説明

ペースト状油性化粧料組成物

【課題】本発明は、顔料の分散安定性(すなわち、分離・沈降のないもの)に優れたペースト状油性化粧料組成物を提供することを目的とする。
【解決手段】
本構成すなわち、特定量の(A)疎水化シリカ、(B)デキストリン脂肪酸エステル、(C)水添ポリイソブテン、(D)顔料を必須成分として含有することを特徴とすることにより、顔料の分散安定性(すなわち、分離・沈降のないもの)に優れたペースト状油性化粧料組成物を提供することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ペースト状油性化粧料組成物に関する。特に、特定量の(A)疎水化シリカ、(B)デキストリン脂肪酸エステル、(C)水添ポリイソブテン、(D)顔料を必須成分として含有することを特徴とするペースト状油性化粧料組成物に関するものである。
本構成を採用することにより、顔料の分散安定性(すなわち、分離・沈降のないもの)に優れたペースト状油性化粧料組成物を提供する。
【背景技術】
【0002】
顔料(着色顔料・パール顔料など)を含有するペースト状油性化粧料組成物は、液状としての特性と固体としての特性を併せ持つ、非常に有用な化粧料の剤型であり、スキンケア、メイクアップ、ヘアケア用途で用いられている。(特許文献1、特許文献2)
しかしながら、ペースト状すなわち流動性がない状態であっても、配合する顔料を経時的に、安定に保持することが非常に難しく、顔料が沈降したり、油剤の相溶性の違いにより、油剤の分離が起こり、安定なペースト状油性化粧料組成物を得ることは非常に困難であった。ここでいう、ペースト状油性化粧料組成物としては、顔料を含有するものであり、たとえば、アイクリームなどのスキンケア品、ペースト状口紅、リップクリーム、アイシャドウ、アイライナーなどのメイクアップ品、ペースト状ヘアワックス、ヘアリタッチ剤などのヘアケア品などが挙げられる。
【0003】
【特許文献1】特願2002−037568号公報
【特許文献2】特願2001−151751号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、のび・つやなどの使用感を維持したまま、顔料の分散安定性(すなわち、分離・沈降のないもの)に優れた、ペースト状油性化粧料組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記実情に鑑み、課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、(A)疎水化シリカ 2〜5重量%(以下、単に%と記す。)(B)デキストリン脂肪酸エステル 2〜5%、(C)水添ポリイソブテン 10〜40%、(D)顔料を含有することにより、のび・つやに優れた、経時的な顔料の分散安定性(すなわち、分離・沈降のないもの)に優れたペースト状油性化粧料組成物が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0006】
すなわち本発明は、(A)疎水化シリカ 2〜5重量%、(B)デキストリン脂肪酸エステル 2〜5%、(C)水添ポリイソブテン 10〜40%、(D)顔料を含有することを特徴とするペースト状油性化粧料組成物を提供することに関する。
【0007】
顔料を保持するために、油剤のゲル化剤すなわち、成分(A)および成分(B)を大量に配合すると、経時的に油分のしみ出しが起こり好ましくない。
【0008】
本発明のペースト状油性化粧料組成物は経時的な顔料の分散安定性(すなわち分離や沈降のないもの)にも優れ、塗布時ののびやつやも優れている。以下、本発明の構成について詳述する。
【0009】
本発明における必須成分(A)は、疎水化シリカである。無水ケイ酸であるシリカ表面のシラノール基(水酸基)がジメチルシリコーンオイル処理、金属石鹸処理、オクチルシラン処理、ジメチルシリル化処理、トリメチルシリル化処理されたものであり、化粧料組成物の安定性を考慮して、好ましくは、オクチルシラン処理、ジメチルシリル化処理、トリメチルシリル化処理されたものがよい。
【0010】
また、本発明での(A)疎水化シリカは、その一部がお互いに立体構造を形成し、油性化粧料組成物においてゲル構造を形成し、安定化に役立っていると考えられるので、5〜20nmと微細な一次粒子径をもつ疎水化シリカが好ましい。
【0011】
したがって、この疎水化の方法と粒子径を考慮すると、市販品としては、オクチルシラン処理品であるAEROSIL R805(日本アエロジル株式会社製)、ジメチルシリル化処理品であるAEROSIL R972、R974、R976、R976S(日本アエロジル株式会社製)、トリメチルシリル化処理品であるAEROSIL R812(日本アエロジル株式会社製)等が好ましく利用できる。なお、本発明ではこれら(A)疎水化シリカを、1種又は2種以上を配合して使用してもよい。
【0012】
(A)疎水化シリカの配合量は、化粧料組成物全量中、2〜5%であり、好ましくは2.5〜3.0%である。配合量が2%未満では、油剤成分のゲル化が十分でないため、十分な顔料の保持性が得られず、一方、5%以上では疎水化シリカどうしの凝集のため、油剤の分離が起こり好ましくない。
【0013】
本発明における必須成分(B)デキストリン脂肪酸エステルは、デキストリンと高級脂肪酸とのエステルである。高級脂肪酸としては、炭素数が6〜22のものが好ましく、具体的には、2−エチルヘキサン酸、ラウリン酸、パルミチン酸、ミリスチン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、ベヘニン酸、ヤシ油脂肪酸等が挙げられる。このうちデキストリンパルミチン酸エステル、デキストリンミリスチン酸エステルが経時的な顔料の分散安定性や、使用性の面から、より好ましい。また、デキストリン脂肪酸エステルの市販品としては、たとえば、「レオパールKL2」(パルミチン酸デキストリン)、「レオパールMKL2」(ミリスチン酸デキストリン)、「レオパールTL2」(パルミチン酸デキストリン)、「レオパールTT2」(パルミチン酸/2−エチルヘキサン酸デキストリン)(以上、千葉製粉製)等が挙げられる。また、本発明ではこれら(B)デキストリン脂肪酸エステルを、1種又は2種以上を配合して使用してもよい。
【0014】
(B)デキストリン脂肪酸エステルの配合量は、化粧料組成物全量中、2〜5%であり、好ましくは2.5〜3.0%である。配合量が2%未満では、油剤成分のゲル化が十分でないため、十分な顔料の保持性が得られず、一方、5%以上では、塗布時ののびが重くなる場合があり、好ましくない。
【0015】
本発明における必須成分(C)水添ポリイソブテンは、イソブテンとn−ブテンの共重合体において、末端の二重結合も含め水素添加した側鎖を有する飽和タイプの長鎖状分岐炭化水素の混合物である。重合条件を変えることにより、種々の重合度のものを得ることができ、重質イソパラフィン、軽質イソパラフィンに分類される。特に限定はされないが、平均分子量500〜3000、特に1000付近のものが、入手性や粘度などの点から好ましい。また、パールリームEX、パールリーム18、パールリーム24、パールリーム46(以上、日本油脂製)として、市販されているものを使用することができる。また、本発明ではこれら(C)水添ポリイソブテンを、1種又は2種以上を配合して使用してもよい。
【0016】
(C)水添ポリイソブテンの配合量は、化粧料組成物全量中、10〜40%であり、好ましくは20〜30%である。配合量が10%未満では塗布した際の厚みが十分でなく、一方、40%以上では塗布時ののびが重くなり、好ましくない。
【0017】
本発明における必須成分(D)顔料は、特に限定されないが、通常の化粧料に使用されるものであれば、その形状(球状、棒状、針状、板状、不定形状、紡錘状等)や粒子径(煙霧状、微粒子、顔料級等)、粒子構造(多孔質、無孔質等)を問わず、いずれのものも使用することができ、たとえば、無機顔料、有色顔料、パール顔料、金属粉末顔料等が挙げられる。さらにこれらの顔料を複合化したものも使用することができる。具体的には、無機顔料としては、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、酸化セリウム、酸化マグネシウム、有色顔料としては、酸化鉄、水酸化鉄、チタン酸鉄の無機赤色顔料、γー酸化鉄等の無機褐色系顔料、黄酸化鉄、黄土等の無機黄色系顔料、黒酸化鉄、カーボンブラック等の無機黒色顔料、マンガンバイオレット、コバルトバイオレット等の無機紫色顔料、水酸化クロム、酸化クロム、酸化コバルト、チタン酸コバルト等の無機緑色顔料、紺青、群青等の無機青色系顔料、赤色3号、赤色104号、赤色106号、赤色201号、赤色202号、赤色204号、赤色205号、赤色220号、赤色226号、赤色227号、赤色228号、赤色230号、赤色401号、赤色505号、黄色4号、黄色5号、黄色202号、黄色203号、黄色204号、黄色401号、青色1号、青色2号、青色201号、青色404号、緑色3号、緑色201号、緑色204号、緑色205号、橙色201号、橙色203号、橙色204号、橙色206号、橙色207号等のタール系色素をレーキ化したもの、カルミン酸、ラッカイン酸、カルサミン、ブラジリン、クロシン等の天然色素をレーキ化したもの等;パール顔料としては、酸化チタン被覆雲母、オキシ塩化ビスマス、酸化チタン被覆オキシ塩化ビスマス、酸化鉄雲母チタン、紺青処理雲母チタン、カルミン処理雲母チタン、魚鱗箔、酸化チタン被覆タルク等;金属粉末顔料としては、アルミニウム、金、銀、銅、白金、ステンレス等の金属粉末が挙げられる。また、本発明ではこれら(D)顔料を、1種又は2種以上を配合して使用してもよい。
【0018】
(D)顔料の配合量は、ペースト状油性化粧料組成物として、通常配合される量であればよい。
【0019】
本発明でいうペースト状とは、30℃においてチキソトロピックであり、その状態を維持するものをいう。すなわち、底面の一辺が1cmの正方形の直方体容器に5gのベースを気泡なく充填して垂直に立てて1日放置後、強い衝撃を与えないように横に倒しても流れないものである。
【0020】
本発明の化粧料組成物中には、本願発明の効果を損なわない範囲で、上記の必須成分のほかに、化粧料用組成物中に一般的に配合される他の任意成分を配合することができる。たとえば、油性成分、粉体およびそれらのシリコーン処理物やフッ素化合物処理物、界面活性剤、水や多価アルコール、低級アルコール、水溶性高分子、保湿剤等の水性成分、糖類、紫外線吸収剤、紫外線散乱剤、酸化防止剤、防腐剤、リパーゼやプロテアーゼ等の酵素類、レゾルシンやイオウ等の各種薬剤、清涼剤、キレート剤、色素、香料等を配合することができる。
【0021】
油性成分としては、化粧料に一般に使用される動物油、植物油、合成油等の起源の固形油、半固形油、液体油、揮発性油等の性状を問わず、炭化水素類、油脂類、ロウ類、エステル油、硬化油類、脂肪酸類、高級アルコール類、シリコーン油類、フッ素系油類、ラノリン誘導体類、油性ゲル化剤類等が挙げられる。具体的には、流動パラフィン、スクワラン、ワセリン、ポリエチレンワックス、エチレン・プロピレンコポリマー、パラフィンワックス、モンタンワックス、フィッシャートロプシュワックス、ポリイソブチレン、セレシンワックス、オゾケライトワックス等の炭化水素類、モクロウ、オリーブ油、ヒマシ油、ミンク油、マカデミアンナッツ油等の油脂類、ミツロウ、ゲイロウ、カルナウバワックス、キャンデリラワックス等のロウ類、ステアリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、ベヘニン酸、イソステアリン酸、オレイン酸等の脂肪酸類、ステアリルアルコール、セチルアルコール、ラウリルアルコール、オレイルアルコール、イソステアリルアルコール、ベヘニルアルコール等の高級アルコール類、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、トリメチルシロキシケイ酸、高重合度メチルフェニルポリシロキサン、架橋型メチルポリシロキサン、ポリオキシ変性オルガノポリシロキサン、架橋型ポリエーテル変性メチルポリシロキサン、メタクリル変性ポリシロキサン、ステアリル変性メチルポリシロキサン、オレイル変性メチルポリシロキサン、ベヘニル変性メチルポリシロキサン、ポリビニルピロリドン変性メチルポリシロキサン、高重合度ジメチルポリシロキサン、ポリオキシアルキレン・アルキルメチルポリシロキサン・メチルポリシロキサン共重合体、アルコキシ変性ポリシロキサン、架橋型オルガノポリシロキサン、フッ素変性ポリシロキサン等のシリコーン類、パーフルオロデカン、パーフルオロオクタン、パーフルオロポリエーテル等のフッ素系油剤類、ラノリン、酢酸ラノリン、ラノリン脂肪酸イソプロピル、ラノリンアルコール等のラノリン誘導体、蔗糖脂肪酸エステル、デンプン脂肪酸エステル、イソステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸カリウム、12−ヒドロキシステアリン酸等の油性ゲル化剤類等が挙げられ、これらを1種又は2種以上用いることができる。
【0022】
粉体成分としては、必須成分(D)顔料以外で、化粧料に一般に使用される粉体であれば、球状、板状、針状等の形状、煙霧状、微粒子、顔料級等の粒子径、多孔質、無孔質等の粒子構造等により特に限定されず、無機粉体類、光輝性粉体類、有機粉体類、色素粉体類、金属粉体類、複合粉体類等が挙げられる。無機粉体としては、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、タルク、マイカ、カオリン、セリサイト(絹雲母)、合成セリサイト、白雲母、合成雲母、金雲母、紅雲母、黒雲母、リチア雲母、炭化珪素、珪ソウ土、ケイ酸、無水ケイ酸、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、メタケイ酸アルミニウムマグネシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸バリウム、ケイ酸ストロンチウム、タングステン酸金属塩、ヒドロキシアパタイト、バーミキュライト、ハイジライト、ベントナイト、モンモリロナイト、スメクタイト、ヘクトライト、ゼオライト、セラミックスパウダー、第二リン酸カルシウム、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、酸化アンチモン、水酸化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化ボロン等の白色体質粉体;ポリエチレンテレフタレート・アルミニウム・エポキシ積層末、ポリエチレンテレフタレート・ポリオレフィン積層フィルム末、ポリエチレンテレフタレート・ポリメチルメタクリレート積層フィルム末等の光輝性粉体、ポリアミド系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリアクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、フッ素系樹脂、セルロース系樹脂、ポリスチレン系樹脂、スチレン−アクリル共重合樹脂等のコポリマー樹脂、ポリプロピレン系樹脂、シリコーン樹脂、ウレタン樹脂等の有機高分子樹脂粉体、ステアリン酸亜鉛、N−アシルリジン等の有機低分子性粉体、シルク粉末、セルロース粉末等の天然有機粉体等が挙げられ、これら粉体はその1種又は2種以上を用いることができ、更に複合化したものを用いても良い。
【0023】
界面活性剤としては、化粧料一般に用いられている界面活性剤であればいずれのものも使用でき、非イオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤等が挙げられる。例えば、グリセリン脂肪酸エステル及びそのアルキレングリコール付加物、ポリグリセリン脂肪酸エステル及びそのアルキレングリコール付加物、ソルビタン脂肪酸エステル及びそのアルキレングリコール付加物、蔗糖脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシアルキレンアルキル共変性オルガノポリシロキサン、ポリエーテル変性オルガノポリシロキサン、レシチン等が挙げられる。
【0024】
酸化防止剤としては、例えばα−トコフェロール、アスコルビン酸塩等が挙げられる。
【0025】
防腐剤としては、例えばパラオキシ安息香酸エステル、フェノキシエタノール等が挙げられる。
【0026】
紫外線吸収剤としては、例えばベンゾフェノン系、PABA系、ケイ皮酸系、サリチル酸系、4−tert−ブチル−4’−メトキシジベンゾイルメタン、オキシベンゾン等が挙げられる。
【0027】
本発明のペースト状油性化粧料組成物の製造方法は特に限定されるものではないが、例えば、高温で、エステル油を含む油相にデキストリン脂肪酸エステルを溶解し、その後、顔料・疎水化シリカを均一に分散することにより得ることができる。
【0028】
本発明のペースト状油性化粧料組成物としては、スキンケア、メイクアップ、ヘアケア用途の化粧料が挙げられる。たとえば、アイクリームなどのスキンケア品、ペースト状口紅、アイクリーム、リップクリーム、アイシャドウ、アイライナーなどのメイクアップ品、ペースト状ヘアワックス、ヘアリタッチ剤などのヘアケア品などが挙げられる。その中でも、好ましくは口唇用であり、リップトリートメント、リップクリーム、リップ下地、ペースト状口紅、リキッドルージュ、グロス、特に好ましくは、ペースト状口紅、リキッドルージュ、グロスである。
【発明の効果】
【0029】
本願発明の、ペースト状油性化粧料組成物は、塗布時ののび・つやに優れており、経時的な顔料の分散安定性(すなわち、分離・沈降のないもの)にも優れている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下に実験例および実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【実施例1】
【0031】
本発明品実験例1〜6、比較品1〜6:ペースト状口紅
表1に示す処方のペースト状口紅を下記の製造方法にて調製し、下記の方法にて顔料保持安定性および、分離安定性について評価した。評価基準は下記のとおりであり、結果もあわせて表1に示した。
【0032】
【表1】

【0033】
(製造方法)
A:成分7、8を均一に分散後、加熱溶解した成分1〜6に加熱混合する。
B:成分9〜14を均一に分散する。
【0034】
[顔料保持性評価方法]
φ4cm、長さ15cmの試験管にA部をとり、そこにB部を添加し、3日間放置後のベースの状態を確認した。すなわちA部に顔料保持性があれば、後から添加したB部はA部の上部に保持されており、顔料保持性がなければ、B部がA部に拡散するか、A部の下部に沈降するはずである。
[評価基準]
◎:50℃および常温にて2週間経過後、A部とB部が完全に分かれた状態で、A部の上層にB部が保持された状態で、B部の顔料がまったく拡散・沈降していないもの。状態の変化がまったく認められないもの。
○:A部とB部が完全に分かれた状態で、A部の上層にB部が保持された状態で、A部とB部境界の顔料が一部拡散しているが沈降はしていないもの。50℃および常温にて2週間経過後、状態の変化がほとんど認められない。すなわち、一部拡散はあっても沈降は認められないもの。
△:A部とB部の境界があいまいとなり、B部の顔料がA部中に拡散しており、一部沈降の認められるもの。および50℃および常温にて2週間経過後、この状態まで変化したもの。
×:A部とB部が完全均一になった状態で、A部の下層にB部の顔料が完全に沈降した状態のもの。および50℃および常温にて2週間経過後、この状態まで変化したもの。ベース中の顔料が、40℃、常温とも2週間経過後、顔料が完全に沈降分離しているもの。
【0035】
[分離安定性評価方法]
上記[顔料保持性評価方法]と同一の試験ベースにおいて、油分の上澄みの有無を目視にて判定する。
[評価基準]
◎:ベースの中の油剤が、50℃、常温にて、3日経過後でも、油剤の分離(離油)がまったく認められない。
○:ベースの中の油剤が、常温にて2週間経過後、油剤の分離(離油)がまったく認められない。50℃にて、2週間経過後、わずかに分離(離油)が認められる。
△:ベースの中の油剤が、油剤の分離(離油)がまったく認められない。50℃、常温にて2週間経過後、わずかに分離(離油)が認められる。
×:ベースの中の油剤が、製造直後から油剤の分離(離油)が認められ、50℃、常温にて2週間経過後でも、分離(離油)が認められる。
【実施例2】
【0036】
同様に、本発明品実験例7〜10:ペースト状リップグロス
表2に示す処方のペースト状リップグロスを下記の製造方法にて調製し、顔料保持安定性および、分離安定性について評価した。評価基準は上記実施例1と同様に行い、結果もあわせて表2に示した。
【0037】
【表2】

【0038】
(製造方法)
A:成分6、7を均一に分散後、加熱溶解した成分1〜5に加熱混合する。
B:成分8〜14を均一に分散する。
(評価方法および評価基準)
上記表1と同様の評価方法および評価基準にて評価した。
【0039】
表1、表2から明らかなように、特定量の疎水化シリカ及び脂肪酸デキストリンを含むペースト状口紅およびペースト状リップグロスでは、顔料保持安定性および分離安定性ともに優れていたが、含まないものや特定の範囲外のペースト状口紅およびペースト状リップグロスでは、十分な顔料保持安定性および分離安定性が認められないことがわかった。
【実施例3】
【0040】
ペースト状油性ファンデーション
(配合成分) (重量%)
(A相)
(1)水添ポリイソブテン(*1) 40
(2)流動パラフィン 残量
(3)ミリスチン酸デキストリンエステル(*2) 5.0
(B相)
(4)タルク 5
(5)カオリン 5
(6)酸化チタン 4
(7)ベンガラ 1
(8)黄酸化鉄 4
(9)黒酸化鉄 0.2
(10)疎水化シリカ(*3) 5.0
(11)リンゴ酸ジイソステアリル(*4) 10
(12)香料 適量
*1:パールリーム24(日本油脂製)
*2:レオパールMKL2(千葉製粉製)
*3:アエロジルR976(日本アエロジル製)
*4:コスモール222(日清オイリオ製)
【0041】
(製法)A相を90〜100℃で溶解させ、ここに均一に分散したB相を加えてさらに分散した後、脱気を行い、ペースト状油性ファンデーションを得た。
【実施例4】
【0042】
ペースト状油性アイグロス
(配合成分) (重量%)
(A相)
(1)水添ポリイソブテン(*1) 30
(2)流動パラフィン 残量
(3)パルミチン酸デキストリン(*2) 5.0
(4)パラメトキシケイ皮酸2−エチルヘキシル 1.0
(5)天然ビタミンE 0.01
(B相)
(6)赤色202号 0.004
(7)グンジョウ 0.016
(8)酸化チタン 5
(9)酸化チタン処理合成金雲母 5
(10)疎水化シリカ(*3) 5.0
(11)ラメ剤 1.0
(12)トリイソステアリン酸グリセリル(*4) 20
(13)香料 適量
*1:パールリーム46(日本油脂製)
*2:レオパールKL2(千葉製粉製)
*3:アエロジルR974(日本アエロジル製)
*4:コスモール43V(日清オイリオ製)
【0043】
(製法)A相を90〜100℃で溶解させ、ここに均一に分散したB相を加えてさらに分散した後、脱気を行い、ペースト状油性アイグロスを得た。
【実施例5】
【0044】
ペースト状口紅
(配合成分) (重量%)
(A相)
(1)マイクロクリスタリンワックス 2
(2)水添ポリイソブテン(*1) 10
(3)ポリエチレンワックス 5
(4)流動パラフィン 残量
(5)マカデミアナッツ油脂肪酸コレステリル(*2) 10
(6)パルミチン酸/2−エチルヘキサン酸デキストリン(*3)3.0
(7)ジメチルポリシロキサン 20CS 0.5
(B相)
(8)赤色202号 0.1
(9)ベンガラ 0.3
(10)酸化チタン 2
(11)雲母チタン 5
(12)疎水化シリカ(*4) 2.0
(13)トリイソステアリン酸グリセリル(*5) 20
(14)香料 適量
*1:パールリーム18(日本油脂製)
*2:YOFCO MAS(日本精化製)
*3:レオパールTT2(千葉製粉製)
*4:アエロジルR976(日本アエロジル製)
*5:コスモール43V(日清オイリオ製)
【0045】
(製法)A相を90〜100℃で溶解させ、ここに均一に分散したB相を加えてさらに分散した後、脱気を行い、ペースト状口紅を得た。
【実施例6】
【0046】
ペースト状油性ヘヤーワックス
(配合成分) (重量%)
(A相)
(1)ビーズワックス 2
(2)水添ポリイソブテン(*1) 10
(3)フェニルトリメチコン 5
(4)流動パラフィン 残量
(5)マカデミアナッツ油脂肪酸コレステリル(*2) 10
(6)ロジン酸ペンタエリスリット 2
(7)パルミチン酸デキストリン(*3) 3.0
(8)ジメチルポリシロキサン 1CS 0.5
(B相)
(9)黒酸化鉄 2
(10)疎水化シリカ(*4) 2.0
(11)トリイソステアリン酸グリセリル(*5) 20
(12)香料 適量
*1:パールリーム18(日本油脂製)
*2:YOFCO MAS(日本精化製)
*3:レオパールTT2(千葉製粉製)
*4:アエロジルR976(日本アエロジル製)
*5:コスモール43V(日清オイリオ製)
【0047】
(製法)A相を90〜100℃で溶解させ、ここに均一に分散したB相を加えてさらに分散した後、脱気を行い、ペースト状油性ヘヤーワックスを得た。
【0048】
実施例3〜7で得たペースト状油性化粧料組成物は50℃、60日後において顔料の沈降や油分のしみ出しもなく顔料保持安定性および分離安定性についてすぐれた効果が認められた。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明は、特定量の(A)疎水化シリカ、(B)デキストリン脂肪酸エステル、(C)水添ポリイソブテン、(D)顔料を必須成分として含有することを特徴とするペースト状油性化粧料組成物であり、顔料の分散安定性(すなわち、分離・沈降のないもの)に優れたペースト状油性化粧料組成物として有用である。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)疎水化シリカ 2〜5重量%(以下、単に%と記す。)、(B)デキストリン脂肪酸エステル 2〜5%、(C)水添ポリイソブテン 10〜40%、(D)顔料を含有することを特徴とするペースト状油性化粧料組成物。
【請求項2】
上記ペースト状油性化粧料組成物が、ペースト状口紅組成物である請求項1に記載のペースト状油性化粧料組成物。
【請求項3】
(A)が2.5〜3.0%、(B)が2.5〜3.0%、(C)が20〜30%、(D)顔料を含有することを特徴とする請求項1乃至請求項2に記載のペースト状油性化粧料組成物。
【請求項4】
疎水化シリカがジメチルシリル化シリカ又はトリメチルシリル化シリカであることを特徴とする請求項1乃至請求項3に記載のペースト状油性化粧料組成物。
【請求項5】
デキストリン脂肪酸エステルがデキストリンパルミチン酸エステルまたはデキストリンミリスチン酸エステルであることを特徴とする請求項1乃至請求項4に記載のペースト状油性化粧料組成物。



【公開番号】特開2009−203212(P2009−203212A)
【公開日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−50167(P2008−50167)
【出願日】平成20年2月29日(2008.2.29)
【出願人】(592262543)日本メナード化粧品株式会社 (223)
【Fターム(参考)】