説明

ペラゴ藻抽出物含有組成物と、該ペラゴ藻抽出物含有組成物を配合した食品及び化粧料

【課題】ヒアルロニダーゼ阻害活性、抗酸化活性及び保湿能を併せ持つ素材乃至抗菌剤を提供できるようにすること。
【解決手段】黄色植物門ペラゴ藻網サルシノクリシス目であるサルシノクリシスの藻体から抽出された抽出物を含有させることによって解決できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微細藻類の一種であるペラゴ藻のサルシノクリシスの藻体から得られる抽出物であり、例えば、ヒアルロニダーゼ阻害活性、抗酸化活性、保湿能及び抗菌活性等の作用を有するペラゴ藻抽出物含有組成物と、該ペラゴ藻抽出物含有組成物を配合する食品及び化粧料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年のアレルギー患者数は急激に増え続けており、体質だけでなく、生活環境や食生活の乱れによる影響も考えられる。人体に安全で副作用を持たない抗アレルギー食品素材として甜茶エキスやシソ葉エキスがすでに広く認知されており、臨床研究、動物実験でアレルギー症状を緩和、予防することが確認されている。(耳鼻咽喉科展望;Vol.38,No.4,519〜532 1995、炎症;Vol.15,No.2,167〜173 1995)(Fragrance jounal;Vol.23,No.5,43〜48 1995、Vol.23,No.7,90〜94 1995)
【0003】
植物由来のヒアルロニダーゼ阻害剤は、日常的に摂取することで、風邪に伴う炎症やのどのはれ、花粉症、せきなどを予防・改善することができ、同時に、これらのヒアルロニダーゼ阻害剤を含む化粧品の使用により、皮膚のかゆみなどを改善することが可能であり、更に強力なヒアルロン酸分解阻害剤として皮膚や動脈壁、関節腔などに含まれるヒアルロン酸含量の低下を抑制し、間接的作用ではあるが、皮膚の保湿性および柔軟性を高め、加齢に伴う動脈効果を予防し、関節炎の改善などに寄与する発明が公知になっている。(特許文献1参照)
【0004】
一方、ストレスや紫外線、大気汚染等は活性酸素の原因となり、体内で酸化が進むと生活習慣病や老化として現れてくる。現代の社会環境において、ストレスは万病の元といっても過言ではなく、その対処法が難しい。また、オゾン層破壊による紫外線量の増加や自動車からの排気ガス等様々な活性酸素から身を守ることは健康を保つために重要となる。近年ではストレスを軽減する目的で、水溶性抗酸化物質でもあるビタミンCやビタミンB群のサプリメントを利用することも勧められおり、しみの予防改善にも水溶性抗酸化物質のビタミンCが利用されている。
【0005】
また、化粧品素材として広く認知されているヒアルロン酸は、動物由来や微生物を利用した醗酵のもので保湿効果が高いため、化粧料の保湿剤として多くの商品に利用されている。また、ヒアルロン酸は肌の保湿効果だけでなく、関節液や軟骨の成分で、炎症を抑える食品としても利用されている。
【0006】
更に、現在化粧料に使用されている抗菌剤は、ほとんどが合成原料であり、中でもパラベンは接触性皮膚炎、アレルギー性皮膚炎の原因物質となる可能性が高いとされている。更に、その化学構造が環境ホルモンのノニルフェノールに似ており、人の正常なホルモン作用に異常を起こしたり、人体に蓄積して妊娠中の胎児に悪影響を与えるといわれている。
【0007】
ところで、近年、自然素材である微細藻類を原料とする化粧類や食品が注目されている。この微細藻類を使用するための技術としては、例えば、単細胞藻を構成する多糖体であって、ペラゴ藻綱に属する単細胞藻から剥がした外被を構成する多糖体であることを特徴とする単細胞藻の外被から得られた多糖体がある(特許文献2参照)。
【0008】
この特許文献2の公知技術においては、ペラゴ藻の藻体自体を利用するものではなく、ペラゴ藻の単細胞藻から剥がした外被を構成する多糖体を利用する技術に関するものである。
【0009】
【特許文献1】特開平7−10768号公報
【特許文献2】特開2005−281397号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従来、黄色植物門ペラゴ藻網サルシノクリシス目であるサルシノクリシスは、藻体の周りに多糖を持ち、熱により外れやすい性質を持っている。これまでその多糖を用いて生分解性プラスチックや浄水剤の開発が行われているが、構造解析や生理活性に関する報告はない。
【0011】
従って、本発明の目的としては、従来報告されていない種類の微細藻類からの抽出物を有効成分とするヒアルロニダーゼ阻害活性、抗酸化活性及び保湿能を併せ持つ素材乃至抗菌剤を提供し、また更に、該剤を含有する食品および化粧料を提供するということを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者等は、上記の課題を解決し、所期の目的を達成するために微細藻類について鋭意検討を行った結果、黄色植物門ペラゴ藻網サルシノクリシス目であるサルシノクリシスに属する微細藻類の抽出物がヒアルロニダーゼ阻害活性、抗酸化活性、保湿能乃至抗菌活性を有していることを見出して本発明を完成するに至った。
【0013】
そこで、本発明においては、上記した従来例の課題を解決する具体的手段として本発明に係る第1の発明として、黄色植物門ペラゴ藻網サルシノクリシス目であるサルシノクリシスの藻体から抽出された抽出物を含有していることを特徴とするペラゴ藻抽出物含有組成物(ヒアルロニダーゼ阻害活性、抗酸化活性及び保湿能を併せ持つ素材乃至抗菌剤)を提供するものである。
【0014】
また、第2乃至第3の発明として、前記ペラゴ藻抽出物含有組成物を配合した食品及び化粧料を提供するものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明の第1の発明に係るペラゴ藻抽出物含有組成物は、黄色植物門ペラゴ藻網サルシノクリシス目であるサルシノクリシスの藻体から抽出された抽出物を含有しているものであるため、ヒアルロニダーゼ阻害活性、抗酸化活性、保湿能及び抗菌活性等の作用に優れた素材として利用できるものであり、これらの作用を有する製品、例えば、ヒアルロニダーゼ阻害活性剤または抗菌剤等として利用することができるばかりでなく、前記ペラゴ藻抽出物含有組成物を食品または化粧料等に配合させることによって、ヒアルロニダーゼ阻害活性、抗酸化活性、保湿能及び抗菌活性等の作用を有する食品及び化粧料を提供することができるという優れた効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
次に、本発明を具体的な実施の形態に基づいて詳しく説明する。
本発明の実施の形態に係るペラゴ藻抽出物含有組成物は、黄色植物門ペラゴ藻網(Pelagophyceae)サルシノクリシス目(Sarcinochrysidales)であるサルシノクリシス(Sarcinochrysis)の藻体から抽出された抽出物を含有するものであり、また、前記ペラゴ藻抽出物含有組成物を配合した食品及び化粧料である。
【0017】
原料として用いる微細藻類の一種であるペラゴ藻のサルシノクリシスとしては、天然のものをその侭利用することもできるが、安定供給の面から培養により増殖させて使用することが望ましい。藻類は光合成を行って自らのエネルギーとしているため、培養は光照射の下に藻類培養用の培地を用い、通常の培養方法により行うことができる。但し、藻類によって培養方法が若干異なるために最適な培養条件を設定する必要があり、具体的な培養条件を述べれば下記の通りである。
【0018】
〔サルシノクリシスの培養〕
一般的な海産性藻類を培養する際に用いられているものであれば格別な制限はなく、例えば、f/2 mediumを用いることができる。即ち、新鮮な濾過海水999mLに対してNaNO 75mg、NaSiO・9HO 10mg、Thiamine HCl 0.5μg、Biotin 0.5μg、Cyanocobalamin 100μgを添加した溶液を調製し、これにEDTA 2Na・2HO 4.4g/L、FeCl・6HO 3.16g/L、CoSO・7HO 12mg/L、ZnSO・7HO 21mg/L、MnSO・4HO 180mg/L、CuSO・5HO 7mg/L、NaMoO・2HO 7mg/Lを含有する微量元素混合液を1mL添加した後、121℃、20分間オートクレーブ滅菌をし、NaHPO・HO 6mgを添加することにより培地を調製した。この培地に、サルシノクリシス(Sarcinochrysis sp.)の細胞を接種し、2リットル容のガラス製扁平フラスコにて培養した。この時の照度を10−30μ Einsteins/m/secに設定し、連続光照射下で行うのが好ましい。培養温度は20−30℃であり、25℃付近が望ましい。
【0019】
このようにして得られたサルシノクリシスの藻体から抽出物を抽出してペラゴ藻抽出物含有組成物を製造する方法と、該ペラゴ藻抽出物含有組成物のヒアルロニダーゼ阻害活性試験、抗酸化試験、保湿試験、安全性試験、抗菌試験と、抗炎症剤、抗酸化剤、保湿剤或いは抗菌剤の製造方法とに関するより具体的な実施例を挙げ、本発明を更に詳しく説明する。
【0020】
[実施例1]
この実施例1においては、以下のようにして製造した。
(熱水による抽出物の抽出方法)
収穫したサルシノクリシスの藻体を脱塩処理後、凍結乾燥を行い、得られた乾燥藻体5gに水1000mLを加え、90℃以上で3時間攪拌抽出を行った。その後、遠心分離を行い、上清をガラスフィルターにてろ過をして熱水抽出液を得た。この熱水抽出液を1/5〜1/6まで濃縮し、4倍容量のエタノールを添加して一晩放置後、沈殿物を回収し、凍結乾燥して粉末を得て、これを実施例1とした。
【0021】
[酸性糖の確認]
藻類には生理活性を持つ酸性糖がいくつか知られていることから、前記実施例1に含まれる酸性糖を調べるため、イオン交換樹脂による精製を行った。イオン交換樹脂はDEAE−TOYOPAL(デアエ−トヨパール)650Mを使用し、溶出溶媒は、水と1M塩化ナトリウム溶液でグラジエント溶出を行った。その結果を表1に示す。
【0022】
(表1)


【0023】
[構成糖の確認]
次に、前記実施例1を構成する構成糖を調べるため、ガスクロマトグラフィーによる分析を行った。すなわち、加水分解した前記実施例1に水素化ホウ素ナトリウム10mg、1Mアンモニア水0.1mLを加え、40℃で90分間保持後、無水酢酸0.1mLで還元反応を停止した。次に、1−メチルイミダゾール 0.2mL、無水酢酸2mLの順で加え、室温で40分間超音波をかけることでアセチル化を行った。更に約2mLの蒸留水で反応停止後、冷却しつつクロロホルム2mLを加え、抽出し、クロロホルム層は蒸留水で洗浄後、無水硫酸ナトリウムで脱水し、濃縮後に少量のアセトンを加えた。その結果を表2に示す。
【0024】
(表2)


【0025】
これら表1及び表2の結果より、サルシノクリシスの多糖は、中性糖が95.8%、酸性糖が3.69%で、その構成比は、アラビノース:キシロース:マンノース:グルコース=1.7:1.2:0.4:0.04であることが分かった。
【0026】
[試験例1]
この試験例1においては、前記実施例1について、下記の方法でそのヒアルロニダーゼ阻害活性を測定した。その結果を表3に示す。
(ヒアルロニダーゼ阻害活性試験方法)
0.1M酢酸緩衝液(pH4.0)に溶解した被験試料と同緩衝液を合わせて0.2mL試験管に取り、同緩衝液に溶解したヒアルロニダーゼ溶液(type IV−S 最終酵素活性:400NF units/mL、Sigma社製)を0.1mL加え、37℃で20分間インキュベートし、更に、活性化剤溶液(Compound 48/80 (Sigma社製)、CaCl、NaClの最終濃度がそれぞれ0.1mg/mL、2.5mM、0.15Mとなるように同緩衝液に溶解したもの)を0.2mL加え、37℃で20分間インキュベートした。
【0027】
これに、同緩衝液に溶解したヒアルロン酸Na溶液(最終濃度:0.4mg/mL)を0.5mL加え、37℃で40分間インキュベートした後、0.4N水酸化ナトリウム溶液を0.2mL加えた。氷冷後、ホウ酸溶液(pH9.1)0.2mLを加え、3分間煮沸後氷冷し、p−ジメチルベンズアルデヒド試薬6mLを加え、37℃で20分間インキュベート後、585nmにおける吸光後を測定した。指標として、DSCG(クロモグリク酸ナトリウム)(比較例1)を用いた。また、対照として被験試料の代わりに同緩衝液を用い、それぞれのブランクとして、酵素溶液の代わりに同緩衝液を用いた。なお、阻害活性は次の式から求められる阻害率で表した。
阻害率(%)=〔(A−B)−(C−D)〕/(A−B)×100
A:対照溶液のA585
B:対照溶液のブランクのA585
C:試料溶液のA585
D:試料溶液のブランクのA585
【0028】
(表3)


【0029】
この表3の結果より、本発明に係るペラゴ藻抽出物含有組成物(実施例1)におけるヒアルロニダーゼ阻害活性は、指標として使用したヒスタミン遊離阻害薬であるDSCG(クロモグリク酸ナトリウム)(比較例1)の2.4倍の阻害活性が認められた。
【0030】
この試験法は、花粉症などのI型アレルギー抑制の第1次スクリーニングとして広く用いられているものである。因みに、特開平9−118627号公報によれば、この試験法でDSCGと同等の活性がある甜茶熱水抽出物は日常的に摂取することで炎症や花粉症、せきなどを予防、改善することができ、あるいは化粧品を使用することで皮膚のかゆみなどを改善することができるという報告もされている。
【0031】
また、近年、花粉症は国民病ともいわれ、国民の約2割が花粉症と診断され、更にその予備軍が2割ほど存在すると考えられている。更に、アレルギー性鼻炎、気管支喘、皮膚炎などの治療薬として使用されている抗ヒスタミン剤の服用で不整脈の副作用が発生していることから、安全で副作用のない抗アレルギー剤の開発が進められており、甜茶もその1つであることより、本発明に係るペラゴ藻抽出物含有組成物にも十分その可能性があると考えられる。
【0032】
[試験例2]
この試験例2においては、前記実施例1について、下記の方法でその抗酸化活性を測定した。その結果を表4に示す。
(β−カロテン退色法による抗酸化試験方法)
β−カロテン溶液(100mg/100mL,クロロホルム)7.5mL、リノール酸溶液(10g/100mL,クロロホルム)1.0mL、Tween 40溶液(20g/100mL,クロロホルム)5.0mLをナス型フラスコにとり、エバポレーターでクロロホルムを完全にとばした後、水500mLを加え溶解し、リノール酸−β−カロテン溶液を作製した。
【0033】
この溶液45mLに、0.2Mリン酸緩衝液(pH6.8)を4mL加え静かに攪拌した。これに被験試料を1mL加え、55℃で加温し、20分ごとに470nmの吸光度を測定した。指標としてBHA(ブチルヒドロキシアニソール)(比較例2)を用いた。また、それぞれのブランクとして、β−カロテン溶液を加えないものについて同様に行った。抗酸化活性は、被験試料添加直後の吸光度値を100とした。
【0034】
(表4)


【0035】
この表4の結果より、本発明に係るペラゴ藻抽出物含有組成物(実施例1)における抗酸化活性は、指標として使用した酸化防止剤であるBHA(ブチルヒドロキシアニソール)(比較例2)の1000倍の濃度で同等の抗酸化活性が認められた。
【0036】
[試験例3]
この試験例3においては、前記実施例1について、下記の方法でその保湿能を測定した。その結果を図1及び図2に示す。
(保湿試験方法)
あらかじめ測定部位である前腕内側部を石鹸で洗浄し、温度22℃、湿度44%に保った測定室内で20分以上安静にした後、前腕内側部に0.2%被験試料を10μL/cm塗布し、肌水分測定器(SKIN DIAGNOSTIC SD 27)を使用して肌水分量を測定した。指標としてヒアルロン酸ナトリウム(比較例3)を用いた。対照には被験試料の代わりに水を用い、ブランクとして、何も塗布しない箇所を測定した。水分増加量は、塗布前の肌水分量を1とした。
【0037】
これら図1及び図2の結果より、本発明に係るペラゴ藻抽出物含有組成物(実施例1)における保湿効果は、塗布1分後に塗布前の7倍の水分量となり、その後120分後まで塗布前の3〜5倍以上の水分量を保った。指標として使用した保湿効果の高いヒアルロン酸ナトリウムは、塗布1分後に塗布前の4倍の水分量で、その後120分後まで塗布前の3倍前後の水分量であった。さらにこの実施例1とヒアルロン酸ナトリウムを7日間塗布しつづけた結果、実施例1はヒアルロン酸ナトリウムより高い水分量が保たれた。このことから、ペラゴ藻抽出物含有組成物(実施例1)には保湿効果の高いヒアルロン酸ナトリウムより優れた保湿効果が認められた。
【0038】
[試験例4]
この試験例4においては、前記実施例1について、下記の方法でその安全性試験を行った。その結果を表5に示す。
(パッチテストによる安全性試験方法)
0.3%被験試料(実施例1)および水(比較例4)をパッチテスト用絆創膏(リバテープ製薬(株)製)に0.3mL塗末し、上腕内部に貼付して、24時間後の皮膚の反応を検査した。
【0039】
(表5)


【0040】
この表5の結果より、本発明に係るペラゴ藻抽出物含有組成物(実施例1)におけるパッチテスト(安全性試験)の結果は、被験者6名全症例において、陽性反応はなく、このペラゴ藻抽出物含有組成物における安全性が確認された。
【0041】
[試験例5]
この試験例5においては、前記実施例1について、下記の方法でそのpH安定性について検査した。その結果を表6に示す。
(pH安定性試験方法)
0.3%被験試料に0.1mol/L HCl又は0.2mol/L NaOHを加え、各pHに調整し、直後のpHと外観、および各温度に一週間放置し、外観を観察した。
【0042】
(表6)


○:変化なし、△:濁り発生、×:沈殿発生
【0043】
この表6の結果より、本発明に係るペラゴ藻抽出物含有組成物(実施例1)をpH3〜11に調整した溶液の安定性は、1週間各温度で放置後の外観に変化は見られず、化粧品原料として性状的安定性が確認された。
【0044】
[試験例6]
この試験例6においては、前記実施例1について、下記の方法でその化粧品原料との相溶性について検査した。結果を表7に示す。
(化粧品原料との相溶性試験方法)
0.3%被験試料と表7に記載した化粧品原料を1:1の割合で混合し、直後のpHと外観、および各温度に一週間放置し、外観を観察した。
【0045】
(表7)


○:変化なし、△:濁り発生、×:沈殿発生
【0046】
この表7の結果より、本発明に係るペラゴ藻抽出物含有組成物(実施例1)を化粧品原料と混合した溶液の安定性は、1週間各温度で放置後の外観に変化は見られず、化粧品原料として性状的安定性が確認された。
【0047】
[実施例2]
この実施例2においては、以下のようにして製造した。
(アルコールによる抽出物の抽出方法)
収穫した藻体を脱塩処理後、凍結乾燥を行い、得られた乾燥藻体10gに50%エタノール100mLを加え、90℃以上で3時間還流抽出を行った。その後、遠心分離を行い、上清をガラスフィルターにてろ過をした後、エタノールを完全に除去して凍結乾燥して粉末を得て、これを実施例2とした。
【0048】
[試験例7]
この試験例7においては、前記実施例1および前記実施例2について、下記の方法でその抗菌活性を測定した。その結果を表8に示す。
(チャレンジテストによる抗菌試験方法)
各濃度に調製した被験試料1mL当たりに前培養した黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus subsp.Aureus Rosenback 1884 IAM1011)を10個植菌し、25℃で保管した。生菌数の測定は、菌接種直後、1日後、3日後、7日後にSCDLP培地を使用し、30℃で48時間培養した。指標(比較例5)は通常化粧品の防腐剤として使用されているパラベンを使用した。
【0049】
(表8)




(単位:cfu/mL)

【0050】
この表8の結果より、本発明に係る実施例1のペラゴ藻抽出物含有組成物について抗菌力を測定した結果は、黄色ブドウ菌に対する抗菌活性は認められなかったが、前記実施例2の50%エタノールにより抽出したペラゴ藻抽出物含有組成物の黄色ブドウ菌に対する抗菌活性は、通常化粧品の防腐剤として使用されているパラベンの2000倍の抗菌活性が認められた。
【0051】
アトピー性皮膚炎や化粧品のアレルギー疾患、更に近年の生活習慣によって敏感肌となる患者が増えている中で、化粧品に使用する原料の選択が重要となる。実施例2の50%エタノールにより抽出したペラゴ藻抽出物含有組成物は天然原料から抽出し、その使用量も少ない防腐剤として、期待のできる化粧品原料である。
【0052】
これら熱水によって抽出したペラゴ藻抽出物含有組成物(実施例1)およびアルコールによって抽出したペラゴ藻抽出物含有組成物(実施例2)は、食品または化粧料等に配合させることによって、その作用を有する商品として応用することができる。以下、食品または化粧料にペラゴ藻抽出物含有組成物を配合させた場合について説明する。
【0053】
[実施例3]
この実施例3においては、ペラゴ藻抽出物含有組成物を配合した食品の一例として、前記実施例1を0.1%配合したクッキーを表9に示した組成で製造した。なお、食品としては、前記クッキーに限るものではなく、例えば、機能性食品、飴、トローチ、ガム、ヨーグルト、アイスクリーム、プディング、ゼリー、水ようかん、ふりかけ、コーヒー飲料、ジュース、炭酸飲料、清涼飲料水、牛乳、乳清飲料および乳酸菌飲料等を含むいずれの食品であっても良く、また、食品添加物または飼・餌料等に配合させることもできる。
【0054】
(表9)


【0055】
[実施例4]
この実施例4においては、ペラゴ藻抽出物含有組成物を配合した化粧料の一例として、前記実施例1を0.3%配合したローションを表10に示した組成で常法により製造した。
【0056】
(表10)


【0057】
[実施例5]
この実施例5においては、ペラゴ藻抽出物含有組成物を配合した化粧料の一例として、前記実施例2を0.1%配合したローションを表11に示した組成で常法により製造した。
【0058】
(表11)


【0059】
なお、化粧料としては、前記ローションに限るものではなく、例えば、化粧水、乳液及びクリーム等を含むいずれの化粧料であっても良く、また、シャンプー、ボディシャンプー、リンス、石鹸等を含む医薬部外品等に配合させることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明の実施例1に係るペラゴ藻抽出物含有組成物における効果を確認するための試験例3(保湿試験)の結果を示したものであり、即時保湿効果を表すグラフである。
【図2】同試験例3(保湿試験)の結果を示したものであり、角層水分量への効果を表すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
黄色植物門ペラゴ藻網サルシノクリシス目であるサルシノクリシスの藻体から抽出された抽出物を含有していること
を特徴とするペラゴ藻抽出物含有組成物。
【請求項2】
請求項1に記載のペラゴ藻抽出物含有組成物を配合していること
を特徴とする食品。
【請求項3】
請求項1に記載のペラゴ藻抽出物含有組成物を配合していること
を特徴とする化粧料。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−120575(P2009−120575A)
【公開日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−298966(P2007−298966)
【出願日】平成19年11月19日(2007.11.19)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 2007年5月27日 第10回マリンバイオテクノロジー学会大会において文書をもって発表
【出願人】(593206964)マイクロアルジェコーポレーション株式会社 (17)
【Fターム(参考)】