニル、2−(ジシクロヘキシルフォスフィノ)ビフェニル、2,2′−ビス(ジシクロヘキシルフォスフィノ)−1,1′−ビナフチル等が挙げられる。これらのうち、特に、BINAP、トリ−tert−ブチルホスフィン等が特に好都合に用いられる。
反応は通常溶媒中で行われる。該溶媒は、反応を阻害しない限りいかなる溶媒でもよく、例えば、アルコール類(例、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、tert-ブタノール、メトキシエタノール等)、ハロゲン化炭化水素類(例、ジクロロメタン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン、1,1,2,2−テトラクロロエタン等)、芳香族炭化水素類(例、ベンゼン、トルエン、キシレン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、ニトロベンゼン等)、エーテル類(例、エチルエーテル、イソプロピルエーテル、tert-ブチルメチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等)、ニトリル類(例、アセトニトリル、プロピオニトリル等)、エステル類(例、酢酸メチル、酢酸エチル、プロピオン酸エチル等)、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルホスホルアミド等が用いられる。これら溶媒は、2種以上を適宜の割合で混合して用いてもよい。
化合物(IX)の使用量は、化合物(VIII)に対して、それぞれ1〜10当量、好ましくは1〜5当量である。
また、触媒の使用量は化合物(VIII)1モルに対して0.01〜10モル%、好ましくは0.1〜5モル%である。
リガンドの使用量は化合物(VIII)1モルに対して0.01〜20モル%、好ましくは0.1〜10モル%である。
反応温度は通常−20〜150℃、好ましくは0〜100℃である。
反応時間は通常30分間〜24時間、好ましくは1時間〜15時間である。
【0028】
つぎに化合物(XI)のうちWがWbの場合は必要により脱保護(水素原子以外のRおよび/またはRの脱離)を行い化合物(I)を製造する。
本アミノ基の脱保護は自体公知の方法またはそれに準ずる方法によって行われる。本脱保護はアミノ基の保護基(Rおよび/またはR)の種類によって異なるが、例えば保護基がアシル基の場合は、酸またはアルカリによる加水分解が用いられ、保護基が置換ベンジル基の場合は加水素分解等が用いられる。加水分解反応に用いられる溶媒としては、反応を阻害しない限りいかなる溶媒でもよく、例えば、アルコール類(例、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、tert-ブタノール、メトキシエタノール等)、エーテル類(例、エチルエーテル、イソプロピルエーテル、tert-ブチルメチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等)、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルホスホルアミド等が用いられる。これら溶媒は、2種以上を適宜の割合で混合して用いてもよい。酸、アルカリの使用量は化合物(XI)1モルに対して1〜500当量、好ましくは1〜300当量である。
反応温度は通常−20〜150℃、好ましくは0〜100℃である。
反応時間は通常30分間〜24時間、好ましくは1時間〜15時間である。
加水素分解を行う場合、化合物(V)の製造時に用いた接触還元条件(反応溶媒、反応温度、反応時間、触媒等)がそのまま当てはめられる。
本発明の製造法において、各工程で得られた生成物は反応液のまま、あるいは粗製物として次反応に用いることもできるが、常法に従って反応混合物から単離することもでき、通常の分離手段(例、再結晶、蒸留、クロマトグラフィー等)により容易に精製することもできる。
また、出発物質として用いられる化合物(II)、化合物(III)および化合物(VII)は公知であるか、自体公知の方法または以下の実施例に示す方法に従って製造できる。例えば、化合物(VII)は、Helv. Chim. Acta, 54, 968 (1971)(H. Kuertzel, et. al.)に記載の方法により製造することもできる。
【0029】
得られた化合物(I)から、以下の反応式2に従って、化合物(XII)を製造することができる。
反応式2
【化20】

すなわち、化合物(I)のうち、Rが水素の化合物(Ia)と、式:
【化21】

(式中、LおよびLは脱離基を、C環は前記と同意義を示す)で表される化合物(XIII)とを、所望により塩基の存在下反応させることにより化合物(XII)を製造することができる。
およびLで示される「脱離基」としては、例えば、ヒドロキシ、ハロゲン原子(例、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素等)、ハロゲン化されていてもよいC1−5アルキルスルホニルオキシ(例、メタンスルホニルオキシ、エタンスルホニルオキシ、トリクロロメタンスルホニルオキシ等)、置換基を有していてもよいC6−10アリールスルホニルオキシ等が挙げられる。「置換基を有していてもよいC6−10アリールスルホニルオキシ」としては、例えばC1−6アルキル(例、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、ペンチル、ヘキシル等)、C1−6アルコキシ(例、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、イソブトキシ、sec-ブトキシ、ペンチルオキシ、ヘキシルオキシ等)およびニトロから選ばれる置換基を1ないし3個有していてもよいC6−10アリールスルホニルオキシ(例、フェニルスルホニルオキシ、ナフチルスルホニルオキシ等)等が挙げられ、具体例としては、ベンゼンスルホニルオキシ、m−ニトロベンゼンスルホニルオキシ、p−トルエンスルホニルオキシ等が挙げられる。
化合物(XIII)は、化合物(I)のA環に置換するアミノ基と共に、式:
【化22】

〔式中、各記号は前記と同意義を示す。〕で表される基を形成し得る化合物であり、例えば、式:
【化23】

(式中、D1はハロゲンまたは置換基を有していてもよい炭化水素基で置換されていてもよい式−(CH2)d−(dは0ないし3の整数を示す)で表される基を、E1はハロゲンまたは置換基を有していてもよい炭化水素基で置換されていてもよい式−(CH2)e1−(eは0ないし3の整数を示す)で表される基を、dとeの和は2ないし4の整数を、LおよびLは前記と同意義を示す。)で表される化合物などが用いられる。
該ハロゲンおよび置換基を有していてもよい炭化水素基としては、D環で示される5ないし7員含窒素複素環の置換基として前記したハロゲンおよび置換基を有していてもよい炭化水素基と同様のものが用いられる。
【0030】
化合物(XIII)の使用量は、化合物(I)1モルに対し約1.0ないし約5.0モル、好ましくは約1.0ないし約2.0モルである。
該「塩基」としては、例えば、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウム、炭酸水素ナトリウム等の塩基性塩類、ピリジン、ルチジン等の芳香族アミン類、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、シクロヘキシルジメチルアミン、4−ジメチルアミノピリジン、N,N−ジメチルアニリン、N−メチルピペリジン、N−メチルピロリジン、N−メチルモルホリン等の第3級アミン類、水素化ナトリウム、水素化カリウム等のアルカリ金属水素化物類、ナトリウムアミド、リチウムジイソプロピルアミド、リチウムヘキサメチルジシラジド等の金属アミド類、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウム第三ブトキシド等の金属アルコキシド類等が挙げられる。
塩基の使用量は、化合物(I)1モルに対し約1.0ないし約10.0モル、好ましくは約2.0ないし約5.0モルである。また、所望により、塩基とともに第4級アンモニウム塩を共存させて反応させることによっても製造されうる。
該「第4級アンモニウム塩」としては、例えば、テトラブチルアンモニウムヨージド等が挙げられる。
第4級アンモニウム塩の使用量は、化合物(I)1モルに対し約0.1ないし約2.0モル、好ましくは約0.5ないし約1.0モルである。
本反応は反応に不活性な溶媒を用いて行うのが有利である。このような溶媒としては反応が進行する限り特に限定されないが、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール等のアルコール類、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、1,2−ジメトキシエタン等のエーテル類、ベンゼン、トルエン、シクロヘキサン、ヘキサン等の炭化水素類、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等のアミド類、ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素、1,2−ジクロロエタン等のハロゲン化炭化水素類、アセトニトリル、プロピオニトリル等のニトリル類、ジメチルスルホキシド等のスルホキシド類等の溶媒またはこれらの混合溶媒等が好ましい。
反応時間は通常約30分ないし約48時間、好ましくは約1時間ないし約24時間である。反応温度は通常約−20ないし約200℃、好ましくは約0ないし約150℃である。
【0031】
前記反応に代え、光延反応(シンセシス(Synthesis)、1981年、第1ないし27頁)を用いることもできる。
該反応は、化合物(I)とLおよびLがOHである化合物(XIII)とを、アゾジカルボキシレート類(例、ジエチルアゾジカルボキシレート等)およびホスフィン類(例、トリフェニルホスフィン、トリブチルホスフィン等)の存在下反応させる。
およびLがOHである化合物(XIIIa)の使用量は、化合物(I)1モルに対し、約1.0ないし約5.0モル、好ましくは約1.0ないし約2.0モルである。
該「アゾジカルボキシレート類」および「ホスフィン類」の使用量は、それぞれ化合物(I)1モルに対し、約1.0ないし約5.0モル、好ましくは約1.0ないし約2.0モルである。
本反応は反応に不活性な溶媒を用いて行うのが有利である。このような溶媒としては反応が進行する限り特に限定されないが、例えば、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、1,2−ジメトキシエタン等のエーテル類、ベンゼン、トルエン、シクロヘキサン、ヘキサン等の炭化水素類、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等のアミド類、ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素、1,2−ジクロロエタン等のハロゲン化炭化水素類、アセトニトリル、プロピオニトリル等のニトリル類、ジメチルスルホキシド等のスルホキシド類等の溶媒もしくはそれらの混合溶媒等が好ましい。
反応時間は通常約5分ないし約48時間、好ましくは約30分ないし約24時間である。反応温度は通常約−20ないし約200℃、好ましくは約0ないし約100℃である。
【0032】
本発明の方法は、A環およびC環上に存在する置換基にもよるが、特に2,3−ジヒドロベンゾフラン環の5位にWで表される基を導入するのに適している。また、前記した反応式2の方法は、化合物(I)が光学分割が容易であるので、光学活性な化合物(I)を得、これを出発物質とする光学活性な化合物(XII)の製造に適している。
例えば、化合物(I)のうち、Rが水素の化合物(Ia)またはその塩を、光学活性酸性化合物との塩へ誘導して光学分割することにより、化合物(Ia)の光学活性体またはその塩を製造することができる。
光学活性酸性化合物による2,3−ジヒドロベンゾフラン誘導体の光学異性体混合物(Ia)の光学分割は、例えば次のような操作により実施することができる。
まず、適当な溶媒中で、化合物(Ia)および酸性分割剤たる光学活性酸性化合物を反応させジアステレオマー塩を形成させる。光学活性酸性化合物としては、例えば、光学活性O,O’-ジ−アシル酒石酸誘導体のような光学活性酒石酸誘導体、光学活性N−アシルアミノ酸のような光学活性アミノ酸誘導体、式:
【化24】

[式中、Arは置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基を、R5およびR6は、それぞれ水素原子、置換基を有していてもよい低級アルキル基、置換基を有していてもよい低級アルコキシ基、ハロゲン原子またはニトロ基を示すか、あるいはRとRが一緒になって置換基を有していてもよいアルキレン基または置換基を有していてもよいメチレンジオキシを示す。*印は不斉炭素の位置を示す。]で表される光学活性リン酸誘導体などが挙げられる。
O,O’−ジ−アシル酒石酸誘導体のアシル基として好ましいものは、例えばアセチル、プロピオニル、ブチリル、バレリル等の低級(C1-6)アルカノイル基、ベンゾイル、p-クロルベンゾイル、ナフトイル等のアロイル基である。O,O’-ジ−アシル酒石酸として、最も好ましいのはO,O’-ジ-(p−トルオイル)酒石酸である。
N−アシルアミノ酸誘導体のN−アシル基として好ましいものは、例えばアセチル、プロピオニル、ブチリル、バレリル等の低級(C1-6)アルカノイル基、ベンゾイル、p-クロルベンゾイル、ナフトイル等のアロイル基等があげられる。アミノ酸としては、例えばα−フェニルグリシンが挙げられる。N−アシルアミノ酸誘導体として最も好ましいものは、N−(3,5-ジニトロベンゾイル)−α−フェニルグリシンである。
式(XIV)で表される光学活性リン酸誘導体は、特開昭61−103886号、J.Org.Chem., 50, 4508(1985)等に記載の方法に準じて容易に得ることができ、またいくつかの化合物は市販品として容易に得ることもできる。具体的には、例えば、2−ヒドロキシ−5,5−ジメチル−4−フェニル−1,3,2−ジオキサホスホリナン 2−オキシド、4−(2−クロロフェニル)−2−ヒドロキシ−5,5−ジメチル−1,3,2−ジオキサホスホリナン 2−オキシド、4−(2,4−ジクロロフェニル)−2−ヒドロキシ−5,5−ジメチル−1,3,2−ジオキサホスホリナン 2−オキシド、2−ヒドロキシ−4−(2−メトキシフェニル)−5,5−ジメチル−1,3,2−ジオキサホスホリナン 2−オキシド、2−ヒドロキシ−5,5−ジメチル−4−(1−ナフチル)−1,3,2−ジオキサホスホリナン−2−オキシドなどが挙げられる。
【0033】
Arで示される「置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基」の「芳香族炭化水素基」としては、C6-14アリール(例、フェニル、ナフチル等)等が挙げられる。該「置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基」の「置換基」としては、前記R1またはR2で示される「置換基を有していてもよい炭化水素基」の「置換基」と同様のものが同個数用いられる。該「置換基」として、好ましくは、例えばメチル、エチルなどのC1-6アルキル基、例えばメトキシ、エトキシなどのC1-6アルコキシ基、例えば、フッ素、塩素、臭素などのハロゲン原子などから選ばれる1ないし2個が挙げられる。
およびRで示される「置換基を有していてもよい低級アルキル基」の「低級アルキル基」としては、例えばC1-6アルキル(例、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、ペンチル、ヘキシル等)等が挙げられる。該「置換基を有していてもよい低級アルキル基」の「置換基」としては、前記R1またはR2で示される「置換基を有していてもよい炭化水素基」の「置換基」と同様のものが同個数用いられる。該「置換基」として、好ましくは、例えばハロゲン原子(例、フッ素、塩素、臭素など)、ニトロ、シアノ、C1-4アルカノイル(例、アセチル、プロピオニルなど)、カルボキシル、C1-4アルコキシ(例、メトキシ、エトキシ、プロポキシ等)、C1-4アルコキシ−カルボニル(例、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、ブトキシカルボニルなど)、カルバモイル、C1-4アルコキシ−カルボニルアミノ(例、メトキシカルボニルアミノ、エトキシカルボニルアミノ等)などから選ばれる1ないし2個が挙げられる。
およびRで示される「置換基を有していてもよい低級アルコキシ基」の「低級アルコキシ基」としては、例えばC1-6アルコキシ(例、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、イソブトキシ、sec-ブトキシ、ペンチルオキシ、ヘキシルオキシ等)等が挙げられる。該「置換基を有していてもよい低級アルコキシ基」の「置換基」としては、前記R1またはR2で示される「置換基を有していてもよい炭化水素基」の「置換基」と同様のものが同個数用いられる。「置換基」として、好ましくは、例えばC1-4アルカノイル(例、アセチル、プロピオニルなど)、カルボキシル、水酸基、C1-4アルコキシ(例、メトキシ、エトキシ、プロポキシ等)、C1-4アルコキシ−カルボニル(例、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、ブトキシカルボニルなど)などから選ばれる1ないし2個が挙げられる。
およびRで示される「ハロゲン原子」としては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素等が挙げられる。
とRが一緒になって置換基を有していてもよいアルキレン基を示す場合、該置換基を有していてもよいアルキレン基としては炭素数2ないし6の無置換のアルキレン(ジメチレン、トリメチレン、テトラメチレン、ペンタメチレン)の他、これらのアルキレンの任意の位置にたとえば、低級アルキル基(例、メチル、エチル、プロピル等のC1-4アルキル)、低級アルコキシ基(例、メトキシ、エトキシ、プロポキシ等のC1-4アルコキシ)、ニトロ基、ハロゲン原子(例、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素)などから選ばれる1個または2個の置換基を有するものでもよい。
とRが一緒になって置換基を有していてもよいメチレンジオキシ基を示す場合、該メチレン基が例えばハロゲン原子(例、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素)、ニトロ基などで置換されたものでもよい。
およびRの好ましい例としては、RおよびRの双方がそれぞれメチル基である場合、および双方が互いに結合してテトラメチレン基を示す場合が挙げられる。
式(XIV)で表される光学活性リン酸誘導体の中で、最も好ましいものは2-ヒドロキシ-5,5-ジメチル-4-(1-ナフチル)-1,3,2-ジオキサホスホリナン 2-オキシドである。
ここで(Ia)に対する酸性分割剤の使用量は、0.1〜4倍モル、好ましくは0.6〜2.5倍モルである。またこの時、分割剤と併せて当該モル比となる様に、塩酸、硫酸、リン酸などの鉱酸、あるいは酢酸、プロピオン酸、フマル酸、マレイン酸などの有機酸を共存させてもよい。
【0034】
用いる溶媒としては、化合物(Ia)および酸性分割剤を化学的に変化せしめることなく、かつ生成するジアステレオマー塩の一方が難溶性であるものがよい。例えば、水、メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール類、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、1,2−ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン等のエーテル類、アセトン、2−ブタノン等のケトン類、アセトニトリル等のニトリル類、ベンゼン、トルエンといった芳香族炭化水素類があげられ、これらを単独または、2種以上を混合して用いることができる。その使用量は、化合物(Ia)に対して通常1〜1000倍量、好ましくは1〜100倍量である。温度は通常15℃以上、使用する溶媒の沸点以下の範囲であればよい。
ジアステレオマー塩形成後、冷却あるいは濃縮することで、一方の塩を晶出させることができる。条件によっては、冷却・濃縮と言った操作なしに、室温下で放置または攪拌することにより、容易に難溶性塩が析出する場合もある。
晶出した塩は濾過、遠心分離などの通常の固液分離法により容易に分離することができる。また、分離した塩の結晶は、必要に応じて再結晶などそれ自体公知の方法により、純度を高めることができる。
難溶性塩を分離した後の母液は、そのままで易溶性塩だけを含む場合もあり、そのままあるいは濃縮後冷却することにより、易溶性塩を分離することもできる。
このようにして得られた塩の分解には公知のいかなる方法を用いても良く、例えば水溶性溶液中、アルカリまたは酸で処理することで目的を達することができる。通常は水酸化ナトリウム水溶液や炭酸水素ナトリウム水溶液など水溶性塩基で処理し、遊離した光学活性2,3−ジヒドロベンゾフラン化合物を、例えば濾過や遠心分離といった固液分離法、あるいは有機溶媒などによる抽出操作により単離することができる。塩基処理は通常-10から25℃程度で行い、使用する塩基量はジアステレオマー塩に対し、1から5モル倍である。かかる塩基濃度は1〜50重量%、好ましくは5〜20重量%である。
光学活性2,3−ジヒドロベンゾフラン化合物を分離した後の塩基性水層を塩酸、硫酸といった酸を用いて酸性にすることにより、分割剤を回収し、それを再使用することも可能である。
かくして得られる光学活性2,3−ジヒドロベンゾフラン化合物は、反応液のまま、あるいは粗製物として次反応に用いることもできるが、通常の分離手段(例、再結晶、蒸留、クロマトグラフィー等)により精製した後用いることもできる。
【0035】
得られた化合物(I)、(XI)および(XII)は低毒性であり、(I)、(XI)および(XII)は、例えば、神経栄養因子様作用、神経栄養因子活性増強作用、神経変性抑制作用、βアミロイド毒性抑制作用、神経新生および再生促進作用、神経幹細胞および/または神経細胞における増殖、分化促進作用等の優れた医薬作用を有し、ヒトをはじめとする哺乳動物用の医薬として有用である。また、化合物(I)は、化合物(XI)や(XII)の合成中間体として有用であるのみならず、過酸化脂質生成抑制剤としても有用である。
より具体的には、化合物(I)、化合物(XI)および化合物(XII)は、例えば、神経変性疾患(例、アルツハイマー病、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、ハンチントン病、脊髄小脳変性症等)、精神神経疾患(例、精神分裂症等)、頭部外傷、脊髄損傷、脳血管障害、脳血管性痴呆、末梢神経障害(例、糖尿病性神経障害等)等に対して有効であり、これらの疾患の予防・治療剤として用いられる。また、化合物(I)は、脳卒中等の循環系疾患や、炎症等の予防・治療剤として有用である。
化合物(I)、(XI)および(XII)は、例えば、EP483772AおよびWO 00/34262に記載の方法に従い、医薬組成物や製剤にして、前記疾患の予防・治療剤として使用することができる。
【実施例】
【0036】
以下に実施例および参考例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
実施例1
2−メチル−1−(4−メチルフェニル)−2−(2,3,5−トリメチルフェノキシ)−1−プロパノンの製造
2、3,5−トリメチルフェノール(136.19g)、炭酸カリウム(276.4g)のジメチルスルホキシド(DMSO,681mL)溶液に、2−ブロモ−2−メチル−1−(メチルフェニル)−1−プロパノン(422g)のDMSO(681mL)溶液を滴下し、35℃で24時間攪拌した。55℃に昇温しメタノール(953mL)ついで水(953mL)を滴下し、55℃で30分間、40℃で1時間攪拌。析出した結晶をろ取し、メタノール(2043mL)に懸濁した。水(681mL)を加え、40℃で1時間攪拌し析出結晶をろ取して、標題化合物を得た(257.98g、87%)。
1H-NMR(CDCl3)δ:1.65(6H, s), 2.05(3H, s), 2.17(3H, s), 2.20(3H, s), 2.36(3H, s), 6.18(1H, s), 6.55(1H, s), 7.18(2H, d, J=8.3Hz), 8.23(2H, d, J=8.3Hz).
【0037】
実施例2
2−メチル−1−(4−メチルフェニル)−2−(2,3,5−トリメチルフェノキシ)−1−プロパノールの製造
2−メチル−1−(4−メチルフェニル)−2−(2,3,5−トリメチルフェノキシ)−1−プロパノン(251.9g)のメタノール(2519mL)懸濁液に、水素化ホウ素ナトリウム(25.7g)の0.1NNaOH(202mL)を滴下した。35℃で3時間攪拌。氷冷下に1NHClを加えpH7とした後、メタノールを留去しトルエン(2015mL)で抽出。抽出液は洗浄後、溶媒を留去して標題化合物を油状物として定量的に得た(253.7g)。
1H-NMR(CDCl3)δ: 1.11(3H,s), 1.22(3H, s), 2.14(3H, s), 2.23(3H, s), 2.26(3H, s), 2.34(3H, s), 3.38(1H, bs), 4.87(1H, s), 6.72(1H, s), 6.75(1H, s), 7.14(2H, d, J=8.3Hz), 7.34(2H, d, J=8.3Hz).
【0038】
実施例3
2,2,4,6,7−ペンタメチル−3−(4−メチルフェニル)−2,3−ジヒドロ−1−ベンゾフランの製造
実施例2で得られた2−メチル−1−(4−メチルフェニル)−2−(2,3,5−トリメチルフェノキシ)−1−プロパノール(253.7g)のトルエン(1260mL)溶液に、トリフルオロメタンスルホン酸(7.5mL)を加え、50℃で30分間、還流下に1時間攪拌した。25℃で1N NaOH(756mL)を加え、トルエン層を分取し、水で洗浄後溶媒を留去。残留物をイソプロパノール(1511mL)に溶解し、水(756mL)を加え、析出した結晶をろ取して標題化合物を得た(176.33g、74%)。
1H-NMR(CDCl3)δ: 1.01(3H,s), 1.49(3H, s), 1.83(3H, s), 2.14(3H, s), 2.23(3H, s), 2.30(3H, s), 4.09(1H, s), 6.72(1H, s), 6.48(1H, s), 6.48-7.05(4H, br).
【0039】
実施例4
5−ブロモ−2,2,4,6,7−ペンタメチル−3−(4−メチルフェニル)−2,3−ジヒドロ−1−ベンゾフランの製造
2,2,4,6,7−ペンタメチル−3−(4−メチルフェニル)−2,3−ジヒドロ−1−ベンゾフラン(145g)、酢酸ナトリウム(50.9g)、アセトニトリル(2175mL)の混合物に、0〜5℃で臭素(29.3mL)滴下。0〜10℃で1時間攪拌後、水(725mL)を加え析出した結晶をろ取し、標題化合物を得た(175g、94.2%)。
1H-NMR(CDCl3)δ: 1.01(3H,s), 1.48(3H, s), 1.97(3H, s), 2.22(3H, s), 2.30(3H, s), 2.39(3H, s), 4.13(1H, s), 6.50~7.05(4H, br).
【0040】
実施例5
N−ベンジル−2,2,4,6,7−ペンタメチル−3−(4−メチルフェニル)−2,3−ジヒドロ−1−ベンゾフラン−5−アミンの製造
窒素気流下、トルエン(500mL)に5−ブロモ−2,2,4,6,7−ペンタメチル−3−(4−メチルフェニル)−2,3−ジヒドロ−1−ベンゾフラン(100g)とベンジルアミン(36.5mL)を加え、酢酸パラジウム(62.5mg)および2,2’−ビス(ジフェニルホスフィノ)−1,1’−ビナフチル[(BINAP、0.52g)]を加えさらにt−BuONa(37.45g)を加え、25℃で20分間攪拌後、107℃で24時間攪拌した。70℃以下で1N HCl(167mL)、水(113mL)を滴下し、10分間攪拌した。有機層を分取し、10%食塩水で洗浄後溶媒を留去。残留物をイソプロパノール−水から結晶化させ、標題化合物を得た(99g、92.3%)。
1H-NMR(CDCl3)δ: 1.03(3H, s), 1.49(3H, s), 1.80(3H, s), 2.18(3H, s), 2.26(3H, s), 2.30(3H, s), 3.91(2H, s), 6.50-7.05(4H, m), 7.22-7.37(5H, m).
【0041】
実施例6
2,2,4,6,7−ペンタメチル−3−(4−メチルフェニル)−2,3−ジヒドロ−1−ベンゾフラン−5−アミンの製造
N−ベンジル−2,2,4,6,7−ペンタメチル−3−(4−メチルフェニル)−2,3−ジヒドロ−1−ベンゾフラン−5−アミン(80g)、トルエン(240mL)、イソプロパノール(80mL)の混合物に10%Pd−炭素(50%含水品、4g)を加え、35℃、常圧で接触還元した。反応終了後触媒をろ去した。ろ液に濃塩酸(19.2mL)を加え10℃以下で1時間攪拌後、析出した結晶をろ取した。結晶をメタノール(560mL)および水(80mL)混液に加え、50℃に加熱して溶解。ついで25%アンモニア水を滴下し、pH8.5に調製し析出した結晶をろ取して標題化合物を得た(54.32g、88.6%)。
1H-NMR(CDCl3)δ: 0.99(3H, s), 1.47(3H, s), 1.77(3H, s), 2.12(2H, s), 2.19(3H, s), 2.30(3H, s), 3.20(2H, bs), 4.08(1H, s), 6.75(2H, b), 6.83-7.04(2H, m).
【0042】
実施例7
2,2,4,6,7−ペンタメチル−3−(4−メチルフェニル)−2,3−ジヒドロ−1−ベンゾフランの製造
2−メチルー2−(4−メチルフェニル)プロピオンアルデヒド(1.2g)、2,3,5−トリメチルフェノール(0.84g)のトルエン(8mL)溶液にトリフルオロメタンスルホン酸(92.4mg)を加え、1時間加熱還流した。冷却後、室温で1NNaOH(5mL)を加え30分攪拌後、有機層を分取し水洗後溶媒を留去した。残留物をイソプロパノール(3mL)に溶解し、水(5mL)を加え析出結晶をろ取して標題化合物を得た(1.3g、75.2%)。
【0043】
実施例8
実施例7と同様にして以下の化合物を製造した。
1)2,2,4,6,7−ペンタメチル−3−(4−メトキシフェニル)−2,3−ジヒドロ−1−ベンゾフラン
1H-NMR(CDCl3)δ: 1.02(3H, s), 1.48(3H, s), 1.84(3H, s), 2.13(2H, s), 2.23(3H, s), 3.77(3H, s), 4.07(1H, s), 6.48(1H,s), 6.40-7.10 (4H, m).
2)2,2,4,6,7−ペンタメチル−3−フェニル−2,3−ジヒドロ−1−ベンゾフラン
1H-NMR(CDCl3)δ: 1.02(3H, s), 1.51(3H, s), 1.83(3H, s), 2.14(2H, s), 2.23(3H, s), 4.12(1H, s), 6.49(1H, s), 6.40-7.25 (5H, m).
3)3−(4−クロロフェニル)−2,2,4,6,7−ペンタメチル−2,3−ジヒドロ−1−ベンゾフラン
1H-NMR(CDCl3)δ: 1.02(3H, s), 1.50(3H, s), 1.84(3H, s), 2.14(2H, s), 2.24(3H, s), 4.09(1H, s), 6.49(1H,s), 6.40-7.30(5H, m).
4)3−(4−メトキシフェニル)−2,2,5−トリメチル−2,3−ジヒドロ−1−ベンゾフラン
1H-NMR(CDCl3)δ: 0.96(3H, s), 1.55(3H, s), 2.25(3H, s), 3.80(3H, s), 4.26(1H, s), 6.70-7.02(7H, m).
5)3−(4−メチルフェニル)−2,2,5−トリメチル−2,3−ジヒドロ−1−ベンゾフラン
1H-NMR(CDCl3)δ: 0.96(3H, s), 1.55(3H, s), 2.24(3H, s), 2.33(3H, s), 4.26(1H, s), 6.70-7.15(7H, m).
6)3−フェニル−2,2,5−トリメチル−2,3−ジヒドロ−1−ベンゾフラン
1H-NMR(CDCl3)δ: 0.96(3H, s), 1.57(3H, s), 2.25(3H, s), 4.27(1H, s), 6.71-7.33(8H, m).
7)3−(4−クロロフェニル)−2,2,5−トリメチル−2,3−ジヒドロ−1−ベンゾフラン
1H-NMR(CDCl3)δ: 0.97(3H, s), 1.55(3H, s), 2.25(3H, s), 4.26(1H, s), 6.66-7.33(7H, m).
8)3−(4−クロロフェニル)−2,2−ジメチル−2,3−ジヒドロ−1−ベンゾフラン
1H-NMR(CDCl3)δ: 1.77(3H, s), 1.78(3H, s), 4.62(1H, s), 6.73-7.26(8H, m).
9)2,2−ジメチル−3−(4−メチルフェニル)−2,3−ジヒドロ−1−ベンゾフラン
1H-NMR(CDCl3)δ: 1.78 (3H, s), 1.79(3H, s), 2.32(3H, s), 4.67(1H, s), 6.70-7.12(8H, m).
10)3−(4−メチルフェニル)−2,2,7−トリメチル−2,3−ジヒドロ−1−ベンゾフラン
1H-NMR(CDCl3)δ: 1.78 (3H, s), 1.79(3H, s), 2.32(3H, s), 2.31(3H, s), 4.52(1H, s), 6.66-7.15(7H, m).
11)2−(3−フェニル−4,6,7−トリメチル−2,3−ジヒドロ−1−ベンゾフラン)スピロ−1‘−シクロプロパン
1H-NMR(CDCl3)δ: 2.00-2.05(1H, m), 2.15(3H, s), 2.20(3H, s), 2.24(3H, s), 2.35-2.45(1H, m), 2.76-2.84(2H, m), 3.93(1H, d), 6.56(1H, s), 7.15-7.60(5H, m).
【0044】
実施例9
N−(3,4−ジメトキシベンジル)−2,2,4,6,7−ペンタメチル−3−(4−メチルフェニル)−2,3−ジヒドロ−1−ベンゾフラン−5−アミンの製造
窒素気流下、トルエン(1mL)に5−ブロモ−2,2,4,6,7−ペンタメチル−3−(4−メチルフェニル)−2,3−ジヒドロ−1−ベンゾフラン(100mg)と3,4−ジメトキシベンジルアミン(56mg)を加え、酢酸パラジウム(0.3mg)および(S)−(−)−2,2’−ビス(ジフェニルフォスフィノ)−1,1’−ビナフチル(2.7mg)を加え、さらにナトリウムtert−ブトキシド(37.5mg)を加え、80℃で17時間攪拌した。反応液に酢酸エチルを加えて不溶物を濾過し、濾液を減圧濃縮し、残さをシリカゲルカラムクロマトグラフィーに付し、酢酸エチル−n−ヘキサン[1:4]で溶出して標題化合物を得た(80mg、64.5%)。
1H-NMR(300MHz, CDCl3) δ ; 1.03(3H, s) , 1.48(3H, s) , 1.80(3H, s) , 2.20(3H, s) , 2.25(3H, s) , 2.30(3H, s) , 3.83(3H, s) , 3.86(5H, s) , 4.08(1H, s) , 6.77-7.05(7H, m).
【0045】
実施例10
5,6−ジメトキシ−2−(2,2,4,6,7−ペンタメチル−3−(4−メチルフェニル)−2,3−ジヒドロ−1−ベンゾフラン−5−イル)イソインドリンの製造
窒素気流下、トルエン(2mL)に5−ブロモ−2,2,4,6,7−ペンタメチル−3−(4−メチルフェニル)−2,3−ジヒドロ−1−ベンゾフラン(100mg)と4,5−ジメトキシイソインドリン(60mg)とを加え、酢酸パラジウム(1.25mg)および(S)−(−)−2,2’−ビス(ジフェニルフォスフィノ)−1,1’−ビナフチル(10.4mg)を加えた。さらにナトリウムtert−ブトキシド(37.5mg)を加え、80℃で15時間攪拌。反応液に酢酸エチルを加えて不溶物を濾過し、濾液を減圧濃縮した。残さをシリカゲルカラムクロマトグラフィーに付し、酢酸エチル−n−ヘキサン[1:6]で溶出して標題化合物を得た(60mg、47.2%)。
H-NMR(CDCl3) δ: 1.01(3H, s), 1.48(3H, s), 1.76(3H, s), 2.17(3H, s), 2.18(3H, s), 2.30(3H, s), 3.87(6H, s), 4.091H, s), 4.45(4H, s), 6.76~7.06(6H, m).
【0046】
実施例11
N−((R)−(+)−1−フェニルエチル)−2,2,4,6,7−ペンタメチル−3−(4−メチルフェニル)−2,3−ジヒドロ−1−ベンゾフラン−5−アミンの製造
窒素気流下、トルエン(10mL)に5−ブロモ−2,2,4,6,7−ペンタメチル−3−(4−メチルフェニル)−2,3−ジヒドロ−1−ベンゾフラン(2g)と(R)−(+)−1−フェニルエチルアミン(0.94g)を加え、酢酸パラジウム(5mg)および(S)−(−)−2,2’−ビス(ジフェニルフォスフィノ)−1,1’−ビナフチル(41.6mg)を加え、さらにナトリウムtert−ブトキシド(0.86g)を加え、107℃で7時間攪拌した。反応液に希塩酸を加えて有機層を10%食塩水で洗浄後、有機層を減圧濃縮し、残さをシリカゲルカラムクロマトグラフィーに付し、酢酸エチル−n−ヘキサン[1:19]で溶出して標題化合物を得た(2.12g、95.5%)。
1H-NMR(300MHz, CDCl3) δ ; 0.98-1.02(3H, m) , 1.41-1.69(9H, m) , 2.08-2.31(9H, m) , 3.96-4.16(2H, m) , 6.5-7.02(4H, m) , 7.14-7.29(5H, m).
【0047】
実施例12
N−((S)−(−)−1−フェニルエチル)−2,2,4,6,7−ペンタメチル−3−(4−メチルフェニル)−2,3−ジヒドロ−1−ベンゾフラン−5−アミンの製造
窒素気流下、トルエン(10mL)に5−ブロモ−2,2,4,6,7−ペンタメチル−3−(4−メチルフェニル)−2,3−ジヒドロ−1−ベンゾフラン(2g)と(S)−(−)−1−フェニルエチルアミン(0.94g)を加え、酢酸パラジウム(5mg)および(S)−(−)−2,2‘−ビス(ジフェニルフォスフィノ)−1,1’−ビナフチル(41.6mg)を加え、さらにナトリウムtert−ブトキシド(0.86g)を加え、100℃で6時間攪拌した。反応液に希塩酸を加えて有機層を10%食塩水で洗浄後、有機層を減圧濃縮し、残さをシリカゲルカラムクロマトグラフィーに付し、酢酸エチル−n−ヘキサン[1:19]で溶出して標題化合物を得た(2.13g、96.0%)。
1H-NMR(300MHz, CDCl3) δ ; 0.98-1.02(3H, m) , 1.41-1.69(9H, m) , 2.08-2.31(9H, m) , 3.96-4.16(2H, m) , 6.5-7.02(4H, m) , 7.14-7.29(5H, m).
【0048】
参考例1
(+)−2,2,4,6,7−ペンタメチル−3−(4−メチルフェニル)−2,3−ジヒドロ−1−ベンゾフラン−5−アミンの製造
(+)−ジ−p−トルオイル酒石酸(1936g)のイソプロピルアルコール(14.8L)懸濁溶液を、75℃に加熱して溶解した。ついで2,2,4,6,7−ペンタメチル−3−(4−メチルフェニル)−2,3−ジヒドロ−1−ベンゾフラン−5−アミン(1850g)のトルエン(9250mL)溶液を滴下し、同温度で10分間攪拌した。67〜69℃で30分間攪拌し、室温(25〜30℃)まで冷却して析出した結晶をろ取した。トルエン−イソプロピルアルコール(5:1)で洗浄してジアステレオマー塩を得た(2234g)。
融点 193−194℃.[α]D = +79.2゜(C=1.0,MeOH).
1H-NMR(DMSO-d6)δ: 0.88(3H, s), 1.37(3H, s), 2.01(3H, s), 2.05(3H, s), 2.24(3H, s), 2.39(6H, s), 4.08(1H, s), 5.80(2H, s), 7.03-7.26(6H, m), 7.27(4H, d, J=8.0), 7.89(4H, d, J=8.0).
ジアステレオマー塩のメタノール(12.025L)溶液を45℃に加熱し、25%アンモニア水を滴下してpH8.5に調製。50℃で10分攪拌し、水(3105mL)を加えた。結晶が析出し始めた後、さらに水(4163mL)を加え50℃で1時間、25〜30℃で1時間攪拌した。結晶をろ取し50%メタノールで洗浄して、標題化合物を得た(805.1g、43.5%)。
融点 91−92℃.[α]D = +5.2゜(C=1.0,MeOH).
1H-NMR(CDCl3)δ: 1.01(3H, s), 1.48(3H, s), 1.79(3H, s), 2.14(3H, s), 2.20(3H, s), 2.31(3H, ), 3.08(2H, bs), 4.10(1H, s), 6.60-7.10(4H, m).
【0049】
参考例2
(R)−(+)−5,6−ジメトキシ−2−(2,2,4,6,7−ペンタメチル−3−(4−メチルフェニル)−2,3−ジヒドロ−1−ベンゾフラン−5−イル)イソインドリンの製造
1,2−ビスクロロメチルベラトロール(675.9g)のトルエン(4000mL)溶液に、(+)−2,2,4,6,7−ペンタメチル−3−(4−メチルフェニル)−2,3−ジヒドロ−1−ベンゾフラン−5−アミン(800g)、N−エチルジイソプロピルアミン(943.2mL)のトルエン(3867mL)溶液を窒素気流下、加熱下(内温100℃)に4.5時間で滴下した。滴下終了後さらに100℃で1時間攪拌。0.5N HCl(1600mL)を加え振り混ぜた後、有機層を分取し、水洗後内温45℃でメタノール(1040mL)を加え、さらに濃塩酸(333.6mL)を滴下した。結晶が析出した。50℃で30分攪拌した後、5℃で1時間攪拌後、結晶をろ取し、トルエンついで50%エタノールで洗浄して、(R)−(+)−5,6−ジメトキシ−2−(2,2,4,6,7−ペンタメチル−3−(4−メチルフェニル)−2,3−ジヒドロ−1−ベンゾフラン−5−イル)イソインドリン塩酸塩を得た(1119g、83.6%)。本塩酸塩を90%エタノール(5600mL)、濃塩酸(110mL)混液に溶解し、2,6−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシトルエン(8.0g)を加え、50℃で6.25%アンモニア水を滴下して、pH8.0に調製後、水(640mL)を加えた。50℃で30分攪拌後、室温で1時間攪拌し、析出した結晶をろ取。70%エタノールで洗浄し、標題化合物を得た(935g、75.5%)。
融点 157−159℃.[α]D = + 62.3゜(C=0.488, MeOH).
1H-NMR(CDCl3)δ: 1.01(3H, s), 1.48(3H, s), 1.76(3H, s), 2.17(3H, s), 2.18(3H, s), 2.30(3H, s), 3.87(6H, s), 4.09(1H, s), 4.45(4H, s), 6.76-7.06(6H, m).
【産業上の利用可能性】
【0050】
以上記載したごとく、本発明によれば、従来の方法よりも少ない工程数で、かつ穏和な反応条件下に、2,3−ジヒドロベンゾフラン環に良好な位置選択性で置換基を導入できる。したがって、本発明により、副反応が抑えられ、工程全体としてより高収率が達成される医薬として有用なベンゾフラン誘導体の工業的生産に好適な新規製造法が提供できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2−メチル−1−(4−メチルフェニル)−2−(2,3,5−トリメチルフェノキシ)−1−プロパノン。
【請求項2】
2−メチル−1−(4−メチルフェニル)−2−(2,3,5−トリメチルフェノキシ)−1−プロパノール。
【請求項3】
N−ベンジル−2,2,4,6,7−ペンタメチル−3−(4−メチルフェニル)−2,3−ジヒドロ−1−ベンゾフラン−5−アミン。

【公開番号】特開2009−256355(P2009−256355A)
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−117715(P2009−117715)
【出願日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【分割の表示】特願2002−202741(P2002−202741)の分割
【原出願日】平成14年7月11日(2002.7.11)
【出願人】(000002934)武田薬品工業株式会社 (396)
【Fターム(参考)】