説明

ペースト用塩化ビニル系樹脂の製造方法、及びそれから得られる樹脂組成物と発泡成形体

【課題】 本発明は、表面平滑性、セル緻密性に優れると共に、メカニカルエンボス、ケミカルエンボスによる意匠性に優れた新規なペースト用塩化ビニル系樹脂組成物および発泡成形体を提供することを目的とする。
【解決手段】(A−1)(メタ)アクリル酸エステル系樹脂が0.1〜10重量%であり、(A−2)がJIS K7367−2によるK値55〜75である塩化ビニル樹脂90〜99.9重量%である、ことを特徴とするペースト用塩化ビニル系樹脂の製造方法。 また、このペースト用塩化ビニル系樹脂(A)100重量部と、(B)可塑剤30〜200重量部、(C)発泡剤0.1〜10重量部、を含有するペースト用塩化ビニル系樹脂組成物およびその発泡成形体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面平滑性、セル緻密性に優れた発泡成形体を得ることができる。また、広い加工条件で発泡成形体の白度を得ることができる。また、メカニカルエンボスによる意匠性に優れた発泡成形体を得ることができる、新規なペースト用塩化ビニル系樹脂組成物およびその発泡成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
塩化ビニル系樹脂は、機械的物性、化学的物性に優れ、また可塑剤量の調整により硬質から軟質までの成形体が得られるため種々の用途に使用されている。
【0003】
特に、塩化ビニル系樹脂の発泡成形体は、硬質塩化ビニル発泡成形体として、建材・船体の芯材、タンカー等の保温材等が、軟質塩化ビニル発泡成形体として、壁紙、クッションフロアー、カーペットタイル、自動車アンダーボディー、その他様々な用途において広く用いられている。
【0004】
軟質塩化ビニル発泡成形体を作製する方法として、熱分解型有機発泡剤による方法、機械的攪拌による方法、ハロゲン系溶剤などの揮発性溶剤を用いる方法がある。熱分解型有機発泡剤を用いる場合、アゾジカルボンアミドやオキシビスベンゾスルフォニルヒドラジド等を用いる方法が一般的であるが、発泡剤が分解する温度付近の樹脂の溶融粘弾性の制御が難しく、溶融粘弾性が高いため十分な厚みが得られない状態や、発泡成形体の気泡が合一しやすく、発生したガスを保持できずに厚みが得られない、いわゆる「ヘタリ」の状態となることが多い。
【0005】
そのため、(メタ)アクリル酸エステル系樹脂などを気泡安定剤として配合添加して用いることがある(特許文献1)が、これら気泡安定剤をそのまま塩化ビニル系樹脂と配合、混合すると、主に(メタ)アクリル酸エステル系樹脂が可塑剤中に拡散されやすいため、塩化ビニル系樹脂の溶融粘度等を変える等の影響を及ぼすことが少なく、気泡を安定化させるために添加量が多く必要となり、また、良好な発泡成形体が得られるための加工幅を広げることは難しい。また、配合時に均一に混合するために、気泡安定剤の溶解性のよい芳香族系有機溶剤等を用いることがあるが、近年、健康あるいは環境への悪影響を考え、壁紙等の建材用途での有機溶剤の使用が規制される動きがあるため、有機溶剤を使用しない、気泡安定性のよい樹脂が望まれている。
【特許文献1】特開平09−067498号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、表面平滑性、セル緻密性に優れると共に、メカニカルエンボス、ケミカルエンボス部の柄のシャープ性に優れ、メカニカルエンボス時のパンク性にも優れた新規なペースト用塩化ビニル系樹脂組成物および発泡成形体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、鋭意研究の結果、上記課題を解決できることを見出し、本発明の完成に至った。
【0008】
すなわち、本発明は、
(1)樹脂ラテックス状態の(A−2)塩化ビニル樹脂に、(A−1)(メタ)アクリルエステル系樹脂を混合することを特徴とする(A)ペースト用塩化ビニル系樹脂の製造方法(請求項1)、
(2)(A−1)(メタ)アクリル酸エステル系樹脂が0.1〜10重量%であり、(A−2)JIS K7367−2によるK値55〜75である塩化ビニル樹脂が90〜99.9重量%である、ことを特徴とする請求項1記載のペースト用塩化ビニル系樹脂の製造方法(請求項2)、
(3)(A−1)(メタ)アクリル酸エステル系樹脂が、1分子あたり少なくとも1個、下記一般式:
−OC(O)C(R)=CH2
(式中、Rは水素、又は、炭素数1〜20の有機基を表す。)
を含む、マクロモノマーであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のペースト用塩化ビニル系樹脂の製造方法(請求項3)、
(4)請求項1〜3の何れかに記載の製造方法で作製されたペースト用塩化ビニル系樹脂(A)100重量部と、(B)可塑剤30〜200重量部、(C)発泡剤0.1〜10重量部、を含有するペースト用塩化ビニル系樹脂組成物(請求項4)、
(5) 請求項4に記載のペースト用塩化ビニル系樹脂組成物から得られる発泡成形体
(請求項5)、
に関する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、表面平滑性に優れた発泡成形体を得ることができる。また、本発明によれば、セル緻密性に優れた発泡成形体を得ることができる。また、本発明によれば、広い加工条件で発泡成形体の白度を得ることができる。また、本発明によれば、メカニカルエンボス部の柄のシャープ性およびエンボス時のパンク性に優れた発泡成形体を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明のペースト用塩化ビニル系樹脂(A)は、(メタ)アクリル酸エステル系樹脂と塩化ビニル樹脂からなり、塩化ビニル樹脂ラテックスに(メタ)アクリル酸エステル系樹脂を混合させてなる。本発明の塩化ビニル系樹脂(A)は、本発明の効果を発現するものであれば特に制約はないが、(メタ)アクリル酸エステル系樹脂0.1〜10重量%と塩化ビニル樹脂90〜99.9%を含有することが好ましい。0.1〜10重量%であれば本発明のペースト用塩化ビニル系樹脂を使用した発泡成形体の気泡安定性、白度、表面平滑性も良好であるため好ましく、1〜6重量%であればメカニカルエンボス時に適度な独立気泡率を得られることが顕著であるため、更に好ましい。
【0011】
本発明のペースト用塩化ビニル系樹脂(A)は、本発明の効果を発現するものであれば特に制約はないが、重合終了後から乾燥終了までの樹脂ラテックス状態の塩化ビニル樹脂(A−2)に(メタ)アクリル酸エステル系樹脂(A−1)を混合してなり、ラテックスの乾燥後に(メタ)アクリル酸エステル系樹脂が塩化ビニル樹脂粒子表面に存在させることが好ましい。
(メタ)アクリル酸エステル系樹脂を塩化ビニル系樹脂ラテックスに混合する場合は、塩化ビニル系樹脂ラテックスの存在下に(メタ)アクリル酸エステル系樹脂をそのままもしくは水に溶かして混合あるいは溶解すればよいが、ハンドリング性や速やかな混合あるいは溶解を行うために、乳化剤や分散剤を用いて(メタ)アクリル酸エステル系樹脂を水に分散して混合する方法や、塩化ビニル系樹脂ラテックスと(メタ)アクリル酸エステル系樹脂に相溶性を有し、樹脂乾燥時に揮散する種類の有機溶媒を用いて(メタ)アクリル酸エステル系樹脂を溶解して混合する方法を用いてもよい。
【0012】
また、(メタ)アクリル酸エステル系樹脂を、塩化ビニル系樹脂ラテックスに混合する場合は、塩化ビニル樹脂ラテックスを乾燥する前までに、(メタ)アクリル酸エステル系樹脂を混合して乾燥する方法、または塩化ビニル樹脂ラテックスを乾燥フィードする際に、別に(メタ)アクリル酸エステル系樹脂をフィードして塩化ビニル系樹脂の乾燥樹脂を得ることが好ましい。特に、(メタ)アクリル酸エステル系樹脂の混合が容易になる、重合終了後の残存モノマー回収後の塩化ビニル樹脂ラテックスに混合することで、(メタ)アクリル酸エステル系樹脂がラテックス中の乳化剤により分散され、乾燥後の塩化ビニル樹脂表面に均一に付着することから好ましい。
【0013】
塩化ビニル系樹脂の乾燥方法としては、本発明の効果を発現するものであれば特に制約はないが、得られた乾燥樹脂のハンドリング性が良好であることから、2流体ノズル式スプレー乾燥機、円盤回転式スプレー乾燥機等で乾燥されることが好ましい。樹脂乾燥温度は、40℃から70℃までの温度であれば乾燥後の樹脂がブロッキングすることなく粉体として得られるため好ましく、特に45℃から55℃までの温度であれば、得られた樹脂が、プラスチゾルとして使用した場合に容易に分散し、粗粒分が少ないものが得られるため特に好ましい。
【0014】
尚、ペースト用塩化ビニル樹脂ラテックスの固形分は、約10gのラテックスを精秤し、熱風式オーブンで110℃、約40分乾燥することで、水分、揮発分を除いた後、デシケーターの中で冷却した。冷却後の乾燥樹脂を精秤し、乾燥前のラテックスの重量で除することで、ペースト用塩化ビニル樹脂ラテックスの固形分を計算した。
【0015】
このように作製したペースト用塩化ビニル系樹脂は、可塑剤に分散したプラスチゾルの状態で、塩化ビニル系樹脂が、可塑剤との親和性が高い(メタ)アクリル酸エステル系樹脂を介し、可塑剤吸収をはやめ、加熱した条件での樹脂間の融着も早まるため、均一シートを形成しやすくなり、加工温度の低下、加工速度の上昇が実現でき、従来よりも加工幅を広げることができるため好ましい。
【0016】
本発明で使用される(メタ)アクリル酸エステル系樹脂(A−1)としては特に制約はなく、(メタ)アクリル酸エステル系モノマーとしては、各種のものを用いることができる。ここで、例えば、「(メタ)アクリル酸」とは、メタクリル酸或いはアクリル酸を意味するものである。
例えば(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸−n−プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸−n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸−tert−ブチル、(メタ)アクリル酸−n−ペンチル、(メタ)アクリル酸−n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸−n−ヘプチル、(メタ)アクリル酸−n−オクチル、(メタ)アクリル酸−2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸トルイル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸−2−メトキシエチル、(メタ)アクリル酸−3−メトキシブチル、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸2−アミノエチル、γ−(メタクリロイルオキシプロピル)トリメトキシシラン、(メタ)アクリル酸のエチレンオキサイド付加物、(メタ)アクリル酸トリフルオロメチルメチル、(メタ)アクリル酸2−トリフルオロメチルエチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロエチルエチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロエチル−2−パーフルオロブチルエチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロエチル、(メタ)アクリル酸パーフルオロメチル、(メタ)アクリル酸ジパーフルオロメチルメチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロメチル−2−パーフルオロエチルメチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロヘキシルエチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロデシルエチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロヘキサデシルエチル等の(メタ)アクリル酸系モノマーである。
これらは単独で用いても良いし、2種以上を共重合させても構わない。2種以上のモノマーを共重合させる場合は、(メタ)アクリル酸エステルにスチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン、クロルスチレン、スチレンスルホン酸及びその塩等のスチレン系モノマー;パーフルオロエチレン、パーフルオロプロピレン、フッ化ビニリデン等のフッ素含有ビニルモノマー;ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン等のケイ素含有ビニル系モノマー;無水マレイン酸、マレイン酸、マレイン酸のモノアルキルエステル及びジアルキルエステル;フマル酸、フマル酸のモノアルキルエステル及びジアルキルエステル;マレイミド、メチルマレイミド、エチルマレイミド、プロピルマレイミド、ブチルマレイミド、ヘキシルマレイミド、オクチルマレイミド、ドデシルマレイミド、ステアリルマレイミド、フェニルマレイミド、シクロヘキシルマレイミド等のマレイミド系モノマー;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のニトリル基含有ビニル系モノマー;アクリルアミド、メタクリルアミド等のアミド基含有ビニル系モノマー;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ピバリン酸ビニル、安息香酸ビニル、桂皮酸ビニル等のビニルエステル類;エチレン、プロピレン等のアルケン類;ブタジエン、イソプレン等の共役ジエン類;塩化アリル、アリルアルコール等を共重合させてもよい。その場合、(メタ)アクリル酸エステル系樹脂共重合体全体に占める、(メタ)アクリル酸エステル系モノマーの重量比が40重量%以上含まれることが好ましい。特に好ましくは、(メタ)アクリル酸系エステル単独樹脂であり、整泡性に特に優れることから(メタ)アクリル酸ブチル樹脂が特に好ましい。
【0017】
(メタ)アクリル酸エステル系樹脂は、塩化ビニル系樹脂表面に一様に存在すればよいが、分子量分布が狭いほど整泡性に特に優れることから好ましい。このような観点から、マクロモノマーであることが好ましい。
【0018】
一般に、マクロモノマーとは、重合体の末端に反応性の官能基を有するオリゴマー分子である。本発明で使用される、二重結合を含有するエチレン性不飽和モノマーからなる重合体を主鎖に有するマクロモノマーは、反応性官能基として、アリル基、ビニルシリル基、ビニルエーテル基、ジシクロペンタジエニル基、下記一般式(1)から選ばれる重合性の炭素−炭素二重結合を有する基を、少なくとも1分子あたり1個、分子末端に有する、ラジカル重合によって製造されたものである。
特に、炭素−炭素二重結合を有する基が、下記一般式
−OC(O)C(R)=CH2 (1)
で表される基であることが好ましい。
【0019】
式中、Rの具体例としては特に限定されないが、例えば、−H、−CH3、−CH2CH3、−(CH2nCH3(nは2〜19の整数を表す)、−C65、−CH2OH、−CNの中から選ばれる基が好ましく、更に好ましくは−H、−CH3を用いることができる。
【0020】
また、本発明で使用されるマクロモノマーの主鎖である(メタ)アクリル酸エステル系樹脂は、ラジカル重合によって製造される。ラジカル重合法は、重合開始剤としてアゾ系化合物、過酸化物などを使用して、特定の官能基を有するモノマーとビニル系モノマーとを単に共重合させる「一般的なラジカル重合法」と、末端などの制御された位置に特定の官能基を導入することが可能な「制御ラジカル重合法」に分類できる。
【0021】
「一般的なラジカル重合法」は、特定の官能基を有するモノマーは確率的にしか重合体中に導入されないので、官能化率の高い重合体を得ようとした場合には、このモノマーをかなり大量に使用する必要がある。またフリーラジカル重合であるため、分子量分布が広く、粘度の低い重合体は得にくい。
【0022】
「制御ラジカル重合法」は、さらに、特定の官能基を有する連鎖移動剤を使用して重合を行うことにより末端に官能基を有するビニル系重合体が得られる「連鎖移動剤法」と、重合生長末端が停止反応などを起こさずに生長することによりほぼ設計どおりの分子量の重合体が得られる「リビングラジカル重合法」とに分類することができる。
【0023】
「連鎖移動剤法」は、官能化率の高い重合体を得ることが可能であるが、開始剤に対して特定の官能基を有する連鎖移動剤を必要とする。また上記の「一般的なラジカル重合法」と同様、フリーラジカル重合であるため分子量分布が広く、粘度の低い重合体は得にくい。
【0024】
これらの重合法とは異なり、「リビングラジカル重合法」は、本件出願人自身の発明に係る国際公開WO99/65963号公報に記載されるように、重合速度が大きく、ラジカル同士のカップリングなどによる停止反応が起こりやすいため制御の難しいとされるラジカル重合でありながら、停止反応が起こりにくく、分子量分布の狭い、例えば、重量平均分子量Mwと数平均分子量Mnの比(Mw/Mn)が1.1〜1.5程度の重合体が得られるとともに、モノマーと開始剤の仕込み比によって分子量は自由にコントロールすることができる。
【0025】
従って「リビングラジカル重合法」は、分子量分布が狭く、粘度が低い重合体を得ることができる上に、特定の官能基を有するモノマーを重合体のほぼ任意の位置に導入することができるため、本発明において、上記の如き特定の官能基を有するビニル系重合体の製造方法としてはより好ましい重合法である。
【0026】
「リビングラジカル重合法」の中でも、有機ハロゲン化物あるいはハロゲン化スルホニル化合物等を開始剤、遷移金属錯体を触媒としてビニル系モノマーを重合する「原子移動ラジカル重合法」(Atom Transfer Radical Polymerization:ATRP)は、上記の「リビングラジカル重合法」の特徴に加えて、官能基変換反応に比較的有利なハロゲン等を末端に有し、開始剤や触媒の設計の自由度が大きいことから、特定の官能基を有するビニル系重合体の製造方法としてはさらに好ましい。この原子移動ラジカル重合法としては例えばMatyjaszewskiら、ジャーナル・オブ・アメリカン・ケミカルソサエティー(J.Am.Chem.Soc.)1995年、117巻、5614頁等が挙げられる。
【0027】
本発明における(メタ)アクリル酸エステル系樹脂の製法として、これらのうちどの方法を使用するかは特に制約はないが、マクロモノマーの製法としては通常、制御ラジカル重合法が利用され、さらに制御の容易さなどからリビングラジカル重合法が好ましく用いられ、特に原子移動ラジカル重合法が最も好ましい。
【0028】
制御ラジカル重合法、詳しくはリビングラジカル重合で製造された(メタ)アクリル酸エステル系樹脂からなるマクロモノマーは、塩化ビニル系樹脂や可塑剤との相溶性も良好であるため、乾燥されたペースト用塩化ビニル系樹脂表面に存在することで、気泡安定性の効果を発現させやすいため好ましい。
【0029】
本発明の(メタ)アクリル酸エステル系樹脂の数平均分子量は特に限定されないが、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(以下GPCと略す)で測定した重量平均分子量が500〜100,000の範囲が好ましく、更に好ましくは、3,000〜40,000であり、最も好ましくは3,000〜20,000である。この範囲の(メタ)アクリル酸エステル系樹脂を用いると、(メタ)アクリル酸エステル系樹脂の粘度を低くすることができ、攪拌時の剪断の影響や溶剤、分散剤の影響も少なく、容易に混合することができ、塩化ビニル系樹脂ラテックスに混合した場合にも、塩化ビニル系樹脂表面近傍に一様に存在することができるため、気泡安定化の効果が得られやすく好ましい。本発明におけるGPC測定の際には、Waters社製GPCシステム(製品名510)を用い、クロロホルムを移動相として、昭和電工(株)製Shodex K−802.5及びK−804(ポリスチレンゲルカラム)を使用し室温環境下で測定した。
【0030】
本発明で使用される塩化ビニル樹脂(A−2)を構成する塩化ビニル系モノマーとしては特に限定はなく、例えば塩化ビニルモノマー、塩化ビニリデンモノマー、酢酸ビニルモノマーまたはこれらの混合物、または、この他にこれらと共重合可能で、好ましくは重合後の重合体主鎖に反応性官能基を有しないモノマー、例えばエチレン、プロピレンなどのα−オレフィン類から選ばれる1種または2種以上の混合物を用いてもよい。2種以上の混合物を使用する場合は、塩化ビニル系モノマー全体に占める塩化ビニルモノマーの含有率を50重量%以上、特に70重量%以上とすることが好ましく、中でも得られる共重合樹脂の発泡性が得られやすいことから90重量%以上とすることがさらに好ましい。
【0031】
本発明で使用される塩化ビニル樹脂(A−2)の平均重合度は本発明の効果を発現するものであれば特に制約はないが、JIS K 7367−2に従って測定した可溶分樹脂のK値として、55〜75の範囲であることが好ましい。この範囲のK値であれば、本発明のペースト用塩化ビニル系樹脂を使用した発泡成形体の表面平滑性、セル緻密性が良好となり好ましく、更にK値が58〜72の範囲であれば発泡倍率、メカニカルエンボス性が良好となり更に好ましい。
【0032】
本発明の塩化ビニル樹脂(A−2)の製造方法については、特に制約はないが、重合制御の簡便性、乾燥樹脂が粒子状粉体で得られ、良好なハンドリング性が得られやすいことから水性重合が好ましく、例えば、乳化重合法、懸濁重合法、微細懸濁重合法等の製造方法が挙げられる。更に好ましくは、粒子制御の簡便性、乾燥処理の簡便性より懸濁重合法、微細懸濁重合法で製造される。特に好ましくは、組成物の加工時の流動性が得られやすいため、微細懸濁重合法で製造される。
【0033】
本発明のペースト用塩化ビニル系樹脂組成物は、ペースト用塩化ビニル系樹脂(A)と、可塑剤(B)、発泡剤(C)を含有してなり、目的の発泡成形体の硬度に合わせて必要に応じて充填剤を配合することができる。更に必要に応じて、熱安定剤、滑剤、帯電防止剤、強化剤、改質剤、顔料等を配合することができる。
【0034】
本発明のペースト用塩化ビニル系樹脂組成物で使用できる可塑剤(B)としては特に制約はないが、例えば、ジ−2−エチルヘキシルフタレート(DOP),ジ−n−オクチルフタレート,ジイソノニルフタレート(DINP),ジブチルフタレート(DBP)等のフタル酸エステル系可塑剤;トリクレジルフォスフェート(TCP),トリキシリルホスフェート(TXP),トリフェニルフォスフェート(TPP)等のリン酸エステル系可塑剤;ジ−2−エチルヘキシルアジペート(DEHA),ジ−2−エチルヘキシルセバケート等の脂肪酸エステル系可塑剤、ポリアクリル酸ブチル、アクリル酸−n−ブチル/メタクリル酸メチル共重合体、アクリル酸−2−エチルヘキシル/メタクリル酸メチル共重合体、アクリル酸−2−エチルヘキシル/メタクリル酸メチル/メタクリル酸−n−ブチル共重合体等のポリアクリル系可塑剤等から選ばれる一種または二種以上の可塑剤が使用できる。
【0035】
可塑剤(B)の使用量としては、ペースト用塩化ビニル系樹脂(A)100重量部に対し、30〜200重量部の範囲で使用することが好ましい。発泡成形体の倍率、塩化ビニル系樹脂の重合度に合わせて適宜調整が可能であるが、40〜100重量部の範囲で使用されることが更に好ましく、発泡倍率とセルの緻密化に優れることから50〜80重量部の範囲で使用されることが最も好ましい。
【0036】
本発明のペースト用塩化ビニル系樹脂組成物に使用できる発泡剤(C)としては特に制約はないが、例えば、アゾジカルボンアミド、アゾビスイソブチルニトリル、ジアゾアミノベンゼン、ジエチルアゾジカルボキシレート、ジイソプロピルアゾジカルボキシレートなどのアゾ系発泡剤、N,N’−ジニトロペンタメチレンテトラミン、N,N’−ジメチル−N,N’−ジニトロテレフタルアミンなどのニトロソ系発泡剤、ベンゼンスルフォニルヒドラジド、p−トルエンスルフォニルヒドラジド、チオビス(ベンゼンスルフォニルヒドラジド)、などのヒドラジド系発泡剤、p−トルエンスルフォニルセミカルバジド、4,4’−オキシビズ(スルフォニルセミカルバジド)などのカルバジド系発泡剤、トリヒドラジノトリアジン、1,3−ビス(o−ビフェニルトリアジン)などのトリアジン系発泡剤などがあげられる。
【0037】
発泡剤(C)の使用量としては、用途や本発明の目的に合わせて特に制約なく適宜選択することができるが、通常ペースト用塩化ビニル系樹脂(A)100重量部に対し、0.1〜10重量部使用することが好ましい。より好ましくは、1〜10重量部の範囲で使用され、最も好ましくは3〜10重量部の使用範囲である。
【0038】
本発明のペースト用塩化ビニル系樹脂組成物に使用できる充填剤としては、特に制約はないが、例えば、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸リチウム、カオリングレー、石膏、マイカ、タルク、水酸化マグネシウム、珪酸カルシウム、硼砂等を挙げることができる。 充填剤の使用量としては、目的の発泡成形体の硬度に合わせて調整すればよいが、ペースト用塩化ビニル系樹脂(A)100重量部に対し、0〜500重量部使用することが好ましい。より好ましくは、0〜200重量部の範囲で使用され、最も好ましくは0〜100重量部の使用範囲である。
【0039】
ペースト用塩化ビニル系樹脂組成物の熱安定性を調整するために適宜熱安定剤を用いることができる。そのような熱安定剤としては、例えばジメチル錫メルカプト、ジブチル錫メルカプト、ジオクチル錫メルカプト、ジブチル錫マレート、ジブチル錫マレートポリマー、ジオクチル錫マレート、ジオクチル錫マレートポリマー、ジブチル錫ラウレート、ジブチル錫ラウレートポリマー等の有機錫安定剤;ステアリン酸鉛、二塩基性亜燐酸鉛、三塩基性硫酸鉛等の鉛系安定剤;カルシウム−亜鉛系安定剤;バリウム−亜鉛系安定剤;カドミウム−バリウム系安定剤等が挙げられ、これらは単独で用いても2種以上を併用しても良い。またその使用量も特に制約はないが、ペースト用塩化ビニル系樹脂(A)100重量部に対し0〜5重量部の範囲で使用されることが好ましい。
【0040】
さらに安定化助剤としては、特に限定されないが、例えばエポキシ化大豆油、エポキシ化アマニ油、エポキシ化テトラヒドロフタレート、エポキシ化ポリブタジエン、燐酸エステル等が挙げられ、これらは単独で用いても2種以上を併用しても良い。またその使用量も特に制約はない。
【0041】
本発明のペースト用塩化ビニル系樹脂組成物の製造方法には特に限定はなく、本発明の
ペースト用塩化ビニル系樹脂(A)と、必要に応じて用いられる各種添加剤(減粘剤、希釈剤、熱安定剤、安定化助剤、酸化防止剤、光安定剤、顔料等)を配合したものを、例えばディゾルバー等の混合機等を用いて、均一に混合するなどの方法で製造すれば良い。その際の配合順序等には特に限定はないが、例えばペースト用塩化ビニル系樹脂及び各種添加剤を一括して配合する方法、液状の添加剤を均一に配合する目的で先にペースト用塩化ビニル系樹脂及び粉粒体の各種添加剤を配合したのち液状添加剤を配合する方法等を用いることができる。
【0042】
本発明のペースト用塩化ビニル系樹脂組成物からなる発泡成形体は、気泡安定性に優れるため、セル緻密性が得られやすい。また、発泡前のセミキュアの状態から発泡成形体にかけて表面平滑性に優れるため、良好な印刷性が得られやすい。
【0043】
本発明のペースト用塩化ビニル系樹脂組成物からなる発泡成形体としては、特に限定はないが、例示すれば、合成レザー、壁材、床材、シート、ホース、玩具等があげられる。
【0044】
本発明のペースト用塩化ビニル系樹脂組成物からなる発泡成形体を成形加工する方法としては特に制限はなく、例えば、押出成形法、スラッシュ成形法、ペースト成形法、カレンダー成形法、ロール成形法等の方法で作製される。中でも好ましくは、発泡成形体を作製後、再度加熱して加工する際に発泡成形体のセルの安定性が必要である、スラッシュ成形法、ペースト成形法で作製されることであり、最も好ましくはペースト成形法で作製されることである。
【0045】
ペースト成形法で得られた発泡成形体は、広い加工条件で発泡成形体のセル緻密性が良好であるとともに、セルの独立気泡率が低くなりやすいため、メカニカルエンボス等の加熱型押し時にセル内の空気の移動が容易となり、セル内の空気が表面に突出し鱗片状のシワができる(パンク)ことがなく、柄のシャープ性が得られやすくなる。
【実施例】
【0046】
次に本発明を実施例に基づいて詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。ここで特に断りのない限り、実施例中の「部」は「重量部」を意味する。
【0047】
以下に記載するベース樹脂とは、本発明のペースト用塩化ビニル系樹脂(A)(実施例)または、塩化ビニル樹脂(比較例)を示す。
【0048】
(配合)
ベース樹脂 100部
可塑剤(DOP) 50部 (ジェイプラス社製)
充填剤(炭酸カルシウム) 100部 (BF−200S;備北粉化社製)
発泡剤(アゾジカーボンアミド) 4.5部 (AC−3C#2;永和化成社製)
安定剤(Zn−Ba系液状安定剤) 3部 (FL−103N;旭電化工業社製)
酸化チタン 20部 (JR−600A;テイカ社製)
減粘剤 12部 (シェルゾールS;シェルケミカル社製)
(プラスチゾル作製条件)
ベース樹脂100gとした上記配合物を、500mlSUS製ビーカーに採取し、ディゾルバー型混練機(ROBO MICS/TOKUSHU KIKA社製、ディゾルバー翼5cm径)にて、1000rpm、3minの攪拌を行い、プラスチゾルを得た。
【0049】
(発泡成形体作製条件)
普通紙(紀州製紙社製)上に隙間ゲージでコンマ型ドクターブレードの間隙を420μmに調整し、得られたプラスチゾルを約6m/minの速度で赤外線加熱炉中(炉内140℃、ダンパー全閉、赤外線パネル7.2KW、高さ25cm、約20sec)を通すことにより、セミキュアした原反を得た。普通紙の厚みを除いた原反の厚みは約300μmであった。
【0050】
セミキュアした原反を30cm×15cmに切断し、190〜240℃の温度に加熱した熱風式オーブン(PHH−100;タバイ社製)中に入れ、20〜300secの加熱時間後、取り出すことで発泡成形体(1次発泡成形体)を得た。
【0051】
1次発泡成形体を再度、赤外線加熱炉(4〜10sec、発泡成形体表面温度200℃)を通した後、速やかにエンボスロール(タイル調模様、クリアランス150μm)で型押しし、発泡成形体(エンボスシート)を得た。
【0052】
(評価条件)
1.発泡倍率
1次発泡成形体を4cm×2.5cm×12枚に切り取り、12枚を重ねた厚みをノギスで測定し、紙の厚みを差し引いて、発泡成形体の厚みとし、1枚あたりの厚みを計算し、セミキュアした原反の厚みで割ることで、発泡倍率を計算した。
1次発泡成形体の到達発泡倍率は、約7.0倍であり、熱風式オーブンの各条件で倍率が到達していない、または加熱温度が高い評価条件で発泡成形体内部のセルが保持できずに倍率が低下している(ヘタリ)状態は好ましくない。
【0053】
2.独立気泡率
1次発泡成形体を4cm×2.5cm×12枚に切り取り、12枚を重ねたものをエアーピクノメーター(Beckmann社製)にて測定した。
1次発泡成形体のセル緻密性が良好であり、独立気泡率の値が低い方(0〜50%が好ましい)がメカニカルエンボス時にパンク性、シャープ性が良好であり好ましい。
【0054】
3.セル緻密性
1次発泡成形体切断片を12枚重ねて、切断面を実体顕微鏡で観察し、セル緻密性を下記項目により目視評価した。
○ ;セルが細かく緻密で均一に揃っている。
△ ;セルがやや大きく、不均一である。
× ;セルが大きく、発泡成形体厚み方向のセルの層が少ない。
ヘタリ;厚みが得られず、セルが潰れている。
【0055】
4.白度
1次発泡成形体表面の白度を色差計(Z−1001DP;日本電色社製)にて、b値の測定を行った。アゾジカーボンアミド系の発泡剤を使用する場合、発泡剤残渣が黄色味を帯び、また加熱変色による色差変化でもb値が高くなるため、b値が低い程、白度が高いと評価した。
【0056】
5.表面平滑性
1次発泡成形表面の平滑性を光沢計(デジタル変角光沢計(60°反射);UGV−5D;スガ試験機社製)にて測定した。平滑性が高いほど値が高くなる。
【0057】
6.エンボス性
エンボスシートの型模様のエッジのシャープさ(シャープ性)、表面または裏側への鱗片状シワの有無(パンク性)を下記基準にて目視評価した。
シャープ性; パンク性;
○;浅型の模様まで再現 ○;鱗片状のシワが見られない
△;深型の模様は再現されている △;小さいシワ、断続的なシワが見られる
×;型模様がハッキリしない ×;大きいシワ、連続的なシワが見られる
7.表面剥離性試験
エンボスシートの同模様の箇所に、セロハン粘着テープ(C252;積水化学社製)約5cmを貼り、貼付面全体を親指の腹で強く押した後、すばやくテープを剥がし、テープ粘着面に取られる、エンボスシート表面にて、下記基準にて目視評価した。
【0058】
○;テープに全くついていない。(シート面の0〜10%が粘着面にとられている)
△;テープにエンボスシートの一部がついている。
【0059】
(シート面の10%〜50%が粘着面にとられている)
×;テープにエンボスシート前面がついている。
【0060】
(シート面の50%以上が粘着面にとられている)
<(メタ)アクリル酸エステル系樹脂の作製方法>
(製造例1)片末端アクリロイル基アクリル酸−n−ブチルの製造
還流管および攪拌機付きの2Lのセパラブルフラスコに、CuBr(5.54g)を仕込み、反応容器内を窒素置換した。アセトニトリル(73.8ml)を加え、オイルバス中70℃で30分間攪拌した。これにアクリル酸ブチルモノマー(132g)、2−ブロモプロピオン酸メチル(7.2ml)、ペンタメチルジエチレントリアミン(4.69ml)を加え、反応を開始した。70℃で加熱攪拌しながら、アクリル酸ブチルモノマー(528g)を90分かけて連続的に滴下し、更に80分間加熱攪拌した。
【0061】
反応混合物をトルエンで希釈し、活性アルミナカラムを通した後、揮発分を減圧留去することにより、片末端Br基ポリアクリル酸ブチルを得た。
【0062】
フラスコに、メタノール(800ml)を仕込み、0℃に冷却した。そこへ、t−ブトキシカリウム(130g)を数回に分けて加えた。この反応溶液を0℃に保持して、アクリル酸(100g)のメタノール溶液を滴下した。滴下終了後、反応液の温度を0℃から室温に戻したのち、反応液の揮発分を減圧留去することにより、アクリル酸カリウム(CH2=CHCO2K)を得た。
【0063】
還流管付き500mLフラスコに、得られた片末端Br基ポリアクリル酸ブチル(150g)、アクリル酸カリウム(7.45g)、ジメチルアセトアミド(150ml)を仕込み、70℃で3時間加熱攪拌した。反応混合物よりジメチルアセトアミドを留去し、トルエンに溶解させ、活性アルミナカラムを通した後、トルエンを留去することにより片末端アクリロイル基ポリアクリル酸ブチルマクロモノマーを得た。尚、数平均分子量は12000、分子量分布は1.11であった。
【0064】
(製造例2)溶液重合法によるポリ(アクリル酸−n−ブチル)の製造
還流管、攪拌機及びジャケットを備えた2Lセパラブルフラスコに、アクリル酸−n−ブチル100部、イソプロピルアルコール 100部、ベンゾイルパーオキサイド0.6部、ラウリルパーオキサイド5.1部を仕込み、反応容器内を窒素置換した。次いで攪拌しながらジャケットに温水を通じて反応容器内温を70℃まで昇温し反応を開始した。8時間後内温を75℃まで昇温し5時間攪拌を継続した。反応開始から13時間経過したところで反応を終了させ、ポリ(アクリル酸−n−ブチル)のイソプロピルアルコール溶液を得た。このポリ(アクリル酸−n−ブチル)のイソプロピルアルコール溶液の粘度を低下させるためにイソプロピルアルコールを加え、樹脂濃度 30%のポリ(アクリル酸−n−ブチル)のイソプロピルアルコール溶液を得た。尚、数平均分子量は20,000であった。
【0065】
<ペースト用塩化ビニル系樹脂の作製方法>
(実施例1)
十分に脱気、窒素置換した30L耐圧容器に、α,α’−アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル 1.6g、クミルパーオキシネオデカノエート 0.8g、ステアリルアルコール77gとドデシルベンゼンスルフォン酸ナトリウム80gを予め溶解、分散した水溶液(3kg)を容器内に添加し、塩化ビニルモノマー10kgを仕込み、30min間攪拌後、純水17kgを仕込み、30min間ホモジナイズして、モノマー分散液を得た。容器内を60℃に保温して重合を開始し、約5時間後に塩化ビニルモノマーの転化率が80%以上になったことから、重合機内の塩化ビニルモノマーを回収し、容器内を冷却した後、ラテックスを払い出した。ラテックス中の固形分樹脂重量比を測定したところ、33%であった。塩化ビニル樹脂94重量%、製造例1の片末端アクリロイル基含有ポリアクリル酸ブチルマクロモノマー6重量%になるように、片末端アクリロイル基含有ポリアクリル酸ブチルマクロモノマーを40℃に加温し、水1kgに添加しホモジナイザーで分散させたうえラテックスに混合した。このラテックスを2流体ノズル式スプレー乾燥機(入口110℃/出口50℃)で乾燥し、パウダー状のペースト用塩化ビニル系樹脂(K値59)を得た。
この樹脂を用いて、前述のプラスチゾル作製条件、評価条件、及び表1の条件(以下、これら3条件をまとめて、「所定条件」と略す)下で発泡成形体を作製し、各種評価を行った。結果を表1に示す。
【0066】
(実施例2)
実施例1の片末端アクリロイル基ポリアクリル酸ブチルマクロモノマーの添加量を塩化ビニル樹脂99.9%に対し0.1%混合することを変更した以外は実施例1と同様にラテックスを作製し、2流体ノズル式スプレー乾燥機(入口110℃/出口50℃)で乾燥し、パウダー状のペースト用塩化ビニル系樹脂(K値59)を得た。この樹脂を用いて、所定条件下で発泡成形体を作製し、各種評価を行った。結果を表1に示す。
【0067】
(実施例3)
実施例1の片末端アクリロイル基含有ポリアクリル酸ブチルマクロモノマーを、製造例
2のポリアクリル酸ブチルのイソプロピルアルコール溶液に変更した以外は実施例1と同様にラテックスを作製した。このラテックスを2流体ノズル式スプレー乾燥機(入口110℃/出口50℃)で乾燥し、パウダー状のペースト用塩化ビニル系樹脂(K値59)を得た。この樹脂を用いて、所定条件下で発泡成形体を作製し、各種評価を行った。結果を表1に示す。
【0068】
(実施例4)
実施例1の塩化ビニル樹脂ラテックスの製造を、塩化ビニルモノマー9.4kgに、α,α’−アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリルを3gに、クミルパーオキシネオデカノエートをt−ブチルパーオキシネオデカノエート1.5gに、ドデシルベンゼンスルフォン酸ナトリウム80gをラウリル硫酸ナトリウム75gに変更したこと以外には実施例1と同様にモノマー分散液を作製し、容器内を50℃に保温して重合を開始した後、約8時間後に塩化ビニルモノマーの転化率が80%以上になったことから、重合機内の塩化ビニルモノマーを回収し、容器内を冷却した後、ラテックスを払い出した。このラテックスに塩化ビニル樹脂94%、製造例1の片末端アクリロイル基ポリアクリル酸ブチルマクロモノマー6%になるように、2流体ノズル式スプレー乾燥機(入口110℃/出口50℃)でラテックスを乾燥し、パウダー状の塩化ビニル系重合樹脂(K値72)を得た。
この樹脂を用いて、所定条件下で発泡成形体を作製し、各種評価を行った。結果を表1に示す。
【0069】
(比較例1)
実施例の塩化ビニル樹脂ラテックスをそのまま2流体ノズル式スプレー乾燥機(入口110℃/出口50℃)で乾燥し、パウダー状の塩化ビニル樹脂(K値59)を得た。
この樹脂を用いて、所定条件下で発泡成形体を作製し、各種評価を行った。結果を表1に示す。
1次発泡成形体の発泡倍率は良好であるが、独立気泡率が高く、メカニカルエンボス時のシャープ性、パンク性が低下し好ましくない。
【0070】
(比較例2)
比較例1のパウダー状の塩化ビニル樹脂97gに対し製造例1の片末端アクリロイル基ポリアクリル酸ブチル3gとなるように30%イソプロピルアルコール溶液として配合添加し、所定条件下で発泡成形体を作製し、各種評価を行った。結果を表1に示す。
1次発泡成形体の発泡倍率は良好であるが、独立気泡率が高く、メカニカルエンボス時のシャープ性、パンク性が低下し好ましくない。
【0071】
(比較例3)
実施例1のα,α’−アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリルを2.4gに、クミルパーオキシネオデカノエートを24gに、ドデシルベンゼンスルフォン酸ナトリウム80gをラウリル硫酸ナトリウム75gに変更したこと以外は実施例1と同様にモノマー分散液を作製し、容器内を33℃に保温して重合を開始した後、約10時間に塩化ビニルモノマーの転化率が80%以上になったことから、重合機内の塩化ビニルモノマーを回収し、容器内を冷却した後、ラテックスを払い出した。ラテックス中の固形分樹脂重量比を測定したところ30%であった。塩化ビニル樹脂94重量%、製造例1の片末端アクリロイル基含有ポリアクリル酸ブチルマクロモノマーを6重量%になるように、片末端アクリロイル基含有ポリアクリル酸ブチルマクロモノマーを40℃に加温し、水1kgに添加しホモジナイザーで分散させたうえラテックスに混合した。2流体ノズル式スプレー乾燥機(入口110℃/出口50℃)でラテックスを乾燥し、パウダー状の塩化ビニル系共重合樹脂(K値80)を得た。
この樹脂を用いて、所定条件下で発泡成形体を作製し、各種評価を行った。結果を表1に示す。
1次発泡成形体の発泡倍率は良好であるが、独立気泡率が高く、メカニカルエンボス時のシャープ性、パンク性が低下し好ましくない。
【0072】
(比較例4)
実施例1の片末端アクリロイル基ポリアクリル酸ブチルマクロモノマーの添加量を塩化ビニル樹脂80%に対し20%混合することを変更した以外は実施例1と同様にラテックスを作製し、2流体ノズル式スプレー乾燥機(入口110℃/出口50℃)でラテックスを乾燥し、パウダー状の塩化ビニル系共重合樹脂(K値59)を得た。この樹脂を用いて、所定条件下で発泡成形体を作製し、各種評価を行った。結果を表1に示す。
1次発泡成形体の発泡温度(220℃、40sec)では、ヘタリにより発泡倍率が低下し、エンボス成形を行うことができず(ND)、好ましくない。
【0073】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂ラテックス状態の(A−2)塩化ビニル樹脂に、(A−1)(メタ)アクリルエステル系樹脂を混合することを特徴とする(A)ペースト用塩化ビニル系樹脂の製造方法。
【請求項2】
(A−1)(メタ)アクリル酸エステル系樹脂が0.1〜10重量%であり、(A−2)がJIS K7367−2によるK値55〜75である塩化ビニル樹脂90〜99.9重量%である、ことを特徴とする請求項1記載のペースト用塩化ビニル系樹脂の製造方法。
【請求項3】
(A−1)(メタ)アクリル酸エステル系樹脂が、1分子あたり少なくとも1個、下記一般式:
−OC(O)C(R)=CH2 (1)
(式中、Rは水素、又は、炭素数1〜20の有機基を表す。)
を含む、マクロモノマーであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のペースト用塩化ビニル系樹脂の製造方法。
【請求項4】
請求項1〜3の何れかに記載の製造方法で作製したペースト用塩化ビニル系樹脂(A)100重量部と、(B)可塑剤30〜200重量部、(C)発泡剤0.1〜10重量部、を含有するペースト用塩化ビニル系樹脂組成物。
【請求項5】
請求項4に記載のペースト用塩化ビニル系樹脂組成物から得られる発泡成形体。

【公開番号】特開2006−45253(P2006−45253A)
【公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−223739(P2004−223739)
【出願日】平成16年7月30日(2004.7.30)
【出願人】(000000941)株式会社カネカ (3,932)
【Fターム(参考)】