説明

ペン入力手段を備える電子機器及びプッシュキー

【課題】プッシュキーにおいて、ペンによる入力を可能とするとともに、ペン入力による新たな処理機能を加えて入力機能を拡張する。
【解決手段】プッシュキー11のキートップ12の表面に、ペンPの操作に感応するペン入力スイッチ16を設ける。このプッシュキー11によれば、キートップ12表面をペンで操作するとペン入力スイッチ16が感応して、プッシュキー11とは別の入力処理が行われる。従って、押釦式スイッチ21の数を増やすことなく、ペン入力による新たな処理機能を加えて入力機能を拡張できる。具体的には、キートップ12の中央部にペン差し込み用の凹部13を形成するとともに、その凹部13内にペン入力スイッチ16を設ける。これにより、キートップ12中央部の凹部13にペンを差し込んでペンによる入力が行え、さらに、そのキートップ凹部13内に設けたペン入力スイッチ16がペンの差し込みにより感応する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、入力手段としてペン入力手段(ペン入力用タッチパネル)とともにペン入力可能なプッシュキーを備える電子機器と、ペン入力が行えるプッシュキーに関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器のキーボード、例えば携帯電話機のキーボードは、キーが独立していて一般に指先で押し下げるプッシュキーが採用されている。
そして、プッシュキーによるキーボードに加えてペン入力手段を備える電子機器としては、表示部にペン入力用タッチパネル(タブレット)が設けられたPDA(Personal Digital Assistants)や、キーボード部にペン入力用タッチパネル(タブレット)が設けられたノート型のパソコンなどが既に製品化されている。
また、携帯電話機などの通信機能付き携帯端末でも製品化が検討されており、例えばPDAと同様に表示部にペン入力用タッチパネル(タブレット)を設けた構成のもの(特許文献1参照)や、ノート型のパソコンと同様にキーボード部にペン入力用タッチパネル(タブレット)を設けた構成のもの(特許文献2参照)が提案されている。
【0003】
これらの製品化済み及び製品化検討中の電子機器において、キーボード部に設けられているプッシュキーのキー機能は、アプリケーションに基づく自動切り替え、入力モードを切り替えるための専用のキーやシフトキーを操作することによる手動切り替えが行われるようになっている。すなわち、現在どのアプリケーションが作動しているかによってキー機能が自動的に切り替えられ、入力モード切替キーを操作すると、ローマ字入力モードとかな入力モードの切り替えなどが行え、シフトキーを押した状態で所望キーを操作すると、大文字と小文字の切り替えなどが行える。
【0004】
なお、PDA等の携帯型電子機器のキーボードとして、表面に複数の凹部を形成するとともに、その凹部の底にキー様要素を配置した提案もある(特許文献3参照)。このキーボードによれば、ペンを凹部に差し込むことでキー様要素が作動する。
【特許文献1】特開2003−338864号公報
【特許文献2】特開2003−289349号公報
【特許文献3】特開平7−295706号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、前述した製品化済みの電子機器及び製品化検討中の電子機器(特許文献1・2)のプッシュキーは、その押し下げ操作により作動するスイッチの数に応じてアプリケーションの自動切替機能及び入力モードの手動切替機能が得られるもので、キー入力の機能拡張に限界があった。
【0006】
また、特許文献3に提案されるキーボードは、ペンによる入力ミスを防止するため、キー様要素に対応する差し込み用の凹部を形成したものであり、指入力が行えるものではなかった。従って、携帯電話機に適用しても、指押しによる入力に加えてペンによる入力が可能となるだけで、キー入力の機能拡張は不可能であった。
【0007】
本発明の課題は、入力手段としてペン入力手段(ペン入力用タッチパネル)とともにプッシュキーを備える電子機器において、プッシュキーの入力機能を拡張することである。
また、本発明の課題は、プッシュキーにおいて、ペンによる入力を可能とするとともに、ペン入力による新たな処理機能を加えて入力機能を拡張することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以上の課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、例えば図1から図4に示すように、プッシュキー11のキートップ12の表面に、ペンPの操作に感応するペン入力スイッチ16を設けたことを特徴とする。
【0009】
請求項1に記載の発明によれば、キートップ表面をペンで操作するとペン入力スイッチが感応して、プッシュキーとは別の入力処理が行われる。
【0010】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のプッシュキー11であって、例えば図1から図4に示すように、前記キートップ12の中央部にペン差し込み用の凹部13を形成するとともに、その凹部13内に前記ペン入力スイッチ16を設けたことを特徴とする。
【0011】
請求項2に記載の発明によれば、キートップ中央部の凹部にペンを差し込んでペンによる入力が行え、さらに、そのキートップ凹部内に設けたペン入力スイッチがペンの差し込みにより感応する。
【0012】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載のプッシュキー11であって、例えば図5に示すように、前記ペン入力スイッチ16は、前記凹部13内の底面に離間して対向配置され、導電体によるペン先の接触により導通する一対の導電素子(例えばスイッチ電極等)19からなることを特徴とする。
【0013】
請求項3に記載の発明によれば、凹部内の底面に離間して対向配置された一対の導電素子が導電体によるペン先の接触により導通することで、ペン入力スイッチが作動する。
【0014】
請求項4に記載の発明は、請求項1から3のいずれか一項に記載のプッシュキー11であって、前記ペン入力スイッチ16の作動時に発光状態が変化する発光キーであることを特徴とする。
【0015】
請求項4に記載の発明によれば、ペン入力スイッチの作動時に発光状態が変化する発光キーによるプッシュキーとすることで、指入力とペン入力との入力形態の違いに応じたキー発光状態の変化により入力処理機能を分別できる。
【0016】
請求項5に記載の発明は、例えば図1から図4または図6に示すように、ペン入力手段(例えばタッチスクリーン、タッチパッド等)5・7とプッシュキー11を備える電子機器(例えば携帯電話機等)において、前記プッシュキー11のキートップ12の表面に、ペンPの操作に感応するペン入力スイッチ16を設けたことを特徴とする。
【0017】
請求項5に記載の発明によれば、ペン入力手段とともに備えられるプッシュキーのキートップ表面をペンで操作するとペン入力スイッチが感応して、プッシュキーとは別の入力処理が行われる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、キートップ表面をペンで操作するとペン入力スイッチが感応して、プッシュキーとは別の入力処理が行え、すなわち、押釦式スイッチの数を増やすことなく、ペン入力による新たな処理機能を加えて入力機能を拡張できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、図を参照して本発明を実施するための最良の形態を詳細に説明する。
本発明を適用する電子機器の一実施形態として携帯電話機を示す図1において、1はキーボード、2は各種入力キー、3はファンクションキー、4は十字カーソルキー、5はタッチスクリーンである。
本体側のキーボード1において、図示のように配列してなる各種入力キー2及びファンクションキー3はプッシュキー11により構成されている。蓋体側に設けられるタッチスクリーン5は、液晶画面による表示部にペン入力手段であるタブレット(ペン入力用タッチパネル)を重ね合わせて構成されている。
【0020】
プッシュキー11、例えば各種入力キー2の表面には、図2に部分的に拡大して示すように、各々の入力機能を表す数字・平仮名文字・アルファベット文字がそれぞれ表示されている。各プッシュキー11の指押し時に、図3及び図4に示すように、押釦式スイッチであるドームスイッチ21が作動して各々の機能に対応した文字入力処理がなされる。
すなわち、プッシュキー11は、キーボード1の筐体10に組み込まれたキートップ12を指で押し下げると、キーシート(キーラバー)23の押釦部24の下面に設けられた突部25がドームスイッチ21を押し下げて、ドームスイッチ21がスイッチ用基板20上のスイッチ電極22に接触することで所定のキー入力処理がなされる。
なお、図4に示したように、キートップ12は、その平行する内面に形成した係合突部14を、押釦部24の平行する外面に形成した係合凹部26に係合することで、押釦部24に一体化して組み付けられている。
【0021】
このような各プッシュキー11のキートップ12の中央部に、スタイラスペンやシャープペンシルなどのペンPのペン先を差し込むためのペン差し込み用の凹部13がそれぞれ形成されている。この凹部13は、キートップ12を貫通する小孔状のもので、図示例では円形テーパ状に形成されている。
そして、各凹部13内には、ペンPのペン先の接触により作動するペン入力スイッチ16が配置されている。このペン入力スイッチ16は、図示のように、キートップ12下面と押釦部24上面との間に介装されるペン入力用スイッチシート15に設けた感圧素子や導電素子(スイッチ電極)などにより構成されている。
従って、スタイラスペンやシャープペンシルなどのペンPのペン先を凹部13に差し込むと、そのペン先による押し下げでペン入力スイッチ16が感応して接続状態となって作動し、プッシュキー11の指押しによる指入力とは別の入力処理がなされる。
【0022】
以上において、プッシュキー11のドームスイッチ(押釦式スイッチ)21とペン入力スイッチ16が構造的に同時に閉じられてしまうような場合でも、ソフト的・ハード的な既知の処理方法によって両スイッチの押し下げ感応時は指入力と判断して処理することができる。例えば二系統スイッチを論理回路に投入して出力を整備したり、二系統の同時押し下げをソフト的に検出したりして処理するようにすれば良い。
【0023】
そして、ペン入力スイッチ16のみが作動した場合には、文字入力以外の入力機能に基づき、例えば機能設定、電話帳登録、カメラ起動など利用機能の選択に基づいた入力処理が行われる。
具体的には、各種入力キー2において、例えば1キーに機能設定、2キーにアドレス帳、3キーにデータフォルダ、4キーに静止画カメラ撮影、5キーに動画カメラ撮影、6キーにネット接続設定、7キーにメール機能、8キーにブラウザ機能などの割り当てが可能である。こうすれば、例えば5キーの凹部13にペンPのペン先を差し込めば、ペン入力スイッチ16が作動して、携帯電話機の表示画面が直ちにビデオ撮影画面に入り、撮影準備状態になる。
また、同じ文字入力でも、入力方式を変えることもできる。例えばプッシュキー11の指押し時(指入力時)に仮名漢字変換モードで動作し、ペン利用時(ペン入力時)に英数入力モードで動作するなどの処理が可能である。
【0024】
以上のように、各プッシュキー11において、ドームスイッチ(押釦式スイッチ)21の数を増やすことなく、ペン入力スイッチ16により新たな処理機能を加えて入力機能を拡張できる。すなわち、各プッシュキー11の数に対応して、ドームスイッチ(押釦式スイッチ)21の数に加えて、ペン入力スイッチ16の数が増えたスイッチ数となる。
そして、キートップ12中央部の凹部13内にペン入力スイッチ16が位置していることから、そのペン入力スイッチ16が例えば指での押圧操作に感応する素子(感圧素子など)であったとしても、指押し操作にペン入力スイッチ16が感応しないので、誤動作することがない。
【0025】
なお、例えばキートップ12の表面上に凹部13の周囲を突出させて環状突出部を形成しておけば、指押し時に凹部13内に入るのを環状突出部により防止できる。その環状突出部の形状は任意である。
【0026】
次に、図5はペン入力スイッチ16の一つであるスタイラススイッチを例示したもので、凹部13内の底面に、図示のようにドーナツを半分に割ったような一対の導電素子(電極)19を離間させて対向配置したものである。すなわち、このスタイラススイッチ(ペン入力スイッチ)16は、ペン入力用スイッチシート15に形成された図示のようなスイッチ配線露出部17において、ペン入力用スイッチシート15内に形成されたスイッチ配線部18の端部の導電素子(スイッチ電極)19を対向配置して構成されている。
この場合、スタイラスペンのペン先を導電体としておき、凹部13内の底面にペン先が当たると、その導電体により一対の導電素子19が導通するようにする。
このように、スタイラスペンの導電体によるペン先の接触により一対の導電素子19が導通するスタイラススイッチをペン入力スイッチ16に採用しても良い。
【0027】
この場合、プッシュキー11を内部に発光体を有する発光キーとして、スタイラススイッチ(ペン入力スイッチ)16の作動時、すなわち、一対の導電素子19の導通時に発光状態が変化するようにしても良い。
具体的には、例えばペン入力時にプッシュキー11の一部あるいは前部が強く発光し、または、逆に減光・消灯するように設定しておく。
このように、指入力とペン入力との入力形態の違いに応じてプッシュキー11のキー発光状態を変化させることで、入力処理機能を分別できるといった利点が得られる。
【0028】
次に、図6は携帯電話機の変形例を示すもので、図1のタッチスクリーン5によるペン入力手段に代えて、タッチパッド7によるペン入力手段としたものである。
すなわち、蓋体側に液晶画面による表示部6が設けられていて、本体側には、図1の十字カーソルキー4に代えて、ファンクションキー3で囲まれたその位置にペン入力手段であるタブレット(ペン入力用タッチパネル)7が設けられている。
このような変形例においても、キーボード1の各種入力キー2及びファンクションキー3は前述したプッシュキー11により構成されている。
【0029】
なお、以上の実施形態においては、携帯電話機のキーボードとしたが、本発明はこれに限定されるものではなく、他にPDA等の携帯端末のキーボード、ノートパソコン・デスクトップパソコン・サーバーのキーボードなどコンピュータ一般のキーボード、鍵盤電子楽器・鍵盤楽器のキーボードなど電子楽器一般のキーボード等、他の電子機器のキーボードであっても良い。
また、実施形態では、ペン入力スイッチを機械式スイッチとしたが、ペン差し込みに感応するタッチセンサー(圧力センサー)、光学式センサーなど同様のスイッチ機能が得られれば他のスイッチであっても良い。
さらに、キー配列やキー形状及びその凹部形状等も任意であり、その他、具体的な細部構造等についても適宜に変更可能であることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明のキーボードを適用する電子機器の一実施形態として携帯電話機の構成を示すもので、タッチスクリーンを備えた携帯電話機を示した概略斜視図である。
【図2】図1のキーボード部分の一部を拡大して示した平面図である。
【図3】プッシュキーの断面を示すもので、図1の矢印A−A線に沿った拡大断面図である。
【図4】図1の矢印B−B線に沿った拡大断面図である。
【図5】スタイラススイッチの例を示した平面図である。
【図6】携帯電話機の変形例を示すもので、タッチパッドを備えた携帯電話機を示した概略斜視図である。
【符号の説明】
【0031】
1 キーボード
2 各種入力キー
3 ファンクションキー
5 タッチスクリーン(ペン入力手段)
7 タッチパッド(ペン入力手段)
10 筐体
11 プッシュキー
12 キートップ
13 ペン差し込み用凹部
14 係合突部
15 ペン入力用スイッチシート
16 ペン入力スイッチ
17 スイッチ配線露出部
18 スイッチ配線部
19 導電素子(スイッチ電極)
20 スイッチ用基板
21 押釦式スイッチ(ドームスイッチ)
22 スイッチ電極
23 キーシート(キーラバー)
24 押釦部
25 スイッチ押し用突部
26 係合凹部
P ペン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プッシュキーのキートップの表面に、ペンの操作に感応するペン入力スイッチを設けたことを特徴とするプッシュキー。
【請求項2】
前記キートップの中央部にペン差し込み用の凹部を形成するとともに、
その凹部内に前記ペン入力スイッチを設けたことを特徴とする請求項1に記載のプッシュキー。
【請求項3】
前記ペン入力スイッチは、前記凹部内の底面に離間して対向配置され、導電体によるペン先の接触により導通する一対の導電素子からなることを特徴とする請求項1または2に記載のプッシュキー。
【請求項4】
前記ペン入力スイッチの作動時に発光状態が変化する発光キーであることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載のプッシュキー。
【請求項5】
ペン入力手段とプッシュキーを備える電子機器において、
前記プッシュキーのキートップの表面に、ペンの操作に感応するペン入力スイッチを設けたことを特徴とする電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−19919(P2006−19919A)
【公開日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−194210(P2004−194210)
【出願日】平成16年6月30日(2004.6.30)
【出願人】(000001443)カシオ計算機株式会社 (8,748)
【Fターム(参考)】