説明

ペットフードの嗜好性を増強する方法

本発明は、少なくともa)(i)任意の添加されたリパーゼの非存在下にて、少なくとも1種類のプロテアーゼをタンパク質性および脂肪性材料を含んでなる基剤と反応させ、(ii)上記プロテアーゼを熱不活性化し、生成する消化生成物を濾過することによって得られる第一段階の反応生成物を提供し、b)必要に応じて脂肪を添加し、c)上記第一段階の反応生成物を乳化し、d)上記乳化物を任意の添加されたプロテアーゼの非存在下にて少なくとも1種類のリパーゼと反応させて、第二段階の反応生成物を得て、e)少なくとも1種類の還元糖と少なくとも1種類の窒素化合物とを、第二段階の反応生成物に加え、生成した混合物を加熱することを含んでなる、低、中または高水分含量のペットフードに用いる嗜好性増強剤の調製方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【発明の背景】
【0001】
本発明は、愛玩動物用の組成物(食物、栄養補助食品、おやつ(treats)、玩具などを含む)の嗜好性を向上させる方法に関する。詳細には、本発明は、低、中または高水分のペットフードで用いられる嗜好性増強剤(palatabiliey enhancer)を調製する方法に関する。
【0002】
本発明は、イヌおよびネコのような愛玩動物用の食物の分野におけるものである。本明細書における任意の種類の食物に関する引用文献は、イヌおよびネコのような愛玩動物用に製造されて発売されている食物のみを指すものと解釈される。今日までの試験はイヌおよびネコに集中してきたが、本発明はフェレットや他のクラスの愛玩動物での使用に適合させることもできる。所望ならば、本明細書に開示される発明は、齧歯類(ハムスター、モルモット、ウサギなど)鳥類並びにウマおよび任意の種類の家畜など様々なクラスの動物での使用の適合性を評価する目的で試験することもできる。しかしながら、イヌおよびネコは齧歯類、ウマ、家畜などよりも高度の香味、風味および芳香に対する感受性を示しまたは主としてイヌおよびネコは香味の増した食物を与えられるので、本文は「ペット」という用語を本明細書で開示される香味の増した食物を与えられる総ての動物を表すのに用い、「ペットフード」をこれらの動物に提供されるあらゆる種類の食物を表すのに用いる。
【0003】
本明細書で用いられる「ペットフード」という表現は、低、中または高水分含量の食物を包含することを理解すべきである。(1)乾燥または低水分含量生成物(典型的には、15%未満)であって、典型的には高栄養分を有し、包装には最も費用がかからないが、風味が余りよくないもの、(2)缶詰にしたまたは湿りのあるまたは高水分含量生成物(約50%を上回る)であって、典型的にはペットにとって最も口当たりのよいもの、(3)幾分湿りのあるまたは半乾燥または軽度乾燥または中間または中程度の水分含量生成物(通常15−50%)であって、一般に缶詰食物よりは口当たりはよくないが乾燥食物よりは口当たりがよいものの3種類のペットフードがある。
【0004】
ペットは、適切に選択した食物を提供する飼い主によって満足のいくように世話を受けている。これらの食物は、通常の食餌、栄養補助食品、おやつ(treats)および玩具でありかつ包含することができる。ペットは、人間のように、愛情を受けて、彼らが好む食物をより規則的かつより容易に食べている。従って、嗜好性増強剤が、動物の消費には極めて重要である。ペットフードのような動物用食物は、典型的にはペットの嗜好性を増しかつペットの興味をそそらせる香味組成物を含んでいる。多数の香味組成物(または嗜好性増強剤または食欲増加因子)が、これまでに報告されている。一例として、米国特許第3 857 968号明細書および第3 968 255号明細書において、Haas and Lugayは、乾燥した動物用食物、特に脂肪およびタンパク質を含んでなる乾燥したイヌ用食物に用いる嗜好性改良組成物であって、脂肪を乳化し、組成物をリパーゼとプロテアーゼを含んでなる酵素混合物で処理し、必要に応じて、酵素を不活性化することを含む方法によって得られるものを開示している。もう一つの例は、米国特許第4 713 250号明細書に記載されており、イヌ用食物の嗜好性を高める組成物が、最初に水性のタンパク質性または澱粉様材料をプロテアーゼおよび/またはアミラーゼと接触させた後、脂肪と第一段階で得られた生成物を含んでなるエマルション(乳化物)を調製し、上記エマルションをリパーゼおよびプロテアーゼと反応させることを含んでなる段階的酵素反応によって得られる。もう一つの例は米国特許第4 089 978号明細書に記載されており、Lugay et al.は、中温で還元糖、動物血液、酵母および脂肪の水性混合物をリパーゼとプロテアーゼを含む酵素混合物と反応させた後、温度を上昇させて香味を更に十分に引き出しかつ酵素を不活性化することを含んでなる方法によって調製される動物用食物で用いられる味のよい組成物を提供している。
【0005】
しかしながら、このような組成物の嗜好性は一般に動物種によって互いに異なり、例えば、ネコに有効な香味料はイヌには有効でないことが多い。更に、乾燥ペットフードで有効な香味料は、幾分湿りのあるまたは湿りのあるペットフードで用いたときには通常は有効でない。従って、乾燥、中間および湿りのある食物など様々な種類の食物に芳醇な香味を提供しかつイヌおよびネコなどの愛玩動物で容易かつ有効に使用可能な新たな嗜好性増強剤が求められ続けている。
【発明の概要】
【0006】
従って、本発明の目的は、「広く適用可能な」嗜好性増強剤、すなわち動物種および食物の種類とは関係なく有効な嗜好性増強剤を提供することである。本発明の方法は、低、中または高水分含量のペットフードの嗜好性を大きく高める。
【0007】
愛玩動物用食物の嗜好性増強剤を製造する方法は、このようにして提供される。この方法は、段階的酵素加水分解に続いて極めて有効な嗜好性増強剤を生じる原料(例えば、鶏肉、豚肉、牛肉、子羊肉、魚肉を基材としたものなど)の香味生成熱反応を含む。嗜好性増強剤のペットフードへの添加または配合は、コーティング噴霧法による液体生成物として、コーティングダスティング法による乾燥粉末として、またはそれをペットフード成分と混合した後押出または缶詰化による液体または乾燥生成物として行うことができる。あるいは、嗜好性増強剤を脂肪と混合し、同時に適用してもよい。
【0008】
本発明は、少なくとも本明細書に開示したものを含む2種類以上の嗜好性増強剤を組み合わせて、ペットフードにおける嗜好性を増加するのに有用な組成物または混合物を得ることにも関する。様々な種類の嗜好性増強剤を一緒に混合した後に、それらを食物に組込むことができる(嗜好性増強剤混合物はこのようにして保管した後に使用することができる)。あるいは、様々な増強剤を、ペットフードにおいてを意味する、その場で(イン・シテュー(in situ))で組み合わせることができる。
【0009】
驚くべきことには、本発明の嗜好性増強剤は、低、中または高水分含量のペットフードに添加するときに、愛玩動物、好ましくはイヌおよびネコにとって極めて魅力的な第一のものである。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】スーパープレミアム(Super Premium)嗜好性増強剤SP1対SP2の嗜好性の結果を示すグラフ(実施例1)。
【図2】スーパープレミアム嗜好性増強剤XLHM対SP1およびSP2の嗜好性の結果を示すグラフの組(実施例1および2)。
【図3】スーパープレミアム嗜好性増強剤生成物B対生成物Cの嗜好性の結果を示すグラフ(実施例5)。
【発明の具体的説明】
【0011】
「嗜好性」という用語は、1つの食物組成物のもう一つのものに対する動物の相対的優先性を意味する。嗜好性は、両組成物に同等に接近できる標準的試験法によって決定することができる。このような優先性は動物の間隔のいずれから生じることもできるが、典型的には風味、芳香、香味、キメ、食感に関係している。「増進した嗜好性」に対して本明細書に記載のペットフードは、動物が対照組成物と比較して優先性を示すものである。
【0012】
「嗜好性増強剤」または「パラタント(palatants)」または「香味料(flavours)」または「嗜好性薬剤」または「食欲増加因子」という用語は、動物に対する食物組成物の嗜好性を高める任意の材料を意味する。嗜好性増強剤は単一材料または材料の混合物であってもよく、自然、加工または未加工、合成、または一部が天然で一部が合成材料であってもよい。
【0013】
本明細書で用いられる「キブル(kibble)」という用語は、造粒または押出法によって形成される微粒状の塊または小片を表す。典型的には、キブルは、乾燥および半湿性ペットフードを得る目的で製造される。これらの小片は、方法または装置によって大きさおよび形状が変化する可能性がある。本明細書で用いられる「ローフ(loaf)」という用語は、湿性生成物として得られる食用に適する食品材料を表し、テリーヌ、パテ、ムースなどが挙げられる。更に一般的には、「ペットフード」という用語は、ペットが消費するのに適している上記で定義したキブルおよびローフなどあらゆる形態の食物を包含する。
【0014】
当該技術分野で周知のように、「プロテアーゼ」は、タンパク質分解を行う、すなわち、ポリペプチド鎖においてアミノ酸を互いに連結しているヘプチル結合の加水分解によるタンパク質の異化を開始する酵素である。リパーゼは、水溶性の脂質基質におけるエステル結合の加水分解を触媒する水溶性酵素である。重要なことには、リパーゼはタンパク質であるので、リパーゼとプロテアーゼを従来技術で開示されているように酵素混合物として用いられるときには、リパーゼは少なくともプロテアーゼによって少なくとも部分的に加水分解されることがある。これは、本発明が回避しようとしている不都合な反応である。
【0015】
本明細書で用いられる「脂肪」および「油」という用語は同義であり、脂肪または油の混合物も包含する。動物性脂肪並びに植物油および/またはマリーンオイル(marine oils)を用いることができる。動物、植物、海洋性脂肪の任意の市販の供給源を試験することができる。多量に入手可能な植物油は、典型的には、カノーラ油、大豆油、トウモロコシ油、オリーブ油、ヒマワリ油、亜麻仁油、ヤシ油、ベニバナ油など、およびそれらの副生成物である。典型的な動物脂肪は、獣脂、豚脂、鶏肉脂肪など、およびそれらの副生成物である。マリーンオイルは、典型的には、マグロ油、イワシ油、サケ油、アンチョビー油、魚肉油など、およびそれらの副生成物である。動物、植物、海洋性供給源に由来しまたは動物や植物によって産生される脂肪も、本発明に包含される。
【0016】
「熱反応」は、本発明によれば、少なくとも1種類の炭水化物、好ましくは還元糖と少なくとも1種類の窒素化合物を高温で組み合わせることによって得られる反応である。このような反応は、実際には、例えばメイラード反応など様々な同時および/または連続反応を包含することがある。用いる条件によって、複雑な配列の反応が起こることが可能である。好ましくは、「還元糖」は、ヘキソース、ペントース、グルコース、フルクトース、キシロース、リボース、アラビノース、澱粉加水分解物など、およびそれらの組合せから選択される。本明細書で用いられる「窒素化合物」という用語は、20種類の既知の天然アミノ酸、並びにアミノ酸配列、すなわちペプチド、オリゴペプチドおよびタンパク質またはポリペプチドを包含する。また、ペットフードに使用するのに許容可能な任意の供給源由来の窒素を含む総ての化合物も包含される。適当な窒素化合物は、チアミン、メチオニン、シスチン、システイン、グルタチオン、加水分解した植物タンパク質(HVP)、酵母自己分解物質、酵母抽出物、およびそれらの組合せから選択される。また、「窒素化合物」という用語によって、含硫アミノ酸のようなペットフードに使用するのに許容可能な硫黄を含む任意の窒素化合物も包含されることは勿論である。
【0017】
本発明の第一の態様は、
ペットフード用の嗜好性増強剤の調製方法であって、下記の段階:
a)(i) 任意の添加された(または外来性)リパーゼの非存在下にて、少なくとも1種類の任意の外来性および/または内在性プロテアーゼと、タンパク質性および脂肪性材料を含んでなる基剤を、タンパク質分解反応を引き起こすのに有効な量、pHおよび温度の条件、および時間で反応させ、
(ii) 上記プロテアーゼを熱不活性化し、生成する消化生成物を濾過する
ことによって得られる第一段階の反応生成物を提供し、
b) 必要に応じて脂肪を添加し、
c) 上記第一段階の反応生成物を乳化し、
d) 上記乳化物を少なくとも1種類のリパーゼと、任意の添加されたプロテアーゼの非存在下にて、脂肪分解反応を引き起こすのに有効な量、pHおよび温度の条件、および時間で反応させ、第二段階の反応生成物を得て、
e) 少なくとも1種類の還元糖と少なくとも1種類の窒素化合物とを、第二段階の反応生成物に加え、生成した混合物の嗜好性を更に発展させるのに有効な温度および時間、この混合物を加熱して、嗜好性増強剤を生成する
ことを少なくとも含んでなる方法に関する。
【0018】
段階e)で得られた混合物の冷却段階を更に行うのが好ましい。
【0019】
また、プロテアーゼを熱不活性化する段階a)(ii)の後に、生成物を、段階d)で提供される次の脂質分解反応を引き起こすのに有効な温度の条件下とするために、約20−約50℃(好ましくは、約25−約45℃)の温度まで冷却するのが適当である。例えば、この冷却は段階a)(ii)の直後に行うのが好都合であり、その後は段階b)、c)およびd)中ずっとその温度に保持される。
【0020】
望ましくは、第一段階の反応生成物は、次の段階で使用されるまで適当な条件下で調製されて保管される。また、この第一段階の反応生成物は、タンパク質分解反応のみの後に市販消化物が得られると直ぐに市販供給源から好都合に得ることができる。
【0021】
本発明の本質的特徴は、最初にプロテアーゼの使用に続いてリパーゼの使用を含む逐次反応機構である。実際に、この段階的酵素処理は、反応の効率および速度のみでなく、生成物の嗜好性の増進の程度をも高める。更に、生成する嗜好性増強剤は、少なくともネコおよびイヌを含むペットを予定した乾燥、半乾燥および湿りのある食物など様々な食物に極めて広範囲に用いることができることは、嗜好性増進剤の予期せぬ利点である。
【0022】
段階b)における脂肪の添加は場合によって行われるが、好ましくは一層良好な結果を得る目的で行われる。
【0023】
プロテアーゼは、タンパク質性および脂肪性材料を含んでなる出発基剤に含まれていることがある。従って、段階(i)におけるプロテアーゼの添加は場合によって行われる。それにも拘わらず、一層良好な結果を得るには、少なくとも1種類のプロテアーゼを段階a)(i)で添加するのが好ましい。
【0024】
本発明の第二の態様は、上記の方法によって得られるペットフード用の嗜好性増強剤に関する。
【0025】
本発明の嗜好性増強剤は、液体(例えば、溶液)または固体(例えば、粉末)の形態であることがある。
【0026】
本発明の第三の態様は、上記のような少なくとも1種類の嗜好性増強剤を含んでなるペットフード用の食欲促進組成物に関する。
【0027】
あるいは、上記食欲促進組成物は、2種類以上の嗜好性増強剤であって、少なくともその1は本発明による嗜好性増強剤であるものを含んでなる。
【0028】
本発明の第四の態様は、
上記に開示した少なくとも1種類の嗜好性増強剤または少なくとも1種類の食欲増加組成物を、ペットフードの嗜好性を増進するのに有効な量で配合する
ことを少なくとも含んでなる、嗜好性を増進したペットフードの調製方法に関する。
【0029】
嗜好性増強剤の配合は、ペットフード基質(matrix)にコーティング(例えば、噴霧またはダスティング)によりまたは添加することによって行うことができる。
【0030】
本発明の第五の態様は、上記の方法によって得られる嗜好性の増加したペットフードに関する。
【0031】
また、上記のような少なくとも1種類の嗜好性増強剤または少なくとも1種類の食欲促進組成物を含んでなる口当たりよいペットフードも、本発明に包含される。
【0032】
このようなペットフードは、乾燥、半乾燥および湿りのあるペットフードからなる群から選択することができる。
【0033】
本発明の第六の態様は、
少なくとも
a) 上記のペットフードを提供し、
b) 上記ペットフードをペットに給餌する
ことを含んでなる、ペットに給餌する方法に関する。
【0034】
好ましくは、ペットはネコおよびイヌからなる群から選択される。
【0035】
従って、本発明は、出発材料の脂質分解に続いてメイラード反応のような熱反応を含むペットフードの嗜好性を改良する方法に関する。出発材料は、組織に存在する内在性酵素または添加されたプロテアーゼによる加水分解後に得られる動物および/または海洋性および/または植物消化物を意味する。出発材料の市販の供給源としては、鶏肉、豚肉、牛肉、子羊肉、魚肉など、およびそれらの組合せが挙げられる。出発材料としては、生の組織(例えば、鶏肉、豚肉、牛肉、子羊肉、魚肉を基材とする臓物または臓物および肝臓など、およびそれらの組合せ)を用いることができ、またタンパク質分解の後に脂質分解および熱反応を継続することができる。
【0036】
本発明で用いられる酵素は、プロテアーゼおよびリパーゼである。市販のプロテアーゼおよびリパーゼは、植物、動物、および細菌、酵母および真菌のような微生物から単離される。実際には、市販のプロテアーゼは、残留リパーゼ活性を示す可能性があるという意味において完全には純粋ではないと思われる。また、市販のリパーゼは残留タンパク質分解活性を示すことがある。任意の起こり得る望ましくない副作用を回避しまたは最小限にするのに適当な酵素を選択することは、当業者の通常の能力では当然のことである。これが、段階a)(i)およびd)において、タンパク質分解および脂肪分解反応がそれぞれ「任意の添加されたリパーゼの非存在下にて」(段階a)(i))および「任意の添加されたプロテアーゼの非存在下にて」(段階d))行われることが述べられていることの理由である。これは、段階a)(i)ではプロテアーゼおよび段階d)ではリパーゼのみが存在するかまたは添加されることを意味している。従って、任意の残留リパーゼまたはプロテアーゼ活性がそれぞれ段階a)(i)およびd)において存在する場合には、それらは重要ではない。唯一重要なことは、段階a)(i)におけるタンパク質分解活性および段階d)における脂質分解活性である目的の酵素活性である。酵素は、典型的には、最終的な嗜好性増強剤の重量の約0.01−10%、好ましくは0.01−5%、更に好ましくは0.01−2%の割合で用いられる。
【0037】
最適加水分解速度を得るには、温度およびpHを用いる酵素に適合させる。それは、当業者には容易に明らかになるであろう。pHは、リン酸、苛性ソーダ、他の通常の適当な酸性または塩基性調節剤およびそれらの組合せのようなペットフードで用いるのに許容可能な任意の適当な化合物によって調節することができる。
【0038】
出発材料が生の組織であるときには、タンパク質分解後および脂質分解前に、酵素の熱不活性化段階(例えば、低温殺菌)に続いて濾過を、典型的には、約70−95℃の温度で十分な時間、例えば約5−20分間行う。これにより、脂質分解を行う前にプロテアーゼを不活性化することができる。
【0039】
脂質分解の段階を行うには、リパーゼを添加する前に最初に混合物を乳化することが重要である。乳化は、ペットフードでの使用が許容可能な少なくとも1種類の乳化剤を添加することによって行うことができる。適当な乳化剤は、ステアロイル乳酸ナトリウム(SSL)、スクシノイル化モノグリセリド、アラビアゴム、アルギン酸ナトリウム、レシチンなどである。乳化剤は、典型的には最終的な嗜好性増強剤の重量の約0.01−10%、好ましくは0.01−8%、更に好ましくは0.01−5%の割合で添加される。
【0040】
上記のように、動物脂肪および/または植物油の任意の市販供給源を試験することができる。多量に入手できる適当な植物油の供給源は、カノーラ油、大豆油、トウモロコシ油、オリーブ油、ヒマワリ油、亜麻仁油、ヤシ油、ベニバナ油など、およびそれらの副生成物である。動物脂肪の適当な供給源は、獣脂、豚脂、鶏肉脂肪など、およびそれらの副生成物である。海洋性油の適当な供給源は、マグロ油、イワシ油、サケ油、アンチョビー油、魚肉油など、およびそれらの副生成物である。動物、植物、海洋性供給源に由来するかまたは動物および植物によって産生される脂肪も、本発明に包含される。典型的には、脂肪は最終的な嗜好性増強剤の重量の約2−30%、好ましくは5−20%の量で存在する。
【0041】
脂質分解の後、熱反応を行って生成物の香味を更に引き出す。好都合には、炭水化物および窒素化合物が、前者については約0.01−30%、好ましくは0.1−20%、更に好ましくは0.1−15%、また後者については約0.01−30%、好ましくは0.01−20%、更に好ましくは0.01−15%の濃度で添加される。適当な温度は、約70−130℃、好ましくは80−120℃の範囲で選択され、熱処理は生成物の香味を更に引き出すのに十分な時間、例えば少なくとも30分間行う。
【0042】
保存寿命を長くするために、天然の酸化防止剤または合成物(適当な酸化防止剤としては、BHA、BHT、没食子酸プロピル、没食子酸オクチル、トコフェロール、ローズマリー抽出物などが挙げられるが、これらに限定されない)、ソルビン酸またはソルビン酸塩、およびリン酸などの他の酸のような防腐剤を添加することができる。
【0043】
本発明の嗜好性増強剤は、典型的には、ペットフード組成物の重量の約0.01−20%、好ましくは0.01−10%、更に好ましくは0.01−5%の割合でそのまま直接用いることができる。あるいは、それを他の嗜好性増強剤と組み合わせることができ、総ての嗜好性増強剤を同時または逐次的に適用することができる。
【0044】
本発明の一態様では、嗜好性増強剤の乾燥処方は、嗜好性増強剤をキャリヤーに適当な比率で組合せ、成分同士を混合することによって得られる。次に、混合物を蒸発によって乾燥させ、乾燥した嗜好性増強剤が形成される。
【0045】
本発明の嗜好性増強剤は乾燥ペットフード、半湿性ペットフードのようなペットフードで有用であり、水分含量が約50重量%以下でありかつタンパク質、繊維、炭水化物および/または澱粉を含む栄養上バランスのとれた混合物である。このような混合物は当業者に周知であり、その組成は、例えば特定の種類のペットに所望な食物バランスのような多くの要因によって変化する。これらの基本要素の他に、食物は、ビタミン、ミネラル、およびシーズニング、防腐剤、乳化剤および湿潤剤などの他の添加剤を含むことができる。ビタミン、ミネラル、脂質、タンパク質および炭水化物の相対比を含む食物バランスは、例えばナショナル・リサーチ・カウンセル(NRC)の推奨またはアメリカン・アソシエーション・オブ・フィード・コントロール・オフィシャルス(AAFCO)の指針に従うことによって獣医学分野で知られている食餌標準に準じて決定される。
【0046】
総ての通常のタンパク質供給源、特に大豆またはアメリカホドイモのような植物タンパク質、カゼインまたはアルブミンのような動物タンパク質、および新鮮な動物組織、例えば新鮮な肉組織および新鮮な魚肉組織、または魚肉、鶏肉、肉粉餌および骨粉餌のような乾燥したまたは乾燥させた要素をも用いることができる。他の種類の適当なタンパク質性材料としては、小麦グルテンまたはトウモロコシグルテン、および酵母のような微生物タンパク質が挙げられる。実質的な割合の澱粉または炭水化物を含む成分、例えばトウモロコシ、マイロ、アルファルファ、小麦、大麦、米、大豆包皮およびタンパク質含量の低い他の穀物を用いることもできる。
【0047】
ホエーおよび炭水化物を含む乳副生成物などの他の成分を、食物に添加することができる。更に、例えばトウモロコシシロップまたは糖蜜などの既知のシーズニングを添加することができる。
【0048】
一例として、本発明の嗜好性増強剤を配合することができる乾燥したネコ用食物組成物の典型的処方は、(重量%で)約0−70%の穀粉(トウモロコシ、小麦、大麦または米)のような穀物ベース、約0−30%の動物副生成物(鶏肉または牛肉)、約0−25%のトウモロコシグルテン、約0−25%の鶏肉または牛肉組織のような新鮮な動物組織、約0−25%の大豆粉餌、約0−10%の動物脂肪、約0−20%の魚介ベース、約0−25%の新鮮な魚肉組織、約0−10%のフルクトース含量の高いトウモロコシシロップ、約0−10%の乾燥糖蜜、約0−1.5%のリン酸、および約0−1.5%クエン酸からなる。
【0049】
炭酸カルシウム、塩化カリウム、塩化ナトリウム、塩化コリン、タウリン、酸化亜鉛、硫酸第一鉄、ビタミンE、ビタミンA、ビタミンB12、ビタミンD3、リボフラビン、ナイアシン、パントテン酸カルシウム、ビオチン、チアミンモノニトレート、硫酸銅、葉酸、ピリドキシン塩酸塩、ヨウ化カルシウム、およびメナジオン重亜硫酸ナトリウム錯体(ビタミンK活性の供給源)などのビタミンおよびミネラルを添加することができる。
【0050】
乾燥ペットフードは、一般に様々な方法によって調製される。広く用いられているこれらの方法の1つは、クッカー−押出機法である。クッカー−押出機法では、乾燥成分を最初に混和して、混合物を形成する。この混合物をスチームコンディショナーに移し、十分に湿らせて押出可能にする。次に、混合物をクッカー−押出機に入れ、高温高圧で加熱調理した後、ダイを通って装置から押し出す。このダイが、押出機生成物を特定の形状に形成する。個々の生成物の小片は、押出された生成物流の終わりを定期的に切り取ることによって創られる。次いで、個々の小片またはキブルを、熱空気乾燥機で乾燥する。通常、生成物は、水分が15%未満、好ましくは水分が約5−10%となるまで乾燥される。乾燥した粒子または小片を、次にバルクコンベアーによってコーティングドラムへ運び、脂肪を噴霧する。例えば、リン酸のような他の液体を、代わりに小片に適用しまたは脂肪に加えて適用することもできる。生成するペレットまたはキブルは基底組成物を構成し、これに嗜好性増強剤のコーティングを適用することができる。
【0051】
本発明の一態様では、本発明の嗜好性増強剤をコーティングによって適用することができる。本明細書で用いられるコーティングとは、嗜好性増強剤または香味組成物が噴霧、ダスティングなどによって表面の基底組成物へ局所付着することを表す。例えば、コーティングされていない押出された基底ペットフードのキブルは、混合用のタブまたはコーティングドラムのような容器に入れることができる。豚肉脂肪または鶏肉脂肪のような脂肪を加熱した後、キブルをコーティングするやり方でペットフードに噴霧する。コーティングは連続層とする必要はないが、好ましくは均一である。脂肪の後に、生成物を混合しながら嗜好性増強剤を液体または乾燥粉末として適用することができる。液体嗜好性増強剤は典型的には噴霧されるが、乾燥嗜好性増強剤は典型的には散布される。あるいは、嗜好性増強剤を脂肪と混合して、同時に適用することもできる。コーティングのもう一つの代替法では、嗜好性増強剤をコーティングした後に脂肪を付着させる。
【0052】
本発明のもう一つの態様では、嗜好性増強剤をペットフード組成物の原料と摂食させた後に加熱調理する。この場合には、嗜好性増強剤を基底組成物のタンパク質、繊維、炭水化物および/または澱粉と組合せ、それらの材料をクッカー−押出機で加熱調理する。
【0053】
本発明の嗜好性増強剤は、水分含量が50%を上回り栄養的にバランスのとれた混合物である湿りのあるペットフードでも有用である。湿りのある食糧は、澱粉様材料(穀物をベースとした材料および穀粉)、動物副生成物、新鮮な動物組織、新鮮な魚肉組織、動物および植物脂肪、魚介類をベースとした材料、ビタミン、ミネラル、防腐剤、乳化剤、界面活性剤、テクスチャー化剤(texturizing agents)、着色料などから選択される1種類以上の成分を含んでなることができる。このような成分は当業者に周知であり、湿りのあるペットフードによって適当に選択される。
【0054】
肉汁ベースの大抵の愛玩動物用食物は、肉、肉模倣物または肉副生成物を混和した後、加熱調理を行うスチーミングトンネル(steaming tunnel)中で低圧押出によって粉砕混合物を形成することによって調製される。次に、澱粉と結合剤を加えた後、混合物を小片に切り、水、澱粉および結合剤と混合する。次に、混合物を缶に密封し、ヒドロスタット(hydrostat)式の連続または回転ステリトルト(steritort)で加熱調理する。肉汁ベースではない湿りのあるペットフードは、肉、肉模倣物または肉副生成物を浸軟し、浸軟した材料を澱粉、水および結合剤で再形成することによって調製される。次に、混合物を缶に密封し、ヒドロスタット(hydrostat)式の連続または回転ステリトルト(steritort)で加熱調理する。
【0055】
液体または乾燥嗜好性増強剤は、残りの成分(テクスチャー化剤、安定剤、着色料および栄養添加剤)に加えて肉汁またはゼリー型基質に混和工程中に適用することができる。液体または乾燥嗜好性増強剤は、チャンク(chunks)またはローフ(loaf)調製物用のミート−バイ・ミックスチャー(meat−by mixtures)に適用することもできる。この場合には、これを、摩砕工程の前または後に原料に添加することができる。ミート・バイ・ミックスチャー(meat by mixture)は、チャンク製造の場合にはスチームまたはグリルオーブンで加熱調理することができ、またはローフ製造の場合には缶に直接密封してもよい。
【0056】
上記の嗜好性増強剤は、従来技術と比較して有意な利点を提供する。本発明の効果は、一般に「二ボウル試験」または「対比試験(versus試験)」と呼ばれる試験によって測定することができる。当然のことであるが、当業者であれば、優先性を決定する目的で本明細書に記載した二ボウル試験以外の任意の他の適当な試験を自由に用いることができる。このような代替試験は、当該技術分野で周知である。
【0057】
二ボウル試験の原理:
試験は、より多量に食物が消費されれば、その食物は一層口当たりがよいという仮定に基づいている。
2種類の食物の比較に基づいた単一対(二ボウル)欲求試験を行った。試験は、試験の目的によって36匹のイヌのパネルまたは40匹のネコのパネルについて行う。
【0058】
試験の操作法:
同量の食物Aおよび食物Bを秤量し、同一ボウルに入れた。それぞれの食料に含まれる量は、一日要求量を満たすことができる。
ボウルの配置:
イヌ試験: ボウルをイヌが近づきやすい個々の給餌桶に置いた。
ネコ試験: ボウルを同時にそれぞれのネコに個々の単独畜房で提供し、それらの位置をそれぞれの食餌のときに交換して、利き手の傾向によって導かれる選択を回避した。
試験の期間:
イヌ試験: 最大15分間(2個のボウルの一方が15分以前に完全に空になったときには、2個のボウルを取り出して、試験を停止した)。
ネコ試験: 最大15分間(2個のボウルの一方が30分以前に完全に空になったときには、2個のボウルを取り出して、試験を停止した)。
【0059】
検討したパラメーター
測定したパラメーター: 消費された最初の食物および試験の終了時までに消費されたそれぞれの食物の量
計算したパラメーター: %での個々の消費比率(CR)
CR = Aの消費量(g) x 100/A+Bの消費量(g)
CR = Bの消費量(g) x 100/A+Bの消費量(g)
→ 平均消費量比(ACR) = それぞれの個別比の平均(動物の大きさおよび対応する消費量に関係なく、それぞれの動物に等しい重みが与えられる)。
動物が決定された値に比較して高いまたは低い消費量を有するときには、それらを統計処理に斟酌しない。
【0060】
統計分析
統計分析を用いて、2つの比の間に有意差があるかどうかを決定した。
ACR → 3つの誤差域、すなわち5%、1%および0.1%でのステューデントのt−検定。
χ検定を用いて、最初に食べた食物としての食物Aを有するイヌまたはネコの数と最初に食べた食物としての食物Bを有するイヌまたはネコの数との間に有意差があるかどうかを決定した。
有意差水準は、以下のように記録した:
NS 有意差なし (p > 0.05)
* 有意差あり (p < 0.05)
** 大きな有意差あり (p < 0.01)
*** 極めて大きな有意差あり (p < 0.001)
【0061】
本発明を、以下の実施例に関して更に説明するが、これらは単に例示のために提示するものであり、発明の範囲を制限しようとするものではない。
【実施例】
【0062】
以下の実施例において、上記で定義した様々な種類の脂肪または脂肪混合物を試験する。これらの脂肪を以後は脂肪1、脂肪2、脂肪3と表す。脂肪または脂肪混合物のいずれを用いても、本発明の生成物の嗜好性は大きな値であることが示される。
【0063】
実施例1:出発原料を用いるXLHM生成物
処方:
【表1】

【0064】
方法:
原料、外来性および/または内在性プロテアーゼ、防腐剤および酸化防止剤を一緒に混合し、約60−70℃の温度で少なくとも30分間加熱する(段階a)(i))。
混合物を約85℃に少なくとも10分間加熱して保持し、低温殺菌を行った後、約25−45℃に好ましくは濾過を行いながら冷却し、第一段階の反応生成物を得る(段階a)(ii))。
必要に応じて、ここで酸性化工程の後に適当な条件下にて所定期間の保管段階を加えることが可能である。
次に、pHを苛性ソーダまたは塩基性調節剤を用いることによって約7−10に調整し、乳化剤、脂肪およびリパーゼ酵素を加えて、少なくとも120分間、好ましくは約120−420分間脂質分解を行い、第二段階の反応生成物を得る(段階b)−d)を同時に行った)。
還元糖および窒素化合物を組込み、生成混合物を約90−110℃で少なくとも30分間加熱し、嗜好性増強剤を生成する(段階e)。
最後に、生成物を冷却して、リン酸、ソルビン酸カリウム、防腐剤および酸化防止剤を保存寿命を長くする目的で加え、最終的なpHを2.9とし、使用が容易な生成物である嗜好性増強剤(XLHMと呼ばれる)を得る。
【0065】
イヌの嗜好性評価:
SP1およびSP2は異なる嗜好性水準での存在する範囲のスーパー・プレミアム(super premium)液体であり、SP2はSP1より好ましい。
XLHM生成物は、本発明の嗜好性増強剤である:
XLMHバージョンA: 鶏肉原料をベースとする
XLHMバージョンB: 鶏肉原料をベースとし、脂肪1を使用
XLHMバージョンC: 鶏肉原料をベースとし、脂肪2を使用
XLHMバージョンD: 鶏肉原料をベースとし、脂肪3を使用。
【0066】
SP1対SP2のイヌの嗜好性の結果
【表2】

【0067】
食物の消費量はSP2とSP1とで有意差があり、このスーパー・プレミアム嗜好性増強剤SP2が一層高い性能を有することを示している。試験結果を、図1にプロットで示す。
【0068】
XLHM対SP1およびSP2のイヌ嗜好性の結果
総ての試験結果を、図2にプロットで示す。
【0069】
【表3】

【0070】
4種類のXLMHの総てが、生成物SP1と比較して嗜好性の増加を示している。用いた脂肪に関わらず、XLHMの嗜好性はSP2と同等以上である。
【0071】
実施例2:出発消化物を含むXLHM生成物
処方:
【表4】

【0072】
方法:
この実施例で用いられる出発生成物は、実施例1に例示した段階a)(i)および(ii)後に得られる消化物、すなわち第一の反応生成物である。
この方法は、段階b)、c)およびd)で開始し、pHを苛性ソーダまたは塩基性調節剤を用いて約7−10に調整し、乳化剤、脂肪およびリパーゼ酵素を加えて少なくとも120分間、好ましくは約120−420分間脂質分解を行い、第二段階の反応生成物を得る。
【0073】
次に、還元糖と窒素化合物を組込み、生成混合物を約90−110℃で少なくとも30分間加熱して、嗜好性増強剤を得る(段階e)。
最後に、生成物を冷却して、リン酸、ソルビン酸カリウム、防腐剤および酸化防止剤を保存寿命を長くする目的で加え、最終的なpHが2.9として、使用が容易な生成物である嗜好性増強剤(XLHMバージョン...と呼ばれる)を得る。
【0074】
イヌの嗜好性評価:
SP1およびSP2は異なる嗜好性水準での存在する範囲のスーパー・プレミアム(super premium)液体であり、SP2はSP1より好ましい。
XLHM生成物は、本発明の嗜好性増強剤である:
XLMHバージョンE: 開始時に液体消化物および脂肪1を使用
XLHMバージョンF: 開始時に液体消化物および脂肪2を使用
XLHMバージョンD: 開始時に液体消化物および脂肪3を使用。
【0075】
【表5】

【0076】
総ての試験結果を図2にプロットで示す。
【0077】
工程の開始時に出発消化物を用いると、上記と同じ性能が保持される。すなわち、一層高い嗜好性が、SP1より、および少なくともSP2より同等以上、およびSP2より良好なことが多い。
【0078】
比較例3:出発原料を有しかつ特定のタンパク質分解段階のないXLHM生成物(D’)
処方:
【表6】

【0079】
方法:
ここでは、方法をプロテアーゼとリパーゼの同時作用の段階から始める。
最初に、プロテアーゼ、水、防腐剤および酸化防止剤を含む原料を一緒に混合し、pHを苛性ソーダを用いて約7−10に調整し、乳化剤、塩、脂肪3およびリパーゼ酵素を加えて、約25−45℃の温度で少なくとも120分間、好ましくは約120−420分間加水分解段階を行い、生成物1を得る。
次に、還元糖と窒素化合物を組込み、生成混合物を約90−110℃で少なくとも30分間加熱して、生成物2を得る。
最後に、生成物2を冷却し、リン酸、ソルビン酸カリウム、防腐剤および酸化防止剤を保存寿命を長くする目的で加え、最終的なpHを2.9とし、使用が容易な生成物(生成物XLHM D’)を得る。
【0080】
イヌの嗜好性評価:
【表7】

【0081】
生成物XLHMバージョンD(実施例1参照)を用いて得られる結果と比較して、XLHMバージョンD’はSP2と比較して余りよくないが、SP1と比較して高い嗜好性を保持している。換言すれば、タンパク質分解と脂質分解を組み合わせることによって得られる結果は、タンパク質分解と脂質分解を別々に行って得られる結果ほど良好ではない。
【0082】
比較例4: 出発原料を用い、酵素段階を逆にしたXLHM生成物(B’)
処方:
【表8】

【0083】
方法:
この実施例では、方法を脂質分解の段階に続いてタンパク質分解段階で開始する。
最初に、原料、水、防腐剤および酸化防止剤を一緒に混合し、pHを苛性ソーダを用いて約7−10に調整し、乳化剤、塩、脂肪lおよびリパーゼ酵素を加えて、脂質分解段階を約25−45℃の温度で少なくとも120分間、好ましくは約120−420分間行い、生成物1を得る。
次に、プロテアーゼ酵素、還元糖および窒素化合物を組込み、約60−70℃の温度で少なくとも30分間加熱して、生成物2を得る。
生成混合物を約90−110℃で少なくとも30分間加熱して、生成物3を得る。
最後に、生成物3を冷却して、リン酸、ソルビン酸カリウム、防腐剤および酸化防止剤を保存寿命を長くする目的で加え、最終的なpHを2.9とし、使用が容易な生成物(生成物XLHM B’)を得る。
【0084】
イヌの嗜好性評価:
【表9】

【0085】
生成物XLHMバージョンB(実施例1参照)を用いて得られる結果と比較して、XLHMバージョンB’はSP1と比較して余りよくない。
結論として、タンパク質分解の前に脂質分解を行う代わりに、脂質分解の前にタンパク質分解を行うと、一層良好な結果が得られる。
【0086】
実施例5:ネコ用のローフへのXLHM生成物バージョンGの添加
生成物Bの処方:
【表10】

【0087】
生成物Cの処方:
【表11】

【0088】
定義: C’sens W9Pは、湿りのあるペットフードへの適用を目的とする市販のSPFスーパー・プレミアム嗜好性増強剤である。
【0089】
方法:
原料(ブタ肺、ブタ肝臓、ニワトリ肺および肝臓、ニワトリの胴体)を、室温で一晩融解した。次いで、それらを垂直カッター(Stephan, 独国)で1500 tr/分で5分間摩砕した。水をバケツに入れた。粉末(テクスチャー化剤、ビタミンとミネラルの混合物および小麦穀粉)およびXLHMバージョンGまたはC’sens W9Pを、水中でブレンダー(Dynamic,仏国)によって可溶化した。溶液を摩砕した肉に加え、更に5分間真空下(−1バール)にてカッターで混合した。スラリーを真空フィルター(Handtmann, 独国)に移し、400 gの鉄製缶に分配した。缶を密封し、Microflowレトルト(Barriquand, 仏国)で、127℃まで13分間加熱し、127℃で55分間温度保持し、20℃まで15分間で冷却する工程を用いて高温処理した。
【0090】
ネコの嗜好性評価:
【表12】

【0091】
これらの結果は、生成物B(XLHMバージョンGを含む)が生成物Cより高い嗜好性を有することを示している。試験結果を、図3にプロットで示す。
【0092】
従って、ペットフード組成物の嗜好性を改良するための新規で有用な方法が、本明細書に示され、記載されている。本発明を幾つかの態様に関して例示および説明の目的で例示してきたが、例示した実施例の様々な修飾、変更および同等物が可能であることは当業者には明らかであろう。本明細書の教示に直接由来し、本発明の精神および範囲から離反しない任意の変化は、本発明によって包含されるものと考えられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ペットフード用の嗜好性増強剤の調製方法であって、
下記の段階:
a)(i) 任意の外来性または添加されたリパーゼの非存在下にて、少なくとも1種類の外来性および/または内在性プロテアーゼと、タンパク質性および脂肪性材料を含んでなる基剤を、タンパク質分解反応を引き起こすのに有効な量、pHおよび温度の条件、および時間で反応させ、
(ii) 上記プロテアーゼを熱不活性化し、生成する消化生成物を濾過する
ことによって得られる第一段階の反応生成物を提供し、
b) 必要に応じて脂肪を添加し、
c) 上記第一段階の反応生成物を乳化し、
d) 上記乳化物を少なくとも1種類のリパーゼと、任意の添加されたプロテアーゼの非存在下にて、脂肪分解反応を引き起こすのに有効な量、pHおよび温度の条件、および時間で反応させ、第二段階の反応生成物を得て、
e) 少なくとも1種類の還元糖と少なくとも1種類の窒素化合物とを、第二段階の反応生成物に加え、生成した混合物の嗜好性を更に発展させるのに有効な温度および時間、この混合物を加熱して、嗜好性増強剤を生成する
ことを少なくとも含んでなる、方法。
【請求項2】
段階a)(ii)から生じる生成物を、次の段階d)の脂肪分解反応を引き起こすのに有効な温度まで冷却する段階a)(iii)を更に含んでなる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
段階e)で得られる混合物を冷却する段階を更に含んでなる、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
第一段階の反応生成物を、次の段階で使用する前に調製して適当な条件下で保管する、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法によって得られる、ペットフード用の嗜好性増強剤。
【請求項6】
液体または粉末である、請求項5に記載の嗜好性増強剤。
【請求項7】
請求項5または6に記載の少なくとも1種類の嗜好性増強剤を含んでなる、ペットフード用の食欲増加組成物。
【請求項8】
請求項5または6に記載の少なくとも1種類の嗜好性増強剤または請求項7に記載の少なくとも1種類の食欲増加組成物を、ペットフードの嗜好性を増進するのに有効な量でペットフードに配合することを少なくとも含んでなる、嗜好性を増進したペットフードの調製方法。
【請求項9】
上記配合をペットフード基質にコーティングまたは添加することによって行う、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
請求項8または9に記載の方法によって得られる、嗜好性を増進したペットフード。
【請求項11】
請求項5または6に記載の少なくとも1種類の嗜好性増強剤または請求項7に記載の少なくとも1種類の食欲増加組成物を含んでなる、口当たりのよいペットフード。
【請求項12】
上記ペットフードが乾燥、半乾燥および湿りのあるペットフードからなる群から選択される、請求項10または11に記載のペットフード。
【請求項13】
少なくとも
a) 請求項10〜12のいずれか一項に記載のペットフードを提供し、
b) 上記ペットフードをペットに給餌する
ことを含んでなる、ペットに給餌する方法。
【請求項14】
上記ペットがネコおよびイヌからなる群から選択される、請求項13に記載の方法。

【図1】
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【図2−1】
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【図2−2】
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【図3】
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【公表番号】特表2011−510621(P2011−510621A)
【公表日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−543527(P2010−543527)
【出願日】平成21年1月28日(2009.1.28)
【国際出願番号】PCT/EP2009/050959
【国際公開番号】WO2009/095417
【国際公開日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【出願人】(508277416)
【氏名又は名称原語表記】SPECIALITES PET FOOD
【Fターム(参考)】