説明

ペースト塗布ノズル装置及び電子装置の製造方法

【課題】各ノズルから吐出されたペーストボールどうしの間隙におけるボイドの発生を十分に抑制する。
【解決手段】ペースト塗布ノズル装置は、本体部1と、本体部1からそれぞれ突出するように設けられ、本体部1側から供給されるペーストによりそれぞれの先端にペーストの球状体(ペーストボール)が形成される複数の管状のノズル2a、2b、2cと、を有している。複数のノズル2a、2b、2cは互いに平行に配置されている。このうち中央のノズル2aの先端には、その他のノズル2b、2cよりも大きい球状体が形成されるように、中央のノズル2aは、その他のノズル2b、2cよりも長さが短く形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ペースト塗布ノズル装置及び電子装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、半導体チップ(以下、チップ)等を実装基板或いはリードフレームなどのワーク上にダイボンドする際などには、銀ペースト或いはその他のペーストをワーク上に接着剤として塗布することが行われる。このような塗布動作は、ノズルからペーストを吐出することによって行う。また、ワーク上の複数箇所に一度にペーストを塗布できるように、複数本のノズルを有するノズル装置が用いられる場合がある。
【0003】
しかしながら、複数本のノズルから一度にペーストを吐出すると、各ノズルから吐出されたペーストどうしの間隙にボイドが残留し、問題となることがある。
【0004】
特許文献1には、ペースト塗布時にペースト中に気泡が入るという課題を解決するために、複数のノズルをチップのサイズに合わせて配置することが記載されている。
【0005】
なお、特許文献2には、ボイド抑制対策とは関係ないが、一部のノズルの長さを他のノズルとは異ならせる技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特公平6−71019号公報
【特許文献2】特開2002−239438号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1の技術では、各ノズルから吐出されたペーストどうしの間隙にボイドが残留するという課題を十分に解決することが困難である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、本体部と、
前記本体部からそれぞれ突出するように設けられ、前記本体部側から供給されるペーストによりそれぞれの先端にペーストの球状体が形成される複数の管状のノズルと、
を有し、
前記複数のノズルは互いに平行に配置され、このうち中央のノズルの先端には、その他のノズルよりも大きい前記球状体が形成されるように、前記中央のノズルは、その他のノズルよりも長さが短く形成されていることを特徴とするペースト塗布ノズル装置を提供する。
【0009】
このペースト塗布ノズル装置によれば、複数のノズルは互いに平行に配置され、このうち中央のノズルの先端には、その他のノズルよりも大きいペーストの球状体が形成されるように、中央のノズルは、その他のノズルよりも長さが短く形成されている。よって、中央のノズルの先端には、その他のノズルよりも大きいペーストの球状体を形成できる。なお、複数のノズルは互いに平行に配置されているため、各々の先端に形成されるペーストの球状体どうしの接触を抑制できる。このペースト塗布ノズル装置の各ノズルからペーストボールを塗布した領域に、半導体チップ等の電子部品を搭載する際には、中央のペーストボールが周囲に広がって、その他のペーストボールとの間隙などを埋めるため、これらの間隙におけるボイドの発生を抑制することができる。よって、各ノズルから吐出されたペーストボールどうしの間隙におけるボイドの発生を十分に抑制することができる。
【0010】
また、本発明は、本体部と、
前記本体部からそれぞれ突出するように設けられ、前記本体部側から供給されるペーストによりそれぞれの先端にペーストの球状体が形成される複数の管状のノズルと、
を有し、
前記複数のノズルは互いに平行に配置され、このうち中央のノズルの先端には、その他のノズルよりも大きい前記球状体が形成されるように、前記中央のノズルは、その他のノズルよりも内径が大きく形成されていることを特徴とするペースト塗布ノズル装置を提供する。
【0011】
また、本発明は、本体部と、
前記本体部からそれぞれ突出するように設けられ、前記本体部側から供給されるペーストによりそれぞれの先端にペーストの球状体が形成される複数の管状のノズルと、
を有し、
前記複数のノズルは互いに平行に配置され、このうち中央のノズルの先端には、その他のノズルよりも大きい前記球状体が形成されるペースト塗布ノズル装置の前記複数のノズルの各々から、
実装基板上、又は、リードフレームのダイパッド上に、前記球状体を塗布する工程と、
前記球状体が塗布された領域に電子部品を搭載する工程と、
を有することを特徴とする電子装置の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、各ノズルから吐出されたペーストボールどうしの間隙におけるボイドの発生を十分に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】第1の実施形態に係るペースト塗布ノズル装置のノズルユニットの模式的な断面図である。
【図2】第1の実施形態に係るペースト塗布ノズル装置のノズルユニットの模式的な平面図である。
【図3】第1の実施形態に係るペースト塗布ノズル装置の全体構造を示す模式図である。
【図4】第1の実施形態に係るペースト塗布ノズル装置の動作の例を説明するための模式的な平面図である。
【図5】第1の実施形態に係る電子装置の製造方法の一連の工程を示す図である。
【図6】第1の実施形態に係る電子装置の製造方法の一連の工程を示す図である。
【図7】比較例に係るペースト塗布ノズル装置のノズルユニットの模式的な正面図である。
【図8】比較例に係るペースト塗布ノズル装置を用いて行う電子装置の製造方法の一連の工程を示す図である。
【図9】比較例に係るペースト塗布ノズル装置を用いて行う電子装置の製造方法の一連の工程を示す図である。
【図10】第2の実施形態に係るペースト塗布ノズル装置のノズルユニットの模式的な断面図である。
【図11】第3の実施形態に係るペースト塗布ノズル装置のノズルユニットの模式的な正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について、図面を用いて説明する。なお、すべての図面において、同様の構成要素には同一の符号を付し、適宜に説明を省略する。
【0015】
〔第1の実施形態〕
図1は第1の実施形態に係るペースト塗布ノズル装置100(図3)のノズルユニット10の模式的な断面図(図2のA−A線に沿った断面図)、図2はノズルユニット10の要部の模式的な平面図である。
【0016】
本実施形態に係るペースト塗布ノズル装置100は、本体部1と、本体部1からそれぞれ突出するように設けられ、本体部1側から供給されるペーストによりそれぞれの先端にペーストの球状体(ペーストボール7a、7b、7c(図5))が形成される複数の管状のノズル2a、2b、2cと、を有している。複数のノズル2a、2b、2cは互いに平行に配置されている。このうち中央のノズル2aの先端には、その他のノズル2b、2cよりも大きい球状体が形成されるように、中央のノズル2aは、その他のノズル2b、2cよりも長さが短く形成されている。以下、詳細に説明する。
【0017】
図1及び図2に示すように、ノズルユニット10は、本体部1と、複数のノズル2a、2b、2cと、を含んで構成されている。ノズル2a、2b、2cの数はそれぞれ1本以上、3本以上、6本以上であることが好ましい。例えば、ノズル2a、2b、2cの数は、それぞれ1本、3本、6本の場合や、それぞれ1本、4本、8本の場合が例示される。
また、ノズル2cの本数は、ノズル2bの本数の2倍以上が望ましい。この理由は、図2において、ノズル2aとノズル2bとを結ぶ延長線上にノズル2cが配置されるとともに、ノズル2aとノズル2bとを結ぶ延長線上のノズル2c同士の間にさらにノズル2cが配置されるようにすることができるためである。
【0018】
複数のノズル2a、2b、2cは、本体部1の下面1aから、互いに平行に、それぞれ下方に突出している。より具体的には、各ノズル2a、2b、2cは、例えば、下面1aに対して垂直に設けられている。
【0019】
これらのノズル2a、2b、2cの長さ(下面1aからの突出長)は、中央に位置するノズル2aが最も短く、最外周に位置するノズル2cが最も長い。そして、ノズル2aとノズル2cとの中間に位置するノズル2bは、ノズル2aの長さとノズル2cの長さとの中間の長さに設定されている。すなわち、本実施形態の場合、複数のノズル2a、2b、2cは、中央に配置されているほど徐々に長さが短くなるよう、各々の長さが3段階以上に設定されている。このため、各ノズル2a、2b、2cの先端と本体部1との間の距離のなかでは、ノズル2cの先端と本体部1との距離が最も長く、次いで、ノズル2bの先端と本体部1との距離が長く、ノズル2aの先端と本体部1との距離が最も短い。
【0020】
これにより、これらノズル2a、2b、2cの先端に形成されるペーストボール7a、7b、7c(図5)のうち、ノズル2aの先端のペーストボール7aは最も大きく形成でき、ノズル2cの先端のペーストボール7cは最も小さく形成でき、ノズル2bの先端のペーストボール7bはペーストボール7aとペーストボール7cとの中間の大きさに形成することができる(詳細後述)。
【0021】
なお、ここでいう中央とは、必ずしも厳密に複数のノズル2a、2b、2cの配置領域における中心を意味するものではない。ノズル2aは、他のノズル2b、2cよりも、複数のノズル2a、2b、2cの配置領域における中央寄りに配置されたノズルである。
【0022】
また、下面1aは平坦に形成されている。このため、各ノズル2a、2b、2cの先端のうち、ノズル2cの先端が最も下方に位置し、次いで、ノズル2bの先端が下方に位置し、ノズル2aの先端は最も上方に位置している。
【0023】
図2に示すように、複数のノズル2a、2b、2cは、平面視における配置が、例えば、千鳥状となっている。より具体的には、最外周のノズル2cを除く各ノズル2a、2bの周囲には、90°間隔で4つのノズル(ノズル2a、2b、2cの何れか)が配置され、且つ、各ノズル2a、2bとその周囲の4つのノズルとの間の距離は互いに等しくなっている。
【0024】
複数のノズル2a、2b、2cの各々は、例えば、内空断面が円形の管状である。本実施形態の場合、例えば、各ノズル2a、2b、2cの内空断面積は互いに等しく設定されている。
【0025】
ここで、ノズル2aとノズル2bとの長さの差(図1のΔL1)と、ノズル2bとノズル2cとの長さの差(図1のΔL2)とは、互いに等しくても良い。すなわち、ノズル2a、2b、2cの長さは、一次関数的に変化していても良い。このようにした場合、ペーストボール7a、7b、7c(図5)の体積をペーストボール7c、ペーストボール7b、ペーストボール7aの順に一次関数的に増加させることができる。
【0026】
或いは、図1のΔL1はΔL2よりも大きくても良い。すなわち、ノズル2a、2b、2cは、中央に配置されているほど二次関数的に長さが短くなっていても良い。このようにした場合、ペーストボール7a、7b、7cの体積を、ペーストボール7c、ペーストボール7b、ペーストボール7aの順に二次関数的に増加させることができる。なお、ペーストボール7a、7b、7cの体積を二次関数的に変化させる他の例として、図1のΔL1をΔL2よりも小さくしても良い。
【0027】
また、中央のノズル2aの先端に形成されるペーストボール7aの中心8a(図5参照)が、その他のノズル2b、2cの先端に形成されるペーストボール7b、7cの中心8b、8cよりも本体部1側に位置するように、複数のノズル2a、2b、2cの各々の長さが設定されている。より具体的には、最外周のペーストボール7cの中心8cよりもペーストボール7bの中心8bの方が本体部1側に位置するようになっている。つまり、より中央に位置するペーストボールの方が、その中心が本体部1側に位置するようになっている。これにより、各ペーストボール7a、7b、7cを所定の大きさに形成した段階で、各ペーストボール7a、7b、7cの下端が略同一平面上に位置するようにもできる。
【0028】
図3はペースト塗布ノズル装置100の全体構造を示す模式図である。
【0029】
図3に示すように、ペースト塗布ノズル装置100は、上述のノズルユニット10の他に、例えば、ペースト供給部20と、ペースト除去用高圧エア貯留部30と、制御部40と、移動機構50と、配管60と、バルブ61、62と、を有している。制御部40は、ペースト圧送部22、バルブ61、62、及び移動機構50の動作制御を行う。
【0030】
配管60は、例えば、第1配管60aと、この第1配管60aから分岐した第2配管60bと、を含む。第1配管60aは、ペースト供給部20とノズルユニット10とを相互に接続し、第2配管60bは、ペースト除去用高圧エア貯留部30と第1配管60aとを相互に接続している。なお、移動機構50によるノズルユニット10の移動が許容されるように、配管60(特に、第1配管60aにおける接続部Jよりもノズルユニット10側の部分)は、フレキシブルな材質によって構成されていることが好ましい。
【0031】
バルブ61は、例えば、第1配管60aにおいて、該第1配管60aと第2配管60bとの接続部Jと、ペースト供給部20と、の中間位置に設けられている。一方、バルブ62は、第2配管60bに設けられている。
【0032】
ペースト供給部20は、ペーストを貯留するペースト貯留部21と、このペースト貯留部21に貯留されているペーストを第1配管60a内へ圧送するペースト圧送部22と、を有している。そして、例えば、バルブ62を閉じ、且つ、バルブ61を開いた状態で、ペースト圧送部22によってペーストを圧送することにより、第1配管60aを介してノズルユニット10にペーストを供給できるようになっている。
【0033】
ここで、ペーストとしては、電子部品とその被搭載物とを相互に接着させる接着性を有するものが用いられる。更に、ペーストとして、熱伝導性に優れたものを用いることができる。具体的には、ペーストは、例えば、銀ペーストであることが挙げられる。
【0034】
第1配管60aは、ノズルユニット10の本体部1内において分岐し、各ノズル2a、2b、2cに接続されている。そして、ペースト供給部20から本体部1に供給されたペーストは、各ノズル2a、2b、2cに均等に導入されるようになっている。
【0035】
各ノズル2a、2b、2cに導入されたペーストは、各ノズル2a、2b、2cを通してそれらの先端へ導かれ、それらの先端においてそれぞれペーストボール7a、7b、7c(図5)が形成されるようになっている。
【0036】
ペースト除去用高圧エア貯留部30は、各ノズル2a、2b、2c内のペーストの除去に用いられる高圧エアを貯留している。例えば、バルブ61を閉じた状態で、バルブ62を開くことにより、ペースト除去用高圧エア貯留部30に貯留されている高圧エアが、第2配管60bを介して第1配管60aに流入し、更に、第1配管60aから各ノズル2a、2b、2cに供給される。このように高圧エアを各ノズル2a、2b、2cに供給することにより、ノズル2a、2b、2c内のペーストをエアの圧力によってノズル2a、2b、2cの先端より押し出して、ノズル2a、2b、2c内のペーストを除去し、ノズル2a、2b、2c内を空にすることができる。なお、ペースト除去用高圧エア貯留部30及びバルブ62等によりペースト除去機構が構成されている。
【0037】
移動機構50は、図示は省略するが、例えば、水平移動機構と、上下移動機構と、回転機構と、を有している。水平移動機構は、ノズルユニット10を水平移動(例えば、X方向と、X方向に対して直交するY方向と、のそれぞれに水平移動)させる。上下移動機構は、ノズルユニット10を上下移動させる。回転機構は、ノズルユニット10を水平面に対して直交するZ軸周りに回転させる。
【0038】
図4はペースト塗布ノズル装置100の動作の例を説明するための模式的な平面図である。図4に示すように、ノズルユニット10は、除去ペースト吐出領域3と、被搭載物配置領域4と、にそれぞれ移動可能となっている。このうち除去ペースト吐出領域3は、各ノズル2a、2b、2c内のペーストを除去する際にペーストが吐出される領域である。また、被搭載物配置領域4は、搭載物である電子部品(例えば、半導体チップ5)の被搭載物(例えば、実装基板6)が配置される領域である。
【0039】
以上のような構成のペースト塗布ノズル装置100は、例えば、半導体チップ5を被搭載物に対してダイボンディングする工程(ダイボンディング工程)で用いることができる。
【0040】
次に、図4乃至図6を参照して、本実施形態に係る電子装置の製造方法を説明する。図5及び図6はこの製造方法を説明するための一連の工程図である。図5及び図6において、(a)、(c)、(e)は一連の工程における断面図、(b)は(a)と同じタイミングにおけるペーストボール7a、7b、7cの配置及び形状を示す平面図、(d)は(c)と同じタイミングにおけるペーストボール7a、7b、7cの配置及び形状を示す平面図、(f)は(e)と同じタイミングにおけるペーストボール7a、7b、7cの配置及び形状を示す平面図である。
【0041】
本実施形態に係る電子装置の製造方法では、本体部1と、本体部1からそれぞれ突出するように設けられ、本体部1側から供給されるペーストによりそれぞれの先端にペーストの球状体(ペーストボール7a、7b、7c)が形成される複数の管状のノズル2a、2b、2cと、を有し、複数のノズル2a、2b、2cは互いに平行に配置され、このうち中央のノズル2aの先端には、その他のノズル2b、2cよりも大きい球状体が形成されるペースト塗布ノズル装置100を用いる。そして、この製造方法では、先ず、ペースト塗布ノズル装置100の複数のノズル2a、2b、2cの各々から、実装基板6上、又は、リードフレーム(図示略)のダイパッド上に、球状体を塗布する工程を行う。次に、球状体が塗布された領域に電子部品(例えば、半導体チップ5)を搭載する工程を行う。以下、詳細に説明する。
【0042】
先ず、図4に示すように、ノズルユニット10を除去ペースト吐出領域3の上方に移動させる。そして、この位置において、バルブ61を閉じた状態でバルブ62を開くことにより、ペースト除去用高圧エア貯留部30から各ノズル2a、2b、2cへ高圧エアを供給し、各ノズル2a、2b、2c内のペーストを除去する。次に、バルブ62を閉じて、ペースト除去用高圧エア貯留部30から各ノズル2a、2b、2cへの高圧エアの供給を停止させる。
【0043】
次に、図4に示すように、ノズルユニット10を被搭載物配置領域4に予め水平に配置された実装基板6の上方に移動させる。ここで、ノズルユニット10の移動は、実装基板6における搭載領域6aの上方にノズルユニット10が位置するように行う。
【0044】
次に、バルブ61を開き、ペースト圧送部22によってペースト貯留部21のペーストを各ノズル2a、2b、2cへ圧送することにより、各ノズル2a、2b、2cの先端にペーストボール7a、7b、7cが形成される(図5(a)、(b))。
【0045】
ここで、上述のように、各ノズル2a、2b、2cの先端と本体部1との距離は、ノズル2cの先端と本体部1との距離が最も長く、次いで、ノズル2bの先端と本体部1との距離が長く、ノズル2aの先端と本体部1との距離が最も短い。このため、各ノズル2a、2b、2c内のペーストを除去した状態から、各ノズル2a、2b、2cへのペーストの供給を行って、各ノズル2a、2b、2cの先端にペーストボール7a、7b、7cを形成することにより、各ノズル2a、2b、2cの先端のペーストボール7a、7b、7cの大きさを異ならせることができる。すなわち、最も短いノズル2aにおいては、最も早くその先端にペーストが到達し、ペーストボール7aの形成が始まる。次いで、ノズル2bの先端においてペーストボール7bの形成が始まり、最後に、ノズル2cの先端においてペーストボール7cの形成が始まる。このため、ノズル2aの先端には最も大きいペーストボール7aを形成でき、ノズル2cの先端には最も小さいペーストボール7cを形成でき、ノズル2bの先端にはペーストボール7aとペーストボール7cとの中間の大きさのペーストボール7bを形成できる。
【0046】
ここで、上述のように、より中央に位置するペーストボールの方が、その中心が本体部1側に位置するようになっている。これにより、各ペーストボール7a、7b、7cを所定の大きさに形成した段階で、各ペーストボール7a、7b、7cの下端が略同一平面上に位置するようにできる。
【0047】
各ペーストボール7a、7b、7cが所定の大きさとなるタイミングで、ペースト圧送部22によるペーストの圧送を停止し、バルブ61を閉じる。
【0048】
次に、ノズルユニット10と実装基板6とを互いに近づけて(具体的には、ノズルユニット10を下降させて)、各ペーストボール7a、7b、7cを実装基板6上に付着させる(図5(c)、(d))。
【0049】
次に、ノズルユニット10と実装基板6とを互いに遠ざける(具体的には、ノズルユニット10を上昇させる)。これにより、図5(e)及び(f)に示すように、各ペーストボール7a、7b、7cを実装基板6上に残留させる。更に、ノズルユニット10を実装基板6の上方の領域とは異なる領域へ待避させる。
【0050】
ここで、各ペーストボール7a、7b、7cの大きさは、これらペーストボール7a、7b、7cが実装基板6上に残留された段階でも、ペーストボール7cよりもペーストボール7bが大きく、ペーストボール7bよりも更にペーストボール7aが大きい。このため、ペーストボール7aの上端位置が最も高く、次いで、ペーストボール7bの上端位置が高く、ペーストボール7cの上端位置は最も低い。
【0051】
次に、マウント装置(全体図示略)のコレット9によって水平に吸着保持した半導体チップ5を、コレット9を移動させるのに伴わせて搭載領域6aの上方へ搬送する(図6(a)、(b))。なお、半導体チップ5には、トランジスタ等の素子が形成されている。
【0052】
次に、コレット9と実装基板6と互いに近づけて(具体的には、コレット9を下降させて)、半導体チップ5を搭載領域6a上に搭載する(図6(c)、(d))。
【0053】
このとき、上述のように、ペーストボール7a、ペーストボール7b、ペーストボール7cの順に、その上端位置が高いため、半導体チップ5の下面はペーストボール7a、ペーストボール7b、ペーストボール7cの順に接触する。このため、半導体チップ5が搭載領域6a上に搭載される際には、先ず、ペーストボール7aが半導体チップ5により押し潰されて周囲に広がり、次いで、ペーストボール7bが半導体チップ5により押し潰されて周囲に広がり、最後に、ペーストボール7cが半導体チップ5により押し潰されて周囲に広がる。
【0054】
このため、ペーストは、搭載領域6aの中央から徐々に周囲に広がるように流れる(図6(a)の矢印B参照)。すなわち、半導体チップ5が搭載領域6a上に搭載される際に、半導体チップ5と搭載領域6aとの距離が狭まる過程においては、搭載領域6aの中央から周囲に向けて、徐々に搭載領域6aと半導体チップ5との間隙をペーストボール7a、7b、7cによって埋めていくような動作となる。これにより、ペーストボール7a、7b、7c間におけるボイド(巻き込みボイド)の発生を抑制することができる。
【0055】
ここで、ペーストの性状や搭載領域6a及び半導体チップ5の表面状態等の諸条件に応じて、上述のΔL1、ΔL2を互いに等しく設定したり、ΔL1をΔL2よりも大きく設定したり、或いは、ΔL1をΔL2よりも小さく設定したりすることにより、他の設定では十分にボイドを抑制できないような条件であっても、ボイドを抑制することが可能である。
【0056】
なお、図6(c)、(d)に示すように、最も大きいペーストボール7aは、周囲に広がることによって、例えば、ペーストボール7aとペーストボール7bとの間隙、ペーストボール7aとペーストボール7cとの間隙、ペーストボール7bとペーストボール7bとの間隙、及び、ペーストボール7bとペーストボール7cとの間隙などを埋める。また、ペーストボール7bは、周囲に広がることによって、例えば、ペーストボール7bとペーストボール7aとの間隙、ペーストボール7bとペーストボール7bとの間隙、ペーストボール7bとペーストボール7cとの間隙、及び、ペーストボール7cとペーストボール7cとの間隙などを埋める。また、ペーストボール7cは、周囲に広がることによって、例えば、ペーストボール7cとペーストボール7bとの間隙、及び、ペーストボール7cとペーストボール7cとの間隙などを埋める。
【0057】
この結果、例えば、図6(e)、(f)に示すように、半導体チップ5と実装基板6の間に、ボイドが抑制された状態で、ペースト7を充填し、半導体チップ5を実装基板6上にダイボンディングすることができる。なお、図6(e)では、半導体チップ5の外周とペースト7の外周とが一致している状態を示しているが、半導体チップ5の周囲にペースト7のフィレットが形成されても良い。或いは、ペースト7が半導体チップ5の外周までは達しないようにしても良い(平面視において、ペースト7の外周が半導体チップ5の外周の内側に収まっていても良い)。
【0058】
次に、図7乃至図9を参照して、比較例のペースト塗布ノズル装置を用いて半導体チップ5を実装基板6上にダイボンディングする場合について説明する。
【0059】
図7は比較例のペースト塗布ノズル装置のノズルユニット110の模式的な断面図である。図7に示すように、このノズルユニット110は、ノズル2a、2b、2cの代わりに、長さが互いに等しい複数のノズル111を有している。その他の点では、ノズルユニット110は、上述のノズルユニット10と同様に構成されている。また、比較例のペースト塗布ノズル装置は、ノズルユニット10の代わりにノズルユニット110を有している点でのみ、上述のペースト塗布ノズル装置100と相違し、その他の点ではペースト塗布ノズル装置100と同様に構成されている。
【0060】
以下、図8及び図9を参照し、比較例のペースト塗布ノズル装置を用いて半導体チップ5を実装基板6上にダイボンディングする動作を説明する。
【0061】
先ず、ノズルユニット110を実装基板6の搭載領域6aの上方へ移動させる。次に、バルブ61を開き、ペースト圧送部22によってペースト貯留部21のペーストを各ノズル111へ圧送することにより、各ノズル111の先端にペーストボール7dが形成される(図8(a)、(b))。
【0062】
ここで、上述のように、各ノズル111は長さが互いに等しいので、各ノズル111の先端のペーストボール7dの大きさは実質的に互いに等しくなる。
【0063】
次に、ノズルユニット110を下降させて、各ペーストボール7dを実装基板6上に付着させる(図8(c)、(d))。
【0064】
次に、ノズルユニット110を上昇させて、図8(e)及び(f)に示すように、各ペーストボール7dを実装基板6上に残留させる。ここで、各ペーストボール7dの上端は、均一な高さとなっている。更に、ノズルユニット110を実装基板6の上方の領域とは異なる領域へ待避させる。
【0065】
次に、コレット9によって保持した半導体チップ5を、コレット9の移動に伴わせて搭載領域6aの上方へ搬送する(図9(a)、(b))。
【0066】
次に、コレット9を下降させて、半導体チップ5を搭載領域6a上に搭載する(図9(c)、(d))。
【0067】
このとき、上述のように、ペーストボール7dの上端は、均一な高さとなっている。このため、半導体チップ5は、各ペーストボール7dに対して同じタイミングで接触し、各ペーストボール7dが同期して周囲に広がる。このため、図9(d)に示すように、ペーストボール7dどうしの間隙にボイド11が発生しやすい。この結果、例えば、図9(e)、(f)に示すように、半導体チップ5と実装基板6の間に充填されたペースト7には、ボイド11が含まれた状態となりやすい。
【0068】
一方、本発明の第1の実施形態によれば、複数のノズル2a、2b、2cは互いに平行に配置され、このうち中央のノズル2aの先端には、その他のノズル2b、2cよりも大きいペーストボール7aが形成されるように、中央のノズル2aは、その他のノズル2b、2cよりも長さが短く形成されている。よって、中央のノズル2aの先端には、その他のノズル2b、2cよりも大きいペーストボール7aを形成できる。なお、複数のノズル2a、2b、2cは互いに平行に配置されているため、各々の先端に形成されるペーストボール7a、7b、7cどうしが搭載領域6aへの塗布前に接触してしまうことを抑制できる。
【0069】
そして、各ノズル2a、2b、2cからペーストボール7a、7b、7cを搭載領域6aに塗布した後で、該搭載領域6aに半導体チップ5等の電子部品を搭載する際には、中央のペーストボール7aが周囲に広がって、その他のペーストボール7b、7cとの間隙などを埋める。このため、これらの間隙におけるボイド11(図9(d))の発生を抑制することができる。よって、各ノズル2a、2b、2cから吐出されたペーストボール7a、7b、7cどうしの間隙におけるボイド11の発生を十分に抑制することができる。
【0070】
また、複数のノズル2a、2b、2cは、中央に配置されているほど徐々に長さが短くなるよう、各々の長さが3段階以上に設定されている。これにより、ペーストボール7a、7b、7cを塗布した搭載領域6aの中央から順に、ペーストが徐々に周囲に広がるようにすることができる。よって、半導体チップ5と搭載領域6aとの距離が狭まる過程において、搭載領域6aの中央から周囲に向けて、徐々に搭載領域6aと半導体チップ5との間隙をペーストボール7a、7b、7cによって埋めていくような動作を実現できる。従って、ペーストボール7a、7b、7cどうしの間隙におけるボイド11の発生を一層十分に抑制することができる。
【0071】
また、複数のノズル2a、2b、2cは、中央に配置されているほど二次関数的に長さが短くなるように、各々の長さを設定することができる。このように設定した場合には、ペーストボール7a、7b、7cの体積を、ペーストボール7c、ペーストボール7b、ペーストボール7aの順に二次関数的に増加させることができる。このようにすることにより、例えば、ノズル2a、2b、2cの長さが一次関数的に変化している場合には十分にボイド11を抑制できないような条件であっても、ボイド11を抑制することができる。
【0072】
また、中央のノズル2aの先端に形成されるペーストボール7aの中心8aが、その他のノズル2b、2cの先端に形成されるペーストボール7b、7cの中心8b、8cよりも本体部1側に位置するように、複数のノズル2a、2b、2cの各々の長さが設定されている。より具体的には、より中央に位置するペーストボールの方が、その中心が本体部1側に位置するようになっている。これにより、各ペーストボール7a、7b、7cを所定の大きさに形成した段階で、各ペーストボール7a、7b、7cの下端が略同一平面上に位置するようにできる。或いは、少なくとも、ペーストボール7a、7b、7cの中心8a、8b、8cと本体部1との距離が互いに等しい場合と比べて、各ペーストボール7a、7b、7cの下端の位置を均一に揃えることができる。よって、ノズルユニット10を実装基板6に一定距離に近づけることにより、各ペーストボール7a、7b、7cをほぼ同時に実装基板6に付着させることができる。このため、各ペーストボール7a、7b、7cの形状を乱さずに、各ペーストボール7a、7b、7cを実装基板6に付着させることができる。
【0073】
また、ペースト塗布ノズル装置100は、複数のノズル2a、2b、2c内のペーストを除去するペースト除去機構(ペースト除去用高圧エア貯留部30及びバルブ62等)を有している。よって、各ノズル2a、2b、2c内のペーストを除去した後で、各ノズル2a、2b、2cへペーストを供給することにより、ペーストボール7a、7b、7cをそれぞれ所望の大きさに形成することができる。
【0074】
より具体的には、ペースト塗布ノズル装置100は、該ペースト塗布ノズル装置100の動作制御を行う制御部40を更に有している。そして、制御部40は、ペースト除去機構により複数のノズル2a、2b、2c内のペーストを除去させる制御を行った後で、複数のノズル2a、2b、2cの各々にペーストを供給し複数のノズル2a、2b、2cの各々の先端にペーストボール7a、7b、7cを形成させる制御を行う。これにより、ペーストボール7a、7b、7cをそれぞれ所望の大きさに形成することができる。
【0075】
また、複数のノズル2a、2b、2cは、千鳥状に配置されているので、隣り合うノズル2a、2b、2cどうしの間隔を均一化でき、ペーストボール7aと各ペーストボール7bとの距離、各ペーストボール7bと各ペーストボール7cとの距離、並びに、ペーストボール7aと各ペーストボール7cとの距離を均一化できる。
【0076】
〔第2の実施形態〕
図10は第2の実施形態に係るペースト塗布ノズル装置(全体図示略)のノズルユニット210の模式的な断面図である。このノズルユニット210は、以下に説明する点でのみ上記の第1の実施形態におけるノズルユニット10と相違し、その他の点ではノズルユニット10と同様に構成されている。また、本実施形態に係るペースト塗布ノズル装置は、ノズルユニット10の代わりにノズルユニット210を有している点でのみ上記の第1の実施形態に係るペースト塗布ノズル装置100と相違し、その他の点ではペースト塗布ノズル装置100と同様に構成されている。
【0077】
本実施形態に係るペースト塗布ノズル装置は、本体部1と、本体部1からそれぞれ突出するように設けられ、本体部1側から供給されるペーストによりそれぞれの先端にペーストの球状体(ペーストボール)が形成される複数の管状のノズル202a、202b、202cと、を有している。複数のノズル202a、202b、202cは互いに平行に配置されている。このうち中央のノズル202aの先端には、その他のノズル202b、202cよりも大きい球状体が形成されるように、中央のノズル202aは、その他のノズル202b、202cよりも内径D1が大きく形成されている。以下、詳細に説明する。
【0078】
図10に示すように、ノズルユニット210は、本体部1と、複数のノズル202a、202b、202cと、を含んで構成されている。各ノズル202a、202b、202cの配置は、上記の第1の実施形態におけるノズル2a、2b、2cの配置と同様である。
【0079】
本実施形態の場合、ノズル202a、202b、202cの内径D1、D2、D3のうち、中央に位置するノズル202aの内径D1が最も大きく、最外周に位置するノズル202cの内径D3が最も小さい。そして、ノズル202aとノズル202cとの中間に位置するノズル202bの内径D2は、ノズル202aの内径D1とノズル202cの内径D3との中間の大きさに設定されている。すなわち、本実施形態の場合、複数のノズル202a、202b、202cは、中央に配置されているほど徐々に内径が大きくなるよう、各々の内径が3段階以上に設定されている。
【0080】
従って、各ノズル202a、202b、202cの内空断面積は、中央に位置するノズル202aの内空断面積が最も大きく、次に、ノズル202bの内空断面積が大きく、最外周に位置するノズル202cの内空断面積は最も小さい。
【0081】
これにより、これらノズル202a、202b、202cの先端に形成されるペーストボール(図示略)のうち、ノズル202aの先端のペーストボールは最も大きく形成でき、ノズル202bの先端のペーストボールはその次に大きく形成でき、ノズル202cの先端のペーストボールは最も小さく形成できる。
【0082】
本実施形態の場合も、第1の実施形態と同様に、複数のノズル202a、202b、202cは、平面視における配置が、例えば、千鳥状となっている。
【0083】
ここで、ノズル202aの内空断面積(ノズルの内側の断面積)とノズル202bの内空断面積との差(以下、ΔS1)と、ノズル202bの内空断面積とノズル202cの内空断面積との差(以下、ΔS2)とは、互いに等しくても良い。すなわち、ノズル202a、202b、202cの内空断面積は、一次関数的に変化していても良い。このようにした場合、各ノズル202a、202b、202cの先端のペーストボールの体積を、ノズル202cの先端のペーストボール、ノズル202bの先端のペーストボール、ノズル202aの先端のペーストボールの順に、一次関数的に増加させることができる。ここで、ノズルの内空断面積とは、ノズルの管内における断面積を指す。つまり、ノズルの内径がaで断面形状が円の場合、内空断面積はπ・(a/2)となる。
【0084】
或いは、上記ΔS1はΔS2よりも大きくても良い。すなわち、複数のノズル202a、202b、202cは、中央に配置されているほど二次関数的に内空断面積が大きくなっていても良い。このようにした場合、各ノズル202a、202b、202cの先端のペーストボールの体積を、ノズル202cの先端のペーストボール、ノズル202bの先端のペーストボール、ノズル202aの先端のペーストボールの順に、二次関数的に増加させることができる。
【0085】
本実施形態の場合、第1配管60aは、ノズルユニット210の本体部1内において分岐し、各ノズル202a、202b、202cに接続されている。
【0086】
そして、ペースト供給部20から本体部1に供給されたペーストは、最も内径が大きいノズル202a内に最も多く流れ込み、最も内径が小さいノズル202c内に最も少なく流れ込み、中間の内径のノズル202b内には、ノズル202a内に流れ込む量とノズル202c内に流れ込む量との中間の量だけ流れ込む。このため、各ノズル202a、202b、202cの先端に形成されるペーストボールの大きさは、ノズル202aの先端のペーストボールが最も大きくなり、ノズル202bの先端のペーストボールがその次に大きくなり、ノズル202cの先端のペーストボールが最も小さくなる。
【0087】
なお、本実施形態の場合、例えば、各ノズル202a、202b、202cは、互いに等しい長さに形成されている。このため、各ノズル202a、202b、202cの先端に形成されるペーストボールの中心並びに下端の位置は、ノズル202aの先端に形成されるペーストボールが最も本体部1から遠くなり、次に、ノズル202bの先端に形成されるペーストボールが本体部1から遠くなり、ノズル202cの先端に形成されるペーストボールが最も本体部1に近くなる。
【0088】
本実施形態の場合、電子装置の製造方法については、上記の第1の実施形態と同様であるため、その説明を省略する。なお、本実施形態の場合、ノズル202a、202b、202cの先端にペーストボールを形成する前に、ノズル202a、202b、202c内のペーストを除去する必要は無い。ただし、ノズル202a、202b、202c内におけるペーストの詰まりを抑制するなどの目的で、定期的にペースト除去機構によってノズル202a、202b、202c内のペーストを除去しても良い。
【0089】
以上のような第2の実施形態によれば、複数のノズル202a、202b、202cは互いに平行に配置され、このうち中央のノズル202aの先端には、その他のノズル202b、202cよりも大きいペーストボールが形成されるように、中央のノズル202aは、その他のノズル202b、202cよりも内径D1が大きく形成されている。よって、中央のノズル202aの先端には、その他のノズル202b、202cよりも大きいペーストボールを形成できる。なお、複数のノズル202a、202b、202cは互いに平行に配置されているため、各々の先端に形成されるペーストボールどうしの接触を抑制できる。
【0090】
そして、各ノズル202a、202b、202cからペーストボールを搭載領域6aに塗布した後で、該搭載領域6aに半導体チップ5等の電子部品を搭載する際には、中央のペーストボールが周囲に広がって、その他のペーストボールとの間隙などを埋める。このため、これらの間隙におけるボイド11(図9(d))の発生を抑制することができる。よって、各ノズル202a、202b、202cから吐出されたペーストボールどうしの間隙におけるボイド11の発生を十分に抑制することができる。
【0091】
また、複数のノズル202a、202b、202cは、中央に配置されているほど徐々に内径が大きくなるよう、各々の内径が3段階以上に設定されている。これにより、ノズル202a、202b、202cによってペーストボールを塗布した搭載領域6aの中央から順に、ペーストが徐々に周囲に広がるようにすることができる。よって、半導体チップ5と搭載領域6aとの距離が狭まる過程において、搭載領域6aの中央から周囲に向けて、徐々に搭載領域6aと半導体チップ5との間隙をペーストボールによって埋めていくような動作を実現できる。従って、ペーストボールどうしの間隙におけるボイド11の発生を一層十分に抑制することができる。
【0092】
また、複数のノズル202a、202b、202cは、中央に配置されているほど二次関数的に内空断面積が大きくなるようにすることができる。このようにした場合には、ノズル202a、202b、202cの先端に形成されるペーストボールの体積を、ノズル202cの先端のペーストボール、ノズル202bの先端のペーストボール、ノズル202aの先端のペーストボールの順に、二次関数的に増加させることができる。このようにすることにより、例えば、ノズル202a、202b、202cの内空断面積が一次関数的に変化している場合には十分にボイド11を抑制できないような条件であっても、ボイド11を抑制することができる。
【0093】
また、本実施形態の場合、ノズル202a、202b、202cの先端にペーストボールを形成する前に、ノズル202a、202b、202c内のペーストを除去する必要が無い。このため、ノズル202a、202b、202c内にペーストが充填されている状態から、ペーストボールの形成を開始することもでき、このようにすることにより、ペーストボールの形成に要する時間を第1及び第3の実施形態よりも短縮することができる。
【0094】
〔第3の実施形態〕
図11は第3の実施形態に係るペースト塗布ノズル装置(全体図示略)のノズルユニット310の模式的な断面図である。このノズルユニット310は、以下に説明する点でのみ上記の第1の実施形態におけるノズルユニット10と相違し、その他の点ではノズルユニット10と同様に構成されている。また、本実施形態に係るペースト塗布ノズル装置は、ノズルユニット10の代わりにノズルユニット310を有している点でのみ上記の第1の実施形態に係るペースト塗布ノズル装置100と相違し、その他の点ではペースト塗布ノズル装置100と同様に構成されている。
【0095】
図11に示すように、ノズルユニット310は、本体部1と、複数のノズル302a、302b、302cと、を含んで構成されている。各ノズル302a、302b、302cの配置は、上記の第1の実施形態におけるノズル2a、2b、2cの配置と同様である。
【0096】
本実施形態の場合、中央のノズル302aは、その他のノズル302b、302cよりも長さが短く形成され、且つ、中央のノズル302aは、その他のノズル302b、302cよりも内径が大きく形成されている。
【0097】
より具体的には、ノズル302bは中央に位置するノズル302aの次に短く、最外周に位置するノズル302cの長さが最も長い。その他、各ノズル302a、302b、302cの長さの関係は、第1の実施形態における各ノズル2a、2b、2cの長さの関係と同様である。
【0098】
また、ノズル302bは中央に位置するノズル302aの次に内径が大きく、最外周に位置するノズル302cの内径が最も小さい。その他、各ノズル302a、302b、302cの内径の関係は、第2の実施形態における各ノズル202a、202b、202cの内径の関係と同様である。
【0099】
このように、ノズルユニット310は、第1の実施形態におけるノズルユニット10の特徴と、第2の実施形態におけるノズルユニット210の特徴と、を兼ね備えている。
【0100】
本実施形態の場合、電子装置の製造方法については、上記の第1の実施形態と同様であるため、その説明を省略する。なお、本実施形態の場合、ノズル302a、302b、302cの先端にペーストボールを形成する前に、ノズル302a、302b、302c内のペーストを除去する点についても、第1の実施形態と同様である。
【0101】
以上のような第3の実施形態によれば、第1の実施形態と同様の効果が得られる他に、以下の効果が得られる。
【0102】
本実施形態の場合、中央のノズル302aは、その他のノズル302b、302cよりも長さが短く形成され、且つ、中央のノズル302aは、その他のノズル302b、302cよりも内径が大きく形成されている。このため、第1の実施形態よりも各ノズル302a、302b、302cの長さの差を小さくしても、各ノズル302a、302b、302cの先端に形成されるペーストボールを所望の寸法にすることができる。同様に、第2の実施形態よりも各ノズル302a、302b、302cの内径の差を小さくしても、各ノズル302a、302b、302cの先端に形成されるペーストボールを所望の寸法にすることができる。よって、各ノズル302a、302b、302cの長さと内径との双方を、それぞれ極力均一にしたい要求がある場合に、有用である。
【0103】
上記の各実施形態では、半導体チップ5を実装基板6上にダイボンディングする例を説明したが、半導体チップ5をリードフレームのダイパッド上にダイボンディングしても良い。
【0104】
また、上記においては、被搭載物(実装基板6、リードフレーム)に搭載される電子部品が半導体チップ5である例を説明したが、その他の電子部品を被搭載物に搭載する場合に、上記のペースト塗布ノズル装置及び電子装置の製造方法を適用しても良い。
【0105】
また、上記の各実施形態では、ペースト除去機構は、複数のノズルへガス(高圧ガス)を供給することによって、複数のノズル内のペーストを除去する例を説明したが、この例に限らない。例えば、ペースト除去機構は、複数のノズルへ洗浄液を供給することによって、複数のノズル内のペーストを除去するようにしても良い。この場合、洗浄液が各ノズル内から自重で排出される場合は、その排出後に各ノズルへのペーストの供給を開始することにより、各ノズルの先端にペーストボールを形成することができる。或いは、洗浄液が各ノズル内から自重で排出されない場合は、洗浄液の供給によって各ノズル内のペーストを除去した後、各ノズルへガス(高圧ガス)を供給することによって各ノズル内より洗浄液を排出し、その後に各ノズルへのペーストの供給を開始することによりペーストボールを形成することができる。
【0106】
また、上記の各実施形態では、各ノズルが互いに平行に配置されている例を説明したが、各ノズルは互いに平行でなくても良い。
【0107】
また、上記の各実施形態では、各ノズルの内径は、隣り合うノズルとの間隔よりも大きくしても良い。このようにすることにより、隣り合って形成されるペーストボールどうしの間隔を狭めることができ、各ペーストボールを塗布対象物に密に塗布することができる。
【0108】
また、上記の第1及び第3の実施形態では、ノズルの長さが3段階に変化している例を説明したが、2段階に変化していても良いし、4段階以上に変化していても良い。同様に、上記の第2及び第3の実施形態では、ノズルの内径が3段階に変化している例を説明したが、2段階に変化していても良いし、4段階以上に変化していても良い。
【符号の説明】
【0109】
1 本体部
1a 下面
2a ノズル
2b ノズル
2c ノズル
3 除去ペースト吐出領域
4 被搭載物配置領域
5 半導体チップ
6 実装基板
6a 搭載領域
7 ペースト
7a ペーストボール
7b ペーストボール
7c ペーストボール
7d ペーストボール
8a 中心
8b 中心
8c 中心
9 コレット
10 ノズルユニット
11 ボイド
20 ペースト供給部
21 ペースト貯留部
22 ペースト圧送部
30 ペースト除去用高圧エア貯留部
40 制御部
50 移動機構
60 配管
60a 第1配管
60b 第2配管
61 バルブ
62 バルブ
100 ペースト塗布ノズル装置
110 ノズルユニット
111 ノズル
202a ノズル
202b ノズル
202c ノズル
210 ノズルユニット
302a ノズル
302b ノズル
302c ノズル
310 ノズルユニット
ΔL1 長さの差
ΔL2 長さの差
J 接続部
D1 内径
D2 内径
D3 内径

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体部と、
前記本体部からそれぞれ突出するように設けられ、前記本体部側から供給されるペーストによりそれぞれの先端にペーストの球状体が形成される複数の管状のノズルと、
を有し、
前記複数のノズルは互いに平行に配置され、このうち中央のノズルの先端には、その他のノズルよりも大きい前記球状体が形成されるように、前記中央のノズルは、その他のノズルよりも長さが短く形成されていることを特徴とするペースト塗布ノズル装置。
【請求項2】
前記複数のノズルは、中央に配置されているほど徐々に長さが短くなるよう、各々の長さが3段階以上に設定されていることを特徴とする請求項1に記載のペースト塗布ノズル装置。
【請求項3】
前記複数のノズルは、中央に配置されているほど二次関数的に長さが短くなっていることを特徴とする請求項2に記載のペースト塗布ノズル装置。
【請求項4】
前記中央のノズルの先端に形成される前記球状体の中心が、その他のノズルの先端に形成される前記球状体の中心よりも前記本体部側に位置するように、前記複数のノズルの各々の長さが設定されていることを特徴とする請求項1乃至3の何れか一項に記載のペースト塗布ノズル装置。
【請求項5】
前記中央のノズルの内径は、その他のノズルの内径よりも大きいことを特徴とする請求項1乃至4の何れか一項に記載のペースト塗布ノズル装置。
【請求項6】
本体部と、
前記本体部からそれぞれ突出するように設けられ、前記本体部側から供給されるペーストによりそれぞれの先端にペーストの球状体が形成される複数の管状のノズルと、
を有し、
前記複数のノズルは互いに平行に配置され、このうち中央のノズルの先端には、その他のノズルよりも大きい前記球状体が形成されるように、前記中央のノズルは、その他のノズルよりも内径が大きく形成されていることを特徴とするペースト塗布ノズル装置。
【請求項7】
前記複数のノズルは、中央に配置されているほど徐々に内径が大きくなるよう、各々の内径が3段階以上に設定されていることを特徴とする請求項6に記載のペースト塗布ノズル装置。
【請求項8】
前記複数のノズルは、中央に配置されているほど二次関数的に内空断面積が大きくなっていることを特徴とする請求項7に記載のペースト塗布ノズル装置。
【請求項9】
前記複数のノズル内のペーストを除去するペースト除去機構を有することを特徴とする請求項1乃至8の何れか一項に記載のペースト塗布ノズル装置。
【請求項10】
前記ペースト除去機構は、前記複数のノズルへガス又は洗浄液を供給することによって、前記複数のノズル内のペーストを除去することを特徴とする請求項9に記載のペースト塗布ノズル装置。
【請求項11】
当該ペースト塗布ノズル装置の動作制御を行う制御部を更に有し、
前記制御部は、前記ペースト除去機構により前記複数のノズル内のペーストを除去させる制御を行った後で、前記複数のノズルの各々にペーストを供給し前記複数のノズルの各々の先端に前記球状体を形成させる制御を行うことを特徴とする請求項9又は10に記載のペースト塗布ノズル装置。
【請求項12】
前記複数のノズルは、千鳥状に配置されていることを特徴とする請求項1乃至11の何れか一項に記載のペースト塗布ノズル装置。
【請求項13】
本体部と、
前記本体部からそれぞれ突出するように設けられ、前記本体部側から供給されるペーストによりそれぞれの先端にペーストの球状体が形成される複数の管状のノズルと、
を有し、
前記複数のノズルは互いに平行に配置され、このうち中央のノズルの先端には、その他のノズルよりも大きい前記球状体が形成されるペースト塗布ノズル装置の前記複数のノズルの各々から、
実装基板上、又は、リードフレームのダイパッド上に、前記球状体を塗布する工程と、
前記球状体が塗布された領域に電子部品を搭載する工程と、
を有することを特徴とする電子装置の製造方法。
【請求項14】
前記複数のノズル内のペーストを除去する工程を更に有し、
前記複数のノズル内のペーストを除去する工程の後で、前記球状体を塗布する工程を行うことを特徴とする請求項13に記載の電子装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−199169(P2011−199169A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−66621(P2010−66621)
【出願日】平成22年3月23日(2010.3.23)
【出願人】(302062931)ルネサスエレクトロニクス株式会社 (8,021)
【Fターム(参考)】