説明

ページ幅インクジェットプリントヘッド及び同プリントヘッドを駆動する方法

【課題】 ページ幅インクジェットプリントヘッド及び同プリントヘッドを駆動する方法を提供すること。
【解決手段】 画像を印刷するために、所定の温度範囲内においてページ幅インクジェットプリントヘッドを駆動する方法は、少なくとも一つの温度センサと温度判別ユニットとによって基板の温度を検知するステップと、温度が所定のしきい値を下回るかをインク吐出駆動ユニットが判定するステップと、温度が所定のしきい値を下回るとプリントヘッドが所定のしきい値を超える温度に加熱されるようにアクチュエータを加熱する予熱工程を実行するステップと、熱アクチュエータが、プリントヘッドからインクを吐出するには不十分であるエネルギーによって加熱されるように、予熱工程を制御するステップとを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェットプリンタのような超小型電子機械装置に関する。
【背景技術】
【0002】
国際特許出願PCT/AU9S/00550において、本出願人は、ノズルチャンバの配列からインクのような流体を吐出させるために熱湾曲アクチュエータによって駆動されるプリントヘッドの構造において、超小型電子機械(mems)プロセスを用いるインクジェット印刷装置を提案した。
【0003】
この種の装置は多くの制限及び不都合を有する。
本発明の目的は、1つ以上の従来技術の不都合を克服するか、もしくは少なくとも改善するか、あるいは有用な代替物を提供するインクジェット印刷装置の様々な態様を提供することにある。
【発明の概要】
【0004】
本発明の第1の態様によると、インクを吐出するための一連のノズルを有し、前記ノズルの各々は犠牲層を覆うリム材料層の適応した被着(conformal deposition)により形成されたリムと、続いて前記ノズルリムを形成するよう少なくともリム材料層を平面エッチングすることとを有するインクジェットプリントヘッドが提供される。
【0005】
平面エッチングは、リム材料層及び任意の関係する犠牲層の化学的機械的平坦化(chemical−mechanical planarization)である。
本発明の第2の態様によると、1つの壁上にインク吐出口を、第2の壁上にアクチュエータ相互連絡口をそれぞれ有する複数のノズルチャンバと、ノズルチャンバ内に配置され、インク吐出口からインクを吐出するために、外部熱アクチュエータの制御下においてアクチュエータ相互連絡口を介して可動な可動インク吐出パドルと、外部アクチュエータは、該アクチュエータの作動部分の周囲をアクチュエータから離間された保護被覆シェルによって被覆されていることとからなるインクジェットプリントヘッドを提供する。
【0006】
保護被覆シェルは、インクジェット印刷構成物の他の部分、特にノズルチャンバ壁の形成と同時に形成され得る。
保護被覆シェルは犠牲材料層の被着及びエッチング、次いで被覆シェルを形成する不活性材料の被着及びエッチングにより形成され得る。
【0007】
外部アクチュエータは熱湾曲アクチュエータからなり得る。
本発明の第3の態様によると、基板上にインクジェットプリントヘッドを形成する方法が提供される。前記方法は、インクジェットプリントヘッドを制御するために、導体、半導体及び非導体材料の挟み込まれた1つ以上の層から形成された電子駆動回路が形成される第1の基板を準備することと、前記基板上に、1つの壁にインク吐出口を有する少なくとも1つのノズルチャンバを形成することと、インク吐出口からインクを吐出するための外部熱アクチュエータの制御下において可動な可動インク吐出パドルをノズルチャンバ内に設けることと、前記アクチュエータ及びインク吐出パドルのうちの1つ以上の形成において、交互に配置された層の少なくとも1つの部分を犠牲層として使用することとを有する。
【0008】
犠牲材料層は、電子駆動回路構成の導体層部分を備え得る。電子駆動回路構成は、相補型金属酸化(CMOS)プロセスからなり、犠牲材料層はCMOS金属層からなり得る。
アクチュエータの形成において犠牲材料層が用いられ得る。アクチュエータは、熱アクチュエータであり得る。アクチュエータは、ノズルチャンバに対して外側に配置され、さらに、ノズルチャンバの.第2の壁に形成された駆動相互連絡口を介してインク吐出パドルと相互連結され得る。
【0009】
本発明の第4の態様において、MEMSプロセス技術により形成されたインクジェットプリントヘッドが提供される。前記インクジェットプリントヘッドは、ノズルチャンバをそれぞれ備える複数のインク吐出ノズルと、基板に固着された基端部及び前記チャンバ内においてインク吐出パドルに連結された先端部とを有する外部熱湾曲駆動素とを備える。
【0010】
前記外部熱湾曲アクチュエータは、一連の層及び平面伝導性加熱回路層を備える。前記平面伝導性加熱回路層は前記熱湾曲アクチュエータを加熱するための平面伝導性加熱回路を形成する前記基端部に隣接する第1の部分と、インク吐出パドルに延びる第2部分とを有する。平面伝導性加熱回路層における不連続面により、前記第2の部分は前記第1の部分から電気的に絶縁され、前記不連続面はノズルチャンバの外側に配置される。
【0011】
平面導電性加熱回路層は、窒化チタンからなり得る。導電回路は、好ましくは、基端に隣接する抵抗性の加熱を増大するよう、基端に隣接した少なくとも1つのテーパー状部分を備える。
【0012】
本発明の第5の態様によると、インクを吐出するための一連のインク吐出ノズルを有し、前記ノズルの各々はノズルチャンバを外気と連通させ、各ノズルは、その周囲にインクメニスカスが正常に形成する第1メニスカスリムと、第1メニスカスリムから外側に離間され、第1メニスカスリムを取り囲み、インクジェットプリントヘッドの表面を横切ってインクが流動することを防止するよう配置された拡張インク流動防止リムとを有するインクジェットプリントヘッドを提供する。
【0013】
インク流動防止リムは、第1のメニスカスリムとほぼ同一平面にあり得、第1のメニスカスリムと同一の材料から形成され得る。
インク流動防止リム及び第1のメニスカスリムは、好ましくは化学的機械的平担化技術を利用して形成される.
インク流動防止リム及び第1のメニスカスリムは、好ましくは窒化チタンから形成される。
【0014】
本発明の第6の態様によると、第1の湾曲方向に湾曲するのに適している湾曲アクチュエータを備え、かつほぼ平坦な底面を有する可動微小機械装置が提供され、前記湾曲アクチュエータは多数の被覆下層部の最上部の平坦な基板上に形成される。前記湾曲アクチュエータは、被覆下層部上において、一連の構造を形成することと、前記一連の構造は、第1の湾曲方向をほぼ直交する方向に延びる一連の長尺状リブを備える表面プロフィ−ルを有することとを含む複数の工程により形成される。
【0015】
湾曲アクチュエータは熱湾曲アクチュエータからなり得る。被覆層は導電回路構成層を備え得、湾曲アクチュエータを駆動するために、被覆層は湾曲アクチュエータに相互接続され得る。湾曲アクチュエータはパドル部材に取り付けられ、インクジェットプリントヘッドのインク吐出ノズルからインクを吐出するために駆動され得る。湾曲アクチュエータの下に位置する被覆層は、湾曲アクチュエータの動作を制御するための電力用トランジスタを備え得る。
【0016】
本発明の第7の態様によると、インクジェットノズル配列の大きな配列を有するインクジェットプリントヘッドを形成する方法が提供される。前記方法は、1つのノズルからインクを吐出するための1つのインクジェットノズル配列を形成する工程と、インクジェットプリントヘッドの全てのインクジェットノズルを形成するために1つのインクジェットノズル配列の一連の平行移動及び回転を利用する工程とからなり、前記利用する工程は、最初に、複数のノズルを1つのポッドに形成することと、各群がプリントヘッドから分配される異なる色のインクに対応しているポッドの群を形成することと、前記ポッドの複数の群を駆動する群に形成することと、駆動する群を組合わせて、プリントヘッドのあるセグメントを形成することと、プリントヘッドを形成するために各セグメントを形成することとを有する。
【0017】
インクジェットノズル配列は、マスクを用いて被着及びエッチングされた一連の層を備え得る。層は、好ましくは、一連の導電性の相互連絡を形成するように、マスクを用いてエッチングされる導電性層を備え得る。伝導性の相互連絡は、インクジェットノズル配列の平行移動または回転された複製からなり得るインクジェットノズル配列の隣接したバージョンとの相互連絡を行い得る。
【0018】
本発明の第8の態様によると、画像を印刷するように、所定の温度範囲内において流体吐出プリントヘッドを駆動する方法が提供される。プリントヘッドは同プリントヘッドから流体を吐出トするために駆動される一連の熱アクチュエータを備える。前記方法は、(a)前記プリントヘッド温度が所定のしきい値より低いかを決定するために、前記プリントヘッドのプリントヘッド温度を検知する工程と、(b)前記プリントヘッド温度が所定のしきい値より低い場合には、プリントヘッド温度が所定のしきい値より高くなるように、プリントヘッドを加熱する予熱の工程を行う工程と、(c)熱アクチュエータがプリントヘッドから流体を吐出させるには不十分な程度に加熱されるように、予熱工程を制御する工程と、(d)画像を印刷するためにプリントヘッドを使用する工程とからなる。
【0019】
工程(a)は、好ましくは、(aa)初めに、プリントヘッドの周りの周囲温度を検知する工程と、(ab)所定のしきい値を周囲温度と、所定温度に依存する所定の作動ファクタ量とを加えた価に設定する工程とをさらに備える。本方法は、(d)画像を印刷している間、プリントヘッド温度を監視し、温度は所定のしきい値よりも低下すると、温度がしきい値を超え得るように、プリントヘッドを再加熱する工程をさらに備える。
【0020】
工程(b)は、プリントヘッドを加熱している間、絶えずプリントヘッド温度を監視することからなり得る。
工程(c)は、プリントヘッドから流体を吐出させるには不十分な程度の一連の短い電気パルスを熱アクチュエータに付加することからなり得る。
【0021】
本発明の第8における態様の付加的な態様によると、基板上に形成され、インク吐出アクチュエータを駆動するために同インク吐出アクチュエータに取り付けられたアクチュエータ駆動ユニットにより駆動される一連のインク吐出熱アクチュエータによってインクをオンデマンドに吐出するのに適したノズル配列と、前記基板の温度を検知するために基板上に設けられた少なくとも1つの温度センサと、温度センサユニットとを備える流体吐出装置が提供される。
【0022】
上記において、流体吐出操作が始められる前に、温度センサユニットは、基質の現在の温度を検知するために、少なくとも1つの温度センサを使用し、前記温度が所定の基準限界値未満である場合、予熱駆動信号をアクチュエータ駆動ユニットに出力し、すると、前記基板加熱するには十分であるが、前記配列からインクを吐出させるには不十分である程度に、アクチュエータ駆動ユニットがインク吐出熱アクチュエータを駆動する。
【0023】
少なくとも1つの温度センサは、プリントヘッド上に離間されて形成された一連の複数の温度センサからなり得る。ノズル配列は、好ましくは、一連の離間された複数のセグメントに分割され、セグメント毎に少なくとも1つの温度センサを有する、本発明の第9の態様によると、インクを携帯用プリンタの印刷装置にインクを供給するためのインク供給配列が提供される。前記インク供給配列は、前記印刷装置に供給するために、インクを保持するための少なくとも1つの貯蔵チャンバを備えるインク供給ユニットと、前記インク供給ユニットが、印刷装置からの駆動要求に応じて、印刷装置へのインクの流動を許容している間に、ユニット内に携帯用プリンタの移動により生じ得るようなユニット内におけるインクの加速を抑えるよう構成された、一連の離間されたバッフルを有することとを備える。好ましくは、インク供給装置は、インク分配マニホルドを有するインク供給ユニットの形態にあるインク供給配列に直接連結されるプリントヘッドの形態にある。前記インク分配マニホルドは、プリントヘッド上に形成されるインク供給路に対応した複数の流出口を介してインクを供給する。
【0024】
好ましい形態においては、プリントヘッドはページ幅にわたる長尺状のプリントヘッドチップであり、インク供給ユニット内のバッフルは、プリントヘッド及び対応するインク供給ユニットの長手方向の広がりに沿った方向におけるインクの加速を抑えるように構成される。好ましくは、インク供給ユニットは、別々の色インクを保持するために一連の貯蔵チャンバを有する。
【0025】
好ましくは、1つ又は複数のインク貯蔵チャンバは、2つ以上の相互に連通した成形部品から形成される。
本発明の第10の態様によると、複数の長手方向に離間された電圧供給点を有する、同一の種類の長尺状インクジェットプリントヘッドのための動力分配装置が提供される。前記動力分配装置は、2つ以上の細長い低抵抗電源母線と、選択された複数の電圧供給点を前記母線に接続する相互接続手段とを備える。
【0026】
好ましくは、母線は前記プリントヘッド対して平行に延びるよう配置され、前記相互接続手段は、その間をほぼ横断して延びる相互接続を提供する。好ましい形態において、相互接続手段はテープオートメイティッドボンディッドフィルム(TABフィルム)である。
【0027】
好ましくは、TABフィルムは、前記TABフィルム上に対応する大きさに形成された貴金属の被着片によって、前記母線と電気的に接続されている。
また、好ましくは、相互連絡手段は、プリントヘッド上における選択された別の電圧供給点へ接続するための複数の制御線を備える。
【0028】
ユニットは、電源及び制御線の外側の列から取り外し可能であり得る。導電レールは、機械的に堅固な棒状部を備え得る。
本発明の第11の態様によると、インク吐出ノズルの配列を備えるプリントヘッドに供給するためのインク供給ユニットが提供される。前記供給ユニットは、第1の精度に正確にされた寸法を有して形成され、そこに形成された第1キャビティを有する第1部材と、そこに形成された第2キャビティを有するインク分配マニホルドの形態にある第2部材と、第2キャビティはプリントヘッドに挿入されるのに適していることと、プリントヘッドに形成されたインク供給通路へインクを供給するため1つ以上のチャンバを形成するように、第2部材は第1部材内の第1キャビティと係合するよう形成されることと、第2部材は前記第1の精度よりも高い第2の精度に正確にされた寸法を有して形成されることとからなる。
【0029】
好ましくは、第1部材及び第2部材が共に、好ましくは異なる色のインクを貯蔵するのに適当な一連のインク貯蔵チャンバを形成する。
好ましい形態においては、第2部材は一連の分離したインクプリントヘッドのインク流出口を形成し、前記インク流出口はプリントヘッドのインク供給路にインクを供給するのに適しており、インク供給路はインク吐出ノズルのグループ化されたセットにインクを供給するのに適している。
【0030】
好ましくは、第2部材は、第1部材の外寸よりも実質的に小さい外寸を全体にわたって有する。
本発明の第11における態様の付加的な態様によると、多色ページ幅インク供給プリントヘッドに供給するためのインク供給ユニットが提供される。前記インク供給ユニットは、別々の色インクを貯蔵するための一連のチャンバを備え、第1の精度に正確にされた寸法を有して形成され、かつその中に形成された第1の細長いキャビティを有する第1の長尺状部材と、一連の壁要素とそこに形成された第2の細長いキャビティとを備える第2の長尺状部材と、第2の細長いキャビティがページ幅インクジェットプリントヘッドに挿入するのに適していることと、第2の細長いキャビティに挿入されると、壁要素は第1の長尺状部材の対応する要素と組み合って、プリントヘッドの背面上に形成される一連のスロットにインクを供給するための一連のチャンバの形成を完結することと、第2長尺状部材は第1の精度よりも高い第2の精度に正確にされた寸法を有して形成されることとからなる。
【0031】
好ましくは、プリントヘッドへのインク供給流の部分を濾過するためのスクリーンが第2部材の一部として任意に設けられる。
第1の長尺状部材及び/又は第2の長尺状部材は、インク供給ユニット内におけるインクの加速を抑えるための一連のバッフルを備え得る。
【0032】
本発明の第12の態様によると、インク吐出ノズルの配列をインク分配マニホルドに相互に連結させる方法が提供される。前記方法は、インク分配マニホルドの任意のたわみにより弾力的に変形するのに適した弾力を有する接着剤を用いてプリントヘッドを前記インク分配マニホルドに接着することからなる。
【0033】
本発明の第12における態様の付加的な態様によると、プリントヘッド及びインク分配マニホルドアセンブリが提供され、プリントヘッドは、インク分配マニホルドの任意のたわみにより弾力的に変形するのに適した弾力を有する接着剤により、インク分配マニホルドに接着されている。
【0034】
好ましい形態において、プリントヘッドは長尺状のページ幅プリントヘッドチップであり、インク分配マニホルドはインク供給ユニットの一部を形成している。好ましくは、インク供給ユニットは、別々の色インクを貯蔵するための一連のチャンバを備えており、かつそこに形成された第1の細長いキャビティを有する第1の長尺状部材と、一連の壁要素とそこに形成された第2の細長いキャビティとを備える第2の長尺状部材と、第2の細長いキャビティがページ幅インクジェットプリントヘッドに挿入するのに適していることと、第2の細長いキャビティに挿入されると、壁要素は第1の長尺状部材の対応する要素と組み合って、プリントヘッドの背面上に形成される一連のスロットにインクを供給するための一連のチャンバの形成を完結することと、インク供給ユニットの任意の湾曲により弾力的に変形するのに適した弾力を有する接着剤を用いて、第2の長尺状部材が第1の長尺状部材に相互連通させられることとからなる。
【0035】
プリントヘッドチップは、インク供給ユニットに側面に沿って、かつ、その裏面にわたって取り付けられ得る。
本発明の第13の態様によると、開口からインクを吐出するために、1つの壁上に形成されたノズル開口をそれぞれ有する複数のノズルチャンバと、ノズルチャンと相互に連通したインク供給路と、ノズルチャンバ内においてアクチュエータにより可動であり、かつノズルチャンバからインクを吐出するように駆動可能であるパドルと、前記パドルはアクチュエータの付勢により、ノズル開口に向かって運動させられる突出部を有することとからなるインクジェットプリントヘッドが提供される。
【0036】
好ましくは、突出部はアクチュエータの駆動により、開口の平面を通過して運動し、ノズル開口と同軸を有して配置され得る。
液体吐出開口は、一連の層の被着及びエッチングを用いることにより形成され得、突出部は中空の円筒柱からなり得る。
【0037】
中空の円筒柱は、好ましくは、開口を形成する間に化学的機械的平坦化され得る開口に隣接した端部を備え得る。アクチュエータは、パドルの運動を引き起こすために伝導的に加熱される熱湾曲アクチュエータからなる。
【0038】
突出部はパドルのほぼ中心上に配置され得る。
本発明の第13における態様の付加的な態様によると、少なくとも1つのチャンバを備え、吐出パドルの運動によって前記チャンバと相互に連通したノズル開口から液体が吐出されるインクジェットプリントヘッドにおいて、プリントヘッドの作動特性を改善する方法は、可動パドル上に突出部を配置する工程と、前記突出部は流体を吐出するための液体吐出パドルの駆動により、ノズルに向かう運動を受ける工程とからなる。
【0039】
突起部位は、好ましくは、液体吐出パドルの駆動により、開口の外側のリムの平面を通過して運動する端部を備え得る。
本発明の第14の態様によると、チャンバからインクを吐出するために、1つの壁上に形成されたノズル開口と、アクチュエータ機構を挿入するための第2開口とをそれぞれ有する複数のノズルチャンバと、ノズルチャンバと相互に連通したインク供給路と、ノズルチャンバ、からインクを吐出するように駆動可能なアクチュエータにより可動なパドルとを備え、前記アクチュエータは、ノズルチャンバの外部に配置された第1部分と、ノズルチャンバの内部に配置され、前記パドルを支持する第2部分と、前記開口を介して第1部分と第2部分とを相互に連結させる相互連結部分と、前記相互連結部は第2開口に隣接して形成され、かつ第2開口を介する流体の流れを制限するように配置される突出したシールドをさらに備えることとからなるインクジェットプリントヘッド装置が提供される。
【0040】
シールドは疎水性面からなり得る。相互連結部は、通常は、液体吐出開口に向かって上方に定義された方向に運動し、シールドは相互連結部の上面に形成され得る。アクチュエータは、好ましくは、第1部分上に配置された熱膨脹性アクチュエータを有し得る。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】静止状態にある1つのインクジェットノズルを示す概略図。
【図2】駆動状態にある1つのインクジェットノズルを示す概略図。
【図3】補給状態ニアル1ツノインクジェットノズルを示す概略図。
【図4】2層型の冷却過程を示す図。
【図5】単層型の冷却過程を示す図。
【図6】整列されたノズルを示す平面図。
【図7】整列されたノズルを示す平面図。
【図8】整列されたノズルを示す平面図。
【図9】整列されたノズルを示す平面図。
【図10】インクジェットノズルを組み立てる過程を示す断面図。
【図11】化学的機械的平坦化の後のインクジェットノズルを組み立てる過程を示す断面図。
【図12】インクの予熱における好ましい実施形態に含まれる工程を示す図。
【図13】正常な印刷クロッキングサイクルを示す図。
【図14】予熱サイクルの使用率を示す図。
【図15】適当なプリントヘッドの作動温度のグラフ。
【図16】適当なプリントヘッドの作動温度のグラフ。
【図17】予熱のためにプリントヘッドを駆動する一形態を示す図。
【図18】インクジェットノズル構造が形成されることになっている初期のウェハの一部を示す断面図。
【図19】N−井戸プロセスのためのマスクを示す図。
【図20】N−井戸プロセス後のウェハの一部を示す断面図。
【図21】N−井戸プロセス後の1つのノズル部分を示す部分側面斜視図。
【図22】アクティブチャネルマスクを示す図。
【図23】フィールド酸化膜の断面図。
【図24】フィールド酸化膜被着後の1つのノズル部分を示す部分側面斜視図。
【図25】ポリマーマスクを示す図。
【図26】被着 したポリマーを示す断面図。
【図27】ポリマーマスク後の1つのノズル部分を示す部分側面斜視図。
【図28】n+マスクを示す図。
【図29】n+インプラントを示す断面図。
【図30】n+インプラントの後の1つのノズル部分を示す部分側面斜視図。
【図31】p+マスクを示す図。
【図32】p+インプラントの結果を示す図。
【図33】p+インプラントの後の1つのノズル部分を示す部分側面斜視図。
【図34】接点のマスクを示す図。
【図35】ILD1の被着及び接点バイアスのエッチングの結果を示す断面図。
【図36】ILD1の被着及び接点バイアスのエッチング後の1つのノズル部分を示す部分側面斜視図。
【図37】金属1のマスクを示す図。
【図38】金属1層の金属被着の結果を示す断面図。
【図39】金属1の被着後における1つのノズル部分を示す部分側面斜視図。
【図40】バイア(Via)1マスクを示す図。
【図41】ILD2の被着及び接点バイアスのエッチングの結果を示す断面図。
【図42】金属2のマスクを示す図。
【図43】金属2の層を被着させた結果を示す図。
【図44】金属2の被着後における1つのノズル部分を示す部分側面斜視図。
【図45】バイア2のマスクを示す図。
【図46】ILD3の被着及び接点バイアスのエッチングの結果を示す断面図。
【図47】金属3のマスクを示す図。
【図48】金属3の層を被着させた結果を示す断面図。
【図49】金属3の被着後における1つのノズル部分を示す部分側面斜視図。
【図50】バイア3のマスクを示す図。
【図51】不動態化酸化物及び窒化物による被着及びバイアスのエッチングの結果を示す断面図。
【図52】不動態化酸化物及び窒化物による被着及びバイアスのエッチング後における1つのノズル部分を示す部分側面斜視図。
【図53】ヒータのマスクを示す図。
【図54】ヒータの窒化チタン層を被着させた結果を示す断面図。
【図55】ヒータの窒化チタン層の被着後における1つのノズル部分を示す部分側面斜視図。
【図56】アクチュエータ/湾曲補整器のマスクを示す図。
【図57】エッチング後、アクチュエータガラス及び湾曲補整器窒化チタンによる被着 の結果を示す断面図。
【図58】アクチュエータガラス及び湾曲補整器窒化チタンの被着及びエッチング後の及び被着した後における1つのノズル部分を示す部分側面斜視図。
【図59】ノズルのマスクを示す図。
【図60】犠牲層の被着及びノズルのエッチングの結果を示す断面図。
【図61】犠牲層の被着及び最初のエッチング後における1つのノズル部分を示す部分側面斜視図。
【図62】ノズルチャンバのマスクを示す図。
【図63】犠牲的層においてエッチングされたチャンバを示す断面図。
【図64】犠牲層をさらにエッチングした後の1つのノズル部分を示す部分側面斜視図。
【図65】ズルチャンバ壁の被着層を示す断面図。
【図66】ノズルチャンバ壁のさらなる被着後における1つのノズル部分を示す部分側面斜視図。
【図67】化学的機械的平坦化(CMP)技術を用いて自己整列ノズルを形成する過程を示す断面図。
【図68】ノズルチャンバ壁のCMP後における1つのノズル部分を示す部分側面斜視図。
【図69】ウェハブランク上に搭載されたノズルを示す図。
【図70】バックエッチ流入口マスクを示す図。
【図71】犠牲層のエッチングによる除去を示す断面図。
【図72】犠牲層をエッチングにより除去した後の1つのノズル部分を示す部分側面斜視図。
【図73】異なる破断線における犠牲層をエッチングにより除去した後の1つのノズル部分を示す部分破断斜視図。
【図74】インクで満たされたノズルを示す断面図。
【図75】インクを吐出している1つのノズル部分を示す部分側面斜視図。
【図76】1つのノズルに制御ロジックに関する概略図。
【図77】1つのノズルにおける制御ロジックのCMOSの実施を示す図。
【図78】記載されたCMOS/MIEMSの実施に用いられた様々な層の凡例またはキーを示す図。
【図79】ポリマー層にあるCMOSを示す図。
【図80】金属1層にあるCMOSを示す図。
【図81】金属2層にあるCMOSを示す図。
【図82】金属3層にあるCMOSを示す図。
【図83】MEMSヒータ層にあるCMOS及びMEMSを示す図。
【図84】アクチュエータのシュラウド層を示す図。
【図85】インクジェットヘッドの一部分の部分破断側面斜視図。
【図86】インクジェットヘッドの一部分の拡大部分破断側面斜視図。
【図87】一連のアクチュエータの構造に形成された複数の層を示す図。
【図88】ウェハを貫通するインク供給チャネルを示すウェハの裏面の一部を示す図。
【図89】プリントヘッドにおけるセグメントの配列を示す図。
【図90】駆動順に付番された1つのポッドを示す概略図。
【図91】論理的順序に付番された1つのポッドを示す概略図。
【図92】各色1つずつのポッドを備えた1つのトリポッド(tripod)を示す概略図。
【図93】10個のトリポッドを備えた1つのポッドグループを示す概略図。
【図94】セグメント、駆動グループ、及びトリポッドの間の関係を示す概略図。
【図95】代表的な印刷サイクルの間におけるAEnable及びBEnableのクロッキングを示す図。
【図96】プリントヘッドのインクチャンネルモールド支持構造物への組み込みを示す分解斜視図。
【図97】インクチャンネルモールド支持構造物の部分破断側面斜視図。
【図98】プリントロールユニット、プリントヘッドおよびプラテンを示す部分破断側面斜視図。
【図99】プリントロールユニット、プリントヘッドおよびプラテンを示す側面斜視図。
【図100】プリントロールユニット、プリントヘッドおよびプラテンを示す側面分解斜視図。
【図101】図96及び図97に示されるプリントヘッドのインク分配マニホルドへの連結を示す拡大斜視図。
【図102】図97に示されたテープオートメイティッドボンディドフィルムの最も外部の側面を示す展開平面図。
【図103】図102に示された展開されたテープオートメイティッドボンディドフィルムの裏面を示す図。
【図104】好ましい実施形態の作動原理を示す概略図。
【図105】好ましい実施形態の作動原理を示す概略図。
【図106】好ましい実施形態の作動原理を示す概略図。
【図107】好ましい実施形態の1つのノズル構成を示す部分破断側面斜視図。
【図108】シュラウド構成を備えた1つのノズルの側面斜視図。
【図109】好ましい実施形態の構成を用いた化学的機械的平担化の原理を示す図。
【図110】好ましい実施形態の構成を用いた化学的機械的平担化の原理を示す図。
【図111】好ましい実施形態の構成を用いた化学的機械的平担化の原理を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0042】
(好ましい実施形態および他の実施形態の説明)
この好ましい実施形態は、種々様々なページ幅プリンタ、およびプリントオンデマンドカメラシステムに内蔵させるのに適している1600dpiモジュラモノリシックプリントヘッドである。プリントヘッドは、通常、集積回路製造用に開発された技術を使用してミクロン単位で組み立てられた機械的システムである超小型電子機械システム(MEMS)により製造される。
【0043】
1600dpiのA4サイズの写真画質ページ幅プリンタの場合には、50,000以上のノズルを必要とするので、低コストを実現するには、プリントヘッドとして同じチップ上に駆動電子回路を集積させなければならない。集積を行うことにより、プリントヘッドへの外部接続の数を約50,000から約100に低減することが可能である。駆動電子回路を形成するために、好ましい実施形態は、同じウェハ上にMEMSノズルとしてCMOSロジックおよび駆動トランジスタを集積する。MEMSは、他の製造技術と比較した場合、いくつかの重要な利点を有する。すなわち、ミクロン単位の寸法と精度で機械装置を組み立て得る、同一シリコンウェハ上に数百万の機械装置を同時に形成し得る、上記機械装置は電子回路を内蔵し得る。
【0044】
本明細書で使用する「IJ46プリントヘッド」という用語は、本発明の好ましい実施形態により製造したプリントヘッドを意味する。
(動作原理)
好ましい実施形態は、インクを吐出するための熱により駆動されるレバーアームを使用
する。インクを吐出するノズルチャンバは、その周囲に表面メニスカスが形成される薄いノズルリムを備える。ノズルリムは、自己整合被着メカニズムを用いて形成される。好ましい実施形態は、また、インクジェットノズルの周囲に過剰流出防止リムの有利な機能を備える。
【0045】
最初に、図1〜図3を参照して、まず、好ましい実施形態のインクジェットプリントヘッドの動作原理について説明する。図1において、ノズルリム5の周囲にメニスカス4を形成するように、インク供給チャネル3を介して供給されるノズルチャンバ2を備える1つのノズル装置1が示されている。熱アクチュエータ機構6が設けられており、この機構は円形であり得る端部パドル7を備える。上記パドル7は、ポスト9を中心にして回転するアクチュエータアーム8に取り付けられている。アクチュエータアーム8は、窒化チタンのような非常に硬い導電性材料から形成される2つの層10,11を備える。下層10は、ポスト9に相互接続している導電性回路を形成し、さらに、端部ポスト9の近くに薄い部分を備える。それ故、下層10を通って電流が流れると、下の層のポスト9に隣接する部分が加熱される。加熱されない場合には、2つの層10、11は、相互に熱的にバランスしている。下層10が加熱されると、アクチュエータ機構6全体がほぼ上方に向かって湾曲し、そのために、パドル7が、図2に示すように、急速に上方に向かって運動する。この急速な上方への運動によりリム5の周囲の圧力が増大し、その結果、インクがチャンバの外に流出するように、メニスカス4全体が膨張する。その後、下層10の導通が切断され、アクチュエータアーム6は、図3に示すように、静止位置に戻り始める。この運動により、パドル7は下方に移動する。そのため、ノズル5の周囲のインク全体がチャンバ内に戻る。ノズルチャンバ内のインクの後方への動きに加えて、ノズルの外部にあるインクの前方への運動によりメニスカス4がくびれるため、インク粒子14が形成される。その後、メニスカス4を横切る表面張力効果により、インクはインク供給チャネル3からノズルチャンバ2内に引っ込む。
【0046】
好ましい実施形態の動作は、多くの有意な機能を有する。まず第1に、層10,11の上記したバランスがある。第2の層11を使用することにより、アクチュエータデバイス6の熱的動作がさらに効率的になる。さらに、2つの層の動作により、確実に、製造中の冷却の際の熱応力の問題を回避することができ、それにより、製造中の剥離の可能性が少なくなる。図4および図5はその様子を示す。図4は、中央の材料層22を囲むバランスのとれた2つの材料層20,21を有する熱的アクチュエータの冷却プロセスを示す。冷却プロセスは、各導電性層20,21に等しく影響を与え、そのため形状が安定する。図5は、図に示すように、導電性層20を1つしか持たない熱アクチュエータアームである。製造後の冷却の際に、上部層20は、中央層22に対して湾曲しようとする。この場合、最終的な装置が不安定であるため、及び異なる程度の湾曲を生じる様々な層の厚さがまちまちであるために、種々の問題が生じる恐れがある。
【0047】
さらに、図1および図3において説明した装置は、ノズルリム5の周囲にピット26を形成するために設けられているインクジェット拡散防止リム25(図1)を含む。ノズルリム5から流出したインクは、通常、リムの周囲のピット26内に捕捉されるので、インクがインクジェットプリントヘッドの表面を横切って流れたとき、動作に影響を与えることが防止される。この装置は図11にて明らかに示される。
【0048】
さらに、ノズルリム5およびインク拡散防止リム25が、独自の化学機械平坦化技術により形成される。図6〜図9を参照することにより、この装置を理解することができる。理想的には、インク吐出ノズルリムは、図6の符号30で示すように、高度に対称形であることが望ましい。インクを吐出する際には、薄くて非常に正確な形状のリムを使用することが望ましい。例えば、図7は、くびれて分裂しそうな過程にあるリムから吐出されているインク粒子を示す。メニスカスがくびれて分裂するプロセスは、非常にデリケートな
もので、複雑で無秩序な力に影響される。ノズルリムを形成するのに標準的なリソグラフィを用いた場合には、リムの均斉および対称性は、用いるリソグラフィプロセスの変動のある程度内においてのみ確保される。そのために、図8の符号35にて示すリムの変形が起こる。リムが変形すると、図8に示すようにリム35は非対称形になる。この変動は、小さなインク滴を形成する際に問題を生じる恐れがある。図9はその様子を示す。この場合、メニスカス36は、リムの幅が大きく膨らんでいる表面37に沿って流れる。そのため、吐出したインク粒子の吐出方向が大きく変化する恐れがある。
【0049】
好ましい実施形態の場合には、この問題を克服するために、自己整合化学機械平坦化(CMP)技術を使用している。図10を参照しながら、この技術を簡単に説明する。図10は、その上に第1の犠牲層41および薄いノズル層42が被着されるシリコン基板40を示す。上記2つの層41および層42は誇張されている。犠牲層41が最初に被着し、全表面上に適応するように被着するノズル層42のための「ブランク」が形成されるようにエッチングされる。別の製造プロセスの場合には、別の犠牲材料層をノズル層42の上に被着することが可能である。
【0050】
次の重要な工程は、ノズル層及び犠牲層を、例えば、符号44のような第1のレベルまで化学的かつ機械的に平坦にすることである。化学的機械的平坦化プロセスは、レベル44まで、頂部層を効率的に「削りとる」。等角な被着(conformal deposition)技術を
使用することにより規則正しいリムが形成される。図11は、化学的機械的平坦化技術を適用した後の略図である。
【0051】
好ましい実施形態において、最初に、IJ46デバイスで好適に使用されるインクジェット予熱工程について説明を続ける。
インク予熱
好ましい実施形態において、プリントヘッド装置の温度を所定の範囲内に上昇させるためにインク予熱工程が用いられる。図12の符号101は、用いられる工程を示す。最初に、工程102において、印刷のスタートが決定される。印刷を行う前に、プリントヘッドの現在の温度が所定のしきい値内にあるかどうかを判断するために、上記温度が感知される。加熱温度が低すぎる場合には、熱アクチュエータを所定の動作温度まで加熱することによりプリントヘッドを加熱する予熱サイクル104が適用される。温度が所定の温度に達した場合には、通常の印刷サイクル105が開始する。
【0052】
予熱工程104を使用することにより、通常、装置の動作範囲を狭くさせている粘度等のような要因の潜在的なばらつきを低減し、またインクを吐出する際の熱エネルギーを減少させる。
【0053】
予熱工程は、多くの方法で行われ得る。インク吐出素子が熱湾曲アクチュエータ型である場合、インク吐出素子は、通常、図13に示すような一のクロックパルスを受信し、インクの吐出は、吐出するのに十分なエネルギーを供給するように所定幅のクロックパルス110を必要とする。
【0054】
図14に示すように、予熱する能力を提供することが所望される場合には、プリントヘッドに熱エネルギーを供給するが、インクジェットノズルからインクは吐出させない、例えば、符号111のような一連のより短いパルスを用いることにより予熱する能力が提供され得る。
【0055】
図16は、印刷動作中のプリントヘッド温度の例としてのグラフである。かなり長時間プリントヘッドが休止していた場合には、最初のプリントヘッド温度115は周囲温度と同じである。印刷を所望すると、符号116で示すように、温度が印刷を開始し得る符合
117で示す動作温度T2に上昇するように予熱工程(図12の符号104)が実行され、前記温度は使用要件により変動する。
【0056】
別の方法としては、図16に示すように、温度が、例えば符号120で示すように、あるしきい値よりも低下した場合に、温度を所定のしきい値より高い温度121まで上昇させるよう、一連の予熱サイクルを印刷プロセスに挿入するために、プリントヘッド温度を連続的に監視することもできる。
【0057】
使用するインクが、水の特性に類似の特性を有している場合には、予熱工程を使用すると、温度によるインク粘度の大幅な変動を利用し得る。もちろん、他の動作要因も有意であり、狭い温度範囲に安定させることは有利な効果をもたらす。温度の変化によって粘度が変化するとき、周囲温度以上に加熱するために必要な予熱の程度は、周囲温度、および印刷動作中のプリントヘッドの平衡温度に依存することが容易に明らかとなる。それ故、予熱の程度は、最適な結果を与えるよう、測定された周囲温度により変化し得る。
【0058】
図17は、一連の搭載された温度センサを備えるプリントヘッド130を使用した場合の動作を示す概略図である。前記温度センサは、予熱が任意の特定の段階で必要であるかどうかを判断するインクジェット吐出駆動ユニット132に出力する、現在の温度を測定するための温度測定ユニット131に接続している。オンチップ(プリントヘッド)温度センサとしては、その構造が当業者にとって周知である簡単なMEMS温度センサを使用し得る。
(製造プロセス)
IJ46デバイス製造は、標準的なCMOS処理、およびMEMS処理の組合せを使用して行うことができる。理想的には、CMOS処理に現在通常使用されていない材料は、処理のMEMS部分において使用しないことが望ましい。好ましい実施形態において、MEMS材料は、RECVDガラス、スパッタされたTiN、及び犠牲材料(ポリイミド、PSG、BPSG、アルミニウムまたは他の材料であり得る)である。理想的には、チップ面積を大きくすることなく、ノズル間の対応する駆動回路に適合するための最小限度のプロセスは、アルミニウム金属被覆を伴う0.5ミクロン、ポリ1、金属3のCMOSプロセスである。しかし、代わりに、任意のより高度なプロセスも使用し得る。別の方法としては、NMOS、バイポーラ、BiCMOSまたは他のプロセスも使用し得る。CMOSを推薦するのは、業界で広く使用されており、大量のCMOSの製造能力を利用することができるというだけの理由である。
【0059】
CMYプロセスカラーモデルを使用する100ミリ写真用プリントヘッドの場合には、CMOSのプロセスは、19,200段のシフトレジスタ、19,200ビットの転送レジスタ、19,200個のイネーブルゲート、および19,200個の駆動トランジスタからなる簡単な回路を実行する。いくつかのクロックバッファおよびイネーブルデコーダも使用される。写真用プリントヘッドのクロックの速度は、3.8MHzに過ぎず、30ppm/A4用プリントヘッドの場合には、14MHzに過ぎないので、CMOSの性能は重要ではない。MEMS処理を開始する前に、不動態化およびボンドパッドの開放を含むCMOSプロセスは完了される。これにより、MEMS処理を別の施設で行いながら、CMOSプロセスを標準的なCMOS工場で完了することが可能である。
(プロセスを選択する理由)
MEMSデバイス製造の当業者であれば、IJ46プリントヘッドを製造するためには、多くのプロセスシーケンスを使用し得ることを理解するであろう。本明細書に記載するプロセスシーケンスは、ポリ1、金属3の層を使用する「通常の」0.5ミクロン(ドローン)n井戸CMOSプロセスに基づいている。下記表は、任意の別のプロセス選択の効果の判断を容易にするために、この「ノミナル」プロセスのいくつかの選択を行う理由の概略を示す。
【0060】
【表1】

【0061】
(マスクの概要)
【表2】

【0062】
(プロセスシーケンスの例(CMOS工程を含む))
多くの異なるCMOSプロセス、および他のプロセスを使用し得るが、このプロセスの説明は、MEMS機能がCMOSマスク内に集積される場合を示すCMOSプロセスの例と、CMOS性能要件が低いためにCMOSプロセスが簡略化され得る場合とを示すCMOSプロセスの例とを兼ねる。
【0063】
以下に説明するプロセス工程は、例としての「通常の」1P3Mの0.5ミクロンCMOSプロセスの一部である。
1.図18に示すように、処理は、標準6インチ(15.24cm)pタイプ<100>ウェハを使用してスタートする。(8インチ(20.32cm)のウェハも使用し得、その場合には一次歩留まりがかなり改善される。)
2.図19のn井戸マスクを使用して、図20のn井戸トランジスタ部210を注入する。
3.SiO2 の薄い層を成長させ、Si3 N4を被着して、フィールド酸化物ハードマ
スクを形成する。
4.図22のアクティブマスクを使用して、窒化物および酸化物をエッチングする。LOCOSバーズビークのためにマスクの寸法は大きめに形成する。フィールド酸化物がノズルチャンバから排除されるように、ノズルチャンバ領域はこのマスク内に組み込まれている。その結果、図23に示す一連の酸化物領域212が形成される。
5.ネガ型レジストを有するn井戸マスク、またはn井戸マスクの補足物を使用してチャネルストップを注入する。
6.使用するCMOSプロセスが必要とする、任意の必要なチャネルストップを実行する。
7.LOCOSを使用して、0.5ミクロンのフィールド酸化物を成長させる。8.任意の必要なn/pトランジスタしきい値電圧調整を行う。CMOSプロセスの特性によっては、しきい値調整を省略し得る。これは、動作周波数が3.8MHzと低く、pデバイスの品質が重要でないためである。nチャネル駆動トランジスタのオン抵抗は印刷中の効率および電力消費に有意な影響を有しているため、nトランジスタのしきい値はより重要である。
9.ゲート酸化物を成長させる。
10.0.3ミクロンのポリ(poly)を被着させ、図26に示すポリ部分214を形成するために、図25のポリマスクを使用してパターン形成する。
11.図28のn+マスクを使用して、例えば、図29の符号216で示すn+注入を行う。トランジスタの性能は重要ではないため、LDDのようなドレインエンジニアリングプロセスを使用する必要はない。
12.図31のn+マスクの補足物を使用して、またはネガ型レジストを有するn+マスクを使用して、例えば、図32の符号218で示すp+注入を行う。ノズルチャンバ領域がn+マスク内に含まれるか否かにより、ノズルチャンバ領域に対して、n+またはp+をドープする。このシリコン領域のドーピングは、後にエッチングされるので、無意味である。推奨されるSTS ASEエッチングプロセスは、エッチングストップとしてホウ素を使用しない。
13.例えば、図35の220で示すように、ILD1を形成するために、0.6ミクロンのPECVD TOESガラスを被着する。
14.図34の接点マスクを使用して、接点カットをエッチングする。ノズル領域は、1つの大きな接触領域として処理され、通常の設計規則チェックを通過しない。それ故、この領域は、DRCから除外される。
15.金属1を形成するために、0.6ミクロンのアルミニウムを被着する。
16.例えば、図38の符号224が示す金属領域を形成するために、図37の金属1マスクを使用してアルミニウムをエッチングする。ノズル金属領域は、例えば、225のような金属1により覆われる。このアルミニウム225は犠牲層であり、MEMESシーケンスの一部としてエッチングされる。金属1をノズル内に設けることは必ずしも必要ではないが、アクチュエータレバーアームのネック領域における工程を少なくするのに役に立つ。
17.例えば、図41の符号228のようなILD2領域を形成するために、0.7ミクロンのPECVD TEOSガラスを被着させる。
18.図40のバイア1マスクを使用して接点カットをエッチングする。ノズル領域は、1つの大きなバイア領域として処理され、ここでもDRCを通過しない。
19.金属2を形成するために、0.6ミクロンのアルミニウムを被着させる。20.例えば、図43の符号230が示す金属部分を形成するために、図42の金属2マスクを使用してアルミニウムをエッチングする。ノズル金属領域231は、金属2により完全に被覆される。このアルミニウム225は犠牲層であり、MEMESシーケンスの一部としてエッチングされる。金属2をノズル内に設けることは必ずしも必要ではないが、アクチュエータレバーアームのネック領域における工程を少なくするのに役に立つ。犠牲金属2は、また、他の流体制御機能に対しても使用される。比較的大きな方形の金属2は、ノズルチャンバのネック領域233に備えられる。金属2は、犠牲金属3と連絡しているので、MEMS犠牲アルミニウムエッチング中に除去される。これにより、アクチュエータ(ILD3から形成されている)のためのノズルチャンバの入口の下部リムはアンダーカットされる。このアンダーカットにより、流体制御表面の角度が90度広くなり、そのために、インクが表面に拡散するのを防止するこのリムの性能が改善される。
21.ILD3を形成するために、0.7ミクロンのPECVD TEOSガラスを被着する。
22.例えば、図46の符号236で示すような部分を残しておくために、図45のバイア2マスクを使用して、接点カットをエッチングする。ILD3内にノズルチャンバ、流体制御リムも形成する。これらもDRCを通過しない。
23.金属3を形成するために、1.0ミクロンのアルミニウムを被着する。
24.例えば、図48の符号238で示すような部分を残しておくために、図47の金属3マスクを使用して、アルミニウムをエッチングする。例えば、符号239のような大部分の金属3は、チップ表面からアクチュエータおよびパドルを分離するために使用する犠牲層である。金属3は、また、チップ上にV+を分配するために使用される。ノズル領域は、例えば、符号240のような金属3で覆われる。このアルミニウムは、犠牲層であり、MEMSシーケンスの一部としてエッチングされる。金属3をノズル内に備えることは必ずしも要ではないが、アクチュエータレバーアームのネック領域における工程を少なくするのに役に立つ。
25.被覆ガラスを形成するために、0.5ミクロンのPECVD TEOSガラスを被着する。
26.不動態層を形成するために、0.5ミクロンのSi3N4を被着する。
27.図51の装置を形成するために、図50のバイア3マスクを使用して、不動態層および被覆ガラスをエッチングする。このマスクは、金属3犠牲層へのアクセス242、およびヒーターアクチュエータへの、例えば、符号243で示すバイアを含む。この工程のリソグラフィは、ボンドパッドに孔を開けるための通常の厳密ではないリソグラフィとは異なり、0.6ミクロンの重要な寸法(ヒータバイア用の)を有する。これは、通常のCMOプロセスの流れとは異なる1つのプロセス工程である。この工程は、工場の配置要件および輸送要件により、CMOSプロセスの最後のプロセス工程としてもよいし、MEMSプロセスの最初の工程としてもよい。
28.ウェハプローブ。全部ではないが、チップの機能の多くの部分は、この段階で決定することができる。この段階においてもっと複雑な試験が必要な場合には、チップ上に、各駆動トランジスタ用に、能動ダミー負荷を設置することができる。このことは、チップの面積を、少し犠牲にすることにより行うことができ、CMOS回路を完全に試験することができる。
29.ウェハを、CMOS施設からMEMS施設に転送する。これらの施設は、同じ工場内に設置することも可能であるし、離れた別の場所に設置することも可能である。
30.0.9ミクロンのマグネトロンスパッタTiNを被着する。電圧は−65V、マグネトロン電流は7.5A、アルゴンガス圧は0.3Pa、温度は300℃である。その結果、熱膨張率は9.4×10-6/℃、となり、ヤング率は600GPaとなる(薄い固体フィルム270(Thin Solid Films
270)、266頁、1995年)。これは、使用する最も重要な薄膜特性である。
31.図53のヒータマスクを使用してTiNをエッチングする。このマスクは、ヒータ素子、パドルアーム、およびパドルを形成する。ヒータと、パドルのTiN層、およびパドルアームの間には、図54に示す狭いギャップ247が存在する。このギャップは、ヒータとインクとの間の電気的接続、および起こり得る電解の問題を防止するためのものである。ウェハ全体を通してヒータ特性を均一に維持するために、この工程においては、サブミクロンの精度が要求される。これが、他のアクチュエータ層と一緒にヒータをエッチングしない主な理由である。ヒータマスク用のCDは0.5ミクロンである。オーバーレイ精度は+/−0.1ミクロンである。ボンドパッドも、このTiN層で覆われる。これは、犠牲アルミニウムがエッチングされている間にボンドパッドがエッチングされるのを防止する。上記被覆により、動作中にアルミニウムボンドパッドが腐食することが防止される。TiNは、アルミニウムに対する優れた腐食バリアである。TiNの比抵抗は十分低いので、ボンドパッド抵抗に関して問題は起こらない。
32.2ミクロンのPECVDガラスを被着する。この被着は、ガラス内の固有応力を最も少なくするために、約350〜400℃で行うことが好ましい。熱応力は、被着温度を下げることにより小さくし得るが、ガラスは2つのTiN層の間にサンドイッチ状に挟まれているため、実際には熱応力は有利な要因である。TiN/ガラス/TiNの三重層は、熱応力による湾曲を打ち消し、その結果、ガラスに一定の圧縮応力が掛かり、それによりアクチュエータの効率が増大する。
33.0.9ミクロンのマグネトロンスパッタTiNを被着する。この層は、下のTiN層およびガラス層の差熱応力による湾曲を打ち消すため、及び犠牲材料から解放されたときにパドルが湾曲するのを防止するために被着される。被着特性は、第1のTiN層の被着特性を同一でなければならない。
34.図56のアクチュエータマスクを使用して、TiNを異方性プラズマエッチングする。このマスクは、アクチュエータおよびパドルを形成する。アクチュエータマスク用のCDは1ミクロンである。オーバーレイ精度は+/−0.1ミクロンである。図57は、エッチングプロセスの結果を示す。この場合、ガラス層250は、TiN層251,248の間にサンドイッチ状に挟まれている。
35.この時点においてウェハをプローブでチェックすることにより、電気的な試験を行い得る。すべてのCMOS試験と、ヒータ機能試験および抵抗試験とは、ウェハをプローブでチェックすることにより行い得る。
36.15ミクロンの犠牲層材料を被着する。この材料については、多くの可能な選択肢が存在する。必須要件は、ウェハを過度に湾曲させることなく、15ミクロンの層を被着することが可能であることと、PECVDガラスおよびTiNに対するエッチング選択性が高いことである。材料の例としては、ホスホシリケートガラス(PSG)、ボロホスホシリケートガラス(BPSG)、ポリイミドのようなポリマー、およびアルミニウムがある。シリコン(ポリイミドで充填され、正しくドーピングされたBPSG)に対する良好なCTE適合性、または低いヤング率(アルミニウム)が必要である。この例の場合には、BPSGを使用している。これらの問題の中において、層が非常に厚いため、応力が最も厳しい問題である。BPSGは、通常、シリコンのCTEより低いCTEを有しているので、かなりの圧縮応力が加わる。しかし、そのCTEをシリコンのCTEに近い値に調整するために、BPSGの組成を有意に変えることができる。BPSGは犠牲層であるので、その電気的特性は意味を有さず、CMOS誘電体を使用し得るので、通常、組成は適していない。無水HFエッチングを使用した場合、PECVDガラスに対するエッチング選択性を改善するので、低密度、高い多孔性、高い含水量は、すべて有利な特性である。37.図60に断面で示す構造体254を形成するために、図59に示すノズルマスクを使用して、2ミクロンの深さに犠牲層をエッチングする。図59のマスクは、以降の工程で被着される被覆がCMPより除去される領域すべてを形成する。これら領域は、ノズル自身、および他の種々の流体制御機能を含む。ノズルマスク用のCDは2ミクロンである。オーバーレイ精度は+/−0.5ミクロンである。
38.図62のチャンバマスクを使用して、CMOS不動態層の深さまで、犠牲層を異方性プラズマエッチングする。このマスクは、図63に示すように、ノズルチャンバ、およびスロット255を含むアクチュエータシュラウドを形成する。チャンバマスクのCDは2ミクロンである。オーバーレイ精度は+/−0.2ミクロンである。
39.図65に示すように、0.5ミクロンの緊密な形状に従った被覆材料(fairly conformal overcoat material)257を被着する。この材料の電気的特性は無関係である。材料は導体であっても、絶縁体であっても、半導体であってもよい。上記材料は、化学的に不活性であり、強い強度を持ち、犠牲材料に対するエッチングの選択性が高くなければならないし、また、CMPに適していなければならないし、500℃以下の温度で形状従った被着に適したものでなければならない。適当な材料としては、PECVDガラス、MOCVD TiN、ECR CVD TiN、PECVD Si3N4、およびその他多数の材料がある。この例の場合の選択は、PECVD TEOSガラスである。BPSGを犠牲材料として使用し、無水HFが犠牲材料エッチング剤として使用される場合には、このような材料の含水量は非常に少ないものでなければならない。というのも、無水HFエッチングは、水の含有量に依存して、BPSGのTEOSガラス対する1000:1のエッチング選択性を達成するためである。形状に従った被覆257は、シェル内でアクチュエータが自由に運動できる状態に維持しながら、熱湾曲アクチュエータの動作部分の周囲に保護被覆シェルを形成する。
40.図67に示すように、CMPにより1ミクロンの深さまでウェハを平坦化する。CMP処理は、ウェハ表面全体に渡って、+/−0.5ミクロンの精度に維持しなければならない。犠牲材料を皿状にする必要はない。これにより、ノズル259および、例えば、符号260で示すような流体制御領域が開口される。CMPプロセス中、ノズルチャンバ構造体に対して犠牲層が硬度を維持し得ることが犠牲材料を選択する際の最も重要な要因の中の1つである。
41.プリントヘッドェーハを裏返して、酸化面263を有する図69のシリコンウェハブランク262上の前面にしっかりと装着する。装着は接着剤265により行い得る。ブランクウェハ262は、再使用することが可能である。
42.背面グラインド(または、エッチング)および研摩により、プリントヘッドウェハを300ミクロンまで薄く削る。ウェハを薄く削ることは、シリコンを深くエッチングするための後続の処理時間を約5時間から約2.3時間に短縮するために行われる。深いシリコンエッチングの精度も改善され、ハードマスクの厚さは、半分の2.5ミクロンになる。エッチング時間を短縮し、プリントヘッドの効率を改善するために、ウェハをさらに薄くしてもよい。ウェハの厚さを制限するものは、犠牲BPSGエッチングを行った後のプリントヘッドの脆さである。
43.ウェハの背面上にSiO2 ハードマスク(2.5ミクロンのPECVDガラス)
を被着し、図67に示すように、流入口マスクを使用してパターン形成する。図67のハードマスクは、150:1のハードマスクの選択性で315ミクロンの深さまで行われる後続の深いシリコンエッチングのために使用される。このマスクは、ウェハを貫通してエッチングされるインクの流入口を形成する。流入口マスク用のCDは4ミクロンである。オーバーレイ精度は+/−2ミクロンである。流入口マスクは、300ミクロンのエッチング深さにわたって91度の再入エッチング角度を確保することができるように、各側面上において5.25ミクロンずつ短くなっている。この工程のリソグラフィは、ステッパの代わりにマスク整合装置を使用する。整合は、ウェハの前面のパターンに対して行われる。サブミクロン単位の前部/後部整合を行うことができる装置は容易に入手することができる。
44.前に被着したハードマスクを介して、シリコンウェハにより(例えば、サーフェステクノロジーシステム社のASE高度シリコンエッチング装置のような装置を使用して)、完全に背面エッチングを行う。STS ASEは、ウェハを介して、アスペクト比30:1及び90度の側壁を有する非常に正確な孔部をエッチングすることができる。この例の場合には、91度の再入側壁角度は公称値と見なす。ASEは、任意の精度に対してよ
り速いエッチング速度で、また少ない再入角度でよりよい作業を行うので、ある再入角度が選択される。また、マスク上の孔部を小さい寸法にすることによって再入エッチングを補償することができる。マスク孔部が合流してしまうので、非再入角度は、容易に補償することはできない。また、好適には、ウェハは、このエッチングによりダイシングすることが好ましい。図69は、背面エッチングしたインクチャネルの一部264を含む最終結果を示す。
45.すべての露出しているアルミニウムをエッチングする。これらすべての層上のアルミニウムは、ある場所において犠牲層として使用される。
46.すべての犠牲材料をエッチングする。ノズルチャンバは、このエッチングによりきれいに清掃される。図71は、その結果を示す。BPSGを犠牲材料として使用した場合には、BPSGは、CMOSガラス層またはアクチュエータガラスをエッチングすることなく除去し得る。このような除去は、60℃の窒素環境において、1500sccmで、無水HFを使用して、TEOSのようなドーピングしていないガラスに対して、1000:1の選択性で行い得る。(L.チャング(chang)他の「DRAMコンデンサに対する処理工程を少なくする無水HFエッチング(Anhydrous HF etch reducesprocessing step for DRAM capacitors)」、Solid State Technology 41巻、5号、71〜76頁、1998年)。このエッチングにより、アクチュエータが解放され、チップはブランクウェハから分離され、チップ同士も分離される。BPSGの代わりに、アルミニウムを犠牲層として使用した場合には、その除去は、前の工程と一緒に行われ、この工程は省略される。
47.真空プローブで分離したプリントヘッドを拾い上げ、プリントヘッドをパッケージ内に装着する。パッケージ前のプリントヘッドは壊れ易いため、この装着は注意深く行わなければならない。ウェハの前面は特に壊れ易く、手で触れてはならない。このプロセスは自動化するのが困難であるため、手作業により行われる。パッケージは、プリントヘッドの背面のインクの流入口に、適当な色のインクを供給するインクチャネルを内蔵する専用の射出成型プラスチックハウジングである。パッケージは、またプリントヘッドを機械的に支持する。パッケージは、チップに加わる応力が最も小さくなるように、また、パッケージの全長に沿って応力を均等に分配するように特に設計される。プリントヘッドは、シリコーンのような弾力性を有するシーラントによりパッケージに接着される。
48.プリントヘッドチップへの外部接続を形成する。空気の流れの混乱を最も少なくする低いプロフィ−ルの接続の場合には、テープ・オートメイティッド・ボンディング(TAB)を使用し得る。動作中、プリンタと紙との間に十分な隙間がある場合には、ワイヤボンディングも使用し得る。すべてのボンドパッドは、チップの100ミリの縁部に沿って設置される。ボンドパッドは、全部で504個あり、63個のボンドパッドからなる8つの同じグループからできている(チップは、8工程のステッパにより製造されるので)。各ボンドパッドは、100×100ミクロンの大きさで、ピッチは200ミクロンである。256個のボンドパッドは、アクチュエータに電力接続およびアース接続を供給するために使用される。この場合、ピーク電流は、3Vにおいて、6.58Aである。全プリントヘッド(24のデータと16の制御)に対して全部で40箇所の信号接続があるが、その大部分は、バスにより、プリントヘッドの8つの同じセクションに接続している。
49.プリントヘッドの前面を疎水性にする。この処理は、50ナノメートルまたはそれ以上のポリテトロフルオロエチレン(PTFE)を真空蒸着することにより行うことができる。しかし、この処理は多くの方法で行い得る。流体は、前の工程で形成された機械的な突起部により完全に制御されるので、疎水層は、プリントヘッドが埃で汚染した場合に、インクが表面上に拡散するのを防止する「任意の追加処置」である。
50.プリントヘッドをソケットに差し込む。ソケットは、電力、データ、およびインクを供給する。プリントヘッドは、毛細管現象によりインクにより満たされる。完成したプリントヘッドをインクで満たし、試験する。図74は、ノズルチャンバへのインク268の充填を示す。
【0064】
(この実施形態に対して使用するプロセスパラメータ)
使用するCMOSプロセスパラメータは、0.5ミクロンの寸法またはそれ以上の任意のCMOSプロセスに適合するように変更することができる。MEMSプロセスパラメータは、以下に示す許容範囲を超えて変更してはならない。これらパラメータの中のあるものは、アクチュエータの性能および流体に影響を与え、一方、他のパラメータの影響は不明瞭である。例えば、ウェハを薄くする段階は、深いシリコンエッチングのコストおよび精度、背面ハードマスクの厚さ、および関連プラスチックインクチャネル成形の寸法に影響を与える。上記プロセスパラメータは、下記のように設定することができる。
【0065】
【表3】

【0066】
(制御ロジック)
図76について説明すると、この図は、1つのインクジェットノズル用の関連制御ロジックを示す。制御ロジック280は、オンデマンドで、ヒータ素子281を作動するために使用される。制御ロジック280は、シフトレジスタ282、転送レジスタ283、および動作開始制御ゲート284を含む。基本的動作は、データが正しい位置を占めるまで
、データをあるシフトレジスタ282から次のシフトレジスタに移動させることである。その後で、転送イネーブル信号286が作動すると、データは転送レジスタ283に送られる。データは転送レジスタ283にラッチされ、その後で、素子281を加熱する目的で、加熱パルスを出力するため、ゲート284を作動するために動作開始転送制御信号289が使用される。
【0067】
好ましい実施形態は、すべての制御回路を実行するためにCMOS層を使用しているので、制御回路のある形式の適当なCMOS実施形態について説明する。図77について説明すると、この図は、対応するCMOS回路の簡単なブロック図である。最初に、シフトレジスタ282は、倒置データ入力を取入れ、転送クロック制御信号291,292の制御の下で上記入力をラッチする。データ入力290は、符号294において次のシフトレジスタに出力され、同様に、転送イネーブル信号296,297の制御の下で転送レジスタ283によりラッチされる。イネーブルゲート284は、抵抗281を抵抗により加熱することができる電力トランジスタ300を駆動するために、イネーブル信号299の制御の下で作動する。シフトレジスタ282、転送レジスタ283、およびイネーブルゲート284の機能は、CMOS回路設計の当業者ならすぐに理解できる標準CMOS部材である。
(複製ユニット)
インクジェットプリントヘッドは、それぞれが基本的に同じ形状の、多数の複製ユニットセルから構成され得る。この形状について以下に説明する。
【0068】
最初に、図78について説明すると、この図は以下の説明で使用する異なる材料層の一般的なキーおよび記号説明である。
図79は、1ミクロンのグリッド306上のユニットセル305を示す。ユニットセル305は、例えば、符号308で示すバイアの他に、拡散およびポリ層を示す図79により、多数回複写され、複製される。信号290,291,292,296,397,299については、図77において既に説明した。図79の多くの重要な態様は、シフトレジスタ、転送レジスタ、およびゲートおよび駆動トランジスタを含む全体的なレイアウトを備える。重要なことは、駆動トランジス300が、例えば、符号312のような、多数の垂直なトレースを有するように配置されている、例えば符号309のような上部ポリ層を備えることである。垂直なトレースは、電力トランジスタ300上に形成されたヒータ素子の波状の性質が、確実に、トレース112のほぼ垂直な方向に延びる波型模様を有する波型の底部を有するようにするために重要なものである。図69、図71および図74がこのことを最も良好に示す。下部のCMOS配線により、避けることが不可能な波型模様の性質および方向を考慮することは、アクチュエータの最終的な動作効率のために重要である。理想的な状態では、アクチュエータは、アクチュエータを形成する前の基板工程の上面上の平坦化工程を備えることにより、波型模様がない状態で形成することが好ましい。しかし、追加のプロセス工程を回避する最善の妥協案は、実施形態に示すように、確実に、波型模様が、アクチュエータの湾曲軸と直交する方向に延びるようにすることであり、好適には、常にその全長に沿って延びるようにすることである。これにより、平らなアクチュエータの効率より僅か2%程度低いだけであるアクチュエータをもたらす。この効率であれば、多くの状況で受け入れることができる。縦方向に延びる波型模様は、平らなアクチュエータと比較して、効率が約20%低下する。
【0069】
図80は、イネーブルライン296,297を備える第1レベル金属層の追加を示している。
図81は、関連反射部材323〜328の他に、データインライン290、Sクロックライン91、Sクロック292、Q294、TEn296、およびTEn297、V−320、VDD321、VSS322を含む第2レベルの金属層を示す。部分330および部分331は、犠牲エッチングとして使用される。
【0070】
図82について説明すると、この図は、ヒーターアクチュエータの下で、犠牲エッチング層として使用される部分340を含む第3レベルの金属層を示す。部分341は、電気的相互接続を行う部分342および部分343を含むアクチュエータ構造体の一部として使用される。
【0071】
図83について説明すると、この図は、下部層に相互接続しているヒーターアーム350,351を含む平らな導電性加熱回路を示す。ヒーターアームは、ヒーターアームがアクチュエータアームの固定端、すなわち基端に向かって狭くなるとともに、抵抗は高くなり、そのためその領域を加熱し膨張するように、テーパ状のスロットの一方の側面上に形成されている。加熱回路層352の第2の部分は、ギャップ355により、アーム350および351から電気的に絶縁されていて、主パドル356を構造的にサポートしている。上記ギャップは、任意の形に作ることができるが、355で示すように、通常は、狭いスロットの形をしている。
【0072】
図84は、シュラウド353およびノズルチャンバ354を含むシュラウドおよびノズル層の一部を示す。
図85について説明すると、3つのグループ361−363に分割される、インクジェットノズルのアレイの一部360を示す。この場合、各グループは、全3色印刷を行うために、別々のカラー出力(シアン、マゼンタおよびイエロー)を供給する。外部回路との相互接続のためのボンドパッド365の他に、標準セルクロックバッファおよびアドレスデコーダ364も設置されている。
【0073】
各カラーグループ361,363は、それぞれがヒーターアクチュエータ素子を有する、例えば、367のような、間に間隔を有する2つのインクジェットノズルからできている。
【0074】
図87は、ポリシリコンレベルまでの、複数の層を示す第1の領域370を含むある切断方法の全体のレイアウトの一例を示す。第2の領域371は、第1のレベルの金属までの複数の層を示し、領域372は、第2のレベルの金属までの複数の層を示し、領域373は、ヒーターアクチュエータ層までの複数の層を示す。
【0075】
インクジェットノズルは、ウェハを貫通している共通インクチャネルを共有する10のノズルからなる2つのグループに分けられる。図88は、インクを前面に供給するための一連のインク供給チャネル380を含む、ウェハの背面を示す。
(複製)
ユニットセルは、4インチ(10.16cm)のプリントヘッド上で、下記の複写階層表に示すように、階層状に19,200回複写される。レイアウトグリッドは、0.5ミクロンにおいて、1/21(0.125ミクロン)である。多くの理想的な変換距離は、正確にグリッドの点と一致する。一致しない場合には、距離は最も近いグリット点に四捨五入される。四捨五入した数には*がつけてある。変換は、すべての場合、対応するノズルの中心から測定される。同様に、5本の偶数ノズルの群の5本の奇数ノズルへの変換は、180度の回転を伴う。この工程の並進は、5対のノズルセンターのすべてが一致した位置から起こる。
(複写階層表)
【0076】
【表4】

【0077】
(構成)
図89に示すように、写真印刷の際の使用に適している4インチ(10.16cm)のプリントヘッドを例にとると、4インチのプリントヘッド380は、それぞれのセグメントが1/2インチ(1.27cm)の長さを有する、例えば符号381のような8つのセグメントからなる。従って、各セグメントは、ページの異なる部分に2層のシアン、マゼンタおよびイエローのドットを印刷して最終的な画像を形成する。図89は、8つのセグメントの位置を示す。この例の場合には、プリントヘッドは、1600dpiでドットを印刷する。各ドットの直径は、18.875ミクロンである。よって、1/2インチ(1.27cm)の各セグメントは、800ドットを印刷するが、この場合、8つのセグメントは、下記の表に示す位置に対応する。
【0078】
【表5】

【0079】
各セグメントは、最終画像の800ドットを印刷するが、各ドットは、2層のシアン、マゼンタ、イエローのインクの組合せで表わされる。印刷は2層であるので、最善の結果を得るためには、入力画像は、ディザをかけられるか、または誤差拡散されなければならない。
【0080】
各セグメント381は、2,400本のノズル、すなわち、それぞれ、800本のシアン、マゼンタおよびイエロー用のノズルを含む。4インチプリントヘッド381は、このような8つのセグメントを持ち、全部で19,200のノズルを含む。
【0081】
1つのセグメント内のノズルは、物理的に安定させるため、また印刷中の電力消費を最小にするために、グループ別になっている。物理的な安定性という用語を説明すると、図88に示すように、10本のノズルからなるいくつかのグループが一緒になって同じインクチャネルタンクを共有していることを意味する。電力消費という用語を説明すると、96本のノズルのみが、全プリントヘッドから同時にインクを吐出するようにグループ分けされている。96本のノズルの間隔は最大間隔でなければならないので、各セグメントから12本のノズルがインクを吐出することになる。19,200ノズル全部を吐出させるには、96本のノズルの200の異なるセットからインクを吐出させなければならない。

【0082】
図90は、共通のインクチャネル供給源を共有する1〜10の番号が付された10本のノズルからなる1つのポッド395の略図である。1つの行は5つのノズルを含み、別の行も5つのノズルを含む。各ノズルは、直径15.875ミクロンのドットを発生する。ノズルには、各ノズルの吐出順に番号を付してある。
【0083】
ノズルはこの順序で駆動されるが、印刷したページ上のノズルとドットの物理的位置との間の関係は異なる。1つの行のノズルは、ページ上の一本のラインの偶数ドットを表わし、他の行のノズルは、ページ上の隣接するラインの奇数ドットを表わす。図91は、充填しなければならない順序に従って、番号がつけられているノズルを含む同じポッド395である。
【0084】
それ故、1つのポッド内のノズルは、論理的に、1ドットの幅分離間されている。ノズル間の正確な距離は、インクジェット吐出機構により決まる。最善の場合には、プリントヘッドは、紙送りに適合するように設計された、千鳥状に配置したノズルを備えるように形成され得る。最悪の場合には、1/3200dpiの誤差が生じる。この誤差は、顕微鏡で見ると、完全な直線からずれて見えるが、写真画像でははっきりとは識別できない。
【0085】
図92に示すように、シアン398、マゼンタ197、およびイエロー396を表わす3つのポッドは、トリポッド400にグループ分けされる。トリポッドは、10ドットからなる同じ水平方向の組を表わすが、異なるライン上にある。異なるカラーポッドの間の
正確な距離は、インクジェット動作パラメータにより異なり、インクジェット毎に変化する。この距離は、一定数のドット幅と見なされ、それ故、印刷の際に考慮に入れなければならない。シアンノズルで印刷したドットは、マゼンタノズルまたはイエローノズルで、印刷したものとは異なるラインに対するものである。印刷アルゴリズムは、約8ドット幅まで、距離を変化させることができるものでなければならない。
【0086】
図93に示すように、例えば、符号404が示すようなトリポッドは、1つのポッドグループ405に編成される。各トリポッドは30本のノズルを備えているので、各ポッドグループは300本のノズルを備える。すなわち、100本のシアンノズル、100本のマゼンタノズル、および100本のイエローノズルである。図93は、その配置を示す。この場合、トリポッドには0〜9の番号を付してある。はっきり表示するために、隣接するトリポッドの間の距離は拡大してある。
【0087】
図94に示すように、2つのポッドグループ(ポッドグループA410、およびポッドグループB411)は、1つの吐出グループ414に編成される。この場合、各セグメント415は、4つの吐出グループを備える。各セグメント415は、4つの吐出グループを備える。はっきり表示するために、隣接する吐出グループの間の距離は拡大してある。
【0088】
【表6】

【0089】
(ロードおよび印刷サイクル)
プリントヘッドは、全部で19,200のノズルを含む。一回の印刷サイクルは、印刷対象の情報により、一番多い場合は、これらノズル全部の吐出を含む。一回の充填サイクルは、プリントヘッドに、以降の印刷サイクル中に印刷される情報を充填するプロセスを含む。
【0090】
各ノズルは、その印刷サイクル中に、ノズルを吐出させるかどうかを決める、関連ノズルイネーブルビット(図76の符号289)を含む。ノズルイネーブルビット(ノズル当り1つ)は、一組のシフトレジスタによりロードされる。
【0091】
論理的には、色毎に3つのシフトレジスタがあり、それぞれのシフトレジスタは、800の濃度(deep)を有する。ビットがシフトレジスタ内にシフトされると、情報ビットは交互パルスにより、下部ノズルおよび上部ノズルに送られる。内部においては、各800の濃度を有するシフトレジスタは、2つの400の濃度を有するシフトレジスタ、すなわち、上部ノズル用のシフトレジスタと、下部ノズル用のシフトレジスタとからなる。交互ビットは、交互の内部レジスタ内にシフトされる。しかし、外部インターフェースに関する限り、800濃度のシフトレジスタは1つだけである。
【0092】
すべてのシフトレジスタが完全にロードされると(800パルス)、すべてのビットは、適当なノズルイネーブルビットに並列に転送される。このプロセスは、19,200ビットの一回の並列転送に等しい。上記転送が行われると、印刷サイクルをスタートさせることができる。印刷サイクルの終わりに、すべてのノズルイネーブルビットの並列ロード
が行われる限りは、印刷サイクルおよびロードサイクルを同時に行うことができる。
【0093】
6×4インチ(15.24×10.16cm)の画像を、1600dpiで、例えば、2秒間で印刷する場合には、4インチプリントヘッドは、9,600ライン(6×1600)を印刷しなければならない。2秒間あたり10,000ラインに四捨五入すると、200マイクロ秒のライン時間となる。一回の印刷サイクルおよび一回のロードサイクルの双方が、この時間内に終了しなければならない。さらに、プリントヘッド外部の物理的プロセスとしては、紙を適当な長さだけ移動させなければならない。
(ロードサイクル)
ロードサイクルは、次の印刷サイクルのノズルイネーブルビットによる、プリントヘッドのシフトレジスタのローディングに関連する。各セグメントは、シフトレジスタのシアン、マゼンタおよびイエローの対に、直接関係する3つの入力を有する。これらの入力は、CDataIn、MDataIn、およびYDataInと呼ばれる。8つのセグメントがあるので、プリントヘッド当り全部で24のカラー入力ラインが存在することになる。(すべてで8つのセグメントの間で共有される)SRClockライン上の1つのパルスは、24のビットを適当なシフトレジスタ内に転送する。交互パルスは、それぞれ、下部ノズルおよび上部ノズルにビットを転送する。19,200のノズルが存在するので、上記転送を行うには、全部で800パルスが必要になる。19,200ビット全ての転送が完了すると、共有のPTransferライン上の1つのパルスにより、シフトレジスタから適当なノズルイネーブルビットにデータが転送される。PTransfer上の1つのパルスによる並列転送は、印刷サイクル終了後に行わなければならない。そうでない場合には、そのラインに対するノズルイネーブルビットは不正確なものになる。
【0094】
8つすべてのセグメントが、1つのSRClockパルスでロードされるので、印刷ソフトウェアは、プリントヘッドに対して正しいシーケンスで、データを生成しなければならない。一例を挙げると、第1のSRClockパルスは、次の印刷サイクルのドット0、800,1600,2400,3200,4000,4800,5600に対して、C、MおよびYビットを転送する。第2のSRClockパルスは、次の印刷サイクルのドット1,801,1601,2401,3201,4001,4801,5601に対して、C、MおよびYビットを転送する。800パルスのSRClockパルスの後で、PTransferパルスを供給することができる。
【0095】
奇数および偶数のC出力、M出力およびY出力は、同じ印刷サイクル中に印刷されるが、同じ物理的出力ライン上に印刷されないことに注目することは重要なことである。プリントヘッド内での奇数ノズルと偶数ノズルとの物理的な分離、および異なるカラーのノズルの分離により、ノズルは確実に、ページの異なるライン上にドットを印刷する。データをプリントヘッドにロードする場合には、この相対的な違いを考慮しなければならない。ライン内での実際の違いは、プリントヘッドで使用するインクジェットの特性により異なる。上記違いは、変数D1およびD2により定義される。この場合、D1は、異なる色のノズル間の距離(おそらく、4〜8の値)であり、D2は、(おそらく、値=1)同じ色の同士のノズル間の距離である。表3は、第1の四つのパルス上で、プリントヘッドのセグメントnに転送されたドットを示す。
【0096】
【表7】

【0097】
すべての800個のパルスについても同じことがいえる。800個のSRClockパルス(各クロックパルスが24ビットを転送する)は、200マイクロ秒のライン時間の間に発生しなければならない。それ故、19,200本の各ノズルに対するビット値を計算する平均時間は、200マイクロ秒/19200=10ナノ秒を超えてはならない。データは、80マイクロ秒の間にデータをロードする10MHzの最大速度で、プリントヘッド内にクロックにより送られる。4MHzでのデータのクロックによる転送は、データを200マイクロ秒内にロードする。
(印刷サイクル)
プリントヘッドは19,200本のノズルを含む。これらノズルを同時に吐出させると、余りに多くの電力を消費し、インクの再充填およびノズルの干渉の点で問題がある。それ故、一回の印刷サイクルは、異なる200段階からなる。全部で19,200本のノズルの場合、間隔が最も広い96本のノズルが各段階において吐出する。
・ 4ビットトリポッド選択(1つの吐出グループから10個のトリポッドの中の1つを選択)
各段階で吐出する96本のノズルは、セグメント当り12本のノズルに相当する。(何故なら、すべてのセグメントは、同じ印刷信号を受信するように配線されているからである。)任意のセグメントからの12本のノズルは、各吐出グループから平等に選択される。吐出グループは4つあるので、各吐出グループの中の3つのノズルが吐出する。上記3つのノズルは、各カラー毎に1つずつである。ノズルの決定は下記のように行われる。
【0098】
・4ビットのノズル選択(ポッドの10のノズルから1つを選択)
吐出パルスの持続時間は、すべての吐出グループ、それぞれからポッドグループAおよびポッドグループBを駆動させる、AイネーブルラインおよびEイネーブルラインにより決まる。1つのパルスの持続時間は、(温度およびインクの特性による)インクの粘度、およびプリントヘッドが使用することができる電力により異なる。AイネーブルおよびBイネーブルは、駆動パルスが重畳することができるように、別々のラインである。それ故、印刷サイクルの200の段階は、100Aの段階と100Bの段階からなり、効果的にA段階およびB段階の100組を与える。
【0099】
一本のノズルが駆動すると、再充填するのに約100マイクロ秒掛かる。全印刷サイクルを行うには200マイクロ秒掛かるため、これは問題にはならない。また、ノズルの駆動は、そのノズルのポッドの共通インクチャネル内で短い時間の間、乱れを生じる。この乱れは、同じポッド内の別のノズルの吐出と干渉を起こすおそれがある。従って、ポッド内のノズルの駆動は、少なくともこの時間だけずらす必要がある。それ故、この手順は、最初に、トリポッドから(各カラー毎に一本のノズルずつ)3つのノズルを駆動し、その後で、ポッドグループ内の次のトリポッドに移動する。所与のポッドグループ内には、トリポッドは3つあるので、元のトリポッドが次の3つのノズルを駆動しなければならなくなる前に、以降の九つのトリポッドが駆動しなければならない。2マイクロの駆動インターバル9回は、18秒のインクの準備時間を与える。
【0100】
従って、駆動順序は下記のようになる。
・トリポッド選択0、ノズル選択0(段階AおよびB)
・トリポッド選択1、ノズル選択0(段階AおよびB)
・トリポッド選択2、ノズル選択0(段階AおよびB)
・...
・トリポッド選択9、ノズル選択0(段階AおよびB)
・トリポッド選択0、ノズル選択1(段階AおよびB)
・トリポッド選択1、ノズル選択1(段階AおよびB)
・トリポッド選択2、ノズル選択1(段階AおよびB)
・...
・トリポッド選択8、ノズル選択9(段階AおよびB)
・トリポッド選択9、ノズル選択9(段階AおよびB)
段階Aおよび段階Bは重畳することができることに留意されたい。また、1つのパルスの持続時間は、バッテリーの電力および(温度の変化による)粘度により変化する。図95は、通常の印刷サイクル中のAイネーブルラインおよびBイネーブルラインを示す。
(プリントヘッドからのフィードバック)
プリントヘッドは、(8つのセグメントから蓄積した)フィードバックの数本のラインを印刷する。フィードバックラインは、駆動パルスのタイミングを調整するのに使用することができる。各セグメントは、同じフィードバックを行うが、すべてのセグメントからのフィードバックは、同じトリステートバスラインを共有する。従って、一回に1つのセグメントのみがフィードバックを行うことができる。シアンに関するデータと論理積したSenseEnableライン上の1つのパルスが、そのセグメントに対するラインを感知することができる。フィードバック感知ラインは下記の通りである。
・ Tsenseは、コントローラにプリントヘッドの温度を知らせる。これにより、コントローラは、温度がインクの粘度に影響するため、駆動パルスのタイミングを調整することが可能である。
【0101】
・Vsenseは、コントローラに、アクチュエータに供給することができる電圧を知らせる。これにより、コントローラは、パルス幅を調整することにより、平型バッテリーまたは高電圧源を補償することができる。
【0102】
・Rsenseは、コントローラに、アクチュエータヒータの比抵抗(平方毎オーム)を知らせる。これにより、コントローラは、ヒータの比抵抗が変化してもエネルギーを一定に維持するために、パルス幅を調整することができる。
【0103】
Wsenseは、コントローラにリソグラフィおよびエッチングの変動により、±5%変化する恐れがあるヒータの重要な部分の幅を知らせる。これにより、コントローラは、適宜パルス幅を調整することができる。
(予熱モード)
印刷プロセスは、平衡温度に留まろうとする強い傾向を有する。印刷した写真の第1の部分が確実に一定のドットサイズを有するようにするためには、理想的には、任意のドットを印刷する前に平衡温度を適応させなければならない。この適応は、予熱モードで行い得る。
【0104】
予熱モードは、1sでの、すべてのノズに対する一回のロードサイクル(すなわち、すべてのノズルを駆動させること)、および各ノズルに対する多数の短い駆動パルスを伴う。このパルスの持続時間は、インク滴を吐出するには短いけれども、ヒータの周囲のインクを加熱するには十分長い。各ノズルに対して約200個のパルスが必要であるが、標準印刷サイクルとして同じシーケンスで動作が循環する。
【0105】
予熱モード中のフィードバックは、Tsenseにより行われ、温度が(周囲温度より
約30℃高い)平衡温度に達するまで継続して行われる。予熱モードの持続時間は、約50ミリ秒とし得、インクの組成により調整し得る。
(プリントヘッドインターフェースの概要)
プリントヘッドは、下記の接続部を有する。
【0106】
【表8】

【0107】
プリントヘッドの内部において、各セグメントは、ボンドパッドに対して下記の接続部を有する。
(パッド接続)
プリントヘッド全体は、全部で504個の接続部を有しているが、マスクレイアウトは、わずか63個の接続部しか有していない。これは、チップは、それぞれ12.7ミクロンの長さを有する8つの同じであるが独立しているセクションから形成されているためである。これら各セクションは、200ミクロンの間隔で63個のパッドを含む。63個のパッドのグループの各端部には50ミクロンの長さの余剰部分があり、そのため、正確な反復距離は、12,700ミクロン(12.7ミクロン、1/2インチ)となっている。(パッド)
【0108】

【表9】


【0109】
(製造および動作許容範囲)
【表10】



【0110】
(周囲温度による変動)
周囲温度の変化による主要な結果は、インク粘度および表面張力の変化である。湾曲アクチュエータはアクチュエータ層と湾曲補正層との間の温度差のみに応答するので、周囲
温度が湾曲アクチュエータに与える直接の影響は無視できる。TiNヒータの抵抗は、温度ではわずかにしか変化しない。以下のシミュレーションは、0℃から80℃の温度範囲内にある水性インクに当てはまる。
【0111】
インク滴速度およびインク滴量は、予想とは異なり、温度上昇とともに単調には変化しない。これは、温度が上昇するにつれ、粘度が表面張力の低下より急速に低下するためであると簡単に説明される。粘度が低下するにつれ、ノズルから出るインクの動作はわずかに容易になる。しかし、パドル前部の高圧領域からパドル後部の低圧領域まで、パドル周囲のインクの動作は、さらに大きく変化する。従って、温度が上昇し、粘度が低下するにつれ、「短絡」するインク動作が多くなる。
【0112】
【表11】

【0113】
IJ46プリントヘッドの温度は、インク滴量およびインク滴速度の均一性を最適にするよう調整される。温度は、各セグメントのチップ上で感知される。温度感知信号(Tsense)は共通Tsense出力部に接続される。感知イネーブル(Sen)をアサートし、D[C0-7]行を使用して適切なセグメントを選択することにより、適切なTse
nse信号を選択する。Tsense信号は、駆動ASICによってデジタル化され、インク粘度の変化を補償するため駆動パルス幅が変更される。インクの粘度/温度の関係を指定するデータは、インクに関連する確認チップに保存される。
【0114】
(ノズル半径による変動)
ノズル半径は、インク滴量およびインク滴速度に重大な影響を及ぼす。この理由により、0.5ミクロンのリソグラフィで厳密に制御される。ノズルは、2ミクロンの犠牲材料をエッチングし、次にノズル壁材料を被着させ、CMP工程を実行して形成する。CMPは、ノズル構造を平面化し、オーバーコートの頂部を除去して内部の犠牲材料を露出させる。犠牲材料はその後除去され、自己整合したノズルとノズルリムを残す。ノズルの内径精度は、主にリソグラフィの精度、および2ミクロンでエッチングした側壁角度の均一性によって決定される。
【0115】
下表は、様々なノズル半径における操作を示す。ノズル半径が増加するにつれ、インク滴速度は安定して減少する。しかし、インク滴量は約5.5ミクロンの半径でピークに達する。公称ノズル半径は5.5ミクロンであり、使用公差仕様はこの半径に±4%の変化を許容し、5.3〜5.7ミクロンの範囲となる。シミュレーションは、公称使用範囲(
5.0から6.0ミクロン)から外れた極端な値も含む。主要なノズル半径の変動は、ノズルの犠牲エッチングとCMP工程の組合せによって決定される可能性が高い。つまり、変動は局所的ではない。ウェハ同士の差、およびウェハの中心の周辺との差がある。ウェハ間の差は、「輝度」調節によって補正される。ウェハ内の変動は、突然でない限り感じられない。
【0116】
【表12】

【0117】
(インク供給システム)
前述した技術により形成されたプリントヘッドは、PCT特許出願第PCT/AU98/00544号で開示されたものと同様の印刷カメラ/システムに使用し得る。次に、プリントオンデマンドカメラシステムでの使用に適したプリントヘッドおよびインク供給構成について説明する。まず図96および図97から説明すると、インク供給ユニット430の形態にあるインク供給装置の部分が示されている。供給ユニットは、3つのインク貯蔵チャンバ521を備え、3色のインクをプリントヘッドの背面に供給するよう形成し得、プリントヘッドは、好ましい形態においてはプリントヘッドチップ431である。インクを公差が厳密なインク出口432からプリントヘッド431の後部へと流れさせるため、インクは、例えば符号434で示されるような一連のスロットを備えるインク分配成形部材すなわちマニホルド433によってプリントヘッドに供給される。出口432は非常に小さく、約100ミクロンの幅を有し、従って後述するハウジング495などのインク供給ユニットの隣接する相互作用構成要素より、はるかに高い精度で形成する必要がある。
【0118】
プリントヘッド431は細長い構造であり、シリコーンゲルまたは同様の弾性接着剤520によってインク分配マニホルドのプリントヘッド口435に取り付けられ得る。
プリントヘッドは、プリントヘッド口435の内側に接着剤を塗布することによって、その背面438および側面439に沿って取り付けることが好ましい。この方法において、接着剤は前記口とプリントヘッドの相互接続する面にのみ塗布され、プリントヘッドチップ431(図88参照)の後部に形成された精密なインク供給通路380を閉塞する危険が最小となる。成形部材433を通過するインクを濾過するよう、分配成形部材433の周囲に填るよう設計されたフィルタ436も設ける。
【0119】
インク分配成形部材433およびフィルタ436をバッフルユニット437に挿入し、これもインターフェース438に塗布したシリコンシーラントによって取り付けられ、従
ってインクは、例えば、穴440および穴434を介して流れ得る。バッフル437は、幾つかの隔置されたバッフルまたはスラット441〜443を含むプラスチックの射出成形ユニットでよい。バッフルは、ポータブルプリンタの動作によって誘発され、この好ましい形態においてはプリントヘッドの縦方向に沿って最も破壊的であるような貯蔵チャンバ521内のインクの加速を減少させるよう、各インクチャンネル内に形成され、それと同時に能動的な要求に応答してインクがプリントヘッドに流れさせる。バッフルは、取り扱い中に流れの変動に対する混乱を最小限に抑えるよう、インクの携帯用キャリッジを効果的に提供する。
【0120】
バッフルユニット437は、ハウジング445内に収容される。ハウジング445は、バッフル部材437を3つの独立したインクチャンバ521内に密封するよう、バッフル部材437に超音波溶接され得る。さらに、バッフル部材437は、インクが3つのチャンバそれぞれに流れるために対応して組み合うインク供給導管によって貫通され得る一連の貫通可能な端壁部分450〜452を備える。ハウジング445は、一連の孔455も備え、該孔は、孔455などの疎水性の性質により、バッフルチャンバ内にインクが残っている間、バッフルユニットの3つのチャンバ内の空気が逃げられるよう、テープなどによって疎水的に密封されている。
【0121】
前述したようにインク分配ユニットを独立した相互作用する構成要素内に形成することにより、プリントヘッドとのインターフェースで高い精度が必要されているにもかかわらず、比較的従来の成形技術を使用することが可能である。これは、徐々に小さくなる構成要素を使用することにより、寸法精度要件が数段階に分割され、インク分配マニホルドまたは第2の部材である最も小さい最終部材のみが、チップ内に形成されるインク供給通路380と正確に相互作用する必要がある狭い公差で形成されるためである。
【0122】
ハウジング445は、一連の位置決め突起460〜462などを含む。第1のシリーズの突起は、プリントヘッドチップ431に相互接続されたTABフィルム470の表面に沿って低抵抗の電力および接地を分配するよう、TABフィルムの表面に沿った多数の位置でTABフィルム470と相互接続する第1(465)および第2(466)電源および接地バスバーに加えて、テープ自動接着フィルム470の形態の相互接続手段を正確に配置するよう設計される。
【0123】
TABフィルム470は、図102および図103では開状態でさらに詳細に図示されている。TABフィルム470は両面を有し、外側の面には着脱式に複数の対応する外部制御ラインと接続する複数の長手方向に延びる制御ライン相互接続部550の形態にあるデータ/信号バスを有する。外側の面には、被着した貴金属ストリップ552の形態のバスバー接点も設けてある。
【0124】
TABフィルム470の内側は、交互にバスバーおよび制御ライン550を介して電源をプリントヘッドバイア領域554上の接着パッドに接続し横方向に延びる複数の接続ライン553を有する。制御ラインとの接続は、TABフィルムを通って延びるバイア556によって行われる。TABフィルムを使用する多くの利点の1つは、硬質のバスバーレールを壊れやすいプリントヘッドチップ431に接続する可撓性の手段を提供することである。
【0125】
バスバー465,466は、カバーユニット478によってバスバー465,466に堅固に締め付けられた接点475,476と接続する。カバーユニット478も射出成形部品からなり得、印刷済みページの切断を補助するため、アルミバーを挿入するためのスロット480を含む。
【0126】
次に図98を参照すると、プリントヘッドユニット430、関連するプラテンユニット490、プリントロールおよびインク供給ユニット491、およびユニット430,490,491をそれぞれ相互に接続する駆動電力分配ユニット492の切断図が図示されている。
【0127】
裁断機ブレード495は、印刷が発生した後に画像499を切断するよう、アルミブレード498に沿って第1のモータによって駆動され得る。図98のシステムの動作は、PCT特許出願第PCT/AU98/00544号で開示された動作と非常に似ている。インクは、プリントロール形成器501の芯部分500に貯蔵され、その周囲に印刷媒体502を巻き付ける。印刷媒体は、電気モータ494の制御でプラテン290とプリントヘッドユニット490の間にフィードされ、インクはインク搬送路505を介してプリントヘッドユニット430と相互に連絡する。プリントロールユニット491は、前述したPCT出願明細書における記載と同様である。図99には、1つのプリンタユニット510の組み立てた形態が示されている。
【0128】
(特徴および利点)
IJ46プリントヘッドは、他の印刷技術と比較した場合、多くの特徴及び利点を有する。ある場合には、これらの利点は、新しい機能から由来している。
他の場合には、上記利点は、従来技術に固有の問題を解決したことにより生じたものである。これらの利点の中のいくつかを以下に説明する。
【0129】
(高解像度)
IJ46プリントヘッドの解像度は、走査方向および走査方向に直交する方向の双方において、1,600ドット/インチ(dpi)である。この解像度により、十分な写真画質のカラー画像を印刷し、高品質のテキスト(漢字を含む)を印刷することが可能である。さらに高い解像度も可能であり、特殊な用途用に、2,400dpi、および4,800dpiの解像度の研究が現在進められているが、大部分の用途には1,600dpiが選択される。先行して市販されている圧電素子装置の本当の解像度は120dpi程度であり、サーマルインクジェット装置の解像度は600dpi程度である。
(優れた画質)
高い画質は、高い解像度と、インク滴の正確な位置への印刷とを必要とする。IJ46プリントヘッドのモノリシックなページ幅の性質により、インク滴をミクロン未満の単位で印刷することが可能である。また、正しくない方向へのインク滴の吐出、静電気による変位、空気の擾乱および渦流をなくし、また、高度に一定なインク滴量および速度を維持することによっても、高い品質を達成している。また、画質は複数のインク濃度を使用しなくてもすむように十分な解像度を供給することによっても確実に達成される。5色または6色の「写真」インクジェットシステムは、染料の相互作用およびインク滴のサイズが絶対完全でなければ、中間色(肉色のような)においてハーフトーンの人工的な印刷物を生じる恐れがある。この問題は、IJ46プリントヘッドで使用している2層式3色システムにより解決することが可能である。
(高速(プリントヘッド当り30ppm))
プリントヘッドがページ幅を有しており、走査を必要としないため、高速印刷を行うことが可能である。フルカラーのA4サイズの1頁を印刷するのに必要な時間は2秒以下であるので、1つのプリントヘッドで、1分間あたり30ページ(ppm)を完全に印刷することが可能である。60ppm、90ppm、120ppm等を実現するために、複数のプリントヘッドを並行して使用することが可能である。IJ46プリントヘッドは、コストが安く、小型であるために、多重ヘッド構成は実用的である。
(低コスト)
IJ46プリントヘッドのノズル搭載密度が非常に高いので、プリントヘッド当りのチップ面積を小さくすることが可能である。そのため、多数のプリントヘッドチップを、同
一ウェハ上に実装することが可能であるため、製造コストが安価になる。
(全デジタル動作)
デジタル中間調調整技術を用いたデジタル操作を完全に可能にするために、プリントヘッドの解像度は高く選択してある。そうすることによりカラーの非直線性(連続トーンプリンタの抱える1つの問題)を除去し、駆動ASICの設計が容易になる。
(インク滴が小さい)
真の1,600dpiの解像度を達成するためには、インク滴のサイズは小さくなければならない。IJ46プリントヘッドのインク滴のサイズは、1ピコリットル(1pl)である。先行して市販されている圧電素子装置、およびサーマルインクジェット装置のインク滴のサイズは約3〜30plである。
(インク滴速度の正確な制御)
インク滴吐出装置は、精度の高い機械的機構であり、バブル核形成に依存していないので、インク滴の速度を正確に制御することが可能である。これにより、媒体および空気の流れを制御し得る用途に使用することが可能なように、インク滴の速度を遅くし得る(3〜4メートル/秒)。アクチュエータに供給されるエネルギーを変化させることにより、かなり広い範囲でインク滴の速度を正確に変化させることが可能である。普通紙および比較的制御されていない状態における使用に適している高いインク滴の速度(10〜15メートル/秒)は、ノズルチャンバおよびアクチュエータの寸法を変化させることにより達成することが可能である。
(速乾性)
非常に高い解像度と、非常に小さいインク滴と、高い染料濃度との組合せにより、遥かに少ない水の噴出量でフルカラー印刷を行うことが可能である。1,600dpiの解像度を有するIJ46プリントヘッドは、600dpiのサーマルインクジェットプリンタが噴出する水の約33%しか噴出しない。それにより、迅速な乾燥が可能になり、紙に皺がよらなくなる。
(広い温度範囲)
IJ46プリントヘッドは、周囲温度の影響を打ち消すように設計されている。温度によるインクの特性の変化だけが動作に影響を与えるが、このような影響は電子的に補償することが可能である。使用温度範囲は、水性インクの場合、0℃〜50℃と予想される。(特殊な製造装置を必要としない)
IJ46プリントヘッドの製造プロセスは、すでに確立されている半導体製造産業からすべて導入したものである。大部分のインクジェットシステムは、高精度の特殊製造装置が必要になるため、実験室段階から生産段階へ移行する際に大きな困難に遭遇し、多大の費用を必要とする。
(高生産性)
月産10,000枚のウェハ生産で開始した6インチのCMOS工場は、年間約1800万個のプリントヘッドを生産することが可能である。月産20,000枚のウェハ生産で開始した8インチCMOS工場は、約6000万個のプリントヘッドを生産することが可能である。現在、世界中に、このようなCMOS工場が多数ある。
(低い工場設備費)
現在の0.5ミクロンの6インチCMOS工場を使用することが可能であるため、工場を安いコストで立ちあげることが可能である。これらの工場は、完全に自動化することができ、本質的には、CMOSロジック生産には時代遅れになっている。それ故、大量生産に「古い」現在の施設を使用することが可能である。大部分のMEMS後処理もCMOS工場で行うことが可能である。
(優れた耐光性)
インクを加熱しないので、使用することが可能である染料のタイプに関する制限が少ない。そのため、耐光性が最適になるように染料を選択することが可能である。アベシア(Avecia)社およびヘキスト(Hoechst)社のような企業が最近開発した染料は、耐光度4の耐光性を有する。この耐光性は、多くの顔料が有する耐光性と同一であり
、現在まで使用されてきた写真用染料およびインクジェット染料の耐光性よりかなり優れている。
(優れた耐水性)
耐光性と同様に、上記染料には熱的制限がないので、耐水性のような特性により染料を選択することが可能である。非常に高い耐水性(洗濯可能である布地に要求されるような)を有しているので、反応性染料を使用することが可能である。
(優れた色域)
高い色純度の透明な染料を使用することにより、オフセット印刷およびハロゲン化銀写真の色域よりかなり広い色域での印刷が可能になる。特に、オフセット印刷の場合には、使用する顔料からの光の散乱により、色域が狭くなる。3色システム(CMY)、または4色システム(CMYK)を使用することにより、
色域は、色頂点の間の四面体の体積に必然的に制限される。それ故、シアン、マゼンタおよびイエロー染料のスペクトルは、可能であるだけ純粋であることが重要である。純粋な赤、緑、および青を含む、若干広い「六角錐」色域は、6色(CMYRGB)モデルを用いて達成され得る。チップ幅が1ミリですむので、このような6色プリントヘッドを経済的に製造することが可能である。
(色滲みの解消)
前の色が濡れている間に異なる一次色を印刷すると、色間でインクが滲む。1600dpiの場合には、通常、インクの滲みによる画像のぼけはごくわずかであるが、インクの滲みが画像の中間色を「濁らせる」恐れがある。インクの滲みは、IJ46プリントヘッドが非常に適しているマイクロエマルジョンを基材とするインクを使用することにより解消することが可能である。マイクロエマルジョンインクを使用すると、ノズルの詰まりを防止することも助け、確実にインクを長期間安定させておくことが可能である。
(多いノズル数)
IJ46プリントヘッドは、モノリシックCMY3色写真プリントヘッドに19,200本のノズルを有する。この数は他のプリントヘッドと比較すると多いが、大量生産の際に、CMOS VLSIチップ上に通常集積されるデバイスの数と比較すると少ない。また、この数は、テキサスインスツルメンツ(Texas Instruments)社が、類似のCMOSおよびMEMSプロセスにより製造したデジタルマイクロミラーデバイス(DMD)内に集積する可動ミラーの数より3%少ない。
(A4ページ幅プリントヘッド当り51,200本のノズル)
A4/USレターのページ幅を印刷するための4色カラー(CMYK)IJ46プリントヘッドは、2つのチップを使用する。各0.66cm2のチップは、全部で51,200本のノズルのうちの25,600本のノズルを備える。
(駆動回路の集積化)
51,200のノズルを含むプリントヘッドにおいては、データ分配回路(シフトレジスタ)、データタイミングトランジスタ、およびノズルを含む駆動トランジスタを集積することが非常に重要である。さもないと、最低でも、51,201個の外部接続が必要になる。この要件は、駆動回路が圧電基板上に集積することができないため、圧電インクジェットにとって重大な問題である。数百万の接続部を集積するということは、高い収率で、大量生産されるCMOS VLSIチップ内において普通に行われていることである。制限しなければならないのはオフチップ接続の数である。
(モノリシック製造)
IJ46プリントヘッドは、1つのモノリシックCMOSチップとして製造される。それ故、精度の高い組立てを行う必要はない。すべての製造は、標準CMOS VLSIおよびMEMS(超小型電子機械システム)により行われる。サーマルインクジェットシステム、およびある種の圧電インクジェットシステムの場合には、ノズルプレートとプリントヘッドチップとの組立が、低い収率、低い解像度、サイズ制限の原因である。同様に、ページ幅アレイは、通常、複数のより小さなチップから形成される。これらのチップの組立および整合は、費用のかかるプロセスである。
(広い印刷幅用に拡張可能なモジュールタイプ)
2つまたはそれ以上の100ミリ幅のIJ46プリントヘッドを互いに突き合わせることにより、広いページ幅のプリントヘッドを作ることが可能である。IJ46プリントヘッドの端部は、隣接するチップに自動的に整合するように設計されている。1つのプリントヘッドを使用すると写真サイズのプリンタが形成され、2つのプリントヘッドを使用するとA4プリンタが形成され、4つのプリントヘッドを使用するとA3プリンタが形成される。高速デジタル印刷、ページ幅の広いフォーマットの印刷および布地印刷用には、より多数のプリントヘッドを使用することが可能である。
(両面動作) 全速の印刷速度における両面印刷は、非常に実用的なものである。最も簡単な方法は、紙の各側面上に1つずつ配置した2つのプリントヘッドを備える方法である。2つのプリントヘッドを設置するのに要するコストおよび複雑さの程度は、紙を裏返すための機械的システムのものよりは少ない。
(直線ペーパーパス)
ドラムを必要としないため、紙詰まりを起こす可能性を減らすために、直線的なペーパーパスを使用することが可能である。このことは、ページを裏返すために必要とされる複雑な機構が紙詰まりの主な原因となっているオフィス用両面印刷プリンタに特に関係する。
(高効率)
サーマルインクジェットプリントヘッドは、約0.01%程度の効率(電気エネルギーの入力に対する、粒子の運動エネルギー及び増加した界面エネルギー)しか有しない。IJ46プリントヘッドは、20倍を超える効率を有する。
(自己放熱動作)
各インク滴を吐出するために必要とされるエネルギーは160nJ(0.16μJ)であり、サーマルインクジェットプリンタが必要とするエネルギーの一部である。低エネルギーであるためプリントヘッドは吐出されたインクにより完全に冷却され、最悪の事態においても、わずか40℃のインク温度の上昇となる。ヒートシンクは不要である。
(低圧力)
IJ46プリントヘッドにおいて生じる最大圧力は、約60kPa(0.6気圧)である。サーマルインクジェット、及びバブルジェットシステムにおける気泡核生成、及び崩壊により生じる圧力は、一般的には10MPa(100気圧)を超え、これはIJ46プリントヘッドの最大圧力の160倍に相当する。バブルジェットやサーマルインクジェットの設計における高い圧力は、高い機械的応力を生じる。
(低電力)
30ppm/A4サイズのIJ46プリンタヘッドは、全3色を重ね合わせた黒を印刷するときに、約67ワットの電力を必要とする。5%の印字密度で印刷する場合、平均電力消費量は、わずか3.4ワットである。
(低電圧による作動)
IJ46プリントヘッドは、一般的なドライブASICと同様に、単一の3Vの電源供給により動作が可能である。サーマルインクジェットは、一般的には少なくとも20Vを必要とし、圧電素子インクジェットは、50Vを超える電圧を必要とすることが多い。IJ46プリントヘッドアクチュエータは、2.8Vの通常動作用に設計されており、駆動用トランジスタにおける0.2Vの電圧降下を許容して、3Vでチップの作動を達成する。
(2本、又は4本のAAバッテリーによる作動)
電圧消費量は、写真用IJ46プリントヘッドがAAバッテリーにより動作可能であるほど低い。典型的な6”×4”(15cm×10cm)の写真には、20J(駆動用トランジスタによる損失を含む)より少ない電力を必要とする。写真を2秒で印刷する場合には、4本のAAバッテリーの使用が推奨される。印刷時間が4秒まで延長される場合は、2本のAAバッテリーを使用可能である。
(バッテリー電圧補償)
IJ46プリントヘッドは、無調節電池電源によっても作動させることが可能であるため、電圧調節器における効率損失を排除する。このことは、相当な範囲の供給電圧において、一貫した動作を達成しなければならないことを意味する。IJ46プリントヘッドは、供給電圧を検知し、インク滴の体積を一定にするために、アクチュエータの動作を調節する。
(アクチュエータ及びノズルの小面積化)
IJ46プリントヘッドのノズル、アクチュエータ、及び駆動回路に必要な面積は1764μm2である。これは、圧電素子インクジェットノズルに必要な面積の1%に満たず、バブルジェットノズルに必要な面積の約5%である。アクチュエータ面積は、プリントヘッドの製造コストに直接的に影響を与える。
(プリントヘッド全体の小型化)
A4、30ppm、1,600dpi、4色プリントヘッドに使用するプリントヘッドアセンンブリ全体(インク供給チャネルを含む)は、210mm×12mm×7mmの大きさを有する。小型化により、ノート型コンピュータや、小型プリンタに組み込むことが可能となる。写真プリンタは106mm×7mm×7mmの大きさを有し、ポケットデジタルカメラ、パームトップPC、携帯電話/ファックス、等への組み込みを可能とさせる。インク供給チャネルが、この体積の大半を占める。プリントヘッドチップ自体は、わずか102mm×0.55mm×0.3mmの大きさを有する。
(小型ノズル封止システム)
IJ46プリントヘッドのために小型ノズル封止システムが設計された。写真プリンタ用のノズル封止システムは、わずか106mm×5mm×4mmであり、プリントヘッドを移動させる必要はない。
(高い製造歩留り)
IJ46プリントヘッドの製造歩留り(成熟時)は、プリントヘッドが主としてわずか0.55cm2の面積を有するデジタルCMOSチップであることから、少なくとも80%になると見積られる。最新のCMOSプロセスは、1cm2を超えるチップ面積においても高い歩留りを達成する。約1cm2よりも小さいチップにおいては、コストはチップ面積にほぼ比例する。コストは、1〜4cm2チップにおいて急激に上昇し、これよりも大きいサイズのチップはほとんど実用的ではない。1cm2よりも小さいチップ面積の確保する強い動機である。サーマルインクジェット及びバブルジェットプリントヘッドにおいて、チップ幅は一般的には約5mmであり、対費用効果のよいチップ長は約2cmに限定される。IJ46プリントヘッド開発の主要な目的は、可能な限りチップ幅を減少させて対費用効果のよいモノリシックページ幅プリントヘッドを可能にすることにある。
(プロセスの簡略化)
デジタルIC製造において、デバイスのマスクの複雑化は、製造コスト又は難易度にほとんど影響を及ぼさない。コストは工程数とリソグラフィの限界寸法に比例する。IJ46プリントヘッドは、標準的0.5μシングルポリトリプルメタル(single poly triple metal)CMOS製造プロセスと、これに加えて5つのMEMSマスク工程を使用す
る。これにより、典型的な5層の金属を有する0.25μCMOSロジックプロセスよりも製造プロセスを単純化する。
(検査の簡略化)
IJ46プリントヘッドは、ウェハプローブ工程において大半の検査の完了を可能にするテスト回路を備える。アクチュエータの抵抗を含む、全ての電気特性の検査をこの工程で完了することが可能である。しかし、アクチュエータの動作は、犠牲材料を取り除いた後でないと検査することができないので、最終検査は、パッケージされたチップで行われる。
(低コストパッケージ)
IJ46プリントヘッドは、射出成形されたポリカーボネートパッケージでパッケージされる。全接続は、テープオートメーテッドボンディング(TAB)技術(ワイヤボンディングをオプションとして使用することもある)により形成される。全ての接続は、チッ
プの一辺に沿っている。
(アルファ粒子に対する感度がない)
スタティックレジスタ以外にはメモリ素子がないため、パッケージにおいてアルファ粒子の放出を考慮する必要がない。アルファ粒子の通過による状態変化は、紙に印刷したときに、1つの余分なドットを生じるのみである(又は生じない)。
(限界寸法の緩和)
IJ46プリントヘッドCMOS駆動回路の限界寸法(CD)は、0.5ミクロンである。マイクロプロセッサのような最新式のデジタルICは、0.25ミクロンのCDを使用し、IJ46プリントヘッドが必要とするよりも2世代進んだデバイスである。MEMS後プロセス工程の大部分は、1ミクロン以上のCDを有する。
(製造における低応力)
製造中のデバイスのクラッキングは、サーマルインクジェット及び圧電素子装置の双方において深刻な問題である。この問題は、製造可能なプリントヘッドの大きさを限定する。IJ46プリントヘッドの製造にかかる応力はCMOS作製に必要とされるものより大きくなることはない。
(走査による濃度ムラの解消)
IJ46プリントヘッドはページの全幅にわたる幅を有するので走査は行わない。これにより、インクジェットプリンタの最も重要な画質についての問題点を排除する。他の原因(位置ズレしたインク滴、プリントヘッド位置合わせ)による濃度ムラ(Banding)は、ページ幅のプリントヘッドにおいて一般的に重要な問題である。濃度ムラにおけるこれらの原因も本発明の対象としている。
(「完璧な」ノズル位置合わせ)
プリントヘッド内の全てのノズルは、プリントヘッドのリソグラフィに使用される0.5ミクロンのステッパにより、サブミクロンの精度で位置決めされている。A4ページ幅のプリントヘッドを形成するために、2つの4”(10センチメートル)プリントヘッドのノズル位置合わせが、プリントヘッドチップ上の機械的位置合わせ特性の補助により、達成される。これにより、自動機械的位置合わせを(2つのプリントヘッドチップを単純に押し合うことにより)1ミクロン以内にすることが可能となる。特別の用途において、より微細な位置合わせが必要となるときは、4”プリントヘッドは、光学的に位置合わせされることもある。
(サテライトインク滴の解消)
極小インク滴サイズ(1pl)と中程度のインク滴速度(3m/s)により、画質の問題点の主要因であるサテライトインク滴が排除される。約4m/sにおいて、サテライトインク滴が形成されるが、もとのインク滴に追いつく。約4.5m/s以上においては、もとのインク滴に対して多様な速度を有して、サテライトインク滴が形成される。特に問題となるのは、プリントヘッドに対して負の速度を有するため、プリントヘッド表面に堆積されることが多くなるようなサテライトインク滴である。これは、高速(約10m/s)なインク滴速度を用いる場合に回避が困難な問題点である。
(層流のエアフロー)
低いインク滴速度は、インク滴の印刷媒体上の良好な配置のために、渦(eddy)を有さない空気の層流を必要とする。これは、プリントヘッドパッケージの設計により達成される。普通紙への適用や、他の粗い表面上に印刷するためには、より高いインク滴速度が望ましい。15m/sまでのインク滴速度は、多様な設計寸法を使用することにより達成可能である。4m/sインク滴速度の3色写真プリントヘッドと15m/sインク滴速度の4色普通紙プリントヘッドを同一のウェハに作製することが可能である。これは、同一のプロセスパラメータを使用して双方を形成することが可能であるからである。
(位置ズレしたインク滴がない)
位置ズレしたインク滴は、ノズルの周囲に、プリントヘッド表面の疎水性コーティングが併設された領域に、インク滴が散乱することを防止する薄いリムを配置することにより排除される。
(熱的クロストークがない)
バブルジェットや他のサーマルインクジェットシステムにおいて、隣接するアクチュエータに電圧が印加されると、1つのアクチュエータから放出された熱は他のアクチュエータに広がり、噴射性に影響を与える。IJ46プリントヘッドにおいては、1つのアクチュエータから隣接するアクチュエータに拡散する熱は、ヒータ層と湾曲相殺層の双方に均等に影響し、パドル位置には何の影響も与えない。これにより、熱的クロストークが事実上排除される。
(流体クロストークがない)
同時に発射する各ノズルは、(薄くされた)ウェハを貫通してエッチングされた300ミクロン長のインク流入部の末端にある。これらのインク流入部は、低い流体抵抗を有する大きなインクチャネルに接続される。事実上この構造においては、1つのノズルからのインク滴の吐出が他のノズルに影響を及ぼさない。
(構造的クロストークがない)
これは圧電素子プリントヘッドについて共通な問題である。この問題は、IJ46プリントヘッドにおいては生じない。
恒久型プリントヘッド
IJ46プリントヘッドは、恒久的に組み入れることが可能である。プリントヘッドを消耗品に含める必要がないため、消耗品の製造コストは劇的に低減される。
(コゲーションがない)
コゲーション(焦げたインク、溶媒、及び不純物の燃え殻)は、バブルジェット及び他のサーマルインクジェットプリントヘッドにおける重要な問題である。IJ46プリントヘッドにおいては、インクは直接加熱されないため、この問題を有さない。
(キャビテーションがない)
気泡の激しい崩壊により生じる壊食は、バブルジェット及び他のサーマルジェットプリントヘッドの寿命を制限する別の問題点である。IJ46プリントヘッドは、気泡が形成されないため、この問題が生じない。
(エレクトロマイグレーションがない)
IJ46プリントヘッドのアクチュエータやノズルにおいては、金属が使用されず、全てセラミックである。従って、実際のインクジェットデバイスにおいてエレクトロマイグレーションに関する問題がない。CMOS金属層は、エレクトロマイグレーションを起こすことなく、要求される電流を流すように設計されている。この考察は、高速CMOSスイッチングではなくヒータ駆動電力から生じるため、容易に達成される。
(確実な電力接続)
IJ46プリントヘッドの電力消費はサーマルインクジェットプリントヘッドよりも50倍少ないが、高速印刷や低電圧は結果的に相当に高い電流消費となる。最悪の場合は、3ボルトの供給により写真のIJ46プリントヘッドによる2秒の印刷のための電流が4.9Ampである。電流は、銅のバスバーを通じ、チップの端部に沿って256個のボンドパッドに供給される。各ボンドパッドは、最大40mAの電流を流す。駆動トランジスタに通じるオンチップコンタクト及びバイアは、1.5mAのピーク電流を1.3μ秒、最大平均値12mAを流す。
(腐食がない)
ノズルとアクチュエータは全て、ガラス、及びCMOSデバイスに置いて金属バリア層として一般的に使用される導電性セラミックである窒化チタン(TiN)により形成される。これらの材料は、腐食に対し高い耐性を有する。
(電解の解消)
インクはいかなる電気的ポテンシャルとも接触しないため、電解は起こらない。
(疲労がない)
全てのアクチュエータ動作は弾性限界内であるため、使用される材料は全てセラミックであり、疲労は起こらない。
(摩擦がない)
動く表面との接触がないため、摩擦は生じない。
スティクションがない
IJ46プリントヘッドは、多数のMEMSデバイスに共通する問題であるスティクションを排除するように設計されている。スティクションは、「スティック(接着)」と「フリクション(摩擦)」を組み合わせた言葉であり、MEMSにおいては、力の相対的スケーリングのため特に有意である。IJ46プリントヘッドにおいては、パドルは基板中の孔を覆って吊られているので、吊られてなければ生じるであろうパドルから基板のスティクションを排除する。
(亀裂伝播がない)
材料にかけられる応力は、典型的なTiN及びガラス層の表面粗さにおいて、亀裂伝播を生じる応力の1%に満たない。応力のホットスポットを最小化するため、角は丸くしている。ガラスには常に、引張応力よりも亀裂伝播に対して格段の耐性を有する圧縮応力がかけられている。
(電気分極が不要)
圧電性材料は、プリントヘッド構造に形成された後に分極する必要がある。この分極には、非常に高い、約20,000V/cmの、電界強度が必要とされる。高電圧を必要とするため、一般的には圧電素子プリントヘッドのサイズは約5cmに限定され、分極のために100,000Vを必要とする。IJ46プリントヘッドは分極を必要としない。
(整流による拡散がない)
周期的圧力変化による気泡生成である、整流による拡散(rectified
diffusion)は、圧電素子インクジェットにおいて主として問題を生じる不具合である。IJ46プリントヘッドは、インク圧が負圧にならないため、整流による拡散を防止するように設計されている。
(切断路の削減)
ウェハにおけるチップ間の切断路(saw street)は、一般的には200ミクロンである。これは、ウェハ面積の26%を占める。この代わりにプラズマエッチングを使用すると、ウェハ面積の4%しか必要としない。プラズマエッチングの使用は、ソーイングにおける破壊も排除する。
(標準的ステッパを使用したリソグラフィ)
IJ46プリントヘッドは100mm長であるが、標準的ステッパ(典型的には約20mm四方の結像領域を有する)を使用する。これはプリントヘッドが8つの同一の露光を使用して「縫合」されるためである。縫合における整合は、縫合領域において電気接続が形成されないため重大ではない。32個のそれぞれのプリントヘッドの部分は、ステッパの各露光で像が形成され、露光ごとに「平均」4個のプリントヘッドが形成される。
(1枚のチップ上にフルカラー集積)
IJ46プリントヘッドにおいては、必要な全色を1枚のチップに集積する。これはページ幅の「エッジシューター」型インクジェット技術においては不可能である。
(多種類のインク)
IJ46プリントヘッドのインク滴の吐出はインクの特性に依存しない。インクは、水性、マイクロエマルジョン、油性、多様なアルコール、MEK、溶融ワックス、又は他の溶媒を基部としていている場合がある。IJ46プリントヘッドは、様々な粘性、及び表面張力を有するインクに使用することが可能である。これは、多様な用途を可能とする際に重要な要因である。
(渦を有さない空気の層流)
プリントヘッドパッケージは、気流が層流であり、渦(eddy)を排除することを確保するように設計されている。インク滴サイズが小さいため渦すなわち乱流が画質を劣化させることがあので、上記は重要である。
(インク滴の繰り返し周期)
写真用IJ46プリントヘッドの公称インク滴周期は5kHzであり、写真1枚で2秒の印刷速度に帰着する。A4プリントヘッドのための公称インク滴周期は、30ppmを
超えるA4印刷においては10kHzである。最高インク滴周期は主としてノズルリフィルレートにより限定されるが、このノズルリフィルレートは、加圧されないインクを使用して可動するときは表面張力により決定される。50kHzのインク滴周期は正のインク圧(約20kPa)を使用するときに可能である。しかし、最も低コストの消費者向け用途としては、もっぱら34ppmが適切である。商業的印刷物のような非常に高速な用途においては、高速な紙送りと併せて複数のプリントヘッドを使用することが可能である。低電力動作(例えば2本のAAバッテリによる動作)のためには、電力を削減するために、インク滴周期を減少させることが可能である。
(ヘッドと紙との相対速度が遅い)
写真用IJ46プリントヘッドのヘッド対紙の公称速度はわずか0.076m/secである。A4のプリントヘッド用においては、この速度は、典型的な走査型インクジェットヘッドの速度の約1/3である、わずか0.16m/secである。この低速度は、プリンタの設計を容易にし、インク滴の配置の精度を向上させる。しかし、このヘッドと紙との相対速度は、ページ幅のプリントヘッドのため、34ppm印刷用には十分である。必要であれば、容易にさらに高速にすることが可能である。
(高速CMOSが不要)
30ppmで動作するA4/レター版プリントヘッド用としては、プリントヘッドシフトレジスタのクロック速度はわずか14MHzである。写真用プリンタ用としては、クロック速度はわずか3.84MHzである。これは、使用されたCMOSプロセスの速度能力よりもずっと低速である。このことは、CMOS設計を単純にし、白に近い画像を印刷するときの電力損失の問題を排除する。
(完全なスタティックCMOS設計)
シフトレジスタ及びトランスファレジスタは、完全にスタティック設計である。スタティック設計は、ダイナミックデザインのために必要な約13個に比較して、ノズルにつき35個のトランジスタを必要とする。しかし、スタティックデザインには、ノイズに対するより高い耐性、休止状態における低消費電力、及びより大きなプロセス許容誤差を含む、いくつかの長所がある。
(幅が広いパワートランジスタ)
パワートランジスタの幅対長さ比は、688である。これは、4オームのオン抵抗値を許容し、3Vで動作させるとき、駆動トランジスタはアクチュエータの電力の6.7%を消費する。このサイズのトランジスタは、シフトレジスタや他のロジック回路とともに、アクチュエータの下に収まる。従って、適切な駆動トランジスタは、付属するデータ伝送回路を伴っても、アクチュエータにより必要とされていないチップ面積を使うことはない。
【0130】
トランジスタにより消費される電力の割合を減少させるいくつかの方法がある。これらは、必要となる電流が少なくなるように駆動電圧を上げること、リソグラフィを0.5ミクロンよりも小さくすること、BiCMOSや他の高速駆動技術を使用すること、又はチップ面積を増加し、アクチュエータの下にない駆動トランジスタのためにスペースを開けること、である。しかし、本発明の設計における6.7%の消費は、コストパフォーマンスの点で最適である。
(適用範囲)
本明細書に記載されたインクジェット印刷技術は、広い範囲の印刷装置に適合する。
【0131】
主な適用例は、以下を含む。
1.カラー及び白黒オフィスプリンタ
2.SOHOプリンタ
3.家庭用PCプリンタ
4.ネットワークに接続されたカラー及び白黒プリンタ
5.部門別プリンタ
6.写真用プリンタ
7.カメラに組み込まれたプリンタ
8.3G携帯電話内蔵プリンタ
9.携帯用及びノート型プリンタ
10.幅が広い媒体用プリンタ
11.カラー及び白黒コピー機
12.カラー及び白黒ファックス
13.印刷、ファックス、スキャナ、及びコピー機能を組み合わせた多機能プリンタ
14.業務用デジタルプリンタ
15.短時間運転デジタルプリンタ
16.梱包用プリンタ
17.生地用プリンタ
18.短時間運転デジタルプリンタ
19.オフセット印刷補助プリンタ
20.低コスト走査型プリンタ
21.高速ページ幅プリンタ
22.ページ幅プリンタ内蔵ノート型コンピュータ
23.携帯用カラー及び白黒プリンタ
24.ラベルプリンタ
25.チケットプリンタ
26.店頭レシートプリンタ
27.大型CAD用プリンタ
28.写真加工プリンタ
29.ビデオプリンタ
30.フォトCDプリンタ
31.壁紙プリンタ
32.積層プリンタ
33.室内サインプリンタ
34.広告看板プリンタ
35.ビデオゲームプリンタ
36.写真「キオスク」プリンタ
37.名刺プリンタ
38.挨拶状プリンタ
39.書籍プリンタ
40.新聞プリンタ
41.雑誌プリンタ
42.帳票プリンタ
43.デジタル写真アルバムプリンタ
44.医療用プリンタ
45.自動車用プリンタ
46.粘着ラベルプリンタ
47.色校正用プリンタ
48.故障許容商業用プリンタアレイ
(従来のインクジェット技術)
確立されたインクジェット製造者から、近い将来に同様な能力のプリントヘッドが市販される見込みはない。これは、主要な2つの競業する商品である、サーマルインクジェット及び圧電素子インクジェットのそれぞれが、適用の要件を満たす深刻な基本的問題を有するためである。
【0132】
サーマルインクジェットの最も重大な問題は、電力消費である。これは、本発明の適用
に必要とされる電力の約100倍であり、インク滴の吐出における電力非効率手段から生じている。サーマルインクジェットにおいては、インクを押し出す蒸気の気泡を生成するために、水分を急激に沸騰させる。水は非常に高い熱容量を有し、サーマルインクジェットの用途においては、過熱される必要がある。高電力消費は、ノズル搭載密度を限定する。
【0133】
圧電素子インクジェットについての最も重大な問題は、サイズとコストである。圧電性結晶は、妥当な駆動電圧において非常に小さい撓みを有し、そのため各ノズルについて広面積を必要とする。また、各圧電素子アクチュエータは、他の基板上の駆動回路に接続される必要がある。これは、プリントヘッドについての約300ノズルという現在の限界においては重大な問題ではないが、19,200ノズルを有するページ幅のプリントヘッドの製造においては、主要な障害となる。
(IJ46プリントヘッド及びサーマルインクジェット(TIJ)の印刷メカニズムの比較)
【0134】
【表13】

【0135】
好ましい実施の形態において、パドルはその中心部に取り付けられ、パドルの移動においてノズルに集まる不要な異物又は物質をノズルから突き出すような「つつき棒」部材を備えて形成される。つつき棒は、インク吐出ノズル部材の形成中に、化学的機械的平坦化工程により形成され、望ましくはこの形成が、標準的MEMSプロセス技術を使用する半導体ウェハの部材の上に対する、インク放出ノズルの通常の製作工程におけるバイプロダクトであるように、形成されることが可能である。
【0136】
さらに、毛管作用による流出の量及び機会を限定するため、湾曲アクチュエータ上に、表面張力の影響によりノズルチャンバから液体が流出する機会を限定するようにアクチュエータスロットに近接してアクチュエータスロットガードが提供される。
【0137】
図1〜3を参照し、好ましい実施の形態の動作原理を説明する。図1において、半導体
基板等からなる基板202上に形成されるノズル部材201が示される。部材201は、ノズルリム205を囲み、通常はインクで満たされてメニスカス204を形成するノズルチャンバ203を有する。ポスト207には熱湾曲アクチュエータ装置206が取り付けられ、通常はこれに対応する層210により熱平衡に保たれた導電性ヒータ部209を有する。アクチュエータ206は、ノズルチャンバの壁面212中のスロットを貫通し、壁面の内部でノズル吐出パドル213を形成する。パドル213上には、ノズルチャンバ203の壁面形成時に形成された「つつき棒」215が形成される。アクチュエータ206上には、アクチュエータスロット保護バリア216も形成される。基板202の高度な異方性エッチングにより、基板202の表面を貫通して、インク供給チャネル217も形成される。動作時は、ノズルチャンバ203からインクが流出し、壁面212のスロットとアクチュエータスロット保護バリア216の間に層219が形成される。保護バリアは、スロットと実質的に組み合う形状をしているが、わずかな隙間をあけてあるため、例えば符号219が示す任意のメニスカスは小さい面積を有する。
【0138】
次に、図2に示されるように、ノズルチャンバ203からインク滴を吐出するときは、底面の導電性サーマルアクチュエータ209が電気により加熱され、急激に膨張し、パドル213を急激に上方に移動させる。このパドル213の急激な上方への移動は、ノズルからインクを流出させ、突起したインクメニスカス204を形成する。重要なことは、アクチュエータ206の移動が、つつき棒215をノズルリムの平面を貫いて上方に移動させ、ノズルリム205付近のあらゆる堆積物の吐出を補助することである。
【0139】
さらに、アクチュエータ206の移動はアクチュエータスロット保護バリア216をわずかに移動させ、小さい面積を有するメニスカス219を維持するため、表面に沿ったインクの毛管作用による流出の機会を減少させる。その後、導電性ヒータ209がオフされ、アクチュエータ206は元の位置に急激に戻りはじめる。メニスカス204の周囲にあるインクの前へ進む運動量は、アクチュエータ2026の戻る動きによる逆流とともに、メニスカス204をくびれさせ、切り離すため、インク滴が形成される。
【0140】
短時間後の状態が図3に示される。インク滴220は印刷媒体に進み、メニスカスは、つつき棒15の周囲で崩壊し、メニスカス222,223を形成する。メニスカス222,223の形成により、ノズルチャンバ203には表面張力の高い圧力がかかり、インク供給チャネル217を通じてノズルチャンバ203内にインクが引き込まれるため、ノズルチャンバ203を急激に満たす。つつき棒215の使用は、リフィルの速度を上昇させ、さらに、メニスカスがノズルパドル213の表面に接触し、そこに留まることによりノズルチャンバ203内に気泡が生じないことを保証する。つつき棒215は、メニスカス、例えば222,223がつつき棒215に沿って上昇し、ノズルチャンバを満たすことを保証する。さらに、アクチュエータスロットバリア216の周囲の領域は、ほぼ安定であり、そこからのウィッキングの発生を最小限にする。
【0141】
図4は、1つのノズル部材201を部分ごとに示す側面斜視図を示す。図5は、保護側板230を有する1つのノズルの側面斜視図である。中央のつつき棒215、及び開口カード216は、すでに記載した通りである。図4,5の部材の構成は、オーストラリア特許仮出願第PP6534号(その内容は特に互いに援用される)において、ノズル部材の構成に使用されたディープマスク工程の簡単な変更の結果、つつき棒215及びガード216を有するように形成されたものであることもある。つつき棒及びガードは、図6〜8において概略的に示される化学的機械的平坦化工程により主として製作される。つつき棒215及びガード216は、例えば符号233にて示す一連のエッチングされたバイアを含む犠牲層231上に表面層232を被着することにより製作される。その後、図7に示されるように、下方の構造層236に接着された下地構造235を残すように、最上層は、化学的機械的研磨により平坦化される。その後、図8に示されるように、犠牲層231
がエッチングにより除去され、結果的に得るべき必要な構造を残す。
【0142】
特定の実施の形態に示される本発明に対し、本明細書に概略が記載された本発明の趣旨又は範囲から逸脱することなく、多数の変更及び/又は改良を実施可能であることが、当業者により理解される。従って、本明細書の実施の形態は、あらゆる面においても、例示であり、限定するものではない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像を印刷するために、所定の温度範囲内においてページ幅インクジェットプリントヘッドを駆動する方法において、
前記プリントヘッドが、
基板上に形成されたノズルの配列であって、各々のノズルが、関連するノズルのノズル開口を通ってインクを吐出するように加熱される熱アクチュエータを有することと、
各々の前記ノズルのためのインクチャンバと、
前記アクチュエータの動作を制御するための、各々のノズルに対応する活性化ユニットであって、各々の前記活性化ユニットは、前記ノズルの前記インクチャンバの外側にヒータ素子を有することと、
前記基板の温度を検知するために同基板に取り付けられた少なくとも一つの温度センサと、
前記少なくとも一つの温度センサに接続された温度判別ユニットと、
前記温度判別ユニットと前記プリントヘッドとに接続されたインク吐出駆動ユニットと、を備え、
前記方法が、
(a)前記少なくとも一つの温度センサと前記温度判別ユニットとによって前記基板の温度を検知するステップと、
(b)前記温度が所定のしきい値を下回るかを、前記インク吐出駆動ユニットが判定するステップと、
(c)前記温度が前記所定のしきい値を下回ったときに、前記プリントヘッドが前記所定のしきい値を超える温度に加熱されるように前記アクチュエータを加熱する予熱工程を実行するステップと、
(d)前記熱アクチュエータが、前記プリントヘッドからインクを吐出させるには不十分である160nJ以下のエネルギーパルスによって加熱されるように、前記予熱工程を制御するステップであって、一つの前記ノズルから一つのインク滴を吐出させるのには少なくとも160nJを必要とすることと、
(e)前記画像を印刷するように前記プリントヘッドを利用するステップと、
を含む方法。
【請求項2】
(aa)前記プリントヘッドの周りの周囲温度を最初に検知するステップと、
(ab)前記所定のしきい値を、前記周囲温度と、同周囲温度に依存する所定の動作ファクタ量とを加えた値に設定するステップと、
をさらに備える、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
(e)前記画像を印刷している間、前記プリントヘッドの温度を監視し、その温度が前記所定のしきい値を下回るときに、前記プリントヘッドの温度が、前記所定のしきい値を再び超えるように前記アクチュエータを再加熱するステップをさらに備える、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記ステップ(b)が、前記プリントヘッドを加熱している間、絶えず前記プリントヘッド温度を監視することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記ステップ(d)が、前記プリントヘッドからインクを吐出させるには不十分である一連の短い電気パルスを前記熱アクチュエータに加えることをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
一つの前記ノズルから一つのインク滴を吐出させるのには、160〜190nJを必要とする、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
基板上に形成されるノズル配列であって、各々のノズルが、関連するノズルのノズル開口を通ってオンデマンドでインクを吐出するように変位可能な熱アクチュエータを含むことと、
前記アクチュエータの動作を制御するための、各々ノズルに対応する活性化ユニットであって、各々の前記活性化ユニットは、前記ノズルのインクチャンバの外側にヒータ素子を有することと、
前記基板の温度を検知するために同基板に取り付けられた少なくとも一つの温度センサと、
前記少なくとも一つの温度センサに接続された温度判別ユニットと、
前記温度判別ユニットと前記プリントヘッドとに接続されたインク吐出駆動ユニットと、
を備え、
インク吐出動作が開始される前に、前記温度判別ユニットは、前記基板の現在の温度を検知するために、前記少なくとも一つの温度センサからの出力を利用し、
前記温度が所定のしきい値を下回ると、前記インク吐出駆動ユニットは、前記ノズル配列からインクを吐出させるには不十分であるが、前記基板を加熱するには十分な範囲に各々の前記熱アクチュエータを加熱するために、160nJ以下のエネルギーパルスを生成するように予熱駆動信号を出力し、一つの前記ノズルから一つのインク滴を吐出させるのには少なくとも160nJを必要とする、ページ幅インクジェットプリントヘッド。
【請求項8】
前記基板上に離間して配置された複数の温度センサを含む、請求項7に記載のプリントヘッド。
【請求項9】
前記ノズル配列が、群毎に少なくとも一つの温度センサを有する一連の離間配置された複数の群に分割される、請求項7に記載のプリントヘッド。
【請求項10】
一つの前記ノズルから一つのインク滴を吐出させるのには、160〜190nJを必要とする、請求項7に記載のプリントヘッド。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【図39】
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【図40】
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【図41】
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【図42】
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【図43】
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【図44】
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【図45】
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【図46】
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【図47】
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【図48】
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【図49】
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【図50】
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【図51】
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【図52】
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【図53】
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【図54】
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【図55】
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【図56】
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【図57】
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【図58】
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【図59】
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【図60】
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【図61】
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【図62】
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【図63】
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【図64】
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【図65】
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【図66】
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【図67】
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【図68】
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【図69】
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【図70】
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【図71】
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【図72】
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【図73】
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【図74】
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【図75】
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【図76】
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【図77】
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【図78】
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【図79】
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【図80】
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【図81】
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【図82】
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【図83】
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【図84】
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【図85】
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【図86】
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【図87】
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【図88】
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【図89】
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【図90】
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【図91】
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【図92】
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【図93】
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【図94】
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【図95】
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【図96】
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【図97】
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【図98】
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【図99】
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【図100】
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【図101】
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【図102】
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【図103】
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【図104】
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【図105】
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【図106】
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【図107】
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【図108】
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【図109】
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【図110】
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【図111】
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【公開番号】特開2009−149104(P2009−149104A)
【公開日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−44802(P2009−44802)
【出願日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【分割の表示】特願2000−577036(P2000−577036)の分割
【原出願日】平成11年10月15日(1999.10.15)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.バブルジェット
【出願人】(500142213)シルバーブルック リサーチ プロプライエタリイ、リミテッド (27)
【氏名又は名称原語表記】SILVERBROOK RESEARCH PTY.LIMITED
【Fターム(参考)】