説明

ペルメチル化シクロデキストリンを含む医薬製剤

本発明は、医薬活性物質として適用するための医薬製剤に関する。本発明によれば、該製剤は、a)芳香族基または芳香族部分を有し、分子が≦2 nmの最大直径を有する医薬活性物質;b)グルコピラノースユニット当たり3個のメチル基の置換度をもつペルメチル化シクロデキストリンを含む。ペルメチル化シクロデキストリンおよび医薬活性物質は、複合体を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、たとえば、術前不安の軽減用または麻酔目的用製剤などの医薬製剤に関する。
【背景技術】
【0002】
調剤学における頻繁な問題は、医薬活性物質が、特定の方法を用いて、所望の濃度で、かつ、できるだけ効率的に、意図する作用部位へデリバリーされるように該物質を製剤することである。静脈内投与を対照とする活性物質は、血中の全身濃度を達成するために、ある程度まで水溶性でなければならない。一方、活性物質は、もし、意図する作用部位において、あるいは細胞膜を通り抜けて、浸透することができるべきであるならば、通例、ある程度の親油性をもたなければならない。良好な水溶性しかもたない活性物質は、たとえば、静脈内投与後に高い血中全身濃度を達成するかもしれないが、たとえば、もし、該物質が、不十分な親油性しかもたないならば、意図する作用部位において細胞膜を通って不十分にしか浸透しないという可能性があるので、そのバイオアベイラビリティは低いものとなるだろう。
【0003】
たとえば、経粘膜適用などの特定の投与方法にとって、粘膜を通っての浸透は、非常にゆっくりであるか、あるいは遅れて浸透し、したがって、活性物質の十分な全身濃度は達成されないか、あるいは非常にゆっくりとしか達成されないので、活性物質のバイオアベイラビリティは、損害を受けるかもしれない。これらの問題は、いわゆる不安緩解の例のために、以下に明らかにされる。
【0004】
通常、患者は、麻酔および手術前に前投薬を受ける。その第1目的は、いわゆる不安緩解によってストレスを軽減または予防することである。関連する研究によれば、患者の術前の精神状態は、血液循環の手術中の調子および術後鎮痛薬の必要性に著しい影響を及ぼす。不安緩解が不十分であると、たとえば、麻酔導入中の吸引の危険性を伴う胃酸分泌の増加を引き起こしうる。これは、生命を脅かしうる。
通常、従来技術において、ベンゾジアゼピンが不安緩解のために用いられている。
手術の日における前投薬として一般に、麻酔開始の45〜60分前に短時間作用型のベンゾジアゼピン、特にミダゾラムの経口投与が行われる。
【0005】
経口投与におけるバイオアベイラビリティは、非常に変化しやすく、したがって、計算するのが困難である。不適切な不安緩解を伴う可能性がある不正確な用量を除外することはできない。
【0006】
さらに、経口投与において、十分な血漿濃度に到達するための蓄積時間(45〜60分間)は、病院での時間管理における要件と、もはや両立しえない。手術用機器の高い稼働率を達成するために、患者は通例、ちょうど15分前の予告によって、手術に呼ばれる。この短時間前の予告は、ベンゾジアゼピンの経口投与を介する不安緩解を十分なものにしない。
経粘膜適用のための溶液を提供するためのβ−シクロデキストリンとミダゾラムの製剤が、すでに提案されている(WO−A−01/30391)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、十分かつ確実に予測できる作用のプロフィールをもつ、活性物質の安全で信頼できる適用を可能にする、冒頭に述べたような種類の医薬製剤を確立するという課題に基づく。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の医薬製剤は、
a)芳香族基または芳香族部分を有し、分子が≦2 nmの最大寸法を有する医薬活性物質;
b)グルコピラノースユニット当たり3個のメチル基の置換度をもつペルメチル化シクロデキストリン;
を含み、ペルメチル化シクロデキストリンおよび医薬活性物質は、複合体を形成する、ことが構想される。
【0009】
従来技術(WO−A−01/30391)において、シクロデキストリンが、医薬活性物質を複合するため、必要に応じて水溶液中で安定化させるため、あるいは可溶性にし、その膜通過能力を増加させるための賦形剤として、すでに提案されている。
【0010】
本発明は、驚くべきことに、特別のシクロデキストリン、すなわち、グルコピラノースユニット当たり3個のメチル基の置換度をもつペルメチル化シクロデキストリンが、一方で、非常に良好な安定化を可能にし、水溶液中で親油性活性物質でさえ複合し、他方で、膜を通っての活性物質の通過を促進することを認識している。
【0011】
シクロデキストリンは、一般に、トロイダル形であり、対応した形状の空洞を有する。本発明において用いるペルメチル化シクロデキストリンは、請求項1でより正確に定義するように、一方で、医薬活性物質の複合、他方で、その作用部位における放出の標的化を補助するという多くの有利な特性を有する。ペルメチル化によって生じるOH基の完全な不在は、複合の目的のための空洞内への疎水性医薬活性物質(芳香族基または芳香族部分)の進入を促進する。もしメチル化が不完全ならば、空洞の入り口または端は、シクロデキストリン上に依然として存在し、疎水性活性物質の複合をより困難にするOH基により親水性でありうる。
【0012】
本発明は、さらに、もしメチル化が不完全ならば存在する、残りのOH基が、水素架橋結合の形成を経て、水溶液中におけるシクロデキストリン分子の望ましくない凝集または集塊ことを認識している。ペルメチル化シクロデキストリンの使用は、これを防止する。
【0013】
本発明によれば、複合される医薬活性物質(ゲスト分子)は、2 nm以下の分子の最大寸法を有さなければならず、芳香族基または芳香族部分を有さなければならない。このことは、芳香族の特徴である電子非局在化が、ゲスト分子の少なくとも1つの部分に起こることを意味する。したがって、ゲスト分子は、疎水性およびシクロデキストリン空洞内への包接のために適したサイズを有する。ゲスト分子が、末端親水性基を有さないのが好ましく、末端OH基を有さないのが特に好ましい。
【0014】
本発明によれば、凝集/集塊しない複合体は、水溶性であり、形成される水溶液中で安定であり、医薬活性物質を作用部位へ迅速かつ確実にデリバリーすることができる。ペルメチル化シクロデキストリンの驚くべき改良された作用についての可能な説明は、ペルメチル化シクロデキストリンが、増大した親油性を有し、したがって、膜との相互作用が促進され、したがって、シクロデキストリン複合活性部室の吸収が促進されうるということである。
【0015】
本発明で用いるシクロデキストリンの高い親油性は、オクタノール/水溶媒系中の対応する物質の分配係数を表すlogP値の高値に反映される。本発明によれば、このlogP値は、少なくとも5であるのが好ましく、少なくとも7であるのがより好ましい。ペルメチル化β−シクロデキストリンのlogP値は、9である。
【0016】
シクロデキストリンは、6個(α−シクロデキストリン)、7個(β−シクロデキストリン)または8個(γ−シクロデキストリン)のグルコピラノースユニットを有する。各グルコピラノースユニットは、置換(本発明の場合メチル化)されうる3個のOH基を有する。ペルメチル化シクロデキストリンは、完全に、すなわち、置換度が3で置換される。
シクロデキストリンのうち、β−シクロデキストリンが特に好ましい。
【0017】
本発明で用いるシクロデキストリンは、極性の外表面および内側に疎水性の空洞を有する。それらが、親油性医薬活性物質と複合して、それを水溶性にするのが好ましい。薬理学的作用部位において、複合体は、容易に膜が貫通されうるように(おそらく膜におけるシクロデキストリンの「ドッキング」を経て)、活性物質を放出する。
【0018】
標的細胞における医薬品の取り込みは、通常、利用できる細胞膜を横切る輸送システムがないので、受動的に行われることが多い。拡散による生体膜を通り抜ける医薬品の受動的流れの程度は、医薬品の親油性および膜におけるその濃度勾配によって主に決定される。しかしながら、これらの2つの条件は、相反することが多い。親油性が高いこと(したがって、作用部位における細胞膜の受動貫通のための良好な能力)は、水溶性の低さを意味することが多く、問題の医薬品は、細胞膜の外側の水性相における溶解度が低いので、大きな濃度勾配が、バリヤーとして働く膜を横切って展開することはできない。
【0019】
本発明の医薬製剤において、好ましい親油性医薬活性物質が、複合体として良好な水溶性を有し、したがって、高濃度で膜に接近できるように、シクロデキストリンと複合されるのが好ましい。いったん医薬活性物質が膜に輸送されると、親油特性が膜の貫通中に優位を占めるような様式で放出されると思われる。本発明の製剤によれば、その水溶性により、複合体によって、高い濃度勾配が膜バリヤーを横切って確立されるようになり、同時に、医薬活性物質の親油性が、膜バリヤーの高い貫通率を生み出すことができる。したがって、通例、従来技術では相反するものである、薬理学的作用部位における細胞膜の良好な貫通のための2つの因子が、本発明によれば、驚くべきことに、相乗的に組み合わせられる。
【0020】
医薬活性物質とシクロデキストリンの複合体の複合定数Kが、10〜70 l/mol、好ましくは15〜65 l/mol、より好ましくは20〜55 l/mol、特に好ましくは30〜40 l/molであるのが好ましい。この範囲の複合定数は、水溶液系における複合体の十分な安定性を確実にするが、意図する作用部位の膜における医薬活性物質の放出を可能にする。
【0021】
本発明の医薬製剤のpHは、好ましくは4〜7、特に好ましくは5.5〜6.5である。これは、たとえば、刺激またはその他の不快な副作用なしの経粘膜適用が可能であるように、粘膜のpHに相当する。
【0022】
本発明の医薬製剤は、さまざまな医薬活性物質を含む。医薬活性物質のlogP値が、少なくとも3であるのが好ましい。このことは、オクタノール/水混合物中のこの活性物質の分配平衡の常用対数が、少なくとも3であることを意味する。
したがって、それは、医薬活性物質の親油性の尺度である。本発明に用いうる医薬活性物質のlogP値は、非常に高い値であることができ、約200のlogPを有するハロタンなどの親油性物質に言及することができる。
【0023】
ペルメチル化β−シクロデキストリンは、直径約0.6〜0.65 nmおよび高さ約2 nmの空洞を有し、医薬活性物質を受け入れるのに適している。したがって、空洞のこのサイズに適合する活性物質が好ましい。
【0024】
上述したように、したがって、本発明の製剤は、意図する作用部位における医薬活性物質のバイオアベイラビリティを増大させるのに適している。この作用機序において、製剤の複合体は、医薬の作用部位にデリバリーされ(たとえば、血流を介して)、そこで、複合体から活性物質が放出され、細胞膜を通過する。シクロデキストリン自体は、細胞膜を貫通することはできない。
【0025】
本発明のもう1つの態様によれば、本発明製剤は、(シクロデキストリン複合体を用いて)血流を経て作用部位へ活性物質を輸送することによってバイオアベイラビリティを確実にすることができるのみならず、特定の投与方法において、その経時プロフィールに関して十分に確実に予測することもできる、活性物質の十分に高い全身濃度を確立することも初めて可能にしている。本発明のこの態様において、本発明の複合体製剤は、実際の作用部位では活性物質を放出しないが、たとえば経粘膜適用において、活性物質の特定の全身濃度が迅速かつ予想通りに築かれるように、粘膜を通っての活性物質の通過を改良する。したがって、本発明のこの態様において、活性物質は、粘膜を通る通路においてシクロデキストリン複合体からすでに放出される。
したがって、本発明の製剤は、経粘膜適用のための製剤にも適している。
【0026】
経粘膜適用のための医薬製剤は、調和する賦形剤とともに製剤された医薬活性物質(任意に、数種の活性物質であってもよい)を含み、活性物質(1種または数種)は、粘膜(特に、鼻粘膜および/または口腔粘膜)を通って完全に、または実質的に、全身的に吸収される。経粘膜適用は、適切な血清レベルの確立が、消化管の環境および測り知れないもの(腸内吸収後の肝臓を通る通過による初回通過効果)に左右されないので、活性物質の、より速い、より確実な、そして、より容易に計算された全身蓄積を可能にする根本的な利点を有する。本発明の製剤は、特に、経鼻、舌内、腸内または口腔前庭適用において製剤されうる。腸内吸収もまた、この製剤の利点でありうる。
【0027】
特に好ましい医薬活性物質は、ベンゾジアゼピンである。ベンゾジアゼピンは、たとえば、アルプラゾラム、ブロチゾラム、クロルジアゼポキシド、クロバザム、クロナゼパム、クロラゼパム、デモキサゼパム、フルマゼニル、フルラゼパム、ハラゼパム、ミダゾラム、ノルダゼパム、メダゼパム、ジアゼパム、ニトラゼパム、オキサゼパム、ミダゼパム、ロラゼパム、プラゼパム、クアゼパム、トリアゾラム、テマゼパムおよびロプラゾラムから選ぶことができる。これらのベンゾジアゼピンのうち、ミダゾラムが特に好ましい。
【0028】
医薬製剤中のベンゾジアゼピンの割合は、好ましい態様において、0.5〜2 重量%、特に、1 重量%である。製剤が、水溶液であるのが好ましい。
【0029】
本発明はさらに、たとえば、経粘膜適用のための、医薬製剤の製造のための、グルコピラノースユニット当たり3個のメチル基の置換度をもつペルメチル化シクロデキストリンの使用に関する。本発明の使用は、術前不安緩解用医薬品の製造のためであるのがさらに好ましい。
【0030】
本発明のもう1つの態様によれば、本発明の医薬製剤は、静脈内投与に利用しやすい、水に不溶であるか、またはわずかしか溶けない活性物質の製造に用いることができる。このことは、プロポフォールを例として説明される。
【0031】
プロポフォールは、1977年に初めて臨床診療において試験された静脈内麻酔薬である。脂肪乳剤中のこの麻酔薬の溶液(商品名:ディプリバン(Diprivan:登録商標))は、静脈内適用において観察されることが多い静脈瘤性神経痛を軽減することができ、プロポフォールは1989年に臨床診療に導入された。
【0032】
このプロポフォール脂肪乳液は、大豆油、グリセロールおよび卵ホスファチドを含む。注射時の静脈瘤性神経痛は、よくある問題である。さらに、重篤なアレルギー反応がありうる。脂肪乳液としての製剤は、微生物増殖を促進するので、もし、乳液が汚染されるならば、保管期間が短くても、適用後に敗血症が発現するかもしれない。
【0033】
本発明によれば、医薬活性物質は、前述の欠点のいずれも有さない、上記のメチル化度を有するシクロデキストリンとプロポフォールの複合体として形成されうる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の実施態様および比較例についてのミダゾラムの血清レベルにおける変動を示す。
【発明を実施するための形態】
【0035】
実験セクションに示すように、本発明のプロポフィル製剤は、従来技術の脂質乳剤と比べて、非常に低い用量で、等効力を有する。脂質乳剤の製剤のための賦形剤を必要としないので、微生物汚染による敗血症の可能性という前述の問題も起こらない。
本発明を実施する実施例を以下に記載する。
【実施例1】
【0036】
経粘膜適用のためのミダゾラム製剤
経鼻適用のための1%ミダゾラム製剤を以下の通り製剤する:
ミダゾラム: 10 mg
ペルメチル化β−シクロデキストリン
(メチル化度:3) 150 mg
ヒプロメロース400: 1 mg
濃H3PO4: 2.6 mg
NaOH 10%: pH4.2が得られるのに十分な量
ソルビン酸カリウム: 1.4 mg
水: 1 mlにする
【0037】
ヒプロメロース400は、分子量約400のヒドロキシプロピルメチルセルロースである。粘膜のための湿潤剤として働く。得られる溶液のpHは、4.2である。
【0038】
本実施例において、シクロデキストリン:医薬活性物質の重量比は、15:1である。本発明の範囲内で、シクロデキストリン:医薬活性物質の比は、50:1〜10:1、特に、40:1〜12:1、そして、なお特に、20:1〜12:1が一般的に好ましい。
【0039】
各ケースにおいて、5人の被験者のグループに、経粘膜適用によって、0.75 mlのこの溶液(7.5 mgのミダゾラムを含む)を投与した。
従来技術と比較するために、それぞれ5人の被検者からなる3つのさらなるグループに、7.5 mg ミダゾラムを含む同量の活性物質を以下のように投与した:
比較例1:本発明の実施例におけるペルメチル化β−シクロデキストリンをヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリンと置き換えた。
比較例2:ラズベリージュースに溶解し、経口で、7.5 mgのミダゾラム。
比較例3:錠剤の形態で、経口で、7.5 mgのミダゾラム。
【0040】
比較例1については、シクロデキストリンを交換する以外は、実施例1と同様の処方を用いた。
それぞれの適用後の時間の関数として、ミダゾラムの血清レベルにおける変動の平均値を図面に示す。本発明の製剤が、最高の血清レベルを達成する最速の蓄積および最長の作用時間を兼ね備えていることがわかる。
【0041】
病院では、わずか15分前の予告によって患者が手術に呼ばれることが多いことを最初に説明した。したがって、ミダゾラムなどの短期作用型ベンゾジアゼピンは、実際にいつ手術が行われるかを知ることなく、単純に「山勘」で投与することはできないので、この期間が、不安緩解の前投薬のために利用可能である。
【0042】
図面から、ちょうど15分後、本発明の製剤のみが、すでに不安緩解効果をもつ顕著な血清レベルを築き上げたことがわかる。従来技術の適用形態(複合剤としてのヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリンの経粘膜適用など)のすべてが、15分後までに血清レベルを築き始めることはない。実際には、このことは、従来技術の不安緩解の前投薬が、15分後には、ほとんど効果がなく、したがって、その目的をまったく達成していないことを意味する。
【実施例2】
【0043】
静脈内適用のためのプロポフォール製剤
2種類の1%プロポフォール製剤を利用した。大豆油、グリセロールおよび卵ホスファチドからなる乳剤性基剤中に1%プロポフォールを含む、商品名ディプリバン(登録商標)で入手可能な脂質乳剤を、従来技術の製剤として利用した。
本発明製剤:
プロポフォール: 10 mg
ペルメチル化β−シクロデキストリン 80.2 mg
濃H3PO4: 2.6 mg
NaOH 10%: pH6.8が得られるのに十分な量
水: 1 mlにする
【0044】
この製剤を、以降、CD−プロポフォールと呼ぶ。
各12匹の体重48〜53 kgのゲッチンゲン・ミニ・ピッグを無作為化し、ディプリバンおよびCD−プロポフォールで麻酔した。投与は、末梢静脈カテーテルにて行った。
【0045】
脳状態モニタリング(CSM)および対応する脳状態指数(CSI)の記録によって麻酔深度をモニターした。40〜60のCSIを、望ましい麻酔深度として設定した。パルスオキシメトリー(SaO2値の測定)およびカプノメトリー(pCO2値の測定)により、心電図(ECG)を記録することによって麻酔をさらにモニターした。
前述の麻酔深度に到達するための等効力用量は、本発明製剤で87.5 ± 12.5 mg、従来技術の製剤(ディプリバン)で225 ± 12.5 mgであった。
【0046】
本発明製剤は、より速い蓄積および減退を示す。本発明製剤は、投与後1分で効力を生じ始めるが、従来技術の製剤では、この時間間隔は2分である。本発明製剤の作用は、19分後に終わるが、従来技術の製剤は、25.5分後に終わる。従来技術とは対照的に、本発明製剤は、エマルジョン分解(emulysis)を引き起こさない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
医薬活性物質を適用するための医薬製剤であって、
a)芳香族基または芳香族部分を有し、分子が≦2 nmの最大直径を有する医薬活性物質;
b)グルコピラノースユニット当たり3個のメチル基の置換度をもつペルメチル化シクロデキストリンを含み;
ペルメチル化シクロデキストリンおよび医薬活性物質が、複合体を形成する;ことを特徴とする医薬製剤。
【請求項2】
シクロデキストリンが、β−シクロデキストリンである請求項1に記載の医薬製剤。
【請求項3】
pHが、4〜7、好ましくは5.5〜6.5である請求項1または2に記載の医薬製剤。
【請求項4】
医薬活性物質とシクロデキストリンの複合体の複合定数Kが、10〜70 l/mol、好ましくは15〜65 l/mol、より好ましくは20〜55 l/mol、特に好ましくは30〜40 l/molである請求項1〜3のいずれか1つに記載の医薬製剤。
【請求項5】
医薬活性物質が、少なくとも3のlogP値を有する請求項1〜4のいずれか1つに記載の医薬製剤。
【請求項6】
経粘膜適用のために製剤される請求項1〜5のいずれか1つに記載の医薬製剤。
【請求項7】
経鼻、舌内、腸内または口腔前庭適用のために製剤される請求項6に記載の医薬製剤。
【請求項8】
医薬活性物質が、ベンゾジアゼピンを含む請求項1〜7のいずれか1つに記載の医薬製剤。
【請求項9】
ベンゾジアゼピンが、アルプラゾラム、ブロチゾラム、クロルジアゼポキシド、クロバザム、クロナゼパム、クロラゼパム、デモキサゼパム、フルマゼニル、フルラゼパム、ハラゼパム、ミダゾラム、ノルダゼパム、メダゼパム、ジアゼパム、ニトラゼパム、オキサゼパム、ミダゼパム、ロラゼパム、プラゼパム、クアゼパム、トリアゾラム、テマゼパムおよびロプラゾラムから選ばれる請求項8に記載の医薬製剤。
【請求項10】
ベンゾジアゼピンの含量が、0.5〜2 重量%である請求項8または9に記載の医薬製剤。
【請求項11】
静脈内適用のための麻酔薬の製剤である請求項1〜5のいずれか1つに記載の医薬製剤。
【請求項12】
プロポフォールを含む請求項11に記載の医薬製剤。
【請求項13】
静脈適用のための術前不安緩解のための医薬品または麻酔薬の製造のための請求項1〜12のいずれか1つに記載の医薬製剤。

【図1】
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【公表番号】特表2011−516441(P2011−516441A)
【公表日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−502290(P2011−502290)
【出願日】平成21年4月1日(2009.4.1)
【国際出願番号】PCT/EP2009/002381
【国際公開番号】WO2009/121585
【国際公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【出願人】(595118674)
【氏名又は名称原語表記】Norbert Roewer
【出願人】(510264132)
【氏名又は名称原語表記】Jens BROSCHEIT
【Fターム(参考)】