説明

ホウ素を含有する高分子化合物およびこれを用いた有機発光素子

【課題】高発光効率で低電圧駆動が可能な、大面積化、量産化に適した、高分子材料およびこれを用いた有機発光素子を提供する。
【解決手段】式(1)


〔式中、Aはフェニル基が置換されていてもよいトリフェニルホウ素基、R16は、水素原子、または炭素数1〜12のアルキル基を表わす。Xは、単結合、−O−、−S−、−SO−、−SO2−、またはヘテロ原子を有してもよい炭素数1〜20の2価の炭化水素基を表わす。〕で示されるホウ素を含有するモノマー単位と、発光性モノマー単位を含む高分子化合物、前記ホウ素を含有するモノマー単位を含む高分子化合物と発光性化合物を含有する発光性組成物、及び前記発光性組成物を用いた有機発光素子。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、平面表示パネル等に用いられるバックライト用の有機発光素子(OLED)に関する。さらに詳しくいえば、有機発光素子の発光層にも用いられるホウ素を含有する高分子化合物及びその高分子化合物を用いた有機発光素子に関する。
【背景技術】
【0002】
有機発光素子は、1987年にコダック社のタン(C.W.Tang)らにより高輝度の発光が示されて以来、材料開発、素子構造の改良が急速に進み、最近になってカーオーディオや携帯電話用のディスプレイなどから実用化が始まった。この有機EL(エレクトロルミネッセンス)素子の用途を更に拡大するために、発光効率向上、耐久性向上のための材料開発、フルカラー表示の開発などが現在活発に行われている。特に、中型パネルや大型パネル、あるいは照明用途への展開を考える上では発光効率の向上による更なる高輝度化が必要である。しかし、現在の発光性材料で利用されているのは励起一重項状態からの発光、すなわち蛍光であり、電気的励起における励起一重項状態と励起三重項状態の励起子の生成比が1:3であることから、有機ELにおける発光の内部量子効率は25%(外部取り出し効率を20%とすると外部量子効率5%に相当する)が上限とされてきた。
【0003】
これに対し、バルド(M.A.Baldo)らは室温で励起三重項状態から燐光発光するイリジウム錯体等を用いることにより外部量子効率7.5%(外部取り出し効率を20%と仮定すると内部量子効率は37.5%に相当する)を得、従来上限値とされてきた外部量子効率5%という値を上回ることが可能なことを示した。更に、ホスト材料や素子構成を工夫することにより20%近い高効率も達成されており(アプライド・フィジックス・レタース,90巻,5048頁,2001年;非特許文献1)、超高効率化の方法として注目されている。
【0004】
しかし、この燐光発光性のイリジウム錯体は低分子化合物であり、真空蒸着法により成膜される。この真空蒸着法は現在低分子系の発光性材料に対して広く用いられている成膜方法ではあるが、真空設備を必要とする点、大面積になるほど有機薄膜を均一の厚さに成膜することが困難になる点、及び高精細のパターンを形成することが困難になる点などの問題点を有しており、必ずしも大面積パネルの量産に適した方法とは言えない。
【0005】
これに対し、大面積化、量産化に適した素子作製方法としては、高分子系発光性材料をスピンコート法、インクジェット法、印刷法などにより成膜する方法が開発されている。これらの方法は蛍光発光性高分子材料では広く行われている方法であるが、燐光発光性高分子材料についても開発が行われており、側鎖に燐光発光部位とキャリア輸送部位を有する燐光発光性高分子材料を用い、5%を越える外部量子効率が得られることが報告されている(Proceedings of The 11th International Workshop on Inorganic and Organic Electroluminescence(EL2002),p.283-286,2002;非特許文献2)。
【0006】
しかし、上記の燐光発光性高分子材料は、いまだに、外部量子効率は蛍光発光の限界である5%を僅かに越えた6%程度に留まっており、本来燐光発光に期待される高い外部量子効率は得られていない。
【0007】
一方でパイ電子系有機化合物を光機能材料や電子機能材料に応用しようとする試みが多くの研究機関で行われており、その内容は多種多彩である。中でもホウ素原子を分子内に含むホウ素化合物は、ホウ素原子の空のp軌道の存在によって、特異な光学、電子物性が発現されると予想されている。
しかしながら一般にホウ素化合物は空気や水に不安定であるという欠点を有しているため、材料としての使用には不向きであった。このような問題に対し、最近、ホウ素化合物をかさ高い構造にすると空気や水に対し安定になるといった報告がされたこともあり(例えばジャーナル・オブ・アメリカン・ケミカル・ソサエティー,120巻,10776頁、1998年;非特許文献3)、非線形光学材料や有機EL材料等に応用できる可能性が広がった。しかし、報告の内容が溶液状態の蛍光物性にとどまるなど、かさ高い構造をもつホウ素化合物を実質的な用途に用いるには、十分な研究が行われていないのが現状である。特に有機EL材料に応用することが熱望されており、この種の研究が盛んに行われているが、いまだ十分な性能発現には至っていない。
有機EL素子は基本的には2つの電極に電荷輸送層または/及び発光性材料となる有機化合物を挟んだ構造からなる、低消費電力で高効率な有機EL素子であることが望ましく、そのためには発光効率の高い材料となる有機化合物を用いる必要がある。
【0008】
複素環を含むホウ素化合物を電荷輸送剤に用いる論文(ジャーナル・オブ・アメリカン・ケミカル・ソサエティー,120巻,9714頁,1998年;非特許文献4)はあるものの、ホウ素化合物の発光特性および該ホウ素化合物の発光性材料としての適性には全くふれられてはいない。
わずかにホウ素化合物を用いない素子に比べホウ素化合物を用いた素子では、同輝度における電流密度が低いので、発光効率が向上していることを意味するという報告がなされているに過ぎない。また該ホウ素化合物は低分子であり、前述のように、真空蒸着等の製膜法が必要となり、必ずしも大面積パネルの量産に適した方法とは言えない。また、WO00/40586号パンフレット(特許文献1)においてもホウ素化合物を有機ELに利用した例が示されている。しかし、ここで用いられているホウ素化合物も低分子であり、効率が低く、上記論文と同様の問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】国際公開第00/40586号パンフレット
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】アプライド・フィジックス・レタース,90巻,5048頁,2001年
【非特許文献2】Proceedings of The 11th International Workshop on Inorganic and Organic Electroluminescence(EL2002),p.283-286,2002
【非特許文献3】ジャーナル・オブ・アメリカン・ケミカル・ソサエティー,120巻,10776 頁、1998年
【非特許文献4】ジャーナル・オブ・アメリカン・ケミカル・ソサエティー,120巻,9714頁,1998年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
現在までに、大面積化、量産化に適した高効率発光性の高分子材料が開発されてはいるが、十分な高発光効率で低電圧駆動が可能な発光性材料およびこれを用いた有機発光素子はまだ得られていない。
従って、本発明の課題は、低電圧で高発光効率が得られ、大面積化および量産化に適した高分子材料およびこれを用いた有機発光素子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、これまで高分子材料に用いられている電子輸送部位がオキサジアゾール構造であるため、駆動電圧が高く、電力効率が低いと考え、種々検討した結果、電子輸送部位として特定のトリアリールホウ素構造をもつ高分子材料を用いることにより、駆動電圧が低下し、外部量子効率が向上することを見出し、本発明を完成するに至った。
【発明の効果】
【0013】
本発明の高分子化合物を用いることにより、低電圧で高発光効率が得られ、大面積化および量産化に適した発光性高分子材料およびこれを用いた有機発光素子を提供することが可能となる。
【0014】
すなわち、本発明は、以下の有機発光素子に関する。
1.式(1)
【化1】

〔式中、Aはフェニル基が置換されていてもよいトリフェニルホウ素基、R16は、水素原子、または炭素数1〜12のアルキル基を表わす。Xは、単結合、−O−、−S−、−SO−、−SO2−、またはヘテロ原子を有してもよい炭素数1〜20の2価の炭化水素基を表わす。〕
で示されるモノマー単位を含むことを特徴とする高分子化合物。
2.式(2)
【化2】

〔式中、R16およびXは前記1の記載と同じ意味を表わし、R1〜R15は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、アミノ基、炭素数1〜12の炭化水素アルキル基、または炭素数1〜12のアルコキシ基、アリールオキシ基、芳香族基、ヘテロ環基を表わす。また、R1 〜R15のうち、同一のフェニル基上に隣接して付いているものは結合して縮合環を形成してもよい。〕
で示されるモノマー単位を含むことを特徴とする前記1に記載の高分子化合物。
3.式(2)で表わされるモノマー単位において、R1、R4、R5、R9、R10、R13のうち少なくとも4つがC1〜C6のアルキル基またはアルコキシ基である(但しR1、R4はホウ素の置換位置に対してオルト位である。)前記2に記載の高分子化合物。
4.式(3)
【化3】

〔式中、R2、R3、R6〜R8及びR11、R12、R15、R16は前記2の記載と同じ意味を表わす。〕
で示されるモノマー単位を含む前記2または3記載の高分子化合物。
5.式(4)
【化4】

〔式中、R1〜R6、R8〜R13およびR16は前記2の記載と同じ意味を表わし、R17〜R26は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、アミノ基、炭素数1〜12の炭化水素アルキル基、または炭素数1〜12のアルコキシ基、アリールオキシ基、芳香族基、ヘテロ環基を表わす。また、R17 〜R26のうち、同一のフェニル基上に隣接して付いているものは結合して縮合環を形成してもよい。〕
で示されるモノマー単位を含む前記2または3記載の高分子化合物。
6.前記2に記載の式(2)で示されるモノマー単位と、発光性モノマー単位を含む発光性高分子化合物である前記2乃至5に記載の高分子化合物。
7.発光性モノマー単位の発光が燐光発光である前記6に記載の発光性高分子化合物。
8.発光性モノマー単位が遷移金属錯体を含む前記7に記載の発光性高分子化合物。
9.前記発光性モノマー単位が原子番号39〜48、72〜80から選ばれる金属を含む前記8に記載の発光性高分子化合物。
10.発光性高分子化合物がホール輸送性モノマー単位を含む前記2乃至9のいずれか1項に記載の発光性高分子化合物。
11.前記2記載の式(2)で示されるモノマー単位を含む高分子化合物と発光性化合物を含有することを特徴とする発光性組成物。
12.前記発光性化合物が低分子化合物及び/または高分子化合物である前記11記載の発光性組成物。
13.陽極と陰極に挟まれた一つまたは複数の高分子層を含む有機発光素子において、高分子層の少なくとも一層が前記6乃至9のいずれか1項に記載の発光性高分子化合物を含む有機発光素子。
14.陽極と陰極に挟まれた一つまたは複数の高分子層を含む有機発光素子において、高分子層の少なくとも一層が前記11または12に記載の発光性組成物を含む有機発光素子。
15.前記13または14に記載の有機発光素子を用いた、面発光光源、表示装置用バックライト、表示装置、照明装置、インテリア、またはエクステリア。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の有機発光素子例の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について具体的に説明する。
本発明は高分子化合物に、少なくとも、式(1)で示されるホウ素を含有するモノマー単位を含む。
【0017】
【化5】

式中、Aはフェニル基が置換されていてもよいトリフェニルホウ素基、R16は、水素原子、または炭素数1〜12のアルキル基を表わす。Xは、単結合、−O−、−S−、−SO−、−SO2−、またはヘテロ原子を有してもよい炭素数1〜20の2価の炭化水素基を表わす。
式(1)で示されるホウ素を含有するモノマー単位は、具体的には下記式(2)で示される。
【0018】
【化6】

式中、R16およびXは前記と同じ意味を表わし、R1〜R15は、それぞれ独立して水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、アミノ基、炭素数1〜12の炭化水素アルキル基、または炭素数1〜12のアルコキシ基、アリールオキシ基、芳香族基、ヘテロ環基を表わす。また、R1〜R15のうち、同一のフェニル基上に隣接して付いているものは結合して縮合環を形成してもよい。
【0019】
式(2)で示されるモノマー単位はトリアリールホウ素構造の部分、炭素−炭素二重結合に由来する重合鎖を形成する部分、およびこれらを結合する連結基Xとから構成される。トリアリールホウ素構造は電子移動度が高いため、低電圧駆動が可能となり、高い外部量子効率を得ることが可能となる。すなわち、式(2)で示されるモノマー単位は電子輸送性部位として働く。
【0020】
式(2)におけるR1〜R15としては、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、アミノ基、炭素数1〜12の炭化水素アルキル基、または炭素数1〜12のアルコキシ基、アリールオキシ基、芳香族基、ヘテロ環基を挙げることができる。R1〜R15に用いられるハロゲン原子としては、フッ素、塩素、臭素、およびヨウ素を挙げることができる。R1〜R15に用いられる炭素数1〜12の炭化水素アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、アミル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基等を挙げることができる。R1〜R15に用いられる炭素数1〜12のアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、イソブトキシ基、t−ブトキシ基、ヘキシルオキシ基、オクチルオキシ基、デシルオキシ基、ドデシルオキシ基等を挙げることができる。R1〜R15に用いられるアリールオキシ基としては、フェノキシ基、4−メチルフェノキシ基、ナフチルオキシ基、アンスラニルオキシ基等を挙げることができる。R1〜R15に用いられる芳香族としては、フェニル基、ビフェニル基、テルフェニル基、トリル基、キシリル基、メシチル基、ナフチル基、アンスリル基、フェナンスリル基などを挙げることができる。R1〜R15に用いられるヘテロ環基としては、ピリジル基、ピロール基、フラニル基、チオフェン基、ピラゾール基、イミダゾール基、トリアゾール基、テトラゾール基、オキサゾール基、オキサジアゾール基、チアゾール基、チアジアゾール基、インドール基、カルバゾール基、ベンゾフラニル基、ベンゾチオフェン基、ベンゾイミダゾール基、ベンゾトリアゾール基、ベンゾオキサゾール基、ベンゾチアゾール基、ベンゾジチアゾール基、フリル基などを挙げることができる。また、R1〜R15のうち、同一のフェニル基上に隣接して付いているものは結合して縮合環を形成してもよい。
【0021】
ホウ素化合物を空気や水に安定にさせる場合、芳香環のオルト位は置換基を有している方が好ましい。また4位は置換基を有している方が望ましい。
【0022】
式(2)におけるR16としては、水素原子、または炭素数1〜12のアルキル基を挙げることができる。R16に用いられる炭素数1〜12のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、アミル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基等を挙げることができる。
【0023】
式(2)におけるトリアリールホウ素構造の好ましい具体例としては、下記式(A−1)から式(A−15)に示すような構造を挙げることができる。
【0024】
【化7】

【0025】
式(2)における連結基Xとしては、単結合、−O−、−S−、−SO−、またはヘテロ原子を有してもよい炭素数1〜20の2価の有機基を挙げることができる。連結基Xに用いられる炭素数1〜20の2価の有機基としては、下記式(S−1)から式(S−15)に示すような構造のものを挙げることができる。
【0026】
【化8】

【0027】
ここで、R27、R28およびR29は、それぞれ独立してメチレン基または置換もしくは未置換のフェニレン基を示す。k、mおよびnはそれぞれ独立に0,1または2である。但し、式(S−3)、式(S−7)および式(S−8)においては、mとnが同時に0となることはない。
【0028】
式(2)におけるトリアリールホウ素構造の好ましい具体例としては、下記式(B−1)から(B−23)に示すような構造を挙げることができる。これらの中でも特に好ましいのは式(B―4)、(B−6)、(B−19)、(B−21)、(B−22)、(B−23)で示されるものである。
【0029】
【化9】

【0030】
【化10】

【0031】
本発明の高分子化合物において、式(2)で表わされるモノマー単位の繰り返し数をt、他のモノマー単位の繰り返し数をuとした場合、全体のモノマー単位の繰り返し数に対する本発明の式(2)で表わされるモノマーの繰り返し割合、すなわちt/(t+u)は望ましくは0.01以上かつ1.00以下である。また、更に望ましくは0.1以上かつ0.9以下である。
【0032】
本発明の高分子化合物は発光性モノマー単位を含んでも良い。この場合の発光性モノマー単位は、発光部位、炭素−炭素二重結合に由来する重合鎖を形成する部分、およびこれらを結合する連結基とから構成される。ここで、発光は蛍光、燐光いずれでもよいが、好ましくは燐光である。
【0033】
発光性モノマー単位における蛍光発光性部位としては、室温で蛍光を発光する化合物を用いることができる。発光性部位としては、例えば応用物理,第70巻,第12号,1419頁,2001年記載の化合物を用いることができる。
【0034】
発光性モノマー単位における燐光発光性部位としては、室温で燐光を発光する化合物を用いることができるが、遷移金属錯体が好ましい。上記の遷移金属錯体に使用される遷移金属は、周期律表の第一遷移元素系列すなわち原子番号21のScから30のZnまで、第二遷移元素系列すなわち原子番号39のYから48のCdまで、第三遷移元素系列すなわち原子番号72のHfから80のHgまでを含む。これらの遷移金属の中で、Pd、Os、Ir、PtおよびAuが好ましく、さらにIrおよびPtが好ましく、さらにもっとも好ましいのはIrである。
【0035】
また、上記の遷移金属錯体の配位子としては、ウィルキンソン(G.Wilkinson)編,Comprehensive Coordination Chemistry(Plenum Press,1987)、山本明夫「有機金属化学−基礎と応用−」(裳華房、1982)に記載の配位子などを使用することができる。中でも、ハロゲン配位子、含窒素ヘテロ環配位子(フェニルピリジン系配位子、ベンゾチエニルピリジン系配位子、ベンゾキノリン系配位子、キノリノール系配位子、ビピリジル系配位子、ターピリジン系配位子、フェナントロリン系配位子等)、ジケトン配位子(アセチルアセトン配位子、ジピバロイルメタン配位子等)、カルボン酸配位子(酢酸配位子等)、リン配位子(トリフェニルホスフィン系配位子等、亜リン酸エステル系配位子等)、一酸化炭素配位子、イソニトリル配位子、およびシアノ配位子が好ましい。
【0036】
上記の遷移金属錯体の配位子の特に好ましい具体例としては、下記式(L−1)から(L−13)に示す構造のものを挙げることができる。
【化11】

【0037】
また、1つの遷移金属錯体に複数種類の配位子を含んでいてもよい。更に、上記の遷移金属錯体として二核錯体あるいは多核錯体を使用することもできる。
【0038】
発光性モノマー単位における連結基は、上記遷移金属錯体と、炭素―炭素二重結合に由来する重合鎖を結合する部分である。この連結基としては、単結合、−O−、−S−、−SO−、−SO2−、またはヘテロ原子を有してもよい炭素数1〜20の2価の炭化水素基を挙げることができる。連結基に用いられる炭素数1〜20の2価の炭化水素基としては、前記式(2)における連結基Xの場合と同じ式(S−1)から式(S−15)に示すような構造のものを挙げることができる。
【0039】
本発明における発光性モノマー単位の好ましい具体例をとしては、式(D−1)から式(D−11)に示すような構造を挙げることができる。
【0040】
【化12】

【0041】
本発明の高分子化合物において、発光性モノマー単位の繰り返し数をr、他のモノマー単位の繰り返し数(式(2)で表される化合物を含む)をsとしたとき(r、sは1以上の整数)、全体のモノマー単位の繰り返し数に対する発光性モノマー単位の繰り返し数の割合、すなわちr/(r+s)の値は望ましくは0.0001以上かつ0.3以下である。また、更に望ましくは0.001以上かつ0.2以下である。
【0042】
共重合体におけるモノマーの配列としては、ランダム共重合体、ブロック共重合体、交互共重合体のいずれであってもよい。
また、本発明の高分子化合物は、式(2)で示されるモノマー単位の他にホール輸送性モノマー単位を含んでいてもよい。
【0043】
ホール輸送性のモノマー単位におけるホール輸送性部位としては、N,N’−ジフェニル−N,N’−(3−メチルフェニル)−1,1’−ビフェニル−4,4’ジアミン(TPD)、N,N,N’,N’−テトラキス(3−メチルフェニル)−1,1’−(3,3‘−ジメチル)ビフェニル−4,4’ジアミン(HMTPD)、4,4’−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル(α−NPD)、4、4’,4’’−トリス(3−メチルフェニルフェニルアミノ)トリフェニルアミン(m−MTDATA)などのトリフェニルアミン誘導体、カルバゾール誘導体などを挙げることができ、具体的な例としては、(T−1)から(T−8)に示す構造などを挙げることができる。
【0044】
【化13】

【0045】
ホール輸送性モノマー単位は、ホール輸送性部位、炭素−炭素二重結合に由来する重合鎖を形成する部分、およびこれらを結合する連結基とから構成される。
【0046】
ホール輸送性モノマー単位における連結基は、上記ホール輸送部位と、炭素―炭素二重結合に由来する重合鎖を結合する部分である。この連結基としては、単結合、−O−、−S−、−SO−、またはヘテロ原子を有してもよい炭素数1〜20の2価の有機基を挙げることができる。連結基に用いられる炭素数1〜20の2価の有機基としては、前記式(2)における連結基Xの場合と同じ(S−1)から(S−15)に示すような構造のものを挙げることができる。
【0047】
本発明の高分子化合物において、ホール輸送性モノマー単位の繰り返し数をv、他のモノマー(式(2)で表されるモノマー単位を含む)の繰り返し数をwとしたとき(v、wは1以上の整数)、全体のモノマー単位の繰り返し数に対する第三のモノマー単位の繰り返し数の割合、すなわちv/(v+w)の値は、望ましくは0.001以上かつ0.99以下である。また、更に望ましくは0.01以上かつ0.9以下である。
【0048】
本発明の高分子化合物は、更にその他のモノマー単位を含んでいてもよい。その他のモノマー単位としては、式(2)で示される化合物以外の電子輸送性のモノマー単位、両極性のモノマー単位等をあげることができる。
【0049】
電子輸送性モノマー単位としては、例えば、トリスアルミニウムキノリノール(Alq3)などのキノリノール誘導体金属錯体、オキサジアゾール誘導体、トリアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、トリアジン誘導体、トリアリールホウ素誘導体等に重合性官能基を導入した化合物を重合することにより導入することができる。
【0050】
本発明に用いられる高分子の重合度は、5〜10,000が好ましく、10〜5,000が更に好ましい。
高分子の分子量はその構成モノマーの分子量と重合度によって決まるため、本発明に用いられる高分子の分子量の好適な範囲を一概に定めることは困難である。しいて挙げるならば、本発明に用いられる高分子の分子量は、上記の重合度とは独立に重量平均分子量で1,000〜2,000,000が好ましく、5,000〜1,000,000が更に好ましい。
【0051】
ここで、分子量の測定方法としては、例えば、高分子学会編「高分子化学の基礎」(東京化学同人、1978年)に記載されている方法、すなわち、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法、浸透圧による方法、光散乱法、超遠心法などを挙げることができる。
【0052】
図1は本発明の有機発光素子構成の一例を示す断面図であり、透明基板(1)上に設けた陽極(2)と陰極(6)の間にホール輸送層(3)、発光層(4)、電子輸送層(5)を順次設けたものである。また、本発明の有機発光素子構成は図1の例のみに限定されず、陽極と陰極の間に順次、1)ホール輸送層/発光層、2)発光層/電子輸送層、のいずれかを設けたものでもよく、更には3)ホール輸送材料、発光性材料、電子輸送材料を含む層、4)ホール輸送材料、発光性材料を含む層、5)発光性材料、電子輸送材料を含む層、6)発光性材料の単独層、のいずれかの層を一層設けるだけでもよい。また、図1に示した発光層は1層であるが、2つ以上の層が積層されていてもよい。
これら、陰極と陽極の間の層は、一般に用いられている成膜方法を種々適用することができるが、ウェットプロセスにて塗布して作製する場合には、スピンコート法、インクジェット法、引き上げ法、ディップ法などを用いて成膜できる。
【0053】
本発明の有機発光素子においては、発光層の発光性材料として、上記式(2)で示されるホウ素を有するモノマー単位と発光性モノマー単位を含む発光性高分子化合物を用いるか、式(2)で示されるホウ素を有するモノマー単位を含む高分子化合物に対して発光性化合物(低分子化合物あるいは高分子化合物)からなる発光性材料、ホール輸送材料、電子輸送材料を混合したものを用いることができる。
本発明の高分子化合物に発光性材料を混合する場合、前述の発光性部位をもつ化合物を用いることができる。このとき本発明の高分子化合物に対する発光性材料の割合は0.001%から30%(wt)が望ましく、さらに望ましくは0.1%から20%(wt)である。
発光性材料の好ましい具体例としては、(D−12)から(D−21)に示すような構造を挙げることができる。
【0054】
【化14】

【0055】
また、本発明の高分子化合物のホール輸送性を補う場合にはホール輸送性化合物を混合することができ、また電子輸送性を補う場合には電子輸送性化合物を混合することができる。ここで、本発明の高分子化合物に混合するキャリア輸送性化合物は低分子化合物および高分子化合物のいずれでもよい。
【0056】
上記の高分子化合物に混合する低分子のホール輸送性化合物としては、N,N’−ジフェニル−N,N’−(3−メチルフェニル)−1,1’−ビフェニル−4,4’ジアミン(TPD)、4,4’−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル(α−NPD)、4,4’,4’’−トリス(3−メチルフェニルフェニルアミノ)トリフェニルアミン(m−MTDATA)などのトリフェニルアミン誘導体などを例示することができる。また、上記の高分子化合物に混合する高分子のホール輸送性化合物としては、ポリビニルカルバゾール、トリフェニルアミン系の低分子化合物に重合性官能基を導入して高分子化したもの、例えば特開平8-157575号公報に開示されているトリフェニルアミン骨格の高分子化合物などを例示することができる。
【0057】
一方、上記の高分子化合物に混合する低分子の電子輸送性化合物としては、トリスアルミニウムキノリノール(Alq3)などのキノリノール誘導体金属錯体、オキサジアゾール誘導体、トリアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、トリアジン誘導体、トリアリールホウ素誘導体などを例示することができる。また、上記の高分子化合物に混合する高分子の電子輸送性化合物としては、上記の低分子の電子輸送性化合物に重合性官能基を導入して高分子化したもの、例えば特開平10-1665号公報に開示されているポリPBDなどを例示することができる。
【0058】
また、上記の高分子化合物を成膜して得られる膜の物性等を改良する目的で、高分子化合物の発光特性に直接的には関与しない高分子化合物を混合して組成物とし、これを発光性材料として用いることもできる。例えば、得られる膜に柔軟性を付与するためにポリメチルメタクリレ−ト(PMMA)などを混合することができる。
【0059】
本発明の有機発光素子において、ホール輸送層を形成するホール輸送材料としては、N,N’−ジメチル−N,N’−(3−メチルフェニル)−1,1’−ビフェニル−4,4’ジアミン(TPD)、4,4’−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル(α−NPD)、4,4’,4’’−トリス(3−メチルフェニルフェニルアミノ)トリフェニルアミン(m−MTDATA)などのトリフェニルアミン誘導体、ポリビニルカルバゾールなどを例示することができる。また、トリフェニルアミン系の低分子化合物に重合性官能基を導入して高分子化したもの、例えば特開平8-157575号公報に開示されているトリフェニルアミン骨格の高分子化合物なども使用でき、更にポリパラフェニレンビニレン、ポリジアルキルフルオレンなどの高分子材料も使用できる。これらのホール輸送材料は単独でも用いられるが、異なるホール輸送材料と混合または積層して用いてもよい。ホール輸送層の厚さは特に限定されるものではないが、1nm〜5μmが好ましく、5nm〜1μmがより好ましく、10nm〜500nmが更に好ましい。
【0060】
本発明の有機発光素子において、電子輸送層を形成する電子輸送材料としては、トリスアルミニウムキノリノール(Alq3)などのキノリノール誘導体金属錯体、オキサジアゾール誘導体、トリアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、トリアジン誘導体、トリアリールホウ素誘導体などを例示することができる。また、上記の低分子の電子輸送性化合物に重合性官能基を導入して高分子化したもの、例えば特開平10-1665号公報に開示されているポリPBDなども使用できる。これらの電子輸送材料は単独でも用いられるが、異なる電子輸送材料と混合または積層して用いてもよい。電子輸送層の厚さは特に限定されるものではないが、1nm〜5μmが好ましく、5nm〜1μmがより好ましく、10nm〜500nmが更に好ましい。
【0061】
上記の発光層に用いられる発光性高分子化合物、ホール輸送層に用いられるホール輸送材料および電子輸送層に用いられる電子輸送材料は、それぞれ単独で各層を形成するほかに、高分子材料をバインダとして各層を形成することもできる。これに使用される高分子材料としては、ポリメチルメタクリレート、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリスルホン、ポリフェニレンオキサイドなどを例示することができる。
【0062】
上記の発光層、ホール輸送層および電子輸送層法は、抵抗加熱蒸着法、電子ビーム蒸着法、スパッタリング法、インクジェット法、スピンコート法、印刷法、スプレー法、ディスペンサー法などにより形成することが可能であり、低分子化合物の場合は主として抵抗加熱蒸着法および電子ビーム蒸着法が用いられ、高分子化合物の場合は主にインクジェット法、印刷法、スピンコート法が用いられる。
【0063】
また、発光層の陰極側に隣接して、ホールが発光層を通過することを抑え、発光層内で電子と効率よく再結合させる目的で、ホール・ブロック層が設けられてもよい。これに用いられる材料としては、トリアゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、フェナントロリン誘導体などを例示することができる。
【0064】
本発明の有機発光素子の陽極材料としては、酸化インジウムスズ(ITO)、酸化錫、酸化亜鉛、ポリチオフェン、ポリピロール、ポリアニリンなどの導電性高分子などの既知の透明導電材料が使用できる。この透明導電材料による電極の表面抵抗は1〜50Ω/□(オーム/スクエアー)であることが好ましい。これらの陽極材料の成膜方法としては、電子ビーム蒸着法、スパッタリング法、化学反応法、コーティング法などを用いることができる。陽極の厚さは50〜300nmが好ましい。
【0065】
また、陽極とホール輸送層または陽極に隣接して積層される有機層の間に、ホール注入に対する注入障壁を緩和する目的で陽極バッファー層が挿入されていてもよい。これには銅フタロシアニン、ポリエチレンジオキシチオフェン(PEDOT)とポリスチレンスルホン酸(PPS)の混合体などを用いることができる。また、陽極材料上に適当な中間層を設けても良い。この場合の中間層は、気体状有機化合物の高周波(RF)プラズマ処理法により有機薄膜として形成できる。
【0066】
本発明の有機発光素子の陰極材料としては、仕事関数が低いLi、Kなどのアルカリ金属や、Mg、Ca、Baなどのアルカリ土類金属を用いるのが、電子注入効率の観点から好ましい。また、これらの金属と比較して化学的に安定なAl、Mg・Ag合金、Al・LiやAl・CaなどのAlとアルカリ金属の合金などを用いることも望ましい。電子注入効率と化学的安定性とを両立させるためには、特開平2-15595号公報、特開平5-121172号公報に記載されているように、Cs、Ca、Sr、Baなどのアルカリ金属やアルカリ土類金属の薄層(0.01〜10μm程度)をAl層の下に(陰極側を上側、陽極側を下側とする)挟んでもよい。これらの陰極材料の成膜方法としては、抵抗加熱蒸着法、電子ビーム蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法などを用いることができる。陰極の厚さは10nm〜1μmが好ましく、50〜500nmがより好ましい。
【0067】
本発明に係る有機発光素子の基板としては、発光性材料の発光波長に対して透明な絶縁性基板が使用でき、ガラスのほか、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート(PMMA)を始めとする透明プラスチックが使用できる。
本発明の発光素子は、表示装置、照明、表示装置用バックライト、インテリア、エクステリア、面発光光源に用いることができる。
【実施例】
【0068】
以下に本発明について代表的な例を示し、更に具体的に説明する。なお、これらは説明のための単なる例示であって、本発明は何らこれらに限定されるものではない。
<測定装置等>
1)1H−NMR、13C−NMR
日本電子(JEOL)製 JNM EX270
270Mz 溶媒:重クロロホルム
2)GPC測定(分子量測定)
カラム:Shodex KF−G+KF804L+KF802+KF801
溶離液:テトラヒドロフラン(THF)
温度 :40℃
検出器:RI(Shodex RI−71)
3)ICP元素分析
島津製作所製 ICPS 8000
【0069】
実施例1:重合性化合物(ホウ素モノマー化合物1)の合成
【化15】

【0070】
(1)Grignard試薬調製
【化16】

【0071】
窒素雰囲気下において、100mlの4つ口フラスコにマグネシウム(1.00g)、脱水テトラヒドロフラン(THF)(5ml)、ヨウ素2mgを仕込み、室温でヨウ素の色がなくなるまで撹拌した。これに、ドライアイス/メタノール浴上で、4−ブロモスチレン(7.30g)を脱水テトラヒドロフラン(THF)(30ml)に溶解させた溶液を反応温度が15〜20℃となるように滴下した。滴下後、そのままの温度で60分間撹拌し、グリニア試薬(StyMgBr)を調製した。
【0072】
(2)トリアリールホウ素の合成
【化17】

【0073】
窒素雰囲気下において、200mlの4つ口フラスコにジメシチルボロンフルオライド(4.16g)とトルエン(Tol)(10ml)を仕込んだ。この溶液に先に調製したグリニア試薬(StyMgBr)を反応温度が15〜20℃となるように加え、さらに同温で6時間撹拌した。
この溶液に0.5N塩酸(80ml)と酢酸エチル(100ml)を加え抽出し、ついで有機層を水、飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウム上で乾燥させた。乾燥剤をろ別し、溶媒を留去して得た粗結晶をエタノールから再結晶して、化合物1を3.64g得た(収率70%)。
【0074】
1H-NMR(270MHz,CDCl3)、ppm:2.01(s,12H,Ar-CH3),2.30(s,6H,Ar-CH3),5.30-5.33(d,1H,-CH=CH2),5.82-5.87(d,1H,-CH=CH2),6.60-6.82(m,5H,芳香族,-CH=CH2),7.36-7.49(m,4H,芳香族)。
【0075】
実施例2:重合性化合物(ホウ素モノマー化合物2)の合成
【化18】

【0076】
(1)1−ブロモ−2,6−ジメチル−4−tert−ブチルジメチルシロキシベンゼン(化合物3)の合成
【0077】
【化19】

【0078】
窒素雰囲気下において、100mlの3つ口フラスコに4−ブロモ3,5−ジメチルフェノール(5.00g)とtert-ブチルジメチルクロロシラン(3.87g)と脱水ジクロロメタン(DCM)(10ml)、脱水ジメチルホルムアミド(DMF)(3ml)を仕込み撹拌した。撹拌下この溶液に、イミダゾール(1.75g)を脱水DCM(10ml)に溶かした溶液を滴下し、滴下後室温で3時間撹拌した。析出した不溶物をろ過し、ろ液を減圧下に濃縮した後、酢酸エチルと炭酸水素ナトリウム水溶液(5%)を加えた。有機層を分離した後、水と飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウム上で乾燥させた。乾燥剤をろ別した後、溶媒を留去し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製し、目的物を7.45g得た(収率95%)。
【0079】
(2)Grignard試薬調製
【化20】

【0080】
窒素雰囲気下において、100mlの4つ口フラスコにマグネシウム(0.60g)、脱水テトラヒドロフラン(THF)(5ml)、ヨウ素2mgを仕込み、室温でヨウ素の色がなくなるまで撹拌した。これに、1−ブロモ−2,6−ジメチル−4−tert−ブチルジメチルシロキシベンゼン(7.25g)を脱水THF(30ml)に溶解させた溶液を反応温度が67〜70℃となるように滴下した。滴下後、そのままの温度で60分間撹拌し、グリニア試薬(OTBSXyMgBr)を調製した。
【0081】
(3)ジメシチル(4−tert−ブチルジメチルシロキシ2,6−ジメチルフェニル)ボラン(化合物4)の合成
【化21】

【0082】
窒素雰囲気下において、200mlの4つ口フラスコにジメシチルボロンフルオライド(3.32g)と脱水トルエン(Tol)(10ml)を仕込んだ。この溶液に先に調製したグリニア試薬(OTBSXyMgBr)を加え、さらに油温130℃で6時間撹拌した。
放冷後、この溶液に塩酸(0.5N,80ml)と酢酸エチル(120ml)を加え、有機層を分離し、ついで有機層を水、飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウム上で乾燥させた。乾燥剤をろ別し、溶媒を留去して得た粗結晶をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製して、化合物4を4.75g得た(収率88%)。
【0083】
1H-NMR(270MHz,CDCl3)、ppm:0.18-0.19(d,6H,SiCH3),0.97-0.98(t,9H,C(CH3)3),1.94-1.97(m,12H,ArCH3),2.25-2.26(d,6H,ArCH3),6.42-6.73(m,6H,芳香族)
【0084】
(4)ジメシチル(4−ヒドロキシ−2,6−ジメチルフェニル)ボラン(化合物5)の合成
【化22】

【0085】
窒素雰囲気下において、200mlの4つ口フラスコに化合物4(4.50g)と脱水テトラヒドロフラン(THF)(15ml)を仕込んだ。この溶液に撹拌下、テトラノルマルブチルアンモニウムフルオライド3水和物(TBA−F)(8.8g)を加えた。30分後、5%クエン酸水溶液(20ml)を加えさらに10分間撹拌し、析出した固体をろ取した。ろ液に酢酸エチルを加え、抽出し、有機層を水、飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウム上で乾燥させた。乾燥剤をろ別した後、溶媒を留去して得た残渣と固体を合わせてエタノールで再結晶させ、化合物5を2.93g得た。ろ液をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製し、化合物5を0.32g得た。合計3.25g(収率94%)。
【0086】
1H-NMR(270MHz,CDCl3),ppm:1.95-1.98(m,12H,ArCH3),2.26(s,6H,ArCH3),5.4(s,1H,Ar-OH),6.41(s,2H,芳香族),6.73(s,4H,芳香族)
【0087】
(5)化合物6の合成
【化23】

【0088】
100mlのナスフラスコに化合物5(2.81g)と脱水ピリジン(Py)(10ml)を仕込んだ。この溶液に氷冷下、無水トリフルオロメタンスルホン酸(1.4ml)を加えた。氷温で10分、室温で一晩撹拌した後、氷の入った200mlのコニカルビーカーに移した。酢酸エチルを加え、抽出し、有機層を水、飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウム上で乾燥させた。乾燥剤をろ別した後、溶媒を留去して得た残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製し、目的物を3.37g得た(収率99%)。
【0089】
(6)ジメシチル(4−ビニル−2,6−ジメチルフェニル)ボラン(化合物2)の合成
【化24】

【0090】
100mlのナスフラスコに化合物6(2.95g)、脱水ジオキサン(15ml)、トリブチルビニルスズ(2.20g)、無水塩化リチウム(0.85g)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0.15g)、2,6−ジtert−ブチル−4−メチル−フェノール(0.05g)を仕込み、この溶液を湯温100℃で3時間撹拌した。放冷後ピリジン(3.5ml)とピリジニウムフルオライドテトラヒドロフラン(THF)溶液を(1.4M,7ml)加えた。室温で一晩撹拌した後、酢酸エチル(10ml)を加え、不溶物をろ過した。ろ液は水、塩酸(4N)、水、NaOH(4N)、水、飽和食塩水で順次洗浄し、無水硫酸ナトリウム上で乾燥させた。乾燥剤をろ別した後、溶媒を留去して得た残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製し、目的物を1.30g得た(収率51%)。
【0091】
1H-NMR(270MHz,CDCl3),ppm:1.98-2.01(m,18H,ArCH3),2.26(s,6H,ArCH3),5.19-5.23(dd,1H,-CH=CH2),5.73-5.80(dd,1H,-CH=CH2),6.58-6.69(dd,1H,-CH=CH2),6.73(s,4H,芳香族),6.96(s,2H,芳香族)
【0092】
実施例3:重合性化合物(ホウ素モノマー化合物7)の合成
【化25】

【0093】
(1)ジメシチル(4−スチリル−2,6−ジメチルフェニル)ボラン(化合物7)の合成
【化26】

【0094】
100mlのナスフラスコに化合物6(2.22g)、脱水ジオキサン(12ml)、トリブチルビニルスズ(1.66g)、無水塩化リチウム(0.64g)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0.11g)、2,6−ジtert−ブチル−4−メチル−フェノール(0.03g)を仕込み、この溶液を湯温100℃で3時間撹拌した。放冷後ピリジン(2.7ml)とピリジニウムフルオライドTHF溶液(1.4M,3.2ml)を加えた。室温で一晩撹拌した後、酢酸エチル(10ml)を加え、不溶物をろ過した。ろ液は水、塩酸(4N)、水、NaOH(4N)、水、飽和食塩水で順次洗浄し、無水硫酸ナトリウム上で乾燥させた。乾燥剤をろ別した後、溶媒を留去して得た残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製し、目的物を1.14g得た(収率50%)。
【0095】
1H-NMR(270MHz,CDCl3),ppm:1.98-2.01(m,18H,ArCH3),2.26(s,6H,ArCH3),5.21-5.27(dd,1H,-CH=CH2),5.75-5.81(dd,1H,-CH=CH2),6.72-6.88(m,5H,-CH=CH2,ArH),7.20(s,2H,芳香族),7.41-7.66(m,4H,芳香族)
【0096】
実施例4:重合性化合物(ホウ素モノマー化合物8)の合成
【化27】

【0097】
(1)4−ブロモ−3,5−ジメチルアニソール(化合物9)の合成
【化28】

200mlの4つ口フラスコに、4−ブロモ−3,5−ジメチルフェノール(10.0g)と脱水ジメチルスルホキシド(10ml)とtert-ブトキシカリウム(11.2g)を仕込み、室温で撹拌した。撹拌下この溶液にヨウ化メチル(8.5g)を加え、室温で2時間撹拌した。反応液に酢酸エチル(200ml)と水(50ml)を加え、有機層を抽出し、有機層を水、5%水酸化ナトリウム水溶液、水、飽和食塩水で順次洗浄し、無水硫酸ナトリウム上で乾燥させた。乾燥剤をろ別した後、溶媒を留去し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製し、目的物を10.36g得た(収率97%)。
【0098】
(2)Grignard試薬調製
【化29】

窒素雰囲気下において、100mlの四つ口フラスコにマグネシウム(1.2g)、脱水テトラヒドロフラン(THF)(5ml)、ヨウ素2mgを仕込み、室温でヨウ素の色がなくなるまで撹拌した。これに、4−ブロモ−3,5−ジメチル−アニソール(10.3g)を脱水THF(30ml)に溶解させた溶液を反応温度が67〜70℃となるように滴下した。滴下後、そのままの温度で60分間撹拌し、グリニア試薬を調製した。
【0099】
(3)化合物10の合成
【化30】

窒素雰囲気下において、200mlの4つ口フラスコにボロントリフルオライドエーテルコンプレックス(3.4g)と脱水THF(10ml)を仕込んだ。この溶液に先に調製したグリニア試薬(OTBSXyMgBr)を加え、油温70℃で3時間撹拌した。この反応液に化合物9から調製したグリニア試薬を加え、油温130℃で6時間撹拌した。放冷後、反応液に水を少しずつ加え(計100ml)、さらに10%塩酸を20ml加えた。酢酸エチルを200ml加え、有機層を抽出し、有機層を水、飽和食塩水で順次洗浄し、無水硫酸ナトリウム上で乾燥させた。乾燥剤をろ別した後、溶媒を留去し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーと再結晶にて精製し、目的物を7.4g得た(収率50%)。
【0100】
(4)化合物11の合成
【化31】

窒素雰囲気下において、200mlの4つ口フラスコに化合物10(6.8g)と脱水THF(30ml)を仕込んだ。この溶液に撹拌下、テトラノルマルブチルアンモニウムフルオライド3水和物(TBAF)(18g)を加えた。30分後、5%クエン酸水溶液(80ml)を加えさらに10分間撹拌し、析出した固体をろ取した。ろ液に酢酸エチルを加え、抽出し、有機層を水、飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウム上で乾燥させた。乾燥剤をろ別した後、溶媒を留去して得た残渣と固体を合わせてエタノールで再結晶させ、化合物11を4.3g得た(収率99%)。
【0101】
(5)化合物12の合成
【化32】

100mlのナスフラスコに化合物11(4.2g)と脱水ピリジン(Py)(20ml)を仕込んだ。この溶液に氷冷下、無水トリフルオロメタンスルホン酸(4ml)を加えた。氷温で10分、室温で一晩撹拌した後、氷の入った200mlのコニカルビーカーに移した。酢酸エチルを加え、抽出し、有機層を水、飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウム上で乾燥させた。乾燥剤をろ別した後、溶媒を留去して得た残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製し、目的物を6.6g得た(収率93%)。
【0102】
(6)化合物13の合成
【化33】

窒素雰囲気下において、200mlの4つ口フラスコに化合物12(3.2g)とジメトキシエタン(DME)(10ml)とフェニルホウ酸(1.3g)と炭酸カリウム(2.0g)と水(2.0ml)を仕込み、加熱還流下で1時間撹拌した。この溶液にテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(220mg)を加え、加熱還流下で3時間撹拌した。放冷後、酢酸エチルを20ml加え、良く撹拌した後、セライトろ過し、ろ液を分液漏斗に移した、有機層を抽出し、これを、水、飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウム上で乾燥させた。乾燥剤をろ別した後、溶媒を留去して得た残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製し、化合物13を2.0g得た(収率83%)。
【0103】
(7)化合物14の合成
【化34】

200mlのナスフラスコに化合物13(2.0g)と脱水ジクロロメタン(DCM)(20ml)を仕込んだ。この溶液に−78℃で、1Mの三臭化ホウ素ジクロロメタン溶液(5ml)を加え、同温で10分、室温で一晩撹拌した。反応液に水を加え、有機層を抽出し、有機層を水、飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウム上で乾燥させた。乾燥剤をろ別した後、溶媒を留去して得た残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製し、目的物を1.8g得た(収率93%)。
【0104】
(8)化合物15の合成
【化35】

100mlのナスフラスコに化合物14(1.7g)と脱水ピリジン(Py)(10ml)を仕込んだ。この溶液に氷冷下、無水トリフルオロメタンスルホン酸(0.7ml)を加えた。氷温で10分、室温で一晩撹拌した後、氷の入った200mlのコニカルビーカーに移した。酢酸エチルを加え、抽出し、有機層を水、飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウム上で乾燥させた。乾燥剤をろ別した後、溶媒を留去して得た残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製し、目的物を2.1g得た(収率99%)。
【0105】
(9)化合物8の合成
【化36】

【0106】
窒素雰囲気下において、100mlの4つ口フラスコに化合物15(2.0g)とジメトキシエタン(DME)(10ml)と4−ビニルフェニルホウ酸(0.52g)と炭酸カリウム(1.3g)と2,6−ジ−tert-ブチル−4−メチルフェノール(2mg)とトリフェニルホスフィン(75mg)と水(2.0ml)を仕込み、加熱還流下で30分撹拌した。この溶液にテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(75mg)を加え、加熱還流下で1時間撹拌した。放冷後、酢酸エチルを20ml加え、良く撹拌した後、セライトろ過し、ろ液を分液漏斗に移した、有機層を抽出し、これを、水、飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウム上で乾燥させた。乾燥剤をろ別した後、溶媒を留去して得た残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製し、化合物8を1.2g得た(収率66%)。
1H-NMR(270MHz,CDCl3),ppm:2.15(s,18H,ArCH3),5.21-5.27(dd,1H,-CH=CH2),5.75-5.81(dd,1H,-CH=CH2),6.68-6.85(q,1H,-CH=CH2,),7.20-7.68(m,20H,芳香族)
【0107】
実施例5:重合性化合物(化合物16)の合成
【化37】

【0108】
(1)化合物17の合成
【化38】

【0109】
(2)化合物18の合成
【化39】

200mlのナスフラスコに化合物17(2.5g)と脱水ジクロロメタン(DCM)(10ml)を仕込んだ。この溶液に−78℃で、1Mの三臭化ホウ素ジクロロメタン溶液(4ml)を加え、同温で10分、室温で一晩撹拌した。反応液に水を加え、有機層を抽出し、有機層を水、飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウム上で乾燥させた。乾燥剤をろ別した後、溶媒を留去して得た残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製し、目的物を2.4g得た(収率98%)。
【0110】
(3)化合物19の合成
【化40】

【0111】
100mlのナスフラスコに化合物18(2.3g)と脱水ピリジン(Py)(10ml)を仕込んだ。この溶液に氷冷下、無水トリフルオロメタンスルホン酸(0.7ml)を加えた。氷温で10分、室温で一晩撹拌した後、氷の入った200mlのコニカルビーカーに移した。酢酸エチルを加え、抽出し、有機層を水、飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウム上で乾燥させた。乾燥剤をろ別した後、溶媒を留去して得た残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製し、目的物を2.6g得た(収率93%)。
【0112】
(4)化合物16の合成
【化41】

【0113】
窒素雰囲気下において、100mlの4つ口フラスコに化合物19(1.2g)とジメトキシエタン(DME)(8ml)と4−ビニルフェニルホウ酸(0.24g)と炭酸カリウム(0.61g)と2,6−ジ−tert-ブチル−4−メチルフェノール(2mg)とトリフェニルホスフィン(50mg)と水(1.0ml)を仕込み、加熱還流下で30分撹拌した。この溶液にテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(50mg)を加え、加熱還流下で1時間撹拌した。放冷後、酢酸エチルを20ml加え、良く撹拌した後、セライトろ過し、ろ液を分液漏斗に移した、有機層を抽出し、これを、水、飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウム上で乾燥させた。乾燥剤をろ別した後、溶媒を留去して得た残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製し、化合物16を0.79g得た。(収率73%)。
1H-NMR(270MHz,CDCl3),ppm:2.19(s,18H,ArCH3),5.26-5.29(dd,1H,-CH=CH2),5.77-5.82(dd,1H,-CH=CH2),6.68-6.85(q,1H,-CH=CH2,),7.20-7.81(m,28H,芳香族)
【0114】
実施例6:重合性化合物(viHMTPD)(化合物20)の合成
【化42】

【0115】
(1)オルトトリジンのテトラトリル化
窒素雰囲気下において、200mlの3つ口フラスコにオルトトリジン(5.00g)、3−ヨードトルエン(22.60g)に脱水キシレン(100ml)を仕込み、約50℃で撹拌した。これに、tert−ブトキシカリウム(13.64g)、酢酸パラジウム(0.46g)、トリ−tert−ブチルホスフィン(0.46g)を順に加え、120℃で4時間撹拌した。室温まで冷却し、反応液に水(100ml)を加え、酢酸エチルで2回抽出した。有機層を硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧下に濃縮した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開液:酢酸エチル−ヘキサンの混合溶媒)で精製した。溶媒を留去した後、メタノールから再結晶して3,3’−ジメチル−N,N,N’,N’−テトラ−m−トリルベンジジン(化合物21)を11.46g得た(収率85%)。
【0116】
(2)化合物22の合成
【化43】

【0117】
窒素雰囲気下において、脱水ジメチルホルムアミド(DMF)(4ml)に氷冷下でオキシ塩化リン(1ml)を加え、室温で30分撹拌し、ビールスマイヤー試薬を調整した。
窒素雰囲気下、100mlの4つ口フラスコに化合物21(5.25g)と脱水DMF(25ml)を仕込み、80℃で撹拌した。この溶液に先に調製したビールスマイヤー試薬を滴下し、さらに80℃で1時間撹拌した。放冷後、反応溶液を炭酸水素ナトリウム(8g)と水(50ml)が入った500mlのビーカーに移し、さらに酢酸エチル(150ml)を加えた。有機層を取り、水、飽和食塩水で順次洗浄し、無水硫酸ナトリウム上で乾燥させた。乾燥剤をろ別した後、溶媒を留去して得た残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製し、目的物を2.55g得た(収率46%)。
【0118】
(2)化合物20の合成
【化44】

【0119】
窒素雰囲気下、100mlの4つ口フラスコにメチルトリフェニルホスホニウムブロマイド(1.93g)と脱水テトラヒドロフラン(THF)(10ml)を仕込み、氷冷下撹拌した。この溶液にノルマルブチルリチウムヘキサン溶液(1.58M,3.2ml)を10分かけて加え、氷冷下で10分、室温で60分間撹拌した。この溶液に脱水ベンゼン(10ml)と化合物22を加え、20℃以下で撹拌した。1時間後、反応液に水(50ml)を加え、さらに酢酸エチル(100ml)とハイドロキノンを少量加えた。有機層をとり、水、飽和食塩水で順次洗浄し、無水硫酸ナトリウム上で乾燥させた。乾燥剤をろ別した後、溶媒を留去して得た残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製し、目的物を2.39g得た(収率96%)。
【0120】
1H-NMR(270MHz,CDCl3)ppm:7.5-6.7(m,22H,ArH),6.65(dd,1H,J=17.4,10.9Hz,-CH=CH2),5.61(d,1H,J=17.6Hz,-CH=CH2(cis)),5.12(d,1H,J=11.1Hz,-CH=CH2(trans)),2.25(s,9H,-CH3),2.08(s,6H,-CH3)
【0121】
実施例7:ホウ素ホモポリマー1の合成
密閉容器にホウ素モノマー化合物1(352mg)を入れ、脱水トルエン(5ml)を加えた後、V−601(和光純薬工業製)のトルエン溶液(0.1M,100μl)を加え、凍結脱気操作を5回繰り返した。真空のまま密閉し、60℃で60時間撹拌した。反応後、反応液をアセトン(250ml)中に滴下して沈殿を生じさせた。さらにトルエン−アセトンでの再沈殿精製を2回繰り返して精製した後、50℃で一晩真空乾燥し、白色の固体としてホウ素ホモポリマー1(300mg)を得た。得られた共重合体の分子量はポリスチレン換算のGPC測定より重量平均分子量(Mw)42,000であった。
【0122】
実施例8:ホウ素ホモポリマー2の合成
ホウ素モノマー化合物2を用い、実施例7と同様に行った。得られた共重合体の分子量はポリスチレン換算のGPC測定より重量平均分子量(Mw)78,000であった。
【0123】
実施例9:ホウ素ホモポリマー3の合成
ホウ素モノマー化合物7を用い、実施例7と同様に行った。得られた共重合体の分子量はポリスチレン換算のGPC測定より重量平均分子量(Mw)67,000であった。
【0124】
実施例10:ホウ素ホモポリマー4の合成
ホウ素モノマー化合物8を用い、実施例7と同様に行った。得られた共重合体の分子量はポリスチレン換算のGPC測定より重量平均分子量(Mw)88,000であった。
【0125】
実施例11:ホウ素ホモポリマー5の合成
ホウ素モノマー化合物16を用い、実施例7と同様に行った。得られた共重合体の分子量はポリスチレン換算のGPC測定より重量平均分子量(Mw)88,000であった。
【0126】
実施例12:ホウ素共重合ポリマー1の合成
密閉容器にホウ素モノマー化合物1(0.2mmol)と化合物20(0.2mmolg)を入れ、脱水トルエン(2ml)を加えた後、V−601(和光純薬工業製)のトルエン溶液(0.1M,40μl)を加え、凍結脱気操作を5回繰り返した。真空のまま密閉し、60℃で60時間撹拌した。反応後、反応液をアセトン(100ml)中に滴下して沈殿を生じさせた。さらにトルエン−アセトンでの再沈殿精製を2回繰り返して精製した後、50℃で一晩真空乾燥し、薄黄色の固体としてホウ素共重合ポリマー1(158mg)を得た。得られた共重合体の分子量はポリスチレン換算のGPC測定より重量平均分子量(Mw)70,000であった。またNMR測定による共重合体の共重合比はホウ素モノマー化合物1:化合物20=50:50(mol比)と見積もられた。
【0127】
実施例13:ホウ素共重合ポリマー2の合成
ホウ素モノマー化合物2と化合物20を用い、実施例12と同様に行った。得られた共重合体の分子量はポリスチレン換算のGPC測定より重量平均分子量(Mw)82,000であった。またNMR測定による共重合体の共重合比はホウ素モノマー化合物2:化合物20=50:50(mol比)と見積もられた。
【0128】
実施例14:ホウ素共重合ポリマー3の合成
ホウ素モノマー化合物7と化合物20を用い、実施例12と同様に行った。得られた共重合体の分子量はポリスチレン換算のGPC測定より重量平均分子量(Mw)69,000であった。またNMR測定による共重合体の共重合比はホウ素モノマー化合物7:化合物20=51:49(mol比)と見積もられた。
【0129】
実施例15:ホウ素共重合ポリマー4の合成
ホウ素モノマー化合物8と化合物20を用い、実施例12と同様に行った。得られた共重合体の分子量はポリスチレン換算のGPC測定より重量平均分子量(Mw)88,000であった。またNMR測定による共重合体の共重合比はホウ素モノマー化合物8:化合物20=52:48(mol比)と見積もられた。
【0130】
実施例16:ホウ素共重合ポリマー5の合成
ホウ素モノマー化合物16と化合物20を用い、実施例12と同様に行った。得られた共重合体の分子量はポリスチレン換算のGPC測定より重量平均分子量(Mw)81,000であった。またNMR測定による共重合体の共重合比はホウ素モノマー化合物16:化合物20=52:48(mol比)と見積もられた。
【0131】
実施例17:ホウ素共重合ポリマー6の合成
密閉容器にホウ素モノマー1(0.4mmol)、式(5)で示されるIrST(特開2003-113246に記載の方法で合成。)(0.04mmol)を入れ、脱水トルエン(2ml)を加えた後、V−601(和光純薬工業製)のトルエン溶液(0.1M,40μl)を加え、凍結脱気操作を5回繰り返した。真空のまま密閉し、60℃で60時間撹拌した。反応後、反応液をアセトン(100ml)中に滴下して沈殿を生じさせた。さらにトルエン−アセトンでの再沈殿精製を2回繰り返して精製した後、50℃で一晩真空乾燥し、薄黄色の固体としてホウ素共重合ポリマー(135mg)を得た。得られた共重合体の分子量はポリスチレン換算のGPC測定より重量平均分子量(Mw)50,000であった。共重合体中のイリジウム元素含量はICP元素分析より3.7wt%であった。これより、共重合体の共重合比はホウ素モノマー化合物1:IrST=92:8(mol比)と見積もられた。
【0132】
【化45】

【0133】
実施例18:ホウ素共重合ポリマー7の合成
ホウ素モノマー2とIrSTを用い、実施例17と同様に行った。得られた共重合体の分子量はポリスチレン換算のGPC測定より重量平均分子量(Mw)50,700であった。共重合体中のイリジウム元素含量をICP元素分析より求めたところ、共重合体の共重合比はホウ素モノマー2:IrST=92:8(mol比)と見積もられた。
【0134】
実施例19:ホウ素共重合ポリマー8の合成
ホウ素モノマー7とIrSTを用い、実施例17と同様に行った。得られた共重合体の分子量はポリスチレン換算のGPC測定より重量平均分子量(Mw)59,900であった。共重合体中のイリジウム元素含量をICP元素分析より求めたところ、共重合体の共重合比はホウ素モノマー7:IrST=91:9(mol比)と見積もられた。
【0135】
実施例20:ホウ素共重合ポリマー9の合成
ホウ素モノマー8とIrSTを用い、実施例17と同様に行った。得られた共重合体の分子量はポリスチレン換算のGPC測定より重量平均分子量(Mw)61,700であった。共重合体中のイリジウム元素含量をICP元素分析より求めたところ、共重合体の共重合比はホウ素モノマー8:IrST=91:9(mol比)と見積もられた。
【0136】
実施例21:ホウ素共重合ポリマー10の合成
ホウ素モノマー16とIrSTを用い、実施例17と同様に行った。得られた共重合体の分子量はポリスチレン換算のGPC測定より重量平均分子量(Mw)58,700であった。共重合体中のイリジウム元素含量をICP元素分析より求めたところ、共重合体の共重合比はホウ素モノマー16:IrST=91:9(mol比)と見積もられた。
実施例22:ホウ素共重合ポリマー11の合成
密閉容器にホウ素モノマー1(0.4mmol)、式(6)で示されるIr錯体(0.04mmol)を入れ、脱水トルエン(2ml)を加えた後、V−601(和光純薬工業製)のトルエン溶液(0.1M,40μl)を加え、凍結脱気操作を5回繰り返した。真空のまま密閉し、60℃で60時間撹拌した。反応後、反応液をアセトン(100ml)中に滴下して沈殿を生じさせた。さらにトルエン−アセトンでの再沈殿精製を2回繰り返して精製した後、50℃で一晩真空乾燥し、薄黄色の固体としてホウ素共重合ポリマー(135mg)を得た。得られた共重合体の分子量はポリスチレン換算のGPC測定より重量平均分子量(Mw)49,000であった。共重合体中のイリジウム元素含量はICP元素分析より3.7wt%であった。これより、共重合体の共重合比はホウ素モノマー化合物1:式(6)で示される化合物=92:8(mol比)と見積もられた。
【0137】
【化46】

【0138】
式6の化合物は例えば以下のように合成できる。
【化47】

【0139】
4−アセチルフェニルボロン酸と2−ブロモピリジンをパラジウム化合物存在下で反応させて得られる、4−アセチルフェニルピリジンをソディウムボロンハイドライドで還元し、アルコール体を得た。このアルコール体と特開2003-113246に記載の方法で合成したIr2核化合物を反応させて、式(6)に示す化合物を得た。
【0140】
実施例23:ホウ素共重合ポリマー12の合成
ホウ素モノマー2と式(6)で示される化合物を用い、実施例22と同様に行った。得られた共重合体の分子量はポリスチレン換算のGPC測定より重量平均分子量(Mw)52,200であった。共重合体中のイリジウム元素含量をICP元素分析より求めたところ、共重合体の共重合比はホウ素モノマー2:式(6)で示される化合物=92:8(mol比)と見積もられた。
【0141】
実施例24:ホウ素共重合ポリマー13の合成
ホウ素モノマー7と式(6)で示される化合物を用い、実施例22と同様に行った。得られた共重合体の分子量はポリスチレン換算のGPC測定より重量平均分子量(Mw)60,100であった。共重合体中のイリジウム元素含量をICP元素分析より求めたところ、共重合体の共重合比はホウ素モノマー7:式(6)で示される化合物=91:9(mol比)と見積もられた。
【0142】
実施例25:ホウ素共重合ポリマー14の合成
ホウ素モノマー8と式(6)で示される化合物を用い、実施例22と同様に行った。得られた共重合体の分子量はポリスチレン換算のGPC測定より重量平均分子量(Mw)62,100であった。共重合体中のイリジウム元素含量をICP元素分析より求めたところ、共重合体の共重合比はホウ素モノマー8:式(6)で示される化合物=91:9(mol比)と見積もられた。
【0143】
実施例26:ホウ素共重合ポリマー15の合成
ホウ素モノマー16と式(6)で示される化合物を用い、実施例22と同様に行った。得られた共重合体の分子量はポリスチレン換算のGPC測定より重量平均分子量(Mw)58,700であった。共重合体中のイリジウム元素含量をICP元素分析より求めたところ、共重合体の共重合比はホウ素モノマー16:式(6)で示される化合物=91:9(mol比)と見積もられた。
【0144】
実施例27:ホウ素共重合ポリマー16の合成
密閉容器にホウ素モノマー化合物1(0.2mmol)、化合物20(0.2mmol)、IrST(0.03mmol)を入れ、脱水トルエン(2ml)を加えた後、V−601(和光純薬工業製)のトルエン溶液(0.1M,40μl)を加え、凍結脱気操作を5回繰り返した。真空のまま密閉し、60℃で60時間撹拌した。反応後、反応液をアセトン(500ml)中に滴下して沈殿を生じさせた。さらにトルエン−アセトンでの再沈殿精製を2回繰り返して精製した後、50℃で一晩真空乾燥し、薄黄色の固体としてホウ素共重合ポリマー(180mg)を得た。得られた共重合体の分子量はポリスチレン換算のGPC測定より重量平均分子量(Mw)52,500であった。共重合体中のイリジウム元素含量はICP元素分析より1.9wt%であった。これと13C−NMR測定の結果より、共重合体の共重合比はホウ素モノマー化合物1:化合物20:IrST=47.6:48.0:4.4(mol比)と見積もられた。
【0145】
実施例28:ホウ素共重合ポリマー17の合成
ホウ素モノマー化合物2、化合物20、IrSTを用い、実施例27と同様に行った。得られた共重合体の分子量はポリスチレン換算のGPC測定より重量平均分子量(Mw)55,200であった。共重合体比はICP元素分析と13C−NMR測定の結果より、ホウ素モノマー化合物2:化合物20:IrST=47.5:48.1:4.4(mol比)と見積もられた。
【0146】
実施例29:ホウ素共重合ポリマー18の合成
ホウ素モノマー化合物7、化合物20、IrSTを用い、実施例27と同様に行った。得られた共重合体の分子量はポリスチレン換算のGPC測定より重量平均分子量(Mw)58,400であった。共重合体比はICP元素分析と13C−NMR測定の結果より、ホウ素モノマー化合物7:化合物20:IrST=47.6:48.0:4.4(mol比)と見積もられた。
【0147】
実施例30:ホウ素共重合ポリマー19の合成
ホウ素モノマー化合物8、化合物20、IrSTを用い、実施例27と同様に行った。得られた共重合体の分子量はポリスチレン換算のGPC測定より重量平均分子量(Mw)58,200であった。共重合体比はICP元素分析と13C−NMR測定の結果より、ホウ素モノマー化合物8:化合物20:IrST=47.4:48.0:4.6(mol比)と見積もられた。
【0148】
実施例31:ホウ素共重合ポリマー20の合成
ホウ素モノマー化合物16、化合物20、IrSTを用い、実施例27と同様に行った。得られた共重合体の分子量はポリスチレン換算のGPC測定より重量平均分子量(Mw)58,200であった。共重合体比はICP元素分析と13C−NMR測定の結果より、ホウ素モノマー化合物16:化合物20:IrST=47.7:47.6:4.7(mol比)と見積もられた。
【0149】
実施例32:ホウ素共重合ポリマー21の合成
密閉容器にホウ素モノマー化合物1(0.2mmol)、化合物20(0.2mmol)、式(6)で示される化合物(0.03mmol)を入れ、脱水トルエン(2ml)を加えた後、V−601(和光純薬工業製)のトルエン溶液(0.1M,40μl)を加え、凍結脱気操作を5回繰り返した。真空のまま密閉し、60℃で60時間撹拌した。反応後、反応液をアセトン(500ml)中に滴下して沈殿を生じさせた。さらにトルエン−アセトンでの再沈殿精製を2回繰り返して精製した後、50℃で一晩真空乾燥し、薄黄色の固体としてホウ素共重合ポリマー(180mg)を得た。得られた共重合体の分子量はポリスチレン換算のGPC測定より重量平均分子量(Mw)70,000であった。共重合体中のイリジウム元素含量はICP元素分析より1.9wt%であった。これと13C−NMR測定の結果より、共重合体の共重合比はホウ素モノマー化合物1:化合物20:式(6)で示される化合物=47.6:48.0:4.4(mol比)と見積もられた。
【0150】
実施例33:ホウ素共重合ポリマー22の合成
ホウ素モノマー化合物2、化合物20、式(6)で示される化合物を用い、実施例32と同様に行った。得られた共重合体の分子量はポリスチレン換算のGPC測定より重量平均分子量(Mw)50,200であった。共重合体比はICP元素分析と13C−NMR測定の結果より、ホウ素モノマー化合物2:化合物20:式(6)で示される化合物=47.5:48.1:4.4(mol比)と見積もられた。
【0151】
実施例34:ホウ素共重合ポリマー23の合成
ホウ素モノマー化合物7、化合物20、式(6)で示される化合物を用い、実施例32と同様に行った。得られた共重合体の分子量はポリスチレン換算のGPC測定より重量平均分子量(Mw)68,000であった。共重合体比はICP元素分析と13C−NMR測定の結果より、ホウ素モノマー化合物7:化合物20:式(6)で示される化合物=47.6:48.0:4.4(mol比)と見積もられた。
【0152】
実施例35:ホウ素共重合ポリマー24の合成
ホウ素モノマー化合物8、化合物20、式(6)で示される化合物を用い、実施例32と同様に行った。得られた共重合体の分子量はポリスチレン換算のGPC測定より重量平均分子量(Mw)58,900であった。共重合体比はICP元素分析と13C−NMR測定の結果より、ホウ素モノマー化合物8:化合物20:式(6)で示される化合物=47.4:48.0:4.6(mol比)と見積もられた。
【0153】
実施例36:ホウ素共重合ポリマー25の合成
ホウ素モノマー化合物16、化合物20、式(6)で示される化合物を用い、実施例32と同様に行った。得られた共重合体の分子量はポリスチレン換算のGPC測定より重量平均分子量(Mw)70,500であった。共重合体比はICP元素分析と13C−NMR測定の結果より、ホウ素モノマー化合物16:化合物20:式(6)で示される化合物=47.7:47.6:4.7(mol比)と見積もられた。
【0154】
比較例1:poly−viPBDの合成
密閉容器にviPBD(0.4mmol)を入れ、脱水トルエン(5ml)を加えた後、V−601(和光純薬工業製)のトルエン溶液(0.1M,100μl)を加え、凍結脱気操作を5回繰り返した。真空のまま密閉し、60℃で60時間撹拌した。反応後、反応液をアセトン(250ml)中に滴下して沈殿を生じさせた。さらにトルエン−アセトンでの再沈殿精製を2回繰り返して精製した後、50℃で一晩真空乾燥し、白色の固体としてpoly−viPBD(130mg)を得た。得られた共重合体の分子量はポリスチレン換算のGPC測定より重量平均分子量(Mw)67,000であった。
【0155】
比較例2:共重合体(poly−(viPBD−co−viHMTPD))の合成
viPBDと、化合物20を用い、実施例12と同様に行った。得られた共重合体の分子量はポリスチレン換算のGPC測定より重量平均分子量(Mw)68,400であった。共重合体の共重合比はviPBD:化合物20=50:50(mol比)と見積もられた。
【0156】
比較例3:共重合体(poly−(viPBD−co−IrST))の合成
viPBDと、IrSTを用い、実施例17と同様に行った。得られた共重合体の分子量はポリスチレン換算のGPC測定より重量平均分子量(Mw)56,000であった。共重合体の共重合比はviPBD:IrST=91:9(mol比)と見積もられた。
【0157】
比較例4:共重合体(poly−(viPBD−co−viHMTPD−co−IrST))の合成
viPBDと化合物20とIrSTを用い、実施例22と同様に行った。得られた共重合体の分子量はポリスチレン換算のGPC測定より重量平均分子量(Mw)49,200であった。共重合体中のイリジウム元素含量はICP元素分析より1.9wt%であった。これと13C−NMR測定の結果より、共重合体の共重合比はviPBD:化合物20:IrST=49.0:46.5:4.5(mol比)と見積もられた。
【0158】
実施例37:有機発光素子の製作とEL発光特性評価
25mm角のガラス基板の一方の面に、陽極となる幅4mmの2本のITO電極がストライプ状に形成されたITO(酸化インジウム錫)付き基板(ニッポ電機、Nippo Electric Co., LTD.)を用いて有機発光素子を作製した。はじめに、上記ITO付き基板のITO(陽極)上に、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)・ポリスチレンスルホン酸(バイエル社製、商品名「バイトロンP」)をスピンコート法により、回転数3,500rpm、塗布時間40秒の条件で塗布した後、真空乾燥器で減圧下、60℃で2時間乾燥を行い、陽極バッファ層を形成した。得られた陽極バッファ層の膜厚は約50nmであった。
【0159】
次に、発光性材料、電子輸送材料を含む層を形成するための塗布溶液を調製した。たとえば、ホウ素共重合ポリマー7(45mg)と、特開平10-1665号公報に記載の方法で合成したHMTPD(45mg)をトルエン(和光純薬工業製,特級)(2,910mg)に溶解し、得られた溶液を孔径0.2μmのフィルターで濾過して塗布溶液とした。次に、陽極バッファ層上に、調製した塗布溶液をスピンコート法により、回転数3,000rpm、塗布時間30秒の条件で塗布し、室温(25℃)にて30分間乾燥することにより、発光層を形成した。得られた発光層の膜厚は約100nmであった。次に発光層を形成した基板を蒸着装置内に載置し、セシウムを蒸着速度0.01nm/sで2nmの厚さに蒸着し(セシウム源としては、サエスゲッターズ社製アルカリメタルディスペンサーを使用)、続いて、陰極としてアルミニウムを蒸着速度1nm/sで250nmの厚さに蒸着し、素子1を作製した。尚、セシウムとアルミニウムの層は、陽極の延在方向に対して直交する2本の幅3mmのストライプ状に形成し、1枚のガラス基板当たり、縦4mm×横3mmの有機発光素子を4個作製した。
【0160】
(株)アドバンテスト社製 プログラマブル直流電圧/電流源 TR6143を用いて上記有機EL素子に電圧を印加し発光させ、その発光輝度を(株)トプコン社製 輝度計 BM−8を用いて測定した。その結果得られた、発光開始電圧、最高輝度、および100cd/m2点灯時の外部量子効率を表2に示す(各値は1枚の基板に形成された素子4個の平均値)。
【0161】
素子1に対して、表1に記載したように発光性材料およびその他の材料を変更した以外は、素子1と同様にして素子2〜7を作製した。これらの素子についても素子1と同様にEL発光特性の評価を行った結果を表2に示す。
【0162】
表1、2より、比較例である電子輸送部位にオキサジアゾールを用いた発光性高分子を使用した発光素子に較べて、本発明の電子輸送部位にトリアリールホウ素構造を用いた発光性高分子を使用した発光素子で、発光開始電圧が低く、最高輝度が高く、外部量子効率が高いことがわかる。
【0163】
【表1】

【0164】
【表2】

【符号の説明】
【0165】
1 ガラス基板
2 陽極
3 ホール輸送層
4 発光層
5 電子輸送層
6 陰極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1)
【化1】

〔式中、Aはフェニル基が置換されていてもよいトリフェニルホウ素基、R16は、水素原子、または炭素数1〜12のアルキル基を表わす。Xは、単結合、−O−、−S−、−SO−、−SO2−、またはヘテロ原子を有してもよい炭素数1〜20の2価の炭化水素基を表わす。〕
で示されるモノマー単位と、発光性モノマー単位(ただし、下記式D−1〜D−7
【化2】


で示されるモノマーから誘導されるモノマー単位を除く。)とを含む発光性高分子化合物。
【請求項2】
式(1)で示されるモノマー単位が下記式(2)
【化3】

〔式中、R16およびXは請求項1の記載と同じ意味を表わし、R1〜R15は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、アミノ基、炭素数1〜12の炭化水素アルキル基、または炭素数1〜12のアルコキシ基、アリールオキシ基、芳香族基、ヘテロ環基を表わす。また、R1〜R15のうち、同一のフェニル基上に隣接して付いているものは結合して縮合環を形成してもよい。〕
で示されるモノマー単位である請求項1に記載の発光性高分子化合物。
【請求項3】
式(2)で示されるモノマー単位が下記式(3)
【化4】

〔式中、R2、R3、R6〜R8及びR11、R12、R15、R16は請求項2の記載と同じ意味を表わす。〕
で示されるモノマー単位である請求項に記載の発光性高分子化合物。
【請求項4】
式(2)で示されるモノマー単位が下記式(4)
【化5】

〔式中、R1〜R6、R8〜R13およびR16は請求項2の記載と同じ意味を表わし、R17〜R26は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、アミノ基、炭素数1〜12の炭化水素アルキル基、または炭素数1〜12のアルコキシ基、アリールオキシ基、芳香族基、ヘテロ環基を表わす。また、R17 〜R26のうち、同一のフェニル基上に隣接して付いているものは結合して縮合環を形成してもよい。〕
で示されるモノマー単位である請求項に記載の発光性高分子化合物。
【請求項5】
前記発光性モノマー単位の発光が燐光発光である請求項1〜4のいずれかに記載の発光性高分子化合物。
【請求項6】
前記発光性モノマー単位が遷移金属錯体を含む請求項に記載の発光性高分子化合物。
【請求項7】
前記発光性モノマー単位が原子番号39〜48、72〜80から選ばれる金属を含む請求項に記載の発光性高分子化合物。
【請求項8】
発光性高分子化合物がホール輸送性モノマー単位を含む請求項1乃至8のいずれか1項に記載の発光性高分子化合物。
【請求項9】
請求項1記載の式(1)で示されるモノマー単位を含む高分子化合物と発光性化合物(ただし、請求項1記載の式D−1〜D−7で示されるモノマーから誘導されるモノマー単位を含む発光性化合物、下記式Ir−1〜Ir−13
【化6】


で示されるイリジウム化合物、下記Pt−1〜Pt−3
【化7】


で示される白金化合物、および下記A−1
【化8】


で示されるオスミウム化合物を除く)とを含有することを特徴とする発光性組成物。
【請求項10】
前記発光性化合物が低分子化合物及び/または高分子化合物である請求項記載の発光性組成物。
【請求項11】
陽極と陰極に挟まれた一つまたは複数の高分子層を含む有機発光素子において、高分子層の少なくとも一層が請求項1乃至のいずれか1項に記載の発光性高分子化合物を含む有機発光素子。
【請求項12】
陽極と陰極に挟まれた一つまたは複数の高分子層を含む有機発光素子において、高分子層の少なくとも一層が請求項9または10に記載の発光性組成物を含む有機発光素子。
【請求項13】
請求項11または12に記載の有機発光素子を用いた、面発光光源、表示装置用バックライト、表示装置、照明装置、インテリア、またはエクステリア。

【図1】
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【公開番号】特開2011−140649(P2011−140649A)
【公開日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−4181(P2011−4181)
【出願日】平成23年1月12日(2011.1.12)
【分割の表示】特願2004−358624(P2004−358624)の分割
【原出願日】平成16年12月10日(2004.12.10)
【出願人】(000002004)昭和電工株式会社 (3,251)
【Fターム(参考)】