説明

ベータストランドミメティックスおよびこれに関連した方法

【課題】
【解決手段】 生物学的に活性なペプチドと蛋白質のベータストランド領域の2次構造を模倣した立体配座的に束縛された化合物が開示されている。このようなベータストランドミメティック構造体は、診断剤および治療剤としての用途を含む広範囲な分野にわたって有用である。また、本発明のベータストランドミメティック構造体を含むライブラリおよび生物学的に活性なメンバーを識別するためのスクリーニング方法も開示されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、β−ストランドミメティック構造体、これに関連した化学ライブラリおよびその用途に関する。
【背景技術】
【0002】
治療剤としての潜在的な活性のための分子のランダムスクリーニングは、長年にわたって行われてきた。その結果、数多くの薬が発見された。分子生物学および計算機化学の発展により、「合理的薬剤設計(rational drug design)」と命名される分野についての関心は高まっているものの、このような技術は、最初予想した程には、高速ではないし、信頼できないことが判明している。それゆえ、最近は、ランダム薬物スクリーニングに対する関心が再開され、ランダム薬物スクリーニングに関心が戻っている。このために、コンビナトリアル・ケミストリー・ライブラリの開発に基づく新しい技術分野、および生物学的に活性なメンバー(member)を調査するための前記ライブラリのスクリーニング分野において、特に進展してきた。
【0003】
一般に、コンビナトリアル・ケミストリー・ライブラリは、単純な分子の集合体である。このようなライブラリは、ライブラリ内にある化学種ごとに様々になるだけでなく、前記ライブラリのメンバーを作成し、かつ関心のある生物学的標的と相互反応してメンバーを同定するために使用する方法ごとに様々になる。この分野は未だ初期段階であるが、ライブラリを作成し、スクリーニングする方法は、既に、相当様々で且つ複雑である。例えば、様々なコンビナトリアル・ケミストリー・ライブラリの最近の論文では、数多くの技術が明らかになり(参照:Dolle, J. Com. Chem., 2(3): 383-433, 2000)標識されているライブラリまたは標識されていないライブラリの両メンバーの使用を含んでいる(Janda,
Proc. Natl. Acad. Sci. USA 91:10779-10785, 1994)。
【0004】
初期には、コンビナトリアル・ケミストリー・ライブラリは、一般に、ペプチドまたはヌクレオチド起源のメンバーに限られていた。このために、Houghten等の技術は、スプリット合成技術によって可溶性コンビナトリアル・ペプチド・ライブラリを組み立てるための「二重限定反復(dual-defined iterative)」方法と命名されるものの一例を説明している(Nature (London) 354:84-86, 1991; Biotechniques 13:412-421, 1992; Bioorg. Med. Chem. Lett. 3:405-412, 1993)。この技術により、数千万のメンバーを含む
可溶性ペプチドライブラリが得られた。このようなライブラリは、オピオイドペプチド、例えばメチオニン−およびロイシン−エンケファリンなどのの同定において有効であることが明らかになっており(Dooley and Houghten, Life Sci. 52, 1509-1517, 1993)、また、N−アシル化ペプチドライブラリは、強力なオピオイドアンタゴニストであるアセタリンの同定に使用されている(Dooley et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:10811-10815, 1993)。さらに最近では、全てのD−アミノ酸オピオイドペプチドライブラリが、ミュー(「μ」)オピオイドレセプタに対する鎮痛活性のために構成され、スクリーニングされている(Dooley et al, Science 266:2019-2022, 1994)。
【0005】
ペプチドおよびヌクレオチド起源のメンバーを含むコンビナトリアル・ライブラリは、非常に重要な意味を持つが、依然として、異なる起源のメンバーを含むライブラリが必要とされている。例えば、巨大に拡張された伝統的なペプチドライブラリは、単にライブラリメンバーを発生させるために、そのアミノ酸配列を様々にしたものである。ペプチドの二次構造が生物学的活性に重要であることはよく認知されているが、このようなペプチドライブラリは、そのライブラリメンバーに対して、束縛(constrained)二次構造を与えな
い。
【0006】
このために、一部の研究者らは、さらに束縛された二次構造を提供するため、ジスルフィド架橋でペプチドを環化させている(Tumelty et al., J. Chem. Soc. 1067-68, 1994; Eichler et al., Peptide Res. 7:300-306, 1994)。しかしながら、このような環化ペプ
チドは、一般に、非常に可変的であり、生体利用能に乏しい。よって、成功が限られている。
【0007】
さらに最近では、生物学的に活性なタンパク質またはペプチドにおいて見られるリバースターンの二次構造を非常にそっくり模倣した非ペプチド化合物が開発されている。例えば、Kahnの米国特許第5,440,013号およびKahnの公開PCT WO94
/03494は、リバースターンの三次元構造を模倣した立体配座的に束縛された非ペプチド化合物を開示している。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
立体配座的に束縛されたペプチドミメティックスの合成および同定技術は、著しく進歩しているものの、当該技術分野において、ペプチドの二次構造を模倣した小分子に対する開発の必要性は依然として存在している。また、当該技術分野において、このようなメンバーを含むライブラリだけでなく、関心のある標的、特に生物学的標的に対するライブラリメンバーを合成し、スクリーニングして生理活性のライブラリメンバーを同定する技術が要求されている。例えば、Kahnの米国特許第5,929,237号およびその一部継続出願である米国特許第6,013,458号は、生物学的に活性なペプチドおよびタンパク質のリバースターン部位の二次構造を模倣した、立体配座的に束縛された化合物を開示している。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、また、これらの要求を満たし、生物学的に活性なペプチドおよびタンパク質のβ−ストランド構造の二次構造を模倣した、立体配座的に束縛された化合物を提供することにより、これに関連した更なる利点を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
要するに、本発明は、生物学的に活性なペプチドと蛋白質のβ−ストランド構造の2次構造を模倣した、立体配座的に束縛された化合物に関する。本発明は、また、このような化合物を含むライブラリだけでなく、その合成とスクリーニングを開示している。
【0011】
本発明の化合物は、下記化学式(I)の構造を有する化合物 および これらの化合物
の立体異性体である。
【0012】
【化6】

【0013】
式中、Aは−(CH)−、−N−または−CH2−N−であり、Bは−(C=O)−ま
たは−(CH2m−であり、Wは−(C=O)−、−Y(C=O)−、−NH(C=O)−、または存在せず、Xは−NH−、−NH(C=O)−または存在せず、Yは酸素または硫黄であり、Zは酸素または水素であり、Lは水素、R5、−C(O)NHR3またはその等価体であり、n=0または1、そしてm=1または2であり、R1、R2、R3、R4およびR5は、同一または異なって、水素、アミノ酸側鎖部分またはその誘導体、その分子
の残部、リンカーおよび固体支持体から独立に選択される。
【0014】
本発明の一つの実施態様において、Xが存在せず、Aが−N−であり、Bが−(C=O)−であり、Lが−C(O)NHR3であり、また、他の基が化学式(I)で定義したと
おりであって、その結果、本発明の化合物は下記化学式(I’)の構造を有する。
【0015】
【化7】

【0016】
任意に、Wは存在せず、Zは酸素である。
【0017】
本発明の一つの実施態様において、Xが存在せず、Aが−N−であり、Bが−(CH2
m−であり、Lが−C(O)NHR3であり、また、他の基が化学式(I)で定義した
とおりであって、その結果、本発明の化合物は下記化学式(I’’)の構造を有する。
【0018】
【化8】

【0019】
任意に、Wは存在せず、Zは酸素である。
【0020】
本発明の一つの実施態様において、Xが−NH−であり、Aが−(CH)−であり、Bは−(CH2m−であり、Lが−C(O)NHR3であり、また、他の基が化学式(I
)で定義したとおりであって、その結果、本発明の化合物は下記化学式(I’’’)の構
造を有する。
【0021】
【化9】

【0022】
任意に、Zは酸素であり、Wは存在しない。
【0023】
本発明の一つの実施態様において、Aが−CH2−N−であり、Bが−(CH2m−で
あり、Lが−C(O)NHR3であり、また、他の基が化学式(I)で定義したとおりで
あって、その結果、本発明の化合物は下記化学式(I’’’’)の構造を有す
る。
【0024】
【化10】

【0025】
任意に、Yは酸素であり、および/またはWは存在せず、および/またはZは酸素である。
【0026】
本発明はまた、前記化学式(I)、(I’)、(I’’)、(I’’’)および(I’’’’)の構造を有する化合物を含むライブラリだけでなく、このようなライブラリの合成方法、および生物学的に活性な化合物を同定するために前記ライブラリをスクリーニングする方法に関する。医薬的に許容されるキャリアまたは希釈剤と組み合わせた本発明の化合物を含有する組成物も開示されている。
【0027】
本発明のこれらの態様および他の態様は、添付図面と以下の詳細な説明を参考すると、さらに明らかになる。
【0028】
発明を実現するための最良の形態
生物学的に活性なペプチドおよび蛋白質のβ−ストランド部位の二次構造を模倣した、
立体配座的に束縛された化合物が開示される。このようなβ−ストランドミメティック構造体は、診断剤および治療剤としての用途を含んだ広範囲な分野にわたって有用性を持つ。本発明のβ−ストランドミメティック構造体を含むライブラリだけでなく、生物学的に活性なメンバーを同定するために前記ライブラリをスクリーニングする方法も開示される。
【0029】
一つの態様において、本発明は、β−ストランドミメティック構造体およびβ−ストランドミメティック構造体を含む化学的ライブラリに関する。本発明のβ−ストランドミメティック構造体は、診断剤、予防剤および/または治療剤としての使用を含んで(ところが、これらに制限されない)、生理活性剤として有用である。本発明のβ−ストランドミメティック構造体は、このような生理活性剤の同定に有用である。本発明の実施において、ライブラリは、数十個〜数百〜数千個(またはそれ以上)の個々のβ−ストランドミメティック構造体(以下では、「メンバー」という)を含んでもよい。
【0030】
本発明の一つの実施態様では、下記化学式(I)を有するβ−ストランドミメティック構造体およびこの立体異性体が開示される。
【0031】
【化11】

【0032】
式中、Aは−(CH)−、−N−または−CH2−N−であり、Bは−(C=O)−ま
たは−(CH2m−であり、Wは−(C=O)−、−Y(C=O)−、−NH(C=O)−、または存在せず、Xは−NH−、−NH(C=O)−または存在せず、Yは酸素または硫黄であり、Zは酸素または水素であり (Zは水素であればC=ZはCH2を意味する)
Lは水素、R5、−C(O)NHR3またはその等価体であり、n=0または1、そして
m=1または2であり、R1、R2、R3、R4およびR5は、同一または異なって、水素、
アミノ酸側鎖部分またはその誘導体、その分子の残部、リンカーおよび固体支持体から独立に選択される。
【0033】
一つの実施態様において、R1、R2、R3、R4およびR5は、アミノC2-5アルキル、グアニジノC25アルキル、C14アルキルグアニジノC25アルキル、ジC14アルキルグアニジノC25アルキル、アミジノC25アルキル、C14アルキルアミジノC25アルキル、ジC14アルキルアミジノC25アルキル、C13アルコキシ、フェニル、置換フェニル(ここで、置換基は、アミノ、アミジノ、グアニジン、ヒドラジン、アミドラゾニル、C14アルキルアミノ、C14ジアルキルアミノ、ハロゲン、パーフルオロC14アルキル、C14アルキル、C13アルコキシ、ニトロ、カルボキシ、シアノ、スルフリルまたはヒドロキシルの1個またはそれ以上から独立に選択される)、ベンジル、置換ベンジル(ここで、ベンジル上の置換基は、アミノ、アミジノ、グアニジノ、ヒドラジノ、アミドラゾニル、C14アルキルアミノ、C14ジアルキルアミノ、ハロゲン、パーフルオロC14アルキル、C13アルコキシ、ニトロ、カルボキシ、シアノ、スルフリルまたはヒドロキシルの1個またはそれ以上から独立に選択される)、ナフチル、置換ナフチル
(ここで、置換基は、アミノ、アミジン、グアニジン、ヒドラジノ、アミドラゾニル、C14アルキルアミノ、C14ジアルキルアミノ、ハロゲン、パーフルオロC14アルキル、C14アルキル、C13アルコキシ、ニトロ、カルボキシ、シアノ、スルフリルまたはヒドロキシルの1個またはそれ以上から独立に選択される)、ビス−フェニルメチル、置換ビス−フェニルメチル(ここで、置換基は、アミノ、アミジノ、グアニジン、ヒドラジン、アミドラゾニル、C14アルキルアミノ、C14ジアルキルアミノ、ハロゲン、パーフルオロC14アルキル、C14アルキル、C13アルコキシ、ニトロ、カルボキシ、シアノ、スルフリルまたはヒドロキシルの1個またはそれ以上から独立に選択される)、ピリジル、置換ピリジル(ここで、置換基は、アミノ、アミジノ、グアニジノ、ヒドラジノ、アミドラゾニル、C14アルキルアミノ、C14ジアルキルアミノ、ハロゲン、パーフルオロC14アルキル、C14アルキル、C13アルコキシ、ニトロ、カルボキシ、シアノ、スルフリルまたはヒドロキシルの1個またはそれ以上から独立に選択される)、ピリジルC14アルキル、置換ピリジルC14アルキル(ここで、ピリジン置換基は、アミノ、アミジノ、グアニジン、ヒドラジン、アミドラゾニル、C14アルキルアミノ、C14ジアルキルアミノ、ハロゲン、パーフルオロC14アルキル、C14アルキル、C13アルコキシ、ニトロ、カルボキシ、シアノ、スルフリルまたはヒドロキシルの1個またはそれ以上から独立に選択される)、ピリミジルC14アルキル、置換ピリミジルC14アルキル(ここで、ピリミジン置換基は、アミノ、アミジノ、グアニジン、ヒドラジン、アミドラゾニル、C14アルキルアミノ、C14ジアルキルアミノ、ハロゲン、パーフルオロC14アルキル、C14アルキル、C13アルコキシ、ニトロ、カルボキシ、シアノ、スルフリルまたはヒドロキシルの1個またはそれ以上から独立に選択される)、トリアジン−2−イル−C14アルキル、置換トリアジン−2−イル−C14アルキル(ここで、トリアジン置換基は、アミノ、アミジノ、グアニジン、ヒドラジン、アミドラゾニル、C1
4アルキルアミノ、C14ジアルキルアミノ、ハロゲン、パーフルオロC14アルキル
、C14アルキル、C13アルコキシ、ニトロ、カルボキシ、シアノ、スルフリルまたはヒドロキシルの1個またはそれ以上から独立に選択される)、イミダゾールC14アルキル、置換イミダゾールC14アルキル(ここで、イミダゾール置換基は、アミノ、アミジノ、グアニジン、ヒドラジン、アミドラゾニル、C14アルキルアミノ、C14ジアルキルアミノ、ハロゲン、パーフルオロC14アルキル、C14アルキル、C13アルコキシ、ニトロ、カルボキシ、シアノ、スルフリルまたはヒドロキシルの1個またはそれ以上から独立に選択される)、イミダゾリニルC14アルキル、N−アミジノ−ピペラジニル−N−C04アルキル、ヒドロキシC25アルキル、C15アルキルアミノC25アルキル、ヒドロキシC25アルキル、C15アルキルアミノC25アルキル、C15ジアルキルアミノC25アルキル、N−アミジノピペリジニルC14アルキルおよび4−アミノシクロヘキシルC02アルキルよりなる群から独立に選択される。
【0034】
一つの実施態様において、R1、R2、およびR3は、同一または異なって、前記化合物
の残部を示し、R4は、アミノ酸側鎖部分またはその誘導体から選択される。別の一つの
実施態様において、Lは−C(=O)NHR3を示し、R1、R2、およびR3は、同一または異なって、前記化合物の残部またはアミノ酸側鎖部分もしくはその誘導体を示し、R4
は水素である。
【0035】
ここで使用される「アミノ酸側鎖部分」との用語は、表1に示した天然アミノ酸側鎖部分を含む(ただしこれに制限されない)、天然蛋白質に存在する任意のアミノ酸側鎖部分を示す。本発明の他の天然アミノ酸側鎖部分は、3,5−ジブロモチロシン、3,5−ジヨードチロシン、ヒドロキシリジン、γ−カルボキシグルタメート、ホスホチロシンおよびホスホセリンの側鎖部分を含むが、これらに限定されるものではない。その他に、グルコシル化スレオニン、セリンおよびアスパラギンを含む(ところが、これらに制限されない)、グリコシル化アミノ酸の側鎖部分も本発明の実施に使用されてもよい。
【0036】
【表1】

【0037】
天然アミノ酸の側鎖部分以外に、本発明のアミノ酸側鎖部分にはまた、これらの誘導体を含む。ここで使用されるアミノ酸側鎖部分の「誘導体」には、天然アミノ酸側鎖部分に対する改変体および/または変形体を含む。例えば、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシンおよびフェニルアラニンのアミノ酸側鎖部分は、一般に、低級アルキル、アリールまたはアリールアルキル部分に分類できる。アミノ酸側鎖部分の誘導体には、他の直鎖または分岐鎖、環式または非環式の置換または非置換、飽和または不飽和の低級アルキル、アリールまたはアリールアルキル部分を含む。
【0038】
ここで使用される用語「化合物の残部」および「分子の残部」は、β−ストランドミメ
ティック構造体に共有結合している任意の部分、薬剤、化合物、支持体、分子、リンカー、アミノ酸、ペプチドまたは蛋白質を意味するように用いられる。結合は、R1および/
またはR2および/またはR3位置であるのが好ましい。この用語はまた、アミノ酸側鎖部分およびその誘導体を含む。
【0039】
ここで使用される「低級アルキル部分」は、1〜12個の炭素原子を含有し、「低級アリール部分」は、6〜12個の炭素原子を含有し、そして「低級アラルキル部分」は、7〜12個の炭素原子を含有する。よって、一つの実施態様において、このアミノ酸側鎖誘導体は、C112アルキル、C612アリールおよびC712アリールアルキルから選択さ
れ、さらに好適な実施態様では、アミノ酸側鎖誘導体はC17アルキル、C610アリー
ルおよびC711アリールアルキルから選択される。
【0040】
本発明のアミノ酸側鎖誘導体は、低級鎖アルキル、アリールおよびアリールアルキル部分の置換誘導体をさらに含有し、ここで、前記置換基は、下記化学物質部分:−OH、−OR、−COOH、−COOR、−CONH2、−NH2、−NHR、−NRR、−SH、−SR、−SO2R、−SO2H、−SORおよびハロゲン(F、Cl、BrおよびIを含む)の1またはそれ以上から選択されるが、これらに限定されない。ここで、前記Rは、それぞれ独立に、直鎖または分岐鎖、環式または非環式、置換または非置換、飽和または不飽和の低級鎖アルキル、アリールおよびアラルキル部分から選択される。一つの実施態様において、その置換基は18個の炭素原子より少ない数を有する。しかも、本発明の環式の低級鎖アルキル、アリールおよびアリールアルキル部分は、ナフタレンだけでなく、複素環化合物、例えばチオフェン、ピロール、フラン、イミダゾール、オキサゾール、チアゾール、ピラゾール、3−ピロリン、ピロリジン、ピリジン、ピリミジン、プリン、キノリン、イソキノリンおよびカルバゾールを含む。アミノ酸側鎖誘導体はまた、アルキルおよびアラルキルホスホネートならびにシランを含む(これらに制限されない)、低級鎖アルキルおよびアラルキル部分のアルキル部分のヘテロアルキル誘導体をさらに含む。
【0041】
本発明の一態様において、R1、R2およびR3部分は、−OH、−OR、−COR、−
COOR、−CONH2、−CONR、−CONRR、−NH2、−NHR、−NRR、−SO2Rおよび−COSRから選択され、ここで、各Rは上で定義したとおりである。
【0042】
追加の実施態様において、アミノ酸側鎖部分またはその誘導体(またはR1、R2およびR3の場合の化合物の残部)以外にも、R1、R2またはR3はもう一つの部分または化合物に対する化合物の結合を促進するリンカーであってもよい。例えば、本発明の化合物は、診断アッセイまたはスクリーニングアッセイで使用するために、1種またはそれ以上の公知化合物(例えば、ビオチン)と結合していてもよい。さらに、R1、R2またはR3は、
固体支持体(例えば、固相ペプチドの合成に使用される支持体)に化合物を結合させるリンカーであってもよく、あるいは、その支持体そのものであってもよい。この実施態様において、別の部分もしくは化合物または固体支持体に対する結合は、R1、R2またはR3
位置で、さらに好ましくは、R3位置であることが好ましい。
【0043】
Xが存在せず、AがNであり、Bが−(C=O)−であり、Lが−C(O)NHR3
ある実施態様において、本発明のβ−ストランド化合物は、下記化学式(I’)の構
造を有する。
【0044】
【化12】

【0045】
式中、R1、R2、R3、R4、W、Y、Zおよびnは、上で定義したとおりである。
【0046】
好適な実施態様において、R2およびR3は、化合物の残部を示し、R1およびR4は、アミノ酸側鎖部分から選択される。
【0047】
Xが存在せず、AがNであり、Bが−(CH2m−であり、Lが−C(O)NHR3
ある実施態様において、本発明のβ−ストランドミメティック構造体は、下記化学式(I’’)の構造を有する。
【0048】
【化13】

【0049】
式中、R1、R2、R3、R4、W、Y、Z、mおよびnは、上で定義したとおりである。好適な実施態様において、R2およびR3は、化合物の残部を示し、R1およびR4は、アミノ酸側鎖部分から選択される。
【0050】
Xが−NH−であり、Aが−(CH)−であり、Bが−(CH2m−であり、Lが−C(O)NHR3であるさらに具体的な実施態様において、β−ストランドミメティック構
造体は、下記化学式(I’’’)の構造を有する。
【0051】
【化14】

【0052】
式中、R1、R2、R3、R4、W、Y、Z、mおよびnは、上で定義したとおりである。
【0053】
Aが−CH2−N−であり、Bが−(CH2m−であり、Lが−C(O)NHR3であるさらに具体的な実施態様において、本発明の化合物は、下記化学式(I’’’’)の構造を有する:
【0054】
【化15】

【0055】
任意に、式中、R1、R2、R3、R4、W、Y、Z、mおよびnは上で定義したとおりであり、Wは存在せず、Zは酸素であり、Yは酸素である。
【0056】
本発明のβ−ストランドミメティック構造体は、適切な出発成分分子(以下、「成分片」という)を用いて製造することができる。要するに、化学式(I’)の構造を有するβ−ストランドミメティック構造体の合成において、第1および第2成分片をカップリングさせて複合第1−第2中間体を形成し、また必要に応じて、第3および/または第4成分片をカップリングさせて複合第3−第4中間体(または、市販で入手可能な場合、単一の第3中間体が使用され得る)を形成し、複合第1−第2中間体および第3−第4中間体(または第3中間体)をカップリングさせて第1−第2−第3−第4中間体(または、第1−第2−第3中間体)を形成し、これを、環化させて、本発明のβ−ストランドミメティック構造体を得る。あるいは、化学式(I’)のβ−ストランドミメティック構造体は、個々の成分片を、溶液中にて段階的に、または固相ペプチド合成で通常実施されるような固相合成によって連続的にカップリングさせることにより、製造することができる。
【0057】
本発明の内容中において、「第1成分片」は下記構造1を有する:
【0058】
【化16】

【0059】
式中、R2、AおよびBは上で定義したとおりであり、Rはペプチド合成への使用に適
した保護基である。適切なR基には、アルキル基を含み、また、好適な実施態様において、Rはメチル基である。このような第1成分片は、CH(OR)2−(CH2m−CHO
とH2N−R2を結びつけることによる還元的アミノ化によってか、またはCH(OR)2
(CH2m−Brからの置換によって容易に合成することができる。
【0060】
本発明の「第2成分片」は、下記構造2を有する:
【0061】
【化17】

【0062】
式中、LおよびR4は上で定義したとおりであり、Pはペプチド合成への使用に適した
アミノ保護基であり、Xは活性化されたカルボン酸基の離脱基である。好ましい保護基には、t−ブチルジメチルシリル(TBDMS)、BOC、FMOCおよびAlloc(アリルオキシカルボニル)を含む。Lが−C(O)NHR3の場合、−NHR3はカルボキシ保護基であってもよい。N−保護アミノ酸は、商業的に市販されており、例えば、FMOCアミノ酸は、様々な供給源から入手できる。これらN−保護アミノ酸を本発明の第2成分片に転換することは、N−保護アミノ酸のカルボン酸基の活性化によって容易に達成することができる。適切な活性化カルボン酸基には、酸ハロゲン化物(ここで、Xは塩素または臭素などのハロゲン)、酸無水物(ここで、Xはアセチルのようなアシル基である)、N−ヒドロキシスクシンイミドエステルおよびペンタフルオロフェニルエステルのような反応性エステル、およびジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)のようにカルボジイミドを用いてカップリング反応で形成された活性中間体のようなその他の活性中間体を含む。
【0063】
第2成分片として作用するアミノ酸のアジド誘導体の場合、このような化合物は、Zaloom等(J. Org. Chem. 46:5173-76, 1981)によって開示された反応により、相応するアミノ酸から製造することができる。
【0064】
本発明の「第3成分片」は、下記構造3を有する:
1−NH2またはR3−NH2
式中、R1およびR3は、上で定義したとおりである。適切な第3成分片は、様々な供給源から商業的に入手することができるか、または第一級アミンの合成に一般的に使用される標準有機合成技術によって容易に製造することができる。
【0065】
さらに具体的に、化学式(I’)の構造を有する本発明のβストランドミメティック構造体は、第1成分片を第2成分片と反応させて複合第1−第2中間体を生成させた後、複合第1−第2中間体を第3成分片と連続的に反応させるかあるいは第3および第4成分片と反応させ、複合第1−第2−第3−第4中間体を生成させた後、この中間体を環化させてβストランドミメティック構造体を得ることにより、合成される。
【0066】
化学式(I’)の構造を有するβ−ストランドミメティック構造体の一般的合成は、次の技術によって達成することができる。第1成分片(1)は、ポスゲンなどのカップリング剤を用いて第2成分片(2)とカップリングさせ、N−脱保護の後、下記のような複合第1−第2中間体を得る:
【0067】
【化18】

【0068】
式中、A、B、L、R、R2、R4、P、Xおよびnは、上で定義したとおりである。X2C(=S)は、カップリング剤の一例であり、また他の類型のカップリング剤も使用で
きる。本発明の代表的な成分片の合成は、実施例に記述されている。化学式(I’’)〜(I’’’)の構造を有するβ−ストランドミメティック化合物は、前述した分子成分の合成に類似した技術によって製造することができ、成分片に応じて適切な変形が可能である。
【0069】
本発明の別の態様では、本発明のβ−ストランドミメティック構造体を含むライブラリが開示される。一旦組み合わせられると、本発明のライブラリをスクリーニングして、生理活性を有する各メンバーを同定することができる。このような生理活性メンバーのためのライブラリのスクリーニングには、例えば、ライブラリのメンバーの結合活性を評価し、あるいはライブラリメンバーが機能アッセイに及ぶ効果を評価することを含む。スクリーニングは、通常、例えば抗体、酵素、受容体、または細胞株といった関心のある標的と共にライブラリメンバー(またはライブラリメンバーの亜グループ)を接触させることにより達成される。関心のある標的と共に相互反応することができるライブラリメンバーは、以下、これを「生理活性ライブラリメンバー」または「生理活性ミメティックス」という。例えば、生理活性ミメティックスは、抗体またはレセプタに結合できるか、酵素を阻害できるか、または、例えば細胞系に関連した機能応答を誘発またはアンタゴナイズできるライブラリメンバーであってもよい。言い換えれば、本発明のライブラリスクリーニングは、どんなライブラリメンバーが関心のある一つ以上の生物学的標的と相互作用することができるかを決定する。また、相互作用が起こると、その相互作用する生理活性ミメティックス(またはミメティックス)は、ライブラリメンバーから同定することができる。ライブラリから単一(または制限された数)の生理活性ミメティックスを同定すると、それ自体が生物学的に活性であって診断剤、予防剤または治療剤として有用であり、かつ当該分野でリード化合物の同定を相当進歩させるのに使用できるβ−ストランドミメティックスが得られる。
【0070】
本発明のライブラリのペプチドミメティックスの合成は、本発明の第1成分片、第2成
分片、第3成分片、および任意に第4成分片を共に組み合わせて公知のペプチド合成技術を用いて行うことができる。さらに具体的に、任意のアミノ酸配列を立体配座的に束縛された化合物のN末端および/またはC末端に添加できる。この目的のために、ミメティックスは、公知の技術によってPAM樹脂のような固体支持体上で合成し(参照:John M. Stewart and Janis D. Young, Solid Phase Peptide Synthesis, 1984, Pierce Chemical Comp., Rockford, Ill.)、またはアルコール結合によってシリル連結された樹脂上で合成され得る(参照:Randolph et al., J. Am Chem. Soc. 117:5712-14, 1995)。
【0071】
その他、溶液合成技術と固相合成技術の組み合わせによって本発明のペプチドミメティックスを合成することができる。例えば、立体配座的に束縛されたβストランドが配列に添加される地点まで、固体支持体を用いて、線形ペプチド配列を合成することができる。溶液合成技術によって、予め合成された適切な立体配座的に束縛されたβ−ストランドミメティックス構造体を固相合成において次回の「アミノ酸」に添加させることができる(すなわち、N末端とC末端を有する立体配座的に束縛されたβ−ストランドミメティックスを線形ペプチドに添加する次のアミノ酸として使用することができる)。立体配座的に束縛されたβ−ストランドミメティック構造体を配列に取り込む場合、追加のアミノ酸を、固体支持体に結合したペプチドを完成させるために添加することができる。これとは異なり、線形N末端およびC末端保護ペプチド配列を固体支持体上で合成することができ、支持体から除去することができ、公知の溶液カップリング技術を用いて、溶液中の立体配座的に束縛されたβ−ストランドミメティックス構造体にカップリングさせることができる。
【0072】
本発明の別の態様では、ライブラリを構成する方法が開示される。伝統的なコンビナトリアル・ケミストリー技術(参照:Gallop et al., J. Med. Chem. 37:1233-1251, 1994) により、基本的な分子骨格への試薬の順次組み合わせによって多数の化合物が迅速に製造される。組み合わせ技術は、天然アミノ酸から誘導されたペプチドライブラリの構成に使用されてきた。例えば、20個の適切に保護された相異なるアミノ酸からなる20個の混合物を取り、それぞれを20個のアミノ酸のいずれか一つとカップリングさせることにより、400(すなわち、202)個のジペプチドからなるライブラリが生成される。この
ような過程を7回繰り返し行うことにより、約260億(208)個のオクタペプチドか
らなるペプチドライブラリを製造する。
【0073】
本発明の追加の態様では、生理活性ライブラリをスクリーニングし、生理活性ライブラリメンバーを分離する方法が開示される。本発明のライブラリは、様々な技術および方法によって生理活性をスクリーニングすることができる。一般に、スクリーニングアッセイは、(1)受容体のような興味ある生物学的標的にライブラリを接触させ、ライブラリメンバーと標的間に結合を生じさせ、(2)適切なアッセイ、例えば、Lam等(Nature 354:82-84, 1991)またはGriminski等(Biotechnology 12:1008-1011, 1994)(これら両者とも、参考として挿入する)に開示された熱量アッセイなどによって結合が生じたことを検出することにより、行うことができる。好適な実施態様において、ライブラリメンバーは溶液中にあり、かつ標的は固相で固定される。代わりに、ライブラリは固相で固定され、かつこれら溶液中の標的に接触させて探知させてもよい。
【0074】
本発明のライブラリのペプチドミメティックスの合成は、図1に示したようなβ−ストランドミメティックライブラリを製造する一般反応図式を用いて行うことができる。本発明の二環式テンプレートライブラリの選択ペプチドミメティックスの合成は、96ウェルプレートを有するFlexChem Reactor Blockを用いて行った。上記図式において、「Pol」は2−クロロトリチルクロライド樹脂(Novabiochem)を示し、詳細な過程は以下に例示している。
【0075】
(第1段階)
2−クロロトリチルクロライド樹脂(1mmoL/g)とDCE中の溶液Fmoc−R1−アミノ酸(1.5当量)およびDIEA(2当量)を、96ウェルのRobinso
n block(FlexChem)に入れた。反応混合物を常温で12時間振盪した。
前記樹脂はDMF、MeOHで洗浄した後、DCMで洗浄した。
【0076】
(第2段階)
反応前にDMFによって膨潤された樹脂に、DMF中の25%ピぺリジンを加えた。その後、反応混合物を常温で30分間振盪した。このような脱保護工程を繰り返し行い、生成混合物をDMF、MeOHで洗浄した後、DCMで洗浄した。NMP中の4−R2−ア
ミノ−2−Fmoc−アミノ酪酸(1.5当量)、DIC(1.5当量)およびHOBT(1.5当量)の溶液を樹脂に加えた。反応混合物を常温で12時間振盪した後、前記樹脂をDMF、MeOHで洗浄し、その後DCMで洗浄した。
【0077】
(第3段階)
反応前にDMFによって膨潤された樹脂に、DMF中の25%ピぺリジンを加えた。その後、反応混合物を常温で30分間振盪した。このような脱保護工程を繰り返し行い、生成混合物をDMF、MeOHで洗浄した後、DCMで洗浄した。NMP中の2−(9H−フルオレン−9−イルメトキシカルボニルアミノ)−5,5−ジメトキシ−ペンタノン酸(1.5当量)、DIC(1.5当量)およびHOBT(1.5当量)の溶液を樹脂に加えた。反応混合物を常温で12時間振盪した。その後、前記樹脂をDMF、MeOHで洗浄した後、DCMで洗浄した。
【0078】
(第4段階)
反応前にDMFによって膨潤された樹脂に、DMF中の25%ピぺリジンを加えた。その後、反応混合物を常温で30分間振盪した。このような脱保護工程を繰り返し行い、生成混合物をDMF、MeOHで洗浄した後、DCMで洗浄した。NMP中の市販で入手可能なR3−酸(1.5当量)、DIC(1.5当量)およびHOBT(1.5当量)の溶
液を前記樹脂に加えた。反応混合物を常温で12時間振盪し、その後、前記樹脂をDMF、MeOHで洗浄した後、DCMで洗浄した。
【0079】
(第5段階)
樹脂を常温で18時間ギ酸(各ウェル当たり1.2mL)で処理した。その後、前記樹脂を濾過によって除去し、濾液をスピードバック(SpeedVac;Servant)を用いて減圧下に濃縮させることにより、オイルの形で生成物を得た。これらの生成物は、50%水/アセトニトリルで希釈し、冷凍させた後、凍結乾燥させた。
【0080】
表2は本発明によって製造することが可能なβ−ストランドミメティックスライブラリを示し、その代表的な調製を実施例9に示す。表2の化合物および その立体異性体は、
本発明の一つの態様、すなわちAが−(CH)−であり、Bが−(CH2m−(ここで、m=1)、Wが−(C=O)−であり、Xが−NH(C=O)−であり、Yが酸素であり、Zが水素であり(その結果C=ZがCH2を示す)、Lが−C(=O)NHR3であり、n=0、R4が水素であり、R1、R2およびR3は、同一または異なって、アミノ酸側鎖部分またはその誘導体、前記化合物の残部、リンカーおよび固体支持体から独立に選択される化合物の例示である。本発明の態様の様々な実施態様において、R1、R2およびR3
比較的低分子量部分、すなわち15(メチル)〜1,000g/moLの分子量を有する有機基から独立に選択され、および/またはR1、R2およびR3の少なくとも一つがアミ
ノ酸側鎖またはその誘導体を示す。例えば、表2の化合物において、R3はアスパラギン
酸誘導体を示す。一つの態様において、本発明の化合物は、約440〜750g/moL範囲内の分子量を有する。ここで、表2の化合物は、このような化合物の例を多数提供す
る。
【0081】
【表2】






















【0082】
本発明のライブラリのペプチドミメティックスの合成は、図2に示すようなβ−ストランドミメティックスライブラリの一般反応図式を用いて行うことができる。本発明の二環式テンプレートライブラリの選択ペプチドミメティックスの合成は、96ウェルプレートを有するFlexChem Reactor Blockを用いて行った。前記図式において、「Pol」は2−クロロトリチルクロライド樹脂(Novabiochem)を示し、詳細な過程は下記に例示する。
【0083】
(第1段階)
2−クロロトリチルクロライド樹脂(1mmol/g)とDCE中の溶液Fmoc−R1−ベータ−アミノ酸(1.5当量)およびDIEA(2当量)を、96ウェルのRob
ison block(FlexChem)に入れた。反応混合物を常温で12時間振盪
した。前記樹脂をDMF、MeOHおよびDCMで洗浄した。
【0084】
(第2段階)
反応前にDMFによって膨潤された樹脂に、DMF中の25%ピペリジンを加えた。その後、反応混合物を常温で30分間振盪した。このような脱保護工程を繰り返し行い、生成混合物をDMF、MeOHで洗浄した後、DCMで洗浄した。NMP中の4−R2−ア
ミノ−2−Fmoc−アミノ酪酸(1.5当量)、DIC(1.5当量)およびHOBT(1.5当量)の溶液を前記樹脂に加えた。反応混合物を常温で12時間振盪した後、前記樹脂をDMF、MeOHで洗浄した後、さらにDCMで洗浄した。
【0085】
(第3段階)
反応前にDMFによって膨潤された樹脂に、DMF中の25%ピペリジンを加えた。その後、反応混合物を常温で30分間振盪した。このような脱保護工程を繰り返し行った。生成混合物を、DMF、MeOHで洗浄した後、さらにDCMで洗浄した。NMP中の2−(9H−フルオレン−9−イルメトキシカルボニルアミノ)−5,5−ジメトキシ−ペンタン酸(1.5当量)、DIC(1.5当量)、およびHOBT(1.5当量)の溶液を前記樹脂に加えた。反応混合物を常温で12時間振盪した後、前記樹脂を、DMF、MeOHで洗浄した後、さらにDCMで洗浄した。
【0086】
(第4段階)
反応前にDMFによって膨潤された樹脂に、DMF中の25%ピペリジンを加えた。そ
の後、反応混合物を常温で30分間振盪した。このような脱保護工程を繰り返し行い、生成混合物を、DMF、MeOHで洗浄した後、さらにDCMで洗浄した。NMP中の市販で入手可能なR3−酸(1.5当量)、DIC(1.5当量)、およびHOBT(1.5
当量)の溶液を前記樹脂に加えた。反応混合物を常温で12時間振盪した後、前記樹脂を、DMF、MeOHで洗浄した後、さらにDCMで洗浄した。
【0087】
(第5段階)
前記樹脂を常温で18時間ギ酸(各ウェル当たり1.2mL)で処理した。その後、前記樹脂を濾過によって除去し、濾液をSpeedVac(Servant)を用いて減圧の下に濃縮させることにより、生成物をオイルの形で得た。これらの生成物は、50%水/アセトニトリルで希釈し、冷凍させた後、凍結乾燥した。
【0088】
表3は本発明によって製造することが可能なβ−ストランドミメティックスライブラリを示し、その代表的な調製は実施例10に示す。表3の化合物は、本発明の一つの態様、すなわちAが−(CH)−であり、Bが−(CH2m−(ここで、m=1)、Wが存在せず(すなわち、Rbと複素環のNとの間に直接結合)、Xが−NH(C=O)−であり、
Yが酸素であり、Zが水素であり(その結果、C=ZがCH2を示す)、Lが−C(=O
)NHR3であり、n=0、R4が水素であり、R1、R2およびR3は、同一または異なっ
て、アミノ酸側鎖部分またはその誘導体、分子の残部、リンカーおよび固体支持体から独立に選択される化合物およびこれらの化合物の立体異性体を例示する。本発明の態様の様々な実施態様において、R1、R2およびR3は、比較的低分子量部分、すなわち15(メ
チル)〜1,000g/molの分子量を有する有機基から独立に選択され、および/またはR1、R2およびR3の少なくとも一つがアミノ酸側鎖またはその誘導体を示す。例え
ば、表3の化合物において、R3はグルタル酸誘導体を示す。一つの態様において、本発
明の化合物は、約450〜800g/mol範囲内の分子量を有する。ここで、表3の化合物は、このような化合物の例を多数提供する。
【0089】
【表3】










【0090】
本発明のβ−ストランドミメティック構造体は、生理活性剤、例えば診断剤、予防剤および治療剤などとして使用できる。前記化合物は、医薬的に許容される形に剤形化された後、本発明のβ−ストランドミメティック構造体による治療を必要とする患者に投与されるのが好ましい。
【0091】
したがって、本発明は、化学式(I’’)から(I’’’’)の化合物を含む医薬組成物を提供する。本発明の化合物を含む医薬組成物の製造において、当該分野の技術者は、関連分野に知られている公知の知識および技術を使用することができる。一般に知られている様々なキャリアおよびその他の添加剤は、本発明の組成物の製造のために使用される。本発明の医薬組成物は、例えば経口投与、直腸投与または非経口投与によって、治療しようとする疾患症状に対する標準的な方法で投与することができる。
【0092】
これらの目的のために、本発明の化合物は、例えば錠剤、カプセル剤、水性もしくは油性液剤または懸濁剤、(脂質)エマルジョン、分散可能な粉末剤、座剤、軟膏、クリーム、点滴剤、および滅菌注射可能な水性または油性液剤または懸濁剤の形に当該分野における公知の方法によって剤形化されてもよい。
【0093】
本発明の適切な医薬組成物は、約1mg〜約1gの本発明の化合物を含有する、例えば錠剤またはカプセルなどの単位用量の形で経口投与に適したものである。
【0094】
別の特徴は、本発明の医薬組成物は、静脈内、皮下または筋肉内注射に適したものである。患者は、例えば本発明の化合物約1μg/kg〜約1g/kgの静脈内、皮下または筋肉内用量の投与を受けることができる。静脈内、皮下または筋肉内用量は、大量注射によって供給されてもよい。代わりに、静脈内用量は、一定の期間連続注入によって供給されてもよい。
【0095】
代わりに、患者は、一日非経口用量と殆ど同一の一日経口用量の投与を受けてもよい。前記組成物は一日に1〜約4回投与される。
【0096】
下記表は、人間の治療または予防のために、前記化合物またはその医薬的に許容される塩を含有する代表的な医薬剤形を例示したものである:
[表]

【0097】
一般式(I)の化合物を含有する医薬組成物は、温血動物でプロテアーゼを阻害すること、温血動物で細胞シグナル転写因子関連ペプチドを調節すること、および温血動物でキナーゼを阻害することを含む、様々な生物学的に望ましい効果のために使用することができる。これらの効果は、一般式(I)の化合物の有効量を必要とする動物に投与することを含む方法によって達成することができる。
【0098】
さらに、詳細に後述するように、本発明のβ−ストランドミメティック構造体は、温血動物でT−細胞受容体へのペプチドのMHC−1および/またはMHC−II存在を抑制すること、温血動物でSH2ドメインへのペプチド結合を抑制すること、温血動物でSH3ドメインへのペプチド結合を抑制すること、温血動物でPTB領域へのペプチド結合を抑制すること、温血動物でG蛋白質共役型受容体(GPCR)およびイオンチャネルを調節すること、および温血動物でサイトカインを調節することに効果的であり得る。

キナーゼ阻害(SH2およびSH3ドメイン抑制を含む)
一つの特徴において、本発明は、温血動物でキナーゼを阻害する方法を提供する。本方法は、キナーゼの阻害に有効な量で本発明の化合物を動物に投与することを含む。キナーゼ(または蛋白質キナーゼとして知られている)は、生体分子(代表的には別の酵素)がリン酸化される反応を触媒する部類の酵素である。1000個程度のキナーゼは、哺乳動物ゲノムにおいてエンコードされると考えられる(Hunter, Cell 50:823-829, 1987)。多
数のキナーゼにより、速いシグナル増幅および多重点における調節を可能にする。
【0099】
リン酸化は、シグナル変換工程で発見された非常に一般的な共有結合変形であり、且つ、リン酸化される蛋白質の活性における変化の原因となる。したがって、キナーゼは、シグナル経路の重要な成分である。キナーゼは、いろいろのモジュール作用部位、すなわち「ドメイン」に典型的には体系づけられる(Cohen, G. B., et al. Cell 80:237-248, 1995)。「SH3」として知られている一つのドメインは、プロリンがたくさん含有されたペプチド、特に延長されたストランドに結合する55〜70アミノ酸の領域である。「SH2」として知られているもう一つのドメインは、長さ約100個のアミノ酸のホスホチロシン結合領域である。これらの2領域は、蛋白質基質を認識し結合することと関連があるものと考えられている。これらだけでなく、ミリストリル化部位およびパルミトイル化部位を含んだ別のドメインは、正確な標的に触媒領域を導く多蛋白質複合体の集合に関与する(Mayer et al. Mol. Cell. Biol. 12:609-618, 1992; and Mayer and Baltimore, Mol.
Cell. Biol. 14:2883-2894, 1994)。SH2およびSH3ドメインは、いくつかのキナーゼに存在するものと知られているが、これらのドメインは、別の蛋白質にも存在する。本発明の化合物は、キナーゼまたは別の蛋白質においてSH2−またはSH3−媒介結合を阻害するのに使用できる。
【0100】
キナーゼは、莫大な数の相異なる且つたまに相互関連している、細胞内シグナル変換メカニズムにおける物質によって使用される。例えば、成長因子、転写因子、ホルモン、細胞サイクル調節蛋白質、および多くの他の部類の細胞調節剤は、そのシグナル伝達系においてチロシンキナーゼを使用する(参照: Bolen et al. FASEB J. 6:3403-3409, 1992; and Ullrich and Schlessinger, Cell 61:203-212, 1990)。セリン/チロシンキナーゼは
、キナーゼファミリーの大部分の残部を形成する。
【0101】
生体内および生体外における酵素の役割を決定しかつ酵素作用を理解するための一つの重要なアプローチは、特定の酵素阻害剤の使用である。一つ以上の化合物が酵素を阻害するものと見出されれば、その阻害剤は酵素活性の調節に使用することができ、且つその減少効果が認められる。このようなアプローチは、中間代謝の多くの経路を解読する手段になり、かつ酵素動力学について知ること、および触媒メカニズムを決定するのに重要である。本発明は、このような化合物を提供する。
【0102】
多くの免疫反応の調節は、SH2ドメインを含むチロシンキナーゼを介してシグナルを伝送する受容体を通じて媒介される。抗原特異性T細胞受容体(TCR)を通じてのT細胞活性化は、リンフォカイン分泌および細胞増殖を誘導する情報伝達カスケードを開始する。TCR活性化の後、最も初期の生化学的反応の一つは、チロシンキナーゼ活性の増加である。特に、T細胞活性化および増殖は、SH2ドメインを含むZAP−70およびSyk(Weiss and Litman, Cell 76:263-274, 1994)だけでなく、p56lckおよびp59fynチロシンキナーゼのT細胞受容体媒介活性化によって調節される。追加的な証拠は、幾
つかのsrc−ファミリーキナーゼ(lck、blk、fyn)がB細胞抗原受容体から発生する情報伝達経路に参加し、これにより幾つかの独立した受容体構造体から受け取った刺激を統合するのに役立ち得ることを示す。よって、これらSH2ドメインキナーゼがその認識受容体と相互作用することをブロックする阻害剤は、自己免疫疾患、移植拒否に
おいて有用性を有する免疫抑制剤として、またはリンパ性白血病の場合には抗癌剤だけでなく抗炎症剤として役立ち得るであろう。
【0103】
さらに、SH2ドメインを含む非膜貫通型PTPaseが知られており、命名法はこれらをSH−PTP1およぼSH−PTP2と言及し(Neel, Cell Biology 4:419-432, 1993)、SH−PTP1はPTP1C、HCPまたはSHPと同一であり、SH−PTP2は
PTP1DまたはPTP2Cとしても知られている。SH−PTP1は全ての系列および全ての分化段階の造血性細胞において高度で発現される。SH−PTP1遺伝子は、モスイートン(me)マウス表現型に関与するものと同定されたため、これはその細胞基質との相互作用をブロックする阻害剤の効果を予測する基準を提供する。したがって、SH−PTP1作用の阻害は、分裂促進刺激に対する損傷T細胞反応、減少したNK細胞作用、および上述したような強力な治療適用によってB細胞前駆体の枯渇を生じさせるものと期待される。
【0104】
STAT6のSH2ドメインに結合し、または蛋白質チロシンホスファターゼSH-P
TP1のSH2ドメインに結合する本発明の化合物の能力は、文献(Payne et al., P.N.A.S. USA 90:4902-4906, 1993)に開示された処置によって立証することができる。SH2
結合ミメティックスのライブラリは、Songyang et al., Current Biology 4:973-982, 1994の処置によってスクリーニングされることができる。化合物の蛋白質キナーゼの基質または抑制剤として作用する能力を試験するためのSongyang等(Current Biology 4:973-982, 1994)によって提示された処置も参照されたい。
【0105】
したがって、一つの特徴において、本発明は、ホスファターゼの阻害に有効な量で本発明の化合物を動物に投与することを含む、温血動物でホスファターゼを阻害する方法を提供する。
【0106】
タイプ2(非インスリン依存性)糖尿病において、チロシンホスファターゼ(PTP−1b)は、活性化されたインスリン−受容体キナーゼの効果を相殺させ、且つ重要な薬物標的を示すことができる。試験管内実験により、PTPaseの注射が内因性蛋白質に対するチロシン残基のインスリン刺激によるリン酸化をブロックすることが示される。したがって、本発明の化合物は、糖尿病におけるインスリン作用の調節に使用することができる。
【0107】
別の特徴において、本発明は、第2蛋白質のSH2ドメインに第1蛋白質内のホスホチロシン残基の結合を阻害する方法を提供する。この方法は、第1および第2蛋白質を含む組成物に一定量の本発明の化合物を接触させることを含む。この量は、第1蛋白質のホスホチロシン残基および第2蛋白質のSH2ドメインを介して発生する第1および第2蛋白質間の結合を緩めさせることに効果的である。
【0108】
プロテアーゼ抑制
別の特徴において、本発明は、温血動物内のプロテアーゼを阻害する方法を提供する。この方法は、ここに記述されたような一定量の本発明の化合物を動物に投与することを含む。この量は、動物内のプロテアーゼの阻害に効果的である。様々な実施態様において、プロテアーゼはセリンプロテアーゼであり、前記プロテアーゼはトロンビン、因子X、因子IX、因子VII、因XI、ウロキナーゼ、HCVプロテアーゼ、キマーゼトリプター
ゼおよびカリクレインから選択されたセリンプロテアーゼであり、前記プロテアーゼはトロンビンであり、前記プロテアーゼは因子VIIであり、前記プロテアーゼはアスパルチック、システイン、およびメタロプロテアーゼから選択される。
【0109】
プロテアーゼ抑制に関して、カテプシンBは、通常、プロ酵素プロセシングおよび蛋白
質代謝回転に関与したリソソームシステインプロテアーゼである。上昇した程度の活性は、腫瘍転移(Sloane, B. F. et al., Cancer Metastasis Rev. 9:333-352, 1990)、関節リウマチ(Werb, Z. Textbook of Rheumatology, Keller, W. N.; Harris, W. D.; Ruddy, S.; Sledge, C. S., Eds., 1989, W. B. Saunder Co., Philadelphia, Pa., pp. 300-321)、および筋ジストロフィー(Katunuma and Kominami, Rev. Physiol. Biochem. Pharmacol. 108:1-20, 1987)に関係している。
【0110】
カルパインは、細胞質ゾルまたは膜結合Ca++−活性化プロテアーゼであり、これは細胞内のカルシウム濃度を変化させる反応において細胞骨格蛋白質の分解の原因である。これらは関節炎および筋ジストロフィーにおける組織分解に寄与する(参照:Wang and Yuen Trends Pharmacol. Sci. 15:412-419, 1994)。
【0111】
インターロイキン転換酵素(ICE)は、プロ−IL−1ベータを、炎症の主要媒介体であるIL−1ベータに分裂させ、よって、ICEの阻害剤は、関節炎の治療に有用であることを立証することができる(参照: Miller B. E. et al., J. Immunol. 154:1331-1338, 1995)。ICEまたはICE様プロテーゼも、アポプトーシス(計画された細胞死滅
)に作用し、よって、癌、AIDS、アルツハイマー病、およびその他の疾患(調節されていないアポプトーシスが関与)で重要な役割をする(参照:Barr and Tomei, Biotechnol. 12:487-493, 1994)。
【0112】
HIVプロテアーゼは、HIV、AIDSウィルスのライフサイクルに重要な役割をする。ウィルス成熟の最終段階において、これは、ポリ蛋白質前駆体をビリオン核の機能酵素と構造蛋白質に分裂させる。HIVプロテアーゼ阻害剤は、AIDSの優れた治療標的として速く同定され(参照:Huff, J. R., J. Med. Chem. 34:2305-2314)、リトナビル、
クリキシバン、サクイナビルの最近FDA承認によって立証されたように、治療などに有用なものと証明されている。
【0113】
C型肝炎ウィルス(HCV)は、今日、全世界にわたって非A型肝炎および非B型肝炎の主要原因となっている。5千万名もC型肝炎ウィルスに感染したものと推測される。現在、このような消耗性疾患の進行を防ぐことが可能な、満足すべき治療法はない。ウィルスのライフサイクル途中、約3000個のアミノ酸のポリプロテインが生産され、宿主およびウィルスのプロテアーゼによる蛋白質分解によって分裂され、成熟したウィルス遺伝子生成物を生産する。HCV NS3蛋白質内に位置したセリンプロテアーゼは、4個の
特定の位置で開裂し、ウィルス複製に必須的なものと考えられる非構造性蛋白質を生産する。したがって、HCVプロテアーゼの抑制剤は、医薬デザインの魅力的な標的であり、且つ大きい治療利点があり得る(Neddermann et al., Biol. Chem. 378:469-476, 1997.)

【0114】
アンギオテンシン転換酵素(ACE)は、血圧の調節において中心役割をするレニン・アンギオテンシン系の一部である。ACEは、アンギオテンシンIを、その血管収縮作用ゆえに強力な血圧上昇剤であるオクタペプチドアンギオテンシンIIに分裂させる。ACEの阻害は、高血圧の治療に治療学的に有用なものと立証された(Williams, G. H., N. Engl. J. Med. 319:1517-1525, 1989)。
【0115】
コラゲナーゼは、細胞外マトリックス(例えば、結合組織、皮膚、血管)の主要構成分であるコラーゲンを分裂させる。増加したコラゲナーゼ活性は、関節炎(Krane et al., Ann. N.Y. Acad. Sci. 580:340-354, 1990.)、腫瘍転移(Flug and Kopf-Maier, Acta Anat. Basel 152:69-84, 1995)、および結合組織の分解を含んだその他の疾患に寄与する。
【0116】
トリプシン様セリンプロテアーゼは、止血/凝固(Davie and Fujikawa, Ann. Rev. 799
-829, 1975)および補体活性化(Muller-Eberhard, Ann. Rev. Biochem. 44:697-724, 1975)に関連した大きな高度に選択的なファミリーの酵素を形成する。これらプロテアーゼの
配列順序分析は、アミノ酸の挿入を有する同種のトリプシン様核の存在を示したが、これは特異性を変化させ、一般に、他の巨大分子成分との相互作用の原因である(Magnusson et al., Miami Winter Symposia 11:203-239, 1976)。
【0117】
トロンビン、すなわちトリプシン様セリンプロテアーゼは、フィブリノゲンからフィブリンの生成及び血小板受容体の活性化の両方において制限された蛋白質分解を提供するように作用し、これにより血栓症および止血において重要な役割を果たす(Mann, K. G., Trends Biochem. Sci. 12:229-233, 1987)。トロンビンは、フィブリノゲンにおける181個のArg−またはLys−Xaa配列の只2つのArg−Gly結合の選択的分裂によって、フィブリノゲンのフィブリノペプチドAおよびBの除去において著しい特異性を示す(Blomback, Blood Clotting Enzymology, Seeger, W. H. (ed.), Academic Press, New
York, 1967, pp. 143-215)。
【0118】
多くの顕著な疾病症状は、急性冠症候群を含んだ非正常止血に関連している。アスピリンおよびヘパリンは、急性冠症候群を有する患者の治療に広く使用されている。ところが、これらの薬剤は幾つかの固有な制限を有する。例えば、動脈硬化性プラークの破裂を伴う止血は、アスピリンおよびヘパリンによる阻害に比較的耐性を有するトロンビン媒介、血小板依存性プロセスである傾向がある(Fuster et al., N. Engl. J. Med. 326:242-50,
1992)。
【0119】
トロンビン抑制剤は、生体内血管損傷部位におけるトロンビンの形成を防止する。さらに、トロンビンは、また、冠状動脈において機械的傷部位の平滑筋細胞増殖を開始する強力な成長因子なので、阻害剤は、このような増殖性平滑筋細胞反応をブロックし、且つ再狭搾症を減少させる。トロンビン抑制剤は、また、血管壁細胞において炎症反応を減少させる(Harker et al., Am. J. Cardiol. 75:122-16B, 1995)。
【0120】
しかも、少なくとも2つのよく定義された転写因子、核因子(NF)kBおよび活性化蛋白質(AP)−1は、細胞内還元−酸化(レドックス)状態によって調節される。レドックス状態による遺伝子発現の調節は、可能性のある治療との関連に有効である。例えば、レドックス調節転写因子NF−kBおよびAP−1の結合部位は、AIDS、癌、アテローム性動脈硬化および糖尿合併症といった疾患の病因論に直接連関した様々な遺伝子のプロモーター領域に位置する(Sen and Packer, FASEB Journal 10:709-720, 1996)。さらに具体的に、DNA上のコンセンサス部位へのNF−kBおよびAP−1などの転写因子の結合は、酸化剤−抗酸化剤の止血によって、特にチオール−ジスルフィドバランスによって推進される。
【0121】
NF−kBの場合、NF−kB作用の調節に重要な役割をする生理学的に関連したチオールは、還元されたチロレドキシンまたは還元されたチオレドキシン様蛋白質である。チオレドキシンは、抗酸化剤の作用を有する重要な蛋白質酸化還元酵素である。チオレドキシンは、活性化NF−kBのDNA結合を過度に調節して、遺伝子発現を増加させることが明らかになった(Schenk et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 91:1672-1676, 1994)。チオレドキシンは、活性化された細胞質ゾルNF−kBの還元(具体的にシス−62の還元)に関連しており、よってその核転移およびDNA結合に寄与することができる(Hayashi et at., J. Biol. Chem. 268:11380-11388, 1993)。
【0122】
AP−1複合体におけるFosおよびJunのDNA結合活性は、レドックス状態によって調節されることが明らかになった(Abate et al., Science 249:1157-1162, 1990)。
それぞれの蛋白質は、そのDNA結合ドメインにおいて単一保存システイン(リジンとア
ルギニンの間に挟まれる)を含む。このチオールは、ジスルフィド結合の一部ではないようで、かつその酸化形態においてスルフェン酸またはスルフィン酸として存在することができる。Ref−1、エンドヌクレアーゼDNA治癒活性も有する二機能性核蛋白質は、この調節システインの還元によってAp−1 DNA結合を刺激する。重要なシステイン
がセリンで置き換えられたFos変異体は、AP−1 DNA結合活性において3倍増加
を導出し、かつそれ以上レドックス調節に従わなかった(Okuno et al., Oncogene 8:695-701, 1993)。したがって、転写因子のfosファミリーの少なくとも4つ、junファミリーの3つ、およびATF/CREBファミリーの少なくとも4つはいずれも前記保存システインを含有するので、転写因子のレドックス調節は広く行き渡ったようである。
【0123】
上述したように、NF−kBおよびAP−1などの転写因子の調節は、重要な治療との関連を持つ。例えば、AP−1は、腫瘍生産の重要な媒介体である(Yoshioka et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 92:4972-4976, 1995)。したがって、AP−1転写活性を抑制する化合物は、癌の治療に有用である。しかも、炎症性サイトカインおよびエンドトキシンに対する反応の調節に直接的な役割をするため、NF−kBの活性化は、関節リウマチなどの慢性疾患および敗血性ショックなどの急性病態の展開において重要な役割をする。自己免疫疾患、たとえば全身性エリテマトーデス(SLE)、およびアルツハイマー病は、NF−kBの活性化に関連したものと信じられる。これと同様に、NF−kBは、HIV遺伝子発現の活性化において重要な役割をする。NF−kBを関与させると考えさせる更なる病気には、インフルエンザ、アテローム性動脈硬化、腫瘍形成および毛細血管拡張性運動失調(AT)を含む。
【0124】
酸化還元酵素の阻害
転写因子の調節に関して、本発明の化合物は、DNAに結合する能力が細胞酸化還元酵素によるシステイン残基の還元によって調節される転写因子を調節する。一つの実施態様において、転写因子はNF−kBである。この実施態様において、本発明の化合物は、免疫および/または炎症性反応の媒介体として活性を有し、あるいは細胞成長を調節するのに役立つ。別の実施態様において、転写因子はAP−1であり、細胞酸化還元酵素はRef−1である。この実施態様において、本発明の化合物は、抗炎症剤および/または抗癌剤として活性を有する。追加の実施態様において、転写因子は、Mybおよび糖質コルチコイド受容体から選択される。本発明の範囲内で調節されることが可能な他の転写因子は、Rel−A、c−Rel、Rel−B、p50およびp52などのNF−kBファミリーのもの;Fos、FosB、Fra−1、Fra−2、Jun、JunBおよびJunDなどのAP−1ファミリーのもの;ATF;CREB;STAT−1、−2、−3、−4、−5および−6;NFAT−1、−2および−4;MAF;甲状腺因子;IRF;Oct−1および−2;NF−Y;Egr−1;およびUSF−43を含む。
【0125】
したがって、別の特徴において、本発明は、酸化還元酵素の阻害に効果的な量で本発明の化合物を動物に投与することを含む、温血動物の酸化還元酵素を阻害する方法を提供する。酸化還元酵素活性の阻害は、転写を調節する手段として使用することができる。
【0126】
CAAX抑制
別の特徴によれば、本発明は、温血動物のCAAX阻害方法を提供する。本方法は、ここに記述されたような一定量の本発明の化合物を動物に投与することを含む。この量は、動物においてCAAX阻害を提供することに効果的である。
【0127】
Ras、すなわちras腫瘍遺伝子の蛋白質生成物は、シグナル転写調節細胞分割および成長に関連している膜結合蛋白質である。ras遺伝子における突然変異は、ヒト癌に関連した最も一般的な遺伝子異常中に含まれる(Barbacid, M. Annu Rev Biochem 56:779-827, 1987)。これらの突然変異は、癌細胞の原因となる常時「on」の成長シグナルを発
生させる。細胞膜に局所化されるために、Rasはファルネシルトランスフェラーゼ(FTase)によるC末端CAAX配列内のシステインのプレニル化を必要とし、配列CAXXにおいて、「a」は疎水性側鎖を有するアミノ酸と定義され、「X」は別のアミノ酸と定義される。このような翻訳後の変形はその活性に重要である。配列CaaXを有するFTaseのペプチジル阻害剤は、細胞培養および動物全体における腫瘍の成長をブロックまたは遅延させることが示されている(Kohl et al., Science 260:1934-1937, 1993; Buss and Marsters, Chemistry and Biology 2:787-791, 1995)。
【0128】
CAAX活性を抑制するための化合物の活性をスクリーニングする方法が、当該分野に公知となっている。参考まで、米国特許第6,391,574号は、細胞内のCAAX蛋白質のAAXトリペプチドの蛋白質分解による除去を阻害する化合物を同定する方法を開示している。また、米国特許第5,990,277号は、幾つかの適切な分析および引例を開示している(参考文献:Gibbs et al., Cell 77:175, 1994; Gibbs, Cell 65:1, 1991; Maltese, FASEB J. 4:3319, 1990; Moores et al., J. Biol. Chem. 266:14603, 1991; Goldstein et al., J. Biol. Chem. 266:15575, 1991; European Patent 0 461 869 A2; Casey, J. Lipid Res. 33:1731-1740, 1992; Cox et al., Curr. Opin. Cell Biol. 4:1008-1016. 1992; Garcia et al., J. Biol. Chem. 268:18415-18418, 1993; Vogt et al., J. Biol. Chem. 270:660-664, 1995; Kohl et al., Science, 260:1934-1937, 1993; Garcia et al., J. Biol. Chem., 268:18415-18418, 1993; and Vogt et al., J. Biol. Chem. 270:660-664, 1995)。
【0129】
MHC分子
別の特徴において、本発明は、クラス1およびクラス2MHC分子への抗原性ペプチドの結合を阻害する方法を提供する。この方法は、抗原性ペプチドと、クラス1またはクラス2のMHC分子の2つの中の一つとを含む組成物に本発明の化合物を接触させることを含む。この化合物は、2種間の結合親和性を減少させるのに有効な量で抗原/分子と接触される。
【0130】
免疫システムの重要な様相は、T細胞反応である。この反応は、T細胞がヒト白血球抗原(「HLA」)と呼ばれる細胞表面分子の複合体、または主要組織適合複合体(「MHCs」)、およびペプチドを認識し、これらと相互作用することを必要とする(参照: Male et al., Advanced Immunology (J. P. Lipincott Company, 1987)。抗原は、主要組織適合複合体(MHC)内の遺伝子によってエンコードされるクラスIIグリコ蛋白を、その表面に含有する抗原保有細胞(APC)によって摂取されるようにすることにより、少なくとも部分的に免疫反応を流動化する。次いで、抗原は、表面結合MHC糖蛋白質の内容物中の特異性Tヘルパー細胞に伝えられ、かつ抗原−MHC複合体と抗原特異性T細胞受容体の相互作用によって、Tヘルパー細胞は細胞毒性T細胞機能の誘導、B細胞作用の誘導、およびこの反応を補助し支援する多数の因子の分泌を含む、抗原特異性免疫反応を媒介することを促進する。本発明の一つの様態において、MHC分子は、HLA−A2.1、HLA−AlまたはHLA−A3.1、またはメラノーマ患者に存在する他のHLA対立遺伝子である。
【0131】
本発明の化合物のMHCI分子に結合する能力は、Elliot et al., Nature 351:402-406, 1991に記述されたように、本質的に明らかにすることができる。同様に、本発明の化
合物のMHCII分子に結合する能力は、文献「Kwok et al., J. Immunol. 155:2468-
2476, 1995」に提示された処理によって明らかにすることができる。
【0132】
14−3−3ドメインを有する蛋白質
別の特徴によれば、本発明は、14−3−3ドメインを含む第2ペプチドと第1ペプチドとの結合を阻害する方法を提供し、ここで、第1ペプチドは、第2ペプチドの14−3
−3ドメインに対して結合親和性を有する。この方法は、第2蛋白質の14−3−3ドメインに対して結合親和性を有する(第1)ペプチドを含む組成物に、本発明の化合物を接触させることを含む。
【0133】
14−3−3ドメインを有する蛋白質およびその結合パートナーは、文献に記述されている。これらのペプチドは、本発明の方法で使用することができる(参照:Dai and Murakami, J Neurochem 2003 Jan. 84(1):23-34; Lim et al., J Biol Chem 2002 Oct. 25, 277(43):40997-1008; Parvaresch et al., FEBS Lett 2002 Dec. 18, 532(3):357-62; Eilers et al., Mol Cell Biol 2002 Dec. ;22(24):8514-26; Liu et al., Cancer Res 2002 Nov. 15, 62(22):6475-80; Truong et al., Proteins 2002 Nov. 15, 49(3):321-5; Birkenfeld et al., Biochem J 2003 Jan. 1, 369(Pt 1):45-54; Espejo et al., Biochem J 2002 Nov. 1, 367(Pt 3):697-702; and Benzing et al., J Biol Chem 2002 Sep 6, 277(36):32954-62)。
【0134】
本発明の方法の実施において、治療学的有効量の本発明の化合物は、治療を必要とする温血動物に投与される。例えば、本発明の化合物は、クローン病、喘息、関節リウマチ、局所貧血、再潅流傷害、移植片対宿主病(GVHD)、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、アルツハイマー病、同種移植の拒絶反応、および成人T細胞白血症のいずれか一つまたはそれ以上から選択された症状と診断されるかあるいはこれらの症状に発展する危険のある温血動物に投与されることができる。
【0135】
結節硬化合併症
結節硬化合併症(TSC)を有する患者は、脳、心臓、腎臓およびその他の組織における多発性病所障害に典型的には展開する(参照:Gomez, M.R. Brain Dev. 17(suppl):55-57, 1995)。哺乳動物細胞の研究は、TSC1(ハマルチンを発現する)およびTSC2(チュベリンを発現する)の過剰発現が、細胞増殖を消極的に調節し且つG1/S拘束を誘発することを示している(参照: Miloloza, A. et al., Hum. Mol. Genet. 9:1721-1727,
2000)。他の研究は、ハマルチンおよびチュベリンがβ−カテニン分解複合体の水準で作用し、さらに具体的には、これら蛋白質がβ−カテニン分解複合体に関係することにより、βカテニン安定性および活性を消極的に調節することを示している(参照:Mak, B.C., et al. J. Biol. Chem. 278(8):5947-5951, 2003)。β−カテニンは、膜−結合カドヘリ
ンファミリーのメンバーとの結合によって細胞接着に関係し、かつWnt/Wingless経路の主要成分として細胞増殖および分化に関係する95−kDa蛋白質である(参
照: Daniels, D.L., et al., Trends Biochem. Sci. 26:672-678, 2001)。この経路の破損は、ヒトおよび齧歯動物において腫瘍原性であることが示された。本発明は、βカテニン活性、特に他の蛋白質との相互作用を調節し、よってTSCの治療に使用することが可能な化合物を提供する。
【0136】
以下の実施例は、説明のためのものであり、限定されない。
実施例
製造実施例および実施例において、下記の略字が使用される:
BMS:ボロンジメチルスルフィド
CbzOSu:ベンジルオキシカルボニルN−ヒドロキシスクシンイミド
DIC:1,3−ジイソプロピルカルボジイミド
DIEA:N、N−ジイソプロピルエチルアミン
DIPEA:N、N−ジイソプロピルエチルアミン
DMAP:N、N−ジメチルアミノピリジン
DMF:ジメチルホルムアミド
DMSO:ジメチルスルホキシド
EA:酢酸エチル
EDC:1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩
EDCI:1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩
FmocOsu:9−フルオレニルオキシカルボニルN−ヒドロキシスクシンイミド
HATU:[2−(1H−9−アザベンゾトリアゾール−1−イル)−1,1,3,3−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロフォスフェイト]
Hex.:ヘキサン
HOBT:N−ヒドロキシベンゾトリアゾール
MC:塩化メチレン
MeOH:メタノール
−OBn:−O−ベンジル
PPTS:ピリジニウム−p−トルエンスルホネート
PyBOP:ベンゾトリアゾール−1−イル−オキシ−トリス−ピロリジノ−ホスホニウム ヘキサフルオロホスフェイト
p−TsOH:p−トルエンスルホン酸
THF:テトラヒドロフロン
TLC:薄層クロマトグラフィ

製造実施例1
(1)ナフタレン−2−カルボン酸アミドの製造
【0137】
【化19】

【0138】
MC(200mL)中の2−ナフトエ酸(25g、0.145モル)溶液に塩化オキサリル(38mL、0.4356モル)および触媒量のDMFを加え、室温で2時間攪拌した。溶媒を蒸発させた後、粗塩化アシルをMC(200mL)で希釈し、ここに水酸化アンモニウム水溶液(160mL)を氷浴温度で滴下した。1時間攪拌の後、沈殿した生成物を吸引ろ過によって収集し、ヘキサンで粉末にし、乾燥させて標題の化合物を得た。これはそれ以上の精製なしに次の段階に使用された。
【0139】
(2)ナフタレン−2−イル−メチルアミンの製造
【0140】
【化20】

【0141】
THF(100mL)中の前記工程(1)で得た粗アミドの溶液に、BMS(27.5mL、0.2904moL)を0℃でゆっくり加えた。生じた反応混合物を、3時間60℃で加熱し、5%HClで0℃に冷却させ、EAで抽出して5%HClで洗浄した。水層を合わせて、1N NaOHで塩基性にした後、再度EAで抽出した。有機層を合わせて
、濃縮することにより、標題化合物(13g)を白い固体として得た。
TLCシステム1:MC/MeOH=90:10v/v Rf=0.23
【0142】
【数1】

【0143】
製造実施例2
(1)1H−インドール−2−カルボン酸アミドの製造
【0144】
【化21】

【0145】
MC(30mL)中のインドール−2−カルボン酸(1g、6.21mmoL)溶液に、塩化オキサリル(1.64mL、18.62mmoL)および触媒量のDMFを加え、
室温で2時間攪拌した。溶媒を蒸発させた後、粗塩化アシルをMC(20mL)で希釈し、ここに水酸化アンモニウム水溶液(7mL)を氷浴中で冷却させて滴下した。1時間攪拌の後、沈殿した生成物を吸引ろ過によって収集し、ヘキサンで粉末にし、乾燥させて標題の化合物を得た。これはそれ以上の精製なしに次の段階に使用された。
【0146】
(2)(1H−インドル−2−イル)のメチルアミンの製造
【0147】
【化22】

【0148】
THF(30mL)中の前記工程(1)で得た粗アミドの溶液に、BMS(1.18mL、12.42mmoL)を0℃でゆっくり加えた。生じた反応混合物を3時間60℃で加熱し、5%HClで0℃で失活させ、EAで抽出し、5%HClで洗浄した。水層を合わせて、1N NaOHで塩基性にした後、再度EAで抽出した。有機層を合わせて、濃
縮することにより、標題化合物(0.28g)を黄色固体として得た。
TLCシステム1:MC/MeOH=90:10v/v Rf=0.15
【0149】
【数2】

【0150】
製造実施例3
(1)2−ベンジルオキシカルボニルアミノ−4−オキソ−酪酸ベンジルエステルの製造
【0151】
【化23】

【0152】
MC(200mL)中のZ−Asp−OBn(10g、0.028moL)溶液に、塩化オキサリル(2.93mL、0.0336moL)および触媒量のDMFを0℃で加え、室温で2時間攪拌した。溶媒を蒸発させた後、粗塩化アシルをベンゼン(400mL)に溶解させ、ここに水素化トリブチルスズ(15.1mL、0.056moL)および触媒量のPd(0)を0℃でゆっくり加え、一晩中、室温で攪拌した。溶媒を蒸発させた後、エーテル(100mL)/水(100mL)中10%KFを加えて室温で2時間攪拌した後、濾過によって2相の溶液を得た。有機層を分離し、濃縮することにより、粗生成物を得、これをカラムクロマトグラフィによって精製し、標題化合物Z−Asp−OBnアルデヒド(6g)を淡黄色のオイルの形で得た。
Rf:ヘキサン/EA(2/1)中で0.29
(2)2−ベンジルオキシカルボニルアミノ−4,4−ジメトキシ−酪酸ベンジルエステルの製造
【0153】
【化24】

【0154】
MeOH(100mL)中の前記工程(1)で得たZ−Asp−OBnアルデヒド(6g、17.58mmoL)の溶液に、触媒量のp−TsOHを加え、室温で5時間攪拌した。反応完結の後、溶媒を蒸発させ、粗生成物を得、これをカラムクロマトグラフィによって精製することにより、標題化合物Z−Asp−OBnアセタール(5g)を淡黄色のオイルの形で得た。
【0155】
Rf:Hex./EA(2/1)中で0.32
(3)2−ベンジルオキシカルボニルアミノ−4,4−ジメトキシ−酪酸の製造
【0156】
【化25】

【0157】
前記工程(2)で得たZ−Asp−OBnアセタール(0.5g、1.29mmoL)を、THF(20mL)/水(20mL)中NaOH(0.11g,2.1mmoL)に溶解させ、室温で30分間攪拌した。出発物質が完全に消失した後、反応混合物を蒸発によって濃縮し、その後水/EAによって希釈した。水層を分離し、1N HClによって
0℃で非常に注意深くpH4〜5に酸性化し、再度EAで抽出した。有機層を合わせ、濃縮することにより、標題化合物Z−Asp−OBnアセタール(0.27g)を淡黄色のオイルの形で得た。
TLCシステム1:ヘキサン/EA=20:10v/v Rf=0.10
【0158】
【数3】

【0159】
(4)2−アミノ−4,4−ジメトキシ−酪酸の製造
【0160】
【化26】

【0161】
水素ガスバルーンを備えた反応容器に、酢酸(20mL)中の前記工程(3)で得たZ−Asp−OBnアセタール(2.22g,5.73mmoL)溶液およびパールマン(Pearlman's)触媒を加えて一晩中室温で攪拌した。生じた混合物を濾過した後、濃縮し、凍結乾燥させることにより、粗生成物を得、これはそれ以上の精製なしに次の段階に使用された。
【0162】
(5)2−(9H−フルオレン−9−イルメトキシカルボニルアミノ)−4,4−ジメトキシ−酪酸の製造
【0163】
【化27】

【0164】
THF(100mL)/水(100mL)中の前記工程(4)で得た粗Asp−OHアセタールの溶液に、FmocOsu(2.13g、6.3mmoL)/重炭酸ナトリウム(1.93g、22.92mmoL)を加えて室温で一晩中攪拌した。生じた反応物を濃縮し、水/EAで希釈した。水層を分離し、1N HClによって0℃でpH4〜5に非
常に注意深く酸性化し、再度EAで抽出した。有機層を合わせ、濃縮することにより、粗生成物が得られ、これをカラムクロマトグラフィによって精製することにより、標題化合物(1.5g)を泡沫状固体の形で得た。
Rf:Hex./EA(2/1)中で0.15。
【0165】
製造実施例4
(1)2−ベンジルオキシカルボニルアミノ−ペンタジオン酸の製造
【0166】
【化28】

【0167】
水/THF(1/1、400mL)中のL−グルタミン酸(20g、136mmoL)の溶液に、重炭酸ナトリウム(45.7g、544mmoL)を加え、氷浴で0℃に冷却させた。その反応混合物にCbzOSu(37.3g、150mmoL)を加え、室温で一晩中攪拌した。反応完結の後、生じた反応混合物をEAで抽出した。水層を分離し、濃HClによって0℃でpH2に酸性化し、再度EAで抽出した(4回)。有機層を濃縮した。これにより、粗生成物が得られ、これをカラムクロマトグラフィによって精製することにより、標題化合物(16g)を無色オイルの形で得た。
【0168】
Rf:MC/MeOH(9/1)中で0.2。
【0169】
(2)4−(2−カルボキシ−エチル)−5−オキソ−オキサゾリジン−3−カルボン酸ベンジルエステルの製造
【0170】
【化29】

【0171】
Dean−Stark器具中に、前記工程(1)で得たN−Cbz−L−グルタミン酸(4g、14.22mmoL)、パラホルムアルデヒド(5g)、触媒量のpTsOH、モレキュラーシーブス(5g)、およびトルエン(100mL)を仕込み、出発物質が消失するまで還流させた。生じた反応混合物を室温で冷却し、濾過し、濃縮して粗生成物を得、これをカラムクロマトグラフィによって精製することにより、標題化合物(2g)を無色オイルの形で得た。
【0172】
Rf: EAのみ中で0.45。
【0173】
(3)5−オキソ−5−(3−オキソ−プロピル)−オキサゾリジン−3−カルボン酸ベンジルエステルの製造
【0174】
【化30】

【0175】
MC(200mL)中の前記工程(2)で得た二箇所保護されたグルタミン酸(2g、6.82mmoL)溶液に、塩化オキサリル(0.7mL、7.5mmoL)および触媒量のDMFを0℃で加え、室温で2時間攪拌した。溶媒を蒸発させた後、生じた粗塩化アシルをTHF(400mL)に溶解させ、ここに水素化トリブチルスズ(3.86mL、14.34mmoL)および触媒量のPd(0)を0℃でゆっくり加え、一晩中室温で攪拌した。溶媒を蒸発させた後、エーテル(100mL)/水(100mL)中10% K
Fを加え、室温で2時間攪拌した後、濾過によって2相溶液を得た。有機層を分離し、濃縮して粗生成物を得、これをカラムクロマトグラフィによって精製することにより、標題化合物(0.7g)を無色オイルの形で得た。
【0176】
Rf:ヘキサン/EA(4/1)中で0.23。
【0177】
(4)4−(3,3−ジメトキシ−プロピル)5−オキソ−オキサゾリジン−3−カルボン酸ベンジルエステルの製造
【0178】
【化31】

【0179】
MeOH(30mL)中の前記工程(3)で得た二箇所保護されたアルデヒド(0.7g、253mmoL)の溶液に、触媒量のp−TsOHを加え、室温で7時間攪拌した。反応完結の後、その反応混合物を溶媒の蒸発によって濃縮して粗生成物を得、これをカラムクロマトグラフィによって精製することにより、標題化合物(0.5g)を無色オイルの形で得た。
【0180】
Rf:ヘキサン/EA(4/1)中で0.33。
【0181】
(5)2−ベンジルオキシカルボニルアミノ−5,5−ジメトキシ−ペンタン酸の製造
【0182】
【化32】

【0183】
前記工程(4)で得た二箇所保護されたアセタール(0.456g、1.411mmoL)を、MeOH(20mL)/1N NaOH(10mL)に溶解させ、室温で一晩中
攪拌した。出発物質が完全に消失した後、反応混合物を蒸発によって濃縮し、その後水/EAによって希釈した。水層を分離し、1N HClによって0℃で非常に注意深くpH
4〜5に酸性化した後、再度EAで抽出した。有機層を合わせ、濃縮することにより、標題化合物(0.35g)を無色オイルの形で得た。
【0184】
Rf:Hex./EA(1/1)中で0.1。
【0185】
(6)2−アミノ−5,5−ジメトキシ−ペンタン酸の製造
【0186】
【化33】

【0187】
水素ガスバルーンを備えた反応容器に、MeOH(10mL)中の前記工程(5)で得たCbz−アセタール(0.35g、1.13mmoL)溶液及び触媒量10%Pd/Cを仕込んで一晩中室温で攪拌した。生じた混合物を濾過し濃縮することにより、粗生成物(0.2g)を無色オイルの形で得た。これはそれ以上の精製なしに次の段階に使用された。
【0188】
Rf:Hex./EA(1/1)で0.01。
【0189】
(7)2−(9H−フルオレン−9−イルメトキシカルボニルアミノ)−5,5−ジメトキシ−ペンタン酸の製造
【0190】
【化34】

【0191】
THF(100mL)/水(100mL)中の前記工程(6)で得た粗Glu−OHアセタールの溶液に、FmocOsu(0.42g、1.24mmoL)/重炭酸ナトリウム(0.5g、5.9mmoL)を加えて室温で一晩中攪拌した。溶媒を蒸発させた後、生じた反応混合物を水/EAで希釈した。水層を分離し、1N HClで0℃でpH4〜
5に非常に注意深く酸性化した後、再度EAで抽出した。有機層を合わせ、濃縮した。こ
れにより、標題化合物(0.19g)を無色オイルの形で得た。
【0192】
TLCシステム1: EAのみ Rf=0.25
【0193】
【数4】

【0194】
製造実施例5
(1)2−tert−ブトキシカルボニルアミノ−4−メトキシカルボニル−アミノ−酪酸の製造
【0195】
【化35】

【0196】
2O(50mL)中のBoc−Dab−OH(3g、13.75mmoL)溶液に、
NaOH(2.75g、68.75mmoL、5当量)をpH>11となるまでゆっくり加え、ここにトルエン(50mL)中のクロロギ酸メチル(2.6g、27.5mmoL、2当量)を加えた。生じた反応混合物を2時間攪拌した。TLC確認のために、少量の水相を取り出して1N HClによって酸性化した。TLCによって反応終結を確認した
後、有機相を分離し、水相を10%HCl溶液で酸性化し、EA(5mL×2)によって抽出した。有機相を合わせ、無水Na2SO4で乾燥させ、真空中で濃縮した。これにより、粗生成物(3.277g、11.86mmoL、86%)を無色オイルの形で得た。
【0197】
TLCシステム:EA Rf:0.2
【0198】
【数5】

【0199】
(2)(1−ベンジルカルバモイル−3−メトキシカルボニルアミノ−プロピル)−カルバミン酸tert−ブチルエステルの製造
【0200】
【化36】

【0201】
DMF(20mL)中の前記工程(1)から得た2−tert−ブトキシカルボニルアミノ−4−メトキシカルボニルアミノ−酪酸(1.1g、3.98mmoL)溶液に、EDCI(763mg、3.98mmoL、1当量)、HOBT(538mg、3.98mmoL、1当量)およびDIEA(1.4mL、7.96mmoL、2当量)を5℃で加え、一晩中攪拌した。TLC確認によって反応終結を確認した後、反応溶液を10%HCl溶液によって5℃で(pH〜4になるまで)酸性化させ、EA(20mL)によって抽出した。有機相を合わせ、飽和NaHCO3およびブラインで洗浄し、無水Na2SO4
乾燥させ、真空中で濃縮して残留物を得た。これをEAおよびn−ヘキサンの添加で固体化し、カラムクロマトグラフィによって精製することにより、標題化合物(620mg、1.7mmoL、43%)を白色固体の形で得た。
【0202】
Rf:0.7(EA)
【0203】
【数6】

【0204】
(3)(3−アミノ−3−ベンジルカルボニル−プロピル)−カルバミン酸tert−ブチルエステル塩酸塩の製造
【0205】
【化37】

【0206】
1,4−ジオキサン(10mL)中の前記工程(2)で得た(1−ベンジルカルバモイル−3−メトキシカルボニルアミノ−プロピル)−カルバミン酸tert−ブチルエステル(1g、2.7mmoL)溶液に、1,4−ジオキサン(6.8mL、27mmoL)中の4N HClを加えた後、2時間攪拌した。TLC確認によって反応終結を確認した
後、反応溶液を真空中で濃縮して乾燥させることにより、標題化合物を白色固体の形で得た。
【実施例1】
【0207】
1−ベンジル−7−メチル−6−チオキソ−ヘキサヒドロ−ピリミド[1,6−A]ピ
リミジン−2−オン
(A)N−ベンジル−3−[3−(2−[1,3]ジオキソラン−2−イル−エチル]−3メチル−チオウレイド)−プロピオンアミドの製造
【0208】
【化38】

【0209】
ジクロロメタン中のβ−アラニンベンジルアミド塩酸塩(1.0当量)およびN−メチルモルホリン(2.2当量)の懸濁液を0℃で10分間チオホスゲン(1.2当量)によって処理した。反応混合物を、室温で温め、さらに2時間攪拌した。透明な溶液を酢酸エチルで希釈し、10%KHSO4溶液、蒸留水および飽和NaCl溶液で洗浄した。有機
層をNa2SO4で乾燥させ、濃縮することにより、オイル状の残留物を得た。
【0210】
この生成物をジクロロメタンに溶解させ、0℃で10分間2−(N−メチル−2アミノエチル)−1,3−ジオキソラン(0.9当量)で処理した。その反応混合物は、室温で温め、さらに4時間攪拌した。その反応混合物を酢酸エチルで希釈し、10%KHSO4
溶液、蒸留水、飽和NaHCO3溶液、蒸留水、および飽和NaCl溶液で洗浄した。有
機層をNa2SO4で乾燥させ、濃縮することにより、オイル状の残留物を得た。この粗生成物をカラムクロマトグラフィ(シリカゲル、酢酸エチル/ヘキサン=5/2)によって精製することにより、純粋な生成物を得た。
【0211】
【数7】

【0212】
(B)1−ベンジル−7−メチル−6−チオキソ−ヘキサヒドロ−ピリミド[1,6−a]ピリミジン−2−オンの製造
【0213】
【化39】

【0214】
前記工程(A)で得たアミドを60℃で4日間ギ酸で処理した。ギ酸を減圧下で蒸発させた後、残留物を分取TLC(シリカゲル、酢酸エチル/メタノール=5/1)で精製することにより、純粋な標題生成物を得た。
【0215】
【数8】

【実施例2】
【0216】
1,7−ジベンジル−6−チオキソ−ヘキサヒドロ−ピリミド[1,6−a]ピリミジン−2−オン
(A)N−ベンジル−3−[3−ベンジル−(3,3−ジエトキシ−プロピル)−チオウレイド]−プロピオンアミドの製造
【0217】
【化40】

【0218】
ジクロロメタン中のβ−アラニンベンジルアミド塩酸塩(1.0当量)およびN−メチルモルホリン(2.2当量)の懸濁液を0℃で10分間チオホスゲン(1.2当量)によって処理した。反応混合物を室温で温め、さらに2時間攪拌した。透明溶液を酢酸エチルで希釈し、10%KHSO4溶液、蒸留水および飽和NaCl溶液で洗浄した。有機層を
Na2SO4で乾燥させ、濃縮することにより、オイル状の残留物を得た。この生成物をジクロロメタンに溶解させ、0℃で10分間2−(N−ベンジル−1−アミノ−3,3−ジエトキシプロパン)(0.9当量)で処理した。その反応混合物を室温で温め、さらに6時間攪拌した。生じた反応混合物を酢酸エチルで希釈し、10%KHSO4溶液、蒸留水
および飽和NaHCO3溶液、蒸留水および飽和NaCl溶液で洗浄した。有機層をNa2SO4で乾燥させ、濃縮することにより、オイル状の残留物を得た。この粗生成物をカラ
ムクロマトグラフィ(シリカゲル、酢酸エチル/ヘキサン=2/1)によって精製することにより、純粋な生成物を得た。
【0219】
【数9】

【0220】
(B)1,7−ジベンジル−6−チオキソ−ヘキサヒドロ−ピリミド[1,6−a]ピリミジン−2−オンの製造
【0221】
【化41】

【0222】
前記工程(A)で得たアミドを60℃で4日間ギ酸で処理した。ギ酸を減圧下で蒸発させた後、残留物を分取TLC(シリカゲル、酢酸エチル/メタノール=5/1)によって精製することにより、純粋な生成物を得た。
【0223】
【数10】

【実施例3】
【0224】
1,7−ジベンジル−ヘキサヒドロ−ピリミド[1,6−a]ピリミジン−2,6−ジオン
(A)N−ベンジル−3−[3−ベンジル−(3,3−ジトエキシ−プロピル)−チオウレイド]−プロピオンアミドの製造
【0225】
【化42】

【0226】
ジクロロメタン中のβ−アラニンベンジルアミド塩酸塩(1.0当量)およびN−メチルモルホリン(3.2当量)の懸濁液を0℃で10分間チオホスゲン(0.7当量)によって処理した。反応混合物を室温で温め、さらに2時間攪拌した。透明溶液を酢酸エチルで希釈し、10%KHSO4溶液、蒸留水および飽和NaCl溶液で洗浄した。有機層を
Na2SO4で乾燥させ、濃縮することにより、オイル状の残留物を得た。この生成物を、ジクロロメタンに溶解させ、0℃で10分間2−(N−ベンジル−1−アミノ3,3−ジエトキシプロパン(0.9当量)で処理した。その反応混合物を、室温で温め、さらに4時間攪拌した。生じた反応混合物を酢酸エチルで希釈し、10%KHSO4溶液、蒸留水
、飽和NaHCO3溶液、蒸留水および飽和NaCl溶液で洗浄した。有機層をNa2SO4で乾燥させ、濃縮することにより、オイル状の残留物を得た。この粗生成物をカラムク
ロマトグラフィ(シリカゲル、酢酸エチル/ヘキサン=2/1)によって精製することにより、純粋な生成物を得た。
【0227】
【数11】

【0228】
(B)1,7−ジベンジル−ヘキサヒドロ−ピリミド[1,6−a]ピリミジン−2,6−ジオンの製造
【0229】
【化43】

【0230】
前記工程(A)で得たアミドを60℃で4日間ギ酸で処理した。ギ酸を減圧下で蒸発させた後、残留物を分取TLC(シリカゲル、酢酸エチル)によって精製することにより、純粋な標題生成物を得た。
【0231】
【数12】

【実施例4】
【0232】
1,7−ジベンジル−6−オキソ−オクタヒドロ−ピリミド[1,6−a]ピリミジン−2−オン
(A)(3−ブロモ−1−メトキシプロパン−1−オキシ)連結ArgoGel樹脂の製造
【0233】
【化44】

【0234】
1,2−ジクロロエタン(15mL)中の乾燥したArgoGel樹脂およびピリジニウムp−トルエンスルホネート(240mg、0.96mmoL)の懸濁液を加熱して、溶媒および微量の水を除去しながら還流した。約5mLの蒸留物を除去した後、1,2−
ジクロロエタン(5mL)中の3−ブロモ−1,1−ジメトキシプロパン(700mg、3.84mmoL)溶液を加え、EtOH/EDCを除去し続けながら、その混合物を4時間還流し続けた。その後、樹脂をDMFおよびジオキサンで洗浄し、凍結乾燥を行って所望の生成物を得た。
【0235】
(B)(3−ベンジルアミノ−1−メトキシプロパン−1−オキシ)連結ArgoGel樹脂の製造
【0236】
【化45】

【0237】
DMSO(4mL)中のベンジルアミン(520mg、4.85mmoL)溶液をブロモアセタール樹脂(1g、0.48mmoL)に加え、その懸濁液を60℃で15時間振盪した。生じた樹脂を濾過し、DMSO、MeOHおよびMCで洗浄し、真空下に一晩中乾燥させた。第二級アミンがクロルアニルテストによって検出された。
【0238】
(C)β−アラニンベンジルアミンウレアの製造
【0239】
【化46】

【0240】
N−メチルモルホリン(120μL)中のβ−アラニンベンジルアミドHCl(80mg、0.36mmoL)溶液にMC(2mL)、トリホスゲン(0.72mmoL)を室温で加えた。10分後、生じたイソシアネート溶液を、前記工程(2)で得た第二級アミン(100mg、0.048mmoL)の懸濁液に加え、室温で3時間振盪した。樹脂をDMF、MeOHおよびMCで洗浄し、反応の終結をクロラニルテストでチェックした。
【0241】
(D)1,7−ジベンジル−6−オキソ−オクタヒドロ−ピリミド[1,6−a]ピリミジン−2−オンの製造
【0242】
【化47】

【0243】
前記工程(C)のチオウレア基を含む樹脂をギ酸で処理し、15時間振盪した。前記樹脂を濾過し、濾液を濃縮し、クロマトグラフィ(シリカゲル)によって精製することによ
り、標題化合物を得た。
【0244】
【数13】

【実施例5】
【0245】
1,7−ジベンジル−2−オキソ−6−チオキソ−オクタヒドロ−ピリミド[1,6−a]ピリミジン−4−カルボン酸ベンジルエステル
(A)2−イソチオシアナト−琥珀酸1−ベンジルエステル4−(9H−フルオレン−9−イルメチル)エステルの製造
【0246】
【化48】

【0247】
MC中の2−tert−ブトキシカルボニルアミノ−琥珀酸1−ベンジルエステル(1g、3.09mmol)の溶液に、DIC(532μL、1.1当量)、DMAP(188mg、0.5当量)およびフルオレニルメタノール(635mg、1.05当量)を加えた。反応終結の後、生じた反応混合物を1N HClおよび飽和NaHCO3溶液で洗浄し、カラムクロマトグラフィ(シリカゲル)で精製することにより、フルオレニルメチルエステル(400mg)を得た。
【0248】
このエステルを、ジオキサン(10mL)で希釈し、ジオキサンの4N HCl溶液を
加えた後、2時間攪拌してBoc保護基を除去した。反応終結の後、その溶液を蒸発乾固させた。アミンのHCl塩をMCおよびN−メチルモルホリンで希釈し、チオホスゲン(1.2当量)を約0℃で加えた。反応完結の後、前記混合物を10%KHSO4溶液、蒸
留水、飽和NaHCO3、蒸留水および飽和NaCl溶液で洗浄した。有機層をNa2SO4で乾燥させ、濃縮することにより、オイル状の残留物を得た。この粗生成物をカラムク
ロマトグラフィ(シリカゲル、酢酸エチル/ヘキサン=1/1)で精製することにより、純粋な標題生成物を得た。
【0249】
(B)アスパラギン酸ベンジル、フルオレニルエステルチオウレア
【0250】
【化49】

【0251】
前記工程(A)で得たイソシアネート(0.5mmoL)のMC溶液をN−メチルモルホリンと共に実施例4の工程(B)で得た第二級アミン樹脂(200mg、0.04mmoL)の懸濁液に加え、室温で3時間振盪した。生じた樹脂をDMSO、MeOH、およびMCで洗浄し、反応の完結をクロラニルテストによってチェックした。
【0252】
(C)アスパラギン酸チオウレアベンジルアミド
【0253】
【化50】

【0254】
前記工程(B)で得た樹脂を30分間DMF(4mL)で膨潤させ、25%ピペリジン溶液を加えてフルオレニルメチル保護を開裂させた。生じた樹脂を、DMSO、MeOHおよびMCで洗浄した。その樹脂を減圧の下に乾燥させ、再度膨潤させ、ここにDIC(8μL、0.05mmoL)、HOBt(8mg、0.05mmoL)およびDIEA(18μL、0.1mmoL)を加えて酸を活性化した。30分間振盪した後、ベンジルアミンを加えて一晩中振盪し続けることにより、所望のベンジルアミド樹脂を得た。
【0255】
(D)1,7−ジベンジル−2−オキソ−6−チオキソ−オクタヒドロ−ピリミド[1,6−a]ピリミジン−4−カルボン酸ベンジルエステルの製造
【0256】
【化51】

【0257】
前記工程(C)で得た樹脂をMC(4mL)で膨潤させ、ここにPPTS(10mg)を加えて4時間60℃で加熱することにより、標題化合物を得た。
【0258】
MS(m/z、ESI)、500(MH+
【実施例6】
【0259】
7−ベンジル−6−チオキソ−ヘキサヒドロ−ピリミド[1,6−a]ピリミジン−1−
カルボン酸ベンジルエステル
(A)[3−[3−ベンジル−3−(3,3−ジエトキシ−プロピル)−チオウレイド]−プロピル]−カルバミン酸ベンジルエステルの製造
【0260】
【化52】

【0261】
MC中のCbz−ジアミノプロパンHCl(1.0当量)およびN−メチルモルホリン(2.2当量)の懸濁液をチオホスゲン(1.2当量)によって0℃で10分間処理した。生じた溶液を室温で温め、さらに2時間攪拌した。生じた透明溶液を酢酸エチルで希釈し、10%KHSO4溶液、水、および飽和NaCl溶液で洗浄した。有機層をNa2SO4で乾燥させ、濃縮することにより、オイル状の残留物を得たが、これをMCに溶解させ
、0℃で10分間N−ベンジル−1−アミノ−3,3−ジエトキシプロパン(0.9当量)で処理し、その後室温まで温め、さらに6時間攪拌した。生じた反応混合物を酢酸エチルで希釈し、10%KHSO4溶液、水、飽和NaHCO3、水、および飽和NaCl溶液で洗浄した。有機層をNa2SO4で乾燥させ、濃縮することにより、オイル状の残留物を得たが、これをカラムクロマトグラフィ(シリカゲル、酢酸エチル/ヘキサン=2/1)で精製することにより、純粋な標題生成物を得た。
【0262】
【数14】

【0263】
(B)7bベンジル−6−チオキソ−ヘキサヒドロ−ピリミド[1,6−a]ピリミジン−1−カルボン酸ベンジルエステルの製造
【0264】
【化53】

【0265】
MC中の前記工程(A)で得たアミド溶液にPPTSを加え、一晩中70℃で攪拌した。生じた反応混合物を減圧下で濃縮して残留物を得、これを分取TLC(酢酸エチルのみ)で精製することにより、標題化合物を得た。
【0266】
【数15】

【実施例7】
【0267】
8−アセチル−6−オキソ−ヘキサヒドロ−ピラジノ[1,2−a]ピリミジン−1−カルボン酸ベンジルエステル
(A)[アセチル−(2,2−ジメトキシ−エチル)−アミノ]−酢酸の製造
【0268】
【化54】

【0269】
MeOH中のベンジルグリシンHCl塩(1当量)の溶液にジメトキシアセトアルデヒド(1.05当量)、次いで、NaCNBH3(1.2当量)を室温で加えて5時間攪拌
した。生じた反応混合物を減圧下で濃縮してオイル状の残留物を得たが、これをMCに溶解させ、飽和NaHCO3溶液、水および飽和NaCl溶液で洗浄した。有機層をNa2SO4で乾燥させ、濃縮することにより、オイル状の残留物を得、これをMCに溶解させ、
0℃でトリエチルアミン(3当量)および塩化アセチル(1.1当量)で処理した。
【0270】
反応完結の後、生じた反応混合物を飽和NaHCO3、水および飽和NaCl溶液で洗
浄した。有機層をNa2SO4で乾燥させ、濃縮することにより、オイル状の残留物を得たが、これをカラムクロマトグラフィ(シリカゲル、酢酸エチル)によって精製することにより、純粋な生成物を得た。この生成物を10%Pd/CおよびH2含有バルーンで加水
素分解して標題化合物を得、これはそれ以上の精製なしに次の工程で使用された。
【0271】
【数16】

【0272】
(B)(3−[2−[アセチル−(2,2−ジメトキシ−エチル)−アミノ]−アセチルアミノ]−プロピル)−カルバミン酸ベンジルエステルの製造
【0273】
【化55】

【0274】
MC中の前記工程(A)で得た酸(1当量)の溶液に、HATU(1当量)、DIPEA(3当量)およびCbz−ジアミノプロパンHCl(1.0当量)を加えて室温で3時間攪拌した。生じた反応混合物を減圧下で濃縮して残留物を得、これを分取TLCで精製することにより、標題化合物を得た。
【0275】
【数17】

【0276】
(C)8−アセチル−6−オキソ−ヘキサヒドロ−ピラジノ[1,2−a]ピリミジン−1−カルボン酸ベンジルエステルの製造
【0277】
【化56】

【0278】
MC中の前記工程(B)で得たCbz保護アミド前駆体溶液に、PPTS(1当量)を室温で加えて5時間70℃で加熱した。生じた反応混合物を濃縮することにより、残留物を得た。これは下記特性を示した。
【0279】
【数18】

【実施例8】
【0280】
7−ベンゾイルアミノ−4−ベンジルカルバモイル−6−オキソ−ヘキサヒドロ−ピロロ「1,2−a」ピリミジン−1−カルボン酸メチルエステル
(A)[1−(1−ベンジルカルバモイル−3−メトキシカルボニルアミノ−プロピルカルバモイル)−3,3−ジメトキシ−プロピル]−カルバミン酸ベンジルエステルの製造
【0281】
【化57】

【0282】
MC中の製造実施例3(3)で得たCbz保護アミノ酸アセタール(100mg、1.3当量)の溶液に、PyBOP(酸に対して1当量)、DIPEA(酸に対して6当量)およびHOBt(1.3当量)を加えて30分間攪拌した。前記反応混合物にアミノベンジルアミドHCl塩(71mg、0.27mmoL)を加えて7時間攪拌した。生じた反応混合物を飽和NaHCO3溶液、水および飽和NaCl溶液で洗浄した。有機層をMg
SO4で乾燥させ、濃縮させることにより、オイル状の残留物を得、これをカラムクロマ
トグラフィ(シリカゲル、酢酸エチル)によって精製することにより、標題生成物を得た(50mg、収率:35%)。
【0283】
【数19】

【0284】
(B)4−ベンジルカルバモイル−7−ベンジルオキシカルボニルアミノ−6−オキソ−ヘキサヒドロ−ピロロ[1,2−a]ピリミジン−1−カルボン酸メチルエステルの製造
【0285】
【化58】

【0286】
前記工程(A)で得たアセタールアミド環化前駆体(5mg、0.009mmoL)をギ酸(1mL)に溶解させ、一晩中攪拌した。生じた反応混合物を濃縮乾固させて、それを次の工程でそれ以上の精製なしに使用した。
【0287】
【数20】

【0288】
(C)7−ベンゾイルアミノ−4−ベンジルカルバモイル−6−オキソ−ヘキサヒドロ
−ピロロ[1,2−a]ピリミジン−1−カルボン酸メチルエステルの製造
【0289】
【化59】

【0290】
水素ガスバルーンを備えた反応容器に、MeOH中の前記工程(B)で得たCbz二環式の環式化合物の溶液およびPd/C(1mg)を室温で入れ、2時間攪拌した。反応終結の後、反応混合物をセライトフィルターで濾過してPd/cを除去し、溶媒を減圧下に蒸発させた。生じたオイル残留物をMCに溶解させ、ここにMC中の安息香酸(1.1当量)の溶液ならびにPyBOP(1.1当量)、HOBt(1.1当量)およびDIPEA(3当量)を加えて30分間攪拌した。生じた活性化酸の溶液に、アミン溶液を加え、3時間攪拌し続けた。生じた反応混合物を減圧の下に濃縮してオイル状の残留物を得、これを分取TLCによって精製することにより、標題化合物を得た。
【0291】
【数21】

【実施例9】
【0292】
7−ベンゾイルアミノ−4−(1−カルボキシ−エチルカルバモイル)−6−オキソ−ヘキサヒドロ−ピロロ[1,2−a]ピリミジン−1−カルボン酸メチルエステル
実施例9の方法論を示す合成スキームは図3に示した。
2−クロロトリチルクロライド樹脂(200mg、1mmoL/g)ならびにDCE(2mL)中のFmoc−アラニン(1.5当量、市販で入手可能)およびDIEA(2当量)の溶液をねじぶた付きバイアルに仕込んだ。この反応混合物を室温で12時間振盪した。樹脂を濾過によって集め、DMF、MeOHによって洗浄した後、DCMで洗浄して第1成分片を得た。
【0293】
反応前にDMFによって膨潤させた樹脂に、DMF中の25%ピペリジンを加えた。その後、反応混合物を室温で30分間振盪した。前記脱保護工程を繰り返し行った。次いで、その生成物混合物をDMF、MeOHで洗浄した後、DCMで洗浄した。NMP中の2−(9H−フルオレン−9−イルメトキシカルボニルアミノ)−4−メトキシカルボニルアミノ−酪酸(1.5当量、第2成分片)、DIC(1.5当量)、HOBT(1.5当量)溶液を樹脂に加えた。反応混合物を室温で12時間振盪した後、その樹脂をDMF、MeOHで洗浄し、その後DCMで洗浄した。
【0294】
反応前にDMFによって膨潤された樹脂に、DMF中の25%ピペリジンを加えた。その後、その反応混合物を室温で30分間振盪した。前記脱保護工程を繰り返し行い、その後、その生成物混合物をDMF、MeOHで洗浄した後、DCMで洗浄した。NMP中の2−(9H−フルオレン−9−イルメトキシカルボニルアミノ)−5,5−ジメトキシ−ペンタン酸(1.5当量)、DIC(1.5当量)、HOBT(1.5当量)溶液を樹脂
に加えた。反応混合物を室温で12時間振盪した後、前記樹脂をDMF、MeOHで洗浄し、その後DCMで洗浄した。
【0295】
反応前にDMFによって膨潤された樹脂に、DMF中の25%ピペリジンを加えた。その後、その反応混合物を室温で30分間振盪した。前記脱保護工程を繰り返し行い、その後、その生成物混合物をDMF、MeOHで洗浄した後、DCMで洗浄した。NMP中の市販で入手可能な安息香酸(1.5当量)、DIC(1.5当量)、HOBT(1.5当量)溶液を樹脂に加えた。反応混合物を室温で12時間振盪した後、その樹脂をDMF、MeOHで洗浄し、その後DCMで洗浄した。
【0296】
前記樹脂をギ酸(各ウェル当たり1.2mL)で室温で18時間処理した。その後、前記樹脂を濾過によって除去し、濾液を減圧の下に濃縮した。これにより、生成物をオイルの形で得た。
【0297】
【数22】

【実施例10】
【0298】
7−ベンゾイルアミノ−4−(2−カルボキシ−プロピルカルバモイル)−6−オキソ−ヘキサヒドロ−ピロロ[1,2−a]ピリミジン−1−カルボン酸メチルエステル
実施例10の方法論を示す合成スキームは、図4に示した。
2−クロロトリチルクロライド樹脂(200mg、1mmoL/g)ならびにDCE(2mL)中のFmoc−ベータ−アラニン(1.5当量)およびDIEA(2当量)の溶液をねじぶた付きバイアルに仕込んだ。この反応混合物を室温で12時間振盪した。樹脂を濾過によって集め、DMF、MeOHによって洗浄した後、DCMで洗浄して第1成分片を得た。
【0299】
反応前にDMFによって膨潤された樹脂に、DMF中の25%ピペリジンを加えた。その後、反応混合物を室温で30分間振盪した。前記脱保護工程を繰り返し行い、次いで、その生成物混合物をDMF、MeOHで洗浄した後、DCMで洗浄した。NMP中の2−(9H−フルオレン−9−イルメトキシカルボニルアミノ)−4−メトキシカルボニルアミノ−酪酸(1.5当量、第2成分片)、DIC(1.5当量)およびHOBT(1.5当量)溶液を樹脂に加えた。反応混合物を室温で12時間振盪した後、その樹脂をDMF、MeOHで洗浄し、その後DCMで洗浄した。
【0300】
反応前にDMFによって膨潤させた樹脂に、DMF中の25%ピペリジンを加えた。その後、その反応混合物を室温で30分間振盪した。前記脱保護工程を繰り返し行い、次いで、その生成物混合物をDMF、MeOHで洗浄した後、DCMで洗浄した。NMP中の2−(9H−フルオレン−9−イルメトキシカルボニルアミノ)−5,5−ジメトキシ−ペンタン酸(1.5当量)、DIC(1.5当量)およびHOBT(1.5当量)溶液を樹脂に加えた。反応混合物を室温で12時間振盪した後、その樹脂をDMF、MeOHで洗浄し、その後DCMで洗浄した。
【0301】
反応前にDMFによって膨潤させた樹脂に、DMF中の25%ピペリジンを加えた。そ
の後、その反応混合物を室温で30分間振盪した。前記脱保護工程を繰り返し行った。次いで、その生成物混合物をDMF、MeOHで洗浄した後、DCMで洗浄した。NMP中の市販で入手可能な安息香酸(1.5当量)、DIC(1.5当量)およびHOBT(1.5当量)溶液を樹脂に加えた。反応混合物を室温で12時間振盪した後、その樹脂をDMF、MeOHで洗浄し、その後DCMで洗浄した。
【0302】
前記樹脂をギ酸(各ウェル当たり1.2mL)によって室温で18時間処理した。その後、前記樹脂を濾過によって除去し、濾液を減圧下に濃縮した。これにより、生成物をオイルの形で得た。
【0303】
【数23】

【0304】
様々な引用がここに述べられているが、これは特定の処置、化合物および/または組成物について説明するもので、それらは全体として引用として組み込まれる。
【0305】
以上、本発明の特定の実施の態様が説明の目的のために記述されたが、本発明の精神および範囲を逸脱することなく、様々な変形が可能であることが理解されるであろう。従って、本発明は、添付した請求の範囲を除いて、限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0306】
【図1】図1は本発明のライブラリ、および本発明の化合物を製造する一般合成図を示す。
【図2】図2は本発明のライブラリ、および本発明の化合物を製造する一般合成図を示す。
【図3】図3は実施例9にさらに詳述されるとおり、本発明のライブラリ、および本発明の化合物を製造する一般合成図を示す。
【図4】図4は実施例10にさらに詳述されるとおり、本発明のライブラリ、および本発明の化合物を製造する一般合成図を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記構造を有する化合物およびその化合物の立体異性体:
【化1】

式中、Aは−(CH)−、−N−または−CH2−N−であり、Bは−(C=O)−ま
たは−(CH2m−であり、Wは−(C=O)−、−Y(C=O)−、−NH(C=O)−、または存在せず、Xは−NH−、−NH(C=O)−または存在せず、Yは酸素または硫黄であり、Zは酸素または水素であり、Lは水素、R5、−C(O)NHR3またはその等価体であり、n=0または1、そしてm=1または2であり、R1、R2、R3、R4およびR5は、同一または異なって、水素、アミノ酸側鎖部分またはその誘導体、その分子
の残部、リンカーおよび固体支持体から独立に選択される。
【請求項2】
1、R2、R3、R4およびR5は、アミノC2-5アルキル、グアニジノC25アルキル、C14アルキルグアニジノC25アルキル、ジC14アルキルグアニジノC25アルキル、アミジノC25アルキル、C14アルキルアミジノC25アルキル、ジC14アルキルアミジノC25アルキル、C13アルコキシ、フェニル、置換フェニル(ここで、置換基は、アミノ、アミジノ、グアニジン、ヒドラジン、アミドラゾニル、C14アルキルアミノ、C14ジアルキルアミノ、ハロゲン、パーフルオロC14アルキル、C14アルキル、C13アルコキシ、ニトロ、カルボキシ、シアノ、スルフリルまたはヒドロキシルの1個またはそれ以上から独立に選択される)、ベンジル、置換ベンジル(ここで、ベンジル上の置換基は、アミノ、アミジノ、グアニジノ、ヒドラジノ、アミドラゾニル、C14アルキルアミノ、C14ジアルキルアミノ、ハロゲン、パーフルオロC14アルキル、C1
3アルコキシ、ニトロ、カルボキシ、シアノ、スルフリルまたはヒドロキシルの1個ま
たはそれ以上から独立に選択される)、ナフチル、置換ナフチル(ここで、置換基は、アミノ、アミジノ、グアニジン、ヒドラジン、アミドラゾニル、C14アルキルアミノ、C14ジアルキルアミノ、ハロゲン、パーフルオロC14アルキル、C14アルキル、C1
3アルコキシ、ニトロ、カルボキシ、シアノ、スルフリルまたはヒドロキシルの1個ま
たはそれ以上から独立に選択される)、ビス−フェニルメチル、置換ビス−フェニルメチル(ここで、置換基は、アミノ、アミジノ、グアニジン、ヒドラジン、アミドラゾニル、C14アルキルアミノ、C14ジアルキルアミノ、ハロゲン、パーフルオロC14アルキル、C14アルキル、C13アルコキシ、ニトロ、カルボキシ、シアノ、スルフリルまたはヒドロキシルの1個またはそれ以上から独立に選択される)、ピリジル、置換ピリジル(ここで、置換基は、アミノ、アミジノ、グアニジノ、ヒドラジノ、アミドラゾニル、C14アルキルアミノ、C14ジアルキルアミノ、ハロゲン、パーフルオロC14アルキル、C14アルキル、C13アルコキシ、ニトロ、カルボキシ、シアノ、スルフリルまたはヒドロキシルの1個またはそれ以上から独立に選択される)、ピリジルC14アルキル、置換ピリジルC14アルキル(ここで、ピリジン置換基は、アミノ、アミジノ、グアニジノ、ヒドラジノ、アミドラゾニル、C14アルキルアミノ、C14ジアルキルアミノ、ハロゲン、パーフルオロC14アルキル、C14アルキル、C13アルコキシ、ニトロ、カルボキシ、シアノ、スルフリルまたはヒドロキシルの1個またはそれ以上から独立に選択される)、ピリミジルC14アルキル、置換ピリミジルC14アルキル(ここで、ピリミ
ジン置換基は、アミノ、アミジノ、グアニジン、ヒドラジン、アミドラゾニル、C14アルキルアミノ、C14ジアルキルアミノ、ハロゲン、パーフルオロC14アルキル、C1
4アルキル、C13アルコキシ、ニトロ、カルボキシ、シアノ、スルフリルまたはヒド
ロキシルの1個またはそれ以上から独立に選択される)、トリアジン−2−イル−C14アルキル、置換トリアジン−2−イル−C14アルキル(ここで、トリアジン置換基は、アミノ、アミジノ、グアニジン、ヒドラジン、アミドラゾニル、C14アルキルアミノ、C14ジアルキルアミノ、ハロゲン、パーフルオロC14アルキル、C14アルキル、C13アルコキシ、ニトロ、カルボキシ、シアノ、スルフリルまたはヒドロキシルの1個またはそれ以上から独立に選択される)、イミダゾールC14アルキル、置換イミダゾールC14アルキル(ここで、イミダゾール置換基は、アミノ、アミジノ、グアニジン、ヒドラジン、アミドラゾニル、C14アルキルアミノ、C14ジアルキルアミノ、ハロゲン、パーフルオロC14アルキル、C14アルキル、C13アルコキシ、ニトロ、カルボキシ、シアノ、スルフリルまたはヒドロキシルの1個またはそれ以上から独立に選択される)、イミダゾリニルC14アルキル、N−アミジノ−ピペラジニル−N−C04アルキル、ヒドロキシC25アルキル、C15アルキルアミノC25アルキル、C15ジアルキルアミノC25アルキル、N−アミジノピペリジニルC14アルキルおよび4−アミノシクロヘキシルC02アルキルよりなる群から独立に選択される、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
Xが存在せず、AがNであり、Bが−(C=O)−であり、Lが−C(O)NHR3
あり、下記構造を有する請求項1に記載の化合物。
【化2】

【請求項4】
Wが存在せず、Zが酸素である請求項3に記載の化合物。
【請求項5】
Xが存在せず、AがNであり、Bが−(CH2m−であり、Lが−C(O)NHR3
あり、下記構造を有する請求項1に記載の化合物。
【化3】

【請求項6】
Wが存在せず、Zが酸素である請求項5に記載の化合物。
【請求項7】
Xが−NH−であり、Aが−(CH)−であり、Bが−(CH2m−であり、Lが−C(O)NHR3であり、下記構造を有する請求項1に記載の化合物。
【化4】

【請求項8】
Zが酸素であり、Wが存在しない請求項7に記載の化合物。
【請求項9】
Aが−CH2−N−であり、Bが−(CH2m−であり、Lが−C(O)NHR3であり、下記構造を有する請求項1に記載の化合物。
【化5】

【請求項10】
Yが酸素である請求項9に記載の化合物。
【請求項11】
Wが存在せず、Zが酸素である請求項10に記載の化合物。
【請求項12】
Wが存在せず、Zが酸素である請求項9に記載の化合物。
【請求項13】
Aが−(CH)−であり、Bが−(CH2m−であり、m=1、Wが−(C=O)−または存在せず、Xが−NH(C=O)−であり、Yが酸素であり、Zが水素であってその結果、C=ZがCH2を示し、Lが−C(=O)NHR3であり、n=0、R4が水素であ
り、R1、R2およびR3が、同一または異なって、アミノ酸側鎖部分またはその誘導体、
その分子の残部、リンカーおよび固体支持体から独立に選択される、請求項1に記載の化合物およびその化合物の立体異性体。
【請求項14】
1、R2およびR3は、15〜1,000g/モルの分子量を有する有機基から独立に
選択され、R1、R2およびR3の少なくとも一つがアミノ酸側鎖またはその誘導体を示す
請求項13に記載の化合物。
【請求項15】
3が固体支持体または固体支持誘導体に結合している請求項1〜14のいずれか一項
に記載の化合物。
【請求項16】
請求項1〜14のいずれか一項に記載の化合物の少なくとも一つを含む、化合物のライブラリ。
【請求項17】
請求項1〜14のいずれか一項に記載の化合物および医薬的に許容されるキャリアを含む医薬組成物。
【請求項18】
生物学的に活性な化合物を識別する方法であって、生物学的に活性な化合物を検出またはスクリーニングするために、請求項17に記載のライブラリを標的に接触させることを含む方法。
【請求項19】
温血動物でキナーゼを阻害する方法であって、動物に請求項1〜14のいずれか一項に記載の化合物の前記キナーゼを阻害するのに有効な量を投与することを含む方法。
【請求項20】
温血動物でCAAXを阻害する方法であって、動物に請求項1〜14のいずれか一項に記載の化合物のCAAXを阻害するのに有効な量を投与することを含む方法。
【請求項21】
温血動物でプロテアーゼを阻害する方法であって、動物に請求項1〜14のいずれか一項に記載の化合物の前記プロテアーゼを阻害するのに有効な量を投与することを含む方法。
【請求項22】
抗原性ペプチドがクラスIまたはクラスIIのMHC分子のいずれか一つに結合する
ことを阻害する方法であって、請求項1〜14のいずれか一項に記載の化合物の一定量を抗原性ペプチドおよびクラスIまたはクラスIIのMHC分子のいずれか一つを
含む組成物に接触させることを含み、前記一定量は前記結合の阻害に有効な量である方法。
【請求項23】
第1ペプチドに存在するホスホチロシン残基が第2ペプチドのSH2ドメインに結合することを阻害する方法であって、請求項1〜14のいずれか一項に記載の化合物の一定量を、前記第1ペプチドおよび前記第2ペプチドを含む組成物と接触させることを含み、前記一定量は前記結合の阻害に有効な量である方法。
【請求項24】
第1ペプチドのプロリン多量含有部位が第2ペプチドのSH3ドメインに結合すること
を阻害する方法であって、請求項1〜14のいずれか一項に記載の化合物の一定量を、前記第1ペプチドおよび前記第2ペプチドを含む組成物と接触させることを含み、前記一定量は前記結合の阻害に有効な量である方法。
【請求項25】
温血動物で酸化還元酵素を阻害する方法であって、動物に請求項1〜14のいずれか一項に記載の化合物の一定量を投与することを含み、前記一定量は前記酸化還元酵素の阻害に有効な量である方法。
【請求項26】
温血動物でホスファターゼを阻害する方法であって、動物に請求項1〜14のいずれか一項に記載の化合物の一定量を投与することを含み、前記一定量は前記ホスファターゼの阻害に有効な量である方法。
【請求項27】
第1ペプチドが第2ペプチドの14−3−3ドメインに結合することを阻害する方法であって、請求項1〜14のいずれか一項に記載の化合物を、第2ペプチドの14−3−3
ドメインに結合親和性を有する第1ペプチドと、14−3−3ドメインを有する第2ペプチドとを含む組成物の一定量に接触させることを含み、前記一定量は前記結合の阻害に有効な量である方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2006−526568(P2006−526568A)
【公表日】平成18年11月24日(2006.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−500617(P2005−500617)
【出願日】平成15年5月30日(2003.5.30)
【国際出願番号】PCT/US2003/017188
【国際公開番号】WO2004/108731
【国際公開日】平成16年12月16日(2004.12.16)
【出願人】(505378002)チョンウェ ファーマ コーポレーション (5)
【Fターム(参考)】