説明

ペプチドの多量体

化学的実体の三量体化に有用な化合物、化学的実体の三量体化の方法、および三量体化された実体に関して記載される。一側面として、該実体はペプチドである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規の三量体化分子、新規の化学的実体(chemical entity)を介したペプチドの三量体化の方法、ならびに三量体化されるペプチド分子に関する。
【背景技術】
【0002】
サイトカインは、シグナル伝達を刺激し、細胞の分泌、成長および運動性に変化を引き起こし、受容体分子を介した免疫システムの調節に関与する。それらは、局所的または全身的な様式で機能し、免疫、炎症および造血といった様々な生物学的過程を調節する。それらは、線維芽細胞、マクロファージおよびリンパ球を含む様々な細胞によって生産される。サイトカインは、特定の臓器のみでなく様々な細胞から分泌されるという点で、ホルモンと異なる。多数のサイトカインが同定されている。
【0003】
サイトカインの修飾は、治療的処置として使用することができる。このことは、例えば、サイトカインに結合できない可溶性受容体分子、またはサイトカインもしくはそのリガンドをブロックする抗体によって達成することができる。そのようなサイトカインの1つ、TNFα(17kDaのモノマー)およびそのファミリーに属す17のメンバーは、三量体リガンドである。現在知られる、これらのTNFファミリーの17の三量体リガンドは:LTA、TNF、LTB、OX40L、CD40L、FasL、CD27L、CD30L、4-IBB-L、TRAIL、RANKL、TWEAK、APRIL、BAFF、LIGHT、VEGIおよびGITRLである。
【0004】
これらの三量体リガンドが三量体受容体に結合することの証拠が報告されている (Bodmer, TRENDS in Biochem Sc., Vol. 27, pp. 19-26 (2002)) 。55 kDaのTNFR1および75 kDaのTNFR2という、TNFαに対する二つの受容体が存在する。どちらの受容体も、PLAD(プレリガンドアッセンブリードメイン(pre ligand assembly domain), Chan FK et al., Science, Vol. 288 pp. 2351-2354 (2000)) を介して相互作用し、細胞表面上に存在する、非共有結合性三量体である。また、TRAIL受容体1(TRAIL receptor1)、CD40、Fas LTRbetaR、CD30、CD27、HVEMm、RANK OX40およびDR4を含むTNFRスーパーファミリーの別のメンバーも、PLADを有する。その他のメンバーには、異なるサイズの可溶性受容体(s-TNFR)が含まれる。55 kDaおよび75 kDaのTNFRペプチド、ならびにより短い断片については、EP422339およびEP556207に記載されている。
【0005】
EP526905には、C末端システインまたはビオチン基をモノマーに付加することによる、TNF受容体の可溶性形態の多量体化について記載されている。
【0006】
WO9952877およびWO2003102207には、特定の分子を用いた、受容体リガンドの多量体化について記載されている。
【0007】
Halazy (Exp Opin Ther Patents 1999;9:431-446)は、Gタンパク質結合受容体に対する二価のリガンドの設計について議論している。
【0008】
本発明は、何れかのペプチドの三量体化に適した方法および三量体化分子を提供する。
【発明の概要】
【0009】
本発明は、ペプチドの結合(conjugating)に適した方法および三量体化分子を提供する。本発明はまた、この三量体化分子によって三量体化されたペプチドの複合体(conjugate)を提供する。
【0010】
提供される三量体化分子は以下の一般式にて表される:
【化15】

【0011】
ここにおいて、Cxは、3つの独立したアームを支持する中心成分を表し;および
それぞれのWは独立に、C1-6-アルキレン、C1-6-アルケンオキシ、C1-6-アルキレン、C2-6-アルケニレン(alkenylene)、C2-6-アルキニレン(alkynylene)、ヒドロキシ-C1-6-アルキレン、ヒドロキシ-C2-6-アルケニレン(alkenylene)、C1-6-アルカノイレン(alkanoylene)、C2-6-アルケノイレン(alkenoylene)のジラジカル、または結合を意味し、
それぞれのR’は、同一かまたは異なり、1以上の基A、および任意に1以上の基Bを含み、それぞれのR’はAから始まり、
ここにおいてAは以下の構造であり、
【化16】

【0012】
ここで、rは1から50の何れかの数字であり、
nおよびmは2以上の整数であり;および
Bは、以下の構造であり、
【化17】

【0013】
ここで、X、VおよびZは独立に、-CR1R2-、C3-8-シクロアルキレン、C4-8-シクロアルケニレン(cycloalkenylene)、-アリーレン-、-ヘテロアリーレン-、-ヘテロシクリレン(heterocyclylene)-、-O-、-S-、NR1、-OCH2CH2O-、-OCH2--CH2O-から選択され、および
R1およびR2は独立に、H、C1-6-アルキル、C2-6-アルケニル、C3-8-シクロアルキル、C4-8-シクロアルケニルから選択され、またはR1およびR2は、共同してC2-6-アルキレンの架橋構造(bridge)を形成することができ;
q、kおよびlは独立に、0、1、2、3、4、5または6から選択されるが、同時に全て0となることはなく;および
Yは、ペプチドとの共有結合に適した基である。
【0014】
本発明はまた、上述した分子が以下に示すようにペプチドに結合したペプチド三量体を提供し、ここにおいてそれぞれの基Yは、ペプチドPと反応してY’P’を形成している。
【化18】

【0015】
本発明はまた、ペプチド三量体複合体を含む医薬組成物を提供する。
【0016】
本発明はまた、疾病の治療のためのこれらのペプチド三量体複合体の使用を提供する。
【0017】
本発明はまた、本出願に記載される三量体化分子を使用した、ペプチドまたはそのほかの化学的実体(chemical entities)の三量体化の方法を提供する。
【0018】
本発明はまた、これらの三量体化分子への結合に特に利用可能なペプチド配列、および宿主における発現のためのその対応する核酸を提供する。
【0019】
本発明の一側面として、本発明にて提供される三量体化分子を使用する三量体化されたペプチドは、三量体化されていない本来のペプチドと比較して、三量体化されたペプチドの親和性が改善されている。
【0020】
本発明の一側面として、本発明にて提供される三量体化分子を使用する三量体化されたペプチドは、本来のペプチドと比較して、有効性が改善されている。
【0021】
本発明の一側面として、本発明にて提供される三量体化分子を使用する三量体化されたペプチドは、本来のペプチドと比較して、機能的なin vivoでの半減期の長さが増大されている。
【0022】
本発明の一側面として、本発明にて提供される三量体化分子を使用する三量体化されたペプチドは、本来のペプチドと比較して、物理的安定性が改善されている。
【定義】
【0023】
「C1-6-アルキル」または「C1-6-アルキレン」という用語は、1から6の炭素原子を有する、飽和した、分枝鎖または直鎖炭水化物基を指す。典型的に、C1-6-アルキル基は、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、ペンチル、ヘキシル、および相当するこれらの二価ラジカルを含むが、これらに限定されない。
【0024】
「C2-6-アルケニル」または「C2-6-アルケニレン(alkenylene)」という用語は、2から6の炭素原子および少なくとも1つの二重結合を有する、分枝鎖または直鎖炭水化物基を指す。典型的に、C2-6-アルケニル基は、エテニル、1-プロペニル、2-プロペニル、イソプロペニル、1,3-ブタジエニル、1-ブテニル、2-ブテニル、1-ペンテニル、2-ペンテニル、1-ヘキセニル、2-ヘキセニル、1-エチルプロパ-2-エニル、1,1-(ジメチル)プロパ-2-エニル、1-エチルブタ-3-エニル、1,1-(ジメチル)ブタ-2-エニル、および相当するこれらの二価ラジカルを含むが、これらに限定されない。
【0025】
「C2-6-アルキニル」または「C2-6-アルキニレン(alkynylene)」という用語は、2から6の炭素原子および少なくとも1つの三重結合を有する分枝鎖または直鎖炭水化物基を指す。典型的に、C2-6-アルキニル基は、ビニル、1-プロピニル、2-プロピニル、イソプロピニル、1,3-ブタジニル、1-ブチニル、2-ブチニル、1-ペンチニル、2-ペンチニル、1-ヘキシニル、2-ヘキシニル、1-エチルプロパ-2-イニル、1,1-(ジメチル)プロパ-2-イニル、1-エチルブタ-3-イニル、1,1-(ジメチル)ブタ-2-イニル、および相当するこれらの二価ラジカルを含むが、これらに限定されない。
【0026】
「C1-6-アルキルオキシ」、「C1-6-アルキレンオキシ」、「C2-6-アルケニルオキシ」、「C2-6-アルケニレンオキシ(alkenyleneoxy)」、「C2-6-アルキニルオキシ」または「C2-6-アルキニレンオキシ(alkynyleneoxy)」という用語は;ラジカルである-O-C1-6-アルキル、-O-C1-6-アルキレン、-O-C2-6-アルケニル、-O-C2-6-アルケニレン(alkenylene)、-O-C2-6-アルキニルまたは-O-C2-6-アルキニレン(alkynylene)を指し、ここにおいて、C1-6-アルキル(アルキレン)、C2-6-アルケニルまたはC2-6-アルキニルは、上述の通り定義される。代表例は、メトキシ、エトキシ、n-プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、sec-ブトキシ、tert-ブトキシ、ペントキシ、イソペントキシ、ヘキソキシ、イソヘキソキシ等である。
【0027】
「C1-6-アルキルチオ」、「C1-6-アルキレンチオ」、「C2-6-アルケニルチオ」、「C2-6-アルケニレンチオ(alkenylenethio)」、「C2-6-アルキニルチオ」または「C2-6-アルキニレンチオ(alkynylenethio)」といった用語は;上述の通り定義されるオキシ-ラジカルの、相当するチオ類似体を指す。代表例は、メチルチオ、エチルチオ、プロピルチオ、ブチルチオ、ペンチルチオ、ヘキシルチオ、および相当するこれらの二価ラジカル、および相当する上述の通り定義されるアルケニルおよびアルキニル誘導体である。
本発明に関して、「-トリイル」という用語は、3つの結合部位を有する、異なるアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、または芳香族ラジカルを指す。
【0028】
「C3-8-シクロアルキル」または「C3-8-シクロアルキレン」という用語は、3から8の炭素原子をまたは相当する二端遊離基を有する、単環式、炭素環式基を指す。代表例は、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル等である。
【0029】
「C4-8-シクロアルケニル」または「C4-8-シクロアルケニレン(cycloalkenylene)」という用語は、4から8の炭素原子または相当する二端遊離基および少なくとも一つの二重結合を有する、単環式、炭素環式、非芳香族基であるC4-8-シクロアルケニルを指す。代表例は、シクロブテニル、シクロペンテニル、シクロヘキセニル、シクロヘプテニル、シクロオクテニル等である。
【0030】
本出願で使用される「アリール」または「アリーレン」という用語は、フェニル、ビフェニル、ナフチル、アントラセニル、フェナントレニル、フルオレニル、インデニル、ペンタレニル、アズレニル等、および相当するそれらの二端遊離基といった、炭素環式芳香環系を含むよう意図される。アリールまたはアリーレンはまた、炭素環系の部分的に水素付加された誘導体を含むよう意図される。そのような部分的に水素付加された誘導体の、非限定的な例は、1,2,3,4-テトラヒドロナフチル、1,4-ジヒドロナフチル等である。
【0031】
本出願にて使用される「ヘテロアリール」または「ヘテロアリーレン」という用語は、窒素、酸素および硫黄から選択された1以上のヘテロ原子を含む複素環式芳香環系であり、フリル、チエニル、ピロリル、オキサゾリル、チアゾリル、イミダゾリル、イソキサゾリル、イソチアゾリル、1,2,3-トリアゾリル、1,2,4-トリアゾリル、ピラニル、ピリジル、ピリダジニル、ピリミジニル、ピラジニル、1,2,3-トリアジニル、1,2,4-トリアジニル、1,3,5-トリアジニル、1,2,3-オキサジアゾリル、1,2,4-オキサジアゾリル、1,2,5-オキサジアゾリル、1,3,4-オキサジアゾリル、1,2,3-チアジアゾリル、1,2,4-チアジアゾリル、1,2,5-チアジアゾリル、1,3,4-チアジアゾリル、テトラゾリル、チアジアジニル、インドリル、イソインドリル、ベンゾフリル、ベンゾチエニル、ベンゾチオフェニル(チアナフテニル)、インダゾリル、ベンジミダゾリル、ベンズチアゾリル、ベンズイソチアゾリル、ベンゾキサゾリル、ベンズイソキサゾリル、プリニル、キナゾリニル、キノリジニル、キノリニル、イソキノリニル、キノキサリニル、ナフチリジニル、プテリジニル、カルバゾリル、アゼピニル、ジアゼピニル、アクリジニル等、および相当するそれらの二端遊離基といったものを含むよう意図される。ヘテロアリールまたはヘテロアリーレンはまた、上に列挙した複素環系の、部分的に水素付加された誘導体を含むよう意図される。そのような、部分的に水素付加された誘導体の非限定的な例は、2,3-ジヒドロベンゾフラニル、ピロリニル、ピラゾリニル、インドリニル、オキサゾリジニル、オキサゾリニル、オキサゼピニル等である。
【0032】
本出願にて使用される「ヘテロシクリル」または「ヘテロシクレン(hetereocycylene)」という用語は、それぞれ上述の通り定義されるヘテロアリールまたはヘテロアリーレンの完全に水素付加された誘導体を表す。
【0033】
本出願にて使用されるヘテロアリール-C1-6-アルキルという用語は、上述の通り定義されるヘテロアリールおよび上述の通り定義されるC1-6-アルキルを表す。
【0034】
本出願にて使用される「アリール-C1-6-アルキル」および「アリール-C2-6-アルケニル」という用語は、上述の通り定義されるアリール、ならびにそれぞれ上述の通り定義されるC1-6-アルキルおよびC2-6-アルケニルを表す。
【0035】
本出願にて使用される「アシル」という用語は、C1-6-アルキルが上述の通りに定義される、-(C=O)-C1-6-アルキルを表す。
【0036】
本出願にて使用される「C2-6-アルカノイル(alkanoyl)」または「C2-6-アルカノイレン(alkanoylene)」という用語は、それぞれ、-(C=O)-C1-5-アルキルまたは-(C=O)-C1-5-アルキレンを意味する。
【0037】
本出願にて使用される「C3-6-アルケノイル(alkenoyl)」または「C3-6-アルケノイレン(alkenoylene)」という用語は、それぞれ、-(C=O)-C2-5-アルケニルまたは-(C=O)-C2-5-アルケニレン(alkenylene)を意味する。
【0038】
「ペプチド」、「ポリペプチド」、「オリゴペプチド」またはタンパク質という用語は、置き換えて使用してよく、および、長さまたは重さを基準に区別する意図を含まずに、ただアミノ酸が互いに共有結合している状態を表すものとして、本発明に関連して使用してよい。
【0039】
本出願にて使用される「任意に置換される」という用語は、問題の基が、明記された1以上の置換基で置換されていない状態、または置換されている状態のどちらか一方であることを意味する。問題の基が、1以上の置換基で置換されている場合、該置換基は、同一かまたは異なってよい。
【0040】
「治療」および「治療する」という用語は、文脈に矛盾しない限り、疾病または障害の1以上の病徴もしくは臨床的に関連のある徴候を、予防、軽減、管理、治癒または低減することを指す。例えば、疾病または障害の1以上の病徴もしくは臨床的に関連のある徴候が確認できない患者の「治療」とは、予防療法であり、一方、疾病または障害の1以上の病徴もしくは臨床的に関連のある徴候が確認された患者の「治療」は、一般に予防療法を構成しない。それでもなお、本発明の様々な治療的または予防的方法は、多くの面で異なり(例えば、投与量、投与計画等)、それらはそれぞれ本発明の特有の側面とみなされてよいと理解されるべきである。
【0041】
上述の通り定義される用語の幾つかは、構造式にて2回以上出てくるかもしれず、そのように出てきた場合は、それぞれの用語が、それ以外の用語とは独立に定義されるべきである。
【0042】
さらに、「独立に(independently are)」および「から独立に選択される(independently selected from)」という用語を使用する場合は、問題の基は同一かまたは異なってよいと理解されるべきである。
【発明の詳細な説明】
【0043】
本発明は、ペプチドの三量体化の方法、何れかのペプチドのための三量体化分子として使用できる化合物、および三量体化されたペプチドを提供する。
【0044】
中心成分Cxは、シクロヘキサン、ベンゼン、窒素および[1,3,5] トリアジナン-2,4,6-トリオンのトリラジカルを含むが、これらに限定されない何れかの適した分子であってよい。本発明の一側面において、Cxは窒素のトリラジカルである。別の側面において、Cxはシクロヘキサンのトリラジカルである。別の側面において、Cxはベンゼンのトリラジカルである。別の側面において、Cxは[1,3,5] トリアジナン-2,4,6-トリオンのトリラジカルである。
【0045】
本発明の一側面において、上述の一般式に示されるような三量体化分子は、以下の何れかの式を有する化合物である:
【化19】

【0046】
ここにおいて、R’、WおよびYは上述の定義の通りである。本発明の一側面として。Wは結合またはC1-6-アルキレンである。
【0047】
本発明の一側面において、三量体化分子は、より詳細には、下記の式の何れかを表す:
【化20】

【0048】
ここにおいて、R’およびYは上述の定義の通りである。
【0049】
本発明の一側面において、Aは以下の式によって表され、
【化21】

【0050】
ここにおいて、rは0から25であり;nおよびmは上述の定義の通りである。本発明の一側面として、rは0から10である。本発明の一側面として、rは0から5である。本発明の一側面として、rは0、1、2または3である。
【0051】
それぞれのR’は同一かまたは異なっている。一側面として、全てのR’は同じ分子である。一側面として、2つのR’が同じ分子である。一側面として、全てのR’が異なる分子である。
【0052】
本発明の一側面として、nおよびmは15未満である。本発明の一側面として、nおよびmは10未満である。本発明の一側面として、nおよびmは6未満である。本発明の一側面として、nおよびmは2、3、4または5から独立に選択される。本発明の一側面として、nおよびmは2または3から独立に選択される。
【0053】
本発明の一側面として、Aは以下の何れかの構造である。
【化22】

【0054】
本発明の一側面として、要素Bは上述の式にて定義される通りであり、X、VおよびZは、独立に-CR1R2-、-O-、-S-、NR1、-OCH2CH2O-、-OCH2-または-CH2O-を表す。
【0055】
本発明の一側面において、X、VおよびZは、R1およびR2 が上述の通り定義される-CR1R2-を表す。
【0056】
本発明の一側面において、X、VおよびZは、独立に-OCH2CH2O-、-OCH2-または-CH2O-を表す。
【0057】
本発明の一側面において、X、VおよびZは、独立に-(CH2)1-4-、-CH2(OCH2CH2O)1-6CH2-または-CH2OCH2-を表す。
【0058】
本発明の一側面において、X、VおよびZは、独立に-(CH2)3-または-CH2OCH2-を表す。
【0059】
本発明の一側面において、Bは以下の構造の何れかである:
【化23】

【0060】
本発明の一側面において、X、VおよびZは、独立にアリールまたはヘテロアリールを表す。
【0061】
本発明の一側面において、VはC3-8-シクロアルキルまたはC3-8-シクロアルケニルである。
【0062】
本発明の一側面において、Vはシクロヘキシル、シクロヘキセニル、シクロペンチルである。
【0063】
本発明の一側面において、Vはフェニルである。
【0064】
本発明の一側面において、Vはモルホリニル、ピペラジニル、ジオキサニル(dioxanyl)またはチエニルである。
【0065】
ペプチドに結合した場合に、上述の式におけるYおよびY’をもたらす単量体の構成要素として定義することができるY’’基は、2つの反応性官能基を有する。これは、三量体化分子を構成するときに、R’の特性に依存して、基Aまたは基Bのどちらかと反応する。従って、R’が、R’の最後の構成成分としてBを含むよう選択された場合は、Y’’は、酸性誘導体と結合することができる反応性官能基を含むべきである。R’が、R’の最後の構成成分としてAを含むよう選択された場合は、Y’’は、アミンとの反応に適した反応性官能基を含むべきである。Y’’およびYのその他の官能基は、ペプチドとの反応が可能であるべきである。これは、例えばその幾つかが官能基を含むような天然のペプチドの側鎖、またはこれらのアミノ酸と、配列の内部またはNもしくはC末端のどちらかで結合する化合物によって可能である。
【0066】
アミン、チオールまたはヒドロキシル基といった結合に適した基が、ペプチドにもとから存在しない場合、またはこれらの修飾が、ペプチドの生物学的機能を阻害する場合には、結合に適した基が、通常の遺伝子工学の技術によって本来のペプチドに創出される。該技術とは、例えば、ポリマーとの修飾後の結合を許すアミノ酸に、選択したアミノ酸を交換するDNAレベルでの変異(例えば、コードするコドンの交換)といった技術である。変異を入れるアミノ酸の選択は、個々のペプチドに依存する。一般に、「許容される変異」を選択することが望ましく、例えば、ペプチドとその本来のリガンドの結合に影響を与えないようなアミノ酸の変異、または酵素的作用、基質結合等のペプチドの生物学的機能を阻害しないようなアミノ酸の変異を選択することが望ましい。そのような翻訳前または翻訳後修飾されたペプチドは、本来のペプチドの類似体の例である。
【0067】
非天然のアミノ酸を受け入れるよう選択された、新たな遺伝的変異の入ったtRNA合成酵素との組み合わせによる、ナンセンスのアンバー(停止)コドンを用いたDNA配列の変異もまた、in vivoの発酵条件にて非天然のアミノ酸を含んだペプチドを作製する手段の1つである(Wang, L. et al. PNAS U.S.A., 2003, 100, 56-61)。加えて、特有の官能性結合基を有したアミノ酸の取り込み、およびその後のグリコミメティクス(glycomimetics)によるそれらの修飾が実証されている(Liu, H.; Wang, L.; Brock, A.; Wong, C.-H.; Schultz, P. G.; J. Am. Chem. Soc.; (Communication); 2003; 125; 1702-1703) 。新たな非天然の化学選択的結合部分は、分枝鎖ポリマーによる修飾に利用可能となるため、これらの遺伝子産物は本発明に適したペプチドである。
【0068】
本発明の一側面において、ペプチドは固相に結合され、標準的な固相の化学反応を用いて、特定のアミノ酸が、結合基として作用するのに適した側鎖を有するアミノ酸に置換される。そのようなアミノ酸置換の例は、非限定的な例示として:セリンのシステインへの置換、フェニルアラニンのチロシンへの置換、またはアルギニンのリジンへの置換である。あるいは、ポリマーの修飾後の結合を許す、適したアミノ酸、または同様の目的を果たす有機小分子のどちらかを、ペプチドのC末端またはN末端のどちらかに酵素によって直接結合することで、結合基が導入される。本発明のこの側面を支持する酵素には、非限定的な例示として:反対に、カルボキシペプチダーゼ、およびプロテアーゼを含む。
【0069】
「反応性官能基」という用語は、非限定的な例示として、何れかの遊離アミノ酸、カルボキシル、チオール、ハロゲン化アルキル、ハロゲン化アシル、クロロホルメイト(chloroformiate)、アリールオキシ炭酸塩(aryloxycarbonate)、ヒドロキシまたはアルデヒド基、p-ニトロフェニルといった炭酸塩、またはスクシンイミジル(succinimidyl);カルボニルイミダゾール、カルボニルクロライド;in situで活性化されるカルボン酸;ハロゲン化カルボニル、N-ヒドロキシスクシンイミドエステル、N-ヒドロキシベンゾトリアゾールエステルといった活性化エステル、1,2,3-ベンゾトリアジン-4(3H)-オン、ホスホラミダイト(phosphoramidites)およびH-ホスホン酸塩を含むものといったエステル、in situで活性化するホスホトリエステル(phosphortriesters)またはホスホジエステル(phosphordiesters)、イソシアネートまたはイソチオシアネート、加えて、NH2、OH、N3、NHR’、OR’、O-NH2、アルキン、または以下の何れかの基である:
ヒドラジン誘導体 -NH-NH2
ヒドラジンカルボキシレート誘導体 -O-C(O)-NH-NH2
セミカルバジド誘導体 -NH-C(O)-NH-NH2
チオセミカルバジド誘導体 -NH-C(S)-NH-NH2
炭酸ジヒドラジド(carbonic acid dihydrazide)誘導体 -NHC(O)-NH-NH-C(O)-NH-NH2
カルバジド誘導体 -NH-NH-C(O)-NH-NH2
チオカルバジド誘導体 -NH-NH-C(S)-NH-NH2
アリールヒドラジン誘導体 -NH-C(O)-C6H4-NH-NH2
ヒドラジド誘導体 -C(O)-NH-NH2、および
オキシルアミン(oxylamine)誘導体 C(O)-O-NH2、-NH-C(O)-O-NH2および-NH-C(S)-O-NH2
【0070】
存在するその他の官能基は、保護基によって適切に保護してよい。適した保護基は、当業者に既知であり、その例は、例えばGreen & Wutsの「有機合成における保護基(Protection groups in organic synthesis)」(第3版、Wiley-interscience)にて見ることができる。
【0071】
それゆえ本発明の一側面において、Yは以下の構造によって表される:
【化24】

【0072】
ここにおいて、nは0以上の整数であり、R3 およびR4は、独立に、水素、またはC1-6-アルキルを表す。
【0073】
本発明の一側面において、Yは以下の構造式よって表される:
【化25】

【0074】
ここにおいて、n、R3 およびR4は上述の通り定義される。
【0075】
本発明の一側面において、Yは以下の構造式よって表される:
【化26】

【0076】
ここにおいて、R3、R4およびnは上述の通り定義される。
【0077】
本発明の一側面において、R’は以下の組み合わせの中から選択される:A-B、A-B-A-B、A-B-A-B-A-B、A、A-B-AまたはA-B-A-B-A。
【0078】
本発明の一側面において、全てのR’は同一である。
【0079】
本発明の一側面において、2つのR’が同一である。
【0080】
本発明の一側面において、R’は異なる。
【0081】
本発明によると、三量体化分子は、記載される方法に従って構築される。その後、ペプチドが結合される。
【0082】
マレイミド部分を有する三量体化分子は、ペプチドの遊離システインとのマイケル反応によって、ペプチドに結合することができる。
【0083】
アミノオキシ(aminooxy)部分を有する三量体化分子は、ペプチドのケト基またはアルデヒド基とのオキシムの形成によって、ペプチドに結合することができる。
【0084】
本発明は、何れかのペプチドに対する三量体化分子として使用できる化合物を提供する。幾つかのペプチドは、その自然な環境において三量体として作用することができる。これには、例えば、TNFαが含まれる。TNFαは、人口の約1%が発症する炎症性疾患であるリウマチ関節炎の病態生理学に関連している。可溶性受容体または抗体によるTNFαの阻害は、現在疾病の治療に使用されている。そのうえ、TNFαは、その他の多数の炎症性疾患に必要とされる。
【0085】
本発明の一側面において、三量体化分子に結合したペプチドは、多数のTNFRスーパーファミリーである。別の側面において、ペプチドは、多数のTNFRスーパーファミリーの断片またはその機能的類似体である。典型的な機能的類似体には、三量体化またはその他の翻訳後修飾を促進する、N末端および/またはC末端の変異、誘導体化または置換を有するものが含まれる。
【0086】
本発明の一側面において、ペプチドは、TNF受容体分子の断片の機能的類似体であり、以下の配列の何れか1つから成るまたは何れか1つを含むペプチドである:
DSVCPQGKYIHPQNNSICCTKCHKGTYLYNDCPGPGQDTDCRECESGSFTASENHLRHCLSCSKCRKEMGQVEISSCTVDRDTVCGCRKNQYRHYWSENLFQCFNCSLCLNGTVHLSCQEKQNTVCTSHAA (SEQ ID NO:1)
および
DSVCPQGKYIHPQNNSICCTKCHKGTYLYNDCPGPGQDTDCRECESGSFTASENHLRHCLSCSKCRKEMGQVEISSCTVDRDTVCGCRKNQYRHYWSENLFQCFNCSLCLNGTVHLSCQEKQNTVCTSHAC (SEQ ID NO:2)。
【0087】
本発明の一側面において、ペプチドは、TNF受容体分子の断片の機能的類似体であり、以下の配列の何れか1つから成るまたは何れか1つを含むペプチドである:
SVCPQGKYIHPQNNSICCTKCHKGTYLYNDCPGPGQDTDCRECESGSFTASENHLRHCLSCSKCRKEMGQVEISSCTVDRDTVCGCRKNQYRHYWSENLFQCFNCSLCLNGTVHLSCQEKQNTVCTLLA (SEQ ID NO:3)、
SVCPQGKYIHPQNNSICCTKCHKGTYLYNDCPGPGQDTDCRECESGSFTASENHLRHCLSCSKCRKEMGQVEISSCTVDRDTVCGCRKNQYRHYWSENLFQCFNCSLCLNGTVHLSCQEKQNTVCTSHALLA (SEQ ID NO:4)、
SVCPQGKYIHPQNNSICCTKCHKGTYLYNDCPGPGQDTDCRECESGSFTASENHLRHCLSCSKCRKEMGQVEISSCTVDRDTVCGCRKNQYRHYWSENLFQCFNCSLCLNGTVHLSCQEKQNTVC (SEQ ID NO:5)、
DSVCPQGKYIHPQNNSICCTKCHKGTYLYNDCPGPGQDTDCRECESGSFTASENHLRHCLSCSKCRKEMGQVEISSCTVDRDTVCGCRKNQYRHYWSENLFQCFNCSLCLNGTVHLSCQEKQNTVCTLLA (SEQ ID NO:6)、
および
DSVCPQGKYIHPQNNSICCTKCHKGTYLYNDCPGPGQDTDCRECESGSFTASENHLRHCLSCSKCRKEMGQVEISSCTVDRDTVCGCRKNQYRHYWSENLFQCFNCSLCLNGTVHLSCQEKQNTVCTSHALLA (SEQ ID NO:7)。
【0088】
本発明の一側面において、1以上のSEQ ID NO:1から7の配列は、さらにN末端に開始コドンを意味するメチオニン(M)残基を含む。1つの特別な側面として、in vivo で発現されたとき、この残基は、切り離される。
【0089】
例えばリウマチ関節炎患者に対して現在使用されるTNFαの阻害剤は、エタネルセプト(etanercept)(TNFR 75-IgG1ヒンジおよびFcドメイン融合タンパク質)、インフリキシマブ(infliximab)(マウス由来の可変領域およびヒトIgG1由来のそれ以外の全てのドメインから成る、キメラ抗TNFα抗体)およびアダリムマブ(adalimumab)(完全なヒト抗TNFα IgG1抗体)を含む。これらの阻害剤は二量体分子で、おそらくリガンドとの結合部位の一つは、阻害していない状態となっている。
【0090】
本発明の実施において、三量体の標的への親和性は、二量体または単量体の親和性よりも高くできる。三量体化はまた、より高い有効性をもたらし得る。分子の機能的なin vivoでの半減期の長さは、例えば糸球体のろ過によって排出されるように、そのサイズの変化に依存して変化してよく、また体内分布の変化に依存して変化してよい。本発明の一実施態様において、in vivoでの半減期は増大される。また、安定性または物理的半減期は、その三量体の状態に依存して変化してよい。例として、三量体化されたTNFRは、腎臓を介して分泌されず、単量体TNFRと比較して親和性が増大した分子である。
【0091】
「機能的なin vivoでの半減期」という用語は、通常の意味で使用され、すなわち、ポリペプチドまたは複合体の50%の生物学的活性が、身体/標的臓器にてなお残っている時間、またはポリペプチドまたは複合体の活性が、その最初の値の50%となる時間である。機能的なin vivoでの半減期の長さを決定する代わりとして、「血清半減期」が決定される。血清半減期とは、すなわち、ポリペプチドまたは複合体分子の50%が排除されるまでの、血漿中または血流を循環する時間である。血清半減期の決定は、しばしば機能性を有した半減期を決定するよりも単純であり、血清半減期の大きさは、通常、機能的なin vivoでの半減期の大きさの良い指標である。血清半減期の別の用語は、血漿半減期、循環(circulating)半減期、循環性(circulatory)半減期、血清排除、血漿排除、および排除半減期を含む。保持されるべき機能性は、凝血促進性、タンパク分解性、補因子結合性、受容体結合活性、または特定のペプチドに関連したその他の生物学的活性から、標準的に選択される。
【0092】
機能的なin vivoでの半減期または血清半減期に関して使用される「増大」という用語は、同等の条件下で決定される非結合型のグリコペプチドといった参照分子と比較した場合に、ポリペプチドまたは複合体における該当する半減期が、統計学的に有意に増大する状態を指すよう使用される。例えば、該当する半減期が、少なくとも約25%、少なくとも約50%、例えば少なくとも約100%、150%、200%、250%、または500%増加してよい。
【0093】
本発明の一側面において、生理学的環境下で三量体として機能するその他のポリペプチドは、記載した方法で三量体化することができ、非限定的な例は、TNFRスーパーファミリーのメンバーである、TRAIL受容体1(TRAIL receptor1)、CD40、Fas LTRbetaR、CD30、CD27、HVEMm、RANK OX40およびDR4である。そのうえ、通常、生物学的な三量体の状況で見出されることのない、その他のポリペプチドもまた、上述のパラメーターの幾つかを変更して三量体化することができる。例えば、本出願において他に記される通り、三量体化は、ペプチドの機能的なin vivoでの半減期を延長することができ、および/または受容体付近のリガンド濃度を増大させることができる。ポリペプチドの非限定的な例は、アルブミン、抗体のFab断片、酵素、ペプチドホルモン、成長因子、抗体、メラノコルチン受容体クラス(melanocortin receptor class)(MCR1-5)に結合するペプチド、サイトカイン、受容体、リンホカインおよびワクチン抗体である。特にTNF、インスリン、グルカゴン様ペプチド1(GLP-1)、グルカゴン様ペプチド2(GLP-2)、ヒト成長因子(hGH)といった成長ホルモン、サイトカイン、トレフォイル因子ペプチド(trefoil factor peptides)(TFF)、ペプチドメラノコルチン受容体修飾因子(peptide melanocortin receptor modifiers)および第VII因子といった、治療用ペプチドから成る。
【0094】
何れのペプチドも、本発明による分子に、記載した方法にて結合することができる。そのようなペプチドとは、例えば、酵素、ペプチドホルモン、成長因子、抗体、サイトカイン、受容体、リンホカインおよびワクチン抗体であり、特にTNF、インスリン、グルカゴン様ペプチド1(GLP-1)、グルカゴン様ペプチド2(GLP-2)、成長ホルモン、サイトカイン、トレフォイル因子ペプチド(trefoil factor peptides)(TFF)、ペプチドメラノコルチン受容体修飾因子(peptide melanocortin receptor modifiers)および第VII因子化合物といった、治療用ペプチドから成る。
【0095】
特定の適用可能なインスリンは、ヒトインスリンおよびその機能的類似体である。本出願において、「ヒトインスリン」という用語は、自然に生成されたインスリンまたは組み換え技術にて生成されたインスリンを指す。組み換えヒトインスリンは、何れかの適した宿主細胞にて作製してよく、例えば宿主細胞は細菌、真菌(酵母を含む)、昆虫、動物または植物細胞であってよい。多くのインスリン化合物が、文献にて開示されており、それらもまた、本発明の方法に特に使用可能である。「インスリン化合物」(および類似した表現)は、1以上のアミノ酸が欠失したおよび/またはコードされないアミノ酸を含むその他のアミノ酸にて置換されたヒトインスリン、および/または付加的なアミノ酸を含むすなわち51を超えるアミノ酸から成るヒトインスリン、および/または少なくとも1つの有機置換基が1以上のアミノ酸に結合したヒトインスリンを意味する。
【0096】
本発明の異なる実施態様において、ペプチドは、アプロチニン、組織因子経路阻害剤(tissue factor pathway inhibitor)またはその他のプロテアーゼ阻害剤、インスリンまたはインスリン前駆体、ヒトまたはウシ成長ホルモン、インターロイキン、グルカゴン、グルカゴン(1-37)(オキシントモジュリン(oxyntomodulin))、GLP-1、GLP-2、IGF-I、IGF-II、組織プラスミノゲンアクチベーター、トランスフォーミング成長因子αまたはβ、血小板由来成長因子、GRF(成長ホルモン放出因子)、免疫グロブリン、EPO、TPA、プロテインC、第VII因子、第VIII因子、第IV因子および第XIII因子といった血液凝固因子、エキセンディン(exendin)-3、エキセンディン-4、α-MSH、および酵素またはそれらの機能的類似体である。
【0097】
本出願において、「機能的類似体」という用語は、本来のペプチドと同等の機能を有するペプチドを指す。ペプチドは、構造的に本来のペプチドと同一であってよく、および本来のペプチドのC末端またはN末端のどちらかまたは両方への1以上のアミノ酸の付加、本来のアミノ酸配列の1つのサイトまたは多数の異なるサイトにおける1以上のアミノ酸の置換、本来のペプチドの一端もしくは両端またはアミノ酸配列内の1以上のサイトにおける1以上のアミノ酸の欠失、または本来のアミノ酸配列中の1以上のサイトへの1以上のアミノ酸の挿入によって、本来のアミノ酸から誘導されてよい。そのうえ、ペプチドは、例えばGLP-1およびその類似体のアシル化を開示するWO 98/08871、およびGLP-2およびその類似体のアシル化を開示するWO 98/08872に記載されるように、1以上の位置でアシル化されてよい。アシル化GLP-1誘導体の例は、GLP-1(7-37)であるLys26(Nε-テトラデカノイル)-GLP-1(7-37)であり、ここにおいて26位のリジン残基のε-アミノ基がテトラデカノイル化されている。
【0098】
インターロイキン、インターフェロンおよびコロニー刺激因子といった幾つかのペプチドもまた、通常、組み換え技術を使用した結果として、非グリコシル化の形態にて存在する。非グリコシル化の形態もまた、本発明による生物学的活性ペプチドの一つである。本発明による生物学的活性ペプチドはまた、in vivoでの生物学的活性を示す、何れかのペプチドの一部分を含む。これは、アミノ酸配列、抗体断片、一本鎖結合抗原(single chain binding antigens)(例えば、米国特許第4,946,778号参照)、ならびに抗体または断片が融合したような結合分子、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、および触媒抗体(catalytic antibodies)を含む。
【0099】
その他のペプチドまたは本発明による方法に適用可能なペプチドの非限定的な例は、ACTH、コルチコトロピン放出因子、アンジオテンシン、カルシトニン、インスリンならびにその断片および類似体、グルカゴン、IGF-1、IGF-2、腸内ガストリン(enterogastrin)、ガストリン、テトラガストリン(tetragastrin)、ペンタガストリン、ウロガストリン(urogastrin)、上皮成長因子、セクレチン、神経成長因子、甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン、ソマトスタチン、成長ホルモン放出ホルモン、ソマトメジン、副甲状腺ホルモン、トロンボポエチン、エリスロポエチン、視床下部放出因子、プロラクチン、甲状腺刺激ホルモン、エンドルフィン、エンケファリン、バソプレッシン、オキシトシン、オピオイドおよびその類似体、アスパラギナーゼ、アルギナーゼ、アルギニンデアミナーゼ、アデノシンデアミナーゼおよびリボヌクレアーゼ、およびこれらのペプチドのそれぞれの機能的類似体を含む。
【0100】
本発明の一側面として、TNFR1の細胞外ドメインの全長は、以下の配列を有する:
DSVCPQGKYIHPQNNSICCTKCHKGTYLYNDCPGPGQDTDCRECESGSFTASENHLRHCLSCSKCRKEMGQVEISSCTVDRDTVCGCRKNQYRHYWSENLFQCFNCSLCLNGTVHLSCQEKQNTVCTCHAGFFLRENECVSCSNCKKSLECTKLCLPQIENVKGTEDSGTT (SEQ ID NO:8)
また、EP422339に記載されるような、上述の天然の循環型(circulating form)の形態の以下の配列を有する:
DSVCPQGKYIHPQNNSICCTKCHKGTYLYNDCPGPGQDTDCRECESGSFTASENHLRHCLSCSKCRKEMGQVEISSCTVDRDTVCGCRKNQYRHYWSENLFQCFNCSLCLNGTVHLSCQEKQNTVCTCHAGFFLRENECVSCSNCKKSLECTKLCLPQIEN (SEQ ID NO:9)。
【0101】
TNFR2(例えばEP422339に開示される)はまた、ペプチドとの結合にマレイミド(malimide)を有した三量体化分子における三量体化に使用することができる。
【0102】
あるいは、EP556207に記載されるように、TNFに結合する最小の断片であり、以下に示されるようなTNFR1の55 kDaの配列の画分が使用できる:
DSVCPQGKYIHPQNNSICCTKCHKGTYLYNDCPGPGQDTDCRECESGSFTASENHLRHCLSCSKCRKEMGQVEISSCTVDRDTVCGCRKNQYRHYWSENLFQCFNCSLCLNGTVHLSCQEKQNTVCTC (SEQ ID NO:10)。
【0103】
任意に、上述の配列には、N末端に以下のシグナル配列を含めることもできる:
MGLSTVPDLLLPLVLLELLVGIYPSGVIGLVPHLGDREKR (SEQ ID NO:11)。
【0104】
三量体化に適したペプチドはまた、SEQ ID NO:1から11に示される機能的類似体を含んだ、本出願で記載される何れかのペプチドの機能的類似体を含む。
【0105】
マレイミド部分を有する三量体化分子は、ペプチドの遊離システインとのマイケル反応によって、ペプチドに結合される。従って、適した配列とは、配列中においてシステインが付加されたまたは他のアミノ酸がシステインに置換された機能的類似体とすることができる。そのような類似体は、本発明の特定の側面である。結合に影響しないものの、以下に示すような三量体化分子との結合を行うのに適した位置にて、アミノ酸が優先的に付加またはその位置で置換される。
【0106】
例えば、本発明の一側面において、ペプチドはSEQ ID NO:2の配列を有する。本発明はまた、この配列をコードする核酸を提供する。該核酸には以下の配列が含まれる:
gatagtgtgtgtccccaaggaaaatatatccaccctcaaaataattcgatttgctgtaccaagtgccacaaaggaacctacttgtacaatgactgtccaggcccggggcaggatacggactgcagggagtgtgagagcggctccttcaccgcttcagaaaaccacctcagacactgcctcagctgctccaaatgccgaaaggaaatgggtcaggtggagatctcttcttgcacagtggaccgggacaccgtgtgtggctgcaggaagaaccagtaccggcattattggagtgaaaaccttttccagtgcttcaattgcagcctctgcctcaatgggaccgtgcacctctcctgccaggagaaacagaacaccgtgtgcaccaccagttgt (SEQ ID NO:12)。
【0107】
変異の入ったまたは融合した類似体を含む、上述の配列の何れかの機能的類似体もまた、三量体化に使用できる。
【0108】
一側面において、ペプチドは、CPY反応の基質として機能し、三量体化に適した中間体を形成するTNFR断片である。このことは、EP243929およびWO2005035553に記載されている。そのような基質は、C末端にアラニンを有することができる。SEQ ID NO:1の配列を有するペプチドは、そのような配列の一例である。本発明はまた、この配列をコードする核酸を提供する。該核酸には以下の配列が含まれる:
gatagtgtgtgtccccaaggaaaatatatccaccctcaaaataattcgatttgctgtaccaagtgccacaaaggaacctacttgtacaatgactgtccaggcccggggcaggatacggactgcagggagtgtgagagcggctccttcaccgcttcagaaaaccacctcagacactgcctcagctgctccaaatgccgaaaggaaatgggtcaggtggagatctcttcttgcacagtggaccgggacaccgtgtgtggctgcaggaagaaccagtaccggcattattggagtgaaaaccttttccagtgcttcaattgcagcctctgcctcaatgggaccgtgcacctctcctgccaggagaaacagaacaccgtgtgcaccaccagtcac (SEQ ID NO:13)。
【0109】
変異の入ったまたは融合した類似体を含む、上述の配列の何れかの機能的類似体もまた、三量体化に使用できる。
【0110】
TNFRの単量体の活性は、50%有効量が10-200 nMであるとして表すことができる。本発明の一側面において、三量体化された分子は、同等の活性レベルを有する。本発明の一側面において、三量体化された分子は、活性が改善される。本発明の一側面において、三量体化された分子は、50%有効量が5 nM未満である。本発明の一側面において、三量体化された分子は、50%有効量が1 nM未満である。本発明の一側面において、三量体化された分子は、50%有効量が0.1 nM未満である。上述の側面において、三量体化された分子は、SEQ ID NO:1から7の何れか1つの配列である。
【0111】
TNFαは、多くの炎症性疾患に必要とされ、例えば、乾癬、敗血症、全身性エリテマトーデス、橋本甲状腺炎、多発性硬化症、重症筋無力症、ギラン-バレー症候群、自己免疫性ブドウ膜炎、クローン病、潰瘍性結腸炎、原発性胆汁性肝硬変、自己免疫性肝炎、自己免疫性溶血性貧血、悪性貧血、自己免疫性血小板減少症、バセドウ病、自己免疫性卵巣炎、自己免疫性睾丸炎、側頭動脈炎、抗リン脂質症候群、ヴェーゲナー肉芽腫症、ベーチェット病、リウマチ様関節炎、強皮症、多発性筋炎、皮膚筋炎、強直性脊椎炎、シェーグレン症候群、疱疹状皮膚炎、尋常性天疱瘡、白斑、乾癬性関節炎、骨関節炎、ステロイド抵抗性喘息、慢性閉塞性肺疾患、アテローム性動脈硬化症、および移植性拒絶反応(transplant rejection)に必要とされる。従って、TNFαを含んだ三量体化された分子は、これらの疾病の治療に有用となりうる。
【0112】
[核酸構築物]
本出願にて使用される「核酸構築物(nucleic acid construct)」は、cDNA、ゲノムDNA、合成DNAまたはRNA由来の何れかの核酸分子を示すよう意図される。「構築物(construct)」という用語は、1本鎖または2本鎖であってよい核酸部分(nucleic acid segment)、および目的のポリペプチドをコードする、完全にまたは部分的に天然のヌクレオチド配列に基づいてよい核酸部分を示すよう意図される。構築物は、任意にその他の核酸部分を含んでよい。
【0113】
本発明によるポリペプチドをコードする、本発明による核酸構築物は、適切に、ゲノムまたはcDNA由来であってよい。例えば、標準的技術によって、ゲノムまたはcDNAライブラリーを作製し、合成オリゴヌクレオチドプローブを用いたハイブリダイゼーションにより、ポリペプチドの全長または一部をコードするDNA配列をスクリーニングすることで得てよい。
【0114】
ポリペプチドをコードする本発明による核酸構築物はまた、例えばBeaucageおよびCaruthersによるホスホアミダイト(phosphoamidite)法(Tetrahedron Letters 22 (1981), 1859 - 1869)またはMatthesらによる方法(EMBO Journal 3 (1984), 801 - 805)等の確立された標準的方法によって合成的に作製されてよい。ホスホアミダイト法に従って、オリゴヌクレオチドは、例えば自動DNA合成機にて合成され、精製され、アニールされ、連結(ligate)されおよび適当なベクターにクローン化される。
【0115】
そのうえ、核酸構築物は、合成DNAとゲノムDNAとの混合、合成DNAとcDNAとの混合またはゲノムDNAとcDNAとの混合したものを由来としてよく、これらは、標準的技術によって、(適切な)合成DNA、ゲノムDNAまたはcDNA由来の断片、核酸構築物全体の様々な部分に相当する断片を連結することで得られる。
【0116】
核酸構築物はまた、例えばUS 4,683,202またはSaikiらの文献(Science 239 (1988), 487 - 491)に記載されるような、特定のプライマーを用いたポリメラーゼ連鎖反応法によって作製してよい。
【0117】
典型的な実施態様として、本発明による核酸構築物は、SEQ ID NO:12または13のDNA配列、ならびにSEQ ID NO:1または2のアミノ酸配列をコードするが、遺伝暗号の縮重のためにSEQ ID NO:1または2のDNA配列と異なる、その他の核酸配列を含んでよい。
【0118】
本発明はさらに、記載されるような高度に厳密な条件下で、SEQ ID NO:1から7の何れか1つのアミノ酸配列をコードする核酸分子(ゲノムDNA、合成DNAもしくはcDNAまたはRNAの何れか)とハイブリダイズする核酸配列を包含する。そのような条件とは、例えば、5X SSCに予浸し、20%ホルムアミド、5Xデンハート液、50 mMリン酸ナトリウム、pH 6.8および50 μgの変性させ超音波処理した子ウシ胸腺DNAから成る溶液中にて約40℃で1時間あらかじめハイブリダイズし、次にラベルしたオリゴヌクレオチドプローブを添加した同様の溶液中にて約40℃で18時間ハイブリダイズし、その後約45℃の0.4X SSCで洗浄するというように、高度に厳密な条件下でのハイブリダイズを含む。
【0119】
これらの条件下でオリゴヌクレオチドプローブがハイブリダイズする分子は、標準的な検出方法(例えば、サザンブロッティング)を用いて検出される。
【0120】
核酸構築物は、好ましくは、もっぱら以下の記載にて使用される用語である、DNA構築物である。
【0121】
[組み換えベクター]
さらなる側面において、本発明は、本発明によるDNA構築物を含む組み換えベクターに関する。本発明によるDNA構築物が挿入された組み換えベクターは、都合よく組み換えDNA技術に供される何れかのベクターであってよく、ベクターの選択は、しばしばそれを導入しようとする宿主細胞に依存するだろう。このように、ベクターは、自己複製するベクター、すなわち染色体外の実体として存在し、染色体の複製から独立して複製を行うベクターであってよく、例えばプラスミドである。あるいは、ベクターは、宿主細胞に導入されたとき、宿主のゲノムに組み込まれ、それが組み込まれた染色体と共に複製されるものであってよい。
【0122】
ベクターは、好ましくは、本発明によるポリペプチドをコードするDNA配列がDNAの転写に必要な付加的な部分に実施可能な状態でつながった、発現ベクターである。一般に、発現ベクターは、プラスミドまたはウイルスDNAを由来としており、またそれら両方の要素を含んでよい。「実施可能な状態でつながった」という用語は、例えば、プロモーターから転写が開始されポリペプチドをコードするDNA配列上を進行するといった意図した目的に合わせて機能するよう、部分(segments)が配置されていることを指す。
【0123】
プロモーターとは、選択した宿主細胞にて転写活性を示す何れかのDNA配列であってよく、および宿主細胞と同種または異種のペプチドをコードする遺伝子を由来としてよい。
【0124】
哺乳類細胞にて、本発明によるポリペプチドをコードするDNAの転写の調節をするのに適したプロモーターの例は、SV40プロモーター(Subramani et al., Mol. Cell Biol. 1 (1981), 854-864)、MT-1(メタロチオネイン遺伝子)プロモーター(Palmiter et al., Science 222 (1983), 809 - 814)またはアデノウイルス2主用後期プロモーター(the adenovirus 2 major late promoter)である。
【0125】
昆虫細胞での使用に適したプロモーターの例は、ポリヘドリンプロモーター(polyhedrin promoter)(US 4,745,051; Vasuvedan et al., FEBS Lett. 311, (1992) 7 - 11)、P10プロモーター(J.M. Vlak et al., J. Gen. Virology 69, 1988, pp. 765-776)、Autographa californica ポリヘドロシスウイルス塩基性タンパク質プロモーター(the Autographa californica polyhedrosis virus basic protein promoter)(EP 397 485)、バキュロウイルス即初期遺伝子1プロモーター(the baculovirus immediate early gene 1 promoter)(US 5,155,037; US 5,162,222)、またはバキュロウイルス39K遅発性初期遺伝子プロモーター(the baculovirus 39K delayed-early gene promoter)(US 5,155,037; US 5,162,222)である。
【0126】
宿主細胞として酵母にて使用するのに適したプロモーターの例は、酵母糖分解遺伝子(yeast glycolytic genes)(Hitzeman et al., J. Biol. Chem. 255 (1980), 12073 - 12080; Alber and Kawasaki, J. Mol. Appl. Gen. 1 (1982), 419-434)もしくはアルコール脱水素酵素遺伝子(Young et al., in Genetic Engineering of Microorganisms for Chemicals (Hollaender et al., eds.), Plenum Press, New York, 1982)のプロモーター、またはTPI1(US 4,599,311)もしくはADH2-4c (Russell et al., Nature 304 (1983), 652 - 654)プロモーターを含む。
【0127】
宿主細胞として糸状菌にて使用するのに適したプロモーターの例は、例えば、ADH3プロモーター(McKnight et al., EMBO J. 4 (1985), 2093 - 2099)またはtpiAプロモーターである。その他の有用なプロモーターの例は、A. oryzae のTAKAアミラーゼ、Rhizomucor mieheiのアスパラギン酸プロテイナーゼ(aspartic proteinase)、A. nigerの中性α-アミラーゼ、A. nigerの酸性安定α-アミラーゼ、A. nigerまたはA. awamoriのグルコアミラーゼ(gluA)、Rhizomucor mieheiリパーゼ、A. oryzaeのアルカリ性プロテアーゼ、A. oryzaeのトリオースリン酸イソメラーゼまたはA. nidulansのアセトアミダーゼ(acetamidase)をコードする遺伝子を由来としたものである。好ましくは、TAKAアミラーゼまたはgluAプロモーターである。
【0128】
宿主細胞として細菌にて使用するのに適したプロモーターの例は、Bacillus stearothermophilusのマルトジェニックアミラーゼ遺伝子(maltogenic amylase gene)、Bacillus licheniformisのアルファ-アミラーゼ遺伝子、Bacillus amyloliquefaciensのBANアミラーゼ遺伝子、Bacillus subtilisのアルカリ性プロテアーゼ遺伝子、またはBacillus pumilusのキシロシダーゼ遺伝子(xylosidase gene)のプロモーター、またはラムダファージのPRもしくはPLプロモーター、またはE. coliのlac、trpもしくはtacプロモーターが含まれる。
【0129】
本発明によるポリペプチドをコードするDNA配列はまた、必要ならば、適したターミネーターに実施可能な状態でつながっていてよく、そのようなターミネーターの例としては、ヒト成長ホルモンのターミネーター(Palmiter et al., op. cit.)または(真菌宿主のために)TPI1(Alber and Kawasaki, op. cit.)もしくはADH3(McKnight et al., op. cit.)ターミネーターである。ベクターは、さらに、ポリアデニル化シグナル(例えば、SV40またはアデノウイルス5 E1b領域から)、転写促進配列(例えばSV40エンハンサー)および翻訳促進配列(例えば、アデノウイルス VA RNAをコードする配列)といった要素を含んでよい。
【0130】
本発明による組み換えベクターはさらに、問題の宿主細胞内での複製を可能とするDNA配列を含んでよい。そのような配列の例は、(宿主細胞が哺乳類細胞である場合)SV40の複製開始点である。
【0131】
宿主細胞が酵母の場合、ベクターの複製を可能とする、適した配列は、酵母のプラスミド2μの複製遺伝子REP1-3および複製開始点である。
【0132】
ベクターはまた、例えば、ジヒドロ葉酸還元酵素(DHFR)をコードする遺伝子またはSchizosaccharomyces pombeのTPI遺伝子(P.R. Russellによって記載されている、Gene 40, 1985, pp. 125-130)のような、宿主細胞の欠損を補う産物の遺伝子、または、例えばアンピシリン、カナマイシン、テトラサイクリン、クロラムフェニコール、ネオマイシン、ハイグロマイシンまたはメトトレキセートといった薬剤への抵抗性を付与する遺伝子といった、選択マーカーを含んでよい。糸状菌の場合、選択マーカーは、amdS、pyrG、argB、niaD、sCを含む。
【0133】
本発明のポリペプチドを宿主細胞の分泌経路へと導入するために、分泌シグナル配列(リーダー配列、プレプロ配列またはプレ配列としても知られる)を、組み換えベクター中に付与してよい。分泌シグナル配列は、正しい読み枠で、ポリペプチドをコードするDNA配列に連結される。分泌シグナル配列は一般に、ポリペプチドをコードするDNA配列の5’端に配置される。分泌シグナル配列は、ポリペプチドに正常に結合されたものでよく、または別の分泌されるペプチドをコードする遺伝子から得られたものでもよい。
【0134】
酵母細胞からの分泌のために、分泌シグナル配列は、発現したポリペプチドを細胞の分泌経路に有効に導入することを保証する、何れかのシグナルペプチドをコードしてよい。シグナルペプチドは、天然のシグナルペプチドもしくはその機能的な部分であってよく、または合成ペプチドであってよい。適したシグナルペプチドとしては、α-ファクターシグナルペプチド(US 4,870,008参照)、マウス唾液アミラーゼのシグナルペプチド(O. Hagenbuchle et al., Nature 289, 1981, pp. 643-646参照)、改変カルボキシペプチダーゼシグナルペプチド(L.A. Valls et al., Cell 48, 1987, pp. 887-897参照)、酵母BAR1シグナルペプチド(WO 87/02670参照)、または酵母アスパラギン酸プロテアーゼ(aspartic protease)3 (YAP3)シグナルペプチド(M. Egel-Mitani et al., Yeast 6, 1990, pp. 127-137参照)が確認されている。
【0135】
酵母における効率的な分泌のために、リーダーペプチドをコードする配列を、シグナル配列の下流およびポリペプチドをコードするDNA配列の上流に挿入してもよい。リーダーペプチドの機能は、発現したポリペプチドを小胞体からゴルジ体さらに分泌小胞へ導き培養液へと分泌させることである(すなわち、酵母細胞の細胞壁または少なくとも細胞膜を通過した、細胞膜周辺腔へのポリペプチドの移出)。リーダーペプチドは、酵母のα-ファクターリーダー(α-factor leader)であってよい(その使用については、例えばUS 4,546,082、EP 16 201、EP 123 294、EP 123 544およびEP 163 529に記載されている)。あるいは、リーダーペプチドは、いわゆる天然には存在しないリーダーペプチドである、合成リーダーペプチドであってよい。合成リーダーペプチドは、例えば、WO 89/02463またはWO 92/11378に記載の通り作製される。
【0136】
糸状菌における使用のために、シグナルペプチドは、都合よく、Aspergillu種のアミラーゼまたはグルコアミラーゼをコードする遺伝子、Rhizomucor mieheiのリパーゼまたはプロテアーゼをコードする遺伝子、Humicola lanuginosaのリパーゼをコードする遺伝子に由来してよい。シグナルペプチドは、好ましくは、A. oryzaeのTAKA アミラーゼ、A. nigerの中性α-アミラーゼ、A. nigerの酸性安定アミラーゼ、またはA. nigerのグルコアミラーゼに由来する。
【0137】
昆虫細胞での使用のために、シグナルペプチドは、鱗翅目のManduca sextaのアジポキニンホルモン前駆体シグナルペプチド(US 5,023,328参照)といった、昆虫遺伝子(WO 90/05783参照)に由来してよい。
【0138】
本発明によるポリペプチドをコードするDNA配列と、プロモーターおよび任意にターミネーターおよび/または分泌シグナル配列にそれぞれ連結するために使用する方法、および複製に必要な情報を含んだ、適したベクターにそれらを挿入するために使用する方法は、当業者にとって周知である(例えば、Sambrook et al., op.cit.参照)。
【0139】
[宿主細胞]
宿主細胞に導入される、本発明によるポリペプチドをコードするDNA配列は、問題の宿主と同種または異種のどちらかであってよい。DNA配列が、宿主細胞と同種である場合、すなわち、宿主細胞にて本来作られる場合、それは、典型的に、別のプロモーター配列、または、適用可能であれば、別の分泌シグナル配列および/またはターミネーター配列に、その本来の状態を超えて、実施可能な状態で連結されるだろう。「同種」という用語は、問題の宿主細胞を由来とするポリペプチドをコードするcDNA配列を含むように意図される。「異種」という用語は、宿主細胞では本来発現しないDNA配列を含むように意図される。従って、DNA配列は、別の生物由来であってよく、合成配列であってよい。
【0140】
本発明によるDNA構築物または組み換えベクターが導入された宿主細胞は、本発明によるポリペプチドを生成することができる、何れかの細胞であってよく、細菌、酵母、菌類および高等真核細胞を含む。
【0141】
培養にて、本発明によるポリペプチドを生成することができる細菌の宿主細胞の例は、B. subtilis、B. licheniformis、B. lentus、B. brevis、B. stearothermophilus、B. alkalophilus、B. amyloliquefaciens、B. coagulans、B. circulans、B. lautus、B. megatheriumもしくはB. thuringiensisといったBacillus属、またはS. lividansもしくはS. murinusといったStreptomyces属といったグラム陽性細菌、またはEcherichia coliといったグラム陰性細菌である。細菌の形質転換は、プロトプラスト形質転換によって、または既知の方法にてコンピテント細胞(上述のSambrookらの方法を参照)を用いて行うことができる。
【0142】
E. coliといった細菌でポリペプチドを発現する場合、ポリペプチドは、典型的に不溶性の顆粒(封入体として知られる)として細胞質に保持されてよく、または細菌の分泌配列によって細胞膜周辺腔に誘導されてよい。前者の場合、細胞を溶菌し、顆粒を回収して変性させ、その後変性剤を希釈することで、ポリペプチドをリフォールディングさせる。後者の場合、ポリペプチドは、細胞を破壊することで細胞膜周辺腔から回収してよい。例えば、超音波処理または浸透圧衝撃によって細胞を破壊し、細胞膜周辺腔の内容物を放出させてポリペプチドを回収してよい。
【0143】
適した哺乳類細胞株の例は、COS (ATCC CRL 1650)、BHK (ATCC CRL 1632, ATCC CCL 10)、CHL (ATCC CCL39)またはCHO (ATCC CCL 61)細胞株である。哺乳類細胞の形質移入および細胞に導入したDNA配列の発現の方法は、例えば、KaufmanおよびSharpによる文献(J. Mol. Biol. 159 (1982), 601 - 621)、SouthernおよびBergによる文献(J. Mol. Appl. Genet. 1 (1982), 327 - 341)、Loyterらによる文献(Proc. Natl. Acad. Sci. USA 79 (1982), 422 - 426)、Wiglerらによる文献(Cell 14 (1978), 725、Corsaro)およびPearsonらによる文献(Somatic Cell Genetics 7 (1981), 603、Grahamおよびvan der EbによるVirology 52 (1973), 456)、Neumannらによる文献(EMBO J. 1 (1982), 841 - 845)に記載されている。
【0144】
適した酵母細胞の例は、Saccharomyces種またはSchizosaccharomyces種の細胞を含み、特にSaccharomyces cerevisiaeまたはSaccharomyces kluyveriの株である。異種性のDNAを酵母細胞に形質転換し異種性のポリペプチドを作製する方法は、例えば、US 4,599,311、US 4,931,373、US 4,870,008、5,037,743およびUS 4,845,075に記載されており、これらは全て本出願に援用する。形質転換した細胞は、選択マーカーにて決定される表現型によって選択され、そのような選択マーカーとは、一般に、薬剤耐性、または例えばロイシンといった特定の栄養素を欠いた環境で生育する能力である。酵母での使用において好ましいベクターは、US 4,931,373に記載されるPOT1ベクターである。本発明によるポリペプチドをコードするDNA配列には、上述したようなシグナル配列および任意にリーダー配列を上流に配置してよい。さらに適した酵母細胞の例は、K. lactisといったKluyveromyces、H. polymorphaといったHansenula、またはP. pastorisといったPichia(Gleeson et al., J. Gen. Microbiol. 132, 1986, pp. 3459-3465; US 4,882,279参照)である。
【0145】
その他の真菌細胞の例は、例えば、Aspergillus種、Neurospora種、Fusarium種またはTrichoderma種といった糸状菌の細胞であり、特にA. oryzae、A. nidulansまたはA. nigerの株である。ペプチドの発現のためのAspergillus種の使用については、例えばEP 272 277およびEP 230 023に記載されている。F. oxysporumの形質転換は、例えば、Malardierらが記載する通りに (Gene 1989;78:147-156)行われる。
【0146】
糸状菌を宿主細胞として使用する場合、都合よくDNA構築物を宿主の染色体に組み込み、組み換え宿主細胞をつくることで、本発明のDNA構築物の形質転換を行ってよい。この組み込みは、DNA配列が安定して細胞に維持される可能性がより高まるため、一般に有利であると考えられる。宿主細胞へのDNA構築物の組み込みは、例えば相同または非相同組み換えといった、通常の方法に従って行われてよい。
【0147】
昆虫細胞の形質転換および異種性のポリペプチドの作製は、US 4,745,051; US 4,879,236; US 5,155,037; 5,162,222; EP 397,485に記載されるとおり行ってよく、これらは全て本出願に援用される。宿主として使用される昆虫細胞株は、適切に、Spodoptera frugiperda細胞またはTrichoplusia ni細胞(US 5,077,214参照)といった、鱗翅目(Lepidoptera)細胞株であってよい。培養条件は、適切に、例えば、WO 89/01029もしくはWO 89/01028、または上述に参照したものの何れかに記載されるように行ってよい。
【0148】
上述した、形質転換または形質移入した宿主細胞は、その後、本発明によるポリペプチドの発現を可能とする条件下で、適した栄養培地にて培養し、その後培養液からポリペプチドを回収する。
【0149】
細胞を培養するために使用する培地は、適切なサプリメントを含む最小培地または複合培地(complex media)といった、何れかの宿主細胞を生育するのに適した通常の培地であってよい。適した培地は、商業的な供給元から入手可能であり、公表されている製法(American Type Culture Collectionのカタログを参照)に従って作製してよい。細胞から作製されるポリペプチドは、次に通常の方法にて培養液から回収してよい。該通常の方法には、遠心分離またはろ過によって宿主細胞と培地を分離し、例えば硫酸アンモニウムといった塩によって上清またはろ液からタンパク質性成分を沈殿させ、問題のポリペプチドの種類に合わせて、イオン交換クロマトグラフィー、ゲルろ過クロマトグラフィー、親和性クロマトグラフィー等といった様々なクロマトグラフィー法にて精製することを含む。
【0150】
[修飾されたペプチドまたはペプチド三量体]
文章中に明記されていない限り、また明らかに矛盾しない限り、ペプチドおよびペプチド三量体という用語は、一般に、誘導体化されたペプチドまたはペプチド三量体分子(「誘導体」)もまた含む。「誘導体」において、ペプチドの1以上のアミノ酸残基が、化学的に修飾(例えば、アルキル化、アシル化、エステル形成、またはアミド形成)されており、または、例えばポリエチレングリコール(PEG)基、親油性置換基、蛍光団、ビオチン、放射性核種、またはその他の原子もしくは分子といった1以上の非アミノ酸有機および/または無機原子または分子置換基に結合している。これらの置換基は、スペーサー残基、またはβ-アラニン、γアミノ酪酸(GABA)、L/D-グルタミン酸、コハク酸等といった基を介して、ペプチドのアミノ酸配列に任意に連結されてよい。そのうえ、または、代わりに、ペプチド誘導体は、非必須、非天然、および/または非L型のアミノ酸残基を含んでよい。特殊なアミノ酸残基の非限定的な例は、例えば、2-アミノアジピン酸;3-アミノアジピン酸;β-アラニン;β-アミノプロピオン酸;2-アミノ酪酸;4-アミノ酪酸;6-アミノ酪酸;2-アミノヘプタン酸;2-アミノイソ酪酸;3-アミノイソ酪酸;2-アミノピメリン酸;2,4-ジアミノ酪酸;デスモシン;2,2’-ジアミノピメリン酸;2,3-ジアミノプロピオン酸;N-エチルグリシン;N-エチルアスパラギン;ヒドロキシリジン;アロ-ヒドロキシリジン;3-ヒドロキシプロリン;4-ヒドロキシプロリン;イソデスモシン;アロ-イソロイシン;N-メチルグリシン;N-メチルイソロイシン;6-N-メチルリジン;N-メチルバリン;ノルバリン;ノルロイシン;オルニチン等を含む。
【医薬組成物】
【0151】
本発明の別の目的は、本発明による化合物を含む医薬組成物、または、任意に0.1 mg/mlから100 mg/mlの濃度の本出願にて言及するその他の何れかの化合物とともに本発明による化合物を含む医薬製剤を提供することである。ここにおいて当該製剤はpHが2.0から10.0である。製剤はさらに、緩衝システム、防腐剤、緊張力薬剤(tonicity agent)、キレート化剤、安定剤および界面活性剤を含む。本発明の一実施態様として、製剤は水性製剤、すなわち水を含んだ製剤である。そのような製剤は典型的に溶液または懸濁液である。本発明のさらなる実施態様として、医薬製剤は水性溶液である。「水性製剤」という用語は、少なくとも50%w/wの水を含む製剤として定義される。同様に、「水性溶液」という用語は、少なくとも50%w/wの水を含む溶液として定義され、および「水性懸濁液」という用語は、少なくとも50%w/wの水を含む懸濁液として定義される。
【0152】
別の実施態様として、医薬製剤は、医師または患者が使用前に溶媒および/または希釈剤を加える、凍結乾燥した製剤である。
【0153】
別の実施態様として、医薬製剤は、前もって溶解する必要のない、すぐ使用可能な乾燥製剤(例えば、凍結乾燥または噴霧乾燥された製剤)である。
【0154】
別の側面において、本発明は、本発明による化合物の水性溶液を含む医薬製剤、または上述した他の何れかの化合物および緩衝剤の水性溶液を含む医薬製剤に関する。ここにおいて、前記化合物は、0.1 mg/mlまたは上述の通りの濃度、好ましくは0.5 mg/mlから50 mg/mlで含まれ、前記製剤は、pHが約2.0から約10.0である。好ましいpHは、3.0から約8.0である。特に好ましい範囲は、例えば4.0から4.5、4.5から5.0、5.0から5.5および5.5から6.0といった、4.0から6.0の範囲である。
【0155】
本発明の別の実施態様において、製剤のpHは、2.0、2.1、2.2、2.3、2.4、2.5、2.6、2.7、2.8、2.9、3.0、3.1、3.2、3.3、3.4、3.5、3.6、3.7、3.8、3.9、4.0、4.1、4.2、4.3、4.4、4.5、4.6、4.7、4.8、4.9、5.0、5.1、5.2、5.3、5.4、5.5、5.6、5.7、5.8、5.9、6.0、6.1、6.2、6.3、6.4、6.5、6.6、6.7、6.8、6.9、7.0、7.1、7.2、7.3、7.4、7.5、7.6、7.7、7.8、7.9、8.0、8.1、8.2、8.3、8.4、8.5、8.6、8.7、8.8、8.9、9.0、9.1、9.2、9.3、9.4、9.5、9.6、9.7、9.8、9.9、および10.0から成るリストから選択される。
【0156】
本発明のさらなる実施態様において、緩衝剤は、酢酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、クエン酸塩、グリシルグリシン、ヒスチジン、グリシン、アルギニン、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸ナトリウム、およびトリス(ヒドロキシメチル)-アミノメタン、ビシン(bicine)、トリシン、リンゴ酸、コハク酸塩、マレイン酸、フマル酸、酒石酸、アスパラギン酸、またはそれらの混合物から成る群から選択される。これらの特定の緩衝剤の各々は、本発明の代替実施態様(alternative embodiment)を構成する。
【0157】
本発明のさらなる実施態様において、製剤はさらに、医薬的に許容可能な抗菌性の防腐剤(preservative)を含む。本発明のさらなる実施態様において、防腐剤はフェノール、o-クレゾール、m-クレゾール、p-クレゾール、メチルp-ヒドロキシ安息香酸塩、プロピルp-ヒドロキシ安息香酸塩、2-フェノキシエタノール、ブチルp-ヒドロキシ安息香酸塩、2-フェニルエタノール、ベンジルアルコール、クロロブタノール、およびチオメルサール、ブロノポール、安息香酸、イミド尿素(imidurea)、クロロヘキシジン(chlorohexidine)、デヒドロ酢酸ナトリウム、クロロクレゾール、エチルp-ヒドロキシ安息香酸塩、塩化ベンゼトニウム、クロルフェネシン(3p-クロロフェノキシプロパン-1,2-ジオール)またはそれらの混合物からなる群から選択される。本発明のさらなる実施態様において、防腐剤は、0.1 mg/mlから20 mg/mlの濃度で含まれる。本発明のさらなる実施態様において、防腐剤は、0.1 mg/mlから5 mg/mlの濃度で含まれる。本発明のさらなる実施態様において、防腐剤は、5 mg/mlから10 mg/mlの濃度で含まれる。本発明のさらなる実施態様において、防腐剤は、10 mg/mlから20 mg/mlの濃度で含まれる。これらの特定の防腐剤の各々は、本発明の代替実施態様を構成する。医薬組成物における防腐剤の使用は、当業者にとって周知である。レミントン:薬学の科学と実際第19版(Remington: The Science and Practice of Pharmacy, 19th edition, 1995)に詳しく言及されている。
【0158】
本発明によるさらなる実施態様において、製剤はさらに等張剤(isotonic agent)を含む。本発明のさらなる実施態様において、等張剤は、塩(例えば、塩化ナトリウム)、糖もしくは糖アルコール、アミノ酸(例えば、L-グリシン、L-ヒスチジン、アルギニン、リジン、イソロイシン、アスパラギン酸、トリプトファン、スレオニン)、アルジトール(例えば、グリセロール(グリセリン)、1,2-プロパンジオール(プロピレングリコール)、1,3-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール)、ポリエチレングリコール(例えばPEG400)、またはそれらの混合物から成る群から選択される。例えば、フルクトース、グルコース、マンノース、ソルボース、キシロース、マルトース、ラクトース、スクロース、トレハロース、デキストラン、プルラン、デキストリン、シクロデキストリン、可溶性デンプン、ヒドロキシエチルデンプンおよびカルボキシメチルセルロース-Naを含む、単糖類、二糖類もしくは多糖類、または水溶性グルカンを使用してよい。糖アルコールは、少なくとも1つの-OH基を有する、C4からC8炭化水素として定義され、例えば、マンニトール、ソルビトール、イノシトール、ガラクチトール、ズルシトール、キシリトール、およびアラビトールを含む。一実施態様として、糖アルコール添加剤はマンニトールである。上述した糖または糖アルコールは、個々にまたは組み合わせて使用してよい。糖または糖アルコールが液体製剤に溶け且つ本発明の方法を用いて達成される安定化効果に悪い影響を与えない限り、使用される量に固定した限度はない。一実施態様において、糖または糖アルコール濃度は、約1 mg/mlから約150 mg/mlの間である。本発明のさらなる実施態様において、等張剤は、1 mg/mlから50 mg/mlの濃度で含まれる。本発明のさらなる実施態様において、等張剤は、1 mg/mlから7 mg/mlの濃度で含まれる。本発明のさらなる実施態様において、等張剤は、8 mg/mlから24 mg/mlの濃度で含まれる。本発明のさらなる実施態様において、等張剤は、25 mg/mlから50 mg/mlの濃度で含まれる。これらの特定の等張剤の各々は、本発明の代替実施態様を構成する。医薬組成物における等張剤の使用は、当業者にとって周知である。レミントン:薬学の科学
と実際第19版(Remington: The Science and Practice of Pharmacy, 19th edition, 1995)に詳しく言及されている。
【0159】
本発明のさらなる実施態様において、製剤はさらにキレート化剤を含む。本発明のさらなる実施態様において、キレート化剤は、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、クエン酸、およびアスパラギン酸の塩、およびそれらの混合物から選択される。本発明のさらなる実施態様において、キレート化剤は、0.1 mg/mlから5 mg/mlの濃度で含まれる。本発明のさらなる実施態様において、キレート化剤は、0.1 mg/mlから2 mg/mlの濃度で含まれる。本発明のさらなる実施態様において、キレート化剤は、2 mg/mlから5 mg/mlの濃度で含まれる。これらの特定のキレート化剤の各々は、本発明の代替実施態様を構成する。医薬組成物におけるキレート化剤の使用は、当業者にとって周知である。レミントン:薬学の科学と実際第19版(Remington: The Science and Practice of Pharmacy, 19th edition, 1995)に詳しく言及されている。
【0160】
本発明のさらなる実施態様において、製剤はさらに安定剤を含む。医薬組成物における安定剤の使用は、当業者にとって周知である。レミントン:薬学の科学と実際第19版(Remington: The Science and Practice of Pharmacy, 19th edition, 1995)に詳しく言及されている。
【0161】
さらに特に、本発明による組成物は、安定化液体医薬組成物である。該安定化液体医薬組成物は、治療上、活性成分として、ポリペプチドを含み、該ポリペプチドはおそらく、液体医薬製剤としての保存の間に、凝集形成を示す。「凝集形成」とは、可溶性を維持したオリゴマーの形成または溶液中で沈殿する大きな目視可能な凝集体の形成をもたらす、ポリペプチド分子間の物理的相互作用を指す。「保存の間」とは、液体医薬組成物または製剤が一旦調製され、患者にすぐには投与されない状態のことを指す。むしろ、後に液体形態に再構成するための液体形態、凍結状態、もしくは乾燥形態、または患者への投与に適したその他の形態のどちらかで、包装されて保存されている製剤を指す。「乾燥形態」とは、液体医薬組成物または製剤が、凍結乾燥(freeze-drying)[すなわち凍結乾燥(lyophilization)、例えばWilliams and Polli (1984) J. Parenteral Sci. Technol. 38:48-59参照] 、噴霧乾燥 [Masters (1991) in Spray-Drying Handbook (5th ed; Longman Scientific and Technical, Essez, U.K.), pp. 491-676、Broadhead et al. (1992) Drug Devel. Ind. Pharm. 18:1169-1206、および Mumenthaler et al. (1994) Pharm. Res. 11:12-20参照] 、または空気乾燥 [Carpenter and Crowe (1988) Cryobiology 25:459-470、およびRoser (1991) Biopharm. 4:47-53参照] されていることを指す。液体医薬組成物の保存中のポリペプチドの凝集形成は、そのポリペプチドの生物学的活性に悪い影響を与え、医薬組成物の治療効果を失い得る。そのうえ、ポリペプチドを含む医薬組成物が注入システム(infusion system)を用いて投与される場合、凝集形成は、管、膜またはポンプの詰りといった、その他の問題を引き起こす可能性がある。
【0162】
本発明による医薬組成物はさらに、組成物の保存中におけるポリペプチドによる凝集形成を低減するのに十分な量のアミノ酸塩基(amino acid base)を含んでよい。「アミノ酸塩基」とは、何れかの所定のアミノ酸が、その遊離塩基の形態もしくはその塩の形態またはそれらの混合物として存在する、アミノ酸またはアミノ酸の組み合わせを指す。アミノ酸の組み合わせが使用される場合、全てのアミノ酸が、その遊離塩基の形態で存在してよく、全てのアミノ酸が、その塩の形態で存在してよく、または一部がその遊離塩基の形態で存在し、それ以外がその塩の形態で存在してよい。一実施形態として、本発明による組成物の作製に使用するアミノ酸は、アルギニン、リジン、アスパラギン酸、およびグルタミン酸といった、電荷のある側鎖を有するものである。特定のアミノ酸(例えば、メチオニン、ヒスチジン、イミダゾール、アルギニン、リジン、イソロイシン、アスパラギン酸、トリプトファン、スレオニンおよびこれらの混合物)の何れかの立体異性体(すなわち、LまたはD異性体)、またはこれらの立体異性体の組み合わせは、前記特定のアミノ酸がその遊離塩基の形態またはその塩の形態で存在する限り、本発明による医薬組成物中に存在してよい。一実施態様として、L異性体が使用される。本発明による組成物はまた、これらのアミノ酸の類似体にて作製してよい。「アミノ酸類似体」とは、本発明による液体医薬組成物の保存の間に、ポリペプチドによる凝集形成を低下させる所望の効果をもたらす、天然のアミノ酸の誘導体を指す。適したアルギニン類似体は、例えば、アミノグアニジン、オルニチンおよびN-モノエチルL-アルギニンを含み、適したメチオニン類似体は、エチオニンおよびブチオニンを含み、および適したシステイン類似体は、S-メチル-Lシステインを含む。その他のアミノ酸に関しては、アミノ酸類似体は、その遊離塩基の形態またはその塩の形態のどちらかで、組成物中に取り込まれる。本発明のさらなる実施態様において、アミノ酸またはアミノ酸類似体は、ペプチドの凝集を予防または遅延させるのに十分な濃度で使用される。
【0163】
本発明のさらなる実施態様において、治療剤として作用するポリペプチドが、酸化によりメチオニンスルホキシドへと変化し易いメチオニン残基を少なくとも1つ含むポリペプチドである場合、そのような酸化を阻害するために、メチオニン(またはその他の硫黄を含むアミノ酸またはアミノ酸類似体)を添加してよい。「阻害」とは、時の経過とともに酸化されるメチオニンの蓄積量が最小である状態を指す。メチオニンの酸化の阻害は、ポリペプチドの適した分子形態の十分な維持をもたらす。メチオニンの何れかの立体異性体(LまたはD異性体)またはそれらの組み合わせを使用することができる。加えるべき量は、メチオニン残基の酸化を阻害するのに十分な量であるべきであり、該阻害とは、メチオニンスルホキシドの量が、調節作用に対して許容できる程度の阻害である。典型的に、これは、組成物が、メチオニンスルホキシドをわずか約10%から約30%の割合でしか含まないことを意味する。一般に、これは、添加するメチオニンとメチオニン残基の比が、約1:1から約1000:1の範囲内であり、例えば10:1から100:1の範囲内となるように、メチオニンを添加することによって達成することができる。
【0164】
本発明のさらなる実施態様において、製剤はさらに、高分子量ポリマーまたは低分子ポリマーの群から選択される安定剤を含む。本発明のさらなる実施態様において、安定剤は、ポリエチレングリコール(例えば、PEG 3350)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルピロリドン、カルボキシ/ヒドロキシセルロースまたはその誘導体(例えば、HPC、HPC-SL、HPC-LおよびHPMC)、シクロデキストリン、モノチオグリセロール、チオグリコール酸および2-メチルチオエタノールといった含硫物質、および別の塩(例えば、塩化ナトリウム)から選択される。これらの特定の安定剤のそれぞれは、本発明の代替実施態様を構成する。
【0165】
医薬組成物はまた、その中の治療的活性を有したポリペプチドの安定性をさらに増強する、付加的な安定化剤を含んでよい。本発明に特別に関係する安定化剤は、ポリペプチドをメチオニン酸化から保護するメチオニンおよびEDTA、ならびに、ポリペプチドを凍結解凍または機械的剪断に関係した凝集から保護する非イオン性界面活性剤を含むが、これらに限定されない。
【0166】
本発明のさらなる実施態様において、製剤はさらに界面活性剤を含む。本発明のさらなる実施態様において、界面活性剤は、洗浄剤(detergent)、エトキシ化ヒマシ油、ポリグリコール化グリセリド、アセチル化モノグリセリド、ソルビタン脂肪酸エステル(sorbitan fatty acid esters)、ポリオキシプロピレン-ポリオキシエチレンブロックポリマー(例えば、プルロニック(登録商標) F68、ポロキサマー(poloxamer) 188および407、トリトンX-100といったポロキサマー)、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、アルキル化およびアルコキシル化誘導体といったポリオキシエチレンおよびポリエチレン誘導体(トゥイーン(Tween)、例えば、トゥイーン-20、トゥイーン-40、トゥイーン-80およびブリジ(Brij)-35)、モノグリセリドまたはそのエトキシ化誘導体、ジグリセリドまたはそのポリオキシエチレン誘導体、アルコール、グリセロール、レクチンおよびリン脂質(例えば、ホスファチジルセリン、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルイノシトール、カルジオリピン(diphosphatidyl glycerol)およびスフィンゴミエリン)、リン脂質の誘導体(例えば、ジパルミトイルホスファチジン酸)およびリゾリン脂質の誘導体(例えば、パルミトイルリゾホスファチジル-L-セリン、およびエタノールアミン、コリン、セリンまたはスレオニンの1-アシル-sn-グリセロ-3-リン酸エステル)、ならびにリゾホスファチジルおよびホスファチジルコリンのアルキル、アルコキシル(アルキルエステル)、アルコキシ(アルキルエーテル)-誘導体、例えばリゾホスファチジルコリン、ジパルミトイルホスファチジルコリンのラウロイルおよびミリストイル誘導体およびコリン、エタノールアミン、ホスファチジン酸、セリン、スレオニン、グリセロール、イノシトールといった極性頭部(head group)の修飾を行ったもの、ならびに正電荷を有すDODAC、DOTMA、DCP、BISHOP、リゾホスファチジルセリンおよびリゾホスファチジルスレオニン、ならびにグリセロリン脂質(例えば、ケファリン)、グリセロ糖脂質(例えば、ガラクトピラノシド)、スフィンゴ糖脂質(例えば、セラミド、ガングリオシド)、ドデシルホスホコリン、鶏卵(hen egg)リゾレシチン、フシジン酸誘導体(例えば、タウロ-ジヒドロフシジン酸ナトリウム(sodium tauro-dihydrofusidate)等)、長鎖脂肪酸およびその塩C6-C12 (例えば、オレイン酸およびカプリル酸)、アシルカルニチンおよび誘導体、リジン、アルギニンもしくはヒスチジンのNα-アシル化誘導体、またはリジンもしくはアルギニンの側鎖アシル化誘導体、リジン、アルギニンまたはヒスチジンと中性または酸性アミノ酸との何れかの組み合わせを含むジペプチドのNα-アシル化誘導体、中性アミノ酸と2つの電荷アミノ酸との何れかの組み合わせを含むトリペプチドのNα-アシル化誘導体、DSS (ドクセートナトリウム(docusate sodium)、CAS登録番号[577-11-7])、ドクセートカルシウム(CAS登録番号[128-49-4])、ドクセートカリウム(CAS登録番号[7491-09-0])、SDS (ドデシル硫酸ナトリウムまたはラウリル硫酸ナトリウム)、カプリル酸ナトリウム、コール酸またはその誘導体、胆汁酸およびその塩およびグリシンまたはタウリン接合体、ウルソデオキシコール酸、コール酸ナトリウム、デオキシコール酸ナトリウム、タウロコール酸ナトリウム、グリココール酸ナトリウム、N-ヘキサデシル-N,N-ジメチル-3-アンモニオ-1-プロパンスルホン酸塩、陰イオン性(アルキル-アリール-スルホン化)一価界面活性剤、双性イオン界面活性剤(例えば、N-アルキル-N,N-ジメチルアンモニオ-1-プロパンスルホン酸塩、3-コールアミド-1-プロピルジメチルアンモニオ-1-プロパンスルホン酸塩(3-cholamido-1-propyldimethylammonio-1-propanesulfonate))、陽イオン性界面活性剤(四級アンモニウム塩基)(例えば、セチル-トリメチルアンモニウムブロミド、セチルピリジニウムクロライド)、非イオン性界面活性剤(例えば、ドデシルβ-D-グルコピラノシド)、エチレンジアミンに対してプロピレンオキシドおよびエチレンオキシドが連続的に付加して作製される四官能性ブロックコポリマーであるポロキサマー(poloxamines)(例えば、テトロニック(Tetronic’s))、またはイミダゾリン誘導体の群から選択されてよい界面活性剤、またはそれらの混合物から選択される。これらの特定の安定剤のそれぞれは、本発明の代替実施態様を構成する。
【0167】
界面活性剤の医薬組成物における使用は、当業者にとって周知である。レミントン:薬学の科学と実際第19版(Remington: The Science and Practice of Pharmacy, 19th edition, 1995)に詳しく言及されている。
【0168】
その他の成分もまた、本発明によるペプチド医薬製剤中に含まれてよい。そのような付加的成分は、湿潤剤、乳化剤、酸化防止剤、充填剤、緊張力調節剤(tonicity modifiers)、キレート化剤、金属イオン、油性溶媒、ペプチド(例えば、ヒト血清アルブミン、ゼラチンまたはタンパク質)および双性イオン(例えば、ベタイン、タウリン、アルギニン、グリシン、リジンおよびヒスチジンといったアミノ酸)を含む。そのような付加的成分は、当然、本発明による医薬製剤の全体の安定性に悪影響を及ぼすべきでない。
【0169】
本発明による化合物または本発明による上述した何れかの他の化合物を含む医薬組成物は、そのような治療が必要な患者に対して、さまざまな部位に投与してよく、例えば肌および粘膜の部位といった局所的な部位に、例えば動脈、静脈、心臓における投与といった吸収を迂回する(bypass)部位に、例えば皮膚、皮下、筋肉または腹部における投与といった吸収に関与する部位に投与してよい。
【0170】
本発明による医薬組成物の投与は、そのような治療が必要な患者に対して、様々な経路にて投与してよく、例えば、口内の舌、舌下、頬側を介して、経口、胃および腸内、経鼻、例えば細気管支および肺胞またはそれらの組み合わせといった肺、上皮、真皮、経皮、膣、直腸、例えば結膜を介す場合のように眼球、尿管、および非経口の経路にて投与してよい。
【0171】
本発明の組成物は、様々な投与形態にて投与してよく、例えば、溶液、懸濁液、乳濁液(emulsion)、微小乳濁液、複合乳濁液(multiple emulsion)、泡、膏薬(salves)、ペースト剤、絆創膏、軟膏剤(ointments)、錠剤、コーティング錠剤、リンス剤、カプセル、例えば硬質ゼラチンカプセルおよび軟質ゼラチンカプセル、坐薬、直腸カプセル、ドロップ、噴霧剤、粉末剤、煙霧剤、吸入剤、点眼剤、眼軟膏剤、眼リンス剤、膣ペッサリー、膣リング、膣軟膏剤、注射溶液、in situ 形質転換溶液、例えば、in situ ゲル化、in situ固定(setting)、in situ沈殿、in situ結晶化、注入溶液、および移植の形態にて投与してよい。
【0172】
本発明による組成物に、さらに、本発明による化合物の安定性をさらに増強するために、薬剤担体、薬剤送達システムおよび改良型薬剤送達システム、または生物学的利用能を増大し、可溶性を増大し、有害効果を減少し当該分野の当業者に周知の時間療法を達成し、および患者の服薬遵守を促進する何れかの上述したその他の化合物、またはそれらの何れかの組み合わせを、混ぜ入れてよく、またはそれらを例えば共有結合、疎水的相互作用および静電気的相互作用によって結合してよい。担体、薬剤送達システムおよび改良型薬剤送達システムの例は、ポリマー、例えばセルロースおよびその誘導体、多糖体、例えばデキストランおよびその誘導体、デンプンおよびその誘導体、ポリ(ビニルアルコール)、アクリル酸およびメタクリル酸ポリマー、ポリ乳酸およびポリグリコール酸およびそれらのブロックコポリマー、ポリエチレングリコール、担体タンパク質、例えばアルブミン、ゲル、例えばサーモゲリングシステム(thermogelling systems)、例えば当業者に周知のブロックコポリマーシステム、ミセル、リポソーム、ミクロスフェア、ナノ粒子、液晶およびその分散液、脂質-水系における相挙動の分野の当業者にとって周知のL2相(L2 phase)およびその分散液、重合ミセル、複合乳濁液(multiple emulsion)、自己乳化(self-emulsifying)、自己ミクロ乳化(self-microemulsifying)、シクロデキストリンおよびその誘導体、およびデンドリマー(dendrimer)を含むが、これらに限定されない。
【0173】
本発明による組成物は、例えば定量噴霧式吸入器(metered dose inhaler)、ドライパウダー吸入器(dry powder inhaler)および噴霧器、当業者に周知の全ての装置を用いた、本発明による化合物または上述した何れかのその他の化合物の肺への投与のための、固体、半固体、粉状および溶液の製剤に有用である。
【0174】
本発明による組成物は、調節性、持続性、延長性、遅延性、および徐放性放出薬剤送達システムにとりわけ有用である。より明確には、組成物は、当業者に周知の、非経口性調節性放出および持続性放出システム(両システムとも、投与の回数を、何倍も減少させる)の製剤に有用であるが、これらに限定されない。さらにより好ましくは、調節性放出および持続性放出システムは、皮下に投与される。本発明の範囲を限定することなく、有用な調節性放出システムおよび組成物の例は、ヒドロゲル、油性ゲル、液晶、重合ミセル、ミクロスフェア、ナノ粒子である。
【0175】
本発明の組成物にとって有用な調節性放出システムの作製方法は、結晶化、濃縮、共結晶化、沈殿、共沈殿、乳化、分散、高圧均質化、カプセル化、噴霧乾燥、マイクロカプセル化、コアセルベーション、相分離、ミクロスフェアの作製のための溶媒蒸発、押し出し加工および超臨界流体法を含むが、これらに限定されない。「医薬的調節性放出のハンドブック(Handbook of Pharmaceutical Controlled Release)」(Wise, D.L., ed. Marcel Dekker, New York, 2000)および「薬剤および医薬品科学 Vol. 99:タンパク質製剤および送達(Drug and the Pharmaceutical Sciences vol. 99: Protein Formulation and Delivery)」(MacNally, E.J., ed. Marcel Dekker, New York, 2000)という文献が、一般に参考にされる。
【0176】
非経口投与は、注射器、任意にペン型注射器を用いて、皮下、筋肉内、腹腔内または静脈内注射によって、行うことができる。あるいは、注入ポンプ(infusion pump)を用いて非経口投与を行うことができる。さらなる選択肢は、本発明による化合物または上述した何れかのその他の化合物の投与のための、鼻用または肺用スプレーの形態における、溶液または懸濁液であってよい組成物である。さらなる選択肢として、本発明による化合物または上述した何れかのその他の化合物を含む医薬組成物は、例えば針のない注射器もしくはパッチ、任意にイオン注入パッチ(iontophoretic patch)による、経皮投与、または例えば頬側からの投与といった粘膜経由の投与にも適用できる。
【0177】
「安定化製剤」という用語は、物理的安定性が増強された、化学的安定性が増強された、または物理的および化学的安定性が増強された製剤を指す。
【0178】
本出願で使用される、ペプチド製剤の「物理的安定性」という用語は、ペプチドが熱-機械的ストレスにさらされた結果、および/または疎水的表面および界面といった不安定化させる表面および界面との相互作用の結果、生物学的に不活性および/または不溶性のペプチドの凝集体を形成するというペプチドの傾向を指す。水溶性ペプチド製剤の物理的安定性は、適した容器(例えばカートリッジまたはバイアル)に満たした製剤を、異なる温度で様々な期間、機械的/化学的ストレスにさらした後、視覚的検査および/または濁度測定を行うことで評価される。製剤の視覚的検査は、暗い背景にて、鋭く集光した光によって行う。製剤の濁度は、例えば0から3の尺度に濁りを等級付けした視覚的スコアにて特徴付けられる(全く濁りを示さない製剤は視覚的スコア0、および昼光下にて視覚的濁りを示す製剤は視覚的スコア3)。製剤は、昼光下で視覚的濁りを示した場合、ペプチドの凝集性に関して物理的に不安定と分類される。あるいは、製剤の濁度は、当業者に周知の単純な濁度測定器にて評価することができる。水溶性タンパク質製剤の物理的安定性は、タンパク質の高次構造状態の分光学的薬剤またはプローブを用いて評価することもできる。プローブは、好ましくは、タンパク質の非-未変性(non-native)の配座異性体に、優先的に結合する小分子である。タンパク質構造の小分子分光学的プローブの一例は、チオフラビンTである。チオフラビンTは、アミロイド原線維の検出に広く使用されてきた蛍光色素である。原線維が存在する場合、およびあるいはその他のタンパク質の立体配置がさらに存在する場合、チオフラビンTは、原線維タンパク質形態と結合した時に、最大波長約450 nmの新たな励起および約482 nmの放出の増大を生じる。結合していないチオフラビンTは、基本的に、それらの波長において非蛍光性である。
【0179】
その他の小分子が、未変性状態から非-未変性状態へのタンパク質構造の変化に対するプローブとして使用できる。例えば、「疎水的パッチ(hydrophobic patch)」プローブは、タンパク質の露出した疎水的パッチに優先的に結合する。疎水的パッチは、一般に、未変性状態においてタンパク質の三次構造内に埋め込まれているが、タンパク質の構造がほどけるまたは変性すると露出する。これらの小分子分光学的プローブの例は、アントラセン、アクリジン、フェナントロリン等といった、芳香族、疎水性色素である。その他の分光学的プローブは、フェニルアラニン、ロイシン、イソロイシン、メチオニン、およびバリン等といった疎水性アミノ酸のコバルト金属複合体といった、金属-アミノ酸複合体である。
【0180】
本出願で使用されるタンパク質製剤の「化学的安定性」という用語は、未変性タンパク質構造と比較して生物学的有効性が潜在的に低くおよび/または免疫原性が潜在的に増強した化学的分解生成物の形成をもたらす、タンパク質構造の化学的共有結合の変化を指す。様々な化学的分解生成物が、未変性タンパク質の種類および性質に依存して、ならびにタンパク質が露出される環境に依存して形成されうる。化学的分解の排除は、間違いなく、完全に避けることはできず、化学的分解生成物の量の増大は、当業者にとって周知なように、タンパク質製剤の保存および使用の間にしばしば見られる。ほとんどのタンパク質が、脱アミドを起こしやすい。脱アミドとは、グルタミニルまたはアスパラギニル残基の側鎖アミド基が加水分解され、遊離カルボン酸を形成する過程である。その他の分解経路は、高分子量形質転換生成物の形成に関する。そのような形成において、2以上のタンパク質が、アミド基転移および/またはジスルフィド相互作用によって互いに結合し、共有結合性ダイマー、オリゴマーおよびポリマー分解産物の形成がもたらされる(Stability of Protein Pharmaceuticals, Ahern. T.J. & Manning M.C., Plenum Press, New York 1992)。酸化(例えば、メチオニン残基の酸化)を、化学的分解の別の変種として言及することができる。タンパク質製剤の化学的安定性は、異なる環境条件(分解生成物の形成は、例えば温度の増加によって、しばしば促進される)にさらした後、様々な時点での化学的分解生成物の量を測定することで評価することができる。個々の分解生成物の量は、様々なクロマトグラフィー技術(例えば、SEC-HPLCおよび/またはRP-HPLC)を用いて、分子サイズおよび/または電荷に依存して分解生成物を分離することで、しばしば決定される。
【実施例】
【0181】
[一般的作製方法]
[一般的手順(A)]
段階A:
ペプチドおよびタンパク質の三量体化に必要な分子は、アミド結合を介した、アミンと酸から形成される。二-または三官能性分子の、1つの基のみを反応させようとする場合、その他の基は標準的な保護基によって保護することができる。
【0182】
合成は、当業者に知られる手順を用いて、一般式中でAとして表される、ジアミン成分の1基の保護から始める(例えば、T. W. Greene, P. G. M. Wuts, 「有機合成の保護基 第2版 (Protective groups in organic synthesis, 2nd ed.)」1991 John Wiley & Sons, Inc. New York)。
【化27】

【0183】
一般式にてBで表される、二酸成分は、当業者に知られる手順を用いて保護することができる(例えば、T. W. Greene, P. G. M. Wuts, 「有機合成の保護基 第2版(Protective groups in organic synthesis, 2nd ed.)」1991 John Wiley & Sons, Inc. New York)。
【化28】

【0184】
段階B:
次の段階は、異なる成分間のアミド結合の形成である。例えば、中心の三官能性酸は、当業者に知られる標準的アミド結合形成条件を用いて、1基を保護された3つのジアミンと結合される。好ましくは、酸は、例えばジイソプロピルカルボジイミドといったカルボジイミドを用いて活性化され、例えばベンゾトリアゾイルエステルといった活性化エステルが形成される。活性化エステルは次に、1基を保護されたジアミンと反応させる。
【化29】

【0185】
活性化エステルとアミンとの反応は、例えばジイソプロピルエチルアミンまたはトリエチルアミンといった、三級アミンの付加によって促進することができる。
【0186】
保護基は、当業者に知られる標準的方法によって除去され(例えば、T. W. Greene, P. G. M. Wuts, 「有機合成の保護基 第2版 (Protective groups in organic synthesis, 2nd ed.)」1991 John Wiley & Sons, Inc. New York)、その後、トリアミンは、一方が保護され一方が活性化された二酸Bとのさらなる反応、または、一般式にてYとして表され、アームの末端を成し、ペプチドまたはタンパク質の官能基との反応を分子ができるようにする成分(例えば、β-マレイミドプロピオン酸)を有する活性化酸とのさらなる反応ができるようになる。以下の反応は、C成分の取り込みを示している。
【化30】

【0187】
酸の活性化および反応は、当業者に既知であり、これに関して、この手順の中に既に記載されている。末端基をアームに固定する前に、本出願中に記載される手順にて、二酸B、およびジアミンAを連続的に結合することで、アームを延長することができる。
【0188】
[一般的手順(B)]
スルファニル-ピロリジン-2,5-ジオン(sulfanyl-pyrrolidine-2,5-dione)成分を、問題のチオールを含むペプチドを水に溶解することで形成してよい。有機溶媒を、可溶性を増大するために加えてよい。
【0189】
溶液は、例えばpH 0からpH 10の間、pH 3からpH 6の間、またはpH 5といった、適したpH値に緩衝され、例えば0から60℃といった、適した温度が維持される。問題のマレイミドが加えられ、スルファニル-ピロリジン-2,5-ジオン成分が、以下の反応模式図に従って形成される。
【化31】

【0190】
適したpH値は、例えば使用するペプチドの可溶性によって決まる。ペプチドの可溶性は、ペプチドのpKaによって、大部分決定される。普通、任意のペプチドの可溶性は、pHがペプチドのpKaと同じ値となるときに最小となる。pHが7から14の間の場合、その他の求核性アミノ酸側鎖が、マレイミド成分と反応することができ、上記の点を十分考慮して反応が進行するpHを選択することは、当該技術分野の範囲内である。
【0191】
[一般的手順(C)]
オキシム成分を、デンマーク特許出願PA 2003 01496であって現在WO2005035553として公開される文献に記載される通り、ケトまたはアルデヒド官能性を含む非天然のアミノ酸、N末端の酸またはC末端のアミンを含む、アシル基転移されたペプチドを水に溶解することで形成してよい。溶液は、例えばpH 0からpH 10の間、pH 3からpH 6の間、またはpH 5といった、適したpH値に緩衝され、例えば0から60℃といった、適した温度が維持される。問題のヒドロキシルアミンが加えられ、以下の反応模式図に従ってオキシム成分が形成される。
【化32】

【0192】
適したpH値は、例えば使用するペプチドの可溶性によって決まる。ペプチドの可溶性は、ペプチドのpKaによって、大部分決定される。普通、任意のペプチドの可溶性は、pHがペプチドのpKaと同じ値となるときに最小となる。上記の点を十分考慮して反応が進行するpHを選択することは、当該技術分野の範囲内である。
【0193】
[実施例1]:三量体化分子の合成
段階1、ジアミンの1基の保護:
50 gのジアミン(4,7,10-トリオキサ-1,13-トリデカンジアミン)を250 mlのジクロロメタンに溶解した。17.5 mlのトリフルオロ酢酸を、その無色透明の溶液に滴下して加えた。その溶液に、5時間かけて、2000 mlのジクロロメタンに溶解した49.5 gのジ-tert-ブチル-ジカーボネート(di-tert-butyl-dicarbonate)を滴下して加えた。反応混合物を、室温で一晩撹拌し、次に減圧により濃縮し、透明で黄色の油を得た。
【0194】
その油をジクロロメタンに溶解し、必要とする化合物を、0.1 N HCl (250 ml)で2度抽出した。
【0195】
水層を、280 mlの1 N NaOHで処理した。塩基性の水層を、250 mlのジクロロメタンで2度抽出した。得られた油層を合わせて、それをブライン(200 ml)で洗浄した。ジクロロメタンを、減圧して蒸発させ、透明で明黄色の油を得た。
【0196】
段階2、モノ-boc-アミン(mono-boc-amine)の中心ユニットへの結合:
1 gのニトリロ三酢酸を、15 mlのテトラヒドロフランに溶解した。4 gの1-ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt)および2.6 mlのジイソプロピルカルボジイミド(DIC)を加え、混合物を30分間撹拌した。5.4 gのモノ-boc-アミンおよび2.7 mlのジイソプロピルエチルアミン(DIPEA)を、活性エステルに加えた。反応混合物を、室温で一晩撹拌した。
【0197】
反応混合物は、減圧して濃縮し、水と酢酸エチル間で分配した(apportioned)。酢酸エチル層を、減圧により濃縮し、10 gの半結晶性油を得た。その油を、30%メタノールを含むジクロロメタンを用いて、シリカによるクロマトグラフィーを行った。油は、カラムを通過させた。画分を、減圧により濃縮し、残留物を酢酸エチルに再溶解した。飽和(sat.)炭酸水素ナトリウムで洗浄し、最後に飽和硫酸水素ナトリウムで洗浄した。酢酸エチル層を減圧により濃縮し、次にアセトニトリルでストリッピングした(stripped)。
【0198】
残った油を100 mlの50%トリフルオロ酢酸を含むジクロロメタンに溶解し、次に1時間室温で撹拌した。反応混合物を減圧濃縮した。
【0199】
混合物を、水と酢酸エチル間で分配した(apportioned)。水層を酢酸エチルで2度洗浄し、次に凍結乾燥して、9.5 gの黄色の油を得た。
【0200】
段階3、マレイミド部分の結合:
74 mgのβ-マレイミドプロピオン酸を6 mlのジクロロメタンに溶解し、0.18 mlのトリエチルアミンを加えた。無色透明の溶液を、氷水にて約0℃に冷却した。0.11 mlの塩化ピバロイル(pivaoylchloride)を、3 mlのジクロロメタンに溶解し、次に冷却した前記溶液を滴下して加えた。
【0201】
添加の後、反応混合物を、冷却せずに1時間撹拌した。赤色の溶液を乾燥するまで濃縮し、ジクロロメタンに再溶解した。
【0202】
この透明な赤色溶液を、ジクロロメタン中に段階4による100 mgのアミンおよび0.18 mlのトリエチルアミンを含む溶液に加えた。
【0203】
透明な赤色の反応混合物を、室温で一晩撹拌した。
【0204】
溶媒を、減圧により除去し、残った油をRP-HPLCを用いて精製した。
【0205】
[実施例2]:アルブミンの三量体化
実施例1により作製した化合物を、記載する方法によってアルブミンと反応させた:
33 mgのアルバゲン(Albagen)(組み換えヒトアルブミン)を、660μlに溶解し(〜1 mmM)、100μlずつ5つに分けた。
以下のサンプルを加えた:
1:何も加えない;
2:実施例1による30 mMの三量体化分子を10μl;
3:実施例1による15 mMの三量体化分子を10μl;
4:実施例1による7.5 mMの三量体化分子を10μl;
5:実施例1による3.75 mMの三量体化分子を10μl。
【0206】
サンプルをボルテックスし、その後室温で1時間静置した。1時間後、SDSゲルにより、三量体の形成が確認された。
【0207】
[実施例3]:MC4リガンドの三量体化
ニトリロトリス-{4-[4-(2-{[3-(2-{2-[3-(アセチルアミノ)- プロポキシ]-エトキシ}-エトキシ)-プロピルカルバモイル]-メトキシ}-アセチルアミノ)-ブトキシイミノ]- シクロヘキサンカルボニル-Gly-Ser-Gln-His-Ser-Nle-c[Glu-Hyp-D-Phe-Arg-Trp-Lys]-NH2} (SEQ ID NO:14)。
【化33】

【0208】
図中、2つのRは、三量体のその他の2つのアームを表しており、1つのアームを適当なスケールで示すため省略した。
【0209】
段階1:ペプチドの合成:
【化34】

【0210】
1.a:保護されたペプチジル樹脂4-オキソシクロヘキサンカルボニル-Gly-Ser(tBu)-Gln(Trt)-His(Trt)-Ser(tBu)-Nle-Glu(2-フェニルイソプロピルオキシ)-Hyp(tBu)-D-Phe-Arg(Pmc)-Trp(Boc)-Lys(Mtt)-(リンク樹脂(Rink resin))を、Fmoc方法に従い、アプライド・バイオシステムズ431Aペプチド合成機により、0.25 mmolのスケールで、NMP(N-メチルピロリドン)中でのHBTU ( 2-(1H-ベンゾトリアゾール-1-イル-)-1,1,3,3 ヘキサフルオロリン酸テトラメチルウロニウム)媒介カップリングを利用しおよびFmoc保護基の脱保護をUVによりモニタリングする「FastMoc UV」プロトコールを用いて合成した。合成に用いる出発樹脂は、0.51 mmol/gの(4-((2’,4’-ジメトキシフェニル)-(Fmoc-アミノ)メチル)-フェノキシ-ポリスチレン樹脂 (リンク樹脂(Rink resin))(Novabiochem)を0.50 g用いた。使用される保護されたアミノ酸誘導体は、Fmoc-Lys(Mtt)-OH、Fmoc-Trp(Boc)-OH、Fmoc-Arg(Pmc)-OH、Fmoc-D-Phe-OH、Fmoc-Hyp(tBu)-OH、Fmoc-Glu(2-フェニルイソプロピルオキシ)-OHおよびFmoc-Nle-OHであった。
【0211】
1.b:(1.a)により生成される樹脂を、60分間、2%トリフルオロ酢酸(TFA)、2%トリエチルシラン(TES)を含む10 mlのDCMで5回、規則的に混合(regular mixing)して処理した。樹脂を、NMP、5%DIEAを含むNMPおよびNMPにて洗浄した。ペプチドを、HOBt (1.0 mmol)、(ベンゾトリアゾール-1-イルオキシ)トリピロリジノホスホニウムヘキサフルオロホスフェート1H-ベンゾトリアゾール-1-イルオキシトリピロリジノホスホニウムヘキサフルオロホスフェート(PyBOP) (1.0 mmol)およびDIEA (2.0 mmol)を含むNMP (5 ml)を用いて、4時間規則的に混合して、環化した。樹脂をNMPおよびDCMにて洗浄した。
【0212】
1.c:2.5%の水および2.5%のTESを含む10 mlのTFA中で、室温で60分間撹拌することで、(1.c)で得られた樹脂からペプチドを切断した。切断した混合物をろ過し、ろ液を、窒素を通気して約1 mlになるまで濃縮した。粗製ペプチドを、50 mlのジエチルエーテルを用いて、この油から沈殿させ、50 mlのジエチルエーテルで3回洗浄した。
【0213】
粗製の環状ペプチドを、分取RP-HPLCによって精製した。
【0214】
段階2:三量体化成分の合成:
【化35】

【0215】
2.a ジアミンの1基保護:
50 gのジアミン(4,7,10-トリオキサ-1,13-トリデカンジアミン)を、250 mlのジクロロメタンに溶解した。17.5 mlのトリフルオロ酢酸を、その無色透明の溶液に滴下して加えた。49.5 gのジ-tert-ブチル-ジカーボネート(di-tert-butyl-dicarbonate)を含む、2000 mlのジクロロメタンを溶液に5時間にわたって滴下した。反応液を、室温で一晩撹拌し、その後減圧して濃縮し、透明な黄色油を得た。
【0216】
その油を、ジクロロメタンに溶解し、求める化合物を、2 x 0.1N HCl (250 ml)に抽出した。水層を280 mlの1N NaOHで処理した。塩基性の水層を250 mlのジクロロメタンで2度抽出した。まとめた有機層をブライン(200 ml)で洗浄した。ジクロロメタンを減圧して蒸発させ、透明な明黄色油を得た。
【0217】
2.b 中心ユニットへのモノ-boc-アミン(mono-boc-amine)の結合:
1 gのニトリロ三酢酸を、15 mlのテトラヒドロフランに溶解した。4 gの1-ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt)および2.6 mlのジイソプロピルカルボジイミド(DIC)を加え、混合物を30分間撹拌した。5.4 gのモノ-boc-アミンおよび2.7 mlのジイソプロピルエチルアミン(DIPEA)を、活性エステルに加えた。反応混合物を、室温で一晩撹拌した。
【0218】
反応混合物は、減圧して濃縮し、水と酢酸エチル間で分配した(apportioned)。酢酸エチル層を、減圧により濃縮し、10 gの半結晶性油を得た。その油を、30%メタノールを含むジクロロメタンを用いて、シリカによるクロマトグラフィーを行った。油は、カラムを通過させた。画分を、減圧により濃縮し、残留物を酢酸エチルに再溶解した。飽和炭酸水素ナトリウムで洗浄し、最後に飽和硫酸水素ナトリウムで洗浄した。酢酸エチル層を減圧により濃縮し、次にアセトニトリルでストリッピングした(stripped)。
【0219】
残った油を100 mlの50%トリフルオロ酢酸を含むジクロロメタンに溶解し、次に1時間室温で撹拌した。反応混合物を減圧濃縮した。
【0220】
混合物を、水と酢酸エチル間で分配した(apportioned)。水層を酢酸エチルで2度洗浄し、次に凍結乾燥して、9.5 gの黄色の油を得た。
【0221】
2.c 固定(anchoring)ユニットの作製:
6 gの(4-アミノブトキシ)カルバミン酸1,1-ジメチルエチルエステル(WO 2005014049 A2)を、20 mlのピリジンに溶解し、4.1 gのジグリコール酸無水物を加えた。透明で黄色の混合物を、次に0.5 N HCl(150 ml)に注ぎ、水層をジクロロメタンで抽出した。有機層を、硫酸マグネシウムで乾燥させ、溶媒を減圧して除去し、黄色油を得た。
【0222】
2.d 三量体化成分に固定ユニットを結合:
2.cにて作製された酸0.66 gを、5 mlのジクロロメタンに溶解し、0.29 mlのトリエチルアミンを加えた。溶液を、氷上で冷却し、0.25 ml塩化ピバロイル(pivaloyl chloride)を含む5 mlのジクロロメタンを加えた。2.bで作成されたテトラミン(tetramine) 0.53 gを、0.29 mlのトリエチルアミンとともに、5 mlに溶解した。この溶液に、混合した無水物を加え、混合物を一晩撹拌した。
【0223】
溶媒を、減圧により除去し、得られた油を、アセトニトリル/水 + 0.1% TFAを用い、逆相で、HPLCにより精製した。boc保護基を、10%TFAを含むジクロロメタンで処理して除去した。最終生成物は、逆相HPLCによって精製できる。好ましい分子は、三量体化の直前に脱保護し、精製せずに使用される。
【0224】
段階3:ペプチドの三量体化:
3.a:21 mgのペプチド(1.c)を、2 mlの水に溶解し、この溶液を6 mgの保護されていないトリオキシアミン(trisoxiamine)(2.d)に加えた。混合物を、室温で1時間撹拌した。次に、最終生成物を、セトリニトリル/水/0.1%TFAによる、逆相HPLCにより精製した。MS-のデータ: (M+4H)4+ = 1533。
【0225】
[実施例4]:hGHの三量体化
本実施例では、Ser-hGH (SEQ ID NO:15)の三量体化について記載する。
【0226】
以下の緩衝液を使用した:緩衝液A:135μlトリエタノールアミンおよび290μl 3-メチルチオプロパノールを含む20 mlの水、緩衝液B:1 mlに48.1 gのNaIO4を含む溶液、緩衝液C:1.2 mlの3-メチルチオプロパノールを含む80 mlの水。
【0227】
12 mgのSer-hGHを1.2 mlの緩衝液Aに溶解した。125μlの緩衝液Bを加え、サンプルをボルテックスした。30分後、タンパク質を、10000MW遮断フィルターを用いてろ過し、10 mlの緩衝液Cで5回洗浄した。
【0228】
Boc保護基を、1 ml TFAにて、1 mgのBoc-トライスター(Tristar)(実施例3の段階2参照)を切断した。30分後、TFAを窒素の通気にて除去し、トライスターは1 mlの水および10μlのTFAに溶解した。
【0229】
100μlのトライスター溶液を、酸化されたSer-hGH溶液600μlに加えた。pHをDIPEA(ジイソプロピルエチルアミン)にて、約4から5の値に合わせた。数分以内に三量体化が起こった。
【0230】
サンプルを、Agilent製Bioanalyzer 2100を用いて分析した。SDS-PAGEにより、hGHの二量体および三量体の形成が明らかになった。
【0231】
[実施例5]:インスリンの三量体化:
この実施例では、ヒトインスリン(A鎖の配列:SEQ ID NO:16、B鎖の配列:SEQ ID NO:17)の三量体化について記載する。B鎖を、活性化3-ベンゾイルプロピオン酸で誘導体化し、B1-(3-ベンゾイルプロピオニル)-インスリンとした。
【0232】
段階1:活性化3-ベンゾイルプロピオン酸の合成:
【化36】

【0233】
1 gの3-ベンゾイルプロピオン酸を、20 mlのテトラヒドロフラン(THF)に溶解した。1.15 mlのジイソプロピルエチル-アミン(DIPEA)を加え、混合物を0℃に冷却した。2.0 gの2-スクシンイミド-1,1,3,3-テトラ-メチルウロニウムテトラフルオロボラート(TSTU)を加え、混合物を0℃で30分撹拌した。
【0234】
撹拌を、室温で一晩続けた。沈殿物が、撹拌により形成された。その沈殿物をろ過により収集した。ろ液を、減圧濃縮し、酢酸エチルに再溶解した。有機層を、0.5 N HCl (3x25 ml)および飽和炭酸水素ナトリウム(3 x x25 ml)で洗浄した。有機層を減圧濃縮した。粉末を酢酸エチルに懸濁し、固形物を濾過用漏斗で収集した。固形物を室温で減圧乾燥した。
【0235】
段階2:インスリンの誘導体化
100 mgのA1,B29-ジ-Boc ヒトインスリンを、2 mlのDMSO(ジメチルスルホキシド)に溶解し、28μlのTEA(トリエチルアミン)を加えた。THF(1 ml)に溶解した活性化3-ベンゾイルプロピオン酸5.5 mgを加え、反応混合物を室温で4.75時間撹拌した。
【0236】
反応混合物を、アイスバスで冷却し、5 mlの水を加えた。pHを、1 N HClで5.2となるよう調整した。ペプチドを、5℃で1時間かけて沈殿させ、遠心分離により単離し、フリーザーで一晩保存した。
【0237】
次に、ペプチドをTFA(10 ml)で15分間処理し、氷で冷却したジエチルエーテル(35 ml)に注いだ。沈殿物を、遠心分離により単離した。
【0238】
段階3:三量体化:
【化37】

【0239】
8.4 gのboc保護三量体化分子を、10%トリフルオロ酢酸(TFA)を含むDCMに溶解し、15分間撹拌した。溶媒を窒素の通気により除去した。
【0240】
残留物を1000μlのDMSOに溶解し、この溶液840μlを、上記の通り作製されたインスリン誘導体に移した。pHを、1 N NaOHにより、約5に調整した。反応混合物を、室温で60時間混合した。500μlの脱イオン水を反応混合物に加え、96時間撹拌を続けた。
【0241】
SDS-PAGEにより、インスリンの二量体および三量体の形成が確認された。
【0242】
[医薬的方法]
〈三量体TNFR断片の親和性および有効性の測定〉
親和性は、L292またはWEHI 164細胞で、TNF誘導性細胞毒性試験にてTNFと競合させることにより、または既知のTNF結合タンパク質との結合および125I-ラベル化TNFαとの競合に基づくシンチレーション近接試験(scintillation proximity assay)によって、測定することができるが、これらの例に限られない。
【0243】
[試験(II)]
本発明による化合物の効果は、以下の試験により検査できる:
〈コラーゲン誘導RA〉
試験モデルが、以下の文献に記載されている:
Torbecke GJらによる、「マウスにおけるコラーゲンII型関節炎の誘導の間における、内在性腫瘍壊死因子およびトランスフォーミング成長因子βの関与(Involvement of endogenous tumour necrosis factor a and transforming growth factor beta during inductiom of collagen type II arthritis in mice.)」1992 PNAS, 89:7375-79;
Williams ROらによる、「抗腫瘍壊死因子が、マウスのコラーゲン誘導性関節炎における、関節疾患を改善する(Anit-tumor necrosis factor ameliorates joint disease in murine collagen induced arthritis.)」1992 PNAS, 89:9784-88;
Piguet PFらによる、「マウスにおけるコラーゲン関節炎の進展は、抗腫瘍壊死因子(TNF)抗体または組み換え可溶性TNF受容体による治療によって抑止される(Evolution of collagen arthritis in mice is arrested by treatment with anti-tumour necrosis factor (TNF) antibody or recombinant soluble TNF receptor.)」1992 Immunology, 77:510-14;
Wooley PHらによる、「マウスの2型コラーゲン誘導性関節炎における、組み換えヒト可溶性腫瘍壊死因子受容体Fc融合タンパク質の影響(Influence of a recombinant human soluble tumour necrosis factor receptor Fc fusion protein on type II collagen-induced arthritis in mice.)」 1993 J. Immunology, 151:6602-7。
【0244】
測定の指標は、関節炎インデックススコア、腫大した関節の直径、腫大した関節の数および上記の症状の発生の時間、ならびに関節の構造の組織学的評価である。
【0245】
[試験(III)]
TNFRの親和性の測定は、様々な試験法にて行うことができる。WEHI 164細胞におけるTNF誘導性細胞毒性試験もその1つである。細胞を、血清を含まず、シクロヘキシミド(cyclohexamide)およびED50の量(3nM)のTNFαの存在下で培養し、TNFR断片の希釈曲線を測定する。
【0246】
あるいは、ビオチン化されたTNFR、TNFR断片またはTNFR融合タンパク質と結合するストレプトアビジンを有するSPAビーズを用いて、シンチレーション近接試験(scintillation proximity assay)を行うことができる。ビーズは、125I-TNFαとインキュベートし、TNFR断片の希釈曲線を測定する。
【0247】
本出願に引用される、文献、特許出願および特許を含む全ての参考文献は、それぞれの参考文献が、参照により取り込まれることが独立におよび明確に示され、およびその全体が本出願にて説明されるかのように、同じ範囲で本出願に援用される。
【0248】
全ての表題および副題は、本出願において、便宜的にのみ使用されており、何れかの方法に本発明を限定して解釈されるべきでない。
【0249】
上述の要素の、全てのありうる変種における、何れかの組み合わせは、本出願中に記載がない限り、または前後関係から明らかに矛盾しない限り、本発明に包含される。
【0250】
本発明を記載する文中にて使用される、「a」および「an」および「the」という用語は、本出願中に記載がない限り、または前後関係から明らかに矛盾しない限り、単数形および複数形の両方を包含するよう解釈されるべきである。
【0251】
本出願における、値の範囲の列挙は、本出願中に記載がない限り、単にその範囲に入るそれぞれの値を独立に指す速記法(shorthand method)として役立つよう意図されており、それぞれの値は、独立に本出願に引用されるかのように明細書中に取り込まれる。言及がない限り、本出願で提供される全ての正確な値は、相当するおよその値を意味する(例えば、特定の因子または測定に関して提供される全ての正確な代表的値はまた、適切な場合に、「約」と修飾されて、相当するおよその測定値を提供するとみなすことができる)。
【0252】
本出願に記載される全ての方法は、本出願中に記載がない限り、または前後関係から明らかに矛盾しない限り、何れかの適した順番で行うことができる。
【0253】
本出願で提供される、何れかおよび全ての例、または例証的語句(たとえば「〜といった」)は、単に本発明をより明らかにするよう意図されており、記載がない限り本発明の範囲の限定を示さない。明細書中の何れの語句も、明示的にそう表されていない限り、何れの要素も本発明の実施に不可欠であることを示していると解釈されるべきでない。
【0254】
本出願中の、特許文献の引用および取り込みは、便宜的にのみ行われ、そのような特許文献の、有効性、特許性および/または実施可能性の何れの観点も反映しない。
【0255】
要素または要素群に関して、「含む(comprising)」、「有する(having)」、「含む(including)」または「含む(containing)」といった用語の使用による、本発明の何れかの側面または実施態様の本出願における記述は、本出願中に記載がない限り、または前後関係から明らかに矛盾しない限り、特定の要素または要素群「から成る」、それら「から、本質的に成る」、またはそれら「を実質的に含む」、本発明の同様な側面または実施態様の支持を提供するよう意図される(例えば、特定の要素を含むと本出願に記載される組成物は、本出願中に記載がない限り、または前後関係から明らかに矛盾しない限り、その要素から成る組成物を記載しているとも理解されるべきである)。
【0256】
本発明は、適用される法律により許される最大限の範囲で、本出願に示される側面または請求項に列挙される主題の、全ての修飾物および均等物を含む。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の一般式にて表される化合物:
【化1】

ここにおいて、Cxは、3つの独立したアームを支持する中心成分を表し;
それぞれのWは独立に、C1-6-アルキレン、C1-6-アルキレンオキシ、C1-6-アルキレン、C2-6-アルケニレン(alkenylene)、C2-6-アルキニレン(alkynylene)、ヒドロキシ-C1-6-アルキレン、ヒドロキシ-C2-6-アルケニレン(alkenylene)、C1-6-アルキレンオキシ、C2-6-アルケニレンオキシ(alkenyleneoxy)、C2-6-アルカノイレン(alkanoylene)、C2-6-アルケノイレン(alkenoylene)、または結合を表し;
それぞれのR’は、同一かまたは異なり、1以上の基Aおよび任意に1以上の基Bを含み、それぞれのR’はAから始まり、
ここにおいてAは以下の構造であり、
【化2】

ここで、rは1から50の何れかの数字であり、nおよびmは2以上の整数であり、
および、Bは、以下の構造であり、
【化3】

ここで、X、VおよびZは独立に、-CR1R2-、C3-8-シクロアルキレン、C4-8-シクロアルケニレン(cycloalkenylene)、-アリーレン-、-ヘテロアリーレン-、-ヘテロシクリレン(heterocyclylene)-、-O-、-S-、NR1、-OCH2CH2O-、-OCH2-、-CH2O-から選択され;
R1およびR2は独立に、H、C1-6-アルキル、C2-6-アルケニル、C3-8-シクロアルキル、C4-8-シクロアルケニルから選択され、またはR1およびR2は、共同してC2-6-アルキレンの架橋構造(bridge)を形成することができ、および
q、kおよびlは独立に、0、1、2、3、4、5または6から選択されるが、同時に全て0となることはなく;および
Yは、ペプチドとの共有結合に適した基である。
【請求項2】
以下の構造で表される、請求項1に記載の化合物。
【化4】

【請求項3】
Wが結合またはC1-6-アルキレンである、請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
以下の構造で表される、請求項1から請求項3の何れか1項に記載の化合物。
【化5】

【請求項5】
Aが以下の構造であり、
【化6】

およびrが0から25である、請求項1から請求項4の何れか1項に記載の化合物。
【請求項6】
rが0から10である、請求項5に記載の化合物。
【請求項7】
rが0から5である、請求項6に記載の化合物。
【請求項8】
rが0、1、2または3である、請求項7に記載の化合物。
【請求項9】
Aが以下の構造である、請求項1または請求項5から請求項8の何れか1項に記載の化合物。
【化7】

【請求項10】
請求項1から請求項9の何れか1項に記載の化合物であって、X、VおよびZが、独立に-CR1R2-、-O-、-S-、-NR1-、-OCH2CH2O-、-OCH2-、または-CH2O-を表す化合物。
【請求項11】
X、VおよびZが独立に-CR1R2-を表す、請求項10に記載の化合物。
【請求項12】
X、VおよびZが独立に-OCH2CH2O-、-OCH2-、または-CH2O-を表す、請求項10または請求項11に記載の化合物。
【請求項13】
X、VおよびZが独立に-(CH2)1-4-、-CH2(OCH2CH2O)1-6CH2-、または-CH2OCH2-を表す、請求項10に記載の化合物。
【請求項14】
X、VおよびZが独立に-(CH2)3-または-CH2OCH2-を表す、請求項13に記載の化合物。
【請求項15】
Bが以下の構造である、請求項10から請求項14の何れか1項に記載の化合物。
【化8】

【請求項16】
X、VおよびZが独立にアリーレンまたはヘテロアリーレンを表す、請求項1から請求項9の何れか1項に記載の化合物。
【請求項17】
Vがフェニレンである、請求項16に記載の化合物。
【請求項18】
VがC3-8-シクロアルキレンまたはC4-8-シクロアルケニレンである、請求項1から請求項9の何れか1項に記載の化合物。
【請求項19】
Vがシクロヘキシレン、シクロヘキセニレンまたはシクロペンチレンである、請求項18に記載の化合物。
【請求項20】
Vが、モルフォリニル、ピペラジニル、ジオキサニルまたはチエニルのジラジカル誘導体である、請求項1から請求項9の何れか1項に記載の化合物。
【請求項21】
請求項1から請求項20の何れか1項に記載の化合物であって、Yが以下の構造であり
【化9】

nが0以上の整数であり、および
R3およびR4が独立に水素、またはC1-6-アルキルを表す化合物。
【請求項22】
Yが以下の構造である、請求項21に記載の化合物。
【化10】

【請求項23】
Yが以下の構造で表される、請求項1から請求項22に記載の化合物。
【化11】

【請求項24】
請求項1から請求項23の何れか1項に記載の化合物であって、R’が以下の組み合わせから選択される化合物: A-B、A-B-A-B、A-B-A-B-A-B、A、A-B-AまたはA-B-A-B-A。
【請求項25】
2つのR’が同一である、請求項1から請求項24の何れか1項に記載の化合物。
【請求項26】
全てのR’が同一である、請求項1から請求項25の何れか1項に記載の化合物。
【請求項27】
全てのR’が異なる、請求項1から請求項24の何れか1項に記載の化合物。
【請求項28】
以下の式で表される化合物。
【化12】

【請求項29】
請求項1から請求項28の何れか1項に記載の化合物を含むペプチド三量体であって、基YがペプチドPに結合し基Y’P’を形成している、以下の一般式により表されるペプチド三量体。
【化13】

【請求項30】
請求項29に記載のペプチド三量体であって、Pが、TNFRファミリーのメンバー、その断片、その機能的類似体、またはその断片の機能的類似体であるペプチド三量体。
【請求項31】
請求項29に記載のペプチド三量体であって、Pが、α-MSH、その断片、その機能的類似体、またはその断片の機能的類似体であるペプチド三量体。
【請求項32】
請求項29に記載のペプチド三量体であって、Pが、GLP-1、その断片、その機能的類似体、またはその断片の機能的類似体であるペプチド三量体。
【請求項33】
請求項29に記載のペプチド三量体であって、Pが、インスリン、その断片、その機能的類似体、またはその断片の機能的類似体であるペプチド三量体。
【請求項34】
請求項29に記載のペプチド三量体であって、Pが、ヒト成長ホルモン、その断片、その機能的類似体、またはその断片の機能的類似体であるペプチド三量体。
【請求項35】
請求項29に記載のペプチド三量体であって、PがSEQ ID NO:1から7の何れか1つの配列を含むペプチド三量体。
【請求項36】
請求項29に記載のペプチド三量体であって、PがSEQ ID NO:1から7の何れか1つの配列から成るペプチド三量体。
【請求項37】
SEQ ID NO:1から7の何れか1つの配列を有するポリペプチド。
【請求項38】
請求項37に記載のポリペプチドをコードする核酸。
【請求項39】
ペプチド三量体を作製する方法であって、請求項1から請求項28の何れか1項に記載の化合物とペプチドPとの反応によりペプチド三量体を形成することを含む方法。
【請求項40】
請求項39に記載の方法であって、前記反応の前に、Pに、変異を起こさせることにより、または誘導体化することにより、アミン、チオール、またはヒドロキシル基が導入される方法。
【請求項41】
請求項39または請求項40に記載の方法であって、Pが、TNFRスーパーファミリーのメンバー、α-MSH、GLP-1、インスリン、ヒト成長ホルモン、それらの断片、それらの機能的類似体、それらの断片の機能的類似体、およびそれらの何れかの組み合わせから選択される方法。
【請求項42】
請求項41に記載の方法であって、TNFRスーパーファミリーのメンバーの機能的類似体が、SEQ ID NO:1から7の何れか1つである方法。
【請求項43】
前記化合物が以下の構造である、請求項39から請求項42の何れか1項に記載の化合物。
【化14】

【請求項44】
TNFの作用と拮抗することで利益を受ける疾病の治療のための薬剤の製造のための、請求項29から請求項36の何れか1項に記載のペプチド三量体の使用。
【請求項45】
請求項29から請求項36の何れか1項に記載のペプチド三量体を、医薬的に許容可能な賦形剤または担体とともに含む医薬組成物。

【公表番号】特表2008−509692(P2008−509692A)
【公表日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−526457(P2007−526457)
【出願日】平成17年8月16日(2005.8.16)
【国際出願番号】PCT/EP2005/054020
【国際公開番号】WO2006/018429
【国際公開日】平成18年2月23日(2006.2.23)
【出願人】(391032071)ノボ ノルディスク アクティーゼルスカブ (148)
【氏名又は名称原語表記】NOVO NORDISK AKTIE SELSXAB
【Fターム(参考)】